(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】断熱構造及びその作製方法
(51)【国際特許分類】
F01N 3/28 20060101AFI20230213BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
F01N3/28 311N
B01D53/94 222
B01D53/94 ZAB
B01D53/94 245
B01D53/94 280
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022536967
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(85)【翻訳文提出日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 IB2020061843
(87)【国際公開番号】W WO2021124057
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ディエツ,ピーター ティー.
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
【Fターム(参考)】
3G091BA04
3G091GB01Z
3G091GB02Z
3G091GB03Z
3G091HA26
4D148AA06
4D148AA13
4D148AA18
4D148AB01
4D148AB02
4D148AB08
4D148BA07Y
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4D148BA30Y
4D148BA31Y
4D148BA32Y
4D148BA33Y
(57)【要約】
第1の部材と、第2の部材と、マット材料と、無機接着剤と、を含む断熱構造。第1の部材は、温度が場合により200℃以上に達する第1の表面を備える。第2の部材は、第1の部材の第1の表面に対向して配設された第2の表面を備える。マット材料は、第1の部材と第2の部材との間に配設されている。領域は、第1の表面及び第2の表面のうちの少なくとも一方の上に形成され、領域は、無機接着剤を含む。無機接着剤は、加熱されると接着性を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度が場合により200℃以上に達する第1の表面を備える第1の部材と、
前記第1の部材の前記第1の表面に対向して配設された第2の表面を備える第2の部材と、
前記第1の部材と前記第2の部材との間に配設されたマット材料と、
前記第1の表面及び前記第2の表面のうちの少なくとも一方の上に形成された領域であって、前記領域が、無機接着剤を含む、領域と、を備え、
前記無機接着剤が、加熱されると接着性を示す、断熱構造。
【請求項2】
前記無機接着剤が、実質的に乾燥している、請求項1に記載の断熱構造。
【請求項3】
前記無機接着剤を含有する前記領域が、前記第1の表面及び前記第2の表面の両方の上に形成される、請求項1又は2に記載の断熱構造。
【請求項4】
前記無機接着剤が、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びリン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの塩を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の断熱構造。
【請求項5】
前記無機接着剤を含有する前記領域が、無機コロイド粒子を含有する、請求項4に記載の断熱構造。
【請求項6】
前記無機接着剤を600℃の温度条件下で1時間加熱した後、固定領域が、前記第1の部材の前記第1の表面と前記マット材料との間に、前記マット材料と前記第2の部材の前記第2の表面との間に、又はその両方に形成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の断熱構造。
【請求項7】
前記無機接着剤を少なくとも約100~150℃の温度条件下で少なくとも約10分間加熱した後、固定領域が、前記第1の部材の前記第1の表面と前記マット材料との間に、前記マット材料と前記第2の部材の前記第2の表面との間に、又はその両方に形成される、請求項1~6のいずれか一項に記載の断熱構造。
【請求項8】
前記塩の含有量が、前記無機接着剤を含有する前記領域において1g/m
2~400g/m
2である、請求項4又は5に記載の断熱構造。
【請求項9】
前記断熱構造が汚染制御装置であり、前記第1の部材が汚染制御要素であり、前記第2の部材がケーシングであり、前記汚染制御要素が前記ケーシング内に設けられ、前記マット材料が前記ケーシングと前記汚染制御要素との間に配設されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の断熱構造。
【請求項10】
前記無機接着剤を600℃の温度条件下で1時間加熱した後、固定領域が、前記ケーシングの内面と前記マット材料の外面との間に、前記マット材料の内面と前記汚染制御要素の外面との間に、又はその両方に形成される、請求項9に記載の断熱構造。
【請求項11】
前記無機接着剤を少なくとも約100~150℃の温度条件下で少なくとも約10分間加熱した後、固定領域が、前記ケーシングの内面と前記マット材料の外面との間に、前記マット材料の内面と前記汚染制御要素の外面との間に、又はその両方に形成される、請求項9又は10に記載の断熱構造。
【請求項12】
断熱構造を製造する方法であって、
温度が場合により200℃以上に達する第1の表面を備える第1の部材を提供することと、
前記第1の部材の前記第1の表面に対向して配設された第2の表面を備える第2の部材を提供することと、
無機接着剤を含有する溶液を、前記第1の表面及び前記第2の表面のうちの少なくとも一方の少なくとも一部の上にコーティングすることと、
前記溶液を乾燥させて、前記第1の表面及び前記第2の表面のうちの少なくとも一方の少なくとも一部の上に、前記無機接着剤を実質的に乾燥させ、結合させることと、を含む、方法。
【請求項13】
