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▶ イーストマン ケミカル カンパニーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】PETメタノール分解のための触媒
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/03 20060101AFI20230213BHJP
   C07C 69/82 20060101ALI20230213BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230213BHJP
【FI】
C07C67/03
C07C69/82 A
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537347
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(85)【翻訳文提出日】2022-08-02
(86)【国際出願番号】 US2020064255
(87)【国際公開番号】W WO2021126661
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】62/951,425
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594055158
【氏名又は名称】イーストマン ケミカル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】シャープ,ロバート・ジャックス
(72)【発明者】
【氏名】モロー,マイケル・チャールズ
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB46
4H006AC48
4H006AD11
4H006BA02
4H006BA06
4H006BA32
4H006BA51
4H006BC10
4H006BJ50
4H006KA03
4H039CA66
4H039CD40
(57)【要約】
ポリ(C~Cアルキレンテレフタレート)の解重合のための方法であって、解重合をもたらすのに十分な温度で、ポリ(C~Cアルキレンテレフタレート)を、メタノール、ならびに炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、マグネシウムメトキシド、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、およびトリアザビシクロデセンから選択される触媒と接触させるステップ、を含む方法が提供される。本発明の方法は、大幅により低い温度で実施することが可能であり、酢酸亜鉛触媒反応において必要とされるよりも少ないメタノールを必要とし、より低品質のポリ(C~Cアルキレンテレフタレート)廃棄供給物を許容できるほど十分に確立されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(C~Cアルキレンテレフタレート)の解重合のための方法であって、解重合をもたらすのに十分な温度で、ポリ(C~Cアルキレンテレフタレート)を、メタノール、ならびに炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、マグネシウムメトキシド、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、およびトリアザビシクロデセンから選択される触媒と接触させるステップ、を含む方法。
【請求項2】
触媒が、マグネシウムメトキシドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
触媒が、炭酸ナトリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
触媒が、炭酸カリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
触媒が、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
触媒が、トリアザビシクロデセンである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ポリ(C~Cアルキレンテレフタレート)が、ポリ(エチレンテレフタレート)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ポリ(C~Cアルキレンテレフタレート)が、ポリ(プロピレンテレフタレート)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ポリ(C~Cアルキレンテレフタレート)が、ポリ(ブチレンテレフタレート)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
方法から形成されたジメチルテレフタレートを単離するステップをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
