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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】エレベータ用安全ブレーキ
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/18 20060101AFI20230213BHJP
【FI】
B66B5/18 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537037
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(85)【翻訳文提出日】2022-07-21
(86)【国際出願番号】 EP2020085811
(87)【国際公開番号】W WO2021122385
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】19217111.4
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040729
【氏名又は名称】インベンテイオ・アクテイエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】INVENTIO AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガイスヒュスラー,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】オスマンバシク,ファルク
(72)【発明者】
【氏名】シュタイナー,アードリアン
(72)【発明者】
【氏名】スターリ,ユリアン
(72)【発明者】
【氏名】ザップ,フォルカー
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304DA31
3F304DA45
(57)【要約】
安全ブレーキは、第1の制動要素、第1のガイド要素、および作動要素を備える。第1の制動要素は、第1のガイド要素上のリニア軸受内に変位可能に取り付けられる。第1のガイド要素は、休止位置と制動初期位置との間で移動可能である。作動要素は、特に安全ブレーキを作動させるために、第1のガイド要素を休止位置から制動初期位置にまで移動させるように設計される。第1の制動要素は、制動初期位置から制動位置への制動動作を実行することができる。制動動作は、第1のガイド要素を休止位置に戻す。第1のガイド要素は、第1の平行四辺形ガイド上で案内される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ用の安全ブレーキ(1)であって、
第1の制動要素(11a)と、
第1のガイド要素(12a)と、
作動要素(15)と、
を備え、
第1の制動要素(11a)は、第1のガイド要素(12a)上のリニア軸受内に変位可能に取り付けられ、
第1のガイド要素(12a)を休止位置と制動初期位置との間で移動させることが可能であり、
作動要素(15)は、特に安全ブレーキ(1)を作動させるために、第1のガイド要素(12a)を休止位置から制動初期位置にまで移動させるように設計され、
第1の制動要素(11a)は制動初期位置から制動位置への制動動作を実行することが可能であり、制動動作が第1のガイド要素(12a)を休止位置に戻す、安全ブレーキ(1)において、
第1のガイド要素(12a)は第1の平行四辺形ガイド上で案内されること、
を特徴とする、
安全ブレーキ(1)。
【請求項2】
第1の平行四辺形ガイドは、第1のガイド要素(12a)を作動スライド(18)上で案内することを特徴とする、請求項1に記載の安全ブレーキ(1)。
【請求項3】
第2の平行四辺形ガイドは、第2のガイド要素(12b)を作動スライド(18)上で案内することを特徴とする、請求項2に記載の安全ブレーキ(1)。
【請求項4】
作動要素(15)は、作動スライド(18)をハウジング(13)に対して変位させることを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の安全ブレーキ(1)。
【請求項5】
ハウジング(13)上の作動スライド(18)は、第3のリニア軸受内で案内されることを特徴とする、請求項2~4のいずれか一項に記載の安全ブレーキ(1)。
【請求項6】
第1の平行四辺形ガイドは、第1のガイド要素(12a)をハウジング(13)上で案内することを特徴とする、請求項1に記載の安全ブレーキ(1)。
【請求項7】
第1の平行四辺形ガイドは、第1のガイド要素(12a)を第2のガイド要素(12b)上で案内することを特徴とする、請求項1に記載の安全ブレーキ(1)。
【請求項8】
