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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】付加製造用の金属粉末
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/00 20220101AFI20230213BHJP
   C22C 45/02 20060101ALI20230213BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20230213BHJP
   B22F 1/065 20220101ALI20230213BHJP
   B22F 1/05 20220101ALI20230213BHJP
   B22F 10/00 20210101ALI20230213BHJP
   B22F 9/08 20060101ALI20230213BHJP
   B22F 1/08 20220101ALI20230213BHJP
   B22F 9/02 20060101ALI20230213BHJP
   C22C 33/02 20060101ALI20230213BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20230213BHJP
   B22F 10/34 20210101ALI20230213BHJP
【FI】
B22F1/00 T
C22C45/02 Z
C22C38/00 302Z
B22F1/065
B22F1/05
B22F10/00
B22F9/08 A
B22F1/08
B22F9/02 B
C22C33/02 E
B33Y70/00
B22F10/34
C22C33/02 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537455
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-12
(86)【国際出願番号】 IB2020062159
(87)【国際公開番号】W WO2021124229
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2019/061070
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サンチェス・ポンセラ,マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ステーンベルヘ,ネレ
(72)【発明者】
【氏名】ガッティ,フロレンシア
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス,サンドラ
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4K017AA04
4K017BA06
4K017BB05
4K017BB08
4K017BB13
4K017BB16
4K017CA01
4K017CA07
4K017DA02
4K017DA05
4K017EB07
4K017FA04
4K017FA05
4K017FA09
4K017FA11
4K017FA14
4K018AA25
4K018BA16
4K018BB03
4K018BB04
4K018BB06
4K018BB07
4K018BD01
4K018KA43
4K018KA61
(57)【要約】
本発明は、重量含有量で表される、次の元素:6.5%≦Si≦10%、4.5%≦Nb≦10%、0.2%≦B≦2.0%、0.2%≦Cu≦2.0%、C≦2%を含み、並びに任意選択的に、Ni≦10重量%及び/又はCo≦10重量%及び/又はCr≦7重量%及び/又は1対1ベースでNbの任意の部分の代替としてのZr、及び/又は1対1ベースでNbの任意の部分の代替としてのMo、及び/又は1対1ベースでSiの任意の部分の代替としてのP、及び/又はHf、Ta、W、V若しくはYの中から選択される1つ以上の追加元素であって、各追加元素の重量含有量が、3.5%未満である、追加元素、及び/又は1つ以上の希土類金属であって、各希土類金属の重量含有量が、0.2%未満である、希土類金属を含有する組成を有し、残部が、Fe及び精錬から生じる不可避不純物であり、金属粉末が、アモルファス相の面積分率で少なくとも5%を含む微細組織を有し、残部が、20μm未満の粒径を有する結晶性フェライト相及び可能な析出物からなり、金属粉末が、少なくとも0.80の平均真球度SPHTを有する、金属粉末に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末であって、重量含有量で表される、次の元素:
6.5%≦Si≦10%
4.5%≦Nb≦10%
0.2%≦B≦2.0%
0.2%≦Cu≦2.0%
C≦2%、を含み、
並びに任意選択的に、
- Ni≦10重量%及び/又は、
- Co≦10重量%及び/又は、
- Cr≦7重量%及び/又は、
- 1対1ベースでNbの任意の部分の代替としてのZr及び/又は、
- 1対1ベースでNbの任意の部分の代替としてのMo及び/又は、
- 1対1ベースでSiの任意の部分の代替としてのP及び/又は、
- Hf、Ta、W、V若しくはYの中から選択される1つ以上の追加元素であって、各追加元素の重量含有量が、3.5%未満である、追加元素、及び/又は、
- 1つ以上の希土類金属であって、各希土類金属の重量含有量が、0.2%未満である、希土類金属を含有し、残部が、Fe及び精錬から生じる不可避不純物である組成を有し、前記金属粉末が、面積分率で少なくとも5%のアモルファス相を含み、残部が、20μm未満の粒径を有する結晶性フェライト相及び可能な析出物からなる微細組織を有し、前記金属粉末が、少なくとも0.80の平均真球度SPHTを有する、金属粉末。
【請求項2】
前記フェライト相の粒径が、10μm未満である、請求項1に記載の金属粉末。
【請求項3】
前記金属粉末を構成する粒子の7%以下が、0.70より低い真球度SPHTを有する、請求項1又は2に記載の金属粉末。
【請求項4】
前記金属粉末を構成する粒子の平均アスペクト比が、0.71を超える、請求項1~3のいずれか一項に記載の金属粉末。
【請求項5】
前記金属粉末を構成する粒子の少なくとも80%が、15μm~170μmの範囲のサイズを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の金属粉末。
【請求項6】
前記微細組織が、面積分率で最大で45%のアモルファス相を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の金属粉末。
【請求項7】
前記微細組織の結晶性フェライト相が、Fe-α(Si)及びFe3Si(DO3)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の金属粉末。
【請求項8】
付加製造用の金属粉末を製造するための方法であって、
-(i)重量含有量で表される、6.5%≦Si≦10%、4.5%≦Nb≦10%、0.2%≦B≦2.0%、0.2%≦Cu≦2.0%、C≦2%を含み、並びに任意選択的に、Ni≦10重量%、及び/又はCo≦10重量%、及び/又はCr≦7重量%、及び/又は1対1ベースでNbの任意の部分の代替としてのZr、及び/又は1対1ベースでNbの任意の部分の代替としてのMo、及び/又は1対1ベースでSiの任意の部分の代替としてのP、及び/又はHf、Ta、W、V若しくはYの中から選択される1つ以上の追加元素であって、各追加元素の重量含有量が、3.5%未満である、追加元素、及び/又は1つ以上の希土類金属であって、各希土類金属の重量含有量が、0.2%未満である、希土類金属を含有し、残部が、Fe及び精錬から生じる不可避不純物である溶融組成物を得るように、液相線温度より少なくとも150℃高い温度で元素及び/又は金属合金を溶融するステップ、
-(ii)10~30バールの間で加圧されたガスを用いて、直径が最大で4mmであるノズルを通して前記溶融組成物を噴霧するステップを含む方法。
【請求項9】
一緒に溶融された元素及び/又は金属合金が、FeSi合金鉄、FeB合金鉄、FeNb合金鉄、Cu及びFeを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記溶融が、液相線温度よりも最大450℃高い温度で行われる、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記溶融が、液相線温度より少なくとも300℃高い温度で行われる、請求項8~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ガスが、14バール~18バールの間で加圧される、請求項8~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ノズル直径が、2~3mmの間である、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ガス対金属比が、1.5~7の間である、請求項8~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記金属粉末を、その後乾燥させる、請求項8~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼部品の製造のための、特にそれらの付加製造のための金属粉末に関する。