前記無機接着剤が、加熱されると接着性を示す、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の部材の前記第1の表面と前記第2の部材の前記第2の表面との間にマット材料を配設し、前記マット材料を前記無機接着剤の少なくとも一部に接触させることを更に含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記無機接着剤を加熱して、前記マット材料を前記第1の表面及び前記第2の表面のうちの少なくとも一方に結合させることを更に含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、断熱構造(例えば、汚染制御装置)及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジンからの排気ガスは、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)などを含有する。ディーゼルエンジンからの排気ガスは、煤などの微粒子を更に含む。これらを除去する手段として、セラミック触媒コンバータ又はディーゼル微粒子フィルタ(DPF)を使用する排気ガス浄化システムが知られている。加えて、ガソリン微粒子フィルタ(GPF)の実装も検討されている。これらのデバイスは全般に、汚染制御装置と呼ばれる。
【0003】
概して、汚染制御装置(例えば、セラミック触媒コンバータ)は、汚染制御要素(例えば、セラミック製のハニカム形状の触媒担体)と、汚染制御要素を包み込む金属製のケーシングと、汚染制御要素の外周面とケーシングの内面との間の隙間に充填された保持材料とを含む。保持材料は、ケーシング内に汚染制御要素を保持して、汚染制御要素に衝撃及び振動などによる機械的衝撃が偶発的に加わることを防止する。保持材料は、汚染制御要素がケーシング内で移動及び破壊することを防止し、汚染制御要素の動作寿命にわたって望ましい効果を提供する。この種の保持材料は、一般に実装用材料と呼ばれる。このような保持材料は、概して、単一層又は複数の層を含むマット状材料であり、汚染制御要素の周囲に巻き付けられることによって使用されている。
【0004】
保持材料は、概して、優れた断熱性及び耐熱性を達成する観点から、無機繊維などの無機材料を主成分として含む。このような保持材料(実装用材料)は、例えば、特許文献特開昭第57-61686(A)号、特開2002-66331(A)号、及び特開2006-223920(A)号に記載されている。
【発明の概要】
【0005】
保持材料は、汚染制御装置のケーシング内に汚染制御要素を実装する技術分野では、主に保持材料の圧縮反発力及び摩擦力によって使用中の位置のずれを防止するように設計されている。ほとんどのそのような保持材料は、ケーシング又は汚染制御要素の一方又は両方と接触する表面で、600℃で0.4~0.5の範囲の摩擦係数を示す。すなわち、保持材料は、ケーシング内の汚染制御要素と一緒に封入された後に、汚染制御要素が所定の位置から移動しないように、保持材料が接触している他の部材の表面(すなわち、ケーシングの内面及び/又は汚染制御要素の外面)に対する圧縮反発力によって、汚染制御要素を保持する。
【0006】
本開示の目的は、加熱環境下で使用される断熱構造を提供することである。断熱構造は、第1の部材と第2の部材とを備え、マット材料は、第1の部材と第2の部材との間に配設されて、一方の部材を他方の部材から断熱する。無機接着剤は、加熱環境における構造の使用中のマット材料及び部材の一方又は両方の相対的な位置ずれを抑制するために使用される。本開示の別の目的は、そのような断熱構造を製造する方法を提供することである。本開示の追加の目的は、そのような構造(例えば、汚染制御装置)の1つ以上の使用を提供することである。
【0007】
本開示の一態様は、断熱構造に関する。断熱構造は、第1の部材と、第2の部材と、マット材料と、無機接着剤と、を含む。第1の部材は、温度が場合により200℃以上に達する第1の表面を備える。第2の部材は、第1の部材の第1の表面に対向して配設された第2の表面を備える。マット材料は、第1の部材と第2の部材との間に配設されている。領域は、第1の表面及び第2の表面のうちの少なくとも一方の上に形成され、領域は、無機接着剤を含む。無機接着剤は、加熱されると接着性を示す。
【0008】
本開示の別の態様は、汚染制御装置の形態の断熱構造に関する。そのような断熱構造では、第1の部材が汚染制御要素であり、第2の部材がケーシングであり、汚染制御要素がケーシング内に設けられ、マット材料がケーシングと汚染制御要素との間に配設されている。
【0009】
本開示の追加の態様は、断熱構造を製造する方法に関する。本方法は、温度が場合により200℃以上に達する第1の表面を備える第1の部材を提供することと、第1の部材の第1の表面に対向して配設された第2の表面を備える第2の部材を提供することと、無機接着剤を含有する溶液を、第1の表面及び第2の表面のうちの少なくとも一方の少なくとも一部の上にコーティングすることと、溶液を乾燥させて、第1の表面及び第2の表面のうちの少なくとも一方の少なくとも一部の上に、無機接着剤を実質的に乾燥させ、結合させることと、を含む。
【0010】
本開示によれば、加熱環境下で使用される装置又は構造が提供され、その部材間の相対的な移動は、完全に防止又は著しく抑制され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示で使用され得るマット材料の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】本開示による汚染制御装置の一実施形態を概略的に示す断面図である。
【
図3】本開示による表面層を有する、
図2の汚染制御装置の汚染制御要素又はケーシングの概略断面図である。
【
図4】本開示による断熱構造を概略的に示す断面図である。
【
図5】マット材料の一部(無機接着剤としてリン酸アルミニウムを使用する)がケーシングの内面に固定又は結合された状態を示す写真である。
【
図6】マット材料の一部(無機接着剤としてケイ酸ナトリウムを使用する)が触媒担体の外面に固定又は結合された状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態を詳細に説明する。
【0013】
図1は、円形円筒又は楕円形円筒の外形を有する汚染制御要素30の周りに巻き付けられるように、また汚染制御要素30をケーシング20内に取り付け断熱するように構成されている(
図2を参照)マット材料の例を示す斜視図である。マット材料10は、汚染制御要素30の外周の長さに一致する長さを有する。マット材料10は、例えば、一端に凸部10aを有し、他方の端に凹部10bを有し、マット材料10が汚染制御要素30の周囲に巻かれたときに凸部又はトング部10aと凹部又は溝部10bとが互いに嵌合する形状を有している。また、L形状などの他の形状も可能であり、嵌合のための形状は特に限定されないことに留意されたい。
【0014】