作動要素(15)は、第1のガイド要素(12a)を直接移動させることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の安全ブレーキ(1)。
【請求項9】
対向軸受ストッパ(27)は、各ガイド要素(12)に対してハウジング(13)上に形成されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の安全ブレーキ(1)。
【請求項10】
平行四辺形ガイドは、ガイド要素(12)に接続される操作可能な平行四辺形アーム(81)を有し、操作可能な平行四辺形アーム(81)は、作動要素(15)によって直接操作されることができることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の安全ブレーキ(1)。
【請求項11】
作動要素(15)は、電気的または電子的トリガ信号によって作動させられることができることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の安全ブレーキ(1)。
【請求項12】
作動要素(15)は、エネルギー貯蔵手段、特にばね(103)として設計されたエネルギー貯蔵手段と、保持要素(102)および電磁石(101)とを備え、電磁石は、励磁されると、エネルギー貯蔵手段の力に抗して保持要素(102)を保持し、電気的または電子的トリガ信号を用いて、特に電流の流れのスイッチを切ることによりエネルギー貯蔵手段を解放することを特徴とする、請求項10に記載の安全ブレーキ(1)。
【請求項13】
平行四辺形ガイドは、平行四辺形アーム(17)またはガイド要素(12)に接続された平行四辺形アーム(17)を有し、
制動初期位置における平行四辺形アーム(17)の延伸方向と、ブレーキパッドの摩擦面に垂直な方向との間の鋭角の第1の角度(α)は、
制動初期位置におけるガイド要素(12)上のリニア軸受の方向と、ブレーキパッドの摩擦面に垂直な方向との間の鋭角の第2の角度(β)よりも大きいことを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の安全ブレーキ(1)。
【請求項14】
第1の鋭角(α)は、第2の鋭角(β)よりも少なくとも10°大きいことを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の安全ブレーキ(1)。
【請求項15】
走行体、特にかごを備えるエレベータであって、走行体は異なるフロアの間の走行経路に沿って略垂直に移動し、走行経路に沿ってレールが装着される、エレベータにおいて、
走行体は、レール上で走行体を制動することができる、請求項1~14のいずれか一項に記載の安全ブレーキを有することを特徴とする、エレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ用安全ブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータでは、走行体、特にかごが、通常、建物内の異なるフロアまたは階の間の走行経路に沿って垂直に変位させられる。少なくとも高層ビルでは、かごがロープまたはベルト状のサスペンション手段によって保持されるエレベータタイプであって、原動機を用いてサスペンション手段を動かすことによりエレベータシャフト内で変位させられる、エレベータタイプが使用される。原動機によって移動せられるべきかごの荷重を少なくとも部分的に補償するために、釣合いおもりが、通常、サスペンション手段の反対側端部に固定される。安全ブレーキは、かごを、しばしば釣合いおもりも、例えば、サスペンション手段の破損または原動機からの駆動トルクの欠如の結果として起こり得る、シャフト内への落下から保護する。
【0003】
この種の安全ブレーキは、安全かつ迅速にトリガされることができる。電子的にトリガされる安全ブレーキは、機械的速度リミッタシステムの比較的複雑な構造が省かれることができ、安全ブレーキをトリガする理由が電子センサによってエレベータの任意のサブシステム上で迅速に検出されることができるという、機械的にトリガされる安全ブレーキに勝る利点を有する。典型的には、電子的にトリガ可能な安全ブレーキは、必要に応じてブレーキをトリガするのに十分な力またはエネルギーを加えることができるようにするために、ばねなどのエネルギー貯蔵手段を有する。したがって、電子的にトリガ可能な安全ブレーキは、このエネルギー貯蔵手段がリセットプロセス中に考慮に入れられなければならないので、従来の機械的安全ブレーキとは異なる方法でリセットされなければならない。
【0004】
