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特表2023-506959マルエージング鋼の付加製造のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】マルエージング鋼の付加製造のための方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/32 20210101AFI20230213BHJP
   B22F 10/34 20210101ALI20230213BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20230213BHJP
   B22F 10/36 20210101ALI20230213BHJP
   B22F 1/065 20220101ALI20230213BHJP
   B22F 1/052 20220101ALI20230213BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20230213BHJP
   C22C 38/50 20060101ALI20230213BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20230213BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230213BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20230213BHJP
   B22F 9/08 20060101ALN20230213BHJP
【FI】
B22F10/32
B22F10/34
B22F10/28
B22F10/36
B22F1/065
B22F1/052
C22C38/00 302N
C22C38/50
B33Y70/00
B33Y10/00
B22F1/00 T
B22F9/08 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537453
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(85)【翻訳文提出日】2022-08-09
(86)【国際出願番号】 IB2019061158
(87)【国際公開番号】W WO2021123894
(87)【国際公開日】2021-06-24
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス,アナ
(72)【発明者】
【氏名】モリ,ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】デル・リオ・フェルナンデス,ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ステーンベルヘ,ネレ
(72)【発明者】
【氏名】デュプレ,ローデ
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4K017AA04
4K017BA06
4K017BB04
4K017BB05
4K017BB06
4K017BB09
4K017BB13
4K017BB16
4K017CA01
4K017CA07
4K017DA09
4K017EB00
4K017EB07
4K017FA05
4K017FA11
4K017FA14
4K017FA15
4K017FA17
4K018AA24
4K018AA30
4K018BA16
4K018BB03
4K018BB04
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
4K018KA63
(57)【要約】
本発明は、重量含有量で表される以下の元素、6%≦Ni≦14%、5%≦Cr≦10%、0.5%≦Si≦2.5%、0.5%≦Ti≦2%、C≦0.04%を含み、及び任意選択的に、0.5%≦Cu≦2%を含有し、残部がFe及び精錬から生じる不可避不純物である組成を有する金属粉末から付加製造部品を製造するための方法であって、金属粉末が、面積分率で98%を超える体心立方晶相を含む微細構造を有し、方法が、金属粉末の少なくとも一部がアルゴン以外の1種の不活性ガス又はアルゴン以外の複数種の不活性ガスの組み合わせから実質的に構成される雰囲気中で溶融されるステップを含む、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量含有量で表される、以下の元素
6%≦Ni≦14%、
