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特表2023-506939分岐ポリ(ヒドロキシ酸)を含むダウンホールツール部材
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  • 特表-分岐ポリ(ヒドロキシ酸)を含むダウンホールツール部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】分岐ポリ(ヒドロキシ酸)を含むダウンホールツール部材
(51)【国際特許分類】
   E21B 41/00 20060101AFI20230213BHJP
【FI】
E21B41/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537193
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(85)【翻訳文提出日】2022-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2020085822
(87)【国際公開番号】W WO2021122391
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】19315161.0
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/950,285
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ベンソン, ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】トゥロー, フランク
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンダーヴェーケン, イブ
(57)【要約】
本発明は、水と接触したときの分解速度が改善された分岐ポリ(ヒドロキシ酸)ポリマーを含む部材を含むダウンホールツールに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ただ1つのヒドロキシル基及びただ1つのカルボン酸基を有する少なくとも1つのヒドロキシル酸[ヒドロキシ酸(A)]、
(ii)任意選択により、1つ又は2つのカルボン酸基を有し、ヒドロキシル基を含まない少なくとも1つのカルボン酸[酸(C)]、並びに
(iii)
a.少なくとも1つのエポキシ官能基を含有する化合物、好ましくはエポキシシラン及びポリエポキシドからなる群から選択される化合物と、
b.少なくとも3つのヒドロキシル基を含み、カルボン酸基を含まない少なくとも1つのポリオール[ポリオール(H)]、及び少なくとも2つのカルボン酸基を含み、ヒドロキシル基を含まない少なくとも1つのポリ酸[ポリ酸(O)]を含む混合物と、
c.少なくとも3つのヒドロキシル基を含み、カルボン酸基を含まない少なくとも1つのポリオール[ポリオール(H)]、及び少なくとも1つ又は2つのヒドロキシ基を含み、カルボン酸基を含まない少なくとも1つのアルコール[アルコール(AO)]を含む混合物と
からなる群から選択される、ヒドロキシ酸(A)及び酸(C)とは異なる少なくとも1つの多官能性反応物質[反応物質(F)]
を含むモノマー混合物の重縮合反応から得られる分岐ポリ(ヒドロキシ酸)ポリマーを含む少なくとも1つの要素を含むダウンホールツール部材。
【請求項2】
前記分岐ポリ(ヒドロキシ酸)ポリマーは、グリコール酸である少なくとも1つのヒドロキシ酸(A)、並びに少なくとも3つのヒドロキシル基を含む少なくとも1つのポリオール(H)、及び少なくとも3つのカルボン酸基を含む少なくとも1つのポリ酸(O)を含む混合物である反応物質(F)を含むモノマー混合物の重縮合反応から得られる、請求項1に記載のダウンホールツール部材。
【請求項3】
反応物質(F)が、ペンタエリスリトールとブタンテトラカルボン酸との混合物、又はトリメチロールプロパンとトリカルバリル酸との混合物から選択される、請求項2に記載のダウンホールツール部材。
【請求項4】
前記分岐ポリ(ヒドロキシ酸)ポリマーは、グリコール酸である少なくとも1つのヒドロキシ酸(A)、任意選択により、少なくとも1つの酸(C)、並びに、少なくとも3つのヒドロキシル基を含む少なくとも1つのポリオール(H)、及び少なくとも3つのカルボン酸基を含む少なくとも1つのポリ酸(O)を含む混合物から選択される少なくとも1つの反応物質(F)を含むモノマー混合物の重縮合反応から得られ、並びに、酸(C)(含まれる場合)の量は、そのカルボン酸基の数がヒドロキシ酸(A)のヒドロキシル基の数に対して0.0001~0.010%であるような量である、請求項1又は2に記載のダウンホールツール部材。
【請求項5】
前記分岐ポリ(ヒドロキシ酸)ポリマーは、グリコール酸、任意選択により、グリコール酸とは別の少なくとも1つのヒドロキシ酸(A)であって、グリコール酸及びヒドロキシ酸(A)のモルの合計に対して最大で5モル%の量のヒドロキシ酸(A)、任意選択により、1つのカルボン酸基を有する少なくとも1つのカルボン酸(C)、並びに、少なくとも3つのヒドロキシル基を含む少なくとも1つのポリオール(H)、及び2つの芳香族カルボン酸基を含む芳香族酸から選択される少なくとも1つのポリ酸(O)を含む混合物から選択される少なくとも1つの反応物質(F)を含むモノマー混合物の重縮合反応から得られ、並びに、ポリオール(H)の量は、そのヒドロキシル基の数がグリコール酸及び前記ヒドロキシ酸(A)(含まれる場合)のカルボキシル基の総数に対して0.050~1.200%であるような量であり、ポリ酸(O)の量は、そのカルボン酸基の数がグリコール酸及び前記ヒドロキシ酸(A)(含まれる場合)のヒドロキシル基の総数に対して0.050~0.750%であるような量であり、酸(C)(含まれる場合)の量は、そのカルボン酸基の数がグリコール酸及び前記ヒドロキシ酸(A)(含まれる場合)のヒドロキシル基の総数に対して0.0001~0.010%であるような量である、請求項1に記載のダウンホールツール部材。
【請求項6】
前記分岐ポリ(ヒドロキシ酸)ポリマーは、グリコール酸、任意選択により、グリコール酸とは別の少なくとも1つのヒドロキシ酸(A)であって、ヒドロキシ酸(A)のモル量が、グリコール酸及びヒドロキシ酸(A)のモルの合計に対して最大で5モル%であるヒドロキシ酸(A)、任意選択により、少なくとも1つのカルボン酸(C)、任意選択により、少なくとも1つのポリ酸(O)、並びに、少なくとも1つのポリオール(H)及び少なくとも1つのアルコール(AO)を含む混合物から選択される少なくとも1つの反応物質(F)の重縮合反応から得られ、ポリ酸(O)の量は、そのカルボン酸基の数がグリコール酸及び前記ヒドロキシ酸(A)(含まれる場合)のヒドロキシル基の総数に対して0.025~1.200%であるような量である、請求項1に記載のダウンホールツール部材。
【請求項7】
ポリオール(H)の量は、そのヒドロキシル基の数がグリコール酸及び前記ヒドロキシ酸(A)(含まれる場合)のカルボキシル基の総数に対して0.050~1.200%であるような量であり、アルコール(AO)の量は、そのヒドロキシル基の数がグリコール酸及び前記ヒドロキシ酸(A)のカルボン酸基の総数に対して0.010~1.200%であるような量であり、一塩基酸(C)(含まれる場合)の量は、そのカルボン酸基の数がグリコール酸及び前記ヒドロキシ酸(A)(含まれる場合)のヒドロキシル基の総数に対して0.010~2.0%であるような量である、請求項6に記載のダウンホールツール部材。
【請求項8】
前記ヒドロキシ酸(A)は、乳酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ吉草酸、5-ヒドロキシ吉草酸及び6-ヒドロキシカプロン酸からなる群から選択され、好ましくは、前記ヒドロキシ酸(A)は乳酸であり、且つ/又は前記ヒドロキシ酸(A)は、グルコール酸とヒドロキシ酸(A)とのモルの合計に対して最大で4モル%、より好ましくは最大で3モル%の量で含まれる、請求項6又は7に記載のダウンホールツール部材。
【請求項9】
前記ポリオール(H)は、トリオール、特にグリセロール、トリメチロールプロパン及びトリメチロールブタンから選択されるトリオール、並びにテトラオール、特にペンタエリスリトールからなる群から選択され、及び/又は前記ポリオール(H)は、そのヒドロキシル基の数がグリコール酸及び前記ヒドロキシ酸(A)(含まれる場合)のカルボン酸基の総数に対して、少なくとも0.050%、好ましくは少なくとも0.075%、より好ましくは少なくとも0.100%、最も好ましくは少なくとも0.120%、及び/若しくは最大で1.200%、好ましくは最大で1.000%、より好ましくは最大で0.750%であるような量で使用される、請求項6~8のいずれか一項に記載のダウンホールツール部材。
