(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】ポリエチレンテレフタラートを含むポリエステルを脱重合するための改良された方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/24 20060101AFI20230213BHJP
【FI】
C08J11/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537557
(86)(22)【出願日】2020-12-07
(85)【翻訳文提出日】2022-08-17
(86)【国際出願番号】 EP2020084850
(87)【国際公開番号】W WO2021122095
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】ヤシン アルーン
(72)【発明者】
【氏名】メッキ-ベラーダ アドリアン
(72)【発明者】
【氏名】ティノン オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】チャラ シプリアン
(72)【発明者】
【氏名】ラインクーゲル ル コック ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】アズィム ゴンジン パイヴァ マヤラ
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA22
4F401AB07
4F401AC11
4F401AD07
4F401CA22
4F401CA30
4F401CA63
4F401CA67
4F401CA75
4F401CB18
4F401DA01
4F401EA60
4F401EA77
4F401EA80
4F401FA01Z
4F401FA02Z
4F401FA06Z
4F401FA07Z
(57)【要約】
本発明は、PETを含むポリエステル供給原料を脱重合するための方法であって、解糖による脱重合の工程の前および脱重合流出物の精製の工程の前に、供給原料のコンディショニングの改善された工程を含み、該工程において、ポリエステル供給原料を温度および圧力でコンディショニングし、ついで、静的または動的ミキサにおいてジオール流出物と混合し、特に、供給原料の粘度を大幅に低下させる、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PETを含むポリエステル供給原料を脱重合するための方法であって、
a) コンディショニング済み供給原料の流れを生じさせる少なくとも1個のコンディショニングセクションおよび混合済みの流れを生じさせる混合セクションを実施するコンディショニング工程であって、
前記コンディショニングセクションに、前記ポリエステル供給原料を少なくとも給送し、150~300℃の温度で実施し、
前記混合セクションに、コンディショニングセクションから得られたコンディショニング済み供給原料の前記流れおよびジオール流出物を少なくとも給送し、静的または動的ミキサにおいて、150~300℃の温度で、0.5秒~20分の滞留時間により、ポリエステル供給原料に相対するジオールの重量比が0.03~3.0になるように操作する、工程;
b) 解糖による脱重合の工程であって、混合済み流れを少なくとも、ジオール供給物を場合により給送し、前記工程b)に給送するジオールの全量を、前記工程b)に給送するジエステルのモル当たりのジオール1~20モルに調節するようにし、180~400℃の温度および0.1~10時間の滞留時間で行う、工程;
c) ジオールを分離除去する工程であって、工程b)からの流出物を少なくとも給送し、100~250℃の温度、工程b)の圧力より低い圧力で行い、ジオール流出物および液体モノマーに豊富な流出物を生じさせ、1~5個の連続する気-液分離セクションにおいて行い、該セクションは、液体流出物およびガス流出物および液体モノマーに豊富な流出物を生じさせ、先のセクションからの液体流出物を次のセクションに給送し、最後の気-液分離セクションから得られた液体流出物は、液体モノマーに豊富な流出物を構成し、ガス流出物は、全て、回収して、ジオール流出物を構成する、工程;
d) 工程c)から得られた液体モノマーに豊富な流出物を重質不純物流出物および予備精製済みモノマー流出物に分離する工程であって、250℃以下の温度および0.001MPa以下の圧力で、10分以下の液体滞留時間により行う、工程;