図3に示すように、表面層5(無機接着剤を含有する領域)は、第1の部材30の第1の表面34(例えば、汚染制御要素30の外面)上に、第2の部材20の第2の表面24(例えば、汚染制御装置ケーシング20の内面)上に、又は表面34及び表面24の両方上に提供される。各表面層5は、約5~約15mmの範囲の厚さを有することが望ましい場合がある。マット材料10(例えば、
図2を参照)は、部材表面24と部材表面34との間に配設され、各接着剤表面層5は、マット材料と対応する部材との間に配設されている。マット材料10は、約3~約10μmの範囲の直径(例えば、平均直径)を有することができる無機繊維を含む。マット材料はまた、必要に応じて配合された他の構成要素も含んでもよい。各表面層5は、加熱されると接着性を示す無機接着剤と、任意に、必要に応じて配合された他の成分とを含む。表面層5は、その対応する部材の一方の表面にのみ存在することに留意されたい。あるいは、表面層5は、一方の表面又は両方の表面24及び34の領域の一部分又は一部のみに存在し得る。加えて、
図3は、表面層5が表面24及び表面34の一方又は両方に積層(laminated)されて接着されている状態を示しているが、各表面層5はまた、マット材料10の本体部にも接着及び含浸されている。
【0015】
上記のように、表面層5は、加熱されると接着性を示す無機接着剤を含有する。本明細書に記載の無機接着剤としては、加熱される際の他の部材との反応生成物の形成による接着のみならず、加熱されると表面層5の無機接着剤によって示される流動性、及びマット材料10又は他の部材の接触面への浸透により得られる固着効果(固定状態又は接着状態)による接着性も提供するものが挙げられる。接着性が示される温度は限定されないが、例えば200℃以上、300℃以上、又は600℃以上で、接着性が示されるる。例えば、マット材料10は、2つの部材間に挟み込まれた状態で配置され、600℃の温度条件下で1時間放置される。次いで、マット材料10は、他の部材との接着性を示す。接着性が示されていることは、加熱されたマット材料10が冷却された後に、マット材料10と、一方の部材若しくは又は他方の部材、又は両方の部材との間に固定領域又は接着領域が形成されるか否かを確認することによって、目視で判断することができる(
図5及び
図6を参照)。そのような接着性は、第1の部材及び第2の部材の一方又は両方と接触する表面で、600℃で0.75以上の摩擦係数を示すマット材料10をもたらし得る。
【0016】
無機接着剤は概ね、通常の温度で液体状態であるが、表面層5は、対応する構造部材(例えば、部材20又は30)上で実質的に乾燥している。本明細書において「実質的に乾燥している」とは、例えば、無機接着剤をコーティングした後の乾燥プロセスによって得られる乾燥状態を指し、このような乾燥状態では、マット材料10を120℃で30分加熱した後の質量損失率は、加熱前のマット材料10の質量に基づいて約5%以内である。表面層5は、実質的に乾燥しているため、断熱構造又はデバイスの構成要素(例えば、部材)を組み立てる際の作業性に優れるという利点を有する。
【0017】
上記無機接着剤は、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びリン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの塩である。アルカリ金属塩の具体例としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、及びケイ酸リチウムなどのアルカリ金属ケイ酸塩が挙げられる。アルカリ土類金属塩の具体例としては、ケイ酸マグネシウム及びケイ酸カルシウムなどのアルカリ土類金属ケイ酸塩が挙げられる。リン酸塩の具体例としては、リン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、及びリン酸カルシウムが挙げられる。これらの成分の1種は単独であってもよく、又は2種以上の組み合わせを使用してもよい。
【0018】
上記無機接着剤を含有する液体を構造部材20及び30のいずれかの表面にコーティングした後、乾燥プロセスによって表面層5を形成してもよい。表面層5中の無機接着剤(上記塩)の含有量は、例えば、1g/m2~50g/m2であり、2g/m2~40g/m2、又は5g/m2~30g/m2であってもよい。表面層5の無機接着剤の量は、マット材料10が所望の部材20及び/又は30に必要とされる接着性に応じて適宜設定することができる。
【0019】
表面層5は、無機コロイド粒子を含有してもよい。無機コロイド粒子を形成するために無機材料の各種微細粒子を用いることができるが、好ましい無機材料としては、金属酸化物、窒化物、炭化物、及び耐熱性を有する材料が挙げられる。例えば、好ましい例としては、シリカ、アルミナ、ムライト、ジルコニア、マグネシア、及びチタニアが挙げられるが、これらに限定されない。他の好適な材料の例としては、窒化ホウ素及び炭化ホウ素が挙げられる。これらの無機材料は、個々に、又はこれらの2つ以上の組み合わせで使用することができる。
【0020】
上述の無機コロイド粒子は、無機材料の種類及び所望の摩擦改善効果に従って様々な粒径で使用することができるが、約1~100nmの平均粒径を有することが概して好ましい。無機コロイド粒子が1nm未満の平均粒径を有する場合、このような無機コロイド粒子は、摩擦増加効果に寄与し得る摩擦層を形成することができない。対照的に、無機コロイド粒子が100nmを超える平均粒径を有する場合、粒子は、摩擦の増加に適切に寄与するには大きすぎるため、脱落し得る。無機コロイド粒子の平均粒径は、より好ましくは約10~80nmの範囲であり、最も好ましくは約20~50nmの範囲である。無機コロイド粒子に関して、国際公開第2007/030410号を参照することができ、その全体が、本明細書に参照により組み込まれる。
【0021】
無機接着剤はまた、粘土(カオリン)、ベーマイト、二酸化チタン、ヒュームドシリカ、ヒュームドアルミナ、沈降シリカ、ATH、並びに粘度及び吸収特性を改質するための他の適合性のある一般的なフィラーを含んでもよい。無機接着剤はまた、グリセリン、ソルビトール、他の糖アルコール、及びエチレングリコールなどの保湿剤を含有してもよい。これらの材料は、取り扱い特性を改善するために無機接着剤を可塑化するのに役立ち得る。適合性のある染料及び顔料もまた、無機接着剤の存在及び位置を特定するのを助けるために組み込まれてもよい。接着が望まれる表面を濡らすのを助けるために、適合性のある界面活性剤も含まれ得る。
【0022】