【請求項10】
アルコール(AO)は、ジオール(D)、好ましくは、大気圧での沸点が少なくとも100℃、好ましくは少なくとも150℃、より好ましくは少なくとも200℃、最も好ましくは少なくとも230℃であることを特徴とするジオール(D)、並びに/又は、そのヒドロキシル基の数が、グリコール酸及び前記ヒドロキシ酸(A)(含まれる場合)のカルボン酸基の総数に対して少なくとも0.010%、好ましくは少なくとも0.050%、より好ましくは少なくとも0.080%、最も好ましくは少なくとも0.100%、及び/若しくは最大で1.200%、好ましくは最大で0.750%、より好ましくは最大で0.650%であるような量で好ましくは使用されるジオール(D)である、請求項6~9のいずれか一項に記載のダウンホールツール部材。
【請求項11】
前記アルコール(AO)は、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、イソソルビド、イソイジド、ドデカン 1,12-ジオール、及びこれらの混合物からなる群から選択されるジオール(D)である、請求項6~10のいずれか1項に記載のダウンホールツール部材。
【請求項12】
酸(C)は、式:RHm-COOH(式中、RHmは、1個以上の炭素原子を有する、特に3個以上の炭素原子を有する一価の脂肪族基である)で表される脂肪族一塩基酸、若しくは安息香酸、ナフトエ酸及びフェニル酢酸からなる群から選択される芳香族一塩基酸であり、並びに/又はポリ酸(O)は、芳香族二塩基酸、より好ましくはフタル酸、最も好ましくはイソフタル酸である、請求項6~11のいずれか一項に記載のダウンホールツール部材。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のダウンホールツール部材を含むダウンホールツール。
【請求項14】
フラックプラグ、分解可能プラグ、ブリッジプラグ、セメントリテーナ、穿孔ガン、ボールシーラー、フラックボール、ダイバートボール、ボールシート、マンドレル、スリップ、ウェッジ、リング、シーリングプラグ、フラックスリーブ、フラクチャースリーブピストン及びパッカーからなる群から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載のダウンホールツール部材又はダウンホールツール。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載のダウンホールツール部材又はダウンホールツールを製造する方法であって、請求項1に記載の分岐ポリ(ヒドロキシ酸)ポリマーを含む組成物を溶融加工及び射出成形又は押出成形することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、欧州で2019年12月18日に出願された欧州特許出願第19315161.0号及び米国で2019年12月19日に出願された米国特許出願第62/950285号に基づく優先権を主張し、これらの各出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、石油及びガスを含む炭化水素資源の抽出用ダウンホールを形成又は修理するためのツールそれ自体又はその構成要素を形成する物品に関する。
【背景技術】
【0003】
石油又は天然ガスなどの炭化水素資源は、多孔質で透過性の地下層を有する井戸(油井又はガス井、総称して「井戸」と呼ばれる)からの掘削によって生成されることが知られている。連続的に掘削される井戸においては、生産層が、地下層から炭化水素資源を効率的に連続掘削するために刺激される。炭化水素の抽出を増加させるための1つの方法は、流体圧力を用いた生産層でのフラクチャーの生成(「破砕法」又は「水圧破砕法」とも呼ばれる)に依るものである。
【0004】
水圧破砕法とは、水圧などの流体圧力(以下、「水圧」と呼ぶ)によって生産層にフラクチャーを生じさせる方法である。一般的には、縦孔をあけた後、地下数千mの地下層で縦孔を湾曲させ、水平孔を掘る。次いで、破砕流体を高圧でこれらのボアホール(井戸を形成するために設けられた孔を意味し、「ダウンホール」とも呼ばれる)に供給し、深い地下の生産層で水圧によりフラクチャーを生じさせる。これにより、生産層が刺激され、炭化水素資源がフラクチャーから抽出される。
【0005】
上記の井戸処理を行うためには、通常、以下の方法が用いられる。具体的には、ボアホール又はダウンホールの所定の区間を部分的に塞ぎ、この塞いだ部分に破砕流体などの流体を高圧で供給することによって、又は爆発性化合物を含む穿孔銃などのツールを使用することによって、生産層にフラクチャーを生成するか、又は穿孔する。次いで、次の所定の区間(通常、前の区間よりも前方、すなわち、地表面に近い区間)を塞ぎ、破砕などを行い、フラクチャー及び穿孔を進行させる。その後、必要な分離、破砕などが完了するまで、このプロセスが繰り返される。
【0006】
「ダウンホールツール」とは、本発明においては、炭化水素資源を獲得するために、地上(水上を含む)から生産リザーバに向けて削井する際に設けられるダウンホール(「ボアホール」、「ウェルボア」又は「地下ドリルボア」と呼ばれ得る)を形成するために使用され、井戸の完了後に炭化水素資源を回収するための炭化水素資源の流路として機能するツールを意味する。
【0007】
ボアホールの閉塞及び破砕を行うために使用されるツールは、「ダウンホールツール」として知られる工具である。ダウンホールツールは、一般的には、使用後に回収可能であるようには設計されておらず、破壊することによって、又は切削、穿孔若しくは別の方法によって小さな破片にすることによって除去されるが、切削、穿孔などには相当な費用及び時間を要する。
【0008】
したがって、工具全体又はその少なくとも1つの構成要素(すなわち、ダウンホールツール部材)を分解性ポリマーで形成して、ツール又はツール部材が地中で分解されるようにすることが推奨されている。
【0009】
ポリ(グリコール酸)及びポリ(乳酸)などのポリ(ヒドロキシ酸)は、分解することが知られているポリマーである。
【0010】
ポリ(グリコール酸)で作られたダウンホールツールは、既に記載されている。米国特許第9267351号明細書には、少なくとも70,000の重量平均分子量を有し、表面分解の臨界厚さの1/2以上である有効厚さを有し、時間に対して一定である水中での減肉速度を示すポリ(グリコール酸)ポリマーからなる成形体を含むダウンホールツール部材を開示している。ポリ(グリコール酸)は、繰り返し単位としてグリコール酸単位(-OCH-CO-)のみからなるグリコール酸ホモポリマー、又はヒドロキシカルボン酸単位、好ましくは乳酸単位などの他のモノマー単位を多くとも50重量%の割合で含むグリコール酸コポリマーとして記載される。これらのポリマーは線形構造を有すると考えられる。
【0011】
ツール部材の水中での減肉速度を経時的に増加させるために、米国特許第9574418号明細書は、ポリ(グリコール酸)100部当たり好ましくは1~50部の量の短繊維強化材を含むポリ(グリコール酸)の組成物が必要であることを教示している。
【0012】
分岐ポリ(ヒドロキシ酸)、特に特定の分岐ポリ(グリコール酸)ポリマーが、時間と共に増加し、先行技術の線形ポリ(グリコール酸)ポリマーで作られたダウンホールツール部材の水中での減肉速度よりも高い水中での減肉速度を示すダウンホールツール部材の製造に首尾よく使用できることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】時間経過と部品の厚さを示した図である。
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、
(i)ただ1つのヒドロキシル基及びただ1つのカルボン酸基を有する少なくとも1つのヒドロキシ酸[ヒドロキシ酸(A)]、
(ii)任意選択により、1つ又は2つのカルボン酸基を有し、ヒドロキシル基を含まない少なくとも1つのカルボン酸[酸(C)]、並びに
(iii)
a.少なくとも1つのエポキシ官能基を含有する化合物、好ましくはエポキシシラン及びポリエポキシドからなる群から選択される化合物と、
b.少なくとも3つのヒドロキシル基を含み、カルボン酸基を含まない少なくとも1つのポリオール[ポリオール(H)]、及び少なくとも2つのカルボン酸基を含み、ヒドロキシル基を含まない少なくとも1つのポリ酸[ポリ酸(O)]を含む混合物と、
c.少なくとも3つのヒドロキシル基を含み、カルボン酸基を含まない少なくとも1つのポリオール[ポリオール(H)]、及び少なくとも1つ又は2つのヒドロキシ基を含み、カルボン酸基を含まない少なくとも1つのアルコール[アルコール(AO)]を含む混合物と
