(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】インターコネクタを備えるステータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/50 20060101AFI20230213BHJP
【FI】
H02K3/50 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537501
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(85)【翻訳文提出日】2022-08-01
(86)【国際出願番号】 EP2020086722
(87)【国際公開番号】W WO2021122959
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508075579
【氏名又は名称】ヴァレオ エキプマン エレクトリク モトゥール
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100210790
【氏名又は名称】石川 大策
(72)【発明者】
【氏名】マチュー、ダミコ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー、リッシュ
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604AA08
5H604CC01
5H604QB01
5H604QB03
5H604QB04
5H604QB15
(57)【要約】
本発明の一態様は、ステータ本体と、ステータ本体から軸方向に突出する少なくとも1つのバンドルとステータ本体から延びる巻線端部とを備える巻線と、巻線に装着されたインターコネクタと、を備える回転電気機械用ステータであって、インターコネクタは、絶縁本体と、絶縁本体から延びるトレース端部を備えるトレースと、を備え、巻線端部は、トレース端部に組み付けられる、ステータにおいて、インターコネクタは、インターコネクタを巻線に径方向において位置決めするための少なくとも1つの手段をも備える、ことを特徴とするステータに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-ステータ本体(1)と、
-前記ステータ本体(1)から軸方向に突出する少なくとも1つのバンドル(21)と前記ステータ本体(1)から延びる巻線端部(22N)とを備える巻線(2)と、
-前記巻線(2)に装着されたインターコネクタ(3)と、
を備える回転電気機械用X軸ステータであって、
-前記インターコネクタ(3)は、絶縁本体(31)と、前記絶縁本体(31)から延びるトレース端部(300)を備えるトレース(30)と、を備え、
-前記巻線端部(22)は、前記トレース端部(300)に組み付けられる、
X軸ステータにおいて、
前記インターコネクタ(3)は、前記インターコネクタ(3)を前記巻線(2)に径方向において位置決めするための少なくとも1つの手段(35、35’、36)をも備える、
ことを特徴とするX軸ステータ。
【請求項2】
前記バンドル(21)は、当接部分(230)を備え、
前記位置決め手段は、第1位置決め壁(35)であり、
前記第1位置決め壁(35)の少なくとも一部が、前記当接部分(230)に径方向において隣接する、
請求項1に記載の電気機械用X軸ステータ。
【請求項3】
前記インターコネクタ(3)は、前記バンドル(21)の軸方向上側に位置決めされ、
前記第1位置決め壁(35)は、前記絶縁本体(31)から前記バンドル(21)に向かって突出することにより、少なくとも部分的に軸方向に延び、
軸方向に延びる部分(350)は、前記当接部分(230)を形成する前記バンドルの軸方向端部分に径方向において隣接する、
請求項2に記載のステータ。
【請求項4】
前記バンドルの前記軸方向端部分は、反転ピン(23)を備え、
前記第1位置決め壁(35)は、少なくとも1つのピン(23)に径方向において隣接する、
請求項3に記載のステータ。
【請求項5】
前記インターコネクタ(3)は、少なくとも3つのトレース端部(300)と第2壁(35’)とを備えることにより、前記位置決め壁(35、35’)および前記トレース端部(300)は、前記インターコネクタ(3)に沿って周方向に交互に配置される、
請求項2~4のいずれか一項に記載のステータ。
