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特表2023-506929ガラスフィラメントを処理するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】ガラスフィラメントを処理するための方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/16 20060101AFI20230213BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
C03B37/16
G02B6/02 356A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537160
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(85)【翻訳文提出日】2022-08-16
(86)【国際出願番号】 GB2020053147
(87)【国際公開番号】W WO2021123738
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】1918628.7
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521140939
【氏名又は名称】ルメニシティ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】セイド・レザ・サンドグチ
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・チャールズ・シャードロウ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ポール・アップルヤード
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・トーマス・ハーカー
【テーマコード(参考)】
4G021
【Fターム(参考)】
4G021NA00
(57)【要約】
フィラメントの残りから一部が分離される、ある長さのガラスフィラメントを準備するステップと、部分を分離するための所望の場所においてフィラメントの幅を減らすために、フィラメントにエネルギーを向けるステップと、部分をフィラメントの残りから所望の場所で分離するために、部分とフィラメントの残りとの間の相対的な長手方向の動きを引き起こすステップとを含む、ガラスフィラメントを処理する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラメントの残りから一部が分離される、ある長さのガラスフィラメントを準備するステップと、
前記部分を分離するための所望の位置において前記フィラメントの幅の減少を引き起こすために、前記フィラメントにエネルギーを向けるステップと、
前記フィラメントの前記残りから分離された前記部分を得るために、前記フィラメントの前記残りから離すよう前記部分を動かすステップと
を含む、ガラスフィラメントを処理する方法。
【請求項2】
前記分離部分が、光ファイバへと引き出すのが可能なケーンを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エネルギーが、前記フィラメントに印可される1つもしくは複数のレーザビームまたは燃焼またはプラズマビームの形である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記エネルギーが、前記所望の場所におけるほぼ前記フィラメントの面の、少なくとも1つの焦点に向けられる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記フィラメント上にエネルギーを向けるステップが、前記所望の場所で前記フィラメントの周りに周方向に配設される2つ以上の領域上にエネルギーを向けるステップを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記所望の場所で前記フィラメントの周りに周方向に配設される1つまたは複数の領域上にエネルギーを向けるために、前記フィラメント上に前記エネルギーを向ける間、前記フィラメントと前記エネルギーとの間に相対的な回転運動を引き起こすステップをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記フィラメント上にエネルギーを向けるステップが、前記フィラメントの前記幅を前記所望の場所でゼロに減らすことを引き起こし、それによって、前記部分を前記フィラメントの前記残りから分離する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記フィラメント上にエネルギーを向けるステップが、前記フィラメントの前記幅を前記所望の場所でゼロより大きい値に減らし、前記部分を前記フィラメントの前記残りから離すよう動かすステップが、前記部分を前記フィラメントの前記残りから前記所望の場所で分離するために、前記部分と前記フィラメントの前記残りとの間の相対的な長手方向の動きを引き起こすステップを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記エネルギーを向けるステップの間に、前記フィラメントの前記残りを第1の位置で第1のクランプ装置で保持するステップと、前記部分を、前記第1の位置から長手方向に離間される第2の位置で第2のクランプ装置で保持するステップと、前記第1のクランプ装置と前記第2のクランプ装置の間の前記間隔を増加することによって前記相対的な長手方向の動きを引き起こすステップとをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記エネルギーを向けるステップの間に、前記フィラメントの前記残りのうちの1つおよび前記部分をクランプ装置で保持するステップと、前記部分を重力下で動かすことを可能にすることによって前記相対的な長手方向の動きを引き起こすステップとをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記所望の場所でくびれた領域への、前記フィラメントの前記ガラスの軟化および変形を引き起こすのに十分なエネルギーを前記フィラメント上に向けるステップを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記くびれ領域への変形を助けるために、圧着ジョーを前記軟化したガラスに適用するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記フィラメントが1つまたは複数の長手方向管腔を備える内部構造を有し、前記くびれ領域への前記ガラスの変形が前記1つまたは複数の管腔のつぶれを含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
前記変形、および任意選択で、前記フィラメントの前記残りから前記部分を離れて動かすやはり前記ステップが、前記くびれ領域の幅をゼロに減らすことを引き起こし、それによって、前記部分の分離した端部で前記管腔を閉じる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記所望の場所で前記フィラメントの前記ガラスの融除を引き起こすのに十分なエネルギーを前記フィラメント上に向けるステップを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記所望の場所で前記フィラメントの周りに周方向のスロットを形成するために、前記ガラスが融除される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記融除によって発生した蒸気および/または破片を、前記フィラメントから蒸気および/または破片が離れるように運ぶため空気の流れを提供することによって除去するステップをさらに含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記フィラメントが1つまたは複数の長手方向管腔を備える内部構造を有し、前記フィラメント上へエネルギーを向けるステップが、前記フィラメントの前記残りの中の前記管腔の内側に前記融除によって発生した蒸気の凝結を減少させるように、前記フィラメントの長手軸に対して直角でない角度で前記部分に向けてエネルギーを向けるステップを含む、請求項15から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記長さのガラスフィラメントがガラスプリフォームから引き出され、前記フィラメントが前記ガラスプリフォームから引き出される間に引出塔の中で実行される、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記フィラメントの対向する側を把持し、前記フィラメントを前記プリフォームから離れるよう長手方向に引っ張るように配置される、一対の対向する回転ベルトを備えるケーン引張機を使用して、前記フィラメントが前記ガラスプリフォームから引き出される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