からなる群から選択される、ヒドロキシ酸(A)及び酸(C)とは異なる少なくとも1つの多官能性反応物質[反応物質(F)]
を含むモノマー混合物の重縮合反応から得られる分岐ポリ(ヒドロキシ酸)ポリマーを含む少なくとも1つの要素を含むダウンホールツール部材である。
【0015】
ヒドロキシ酸(A)
重縮合することができる、すなわち、縮合によって高分子を形成することができる、すなわち、水を除去しながらモノマーを鎖付加することができる任意のヒドロキシ酸を、ヒドロキシ酸(A)として使用することができる。その例として、グリコール酸、乳酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ吉草酸、5-ヒドロキシ吉草酸、6-ヒドロキシカプロン酸が挙げられる。一般に、第一級アルコールを有するヒドロキシ酸は、より反応性が高いために好ましい。
【0016】
好ましくは、ヒドロキシ酸(A)は、グリコール酸、乳酸(L又はD異性体、ラセミ混合物又は単一異性体)、及びそれらの混合物からなる群から選択される。グリコール酸が特に好ましい。
【0017】
ヒドロキシ酸(A)は、グリコール酸からなってもよい。或いは、ヒドロキシ酸(A)は、グリコール酸と、グリコール酸とは異なる少なくとも1つのヒドロキシ酸(A)を含んでもよい。前記の代替の変異体において、グリコール酸は、ヒドロキシ酸(A)の総量の好ましくは少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも70モル%、さらには少なくとも95モル%である。グリコール酸と異なるヒドロキシ酸(A)が含まれる場合、その量は、グリコール酸及びヒドロキシ酸(A)のモルの合計に対して、最大で5モル%、一般的には最大で4モル%、好ましくは最大で3モル%であり、且つ/又は前記量は、0.1モル%程度の低量であり得る。
【0018】
酸(C)
酸(C)は1つ又は2つのカルボン酸基を有し、ヒドロキシル基を含まないカルボン酸から選択される。炭素原子の総数が少なくとも4つ、好ましくは少なくとも5つ、より好ましくは少なくとも6つである酸(C)の使用により、より良好な結果が得られると一般に理解されている。一般に、酸(C)は、4~36個の炭素原子、好ましくは6~24個の炭素原子を有する。
【0019】
酸(C)として有利に使用することができる、1つのカルボン酸基を有するカルボン酸の中でも、とりわけカプリル酸[CH(CH-COOH]、カプリン酸[CH(CH-COOH]、ウンデカン酸[CH(CH-COOH]、ドデカン酸又はラウリン酸[CH(CH10-COOH]、トリデカン酸[CH(CH11-COOH]、テトラデカン酸又はミリスチン酸[CH(CH12-COOH]、ペンタデカン酸[CH(CH13-COOH]、ヘキサデカン酸又はパルミチン酸[CH(CH14-COOH]、オクタデカン酸又はステアリン酸[CH(CH16-COOH]、アラキジン酸[CH(CH18-COOH]、ベヘン酸[CH(CH20-COOH]などの脂肪酸を挙げることができる。特に良好な結果を提供することが示されている脂肪酸(C)はステアリン酸であり、したがってステアリン酸が特に好ましい。
【0020】
酸(C)が芳香族モノカルボン酸である場合、それは、有利には、それは安息香酸、ナフトエ酸及びフェニル酢酸からなる群から選択される。
【0021】
酸(C)として有利に使用することができるジカルボン酸の中でも、コハク酸[HOOC-(CH-COOH]、グルタル酸[HOOC-(CH-COOH]、2,2-ジメチル-グルタル酸[HOOC-C(CH-(CH-COOH]、アジピン酸[HOOC-(CH-COOH]、2,4,4-トリメチルアジピン酸[HOOC-CH(CH)-CH-C(CH-CH-COOH]、ピメリン酸[HOOC-(CH5-COOH]、スベリン酸[HOOC-(CH-COOH]、アゼライン酸[HOOC-(CH-COOH]、セバシン酸[HOOC-(CH-COOH]、ウンデカン二酸[HOOC-(CH-COOH]、ドデカン二酸[HOOC-(CH10-COOH]、テトラドデカン二酸[HOOC-(CH11-COOH]、オクタドデカン二酸[HOOC-(CH16-COOH]を挙げることができる。
【0022】
多官能性反応物質(F)
少なくとも1つのエポキシ官能基を含有する化合物
少なくとも1つのエポキシ官能基を含有する好適な化合物の注目すべき非限定的な例は、エポキシシラン、特にグリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン又はポリエポキシドからなる群から選択される。ポリエポキシドの中でも、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(BADGE)又はエポキシ化大豆油又はエポキシ化亜麻仁油などのエポキシ化油を挙げることができる。
【0023】
少なくとも1つのポリオール(H)及び少なくとも1つのポリ酸(O)を含む混合物
ポリオール(H)
ポリオール(H)の選択は特に限定されず、少なくとも3つのヒドロキシ基を含み、且つカルボン酸基を含まない任意のポリオールが、分岐ポリ(ヒドロキシ酸)の調製に使用され得る。
【0024】
ポリオール(H)は、
- 特に、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、2,3-ジ(2’-ヒドロキシエチル)-シクロヘキサン-1-オール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)エタン、3-(2’-ヒドロキシエトキシ)プロパン-1,2-ジオール、3-(2’-ヒドロキシプロポキシ)-プロパン-1,2-ジオール、2-(2’-ヒドロキシエトキシ)-ヘキサン-1,2-ジオール、6-(2’ヒドロキシプロポキシ)-ヘキサン-1,2-ジオール、1,1,1-トリス-[(2’-ヒドロキシエトキシ)-メチルエタン、1,1,1-トリス-[(2’-ヒドロキシプロポキシ)-メチル-プロパン、1,1,1-トリス-(4’-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス-(ヒドロキシフェニル)-プロパン、1,1,5-トリス-(ヒドロキシフェニル)-3-メチルペンタン、トリメチロールプロパンエトキシレート、トリメチロールプロパンプロポキシレート、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンからなる群から選択されるトリオール、
- 特に、ジグリセロール、ジ(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、1,1,4-トリス-(ジヒドロキシフェニル)-ブタンからなる群から選択されるテトラオール、
- 5つのヒドロキシル基を含むポリオール、特にトリグリセロール、
- 6つのヒドロキシル基を含むポリオール、特にジペンタエリスリトール、及び
- 8つのヒドロキシル基を含むポリオール、特にトリペンタエリスリトール
からなる群から選択され得る。
【0025】
好ましいポリオール(H)は、トリオール及びテトラオールである。本発明の枠組み内で特に良好な結果が得られることが確認されているポリオール(H)は、トリメチロールプロパンである。
【0026】
ポリ酸(O)
ポリ酸(O)は、少なくとも2つのカルボン酸基を含み、ヒドロキシル基を含まない任意のポリ酸であり得る。ポリ酸(O)は、酸(C)が含まれる場合、酸(C)とは異なる。
【0027】
ポリ酸(O)は、少なくとも2つのカルボン酸基、特に2、3又は4つのカルボン酸基を含む。
【0028】
ポリ酸(O)は、脂肪族ポリカルボン酸、脂環式ポリカルボン酸及び芳香族ポリカルボン酸から選択することができる。
【0029】
脂肪族ポリカルボン酸の例は、プロパン-1,2,3-トリカルボン酸(トリカルバリル酸としても知られる)、エタン-1,1,2,2テトラカルボン酸、ブタン-1,2,3,4テトラカルボン酸、ペンタン-1,2,4,5-テトラカルボン酸である。それらの中で、ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸が好ましい。
【0030】
脂環式ポリカルボン酸の例は、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、2,2,6,6-テトラ-(カルボキシエチル)シクロヘキサノン(+)-(18-クラウン-6)-2,3,11,12-テトラカルボン酸、シクロヘキサン-1,2,3,4-テトラカルボン酸、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸、シクロヘキサン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、3-エチルシクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸、1-メチル-3-エチルシクロヘキサン-3-(1,2)5,6-テトラカルボン酸、1-エチルシクロヘキサン-1-(1,2)3,4-テトラカルボン酸、1-プロピルシクロヘキサン-1-(2,3),3,4-テトラカルボン酸1,3-ジプロピルシクロヘキサン-1-(2,3),3-(2,3)テトラカルボン酸、ジシクロヘキシル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸である。