5%≦Cr≦10%、
0.5%≦Si≦2.5%、
0.5%≦Ti≦2%、
C≦0.04%
を含み、及び任意選択的に
0.5%≦Cu≦2%
を含有し、残部がFe及び精錬から生じる不可避不純物である組成を有する金属粉末から付加製造部品を製造するための方法であって、
当該金属粉末が、面積分率で98%を超える体心立方晶相を含む微細構造を有し、
当該方法が、該金属粉末の少なくとも一部がアルゴン以外の1種の不活性ガス又はアルゴン以外の複数種の不活性ガスの組み合わせから実質的に構成される雰囲気中で溶融されるステップを含む、方法。
【請求項2】
アルゴン以外の1種の不活性ガスが、窒素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
雰囲気が、1000ppm未満の酸素を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
アルゴン以外の1種の不活性ガス又はアルゴン以外の複数種の不活性ガスの組み合わせが、気密封止チャンバ中にある、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
付加製造部品が、レーザ粉末床融解(LPBF)によって製造される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
レーザ出力が、80W~200Wである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
線形エネルギー密度(LED)が、175~550Nに含まれる、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
体積エネルギー密度(VED)が、100~510J/mmに含まれる、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルエージング鋼を製造するための方法、特にそれらの付加製造のための方法に関する。本発明はまた、マルエージング鋼を製造するための金属粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
重量百分率で、約18%のニッケル、9%のコバルト、5%のモリブデン、0.5%のチタン及び0.1%のアルミニウムを含有し、1800MPaを超える弾性限界を達成するように処理されたマルエージング鋼ストリップから多数の部品が製造される。これらのストリップは、熱間圧延及び冷間圧延によって得られる。次いで、ストリップ又はストリップから切り出された部品は、約500℃の熱処理によって硬化される。残念ながら、この方法によって得られる部品形状は、何らかの形で制限される。
【0003】
したがって、本発明の目的は、マルエージング鋼を付加製造するための方法を提供することによって、従来技術の欠点を改善することである。
【発明の概要】
【0004】
この目的のために、本発明の第1の主題は、重量含有量で表される、以下の元素
6%≦Ni≦14%
5%≦Cr≦10%
0.5%≦Si≦2.5%
0.5%≦Ti≦2%
C≦0.04%
を含み、及び任意選択的に
0.5%≦Cu≦2%
を含有し、残部がFe及び精錬から生じる不可避不純物である組成を有する金属粉末から付加製造部品を製造するための方法であって、
金属粉末が、面積分率で98%を超える体心立方晶相を含む微細構造を有し、
方法が、金属粉末の少なくとも一部がアルゴン以外の1種の不活性ガス又はアルゴン以外の複数種の不活性ガスの組み合わせから実質的に構成される雰囲気中で溶融されるステップを含む、方法からなる。
【0005】
本発明による方法はまた、個別に又は組み合わせて考慮される、以下に列挙される任意選択的な特徴を有し得る:
- アルゴン以外の不活性ガスは、窒素である、
- 雰囲気は、1000ppm未満の酸素を含む、
- アルゴン以外の1種の不活性ガス又はアルゴン以外の複数種の不活性ガスの組み合わせは、気密封止チャンバ中にある、
- 付加製造部品は、レーザ粉末床融解(LPBF)によって製造される、
-レーザ出力は、80W~200Wである、
- 線形エネルギー密度(LED)は、175~550Nに含まれる、
- 体積エネルギー密度(VED)は、100~510J/mmに含まれる。
【0006】
本発明の他の特徴及び利点は、次の説明においてより詳細に説明される。
【0007】
本発明は、純粋に説明の目的で提供され、決して限定的であることを意図しない以下の説明を読むことによってよりよく理解されるであろう。
【0008】