各ベルトの回転軸が前記長手方向に対して垂直となるように前記対の対向する回転ベルトが配置される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記引き出されるフィラメントの、その長手軸の周りの回転を引き起こすように、前記ベルトの前記回転軸が反対であり、前記長手方向に対してほぼ等しい直角でない角度となるように、前記対の対向する回転ベルトが配置される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
光ファイバへと引き込むのに好適であって、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法を使用してガラスフィラメントから分離することによって得られた、ケーン。
【請求項24】
1つまたは複数の長手方向管腔を備え1つまたは複数の閉じた端部を有する内部構造を有する、請求項21に記載のケーン。
【請求項25】
各々が回転軸の周りに回転可能な可動面を有する1対の回転可能なベルトであって、前記可動面が区切りに面して前記ガラスフィラメントを受け取って把持する場所に前記ベルトが配置可能であり、前記面の動きが、前記フィラメントを前記プリフォームから離れるように前記フィラメントの長手軸の方向に沿って引っ張るように働き、
前記フィラメントにその長手軸の周りの回転を付与するために、前記ベルトの前記回転軸が、前記引っ張る方向に対して反対でほぼ等しい直角でない角度に配置可能な、ベルト
を備える、プリフォームからガラスフィラメントを引き出すためのデバイス。
【請求項26】
回転を付与することなく前記フィラメントを引っ張るために、前記ベルトの前記回転軸が、互いに平行で前記引っ張る方向にほぼ垂直に追加で配置可能な、請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
前記回転の方向を反転するために反転されることを含む前記回転の速度を変更するために、前記反対でほぼ等しい直角でない角度を変えることができる、請求項25または26に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスフィラメントを処理するための方法、特に、ガラスフィラメントからケーン(cane)などの部分を分離するための方法に関する。ガラスフィラメントは、光ファイバを形成するためのフィラメントであってよい。
【背景技術】
【0002】
光ファイバは、典型的には、複数のガラス構成要素をプリフォーム組立体へと組み立てることによって製造される。プリフォーム組立体は、ファイバ用の所望の構造に対応する断面構造を有し、所望のファイバ直径よりもはるかに大きい直径を有する。プリフォームは、ガラスを柔らかくするためにプリフォームを加熱すること、それから連続したフィラメントを引っ張ること、同じ断面だが減らした直径を維持することによって、ファイバ引出塔で「引き出される」。より小さい直径が意図されるファイバ直径であってよいが、一般的に、直径は、プリフォームのサイズと意図されるファイバサイズとの間の中間である。後者の場合、フィラメントは、より短い部分へと分離され、フィラメントがプリフォームから引き出されるときに、好都合に実行される。より短い部分はケーンと呼ばれ、今度は、光ファイバの連続したフィラメントへと引き出されることになる。
【0003】
元々、光ファイバは固体構造を有する。そのため、プリフォームは、ファイバの外部クラッドを形成するよう予定される中空のチューブの中に挿入される、完成したファイバのためのコアおよび内部クラッドの所望の断面に対応する固体ガラスロッドを備えていた。より最近のファイバ設計では、ファイバの長さに延びて、コアと内部クラッドのいずれかまたは両方の構造を規定する長手方向の孔または管腔を採用する。そのようなファイバ用のプリフォームは、中空のチューブおよび毛細管、および任意選択で固体ロッドを所望の断面パターンへと積み重ねることによって作ることができる。
【0004】
フィラメントを個々のケーンへと分離するための1つの技法は、クリービングとして知られており、クリービングは、光ファイバの端面を準備するのにも好適な機械的技法である。ノッチ、かすり傷、ひび、または、ひっかき傷が、フィラメントの外部ガラス面に(たとえば、ノコギリ、研削砥石、ダイアモンドブレード、セラミックブレード、またはスチールブレードを使用して)形成され、ノッチの端部に隣接した領域に、ガラスの引張強度を超える引張応力がもたらされる。このことによってノッチがガラスを通って伝播することが引き起こされ、それによって、ノッチの場所で、フィラメントの残りからケーンを分離する。クリービングは、平坦、滑らか、フィラメントの長手軸に垂直などといった制御された角度であって、(一般的にノッチの位置を除いて)一般的にきれいで、切れ端または傷がない縁部を有する端面を作成することが可能である。それにもかかわらず、クリービングおよび他の機械的技法は、フィラメントからのケーンの分離について問題がある場合がある。切れ端または傷がクリーブ面に生じた場合、ケーンをファイバへと首尾よく引き出すのは可能でない場合がある。というのは、ひびが欠陥から伝播する場合があるためである。また、破片がケーン端部上およびケーン端部の周りに付着する場合がある。このことは、1つまたは複数の管腔を備えるファイバ構造にとって、特別なリスクである。というのは、破片が管腔に入る可能性があるためである。破片は、ケーンからその後引き出されるファイバに瑕疵をもたらす可能性があり、これは、ファイバの光損失または機械的弱さが増えることとして顕在化する場合がある。全てのこれらの問題により、かなりの長さのファイバおよびケーンの廃棄が必要になる可能性があり、したがって、歩留まりが低下し、費用が上昇する。
【0005】
フィラメントが形成されるときにケーンの分離が引出塔の中で実行される場合、さらなる問題は、ガラスフィラメントが摂動する可能性があることである。摂動は、所望の直径からケーンの直径を局所的に変化させる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、フィラメントからケーンを分離するためのガラスフィラメントを処理する代替方法が対象となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
態様および実施形態は、添付の請求項に記載される。
【0008】
本明細書に記載されるある種の実施形態の第1の態様によれば、フィラメントの残りから一部が分離される、ある長さのガラスフィラメントを準備するステップと、部分を分離するための所望の位置においてフィラメントの幅を減らすために、フィラメントにエネルギーを向けるステップと、フィラメントの残りから分離された部分を得るために、フィラメントの残りから離すよう部分を動かすステップとを含む、ガラスフィラメントを処理する方法が提供される。
【0009】
本明細書に記載されるある種の実施形態の第2の態様によれば、光ファイバの中に引き込むのに好適であって、第1の態様にしたがった方法を使用してガラスフィラメントから分離することによって得られたケーンが提供される。
【0010】
本明細書に記載されるある種の実施形態の第3の態様によれば、プリフォームからガラスフィラメントを引き出すためのデバイスであって、各々が回転軸の周りに回転可能な可動面を有する1対の回転可能なベルトであって、可動面が区切りに面してガラスフィラメントを受け取って把持する場所にベルトが配置可能であり、面の動きが、フィラメントをプリフォームから離れるようにフィラメントの長手軸の方向に沿って引っ張るように働き、フィラメントにその長手軸の周りの回転を付与するために、ベルトの回転軸が、引っ張る方向に対して反対でほぼ等しい直角でない角度に配置可能な、ベルトを備える、デバイスが提供される。
【0011】
ある種の実施形態のこれらおよびさらなる態様は、添付の独立請求項および従属請求項に記載される。従属請求項の特徴を、互いと組み合わせること、および、請求項に明示的に記載されるもの以外と組み合わせた独立請求項の特徴と組み合わせることができることが理解されよう。さらに、本明細書に記載される手法は、下に記載されるなどの特定の実施形態に限定されず、本明細書に提示される特徴の任意の好適な組合せを含んで意図している。たとえば、下に記載される様々な特徴のうちの任意の1つまたは複数を適宜含む本明細書に記載される手法にしたがって、方法および装置を実現することができる。
【0012】
本発明のより良好な理解のため、および、どのようにして本発明が実行できるかを示すため、例として添付図面への参照がここで行われる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の例にしたがったガラスフィラメントを処理するための方法を示すフローチャートである。
図2】本開示の方法を適用できるガラスフィラメントを示す透過側面図である。
図3A図2のものなどといった例示的なフィラメントを示す横断面図である。
図3B図2のものなどといった例示的なフィラメントを示す横断面図である。
図3C図2のものなどといった例示的なフィラメントを示す横断面図である。
図4】本開示の例にしたがったフィラメントを処理するための装置を示す概略側面図である。
図5A図4の装置に含むことができる例示的なエネルギー源およびビーム誘導システムを示す概略図である。
図5B図5Aのビーム誘導システムによって生成されるエネルギービームの細長い焦点を示す断面図である。