【0031】
芳香族ポリカルボン酸の例は、イソフタル酸及びテレフタル酸などのフタル酸、2,5-ピリジンジカルボン酸、2,4-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピリジンジカルボン酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)プロパン、ビス(4-カルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ケトン、4,4’-ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)プロパン、ビス(3-カルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ケトン、ビス(3-カルボキシフェノキシ)ベンゼン、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸である。
【0032】
3つ以上のカルボン酸基を有する芳香族カルボン酸の中でも、ピロメリット酸(1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸)、トリメリット酸(1,3,5-ベンゼントリカルボン酸)、トリメリット酸(1,3,4-ベンゼントリカルボン酸)、ベンゾフェノン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸、テトラヒドロフラン-2,3,4,5-テトラカルボン酸、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸、4,4’-オキシジフタル酸無水物、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、ペリレン-3,4,9,10テトラカルボン酸;プロパン-2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)酸、エタン-1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)酸、エタン-1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)酸、フェナンスレン-1,8,9,10-テトラカルボン酸、テトラヒドロフラン-2,3,4,5-テトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,5,6-ピリジンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-テトラフェニルシランテトラカルボン酸、2,2’-ビス-(3,4-ビカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンテトラカルボン酸、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン酸、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸、3,3’,4,4’-ジフセニルスルホンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリット酸、ヒドロキノンジフタル酸、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸を挙げることができる。
【0033】
本発明の枠内で特に良好な結果が得られることがわかったポリ酸(O)は、フタル酸、特にイソフタル酸、トリカルバリル酸、1,2,4,5ベンゼンテトラカルボン酸及びブタン-1,2,3,4テトラカルボン酸である。トリカルバリル酸及びイソフタル酸が特に好ましい。
【0034】
少なくとも1つのポリオール(H)及び少なくとも1つのアルコール(AO)を含む混合物
ポリオール(H)は上に詳述した通りである。
【0035】
アルコール(AO)
アルコール(AO)は、1つのヒドロキシ基を含むモノアルコール(MO)、2つのヒドロキシ基を含むジオール(D)、又はモノアルコール(MO)とジオール(D)との混合物であり得る。
【0036】
アルコール(AO)がモノアルコール(MO)である場合、それは脂肪族又は芳香族のモノアルコールから選択することができる。
【0037】
モノアルコール(MO)は、大気圧での沸点が有利には少なくとも90℃、好ましくは少なくとも100℃、より好ましくは少なくとも125℃、最も好ましくは少なくとも150℃であることを特徴とする。
【0038】
脂肪族モノアルコール(MO)は、有利には下記式で表される脂肪族モノアルコールである:
Hm-OH
(式中、RHmは、1個以上の炭素原子を有する、特に3個以上の炭素原子を有する一価の脂肪族基である)。
【0039】
長鎖脂肪族モノアルコール、すなわち、炭素原子の総数が有利には少なくとも6である脂肪族モノアルコール(MO)を用いると、より良好な結果が得られると一般に理解されている。脂肪族モノアルコール(MO)は、好ましくは6~36個の炭素原子、より好ましくは6~24個の炭素原子を有する。
【0040】
本発明において有利に使用することができる脂肪族モノアルコール(MO)の中で、特に、ヘキサノール-1[CH(CH-OH]、ドデカノール[CH(CH11-OH]、ヘキサデカノール又はセチルアルコール[CH(CH15-OH]、オクタデカノール又はステアリルアルコールCH(CH17-OH]、アラキジルアルコールCH(CH18-OH]、ドコサノール又はベヘニルアルコール[CH(CH21-OH]、シクロヘキサノール及びメントールを挙げることができる。
【0041】
モノアルコール(MO)が芳香族モノアルコールである場合、それは、有利には、フェノール、クレゾール、ナフトール、ベンジルアルコール、2-フェニルエタノール及び3-フェニルプロパノールからなる群から選択される。
【0042】
モノアルコール(MO)は、好ましくは、ドデカノール、ベンジルアルコール、メントール及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0043】
アルコール(AO)がジオール(D)である場合、ジオール(D)は、大気圧での沸点が有利には少なくとも100℃、好ましくは少なくとも150℃、より好ましくは少なくとも200℃、最も好ましくは少なくとも230℃であることを特徴とする。
【0044】
好適なジオール(D)の非限定的な例は、特に、エチレングリコール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、ペンタン-1,2-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,2-ジオール、ヘプタン-1,2-ジオール、ジエチレングリコール、ヘキサン-1,6-ジオール、ヘプタン-1,7-ジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、シス1,2-シクロヘキサンジオール、トランス1,2-シクロヘキサンジオール、ポリエーテルポリオールジオールDianol(登録商標)220、1,4-シクロヘキサンジメタノール、イソソルビド、イソイジド、ドデカン 1,12ジオール、及びこれらの混合物である。
【0045】
ジオール(D)は、好ましくは、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、イソソルビド、イソイジド、ドデカン 1,12-ジオール、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0046】
ジオール(D)は、より好ましくは、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0047】
特に良好な結果をもたらすことが示されているジオール(D)は1,4-シクロヘキサンジメタノールであり、したがってこれが特に好ましく、1,4-シクロヘキサンジメタノールのシス/トランス異性体混合物(CAS番号105-08-8)が特に好ましい。
【0048】