表面層5は、必要に応じて、無機繊維を更に含んでもよい。無機繊維の直径は、約1nm~約15nmであってもよく、これらは、例えば、約1nm以上、約2nm以上、又は約3nm以上であり、約15nm以下、約8nm以下、又は約5nm以下であってもよい。約1nm以上の直径を有する無機繊維は、1nmより細い無機繊維と比較して容易に利用可能であるという利点を有する。加えて、このような無機繊維は、汚染制御装置の製造中に、繊維片の飛散を抑制することができる傾向がある。一方、約15nm以下の直径を有する無機繊維は、約15nmよりも太い無機繊維と比較して、デバイスの製造中に繊維片の生成を抑制できる傾向がある。無機繊維の平均長さは、例えば、約500~約5000nmであり、約1000~約4000nm、又は約1400~約3000nmであってもよい。
【0023】
無機繊維の直径(平均直径)及び平均長さ(平均繊維長)は、例えば、顕微鏡画像(TEM画像、SEM画像など)からランダムにサンプリングされた50以上の繊維の太さ及び長さを測定し、その平均値を計算することによって決定することができる。無機繊維のアスペクト比は、平均長さの値を直径の値で割ることによって計算される。
【0024】
上記無機繊維の平均長さは、例えば、約60~約2000であってもよく、約100~約1500nm、又は約300~約800nmであってもよい。アスペクト比が約60以上の無機繊維は、アスペクト比が約60よりも小さい無機繊維と比較して、デバイスの製造中の繊維片の飛散を抑制できる傾向がある。一方、約2000以下のアスペクト比を有する無機繊維は、アスペクト比が約2000よりも大きい無機繊維と比較して容易に利用可能であるという利点がある。無機繊維に関しては、特開2017-210815号を参照することができる。
【0025】
マット材料の本体部は、主に無機繊維を構成することができる。マット材料の本体部を構成する無機繊維の具体例としては、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、ホウ素繊維等が挙げられ得るが、他の無機繊維を必要に応じて使用することができる。上記列挙のものから選択される1種類の無機繊維は、単独であってもよく、又は2種以上の組み合わせが使用されてもよい。また、無機繊維は複合繊維の形態で使用されてもよい。中でも特に好ましいのは、アルミナ繊維、シリカ繊維、及びアルミナ-シリカ繊維などのセラミック繊維である。1種類のセラミック繊維が単独で使用されてもよく、又は2種以上の組み合わせが使用されてもよい。また、セラミック繊維は複合繊維の形態で使用されてもよい。未膨張バーミキュライトなどの膨張材料もまた、本体部の総重量の約5~約50重量%の濃度でマット材料の本体部内に収容されてもよい。
【0026】
マット材料の本体部は、主に無機繊維を含み、任意の添加剤として有機結合剤を有する。マット材料を作製するための2つの代表的な製造方法、すなわち、乾式プロセス及び湿式プロセスが存在する。
【0027】
乾式プロセスでは、例えば、アルミナ繊維前駆体は、オキシ塩化アルミニウムなどのアルミナ源とシリカゾルなどのシリカ源と、ポリビニルアルコールなどの有機結合剤と、水との混合物を含むゾル-ゲルを紡糸することによって得られる。この後、アルミナ繊維前駆体をシート状に積層し(laminating)、次いで積層体(laminate)をニードルパンチし、約1000~1300℃の範囲の高温で焼成して本体部を得る。ニードルパンチ密度は、例えば、約1パンチ/cm2~50パンチ/cm2であり、この密度を変更することによって、マットの厚さ、バルク比重、及び強度を調整することができる。一方、湿式プロセスでは、出発物質としての無機繊維と有機結合剤とを、任意の添加剤と混合した後、無機繊維を開繊する工程、スラリーを調製する工程、抄造、成形型への加圧などを連続的に行うことによって、本体部が得られる。湿式プロセス(ウェットラミネーションプロセス(wet lamination process))についての詳細については、国際公開第2004/061279号及び米国特許第6,051,193号を参照することができ、それら全体が、本明細書に参照により組み込まれる。有機結合剤の種類及び使用量は特に限定されないことに留意されたい。例えば、ラテックスの形態で提供されるアクリル樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリウレタン樹脂、天然ゴム、ポリ酢酸ビニル樹脂などを有機結合剤として使用してもよい。あるいは、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルエステル樹脂などの熱可塑性樹脂を有機結合剤として使用してもよい。
【0028】
断熱構造の実施形態を製造する方法は、一方又は両方の部材20及び30を提供することと、無機接着剤を含有する液体を、第1の部材20の第1の表面24若しくは第2の部材30の第2の表面34のうちの少なくとも一方、又はその両方にコーティングすることと、上記のようにコーティングされた後、液体に熱を加えることと、を含む。上記の製造方法によれば、その少なくとも一方の表面の上に表面層5が形成された1つの又は各構造部材を得ることができる。
【0029】
マット材料が無機微細粒子をその中に含有する場合、工程(a)において、コロイド溶液の組成を調整して、微細粒子の含有量を本体部の総質量に基づいて約1~約10質量%とすることが好ましい場合がある。無機微細粒子の含有量が約1質量%以上であると、十分な表面圧が得られやすく、無機微細粒子の含有量が約10質量%以下である。接着剤がそれに接着されない場合、マット材料10は、部材の表面により容易に適合するのに十分な可撓性を有し得る(例えば、汚染制御要素の周囲に巻き付けられる)。
【0030】
コロイド溶液をコーディングした構造部材を乾燥させる工程は、必要に応じて行われることに留意されたい。また、コロイド溶液のこのような乾燥は、他の乾燥工程と共に行うことができることにも留意されたい。例えば、表面層5を形成する工程の後に実施される無機接着剤の乾燥工程と組み合わせることもできる。あるいは、このような工程は、他の溶液をコーティングした後、乾燥工程と組み合わせることもできる。コロイド溶液の乾燥は、例えば、約80~約250℃に設定された温風乾燥機で約10~約180分間行われる。
【0031】
