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特表2023-506941光信号から情報を抽出する方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】光信号から情報を抽出する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/02 20060101AFI20230213BHJP
   G01J 1/42 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
G01J1/02 B
G01J1/42 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537205
(86)(22)【出願日】2020-12-20
(85)【翻訳文提出日】2022-08-15
(86)【国際出願番号】 IL2020051311
(87)【国際公開番号】W WO2021124340
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】62/950,976
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519011865
【氏名又は名称】アリエル サイエンティフィック イノベーションズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スターンクラー シュムエル
【テーマコード(参考)】
2G065
【Fターム(参考)】
2G065AA04
2G065AA20
2G065AB14
2G065BA02
2G065BA09
2G065BB02
2G065BB25
2G065BC09
(57)【要約】
光信号のスペクトル内容に基づいて情報を提供するためのシステムは、変調された光信号を提供するために、少なくとも1つのサブ光変調周波数に従って光信号に時間依存変調を適用するための光変調器を備える。本システムはまた、変調された光信号を受信し、応答的に電気感知信号を生成するように構成された光電デバイスと、電気感知信号を処理し、変調に基づいて光信号の少なくとも1つの波長に相関した出力を生成するように構成された信号処理システムとを備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号のスペクトル内容に基づいて情報を提供するシステムであって、
少なくとも1つのサブ光変調周波数に従って前記光信号に時間依存変調を適用して、変調された光信号を提供するための光変調器と、
前記変調された光信号を受信し、それに応答して電気感知信号を生成するように構成された光電デバイスと、
前記電気感知信号を処理して、前記変調に基づいて前記光信号の少なくとも1つの波長に相関する出力を生成するように構成された信号処理システムと、
を備える、前記システム。
【請求項2】
前記光電デバイスは、バイアスをかけられていない、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記光電デバイスは電気バイアスに応答し、前記システムは、電気バイアス信号を前記光電デバイスに印加するとともに、前記電気バイアス信号のDCレベルをスキャンするように構成された電気駆動回路を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記光電デバイスは電気バイアスに応答し、前記システムは、時間依存変調に従って変調された電気バイアス信号を前記光電デバイスに印加するための電気駆動回路を備えており、前記信号処理システムは、前記電気バイアス信号の前記変調にも基づいて、前記少なくとも1つの波長に相関する出力を生成するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
光信号のスペクトル内容に基づいて情報を提供するシステムであって、
電気バイアスに応答し、前記光信号を受信して、応答的に電気信号を生成するように構成された光電デバイスと、
時間依存変調に従って変調された電気バイアス信号を前記光電デバイスに印加するための電気駆動回路と、
前記電気信号を処理して、前記電気バイアス信号の前記変調に基づいて、前記光信号の少なくとも1つの波長に相関する出力を生成するように構成された信号処理システムと、
を備える、前記システム。
【請求項6】
前記光信号は、連続波(CW)信号である、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記電気バイアス信号は、前記光電デバイスの感光領域を特徴付ける概して一定のバンドギャップを維持しながら印加される、請求項3~6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記電気駆動回路は、前記電気バイアス信号の前記変調に加えて、前記電気バイアス信号のDCレベルをスキャンするように構成される、請求項3~7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
少なくとも1つの追加の光電デバイスを備え、前記変調された光信号は、前記少なくとも1つの追加の光電デバイスにも向けられ、前記信号処理システムは、前記少なくとも1つの追加の光電デバイスによって生成された電気感知信号を処理して、前記少なくとも1つの追加の光電デバイスによって生成された電気感知信号にも基づいて前記出力を生成するように構成される、請求項1~8のいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
前記信号処理システムは、前記変調周波数の変量を決定して、前記変量にも基づいて前記出力を生成するように構成される、請求項1~9のいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
前記変調された光信号を2つの変調された光信号に分割し、前記2つの変調された光信号を前記光電デバイスの反対側に向けるためのビーム分割システムを備える、請求項1~10のいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
追加の光電デバイスと、前記2つのデバイス間の光電子波長分散を打ち消すように、前記変調された光信号を2つの変調された光信号に分割し、前記2つの変調された光信号の1つを前記光電デバイスに向け、前記2つの変調された光信号の別の1つを前記追加の光電デバイスに向けるためのビーム分割システムと、を備える、請求項1~10のいずれかに記載のシステム。
【請求項13】
前記変調された光信号を反射して、前記光電デバイス内に複光路を作るための反射器、を備える、請求項1~10のいずれかに記載のシステム。
【請求項14】
光信号のスペクトル内容に基づいて情報を提供する方法であって、
少なくとも1つのサブ光変調周波数に従って前記光信号に時間依存変調を適用して、変調された光信号を提供することと、
前記変調された光信号を光電デバイスによって受信し、それによって前記変調された光信号に応答して電気感知信号を生成することと、
前記電気感知信号を処理して、前記変調に基づいて前記光信号の少なくとも1つの波長に相関する出力を生成することと、
を含む、前記方法。
【請求項15】
前記光電デバイスは、バイアスをかけられていない、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記光電デバイスは電気バイアスに応答し、前記方法は、電気バイアス信号を前記光電デバイスに印加して、前記電気バイアス信号のDCレベルをスキャンすることを含む、請求項14及び請求項15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記光電デバイスは電気バイアスに応答し、前記方法は、時間依存変調に従って変調された電気バイアス信号を前記光電デバイスに印加することを含み、前記出力は、前記電気バイアス信号の前記変調にも基づく、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
光信号のスペクトル内容に基づいて情報を提供する方法であって、
電気バイアスに応答する光電デバイスに、時間依存変調に従って変調された電気バイアス信号を印加することと、
前記電気バイアス信号の前記印加中に、前記光電デバイスによって前記光信号を受信し、それによって前記光信号に応答して電気感知信号を生成することと、
前記電気感知信号を処理して、前記電気バイアス信号の前記変調に基づいて、前記光信号の少なくとも1つの波長に相関する出力を生成することと、
を含む、前記方法。
【請求項19】
前記光信号は、連続波(CW)信号である、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記電気バイアスを前記印加することは、前記光電デバイスの感光領域を特徴付ける概して一定のバンドギャップを維持しながらである、請求項17~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記電気バイアス信号の前記変調に加えて、前記電気バイアスのDCレベルをスキャンすることを含む、請求項17~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1つの追加の光電デバイスにもよって前記光信号を受信することと、前記少なくとも1つの追加の光電デバイスによって生成された電気感知信号を処理することと、を含み、前記出力を前記生成することは、前記少なくとも1つの追加の光電デバイスによって生成される前記電気感知信号にも基づく、請求項14~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記変調周波数の変量を決定することを含み、前記出力を前記生成することは、前記変量にも基づく、請求項14~21のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記変調された光信号を2つの変調された光信号に分割し、前記2つの変調された光信号を前記光電デバイスの反対側に向けることを含む、請求項14~23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
2つのデバイス間の光電子波長分散を打ち消すように、前記変調された光信号を2つの変調された光信号に分割し、前記2つの変調された光信号の1つを前記光電デバイスに向け、前記2つの変調された光信号の別の1つを追加の光電デバイスに向ける、請求項14~23のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記変調された光信号を反射して、前記光電デバイス内に複光路を作ることを含む、請求項14~23のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記光電デバイスによってもたらされる光電子波長分散を変化させるために、前記光電デバイスに歪みまたは温度変化を加えることを含む、請求項14~26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記変化させることは、前記光電子波長分散を所定の閾値未満に低減することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
プローブ信号を光電デバイスに送信することと、前記光電デバイスから応答信号を受信することと、を含み、前記光信号は前記応答信号であり、前記出力は前記光電デバイスの少なくとも1つの特性を含む、請求項14~28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記光電デバイスの前記少なくとも1つの特性は、電気的特性、光学特性、材料特性、機械的特性及び時間特性からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記光電デバイスの前記少なくとも1つの特性は、応答度、量子効率、抵抗、電気容量、電子及び正孔の移動度、励起子の移動度、材料のドーピングレベル、構造、寸法、空乏領域の幅、内部電圧レベル、正孔拡散係数及び電子拡散係数、ドリフト速度、吸収スペクトル、吸収値、誘電係数、屈折率からなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記光電デバイスの前記少なくとも1つの特性は、吸収スペクトルαを含み、前記光電デバイスは、(1/α)dα/dλの値が前記光信号の予想される波長範囲内でピークに達するように選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記変調は、無線周波数変調を含む、請求項1~26のいずれかに記載のシステムまたは方法。
【請求項34】
前記処理することは、変調振幅を処理することを含む、請求項1~33のいずれかに記載のシステムまたは方法。
【請求項35】
前記処理することは、変調位相シフトを処理することを含む、請求項1~34のいずれかに記載のシステムまたは方法。
【請求項36】
前記光信号は、多色ビームのスペクトル成分であり、前記多色ビームの他のスペクトル成分から空間的に分離されている、請求項1~35のいずれかに記載のシステムまたは方法。
【請求項37】
前記光信号は多色であり、前記システムまたは方法は、前記光信号のスペクトルを示す出力を生成するために適用される、請求項1~36のいずれかに記載のシステムまたは方法。
【請求項38】
前記変調は、スキャンされた変調周波数によって特徴付けられる、請求項37に記載のシステムまたは方法。
【請求項39】
前記光信号は単色であり、前記システムまたは方法は、前記波長の絶対値、及び/または前記波長のスペクトルシフトを監視するために適用される、請求項1~36のいずれかに記載のシステムまたは方法。
【請求項40】
前記光信号は、試料の歪みまたは歪みの変化を示し、前記システムまたは方法は、前記少なくとも1つの波長に基づいて、前記歪みまたは前記歪みの前記変化を決定するために使用される、請求項1~39のいずれかに記載のシステムまたは方法。
【請求項41】
前記光信号は、試料に加えられた圧力または圧力の変化を示し、前記システムまたは方法は、前記少なくとも1つの波長に基づいて、前記圧力または前記圧力の前記変化を決定するために使用される、請求項1~39のいずれかに記載のシステムまたは方法。
【請求項42】
前記光信号は、試料の温度または温度の変化を示し、前記システムまたは方法は、前記少なくとも1つの波長に基づいて、前記温度または前記温度の前記変化を決定するために使用される、請求項1~39のいずれかに記載のシステムまたは方法。
【請求項43】
前記光信号は、試料中または試料近傍の少なくとも1種類の化合物の存在を示し、前記システムまたは方法は、前記少なくとも1つの波長に基づいて前記少なくとも1種類の化合物の存在またはレベルを判定するために使用される、請求項1~39のいずれかに記載のシステムまたは方法。
【請求項44】
前記光信号は、試料の加速運動を示し、前記システムまたは方法は、前記少なくとも1つの波長に基づいて前記加速運動の有無またはレベルを判定するために使用される、請求項1~39のいずれかに記載のシステムまたは方法。
【請求項45】
前記変調された光信号は、前記光電デバイスの入口側面で受信され、前記変調を特徴付ける変調周波数は、前記光電デバイスの応答振幅が最大応答振幅の1/√2に等しい値を超える、請求項1~44のいずれかに記載のシステムまたは方法。
【請求項46】
データストリームを搬送するように変調された光信号を受信する方法であって、前記光信号が光ファイバを介して伝送されて、前記信号に波長分散を引き起す、前記方法は、
前記変調された光信号を受信し、それに応答して、前記波長分散を少なくとも部分的に補償するように選択された量だけ前記光信号のパルス幅よりも狭いパルス幅を有する電気感知信号を生成するように構成された光電デバイスに前記光信号を向けることと、
前記電気感知信号を処理して、前記データストリームを示す出力を生成することと、
を含む、前記方法。
【請求項47】
センシング方法であって、
少なくとも1つのサブ光変調周波数に従って、2つの光信号に時間依存変調を適用して、変調された光信号を提供することと、
前記変調された光信号を光電デバイスによって受信し、それによって前記変調された光信号に応答して電気感知信号を生成することであって、前記変調された光信号間に所定の相対位相シフトがある、前記生成することと、
前記電気感知信号を処理して、前記光信号間の位相シフトを決定することと、
前記位相シフトを示す出力を生成することと、
を含む、前記センシング方法。
【請求項48】
センシング方法であって、
光信号を2つの二次光信号に分割することと、
光電デバイスの入口側面によって前記二次光信号の1つを受信し、前記光電デバイスの基板側面によって前記二次光信号の別の1つを受信することと、
前記光電デバイスによって生成された電気信号を監視して、前記光信号が伝搬する環境における少なくとも1つの変化を識別することと、
を含む、前記センシング方法。
【請求項49】
センシング方法であって、
光信号を光電デバイスの入口側面及び基板側面の1つに向けることと、
前記信号を、前記光電デバイスの前記入口側面及び前記基板側面の別の1つに反射し返すことと、
前記光電デバイスによって生成された電気信号を監視して、前記光信号が伝搬する環境における少なくとも1つの変化を識別することと、
を含む、前記センシング方法。
【請求項50】
センシング方法であって、
光信号を2つの二次光信号に分割することと、
第1の光電デバイスの入口側面によって前記二次光信号の1つを受信し、第2の光電デバイスの基板側面によって前記二次光信号の別の1つを受信することと、
前記第1の光電デバイス及び前記第2の光電デバイスによって生成された電気信号を合成することと、
前記合成された電気信号を監視して、前記光信号が伝搬する環境における少なくとも1つの変化を識別することと、
を含む、前記センシング方法。
【請求項51】
分光のために使用される、請求項1~50のいずれかに記載のシステムまたは方法。
【請求項52】
光ファイバを通して伝送される信号を感知するために使用される、請求項1~50のいずれかに記載のシステムまたは方法。
【請求項53】
無線周波数-光信号処理のために使用される、請求項1~50のいずれかに記載のシステムまたは方法。
【請求項54】
光電デバイスを製造する方法であって、
入力光位相シフトを受信することと、
前記入力位相シフトに対する侵入パラメータPの対数微分を最大化するように、電荷キャリア生成領域の幅、及び吸収スペクトルを選択することであって、前記侵入パラメータPが、前記幅及び前記吸収スペクトルの積である、前記選択することと、
前記幅及び前記吸収スペクトルに従ってpn接合を製造することと、
を含む、前記方法。
【請求項55】
前記入力光位相シフトは正である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記入力光位相シフトは負である、請求項54に記載の方法。
【請求項57】
前記入力光位相シフトは0.3未満である、請求項54に記載の方法。
【請求項58】
光電子フィードバックを生成する方法であって、
光源によって光信号を生成することと、
前記光信号を光電デバイスに向けて、電気信号を生成することと、