本発明はまた、金属粉末を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Fe基バルク金属ガラス(BMG)は、その優れた軟磁性、高い耐食性、良好な機械的特性などのために非常に注目されてきた。それらは、電気及び電子産業における高効率の磁気中間及び高周波変圧器として利用されてきた。しかしながら、これまで、良好な軟磁性特性を有するほとんどのFe基BMGは、非常に複雑な工程条件でしか生産することができない。液体組成物は、一般に薄いリボンの形態のアモルファス材料を得るために、チルドされたロール間で高い冷却速度で鋳造されなければならない。その後、それらは、ナノ結晶型の材料を生産するために非常に独特の工程条件でアニールされる。さらに、それらは、それらの使用を大幅に制限する薄いリボンでのみ生産することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の目的は、容易に生産することができ、最終部品を得るために容易に加工することができるFe基BMGを提供することによって、従来技術の欠点を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的のために、本発明の第1の主題は、重量含有量で表される次の元素を含み:
6.5%≦Si≦10%
4.5%≦Nb≦10%
0.2%≦B≦2.0%
0.2%≦Cu≦2.0%
C≦2%
並びに任意選択的に、以下を含有する:
- Ni≦10重量%及び/又は
- Co≦10重量%及び/又は
- Cr≦7重量%及び/又は
- 1対1ベースでNbの任意の部分の代替としてのZr及び/又は
- 1対1ベースでNbの任意の部分の代替としてのMo及び/又は
- 1対1ベースでSiの任意の部分の代替としてのP及び/又は
- Hf、Ta、W、V又はYの中から選択される1つ以上の追加元素であって、各追加元素の重量含有量が3.5%未満である、添加元素及び/又は
- 1つ以上の希土類金属であって、各希土類金属の重量含有量が、0.2%未満である、希土類金属含有し、
残部が、Fe及び精錬から生じる不可避不純物である組成を有し、金属粉末が、面積分率で少なくとも5%のアモルファス相を含み、残部が、20μm未満の粒径を有する結晶性フェライト相及び可能な析出物からなる微細組織を有し、金属粉末が、少なくとも0.85の平均真球度SPHTを有する、金属粉末からなる。
【0005】
本発明による金属粉末はまた、個別に又は組み合わせて考慮される、以下に列挙される任意選択的な特徴を有し得る:
- フェライト相の粒径が10μm未満である、
- 金属粉末を構成する粒子の7%以下は、0.70より低い真球度SPHTを有する。
- 金属粉末を構成する粒子の平均アスペクト比は、0.71を超える、
- 金属粉末を構成する粒子の少なくとも80%は、15μm~170μmの範囲のサイズを有する。
- 微細組織は、面積分率で最大で45%のアモルファス相を含む、
- 微細組織の結晶性フェライト相は、Fe-α(Si)及びFe3Si(DO3)である。
【0006】
本発明の第2の主題は、付加製造用の金属粉末を製造するための方法であって、以下を含む、方法からなる:
-(i)重量含有量で表される、6.5%≦Si≦10%、4.5%≦Nb≦10%、0.2%≦B≦2.0%、0.2%≦Cu≦2.0%、C≦2%を含み、並びに任意選択的に、Ni≦10重量%、及び/又はCo≦10重量%、及び/又はCr≦7重量%、及び/又は1対1ベースでNbの任意の部分の代替としてのZr、及び/又は1対1ベースでNbの任意の部分の代替としてのMo、及び/又は1対1ベースでSiの任意の部分の代替としてのP、及び/又はHf、Ta、W、V若しくはYの中から選択される1つ以上の追加元素であって、各追加元素の重量含有量が、3.5%未満である、追加元素、及び/又は1つ以上の希土類金属であって、各希土類金属の重量含有量が、0.2%未満である、希土類金属を含有し、残部が、Fe及び精錬から生じる不可避不純物である溶融組成物を得るように、液相線温度より少なくとも150℃高い温度で元素及び/又は金属合金を溶融するステップ、
-(ii)10~30バールの間で加圧されたガスを用いて、直径が最大で4mmであるノズルを通して溶融組成物を噴霧するステップ。
