(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】リサイクル含有物入りのポリエステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/78 20060101AFI20230213BHJP
C08G 63/183 20060101ALI20230213BHJP
C08G 63/00 20060101ALI20230213BHJP
C08J 11/10 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
C08G63/78
C08G63/183
C08G63/00
C08J11/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537354
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(85)【翻訳文提出日】2022-08-05
(86)【国際出願番号】 US2020065256
(87)【国際公開番号】W WO2021126938
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】594055158
【氏名又は名称】イーストマン ケミカル カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100168066
【氏名又は名称】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】ハウエル,アール・エドモンドソン,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】エカート,マイケル・ポール
(72)【発明者】
【氏名】キーバー,トラヴィス・ウィン
(72)【発明者】
【氏名】ジャック,ボブ・エヌ
(72)【発明者】
【氏名】ホートン,ジョナサン・マイケル
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,ダニエル・リー
【テーマコード(参考)】
4F401
4J029
【Fターム(参考)】
4F401AA22
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(57)【要約】
リサイクル含有物入りのポリエステルの製造方法の様々な態様が記載されている。本開示の方法は、リサイクルDMTをTPA系ポリエステル製造システムに効果的にかつコスト効率的に組み込む。リサイクル含有物入りのポリエステル、およびリサイクル含有物入りポリエステルを製造するためのリサイクルフィード組成物も記載されている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リサイクル含有物入りのポリエステルを製造する方法であって、少なくとも1つの反応ゾーンに、r-DMT、エステル交換されたr-DMTおよびそれらの組み合わせからなる群より選択されるリサイクルエステル材料を含むリサイクルフィードを供給し、前記少なくとも1つの反応ゾーンにおいてリサイクル含有物を含む反応混合物を生成する工程、前記反応混合物を反応させて、リサイクル含有物入りのポリエステルオリゴマー混合物を生成する工程、ならびに前記リサイクル含有物入りオリゴマー混合物を重縮合して、リサイクル含有物入りのポリエステルを生成する工程を含む方法。
【請求項2】
前記供給工程が、さらに、少なくとも1つの反応ゾーンに、r-EG、r-DEG、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるリサイクルジオール材料を供給する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リサイクルフィードが、さらに、リサイクルジメチルイソフタレート材料(r-DMI)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記リサイクルフィードが、さらに、ゲルマニウム材料、アンチモン材料およびそれらの組み合わせからなる群より選択される残留触媒材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記供給工程が、さらに、少なくとも1つの反応ゾーンに未使用フィードを供給する工程を含み、前記未使用フィードが少なくとも1つの未使用ジオール成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記未使用フィードが、実質的に未使用ジエステル成分を含まない、または、前記未使用フィードが実質的に未使用二酸成分を含まない、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記反応工程が、少なくとも250℃の温度で、合計で30分~12時間の間の平均滞留時間で、前記反応混合物を反応させる工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記未使用フィードが、さらに未使用二酸成分を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記未使用二酸成分が、前記未使用フィードの二酸成分の全量に対し、少なくとも90モル%のテレフタル酸である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記未使用二酸成分が、テレフタル酸およびイソフタル酸のうち片方または両方を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