図6A図4の装置に含むことができるエネルギー源およびビーム誘導システムのさらなる例を示す概略図である。
図6B図4の装置に含むことができるエネルギー源およびビーム誘導システムのさらなる例を示す概略図である。
図6C図4の装置に含むことができるエネルギー源およびビーム誘導システムのさらなる例を示す概略図である。
図7】ガラスフィラメントに実施される処理方法の中間点における、例にしたがってフィラメントを処理するための代替装置を示す概略側面図である。
図8】圧着ジョーの使用を含む処理方法のさらなる中間点における、図7または図4の装置を示す概略側面図である。
図9】フィラメントから分離されたケーン部分を示す、処理方法の終点における図7の装置を示す概略側面図である。
図10】方法の中間点における、さらなる例示の方法にしたがった、フィラメントを処理するためのさらなる代替装置を示す概略側面図である。
図11】フィラメントから分離されたケーン部分を示す、処理方法の終点における図10の装置を示す概略側面図である。
図12図10および図11の装置に含むのに好適な、例示の蒸気取扱いシステムを示す概略側面図である。
図13図10の装置の変更版を示す概略側面図である。
図14A】ガラスフィラメントをガラスプリフォームから引っ張るまたは引き出すことができる、ケーン引張機を示す直交側面図である。
図14B】ガラスフィラメントをガラスプリフォームから引っ張るまたは引き出すことができる、ケーン引張機を示す直交側面図である。
図15A】本開示の態様にしたがった、例示のケーン引張機を示す直交側面図である。
図15B】本開示の態様にしたがった、例示のケーン引張機を示す直交側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ある種の例および実施形態の態様および特徴が本明細書で議論/記載される。ある種の例および実施形態のいくつかの態様および特徴を慣習的に実装することができ、これらは、簡潔にするために詳細には議論/記載しない。したがって、詳細に記載されずに本明細書で議論される装置および方法の態様および特徴は、そのような態様および特徴を実装するための任意の慣習的な技法にしたがって実装することができることを理解されよう。
【0015】
本開示は、ケーンから引き出される光ファイバの品質を危うくする破片および欠けた端面を生成すると知られている機械的技法の代わりにエネルギーの印可を使用して、光ファイバへと形成するためのケーンをある長さのフィラメントの残りから分離することによるガラスフィラメントを処理するための方法を提示する。ケーン分離のためのエネルギーの使用は、破片および欠陥がほぼないきれいな端面を生成し、いくつかの場合には、汚染物質の浸入を防止するため閉じることができる。また、クリービングなどといった機械的技法は、より大きい直径のフィラメントを断ち切るのにあまり適さない場合がある一方で、エネルギーベースの手法は、エネルギー特性を好適に選択することによって、フィラメントの直径に適応させることができる。
【0016】
図1は、本明細書に記載されるようなガラスフィラメント処理のための例示の方法におけるステップを記載するフローチャートを示す。第1のステップS1では、方法は、ガラスフィラメントを準備するステップを含む。これは、溶融石英などのガラス材料から形成され、光ファイバのための所望の構造に適した断面構造を有するが、ファイバのために意図されるものより大きい直径を有するある長さのフィラメントである。フィラメントは、典型的には、それをガラスプリフォームまたはプリフォーム組立体から引き出すことによって製造されており、ガラスプリフォームまたはプリフォーム組立体は、やはり、好適な構造であるが依然としてより大きい縮尺を有しており、所望の構造を形成するためガラスチューブ、毛細管、およびロッドを積み重ねること、さもなくば配置することによって生成される。フィラメントをプリフォームから引き出すのは、当業者が理解するように、引出塔の中で実行することができる。最終的な光ファイバを作るために、フィラメントは、「ケーン」と呼ぶことができ、その各々を光ファイバへと引き出すことができる、個別のより短い長さまたは部分へと分割または分離されることになる。図1の方法は、フィラメントの残りからのケーンの分離を達成するステップを示しており、ステップは、引出塔内で、プリフォームから新たに引き出されたフィラメントに実行することができ、そのため、処理によって、フィラメントが引き出されるとフィラメントから連続したケーンの部分が取り出される。あるいは、フィラメントは、プリフォームから連続した長さで引き出され、引出塔の外側で、別個のステージとして分離した部分へと処理される場合がある。
【0017】
第2のステップS2では、エネルギーがフィラメントに印可される。これは、下でさらに記載されるように、様々な方法で行うことができる。エネルギーは、所望の場所でフィラメントに向けられ、フィラメントを部片または部分へと分割する。部片または部分は、ケーンと、フィラメントの残りの部片または部分を形成するために分離される(方法を繰り返すことによって、残りの部片または部分から、さらなるケーンを分離することができる)。第3のステップS3では、印可されるエネルギーは、所望の場所で、フィラメントの幅または直径の減少をもたらすために使用される。理解されるように、ガラス材料へのエネルギーの供給によって、ガラスに材料の変化がもたらされる。エネルギーの供給は、フィラメントの狭窄部を形成するため好適に取り扱い、導くことができる。これを達成するための技法は、下でさらに記載される。
【0018】
第4のステップS4では、フィラメントのケーン部分およびフィラメントの残りの部分、言い換えると、所望の場所の減少した幅の両側のフィラメントの部分が離される。具体的には、ケーン部分は、残りの部分から離され、この方法で、分離したケーン部分が得られて、所望の場所で残りの部分から分離される。ケーン部分の動きは、様々な方法で達成することができる。
【0019】
一例では、ステップS3のエネルギーの印可は、フィラメントの直径をゼロでない値に減らすために実行される。言い換えると、フィラメントは、所望の場所でより薄くなるが、ケーン部分は、依然として残りの部分と一体である。次いで、2つの部分の間に相対的に長手向きの動きを導入することによってケーン部分が残りの部分から分離される。ここで、長手方向とは、フィラメントの長さに沿った(その長手軸に沿った)方向である。処理がどこで実施されているのかに依存して、一方または両方の部分が動かされる場合がある。引出塔では、たとえば、フィラメントがプリフォームから引き出されると両方の部分を進めることができ、フィラメントの遠位端でのケーン部分の進行を増やすことによって相対的な動きがもたらされる。所望の場所における幅の減少および/またはガラスの組織の変化によって、フィラメントに脆弱性がもたらされる。ガラスは、この点で構造的な完全性が減少する。したがって、2つの部分を互いから離して動かすことによって、ガラスを破損する、折る、せん断する、引き離す、さもなくば分割することが引き起こされ、その結果、ケーン部分がフィラメントの残りの部分から分離される。同様の分割は、ケーン部分の横向きまたは曲げる動きなどといった異なる方向に沿った部分の相対的な動きによって達成することができる。
【0020】
別の例では、ステップS3のエネルギーの印可は、フィラメントの直径をゼロに減らすように実行される。そのため、ケーン部分は残りの部分と一体ではないが、依然としてそこに直ぐ隣接している。典型的には、これは、より高いパワーまたはより長い時間で送達されるエネルギーなどといった、所望の場所により多くのエネルギーを印可することによって達成することができる。したがって、残りの部分からケーン部分の完全な分離または切断を引き起こすのに、エネルギーの印可だけで十分である。したがって、ステップS4における動きは、残りの部分に隣接するケーン部分の位置からケーン部分を取り出すことであり、そのため、ケーン部分は、残りの部分から隔離され、保管またはさらなる処理に好適な状態に置かれる。動きは、以前の例でのように、2つの部分間の相対的に長手向きの動きであってよく、そうでなくてよい。
【0021】
図2は、本開示の方法を適用できるある長さのガラスフィラメント10の概略透過側面図を示す。フィラメント10は、(フィラメントの描かれた部分の上および下に延びる)長さL、長手軸A、および幅または直径Wを有する。フィラメント10は、名目上、典型的には長手軸Aに直角にフィラメント10を横断する所望の場所Dで、ケーン部分12と残るまたは残りの部分14へと分割される。残りの部分14は、フィラメント10が引き出されるプリフォームまたはプリフォーム組立体(図示せず)から延びてよく、延びなくてよい。本開示の方法は、所望の場所Dにおける残りの部分14からのケーン部分12の分離に関し、そのプリフォームからのフィラメント10の引出期間、または引出後のいずれかに実行することができる。
【0022】
フィラメント10は、最終的な光ファイバの所望の構造により大きい縮尺で対応する、ガラス材料から形成される断面構造を有する。本明細書の方法は、任意のファイバ構造に適用可能であって、この点で制限されない。
【0023】