【0007】
本発明による方法はまた、個別に又は組み合わせて考慮される、以下に列挙される任意選択的な特徴を有し得る:
- 一緒に溶融される元素及び/又は金属合金は、FeSi強合金鉄、FeB強合金鉄、FeNb強合金鉄、Cu及びFeを含む、
- 溶融は、液相線温度より最大450℃高い温度で行われる、
- 溶融は、液相線温度より少なくとも300℃高い温度で行われる、
- ガスは、14~18バールの間で加圧される、
- ノズル直径は、2~3mmの間である、
- ガス対金属比は、1.5~7の間である、
- その後、金属粉末を乾燥させる。
【0008】
本発明は、純粋に説明の目的で提供され、決して限定的であることを意図しない次の説明を読むことによって、よりよく理解されるであろう。
【0009】
ケイ素は、6.5~10重量%の含有量で本発明による組成物中に存在する。Siは、合金の硬度を増加させ、キュリー温度及び保磁力を低下させることによって磁気特性に著しく影響を与え、したがって磁気損失を減少させる。また、ケイ素含有量のわずかな調節で磁歪を容易に調整することができる。
【0010】
これらの理由から、Si含有量は、少なくとも6.5重量%である。しかしながら、Si含有量は、この値を超えるとSiが合金の脆性を増加させるため、10重量%に制限される。
【0011】
好ましくは、Si含有量は、8.0~9.0重量%の間に含まれる。この範囲は、保磁力、初期透磁率及び低磁歪の間の良好な妥協点であることが分かった。
【0012】
ニオブ含有量は、4.5~10重量%の間に含まれる。Nbは、Feとの混合の高い負のエンタルピー及びFeよりも大きい原子半径のおかげで、Fe基合金のガラス形成能を高めるのに非常に効率的である。それは、合金内の混乱を促進し、原子が結晶構造中で秩序化する傾向を減少させる。また、Nbは、結晶化を開始する微細なCuクラスタ及びナノ析出物の形成を促進し、マイクロ/ナノ結晶相を達成するのに有害なホウ化物を回避するのに役立つ。
【0013】
これらの理由から、Nb含有量は、少なくとも4.5重量%である。しかしながら、Nbの添加は、組成物のコストを増加させる。そのため、経済的理由から、その含有量は、10重量%に制限される。
【0014】
好ましくは、Nb含有量は、5.0~6.0重量%に含まれる。この範囲は、粒成長を遅らせながら熱安定性をさらに増加させることが分かった。
【0015】
ホウ素含有量は、0.2~2.0重量%の間に含まれる。ホウ素は、材料の硬度及び耐摩耗性を非常に増加させる。それはまた、微粒化及び鋼のガラス形成能(GFA)を増加させるために使用され、その原子半径は、Fe原子半径よりも69pm小さい。これらの理由から、B含有量は、少なくとも0.2重量%である。しかしながら、この値を超えると材料の脆性を誘発するホウ化物の形成が促進されるため、B含有量は、2.0重量%に制限される。
【0016】
好ましくは、脆性をさらに回避するために、B含有量は、1.0~1.8重量%に含まれる。
【0017】
銅含有量は、0.2~2.0重量%に含まれる。銅は、Feへの溶解度が非常に低い。少量のCuを使用して、合金中に均質に分布したナノサイズのクラスタを形成し、不均質核生成の核スタータ及びコントローラとして作用する。それはまた、鋼の硬度及び耐食性を増加させる。しかしながら、Cuの含有量が高いと、クラスタのサイズが大きくなり、望ましくない。
【0018】
好ましくは、Cu含有量は、Cuナノサイズのクラスタ分布の均質性をさらに促進するために、0.5~1.5重量%の間に含まれる。
【0019】
炭素含有量は、2重量%未満である。炭素は、鋼のガラス形成能を促進するための混同効果を促進する別の元素である。それは、Feとの高い負の混合エンタルピーを有し、その原子半径は、Fe原子半径よりも89pm小さい。しかしながら、高い炭素含有量は、炭化物、特にニオブ炭化物の形成をもたらし得、そこで核生成を開始する。これは、微細組織に有害である。
【0020】
好ましくは、C含有量は、0.01重量%を超える。より好ましくは、それは、鋼のガラス形成能をさらに向上させ、結晶化を遅らせるために0.01~0.07重量%の間に含まれる。
【0021】
ニッケルは、任意選択的に、10重量%までの含有量で存在してもよい。Niは、鋼に延性及び古典的に良好な焼入れ性を与える。固溶体では、それは、鋼に対する弾性及び靭性を向上させることができる。そのため、添加する場合、Ni含有量は、一般に少なくとも0.5重量%である。それにもかかわらず、Niの含有量が高いと、望ましくない相が形成される可能性がある。好ましくは、Ni含有量は、5重量%未満である。
【0022】