アルコール(AO)は、好ましくは、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、イソソルビド、イソイジド、ドデカン 1,12-ジオール、ドデカノール、ベンジルアルコール、メントール及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0049】
分岐ポリ(ヒドロキシ酸)ポリマー
本発明のダウンホールツール部材に使用される分岐ポリ(ヒドロキシ酸)ポリマーは、
(i)ただ1つのヒドロキシル基及びただ1つのカルボン酸基を有する少なくとも1つのヒドロキシ酸[ヒドロキシ酸(A)]、
(ii)任意選択により、1つ又は2つのカルボン酸基を有し、ヒドロキシル基を含まない少なくとも1つのカルボン酸[酸(C)]、及び
(iii)上記に詳述したとおりの、少なくとも1つの多官能性反応物質[反応物質(F)]
を含むモノマー混合物の重縮合反応から得られる。
【0050】
「分岐ポリマー」という表現は、本明細書では、IUPACによって提供されている意味で、すなわち、分子が分岐鎖であるポリマーを識別するために使用されている。これに関連して、分岐は、少なくとも1つの多官能性反応物質(反応物質(F))が存在することによってポリマー鎖に導入される。
【0051】
本発明の第1の実施形態においては、分岐ポリ(ヒドロキシ酸)ポリマーは、少なくとも1つのヒドロキシ酸(A)と、少なくとも1つのエポキシ官能基を含有する化合物、好ましくはエポキシシラン及びポリエポキシドからなる群から選択される化合物からなる群から選択される少なくとも1つの反応物質(F)とを含むモノマー混合物の重縮合反応から誘導される繰り返し単位を含むそれらのポリマーの中から選択され得る。
【0052】
第1の実施形態のポリマーは、例えば、国際公開第2010/112602A1号パンフレットに記載されているものであり、そこに記載されている方法に従って調製することができる。
【0053】
本発明の第2の実施形態においては、分岐ポリ(ヒドロキシ酸)ポリマーは、少なくとも1つのヒドロキシ酸(A)と、少なくとも3つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つのポリオール(H)及び少なくとも3つのカルボン酸基を有する少なくとも1つのポリ酸(O)を含む混合物から選択される少なくとも1つの反応物質(F)とを含むモノマー混合物の重縮合反応から誘導される繰り返し単位を含むそれらのポリマーの中から選択される。
【0054】
この第2の実施形態において、ヒドロキシ酸(A)は、好ましくは、グリコール酸、乳酸及びそれらの混合物から選択される。より好ましくは、ヒドロキシ酸(A)はグリコール酸である。
【0055】
有利には、少なくとも1つのポリオール(H)及び少なくとも1つのポリ酸(O)を含む混合物は、ペンタエリスリトール及びブタンテトラカルボン酸の混合物、又はトリメチロールプロパン及びトリカルバリル酸の混合物から選択される。
【0056】
第2の実施形態のポリマーは、例えば、国際公開第2010/112602A1号パンフレットに記載されているものであり、そこに記載されている方法に従って調製することができる。
【0057】
本発明の第3の実施形態においては、分岐ポリ(ヒドロキシ酸)ポリマーは、少なくとも1つのヒドロキシ酸(A)と、任意選択により少なくとも1つの酸(C)と、少なくとも3つのヒドロキシル基を含む少なくとも1つのポリオール(H)及び少なくとも3つのカルボン酸基を含む少なくとも1つのポリ酸(O)を含む混合物から選択される少なくとも1つの反応物質(F)とを含むモノマー混合物の重縮合反応から得られるそれらのポリマーの中から選択され得る。特に、この分岐ポリ(ヒドロキシ酸)ポリマーは、酸(C)の量がそのカルボン酸基の数がヒドロキシ酸(A)のヒドロキシル基の数に対して0.0001~0.010%からなるようなものであるポリマーの中から選択され得る。
【0058】
好ましくは、ヒドロキシ酸(A)は、グリコール酸、乳酸及びそれらの混合物から選択される。より好ましくは、ヒドロキシ酸(A)はグリコール酸である。
【0059】
ポリオール(H)は、通常、トリオール(特に、トリメチロールプロパン)及びテトラオール(特に、ペンタエリスリトール)の中から選択される。特に良好な結果が得られることがわかったポリオール(H)は、トリメチロールプロパンである。
【0060】
特に良好な結果が得られることがわかったポリ酸(O)は、トリカルバリル酸、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸、及びブタン-1,2,3,4テトラカルボン酸であり、トリカルバリル酸が特に好ましい。
【0061】
一般に、第3の実施形態の分岐ポリ(ヒドロキシ酸)ポリマー中のポリ酸(O)及びポリオール(H)の量は、ヒドロキシ酸(A)1モル当たりのモル数で表した場合、実質的に同様である。ポリ酸(O):ポリオール(H)のモル比は、1.5:1~0.5:1の範囲、好ましくは1.25:1~0.75:1の範囲、より好ましくは1.10:1~0.9:1の範囲である。
【0062】
酸(C)が含まれる場合、その量は、そのカルボン酸基の数がヒドロキシ酸(A)のヒドロキシル基の数に対して0.0001~0.010%に含まれるような量である。好ましくは、前記量は、前記酸(C)のカルボン酸基の数がヒドロキシ酸(A)のヒドロキシル基の数に対して少なくとも0.0005%、好ましくは、ヒドロキシ酸(A)のヒドロキシル基の数に対して少なくとも0.001%、及び/又はヒドロキシ酸(A)のヒドロキシル基の数に対して最大で0.010%、好ましくは最大で0.008%、最も好ましくは最大でも0.007%、さらにより好ましくは最大でも0.006%であるような量である。
【0063】
酸(C)は、好ましくは、モノカルボン酸である。ステアリン酸が特に好ましい。
【0064】
第3の実施形態のポリマーは、例えば、国際公開第2016/173640A1号パンフレットに記載されているものであり、そこに記載されている方法に従って調製することができる。
【0065】
本発明の第4の実施形態においては、分岐ポリ(ヒドロキシ酸)ポリマーは、グリコール酸と、任意選択により、グリコール酸とは異なる少なくとも1つのヒドロキシ酸(A)であって、グリコール酸及びヒドロキシ酸(A)のモルの合計に対して最大で5モル%の量のヒドロキシ酸(A)と、任意選択により、1つのカルボン酸基を有する少なくとも1つの酸(C)と、少なくとも3つのヒドロキシル基を含む少なくとも1つのポリオール(H)及び2つの芳香族カルボン酸基を含む芳香族酸から選択される少なくとも1つのポリ酸(O)を含む混合物から選択される少なくとも1つの反応物質(F)とを含むモノマー混合物の重縮合反応から得られるポリマーの中から選択され得る。特に、ポリオール(H)の量は、そのヒドロキシル基の数がグリコール酸及びヒドロキシ酸(A)(含まれる場合)のカルボキシル基の総数に対して0.050~1.200%であるような量であり、ポリ酸(O)の量は、そのヒドロキシル基の数がグリコール酸及びヒドロキシ酸(A)(含まれる場合)のヒドロキシル基の総数に対して0.050~0.750%であるような量であり、酸(C)の量は、それが含まれる場合、そのカルボン酸基の数がグリコール酸及びヒドロキシ酸(A)(含まれる場合)のヒドロキシル基の総数に対して0.0001~0.010%であるような量であるポリマー。
【0066】
ポリオール(H)は、通常、トリオール(特に、トリメチロールプロパン)及びテトラオール(特に、ペンタエリスリトール)の中から選択される。好ましくは、ポリオール(H)はトリメチロールプロパンである。
【0067】
2つの芳香族カルボン酸基を含む好適なポリ酸(O)の非限定的な例は、イソフタル酸及びテレフタル酸などのフタル酸、2,5-ピリジンジカルボン酸、2,4-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピリジンジカルボン酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)プロパン、ビス(4-カルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ケトン、4,4’-ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)プロパン、ビス(3-カルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ケトン、ビス(3-カルボキシフェノキシ)ベンゼン、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸である。フタル酸が一般に好ましい。イソフタル酸は、特に良好な結果を提供することが示されている。
【0068】