【請求項6】
前記インターコネクタ(3)は、X軸を含む平面であって前記インターコネクタ(3)の中央を周方向に交差するように横切る平面に関して、かつ前記X軸を横断する平面であって前記インターコネクタ(3)を軸方向に交差するように横切る平面に関して、対称である、
請求項1~5のいずれか一項に記載のステータ。
【請求項7】
前記位置決め手段は、インターコネクタ本体(31)から径方向に延びる位置決めラグ(36)であり、
前記ラグ(36)は、前記インターコネクタを前記巻線(2)に所定位置で保持するツール(3)と係合するように適合される、
請求項1に記載のステータ。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のステータを備える回転電気機械。
【請求項9】
インターコネクタ(3)をステータの巻線(2)に組み付けるための方法であって、
-前記インターコネクタ(3)は、絶縁本体(31)と、前記絶縁本体(31)から延びるトレース端部(300)を備えるトレース(30)と、前記インターコネクタ(3)を前記巻線(2)に径方向において位置決めするための少なくとも1つの位置決め壁(35)と、を備え、
-前記ステータは、ステータ本体(1)と、前記ステータ本体(1)から軸方向に突出する少なくとも1つのバンドル(21)と前記ステータ本体(1)から延びる巻線端部(22N)とを備える巻線(2)と、を備え、
a-前記壁(35)を巻線バンドル(230)の当接部分に径方向において隣接するように位置決めすることにより、前記インターコネクタ(3)を前記巻線(2)に位置決めするステップと、
b-少なくとも1つの巻線端部(22N)をトレース端部(300)に組み付けるステップと、
c-ツールを取り外すステップと、
を備える方法。
【請求項10】
インターコネクタ(3)をステータの巻線(2)に組み付けるための方法であって、
-前記インターコネクタ(3)は、絶縁本体(31)と、前記絶縁本体(31)から延びるトレース端部(300)を備えるトレース(30)と、インターコネクタ本体(31)から径方向に延びる少なくとも1つの位置決めラグ(36)であって、前記インターコネクタ(3)を前記巻線(2)に径方向において位置決めするための位置決めラグ(36)と、を備え、
-前記ステータは、ステータ本体(1)と、前記ステータ本体(1)から軸方向に突出する少なくとも1つのバンドル(21)と前記ステータ本体(1)から延びる巻線端部(22N)とを備える巻線(2)と、を備え、
a-前記インターコネクタ(3)を前記巻線に所定位置で保持するためのツールを用いて前記ラグ(36)を組み付けることにより、前記インターコネクタ(3)を前記巻線(2)に位置決めするステップと、
b-少なくとも1つの巻線端部(22N)をトレース端部(300)に組み付けるステップと、
c-前記ツールを取り外すステップと、
を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、インターコネクタの設置が単純化された特に自動車用の回転電気機械に関する。
【0002】
本発明は、発電機または電動機として動作可能なオルタネータまたは可逆機械等の回転電気機械の分野に適用可能である。
【背景技術】
【0003】
それ自体既知の態様において、回転電気機械は、ステータと、シャフトに堅固に接続されたロータと、を備えている。ロータは、駆動シャフトおよび/または従動シャフトに堅固に接続され得るとともに、オルタネータ、電動機、または2つのモードにおいて動作可能なオルタネータ-スタータ型の可逆機械の形態において回転電気機械の一部を形成し得る。
【0004】
ステータは、ローラベアリングによりベアリング上のシャフトを回転可能に支持するように構成されたハウジング内に装着される。ロータは、例えば「爪ロータ」タイプであり、2つのポールホイールと、ロータコイルが巻かれたコアと、を備えている。各ポールホイールは、極を形成するように互いに入れ子状になった爪を有している。別の例によれば、ロータは、適切な締結システムによりパケットの形態において支持された金属シートの積層体により形成された本体を備える。ロータは、例えば、ロータの磁性質量体に設けられたキャビティに収容された永久磁石により形成された極を備えている。代替的に、突出極構成と呼ばれる構成において、極はロータのアームに巻かれたコイルにより形成される。
【0005】
図1は、従来技術による金属シートのパケット、およびステータの巻線を斜視図にて示す。
