(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】フリーピストンムーバ用のパワーカップリング
(51)【国際特許分類】
F02B 71/04 20060101AFI20230213BHJP
F04B 9/00 20060101ALI20230213BHJP
F04B 1/28 20060101ALI20230213BHJP
H02K 33/00 20060101ALI20230213BHJP
H02K 35/00 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
F02B71/04
F04B9/00 C
F04B1/28
H02K33/00 A
H02K35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022536923
(86)(22)【出願日】2020-12-15
(85)【翻訳文提出日】2022-08-09
(86)【国際出願番号】 GB2020053220
(87)【国際公開番号】W WO2021123754
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514035084
【氏名又は名称】リバティーン エフピーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コッカリル,サミュエル エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ヴィール,マシュー
【テーマコード(参考)】
3H070
3H075
5H633
【Fターム(参考)】
3H070AA00
3H070BB04
3H070BB13
3H070CC11
3H075AA01
3H075BB03
3H075CC36
3H075DB03
3H075EE12
5H633BB03
5H633BB04
5H633GG02
5H633HH03
(57)【要約】
リニア電気機械システムは、少なくとも第1のステータ電子回路および第2のステータ電子回路または回路群を有するステータと、前記ステータに対して往復動作可能なフリーピストンムーバであって、ピストン表面と、前記ステータ電子回路または前記回路群の1つまたは複数によって前記フリーピストンムーバに電磁力を与えるトランスレータと、1つまたは複数のトランスレータ電子回路と、を有するフリーピストンムーバと、前記第1のステータ電子回路および前記第2のステータ電子回路または前記回路群のそれぞれに対するスイッチング装置であって、前記第1のステータ電子回路および前記第2のステータ電子回路または前記回路群のそれぞれにおける電流が独立して制御可能である、スイッチング装置と、を有し、前記トランスレータ電子回路の少なくとも1つは、前記フリーピストンムーバのストロークの少なくとも一部において、独立して制御された前記ステータ電子回路または前記回路群の少なくとも1つから電力を受信する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1のステータ電子回路および第2のステータ電子回路または回路群を有するステータと、
前記ステータに対して往復動作可能なフリーピストンムーバであって、
ピストン表面と、
前記ステータ電子回路または前記回路群の1つまたは複数によって前記フリーピストンムーバに電磁力を与えるトランスレータと、
1つまたは複数のトランスレータ電子回路と、
を有するフリーピストンムーバと、
前記第1のステータ電子回路および前記第2のステータ電子回路または前記回路群のそれぞれに対するスイッチング装置であって、前記第1のステータ電子回路および前記第2のステータ電子回路または前記回路群のそれぞれにおける電流が独立して制御可能である、スイッチング装置と、
を有し、
前記トランスレータ電子回路の少なくとも1つは、前記フリーピストンムーバのストロークの少なくとも一部において、独立して制御された前記ステータ電子回路または前記回路群の少なくとも1つから電力を受信する、
ことを特徴とするリニア電気機械システム。
【請求項2】
独立して制御された前記電子回路または前記回路群の少なくとも一方は、前記フリーピストンムーバの前記ストロークの少なくとも一部において、前記トランスレータに力を与えることを特徴とする請求項1に記載のリニア電気機械システム。
【請求項3】
出力信号によって前記スイッチング装置の少なくとも1つを始動させるコントローラと、
前記フリーピストンムーバの前記電子回路に接続された少なくとも1つの電気作動装置と、
をさらに有し、
前記電気作動装置は、前記電子回路または前記回路群の少なくとも一方から前記フリーピストンムーバの少なくとも1つの電子回路に送信される電力によって動作する