酸(C)はモノカルボン酸である。ステアリン酸が特に好ましい。
【0069】
第4の実施形態のポリマーは、例えば、国際公開第2018/115008A1号パンフレットに記載されているものであり、そこに記載されている方法に従って調製することができる。
【0070】
本発明の第5の実施形態においては、分岐ポリ(ヒドロキシ酸)ポリマーは、グリコール酸と、任意選択により、グリコール酸とは異なる少なくとも1つのヒドロキシ酸(A)(ここで、ヒドロキシ酸(A)のモル量はグリコール酸及びヒドロキシ酸(A)のモルの合計に対して最大で5モル%である)と、任意選択により、少なくとも1つの酸(C)(前記酸(C)は1つのカルボン酸基を有する)と、任意選択により、少なくとも1つのポリ酸(O)と、少なくとも1つのポリオール(H)及び少なくとも1つのアルコール(AO)を含む混合物から選択される少なくとも1つの反応物質(F)とを含むモノマー混合物の重縮合反応から得られるポリマーの中から選択される。
【0071】
好ましくは、分岐ポリ(ヒドロキシ酸)ポリマーは、グリコール酸と、任意選択により、グリコール酸とは異なる少なくとも1つのヒドロキシ酸(A)(ここで、ヒドロキシ酸(A)のモル量はグリコール酸及びヒドロキシ酸(A)のモルの合計に対して最大で5モル%である)と、少なくとも1つのポリオール(H)と;少なくとも1つのアルコール(AO)、好ましくは、少なくとも1つのジオール(D)からなるモノマー混合物の重縮合反応から得られる。
【0072】
最も好ましくは、分岐ポリ(ヒドロキシ酸)ポリマーは、グリコール酸と、任意選択により、グリコール酸とは異なる少なくとも1つのヒドロキシ酸(A)(ここで、ヒドロキシ酸(A)のモル量はグリコール酸及びヒドロキシ酸(A)のモルの合計に対して最大で5モル%である)と、少なくとも1つのポリオール(H)と;少なくとも1つのジオール(D)からなるモノマー混合物の重縮合反応から得られる。
【0073】
ヒドロキシ酸(A)は、有利には、乳酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ吉草酸、5-ヒドロキシ吉草酸、6-ヒドロキシカプロン酸からなる群から選択され、好ましくは乳酸である。
【0074】
好ましいポリオール(H)は、上記で詳述したように、トリオール、特にグリセロール、トリメチロールプロパン及びトリメチロールブタンからなる群から選択されるトリオール、並びにテトラオール、特にペンタエリスリトールである。
【0075】
特に良好な結果が得られることがわかったポリオール(H)は、トリメチロールプロパンである。
【0076】
ポリオール(H)は、そのヒドロキシル基の数が、有利には、グリコール酸及びヒドロキシ酸(A)(含まれる場合)のカルボキシル基の総数に対して0.050~1.200%であるような量で使用される。有利には、ポリオール(H)は、そのヒドロキシル基の数が、グリコール酸及びヒドロキシ酸(A)(含まれる場合)のカルボキシル基の総数に対して少なくとも0.075%、さらには少なくとも0.100%、好ましくは少なくとも0.120%であるような量で含まれる。ポリオール(H)は、そのヒドロキシル基の数が、グリコール酸及びヒドロキシ酸(A)(含まれる場合)のカルボキシル基の総数に対して最大で1.000%、さらには最大で0.750%、好ましくは最大で0.600%であるような量で含まれる。
【0077】
アルコール(AO)がモノアルコール(MO)である場合、それは、好ましくは、ドデカノール、ベンジルアルコール、メントール及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0078】
アルコール(AO)がジオール(D)である場合、ジオール(D)は、好ましくは、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、イソソルビド、イソイジド、ドデカン1,12-ジオール及びこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0079】
特に良好な結果をもたらすことが示されているジオール(D)は1,4-シクロヘキサンジメタノールであり、したがってこれが特に好ましく、1,4-シクロヘキサンジメタノールのシス/トランス異性体混合物(CAS番号105-08-8)が特に好ましい。
【0080】
アルコール(AO)は、好ましくは、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、イソソルビド、イソイジド、ドデカン1,12-ジオール、ドデカノール、ベンジルアルコール、メントール及びこれらの混合物から選択される。
【0081】
アルコール(AO)は、より好ましくはジオール(D)であり、これは、好ましくは大気圧での沸点が少なくとも100℃であることを特徴とし、且つ/又は好ましくは以下に定義する量で使用される。
【0082】
アルコール(AO)は、そのヒドロキシル基の数が、有利には、グリコール酸及びヒドロキシ酸(A)(含まれる場合)のカルボン酸基の総数に対して0.010~1.200%であるような量で使用される。
【0083】
アルコール(AO)は、そのヒドロキシル基の数がグリコール酸及びヒドロキシ酸(A)(含まれる場合)のカルボン酸基の総数に対して、有利には少なくとも0.010%、好ましくは少なくとも0.050%、より好ましくは少なくとも0.080%、最も好ましくは少なくとも0.100%であり、且つ/又は有利には最大で1.200%、さらには最大で1.000%、好ましくは最大で0.750%、より好ましくは最大で0.700%、最も好ましくは最大で0.650%であるような量で使用される。
【0084】
有利には、そのヒドロキシル基の数がグリコール酸及びヒドロキシ酸(A)のカルボン酸基の総数に対して0.010~0.650%であるような量のアルコール(AO)。
【0085】
ポリオール(H)及びアルコール(AO)は、そのヒドロキシル基の全モル数から、グリコール酸及びヒドロキシ酸(A)(含まれる場合)のカルボン酸基の全モル数を差し引いたものを、グリコール酸及びヒドロキシ酸(A)(含まれる場合)のカルボン酸基の全モル数で割ったものが、有利には0~1.0%、好ましくは0.1~1.0%、より好ましくは0.3~0.9%であるような量で使用される。
【0086】
酸(C)はモノカルボン酸である。脂肪族一塩基酸の中でも、特に好ましいステアリン酸。酸(C)が芳香族一塩基酸である場合、それは、有利には、安息香酸、ナフトエ酸及びフェニル酢酸からなる群から選択される。
【0087】
酸(C)が含まれる場合、好ましくは芳香族一塩基酸である。
【0088】
酸(C)が含まれる場合、酸(C)は一塩基酸であって、そのカルボン酸基の数が、有利には、グリコール酸及びヒドロキシ酸(A)(含まれる場合)のヒドロキシル基の総数に対して0.010~2.0%であるような量で使用される。酸(C)は、そのカルボン酸基の数がグリコール酸及びヒドロキシ酸(A)(含まれる場合)のヒドロキシル基の総数に対して、有利には少なくとも0.010%、好ましくは少なくとも0.030%、より好ましくは少なくとも0.075%であり、且つ/又は、グリコール酸及びヒドロキシ酸(A)のヒドロキシル基の総数に対して、有利には最大で2.0%、好ましくは最大で1.50%、より好ましくは最大で1.20%、最も好ましくは最大で1.00%、さらに最も好ましくは最大で0.75%であるような量で使用される。
【0089】
この第5の実施形態に係る分岐ポリ(ヒドロキシ酸)ポリマーは、任意選択により、上記で定義されたような少なくとも1つのポリ酸(O)から誘導される繰り返し単位を含み得る。ポリ酸(O)は、2つのカルボン酸基又は3つ以上のカルボン酸基、特に3又は4つのカルボン酸基を含むことができる。
【0090】
好適なポリ酸(O)の中で、フタル酸、トリカルバリル酸、ブタン-1,2,3,4テトラカルボン酸、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)を挙げることができる。ポリ酸(O)は、好ましくは芳香族二塩基酸であり、より好ましくはフタル酸であり、最も好ましくはイソフタル酸である。
【0091】
ポリ酸(O)が含まれる場合、ポリ酸(C)は、そのカルボン酸基の数が、グリコール酸及びヒドロキシ酸(A)(含まれる場合)のヒドロキシル基の総数に対して0.025~1.200%であるような量で使用される。ポリ酸(O)が含まれる場合、ポリ酸(C)は、そのカルボン酸基の数が、グリコール酸及びヒドロキシ酸(A)(含まれる場合)のヒドロキシル基の総数に対して、有利には少なくとも0.025%、好ましくは少なくとも0.050%、より好ましくは少なくとも0.100%であり、且つ/又は有利には最大で1.200%、好ましくは最大で1.000%、より好ましくは最大で0.900%、最も好ましくは最大で0.750%、特に最も好ましくは最大で0.650%であるような量で使用される。ポリ酸(O)が含まれる場合、そのカルボキシル基の数がグリコール酸及びヒドロキシ酸(A)(含まれる場合)のヒドロキシル基の総数に対して、0.150~0.550%であるような量のポリ酸(O)が、特に有用であることがわかった。