【0006】
図2は、
図1の金属シートのパケット、およびステータの巻線の一部を斜視図にて示す。
【0007】
図3は、従来技術によるインターコネクタをさらに備える
図1および
図2のステータを斜視図にて示す。
【0008】
図1、
図2および
図3に示すように、ステータ100は、クラウンを形成する薄型の金属シートの積層体により形成されたステータ本体110を備え、その内面には相巻線により形成された巻線120を収容するために径方向内側に開放したスロット111が設けられている。巻線120のこれらの相巻線は、ステータ本体のスロット111を通過して、ステータ本体110の両側にバンドル125、126を形成している。巻線120の相巻線は、星形または三角形として接続された多相巻線である。巻線の各相巻線の一端部が、相出力(phase output)123を形成しており、各相出力123は電気制御モジュールに接続されている。そして、巻線の各相巻線の他端部が、接続点122を形成している。接続点122は、中性点(neutral point)を形成する星形のアセンブリの場合には互いに接続される、または三角形のアセンブリの場合には他の巻線の相出力123に接続される。
【0009】
巻線120の相巻線は、ピン121の形状にある伝導性要素から得られる。ピン121は、湾曲した頭部すなわちコラテラル部により接続された2つの分岐を備えている。それらの中間直線部すなわち中央は、所定の角度だけ互いに周方向にオフセットされた2つの別々のスロットに配置されている。ピン121の頭部は、撚り合わされて上側バンドル125を形成している。本例における巻線120の相巻線は、単一の分岐を備える端部ハーフピンをさらに備えている。本例において、上側バンドルには相出力を形成するハーフピンの端部が設けられ、接続点は中性点である。ピンの分岐の自由端部は、例えば溶接により互いに接続されて、下側バンドル126、すなわち巻線の下流のバンドルを形成するように撚り合わされている。
【0010】
ピン121は、互いに電気的に接続されている。同一巻線の2つのピン121は、例えば溶接により互いに直接的に接続されている。本例において、各相巻線120は、1つのピンの一端部121aを、巻線、具体的には同一相巻線120の別のピンの一端部121bに接続する反転ピン130を備えている。一般に、反転ピン130は、上側バンドルの上側、すなわち巻線の軸方向延長線上に配置されて2つのピンを接続する。
【0011】
したがって、各相巻線120は、相出力124と接続点122とを有する2つの巻線端部を備えている。したがって、巻線は、複数の巻線端部124、122を備えている。相巻線が星形として接続されている場合、接続点は中性点である。相巻線が三角形として接続されている場合、接続点は、三角形の接続を形成するように2つの別個の巻線を接続するための点である。したがって、ステータ巻線は、ステータ100の周縁部に沿って分散配置された複数の接続点122および複数の相出力124を備えている。
【0012】
星形のアセンブリの場合、ステータ巻線への電力供給を維持するために相出力124との電気的絶縁を確保しつつ、同一相システムの接続点122を互いに接続しなければならない。この目的のために、ステータ100は、一般に、相出力124を避けつつ接続点122を互いに電気的に接続するインターコネクタ140とも称される電気接続部品を備えている。
【0013】
インターコネクタは、巻線に装着される。インターコネクタは、トレース端部を有する少なくとも1つのトレースを備えている。トレース端部は、中性点122を互いに接続するように、その各々が巻線の中性点122のうちの1つに電気的に接続されている。
【0014】
インターコネクタの設置面積は、ハウジング(図示せず)とトレース端部とを近接させた。このような近接により、ハウジングとトレース端部とが接触して短絡を引き起こす危険が生じる。
【0015】
また、インターコネクタを巻線に組み付けるには、インターコネクタを特に径方向に、同様に軸方向および周方向に正確に設置する必要がある。また、中性点122との組付方法の全時間に亘って前記部品を適切に所定位置に保持する必要があり、製造方法を困難にしている。
【0016】
径方向とは機械のX軸を横断する方向であり、軸方向とは機械のX軸の方向である。
【0017】
軸方向表面とは、機械の軸に対して平行に広がる表面を意味すると理解される。軸方向表面は、例えば円筒形であっても平坦であってもよい。