ことを特徴とする請求項1に記載のリニア電気機械システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの電気作動装置は、
加速度計、
温度センサ、
圧力センサ、
光学センサ、
音響センサ、
イオンセンサ、
アクティブスケール、
の1つまたは複数からなるセンサである
ことを特徴とする請求項2に記載のリニア電気機械システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの電気作動装置は、無線信号送信機である、ことを特徴とする請求項2に記載のリニア電気機械システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの電気作動装置は、燃焼開始手段である、ことを特徴とする請求項2に記載のリニア電気機械システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの電気作動装置は、電気エネルギー貯蔵手段である、ことを特徴とする請求項2に記載のリニア電気機械システム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの電気作動装置は、
アナログ信号増幅器、
アナログ信号フィルタ、
A/D変換器、
デジタル信号プロセッサ、
の1つまたは複数である信号プロセッサである
ことを特徴とする請求項2に記載のリニア電気機械システム。
【請求項9】
位置エンコーダ読み取りヘッドをさらに有することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のリニア電気機械システム。
【請求項10】
無線信号受信機をさらに有することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のリニア電気機械システム。
【請求項11】
前記電子回路または前記回路群の1つの少なくとも1つの端子が切断されたときに前記端子の電圧を測定する電圧センサをさらに有することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のリニア電気機械システム。
【請求項12】
前記位置エンコーダ読み取りヘッド、前記電圧センサおよび/または前記フリーピストンムーバの少なくとも1つのセンサ要素のいずれかからデータを受信して処理するセンサコントローラをさらに有することを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載のリニア電気機械システム。
【請求項13】
前記電子回路または前記回路群の1つまたは複数は、単一の電子信号のみを含むことを特徴とする請求項1に記載のリニア電気機械システム。
【請求項14】
前記電子回路または前記回路群の1つまたは複数は、電子回路を含むことを特徴とする請求項1に記載のリニア電気機械システム。
【請求項15】
前記電子回路または前記回路群の1つまたは複数は、前記スイッチング装置によって制御されて、前記トランスレータのストロークの一部において電力を送信し、前記ストロークの別の部分において起電力を送信することを特徴とする請求項2に記載のリニア電気機械システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、概して従来の燃焼機関のピストンまたはリニア電気機械(LEM)のトランスレータまたはリニア熱流体システム(LTFS)のピストンとして作用し得るフリーピストンムーバ(FPM)に関する。
【0002】
さらに、少なくとも1つのLEMおよびLTFSを組み込むことによって形成されるリニアパワーシステム(LPS)は、フリーピストンリニアジェネレータ(FPLG)、リニアモータ往復運動圧縮機(LMRC)、フリーピストンガス膨張機(FPGE)、リニアモータ往復運動ポンプ(LMRP)もしくはリニアモータ往復運動アクチュエータ(LMRA)、または他のタイプのリニアパワーシステム製品内に組み込まれてもよい。
【0003】
これらの種々のリニアパワーシステム(LPS)製品には、1つまたは複数の周知のFPMが組み込まれている。それぞれの製品では、リニア電気機械システムおよびリニア熱流体システムがあり、これらはフリーピストンムーバの直線運動によって連結される。
【0004】
これら製品の最適なシステム性能を得るには、典型的には、効率、再現性、精度、信頼性、同期(複数のFPMが組み込まれたリニアパワーシステム製品の場合)を組み合わせる必要がある。最適なシステム性能は、多くの場合、FPMの動作の正確な制御に左右される。
【0005】
FPMが組み込まれた製品の獲得可能な最大市場規模(TAM)は、1000億ドル/年、2億ユニット/年を超える。この市場規模における最大の用途は、従来の内燃機関を自動車や分散型発電用途から置き換え可能なFPLG製品に関するものである。
【0006】