【0092】
上記で詳述した分岐ポリ(ヒドロキシ酸)ポリマーは、グリコール酸、任意に少なくとも1つのヒドロキシ酸(A)、少なくとも1つのポリオール(H)、少なくとも1つのアルコール(AO)、任意に少なくとも1つの酸(C)及び任意に少なくとも1つのポリ酸(O)を重縮合することを含む方法によって得ることができる。前記方法においては、重縮合触媒をモノマー混合物に任意選択により添加することができる。そのような重縮合触媒は、当業者によく知られており、例えば、塩化スズ(II)、オクタン酸第一スズ、酢酸亜鉛、乳酸亜鉛、メタンスルホン酸、オルトリン酸、及びこれらの混合物から選択し得る。メタンスルホン酸、及びメタンスルホン酸と他の触媒(上で開示したもの又は他のもの)との混合物が特に好ましい。
【0093】
そのような触媒を添加する場合、通常、モノマー混合物のモノマーの総モルに対して約0.001~2モル%、特に約0.002~0.1モル%の量で添加される。
【0094】
好ましくは、重縮合工程は、モノマーの混合物と形成されたグローイングポリマーが溶融相にあるような温度で少なくとも部分的に実施される。一般に、溶融状態での重縮合工程後、未反応のグリコール酸と、ヒドロキシ酸(A)(含まれる場合)と、ポリオール(H)と、アルコール(AO)と、一塩基酸(C)(含まれる場合)と、ポリ酸(O)(含まれる場合)とを含むことがあるプレポリマーを提供し、次に、プレポリマーが固体状態にあるような温度で重縮合を続行する(この工程を、以下では、固相重合又はSSPと称する)。
【0095】
したがって、本発明の方法は、一般的には、プレポリマーを形成するための溶融状態での重合の第1の工程と、プレポリマーの分子量を増大させるための固相重合(SSP)の第2の工程とを含む。
【0096】
第1の工程では、温度は、モノマー混合物と、反応の進行とともに形成されたプレポリマーとを溶融状態に維持するように選択される。
【0097】
一般に、溶融状態での重縮合の第1の工程は、撹拌しながら、反応混合物を160~240℃の範囲の温度に維持することによって達成される。
【0098】
溶融状態での重合の第1の工程から得られる、場合により上で詳述したような残留モノマーを含むプレポリマーは、ゆるい粒子形態の微粒子状プレポリマー材料を提供するように固化及び小型化の工程を受ける。
【0099】
微粒子状プレポリマーは、ペレット化及び/若しくはパステル化の標準的な手法により、パール若しくはペレットの形態で溶融状態から加工されるか、又は固化した断片として回収され、粉末化するためミリングされ得る。
【0100】
上に詳述したような残留モノマーを含む可能性があるプレポリマーを断片の形態で固化することにより回収する場合、ミリング工程が必要とされる。このようなミリング工程は、当業者に知られた手段により、例えば高速グラインダー又はロータリーミルでのミリングによって行われ得る。
【0101】
SSP工程は、上で詳述したような残留モノマーを含む可能性があるプレポリマーをその固体状態で、真空下又は不活性ガス雰囲気下(例えば、窒素下)又はその両方で、1時間以上又は数日間にわたり、上に詳述した残留モノマーを含む可能性がある前記プレポリマーのガラス転移温度よりも高いが、その溶融温度よりも低い温度にさらすことにより行われ得る。通常、このようなSSP工程は、140~240℃、特に150~230℃の温度、例えば約170~220℃で、且つ50mbar未満の圧力で実施され得る。
【0102】
プレポリマー中の残留モノマーの性質、それらの割合及び目標の最終粘度/分子量、全重縮合工程中の温度及び圧力に応じて、SSP工程の継続時間は、数時間~1週間、特に6~200時間、例えば約10~150時間であり得る。
【0103】
溶融相での重縮合反応は、反応の水を蒸発させ、形成されつつあるポリマー鎖が水により加水分解されることを回避するために、真空下で行われることが好ましい。溶融相での重縮合反応は、大気圧で開始され、数mbar、特に50mbar未満、好ましくは20mbar未満のオーダーの圧力が達成されるまで、減圧を徐々にかけることが非常に特に好ましい。SSP工程は、通常、約0.1~50mbar、好ましくは約0.1~20mbarの圧力で実施される。
【0104】
ダウンホールツール部材
本発明の目的は、上で詳述した分岐ポリ(ヒドロキシ酸)を含む少なくとも1つの要素を含むダウンホールツール部材である。
【0105】
「ダウンホールツール」、「ダウンホールツール部材」又は「ダウンホールツール部材の要素」という表現は、ダウンホールの穿設、完成又は修理の間に使用される油田機器、例えば、ボアホールの閉塞及び破砕を行うために使用されるツールを指すために使用される。
【0106】
ダウンホールツール及び/又はダウンホールツール部材及び/又はダウンホールツール部材の要素の注目すべき非限定的な例は、例えば、フラックプラグ又は分解可能プラグ、ブリッジプラグ、セメントリテーナ、穿孔ガン、ボールシーラー、フラックボール、ダイバートボール、ボールシート、マンドレル、スリップ、ウェッジ、リング、シーリングプラグ、フラックスリーブ、フラクチャースリーブピストン(「ピストン」又は「ピストンプラグ」としても知られる)及びパッカーである。
【0107】
一般に「ダウンホールツール部材」と呼ばれるダウンホールツールの1つ又は複数の部品は、上で詳述されるように、分岐ポリ(ヒドロキシ酸)から作製され得る。或いは、ダウンホールツール構造の全体が分岐ポリ(ヒドロキシ酸)から作製され得る。
【0108】
本発明のダウンホールツール部材は、通常、分岐ポリ(ヒドロキシ酸)単独で作られた少なくとも1つの要素を含むが、前記ポリマーと他のポリマーとをブレンドすることも可能である。他のポリマーの例としては、ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;ポリ-L-リシンなどのポリアミド樹脂;アクリル樹脂;ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールなどのポリエーテル;変性ポリビニルアルコール;エチレン/グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン/プロピレンターポリマー、及びエチレン/ブチレンホモポリマーなどの軟質ポリオレフィン樹脂;スチレンコポリマー樹脂;ポリフェニレンスルフィド樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;セルロースエステル;ポリウレタン樹脂;フェノール樹脂;メラミン樹脂;不飽和ポリエステル樹脂;シリコーン樹脂;並びにエポキシ樹脂が挙げられる。これらの他のポリマーの2種以上を組成物中に含有させてもよい。
【0109】
分岐ポリ(ヒドロキシ酸)はまた、充填剤とブレンドしてもよい。
【0110】
有利には、本発明のダウンホールツール部材は、分岐ポリ(ヒドロキシ酸)及び充填剤を含む組成物を含む少なくとも1つの要素を含み得る。
【0111】
充填剤の性質は特に限定されず、繊維状又はウィスカー状のいずれのフィラーを用いてもよい。シート状(層状)、粉末状、又は顆粒状の充填剤など、繊維状又はウィスカー状の充填剤以外の充填剤も使用することができる。さらに、炭素系、金属系、又はケイ素系の充填剤など、様々な組成の充填剤を使用することができる。
【0112】
使用し得る繊維状又はウィスカー状充填剤の具体的な例としては、ガラス繊維(長繊維型又は短繊維型のチョップドストランド、軟繊維など)、パン型又はピッチ型の炭素繊維、黒鉛繊維、金属繊維、アルミニウム繊維、黄銅繊維又はステンレス繊維などの金属繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石膏繊維、炭化ケイ素繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維及びロックウールなどの繊維状充填剤、並びにチタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ウォラストナイトウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカーなどのウィスカー状フィラーが挙げられる。
【0113】