国際公開第2015071188号は、安全ブレーキが作動されると、最初にばね力によってレールに押し付けられ、次いでジャミング制動要素によって再びレールから離れる向きに押される、回転可能に取り付けられたガイド要素を示している。制動要素はガイド要素と共に回転するので、制動要素は制動初期位置において特定の点でのみレールに接触する。それにもかかわらず、安全な係合を保証するために追加の作動要素が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2015/071188号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
1つの問題は、安全ブレーキのトリガリングをより安全に行うという問題であると考えられることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、エレベータ用の安全ブレーキが、この問題を解決する。安全ブレーキは、第1の制動要素、第1のガイド要素、および作動要素を備える。第1の制動要素は、第1のガイド要素上のリニア軸受内に変位可能に取り付けられる。第1のガイド要素は、休止位置と制動初期位置との間で移動可能である。作動要素は、特に安全ブレーキを作動させるために、第1のガイド要素を休止位置から制動初期位置にまで移動させるように設計される。第1の制動要素は、制動初期位置から制動位置への制動動作を実行することができる。制動動作は、第1のガイド要素を休止位置に戻す。第1のガイド要素は、第1の平行四辺形ガイド上で案内される。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、走行体、特にかごを有するエレベータがこの問題を解決する。走行体は、異なるフロアの間の走行経路に沿って略垂直に移動する。走行経路に沿ってレールが装着される。走行体は、レール上で走行体を制動することができる、本発明の第1の態様による安全ブレーキを有する。
【0009】
レールは、好ましくは、レールの少なくとも一部が安全ブレーキの制動要素相互間に配置されるようにエレベータ内に配置される。特に、レールは、第1の制動要素と第2の制動要素との間に配置される。
【0010】
本発明の諸実施形態の可能な特徴および利点は、とりわけ本発明を限定することなく、以下に記述される概念および知見に基づくと見なされることができる。
【0011】
要するに、安全ブレーキは、第1の制動要素がその上で直線的に案内される第1のガイド要素を備え、第1の制動要素は作動要素によって駆動されることができる。安全ブレーキが使用されているとき、安全ブレーキは、休止位置、制動初期位置、および制動位置の変化する状態を通過する。状態は、安全ブレーキの構成要素の異なる位置、特に第1のガイド要素、第1の制動要素、および作動要素の異なる位置のために異なる。安全制動手段の作動が信号によって指示される場合、作動要素は、ガイド要素およびガイド要素上で案内される制動要素をレールまで前進させる。これにより、安全ブレーキは、休止位置から制動初期位置にまで移動させられ、この位置で、制動要素のブレーキパッドの全表面がレールと接触する。ブレーキパッドは、レールに押し付けられるように設計され、この目的のために設けられた摩擦面は、レール面と略平行に位置合わせされる。レールと制動要素との間の接触および相対運動により、制動要素とレールとの間に摩擦力が発生し、制動力は制動要素を制動位置にまでさらに移動させる。
【0012】
制動要素の全表面がレールと接触した状態にされるという利点は、ガイド要素を常に同じ向きに保つ平行四辺形ガイドの使用に基づいている。平行四辺形ガイドは、実質的に4つの関節アームを備え、各関節アームは2つのジョイントを有する。関節アームは、正方形が形成されるようにジョイントで互いに接続される。互いに対向する関節アームはそれぞれ、正方形が平行四辺形を表すようにジョイント相互間の距離が同じである。関節アームは、通常、振り子支持体として、すなわち、好ましくはその2つの端部の近くに2つのジョイントを有する棒または梁として設計される。しかしながら、ハウジングまたはガイド要素は、それらが2つのジョイントを有し、2つのジョイントは、これらが関節アームとして適するように配置され、特に離間される場合、関節アームであるとも考えられる。
【0013】
関節アームの例は、少なくとも2つのジョイントを有するロッドであり、例えば、ハウジングは、ハウジングが少なくとも2つのジョイントを備える場合、関節アームに対応する。
【0014】
本出願の文脈では、平行四辺形アームは、平行四辺形ガイドが移動するときに回転を実行する平行四辺形ガイドの特別な関節アームである。したがって、アームは、ハウジングに対して不動に固定されるか、またはハウジングと平行に変位させられるガイド要素およびハウジングとは異なる。休止位置では、平行四辺形アームは、ガイド要素と45°未満の角度、または135°を超える余角を形成することが好ましい。したがって、平行四辺形ガイドの休止位置からの移動は、ブレーキパッドの摩擦面に垂直な有意の移動成分を有する。