図3は、フィラメント10の可能な断面構造のいくつかの例を示す。図3Aは、全固体光ファイバを形成するための構造を示し、したがって、フィラメントは、ファイバ構造のコアとクラッドが異なる値の屈折率によって規定される固体ガラスロッド16を備える。図3Bは、単純な中空コアファイバについての構造を示し、フィラメントは、ファイバのコアを形成することになる中空の中心部20を有するガラスチューブ18を備える。図3Cは、より複雑な中空コア光ファイバについての構造を示し、フィラメントは、ファイバの外部クラッドまたはその一部を形成する中空のガラスチューブ18、および、ファイバの内部クラッドを形成するチューブ18の内部の周りにリング状に配置される複数の入れ子状の対の中空ガラス毛細管22を備える。中空の空間20が毛細管22のリングの内側に残り、これがファイバの中空コアを形成することになる。中空コアファイバのこの特定の設計は、入れ子状反共振ノードレスファイバ(NANF)として記載することができる。
【0024】
したがって、図3Bおよび図3Cの例示の構造は、フィラメントに沿いに、またフィラメントから切断されたケーンから形成される完成したファイバ中に長手方向に延びる、孔または中空の空間である1つまたは複数の管腔を備える。任意の他の管腔ベース構造を、現在提示した方法でやはり処理することができる。これらは、内部コア用リングの中の離間したまたは離間しない入れ子状または入れ子状でないより多いまたは少ない毛細管、管腔または毛細管の周期的配列によって規定される内部クラッドを備える中空コア光バンドギャップ(またはフォトニック結晶)ファイバ構造、および管腔の周期的配列をやはり利用するカゴメファイバ構造を含むことができる、他の反共振中空コアファイバ構造を含む。本開示は、この点でまったく制限されず、任意の光ファイバ設計についてのガラス構造に適用することができる。
【0025】
図4は、本開示にしたがってケーンをフィラメントから分離する例示の方法を実行するように配置される装置の概略図を示す。図2および図3に関して上で記載したような任意の断面構造を有してよい、側面から見たガラスフィラメント10は、分離を実施するために配置される。描かれるように、フィラメント10は、引出塔中のプリフォーム(図示せず)から下向きの方向に引き出される場合にそうであるように、垂直に配置される。能動的に引き出されない場合、フィラメントは、プリフォームから引き出された後、または引き出す際の停止期間に、引出塔の中で吊り下げられる場合がある。あるいは、フィラメントは、引出後、引出塔から離れて処理する場合がある。この場合、フィラメントは、描かれるように垂直に向けられる場合があるが、都合のよいように、水平位置または中間位置で処理することも同様にできる。
【0026】
フィラメント10の場所、必要な長さのケーンに対応するフィラメントの自由(下)端(図示せず)からの指定される距離は、所望の場所Dとして指定され、フィラメント10がケーン部分と残りのフィラメント部分に分離されるべき所望の長手方向の場所または位置である。フィラメントは、フィラメント10を所望の場所Dの一方の側(この例では、上)に保持する1つもしくは複数のクランプまたはクランプデバイスを備える、第1のクランプ装置24によって処理するために固定される。したがって、第1のクランプ装置24は、分離後に残りの部分14になるフィラメント10の部分を保持する。1つもしくは複数のクランプまたはクランプデバイスを備える第2のクランプ装置26が、所望の場所の他方の側(この例では、下)でフィラメント10を保持する。したがって、第2のクランプ装置26は、分離後にケーン部分12になるフィラメント10の部分を保持する。最初のステージでは、フィラメント10にエネルギーを印可する前に、クランプは、距離d1だけ分離される。
【0027】
エネルギー源からエネルギーがフィラメントに印可される。エネルギーを印可する目的は、ガラス材料中にエネルギーを送達して、その温度を上昇させて、フィラメントの形状の変化をもたらす状態の変化を引き起こすことである。下でさらに記載されるように、状態の変化は、軟化または切断であってよい。したがって、この効果をもたらすことが可能な任意の形態のエネルギーを使用することができる。図4の例では、エネルギー源は、レーザ光30のビームを放出するレーザ28である。この簡単な例では、ビーム30は、所望の場所Dに沿ってフィラメント10の外面上に向けられる、焦点34を形成するために、1つまたは複数のレンズ32で合焦される。
【0028】
レンズ32は、ビーム誘導システムであると考えることができ、これは、エネルギーおよびエネルギー源の性質、フィラメントのサイズ、およびどこで分離方法が実行されるのかに依存して様々な方法で構成することができる。レーザ光のビームの場合に、ビームは、図4のように合焦して、ほぼ円の形状、またはほぼ直線、または何らかの中間もしくは他の形状となる、フィラメント面の焦点を形成することができる。あるいは、ビーム誘導システムは、エネルギーをフィラメントに向けてほぼ平行にすることができ、ここで、平行ビームは、円、直線、中間、または他の断面形状を有することができる。有用なことに、図4に描かれるような単一の点ではなくむしろ、フィラメント10の外周の周りに分散するようにエネルギーを送達することができるが、十分なエネルギーを局所的な方式で送達できる場合、この配置が実用的な場合がある。したがって、フィラメントの周りに円周方向に配設される1つまたは複数の領域に所望の場所でエネルギーを印可することができ、領域は、不連続な点であってよく、または連続的もしくは実質的に連続的なリングの形状を有することができ、リングは、外周の周りに同時に送達することで形成することができ、または、エネルギーが印可される隣接するもしくは重なり合う領域から作ることができる。
【0029】
図5Aは、レーザ28からのレーザビーム30を送達するための例示のビーム誘導システム32の簡略図を示す。ビーム30は、円形のビーム断面を有するレーザ源28から放出され、軸が平行な、負の円柱レンズ36と後続する正の円柱レンズ38を備えるビーム誘導システム32を通過する。これらのレンズ36、38は、ビームを細長い楕円の断面に形作るように働き、ビームは、球面レンズ40を通過して焦点34へと、フィラメントに向けられる。
【0030】
図5Aは、結果として得られる楕円焦点34を示す。有用なことに、楕円の点の長軸は、フィラメントの長手軸に直交するように配置することができ、そのため、点は、所望の場所の上下にフィラメントの長さに沿って遠くにまで届くことなく、所望の場所でフィラメントの外周の周りに有意に延在することができる。このことが、所望の場所へ効率的にエネルギーを送達する助けとなる。
【0031】
レーザがエネルギー源として使用される場合、その光の波長、出力パワー、および動作形態(連続波またはパルス状出力など)は、フィラメントに適切な量のエネルギーを送達する効率を最大化するために、直径およびガラス組成などといったフィラメント特性、ならびにビーム送達システムの構成を参照して選択することができる。例として、10.6μmまたは9.3μmで動作する連続波二酸化炭素レーザを使用することができる。あるいは、レーザ出力は、ピコ秒またはフェムト秒の持続期間の、超短パルスの形であってよい。他の有用な波長は、532nmまたはその周りなどといった、スペクトルの緑領域にある。
【0032】
しかし、エネルギー源は、レーザである必要はない。他の例では、エネルギー源は、水素-酸素燃焼などといった、燃焼の形でエネルギーを送達する燃焼発生源であってよい。さらなる代替実施形態は、たとえば、プラズマトーチの形でエネルギー源から送達されるエネルギーとしてのプラズマの使用である。
【0033】
図6Aは、フィラメントの周りに円周方向に配設される3つの領域に対して同時に、レーザビームの形で光エネルギーを送達するように構成される、さらなる例示のビーム誘導システムの、フィラメントの長手軸に沿って上下から見た図としての、概略図を示す。レーザ28からの最初の出力ビーム30は、第1のビームスプリッタBSaに入射する。第1のビームスプリッタBSaは、光を2つの部分へと分割する。そのうちの1つ、30aは、ビームスプリッタBSaによって反射され、ビーム30aをフィラメントの表面における焦点34aに合焦する第1のレンズLaを介して、第1の対のミラーMa1とMa2によって、フィラメント10上の第1の領域に向けられる。元のビーム30の第2の部分は、第2のビームスプリッタBSbへと第1のビームスプリッタBSaによって伝送され、第2のビームスプリッタBSbが光を2つの部分に分割する。1つの部分30bは、第2のビームスプリッタBSbによって、第2の対のミラーMb1とMb2に反射され、ビーム30bをフィラメント10の表面上の焦点34bに合焦する第2のレンズLbを介して、第2の対のミラーMb1とMb2がビーム部分30bをフィラメント10上の第2の領域に向ける。最終的に、光30cの残りの部分は、ビーム30cをフィラメント10の表面上の焦点34cに合焦する第3のレンズLcを介して、第2のビームスプリッタBSbによってフィラメント10上の第3の領域に向けて伝送される。3つの領域34a、34b、34cは、所望の場所Dにおいて、フィラメント10の外周の周りで均等に離間される。したがって、単一のビームで可能となるよりも、外周のより大きい割合がレーザビームのエネルギーにさらされる。図5Bの例でのように、レンズLa、Lb、Lcがビームを細長い焦点へと形作るように構成される場合に、露光を拡大することができる。複数の細長い点が、外周のほとんどまたは全てを包み、したがって、所望の場所の周り全部のフィラメントを露光するように配置することができる。ビームスプリッタの仕様が適切に選択される場合、エネルギーのより均等な分配をフィラメントに送達するために、各ビーム部分が、同じ量のレーザエネルギーを含むことができるが、これは、本質的ではない。