使用し得る繊維状又はウィスカー状充填剤以外の充填剤の例としては、酸化ケイ素(シリカ、ケイ砂など)、タルク、カオリン、アルミノケイ酸塩及びケイ酸マグネシウムなどのケイ酸塩;酸化マグネシウム、アルミナ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化アンチモン、タングステン酸及びバナジウムなどの金属酸化物;硫酸カルシウム、硫酸バリウム及び硫酸アルミニウムなどの硫酸塩;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの水酸化物;モンモリロナイト、カオリナイト、バイデライト、サポナイト、ノントロナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、バーミキュライト、ハロイサイト、カネマイト、オクトシリケート、マガディアイト、ケニヤアイト、リン酸ジルコニウム及びリン酸チタンなどの粘土鉱物;ヒドロキシアパタイトなどの層状リン酸塩;並びにガラスビーズ、ガラスバルーン、セラミックビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉末、窒化ホウ素、炭化ケイ素、リン酸カルシウム、カーボンブラック及びグラファイトなどの他のシート状、粒状又は粉末状の無機充填剤が挙げられる。
【0114】
これらの充填剤の中でも、酸化ケイ素、ケイ酸塩、炭酸塩、粘土鉱物、無機繊維状充填剤、又は無機ウィスカー状充填剤が好ましく、ケイ砂、シリカ、タルク、カオリン、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、モンモリロナイト、ガラス繊維、炭素繊維又はグラファイト繊維が特に好ましい。
【0115】
2種類以上の充填剤を組み合わせて使用してもよい。
【0116】
充填剤は、通常、分岐ポリ(ヒドロキシ酸)及び充填剤の総重量に対して10~70重量%、好ましくは10~60重量%、より好ましくは15~40重量%の量で含まれる。
【0117】
本発明のダウンホールツール部材又は前記部材を含むダウンホールツールは、射出成形、押出成形、又は任意の他の成形又は熱成形技術などの知られた溶融加工技術を使用して製造することができる。
【0118】
分岐ポリ(ヒドロキシ酸)ポリマーは、特に有利な分解挙動を有し、これにより、低温でも地中に急速に分解されるダウンホールツール部材の製造に特に有用になる。
【0119】
参照により本明細書に援用されるいずれかの特許、特許出願及び刊行物の開示が、用語を不明確にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本出願の記載が優先するものとする。
【0120】
参照により本明細書に援用されるいずれかの特許、特許出願及び刊行物の開示が、用語を不明確にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本出願の記載が優先するものとする。
【0121】
ここで、本発明を以下の実施例に関連してより詳細に説明するが、その目的は単なる例示であって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0122】
実施例1
ヒーター、コンデンサー、温度及び圧力センサー、並びに機械的撹拌機を備えた7.5Lのステンレス鋼ダブルジャケット反応器に、70重量%のグリコール酸水溶液4500g(41.420モル、1.0000モル基準とする)、トリメチロールプロパン10.004g(0.075モル、グリコール酸1モル当たり0.0018モル)、シクロヘキサンジメタノール3.584g(0.025モル、グリコール酸1モル当たり0.0006モル)及びメタンスルホン酸0.536g(0.006モル、グリコール酸1モル当たり0.00014モル)を投入した。
【0123】
次いで、反応器を閉じ、真空及び窒素を交互に使用して3回パージした。反応溶液を機械的撹拌下で50℃に急速に加熱した。圧力を600mbarに低下させ、30分かけて50℃から100℃まで加熱を続けた。水蒸留を開始した。温度を60分間かけて130℃までゆっくりと上昇させ、水蒸留を静かに続けた。大部分の水が除去されたところで、温度を30分かけて220℃までより速く上昇させた。
【0124】
220℃に達した時点で、圧力を30分かけて30mbarまで徐々に低下させた。その後、温度を最終的に230℃まで上昇させ、残りの合成の間、安定に保った。グリコール酸転化率を高めるために、真空をさらに270分間適用した。
【0125】
次いで、窒素を用いて反応混合物を大気圧に戻した。ポリマーをケトルから底部バルブを通して取り出し、ドライアイス上のSSトレイに回収した。硬く固化したポリマー塊を取り出し、秤量した。粗収量:2.10kg(約88%).
【0126】
ポリマーを高速粉砕機を用いて直径2mm未満の小さな粒子に粉砕し、2mm篩を通して分級し、さらに真空オーブン中、90℃で一晩乾燥させた。
【0127】
均一な粒径分布及び均質性を得るために、3:1の圧縮比を有する25L/Dモノスクリューを備えた直径19mmのBRABENDER押出機で粉末をペレット化した。ダイは1ストランドダイ(2mm孔)であり、ストランドは乾燥条件で「ダイフェースカット」した。使用したスクリュー速度は60rpmであり、温度プロフィールは低く保ち(195℃の平坦な温度プロフィール、押出機内の4つの加熱ゾーン;ダイ内の1つの加熱ゾーン)、溶融重合されたプレポリマーの低粘度に対処した。典型的な出力は約2.1kg/hであった。得られたペレットサイズは、直径約2mm、長さ約3mmであった。
【0128】
このようにして得られたペレットを二重壁ロータリータンブラーユニットに導入して均一に混合し、さらに加熱し真空に引くことにより固相で重合させた。使用したタンブラーは、総体積15L/有効体積6Lを有した。1バッチ当たり約2kgのポリマーを使用した。
【0129】
タンブラーを閉じた後、8rpmで回転を開始した。真空ポンプを始動させて、タンブラー内を5~10mbarの真空にした。同時に、タンブラーを窒素(流量を50L/hに設定)でフラッシュした。温度を室温から214℃に16時間で上昇させるために、二重壁内を循環する油を加熱した。
【0130】
タンブラーはサンプリングバルブを備えており、ポリマーの量が減少した試料を注意深く取り出して、固相重合(SSP)の様々な時点での溶融粘度を平行板レオメーターを用いて分析した。所望の溶融粘度が達成された後、加熱を中止し、SSPを停止させ、生成物を冷却した。
【0131】
214℃で66時間のSSP後、10秒-1の剪断速度で647Pa・秒の溶融粘度を有するポリ(グリコール酸)ポリマー1.8gが得られた。
【0132】
SSP後の最終ポリマー中の残留メタンスルホン酸を、記載された方法に従って滴定し、グリコール酸単位に関して0.005モル%であることが見出された。
【0133】
実施例2
実施例1と同じ装置及びプロトコルを使用して、70重量%グリコール酸水溶液4500g(41.420モル、1.0000モル基準とする)、トリメチロールプロパン8.892g(0.066モル、グリコール酸1モル当たり0.0016モル)、イソフタル酸6.193g(0.037モル、グリコール酸1モル当たり0.0009モル)及びメタンスルホン酸0.819g(0.009モル、グリコール酸1モル当たり0.00021モル)の負荷を、2.15kgのポリ(グリコール酸)ポリマーに変換した(粗収率90%)。
【0134】
粉末をペレット化し、SSPによる溶融粘度を増加させるための全く同じプロトコルを、実施例1と同様に適用した。
【0135】
214℃で63時間のSSP後、10秒-1の剪断速度で582Pa・秒の溶融粘度を有するポリ(グリコール酸)ポリマー1.8gが得られた。
【0136】
SSP後の最終ポリマー中の残留メタンスルホン酸を、記載された方法に従って滴定し、グリコール酸単位に関して0.005モル%であることが見出された。
【0137】
線形減肉試験
実施例1及び2のポリマーを溶融加工することによって、底面5cm、高さ12.7mmを有する部品を作製した。これらの部品を120℃のオーブンで1時間結晶化させた。次いで、脱イオン水を入れた800mLボトルに部品を入れ、80℃のオーブンに置いた。ジャーを様々な時点で引き出し、部品を一晩乾燥させた。翌日、部品を切断し、非分解切片の厚さを測定した。
【0138】
図1は、実施例1及び2の分岐ポリ(ヒドロキシ酸)ポリマーの厚さの経時変化を示すグラフである。
【0139】
データは時間の経過とともに分解速度も増加し、部分減肉の非線形曲線をもたらすことを示した。
【0140】
実験の最初の24時間は、平均減肉速度は約75ミクロン/時であった。実験の最後の72時間は、減肉速度が約130ミクロン/時に増加した。
【0141】
減肉速度の増加は、井戸における部品の分解がより速いという利点を有する。したがって、井戸におけるツール又はツール部材の残留部品の除去に必要な時間が短縮される。これは、一般に温度が比較的低い北米の井戸において特に重要である。
図1
【国際調査報告】