【0015】
制動要素は、リニア軸受を介してガイド要素上で案内される。リニア軸受は、リニア軸受の延伸方向の直線に沿って制動要素を案内するために使用される。リニア軸受は、制動要素とガイド要素との間に別個の構成要素として設置されることができる、またはガイド要素および制動要素は、2つの接触領域の間の相互作用がリニア軸受をもたらすように接触領域内に設計される。特に、案内されるニードル軸受およびころ軸受は、リニア軸受としてよく適している。あるいは、リニア軸受は、摺動面として設計されることもできる。有利には、リニア軸受の延伸方向は、垂直方向に有利に向けられるブレーキパッドの摩擦面に対してわずかに傾けられる。制動要素が制動初期位置から制動位置にまで変位すると、最初にガイド要素を休止位置にまで押し戻し、次いでレールが制動要素相互間に押し込まれることになる。ガイド要素の休止位置と同一の制動位置では、ガイド要素はハウジングに当接する。制動要素によってガイド要素に伝達される、制動の結果としての垂直力は、ガイド要素によってハウジング内に導入される。ハウジングは、好ましくは、ハウジングが所定の力でガイド要素に対抗し、それによって制動要素のブレーキパッドに及ぼす所定の垂直力を確保するように設計される。ハウジングの構造により、ハウジングはへこむように設計されることができる、または、ハウジングは、所定の力が加えられたときに押し戻されるプレテンションをかけられたばね、特にプレテンションをかけられた皿ばね組立体を有する。
【0016】
作動要素は、ガイド要素を休止位置から制動初期位置にまで前進させる。作動要素は、好ましくは直線運動または回転運動を引き起こし、次いで、運動は直接にまたは歯車、レバーアーム、ケーブル、プッシュロッド、もしくは油圧系などの機械的構成要素を介してガイド要素に伝達される。運動は、以下に説明されるように、間接的に伝達されることもできる。
【0017】
制動動作は、レールへの制動要素の摩擦接続によって引き起こされる動作である。これは、制動要素に対するレールの相対運動が、摩擦力を介して制動要素およびガイド要素を制動位置の方へ移動させることを意味する。安全ブレーキの1つの利点は、作動要素が制動動作によって休止位置に対応する位置に戻されることである。その結果、作動要素内に存在し得る任意のばねが、特に再び張力をかけられる。
【0018】
安全ブレーキの別の利点は、平行四辺形アームが非常に小さい力しか吸収しないことである。平行四辺形アームに作用する力は、ガイド要素および制動要素を保持するためにのみ使用され、場合により作動要素を押し戻すために使用される。制動位置で制動要素上に生じる、制動要素に及ぼす垂直力や結果として生じる摩擦力などの大きな力は、制動要素およびガイド要素によってハウジングに直接伝達される。上述したように、制動要素に及ぼす垂直力は、ガイド要素を介してハウジング内に導入される。摩擦力は、ブレーキストッパを介して制動要素によってハウジングに直接伝達される。平行四辺形アームは、両方の力伝達に関与しない。
【0019】
第1の代替実施形態によれば、第1の平行四辺形ガイドは、第1のガイド要素を作動スライド上で案内する。好ましい一実施形態によれば、第2の平行四辺形ガイドは、第2のガイド要素を作動スライド上で案内する。
【0020】
換言すれば、したがって、安全ブレーキは作動スライドを有することができ、作動スライドは、それぞれの場合に平行四辺形ガイドを介して第1のガイド要素に接続され、好ましくは第2のガイド要素にも接続される。作動スライドは、作動要素によって変位させられることができ、これにより、2つのガイド要素はそれらの制動要素と共にレールまで前進させられる。作動スライドは、作動要素からガイド要素に運動を伝達する第1の間接的な方法である。
【0021】
第2の制動要素は、第2のガイド要素に装着されることが好ましい。これは、安全ブレーキがレールの両側のリニア軸受内で案内される制動要素を有するという利点を有する。安全ブレーキはリニア軸受に沿って容易に摺動し、制動要素はつり上げプロセス中にレールに擦れることがないので、エレベータを解放すること、すなわち走行体を安全装置から非常に小さい力でつり上げることが可能である。
【0022】
好ましい一実施形態によれば、作動要素は、作動スライドをハウジングに対して変位させる。好ましい一実施形態によれば、ハウジング上の作動スライドは、第3のリニア軸受内で案内される。
【0023】