【0034】
他の例では、レーザビームは、より多いまたはより少ないビームスプリッタおよびレンズを設けることによって、より多いまたはより少ない部分へと分割することができる。各部分は、フィラメント上の、異なる外周に離間された領域上に向けることができる。間隔が均等で、各ビーム部分がほぼ同じエネルギーを有する場合、所望の場所の周りにエネルギーの均等な分配が送達される。図6Aの例のレンズおよび平面鏡は、たとえば、放物面鏡などといった非平面鏡と交換することができる。また、別個のレーザを使用して、各ビーム部分を直接送達することができ、そのため、ビームを分割するビームスプリッタが必要でない。
【0035】
焦点サイズ、ビーム部分中のエネルギーの量、ならびにフィラメントのサイズおよび構造を含む要因に依存して、フィラメントの外周の周りの1つまたは複数の領域に静的にエネルギーを送達することが、ガラスに要求されるエネルギーを提供するのを達成するのに好適な場合がある。他の場合では、より多くの領域または完全な外周がエネルギーを確実に受け取ることがより好適な場合がある。これを達成するため、図6Aに示されるもののような全ビーム送達システムは、ビームまたはビーム部分の1つまたは複数の焦点をフィラメントの周りで完全にまたは部分的にたどるように、フィラメントの長手軸と一致する軸の周りに回転可能であるように構成することができる。この方法で連続的な外周領域にエネルギーをさらすことが実現することができる。または、エネルギーが連続的に送達されない場合、離間した領域の周方向配置で実現することができる。あるいは、たとえばスキャン配置で、様々なグループのミラーおよびレンズに対応するビーム部分を所望の場所の異なる領域に向けるために、様々なグループのミラーおよびレンズを動かすことができる。
【0036】
図6Bは、光エネルギーをレーザビームの形で、フィラメントの周りのほぼ連続したリングにわたって送達するように構成される、別の例示のビーム誘導システムの、側面図としての概略図を示す。反射ビーム88を形成するために、レーザ28からの出力ビーム30をフィラメント10とほぼ同軸に向けるように平面鏡82が配置される。出力ビーム30は、かなりの部分がフィラメント10を通過して平面鏡82に到達するために、フィラメント10の幅より広い直径を有するように構成される。平面鏡82には、孔84またはそれを通過することをフィラメント10に可能にさせる他の手段が設けられる。さもなくばフィラメント10に入射する出力ビーム30の部分をブロックし、出力ビームの残りがバッフル86を通過して平面鏡82に到達するのを可能にするため、任意選択のバッフル86を含むことができる。反射ビーム88は、フィラメント10をほぼ囲む円柱形状を有するが、フィラメントの長さ方向に沿って伝播して放物面鏡90に入射する。平面鏡82と同様に、放物面鏡90は、孔92またはそれを通過することをフィラメント10に可能にさせる他の手段が設けられる。放物面鏡90は、フィラメント10の周りのリングに反射ビーム88を合焦させ、所望の場所Dでフィラメントの外面に、または外面近くに合焦させるように構成される。たとえば、フィラメント10またはバッフル86によって影になる反射ビーム88中の区域のために、フィラメントの周りでリング焦点は連続しない場合があり、所望の場所Dにおけるレーザエネルギーに対するフィラメントの完全な周方向の露光は、ビーム誘導システムとフィラメントの相対的な回転運動によって達成することができる。
【0037】
フィラメントが引出塔中のプリフォーム組立体から引き出される間、図6Bおよび図6Cの例などといったビーム誘導システムが採用される場合、引出方向およびフィラメントの長手軸に平行に動くため配置されるキャリッジ94上に取り付けられる放物面鏡90を有するのは有用である。
【0038】
図6Cは、この場合、所望の場所Dで、フィラメントの周りのほぼ連続したリングの周りで掃引されるレーザビームの形で光エネルギーを送達するように構成される、さらに別の例示のビーム誘導システムの、側面図としての概略図を示す。本システムは、図6Bの例でのように、平面鏡84およびフィラメント10の周りに環状に配置される対向放物面鏡90を備える。しかし、本システムは、平面鏡84以前が異なって構成される。レーザ28からの出力ビーム30は、フィラメント10の長手軸にほぼ平行だが長手軸からはオフセットされる伝播方向に沿って、平面掃引鏡96に向けられる。出力ビーム30のビームウエストは、掃引鏡96の面と一致して配置することができる。掃引鏡96は、掃引鏡96上の出力ビーム30の入射点に中心がある回転運動のためモータ100によって駆動されるシャフト98上に取り付けられる。しかし、掃引鏡96は、シャフト98の軸(回転軸)と、鏡96の面に対する法線との間に角度があるように取り付けられる。したがって、シャフト98および掃引鏡96が回転すると、掃引鏡から反射されるビーム102に与えられる伝播方向は、シャフト98の回転位置にしたがって変化する。この変化する伝播方向は、反射ビーム102aによって第1の位置で図6C中に示され、反射ビーム102bによって第2の位置で想像線で示される。したがって、反射ビーム102は、掃引鏡96が回転すると、円錐の面の上を進む。同様の様式で反射ビームを掃引するための代替方法としては、プリズム-プリズム対(リスレープリズム)の使用が挙げられる。反射ビーム102は、オフアクシス放物面鏡104上に入射する。オフアクシス放物面鏡104は、必要な場合、孔106またはレーザ28からの出力ビーム30がそれを通過するのを可能にする他の手段を有することができる。放物面鏡104は、その面を離れる2重反射ビーム108が、常に平面鏡82に対して同じ平行方向に沿って伝播するため、シャフト98の位置に依存しない伝播方向を有する。このことによって、ビーム88が合焦放物面鏡90に向けられて、ビームを以前のように所望の位置Dに合焦させる。掃引鏡96を離れる反射ビーム102の伝播方向が変化することによって、フィラメント面のビームの焦点が、フィラメントの外周の周りで掃引させられる。この方法では、ビーム誘導システム
またはフィラメントのいずれかを回転させる必要なしに、エネルギーがフィラメントの周りの連続したリングに沿ってフィラメント上を露光することができる。
【0039】
言及したように、エネルギーは、レーザビームの形の光エネルギーである必要はない。フィラメントの周りの複数の領域で同時に露光するのを可能にする同様の送達装置を、他のエネルギータイプで設けることができる。たとえば、エネルギーが燃焼に由来する場合、いくつかの燃焼源を、フィラメントの周りに、任意選択で回転可能な配置構成で配置することができる。エネルギーがプラズマトーチからのプラズマジェットとして送達されるプラズマである場合、いくつかのプラズマトーチを、フィラメントの周りに、やはり任意選択で回転可能な配置構成で配置することができる。
【0040】
図7は、図4に示されるものと同様だが、その後エネルギーがフィラメント10に印可され始める、または印可されている例示の装置の概略側面図を示す。この例では、エネルギー源は、所望の場所Dで、フィラメント10の周りの1つ(図示される)または複数の領域に送達される燃焼40である。この例では、所望の場所でフィラメントのガラス材料を軟化または部分的に溶融させるために、送達されるエネルギーの量は、フィラメント10の性質および特性を参照して選択される。軟化によってフィラメント10の変形が可能になる。そのため、フィラメント10の幅Wは、所望の場所で減って、より小さい非ゼロの幅W'を有するネック、ウエスト、または「くびれ」部分もしくは領域が形成される。変形は、様々な手段のいずれかによって可能にすることができる。フィラメントが1つまたは複数の管腔を含む断面構造を有する場合、軟化によって、内部構造の歪みおよび管腔のつぶれが引き起こされる場合がある。そのため、フィラメントの外壁がやはり内向きにつぶれて幅が減る。
【0041】
図8は、幅の減少を可能にするための例示の装置の概略側面図を示す。ガラスが軟化した後(好都合だが必ずしも必要ではないが、エネルギー送達が完了した後)、圧着ジョー42または同様のデバイスを、所望の場所でフィラメントに印可して、ガラスをより細い形に再整形してネックを作成するために、所望の場所の平面に内向きに圧力を印可するように動作すること(挟む行為または圧縮する行為)ができる。これは、固体フィラメントと中空または部分的に中空のフィラメントの両方に適用可能である。
【0042】
さもなくば、幅の減少を行うまたは拡大するために、ケーン部分12と残りの部分14との間に、何らかの相対的な動きを行うことができる。動きは、長手方向に、フィラメントの軸に沿っていてよく、そのため、軟化したガラスが長い長さにわたって引き延ばされ、したがって、より小さい幅を採用することになる。または、動きは、軟化したガラスを変形して圧縮することになるねじる行為を行うための回転であってよい。
【0043】
一度狭いネック部分が作成されると、ガラスが依然として柔軟な状態である(したがって、上がった温度を維持するためにエネルギーが印可され続けてよい)間に、ケーン部分12がフィラメント10の残りの部分14から分離される。
【0044】