【0018】
径方向表面とは、機械の軸に対して垂直な平面において広がる表面を意味すると理解される。
【0019】
巻線端部とは、巻線の導体の端部、例えば相、中性端子、あるいは巻線の繰り返しプロファイルを変化させる導体の端部、例えば反転ハーフピンの端部を意味すると理解される。
【0020】
X軸に沿って隣接する2つの要素について、内側要素とは軸に最も近い要素を意味すると理解され、外側要素とは軸から最も遠い要素を意味すると理解される。下側表面とは軸方向において巻線に最も近い表面とし、上側表面とは軸方向において巻線から最も遠い表面とする。
【発明の概要】
【0021】
本発明は、インターコネクタとハウジングとの間の径方向の間隔を維持しつつ、特にインターコネクタを巻線に組み付けることを伴う作業を容易にする解決策を提供する。
【0022】
上述の問題に対処するため、出願人は、インターコネクタが組付作業のための位置決め手段およびこの位置を保持するための手段を備える回転電気機械のステータを提案する。
【0023】
第1態様によれば、本発明は、ステータ本体と、前記ステータ本体から軸方向に突出する少なくとも1つのバンドルと前記ステータ本体から延びる巻線端部とを備える巻線と、前記巻線に装着されたインターコネクタと、を備える回転電気機械用ステータであって、前記インターコネクタは、絶縁本体と、前記絶縁本体から延びるトレース端部を備えるトレースと、を備え、前記巻線端部は、前記トレース端部に組み付けられる、ステータにおいて、前記インターコネクタは、前記インターコネクタを前記巻線に径方向において位置決めするための少なくとも1つの手段をも備える、ことを特徴とするステータに関する。
【0024】
インターコネクタを巻線(バンドルまたは反転ピン等)に対して位置決めし保持することにより、トレース端部とハウジングとの間に必要な径方向の間隔が提供され得るとともに、例えば溶接による組付中にインターコネクタを特に径方向および周方向に保持する支援が得られる。
【0025】
前段落で言及した特徴の他に、本発明の一態様によるステータは、個別に、または技術的に可能な任意の組み合わせに応じて考慮される以下のさらなる特徴のうちの単数または複数を有し得る。
【0026】
一実施形態によれば、前記バンドルは、当接部分を備え、前記位置決め手段は、第1位置決め壁であり、前記第1位置決め壁の少なくとも一部が、前記当接部分に径方向において隣接する。
【0027】
一実施形態によれば、前記インターコネクタは、前記バンドルの軸方向上側に位置決めされ、前記第1位置決め壁は、前記絶縁本体から前記バンドルに向かって突出することにより、少なくとも部分的に軸方向に延び、軸方向に延びる前記部分は、前記当接部分を形成する前記バンドルの軸方向端部分に径方向において隣接する。
【0028】
一実施形態によれば、前記バンドルの前記軸方向端部分は、反転ピンを備え、前記第1位置決め壁は、少なくとも1つのピンに径方向において隣接する。
【0029】
一実施形態によれば、第2位置決め壁が、同一のピンに隣接し得る。
【0030】
一実施形態によれば、前記インターコネクタは、少なくとも3つのトレース端部と第2壁とを備えることにより、前記位置決め壁および前記トレース端部は、前記インターコネクタに沿って周方向に交互に配置される。
【0031】
一実施形態によれば、前記インターコネクタは、前記X軸を含む平面であって前記インターコネクタの中央を周方向に交差するように横切る平面に関して、かつ前記X軸を横断する平面であって前記インターコネクタを軸方向に交差するように横切る平面に関して、対称である。
【0032】
一実施形態によれば、前記位置決め手段は、前記インターコネクタ本体から径方向に延びる位置決めラグであり、前記ラグは、前記インターコネクタを前記巻線に所定位置で保持するツールと係合するように適合される。
【0033】
一実施形態によれば、前記インターコネクタは、複数の位置決めピンを備える。
【0034】
また、本発明は、上述のステータを備える回転電気機械に関する。
【0035】
また、本発明は、インターコネクタをステータの巻線に組み付けるための方法であって、前記インターコネクタは、絶縁本体と、前記絶縁本体から延びるトレース端部を備えるトレースと、前記インターコネクタを前記巻線に径方向において位置決めするための少なくとも1つの位置決め壁と、を備え、前記ステータは、ステータ本体と、前記ステータ本体から軸方向に突出する少なくとも1つのバンドルと前記ステータ本体から延びる巻線端部とを備える巻線と、を備え、前記壁を前記巻線バンドルの当接部分に径方向において隣接するように位置決めすることにより、前記インターコネクタを前記巻線に位置決めするステップと、少なくとも1つの巻線端部をトレース端部に組み付けるステップと、を備える方法に関する。