今日まで、ピストン運動を用いて最適なシステム性能を達成する既存の制御方法および制御システムが不十分であり、FPMが組み込まれた製品の商業的利用は、依然として限定的な利用に留まっている。本発明の技術分野の専門家によれば、FPMが組み込まれた製品のピストン運動の制御は、FPMが組み込まれた製品の汎用性に対する最も重大な未解決の課題であると認識されている。
【0007】
リニア電気機械システム(LEMS)内のFPMの制御のために採用される制御方法に加えて、先行技術における以下の2つのさらなる制限が、LEMを利用する機会を制限し、特に、作業チャンバ内の反応における適応およびLEMの制御可能な運動、ならびに結果として生じる圧縮比をサポートする機会を制限する。
1.典型的には、任意の固定リンク機構によって機械的に切り離され得るFPMの位置および速度を含むが、それらに限定されない、運動のパラメータの検知、また、TPMが移動するシリンダの熱力学的環境、また、その作業チャンバ。
2.最適化された燃焼開始(火花点火を含むが、これに限定されない)および作業チャンバ内の燃料混合物の効率的な反応。
【0008】
本発明によれば、少なくとも第1のステータ電子回路および第2のステータ電子回路または回路群を有するステータと、前記ステータに対して往復動作可能なフリーピストンムーバであって、ピストン表面と、前記ステータ電子回路または前記回路群の1つまたは複数によって前記フリーピストンムーバに電磁力を与えるトランスレータと、1つまたは複数のトランスレータ電子回路(EElecCct)と、を有するフリーピストンムーバと、前記第1のステータ電子回路および前記第2のステータ電子回路または前記回路群のそれぞれに対するスイッチング装置であって、前記第1のステータ電子回路および前記第2
のステータ電子回路または前記回路群のそれぞれにおける電流が独立して制御可能である、スイッチング装置と、を有し、前記トランスレータ電子回路の少なくとも1つは、前記フリーピストンムーバのストロークの少なくとも一部において、独立して制御された前記ステータ電子回路または前記回路群の少なくとも1つから電力を受信する、ことを特徴とするリニア電気機械システムが提供される。以下、添付の図面を参照しながら本発明の例について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】断面AAおよび運動軸を示すLPSの一例の外観図である。
【
図2】LEMSおよびLTFSのFPMと主な特徴を示す断面AAである。
【
図4】断面AAの詳細を示す追加の電源送受信手段、チャンバセンサ手段、燃焼開始手段である。
【
図6】FPMがストロークを通って移動するときにFPMの例示的な位置を示す断面AAの簡略化した回転図である。
【
図7】アクティブスケール、ハウジング内の関連センサ、ハウジング側の制御電子機器/サブシステム/デバイスを示す断面AAである。
【
図8】簡略化した第2のピストンおよび共通の作業チャンバを追加するように拡張された断面AAである。
【
図9】吸気開口および排気開口を含む
図8のさらなる詳細を示す図である。
【
図10】第2のピストンが機械的仕事の抽出のためにクランクシャフトに接続されることを示す図である。
【
図11】共通の作業チャンバを共有する2つのFPMを有する断面AAである。
【
図12】埋め込み型の電子回路の構成の代替的な概略図である。
【
図13】BVが経過時間であり、CVが位置を示すFPMのストロークを示す図である。
【詳細な説明】
【0010】
図1は、リニアパワーシステム(Linear Power System;LPS)1の一例である機械
的アセンブリの簡略化された外観図であり、フリーピストンムーバ(Free Piston Mover
;FPM)の運動軸2および切断面AAを示している。
【0011】
図2は、
図1に示すLPSの例におけるリニア電気機械システム(Linear Electrical Mechanical System;LEMS)およびリニア熱流体システム(Linear Thermofluidic System;LTFS)のフリーピストンムーバ(FPM)3および主張な特徴を示す平面AAによる断面図であり、LTFSの作業チャンバ(Working Chamber)4を含む。なお、種
々の代替のLPSの実装形態が可能であり、それぞれは少なくとも1つのLEMSと1つのLTFSを備える。LEMSは、スタータ5と、作業シリンダ8を画定するLPSハウジング6とを含む。この例におけるLPSハウジングの端部は、ハウジング端部部材6a、6bによって閉じられている。FPM3は、LEMSの変換部として機能する。図の例では、FPM3は、一端3aが開放されており、LPSハウジング6の周囲のシリンダ8内を移動しながら、固定された中央コア7上を通過できるようになっている。この例では、FPM3は一端3bで閉鎖され、その結果、作業チャンバ4がシリンダ8内に、かつLPSハウジング端6aのシリンダ端壁8aとFPM3の閉鎖端3bとの間に形成される。作業チャンバに面する閉鎖端3bは、ピストンクラウン24とも称され、単純化のために