前記電気信号を前記光源にフィードバックして、前記電気信号に応答した共振信号を生成することと、
前記光電デバイスの光電子波長分散を制御して、前記共振信号の波長を選択することと、
を含む、前記方法。
【請求項59】
前記光信号は多色であり、前記光電デバイスは、それぞれが異なる波長に対応する電気信号のセットを提供するように選択され、それによってそれぞれの光信号のセットを生成する、請求項58に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年12月20日に出願された米国仮特許出願第62/950,976号の優先権の利益を主張するものであり、この米国仮特許出願の内容全体を参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、そのいくつかの実施形態においては、光信号の分析に関し、より詳細には、光信号の光波長または光波長のスペクトルに相関する情報を光信号から抽出する方法及びシステムに関する。
【0003】
多くの応用では、1つ以上の光波長、波長シフト、またはスペクトル範囲にわたる光スペクトルの測定、「光分光法」または場合によっては「波長モニタリング」として知られている技術が必要とされる。例えば、近年、ヘルスケアサービス、産業プロセスモニタリング、及び環境モニタリングのためのスペクトルセンシングのシステム開発に関心が集まっている。典型的な測定としては、分析物の有無の証明、工業プロセスの品質判定、構造物の応力、振動、もしくは破壊の感知、または水、血液、エアロゾル、空気、食品などの標本中の分析物の反応もしくは結合動力学のモニタリングなどがある。
【0004】
光学分光法は、感度が高く、選択的であるため有利であり、試料を汚染することなく連続的なリアルタイムモニタリングに使用することができる。分光器の1つの分類としては、分散を利用して光をスペクトル成分に分離するものがある。従来の分散型分光器は、分散型グレーティングを用いて運動量を変化させ、光を角度分散させるものであり、スペクトル分解能はグレーティングから検出器までの光路長に対応し、デバイスサイズと分解能との間にトレードオフの関係が課されている。近年、「小型」分光器の開発により、そのコスト削減と携帯性とのため、多くの新しい応用が可能になっている。
【0005】
米国特許第9,714,863号は、フォトダイオードと、フォトダイオードに調整可能な歪みを与えるための歪み付与機構とを含む光学分光器を開示している。歪みを調整することで、フォトダイオード感光領域のバンドギャップ調整を可能にする。
【0006】
波長依存性の応答度の原理に基づいて動作するフォトダイオードベースの波長センサも知られている(www(dot)first-sensor(dot)com/cms/upload/datasheets/WS7(dot)56_ PCBA2_5000004(dot)pdf)。
【0007】
分割型フォトダイオード検出器の前に配置されたフィルタに基づいている波長センサも知られている(www(dot)open-photonics(dot)com/Wp-content/ uploads/2015/09/OPI_FeaturedTechnology_WSD_090915(dot)pdf)。
【発明の概要】
【0008】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、光信号のスペクトル内容に基づく情報を提供するためのシステムが提供される。本システムは、少なくとも1つのサブ光変調周波数に従って前記光信号に時間依存変調を適用して、変調された光信号を提供するための光変調器と、変調された光信号を受信し、それに応答して電気感知信号を生成するように構成された光電デバイスと、電気感知信号を処理して、変調に基づいて光信号の少なくとも1つの波長に相関する出力を生成するように構成された信号処理システムと、を備える。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態によれば、光電デバイスは、バイアスをかけられていない。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態によれば、光電デバイスは電気バイアスに応答し、システムは、電気バイアス信号を光電デバイスに印加するとともに、電気バイアス信号のDCレベルをスキャンするように構成された電気駆動回路を備える。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態によれば、光電デバイスは電気バイアスに応答し、システムは、時間依存変調に従って変調された電気バイアス信号を光電デバイスに印加するための電気駆動回路を備えており、信号処理システムは、電気バイアス信号の変調にも基づいて、少なくとも1つの波長に相関する出力を生成するように構成される。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、光信号のスペクトル内容に基づく情報を提供するためのシステムが提供される。本システムは、電気バイアスに応答し、光信号を受信して、応答的に電気信号を生成するように構成された光電デバイスと、時間依存変調に従って変調された電気バイアス信号を光電デバイスに印加するための電気駆動回路と、電気感知信号を処理して、電気バイアス信号の変調に基づいて光信号の少なくとも1つの波長に相関する出力を生成するように構成された信号処理システムと、を備える。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、電気バイアス信号は、光電デバイスの感光領域を特徴付ける概して一定のバンドギャップを維持しながら印加される。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によれば、電気駆動回路は、電気バイアス信号の変調に加えて、電気バイアス信号のDCレベルをスキャンするように構成される。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本システムは、少なくとも1つの追加の光電デバイスを備え、変調された光信号は、少なくとも1つの追加の光電デバイスにも向けられ、信号処理システムは、少なくとも1つの追加の光電デバイスによって生成された電気感知信号を処理して、少なくとも1つの追加の光電デバイスによって生成された電気感知信号にも基づいて出力を生成するように構成される。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態によれば、信号処理システムは、サブ光変調周波数の変量を決定して、変量にも基づいて出力を生成するように構成される。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本システムは、変調された光信号を2つの変調された光信号に分割し、2つの変調された光信号を光電デバイスの反対側に向けるためのビーム分割システムを備える。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本システムは、追加の光電デバイスと、2つのデバイス間の光電子波長分散を打ち消すように、変調された光信号を2つの変調された光信号に分割し、2つの変調された光信号の1つを光電デバイスに向け、2つの変調された光信号の別の1つを追加の光電デバイスに向けるためのビーム分割システムと、を備える。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本システムは、変調された光信号を反射して、光電デバイス内に複光路を作るための反射器、を備える。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、光信号のスペクトル内容に基づく情報を提供する方法が提供される。本方法は、少なくとも1つのサブ光変調周波数に従って前記光信号に時間依存変調を適用して、変調された光信号を提供することと、変調された光信号を光電デバイスによって受信し、それによって変調された光信号に応答して電気感知信号を生成することと、電気感知信号を処理して、変調に基づいて光信号の少なくとも1つの波長に相関する出力を生成することと、を含む。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態によれば、光電デバイスは、バイアスをかけられていない。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によれば、光電デバイスは電気バイアスに応答し、本方法は、電気バイアス信号を光電デバイスに印加するとともに、電気バイアス信号のDCレベルをスキャンすることを含む。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態によれば、光電デバイスは電気バイアスに応答し、本方法は、時間依存変調に従って変調された電気バイアス信号を光電デバイスに印加することを含み、少なくとも1つの波長を決定することは、電気バイアス信号の変調にも基づいている。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、光信号のスペクトル内容に基づく情報を提供する方法が提供される。本方法は、電気バイアスに応答する光電デバイスに、時間依存変調に従って変調された電気バイアス信号を印加することと、電気バイアス信号の印加中に、光電デバイスによって光信号を受信し、それによって光信号に応答して電気感知信号を生成することと、電気感知信号を処理して、電気バイアス信号の変調に基づいて、光信号の少なくとも1つの波長に相関する出力を生成することと、を含む。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態によれば、光信号は、連続波(CW)信号である。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によれば、電気バイアス信号の印加は、光電デバイスの感光領域を特徴付ける概して一定のバンドギャップを維持しながらである。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、電気バイアス信号の変調に加えて、電気バイアス信号のDCレベルをスキャンすることを含む。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、少なくとも1つの追加の光電デバイスにもよって光信号を受信することと、少なくとも1つの追加の光電デバイスによって生成された電気感知信号を処理することと、を含み、出力を生成することは、少なくとも1つの追加の光電デバイスによって生成される電気感知信号にも基づく。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、サブ光変調周波数の変量を決定することを含み、出力を生成することは変量にも基づく。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、変調された光信号を2つの変調された光信号に分割することと、2つの変調された光信号を光電デバイスの反対側に向けることとを含む。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、2つのデバイス間の光電子波長分散を打ち消すように、変調された光信号を2つの変調された光信号に分割し、2つの変調された光信号の1つを光電デバイスに向け、2つの変調された光信号の別の1つを追加の光電デバイスに向けることを含む。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、変調された光信号を反射して、光電デバイス内に複光路を作ることを含む。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によれば、変調は無線周波数変調を含む。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によれば、処理することは、変調振幅を処理することを含む。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態によれば、処理することは、変調位相シフトを処理することを含む。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によれば、光信号は、多色ビームのスペクトル成分であり、多色ビームの他のスペクトル成分から空間的に分離されている。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によれば、光信号は多色であり、システムまたは方法は、光信号のスペクトルを示す出力を生成するために適用される。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態によれば、変調は、スキャンされた変調周波数によって特徴付けられる。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態によれば、光信号は単色であり、システムまたは方法は、波長の絶対値、及び/または波長のスペクトルシフトを監視するために適用される。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態によれば、光信号は、試料の歪みまたは歪みの変化を示し、システムまたは方法は、少なくとも1つの波長に基づいて、歪みまたは歪みの変化を決定するために使用される。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によれば、光信号は、試料に加えられた圧力または圧力の変化を示し、システムまたは方法は、少なくとも1つの波長に基づいて、圧力または圧力の変化を決定するために使用される。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態によれば、光信号は、試料の温度または温度の変化を示し、システムまたは方法は、少なくとも1つの波長に基づいて、温度または温度の変化を決定するために使用される。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態によれば、光信号は、試料中または試料近傍の少なくとも1種類の化合物の存在を示し、システムまたは方法は、少なくとも1つの波長に基づいて少なくとも1種類の化合物の存在またはレベルを判定するために使用される。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態によれば、光信号は、試料の加速運動を示し、システムまたは方法は、少なくとも1つの波長に基づいて加速運動の有無またはレベルを判定するために使用される。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態によれば、光電デバイスは入口領域優勢であり、変調を特徴付ける変調周波数は、光電デバイスの応答振幅が、振幅が10%以下しか変化しない周波数に応答する応答振幅の1/√2に等しくなる値を上回っている。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、プローブ信号を光電デバイスに送信することと、光電デバイスから応答信号を受信することと、を含み、光信号は応答信号であり、出力は光電デバイスの少なくとも1つの特性を含む。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態によれば、光電デバイスの少なくとも1つの特性は、電気的特性、光学特性、材料特性、機械的特性及び時間特性からなる群から選択される。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態によれば、光電デバイスの少なくとも1つの特性は、応答度、量子効率、抵抗、電気容量、電子及び正孔の移動度、励起子の移動度、材料のドーピングレベル、構造、寸法、空乏領域の幅、内部電圧レベル、正孔拡散係数及び電子拡散係数、ドリフト速度、吸収スペクトル、吸収値、誘電係数、屈折率からなる群から選択される。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、データストリームを搬送するように変調された光信号を受信する方法が提供され、光信号は、光ファイバを介して伝送されて、信号に波長分散を引き起す。本方法は、変調された光信号を受信し、それに応答して、波長分散を少なくとも部分的に補償するように選択された量だけ光信号のパルス幅よりも狭いパルス幅を有する電気感知信号を生成するように構成された光電デバイスに光信号を向けることと、電気感知信号を処理して、データストリームを示す出力を生成することと、を含む。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、データストリームを搬送するように変調された光信号を受信する方法が提供され、光信号は、光ファイバを介して伝送されて、信号に波長分散を引き起す。本方法は、変調された光信号を受信し、それに応答して、波長分散を少なくとも部分的に補償するように選択された量だけ光信号のパルス幅よりも狭いパルス幅を有する電気感知信号を生成するように構成された光電デバイスに光信号を向けることと、電気感知信号を処理して、データストリームを示す出力を生成することと、を含む。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、センシング方法が提供される。本方法は、少なくとも1つのサブ光変調周波数に従って、2つの光信号に時間依存変調を適用して、変調された光信号を提供することと、変調された光信号を光電デバイスによって受信し、それによって変調された光信号に応答して電気感知信号を生成することであって、変調された光信号間に所定の相対位相シフトがある、生成することと、電気感知信号を処理して、光信号間の位相シフトを決定することと、位相シフトを示す出力を生成することと、を含む。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、センシング方法が提供される。本方法は、光信号を2つの二次光信号に分割することと、光電デバイスの入口側面によって二次光信号の1つを受信し、光電デバイスの基板側面によって二次光信号の別の1つを受信することと、光電デバイスによって生成された電気信号を監視して、光信号が伝搬する環境における少なくとも1つの変化を識別することと、を含む。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、センシング方法が提供される。本方法は、光信号を光電デバイスの入口側面及び基板側面の1つに向けることと、信号を、光電デバイスの入口側面及び基板側面の別の1つに反射し返すことと、光電デバイスによって生成された電気信号を監視して、光信号が伝搬する環境における少なくとも1つの変化を識別することと、を含む。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、センシング方法が提供される。本方法は、光信号を2つの二次光信号に分割することと、第1の光電デバイスの入口側面によって二次光信号の1つを受信し、第2の光電デバイスの基板側面によって二次光信号の別の1つを受信することと、第1の光電デバイス及び前記第2の光電デバイスによって生成された電気信号を合成することと、合成された電気信号を監視して、光信号が伝搬する環境における少なくとも1つの変化を識別することと、を含む。