【0036】
また、本発明は、インターコネクタをステータの巻線に組み付けるための方法であって、前記インターコネクタは、絶縁本体と、前記絶縁本体から延びるトレース端部を備えるトレースと、前記インターコネクタ本体から径方向に延びる少なくとも1つの位置決めラグであって、前記インターコネクタを前記巻線に径方向において位置決めするための位置決めラグと、を備え、前記ステータは、ステータ本体と、前記ステータ本体から軸方向に突出する少なくとも1つのバンドルと前記ステータ本体から延びる巻線端部とを備える巻線と、を備え、前記インターコネクタを前記巻線に所定位置で保持するためのツールを用いて前記ラグを組み付けることにより、前記インターコネクタを前記巻線に位置決めするステップと、少なくとも1つの巻線端部をトレース端部に組み付けるステップと、次いで前記ツールを取り外すステップと、を備える方法に関する。
【0037】
本発明およびその種々の用途は、以下の説明を読み、添付図面を参照することで、より良く理解されるであろう。
【0038】
図面は、本発明の非限定的な例として提供される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1は、上述の先行技術によるステータ巻線の斜視図である。
【
図2】
図2は、上述の先行技術によるステータ巻線の部分図である。
【
図3】
図3は、上述の先行技術によるステータ巻線の斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態による回転電気機械のステータの部分斜視図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態によるインターコネクタの斜視図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の代替実施形態によるインターコネクタの斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2実施形態によるインターコネクタの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図面は、本発明の非限定的な例として提供される。
【0041】
以下に、添付図面を参照しつつ、インターコネクタが中性点インターコネクタである回転電気機械の複数の実施形態を詳細に説明する。インターコネクタは、2つのトレースと、これらのトレース上に部分的にオーバーモールドされた電気絶縁材料から構成された絶縁本体と、を備えている。これらの実施形態は、本発明の特徴および利点を説明するものである。ただし、本発明はこれらの実施形態に限定されないことに留意されたい。特に、例えば、インターコネクタは、トレースを1つしか備えなくてもよく、反転インターコネクタであってもよい。反転インターコネクタのトレース端部は、巻線の2つの他のピンに接続された反転ピンを形成するように、2つのハーフピンに接続される。さらに、インターコネクタは、星形アセンブリで巻線の2つの相出力を接続するための相インターコネクタであってもよい。以下の説明では、中性点インターコネクタをインターコネクタと称する。
【0042】
図面において、同一の要素には同一の参照符号を付している。図面の読みやすさを考慮し、図面に示す要素間の大きさの縮尺は順守されていない。
【0043】
図4に示す回転電気機械は、X軸ステータAを備えている。X軸ステータAは、ステータAの巻線2の相巻線を形成する導体が貫通するステータ本体1を備えている。導体は、例えばピンである。巻線が配線されていてもよい。上述のように、巻線2は、上側バンドル21Aと下側バンドル21B(図示せず)とを、ステータ本体1の両端部に備えている。
【0044】
ステータAの巻線2は、ステータ本体1から上側バンドル21Aを超えて、したがって上側バンドル21Aを通過して軸方向に延びる巻線端部22を備えている。
【0045】
巻線2は、例えば、星形の巻線である。巻線端部22は、中性点22Nと相出力22Pとを備えている。巻線は、三角形の巻線であってもよい。
【0046】