表面層5の形成に用いられる液体は、必要に応じて配合される無機接着剤及び成分(無機繊維及び/又は無機微細粒子)を含有する。本体部の表面上への液体のコーティングは、例えば、スプレーコーティング、ロールコーティング、フィルム転写、カーテンコーティングなどによって実施されてもよい。1単位面積当たりのコーティング量(固形分の質量)は、一実施形態では、例えば、約1g/m2~約200g/m2の範囲であり得る。更に、コーティング量はまた、一実施形態では、約10g/m2~約175g/m2の範囲であってもよい。コーティング量はまた、約20g/m2~約150g/m2の範囲であってもよい。1単位面積当たりのコーティング量(固形分の質量)は、例えば、約1g/m2~約400g/m2の範囲であってもよい。1単位面積当たりのコーティング量は、約50~約350g/m2、約100~約300g/m2、又は約150~約250g/m2の範囲であることが望ましい場合がある。コーティング後の乾燥工程は、水を揮発させることによって表面層5を形成するためのものである。例えば、溶液をコーティングした後の構造部材20及び/又は30は、約75~約250℃に設定された温風乾燥機で約10~約180分間乾燥させることができる。これにより、対応する部材の表面の上に表面層5が形成される。無機接着剤のコーティングは、例えば、ストライプ、ドット、又は任意の他の所望の意匠のパターンなど、部材の表面上の任意の所望の形態であり得る。
【0032】
表面層5を形成する工程は、複数の工程に分割されて行われてもよい。例えば、最初に、無機接着剤を含有する液体を対応する部材の表面にコーティングした後、他の成分を含有する液体を対応する部材の表面にコーティングしてもよい。順序は逆であってもよく、すなわち最初に、他の成分を含有する液体を対応する部材の表面にコーティングした後、無機接着剤を含有する液体を対応する部材の表面にコーティングしてもよい。無機接着剤は、湿潤した又は乾燥した部材のいずれに適用されてもよい。
【0033】
マット材料10は、
図2に示すように、汚染制御装置50内に汚染制御要素30を取り付けるために使用される。汚染制御要素30の具体例としては、エンジンからの排気ガスの浄化のための、触媒担体、フィルタ要素などが挙げられる。汚染制御装置50の具体例としては、触媒コンバータ及び排気浄化デバイス(例えば、ディーゼル微粒子フィルタデバイス)が挙げられる。汚染制御装置50は、ケーシング20と、ケーシング20内に設けられた汚染制御要素30と、ケーシング20の内面と汚染制御要素30の外面との間に配設されたマット材料10と、を含む。汚染制御装置50は、排気ガスを汚染制御要素30に導入するガス流入口21と、汚染制御要素30を通過した排気ガスが排出されるガス流出口22と、を更に含む。
【0034】
汚染制御装置50において、マット材料10は、ケーシング20の内面と汚染制御要素30の外面との間に挟み込まれた状態で配設されている。ケーシング20の内面と汚染制御要素30の外面との間の間隙の幅は、気密性を確保し、マット材料10の使用量を低減する観点から、好ましくは約1.5~約15mmである。マット材料10は、好ましくは、適切に圧縮された状態にあり、加熱されると、マット材料10がその上に当接する他の部材に固定又は接着され得る。一実施形態では、マット材料10は、ケーシング20の内面に、及び汚染制御要素30の外面に固定されるため、汚染制御装置50内の汚染制御要素30の位置ずれを高度に抑制することができる。加えて、マット材料の嵩密度は、関連技術におけるマット材料と比較して低く設定することができ、したがって、使用される比較的高価な無機繊維材料の量を低減することができる。マット材料10を圧縮及び組み立てるための技術の例としては、クラムシェル(clamshell)技術、スタッフィング(stuffing)技術、及びターニキット(tourniquet)技術が挙げられる。
【0035】
汚染制御要素30は、高温の排気ガスの通過時に高温に達する。汚染制御要素30とマット材料10との間の部分は、200~1100℃という高温に加熱される。一方、マット材料10とケーシング20との間の部分は、100~800℃という高温に加熱される。汚染制御装置50は、加熱されると接着性を示す表面層5を有するマット材料10を含んでいるため、ケーシング20内に汚染制御要素30を強固に保持することができる。触媒担体によって担持される触媒は、概して、金属(例えば、白金、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、及びパラジウム)並びに金属酸化物(例えば、五酸化バナジウム、及び二酸化チタン)であり、好ましくはコーティングの形態で使用される。汚染制御装置は、触媒担体の代わりにフィルタ要素を適用することによって、ディーゼル微粒子フィルタ又はガソリン微粒子フィルタとして構成され得ることに留意されたい。
【0036】
本開示の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態は、マット材料10を汚染制御装置に適用する例で説明したが、マット材料10は、熱源を含む任意の他の断熱構造、例えば、排気マニホールド及び排気管、又は高温流体が流れる排気ガスシステム部品、及びその周囲に設置された熱シールドカバーに適用されてもよい。
図4に簡単に示すように、断熱構造60は、温度が場合により200℃以上に達する表面61aを有する第1の部材61(例えば、高温流体が流れる熱源又は排気ガスシステム部品)と、第1の部材61の表面61aに対向する表面62aを有する第2の部材62(例えば、熱シールドカバー)と、第1の部材61と第2の部材62との間に配設されたマット材料10とを含む。200℃以上に温度を上昇させることがある第1の部材61からの熱は、第1の部材61とマット材料10との間に接着性を示すよう、表面61a上の無機接着剤を誘発する。第1の部材61からの熱はまた、表面62a上に位置する場合、表面62aの温度が200℃以上に上昇すると、第2の部材62とマット材料10との間に接着性を示すよう、表面62a上の無機接着剤を誘発し得る。無機接着剤の接着性により、断熱構造60内のマット材料10の位置ずれを抑制することができる。
【0037】
追加的実施形態
1.第1の部材と、第2の部材と、マット材料と、無機接着剤と、を含む断熱構造。第1の部材は、温度が場合により200℃以上に達する第1の表面を備える。第2の部材は、第1の部材の第1の表面に対向して配設された第2の表面を備える。マット材料は、第1の部材と第2の部材との間に配設されている。領域は、第1の表面及び第2の表面のうちの少なくとも一方の上に形成され、領域は、無機接着剤を含む。無機接着剤は、加熱されると接着性を示す。好ましくは、無機接着剤は、室温を超える温度(すなわち、24℃超)又は周囲温度(すなわち、24℃~46℃の範囲)に加熱されると、接着性(すなわち、部材表面に接着結合を形成するのに十分な粘着性)のみを示す。無機接着剤は、少なくとも50℃、75℃、100℃、125℃、150℃、175℃、200℃以上の温度に加熱されると、接着性のみを示すことが望ましい場合がある。
2.無機接着剤が、実質的に乾燥している、実施形態1に記載の断熱構造。
3.無機接着剤が、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びリン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの塩を含有する、実施形態1又は2に記載の断熱構造。