反応工程を、金属系触媒の存在下で実施し、前記金属系触媒の金属が、Sb、Ti、Sn、Mo、Ge、Zn、Co、Mn、Cd、Al、Li、Pb、Mg、Ca、Ag、Na、Ce、Ba、Hg、Fe、Cuおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記未使用フィードの前記未使用ジオール成分が、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリオキシメチレン、イソソルビド、1,3-および1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチルシクロブタンジオール(TMCD)を含む2,2,4,4-テトラアルキルシクロブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、レゾルシノール、ヒドロキノンならびにカテコール、ならびにそれらの異性体および組み合わせを1つまたは複数含む、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記未使用フィードの前記ジオール成分が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール(TMCD)、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、ならびにそれらの異性体および組み合わせからなる群より選択される1つまたは複数のジオールを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
さらに、前記供給工程の前に、廃ポリエステルを解重合して、r-DMTを含む解重合物を生成する工程を含み、前記解重合工程をメタノリシスにより実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
リサイクル含有物入りの前記ポリエステル中に、前記供給工程の前記リサイクルエステル材料を、1,4-ジカルボキシベンゼン当量の二酸の総モル数に対し1~100モル%を占める十分な量で供給する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記未使用フィードを供給する前記工程が、前記リサイクルフィードを供給する前記工程に先行し、前記方法が、さらに、前記リサイクルフィードを供給する工程の前にまたは並行して、前記反応器中で少なくとも若干量の前記未使用フィードを反応させて未使用ポリエステルオリゴマーを生成する工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項17】
さらに、前記供給工程の前に、少なくとも若干量の前記r-DMTと、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、2,2,4,4-テトラメチル-1,4-シクロブタンジオール、ならびにそれらの異性体および組み合わせからなる群より選択されるジオールからなる群より選択される1つまたは複数のジオールとを予備反応させて、エステル交換されたr-DMTを生成する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記予備反応工程を、金属系触媒の存在下で実施し、前記金属系触媒の金属が、Sb、Ti、Sn、Mo、Ge、Zn、Co、Mn、Cd、Al、Li、Pb、Mg、Ca、Ag、Na、Ce、Ba、Hg、Fe、Cuおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項19】
リサイクル含有物入りのポリエステルを製造するためのリサイクルフィード組成物であって、前記リサイクルフィードが、
r-DMT、エステル交換されたr-DMTおよびそれらの組み合わせからなる群より選択されるリサイクルエステル材料と、
リサイクルジメチルイソフタレート材料(r-DMI)、ならびに
ゲルマニウム材料、アンチモン材料およびそれらの組み合わせからなる群より選択される残留触媒材料
のうち少なくとも1つと
を含む、リサイクルフィード組成物。
【請求項20】
前記リサイクルフィード組成物が、リサイクルジメチルイソフタレート材料(r-DMI)を3000ppm以上の量で含む、または、前記残留触媒材料が、前記フィード組成物に対し5~500ppm部の量で存在する、請求項20に記載のリサイクルフィード組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、全体的に、ポリエステルリサイクルおよびポリエステル製造の分野に関し、より詳細には、リサイクル含有物入りのポリエステルの生成においてメタノリシス反応生成物を使用する、ポリエステルの製造プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]ポリエステルは世界で最も購入され、多様に利用されているポリマー類の一つであり、最近発表された世界的生産量(リサイクル物も含む)は7500万トンを優に超えると報告されている。この水準での商業的成功は、ポリエステルの相対的費用、生産性、および競争優位性の魅力ある組み合わせに少なからず起因すると考えられる。ポリエステルの物理的性質、化学的性質、および熱物性は、ポリエステルを様々な最終用途に適用するのに有用で好適なものとする。ポリエチレンテレフタレート(PET)は、多くの最終用途に用いられる、最も一般的なポリエステルの一種である。ポリエステル全体、特にPETの商業的成功が続いていることもあり、埋め立て等の一般的な廃棄方法に代えて、ポストコンシューマー、ポストインダストリー、スクラップ、および他の発生源に由来する材料をリサイクルし、それらの材料を再利用するという取り組みが実施されている。
【0003】
[0003]ある公知のリサイクル方法では、リサイクルPETは未使用材料とブレンドされる。本アプローチは、例えば、リサイクルPETを含む未使用ポリ(ブチレンテレフタレート)(「PBT」)のブレンドを調製してリサイクル含有物入りのPBT系製品を得るために使用されてきた(例えば、米国特許出願公開第2009/0275698号を参照。)。しかし、このようなブレンドは概して非混和性で、得られる材料は比較的不透明である。したがって、ブレンド法は、リサイクル含有物入りの商用価値のある最終製品を一様に良好な方法で提供できるものではない。
【0004】