図4に示す例によれば、相出力22Pを形成する各巻線端部22は、電子パワーユニットへの接続を目的として端子220pに接続されているが、例えば溶接により別のパワーインターコネクタに直接的に接続されてもよい。
【0047】
相出力22Pを形成する巻線端部22は、インターコネクタ3から特に軸方向に突出するとともに、絶縁体221により絶縁されている。
【0048】
図4に示す例によれば、インターコネクタ3が、バンドル21Aの延長線上に装着されている。
【0049】
図示例において、インターコネクタ3は、好適には、径方向の設置面積を制限するように、上側バンドル21Aの軸方向延長線上に配置されている。ただし、設置面積以外の利点のためにオフセット配置が想定可能であることを理解されたい。
【0050】
インターコネクタ3は、トレース30と呼ばれる、例えば銅製の、単数または複数の電気伝導性要素を備えている。トレース30は、絶縁本体31と呼ばれる絶縁性ケーシングを形成する電気絶縁材料でオーバーモールドされている。
【0051】
図示の実施形態において、インターコネクタ3は、各々が2つのトレース端部300を有する2つのトレース30を備えている。
【0052】
トラックとも称されるトレース30は、主として絶縁本体31の内部で延びる。トレース端部300は、前記絶縁本体31の外部において、巻線端部22に電気的に接続されている。
【0053】
図4は、三相システムの中性点22Nとの接続出力を各々形成するように、前記絶縁本体31から径方向に延びるトレース30の各々のトレース端部300をより詳細に示す。
【0054】
したがって、ステータの相巻線は、その各端部において、巻線中性点22Nを形成し、これらの中性点は、インターコネクタ3により互いに接続されている。
【0055】
より具体的には、各トレース端部300は、本体31から径方向に延びて、絶縁本体31に対して90°程度の角度を形成している。各トレース端部300は、例えばレーザー溶接または電気溶接により、中性点22Nに接続されている。トレース端部300が径方向に延びることにより、中性点の溶接を伴う作業中に、絶縁本体31が損傷するリスクが回避される。トレース端部300は、トレース端部300と巻線端部22との溶接を容易化するように、ろう付け充填合金層301を備え得る。
【0056】
中性点22Nは、2つの隣り合うトレースのトレース端部300同士の間で接続され得る。本例に示すように、2つのトレース30の2つの隣り合うトレース端部300は、絶縁本体31から互いに対して略平行に延びている。中性点22Nを形成する3つの巻線端部のうちの1つは、これら2つの隣り合うトレース端部300の間に配置される。隣り合うトレースの2つの端部300は、組付を補償するように、巻線端部の厚さだけ、本例において、中性点ピンの厚さ以上で互いに離間している。互いに最も離間した他の2つのトレース端部300は、対応する中性点22Nに各々接続されている。溶接作業、例えば、電気溶接またはレーザー溶接により、中性点22Nとトレース端部300の各々との電気的接続が確保される。
【0057】
巻線のインターコネクタ3の電気絶縁性かつ耐熱性材料から構成された絶縁本体31は、図示例のように、ステータの上側バンドル21Aに隣接して配置され得る。絶縁本体31は、上側径方向当接面と下側径方向当接面とを備え、下側表面310はバンドルと接触している。インターコネクタの巻線のバンドルに対するこのような配置により、インターコネクタ3の存在により生じる設置面積が制限され得るとともに、回転電気機械により前記インターコネクタに生じる振動が制限される。
【0058】
また、絶縁本体31は、有利には、内側軸方向表面と外側軸方向表面とを備えており、トレース端部300は外側軸方向表面から延びる。
【0059】
第1実施形態において、位置決め手段35は、位置決め壁である。このような壁を
図5に示す。前記位置決め壁35は、インターコネクタ本体31から径方向に延びている。壁は、少なくとも下側当接表面310に向かって突出部分350内に、インターコネクタ本体31に対して軸方向に突出することにより延びている。壁は、選択的に、本体31の両側に軸方向に延び得る。壁は、有利には、インターコネクタ本体31の外側軸方向表面から径方向に延びている。
【0060】
突出部分350は、