図2に示すFPM3のメインバルクの一部、またはFPM3に取り付けられる別個の取り付け部品もしくはサブアセンブリであってもよい。
【0012】
フリービストンリニアジェネレータ(Free Piston Linear Generator。フリーピストン
エンジン(Free Piston Engine)としても知られる)またはフリーピストンガスエキスパンダ(Free Piston Gas Expander)などのLPS用途では、作業チャンバ4は、燃焼によって、高圧ガスの導入により、あるいは相変化により、FPM3の閉鎖端3bに力を加えるために使用されうる。説明の明確化のため、これらのタイプのLPS(例えば、燃料および空気の供給、弁および点火部材)内に含まれる、関連する構成要素は図示していない。
【0013】
図1および
図2に示す例示的な実施形態では、2つのさらなる容積4a、4bが、中央コア7とFPM3との間であり、かつFPM3aの開放端に画定される。それぞれは、バウンスチャンバとして機能し、バウンスチャンバ内ではFPM3の移動によって引き起こされるチャンバ4a、4b内の圧力の変化が、FPM3の運動エネルギーとバウンスチャンバ4a、4b内の圧縮ガスに蓄えられたエネルギーとの間のエネルギーの交換をもたらす。
【0014】
FPM3は、スタータ5と相互作用してスタータ5内を流れる電流に影響し、FPM3に作用する線形電磁力を生成または変化させる1つ以上の磁気透過性を有する要素または磁化された要素(図示せず)を含むように形成される。
【0015】
LPS1がリニアモータまたはアクチュエータの一種として機能する場合、スタータ5に入力される電力がFPM3の運動を引き起こす。LPS1がリニアジェネレータの一種として機能する場合、スタータ5から出力される電力がFPM3の運動によって生成される。作業チャンバ4が燃料エネルギーをFPM3に作用する機械的仕事に変換する燃焼チャンバとして機能する場合、LPSの性能は、燃焼反応のタイミング、速度および完全性、ならびにこの反応に続く作業流体内に残る排気物に依存する。これらの特性によるLPSのシステム性能は、FPM3の経時的なリニア運動プロファイルに大きく依存する。
【0016】
図3は、
図1および
図2のLPSの別の拡大図を示す。
図2から省略された磁気透過性を有する要素または磁化された要素20は、ステータ5と位置合わせされて示されている。この例における要素20aおよび20bは、磁気透過性材料の同じリングを通る断面を示すが、要素20aおよび20bは、代替として別個の要素であってもよい。同様に、この例では、要素20cおよび20dは、磁気透過性を有するリングまたは永久磁性材料からなるリングであるが、代替として別個の要素であってもよい。要素20a/20bおよび要素20c/20dの材料が永久磁石材料である場合、これらは矢印で示すように異なる向きに磁化されてもよい。この矢印は、反対の極性であることを示すが、分極軸は任意の角度であってもよく、実際には、材料の磁気透過性を有する部分または磁化された部分の線に沿って180度未満、好ましくは90度未満の角度で回転してもよい。
【0017】
図3では、以下の説明のため、さらに作業チャンバに対向するFPM3の閉鎖端3bは、ピストンクラウン24とも称される。ピストンクラウン24は、FPM3のメインバルクの領域、またはFPM3に取り付けられる別個の取り付け部品もしくはサブアセンブリであってもよい。
【0018】
図3には、さらに電力受信手段21などのトランスレータ電子回路を示し、トランスレータ電子回路は、この例では運動軸2周りのコイルとしてFPM3内に形成されるか、あるいはFPM3に取り付けられ、要素21a、21bは、少なくとも1巻分の導体を有する同じコイルを通るセクションを表す。少なくとも1つの電力受信手段は、LPSハウジング6内に配置された少なくとも1つの電力送信手段23と協働するように配置され、これによりよそ23aおよび23bは、少なくとも1巻分の導体を有する同じコイルを通る部分を表す。FPM3は、LPS運動軸2に沿った位置で示され、電力受信手段21および電力送信手段23は、電力の伝達が変圧器内にあるように位置合わせされている。電力
受信手段21および電力送信手段23では、運動軸に沿ったFPMの位置に応じて、数ストロークまたは全ストローク中に、位置合わせから外れて電力を交換できない期間がある、しかし代替構成では、設計の幾何学的形状およびFPM運動範囲により、連続的な電力交換が容易になる。
【0019】
また、
図3は、FPMに搭載されたエネルギー貯蔵手段22を示す。エネルギー貯蔵手段22は、例えば、キャパシタ、スーパーキャパシタ(「スーパーキャップ」としても知られる)、またはバッテリ、またはバッテリの1つ以上のセルであってもよいが、それらに限定されない。