4.アルカリ金属塩が、アルカリ金属ケイ酸塩である、実施形態3に記載の断熱構造。
5.アルカリ金属ケイ酸塩が、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、及びケイ酸リチウムからなる群から選択される少なくとも1つである、実施形態4に記載の断熱構造。
6.リン酸塩が、リン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、及びリン酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つである、実施形態3に記載の断熱構造。
7.塩の含有量が、無機接着剤を含有する領域において1g/m2~50g/m2である、実施形態3に記載の断熱構造。
8.無機接着剤を含有する領域が、第1の表面及び第2の表面の両方の上に形成される、実施形態1~7のいずれか1つに記載の断熱構造。
9.無機接着剤を含有する領域が、第1の表面及び第2の表面のうちの少なくとも一方の全面の上に形成される、実施形態1~8のいずれか1つに記載の断熱構造。
10.無機接着剤を含有する領域が、第1の表面及び第2の表面のうちの少なくとも一方の一部の上に形成される、実施形態1~8のいずれか1つに記載の断熱構造。
11.無機接着剤を含有する領域が、無機コロイド粒子を含有する、実施形態1~10のいずれか1つに記載の断熱構造。
12.無機コロイド粒子が、アルミナコロイド粒子である、実施形態11に記載の断熱構造。
13.マット材料が、60~2000のアスペクト比を有する無機繊維を含有する、実施形態1~12のいずれか1つに記載の断熱構造。
14.60~2000のアスペクト比を有する無機繊維が、アルミナ繊維である、実施形態13に記載の断熱構造。
15.無機接着剤を600℃の温度条件下で1時間加熱した後、固定領域が、第1の部材の第1の表面とマット材料との間に、マット材料と第2の部材の第2の表面との間に、又はその両方に形成される、実施形態1~14のいずれか1つに記載の断熱構造。
16.無機接着剤を少なくとも約100~150℃の温度条件下で少なくとも約10分間加熱した後、固定領域が、第1の部材の第1の表面とマット材料との間に形成される、実施形態1~15のいずれか1つに記載の断熱構造。
17.無機接着剤を少なくとも約100~150℃の温度条件下で少なくとも約10分間加熱した後、固定領域が、マット材料と第2の部材の第2の表面との間に形成される、実施形態1~16のいずれか1つに記載の断熱構造。
18.塩の含有量が、無機接着剤を含有する領域において1g/m2~400g/m2である、実施形態3~14のいずれか1つに記載の断熱構造。
19.断熱構造が汚染制御装置であり、第1の部材が汚染制御要素であり、第2の部材がケーシングであり、汚染制御要素がケーシング内に設けられ、マット材料がケーシングと汚染制御要素との間に配設されている、実施形態1~18のいずれか1つに記載の断熱構造。
20.無機接着剤を600℃の温度条件下で1時間加熱した後、固定領域が、ケーシングの内面とマット材料の外面との間に、マット材料の内面と汚染制御要素の外面との間に、及びその両方に形成される、実施形態19に記載の断熱構造。
21.無機接着剤を少なくとも約100~150℃の温度条件下で少なくとも約10分間加熱した後、固定領域が、ケーシングの内面とマット材料の外面との間に形成される、実施形態19又は20に記載の断熱構造。
22.無機接着剤を少なくとも約100~150℃の温度条件下で少なくとも約10分間加熱した後、固定領域が、マット材料の内面と汚染制御要素の外面との間に形成される、実施形態19~21のいずれか1つに記載の断熱構造。
23.断熱構造を製造する方法であって、(a)温度が場合により200℃以上に達する第1の表面を備える第1の部材を提供することと、(b)第1の部材の第1の表面に対向して配設された第2の表面を備える第2の部材を提供することと、(c)無機接着剤を含有する溶液を、第1の表面及び第2の表面のうちの少なくとも一方の少なくとも一部の上にコーティングすることと、(d)溶液を乾燥させて、第1の表面及び第2の表面のうちの少なくとも一方の少なくとも一部の上に、無機接着剤を実質的に乾燥させ、結合させることと、を含む、方法。
24.無機接着剤が、加熱されると接着性を示す、実施形態23に記載の方法。
25.第1の部材の第1の表面と第2の部材の第2の表面との間にマット材料を配設し、マット材料を乾燥無機接着剤の少なくとも一部に接触させることを更に含む、実施形態23又は24に記載の方法。
26.第1の部材の第1の表面と第2の部材の第2の表面との間にマット材料を配設し、当該乾燥前に、無機接着剤を湿潤させ、マット材料を湿潤無機接着剤の少なくとも一部に接触させることを更に含む、実施形態23又は24に記載の方法。
27.無機接着剤を加熱して、マット材料を第1の表面及び第2の表面のうちの少なくとも一方に結合させることを更に含む、実施形態23~25のいずれか1つに記載の方法。
【実施例】
【0038】
本開示を、その実施例を参照して説明する。言うまでもなく、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
本体部の作製
以下に列挙する化学物質を、1分間の間隔で撹拌しながら10Lの水に導入し、有機結合剤及び無機微細粒子を含有するコロイド溶液を調製した。
(1)硫酸アルミニウム(固形分濃度40%の水溶液):6g
(2)有機結合剤(日本ゼオンから入手可能なAcrylic Latex LX874(商品名)):2.6g
(3)コロイドシリカ(日産化学から入手可能なSnowtex O(商品名)):10g
(4)液体アルミン酸ナトリウム(固形分40%):3.5g
【0040】
ニードルパンチされたアルミナ繊維ブランケット(三菱ケミカルから入手可能なMaftec MLS-2 Blanket(商品名))を15cm×40cmに切り出した。これを金属メッシュ上に置き、上記のコロイド溶液を上から注いだ後、金属メッシュ上で15秒間吸引して水を除去した。このようにして、上記コロイド溶液をブランケットに含浸させた後、170℃の温度に設定した温風乾燥機で45分間乾燥プロセスを行った。これにより、マット材料の本体部を作製した。
【0041】
無機接着剤を含有する水溶液
水溶液1:濃度50%に希釈したケイ酸ナトリウム(富士化学から入手可能なケイ酸ナトリウムNo.3)の水溶液を調製した。
水溶液2:濃度50%に希釈したリン酸アルミニウム(多木化学から入手可能なWR-100B)の水溶液を調製した。
【0042】