しかしながら、Niが添加されない場合、組成物は、不純物として0.1重量%までのNiを含んでもよい。
【0023】
コバルトは、任意選択的に、10重量%までの含有量で存在してもよい。コバルトは、鉄よりも良好なガラス形成元素であるため、磁気飽和などの磁気特性を向上させ、結晶化の遅れにも役立つ。好ましくは、Co含有量は、3重量%未満である。
【0024】
しかしながら、Coが添加されない場合、組成物は、不純物として0.1重量%までのCoを含んでもよい。
【0025】
クロムは、任意選択的に、7重量%までの含有量で存在してもよい。Crは、耐食性を向上させ、アモルファス相の熱安定性を増加させ、構造緩和を誘導し、磁気特性の調整に役立つ。好ましくは、Cr含有量は、3.5重量%未満である。
【0026】
しかしながら、Crが添加されない場合、組成物は、不純物として0.1重量%までのCrを含んでもよい。
【0027】
Zr及びMoは、任意選択的に、1対1ベース(原子)でNbの任意の部分の代替として存在してもよい。好ましくは、Zr又はMoは、60%までのNbを置換することができる。これらの元素は、ニオブを含む鋼中で高いガラス形成能を有する。特に、Zrは、鋼中で最も高いガラス形成能を有するものである。それらはまた、粒成長を妨げることによって、粒微細化剤としても機能する。さらに、Zrは、ホウ化物の形成を回避することができる。これらの元素は、C、B、N及び/又はOと化合物を形成し得るので、それらの重量含有量は、好ましくは3.5重量%未満に保たれる。
【0028】
しかしながら、Zr及び/又はMoが添加されない場合、組成物は、不純物としてそれぞれ0.1重量%までのZr及びMoを含んでもよい。
【0029】
Pは、任意選択的に、1対1ベース(原子)でSiの任意の部分の代替として存在してもよい。この元素は、ニオブを含む鋼中で高いガラス形成能を有する。それはまた、粒成長を妨げることによって粒微細化剤としても機能する。好ましくは、その重量含有量は、好ましくは3.5重量%未満に保たれる。
【0030】
しかしながら、Pが添加されない場合、組成物は、不純物として0.1重量%までのPを含んでもよい。
【0031】
本発明による組成物は、任意選択的に、Hf、Ta、W、V及びYの中から選択される少なくとも1つの追加元素を含有してもよい。これらの元素は、ニオブを含む鋼中で高いガラス形成能を有する。それらはまた、粒成長を妨げることによって、粒微細化剤としても機能する。さらに、Hf及びTaは、ホウ化物の形成を回避することができる。一方、これらの追加元素は、C、B、N及び/又はOと化合物を形成し得る。その結果、これらの追加元素のそれぞれの重量含有量は、3.5重量%未満に保たれる。
【0032】
しかしながら、これらの追加の元素が添加されない場合、組成物は、不純物として0.1重量%までの各追加の元素を含んでもよい。
【0033】
本発明による組成物は、任意選択的に、少なくとも1つの希土類金属を含有してもよい。それらは、ガラス形成能を増加させ、粒微細化剤として粒成長を制限することによって結晶化の遅れに役立つことができる。希土類金属のそれぞれの重量含有量は、0.2重量%未満に保たれる。
【0034】
しかしながら、希土類金属を添加しない場合、組成物は、不純物として0.01重量%までの各希土類金属を含んでもよい。
【0035】
残部は、鉄及び精錬に起因する不可避不純物からなる。硫黄、窒素、酸素、マンガン、アルミニウム、鉛及びカルシウムが主な不純物である。それらは、意図的に添加されていない。それらは、原料として使用される強合金鉄及び/又は純元素中に存在する可能性がある。それらの含有量は、好ましくは、微細組織の有害な変化を回避するために、並びに/又は結晶粒径及び脆性の増加を回避するために制御される。したがって、Mgの含有量は、0.1重量%に制限されるべきであり、他の不純物の含有量は、0.03重量%に制限されるべきである。
【0036】
金属粉末は、アモルファス相の面積分率で少なくとも5%を含む微細組織を有し、残部は、20μm未満の粒径を有する結晶性フェライト相及びホウ化鉄又はFe16Nb6Si7などの可能な析出物からなる。
【0037】
好ましくは、アモルファス相の面積分率は、最大で45%である。より好ましくは、アモルファス相の面積分率は、20~45%の間に含まれる。これは、機械的特性と磁気的特性との間の良好な妥協を表す。
【0038】
好ましくは、結晶性フェライト相の面積分率は、最大で95%である。より好ましくは、結晶性フェライト相の面積分率は、最大で80%であるより好ましくは、結晶性フェライト相の面積分率は、50~80%の間に含まれる。これは、機械的特性と磁気的特性との間の良好な妥協を表す。