【0020】
エネルギー貯蔵手段22は、特に電力受信手段21が電力送信手段23に現在結合されていない場合に、FPM3がそのストローク全体にわたって電力を利用可能にしながら移動するように配置され、これにより車載燃焼開始手段およびEElecCctを含むセンサに電力を利用可能にする。さらに、エネルギー貯蔵手段は、EElecCct、特に、これに限定されないが燃焼開始手段(図示せず)に、高レベルの電流を提供することが必要となる場合がある。
【0021】
LPSの運動軸に沿ったFPM3の位置により、エネルギー伝送手段とエネルギー受信手段とが整列すると、結合された電力により、固定回路がトランスレータに提供され、それによって、オンボード回路に通電し、および/またはエネルギー貯蔵手段22に貯蔵さ
れる。
【0022】
図4は、コイルスイッチング手段36を有する
図3の電力送信手段23を示し、ピストンクラウン要素26内に凹設されたチャンバセンサ27cおよび燃焼開始手段25も示す。センサ27cおよび燃焼開始手段25は、本発明による電力結合手段によって電力供給される。燃焼開始手段25は、FPM3のピストンクラウン22内またはその上に配置することができる。本明細書の定義部分で説明するように、種々の燃焼開始手段25が存在する。この例では、燃焼開始手段25は、J型スパークプラグであるスパーク装置として示されており、ピストンクラウン24にねじ込まれるかまたは締め付けられる。さらに、スパーク装置は、ピストンクラウン24のスキッシュボウル26の要素内に示されている。燃焼開始手段25は、ここでは図示しないエネルギー貯蔵手段22を含み得る他のEElecCctに接続される。2つの可能な代替の構成例について、
図12の概略図を参照しながら説明する。
【0023】
図4はまた、FPM3内またはその上の任意の位置に設けられるセンサ手段27の配置を示す。図では、センサ手段の3つの例示的な位置27a、27b、27cを示す。
【0024】
FPMのセンサ手段27aは、バウンスチャンバ4bに近い比較的低い温度環境に置かれ、燃焼や他の熱膨張現象により局所的な加熱が生じる可能性がある作業チャンバ4に隣接するピストンクラウン24から最も遠い位置に配置される。FPMのセンサ手段27aは、これに限定されないが単軸または多軸加速度センサを含むことができ、この領域は、例えば、デジタルおよびアナログ回路、マイクロプロセッサ、メモリ、エネルギー貯蔵手段、データ送信機、データ受信機、ならびにFPM3の周りに柔軟に展開される他のEElecCctを含む、他のEElecCctの展開に好ましい領域である。
【0025】
ここで、EElecCctのための位置27aまたは別の位置は、データ送信機および/またはデータ受信機であり、FPM3上の協働回路とLPSハウジング6またはLPSハウジング端部6a、6bとの間の通信、好ましくはシリアルデータ通信をサポートする。電力送信手段および電力受信手段について説明したように、これらの通信は、好ましくは、FPMとLPSハウジングとの相対運動を踏まえ、無線である。データ送信機および
データ受信機のいくつかの態様は、電力送信手段および電力受信手段のいくつかの態様の第2の機能であり、例えば、それらは、運動軸2に沿ったLPMの運動の少なくとも一部に対して位置合わせされる共通の結合コイルを共有する。データ送信機およびデータ受信機の定義で説明されるように、LPSハウジングとFPMとの間のデータ通信のために採用される種々の代替の実装アプローチが存在し、そのいくつかは、運動軸に対して長手方向に平行に位置合わせされ、これにより、例えば、1つまたは他のバウンスチャンバ4aまたは4bにわたって延長された視線位置合わせを利用できる。
【0026】
作業チャンバ4に近いFPMのセンサ手段27bは、ピストン温度センサ、および、特に機能上の理由で、例えば、いくつかの種類の燃焼開始手段25を供給する高電流回路のための回路経路長を最小限に抑えるために、この領域内に配置すべき他のセンサを含むことができるが、これに限定されない。
【0027】
同様に、LTFSのセンサ手段27cは、例えば、これに限定されないが作業チャンババルクガス圧力センサ、ガス温度センサ等、作業チャンバ4に近いFPMの最も厳しい条件の環境となる領域内に展開されてもよい。
【0028】
【0029】
図6A、
図6B、
図6Cは、FPMがストロークを通って移動するときの例示的な位置にFPMを有する断面AAの回転図である。このストロークの間、電力受信コイル21a/21bは、
図6Bではステータ5に入り、
図6Cではステータ5内に留まる。
【0030】
図7は、アクティブスケール40a、ハウジング39内の関連センサ、およびハウジング側の制御電子機器/サブシステム/デバイス37の断面AAを示す。
【0031】