【0055】
上記で描写されたシステムまたは方法、任意選択で、好ましくは、以下にさらに詳述されるようなシステムまたは方法を、分光に使用することができる。
【0056】
上記で描写されたシステムまたは方法、任意選択で、好ましくは、以下にさらに詳述されるようなシステムまたは方法を、光ファイバを介して伝送される信号を感知するために使用することができる。
【0057】
上記で描写されたシステムまたは方法、任意選択で、好ましくは、以下にさらに詳述されるようなシステムまたは方法を、無線周波数-フォトニック信号処理に使用することができる。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、光電デバイスを製造する方法が提供される。本方法は、入力光位相シフトを受信することと、入力位相シフトに対する侵入パラメータPの対数微分を最大化するように、電荷キャリア生成領域の幅、及び吸収スペクトルを選択することであって、侵入パラメータPが、幅及び吸収スペクトルの積である、選択することと、幅及び吸収スペクトルに従ってpn接合を製造することと、を含む。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態によれば、入力光位相シフトは正である。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態によれば、入力光位相シフトは負である。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態によれば、入力光位相シフトは、0.3未満、または0.2未満、または0.1未満、または0.05未満である。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、光電子フィードバックを生成する方法が提供される。本方法は、光源によって光信号を生成することと、光信号を光電デバイスに向けて、電気信号を生成することと、電気信号を光源にフィードバックして、電気信号に応答した共振信号を生成することと、光電デバイスの光電子波長分散を制御して、共振信号の波長を選択することと、を含む。本発明のいくつかの実施形態では、共振信号は、光電デバイスの出力で生成される電気信号であり、本発明のいくつかの実施形態では、共振信号は、光源光電デバイスの出力で生成される光信号である。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態によれば、光信号は多色であり、光電デバイスは、それぞれが異なる波長に対応する電気信号のセットを提供するように選択され、それによってそれぞれの光信号のセットを生成する。
【0064】
本明細書で使用される全ての技術用語及び/または科学用語は、特に定義がない限り、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと同様または同等の方法及び材料が、本発明の実施形態の実施または試験に使用され得るが、例示的な方法及び/または材料が以下に記載されている。矛盾がある場合には、定義を含め、本特許明細書が優先される。さらに、材料、方法、及び実施例は、例示的なものにすぎず、必ずしも限定することを意図するものではない。
【0065】
本発明の実施形態の方法及び/またはシステムの実施態様は、選択されたタスクを、手動で、自動で、またはそれらの組み合わせで実行または完了することを含み得る。さらに、本発明の方法及び/またはシステムの実施形態の実際の機器及び装備によれば、いくつかの選択されたタスクが、オペレーティングシステムを用いるハードウェア、ソフトウェア、もしくはファームウェア、またはそれらの組み合わせによって実施されてもよい。
【0066】
例えば、本発明の実施形態による選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップまたは回路として実施されてもよい。本発明の実施形態による選択されたタスクが、ソフトウェアとしては、任意の適切なオペレーティングシステムを用いるコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実施されてもよい。本発明の例示的な実施形態では、本明細書に記載されている方法及び/またはシステムの例示的な実施形態による1つ以上のタスクが、複数の命令を実行するためのコンピューティングプラットフォームなどのデータプロセッサによって実行される。任意選択で、データプロセッサは、命令及び/またはデータを格納するための揮発性メモリ、及び/または命令及び/またはデータを格納するための不揮発性ストレージ、例えば、磁気ハードディスク及び/またはリムーバブルメディアを含む。任意選択で、ネットワーク接続も提供される。ディスプレイ、及び/またはキーボードまたはマウスなどのユーザ入力デバイスも任意選択で提供される。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態を、本明細書で単なる例示として添付の図面を参照しながら説明する。この際、細部にわたって図面を具体的に参照するが、図示されている細部は、一例であり、本発明の実施形態の実例となる説明のためであることが強調される。この点については、図面とともに解釈される記述が、本発明の実施形態がどのように実施され得るかを当業者に明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1】本発明のいくつかの実施形態による、有効波長分散を生成するために使用することができる電子正孔対生成光学物質の概略図である。
図2A】本発明のいくつかの実施形態による、光信号のスペクトル内容に相関する出力を提供するためのシステムの概略図である。
図2B】本発明のいくつかの実施形態による、光信号のスペクトル内容に相関する出力を提供するためのシステムの概略図である。
図2C】本発明のいくつかの実施形態による、光信号のスペクトル内容に相関する出力を提供するためのシステムの概略図である。
図2D】本発明のいくつかの実施形態による、光信号のスペクトル内容に相関する出力を提供するためのシステムの概略図である。
図2E】本発明のいくつかの実施形態による、光信号のスペクトル内容に相関する出力を提供するためのシステムの概略図である。
図2F】本発明のいくつかの実施形態による、光信号のスペクトル内容に相関する出力を提供するためのシステムの概略図である。
図2G】本発明のいくつかの実施形態による、光信号のスペクトル内容に相関する出力を提供するためのシステムの概略図である。
図2H】本発明のいくつかの実施形態による、光信号のスペクトル内容に相関する出力を提供するためのシステムの概略図である。
図3】本発明の様々な例示的な実施形態による、光信号のスペクトル内容を測定するのに適した方法のフローチャート図である。
図4】本発明のいくつかの実施形態による、グレーティングを用いた空間分離と、有効波長分散との両方を使用する分光器の概略図である。
図5】本発明のいくつかの実施形態に従って実施された実験で得られた実験結果と理論予測との対比を示す。
図6】本発明のいくつかの実施形態による、有効波長分散が計算されるPN型フォトダイオードを説明する概略図である。
図7】本発明のいくつかの実施形態による、光ファイバに形成されたグレーティングの摂動を判定するのに適したシステムの概略図である。
図8】PNフォトダイオードの変調された光の吸収、少数電荷形成、及びp型基板領域における拡散電流による移動を示す概略図である。短波長光λ及び長波長光λの吸収が示され、それぞれ侵入深さx及びxでe-1に減少する。平均拡散時間τdif(x)>τdif(x)(ただし、τdif(x)=Ldif (x)/De)は、原点xjからPN接合端までの平均拡散移動長Ldif(x)にわたる拡散時間であり、Deは電子拡散係数である。侵入深さを基準点にすると、長波長で発生した電子電流は平均してより長い距離を移動し、そのAC成分は、短波長で発生した電流の位相シフトΩτdif(x)に比べて、より大きなRF位相シフトΩτdif(x)を生じる。
図9】各種半導体のα-1(dα/dλ)対λを示す。これらの4つの材料では、Ge及びSiが、それぞれCバンド領域及び1000~1400nm領域で最も強い(負の)値を持つものとして際立っている。さらに、Siは近赤外域に広帯域の感度を持ち、Geは550~700nmの領域で優勢である。
図10】A及びBは、単一領域デバイス及び二重領域デバイスの変調振幅対Ptot及び光電子波長分散(OED)感度対Ptotを示し、q=1では、単一入口領域、Ptot=P、q=0では、単一基板領域、Ptot=P、qの中間値では、二重領域デバイス、Ptot=P+Pである。Aは、正規化された振幅|F|norm(|Fmaxに正規化)対Ptotを示す。Bは、P(dθ/dP)(左縦座標)、及びλ=1560nmにおけるゲルマニウムのSOED=P(dθ/dP)α-1(dα/dλ)Ge(右縦座標)対Ptotを示す。左縦座標が反転していることに留意されたい。単一領域デバイスでは、全ての材料、及び全ての波長に対して、P(dθ/dP)及びOED感度の絶対値は、P≒3でピークに達する。Cバンドのゲルマニウムでは、単一領域デバイスに対して最大|SOED|≒0.67deg/nmである。二重領域デバイスは、Ptotのより高い領域でより高い感度を示し得るが、信号振幅は減少する。さらに、二重領域デバイスは、qによって決まる特定のPtotZDゼロ分散点で、ゼロOEDを示すように設計することが可能である。具体的な例を後述する。q=0.01に対してPtotZD=2.61であり、×印で示されている。
図11】変調位相シフト法を用いてOEDを測定する実験装置の概略図である。Cバンドの波長可変光は、ネットワークアナライザ制御のマッハツェンダ変調器によって正弦波変調され、次いで光ファイバを通過した後にフォトダイオードに向けられる。フォトダイオードの出力はネットワークアナライザにフィードバックされ、ネットワークアナライザは変調振幅|F(λ)|及び位相シフトθ(λ)を監視する。光強度信号(大きなブロック矢印)及び電子信号(小さい方の矢印)のAC成分が示されている。TLは波長可変レーザ、MZMは変調器、OFは光ファイバ(ショートジャンパまたはDCFモジュール)、DETは試験用検出器(GePNまたはInGaAsPIN)、NAはネットワークアナライザである。
図12】A及びBは、実験結果、及び理論との比較を示す。Aは、3つの実験についての変調位相シフト対波長の理論計算(実線)及び実験結果(ドット)を示す。最上部の線及びドットは、InGaAsPIN検出器及びショートファイバジャンパに対応する。中間の線及びドットは、同じInGaAs検出器を用いた高分散DCFファイバに対応する。一番下のドット及び線は、GePNフォトダイオード及びショートファイバジャンパに対応する。Bは、様々な温度下でのGeフォトダイオードにおけるOEDによる測定された変調位相シフト対波長を示す。高OED領域は、吸収端領域に続く領域であり、予想通り、温度の上昇に伴ってより高い波長にシフトする。データ点及び線(線は見る者の補助となる)は、明確にするために垂直方向にシフトさせている。全ての位相測定に対する3シグマ位相ノイズは、500Hzの動作電子バンド幅で5×10-3度であった。
【発明を実施するための形態】
【0069】
本発明は、そのいくつかの実施形態においては、光信号の分析に関し、より詳細には、光信号の光波長または光波長のスペクトルに相関する情報を光信号から抽出する方法及びシステムに関する。
【0070】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の記述で説明される、及び/または図面及び/または実施例に示される、構造の詳細及び構成要素及び/または方法の配列に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施もしくは実行することが可能である。
【0071】
光吸収を受けて電流を発生させる物質、例えば半導体材料であるが限定されることがない物質の応答は、例えば、物質のバンドギャップ、物質の吸収スペクトル、スペクトルの吸収端、ならびに物質内での光吸収及び可動電荷生成の量子プロセスなど、様々な要因のために波長に依存する。本発明者は、光吸収、電荷キャリア生成、及び電流形成の過程で、実質的な有効波長分散(ECD)を示すことがあることを発見した。次に、この有効波長分散について説明する。
【0072】
本明細書で使用するとき、「電荷キャリア対生成光学物質」とは、光を吸収し、この吸収に応答して、1種類以上の電荷キャリアのドリフトまたは拡散などであるが限定されない、様々な電荷輸送機構によって、物質に測定可能な正味電流を流すのに十分な量の電荷キャリアの対(通常は電子正孔対)を生成することができる物質を指す。
【0073】
本実施形態では、両方の種類の電荷キャリア(例えば、電子及び正孔の両方)が、正味の電流に共同で寄与するように、十分に移動可能である物質を企図している。
【0074】
本実施形態ではまた、一方の種類の電荷キャリア(例えば、電子のみ)のみが正味の電流に寄与するのに十分に移動可能であるのに対して、他方の種類の電荷キャリアの可動性が抑制された物質を企図している。この現象によって特徴付けられる当技術分野で周知の特定のデバイスの1つが、単一走行キャリア検出器として知られている。
【0075】
図1は、長さLの電荷キャリア対生成光学物質10で、電荷キャリア対生成光学物質が光の吸収に応答して十分に移動可能な電子と十分に移動可能な正孔とを生成する場合に起こる一般的なプロセスを概略的に示す。可動電子及び可動正孔の両方を生成する物質の代表例としては、PNフォトダイオードがあるが、これに限定されない。図1は、可動電子及び可動正孔の両方を生成する物質を表しているが、本実施形態はまた、上記でさらに詳述するように、1つの種類の電荷キャリアのみが電流に寄与する物質を企図していることを理解されたい。
【0076】
λ≦λ≦λの範囲の波長のスペクトルからなり、強度P0を有する光信号12が、物質10に、例えばそのn側(カソード側)から進入する。物質10内を伝搬している間に、信号のスペクトル成分は吸収を受ける。信号12の最小波長λ及び最大波長λの吸収の、信号12の進入点からの距離への依存性が、それぞれ曲線14及び15として描かれている。図1では、限定するものと見なされるべきではないが、λの吸収がλの吸収よりも強く、したがってλの侵入深さxはλの侵入深さxよりも浅い。ただし、x、i=1,2は、信号12のそれぞれの成分の強度がe-1P0に低下する、信号12の進入点からの距離として定義される。したがって、電荷キャリア対生成光学物質10の領域0≦x≦xでは、波長λの信号の成分は効率よく吸収され、電荷キャリアの対(本実施例では電子正孔対16e、16h)を励起し、物質10の領域0≦x≦xでは、波長λの信号の成分は効率よく吸収され、電荷キャリアの対(本実施例では電子正孔対18e、18h)を励起する。明確にするために、図1は、侵入深さx、xで生成される対16及び18のみを示しているが、そのような電子正孔対は、上記の領域全体に沿って生成されることを理解されたい。このように、物質10内の電荷キャリア生成領域は、波長に依存する。様々な電荷輸送機構、例えば、拡散及びドリフトの結果として、生成された1種類以上の電荷キャリアが物質10中を移動する。本実施例では、電子及び正孔の両方が十分に移動できて電流に寄与するので、電子16e、18eと正孔16h、18hとは、物質10の反対側(本明細書ではそれぞれn側及びp側と呼ばれる)に向かって移動する。図1では、電子16e、18e、及び正孔16h、18hの通過時間が、それぞれ、τ(λ)、τ(λ)、τ(λ)及びτ(λ)によって示されている。x>xであるため、電子18eは電子16eよりも長い距離を伝搬し、正孔16hは正孔18hよりも長い距離を伝搬するので、τ(λ)<τ(λ)及びτ(λ)<τ(λ)となる。したがって、物質10内の電荷キャリアの通過時間もまた波長に依存する。
【0077】
本発明者は、電荷キャリアによって生成される電気信号が確実に時間依存的となるように、時間依存変調を適用することが有利であることを発見した。上記の電荷キャリアの波長依存性のために、光信号10の異なるスペクトル成分によって生じる電荷キャリアによって生成される電気信号は、異なる変調パラメータ(例えば、変調位相シフト、変調振幅、変調周波数)を示す。そのような時間依存変調の利点は、変調パラメータを監視して、光信号10のスペクトル内容に関する情報を提供できることである。具体的には、光信号の1つ以上の波長を、監視された変調パラメータに基づいて、及び任意選択で、電荷キャリア対生成光学物質の1つ以上の特性に基づいて計算することができる。光信号の波長(複数可)を計算できる物質の特性の代表例としては、物質によってもたらされる電荷キャリア(複数可)の拡散係数、電荷キャリアのドリフト速度、光学物質を構成する物質の構造、幾何学的形状(例えば長さ)及び/または材料、吸収スペクトル、及び吸収係数の絶対値などがあり得るが、これらに限定されるものではない。
【0078】
物質の拡散係数または他の特性のはっきりとした知識を持たずに、監視された変調パラメータに基づいて、光信号の1つ以上の波長を計算することができる実施形態もまた企図される。例えば、波長は、監視された変調パラメータの測定データを機械学習手続きに入力し、機械学習手続きから波長(複数可)に相関する出力を受け取ることによって得ることができる。本実施形態に適した機械学習手続きの代表例としては、クラスタリング、相関ルールアルゴリズム、特徴評価アルゴリズム、サブセット選択アルゴリズム、サポートベクターマシン、分類ルール、コスト考慮型分類器、投票アルゴリズム、スタッキングアルゴリズム、ベイジアンネットワーク、決定木、ニューラルネットワーク、インスタンスベースアルゴリズム、線形モデリングアルゴリズム、k近傍法(KNN)分析、アンサンブル学習アルゴリズム、確率モデル、グラフィカルモデル、ロジスティック回帰法(多項ロジスティック回帰法を含む)、勾配上昇法、特異値分解法、及び主成分分析があるが、これらに限定されない。
【0079】
したがって、発見された有効波長分散は、電荷キャリアの通過時間の波長依存性に起因して、生成された信号の変調パラメータの1つ以上も波長依存性であることを保証するように変調が適用されるプロセスである。
【0080】
そこで、本発明者は、光信号12からそのスペクトル内容に基づいて情報を抽出するために用いることができる方法及びシステムを考案した。抽出される情報は、スペクトルに依存する任意の種類の情報となり得る。例えば、光信号12は、未知のスペクトル内容となることがあり、本システム及び本方法は、変調パラメータの波長依存性に基づいて、そのスペクトル内容を示す出力を抽出し、提供することができる。あるいは、光信号12は、既知のスペクトル内容となることがあり、本システム及び本方法は、変調パラメータの波長依存性に基づいて、その既知のスペクトル内容に相関する出力を抽出し、提供することができる。
【0081】