実施例1
水溶液1(ケイ酸ナトリウム水溶液)を、汚染制御要素の第1の表面(外面)上に下記のようにコーティングする。水溶液1を、第1の表面の全領域に固形分に換算して20g/m2のコーティング量までスプレーコーティングする。次いで、170℃の温度に設定した温風乾燥機で5分間乾燥プロセスを実施する。これにより、第1の表面の全領域の上に無機接着剤を含有する領域を形成する。上記と同様の方法で、ケーシングの第2の表面(内面)の全面にも、無機接着剤を含有する領域を形成する。
【0043】
実施例1a
第1の表面及び第2の表面上の水溶液1(ケイ酸ナトリウム水溶液)のコーティング量(固形分換算)を、それぞれ20g/m2の代わりに2g/m2としたこと以外は、実施例1と同様にして、本実施例による部材を作製する。
【0044】
実施例1b
第1の表面及び第2の表面上の水溶液1(ケイ酸ナトリウム水溶液)のコーティング量(固形分換算)を、それぞれ20g/m2の代わりに40g/m2としたこと以外は、実施例1と同様にして、本実施例による部材を作製する。
【0045】
実施例2
水溶液1(ケイ酸ナトリウム水溶液)の代わりに水溶液2(リン酸アルミニウム水溶液)を用いた以外は、実施例1と同様にして、本実施例による部材を作製する。
【0046】
比較例1
無機接着剤を含有する領域がないことを以外は、実施例1と同じである。
【0047】
加熱される際の接着性の評価
上記実施例及び比較例のマット材料が、加熱されると接着性を示すかどうかを下記のように評価した。マット材料を幅75mm、長さ350mmに切り出し、長さ115mm及び外径105mmを有する円筒形状触媒担体部材(日本ガイシから入手可能なHONEYCERAM(商品名))の外周に巻き付けた。これを長さ150mm及び内径114mmを有する円筒状のステンレス鋼ケーシング部材に、ガイドコーンを使用して、40mm/秒で圧入した。このようにして作製されたコンバータサンプルを600℃で1時間加熱した後、マット材料とケーシングとが位置ずれしないように触媒担体を引き抜き、その後、マット材料の一部がケーシングの内面に固定されたサンプルを、ケーシングとの接着性を有するものとして評価した。結果を表1に示す。
図5は、マット材料の一部がケーシングの内面に固定された状態を示す写真であることに留意されたい。
【0048】
上記と同様にして作製したコンバータサンプルを600℃で1時間加熱した後、マット材料と触媒担体が位置ずれしないようにケーシングから引き抜いた。その後、マット材料の一部が触媒担体の外面に固定されたサンプルを、触媒担体との接着性を有するものとして評価した。結果を表1に示す。
図6は、マット材料の一部が触媒担体の外面に固定された状態を示す写真であることに留意されたい。
【0049】
【0050】
実施例3
アルミナゾルAS520(日産化学から入手可能、固形分濃度;20質量%)を水で5質量%の固形分濃度に希釈することによって、コロイド溶液を調製した。このコロイド溶液を、第1の部材の第1の表面(担体側の表面)上に下記のようにコーティングした。水溶液1を、Spray Gun PS-9513(商品名、アネスト岩田から入手可能)によって、固形分に換算して5g/m2のコーティング量で第1の表面上にコーティングした。次いで、実施例1と同様にして、水溶液1(ケイ酸ナトリウム水溶液)を、固形分に換算して20g/m2のコーティング量で第1の表面上にスプレーコーティングした。次いで、170℃の温度に設定した温風乾燥機で5分間乾燥プロセスを行った。これにより、第1の表面の全面の上に無機繊維及び無機接着剤を含有する領域を形成した。上記と同様の方法で、第2の部材の第2の表面にも、無機接着剤を含有する領域を形成した。
【0051】
実施例4
上記コロイド溶液(アルミナゾル水溶液)及び水溶液1(ケイ酸ナトリウム水溶液)を噴霧する順序を変更したこと、すなわち、水溶液1(ケイ酸ナトリウム水溶液)を噴霧した後、コロイド溶液(アルミナゾル水溶液)を噴霧したこと以外は、実施例3と同様にして、無機接着剤を含有する領域を第1の部材の第1の表面及び第2の部材の第2の表面の上に形成した。
【0052】
触媒担体を引き抜くために必要な力の測定
触媒担体を引き抜くための力を、実施例1~4及び比較例1に従ってマット材料上で下記のように測定した。ヒーターを設置し、長さ115mm、外径105mmを有する円筒形状触媒担体部材(日本ガイシから入手可能なHONEYCERAM(商品名))の外面を加熱することができるようにした。マット材料を幅75mm、長さ350mmで切り出し、触媒担体部材の外周に巻き付けた。これを、長さ150mm及び内径114mmを有する円筒状のステンレス鋼ケーシング部材に、ガイドコーンを使用して、40mm/秒で圧入した。圧入の24時間後、これを加熱し、触媒担体とマット材料との間の温度が900℃に達し、マット材料とケーシングとの間の温度が600℃に達した。これらの温度に達した後、ステンレス鋼ケーシングから40mm/秒で触媒担体を引き抜く際に、力(N)を測定した。測定中の最大力(N)から、触媒担体を引き抜くために必要な力(N/cm2単位でのマット材料の単位面積当たりの力)を計算した。結果を表2に示す。
【0053】
【0054】
実施例5
水溶液1(ケイ酸ナトリウム水溶液)を、第1の部材の第1の表面上に下記のようにコーティングする。水溶液を、表面に、固形分に換算して20g/m2のコーティング量まで滴下コーティングした。1/2インチの列間の間隔及び1/2インチのドット間の間隔を有する列の幅にわたって液滴を堆積させた。次いで、170Cの温度に設定した温風乾燥機で5分間乾燥プロセスを実施した。これにより、無機接着剤を含有する領域を、第1の表面の全領域に均一に分布した別個の液滴で形成した。上記と同様の方法で、無機接着剤を含有する領域を、第2の部材の第2の表面の全領域に均一に分布した別個の液滴で形成した。
【0055】
実施例5では、両方の表面がコーティングされたが、第1の表面又は第2の表面のみがコーティングされ得ることも考えられる。表面に適用される量は、実施例5に記載された量とは異なり得る。ドットの列間の距離はまた、例えば、約1/4インチ~約2インチのどこかで異なっていてもよい。
【0056】
実施例6
水溶液1(ケイ酸ナトリウム水溶液)を、第1の部材の第1の表面上に下記のようにコーティングした。水溶液を、表面に、固形分に換算して20g/m2のコーティング量までストライプでコーティングした。ストライプを、1/2インチのストライプ間の間隔を有する幅にわたって堆積させた。次いで、170Cの温度に設定した温風乾燥機で5分間乾燥プロセスを実施した。これにより、無機接着剤を含有する領域を、第1の表面の全領域に均一に分布した別個のストライプで形成した。上記と同様の方法で、無機接着剤を含有する領域を、第2の部材の第2の表面の全領域に均一に分布した別個のストライプで形成した。