温度が、約100℃~約180℃の範囲である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ジメチルテレフタレートが、蒸留を介して単離される、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、高分子科学の分野に属する。特に、本発明は、ジメチルテレフタレートを形成するためのポリ(エチレンテレフタレート)(PET)のメタノール分解において有用な特定の触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]プラスチック廃棄物処理の課題は、世界経済における現在の差し迫った問題であり、化学薬品会社は、自社の製品ラインにおける循環型経済の発展に関わる問題に直面している。ポリ(アルケンテレフタレート)ポリマーは、大量に製造されており、以下に限定されないが、水ボトル、織物、フィルム、および樹脂を含む様々な用途に展開されている。これらの物質から生じる廃棄物の量が増加しているため、これらの廃棄物流の機械的または化学的再利用のための改良された方法を開発する必要性がある。
【0003】
[0003]PET廃棄物の化学的再利用のための大多数の手法は、PETのテレフタル酸への変換(加水分解)またはビス-ヒドロキシエチルテレフタレートへの変換(グリコール分解)を伴うが、メタノール分解として知られている方法を介したPETのジメチルテレフタレート(DMT)への変換のための多くの手法も記述されている。PETのメタノール解重合は、多くの典型的なエステル交換促進剤によって触媒され、当技術分野におけるメタノール分解のための好ましい触媒は、歴史的に、酢酸亜鉛二水和物[Zn(OAc) 2HO]であった。この触媒は、以下の理由から、当該分野において一般的に好まれてきた:
1.Zn(OAc) 2HOは、安価であり、入手が容易である。
【0004】
2.多様なPET廃棄供給物は、ある程度の量の水分を一般的に含有しており、この水分は、水に敏感な触媒を不活性化し得る。Zn(OAc) 2HOは、一般的に水耐性であり、残留水分によって不活性化されない。
【0005】
3.Zn(OAc) 2HOは、一般的に言って、多様な供給源からのPET廃棄物流中の残留不純物からの被毒を受けにくい。
[0004]しかし、これらの利点にもかかわらず、Zn(OAc) 2HOの使用は、多くの問題点も抱えている。最初に、この触媒は、活性が一般的に低く、低圧または高圧環境において、250℃を上回る反応温度を必要とする。加えて、適当な反応速度を維持するために、大過剰のメタノールが一般的に必要とされる(質量でメタノール:PETは4:1、モル比でメタノール:PETは24:1)。著しい濃度の残留亜鉛塩を含有する廃棄物流の取扱いに関する重大な懸念も生じている。最後に、上昇させた温度でのLewis酸性触媒の使用は、脱カルボキシル化、ラジカルホモリシス、およびエーテル化を含む、この触媒作用の望ましくない副反応を引き起こす。これらの要素を考慮し、PETメタノール分解において、これらの欠点がない状態で、PET廃棄物のメタノール分解を効果的に促進する新規触媒を同定する必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0005]概して、本発明は、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(プロピレンテレフタレート)(PPT)、およびポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)などのポリ(C~Cアルキレンテレフタレート)のメタノール分解のための改良された触媒を提供する。一態様において、本発明は、ポリ(C~Cアルキレンテレフタレート)の解重合のための方法であって、解重合をもたらすのに十分な温度で、ポリ(C~Cアルキレンテレフタレート)を、メタノール、ならびに炭酸ナトリウム、マグネシウムメトキシド、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、およびトリアザビシクロデセンから選択される触媒と接触させるステップ、を含む方法を提供する。本発明の方法は、大幅により低い温度で実施することが可能であり、酢酸亜鉛触媒反応において必要とされるよりも少ないメタノールを必要とし、より低品質のポリ(C~Cアルキレンテレフタレート)廃棄供給物を許容できるほど十分に確立されている。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0006]第1の態様において、本発明は、ポリ(C~Cアルキレンテレフタレート)の解重合のための方法であって、解重合をもたらすのに十分な温度で、ポリ(C~Cアルキレンテレフタレート)を、メタノール、ならびに炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、マグネシウムメトキシド、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(「DBU」)、およびトリアザビシクロデセン(「TBD」)から選択される触媒と接触させるステップ、を含む方法を提供する。
【0008】
[0007]概して、反応において、添加するメタノール質量に対する圧力、温度、およびポリ(C~Cアルキレンテレフタレート)は、PETメタノール分解において公知のそれらの範囲内で操作され得る。例えば、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,498,749号、第3,776,945号、第3,321,510号、第3,037,050号、第4,578,502号、第3,488,298号、第4,63,860号、および第5,051,528号を参照されたい。
【0009】
[0008]概して、本発明のメタノール分解は、約100℃~約180℃の温度および約1~約15気圧の圧力で実施され得る。
[0009]本発明の方法に対する触媒添加量は、重要なパラメータではない。特定の実施形態において、触媒添加量は、ポリ(C~Cアルキレンテレフタレート)1モルあたり触媒約0.005モル~0.1モルである。