図4に示す当接部3500であって、バンドル230の当接部分に径方向において隣接する当接部3500を備えている。バンドル230の当接部は、例えば、反転ピン部23である。当接部3500は、ピンの軸方向表面に径方向において隣接する軸方向表面を有している。インターコネクタ本体の下側径方向表面310は、ピン230の径方向表面に軸方向において隣接している。
【0061】
位置決め壁35は、有利には、例えばインターコネクタ本体とともに成形されている。
【0062】
巻線の別のタイプの代替実施形態として、位置決め壁35は、当接部分230を形成するバンドルの端部分の軸方向表面に径方向において隣接している。
【0063】
図5に示す本実施形態の代替実施形態として、インターコネクタ3は、2つの位置決め壁35、35’を備えている。これに対して、位置決め壁350から突出する少なくとも1つの部分が、
図4に示すように、バンドルの当接部分230の軸方向表面に、径方向において隣接する軸方向表面を有する当接部3500を備えている。
【0064】
ピン巻線の場合、上側バンドル21Aは、三相システムの3つの反転ピン23のうちの2つにより形成される2つの当接部分230を、三相システム毎に備えている。各位置決め壁35、35’は、対応するピン当接部分230の軸方向表面に径方向において隣接する当接部3500を備えている。
【0065】
中性点22Nを形成する6つの巻線端部の各々がインターコネクタの少なくとも1つのトレース端部に組み付けられる特に三相ダブルシステムの場合の設置面積および熱的制約を考慮して、大きな角度範囲を有する単一のインターコネクタに代えて、小さな角度範囲を有する2つのインターコネクタが使用される。各小型のインターコネクタは、2つの三相システムのうちの一方に接続するように使用される。
【0066】
2つのインターコネクタ3は、
図4に示すように、上側バンドル21Aの円周の両側に実質的に配置され、各々が3つの中性点22Nを接続している。「接続される」という用語は、電気的のみならず物理的な意味、換言すれば、他のピンを通過することなく直接的に電気的に接続されることを意図していると理解される。
【0067】
各インターコネクタ3は、有利には、X軸を含む平面であってインターコネクタ3の中央を周方向に交差するように横切る平面に関して、かつX軸を横断する平面であってインターコネクタ3を軸方向に交差するように横切る平面に関して、対称である。換言すれば、トレース30、トレース端部300、絶縁本体31、(単数または複数の)位置決め手段35は、X軸を含む平面であってインターコネクタ3の中央を周方向に交差するように横切る平面に関して、かつX軸を横断する平面であってインターコネクタを軸方向に交差するように横切る平面に関して、対称である。
【0068】
したがって、2つの小型のインターコネクタは、交換可能である。また、インターコネクタ3は反転可能であるため、インターコネクタの巻線への装着は単純化される。
【0069】
したがって、インターコネクタ3の各1つの絶縁本体31の2つの径方向表面310は、径方向平面に関して対称である。上述のように、2つの径方向表面310のうちの一方が、2つの反転ピン23の2つの当接部分230に対して軸方向において隣接している。
【0070】
各位置決め壁35は、インターコネクタ3の軸方向に測定した高さにおける中央を通過する径方向平面に関して対称である。したがって、インターコネクタ3は、バンドル上の三相システムの中性点22Nに接続するように、一方側と他方側とに等しく装着され得る。
【0071】
2つの位置決め手段35の場合、それらは、対向するトレース端部300の間の中央を通過する、すなわちその中央を周方向に交差するように横切る軸方向平面に関して、互いに対称である。したがって、インターコネクタは、バンドル上に一方側と他方側とに等しく装着され得る。
【0072】
図6に示すステータAの第2実施形態によれば、インターコネクタ3は、一対の位置決め壁35aおよび壁35bにより形成された少なくとも1つの位置決め手段35を備えている。
【0073】
壁35aおよび壁35bは、インターコネクタ本体の軸方向高さの中央においてインターコネクタ本体を横切る径方向平面に関して、互いに対称である。したがって、上述のインターコネクタの対称性は維持される。
【0074】
インターコネクタ3を巻線2に組み付ける場合、一対の2つの壁のうちの一方の壁35aまたは壁35bのみが、その突出部分350をバンドルの当接部分230に接触させるようにする。
【0075】
一対の壁の各壁は、絶縁本体の外側軸方向表面から径方向に延びるとともに、インターコネクタ本体31に対して軸方向に突出することにより延びている。