e) 予備精製済みモノマー流出物を脱色する工程であって、吸着剤の存在中、100~250℃の温度、および0.1~1.0MPaの圧力で行い、精製済みモノマー流出物を生じさせる工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記ポリエステル供給原料は、最低10重量%の不透明PET、好ましくは最低15重量%の不透明PETを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリエステル供給原料は、着色PETを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリエステル供給原料は、0.1重量%~10重量%の顔料、好ましくは0.1重量%~5重量%の顔料を含む、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
工程a)のコンディショニングセクションを、225~275℃の温度で実施する、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
工程a)のコンディショニングセクションを、押出機において実施する、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
混合セクションを、225~275℃の温度で操作する、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
混合セクションを、3秒~1分の滞留時間により実施する、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
混合セクションを、ポリエステル供給原料に相対するジオールの重量比0.1~1.0で実施する、請求項1~8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
混合セクションを、静的ミキサにおいて実施する、請求項1~9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
工程a)の混合セクションに導入されたジオール流出物を、工程a)の混合セクションに導入する前に過熱にする、請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
工程a)の混合セクションに導入されたジオール流出物は、工程c)から得られた前記ジオール流出物の部分である、請求項1~11のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル、特にポリエチレンテレフタラート(polyethylene terephthalate:PET)を含むテレフタラートポリエステルを重合ユニットにおいてリサイクルする目的で、それを脱重合する方法に関する。より特定的には、本発明は、PETを含むポリエステル供給原料を脱重合するための方法であって、前記供給原料をコンディショニングする改善された工程を有する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタラート(PET)の化学的リサイクリングは、廃棄物の形態で回収されたポリエステルを、重合方法における供給原料として再び用いられ得るモノマーに分解することに向けられた多くの研究の主題であった。
【0003】
多くのポリエステルは、材料を収集・分別するための回路に由来する。特に、ポリエステル、とりわけPETは、ボトル、コンテナ、フィルム、樹脂および/または繊維であって、ポリエステルから構成されるもの(例えば、織物類、たいや繊維)の収集を起源としてよい。収集・分別チャネルに由来するポリエステルは、リサイクル対象ポリエステルとして知られている。
【0004】
リサイクリングのためのPETは、以下の4つの主なカテゴリーに分類され得る:
・ クリアPET;主として無色透明なPET(一般的には最低60重量%)と、透明青着色PETとからなり、これは、如何なる顔料も含有しておらず、機械的リサイクリング方法において用いられてよい;
・ 暗色または着色(緑、赤等)PET;これは、一般的に、0.1重量%までの染料または顔料を含有してよいが、透明性または半透明性を残している;
・ 不透明PET;これは、有意な量の顔料を、ポリマーを不透明にするように典型的には0.25重量%~5.0重量%の範囲にわたる含有率で含有している;不透明PETは、例えば、食品コンテナ、例えば、牛乳ボトルの製造において、化粧品、プラント保護または染料ボトルの組成物において、ますます増えるように用いられている;
・ 多層PET;これは、PET以外のポリマーの層または未使用PET(すなわち、リサイクリングを経なかったPET)の層の間のリサイクルされたPETの層、または、例えばアルミニウムのフィルムを含む;多層PETは、熱成形した後に、パッケージング、例えばコンテナトレイを製造するために用いられる。
【0005】