[0004]別のリサイクル方法では、ポリエステルは、解重合されて、その製造において初めに用いられたモノマー単位を形成する。商用的に利用されているポリエステル解重合方法の1つとして、メタノリシスがある。メタノリシスでは、ポリエステルをメタノールと反応させることにより、ポリエステルオリゴマー、ジメチルテレフタレート(「DMT」)、およびエチレングリコール(「EG」)を含むポリエステル解重合物の混合物が得られる。また、他のモノマー、例えば1,4-シクロヘキサンジメタノール(「CHDM」)やジエチレングリコール等も、ポリエステルの組成に応じて、メタノリシスフィード流体中で得られることもある。PETのメタノリシスの代表的な方法は、米国特許第3,037,050号、米国特許第3,321,510号、米国特許第3,776,945号、米国特許第5,051,528号、米国特許第5,298,530号、米国特許第5,414,022号、米国特許第5,432,203号、米国特許第5,576,456号、および米国特許第6,262,294号にいくつか記載されており、各開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。代表的なメタノリシスプロセスは米国特許第5,298,530号にも説明されており、本開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。上記米国特許第5,298,530号には、ポリエステルスクラップからエチレングリコールおよびジメチルテレフタレートをリサイクルするプロセスが記載されている。本プロセスは、ポリエステルスクラップを、エチレングリコール(EG)およびテレフタル酸(TPA)またはジメチルテレフタレート(DMT)のオリゴマーに溶解させる工程、ならびに、過熱メタノールを本混合物中に通過させる工程を含む。上記オリゴマーは、出発物質として使用されるスクラップ材料と同様の組成を有する、いかなる低分子量ポリエステルポリマーを含むことができる。これは、スクラップポリマーが低分子量オリゴマーに溶解していくためである。上記ジメチルテレフタレートおよびエチレングリコールは、解重合反応器から排出されるメタノール蒸気流からリサイクルされる。
【0005】
[0005]各メーカーでは、リサイクル含有物入りの新規材料の製造および販売を目標とし、解重合を介して得られるモノマー単位、特にDMTおよびEGの利用の検討が続けられている。例えば、本開示の譲受人は、米国特許出願公開第2013/0041053号の全体において、ポリエステルの製造でDMT等のリサイクルモノマーと未使用モノマーとを組み合わせることができる旨を提示している。しかし本提示は、下記欠点を有する。まず、上記は、一般に約150℃~約250℃の温度で約0.5~約8時間、約0.0kPaゲージ圧~約414kPaゲージ圧(4.219kgf/cm2(60重量ポンド毎平方インチ、psig))の範囲の圧力でエステル化/エステル交換工程を実施することを想定している。このような条件は、フィードが、二酸、主にテレフタル酸、および1つまたは複数のグリコールのみを含み、意図的に添加されたエステルを実質的に含まない、現行のテレフタル酸系(TPA系)ポリエステルの製造プロセスに適した実施条件にそぐわない。したがって、リサイクルDMT(r-DMT)および/またはリサイクルエチレングリコール(r-EG)等のリサイクル材料を現行のTPA系プロセスに組み込むことによりリサイクル含有物を実現することは、プロセス設定およびそれに伴う製品の均一性や収率の操作および場合によっては崩壊なしでは可能でないと思われる。さらに、上記米国特許出願公開第2013/0041053号には、酸/エステルの混合フィードを使用する場合は、米国特許第5,290,631号に記載された三段階製造手順を採用すべきである旨が示されている。追加のプロセス工程は、追加の資本、製造および労働コストを伴う。
【0006】
[0006]したがって、既存のTPA系ポリエステル製造システムに、リサイクルDMT(r-DMT)およびリサイクルエチレングリコール(r-EG)等のリサイクル材料を効果的にかつコスト効率的に組み込むことによりリサイクル含有物入りのポリエステルを得る方法には、満たされないニーズが継続的に存在している。
【発明の概要】
【0007】
[0007]最初の態様では、本開示は、リサイクル含有物入りのポリエステルの製造方法であって、少なくとも1つの反応ゾーンに、r-DMT、エステル交換されたr-DMTおよびそれらの組み合わせからなる群より選択されるリサイクルエステル材料を含むリサイクルフィードを供給し、少なくとも1つの反応ゾーンにおいてリサイクル含有物を含む反応混合物を生成する工程、反応混合物を反応させてリサイクル含有物入りのポリエステルオリゴマー混合物を生成する工程、ならびにリサイクル含有物入りオリゴマー混合物を重縮合してリサイクル含有物入りのポリエステルを生成する工程を含む方法に関する。
【0008】
[0008]もう1つの態様では、本開示は、リサイクル含有物入りのポリエステルを製造するためのリサイクルフィード組成物に関する。本開示のリサイクルフィード組成物は、r-DMT、エステル交換されたr-DMTおよびそれらの組み合わせからなる群より選択されるリサイクルエステル材料と、リサイクルジメチルイソフタレート材料(r-DMI)、ならびにゲルマニウム材料、アンチモン材料およびそれらの組み合わせからなる群より選択される残留触媒材料のうち少なくとも1つとを含む。
【0009】
[0009]さらにもう1つの態様では、本開示は、リサイクル含有物入りのポリエステルに関する。
[0010]本開示のさらなる態様は、本明細書の開示内容および請求の範囲の通りである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0011]本明細書中において使用されている用語「ポリエステル」は、下記に限定されないが、全体として、ホモポリエステルだけでなくコポリエステル、テルポリエステル等を含むこと意味し、それらは一般に、二酸やそのエステル、または当該酸やエステルの混合物と、二官能性ヒドロキシル化合物(多くの場合ジオールやグリコールである)または当該ジオールやグリコールの混合物とを反応させることにより、一般的な意味で作製される。または、二官能性カルボン酸はヒドロキシカルボン酸でもよく、また、二官能性ヒドロキシル化合物は、2つのヒドロキシ置換基を有する芳香核でもよく、例えば、ヒドロキノンが挙げられる。本明細書中に説明されている、本開示の特に興味深い点は、ポリエステルが、メタノリシスまたは反応生成物のメタノリシスを伴うグリコリシスによる解重合を介し、メタノリシスにより、ジメチルテレフタレートおよびエチレングリコールのうち片方または両方を生成することである。