ニッケルは、6~14重量%の含有量で本発明による組成物中に存在する。最終部品の完全なマルテンサイト構造を得るためには、少なくとも6重量%のNiが必要である。14重量%を超えると、残留オーステナイトが形成される傾向があり、これにより強度が低下する。
【0009】
クロム含有量は、鋼の耐食性を向上させるために5~10重量%の間に含まれる。
【0010】
ケイ素含有量は、G相の析出を確実にするために0.5~2.5重量%の間に含まれる。2.5重量%を超えると、Siは、高温でのオーステナイト形成、したがってマルテンサイト形成を防止する傾向がある。
【0011】
チタン含有量は、0.5~2重量%の間に含まれる。析出強化を確実にするためには、少なくとも0.5重量%が必要である。Tiは、生産性の理由から2重量%に制限される。
【0012】
炭素は、衝撃強度、延性及び靱性を大幅に低下させる炭化チタンの形成を回避するために、0.04重量%未満に維持される。好ましくは、C含有量は、0.015重量%未満である。
【0013】
任意選択的に、銅は、0.5~2重量%の間に含まれる含有量で添加される。Tiと0.5重量%を超えるCuとの組み合わせは、析出強化をさらに向上させる。Cuリッチクラスタは、他の金属間化合物の共析出、特にG相の析出を高めると考えられる。
【0014】
残部は、鉄及び精錬に起因する不可避不純物からなる。アルミニウム、ヒ素、ビスマス、カドミウム、コバルト、マグネシウム、マンガン、窒素、リン、鉛、硫黄、アンチモン、スズ、酸素、バナジウムが主な不純物である。それらは、意図的に添加されていない。それらは、原料として使用される合金鉄及び/又は純粋な元素中に存在する可能性がある。それらの含有量は、好ましくは、微細構造の有害な変化を回避するために、並びに/又は結晶粒径及び脆性の増加を回避するために制御される。したがって、各不純物の含有量は、0.05重量%に制限されるべきである。
【0015】
金属粉末は、面積分率で98%を超える体心立方晶相を含む微細構造を有する。この相は、マルテンサイト及び/又はフェライトであり得る。それは、XRD又は電子ビーム後方散乱回折(EBDS)によって測定することができる。
【0016】
粉末の真球度は高い。真球度SPHTは、Camsizerによって測定することができ、4πA/PとしてISO 9276-6で定義され、式中、Aは粒子投影によって覆われた測定面積であり、Pは粒子投影の測定された周囲/円周である。1.0の値は、真球を示す。粉末の平均真球度は、少なくとも0.75である。この真球度のおかげで、金属粉末は、十分に流動性である。その結果、付加製造がより容易になる。
【0017】
好ましくは、金属粉末粒子の少なくとも80%は、20μm~260μmの範囲のサイズを有する。
【0018】
ISO13320:2009又はASTM B822-17に従ってレーザ回折によって測定される粒径分布は、好ましくは次の要件(μm)を満たす:
25≦D10≦35
80≦D50≦100
170≦D90≦280
金属粉末は、1.25未満のHausner比及び21%未満のCarr指数を有する良好な流動性を有する。Hausner比(タップ密度/かさ密度)及びCarr指数((タップ密度-かさ密度)/タップ密度×100%)は、ASTM B527-15;ISO 3953:2011に従って測定したタップ密度から得られる。
【0019】
粉末は、最初に純粋な元素及び/又は合金鉄を原料として混合及び溶融することによって得ることができる。
【0020】
純粋な元素は、これらの不純物が結晶化を容易にする可能性があるため、合金鉄に由来する不純物が多すぎることを回避するために通常好ましい。それにもかかわらず、本発明の場合、合金鉄に由来する不純物は、微細構造の達成に有害ではないことが観察された。
【0021】
合金鉄は、クロム、アルミニウム、マンガン、モリブデン、ケイ素、チタンなどの1つ以上の他の元素の高い割合を有する鉄の様々な合金を指す。主な合金は、FeAl(通常40~60重量%のAlを含む)、FeB(通常17.5~20重量%のBを含む)、FeCr(通常50~70重量%のCrを含む)、FeMg、FeMn、FeMo(通常60~75重量%のMoを含む)、FeNb(通常60~70重量%のNbを含む)、FeNi、FeP、FeSi(通常15~90重量%のSiを含む)、FeSiMg、FeTi(通常45~75重量%のTiを含む)、FeV(通常35~85重量%のVを含む)、FeW(通常70~80重量%のMoを含む)である。
【0022】
純粋な元素は、特に、鉄、銅、ニッケルなどの純粋な金属であり得る。
【0023】
当業者は、異なる合金鉄及び純粋な元素を混合して標的組成物に到達する方法を知っている。
【0024】
好ましくは、混合物は、FeCr合金鉄、FeSi合金鉄、FeTi合金鉄、Cu、Ni及びFeを含む。