リサイクリングチャネルに供給する収集チャネルは、国によって異なって構築される。それらは、供給流れの性質および量および分別技術に応じて廃棄物からアップグレードされるプラスチックの量を最大にするように変化している。これらの供給流れをリサイクルするためのチャネルは、一般的に、フレークの形態にコンディショニングする第1の工程からなり、この工程の間に未加工パッケージングの梱が洗浄され、精製・分別され、すり砕かれ、その後に再度精製・分別されて、フレークの流れを生じさせ、該フレークは、一般的には、1質量%未満の「巨視的」不純物(ガラス、金属、他のプラスチック、木材、紙、厚紙、無機元素)、優先的には、0.2質量%未満の「巨視的」不純物、一層より優先的には0.05質量%未満の「巨視的」不純物を含有している。
【0006】
クリアPETフレークは、続いて、押出物を生じさせる押出-ろ過の工程を経てよく、この押出物は、続いて、未使用PETとの混合物として再使用されて、新しい物を生じさせ得る(ボトル、繊維、フィルム)。(頭字語SSPによって知られている)真空下の固体状態の重合(solid state polymerization)の工程は、食品用途のために必要である。このタイプのリサイクリングは、機械的リサイクリングとして知られている。
【0007】
暗色(または着色)PETフレークも、機械的にリサイクルされ得る。しかしながら、着色された供給流れから形成された押出物の呈色は、用途を制限する:暗色PETは、一般的に、パッケージングストラップまたは繊維を製造するために用いられる。出口は、それ故に、クリアPETのものと比較してより制限される。
【0008】
リサイクリングのためのPETの中に顔料を高含有率で含有している不透明PETの存在は、リサイクル業者に問題を提示する。不透明PETは、リサイクルされるPETの機械的特性に悪影響を及ぼすからである。不透明PETは、今のところ、着色PETと共に収集され、着色PET供給流れ中に見出される。不透明PETについての用途の開発の点から見て、リサイクリングのための着色PETの供給流れ中の不透明PETの含有率は、今のところ、5~20重量%であり、さらに増大している傾向にあるところである。数年の時間内に、着色PET供給流れ中の不透明PETの含有率:20~30重量%超を達成することが可能であるだろう。しかしながら、着色PET供給流れ中の不透明PET10~15%超で、リサイクルされるPETの機械的特性が、悪影響を受けることが示され(参照:Impact du developpement du PET opaque blanc sur le recyclage des emballages en PET [Impact of the growth of white opaque PET on the recycling of PET packaging], preliminary report of COTREP of 5/12/13)、着色PETチャネルの主要な出口である、繊維の形態でのリサイクリングを防止する。
【0009】
染料は、天然のまたは合成の物質であり、ポリエステル材料中に特に可溶であり、それらが導入される材料を着色するために用いられる。 一般的に用いられる染料は、さまざまな性質のものであり、しばしば、OおよびNのタイプのヘテロ原子、および共役不飽和、例えば、キノン、メチンまたはアゾの基、または分子、例えば、ピラゾロンおよびキノフタロンを含有する。顔料は、微細分割された物質であり、ポリエステル材料中に特に不溶であり、それらが導入される材料を着色し、かつ/または不透明にするために用いられる。ポリエステル、特に、PETを着色し、かつ/または不透明にするために用いられる主要な顔料は、金属酸化物、例えば、TiO2、CoAl2O4またはFe2O3、ケイ酸塩、ポリスルフィドおよびカーボンブラックである。顔料は、一般的には0.1~10μm、主として0.4~0.8μmのサイズを有する粒子である。ろ過によるこれらの顔料の完全な除去は、不透明PETをリサイクルすることを想定するために必要であるが、これらの顔料の完全な除去が技術的に困難であるのは、極めて高い閉塞容量をそれらが有するからである。
【0010】
着色PETおよび不透明PETのリサイクリングは、それ故に、極めて問題である。
【0011】
特許出願(特許文献1)には、着色PET、特に緑着色PETボトルの回収に由来するものの解糖脱重合のための方法が記載されている。この方法によって処理される供給原料は、PETフレークの形態にあり、反応器において180~280℃の温度で数時間にわたってエチレングリコールと接触しているように置かれる。解糖工程の終結の際に得られたBHETは、活性炭上で精製されて、所定の染料、例えば、青色染料を分離除去し、次いで、残留染料、例えば、黄色染料の抽出を、アルコールまたは水により抽出する。BHETは、抽出溶媒中で結晶化し、次いで、PET重合方法において用いられ得るという目的のために分離除去される。
【0012】