【0011】
[0012]最初の態様では、本開示は、リサイクル含有物入りのポリエステルの製造方法に関する。本開示の方法は、少なくとも1つの反応ゾーンに、r-DMT、エステル交換されたr-DMTおよびそれらの組み合わせからなる群より選択されるリサイクルエステル材料を含むリサイクルフィードを供給し、少なくとも1つの反応ゾーンにおいてリサイクル含有物を含む反応混合物を生成する工程、反応混合物を反応させてリサイクル含有物入りのポリエステルオリゴマー混合物を生成する工程、ならびにリサイクル含有物入りオリゴマー混合物を重縮合してリサイクル含有物入りのポリエステルを生成する工程を含む。
【0012】
[0013]1つまたは複数の実施形態では、反応工程は、反応混合物を少なくとも250℃の温度で、合計で30分~12時間の間、1時間~10時間の間、または1時間~8時間の間の平均滞留時間で反応させる工程を含む。1つまたは複数の実施形態では、反応工程は、反応混合物を250℃~350℃、250℃~300℃、260℃~300℃、または250℃~275℃の温度で反応させる工程を含む。
【0013】
[0014]上述したように、ポリエステルは、二酸やそのエステル、または当該酸やエステルの混合物と、二官能性ヒドロキシル化合物(多くの場合ジオールやグリコールである)、または当該ジオールやグリコールの混合物とを反応させることにより、一般的な意味で作製できる。したがって、当業者であれば、本開示のリサイクル含有物入りのポリエステルを生成するためには、少なくとも1つの反応ゾーンにおける反応混合物は、ポリエステルを生成するための当業界において公知の成分、例えば、(i)二酸やそのエステル、または当該酸やエステルの混合物、および(ii)ジオールやグリコール等の二官能性ヒドロキシル化合物、または当該ジオールやグリコールの混合物を含むことを理解されよう。1つまたは複数の実施形態では、反応混合物はリサイクル成分を含む。1つまたは複数の実施形態では、反応混合物はリサイクル成分および未使用成分を含む。本明細書で使用される用語「リサイクル」は、例えば、スクラップ、規格外品、廃棄物、ポストコンシューマーまたはポストインダストリー材料等のリサイクルを介して得られるものを意図している。本明細書で使用される用語「未使用」は、化石燃料由来原料やバイオ由来原料等の原料から製造されたもので、例えば、スクラップ、規格外品、廃棄物、ポストコンシューマーまたはポストインダストリー材料のリサイクルにより得られるものとは対照的なものを意図している。
【0014】
[0015]1つまたは複数の実施形態では、本開示の方法の供給工程は、さらに、少なくとも1つの反応ゾーンに、r-EG、リサイクルジエチレングリコール(r-DEG)およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるジオールリサイクル材料を供給する工程を含む。
【0015】
[0016]1つまたは複数の実施形態では、リサイクルフィードはさらにリサイクルジメチルイソフタレート材料(r-DMI)を含む。1つまたは複数の実施形態では、r-DMIは、リサイクルフィード中に、2000ppm以上、1500ppm以上、1000ppm以上、または500ppm以上の量で存在する。1つまたは複数の実施形態では、リサイクルフィードは、r-DMTの加水分解を介して生成されるr-TPAを含み得るリサイクルテレフタル酸材料(r-TPA)をさらに含むものであってよい。1つまたは複数の実施形態では、本開示の方法は、反応工程の前に、少なくとも若干量のr-DMTを加水分解してr-TPAを生成する工程を含んでもよい。
【0016】
[0017]1つまたは複数の実施形態では、リサイクルフィードはさらに残留触媒材料を含む。残留触媒材料は、r-DMTを生成するための解重合に付された材料ポリエステルを材料とするリサイクルフィード中に存在する1つまたは複数の材料や化合物であってよい。1つまたは複数の実施形態では、残留触媒材料は、ゲルマニウム材料、アンチモン材料およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるものであってよい。1つまたは複数の実施形態では、アンチモン材料は、リサイクルフィード中に5~500ppm、10~500ppm、20~500ppm、または5ppm以上の量で存在する。1つまたは複数の実施形態では、ゲルマニウム材料は、リサイクルフィード中に5~500ppm、10~500ppm、20~500ppm、または5ppm以上の量で存在する。
【0017】
[0018]1つまたは複数の実施形態では、リサイクルフィードはさらに、リサイクルジメチルイソフタレート材料(r-DMI)、ならびにゲルマニウム材料、アンチモン材料およびそれらの組み合わせからなる群より選択される残留触媒材料を含む。
【0018】
[0019]1つまたは複数の実施形態では、本開示の方法の供給工程は、さらに未使用フィードを少なくとも1つの反応ゾーンに供給する工程を含む。1つまたは複数の実施形態では、未使用フィードの少なくとも1つのジオールは未使用ジオールである。未使用フィードは、例えば未使用二酸、未使用ジエステル、例えばトリメリット酸無水物等の未使用分岐剤等の他の未使用材料を1つまたは複数含むこともできる。
【0019】