図8は、作業チャンバ4が第1のFPM3および第2のピストン28に作用する共通の作業チャンバである燃焼チャンバとなる、上記の図ではLTFSであるLPSを示す。第2のピストン28は、機械的仕事を抽出するために機械的に接続されてもよく、または第2のFPMを形成するトランスレータに結合されてもよい。この対向ピストンエンジン(Opposing Piston Engine;OPE)構成は、両方のムーバが共通のLPSハウジング6および作業シリンダ8を共有するという利点を有する。この効果的に制御され、良好に設計されたOPEは、低振動かつ低雑音であるという利点を有する。
【0032】
図9は、さらに吸気開口29および排気開口30を示す
図8のLTFSを示す。燃料は、燃料噴射器または弁付きポートであり、ピストンLEM3に向かって配置され、吸気開口29を介して、作業チャンバに流入する。燃料の膨張反応に続いて、結果として生じる燃焼ガスは、排気開口30、例えば弁付き排気ポートを介して排出される。したがって、燃料混合物および排気ガスの流れは、作業チャンバのガス流31を表す矢印に示される通りである。したがって、熱流体システムサイクルが繰り返されると、冷たい燃料が、第1のFPM3の近くに移動して、特にピストンクラウン24に対して冷却効果を有し、追加で、ピストンクラウン24またはFPM3の上に配置されるあるいは埋め込まれるセンサ手段27および/または燃焼開始手段25に対して冷却効果を有する。一方、第2のピストン28は、高温ガスが放出される排気開口に隣接する。したがって、燃焼反応の高温および図に示す作業チャンバのガス流31により、FPM3のピストンクラウン24は、より高温の潜在的には極端な温度にさらされる第2のピストン28と比較して、比較的低温に保たれる。この差により、吸気開口の側で冷却器FPM3にEElecCctを好適に展開することができる。
【0033】
図10は、機械的仕事を抽出するための機械的ピストンロッド32を有する
図9のLTFSを示す。図では、ピストンロッド32はクランクシャフト33に連結されているが、用途に応じて、フライホイールもしくは他の回転機械装置に対する線形変位動作または連結をなどの態様を含むがこれらに限定されず、ピストンロッドなどのリンク機構を介して仕事を抽出するなどの方法であってもよい。
【0034】
図11は、第2のピストン28が第2のFPM34の一部である
図9のLTFSを示す。第1のFPM3は、吸気開口29(図示せず)への近接および上記の燃料噴射の冷却効果により、共通の作業チャンバ4の低温側に設けられ、これにより燃焼開始手段25は、FPM上に存在する場合、1つの対向するFPM上でのみ必要とされる他のEElecCctとともにFPM3上に優先的に配置される。
【0035】
また、第2のFPM34は、以下のFPM3の一部またはすべての要素を含むがこれらに限定されない。
・固定された中心コア
・独立したバウンスチャンバ
・LPSハウジング6内の独立したステータ
・FPM34の動作の独立した変調および電気エネルギー抽出を行う、FPM34内の磁気透過性要素
・FPM34上のセンサ手段を含む、EElecCct供給用の電力送信手段および電力受信手段
・データ送信機および/またはデータ受信機
【0036】
図12において、変圧器T1は、ステータ回路35が電力受信手段21と位置合わせされたときに、FPMのストロークの少なくとも一部分として、2つの部分で形成される。ここでは、変圧器T1の一次コイルおよび二次コイルとして示されており、スイッチ36、例えばHブリッジは、二次側コイルに変換される一次ステータ回路35内の電流を切り替えて交流電流を与え、この交流電流は、簡略化のために半波整流器として示されているが、好ましくは全波整流器として実装されている整流器によって直流電源に整流することができる。整流された出力は、エネルギー貯蔵手段22に供給される。変圧器T1は、DC電圧に整流されて、オプションでFPMのEElecCctに電圧制御を提供するような電力を供給する高電圧変圧器である必要はない。図において破線は、固定ハウジングおよびFPMとの間のエアギャップ41を示す。
【0037】
エネルギー貯蔵手段22は、変圧器T1が断続的に動作するFPM上のEElecCct用の電源を維持し、断続的な高電流需要のためのEElecCct用の低インピーダンス電流源を提供するための電荷リザーバともなる。エネルギー貯蔵手段22は、キャパシタとして示されているが、代わりにあるいは部分的に、バッテリ、キャパシタ、またはスーパーキャパシタ、あるいは充電制御および/または電圧調整を伴う同様のデバイスの組み合わせによって提供されてもよい。
【0038】