特許出願(特許文献2)において、消費後PETは、種々の着色PET、例えば、クリアPET、青色PET、緑色PETおよび/またはこはく色PETの混合物をフレークの形態で含み、このものは、エチレングリコールおよびアミン触媒およびアルコールの存在中、反応器において、150~250℃で、バッチ様式で解糖脱重合される。そこで得られたジエステルモノマーは、ろ過、イオン交換および/または活性炭上の通過によって精製された後に、結晶化され、ろ過によって回収される。
【0013】
特許(特許文献3)において、ポリエステル、特に着色ポリエステル、例えば、緑色PETを脱重合するための方法は、ジオールの存在中、反応器において、180~240℃の温度での脱重合の工程、場合による薄膜エバポレータにおける蒸発の工程(しかしながら、このエバポレータが操作されるべき条件を特定していない)、および高温溶媒中の混合物の溶解の工程を含む。高温希釈の後に50μm超のサイズの不溶の不純物を分離除去するろ過工程が行われる。着色PET中の低割合の顔料により、ろ過による分離が可能となる。しかしながら、この技術は、不透明PET中に存在する顔料の量で操作することができない。これらの顔料は、迅速にフィルタをふさぐからである。
【0014】
特許(特許文献4)には、フレークの形態にあるPETからの精製したBHETの製造が記載されている。脱重合工程は、エチレングリコールおよび触媒の存在中、撹拌型反応器における、残留水を除去する180℃での、次いで、195~200℃での、固体の形態にある水により洗浄することによって前処理されたPETフレークの解糖からなる。脱重合の次に、冷却による予備精製、ろ過、吸着およびイオン交換樹脂上の処理の工程が行われ、これらは、非常に重要であるとして提示され、グリコールの蒸発およびBHETの精製の前に行われる。予備精製により、その後の精製工程におけるBHETの再重合を防止することが可能となる。しかしながら、ろ過およびイオン交換樹脂上の処理の工程を介して先行することが極度に問題となるかもしれないのは、供給原料が大量の非常に小さい固体粒子、例えば、顔料、および/またはPET以外のポリマー化合物、例えば、ポリオレフィンまたはポリアミドを含む場合であり、これは、処理される供給原料が不透明PETおよび/または多層の前形成PETを、相当な割合(不透明PETおよび/または多層の前形成PET10重量%超)で特に含む時のケースである。
【0015】
並行して、特許(特許文献5)には、エチレングリコールの存在中の解糖の工程を含んでいるポリエステルを脱重合するための方法およびカチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂上でビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラートの溶液を精製するための方法が開示されている。
【0016】
最後に、特許出願(特許文献6)には、不透明PETを、特に0.1重量%~10重量%で顔料を含んでいるポリエステル供給原料を、エチレングリコールの存在中での解糖により脱重合するための方法が記載されている。精製済みビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(bis(2-hydroxyethyl) terephthalate:BHET)流出物が、特定の分離・精製の工程の後に得られる。前記特許出願では、脱重合反応を開始するための供給原料のコンディショニングの第1の工程における反応性押出の可能性が想定されている。
【0017】
本発明は、PET、特に特許出願(特許文献6)のPETを含んでいるポリエステル供給原料の解糖による脱重合のためのこれらの方法を改善し、特に、脱重合工程へのポリエステル供給原料の導入の上流で、それをコンディショニングする相およびそれを少なくとも1種のジオール流出物と混合する相を改善しようとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0074136号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2015/0105532号明細書
【特許文献3】欧州特許第0865464号明細書
【特許文献4】特許第3715812号公報
【特許文献5】欧州特許第1120394号明細書
【特許文献6】仏国特許出願公開第3053691号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
(発明の概要)
本発明の主題は、それ故に、PETを含むポリエステル供給原料を脱重合するための方法であって、以下を含む、方法である:
a) コンディショニング済み供給原料の流れを生じさせる少なくとも1個のコンディショニングセクションおよび混合済みの流れを生じさせる混合セクションを実施するコンディショニング工程であって、
前記コンディショニングセクションに、前記ポリエステル供給原料を少なくとも給送し、150~300℃の温度で実施し、