[0020]1つまたは複数の実施形態では、未使用フィードは実質的に未使用ジエステル成分を含まない。1つまたは複数の実施形態では、前記未使用フィードは実質的に未使用二酸成分を含まない。したがって、1つまたは複数の実施形態では、反応混合物は未使用ジオール成分を含むものであってよく、実質的に未使用二酸成分を含まないものであってよく、または、実質的に未使用ジエステル成分を含まないものであってよい。本明細書で使用される「実質的に含まない」との文言は、未使用フィードが意図的に添加されたいかなる未使用酸成分および/またはエステル成分も含まないとの意味を概して意図している。ただし、当業者であれば、未使用フィード中では、二酸/ジオールの二次的な反応により少量の未使用ジエステル化合物が生成され得ることを当然に理解するものといえる。したがって、1つまたは複数の実施形態では、未使用フィードの未使用ジエステル含有量を表す「実質的に含まない」との文言は、未使用フィードが、未使用フィード中の二酸とジエステルの総合計モルに対し、未使用ジエステル化合物を5モル%以下、4モル%以下、3モル%以下、2モル%以下、または1モル%以下含むとの意味を意図している。1つまたは複数の実施形態では、反応混合物は、反応混合物の総重量に対し、リサイクルフィードを少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、または100重量%含むものであってよい。
【0020】
[0021]この態様における1つまたは複数の実施形態では、反応ゾーンに未使用フィードを供給する工程において、未使用フィードを供給する工程は、リサイクルフィードを供給する前記工程に先行する。この態様における1つまたは複数の実施形態では、方法は、さらに、リサイクルフィードを供給する工程の前に、または並行して、反応ゾーンにおいて少なくとも若干量の未使用フィードを反応させて未使用ポリエステルオリゴマーを生成する工程を含む。
【0021】
[0022]1つまたは複数の実施形態では、供給工程のリサイクルエステル材料は、リサイクル含有物入りのポリエステル中に、1,4-ジカルボキシベンゼン当量の二酸の総モル数に対し、1~100モル%、25%~100%、90%~100%、または1%~50%を占める十分な量で添加される。反応混合物中のr-DMTおよび二酸成分(ポリエステル未使用フィード流体中に存在する場合)の相対量は、本開示の方法により生成される特定のポリエステルの種類、構造、およびリサイクル総含有量に影響することは当然理解される。
【0022】
[0023]1つまたは複数の実施形態では、反応ゾーンに未使用フィードを投入する工程は、リサイクルエステル材料を反応器に供給する工程の後に開始される。1つまたは複数の実施形態では、反応ゾーンに未使用フィードを投入する工程と、反応ゾーンにリサイクルフィードを供給する工程は、並行して、または同一の物理的位置において開始される。本開示では、反応ゾーンへのリサイクルフィードの供給、いくつかの実施形態では未使用フィードの供給により反応混合物を生成する工程の観点で全体的に上記に説明してきたが、フィード材料用の独立したフィード流体の数や流量は必ずしも限定されないことは当然理解される。非限定的な例として、方法は、リサイクルフィードと未使用フィードとを組み合わせてリサイクル/未使用複合フィードを形成する工程、および、少なくとも1つの反応ゾーンにリサイクル/未使用複合フィードを供給して反応混合物を生成する工程を含んでもよい。
【0023】
[0024]一部の代表的なTPA系ポリエステルの製造プロセスでは、主要な酸成分は、テレフタル酸であってよいが、任意でイソフタル酸をテレフタル酸よりも少ない量で若干量含むものであってよい。したがって、1つまたは複数の実施形態では、未使用フィードは未使用二酸成分を含む。1つまたは複数の実施形態では、未使用フィードは、未使用テレフタル酸および未使用イソフタル酸のうち片方または両方を含む。1つまたは複数の実施形態では、未使用フィードの未使用二酸成分は、未使用フィード中の二酸の総モル数に対し、少なくとも90モル%、少なくとも92モル%、少なくとも94モル%、少なくとも95モル%、少なくとも96モル%、または少なくとも98モル%の未使用テレフタル酸を含む。1つまたは複数の実施形態では、未使用フィードは、未使用フィード中の酸の総モル数に対し、10モル%以下、または5モル%以下の未使用イソフタル酸を含む。1つまたは複数の実施形態では、未使用フィードの二酸成分は、未使用フィード中の酸の総モル数に対し、100モル%のテレフタル酸を含む。
【0024】
[0025]TPA系ポリエステル製造プロセスは、さらに2つの残留ジオールを有するコポリエステルの製造において利用することができる。したがって、1つまたは複数の実施形態では、未使用フィードは1つまたは複数の未使用ジオールを含む。好適なジオールは当業界において周知であり、非限定的な例として、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリオキシメチレン、イソソルビド、1,3-および1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチルシクロブタンジオール(TMCD)を含む2,2,4,4-テトラアルキルシクロブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ならびにカテコール、ならびにそれらの異性体および組み合わせが挙げられる。1つまたは複数の実施形態では、未使用フィードの未使用ジオール成分は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール(TMCD)、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、ならびにそれらの異性体および組み合わせからなる群より選択される1つまたは複数のジオールを含む。
【0025】