図9は、分離が実施された後の図7の例示の装置を示す。分離をするため、ケーン部分12と残りの部分14は、長手方向に、互いから離れて動かされる。1つまたは両方の部分を動かすことができるという点で、動きは相対的である。本例では、動きは、第1のクランプ装置24と第2のクランプ装置26の間の距離を、図4および図7の間隔d1からより大きい間隔d2に延ばすことによって実施することができる。軟化したガラス材料が延びてくびれ、図9に示されるように、2つの部分12、14の材料が引き離されて部分が分離するまで、ますます幅が狭くなることになる。
【0045】
あるいは、任意選択で圧着ジョーなどによって補助されるが、ガラスを軟化するため印可されるエネルギーの量は、ゼロの幅でくびれた領域の下のフィラメントを減らすことによって、分離を行うのにそれだけで十分であってよい。部分間の動きは、次いで、既に分離されたケーン部分を残りの部分から離して異なる場所に動かすように実施することができる。
【0046】
軟化ガラス手法が使用される場合、フィラメントの外面のガラスが内向きに動き、最終的に、部分12、14の各々の端部にわたって閉じて、部分端部に涙滴形状またはオージャイブ形状を残す。一般的に、これは、機械的ケーン分離技法によってもたらされる可能性がある端面の欠陥がなくなるという点で、有益である。フィラメントの内部構造中に1つまたは複数の管腔を有するフィラメントの特定の場合には、ケーン部分の端部および残りの部分の端部におけるガラスを閉じる整形は、管腔を閉じるまたは密封する働きをする。このことによって、分離プロセス期間と、保管およびさらなる処理などの後のステージ期間との両方で、管腔の中への汚染物質の浸入が防止される。したがって、この方法で製造されるケーンからその後引き出される光ファイバの品質は、機械的に分離されるケーンからのものより潜在的に改善される。
【0047】
分離を引き起こすために、間隔または分離d1をd2に増やさなければならない量は、フィラメントの直径および減らした幅W'のサイズに依存する。より厚いフィラメントは、その点で分離が起こる、幅をゼロにくびれさせるために、より大きい相対的な長手方向の動きが必要になる場合がある。
【0048】
フィラメントから一度分離されると、ケーン部分またはケーンは、知られているケーンおよびファイバ引出手順に沿って、マニピュレータまたはロボットアームなどによって、保管またはさらなる処理をするため、異なる場所に動かすことができる。第2のクランプ装置26を、この目的で使用することができる。
【0049】
代替実施形態として、第1のクランプ装置および第2のクランプ装置のうちの一方または他方を省略して、単一のクランプ装置だけによって処理するためフィラメントを固定することができる。そのような構成では、図でのようにまた引出塔でのように、フィラメントが垂直向きに固定される場合、ケーン部分とフィラメントの残りの部分の間の動きを実施するために重力を使用することができる。所望の場所のガラスが一度軟化したら、これが使用される1つのクランプ装置である場合、ネック部分がゼロの幅にまで細くなりケーンが分離されるまで第2のクランプ装置の重さによっておそらく助けられながら、ケーン部分が、重力の作用によってそれ自体の重さで下に落ちることになる。十分なエネルギーを急速に印可することによって、ゼロ幅のネック部分が作成され、その後、ケーン部分が落下し始める。そのため、重力の運動が、既に分離された部分が離れるように動かす。
【0050】
図10は、さらなる例にしたがったケーン分離の方法を実施するための装置の簡略図を示す。図4に関して記載した方法でのように、フィラメント10を、残りのフィラメント部分14と、残りのフィラメント部分14から分離されるべきケーン部分12とに分割する所望の場所Dの両側で、上の位置で第1のクランプ装置24によって、また下の位置で第2のクランプ装置26によって、引出塔の内側などで垂直にフィラメント10が最初に固定される。以前のように、第1のクランプ装置と第2のクランプ装置は、間隔d1だけ分離される。
【0051】
また、以前のように、装置は、焦点34を形成するレンズ装置32によって、所望の場所Dにおいて、フィラメント面上に合焦されてフィラメント面に向けられるレーザ光30のビームを放出するレーザ28の形でエネルギー源を含む。以前のように、レーザエネルギー源は、光を一部または全部の周方向領域に送達するために、フィラメントの周りに回転するオプションをもって、フィラメント10の外周の周りに、1つ、2つ、またはより多くの光の焦点または平行になった光の点を印可するため、好適なビーム誘導システムで構成することができる。同様に、エネルギー源は、1つまたは複数の燃焼源またはプラズマ源を代わりに備えることができる。
【0052】
この例は、ガラス材料を軟化するよりもむしろ、所望の場所でフィラメントのガラス材料を融除するような方法で主にエネルギーが送達されるという点で、以前の例とは異なる。軟化では、入れたエネルギーによって引き起こされる好適な温度の上昇に起因して、ガラス材料の状態変化は、溶融する、すなわち、固体ガラスから軟化した液体に近いガラスに進む。対照的に、融除は、送達したエネルギーの密度に依存して、固体から気体またはプラズマへとガラス材料の状態変化を引き起こす。より低い密度または流量では、固体ガラスは、蒸発または昇華によって気体へと変換される一方で、より高い密度では、固体材料を直接プラズマに変換することができる。したがって、融除は、フィラメントから材料の物理的な除去を引き起こす。除去は、フィラメントの外部または表面の1つまたは複数の層に限定することができ、この方法で、ガラス軟化例で達成したくびれによる幅の減少に沿っているが、それとは異なるメカニズムを用いて、所望の場所でフィラメントの幅が減少する。あるいは、融除は、フィラメントを効果的に切り裂いてその点で幅をゼロへと減らすのに十分な材料を除去することができる。
【0053】
当業者なら、軟化ではなくむしろ融除を行う方法でフィラメントにエネルギーを送達するために、エネルギー源に好適な動作パラメータを選択することが可能であろう。一般的に、軟化を行うよりも融除を達成するために、より高いエネルギー密度が必要となる。
【0054】
所望の場所にエネルギーを向けることによって、フィラメント中に、切れ目、溝、またはスロット44を作成するように材料を除去することによって、融除が実行される。スロット44は、好ましくは向きが周方向であり、ここで、スロット44は、フィラメントの長手軸にほぼ垂直に、フィラメントの外周の周りに位置合わせされる。(以前記載したように)フィラメントの周りに、図10の例のレーザビーム30などといったエネルギービームを印可した1つまたは複数の点を、相対的に回転運動することによって、1つまたは複数のスロット44を所望の位置に作ることができる。スロット44は、たとえば、単一のビームをフィラメントのすぐ周りに掃引することによって、フィラメントの周りに連続的なスロットとして、または、フィラメントの周りに離間した複数のビームのうちの異なる1つによって各々が切断される、一連の重なり合うもしくは隣接するスロットとして切断することができる。
【0055】
1つまたは複数のスロット44が存在することによって引き起こされる、非ゼロの幅へのフィラメント幅の減少によって、所望の場所においてフィラメントが弱くなる。したがって、2つの部分が離れるように動くように、ケーン部分12と残りの部分14の間に相対的に長手方向の動きをもたらすことによって、所望の場所でフィラメントを破壊することができる。
【0056】
図11は、その後、d1からd2へのクランプ装置の間隔の増加に対応する、ケーン12およびフィラメントの残りの部分14の相対的に長手方向の動きの後、ケーン12がフィラメントの残りの部分14から分離される図10の装置を示す。これは、融除をもたらすためエネルギーを印可した後に実行することができる。そのため、エネルギー源(レーザ)28は、出力ビームのない、非動作状態で示される。長手方向の動きによってもたらされる歪みによって、所望の場所の弱い点で、フィラメントが優先的に折られ、ケーン12が、フィラメント10の残りの部分から分離するのを可能にする。スロット44は、所望の場所での弱さを増加させ、したがってケーン12の分離を容易にする、フィラメント幅のより大きい割合であるスロット深さを有する、任意の深さに切断することができる。中空コアフィラメントにとって好都合な深さは、およそ外部ガラスチューブの壁厚である。あるいは、1つまたは複数のスロットは、ゼロの減少した幅を形成して、フィラメントからケーン12を完全に切り取るのに十分な深さであってよい。
【0057】
図9に関して議論したように、1つのクランプ装置だけを使用して、フィラメントを垂直向きに固定し、ケーンを分離するため相対的な長手方向の動きを行うために重力を使用することができる。
【0058】
融除をもたらすためにレーザ光または燃焼またはプラズマとして送達されるエネルギーを使用することによって、ノコギリ、研削砥石、またはダイアモンドブレード、セラミックブレード、もしくはスチールブレードに依拠する機械的クリービング技法が使用されるときに作成される場合があるガラスフィラメント材料の切れ端などといった固体の破片を生成することなく、スロットを切断することが可能になる。
【0059】