前記混合セクションに、コンディショニングセクションから得られたコンディショニング済み供給原料の前記流れおよびジオール流出物を少なくとも給送し、静的または動的ミキサにおいて、150~300℃の温度で、0.5秒~20分の滞留時間により、ポリエステル供給原料に相対するジオールの重量比が0.03~3.0になるように操作する、工程;
b) 解糖による脱重合の工程であって、混合済み流れを少なくとも、ジオール供給物を場合により給送し、前記工程b)に給送するジオールの全量を、前記工程b)に給送するジエステルのモル当たりのジオール1~20モルに調節するようにし、180~400℃の温度および0.1~10時間の滞留時間で行う、工程;
c) ジオールを分離除去する工程であって、工程b)からの流出物を少なくとも給送し、100~250℃の温度、工程b)の圧力より低い圧力で行い、ジオール流出物および液体モノマーに豊富な流出物を生じさせ、1~5個の連続する気-液分離セクションにおいて行い、先のセクションからの液体流出物を次のセクションに給送し、ジオール流出物および液体モノマーに豊富な流出物を生じさせる、工程;
d) 工程c)から得られた液体モノマーに豊富な流出物を重質不純物流出物および予備精製済みモノマー流出物に分離する工程であって、250℃以下の温度および0.001MPa以下の圧力で、10分以下の液体滞留時間により行う、工程;
e) 予備精製済みモノマー流出物を脱色する工程であって、吸着剤の存在中、100~250℃の温度、および0.1~1.0MPaの圧力で行い、精製済みモノマー流出物を生じさせる工程。
【0020】
本発明の1つの利点は、反応セクションにおいて、ポリエステル供給原料と少なくとも1種のジオール流出物との混合物の均質化を容易にし、反応セクションにおいて、特に、コンディショニングユニットに直接接続された反応器において有効な粘度を得るように、ポリエステル供給原料をコンディショニングする工程をそれが改善することにあり、これにより、この反応器において妥当な撹拌力、特に3000W/m3未満の撹拌力を使用することが可能になる。本方法により、それ故に、反応セクションにおける供給原料と少なくとも1種のジオール流出物との混合物の均質化を改善することが可能となり、それにより、脱重合効率を改善することが可能となる一方で同時に、反応セクションにおけるこの均質化のために必要とされる撹拌力を低減させる。
【0021】
脱重合反応器(1基または複数基)中の試薬の良好な混合および均質化を確実にするために、最適撹拌を、特に、可及的に高い滞留時間対混合時間の比(t*=ts/tm)で提供することが必要であり、優先的には、t*は、10超(t*>10)である。混合時間は、複数のパラメータ、例えば、撹拌ヘッドのタイプ、混合物の粘度および撹拌力に依存する。短い滞留時間のために、しばしば、基準t*>10に合わせるために高い撹拌力を提供することが必要である。本発明は、本方法に柔軟性を与え、脱重合反応器(1基または複数基)の上流で供給原料の粘度における相当な低下を可能にすることによっておよび生成物の間で混合の95%まで(または一層より多い)の実質的に完全な均質化を達成することによって、すなわち、反応器の上流で化合物の実質的に完全な均質化を達成することによって、基準t*>10が満たされることを確実にする。反応媒体の撹拌は、一つの生成物を他の生成物中に分散させるよりむしろ反応器中の均質性を維持することに専念される。本発明により、それ故に、脱重合反応器(1基または複数基)中の合理的な撹拌力(P)を用いることも可能とされ、好ましくは3000W/m3未満(P<3000W/m3)であり、これは、当業者によって受け入れ可能である考えられ、特に、撹拌力は、500~2000W/m3である。
【0022】
本発明により、供給原料の脱重合反応器への導入を簡単にすることも可能にとなる。融解したPETによる場合と同様に供給原料が非常に粘性である場合(500~1000Pa・s)、反応器へのそれの導入は所定の警戒を、特に、適切なシステム、例えば、デフロキュレータまたは専用の分散撹拌ヘッドの取り付けにより必要とする。本発明により、コンディショニング工程における生成物の改善された均質化および粘度の低下によって導入システムを簡単にすることが可能となる。
【0023】
最後に、本発明の一つの利点は、ますます多くの顔料、染料および他のポリマーを含むあらゆるタイプのポリエステル廃棄物、例えば、青色、着色、不透明および多層のPETをそれが処理することができることにある。本発明による方法は、不透明PETを処理することができるものであり、本発明により、顔料、染料および他のポリマーを取り除くことおよび化学反応によってジエステルモノマーに戻すことが可能となる。このモノマーは、次いで、ポリマーに再重合され得、これは、未加工ポリエステル、特に未加工PETとの相違を示さず、それ故に、未加工PETの全ての用途を許容する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(図面のリスト)