したがって、本発明のいくつかの例示的な実施形態では、本方法及びシステムは、光信号12の1つ以上の光波長を示す出力を抽出し、提供する。これらの例示的な実施形態では、光信号12のスペクトル内容は未知であるが、変調パラメータは既知である。光信号12が単色である場合、本方法及びシステムは、信号12の中心光波長を示す出力を、任意選択で、好ましくは、中心波長の特性スペクトル幅をも含めて提供することができる。光信号12が多色である場合、本方法及びシステムは、信号12の光スペクトルを示す出力を、任意選択で、好ましくは、スペクトル軸に沿って、ピークの位置も含めて、かつ任意選択で、それらの関連する幅も含めて、提供することができる。
【0082】
本発明のいくつかの例示的な実施形態では、本方法及びシステムは、1つ以上の非光学的であるが波長依存性のある量を感知するのに役立つ。したがって、本発明のいくつかの実施形態によるシステムは、感知システムである。これらの例示的な実施形態では、光信号12のスペクトル内容は任意選択で既知であるが、変調パラメータは任意選択で未知である。あるいは、光信号12のスペクトル内容は未知であることがあるが、変調パラメータは既知であることが可能である。本実施形態の方法及びシステムによって感知することができるそのような波長依存量の代表例としては、限定されないが、温度、温度の変化、歪み、歪みの変化、圧力、圧力の変化、材料構造(例えば、格子構造、層の存在)、材料含有量(例えば、試料中の1つ以上の化合物の存在)、材料の1つ以上の光学特性、材料の1つ以上の電気特性、材料の1つ以上の時間特性、及びこれらに類するものが挙げられる。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態に適した代表的かつ非限定的な例として、時間的に周期的であり、変調周波数fによって特徴付けられる変調を検討する。この場合の変調パラメータとして、電気信号によって生じる位相シフトを検討する。光信号のj番目の成分によって生成される電気信号に生じる位相シフトはΩτ(λ)であり、ただし、λは光信号のj番目の成分の波長、Ω=2πf、及びi∈{e,h}である。この位相シフトを監視し、光のスペクトル成分に関する情報を提供することができる。例えば、異なる変調周波数のセットをスキャンすることにより、それぞれの波長セットの方程式セットを得ることができ、この方程式セットを解いて波長セットを得ることができる。監視された位相シフトを使用して波長を判定するための好ましい技法が、以下の実施例のセクションで提供される。
【0084】
また、出力される変調された信号の変調振幅に基づいて波長(複数可)が計算される実施形態、ならびに変調された信号の変調振幅及び変調位相シフトの両方に基づいて波長(複数可)が計算される実施形態も企図されている。
【0085】
また、適用される変調周波数のスペクトル内にない周波数を含む、光学物質の全変調周波数応答に基づいて波長(複数可)が計算される実施形態も企図されている。
【0086】
変調周波数fは、任意選択で、好ましくは、サブ光周波数である。
【0087】
本明細書において、「光周波数」は、約1THz~約30PHzの周波数を意味し、サブ光周波数は、約0.01kHz~約1THzの任意の周波数を意味する。
【0088】
本発明のいくつかの実施形態では、変調周波数は、無線周波数範囲内、例えば、約1kHz~約40GHzである。本発明のいくつかの実施形態では、変調周波数は、マイクロ波周波数範囲内、例えば、約3GHz~約300GHzである。
【0089】
本発明者によって発見され、光信号のスペクトル内容を測定するために本発明の好ましい実施形態に従って利用される有効波長分散は、2つの分散効果が異なる物理的現象に関連するため、従来の波長分散とは異なる。従来の波長分散は屈折率の波長依存性に関連しており、可動電荷キャリアの生成を必要としないが、発見された有効波長分散は、光吸収及び可動電荷キャリア生成に基づいている。具体的には、従来の波長分散とは異なり、発見された有効波長分散は、電荷キャリア対生成光学物質内で生成された電荷キャリアの通過時間の波長依存性に基づいている。
【0090】
電荷キャリアによって生成される電気信号が時間に依存することを保証する変調が、複数の方法で適用され得る。本発明のいくつかの実施形態では、光信号12は、物質10に入る前に時間依存変調によって変調される。本発明のいくつかの実施形態では、物質10に印加されるバイアス電圧は、時間依存変調によって変調される。本発明のいくつかの実施形態では、光信号12は、物質10に入る前に時間依存変調によって変調されるが、物質10に印加されるバイアス電圧は、時間依存変調によって変調されない。例えば、バイアス電圧は、ゼロまたはDC電圧であり得る。本発明のいくつかの実施形態では、物質10に印加されるバイアス電圧は、時間依存変調によって変調されるが、光信号12は、物質10に入る前に時間依存変調によって変調されない。例えば、光信号12は、連続波(CW)信号であり得る。本発明のいくつかの実施形態では、光信号12は、物質10に入る前に時間依存変調によって変調され、物質10に印加されるバイアス電圧もまた時間依存変調によって変調され、この変調は信号12に印加される時間依存変調と同じでもよく、または異なっていてもよい。光信号12が物質10に入る前に時間依存変調によって変調されるが、物質10にはバイアスがかけられない実施形態もまた企図される。
【0091】
本実施形態では、時間的に周期的である変調(例えば、正弦波変調、方形波変調、三角波変調、のこぎり波変調、ウェーブレット変調、またはそのような変調形式の2つ以上の組み合わせ)、及び時間的に周期的でない時間依存変調(例えば、非周期変調関数、ランダム変調、確率変調など)を含む、時間依存変調のための任意のスキームが企図される。
【0092】
適用される変調には、光信号12の光強度、光周波数、光位相、及び偏光のうちの1つ以上の変調が含まれ得る。適用される変調が光周波数の変調を含む場合、光スペクトルを構成する1つ以上の光周波数は、(i)周波数値(例えば、周波数チャープ)、または(ii)周波数成分の強度のいずれかが変調される。周波数成分の強度の変調は、周波数成分の1つ以上のみがそれらの強度を変調され、周波数成分の少なくとも1つはその強度を変調されないという点で、信号の全光強度の強度変調とは異なる。
【0093】
上記の時間依存変調シナリオに加えて、本実施形態のいくつかはまた、電荷キャリア対生成光学物質に印加されるバイアス電圧のDCレベルをスキャンすることを企図する。本発明者は、電荷キャリアの輸送経路、例えばキャリア速度及び空乏領域の幅は、バイアス電圧のDCレベル(及びAC変調)に依存するので、そのようなスキャンは、光のスペクトル内容に関する情報の抽出に用いることもできることを見出した。
【0094】
本明細書に記載された実施形態のいずれかでは、電荷キャリア対生成光学物質へのバイアスの時間依存変調は(使用される場合)、好ましくは、変調の少なくとも1サイクル、または少なくとも2サイクル、または少なくとも3サイクル、または少なくとも4サイクル、または少なくとも5サイクル、または少なくとも10サイクル、または少なくとも20サイクル、または少なくとも40サイクルの間、電荷キャリア対生成光学物質10のスペクトル依存特性を変化させることなく適用される。上記のスペクトル依存特性のいくつかの例としては、バンドギャップ、吸収スペクトル、吸収端、吸収値、応答度が挙げられる。
【0095】
本明細書で使用するとき、「吸収端」は、吸収が波長につれて急激に低下するスペクトル領域を指す。通常は、このような急激な低下は、物質が実質的な吸光度を有するスペクトル領域の下限及び/または上限で観察される。
【0096】
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、光信号の時間依存変調は(使用される場合)、好ましくは、変調の少なくとも1サイクル、または少なくとも2サイクル、または少なくとも3サイクル、または少なくとも4サイクル、または少なくとも5サイクル、または少なくとも10サイクル、または少なくとも20サイクル、または少なくとも40サイクルの間、電荷キャリア対生成光学物質10を特徴付けるバンドギャップを変化させることなく適用される。
【0097】
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、光信号の時間依存変調は(使用される場合)、任意選択で、好ましくは、変調の少なくとも1サイクル、または少なくとも2サイクル、または少なくとも3サイクル、または少なくとも4サイクル、または少なくとも5サイクル、または少なくとも10サイクル、または少なくとも20サイクル、または少なくとも40サイクルの間、電荷キャリア対生成光学物質10を特徴付ける吸収スペクトルを変化させることなく適用される。
【0098】
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、光信号の時間依存変調は(使用される場合)、任意選択で、好ましくは、変調の少なくとも1サイクル、または少なくとも2サイクル、または少なくとも3サイクル、または少なくとも4サイクル、または少なくとも5サイクル、または少なくとも10サイクル、または少なくとも20サイクル、または少なくとも40サイクルの間、電荷キャリア対生成光学物質10を特徴付ける吸収端を変化させることなく適用される。
【0099】
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、光信号の時間依存変調は(使用される場合)、任意選択で、好ましくは、変調の少なくとも1サイクル、または少なくとも2サイクル、または少なくとも3サイクル、または少なくとも4サイクル、または少なくとも5サイクル、または少なくとも10サイクル、または少なくとも20サイクル、または少なくとも40サイクルの間、電荷キャリア対生成光学物質10を特徴付ける吸収値を変化させることなく適用される。
【0100】
本明細書に記載の実施形態のいずれかでは、光信号の時間依存変調は(使用される場合)、任意選択で、好ましくは、変調の少なくとも1サイクル、または少なくとも2サイクル、または少なくとも3サイクル、または少なくとも4サイクル、または少なくとも5サイクル、または少なくとも10サイクル、または少なくとも20サイクル、または少なくとも40サイクルの間、電荷キャリア対生成光学物質10を特徴付ける応答度を変化させることなく適用される。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態に適した代表的かつ非限定的な例として、環境から受信される既知のスペクトル内容を有する変調された光信号を検討する。環境には、空間内の領域、または調査対象の試料もしくは構造物が含まれ得る。上記のように、変調パラメータは波長に依存する。この変調パラメータは、信号の既知の成分のそれぞれについて監視することができ、上記でさらに詳述するように、波長に依存し、環境を記述する1つ以上の量に関する情報を提供する。
【0102】
本実施形態は、物質10のバンドギャップを調整することを企図している。この調整は、バンドギャップのスペクトル位置の変化、及び/またはバンドギャップの別のスペクトル依存性の変化とすることが可能である。これらの実施形態では、バンドギャップの各変化のために、光信号の強度及び/または電荷キャリア対生成光学物質へのバイアスの時間依存変調が適用される。例えば、バンドギャップスペクトル領域を第1の領域から第2の領域へシフトさせる。この場合、バンドギャップを第2の領域に維持しながら、時間依存変調が適用される。時間依存変調を、複数回適用することもできる。例えば、バンドギャップを第1の領域から第2の領域へ変化させる上記の例では、変化前にバンドギャップを第1の領域に維持しながら時間依存変調を適用し、次に、変化後にバンドギャップを第2の領域に維持しながら時間依存変調を適用することが可能である。
【0103】
物質10のバンドギャップは、物質10に歪みを加えることによって、またはその温度を変えることによって、または印加されるバイアスの値を変えることによってなど、当技術分野で公知の任意の方法で調整することができるが、これらに限定されない。
【0104】
本実施形態は、物質10の少なくとも1つの特性を調整することを企図しており、この特性を、任意選択で、好ましくは、物質10の吸収スペクトル、吸収端、吸収値、及び応答度からなる群から選択することができる。この場合、時間依存変調は、第2の領域でそれぞれの特性を維持しながら適用される。
【0105】
本実施形態の技法は、単色または多色の光ビームのスペクトル内容を示す出力を提供するために使用することができる。
【0106】
本実施形態の技法は、単色光ビームと共に使用される場合、任意選択で、好ましくは、単色光ビームのスペクトルシフトであることを示す出力を提供する。例えば、光信号12が波長λの単色であると仮定し、(入力光または電圧バイアスの)変調が、正弦波であり、変調周波数f及び変調関数cos(Ωt)(ただし、Ω=2πf)によって特徴付けられると仮定する。電荷キャリアによって生成される電流のAC成分は、I(Ω,λ)cos(Ωt+θ(Ω,λ))と書くことができる。ここで、波長がδλだけ変化したとする。その場合、出力信号のAC成分は、[I(Ω,λ)+δI(Ω,δλ)]cos(Ωt+θ(Ω,λ)+δθ(Ω,δλ))である。ただし、δθ(Ω,δλ)は光の波長の変化δλによる位相シフトの変化、δI(Ω,δλ)は光の波長の変化δλによる変調振幅の変化である。波長の変化δλは、位相シフトθ(Ω,λ)+δθ(Ω,δλ)を監視すること、及び任意選択で好ましくは振幅[I(Ω,λ)+δI(Ω,δλ)]もまた監視することによって検出することが可能である。本発明者は、そのような監視により、1nm未満、より好ましくは1pm未満、さらに好ましくは1fm未満のスペクトル分解能を達成できることを見出した。
【0107】
本実施形態の技法は、多色光ビームと共に使用される場合、任意選択で、好ましくは、ビームのスペクトルであることを示す出力を提供する。例えば、光信号12が光スペクトルS(λ)を有すると仮定し、(入力光または電圧バイアスの)変調が、正弦波であり、変調周波数f及び変調関数cos(Ωt)(ただし、Ω=2πf)によって特徴付けられると仮定する。電荷キャリアによって生成される電流のAC成分は、I(Ω,S(λ))cos(Ωt+θ((Ω,S(λ)))と書くことができる。ただし、θ((Ω,S(λ))は発生した位相シフトである。変調周波数fがスキャンされ、各周波数について出力振幅I(Ω,S(λ))及び/または位相シフトθ((Ω,S(λ))が記録される。これにより一連の方程式が生成され、そこから物質10の特徴的波長分散に基づいてビームのスペクトル内容を判定することができる。例えば、光信号12がスペクトルバンド幅Δλを有すると仮定し、Δλ/mのスペクトル分解能でS(λ)を決定することが望ましいと仮定すると、m個の異なる変調周波数に対して変調を繰り返すことにより、m個以上の方程式が構築されて、Δλ内で分解すべきm個のスペクトル点のそれぞれについて振幅S(λ)、i=1,2,・・・,mが決定される。
【0108】
本実施形態の技法は、別の分光器のスペクトル分解能を向上させるために使用することもできる。例えば、本実施形態の技法は、ビームの他のスペクトル成分から、例えば、空間的に、時間的に、または他の技法によって分離された多色ビームのスペクトル成分に適用することができ、本実施形態の技法は、分離された成分のスペクトルを示す出力を提供することができる。代表的な例として、入力光ビームを(例えば、回折格子を使用して)n個のスペクトル成分に空間的に分離する分光器が検討され、これらのn成分のそれぞれがΔλの波長帯で特徴付けられる。本実施形態の技法をこれらの各成分に適用し、それぞれが約Δλ/mのスペクトル幅を有するm個のサブバンドのスペクトルを出力することにより、空間分離によって得られるスペクトル分解能よりもm倍優れたスペクトル分解能をもたらすことができる。
【0109】
上記で描写され、本発明の好ましい実施形態による、光波長または光波長のスペクトルを測定する方法及びシステムのさらなる詳細な説明を提供する前に、それによって提供される利点及び潜在的用途に注意が向けられる。
【0110】
本実施形態の技法の特別な利点は、安価なコンポーネントをベースとしながらも、ナノメートルからサブナノメートルの分解能に至るまで、高い分光分解能を提供できることである。
【0111】
分光器及び波長センサは、様々な用途に広く使われているが、従来の手段に依拠している。例えば、角度分散が、例えば回折格子または光ファイバを用いて光の成分を空間的に分離することによって利用され得る。別の技法では、ファブリペロー干渉計またはマイケルソン干渉計などの干渉法を利用して、スペクトル情報を抽出する。利用可能な高性能マルチグレーティング巨視的分光器は、R=10を超える可能性のあるスペクトル分解能R=λ/Δλを特色としている。ただし、Δλは特定の波長設定での3dBパワーバンド幅を示す。しかし、これらは、かさばり、高価であり、可動機械部品を有する場合がある。シリコンプロセス互換技術を用いて製造されたマイクロ分光器など、よりコンパクトなシステムは、上記の高性能マルチグレーティング巨視的分光器に比べ、3~4桁低いスペクトル分解能になる。
【0112】
本発明者によって行われた実験では、電荷キャリアの通過時間に対する波長の依存性に基づいている発見された有効波長分散を利用することにより、スペクトル分解能を損なうことなく、システムのサイズとコストとを大幅に削減できることが判明した。例えば、本発明者は、正味の光伝搬長を1mmより遥かに短い長さにすることができるゲルマニウムPNフォトダイオードが、従来のSMF28光ファイバの210kmにわたって蓄積される従来の屈折によって誘起される波長分散と同等の有効波長分散を提供できることを実験的に実証した。
【0113】
次に、本発明のいくつかの実施形態による、光信号のスペクトル内容に相関する出力を提供するためのシステム20の概略図である図2A及び図2Bを参照する。図2Aを参照すると、システム20は、任意選択で、好ましくは、光信号12に時間依存変調を適用するために構成された光変調器22を備える。この変調は、任意選択で、好ましくは、外部変調であり、変調されていない光信号12が、試料または外部ソース(図示せず)から受信され、コントローラ28から変調信号を受信する変調器22によって変調される。コントローラ28は、変調信号を生成するための専用回路を含むことができる。変調が直接変調である実施形態もまた好ましく、この場合、光変調器22は、コントローラ28から変調信号を受信し、変調された信号24を生成する光源としても機能する。変調器22によって適用される時間依存変調は、任意選択で、好ましくは、少なくとも1つのサブ光変調周波数fによって特徴付けられる。
【0114】
システム20はまた、1つ以上の光電デバイス34を備え、それぞれが、変調された光信号24を受信し、応答して電気感知信号36を生成するように構成される。図2A及び図2Bでは、システム20用に1つの光電デバイス34のみを図示しているが、本発明のいくつかの実施形態では、システム20は、直列、または並列、または直列及び並列の組み合わせの光学配置で配置することができる複数の光電デバイス34を備えることが理解されるべきである。並列光学配置では、光はM個の平行経路に分割され、M個のシステム20を同時に照明する。直列光学配置では、光は1つのシステム20の検出器を照明し、光の一部がこの最初のシステム20を出て、別のシステム20の1つを照明するなどとなる。
【0115】