FPMのEElecCctは、組み込みファームウェアを実行し、1つ以上のセンサ27および/または固定された筐体回路へのデータ通信を管理する、例えば、論理、アナログ電子機器、またはマイクロコントローラ回路等のコントローラ手段38を含む。データ通信手段42は、固定コントローラ37およびFPMコントローラ38との間で通信を提供する受信機、送信機またはトランシーバ42aおよび42bから形成される。受信機、送信機またはトランシーバ42aおよび42bは、無線周波数ポイントツーポイント通信経路として図示されるが、この代わりに、誘導結合デバイスまたは磁気結合デバイスまたは光結合デバイスであってもよい。さらに、データ通信手段42aおよび/または42bは、電力送信機のステータ回路35および/または電力受信手段21から独立していても
よいし、それらと組み合わされていてもよい。
【0039】
センサ27は、
図4に関連して上述したものであり、アクティブスケール40は、
図7に関連して上述したものである。
【0040】
アクティブスケールセンサ40は、回路要素、例えば、プリント回路基板またはフレキシブル回路またはグラフェン上のプリントパターンを備え、パターン化されるか、または信号を搬送する接続のマトリクスに接続される。また、アクティブスケールセンサ40は、磁気透過性材料または構成要素のネットワークなどの電気的特性が変化する材料を有し、そのいずれも、または組み合わせて、その長さに沿って変動する電場および/または磁場を発生させるコントローラ38の制御下で、一定または変動様式で通電されてもよい。アクティブスケール40は、好ましくは、FPM3の外面上または外面内に配置されて、変動する電場および/または磁場が、スケールセンサ39、例えば固定ハウジング内のホール効果デバイスを横断し、コントローラ37に接続されるかまたは統合されるように配向される。ここで説明する構成によれば、コントローラ37は、FPMの動作を監視および検出し、これにより、
図13を参照しながら説明する燃焼開始手段25を採用することを含む、燃焼開始のタイミングなど、これに限定されないFPMの動作および現象を同期制御することができる。
【0041】
本明細書の説明では、FPM3のEElecCctへのパワーカップリング(電力結合)により、2つの新規かつ有益な動作検知が実現する。
1.アクティブスケールを使用することで、機械的結合を伴わずにFPMのストロークのある点において、またはある運動範囲にわたって位置検出を行うことができ、FPM3の容積内において空間的に効率的であり、機械的に短いLPS2が提供される。
2.加速度計27nを使用することで、特にFPMのストロークの終わり近くにおける低速の動き検出を提供する。波形データの二重積分と、アクティブスケールを含むがこれに限定されないインデックス位置センサへの参照とによって、絶対位置が特定できる。この場合も、機械的結合を必要とせず、FPM3の容積内において空間的に効率的であり、機械的に短いLPS2が提供される。
【0042】
図13Aおよび
図13Bは、EElecCctの全体または一部として設けられる電気回路の一例の簡略化された概略図を示す。これらは例示的な実装形態であり、上記の図に関連して説明したように、LPS2の1つまたは複数のFPM3上で使用するために、部分的にまたは全体的に、あるいは本明細書で開示されていない他の回路と組み合わせて実装することが可能である。
【0043】
説明の便宜上、EElecCctは、機能によって以下のように分類できる。
・
図13:高電圧および高電流を必要とする燃焼開始手段、例えばスパーク装置25
・
図12:低電力アナログおよびデジタル回路ならびにセンサ手段を含むその他の電子機器
【0044】
説明を簡略化するため、
図12、
図13A、
図13Bでは、いくつかの低電圧制御回路の要素が重複する場合があり、これらは、1つの実施形態において効率のために組み合わせることができる。
【0045】
図13Aおよび
図13Bは、高電圧スパーク装置として示される燃焼開始手段25を介して燃焼を開始するための代替の回路構成を示す。
図13Aおよび
図13Bのそれぞれにおいて、破線は、固定されたハウジングとFPMとの間のエアギャップ41を示す。
【0046】
図13Aおよび
図13Bにおいては、電力送信手段である固定ステータ回路35がFP
Mと共に移動する電力受信手段21と位置合わせされると、変圧器T1がFPMのストロークの少なくとも一部に対して形成される。これらは変圧器T1の一次コイルおよび二次コイルとして表される。
【0047】
スイッチ36は、Hブリッジ、またはFET、リレー、TRIAC、その他のトランジスタデバイスの1つ以上であってもよい。
【0048】
図13Aと
図13Bとの間の構成の主な違いは、
図13Aでは、電力受信手段21に伝達される電力が、さらなるスイッチングまたはインテリジェンスなしに燃焼開始手段25に直接印加されることであり、一方、
図13Bでは、エネルギーは、電力受信手段21に伝達され、エネルギー貯蔵手段22貯蔵された後、スイッチングされて、燃焼開始手段25に印加される高電圧に変換されることである。ここで、動作および得られる利点の詳細について説明する。