(
図1)
図1は、本発明による方法の1種の実施形態を示し、以下を含む:PETを含む供給原料(1)をコンディショニングする工程(a);供給原料(1)をコンディショニングするための押出機(a1)と、その次の、エチレングリコール(2)も給送される静的ミキサ(a2)とを含む;脱重合工程(b):コンディショニング工程から得られた混合物およびジオール流出物(3)を給送する:ジオール流出物(3)を回収するためのジオール分離工程(c);BHETジエステルを分離除去し、重質不純物(5)を取り除くための工程(d);および吸着によって脱色して精製済みBHET流出物(4)を回収する工程(e)。
【0025】
(実施形態の説明)
本発明によると、ポリエチレンテレフタラートまたはポリ(エチレンテレフタラート)(簡単にPETとしても知られている)は、下記式の基本繰り返し単位を有している。
【0026】
【0027】
慣習的に、PETは、テレフタル酸(PTA)またはテレフタル酸ジメチル(DMT)のエチレングリコールとの重縮合によって得られる。以降の本明細書において、表現「前記ポリエステル供給原料中のジエステルのモル当たり」は、-[O-CO-O-(C6H4)-CO-O-CH2-CH2]-ユニットのモル数に対応し、これは、前記ポリエステル供給原料中に含まれるPET中のPTAおよびエチレングリコールの反応から得られたジエステルユニットである。
【0028】
本発明によると、用語「モノマー」または「ジエステルモノマー」は、有利には、化学式HOC2H4-CO2-(C6H4)-CO2-C2H4OHのビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)を表示し、式中、-(C6H4)-は、芳香環を示し、これは、前記ポリエステル供給原料に含まれるPET中の、PTAおよびエチレングリコールの反応から得られたジエステルユニットである。
【0029】
用語「オリゴマー」は、典型的には、小サイズのポリマーであって、一般的には、2~20個の基本繰り返し単位からなるものを表示する。本発明によると、用語「エステルオリゴマー」または「BHETオリゴマー」は、テレフタラートエステルオリゴマーであって、2~20個、好ましくは2~5個の、式-[O-CO-(C6H4)-CO-O-C2H4]-の基本繰り返し単位を含んでいるものを表示し、-(C6H4)-は、芳香環である。
【0030】
本発明によると、用語「ジオール」および「グリコール」は、同等に用いられ、2つの水酸基-OHを含んでいる化合物に対応する。好適なジオールは、エチレングリコールであり、これは、モノエチレングリコールまたはMEGとしても知られている。
【0031】
本発明の方法の工程において用いられるジオールまたはジオール流出物流れは、それ故に、好ましくは、エチレングリコール(またはMEG)を非常に優勢な量で、すなわち、MEGが、前記ジオールまたはジオール流出物流れの全重量に相対して95重量%以上を示すように含む。
【0032】
用語「染料」は、ポリエステル材料に可溶でありかつそれを着色するために用いられる物質を規定する。染料は、天然または合成起源のものであってよい。
【0033】
本発明によると、用語「顔料」、より特定的には、着色するおよび/または不透明にする顔料は、微細分割された物質であって、特に、ポリエステル材料中に不溶であるものを規定する。顔料は、固体粒子の形態にあり、一般的には0.1~10μm、優勢には0.4~0.8μmのサイズを有している。それらは、しばしば、鉱物の性質のものである。一般的に用いられる、特に、不透明にするために用いられる顔料は、金属酸化物、例えば、TiO2、CoAl2O4またはFe2O3、ケイ酸塩、ポリスルフィドおよびカーボンブラックである。
【0034】
本発明によると、表現「AとBとの間、またはA~B(between A and B)」は、間隔の両限界値(A、B)は値の記載された範囲に含まれることを意味する。もしそのようになっていなかったならば、および両限界値が記載された範囲に含まれなかったならば、そのような説明が本発明によって与えられることになる。
【0035】
本明細書の以降の説明において、本発明の特定のおよび/または好適な実施形態が記載されてよい。それらは、別々にまたは一緒に組み合わされて実施されてよく、これが技術的に実行できる場合に組み合わせの制限はない。
【0036】
(供給原料)
本発明による方法は、ポリエステル供給原料によって給送され、当該ポリエステル供給原料は、少なくとも1種のポリエステル、すなわち、ポリマーであって、主鎖の繰り返し単位がエステル基を含有しているものを含み、かつ、ポリエチレンテレフタラート(PET)を含み、好ましくは、少なくとも着色PETおよび/または不透明PETを含んでいる。