【0076】
本例において、インターコネクタ3は、2つの位置決め手段35、35’、すなわち二対の壁35a、35bおよび壁35’a、35’bを備えている。二対は、対向するトレース端部300間の中央を通過する軸方向平面に関して、互いに対称である。
【0077】
第3実施形態において、位置決め手段は、インターコネクタの本体31の軸方向表面から径方向に延びる位置決めラグ36である。ラグは、有利には、例えば本体の外側軸方向表面から、すなわちトレース端部300と同じ側で延びている。
【0078】
ラグ36は、インターコネクタを巻線に所定位置で保持するツールと係合するように適合された形状、例えば開口を備えている。
【0079】
また、ラグ36は、インターコネクタ3を2つの態様で保持可能とするように、径方向平面に関して対称であり得る。インターコネクタは、2つの位置決めピンも備え得る。位置決めピンは、ラグがツールの2つの分岐部で2つの態様で保持され得るように、軸方向平面に関して対称である。これにより、ステータの製造が単純化される。
【0080】
少なくとも1つの位置決め壁35を備えるインターコネクタ3をバンドルに組み付ける方法は、三相システムの中性点22Nを形成する巻線端部22に対向するトレース端部300、および少なくとも1つの壁を、巻線のバンドルの当接部分に径方向において隣接させるように位置決めすることにより、インターコネクタを巻線に位置決めするステップを備える。すなわち、
図4に示すように、壁35の当接部3500が、反転ピン23の当接部分230に対して径方向において隣接する。位置決め壁35を当接部分230に当接させることにより、ステータが装着されるケーシングとトレース端部との間に間隔が設けられることが保証される。したがって、短絡のリスクが回避される。絶縁本体31の下側径方向表面310も、2つの反転ピン23の径方向表面230に接して位置決めされる。このように位置決めされたインターコネクタ3は、有利には押し込まれるとともに、径方向及び軸方向に位置決めされる。これにより、組付中のインターコネクタ3と巻線とのオフセットのリスクが制限される。三相システムの中性点22Nを形成する3つの巻線端部は、周方向に互いに最も離間している三相システムの2つの中性点22Nの各々を、周方向に互いに最も離間しているトレース端部300に接続することにより組み付けられる。他の2つの中性点22Nの間に位置する中性点22Nは、互いに最も近接している2つのトレース端部に接続される。
【0081】
インターコネクタ3が少なくとも1つの位置決めラグ36を備える場合、インターコネクタ3を巻線に保持し位置決めするためのツールを用いてラグ36を組み付けることにより、インターコネクタ3は巻線2に位置決めされる。次いで、ツールを取り外す前に、トレース端部300と中性点22Nとの組付が実施される。
【0082】
有利には、インターコネクタ本体から径方向に延びるラグに代えて、インターコネクタの本体に軸方向に穿孔された孔が用いられ得る。
【0083】
以上の説明では、星形に接続された巻線を中心に説明した。当然ながら、星形の結合を三角形の結合に置き換えても本発明の範囲から逸脱しない。この場合、中性点は相出力22Pに置き換えられ、インターコネクタ3は、例えば、三角形の接続を形成するために、単一のトレースと2つの相巻線を互いに接続し得る2つのトレース端部とを備えることを除き、上述のものと同一である。
【0084】
さらに、星形の巻線であれ三角形の巻線であれ、反転ピン23は、各々が巻線端部22を有する2つの導体であって、上述のインターコネクタにより互いに接続された2つの導体により製造され得る。ただし、インターコネクタが単一のトレースおよび2つのトレース端部を備える点を除く。導体は、中性点および相を備えるようなハーフピンであり得る。
【0085】
特定数の例、代替的な実施形態および実施形態により本発明による回転電気機械を説明してきたが、回転電気機械は、当業者にとって明瞭となるであろう種々の変更、変形、改良を含む。これらの変更、変形、改良は、以下の請求項により定義される本発明の範囲の一部を形成することが理解される。例えば、巻線を形成する複数の溶接された電気導体を、円形または矩形の断面を有する連続したワイヤに置き換えても、本発明の範囲から逸脱しない。
【0086】
当然ながら、本発明は、ピンを用いた巻線に限定されず、あらゆるタイプの巻線に適用され得る。
【国際調査報告】