作動要素は、好ましくは作動スライドを直接移動させる。作動要素は、好ましくはハウジングに固定され、作動機構を用いてガイド要素を移動させる。あるいは、作動要素は、ガイド要素に固定されることもできる。この場合、作動機構はハウジングに接続される。平行四辺形ガイドによって案内されることに加えて、ガイド要素は、ブレーキパッドの摩擦面に垂直な方向にガイド要素を案内する別のガイド内で案内されることも好ましい。したがって、ガイド要素はそれぞれ、ただ1つの可能な移動方向を有し、これはブレーキパッドの摩擦面に垂直な直線変位である。したがって、ガイド要素は、レールの方へまたはレールから離れる向きに実質的に移動する。制動動作および追加のガイドとは逆の作動スライドの動作は、ガイド要素を互いに近づける。その結果、ブレーキパッドの摩擦面とレールとの間の距離が克服され、ブレーキパッド、したがってブレーキパッドを備える制動要素はレールと接触する。したがって、制動初期位置に到達される。作動スライドは、好ましくは、2つのガイド要素の間の中央に装着される。その結果、2つのガイド要素は、特に作動スライドが第3のリニア軸受によって2つのガイド要素の間の中心に案内される場合、同期して前進させられることができる。作動スライドが案内されない場合、ガイド要素は、制動要素が互いに十分な距離を置いて保たれ、同期して前進させられることができるように、ハウジングに弾性的に接続されることができる。
【0024】
好ましくは、安全ブレーキは、単一作動スライドおよび単一作動要素のみを有する。
【0025】
第3のリニア軸受を使用すると、作動要素から作動スライドへの力伝達がより簡単に行われ得るという利点がある。別の利点は、第3のリニア軸受によって案内される作動スライドがまた、第1の平行四辺形ガイドおよび第2の平行四辺形ガイドを介して第1のガイド要素および第2のガイド要素を所定の、好ましくは垂直の向きに案内するということにある。
【0026】
第3のリニア軸受は、好ましくは、作動スライドを中央位置で走行方向に案内する。作動スライドは、リニア軸受によって垂直向きに保持される。ガイド要素は、平行四辺形ガイドを介して作動スライドに接続され、したがって垂直向きにも保持される。
【0027】
第2の代替実施形態によれば、第1の平行四辺形ガイドは、第1のガイド要素をハウジング上で案内する。好ましい一実施形態によれば、作動要素は、第1のガイド要素を直接移動させる。
【0028】
ハウジングは、締結手段によって走行体に固定されることができる領域を有する。この場合、安全ブレーキが走行体にねじ留めされ得るように、穴が設けられることが好ましい。特に、ハウジングは、安全ブレーキの構成要素を収容するために使用される。
【0029】
換言すれば、第2の代替実施形態による安全ブレーキは、平行四辺形ガイドを介してハウジングに固定される第1のガイド要素を有する。この構成では、作動要素はガイド要素に直接作用することが有利となろう。
【0030】
第2の代替実施形態による安全ブレーキは、好ましくは第1のガイド要素のみを有する。ただ1つの固定制動要素、すなわちハウジングに堅固に接続される制動要素が、レールの反対側に装着される。その結果、安全ブレーキのこの実施形態は、ほんの数個の部品しか有していないので、より少ない費用で製造されることができる。
【0031】
あるいは、第2の代替実施形態による安全ブレーキは、レールの第1の制動要素とは反対の側に固定ガイド要素を有することができ、このガイド要素は、直線的に変位可能な制動要素を備える。したがって、ガイド要素は、ハウジングに堅固に接続される。安全ブレーキの実施形態は、より少ない費用で製造されることができ、非常に容易に解放されることもできる。
【0032】
作動要素は、安全ブレーキのハウジングに堅固に接続され、作動要素の構成要素を収容するために使用される作動要素ベースプレートを有することが好ましい。作動要素は、作動要素がハウジングに対して生成する運動を伝達するために作動機構を備える。作動機構は、作動スライドまたはガイド要素を移動させる。
【0033】
好ましい一実施形態によれば、対向軸受ストッパが、ガイド要素に対してハウジング上に形成される。
【0034】
安全ブレーキのハウジングは、ガイド要素を収容することができ、ガイド要素の対向軸受として使用される。対向軸受は対向軸受ストッパを有する。制動位置では、ガイド要素は、対向軸受ストッパに堅固に押し付けられる。休止位置では、ガイド要素は、対向軸受ストッパに当接することが好ましい。それぞれ制動要素を有する2つのガイド要素は、レールが制動要素相互間に締め付けられることができるように、ハウジング内のレールの両側に装着されることができる。あるいは、ハウジングは固定制動要素を有してもよく、固定制動要素は、ハウジング上に堅固に取り付けられ、ガイド要素およびガイド要素に関連する制動要素の反対側に装着される。ハウジングは、制動位置で生じる力を吸収することができるように設計される。さらに、ハウジングは、様々な程度に摩耗させられる制動要素に対して制動要素に可能な限り一定の垂直力を生成するために、へこむように設計される。これはまた、垂直力が、したがって摩擦力も最大許容値未満のままであることを確実にする。
【0035】