【0025】
純粋な元素及び/又は合金鉄の適切な割合での混合によって組成物が得られると、組成物は、その液相線温度より少なくとも210℃高い温度で加熱される。この過熱のおかげで、るつぼ中の溶融物の凝固が回避される。さらに、溶融した組成物の粘度の低下は、その特定の構造と共に、適正な粒径分布を有する、サテライトなしの高い真球度を有する粉末を得るのに役立つ。とはいえ、表面張力が温度と共に増加するので、組成物をその液相線温度より350℃を超える温度で加熱しないことが好ましい。
【0026】
好ましくは、組成物は、その液相線温度より215~250℃高い温度で加熱される。
【0027】
本発明の一変形例では、組成物は、1640~1720℃の間で加熱され、これは粘度低下と表面張力上昇との間の良好な妥協点を表す。
【0028】
次いで、溶融組成物は、溶融金属流をオリフィス、ノズルに中程度の圧力で押し込むことによって、及びガスのジェット(ガス霧化)又は水のジェット(水霧化)を衝突させることによって、微細な金属液滴に霧化される。ガス霧化の場合、ガスは、ノズルを出る直前に金属流に導入され、同伴ガスが(加熱により)膨張して大きな収集体積の霧化塔に出るときに乱流を生成する働きをする。後者は、溶融金属ジェットのさらなる乱流を促進するためにガスで満たされる。金属液滴は、霧化塔において落下する間に冷却される。ガス霧化は、真円度が高く、サテライトの量が少ない粉末粒子の生産に有利であるため好ましい。
【0029】
霧化ガスは、好ましくは、アルゴン又は窒素である。それらは両方とも、溶融粘度を他のガス、例えばヘリウムよりもゆっくりと増加させ、これにより、より小さい粒径の形成が促進される。それらはまた、化学的性質の純度を制御し、望ましくない不純物を回避し、粉末の良好なモルホロジーにおいて役割を果たす。窒素のモル重量が、アルゴンの39.95g/モルと比較して14.01g/モルであるので、窒素を用いるよりもアルゴンを用いる方がより微細な粒子を得ることができる。一方、窒素の比熱容量は、アルゴンの0.52と比較して1.04J/(gK)である。そのため、窒素は、粒子の冷却速度を増加させる。窒素は、粉末による窒素取り込みによってTiNナノ析出物の形成を向上させることができるので、この場合に好ましい。
【0030】
ガス圧は、金属粉末の粒径分布及び微細構造に直接影響を及ぼすため、重要である。特に、圧力が高いほど、冷却速度は高くなる。その結果、ガス圧は、粒径分布を最適化し、微細構造の形成を有利にするために、15~30バールの間に設定される。好ましくは、ガス圧は、サイズが付加製造技術と最も適合する粒子の形成を促進するために18~22バールの間に設定される。
【0031】
ノズル直径は、溶融金属流量、したがって粒径分布及び冷却速度に直接影響を及ぼす。最大ノズル直径は、平均粒径の増加及び冷却速度の低下を制限するために4mmに制限される。ノズル直径は、粒径分布をより正確に制御し、特定の微細構造の形成を有利にするために、好ましくは2.5~3.5mmの間である。
【0032】
本発明の一変形例によれば、湿度取り込みの場合、霧化によって得られた金属粉末は、その流動性をさらに向上させるために乾燥される。乾燥は、真空チャンバ中で50℃~100℃の間で1時間行うことが好ましい。
【0033】
霧化によって得られた金属粉末は、そのまま使用することができるか、又は後で使用される付加製造技術によりよく適合するサイズの粒子を保つためにふるい分けすることができる。例えば、レーザ粉末床融解による付加製造の場合、20~63μmの範囲が好ましい。レーザ金属蒸着又は直接金属蒸着による付加製造の場合、45~150μmの範囲が好ましい。
【0034】
本発明による金属粉末で作製された部品は、レーザ粉末床融解(LPBF)、直接金属レーザ焼結(DMLS)、電子ビーム溶融(EBM)、選択的熱焼結(SHS)、選択的レーザ焼結(SLS)、レーザ金属蒸着(LMD)、直接金属蒸着(DMD)、直接金属レーザ溶融(DMLM)、直接金属印刷(DMP)、レーザクラッディング(LC)、材料噴射、バインダ噴射、熱溶解積層法(FDM)などの付加製造技術によって得ることができる。
【0035】
驚くべきことに、付加製造によって得られた部品は、製造工程中に使用される不活性ガスに応じて大きく変動する相対密度を示すことが観察された。不活性ガスとは、特に窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン及びラドンを意味し、不活性ガス又は不活性ガスの組み合わせが、不活性化ステップの終了時に残留不純物として1000ppmまでのO2を含むことができることが分かっている。特に、Arが不活性ガスとして使用されるか、又は不活性ガスの混合物の一部として添加されるとすぐに、製造部品の相対密度が低下する。より詳細には、NをArで置き換えることは、相対密度に強く影響し、他のすべての工程パラメータは等しい。