光電デバイス(複数可)34のそれぞれは、典型的には、感光領域38を含み、これは、好ましくは、少なくとも部分的に、物質10などの電荷キャリア対生成光学物質から作られるが、これに限定されない。本発明のいくつかの実施形態では、デバイス34の2つ以上は、光に対する異なる応答によって特徴付けられる感光領域を有する。例えば、デバイス34の2つ以上は、異なるバンドギャップスペクトル位置、または変調周波数の関数としての位相シフトの異なる波長依存性、またはその種の他のものを有し得る。複数のデバイス34がある場合、それらが、同じバイアス電圧または電圧変調によって適用されてもよく、またはデバイス34の2つ以上が、異なるバイアス電圧または電圧変調を適用されてもよい。
【0116】
電荷キャリア対生成光学物質10として機能し得、感光領域38が含み得る材料の代表例としては、半導体、有機材料、ペロブスカイト、ポリマー、プラスチック、誘電材料、金属材料、無機材料、p型材料、n型材料、真性材料、非ドープ材料、ドープ材料、PN接合、PIN接合、ナノワイヤ、プラズモン材料などがあるが、これらに限定されない。例えば、光電デバイス34は、PNフォトダイオード、PINフォトダイオード、単一走行キャリアフォトダイオード、金属-半導体-金属検出器、ショットキーフォトダイオード、光導電体、光起電力センサ、フォトトランジスタ、フォトレジスタ、光電子増倍管、アバランシェフォトダイオード、光電検出器、光電子放出検出器、CCD検出器、CMOS検出器、ゴーレイセル、ボロメータ、熱線検出器、単一光子検出器の少なくとも1つを含むことができる。さらに、上記の検出器のそれぞれは、光吸収によって誘発される電流生成のための特定の物理的機構に基づいている。光電デバイス34は、これらの物理的機構の1つ以上を含むことができる。光電デバイス34は、任意選択で、例えば、当技術分野で周知のように、前置増幅、信号ルーティングなどのための内部回路基板40などの追加の構成要素を含むこともある。光電デバイスは、様々なサイズを有することができる。従来のフォトダイオードは、光電子吸収領域に100nm、1ミクロン、10ミクロン、100ミクロン、1mm、またはそれ以上の範囲内の光伝搬長を有し、それらの幅または直径も名目上は同じ範囲にある。電荷キャリア対を生成するワイヤなどの他のタイプの光電デバイスは、1nm、10nm、100nm、1ミクロン、10ミクロン以上の範囲内で横径を有し得、光伝搬長はナノメートルからメートルまでの範囲にわたる。他にも多くの種類の幾何学的形状、材料、及び物理的機構がまた企図される。
【0117】
図2Bに示される実施形態では、光電デバイス(複数可)34は、電気バイアスに応答し、光信号12を受信する。この実施形態では、コントローラ28は、光電デバイス(複数可)34の1つ以上に、時間依存変調に従って変調される電気バイアス信号を印加するための電気駆動回路として機能し、この変調は、任意選択で、好ましくは、少なくとも1つのサブ光変調周波数fによって特徴付けられる。任意選択で、コントローラ28は、印加された電気バイアス信号のDCレベルをスキャンする。
【0118】
本発明のいくつかの実施形態では、感光領域38が含み得る材料は、システム20によって使用される光信号の予想波長に従って選択される。好ましくは、この材料は、その波長依存吸収スペクトルαに従って選択される。以下の実施例のセクションで実証されるように、(1/α)dα/dλという量は、波長についての吸収スペクトルの対数の微分係数であり、光電子波長分散に対するデバイス34の感度に比例し、しかも波長の関数としてプロットしたときにピークを示し、ピークの位置は異なる材料に対して異なる。したがって、本発明のいくつかの実施形態によれば、感光領域38が含み得る材料は、量(1/α)dα/dλが光信号の予想波長範囲内でピークに達するように選択される。あるいは、吸収スペクトルαを有する材料で感光領域38が作られている所与のデバイス34に対して、デバイス34に向けられる光信号の波長を、量(1/α)dα/dλがピークに達する範囲で選択することも可能である。
【0119】
本発明のいくつかの実施形態では、感光領域38のサイズもまた、システム20によって使用される光信号の予想波長に従って選択される。本発明者らは、光電子波長分散に対するデバイス34の感度もまた、Pの対数についての位相シフトθの微分係数である量Pdθ/dPに比例することを見出した。ただし、Pは、αWとして定義される無次元パラメータであり、Wは、光入口領域、もしくは対向領域(基板領域とも呼ばれる)のいずれか、または両領域の総和領域(例えば、図8参照、WはWもしくはWのいずれかまたはW+Wであり得る)の活性電荷対生成領域の幅である。
【0120】
Pパラメータは、デバイス34の寸法と、照明光の侵入深さとの間の比率を表すパラメータと見なすことができ、これは光の波長に依存することになる。本発明のいくつかの実施形態では、光信号を受信するデバイス34の側面の幅が、Pパラメータの値を最適化するように選択される。他の実施形態では、基板側の幅が、Pパラメータを最適化するように選択される。さらに追加的な実施形態では、2つの領域のPパラメータの合計が最適化される。本発明者らによって実施された実験においては、約3であるPの値に対して適切な感度が達成されたことが見出された。したがって、光信号を受信するデバイス34の側面の幅は、任意選択で、好ましくは、デバイスが受信するように設計されている光の光侵入深さよりも約3倍(例えば、約2.5倍~約3.5倍)大きい。
【0121】
光電デバイス(複数可)34は、典型的には、第1の側面35及び第2の側面37を有する。光がデバイス34に進入する側面(図2A及び図2Bの側面35)は、入口側面と呼ばれる。入口側面と向かい合う側面は基板側面と呼ばれる。したがって、例えば、図2Aでは、側面35は入口側面であり、側面37は基板側面である。デバイス34の電荷対生成領域の幅は異なっていてもよい。入口側面での電荷対生成領域の幅が、基板側面での電荷対生成領域の幅よりも遥かに大きい(例えば、少なくとも4倍、または8倍、または16倍、または32倍、または64倍、または128倍大きい)ように、光がデバイス34に入る場合、デバイス34は「入口領域優勢」と呼ばれる。逆に、基板側面での電荷対生成領域の幅が、入口側面での電荷対生成領域の幅よりも遥かに大きい(例えば、少なくとも4倍、または8倍、または16倍、または32倍、または64倍、または128倍大きい)ように、光がデバイス34に入る場合、デバイス34は「基板領域優勢」と呼ばれる。入口側面での電荷対生成領域の幅が、基板側面での電荷対生成領域の幅とほぼ同じになるように、光がデバイス34に入る場合、デバイス34は「二重領域デバイス」と呼ばれる。電荷対生成領域の優勢性の観点からデバイスを特徴付けるためのパラメータq=W/(W+W)を定義すると便利であり、qが1に近づくと(例えば、q≧0.8、またはq≧0.9、またはq≧0.99、またはq≧0.999)、デバイスは「入口領域優勢」になり、qが0に近づくと(例えば、q≦0.2、またはq≦0.1、またはq≦0.01、またはq≦0.1)、デバイスは「基板領域優勢」になり、qが0及び1から十分に遠い場合(例えば、0.001<q<0.999、または0.01<q<0.99、または0.1<q<0.9、または0.2<q<0.8)デバイス34は「二重領域デバイス」と呼ばれる。デバイス34が入口領域優勢である場合、本発明のいくつかの実施形態では、変調周波数fは、十分に小さい周波数の周波数領域で、光電デバイスの応答振幅が、その応答振幅の1/√2に等しくなる値fcを超えることが可能である。ただし、十分に小さい周波数の周波数領域とは、応答振幅が、その領域にわたって、変調周波数によって、10%を超えて変化しない、または5%を超えて変化しない、または1%を超えて変化しない、領域である。本発明者らは、入口領域優勢デバイスでは、光電子波長分散に対するデバイス34の感度は、周波数がfcを超える領域で周波数とともに増加することを見出した。上記の実施形態のいずれかにおいて、デバイス34のそれぞれによって生成された電気感知信号36は、好ましくは、変調に基づいて光信号の少なくとも1つの波長に相関する尺度を判定するために信号(複数可)36を処理するように構成されている信号処理システム42に伝送される。信号処理システム42によって適用される信号処理は、任意の既知のタイプの信号処理技法を使用して、時間領域、周波数領域、または時間領域及び周波数領域の両方においてであることが可能である。
【0122】
信号処理システム42は、任意選択で、好ましくは、判定された波長を示す出力を生成する。例えば、処理システム42は、ディスプレイデバイス46上に信号12のスペクトルのグラフ表示44を生成することができる。代替として、または追加として、処理システム42は、判定された波長(複数可)の1つ以上における変化を表す出力を生成することができる。代替または追加として、処理システム42は、上記でさらに詳述するように、信号12の1つの波長または複数の波長以外の1つ以上の波長依存量を表す出力を生成することができる。
【0123】
本発明のいくつかの実施形態では、信号処理42は、入力変調スペクトルを出力変調スペクトルと比較する際に、変調周波数スペクトルの変量を決定する。例えば、処理42は、変調のスペクトルを決定することができる。これらの実施形態の利点は、光と電荷キャリア対生成光学物質との光電子的相互作用の結果として、新しい変調周波数が生じ得ること、または例えば、適用された変調周波数の一部が増強され、他が抑制されることである。変調周波数の変量を監視することにより、システム20によって提供される情報の量を増やすことが可能である。そのような情報は、一度分析されると、システム20の精度を高めることができる。代表例として、これは限定と見なされるべきではなく、変調の周波数スペクトルを上記の機械学習手続きに入力することで、特徴空間を増やし、より正確な出力のための尤度を高めることができる。
【0124】
本発明のいくつかの実施形態では(信号12及び/またはバイアス電圧の)変調を制御するコントローラ28と、電気感知信号36を処理する信号処理システム42とが、変調器22への変調信号の供給と感知信号の処理との両方を行うように構成された統一システムとして提供される。これらの実施形態は、処理を変調に同期させることができるようにするので有利である。あるいは、コントローラ28と処理システム42とは、同期のために互いに通信してもよい。
【0125】
提示を明確にするために、図2Aは、コントローラ28が変調器22のみを(光信号のみが変調されるように)制御する実施形態におけるシステム20を示し、図2Bは、コントローラ28がデバイス34の電圧バイアスのみを(バイアスのみが変調されるように)制御する実施形態におけるシステム20を示す。しかしながら、コントローラ28が、変調器22とデバイス34に印加される電圧バイアスとの両方を制御するように構成される実施形態が理解されよう。本明細書に記載された詳細を提供される当業者は、そのような実施形態のために図2A及び/または図2Bをどのように調整すればよいかが分かるはずである。
【0126】
コントローラ28が変調器22とデバイス34のバイアスとの両方を制御することを可能にされるとき、コントローラ28は、時間依存変調によって、光信号12とデバイス34に印加される電圧バイアスとの両方を変調することができる。これらの実施形態では、信号処理システム42は、両方の変調に基づいて、波長(複数可)に相関する尺度を判定する。例えば、変調周波数をスキャンして、それぞれの波長のセットに対する方程式のセットを得ることができ、このセットの方程式の1つ以上は、(i)光信号の変調周波数、(ii)バイアスの変調周波数、または(iii)光信号の変調周波数及びバイアスの変調周波数に基づいて得ることができる。そして、得られた方程式のセットを解いて、波長のセットを取得することができる。
【0127】
コントローラ28は、前述のように、デバイス34へのバイアスのDCレベルをスキャンするために使用することもできる。コントローラ28が変調器22とデバイス34のバイアスとの両方を制御することを可能にされるとき、コントローラ28は、時間依存変調によって、光信号12を変調し、バイアスのDCレベルをスキャンすることができる。バイアスのDCレベルは、所望の通り、バイアスの変調の有無にかかわらずスキャンすることができる。
【0128】
図2C及び図2Dは、光がデバイス34に入る前に分割される実施形態におけるシステム20の概略図である。これらの実施形態において、システム20は、信号24(図2C)または12(図2D)を2つの光信号13に分割し、2つの光信号13をデバイス34の向かい合った側面35及び37に向けるためのビーム分割システム60を備える。
【0129】
図2E及び図2Fは、2つのデバイス34a及び34bがあり、デバイスの一方が入口領域優勢であり、他方のデバイスが基板領域優勢である実施形態におけるシステム20の概略図である。ビーム分割システム60は、信号24(図2E)または12(図2F)を2つの光信号13に分割し、2つの信号13の一方をデバイス34aの第1の側面35に向け、2つの信号13の他方をデバイス34bの第1の側面35に向ける。信号処理システム42は、両方のデバイス34a及び34bから電気信号36を受信し、それらを合成し、上記でさらに詳述するように出力を生成する。
【0130】
図2G及び2Hは、システム20が、光信号24(図2G)または12(図2F)を反射して、デバイス24内に複光路を作るために、反射器62を採用する実施形態におけるシステム20の概略図である。
【0131】
図2C図2Hに示す構成は、光電子波長分散を打ち消すことが望まれる場合に特に有用である。以下の実施例のセクションで実証されるように、本発明者らは、デバイス34の光電子波長分散が、入口領域優勢デバイスと基板領域優勢デバイスとで反対の符号を有し得ることを発見した。この発見により、発明者らは、光信号が2つの向かい合った側面から同じデバイス34に入る場合、または一方が入口領域優勢で他方が基板領域優勢である2つのデバイスに入る場合、信号の一方によって示される光電子波長分散が、他方の信号によって示される光電子波長分散を打ち消すことから、図2C図2Hに示す構成を考案するに至った。
【0132】
また、二重領域デバイスが作製され、信号12の特定の波長について光電子波長分散が抑制されるように(例えば、-1~1、または-0.5~0.5、または-0.1~0.1deg/nm、あるいはそれ以下)、または所定の感度値を有するように作製パラメータ(例えば、幅W及びW、係数αなど)が選択される実施形態も企図されている。
【0133】
光電子波長分散の打ち消しまたは抑制は、例えば、デバイス34が、温度、圧力、歪み、振動、及びこれらに類するものなどであるが、これらに限定されない、環境量のセンサとして使用される応用に利用することができる。これは、光電子波長分散の打ち消しにより、デバイス34が信号の波長の変化に対して、より敏感になるためである。したがって、光電子波長分散が打ち消される構成は、光の波長に影響を与える環境量の変化がデバイスによって生成される電気信号の変化をもたらす感知方法に利用することができる。さらに、ゼロOEDは、検出器の出力パルスがOEDのために広げられないような方法でパルス光を検出することが望まれる場合に有用である。
【0134】
光信号は、同一または異なる光電デバイスの第1の側面及び第2の側面の両方によって受信され、デバイス(複数可)によって生成された信号(複数可)が、信号(複数可)の変化を識別するために監視される。信号の変化は信号の波長の変化と相関するので、監視により、デバイス近傍の環境の変化を識別することが可能になる。
【0135】
本発明者らはまた、2つの信号がデバイス34の同じ側面から入る実施形態を企図する。これらの実施形態では、2つの光信号間の所定の相対変調位相シフト、例えば、約0.4π~約0.6π、または約0.9π~約1.1πの相対変調位相シフトを選択することが可能である。例えば、相対変調位相シフトが約0.9π~約1.1πの場合、一方の信号のAC成分が他方の信号のAC成分を打ち消す。信号は、任意選択で、好ましくは、異なる波長であるが、同じ変調周波数が両方の信号に使用される。変調周波数は、2つの信号の特定の波長に対して、デバイス34によって生成されるAC電気信号がゼロまたはほぼゼロ(例えば、2つの信号が同じ波長を有していたならば生成されたであろう電気信号の振幅の10%未満、または5%未満、または1%未満)になるように選択することが可能である。本発明者らが実施した実験では、電気信号の打ち消しは、波長に対するデバイス34のそれぞれの吸収係数が約10倍異なるように、これらの波長を選択することによって達成できることが見出された。例えば、Geフォトダイオードの入力波長の特定のセットの1つは、波長ペア1520nm及び1580nmであるが、他の多くの波長の組み合わせを使用することができる。
【0136】
本発明者らは、このような打ち消しにより、デバイス34によって生成された電気信号が、2つの信号間の位相シフトに敏感になり、位相シフトの小さな変化が電気信号の大きな変化をもたらすことを見出した。したがって、これらの実施形態では、デバイス34によって生成された電気感知信号が、光信号間の位相シフトを決定するために分析され、プロセッサ42が、任意選択で、好ましくは、位相シフトを示す出力を生成する。これらの実施形態は、信号の位相シフト及び/または信号の位相シフトの測定が望まれる任意のシステムにおいて有用である。本実施形態に好適なシステムの代表例としては、対象物の内部構造を測定するシステム、対象物までの距離を測定するシステム、対象物の運動特性を測定するシステム、干渉計システム、流体(気体または液体)の流れを測定するシステム、高周波トランシーバシステム、光トランシーバシステム、通信システム、信号生成システムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0137】
代表例として、位相シフトが監視される実施形態を、対象物の1つ以上の特性を測定する感知システムで使用することができる。これらの実施形態では、変調された信号が対象物と相互作用する。相互作用の後に、信号の変調の変化が分析されて、対象物の1つ以上の特性が抽出される。ここで、特性は、対象物の構造、対象物の位置、対象物の動き、または対象物の熱状態に関連し得る。対象物への変調された信号の送信は、送信される変調された信号と参照信号との間に、所定の位相シフトを発生させることを含み得る。分析は、対象物から受信した信号と参照信号との間の位相シフトを検出することを含み得る。
【0138】
次に、本発明の様々な例示的な実施形態による、光信号のスペクトル内容を測定するのに適した方法のフローチャート図である図3を参照する。特に定義しない限り、以下に説明する操作は、多くの組み合わせまたは実行順序で、同時または連続的に実行できることを理解されたい。つまり、フローチャート図の順番は、限定するものと見なされるべきではない。例えば、以下の説明またはフローチャート図に特定の順序で現れる2つ以上の操作を、異なる順序(例えば、逆の順序)で、または実質的に同時に実行することができる。さらに、以下に説明するいくつかの操作は、任意選択の操作であり、実行されない場合がある。
【0139】
本方法は、50から開始し、任意選択で、好ましくは、上記でさらに詳述するように、51に進み、そこで光信号に時間依存変調が適用される。代替として、または所望により、追加として、本方法は、上記でさらに詳述するように、52に進み、そこで光電デバイス、例えば、デバイス34が、時間依存変調に従って変調された電気バイアス信号を印加されてもよい。