好ましい一実施形態によれば、第1の平行四辺形ガイドは、第1のガイド要素を第2のガイド要素上で案内する。
【0036】
この実施形態では、第2のガイド要素は、ハウジングに堅固に装着されることができる。この実施形態の利点は、ガイド要素が制動要素をレールの両側で案内することである。これにより、2つのブレーキパッドが関連するガイド要素に沿って容易に摺動するので、安全ブレーキを制動位置から持ち上げることが非常に容易になる。
【0037】
別の実施形態によれば、平行四辺形ガイドは、ガイド要素に接続される操作可能な平行四辺形アームを有する。操作可能な平行四辺形アームは、作動要素によって直接操作されることができる。
【0038】
操作可能な平行四辺形アームは、好ましくは別のジョイントを有し、平行四辺形アーム上の作動機構は、このジョイントを介して運動を伝達する。平行四辺形アームによる運動の伝達は、作動要素からガイド要素への運動のさらなる間接的な伝達である。
【0039】
別の実施形態によれば、作動要素は、電気的または電子的トリガ信号によって作動させられることができる。
【0040】
この場合、CANバスは、データパケット、すなわち電子信号を安全制動手段の制御ユニットに送達することができ、その結果、制御ユニットは、作動要素を動かすサーボモータを作動させる。この場合、サーボモータもしくは電磁石および制御ユニットは、安全ブレーキの外部または内部の電流源からのエネルギーで操作される。あるいは、電気接続部に電圧または電流、すなわち電気信号を印加すると、サーボモータまたは電磁石を直接操作することができる。サーボモータまたは電磁石には、電気接続部を介して直接電流が供給される。
【0041】
別の実施形態によれば、作動要素は、エネルギー貯蔵手段、保持要素、および電磁石を備える。電磁石は、励磁されると、エネルギー貯蔵手段の力に抗して保持要素を保持する。電気的または電子的トリガ信号は、エネルギー貯蔵手段を解放する。特に、電気的または電子的トリガ信号は、電流の流れのスイッチを切ることによりエネルギー貯蔵手段を解放する。特に、エネルギー貯蔵手段は、ばねとして設計される。
【0042】
換言すれば、エネルギー貯蔵手段、典型的には張力をかけられたばねは、このばねが動かないように電磁石によって保持される。安全ブレーキに連続的に電流供給することにより、電磁石は保持要素を引き付け、それによってエネルギー貯蔵手段が動くのを妨げることができる。安全ブレーキへの電流供給がなくなるとすぐに、磁場は減少し、電磁石はもはや保持要素を保持することができず、エネルギー貯蔵手段は解放される。エネルギー貯蔵手段を解放することにより、作動機構に伝達される運動が生成される。電磁石は、好ましくは、作動要素ベースプレートに堅固に接続される。ばねを有する保持要素および作動機構は、作動要素ベースプレートに可動に装着される。あるいは、保持要素は、作動要素ベースプレートに堅固に接続されてもよく、ばねを有する電磁石および作動機構は、作動要素ベースプレートに可動に装着される。
【0043】
ばねに加えて、代替のエネルギー貯蔵手段は、例えば圧縮空気リザーバまたはクランピングマスである。この場合のばねは、鋼ばね、エラストマーばね、またはガス圧ばねを意味すると理解されることができる。ばねは、引張ばね、圧縮ばね、またはねじりばねとして設置されることができる。
【0044】
別の実施形態によれば、平行四辺形ガイドは、平行四辺形アームまたはガイド要素に接続される平行四辺形アームを有する。制動初期位置における平行四辺形アームの延伸方向とブレーキパッドの摩擦面に垂直な方向との間の鋭角の第1の角度は、制動初期位置におけるガイド要素上のリニア軸受の方向とブレーキパッドの摩擦面に垂直な方向との間の鋭角の第2の角度よりも大きい。
【0045】
これは、第1の制動要素がリニアガイドを用いて係合するときに第1のガイド要素に伝達する力が、ガイド要素を休止位置に変位させることを確実にする。
【0046】
別の実施形態によれば、第1の鋭角は、第2の鋭角よりも少なくとも10°大きい。
【0047】
本発明のさらなる利点、特徴、および詳細は、実施形態の以下の説明において、同一の要素または機能的に同一の要素に同一の参照符号が付されている図面を参照して見出されることができる。図面は単に概略的なものであり、原寸に比例していない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1a】休止位置にある第1の代替実施形態による安全ブレーキの図である。
図1b】制動初期位置にある第1の代替実施形態による安全ブレーキの図である。
図1c】制動位置にある第1の代替実施形態による安全ブレーキの図である。
図2a】休止位置にある第2の代替実施形態による安全ブレーキの図である。
図2b】制動初期位置にある第2の代替実施形態による安全ブレーキの図である。