閉じるべきケーンの端部によって、何らかの管腔を封止するのが可能になる、ガラス軟化実施形態とは対照的に、融除手法によって、フィラメントの内部構造に最小の歪みでケーン分離を達成することが可能となり、そのため、管腔を開いたままにすることができ、ケーンの端部が光ファイバの中に引き出されることが可能である。管腔の一部または全部を開いたままにするのは、1つまたは複数の内圧が制御されるファイバ引出方法と関係がある。このことによって、浪費が減り、ファイバ出力を最大化することが可能になる。印可されるエネルギーのパラメータは、内壁の歪みおよび管腔の閉鎖を最小化するために、内部フィラメント構造を参照して選択することができる。言い換えると、融除効果を最大化しガラスの溶融または軟化を最小化するために、エネルギー印可を定式化することができる。
【0060】
言及したように、レーザビームまたはエネルギーの他の形の印可による融除は、典型的には蒸気またはプラズマを作成するプロセスである。任意の蒸気は、その後凝結する場合がある。この場合、凝結は、フィラメントの外面上、切断スロットにより露出される端面上、および管腔がある場合には、フィラメントの内面上にあってよい。この凝結は、材料が存在するべきでない場所に付着するという点で、(フィラメント自体からのガラス材料であろうとも)事実上汚染物質である。これは、ファイバへの分離したケーンの引出に影響をおよぼす場合が有り、光伝播損失の増加がもたらされるなどファイバの光特性を変更する場合がある。したがって、凝結を減らしてフィラメントの品質を保つために、融除の副産物が生成されるとき、融除の副産物を除去することが提案される。
【0061】
図10および図11に戻って、装置は、簡略化した形で示される蒸気取扱いシステム50をさらに備える。蒸気取扱いシステム50は、空気取扱いユニット52および一方の端部で空気取扱いユニットに接続されるダクト54を備える。ダクト54の他方の離れた端部(または複数の端部)56は、フィラメント10に隣接して配置され、所望の場所Dおよびエネルギースポット34が印可されるフィラメント10の領域に近接する。
【0062】
図12は、より詳細な、例示の空気取扱いユニットの簡略図を示す。蒸気取扱いユニット50は、関連する第1の1つまたは複数のダクト54aを有する第1の空気取扱いユニット52aを含む。第1の空気取扱いユニット52aは、きれいで乾燥した空気(または、窒素などの代替ガス)を第1のダクト54aを通して送達する。第1のダクト54aは、第1のダクト54aの遠位端56における1つまたは複数のノズル58a、58bへの放出ダクトである。2つ以上のノズルの場合には、これらは、フィラメント10の外周の周りに、所望の場所Dに近接し、フィラメント面からわずかに離間されて配置することができる。あるいは、ノズル58a、58bは、フィラメント10の軸の周りに円周方向に配置される1つまたは複数のスロットの形であってよい。ノズル58a、58bは、各々それぞれのノズルからの空気流60a、60bとして第1の空気取扱いユニット52aから送達される空気を放出する。空気流60a、60bは、所望の場所Dでフィラメント10に印可されるエネルギー(図示せず)の影響によって発生した蒸気および/または粒子を取り込むような様式でフィラメント10に当たるように配置される。空気流60a、60bは、取り込んだ蒸気および粒子(一般的に、破片または融除の副産物と呼ぶ場合がある)を、それらがフィラメント10から離れて動くように、運ぶ。たとえば、流れる空気がフィラメント面に当たり、外向きの方向にはね返って、空気と一緒に破片を運ぶことができる。この方法では、破片は、フィラメント10の付近から取り除かれ、フィラメント10の外面および/または内面上に破片が付着する危険が減る。この除去の有効性を拡大するため、蒸気取扱いユニット50の空気取扱い能力は、抜取りダクト54cを取り付けた第2の空気取扱いユニット52bによって補うことができる。第2の空気取扱いユニット52bは、空気放出ユニットではなくむしろ空気吸入ユニットである。抜取りダクト54cの遠位端56は、適切に配置されたノズル58cを有し、蒸気および粒子を取り込んだ流れる空気60a、60bを収集する。1つより多い抜取りダクト54cを設けることができ、または、抜取りダクト54cが、1つより多い端部ノズル58cを有することができる。
【0063】
図10に戻って、レーザビーム30などの融除エネルギーが、フィラメントの長手軸にほぼ垂直な方向に沿って(垂直フィラメントの描かれる向きに水平に)、フィラメント面上に送達されることに留意されたい。図3Cの例などの、管腔を備える内部断面構造をフィラメント10が有する事例では、内部毛細管22の壁の前に、外部チューブ18が切り取られるのは明らかであろう。エネルギーが、所望の場所Dで焦点34に運ばれるビーム30の中にある場合、エネルギービーム30は、フィラメント10を通過する前に、焦点34の後で発散することになる。発散したビームは、外部チューブ18の反対の内面を含むフィラメントの内部構造上に入射することになる。水平に向けられたビームでは、発散したエネルギーが所望の場所の上と下の両方に広がり、したがって、ケーン部分12と残りのフィラメント部分14の両方に入射することになる。これは、蒸気取扱いシステム50にアクセス不可能であり、したがってその後ケーン部分12と残りのフィラメント部分14の両方の内側で凝結する可能性がある蒸気を発生する場合がある。したがって、フィラメント10の両方の部分が、内部的に汚染される可能性がある。
【0064】
図13は、この状況に対処するために変更された装置の簡略側面図を示す。ビーム誘導システム(描かれた簡単な配置ではレンズ32を備えるが、これはより大幅に複雑であって、複数のビームを取り扱う、または、図6A図6B、もしくは図6Cに関して記載したような複数のビーム方向を有することができる)は、1つまたは複数のエネルギービーム30が(描かれたフィラメント10の垂直の向きに対して)下向きに傾いた方向に向けられるように配置される。このことによって、焦点34が所望の場所Dでフィラメント10の外側に入射して、正しい位置でケーン部分12の分離を行うこと可能になる一方で、焦点34の後の発散するビームは、ほぼまたは完全にケーン部分12の中、すなわち、所望の場所Dの下となる1つまたは複数の領域35(図13では影付き)にわたってフィラメント10の内部構造に入射する。この方法では、任意の蒸気の凝結を、ほぼケーン部分12の中に限定することができる。
【0065】
ここまでの例では、フィラメントが引出塔の中でプリフォームから引き出される間、または引き出した後のいずれかで、ケーンをより大きい長さのガラスフィラメントから分離するという状況で主に記載してきた一方で、本分離方法は、この点に限定されない。特に、その例および修正形態のいずれかを使用して、ケーンの一方または両方の端部の部分を除去することにより異なる長さに既存のケーンを切断することができる。これは、たとえば、特定の長さのケーンを実現するためであってよい。たとえば、ケーンが閉じたまたはくびれた端部を有するように引き出したフィラメントからケーンを得るために軟化ガラス分離方法が使用される場合に、端部を除去するために融除分離方法を使用することができる。そのような場合、図13に関して記載される斜めビームの適用を使用して、除去される端部への内部蒸気凝結を制限し、それによって、最終的なケーン中の管腔の汚染を回避することができる。したがって、「フィラメント」に対する以前の記載における言及は、プリフォームから引き出されたまたは引き出されており、ケーンまたは他のより短い長さに切断するのが必要なフィラメントに、および、1つまたは複数の部分が分離されるべき既に分離されたケーンにも適用することができる。「ケーン部分」への言及は、フィラメントから分離されているケーン、または、くびれたもしくは閉じた端部などといったケーンから分離されている任意の部分を意味する場合がある。「フィラメントの残りの部分」(および同様の用語)への言及は、ケーンの分離後に残るフィラメント、または、一方または両方の端部の分離後に残るケーンの塊に適用することができる。本方法は、仕上がった光ファイバを所望の長さに切断すること、または、端部をトリミングすることのために使用することもできる。
【0066】
既に記載したように、相対的な長手方向の動きにより分離を引き起こすための、単一のクランプ装置(または同様の固定もしくは保持デバイス)および重力の使用は、既存のケーンから部分を除去する状況において有用で好都合であってよい。
【0067】
よく理解されるように、本明細書に記載される例にしたがった方法が採用される一方で、フィラメントが引出塔の中でプリフォーム組立体から引き出されるとき、本方法を可能にするための装置は、連続した引き出しを実現するためにプリフォームから下向きにフィラメントを引っ張るためのシステムまたはデバイスを含むことができる。
【0068】
図14Aおよび図14Bは、一般的に「ケーン引張機」と呼ばれる、この目的のための例示的なデバイスの簡略図を示す。デバイス70は、一対の回転可能なベルト72を備え、その各々は、ベルトを教示した構成に保持する一対の離間した駆動ホイール74の周りを通る連続ループの形を有する。同じ方向へ、その対の中の2つの駆動ホイールを回転することによって、ベルトが同じ方向にぐるぐると引っ張られる。周りでこの回転が生じる軸Xは、2つの駆動ホイールの軸の間の中間にある。2つのベルト72は、それらの回転軸Xが平行な対向する構成で配置され、そのため、ベルト72が回転すると各々が可動面を提供するベルト72の外向き面76が、互いに面して、対向して平行な可動面76を実現する。対向した可動面76は、フィラメント10の幅に対応する幅Wだけ離間される(好都合なことに、ベルト72の相対的な位置を調整して、ベルトをこの配置構造の内外に動かすことができる)。したがって、フィラメント10は、ベルト72の2つの対向する面76の間で把持され、その長手軸Aをベルト72の回転軸Xと垂直で可動面76の運動方向と平行に向けることができる。一方のベルト72の駆動ホイール74が、他方のベルト72の駆動ホイール74と反対の方向に駆動される場合、2つの可動面76は、矢印で示されるように同じ方向に動くことになる。したがって、フィラメント10は、その同じ方向に(描かれる向きでは下向きに)、可動面76間の空間を通して連続的に供給されることになる。これは、プリフォーム(図示せず)から新しいフィラメント10を連続的に引っ張り、それによって、ケーンを分離できる新しいフィラメント10の連続供給が可能になる。