【0036】
好ましくは、製造工程中に溶融されるすべての金属粉末は、実質的にアルゴン以外の1種の不活性ガス又はアルゴン以外の複数種の不活性ガスの組み合わせから構成される雰囲気中で溶融される。言い換えれば、金属粉末の少なくとも一部が溶融されるすべのステップは、実質的にアルゴン以外の1種の不活性ガス又はアルゴン以外の複数種の不活性ガスの組み合わせから構成される雰囲気中で実行される。
【0037】
使用される技術に応じて、不活性ガスは、もしあれば、製造工程中に使用される気密封止チャンバ中に存在することができ、又は溶融プールをシュラウドすることができる。
【0038】
この驚くべき結果は、レーザー粉末床融解(LPBF)によって部品を製造するときに特に観察された。
【0039】
LPBFは、レイヤーアポンレイヤー付加製造技術である。金属粉末の薄層は、垂直(Z)軸に移動するインデックステーブルに固定された基板プラットフォーム、通常は金属上に、コーティング機構を使用して均一に分配される。これは、厳密に制御された雰囲気を含有するチャンバの内部で起きる。各層が分配されると、部品形状の各2Dスライスは、粉末を選択的に溶融することによって融着される。これは、高出力レーザビーム、通常はイッテルビウムファイバレーザを用いて実現される。レーザエネルギーは、トラック又はストリップの形態の粒子の完全な溶融(溶接)を可能にするのに十分な強度である。基本的に、トラックが完了すると、工程は、ハッチ間隔(h)だけ第1のトラックから分離された次のトラックで繰り返される。この工程は、部品が完成するまで層ごとに繰り返される。オーバーハング形状は、前の層からの未溶融の粉末によって支持される。LPBFで使用される主な工程パラメータは、層厚、ハッチ間隔、走査速度及びレーザ出力である。工程が完了した後、使い残しの粉末は、ふるい分けされて再使用される。
【0040】
レーザ粉末床融解(LPBF)によって付加製造部品を製造するための方法は、本発明による粉末を用いて粉末層を形成する第1のステップを含む。好ましくは、粉末層は、40μm未満である。40μmを超えると、レーザは、すべての層厚で粉末を溶融しない可能性があり、部品に多孔性をもたらす可能性がある。好ましくは、層厚は、粉末の溶融を最適化するために10~30μmの間に保たれる。
【0041】
第2のステップでは、集束レーザビームは、以下に詳述する工程条件で粉末層の少なくとも一部を溶融することによって成形層を形成する。
【0042】
LPBFの場合、印刷部品の各層は、実質的にアルゴン以外の1種の不活性ガス又はアルゴン以外の複数種の不活性ガスの組み合わせから構成される雰囲気中で少なくとも部分的に溶融される。言い換えれば、方法は、集束レーザビームが実質的にアルゴン以外の1種の不活性ガス又はアルゴン以外の複数種の不活性ガスの組み合わせから構成される雰囲気中で金属粉末の少なくとも一部を溶融することによって連続成形層を形成するステップを含む。
【0043】
レーザ出力は、好ましくは最大200Wに制限される。好ましくは、レーザ出力は、すべての層厚における溶融を容易にするために80Wを超えて設定される。好ましくは、レーザスポットは、約55μm幅である。
【0044】
走査速度は、好ましくは300mm/s~1000mm/sの間の間に含まれる。300mm/s未満では、レーザによって提供される過剰なエネルギーは、スパッタをもたらす可能性があり、スパッタは、粉末床の外側に適切に引き出されない場合、粉末層上に堆積し、印刷部品に空隙を生成する。1000mm/sを超えると、レーザによって粉末に提供されるエネルギーは、すべての層厚で粉末を溶融するのに十分ではない可能性がある。より好ましくは、走査速度は、0.4~0.9m/sの間に含まれ、これにより、印刷部品の品質がさらに向上される。
【0045】
線形エネルギー密度(LED)は、好ましくは160~890Nの間に含まれる。LEDは、m/sで表されるレーザ出力と走査速度との比として定義される。160N未満では、LEDは、(キーホリング(keyholing)のために)部品を適切に印刷するのに十分ではない可能性がある。890Nを超えると、レーザによって提供される過剰なエネルギーは、スパッタをもたらす可能性があり、スパッタは、粉末層の外側に適切に引き出されない場合、粉末層上に堆積する。そのような堆積物は、印刷部品に空隙を生成する。LEDは、キーホリング、ボーリング及びスパッタの発生をさらに制限するために、より好ましくは180~550の間、さらにより好ましくは200~425の間に含まれる。