図2c】制動位置にある第2の代替実施形態による安全ブレーキの図である。
図3】操作可能な平行四辺形アームを有する安全ブレーキの図である。
図4】対向ストッパに部分的に組み込まれた作動要素を有する安全ブレーキの図である。
図5】モジュール式構成要素としての作動要素の図である。
図6】安全ブレーキを有するエレベータの図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1a~図1cは、第1の代替実施形態による安全ブレーキ1を示す。安全ブレーキ1は、必要に応じてレール6を締め付け、それによって制動効果を得るように設計される。
【0050】
図1aに示される休止位置では、作動要素15の下位構成要素である作動機構19が、作動スライド18を保持する。休止位置では、2つのガイド要素12a、12bは、ガイド要素12a、12b上で案内される制動要素11a、11bがレール6から十分遠くに離間されるように、互いに離間される。ガイド要素12a、12bは、対向軸受25の対向軸受ストッパ27に当接する。対向軸受25はハウジング13の一部である。平行四辺形アーム17は、2つのガイド要素12a、12bを作動スライド18に接続する。
【0051】
安全ブレーキ1を作動させるために、作動要素15は、信号を介して作動機構19をトリガ方向35に変位させ、それによって作動スライド18をトリガ動作37の方向に変位させるよう促される。その結果、図1bに示されるように、制動初期位置に到達される。ガイド要素12は、トリガ動作37の方向に対して垂直にしか変位させられることができないので、前記要素は、互いにさらに近づき、かつ関連する対向軸受ストッパ27から離れる。制動要素11a、11bが十分に大きな垂直力でレール6に押し付けられるとすぐに、前記要素は、図1cに示されるように、ガイド要素12a、12bに沿って制動位置の方向に移動する。ガイド要素12a、12bは、ガイド要素12a、12bおよび制動要素11a、11bのくさび形状によってレール6から離れる向きに押される。ガイド要素12a、12bは、対向軸受ストッパ27まで押される。対向軸受ストッパ27に接触されるとすぐに、制動要素11a、11bのさらなる移動が、制動要素11a、11bに及ぼす垂直力の急激な増加を引き起こす。制動要素11a、11bは、制動要素が2つのブレーキストッパ21に到達するまでさらに変位させられる。安全制動手段のハウジング13は、制動要素11a、11bが制動プロセス中にまたは複数の制動プロセスにわたって摩滅させられた場合でも、対向軸受ストッパ27が垂直力の負荷を受けてわずかにへこみ、それによって所要の垂直力を実質的に一定に保つように設計される。
【0052】
制動位置は図1cに示される。本発明の利点は、作動機構19が、したがって作動要素15もまた、制動初期位置から制動位置への移動の結果として変位させられるという事実によって示される。制動位置では、作動機構19は、したがって作動要素15もまた、再び元の休止位置と同じ位置にある。特に、作動要素15内のエネルギー貯蔵手段にも再び張力がかけられる。作動要素15内のエネルギー貯蔵手段に再び張力をかけるために、さらなるエネルギーの供給は不要である。
【0053】
図2a~図2cは、第2の代替実施形態による安全ブレーキ1を示す。基本機能は、第1の代替実施形態と同じである。作動要素15は、図2a~図2cには示されていない。適切な作動要素15のための可能な構成が図3図4、および図5に示されている。
【0054】
図2aは、安全ブレーキ1の休止位置を示す。制動初期位置にまで移されるために、図2bに示されるように、ガイド要素12は、作動要素(図示せず)によって制動初期位置にまで移動させられる。制動要素11aが十分に大きな垂直力でレール6に押し付けられるとすぐに、制動要素は、ガイド要素12に沿って制動位置の方向に移動する。その結果、安全ブレーキ1の制動要素11aはレール6を非常に強く押すので、安全ブレーキ1は、走行体全体と共に、固定制動要素41もレール6に接触するまで横方向に変位させられる。さらに、ガイド要素12は、対向軸受25の対向軸受ストッパ27まで変位させられる。対向軸受25は、ハウジング13に堅固に接続される。対向軸受ストッパ27に接触されるとすぐに、制動要素11aのさらなる移動が、制動要素11aに及ぼす垂直力の急激な増加を引き起こす。制動要素11aは、ブレーキストッパ21に到達するまでさらに変位させられる。安全制動手段のハウジング13は、制動要素11a、41が制動プロセス中にまたは複数の制動プロセスにわたって摩滅させられたとしても、対向軸受ストッパ27および固定制動要素41が垂直力の負荷を受けてわずかにへこみ、それによって所要の垂直力を実質的に一定に保つように設計される。
【0055】