[0026]供給工程のリサイクルエステル材料は、リサイクルジメチルテレフタレート(r-DMT)、エステル交換されたr-DMTおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される。本明細書において使用されるエステル交換されたr-DMTは、グリコール等の1つまたは複数のアルコールを用いてエステル交換したr-DMT、すなわち、r-DMTのメチルエステル官能基を、1つまたは複数のアルコール由来のエステル官能基で置換することにより得られるものも含めて意図している。したがって、1つまたは複数の実施形態では、本開示の方法は、前記供給工程の前に、少なくとも若干量のr-DMTと、1つまたは複数のアルコールとを予備反応させて、エステル交換されたr-DMTを生成する工程を含む。1つまたは複数の実施形態では、アルコールは、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリオキシメチレン、イソソルビド、1,3-および1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチルシクロブタンジオール(TMCD)を含む2,2,4,4-テトラアルキルシクロブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ならびにカテコール、ならびにそれらの異性体および組み合わせからなる群より選択されるジオールである。1つまたは複数の実施形態では、アルコールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、2,2,4,4-テトラメチル-1,4-シクロブタンジオール、ならびにそれらの異性体および組み合わせからなる群より選択されるジオールである。1つまたは複数の実施形態では、予備反応工程を金属系触媒の存在下で実施する。金属系触媒の金属の非限定的な例として、Sb、Ti、Sn、Mo、Ge、Zn、Co、Mn、Cd、Al、Li、Pb、Mg、Ca、Ag、Na、Ce、Ba、Hg、Fe、Cuおよびそれらの組み合わせが挙げられる。1つまたは複数の実施形態では、金属系触媒用の金属は、チタン、マンガン、および亜鉛、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される。1つまたは複数の実施形態では、予備反応工程における反応条件は、リサイクル材料のメチルエステル官能基の大部分(50モル%超)を、予備反応工程の1つまたは複数のグリコール由来の、例えば2,2,4,4-テトラメチル-1,4-シクロブタンジオールエステルの結合等のジオールエステル結合に置換するように選択される。1つまたは複数の実施形態では、予備反応工程における1つまたは複数のグリコールは、2,2,4,4-テトラメチル-1,4-シクロブタンジオールを含み、触媒はスズ触媒である。
【0026】
[0027]反応混合物中の反応物の一尺度は「モル比」として知られ、反応混合物中の二酸とエステルの合計モル量に対する、反応混合物中のジオールのモル量の比率である。
MR=Md/(Ma+Me)
(式中、MRはモル比であり、Mdは反応混合物中のジオールのモル数であり、Maは反応混合物中の酸のモル数であり、Meは反応混合物中のエステルのモル数である)
1つまたは複数の実施形態では、反応混合物のモル比は、4以下、3以下、2.5以下、2以下、1.5以下、もしくは1以下、または1~6、1.5~6、2~6、2.5~6、1~4、1.5~4、もしくは2~4である。
【0027】
[0028]出願人らは、TPA系製造プロセスにおいてより一般的であるプロセスパラメーター、装置、反応条件等を使用し、リサイクルモノマー、特にr-DMTと、他のリサイクル材料や未使用材料とを組み合わせて反応させてリサイクル含有物入りのポリエステルを生成することができる方法により、リサイクル含有物入りのポリエステルを効果的にかつ効率的に製造できることを予想外に発見した。したがって、1つまたは複数の実施形態では、本開示の方法は、反応混合物を少なくとも250℃、少なくとも260℃、少なくとも270℃、または少なくとも275℃の温度で、合計で30分~12時間の間の平均滞留時間で反応させる工程を含む。1つまたは複数の実施形態では、本開示の方法は、反応混合物を少なくとも250℃、少なくとも260℃、少なくとも270℃、または少なくとも275℃の温度で、合計で4時間以下、3時間以下、2時間以下、または1時間以下の平均滞留時間で反応させる工程を含む。
【0028】
[0029]本明細書で記載されている方法は、初期反応混合物が生成される単一の(少なくとも1つの)反応ゾーンに関するが、連続してもよい複数の反応ゾーン、および/または、連続してもよい複数の反応器が使用できることは当然理解される。1つまたは複数の実施形態では、反応器は1つまたは複数の反応ゾーンを定義できるが、1つまたは複数の実施形態では、反応ゾーンは1つまたは複数の反応器を含むものであってよい。反応ゾーンにおける反応器の数は、4以下、3以下、2以下、または1以下であってよい。反応ゾーンは、メチルまたは酸末端とグリコールとのモノマー反応により、メチルまたは酸末端のエステル化またはエステル交換が行われる(CSTRやパイプ反応器等の)容器、区域、または領域で定義される。したがって、反応工程の平均滞留時間の合計は、全ての反応ゾーンおよび全ての反応器における平均滞留時間の総合計を含むことを意図している。平均滞留時間の「平均」としているのは、分子数を基準とした平均滞留時間が、反応混合物中の総分子数で平均をとった値であることを反映するためである。1つまたは複数の実施形態では、反応工程を金属系触媒の存在下で実施する。金属系触媒の金属の非限定的な例としては、Sb、Ti、Sn、Mo、Ge、Zn、Co、Mn、Cd、Al、Li、Pb、Mg、Ca、Ag、Na、Ce、Ba、Hg、Fe、Cuおよびそれらの組み合わせが挙げられる。1つまたは複数の実施形態では、金属系触媒用の金属は、チタン、マンガン、亜鉛、およびスズ、ならびにそれらの組み合わせからなる群より選択される。触媒の量は、反応温度等のいくつかの因子に応じて変更できる。1つまたは複数の実施形態では、触媒は、反応混合物に対し、1~100ppm、1~50ppm、1~40ppm、1~30ppm、1~20ppm、1~15ppm、1~10ppm、1~5ppm、1~4ppm、1~3ppm、または1~2ppm部の量で金属が存在するものであってよい。
【0029】
[0030]本開示の方法の反応工程は、反応混合物を反応させ、リサイクル含有物入りのポリエステルオリゴマー混合物を生成する工程を含む。1つまたは複数の実施形態では、リサイクル含有物入りオリゴマー混合物は1~30、1~25、1~20、または1~15の重合度を有する。当業者であれば、連続した複数の反応ゾーンを含み得る実施形態において、連続ゾーンでは重合度が増加する可能性があることを当然に理解するものといえる。
【0030】