【0140】
本発明のいくつかの実施形態では、本方法は53に進み、そこで電気バイアス信号のDCレベルがスキャンされる。操作53は、操作51及び52のいずれかと組み合わせて実行することができる。本発明のいくつかの任意選択の実施形態では、本方法は54に進み、そこで光電デバイスの感光領域(例えば、感光領域38)を特徴付けるバンドギャップが、光信号の予想スペクトルに一致するように調整される。操作54は、好ましくは、(採用される場合)操作52と共に、任意選択で(採用される場合)操作51とも共に、断続的に実行され、上記でさらに詳述するように、バンドギャップ、吸収スペクトル、吸収端、吸収値、及び/または応答度を概ね一定の値に維持しながら、変調の少なくとも1サイクル、または少なくとも2サイクル、または少なくとも3サイクル、または少なくとも4サイクル、または少なくとも5サイクル、または少なくとも10サイクル、または少なくとも20サイクル、または少なくとも40サイクルが完了されるようにする。
【0141】
本方法は55に進み、そこで光信号が光電デバイスによって受信され、それによって光信号に応答して電気感知信号が生成される。操作51が実行される実施形態では、光電デバイスに、変調された光信号を受信させる。操作51が実行されない実施形態では、光電デバイスに、変調されていない光信号を受信させる。
【0142】
本方法は、変調周波数をスキャンするように、55から51及び/または52にループバックすることができ、それによって、各信号が異なる変調周波数に対応する電気感知信号のセットを提供することができる。本方法は56に進み、そこで、上記でさらに詳述するように、電気感知信号が処理されて、変調に基づいて光信号の1つ以上の波長(複数可)に相関する尺度が決定される。本方法は57に進み、そこで波長(複数可)に相関した出力が生成され、58で終了する。
【0143】
本実施形態の技法は、試料または構造物の歪みまたは歪みの変化を求めるために用いることができる。このような用途の代表例には、絞られ、曲げられ、または伸ばされたときに異方性になる透明な等方性材料の歪みの測定が含まれる。歪みまたは歪みの変化を決定するために、光ビームを試料と相互作用させて、試料の歪みまたは歪みの変化を示す光信号を提供し、本実施形態の技法により、歪みまたは歪みの変化の値を含む出力が生成される。歪みは一般的には加えられた応力の結果であるので、これらの実施形態は、試料に加えられた応力または圧力、あるいは試料に加えられた応力または圧力の変化の測定に使用することもできる。
【0144】
本実施形態の技法は、温度などであるがこれに限定されない環境量の測定に用いることができる。そのような用途の代表例には、媒体のラマンスペクトルまたは黒体放射スペクトルを分析することにより、媒体の温度を分光学的に測定することが含まれる。そのような用途の別の例には、組織などであるがこれに限定されない媒体によって散乱された赤外線放射の測定が含まれる。そのような用途の追加例には、透過分光法、鏡面反射分光法、または拡散反射分光法が用いられて、半導体基板などであるがこれに限定されない試料から光を集められ、集められた光のスペクトルを決定し、そのスペクトルから温度を抽出するバンド端温度測定が含まれる。温度が何度であるかまたは温度の変化を決定するために、温度が何度であるかまたは温度の変化を示す光信号を提供するために、光ビームに試料と相互作用させるようにし、本実施形態の技法により、温度または温度の変化の値を含む出力が生成される。
【0145】
本実施形態の技法は、試料中または試料の近くの少なくとも1種類の化合物の存在を判定するために使用することができる。そのような用途の代表例には、分光法による化学分析が含まれる。こうした用途では、試料内の化合物の存在は、試料を透過した光または試料から反射した光のスペクトル線(各化合物は、特徴的なスペクトル線を有する)に基づいて判定される。試料中または試料近傍の化合物の存在を判定するために、光ビームに試料と相互作用させて化合物の存在を示す光信号を提供し、本実施形態の技法により、光信号中の1つ以上のスペクトル線を判定し、判定したスペクトル線に基づいて試料中の化合物(複数可)の存在、不在、またはレベルを表す出力が生成される。
【0146】
本実施形態の技法は、試料の分子組成を決定するために用いることができる。そのような用途の代表例には、光、一般的には赤外光が用いられて試料中に分子振動を励起し、結果として、その共振周波数での吸収を誘導させる振動分光法がある。励起後の光のスペクトルを決定することで、基本振動と、関連する回転振動構造とを調べることが可能になる。
【0147】
試料の加速運動を決定するために、光ビームに試料と相互作用させて、加速運動であることを示す光信号を提供する。本実施形態の技法は、光信号のスペクトルを決定し、決定したスペクトルに基づいて加速運動の有無またはレベルを表す出力を生成する。
【0148】
本実施形態の技法が分光計測(温度の分光計測、分光化学分析、振動分光法など)に用いられる場合、2つ以上の光電デバイス34を含むシステムを用いることが、そのような構成は測定精度を高める可能性があるので、特に有利である。これらの実施形態では、デバイス34のそれぞれは、本システムがより多くのデータを使用して、光のスペクトル内容をより正確に判定できるように、光に対して異なる応答を有することができる。
【0149】
2つ以上の光電デバイス34を含むシステムの使用は、本実施形態の技法が環境量(例えば、温度)または構造量(例えば、構造の歪み)を感知するために使用される場合にも有利である。そのような構成では、光電デバイス34は、いくつかの場所で環境内または構造物上に分布させることができ、環境量または構造量を複数の場所で同時に感知できるようになる。
【0150】
本実施形態の技法は、光通信において、特に、光ファイバを介して伝送される変調された光信号の波長分散を少なくとも部分的に補償するために使用することができる。
【0151】
分散は、光ファイバ内でパルスが広がる主な理由であるため、光通信システムにおいては既知の制約である。特に、光ファイバシステムでは、高ビットレート(例えば、10Gb/sを超える)で分散が問題となる。例えば、SMF-28ファイバは、1km当たりDL=17P/nmを有している。したがって、50kmのSMF-28ファイバは、約850P/nmのDLを有する。この影響を打ち消すために、-850P/nmのDLを有する分散補償デバイスを導入することにより、この分散を補償することが望ましい。
【0152】
従来の分散補償技法としては、チャープファイバブラッググレーティング、及び分散補償ファイバがある。ファイバブラッググレーティングシステムでは、分散された光はファイバブラッググレーティングに向けられる。短波長の方が群速度が速いので他の波長よりも先行し、長波長の方が後行する。ブラッググレーティングのピッチとピッチのチャープとは、短波長側が長波長側に対して、分散を補償するちょうど適切な量だけ遅れるように選択されている。分散補償ファイバシステムは、特定の長さ(通常、数十キロメートル以下の長さ)のファイバにわたる分散の効果を打ち消すために、逆分散プロファイルを持つファイバスプールを含む。
【0153】
本発明者は、チャープファイバブラッググレーティング及び/または分散補償ファイバなどのかさばる高価な部品を導入する必要なく、発見した有効波長分散を分散補償に使用できることを見出した。
【0154】
したがって、本発明の様々な例示的な実施形態では、データストリームを運ぶように変調された光信号が、光ファイバを出て、デバイス34などであるがこれに限定されない光電デバイスに向けられる。デバイス34は、変調された光信号を受信し、それに応答して電気感知信号を生成する。光電デバイスの有効波長分散は、好ましくは、生成された電気感知信号のパルス幅が、光ファイバを出る光信号のパルス幅よりも、波長分散を少なくとも部分的に補償する量だけ狭くなるように選択される。その後、光通信の技術分野で知られているように、電気信号を処理して、光信号の変調、したがってデータストリームの変調を示す出力を生成することができる。
【0155】
本実施形態の技法は、製造された構造物及びデバイス、特に、必ずしもそうである必要はないが、光電デバイスの特性を調べるために用いることができる。これらの実施形態では、プローブ信号を調査対象の構造物またはデバイスに送信することができ、応答信号を調査対象の構造物またはデバイスから受信することができる。この応答信号は、信号12を制定することができ、上記でさらに詳述するように解析して、調査対象の構造物またはデバイスの1つ以上の特性を示す出力を提供することができる。例えば、プローブ信号を光電デバイスに送信することができ、応答信号を解析して、1つ以上の特性(例えば、電気的特性、光学的特性、及び/または時間的特性)を決定することが可能である。本発明のいくつかの実施形態に従って決定され出力され得る特性の代表例としては、限定されないが、応答度、量子効率、抵抗、電気容量、電子及び正孔の移動度、ドーピングレベル、構造、寸法、空乏領域の幅、内部電圧レベル、正孔及び電子拡散係数、ドリフト速度、吸収スペクトル、吸収値、他の電気特性、他の光学特性、及び同様のものが含まれる。
【0156】
本明細書で使用するとき、「約」という用語は、±10%を意味する。本明細書では、「例示的」という単語は、「例、実例、または説明として役立つ」という意味で使用されている。「例示的」として説明される任意の実施形態は、必ずしも他の実施形態よりも好ましいまたは有利であると解釈されるべきではなく、及び/または他の実施形態からの特徴の組み込みを排除するものではない。
【0157】
本明細書では、「任意選択で」という言葉は、「ある実施形態では提供され、他の実施形態では提供されない」ことを意味するのに使用される。本発明の任意の特定の実施形態は、そのような特徴が矛盾しない限り、複数の「任意選択」の特徴を含むことができる。
【0158】
「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有している(having)」という用語及びそれらの同根語は、「~を含むが、~に限定されない」ことを意味する。
【0159】
「からなる(consisting of)」という用語は、「~を含み、~に限定される」ことを意味する。
【0160】
「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という用語は、組成物、方法または構造物が、追加の成分、ステップ及び/または部品を含むことができることを意味するが、追加の成分、ステップ及び/または部品が、特許請求された組成物、方法または構造物の基本的かつ新規な特性を実質的に変えない場合に限る。
【0161】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、複数形の指示対象を含む。例えば、「化合物」または「少なくとも1つの化合物」という用語は、その混合物を含む複数の化合物を含むことができる。
【0162】
本出願を通して、本発明の様々な実施形態は、範囲形式で提示され得る。範囲形式での説明は、単に便宜上及び簡潔にするためのものであり、本発明の範囲に対する融通の利かない制限として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の記述は、その範囲内の個々の数値だけでなく、可能性のある全てのサブ範囲を具体的に開示したものと見なされるべきである。例えば、1~6といった範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などといったサブ範囲と、その範囲内の個々の数値、例えば、1、2、3、4、5、及び6とが具体的に開示されていると見なされるべきである。このことは、範囲の広さに関係なく適用される。
【0163】
本明細書で数値範囲が示される場合は常に、その範囲は、示された範囲内にある任意の引用された数字(小数または整数)を含むことを意味する。本明細書では、第1の指示番号と第2の指示番号との「間を変動する」、第1の指示番号「から」第2の指示番号「までの間を変動する」という表現を互換性があるようにして用い、これらの表現は、第1の指示番号及び第2の指示番号と、その間の全ての小数及び整数の数字を含むことを意図している。
【0164】
明確にするために、別々の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されることも可能であることが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明されている本発明の様々な特徴は、別々に、または任意の好適な部分的組み合わせで、または本発明の他の任意の説明された実施形態において好適であるとして、提供されることも可能である。様々な実施形態の文脈で説明される特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしでは機能しない場合を除き、それらの実施形態の本質的な特徴と見なされるべきではない。
【0165】
上記で描写され、以下の特許請求の範囲に記載された本発明の様々な実施形態及び態様は、以下の実施例において実験的な裏付けを見出すことができる。
【0166】
[実施例]
次に、上記の説明と共に、本発明のいくつかの実施形態を非限定的に示す、以下の実施例を参照する。
【0167】
実施例1
分光器のスペクトル分解能の向上
図4は、本発明のいくつかの実施形態による、空間分離と、有効波長分散との両方を使用する分光器の概略図である。
【0168】
光源からの多色光ビームを、例えば1つ以上のミラーによってグレーティングに向け、光のスペクトル成分を空間的に分離する。例えば、グレーティングは、n個の空間的に分離された成分(図4では5個の成分が示されている)を提供することができ、それぞれがΔλの波長帯によって特徴付けられる。次に、成分のそれぞれをシステム20などのシステムに向け、上記のように処理を受けさせる。システムのそれぞれは、変調周波数をm個の所定の変調周波数を介してスキャンし、その結果、それぞれの空間的に分解された成分についてm個のサブバンドのスペクトルを出力することができる。例えば、各サブバンドは約Δλ/mのスペクトル幅を有し、その結果、グレーティングによって提供されるスペクトル分解能よりもm倍優れたスペクトル分解能をもたらすことができる。代表例として、グレーティングは、Ocean Optics社が販売しているHDX分光器のグレーティングであることを想定している。このような分光器は、0.5~1nmの典型的なスペクトル分解能を有する。さらに、本実施形態のシステムのそれぞれが、変調周波数を10個の所定の変調周波数を介してスキャンすることを想定している。この場合、システム全体の解像度は約0.05nm~約0.1nmとなる。
【0169】
実施例2
実験
光ビームのスペクトルを決定するシステムの能力を調べるための実験を行った。この実験は、後述の実施例3、特にその中の式15cに記載された理論的考察を調べることを目的としたものである。
【0170】
実験装置は図2Aと同様であった。Cバンド(1535~1560nm)の波長可変レーザからの光を0.4MHzで正弦波変調し、2つの平行チャネルに分割した(図2Aには1つのチャネルのみを図示する)。一方のチャネルをGePN型フォトダイオード(GPD Optoelectronics社製モデルGM3)に向け、もう一方のチャネルをInGaAsフォトダイオード(Photop社製モデルKPPD-M-2-250S-N)に向けた。検出器の出力を監視し、そのRF位相シフトを、レーザ波長をスキャンしながら記録した。InGaAs検出器及びGe検出器の結果を、以下の実施例3で定式化した理論予測とともに、図5にプロットした(それぞれ上線及び下線)。図示するように、結果と理論との間に非常に良い一致が得られた。
【0171】
Ge検出器では、1548nm付近の波長領域で、ECD効果により、
【数1】
の傾きが生じた。比較のため、従来の標準的なSMF28光ファイバを検討している。長さLのファイバにおける波長分散は、パルス広がりΔτの原因となり、Dを分散係数、Δλを光のスペクトルバンド幅として、Δτ=DLΔλで近似的に表すことができる。DLは、RF位相シフト法によって測定することができ、それによって、変調周波数fの光がファイバ中を伝搬し、RF位相シフトの波長への依存dΦ/dλを記録する。dΦ/dλ=2πfDLであるから、波長分散DLは(dΦ/dλ)/2πfとなる。1kmのSMF-28の場合、DLの値は約17P/nmである。1548nm付近の波長領域でGe検出器に対して実験的に得られた9×10-3rad/nmの値は、-3570ps/nmの実効DLに対応する。これは、長さが210kmのSMF28ファイバと同程度の大きさである。比較の基準として、通信に使用される高分散性の分散補償ファイバ(DCF)は、一般的に40~80kmのファイバに匹敵するDL値を有する。InGaAs検出器に目を向けると、この同じ領域では、InGaAsのECDは非常に小さく、測定された傾きは2.4×10-4rad/nmであり、有効DL値-95P/nmに相当する。これは、図1を振り返ることで理解できる。後述の実施例3で展開するように、フォトダイオードのECDは、波長dα/dλに対する吸収依存性と侵入深さとに起因する。Cバンドでは、この傾きはGeに比べてInGaAsの方がかなり小さくなっている。しかし、それでもなお、かなり大きく、広帯域である。追加の実験では、同じ位相シフト技法を用いて、DL=-680ps/nmのメーカー規定値を有する市販のDCFモジュール(EWBDK:680型)のdΦ/dλを実際に測定した。図5の中央の線は、このDCFの理論と実験とを示したもので、よく一致している。
【0172】
本実施例では、発見されたECDが実在し、分散型光ファイバと比較して相当なものであることを実証している。本実施例もまた、理論との良好な一致を実証している。
【0173】
実験例3
理論的考察
本実施例は、図6に概略的に示したPN型フォトダイオードに関するが、任意の電荷キャリア対生成光学物質を代表するものと見なすことができる。本実施例では、簡単にするために、次の構造を検討し、すなわち、空乏化されていない低濃度にドープされたn型幅をWで表し、空乏化されていない低濃度にドープされたp型幅をWで表し、空乏領域の幅をWで表し、全長がL=W+Wであり、印加されるバイアス電圧をVで表す。構造物の左側はカソード(例えば、強くドープされたn領域)であり、右側はVアノード(例えば、強くドープされたp領域)である。例としてのみ、図は、W<<W、及びW、W>>Wを示すが、これは他の構成を制限するものではない。
【0174】
セクション6で説明した予備実験で使用したGePN型フォトダイオード(GPD Optoelectronics社製モデルGM3)で、光はn側に入射する。入力光パワーPinが吸収され、電子及び正孔が発生し、これらはドリフトと拡散とにより、それぞれn側及びp側に移動する。これは出力電流Iを形成し、
I=RPin (1)
となる。Rは、A/Wを単位にした検出器の応答度であり、λをミクロン単位で、
【数2】
と表すことができる。ηは量子効率であり、
【数3】
として表すことができる。ただし、Pabsは、長さL(侵入深さがL以上であると仮定する)にわたって吸収される光パワーであり、αは半導体材料の吸収係数である。α、したがってηは、光波長に依存する。式1~3から、吸収された光の総パワーによって形成される総電流を表す、
【数4】