【0010】
[0010]特定の実施形態において、ポリ(C~Cアルキレンテレフタレート)は、ポリ(エチレンテレフタレート)である。
[0011]特定の実施形態において、ポリ(C~Cアルキレンテレフタレート)は、ポリ(プロピレンテレフタレート)である。
【0011】
[0012]特定の実施形態において、ポリ(C~Cアルキレンテレフタレート)は、ポリ(ブチレンテレフタレート)である。
[0013]上記のとおり、本発明の改良されたメタノール分解触媒の1つの結果は、方法が、Zn(OAc) 2HOを用いた場合よりも低い温度で実施され得ることである。
【0012】
[0014]本発明は、その特定の実施形態の以下の実施例によってさらに例示され得るが、これらの実施例は、単に例示の目的のために含まれ、別段の具体的な指示がない限り、本発明の範囲を限定する意図はないことは理解されるであろう。
【実施例
【0013】
[0015]全般:予備実験は、25mLガラス圧力管、および必要に応じて、15mL Parrボンベ反応器(bomb reactors)で行われた。低品質の供給物に対する反応の最適化および反応効果の検討は、100mLステンレス製オートクレーブで行われた。バージンPETペレットは、Eastman Chemical Companyから入手された。路肩収集ボトルフレーク(Curbside bottleflake)廃棄物PETは、Polyquestから入手され、そのまま使用された。ペレット化されたカーペット繊維PETは、Circular Polymersから入手され、使用前に挽いて粉末にした。
【0014】
定量ガスクロマトグラフィー
[0016]メタノール分解生成物は、2つの内部標準ガスクロマトグラフィー(GC)法を用いて定量化された。データは、7693Aオートサンプラおよび2つのG4513Aタワーを備えるAgilent7890を使用して得られた。サンプルは、公知体積の内部標準溶液を公知質量のサンプルに加え、次に、N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSTFA)を用いて誘導体化することによって調製された。次に、サンプルを、プログラムされた温度変化および炎イオン化検出を用いて、2つのカラム-60m×0.32mm×1.0ミクロンDB-1701(商標)(J&W123-0763)および60m×0.32×1ミクロンDB-1(商標)(J&W123-1063)-でクロマトグラフィーにかけた。5点較正を、目的の主要成分(ジメチルテレフタレート、エチレングリコール、メタノール、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレートなど)すべてに対して実施し、標準品のない他の微量成分は、構造的に類似した化合物の応答係数を使用することによって定量化された。
【0015】
ガスクロマトグラフィー/質量分析法:
[0017]物質同定は、Thermo1310GCおよびTriplus RSHオートサンプラを備えるThermo Scientific Exactive GC(商標)(Orbitrap GCMS)を使用して実施された。Thermo Orbitrap GCMSは、PFTBA較正物質(30~614amu)を使用する質量較正の範囲内で、60000の質量分解能および3ppm未満の質量確度を有する。公知化合物の物質IDは、NIST17、Wiley10、DD2014、および内部データベースを使用する電子イオン化(EI)スペクトルライブラリーサーチを介して決定された。不明な化合物のスペクトルがEI-GCMSによって分子イオンを提示しなかった場合、アンモニア化学イオン化(CI)が、正確な分子質量を決定するために使用された。Thermo Exactive GCのHRAM(高分解能精密質量)性能を使用して、不明物の分子式を算出した。不明物の物質同定は、分子式、実験化学の知識、およびEIスペクトルの評価を用いて行われた。Thermo Orbitrap GCMSは、質量分解能60000、スキャン範囲30~750amu、電子エネルギー70eV、トランスファーライン温度250℃、イオン源温度300℃、およびC-トラップエネルギーオフセット1.0Vで操作された。標準のカラムブリード(207.03235、225.04292、281.05114、355.06990)から得られ、各分析において存在するロックマスが使用された。分子式の算出において、実験化学の知識およびEIスペクトルの評価に基づいて評価された式候補の一覧を作成するために、3ppm質量誤差が使用された。GCカラムは、Thermo TG-5-SILMS(商標)、30m×0.25mm×0.25ミクロンフィルム(低ブリード5%フェニル相当)、Thermo P/N26096-1420であった。第1段階では、10℃/分で40~180℃、次に第2段階では、25℃/分で300℃までのプログラムされたオーブンの温度変化が使用された。最終のオーブン温度は、合計の実行時間である34分間に対して15分間維持された。サンプルの調製は、塩化メチレン1.5mLを、提供されたサンプルに加え、30秒間ボルテックスで混合し、0.45ミクロンのシリンジフィルターを使用してサンプルを濾過することによって実施された。注入は、Thermo Triplus RSHオートサンプラならびに260℃およびスプリット比13.3:1で操作されるスプリット-スプリットレス注入口を使用して、サンプル0.2uLを注入することによって行われた。カラム流量は、真空補正なしのコンスタントフローモードにおける、ヘリウム1.5mL/分であった。
加水分解/液体クロマトグラフィー:
化学物質および物質