【0057】
実施例6では、両方の表面がコーティングされたが、第1の表面又は第2の表面のみがコーティングされ得ることも考えられる。表面に適用される量は、実施例6に記載された量とは異なり得る。ストライプ間の距離はまた、例えば、約1/4インチ~約2インチのどこかで異なっていてもよい。更に、実施例6のストライプは直線として想定されるが、非直線のストライプもまた可能であることも考えられる。例えば、ストライプはジグザグ状であってもよく、又は正弦波などとして適用されてもよい。
【0058】
実施例7
ニードルパンチされたアルミナ繊維ブランケット(3M Company,St.Paul MNから入手可能な3M 1600HTE 1474坪量)を、84cm×520cmに切り取った。
【0059】
PQ corporation Valley Forge PAから入手可能なPQタイプNケイ酸ナトリウム950グラム、グリセリン50グラム、及びClariant Corporation Muttenz Switzerlandから入手可能なアシッドブルーAE03の1グラムを混合することにより、接着剤溶液を調製した。
【0060】
接着剤溶液を、2mmの流体先端を備えた3M 16570 Accuspray Model HG18 Spray Gunを使用して、第1の部材及び第2の部材の第1の表面及び第2の表面上に噴霧した。3つの別々のサンプルに、66、132、及び273グラム毎平方メートルの湿潤接着剤をコーティングした。75℃のオーブンで45分間乾燥させた後、乾燥コーティング重量はそれぞれ、32、64、及び139グラム毎平方メートルであった。
【0061】
各コーティングされたサンプルについて、マット材料試料を44.5×44.5mmに切り取る。Maudlin Productsから入手可能な316ステンレス鋼シム(0.05×50×150mm)部品番号3316-002-12-100の片の両側をコーティングし、2つのマット材料試料の間に均一に位置合わせし、ステンレス鋼シムのいずれかの側の接着剤コーティングをマット材料試料の1つと面するようにした。試料/シム/試料からなるアセンブリを、10psi(68.9kPa)の圧力で、2つの加熱された44.5×44.5mmのプラテン(滑りを防ぐための水平溝を有する)の間に配置し、記載された温度で10分間保持する。10分後、力を記録しながら、シムをアセンブリから100mm/分で取り外した(垂直に引っ張った)。結合形成の証拠(シム上の接着剤若しくは繊維の存在、又は試料の分離)が認められた。各温度設定点及び接着剤コーティング重量(gsm)の結果については、表3を参照されたい。表3の力は、重量ポンドである。結合点が決定されると、全ての温度範囲を試験する必要はないことに留意されたい。
【0062】
【0063】
実施例8
結合溶液の調製:95重量%のPQ Corporationからのケイ酸ナトリウムタイプN及び5重量%のグリセリンを混合して、均一な溶液を得た。
支持マット:3M Company製の1650HTG 1250 GSM
基材:材料:コージライト、直径:3.66インチ、長さ:3インチ
シェル:材料:409 SS
【0064】
加速堅牢性試験(Accelerated Robustness Test)サンプル調製:
1)基材に適用された結合溶液:液体結合溶液を基材の外面に適用し、室温で空気乾燥する。実質的に乾燥した結合溶液の重量は、2.5グラムであった。
2)金属シェルに適用された結合溶液:
液体結合溶液を金属シェルの内面に適用し、室温で空気乾燥する。実質的に乾燥した結合溶液の重量は、4.75グラムであった。
3)基材及びシェルに適用された結合溶液:
液体結合溶液を基材の外面に適用し、室温で空気乾燥する。実質的に乾燥した結合溶液の重量は、2.5グラムであった。液体結合溶液を金属シェルの内面に適用し、室温で空気乾燥する。実質的に乾燥した結合溶液の重量は、4.75グラムであった。
4)支持マットのシェル側に適用された結合溶液:
シェルと接触する支持マットの表面に液体結合溶液を適用し、次いで室温で空気乾燥する。実質的に乾燥した結合溶液の重量は、5.0グラムであった。
5)支持マットの基材側に適用された結合溶液:
基材と接触する支持マットの表面に液体結合溶液を適用し、次いで室温で空気乾燥する。実質的に乾燥した結合溶液の重量は、5.0グラムであった。
6)支持マットの基材側及びシェル側の両方に適用された結合溶液:
液体溶液を支持マットの両面に適用し、次いで室温で空気乾燥する。実質的に乾燥した結合溶液の重量は、支持マットの片側当たり5.0グラムであった。
7)対照支持マット。結合剤(すなわち、無機接着剤)なし
【0065】
サイジング:シェルをスエージ加工して、0.25g/ccの支持マットマウント密度を得る。(結合材料は含まれていない)
【0066】
各サンプルに対して垂直加速堅牢性試験(vertical accelerated robustness test)を実行する。破損までの時間及び破損時の振動強度レベルを記録する。
【0067】
結果:
1)基材に適用された実質的に乾燥した結合剤。
破損までの時間:16:19
振動強度レベル:5
2)シェルに適用された実質的に乾燥した結合剤。
破損までの時間:20:16
振動強度レベル:6
3)シェル及び基材に適用された実質的に乾燥した結合剤。
破損までの時間:25:00
振動強度レベル:6
4)支持マットのシェル側に適用された実質的に乾燥した結合剤。
破損までの時間:20:16
振動強度レベル:6
5)支持マットの基材側に適用された実質的に乾燥した結合剤。
破損までの時間:21:16
振動強度レベル:5
6)支持マットの両側に適用された実質的に乾燥した結合剤。
破損までの時間:25:33
振動強度レベル:6
7)対照(結合なし)
破損までの時間:16:25
振動強度レベル:5
注:振動強度レベル6は、振動強度レベル5の2倍の強度である。
【0068】
シェル側に結合剤(すなわち、無機接着剤)を適用すると、基材側に適用するよりも優れた性能を示す。結合剤を両面に適用すると、最良の結果が得られる。実質的に乾燥した結合剤のいずれかが支持マットに、又は基材及び/若しくはシェルに適用される場合、同様の性能の改善が認められる。特に、結合がシェルと支持マットとの間に形成された場合、特に、結合が支持マットの両側の上に形成された場合に、対照と比べて顕著な堅牢性が実証される。
【0069】
本開示によれば、加熱環境下で使用される装置又は構造に適用されるマット材料が提供され、マット材料では、使用中にマット材料と、それに接触する他の部材との位置のずれを抑制することができる。
【国際調査報告】