[0031]1つまたは複数の実施形態では、本開示の方法は、廃ポリエステルのリサイクルプロセスの態様として実施することもできる。したがって、1つまたは複数の実施形態では、本開示の方法は、供給工程の前に、廃ポリエステルを解重合してr-DMTを含む解重合物を生成する工程をさらに含む。1つまたは複数の実施形態では、解重合工程ではr-EGを含む解重合物が生成される。解重合工程により、リサイクルジメチルテレフタレート(r-DMT)および任意でリサイクルエチレングリコール(r-EG)を含む解重合物の流体を生成することができる。本明細書において使用される「廃ポリエステル」との文言は、限定されないが、ポストコンシューマーポリエステル材料、ポストインダストリーポリエステル材料、ポリエステルスクラップ、ポリエステル屑、および規格外品、および返品ポリエステル材料を含むことを意図している。
【0031】
[0032]当業者であれば、解重合物の流体は、廃ポリエステルの特有の組成に少なからず由来する、いくつかの材料を含み得ることを当然に理解するものといえる。したがって、1つまたは複数の実施形態では、解重合工程は、さらに解重合物の流体からr-DMTを単離してr-DMTリッチな流体を生成する工程を含む。
【0032】
[0033]ポリエステルを解重合する方法、技術、およびシステムは、当業界において周知である。特に好適な方法はメタノリシスである。メタノリシス解重合は、当業界において周知であり、既に本明細書中に、また、少なくとも本明細書に既に参照により組み込まれた参照文献中に記載されている。ポリエステルのリサイクルプロセスの全体は、本開示の譲受人に譲渡された米国特許出願公開第U.S.2013/0041053号に記載されており、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で使用される用語「メタノリシス」は、メタノリシス工程を介してr-DMTを生成する工程を含む、いわゆるグリコリシス方法を包含することを意図している。
【0033】
[0034]本開示の方法は、さらに、リサイクル含有物入りオリゴマー混合物を重縮合し、リサイクル含有物入りのポリエステルを生成する工程を含む。重縮合はポリエステル製造においてよく知られた工程であり、この工程では二酸とジオールとの直接エステル化、および/または、エステルのエステル交換により生成されるエステルやエステルオリゴマーを縮合により重合させることでポリエステルが生成され、通常、重縮合条件下ですぐに揮発し、系から排除されるジオールが脱離する。重縮合は、目的の重合度を有するポリマーが得られるまで、通常約230℃~約350℃、好ましくは約250℃~約310℃、最も好ましくは約260℃~約300℃の範囲の温度で、約0.1~約6時間、または好ましくは約0.2~約2時間、真空中で実施できる。なお、重合度は、インヘレント粘度により決定することができる。ポリマーは、固化状態でさらに重合に付すこともできる。
【0034】
[0035]上述したように、本開示の方法の供給工程のリサイクルフィードは、r-DMT、エステル交換されたr-DMTおよびそれらの組み合わせからなる群より選択されるリサイクルエステル材料に加え、リサイクルジメチルイソフタレート材料(r-DMI)および/または残留触媒材料等の追加成分も含むことができる。したがって、もう1つの態様では、本開示は、リサイクル含有物入りのポリエステルを製造するためのリサイクルフィード組成物に関する。本開示のリサイクルフィード組成物は、r-DMT、エステル交換されたr-DMTおよびそれらの組み合わせからなる群より選択されるリサイクルエステル材料と、リサイクルジメチルイソフタレート材料(r-DMI)および残留触媒材料のうち少なくとも1つとを含む。1つまたは複数の実施形態では、リサイクルフィード組成物はリサイクルジメチルイソフタレート材料(r-DMI)を含む。1つまたは複数の実施形態では、リサイクルフィード組成物は残留触媒材料を含む。1つまたは複数の実施形態では、リサイクルフィード組成物はリサイクルジメチルイソフタレート材料(r-DMI)および残留触媒材料を含む。1つまたは複数の実施形態では、リサイクルフィード組成物は、例えばr-DMTの加水分解により生成されるr-TPA等のr-TPAを含む。
【0035】
[0036]1つまたは複数の実施形態では、残留触媒材料は、ゲルマニウム材料、アンチモン材料およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるものであってよい。1つまたは複数の実施形態では、r-DMIはリサイクルフィード組成物に対し、3000ppm以上、2000ppm以上、1500ppm以上、または1000ppm部以上の量で存在するものであってよい。1つまたは複数の実施形態では、残留触媒材料は、リサイクルフィード組成物に対し、5~500ppm部の量で存在するものであってよい。
【0036】
[0037]驚くべきことに、出願人らはまた、本開示の方法により、特有かつ有用な性質を有する、リサイクル含有物入りポリエステルが得られることも発見した。したがって、もう1つの態様では、本開示はリサイクル含有物入りのポリエステル、またはリサイクル含有物入りポリエステルに関し、リサイクル含有物入りポリエステル中に存在するカルボキシル末端数は25meq/kgポリマー未満、20meq/kgポリマー未満、または15meq/kgポリマー未満である。「カルボキシル末端」は、ポリエステルマクロ分子の末端に存在する遊離カルボキシル基(-COOH)を意味する。カルボキシル末端は、例えば溶解したポリマーサンプルを用いた酸-塩基滴定により測定できる。好適な測定技術では、秤量したポリエステルポリマーのサンプルを高温のオルト-クレゾール(120°+/-5℃)に溶解し、冷却後、ブロモクレゾールグリーン指示薬溶液を含む塩化メチレンで希釈する。自動滴定装置は、光学的な方法により終点を決定し、結果を算出する。
【0037】