[0018]すべての実験で使用される水は、比抵抗18.2MΩcm-1のMilli-Q water purification system(EMD Millipore、Billerica、MA)によって精製された。HPLC等級のアセトニトリルおよび試薬等級のジメチルスルホキシド(DMSO)は、Honeywell(Clearwater、FL)からのものである。試薬等級85%のリン酸は、J.T.Baker(Center Valley、PA)から入手した。3種の加水分解試薬が使用された。試薬1は、割合が40:60のメタノールおよびDMSO中、25%体積パーセントの水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を混合することによって作製された。試薬2は、純粋なDMSOであり、試薬3は、DMSO中、30%酢酸であった。試薬1および試薬3は、Reagents(Charlotte、NC)から予混合溶液として購入された。内部の製造サンプルである99%純粋なTPA標準品は、分析用標準品としての条件を満たしていた。ビスフェノールAは、Sigma Aldrich(St Louis、MO)からの99%純粋なものであった。
【0016】
方法の較正
[0019]化学天秤を使用して、0.05(+/-0.01)gのテレフタル酸(TPA)およびビスフェノールA(BPA)を測り取り、重量を小数点第4位までグラムで記録する。固体を、50.00mLメスフラスコに移す。50/50のジメチルスルホキシド/アセトニトリル(DMSO/CAN)約40mLを加えて、固体が完全に溶解するまで超音波で処理する。DMSO/ACNをさらに用いて、メスフラスコの容量までメスアップし、十分に混合する。この溶液が原液である。濃度は約1mg/mLである。連続希釈によって、100mg/μL、10μg/mL、および1μg/mLの較正溶液を作製する。濃度に対するTPAおよびBPAピークのピーク面積をプロットすることによって、外部較正曲線を作成する。以下の方程式を使用して、TPAおよびBPAレベルを算出する:
【0017】
【数1】
【0018】
[0020]TPAの較正範囲は、1~100μg/mLである。純粋なPETサンプルなどのTPA含有率が高いサンプルについて、加水分解物中のTPA濃度は、この較正範囲を大幅に上回る。TPA濃度が溶解限度を超えることも多く、白色の固体が加水分解後に認められる。TPAを正確に定量化するために、均質化された元の加水分解物0.2mLを、25mLメスフラスコにピペットで入れ、DMSOを加えてフラスコの容量までメスアップすることによって、TPA含有率が高い加水分解物を125倍にさらに希釈する。これによって、最終サンプル中のTPA濃度を、TPAの可能な最大量(純粋なPET中TPA86.4%および純粋なDMT中TPA85.6%)においても較正範囲の上限より下に収めることを確実にする。
【0019】
サンプル調製
[0021]8ドラムバイアルにサンプル0.05(+/-0.01)gを測り取る。0.1mgまで正確な重量を記録する。試薬1水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)5mLおよび試薬2(DMSO)5mLを加える。超小型攪拌子(flea stir bar)を加え、バイアルの蓋を閉め、15分間撹拌する間、121℃のヒートブロックにバイアルを留置する。ヒートブロックからバイアルを取り外して、室温まで冷却する。HPLC分析のためにこの溶液をバイアル化する前に、試薬3(酢酸)5mLを加えて溶液を中和する。必要であれば、DMSOをさらに用いて希釈する。
【0020】
HPLCの条件
【0021】
【表1】
【0022】
実験手順:
ガラス圧力管内における小規模メタノール分解のためのサンプル手順:
[0022]25mLガラス圧力管にポリエチレンテレフタレートを入れ、続いてメタノールおよび磁気攪拌子を入れた。最適な触媒を加えて、圧力容器を密閉した。次に、容器を、望ましい反応温度に予め加熱した油浴に沈めた。混合物が完全に溶解した時間を記録し、この反応物を目標温度で4時間維持した。次に、圧力容器を油浴から取り出し、冷却した。得られた粗物を圧力管から取り出し、上記の分析法によって分析した。
【0023】
Parrボンベ内における小規模メタノール分解のためのサンプル手順:
[0023]15mLステンレス製Parrボンベにポリエチレンテレフタレートを入れ、続いてメタノールおよび磁気攪拌子を入れた。最適な触媒を加えて、ボンベを密閉した。次に、ボンベを、磁気攪拌プレート上の加熱マントルに留置し、望ましい維持ポイントまで温度を上げた。これらの条件を4時間維持した。次に、ボンベを冷却し、その後砂浴から取り出した。得られた粗物をボンベから取り出し、上記の分析法によって分析した。
【0024】
高圧オートクレーブにおける触媒の最適化/評価のためのサンプル手順
[0024]100mLステンレス製オートクレーブにポリエチレンテレフタレートを入れ、続いてメタノールおよび最適な触媒を入れた。500psigのNを用いてオートクレーブの圧力を確認し、通気し、Nでさらに3回パージし、その後密閉した。撹拌を500rpmに設定し、オートクレーブを望ましい設定ポイントに加熱し、この条件を4時間維持した。維持時間が完了し次第、オートクレーブを冷却し、その後減圧した。粗生成物をオートクレーブから取り出し、上記の方法によって分析した。
【0025】
結果および考察:
1.予備スクリーニング:
[0025]本発明者らによる初回スクリーニングでは、広範囲のエステル化およびエステル交換促進剤を、引き下げられた温度(約150℃)でバージンPETの分解を容易にするそれらの能力に関して評価した。本発明者らの初回セットは、PETの解重合における特許文献に加えて、学術文献から報告されている触媒からなっている。好都合にも、PET加水分解およびグリコール分解の触媒作用について記載されている報告は数多く存在するが、類似したメタノール分解方法についての報告は極めて少ない。初回スクリーニングでは、バージンPETを、メタノールおよび望ましい触媒と共に25mL圧力管(または必要であれば、Parrボンベ)内に入れた。得られた混合物を4時間(概ね150℃で)加熱した。混合物が完全に溶解した時間を記録し(反応がParrボンベ内で行われ、4時間の維持時間を標準として使用した場合を除き)、最終的な混合物をGCによって分析した。GC法に不溶性と判明した任意の物質は、反応しなかったか、または部分的に反応したPETに分類された。本発明者らの初回結果の概要は、表2に示される。予想どおり、あらゆる触媒の非存在下では、150℃で試みたPETのメタノール分解は、無反応であった。この表から分かるとおり、(引き上げられた温度ではあるが)PETの解重合において活性であると報告されている多くの触媒は、本発明者らによる評価において、反応性を殆ど示さないか、全く示さなかった。本発明者らによるスクリーニングを続けたところ、本発明者らは6種の触媒を、妥当な触媒添加量におけるPETに対するそれらの活性およびPETを完全に消費するそれらの能力によって証明されたことから、反応における性能が高いものとして同定した。これらの触媒は、ナトリウムメトキシド、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、マグネシウムメトキシド、DBU、およびTBDである。
【0026】
【表2】
【0027】
[0026]Zn(OAc) 2HOによって触媒された大気圧方法と比較して、これらの触媒のすべては、引き下げられた温度で活性であるが、これらの触媒のすべてが同じ温度範囲で活性というわけではない。例えば、DBUおよびTBDは、100℃という低い反応温度でPETに対して活性であるが、炭酸塩基は、140℃に到達するまで殆ど反応しない。マグネシウムメトキシドは、温度が180℃に到達するまで不活性であることが判明した。
【0028】
[0027]次に、本発明者らは、リサイクルされたPETボトルフレーク(bottleflake)に対する触媒性能を評価することを決定し、反応規模を15グラムに増やした。本発明者らは、処理能力を増大させ、結果の一貫性を増強するために、高圧施設研究所を使用してこれらの実験を行った。反応条件は、評価され、逐次的SIMPLEX最適化法(Walters F.H.,Parker L.R.,Morgan S.L.,Deming S.N.Sequential Simplex Optimization.Boca Raton,FL:CRC Press LLC,1991を参照されたい)を用いて最適化され、その結果は、表3~7に記載されている。実験は、粗DMT収率および反応完了(GCMSの望ましさに関する主観的評定によって決定される)の判定基準について評価された。触媒添加量、メタノール:PET割合、および反応温度を最小限に抑える理想的なパラメータが求められた。DBUについて、本操作のための最良の条件は、実験例36および37であったと判定された。
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
[0028]TBDについて、同定された最良の条件は、実験例48および50であった。
【0032】
【表5】
【0033】
[0029]ナトリウムメトキシドについて、同定された最良の条件は、実験例52および60であった。
【0034】
【表6】
【0035】
[0030]炭酸ナトリウムについて、同定された最良の条件は、実験例65および69であった。
【0036】
【表7】
【0037】
[0031]上記の結果を考慮すると、各触媒のための最も有効な反応条件に関する共通の傾向が浮かび上がる。具体的には、触媒が活性である最低反応温度は、望ましさを最大限に高めるために一般的に好まれる。加えて、メタノール量または触媒添加量が増加されると、DMT収率が概ね改善する。
【0038】
より低品質の供給物質を利用する追加の実験
[0032]実験誤差を軽減するために、これらの実験は2組ずつ行われた。対照実験として、260℃の必須温度で、1mol%Zn(OAc) 2HOを使用して反応も評価した。粗DMT収率は、粗反応生成物のガスクロマトグラフ分析に基づいて算出された。
【0039】
[0033]要約すると、これらの結果は、触媒添加量および反応温度に関して最適化された条件を採用した場合に、マグネシウムメトキシド、DBU、TBD、炭酸ナトリウム、および炭酸カリウムが、最適化された条件(260℃)における酢酸亜鉛と比較して、粗DMTの優れた収率をもたらすことを例証している。
【0040】
【表8】
【0041】
[0034]上記の触媒が原料に由来する不純物によって被毒していない証拠として、本発明者らは、残った不溶性物質を回収して分析した(表9)。これらのサンプルは、全体的加水分解に供され、液体クロマトグラフィーによって分析されて、任意の残っているテレフタル酸残留物を同定した。次に、これらの結果は、回収された不溶性物質の残留DMT%と比較された。この2つの値の間の差異は、サンプル中の残留PETの量であると判定された。この表から分かるとおり、5種の高性能が触媒は、それらの最適化された反応プロファイルで、完全なPETの変換を達成する能力において、酢酸亜鉛に相当する働きをすると判定された。各システムのための反応条件のさらなる最適化は、追加の収率および選択性の改善に繋がるであろうことが想定される。
【0042】
【表9】
【国際調査報告】