【0037】
前記ポリエステル供給原料は、有利には、廃棄物の収集・分別チャネルから得られた、リサイクリングのためのポリエステルの供給原料、特に、プラスチック廃棄物である。前記ポリエステル供給原料は、例えば、ボトル、コンテナトレイ、フィルム、樹脂および/または繊維であって、ポリエチレンテレフタラートからなるものの収集から来てよい。
【0038】
有利には、ポリエステル供給原料は、最低50重量%、好ましくは最低70重量%、好適には最低90重量%のポリエチレンテレフタラート(PET)を含む。
【0039】
好ましくは、前記ポリエステル供給原料は、着色、不透明、暗色および多層のPET、およびその混合物から選ばれる少なくとも1種のPETを含む。前記ポリエステル供給原料は、大いに特定的には、最低10重量%の不透明PET、大いに好ましくは最低15重量%の不透明PETを含み、前記不透明PETは、有利には、リサイクリングのための不透明PET、すなわち、収集・分別チャネルから得られた不透明PETである。
【0040】
前記ポリエステル供給原料は、有利には、0.1重量%~10重量%の顔料、有利には0.1重量%~5重量%の顔料を含む。特に、それは、0.05重量%~1重量%の染料、好ましくは0.05重量%~0.2重量%の染料を含んでもよい。
【0041】
収集・分別チャネルにおいて、ポリエステル廃棄物は、本発明による方法のポリエステル供給原料を構成する前に洗浄され、すり砕かれる。
【0042】
ポリエステル供給原料は、全体的または部分的に、フレークの形態にあってよく、その最長の長さは、10cm未満、優先的には5~25mmであり、または微粒子化された固体の形態にあってよく、すなわち、粒子の形態にあってよく、当該粒子は、好ましくは10ミクロン~1mmのサイズにある。供給原料は、巨視的不純物、好ましくは5重量%未満、優先的には3重量%未満の巨視的不純物を含んでもよく、例えば、ガラス、金属、ポリエステル以外のプラスチック(例えば、PP、PEHD等)、木材、紙、厚紙または無機元素である。前記ポリエステル供給原料は、全体的または部分的に、繊維の形態であってよく、例えば、織物であって、場合によっては、綿またはポリアミド繊維を取り除くように前処理されたもの、または、ポリエステル以外のあらゆる織物、またはたいや繊維等であって、場合によっては、ポリアミド繊維またはラバーまたはポリブタジエン残渣を特に取り除くように前処理されたものである。前記ポリエステル供給原料は、ポリエステルの重合および/または変換の方法の製造不合格品から得られたポリエステルを含んでもよい。ポリエステル供給原料は、PET製造方法において重合触媒および安定化剤として用いられる元素、例えば、アンチモン、チタンまたはスズを含んでもよい。
【0043】
(コンディショニング工程a))
本発明による前記方法は、コンディショニング工程a)を含み、これは、少なくとも1つの、好ましくは単一のコンディショニングセクションおよび混合セクションを含み、前記コンディショニングセクションは、前記ポリエステル供給原料を給送され、コンディショニング済み供給原料の流れを生じさせ、前記混合セクションは、コンディショニング済みの供給原料の前記流れおよびジオール流出物を少なくとも給送され、混合済み流れを生じさせる。
【0044】
工程a)の前記コンディショニングセクションにより、脱重合工程b)の操作条件に前記ポリエステル供給原料を加熱しかつこれを圧力下に維持することが可能となる。コンディショニングセクションにおいて、ポリエステル供給原料は、少なくとも部分的に液体になるようにそれの融解点に近いかまたはなおわずかに高い温度に徐々に加熱される。有利には、ポリエステル供給原料の最低70重量%、大いに有利にはポリエステル供給原料の最低80重量%、好ましくは最低90重量%、優先的には最低95重量%は、工程a)のコンディショニングセクションを離れる際に液体の形態にある。工程a)のコンディショニングセクションが運転される温度は、有利には150~300℃、好ましくは225~275℃である。この温度は、ポリエステルの熱劣化を最小にするために可及的に低く維持される。好ましくは、コンディショニングセクションは、系への酸素の導入およびポリエステル供給原料の酸化を制限するように不活性雰囲気下に操作される。
【0045】
本発明の好適な実施形態によると、前記コンディショニングセクションは、押出セクションであり、これは、スクリュー搬送セクションに対応する。換言すると、コンディショニングセクションは、押出機において操作される。前記押出セクション中の滞留時間は、前記セクションの容積を供給原料の容積流量で除算したものとして定義されて、有利には5時間以下、好ましくは1時間以下、優先的には30分以下、好ましくは10分以下、かつ、好ましくは2分以上である。有利には、押出セクションにより、ポリエステル供給原料をコンディショニングすることが可能となり、コンディショニング済み供給原料の流れが150~300℃、好ましくは225~275℃の温度、および大気圧(すなわち、0.1MPa)と20MPaとの間の圧力にあるようにされる。