【0039】
好ましくは、結晶性フェライト相は、Fe-α(Si)及びFe3Si(DO3)である。Fe3Si(DO3)相の存在は、低い磁歪、高い最大透磁率、低い保磁力、耐食性及び耐酸化性、耐摩擦性、高い圧縮強度を有する印刷部品の達成に有利である。
【0040】
より好ましくは、結晶性画分におけるFe-α(Si)相の寄与は、35~55%の間に含まれる。より好ましくは、結晶性画分におけるFe3Si(DO3)相の寄与は、30~50%の間に含まれる。より好ましくは、結晶性画分におけるFe3Si(DO3)寄与に対するFe-α(Si)寄与の比は、0.7~1.8の間に含まれる。これは、機械的特性と磁気的特性との間の良好な妥協を表す。
【0041】
好ましくは、フェライト相は、等軸又は等軸の樹枝状下部構造を有する。
【0042】
好ましくは、微細組織は、ホウ化鉄(Fe23B6)及びFe16Nb6Si7を析出物として含む。より好ましくは、結晶性画分におけるホウ化鉄析出物の寄与は、0.5~5.5%の間に含まれる。より好ましくは、結晶性画分におけるFe16Nb6Si7析出物の寄与は、2~12%の間に含まれる。これらの析出物は、硬度、強度及び耐摩擦性を向上させる。
【0043】
結晶性画分及びアモルファス相の面積分率並びに結晶性画分における各結晶相の寄与は、粉末X線回折(XRD)測定のリートベルト法によって計算することができる。
【0044】
好ましくは、フェライト相の粒径は、10μm未満である。好ましくは、結晶粒の少なくとも20%は、少なくとも1μmのサイズを有する。より好ましくは、結晶粒の少なくとも40%は、少なくとも1μmのサイズを有する。より好ましくは、結晶粒の少なくとも10%は、0.1μm未満である。異なる結晶粒径は、磁気特性に関して良好なバランスを提供する。結晶粒径は、ASTME112-13に従って、電子後方散乱回折(EBSD)によって測定することができる。
【0045】
粉末の真球度は高い。真球度SPHTは、ISO 9276-6:2008において4πA/Pとして定義されており、式中、Aは、粒子投影によって覆われた測定面積であり、Pは、粒子投影の測定された周囲/円周である。1.0の値は、完全な球を示す。粉末の平均真球度は、少なくとも0.80であり、好ましくは少なくとも0.85又はさらに良好には少なくとも0.90であり得る。この高い真球度のおかげで、金属粉末は、高度に流動性である。その結果、付加製造がより容易になり、印刷された部品は、高密度で硬質である。平均真球度は、Camsizer(R)などのDigital Imaging Particle Size and Shape Analyzerで測定することができる。
【0046】
好ましくは、粒子の7%以下は、0.70より低いSPHTを有する。
【0047】
真球度に加えて、アスペクト比を粉末粒子の分級に使用することができる。アスペクト比は、ISO 9276-6:2008において、フェレットの最小長さとフェレットの最大長さとの比として定義されている。それは、Camsizer(R)などのDigital Imaging Particle Size and Shape Analyzerで測定することができる。平均アスペクト比は、好ましくは0.71を超えるべきである。
【0048】
好ましくは、金属粉末粒子の少なくとも80%は、15μm~170μmの範囲のサイズを有する。
【0049】
ISO13320:2009に従ってレーザ回折によって測定される粒径分布は、好ましくは次の要件(μm)を満たす:
5≦D10≦30
15≦D50≦65
80≦D90≦200
より好ましくは、80≦D90≦160である。さらにより好ましくは、100≦D90≦160である。
【0050】
粉末は、最初に純元素及び/又は強合金鉄を原料として混合及び溶融することによって得ることができる。
【0051】
純元素は、これらの不純物が結晶化を容易にする可能性があるため、強合金鉄に由来する不純物が多すぎることを回避するために通常好ましい。それにもかかわらず、本発明の場合、強合金鉄に由来する不純物は、マイクロ/ナノ結晶相の達成に有害ではないことが観察された。
【0052】
強合金鉄は、ケイ素、ニオブ、ホウ素、クロム、アルミニウム、マンガン、モリブデン....などの1つ以上の他の元素の高い割合を有する鉄の様々な合金を指す。主な合金は、FeAl(通常40~60重量%のAlを含む)、FeB(通常17.5~20重量%のBを含む)、FeCr(通常50~70重量%のCrを含む)、FeMg、FeMn、FeMo(通常60~75重量%のMoを含む)、FeNb(通常60~70重量%のNbを含む)、FeNi、FeP、FeSi(通常15~90重量%のSiを含む)、FeSiMg、FeTi(通常45~75重量%のTiを含む)、FeV(通常35~85重量%のVを含む)、FeW(通常70~80重量%のMoを含む)である。