を得ることができる。与えられた総入力パワーPinに対して、吸収によりパワーは、
P(x)=Pin-α(λ)x (5)
として、xにわたって指数関数的に減少する。
【0175】
したがって、位置x’の微分スライスΔxにわたって、吸収パワーは、
【数5】
となり、したがって、このスライスからの電流への寄与は、
【数6】
となる。本実施例では、正弦波AM変調された入力パワー、例えば、Pin=P(1+mcos(Ωt))(ただし、mは変調指数)を考える。これを式(6)に代入すると、
【数7】
が得られる。式(7)は、x’でのRF変調された電流の寄与を記述する。
【0176】
フォトダイオード出力で測定される全電流を表現するために、0<x’<Lの範囲で電流に対する全ての増分の寄与を合計している。まず、全電子電流の寄与について説明する。総正孔電流の寄与を以下に説明する。
【0177】
外部バイアス電圧がゼロであると仮定した場合の、全電流に対する電子(低濃度にドープされたp領域の少数電荷キャリア)の寄与
x’での電子電流の増分は式(7)で記述されるように、電子がx=x’からp側の空乏領域の端まで左に伝搬する際に、RF位相シフトθ(x’)が発生する。そして、電子は、ドリフト電流機構により、空乏領域をよぎる。この位相シフトは、
θ(x’)=Ωτ (8)
として表すことができる。ただし、τは以下に説明するように、電子の有効伝搬時間である。例としてのみ、外部バイアスがゼロであると仮定すると、全電子電流、すなわち、L-W<x’<Lの領域で拡散時間τe,iffを有する長さ≒Wの非空乏化領域で形成される全拡散電流、に1つの主な寄与(Ieとする)があるとさらに仮定することができる。
【0178】
次に、全電子電流寄与Iの式を作成する。x=x’を原点とする正弦波電流は、x=x’からx=Wの量、
【数8】
に戻るように伝搬するときに位相シフトを発生するが、これは、所与の伝搬距離dにわたって拡散時間が、
【数9】
であるためである。Dは電子拡散係数である。したがって、式(7)と式(9)とから、Iを、
【数10】
のように表すことができる。この電流のAC成分は、
【数11】
であり、積分すると、
e,ac=Acos(Ωt-ψ), (12)
で表される。
【0179】
振幅は、
【数12】
であり、位相は、
【数13】
である。したがって、全電子電流のAC成分は、フォトダイオードの物理パラメータとRF変調周波数とに依存するRF位相シフトψを有する。これはまた、吸収係数αが光波長に依存するため、光波長にも依存する。
【0180】
外部バイアス電圧がゼロであると仮定した場合の、全電流に対する正孔(低濃度にドープされたn領域の少数電荷キャリア)の寄与
正孔はn側に形成され、空乏端のn側への拡散によって右に移動し、そして正孔は、ドリフト電流機構により、空乏領域をよぎる。電子電流の場合と同様に、このモデルでは正孔電流の大部分が0<x’<Wの領域で形成される拡散電流であると仮定している。したがって、上記と同じ処理を行うと、総正孔AC電流は、
【数14】
と表すことができる。Dは正孔拡散係数であるため、積分後に、
h,ac=Bcos(Ωt-ψ) (14)
となる。振幅は、
【数15】
であり、位相は、
【数16】
である。
【0181】
AC電流の全振幅及び位相シフト
以上の考察から、全AC電流は、

tot,ac=Icos(Ωt-Φ) (15a)

となる。AC電流の振幅及び位相シフトは、
【数17】
である。
【0182】
したがって、RF出力は正弦波信号であり、その振幅と位相シフトとは吸収スペクトルα(λ)を介して波長に依存する。
【0183】
上記のモデルでは、PN接合周辺の非空乏化領域に形成される拡散電流を考慮した。この電流の他に、外部バイアスがゼロであると仮定されたため、無視されたドリフト電流もある。しかし、ゼロでない逆方向の外部バイアスが存在すると、空乏領域が長くなり、空乏領域の両端の電圧降下が大きくなり、その両端の逆バイアスが大きなドリフト電流を形成する可能性がある。このため、全体の位相シフトとRF振幅とにさらなる成分が加わるが、簡略化のため、このモデルでは考慮しなかった。
【0184】
実施例4
ファイバブラッググレーティング摂動の決定
本発明者は、グレーティング(複数可)から反射された光の変調から直接、ファイバブラッググレーティング(FBG)からインテロゲータデータを取得する方法及びシステムを考案した。本発明者は、このような直接取得には多くの利点があることを見出した。第一に、この技法はスペクトル掃引を必要としないため、高ノイズ除去と高速測定とを享受する。第二に、この技法は、高速時間領域測定に必要な機器と比較して、比較的低コストの機器を用いて実行することができる。第三に、周波数領域で時間応答を解決するための従来技法とは異なり、その解決はフェージング効果によって制限されるが、本発明のいくつかの実施形態による技法は、フェージング効果の周期性に従って作動周波数を選択し、それによって分解能を向上させる。
【0185】
図7は、本発明のいくつかの実施形態による、光ファイバに形成されたFBGの摂動を判定するのに適したシステム130の概略図である。好ましい実施形態では、システム130は、本方法の操作の少なくともいくつかを実行するために使用される。
【0186】
光ビームが生成され、変調されて、変調された光ビーム34が提供される。光は、必要に応じて、赤外光、可視光、または紫外光にすることができる。好ましくは、光は赤外光である。
【0187】
生成及び変調は、光変調システム140によって実行することができる。変調は、直接変調または外部変調のいずれかであり得、当技術分野で知られている任意のタイプのものであり得る。直接変調が採用される場合、光源136は、コントローラ142から変調信号を受信し、変調された光ビーム134を生成する。外部変調が採用される場合、変調されていない光ビーム132は、光源136によって生成され、コントローラ142から変調信号を受信する光変調器138によって変調される。コントローラ142は、変調信号を生成するための専用回路を含むことができる。
【0188】
変調は、無線周波数などの任意の周波数範囲で行うことができるが、これに限定されない。無線周波数変調が使用される場合、変調周波数は、任意選択で、好ましくは、約1kHz~約40GHzである。本発明の様々な例示的な実施形態では、変調は正弦波変調であるが、いくつかの実施形態では、他の正弦波の変調波形も企図されている。また、例えば、それぞれが異なる周波数の正弦波信号の合計によって、多周波数変調が使用される実施形態も企図されている。変調は、振幅、周波数、及び位相の2つ以上の変調を含み、光ビームの振幅、周波数、及び位相のいずれかを変調するために実行することができる。好ましい実施形態では、少なくとも振幅変調が使用され、より好ましい実施形態では、周波数及び位相が変調されない振幅変調のみが使用される。
【0189】
本実施形態はまた、変調の周波数が複数の変調周波数にわたってスキャンされる変調スキャンを企図する。これらの実施形態の利点について、以下に説明する。しかしながら、変調スキャンを使用する必要はなく、本発明のいくつかの実施形態による方法は、変調が周波数スキャンなしである場合にも実施できることを理解されよう。
【0190】
本発明のいくつかの任意選択の実施形態では、光ビーム134が増幅される。これは、任意選択で、好ましくは、エルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)、イッテルビウム添加ファイバ増幅器(YDFA)、ラマン増幅器、ハイブリッドラマン/エルビウム添加増幅器、ハイブリッドラマン/イッテルビウム添加増幅器、エルビウムイッテルビウム共添加ファイバ増幅器、ネオジム添加ファイバ増幅器、ツリウム添加ファイバ増幅器などであるが、これらに限定されない、光増幅器150によって達成することができる。
【0191】
変調された光ビーム134は、その中に形成された1つ以上のFBG146を有する光ファイバ144を介して伝送される。FBG(複数可)146で反射された光は、光ファイバ144の中から外へ結合される。FBG(複数可)は、コアの断面の全体または一部の内部に、あるいはファイバ144のコア-クラッド界面に、あるいは当技術分野で知られている他のファイバ断面内に作製することが可能である。光ファイバ144は、任意選択で、好ましくは、FBGセンサまたはFBGセンサのアレイを備えた光ファイバである。FBG146は、特定のブラッグ波長を中心とする特定のブラッグバンド幅内の波長を有する光の成分を選択的に反射し、その他の成分がファイバ144内を伝搬し続けることを可能にするように構成される。光ファイバ144が複数のFBGを有する場合、少なくとも2つのFBGのそれぞれ、より好ましくはファイバ144に形成されたFBGのそれぞれが、光の異なる成分を選択的に反射するように構成される。したがって、ファイバ144の各FBG146は、ブラッグ波長(及び対応するブラッグバンド幅)によって特徴付けられ、FBGの少なくとも2つは、異なるブラッグ波長によって特徴付けられる。図7に示すのは、λ、λ、・・・、λで表される、N個の異なるそれぞれのブラッグ波長のセットによって特徴付けられる、N個のFBGを備えたファイバである。FBGは、λ値に従って順序付けする必要はない。
【0192】
本発明の様々な例示的な実施形態では、光ファイバ144は、飛行機の翼、フェンス、風力タービンのブレード、建物、橋、暗渠、トンネル内張り、パイプライン、川、洪水制御貯水池、井戸などの構造物に展開されるか、またはその構造物中に埋め込まれるが、これらに限定されない。
【0193】
ファイバ144への光のインカップリング、及びファイバ144からの光のアウトカップリングは、任意選択で、好ましくは、システム140とファイバ144との間、及び任意選択で、好ましくはまた、ファイバ144と概ね152で示す光及び電気分析システムとの間の光結合を提供する1つ以上の光カプラ148を介する。図7に示す概略図において、限定的であると見なされるべきではないが、光カプラ148は、3つ以上の入力/出力(I/O)ポート(本実施例では3つを示す)を有する光サーキュレータとして示しており、少なくとも1つのポートがシステム140と光通信し、少なくとも1つのポートがファイバ144と光通信する。図7において、光ビーム134は、その第1のポート(1)からサーキュレータ148に入り、その第2のポート(2)からファイバ144に出る。FBG(複数可)146で反射された光は、ファイバ144内を逆に伝搬し、その第2のポート(2)からサーキュレータ148に入り、その第3のポート(3)から出ていく。第3のポートから、反射光は、任意選択で、好ましくは、以下でさらに詳述するように処理及び分析を実行するために、システム152に入る。
【0194】
本発明のいくつかの任意選択の実施形態では、変調は、光がファイバ144を出た後に実行される。これらの実施形態では、光をファイバに伝送する前に変調を実行する必要はない。さらに、変調が2回以上適用される(例えば、光がファイバに結合される前、及び光がファイバを出た後)実施形態も企図される。
【0195】
本発明のいくつかの実施形態では、反射された光ビームはシステム20に入力される。システム20では、反射光ビームは、電荷キャリアの通過時間が波長に依存する、発見した有効波長分散に従って分散される。この分散は、反射光ビームの群速度分散(GVD)を増加させる。好ましくは、分散の後、光ビームのGVDの大きさは、システム52内の他の全ての構成要素の複合有効GVDの大きさよりも大きい(例えば、2倍、または4倍、または8倍、または10倍大きい)。
【0196】
システム20の電荷キャリア対生成光学物質によって提供される分散は、典型的には、分散係数DLによって特徴付けられる。本実施形態に適しているのは、少なくとも100P/nm、または少なくとも300P/nm、または少なくとも1000P/nm、または少なくとも1500P/nm、または少なくとも2000P/nm、または少なくとも2500P/nmの絶対値を有する正または負の分散パラメータによって特徴付けられる分散をもたらすことができる電荷キャリア対生成物質である。
【0197】
システム20の信号処理システム42は、FBG(複数可)146からの反射光の変調における位相シフトを決定する。本発明者らは、変調位相シフトがFBGの摂動を示し、したがって、信号の時間領域応答を決定する必要がなく、光の変調から位相シフトが直接決定されるので、センシングを改善できることを見出した。
【0198】
ファイバ144が2つ以上のFBG146を含む場合、システム130は、システム20に入る前に反射光ビームを多重分離するために、任意選択で、好ましくは、光多重分離システム156を含む。多重分離システム156は、アレイ導波路グレーティング、フォトニック結晶ファイバなどを含むがこれらに限定されない、任意のタイプのものであってよい。図7に示すのは、それぞれがブラッグ波長の1つに対応する3つのチャネル156を生成する光多重分離システムであるが、多重分離システム156は任意の数のチャネル(単一チャネルを含む)を生成できることを理解されたい。システム130は、多重分離システム156によって生成された各チャネルに1つずつ、システム20のような複数のシステムを備え得る(図7では3つを示しているが、任意の数のシステム20を採用することができる)。これらの実施形態では、各チャネルを異なるシステム20に入力することができる。あるいは、システム20は、複数の光電デバイスを含むことができ、その場合、各チャネルを、システム20の異なる光電デバイス34に入力することができる。
【0199】
本発明者は、ファイバ144が複数のFBG146を含む場合でも、反射光を非多重化する必要がないことを見出した。例えば、変調スキャンを使用する場合、変調周波数の多重化により、複数のグレーティングの寄与に関する十分な情報を提供できる。これらの実施形態では、システム20は、好ましくは、各変調周波数について、反射光の全体的な位相シフト及び全体的な大きさを測定する。これにより、複数の全体的な位相シフトと複数の全体的な大きさとが提供される。各全体的な位相シフト及び全体的な大きさは、それぞれファイバ内の複数のFBGに対応する複数の部分波で形成された波を表す。したがって、各全体的な位相シフト及び全体的な大きさは、ファイバ内のFBGによって引き起こされる個々の位相、波長または周波数シフトに関する情報を伝達する。本発明のいくつかの実施形態によれば、採用される異なる変調周波数の数は、全体的な位相シフト及び全体的な大きさから、個々の位相、波長または周波数シフト、及び任意選択で個々の大きさをも抽出するのに十分である。これは、例えば、未知数が個々の位相、波長または周波数のシフトであり、係数と既知の項とが全体的な位相シフト及び全体的な大きさである、方程式のセットを解くことによって行うことができる。本発明者らは、N個のFBGを有するファイバでは、N/2個の異なる変調周波数を採用すれば十分であることを見出した。
【0200】
本発明のいくつかの実施形態では、システム20の処理システム42(図示せず)はまた、参照光検出器162からの信号を受信する。参照光検出器162は、FBG(複数可)で反射されるが、それ以上の分散を受けない光ビームを受光することができる。例えば、ビームスプリッタ157は、1つのビームが上記でさらに詳述するように続き、参照ビームとして機能する別のビームが、処理システム42に電気信号を提供する検出器162に向けられるように、ファイバ144から出る光ビームの光路上に配置することが可能である。
【0201】
位相シフトに基づいて、FBGの摂動を決定する。例えば、システム140が、cos(Ωt)に従って正弦波変調される光ビームを提供すると仮定する。ここで、Ωは、角変調周波数(例えば、無線周波数範囲内)である。システム20の物質10(図示せず)は、各成分が別々に処理システム42に到達するように光を分散させる。さらに、ファイバ144が摂動されていないとき、i番目のFBGから反射された光成分は、cos(ωt+φ)に従って変調されるように、全体の変調位相φを獲得して物質10を出るものとする。信号処理システム42は、対応する電気信号を処理して、その変調パラメータを決定する。
【0202】
ここで、波長λ+Δλの光成分を選択的に反射するような摂動が、i番目のFBGで発生したとする。ただし、λは、i番目のFBGから、このFBGに摂動がなければ反射していたはずの光成分の波長(光学範囲内)である。物質10による分散に続いて、i番目の成分はcos(Ωt+φ+Δφ)に従って変調されるように、変調位相φ+Δφを獲得する。したがって、変調における光位相シフトΔφは、光波長シフトΔλ(あるいは、等価的に、光周波数シフトΔf=cΔλ/λ 、ただし、cは光速)の代理となるものである。信号処理システム42が、i番目の成分の位相がシフトしていると判定した場合、本方法は、摂動がi番目のFBGで発生したと判定する。
【0203】
したがって、本実施形態のシステムは、反射光ビームの光パワーに依存することなく、位相シフトに基づいて摂動を首尾よく決定する。これは、摂動を決定するために複雑な光パワー処理操作を必要とする従来の技法とは異なる。
【0204】
決定した摂動は、複数の方法で表現することができる。いくつかの実施形態では、摂動は、それぞれのブラッグ波長のシフト(上記の例では、Δλ)として表される。ブラッグシフトは、例えば、変調位相シフトΔφとブラッグシフトΔλとの間を関連付ける経験的に生成されたルックアップテーブルを使用して決定することができる。ブラッグシフトの表現された値から、本システムは、例えば、FBGセンサの分野で知られている、FBGの摂動に影響を与える物理量の値を決定することができる。
【0205】
また、実際にブラッグシフトを決定することなく、摂動を物理量の値として表現する実施形態も企図している。物理量の値は、変調位相シフトと物理量の値とを関連付ける経験的に生成したルックアップテーブルを使用して決定することができる。
【0206】
決定可能な物理量の代表例としては、周囲温度、ファイバにかかる圧力、ファイバの歪み、ファイバの加速運動(振動など)、化学変化などのFBGの周囲の環境変化などがあるが、これらに限定されない。企図する別の物理量は、それに加えられる圧力に基づいて決定することができるそれぞれのFBGの深さである。
【0207】
本発明者らは、ブラッグシフトの感知分解能を(したがって、決定すべき物理量の値の分解能も)、変調の周波数及び/または変調位相シフトの測定分解能の賢明な選択によって改善できることを見出した。具体的には、変調位相シフトの測定分解能をΔφres、分散を特徴付ける分散パラメータをD、変調角周波数をΩで表すと、Ω、Δφres、及びDの少なくとも1つは、Δφres/(D×Ω)≦Δλresの関係を満たすように選択することが好ましい。ただし、Δλresは所定のスペクトル分解能閾値である。例えば、Δφresの位相の分解能で位相を測定することができる信号処理システム、及び分散係数Dによって特徴付けられる分散を及ぼすことができる物質10に対して、コントローラ142は、少なくともΔφres/(D×Δλres)である角変調周波数Ωによって特徴付けられる変調信号を生成するように構成することが可能である。
【0208】
典型的には、必ずしもそうではないが、Δλresは、10ピコメートル未満、または1ピコメートル未満、または0.1ピコメートル未満、または0.05ピコメートル未満、例えば、0.01以下である。
【0209】
実施例5
設計上の考慮事項