【0049】
図13Aは、FPM、例えば図示のスパーク装置に燃焼開始手段25を提供する概略図である。要素T1は、比較的少ない巻き数のコイルなど、ステータ領域における一次回路35と、より多くの巻数のコイルなど、二次電力受信手段21から形成される高電圧変圧器として示される。そして、1次側に大きな直流電流が流れると、高電圧が二次側に発生し、この高電圧がスパーク装置等の燃焼開始手段25に印加され、この高電位差(potential difference;p.d.)によりスパークが発生する。
【0050】
この代わりに、
図13Bでは、エネルギー貯蔵手段22が、
図12を参照しながら説明した方法で変圧器T1の動作によって充電される。また、エネルギー貯蔵手段22は、高電圧変圧器T2の近くのFPM上に位置する低インピーダンス源となる。コントローラ38は、スイッチング回路、例えばFET、リレー、TRIAC、その他のトランジスタを制御するが、これらに限定されない。この制御により、エネルギー貯蔵手段22を少なくとも部分的に放電して、高圧トランスT2の一次側に電流を流し、二次側に高電圧を発生させ、スパーク装置として示される燃焼開始手段25に印加されることで、高圧電位差(p.d.)によりスパークが発生する。
【0051】
図13Bの構成の利点は、説明の明確化のために不図示のセンサ27と接続されたコントローラ38と、動的制御のタイミングアルゴリズムとによって、T2の一次コイルを単純に切り替えるか、または例えばパルス幅変調(PWM)によって変調して、一次側電流に対する制御を行ない、二次側および燃焼開始手段25における放電電流を制御することができることである。追加の電流感知手段を回路に設けて、この強化された動作を支援することができる。このように改善された放電制御により、燃焼が改善され、システムの効率化が実現する。
【0052】
図13Aの構成に対して
図13Bの構成では、以下の利点が得られる。
・
図13Bでは、高電圧変圧器T2に関連付けられた高電圧および高電流スイッチング回路が、すべてFPM上に配置することができるため、これらは小さく(より短い相互接続長さおよび回路ループ面積)、より低いインピーダンスであり、一次巻線と二次巻線との間で可能な緊密な結合により、より効率化を図ることができ、電磁適合性が改善され、燃焼開始手段25の両端の電圧のより急速な変化率が実現する。一方、
図13Aでは、高電圧変圧器は、固定ハウジング上の一次コイルとFPM上の二次コイルとの間に形成され、これらは互いに相対的に移動するため、一貫性がなく、結合性が低下する。
・
図13Bのコントローラ38のトリガ制御は、現実的には
図13Aの回路の唯一の選択肢である、各燃焼開始手段の点火において単純なオン/オフとすることができるが、
図13Bの電流プロファイリングの回路は、いわゆるa.c.トリガによるものであり、トリガ制御は、アナログであってもよく、好ましくは、例えば定義されたデューティサイクル
でPWMに対してレシオメトリックにパルス化されてもよい。さらなる改良では、高電圧変圧器T2の一次コイル電流は、一次コイル内の電流の閉ループ制御を可能にし、これにより燃焼開始手段25で見られる電位差p.d.を制御する、直列電流検出抵抗器(図示せず)によって検出されてもよい。
・高電圧p.d.が、スパークギャップまたは同様の電極などの燃焼開始手段25に印加されると、結果として生じる電界を用いて燃料混合物に応力を加えて、電流を流すことができ、この電流は、説明の明確化のために図示されていない検出回路27を使用して燃料混合物の伝導を特定することができる。センサ出力は、二次側電流のための制御ループに含まれてもよく、または実際に、スパークが発生するか否かにかかわらず、混合物の反応または燃焼をいつ開始するかを決定するために用いることができる。
・
図13Bは、スパーク装置の周囲に配置される燃焼開始手段を示すが、多くの点で、これらが電気的に最も厳しい条件下に置かれていることが明らかである。代替の燃焼開始手段は、典型的には、より低い電圧、より低い電流条件を有し、
図13Bの高電圧変圧器T2、例えば、これに限定されないが、イオン化電極、ヒータ、およびVCSELレーザダイオードを必要としない場合がある。
【0053】
本出願人は、本明細書に記載される個々の特徴および2つ以上の特徴の任意の組み合わせを開示し、そのような特徴または組み合わせは、そのような特徴または特徴の組み合わせが本明細書に開示される任意の問題を解決するかどうかに関わらず、当業者の一般的な知識に照らして、全体として本明細書の開示内容に基づいて実現可能であり、特許請求の範囲を限定するものでもない。また、本出願人は、本発明の態様が、それら個々の特徴または特徴の組み合わせからもたらされるものであってもよいことを示す。上記の説明を鑑みて、本発明の範囲内で種々の変更を加えることができることが当業者に自明である。
【国際調査報告】