【0053】
純元素は、特に、炭素及び純粋な金属、例えば、鉄、銅、ニッケル、コバルト、希土類金属、Zr、Hf、Ta、Mo、W、V、Cr、Y及びPの中から選択される追加元素であり得る。
【0054】
当業者は、異なる強合金鉄及び純元素を混合して標的組成物に到達する方法を知っている。
【0055】
好ましくは、混合物は、FeSi強合金鉄、FeB強合金鉄、FeNb強合金鉄、Cu及びFeを含む。
【0056】
純元素及び/又は強合金鉄を適切な割合で混合することによって組成物が得られると、組成物は、その液相線温度より少なくとも150℃高い温度で加熱され、この温度を維持してすべての原料を溶融し、溶融物を均質化する。この過熱のおかげで、溶融した組成物の粘度の低下は、この特定のマイクロ/ナノ結晶構造と共に、適正な粒径分布を有する、サテライトなしの高い真球度を有する粉末を得るのに役立つ。とはいえ、表面張力が温度と共に増加するので、組成物をその液相線温度より450℃を超える温度で加熱しないことが好ましい。
【0057】
好ましくは、組成物は、高度に球形の粒子の形成を促進するために、その液相線温度より少なくとも300℃高い温度で加熱される。より好ましくは、組成物は、その液相線温度より300~400℃高い温度で加熱される。
【0058】
本発明の一変形例では、組成物は、1300~1600℃の間で加熱され、これは粘度低下と表面張力上昇との間の良好な妥協点を表す。
【0059】
次いで、溶融組成物は、溶融金属流をオリフィス、ノズルに中程度の圧力で押し込むことによって、及びガスのジェット(ガス噴霧)又は水のジェット(水噴霧)を衝突させることによって、微細な金属液滴に噴霧される。ガス噴霧の場合、ガスは、ノズルを出る直前に金属流に導入され、同伴ガスが(加熱により)膨張して大きな収集体積の噴霧塔に出るときに乱流を生成する働きをする。後者は、溶融金属ジェットのさらなる乱流を促進するためにガスで満たされる。金属液滴は、噴霧塔において落下する間に冷却される。ガス噴霧は、真円の程度が高く、サテライトの量が少ない粉末粒子の生産に有利であるため、好ましい。
【0060】
噴霧ガスは、好ましくは、アルゴン又は窒素である。それらは両方とも、溶融粘度を他のガス、例えばヘリウムよりもゆっくりと増加させ、これにより、より小さい粒径の形成が促進される。それらはまた、化学的性質の純度を制御し、望ましくない不純物を回避し、粉末の良好なモルホロジーにおいて役割を果たす。窒素のモル重量が、アルゴンの39.95g/モルと比較して14.01g/モルであるので、窒素を用いるよりもアルゴンを用いる方がより微細な粒子を得ることができる。一方、窒素の比熱容量は、アルゴンの0.52と比較して1.04J/(gK)である。そのため、窒素は、粒子の冷却速度を増加させる。窒素による組成物の汚染を回避するために、アルゴンが窒素よりも好ましい可能性がある。
【0061】
ガス圧は、金属粉末の粒径分布及び微細組織に直接影響を及ぼすため、重要である。特に、圧力が高いほど、冷却速度は高くなる。その結果、ガス圧は、粒径分布を最適化し、マイクロ/ナノ結晶相の形成を有利にするために、10~30バールの間に設定される。好ましくは、ガス圧は、サイズが付加製造技術と最も適合する粒子の形成を促進するために14~18バールの間に設定される。
【0062】
ノズル直径は、溶融金属流量、したがって粒径分布及び冷却速度に直接影響を及ぼす。最大ノズル直径は、平均粒径の増加及び冷却速度の低下を制限するために4mmに制限される。ノズル直径は、粒径分布をより正確に制御し、特定の微細組織の形成を有利にするために、好ましくは2~3mmの間である。
【0063】
ガス流量(Kg/h)と金属流量(Kg/h)との比として定義されるガス対金属比は、好ましくは1.5~7の間、より好ましくは3~4の間に保たれる。それは冷却速度の調節に役立ち、したがって特定の微細組織の形成をさらに促進する。
【0064】
本発明の一変形例によれば、湿度取り込みの場合、噴霧によって得られた金属粉末は、その流動性をさらに向上させるために乾燥される。乾燥は、好ましくは真空チャンバ中で、100℃で行われる。
【0065】
噴霧によって得られた金属粉末は、そのまま使用することができるか、又は後で使用される付加製造技術によりよく適合するサイズの粒子を保つためにふるい分けすることができる。例えば、粉末床溶融結合法による付加製造の場合、20~63μmの範囲が好ましい。レーザ金属蒸着又は直接金属蒸着による付加製造の場合、45~150μmの範囲が好ましい。