本実施例は、PN型フォトダイオードを、高分解能分光法、環境センシング、及びRFフォトニック処理での応用に伴い、光電子波長分散(OED)の調整可能なソースとして使用できることを示し、大きい、小さい、ゼロ、及び正または負のOEDを備えたフォトダイオードベースの分散モジュールを製造するための設計ルールを提供する。以下では、変調-位相シフト法を用いて、市販のゲルマニウムPNフォトダイオードのCバンドのOEDを測定した。このフォトダイオードは、-3.6×10/nmという大きなOED分散により、-0.53deg/nmのOEDスペクトル感度を示す。これは、SMF28標準光ファイバ約210kmと同等(ただし符号が逆になる)である。本実施例ではまた、ゲルマニウムフォトダイオードにおけるOEDの温度調整を実証する。
【0210】
図8は、周波数Ω=2πfの正弦波変調光を照射したPN型フォトダイオードにおけるOEDの基本的な発生源について説明したものである。これは、電荷キャリアの波長に依存する移動時間によって生じ、AC電流の波長に依存する変調位相シフトをもたらしている。位相シフト法[9]を使用して、変調位相シフトΔθ=ΩΔτを監視する。ここで、
【数18】
は、波長分散、
【数19】
によるものである。光ファイバでは、
【数20】
と表すのが通例である。ここで、Dは分散パラメータ、Lはファイバ長である。OEDでは、これを分散パラメータ、
【数21】
として一括して扱い、変調位相シフトの波長依存性が、
【数22】
となるようにする。OED感度をSOED≡dθ/dλと定義し、これを本明細書では性能パラメータとして使用するために調べている。
【0211】
本実施例のOED分散及び感度のモデルは、光誘起電荷の形成及び移動のモデルに基づいている[3~6]。3つのPN型フォトダイオードにおけるOEDの顕著な特徴は、1)入口領域優勢デバイス、2)基板領域優勢デバイス、及び3)二重領域デバイスである。
【0212】
主な無次元OEDパラメータはP≡αWである。ただし、αはλに依存する吸収係数、Wは幅である。入口領域、基板領域、及び二重領域のパラメータは、それぞれ下付き文字E、S、及びdualで表す。入口幅及び基板幅がそれぞれW及びWのデバイス(フォトダイオードの薄い真性領域は無視される)の場合、パラメータqはq≡P/(P+P)=αW/α(W+W)=W/(W+W)として定義する。このデバイスは、q→1では入口優勢(P<<P)、q→0では基板優勢(P>>P)と呼ぶ。0<q<1の場合、デバイスの出力は2つの領域それぞれからの電流の重ね合わせになる。光変調Iin=I(1+meiΩt)に伴い、フォトダイオード出力のAC信号は、
【数23】

の形になり、|f|及びθは、3つの可能性i=E,Sまたはdualに対する変調振幅及び位相応答である。次の式は、入口優勢デバイス、基板優勢デバイス、及び二重領域デバイスのOED感度をそれぞれ示す。
【数24】
上式で、Ptot=P+Pである。これらの式は、OED感度を2つの項の積として記述する。設計パラメータは全て第1項P(dθ/dP)に集約され、第2項α-1(dα/dλ)は吸収スペクトルのみに依存する。
【0213】
図9は、いくつかの一般的な材料のα-1(dα/dλ)対λをプロットしたものであり、半導体のそれぞれのバンド端領域に顕著なピーク(負の値)を示している。
【0214】
ゲルマニウムの場合、都合よく、ピークはCバンドの中央にある。また、シリコンは他の一般的な半導体よりも吸収係数が大幅に低いため、近赤外に広帯域のOED感度を有することで際立っている。
【0215】
ここで、第一項のP(dθ/dP)を評価する。Δθ=ΩΔτなので、P(dθ/dP)の中には、Pに加えて、Ωへの依存性が埋め込まれている。第2の無次元変調パラメータは、M=ΩW /Dと定義する。ただし、Dは、領域iの拡散係数であり、領域iの全幅Wiを横断する拡散電流によって生じる変調位相シフトに等しい。所望のOEDデバイスを設計するための手順は、任意選択で、好ましくは、変調振幅|f|及びP(dθ/dP)に対するMの効果Pを考慮する。
【0216】
図10A及び図10Bは、それぞれ、単一領域入口優勢(q=1及びPtot=P)、単一領域基板優勢(q=0及びPtot=P)または二重領域(0<q<1,Ptot=P+P)のいずれかのデバイスに対する、AC振幅対Ptot及びOED感度対Ptotのグラフを表示する。次に、2つの単一領域デバイスの主な特徴を要約する。図10Bより、両単一領域デバイスについて、P(dθ/dP)のピーク値(左Y軸にプロット、反転した値に注意)は、約12.34度でほぼ等しいが、符号はそれぞれ、点PE,opt≒3.3及びPS,opt≒3.1で反対であることが分かる。これらの値は、それぞれ最適な変調パラメータME,opt≒3.3、及びMS,opt≒6.5で到達することがモデルから予測され(下記の方法の項参照)、これは振幅が最大値から、
【数25】
でカットオフする点でもある。どちらのデバイスでも、Mをこの値より大きくすると、さらに振幅が減少するが、入口優勢デバイスでは|P(dθ/dP)|は増え続け、同様に基板優勢デバイスでは|P(dθ/dP)|が減少する。
【0217】
上記の解析を、ピークα-1(dα/dλ)Ge,1560nm=-0.054nm-1のλ=1560nmのゲルマニウムに適用した。SOEDGe,1560nmの値を、図10Bの右のY軸にプロットしている。入り口と基板が支配的なデバイスの両方で、最大SOEDが、
|SOEDGemax=|P(dθ/dP)α-1(dα/dλ)|max=|(12.34deg)(-0.054nm-1)|≒0.67deg/nm
であることが予測される(符号は逆)。市販のPNフォトダイオードの典型的なケースである基板優勢デバイスを想定すると、W=PS,opt/α(1560nm)=3.1/1280cm-1=24μmとなる。これらの最適値の周囲の許容誤差は非常に広いため、OED感度に深刻なペナルティを課すことなく、実際の幅を16~48μmにできるようにすることに留意されたい。
【0218】
別の例として、λ=900nmのシリコンはαSi(900nm)≒306cm-1、α-1(dα/dλ)Si,900nm=-0.011nm-1であるため、最適設計した基板優勢デバイスでは、W=3.1/(306cm-1)≒101μm、SOED≒-0.14deg/nmとなり得る。シリコンのDS≒10cm/sの場合、最適周波数f=M/(2πW )≒104kHzとなる。幾何学的形状を反転して、W≒108μmの最適な入口優勢デバイスを形成する場合、感度は同様であるが符号が逆になり、45kHzのより低い変調でこれを実現できる。これらの予測は、OED用の安価で感度の高いデバイスとしてのシリコンベースの光起電力電池を示唆する。
【0219】
好ましい特徴の1つは、入口及び基板単一領域デバイスのSOEDサインフリップであり、図8を参考にすると理解しやすい。UV-IR領域の一般的な半導体では、dα/dλ<0である。したがって、波長を増加させるために、侵入深さは、入口領域におけるPN接合に近いインチ単位であり、その結果、平均RF位相遅延が減少する。逆に、基板領域では、波長が長くなると光がPN接合からさらに透過し、RF位相遅延が大きくなる。
【0220】
振幅特性については、図10Aに示すように、2つの単一領域デバイスで大幅に異なる挙動を示す。入口領域デバイスの場合、PEopt=3.3での振幅応答は、達成可能な最大値に近い。一方、基板領域デバイスでは、PS,opt=3.1での振幅は(P=0.75での)最大値の23%まで低下している。
【0221】
このように、2つの単一領域デバイスの選択肢を比較すると、高SOEDアプリケーションの設計には、入口領域デバイスが有利であることが分かる。1)SOEDと交流振幅の両方がPE,opt=3.3という共通の値で最大になる。2)最大感度に達するために必要な変調周波数は、基板優勢デバイスに必要な周波数の半分である。3)変調度を上げることで感度をさらに上げるオプションが存在する(ただし、振幅を下げるという代償はある)。
【0222】
二重領域デバイスを参照すると、図10Bは、2つの領域から発信される変調信号間の干渉によって生じる特徴を示している。qが1より小さくなると、デバイスは両方の領域の特性を示し始め、低いPtot値と高いPtot値でそれぞれ負と正のSOEDを示し、P(dθ/dP)=0のPtotZD(q)クロスオーバー点でゼロOEDに至る。これにより、次の2つの方程式が導き出される。これらの方程式は、目的のゼロ分散波長λZD及び選択されたqでのゼロ分散デバイスの設計を左右する。
【0223】
=PtotZD(q)[1-q]/α(λZD
=[q/(1-q)]・W
例えば、所望のλZD=1560nm(α(1560nm)=1280cm-1)でゼロOED用に設計されたGeフォトダイオード、及び選択された設計値q=0.01、例えば、W=[q/(1-q)]W≒0.01Wを仮定する。図10Bは、この場合、Ptot,ZD≡α(λZD)(W+W)=2.61でOEDがゼロになるので、この場合の好ましい設計はW=0.2μm、W=10.1μmであることを示している。
【0224】
グラフはまた、Popt≒3を超える領域で単一領域の感度を超える可能性を示している。図10Aに示すように、これは、より低い信号振幅を犠牲にしてもたらされる。
【0225】
OEDは、図11のセットアップを用い、市販のフォトダイオードで測定した。3つの実験を行い、各実験において、波長を1530~1560nmの間のCバンドで変化させながらAC信号の位相シフトを監視した。最初の実験では、光ファイバは短いSMF-28ファイバジャンパであり、検出器はPIN型InGaAs検出器(Tektronix P6703B)を使用した。2回目の実験では、ファイバを分散DL=-680P/nmの分散補償ファイバモジュール(Photonex EWBDK:680)に交換し、検出器は同じInGaAsフォトダイオードを使用した。3回目の実験では、短いファイバジャンパを使用し、検出器をゲルマニウムPN型フォトダイオード(PDA50B Thorlabs社)に変更した。
【0226】
図12Aは、実験結果と理論予測を示したものである。ゲルマニウムは高いOEDを示し、Cバンド内の傾きはSOED≒-0.53deg/nmであり、公称値W=10μm及びW=100μmを想定した理論とよく一致している。400kHz変調を用いた場合、測定されたOED分散係数、
【数26】
は、約半分の分散と等しい(逆符号)。210kmの標準(SMF28)光ファイバで、DCFファイバの分散(青い線とドット)よりも5倍以上大きくなっている。一方、InGaAsPIN型フォトダイオードは、予測通り、この領域でのOEDが小さくなっている。信号に伴う3シグマ位相ノイズも測定した。電子バンド幅B=500Hzの場合、ノイズは全ての実験で5x10-3degであり、B1/2に比例していた。したがって、測定されたSOED≒-0.53deg/nmでは、波長監視のためのスペクトル分解能(SNR=1)は10pmであった。
【0227】
さらに、図12Bに示すように、GeフォトダイオードにおけるOEDの温度調整を実証した。吸収端領域に続く高OED領域は、温度の上昇とともにより高い波長にシフトする。測定したシフトΔλ/ΔTの量は、1nm/℃のオーダーであり、ゲルマニウムの公開データと一致する[11~13]。他のOED調整機構、例えば歪みまたはバイアス電圧調整もまた、本発明のいくつかの実施形態に従って企図している。
【0228】
波長分散は、本発明の様々な例示的な実施形態に従って、光学的感知のために使用することができる。PNフォトダイオードの光電子プロセスを波長分散の調整可能なソースと見なすことで、本実施形態のRFフォトニクスは、分光、環境センシング、光電子プロセスの物理の調査など(ただし、これらに限定されない)、多くの応用に使用することができる。
【0229】
方法
OED感度のモデルの開発
以下の説明は、拡散PN及びPIN型フォトダイオードによる光誘起電荷キャリアの生成と移動の連続の方程式に基づいている[3,4,5,6]。PNフォトダイオードのOEDを目的とし、以下の説明ではドリフト電流は、入口領域と基板領域とで生成される拡散電流と比較して無視される。SOEDの式は、3種類のPNフォトダイオード、すなわち、1)入口領域優勢デバイス、2)基板領域優勢デバイス及び3)二重領域デバイスについて本発明者らが開発したものである。本明細書では、これらの3つのデバイスのそれぞれのパラメータを、それぞれ下付き文字E、S、及びdualで表している。以下に説明するシミュレーションは、MATLAB(登録商標)ソフトウェアを使用して行った。
【0230】
1 単一領域OED:入口領域
Sawyer-ReDikerモデルは、Iin=I(1+meiΩt)(mは変調指数)の形で変調された照明パワー下でPNフォトダイオードの入口領域に形成されるDC及びAC電流を記述するものである。AC電流密度成分jac,Eは、入口領域のキャリア密度P(x,t)に対する拡散方程式の解であり、入口x=0ではdP/dx=0(表面再結合が無視できると仮定)、PN接合界面x=WではP(W)=0という境界条件を指定している。本実施形態は、ドーピングのためにp型及びn型の両方を企図している。本明細書では、拡散方程式は、次のように3つの無次元パラメータを使用して定式化する。最初のパラメータは侵入パラメータである。P≡αWは、波長に依存する侵入深さα-1に対する入口幅Wの比率である。第1のパラメータは、M≡ΩW /Dで定義される変調パラメータであり、Dは少数キャリアの拡散係数である。Mは、幅W全体を横断する変調された移動キャリア密度波によって発生する変調位相を表す(W /Dは、入口領域全体を横断する平均拡散時間であることに留意されたい)。第3のパラメータは、
【数27】
である。ここで、L=(DτDif、E)1/2は特徴的な拡散長であり、τDifは再結合が発生する前の入口領域キャリアの拡散時間である。これらの置換を行い、表面再結合を無視できると仮定すると、AC電流は、
【数28】
となる。ここで、
【数29】
qは電子電荷であり、
【数30】
である。
【数31】
は、入口領域のAC振幅|F|と位相θ応答とを記述する。これらは、光波長(Pの吸収係数による)、変調周波数(Mによる)、及びその他の材料パラメータW、D、及びLに依存する。OED感度に着目し、波長依存性がPのみであることを理解すると、dP/dα=W=P/αであることに注目して、入射領域のOED感度を次式で表現できる。
【数32】
この式は、感度を2つの項の積として記述する。設計パラメータP、M、及び、
【数33】
は全て第1項P(dθ/dP)にまとめられ、第2項α-1(dα/dλ)は吸収スペクトルだけに依存する。したがって、波長に関係なく最大限の感度が得られるようにフォトダイオードの構造及び動作パラメータを設計するための明確でシンプルな技法が得られる。任意の動作波長に対して、P(dθ/dP)を最大化することでSOED,Eが最大化される。この項は、MEだけでなくPにも依存する。Mパラメータが変調周波数に比例することを想起すれば、振幅応答|FE|がカットオフレベル以下になるカットオフ値ME,coが存在することになり、通常、その値は1/√2倍とされる。モデルは、次の最適な値のペア(PE,opt=3.1,ME,opt=3.3)を予測し、入口優勢デバイスのME,opt=ME,coを予測する。Mを、ME,coを超えて増加させると、P(dθ/dP)がさらに増加する。つまり、振幅がさらに減少する代わりに、感度が増加し続ける。
【数34】
パラメータに関しては、シミュレーションで、
【数35】
と仮定した。つまり、デバイスの長さは半導体の特徴的な拡散長に等しくなる。シミュレーションは、
【数36】
である限り、つまりデバイス幅全体で再結合が無視できる限り、結果は、
【数37】
に敏感に依存しないことを示している。
【0231】
2 単一領域OED:基板領域
基板領域の光電流は、W+d<x<Wの領域で形成されるキャリア密度P(x、t)によるものである。入口領域と同じアプローチで、x=WではdP/dx=0(表面再結合を無視できる)、PN接合ではP(x=W+d)=0という境界条件で、基板AC電流密度は次のようになる。
【数38】
ただし、
【数39】
上式では、基板電流のみが有意なW+d≒0であるように、無視できるほど薄い入口領域及び空乏領域が想定された。式5.3a及び5.3bでは、P≡αW、MS≡ΩW /D
【数40】
、L=(Dτdif1/2であり、Dは基板領域拡散係数であり、τdifは拡散時間であり、
【数41】
である。
【数42】
は基板領域のAC振幅及び位相応答を記述している。これが基板OED感度、
【数43】
につながる。入口領域と同じロジックでシミュレーションを行った結果、基板優勢デバイスのSOED,Sを最大化する最適設計は、(PS,opt=3.1,MS,opt=6.5)とMS,opt=MS,coとであることをシミュレーションは示している。しかし、入口優勢の場合とは異なり、MS,coを超えてMがさらに増加すると、振幅|F|の減少と共に感度項P(dθ/dP)が減少する。
【0232】
3 二重領域OED
二重領域デバイスは、全体的な電流と感度とに対する各領域の寄与が無視できないデバイスである。これは、動作波長と領域の幅とに依存する。この場合のOED感度は、この二重領域デバイスのAC電流jac,dualが2つの領域からの寄与の和であることから、上記のモデルに基づいて表現することができる。この場合、入口領域で発生した吸収e-Pの結果として基板領域への入力に到達する光パワーの減少(薄い真性領域での吸収は無視される)も考慮される。上記の方程式に基づいて、
【数44】
【数45】
ただし、
【数46】
は、合計AC振幅及び位相シフトを表す。これにより、二重領域OED感度、
【数47】
が実現する。ただし、Ptot≡P+Pである。前の2つのケースと同様に、第1項は最適な設計基準を決定し、第2項の吸収依存項は3つのケース全てに共通である。
【0233】
本発明をその特定の実施形態に関連して説明したが、多くの代替案、修正及び変形が当業者には明らかであろうことは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の趣旨及び広い範囲に含まれるそのような全ての代替案、修正及び変形を包含することが意図されている。
【0234】
本明細書に記載されている全ての刊行物、特許及び特許出願は、個々の刊行物、特許または特許出願が参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同じ程度に、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。さらに、本出願における参考文献の引用または識別は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものと解釈されるべきではない。セクション見出しが使用されている範囲では、それらは必ずしも限定的であると解釈されるべきではない。また、本出願の優先権主張文書(複数可)は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0235】
参考文献
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図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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【国際調査報告】