[0038]もう1つの態様では、本開示はリサイクル含有物入りのポリエステル、またはリサイクル含有物入りポリエステルに関し、リサイクル含有物入りポリエステルのジエチレングリコール含有量は、全てポリマーの総重量に対し、2.0重量%未満、1.8重量%未満、1.6重量%未満、1.5重量%未満、1.4重量%未満、1.2重量%未満、1.0重量%未満、0.8重量%未満、または0.6重量%未満である。「ジエチレングリコール含有量」は、リサイクル含有物入りポリマー中に存在するジエチレングリコール[(HOCH2CH2)2O]の量を意味する。1つまたは複数の実施形態では、ジエチレングリコール含有量のうち少なくとも若干量は「in-situ」(その場で得られる)ジエチレングリコール含有量であり、ポリマーの生成で使用されるジエチレングリコールが(別途生成された、ポリマーの生成プロセス中に意図的に加えるのとは対照的に)ポリマーの生成プロセス中に生成されることを意味する。ジエチレングリコール含有量は、例えば、ポリマーを加水分解した後、既存のGC技術により、またはプロトンNMR技術により測定できる。
【0038】
[0039]下記実施例では、本開示のポリエステルの作製方法および評価方法をさらに説明するが、それらは単なる例示を意図しており、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。別段指示がない限り、部は重量部であり、温度は摂氏で表される温度または室温であり、圧力は大気圧またはその近傍である。
【0039】
[0040]本開示はさらに、本開示の好ましい実施形態の下記実施例により説明できるが、これらの実施例は単に説明を目的として組み込まれるものであり、別段特に指示がない限り、本開示の範囲を限定することを意図するものでない旨を理解されたい。
【実施例】
【0040】
実施例1-オリゴマー合成編
[0041]高分子量ポリマーへのビルドアップに使用されるオリゴマーを、高温オイルで加熱した分縮器を備える7.571リットル(2ガロン)のステンレス鋼オートクレーブ中で合成した。表1に示された実験群における反応プロセスは以下の通りであった。原料を反応器に投入して密閉し、260℃、2.109kgf/cm2(30psig)に加熱加圧し、分縮器を130℃に加熱し、系内がその温度に到達した時点から8時間、反応を進行させた。その後、最終材料がIPAで5%改質されたPETの組成になるように反応器を加熱し、全ての場合において、最終ポリマー中の含有量が15ppmになるようにテトライソプロポキシドチタン触媒を加えた。
【0041】
【0042】
[0042]その後、500mLの1つ口丸底フラスコにオリゴマーを100g投入した。目標量のアンチモン触媒をエチレングリコール溶液としてフラスコに加えた。6.35cm(2.5インチ)径の単独撹拌翼に取り付けた0.635cm(1/4インチ)径シャフトからなるステンレス鋼撹拌ユニットをフラスコ中に挿入した後、フラスコにガラスポリマーヘッドをはめ込んだ。24/40径の挿入部を備える標準テーパーからなるポリマーヘッドを反応フラスコに接続した。フラスコ口に対して約45°の位置にある側管は揮発性物質の除去を可能とし、撹拌シャフトが通るガラス管部分はフラスコ口の上部に延びている。撹拌シャフトが通る管部分は、撹拌シャフト周りの気密性を保つため、Teflonブッシングとゴムホースをはめ込んだ。シャフトは、自在「ユニバーサル」ジョイントにより接続された1/8馬力モーターを用いて回転させた。側管は、ドライアイスで冷却した冷却器と真空ポンプからなる真空システムに接続した。反応フラスコの内圧は、真空流中に窒素を流入させることにより制御した。反応フラスコは溶融金属浴を用いて加熱した。全ての反応パラメーターは、分散データ収集制御システムを用いて監視し、制御した。表2に自動制御システムによって使用される反応シーケンスを示す。ステージ8における変更は、より低粘度の材料を作製するために適用され、固化を通じて続行された。
【0043】
【0044】
[0043]重合後、各ポリマーは撹拌シャフト翼から取り除かれ、目開きが6mmである篩を通過可能な程度に粒子径が十分小さくなるようハンマーミルで粉砕した。全ての試験及び固化工程は粒状物で実施した。
【0045】
[0044]下記表3は、TPA系プロセスに、異なる量のDMTを添加して作製した材料の最終IVの実施例の詳細である。表2におけるDMT%は、TPA単位をDMTで置換する反応の際のmol%を意味する。本明細書におけるポリエステルのインヘレント粘度は、25℃、0.5g/dL濃度の60/40(wt/wt)フェノール/テトラクロロエタンで測定し、dL/gで表される。材料の金属含有量は、ASTM D6247-18と同様の方法で蛍光X線により測定した(目的のサンプルマトリックスおよび分析対象物に合わせて変更を加えた)。系に加えたDMTの使用及びその量は材料のIV増加に悪影響を及ぼすものではない。
【0046】
【0047】
[0045]IVの上昇に対しDMTの及ぼすと思われる効果を測定するため、標準の固化工程プロセス(220℃、1mmHgで24時間保持)を実施した。表4に示された結果は、樹脂系プロセスと同様にDMTをPTA系プロセスに加えても悪影響を及ぼさないことを実証している。これは、固化工程におけるメチル末端残基の反応性の低さを考慮すれば予想外の結果である。理論に拘束されないが、第一反応器内の温度の高さおよび滞留時間の長さが、固化状態のIV増加をもはや阻害しなくなる程度にメチル末端の含有量を低減した可能性があると考えられる。
【0048】
【0049】
[0046]疑念を避けるために、本開示の一態様の特徴または要素に関する本明細書の情報および説明は、本開示の他の態様に関して説明される場合であっても当然適用でき、それらの特徴および要素をサポートするものとしても信頼できることを明示的に定める。
【0050】
[0047]本開示の様々な実施形態の前述の説明は、例示及び説明のために提示されたものである。それは網羅的であること、または、本開示を開示された厳密な実施形態に限定することを意図するものではない。上記の教示に照らして多くの変更または変形が可能である。議論された実施形態は、当業者が様々な実施形態において本開示を利用することを可能にするために、本開示の原理及びその実際的な応用の最良の説明を提供するために、考えられる特定の用途に適する様々な変更とともに選択され、記載された。全てのそのような変更及び変形は、それらが公正に、法的に、公平に権利を与えられる範囲に従って解釈されるときに、添付の特許請求の範囲によって決定される本開示の範囲内にある。
【国際調査報告】