図2bは、第1の角度αおよび第2の角度βの一例を示す。ガイド要素12と制動要素11との間のリニア軸受上で伝達される力は、リニア軸受が実質的に無摩擦であるので、リニア軸受の方向に対して垂直に作用する。第1の角度αは第2の角度βよりも大きいため、ガイド要素12と制動要素11との間のリニア軸受上で伝達される力がガイド要素12をある角度で押圧し、その結果、平行四辺形によって取り付けられたガイド要素12が休止位置の方向に押し戻されることが確実にされる。
【0056】
図3は、作動要素15の第1の実施形態を有する、第2の代替実施形態による安全ブレーキ1を示す。この場合、作動要素は、操作可能な平行四辺形アーム81に作用する。操作可能な平行四辺形アーム81は、2つのジョイントを接続するのに十分な長さの従来の平行四辺形アーム17と比較して細長い。電磁石101が、保持要素102を保持するように設計される。保持要素102は、ばね103による引張応力を受けて配置される。したがって、ばね103は引張ばねである。安全制動手段をトリガするために、電磁石101への電流供給はトリガ信号として遮断される。保持要素102は電磁石101から分離し、ばね103は、操作可能な平行四辺形アーム81を用いてガイド要素12aを制動初期位置にまで移動させる。次いで、制動位置で、ガイド要素12aは、対向軸受25の対向軸受ストッパ27と再び接触する。その結果、操作可能な平行四辺形アーム81および保持要素102もまた、元の休止位置と同じ位置にある。したがって、電磁石101は、電磁石に再び電流が供給されるとすぐに、保持要素102を再び保持する。
【0057】
図4は、作動要素15の第2の実施形態を有する、第2の代替実施形態による安全ブレーキ1を示す。電磁石101は、保持要素102を保持するように設計される。この場合、保持要素102はガイド要素12上に形成される。ガイド要素12は、ばね103による引張応力を受けて配置される。したがって、ばね103は引張ばねである。あるいは、ばねは電磁石101の周りに装着されることもでき、その場合、この種のばねは圧縮ばねとして働くことになる。安全制動手段をトリガするために、電磁石101への電流供給はトリガ信号として遮断される。保持要素102は電磁石101から分離し、ばね103は、ガイド要素12を制動初期位置にまで移動させる。次いで、制動位置で、ガイド要素12は、対向軸受25の対向軸受ストッパ27と再び接触する。その結果、保持要素102もまた、元の休止位置と同じ位置にある。したがって、電磁石101は、電磁石に再び電流が供給されるとすぐに、保持要素102を再び保持する。
【0058】
図5は、必要に応じて安全ブレーキ1のためのモジュール式構成要素として容易に交換されることができる作動要素15を示す。特に、この作動要素15は、図1a~図1cに示されるような、第1の代替実施形態による安全ブレーキ1での使用に適している。この作動要素15は、図2a~図2cに示されるような、第2の代替実施形態による安全ブレーキ1での使用にも適している。電磁石101は、保持要素102を保持するように設計される。電磁石101は作動要素15に固定され、保持要素102は作動機構19と共に可動に取り付けられる。あるいは、保持要素102は作動要素15に固定されることもでき、電磁石101は、作動機構19と共に作動要素ガイド104上に可動に取り付けられることができる。ガイド要素12は、ばね103による引張応力受けた状態にされる。したがって、ばね103は引張ばねである。安全制動手段をトリガするために、電磁石101への電流供給はトリガ信号として遮断される。保持要素102は電磁石101から分離し、ばね103は作動機構19を移動させる。制動位置に到達することにより、作動機構19は再び戻され、その結果、電磁石101は、電磁石に電流が再び供給されるとすぐに保持要素102を保持することができる。
【0059】
図6は、走行体202を有するエレベータ201を示す。走行体202がサスペンション手段203に接続される駆動装置204を用いて、走行体202は走行経路に沿って変位させられる。走行経路に沿ってレール6が装着される。走行体は、レール上でガイドシュー205によって案内される。2つの安全ブレーキ1は、レール6上で走行体202を制動することができるように設計される。
【0060】
最後に、「備える(comprising)」、「有する(having)」などの用語は、他の要素またはステップを排除するものではなく、「a」または「an」などの用語は、複数を排除するものではないことに留意されたい。さらに、上記の実施形態の1つを参照して説明された特徴またはステップはまた、上記の他の実施形態の他の特徴またはステップと組み合わせて使用され得ることに留意されたい。特許請求の範囲における参照記号は、限定すると見なされるべきではない。
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】