【0046】
チャンバ中に導入される不活性ガスのガス流量は、粉末溶融に発生する可能性のあるスパッタが粉末床から効率的に引き出されるように、好ましくは2m/sを超える。したがって、印刷部分における多孔性が回避される。より好ましくは、ガス流量は、2~3.5m/sの間に含まれる。
【0047】
ハッチ間隔は、好ましくは30~100μmの間に含まれる。30μm未満では、印刷部品の各点が複数回再溶融される可能性があり、これは過熱につながる可能性がある。100μmを超えると、未溶融の粉末が2つのトラックの間に閉じ込められる可能性がある。より好ましくは、ハッチ間隔は、70~100μmの間に含まれる。
【0048】
体積エネルギー密度(VED)は、好ましくは100~510J/mmの間、より好ましくは120~400J/mmの間に含まれる。VEDは、P/(v・h・l)として定義され、式中、Pはレーザ出力、vは走査速度、hはハッチ間隔、lは粉末層の厚さである。そのようなVEDは、印刷部分の空隙を回避するのにさらに役立つ。それはまた、高温割れを引き起こす可能性がある過熱を回避するのに役立つ。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0049】
この下に提示される次の実施例及び試験は、本質的に非限定的であり、例示のみを目的として考慮されなければならない。それらは、本発明の有利な特徴、広範な実験後に本発明者らによって選定されたパラメータの重要性を示し、本発明による方法によって達成され得る特性をさらに確立する。
【0050】
粉末基準1:
1.15重量%のSi、0.56重量%のTi、0.97重量%のCu、7.55重量%のCr、7.07重量%のNi、0.013重量%のCを含む組成物が得られるように純粋な元素を混合し、残部はFe及び精錬から生じる不可避不純物であった。組成物をその液相線温度(すなわち、1685℃で)より215℃高い温度で加熱し、次いで、3mmのノズル直径で、20バールのN中のガス霧化によって霧化した。
【0051】
得られた金属粉末は、0.79の真球度並びにD10=27.3μm、D50=70.4μm及びD90=179.7μmとなるような粒径分布を有した。金属粉末は、1.129のHausner比及び11.012%のCarr指数を有する良好な流動性を有した。
【0052】
粉末基準2:
0.97重量%のSi、0.85重量%のTi、1.00重量%のCu、7.73重量%のCr、7.15重量%のNi、0.038重量%のCを含む組成物が得られるように、合金鉄及び純粋な元素を混合し、残部はFe及び精錬から生じる不可避不純物であった。組成物をその液相線温度(すなわち、1683℃で)より215℃高い温度で加熱し、次いで、3mmのノズル直径で、20バールのN中のガス霧化によって霧化した。
【0053】
得られた金属粉末は、0.82の真球度並びにD10=32.4μm、D50=92.7μm及びD90=250.8μmとなるような粒径分布を有した。金属粉末は、1.098のHausner比及び9.856%のCarr指数を有する優れた流動性を有した。
【0054】
粉末基準3:
0.95重量%のSi、0.77重量%のTi、1.06重量%のCu、7.97重量%のCr、7.11重量%のNi、0.026重量%のCを含む組成物が得られるように、合金鉄及び純粋な元素を混合し、残部はFe及び精錬から生じる不可避不純物であった。組成物をその液相線温度(すなわち、1698℃で)より236℃高い温度で加熱し、次いで、3mmのノズル直径で、20バールのN中のガス霧化によって霧化した。
【0055】
得られた金属粉末は、0.77の真球度並びにD10=30.8μm、D50=89.8μm及びD90=246.2μmとなるような粒径分布を有した。金属粉末は、1.109のHausner比及び11.12%のCarr指数を有する良好な流動性を有した。
【0056】
次いで、1~3で参照される粉末のF2画分(すなわち、20μm~63μmの粒子)を使用して、表1に詳述される工程条件及び20μmの層厚を有するLPBFによって部品を製造した。
【0057】
印刷部品の相対密度は、最初に、ISO3369:2006に従ってアルキメデス法により絶対密度を測定し、次いで、材料の絶対密度と理論密度との比(おそらく印刷部品と同じ組成で鋳造された部品から得られる)を計算することにより測定した。
【0058】
得られた相対密度値から明らかなように、N下で製造された部品は、工程条件にかかわらず非常に良好な相対密度を示す。Arが不活性ガスとして使用されるとすぐに、部品の相対密度は、大幅に低下する。
【0059】
【表1】
【国際調査報告】