【0069】
駆動ホイール74は、フィラメント10の引っ張りの自動制御を可能にするようプログラムされるコンピュータ化したコントローラを含むことができる駆動メカニズム(図示せず)の制御の下である。
【0070】
図14Aは、ベルト72の回転軸Xを横切る平面における、ケーン引張機70の側面図を示す。図14Bは、ベルト72の回転軸Xと平行な平面における、(フィラメントのない)ケーン引張機70の垂直側面図を示す。このことから、それらの回転軸Xが互いに平行でフィラメント軸Aに垂直であり、可動面がフィラメント軸にやはり平行な方向に動くのを実現するという点で、2つのベルト72が同じ配置構造を有することを理解することができる(というのは、一方は、この視野角以外からこの背後に隠されるためである)。
【0071】
図15Aおよび図15Bは、本開示の態様にしたがった例示のケーン引張機の簡略側面図を示す。ケーン引張機80は、図14Aおよび図14Bに関して記載された様式で構成され動作可能な、一対の対向する回転可能ベルト72a、72bを備え、反対の方向に駆動されるベルト72a、72bによって下向きにフィラメント10を把持して連続してフィラメント10を供給するように働く、距離Wだけ離間した一対の対向する可動面76を設ける。
【0072】
しかし、この例では、ベルト72a、72bの回転軸Xa、Xbは、互いに平行でない。その代わり、それらは、フィラメント軸Aにやはり平行な平行面にあるが、各々が、フィラメント軸Aに対して(したがって、ケーン引張機を通るフィラメントの進行方向または供給方向に対して)ほぼ等しいが反対の直角でない角度に位置決めされる。これは、各ベルト72a、72bが可動面76の平面内だが反対の方向に垂直方向(フィラメント軸A)から離れて傾くのを示す図15Bから理解することができる。このため、2つの回転軸XaとXbの間に角度Yがある。一方のベルト72aの回転軸Xaは水平方向より上に角度Y'で(フィラメント軸Aに垂直に)配置される一方で、他方のベルト72bの回転軸Xbは水平方向より下に同じ角度Y'で配置され、ここで、2Y'=Yである。同様に、2つの回転軸は、フィラメント軸Aに対して等しく反対の直角でない角度90°-Y'で配置され、これは、やはり、フィラメントがプリフォームから引っ張られるまたは引き出される長手方向である。これは、各々がフィラメント軸Aのいずれかの側に角度Y'で配置される、角度Yによって分離される2つのベルト72a、72bの可動面76の進行方向として記載することもできる。
【0073】
2つの回転ベルトのこの傾いた配置の効果は、フィラメント10がケーン引張機80を通して下向きに供給されるときに、図15Aでらせん矢印Rによって示される、フィラメント10に対するねじれ運動を付与することである。したがって、フィラメント10は、フィラメント10がケーン引張機80を通して引っ張られると、その長手軸Aの周りに回転する。この運動を使用して、上で記載したように、所望の位置でフィラメントの周りに円周方向にエネルギーを送達するために、印可されるエネルギービームとフィラメントの間の相対的な回転運動を実現することができる。したがって、図4図5A図6A図6B、および図6Cに示されるものなどといったビーム誘導システム32が静止したまま、フィラメントがその回転軸Aの周りに回転することができる。あるいは、2つの運動は、第1の方向にフィラメントの周りを回転するビーム誘導システム32とビーム誘導システム内で第2の反対の方向に回転するフィラメントで組み合わせることができる。
【0074】
ケーン引張機80は、ベルトの角度が固定されるように構成することができ、そのため、フィラメントを引っ張る間、一定のねじれ運動が提供される。あるいは、(たとえば、回転するベルトの回転を操作するのと同じコントローラの制御の下で)ベルトは可動であり、そのため、それらの相対的な角度を調整することができる。これによって、フィラメントの回転を、(ベルト回転軸の角度をフィラメント軸に対して直角でないものと直角との間で切り換えることによって)オンおよびオフに変えること、(直角でないベルト回転軸の角度を反転することによって)1つの方向の回転と反対方向の回転との間で変えること、または(直角でないベルト回転軸の角度をより小さくまたはより大きくすることによって)速度を変えることが可能になることができる。
【0075】
エネルギービーム誘導システム内でフィラメントの回転を行うための他の方法を代わりに使用することができる。
【0076】
ここで提案されるフィラメント処理方法は、ガラス材料からなるフィラメントに一般的に適用可能である。フィラメントは、既存設計の固体で管腔を含む光ファイバの製造用に知られている材料、特に、シリカなどのガラス材料から作ることができる。内部構造のあるフィラメントでは、様々なチューブおよび毛細管を、同じ材料または異なる材料から作ることができる。ガラスのタイプとして、多くの例があるが、シリカ化合物(二酸化ケイ素、または石英)に基づいた「ケイ酸塩ガラス」または「石英系ガラス」が挙げられる。光学用途に好適で役に立つようにフィラメントを作ることができる他のガラスとして、限定しないが、カルコゲニド、テルライトガラス、フッ化物ガラス、およびドープシリカガラスが挙げられる。ガラス材料は、吸収/透過を変更することまたは光学的ポンピングを可能にすることなどといった光学特性を調節する目的で、1つまたは複数のドーパントを含むことができる。
【0077】
本方法は、たとえば約100μmの典型的な光ファイバの直径から、20mm以上の典型的なケーンの直径までといった、広い範囲のフィラメント幅または直径に一般的に適用可能でもある。
【0078】
本明細書に記載される様々な実施形態は、特許請求される特徴を理解することおよび教示することを補助するためにだけ提案される。これらの実施形態は、実施形態を表すサンプルとしてだけ提供されており、網羅的および/または排他的なものではない。本明細書に記載される利点、実施形態、例、機能、特徴、構造、および/または他の態様は、請求項によって規定されるような本発明の範囲についての制限または請求項に対する等価物についての制限と考えるべきではなく、他の実施形態を利用することができ、特許請求される発明の範囲から逸脱することなく修正を行うことができることを理解されたい。本発明の様々な実施形態は、具体的に本明細書に記載のもの以外の、開示される要素、構成要素、特徴、部分、ステップ、手段などの適切な組合せを、好適に備える、からなる、またはから基本的になることができる。加えて、本開示は、現在は特許請求されないが将来において特許請求される可能性がある他の発明を含むことができる。
【符号の説明】
【0079】
10 ガラスフィラメント、フィラメント
12 ケーン部分
14 残りの部分、残りのフィラメント部分
16 固体ガラスロッド
18 ガラスチューブ、外部チューブ
20 中心部、中空の空間
22 中空ガラス毛細管、内部毛細管、毛細管
24 第1のクランプ装置
26 第2のクランプ装置
28 レーザ、レーザ源、エネルギー源
30 レーザ光、レーザビーム、ビーム、出力ビーム、エネルギービーム
30a ビーム
30b ビーム、ビーム部分
30c 光、ビーム
32 レンズ、ビーム誘導システム、レンズ装置
34 焦点、楕円焦点、エネルギースポット
34a 焦点
34b 焦点
34c 焦点
35 領域
36 負の円柱レンズ、レンズ
38 正の円柱レンズ、レンズ
40 球面レンズ、燃焼
42 圧着ジョー
44 スロット
50 蒸気取扱いシステム、蒸気取扱いユニット
52 空気取扱いユニット
52a 第1の空気取扱いユニット
52b 第2の空気取扱いユニット
54 ダクト
54a 第1のダクト
54c 抜取りダクト
56 端部、遠位端
58a ノズル
58b ノズル
58c ノズル
60a 空気流、空気
60b 空気流、空気
70 デバイス、ケーン引張機
72 ベルト
72a ベルト
72b ベルト
74 駆動ホイール
76 可動面、外向き面
80 ケーン引張機
82 平面鏡
84 孔、平面鏡
86 バッフル、反射ビーム
88 反射ビーム、ビーム
90 放物面鏡
92 孔
94 キャリッジ
96 平面掃引鏡、鏡
98 シャフト
100 モータ
102 ビーム、反射ビーム
102a 反射ビーム
102b 反射ビーム
104 オフアクシス放物面鏡
106 孔
108 2重反射ビーム
BSa 第1のビームスプリッタ
BSb 第2のビームスプリッタ
La 第1のレンズ
Lb 第2のレンズ
Lc 第3のレンズ
Ma1 ミラー
Ma2 ミラー
Mb1 ミラー
Mb2 ミラー
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
【国際調査報告】