【0066】
本発明による金属粉末で作製された部品は、粉末床溶融結合法(LPBF)、直接金属レーザ焼結(DMLS)、電子ビーム溶融(EBM)、選択的熱焼結(SHS)、選択的レーザ焼結(SLS)、レーザ金属蒸着(LMD)、直接金属蒸着(DMD)、直接金属レーザ溶融(DMLM)、直接金属印刷(DMP)、レーザクラッディング(LC)、バインダ噴射(BJ)などの付加製造技術によって得ることができる。本発明による金属粉末で作製されたコーティングは、コールドスプレー、サーマルスプレー、高速酸素燃料などの製造技術によって得ることもできる。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0067】
この下に提示される次の実施例及び試験は、本質的に非限定的であり、例示のみを目的として考慮されなければならない。それらは、本発明の有利な特徴、広範な実験後に本発明者らによって選定されたパラメータの重要性を示し、本発明による金属粉末によって達成され得る特性をさらに確立する。
【0068】
80.2重量%のFe、8.4重量%のSi、5.6重量%のNb、1.6重量%のB、1.3重量%のCu、0.023重量%のO、0.0035重量%のS、0.052重量%のC及び14.4ppmのNを含む金属組成物は、次の強合金鉄及び純元素を次の割合で混合及び溶融することによって最初に得られた:
- 75.56%のSi、0.018%のP、0.09%のC、0.002%のS、0.82%のAlを含む11.5重量%のFeSi、
- 82.33%のFe、18.16%のB、0.13%のAl、0.007%のS、0.31%のC、0.03%のP及び0.54%のSiを含む8.174重量%のFeB、
- 67.1%のNb、1%のSi、0.3%のAl、0.11%のC、0.06%のTa、0.05%のN、0.04%のP、0.033%のPb、0.01%のS及び31.297%のFeを含む8.2重量%のFeNb、
- 1.3重量%の純粋なCu99.9%、
- 99.79%のFe、0.005%のC、0.001%のAl、0.15%のMn、0.002%のSi、0.002%のP、0.002%のSを含む70.83重量%の鉄インゴット。
【0069】
この金属組成物を最大1490℃、すなわち液相線温度より340℃高く加熱し、次いで、次の工程条件でアルゴンを用いてガス噴霧した:
- ガス圧:16バール
- ノズル直径:2.5mm
- ガス対金属比:3.37
次いで、得られた金属粉末を真空下100℃で0.5~1日間乾燥させた。
【0070】
金属粉末は、次の特徴を有していた。
【0071】
微細組織をXRDによって分析した。Bruker(R)製のTOPASソフトウェアを、XRDパターンのリートベルト解析に使用した。微細組織は、面積分率で、56%の結晶性フェライト相、6.4%のFe16Nb6Si7及び2.47%のFe23B6を含み、残部はアモルファス相からなることが観察された。結晶性フェライト相は、52.6%のFe-α(Si)及び47.4%のFe3Si(Do3)で構成されていた。電子後方散乱回折(EBSD)測定から、結晶領域では、結晶粒径は、典型的には粉末粒子の中心に位置するより大きな粒子(1~10μm)の領域と、典型的にはその端部に位置するか、又はアモルファス相に近いより小さな粒子(1μm未満)の領域とで不均質であることが観察された。より大きな結晶粒の領域は、粉末結晶相の65~80%に相当した。
【0072】
Camsizer(R)によってISO 9276-6:2008に従って測定した平均真球度SPHTは、0.93であった。
【0073】
ISO13320:2009に従ってレーザ回折によって測定した粒径分布は、次の特徴を示した:D10=17.61μm、D50=61.73μm及びD90=166.1μm。
【0074】
これらの特徴のおかげで、得られた金属粉末は、次の特性を示した:
ASTM B213-7に従ってホール流量計漏斗を使用することによって決定された流動性は、0.373s/gであった。
【0075】
振動試料型磁力計(VSM)によって測定した磁気特性に関しては、室温及び400℃でそれぞれ測定した保磁力Hcは、それぞれ2.06×10-3T及び8.03×10-3Tであった。室温及び400℃でそれぞれ測定した磁気飽和Msは、それぞれ15.733Am/Kg及び80.3Am/Kgであった。室温及び400℃でそれぞれ測定した残留磁気Mrは、それぞれ0.115Am/Kg及び0.367Am/Kgであった。
【国際調査報告】