【0046】
前記押出セクションは、有利には、真空抽出システムに接続され、供給原料中に存在する不純物、例えば、溶解ガス、軽質有機化合物および/または湿気が取り除かれる。前記押出セクションは、有利には、ろ過システムを含んでもよく、40μm超かつ好ましくは2cm未満のサイズの固体粒子、例えば砂粒子が取り除かれる。ポリエステル供給原料は、有利には、当業者に知られているあらゆる方法によって、例えば、供給ホッパーを介して押出機に給送され、有利には、系への酸素の導入を制限するために不活性化される。
【0047】
混合セクションは、コンディショニングセクションから得られたコンディショニング済みの供給原料の前記流れおよび工程c)から得られたジオール流出物、好ましくはジオール流出物の部分を少なくとも、好ましくはそれらのみを給送される。前記混合セクションにおいて、コンディショニングセクションにおいて予めコンディショニングされた前記ポリエステル供給原料は、有利には、ジオール流出物と接触しているように置かれる。この接触しているように置くことの効果は、脱重合工程(b)への導入前に、ポリエステル供給原料の脱重合反応を開始することである。それにより、供給原料の粘度を大幅に低下させることも可能となり、これにより、それの特に脱重合工程b)への搬送が促進される。有利には、混合セクションは、静的ミキサまたは動的ミキサ、好ましくは静的ミキサを含む。前記混合セクションは、有利には、静的ミキサにおいて運転され、その際の温度は、有利には150~300℃、好ましくは225~275℃であり、その際の滞留時間は、ジエステル供給原料の容積流量に相対する静的ミキサ中の液体の容積の比であるとして定義されて、0.5秒~20分、好ましくは1秒~5分、好ましくは3秒~1分であり、ポリエステル供給原料の重量に相対するジオール重量の重量比が、0.03~3.0、好ましくは0.05~2.0、好ましくは0.1~1.0になるようにされる。ポリエステル供給原料に相対するジオールのこの重量比は、ポリエステル供給原料中のジエステルモルに相対するジオールモルのモル比それぞれ0.09~9.0、好ましくは0.15~6.0、好適には0.3~3.0に相当する。
【0048】
好ましくは、工程(c)から得られ、工程(a)の混合セクションに導入されるジオール流出物、好ましくはジオール流出物の部分は、有利には、工程(a)の混合セクションに導入される前に過熱にされ、ポリエステル供給原料の温度の確立が促進される。
【0049】
コンディショニングセクションが押出機において操作される場合、混合セクションは、押出機において実施されてよい。この場合、それは、反応的押出相
であり、操作される際の温度は、150~300℃、好ましくは225~275℃であり、その際の滞留時間は、ジエステル供給原料の容積流量に相対する前記混合セクション中の液体の容積の比であるとして定義されて、0.5秒~1時間、好ましくは0.5秒~30分、好ましくは1秒~20分、または3秒~10分、あるいは1分~5分であり、ポリエステル供給原料の重量に相対するジオール重量の重量比が、0.03~3.0、好ましくは0.33~2.0、好ましくは0.35~1.0であるようにされる。ポリエステル供給原料に相対するジオールのこの重量比は、ポリエステル供給原料中のジエステルのモルに相対するジオールのモルのモル比0.09~9.0、好ましくは1.0~6.0、優先的には1.05~3.0にそれぞれ相当する。
【0050】
場合によっては、工程d)の終結の際に得られる重質不純物流出物の少なくとも1つの部分は、コンディショニング工程a)に、特に混合セクションに、または直接工程b)の反応セクションに適宜リサイクルされ得、重質不純物流出物の前記部分は、場合によっては、リサイクルされる前にろ過される。
【0051】
(脱重合工程b))
本発明による方法は、解糖による脱重合の工程を含み、コンディショニング工程a)から得られた混合済みの流れを少なくとも、ジオールの供給物を場合により給送し、工程a)および場合による工程b)に導入されるジオールの量の合計に相当する前記工程b)に給送するジオールの全量を、前記工程b)に給送する、すなわち、工程a)から得られた前記混合済み流れ中に含有されるジエステルのモル当たりジオール1~20mol、好ましくは3~15mol、好ましくは5~10molに調節するようにして行う。すなわち、混合済み流れに含有されるジエステルの全量に相対する工程a)および場合による工程b)に導入されるジオールの全量の間の重量比がそれぞれ約0.3~6.7、好ましくは約1.0~5.0、好ましくは1.7~3.3になるように行う。
【0052】
有利には、前記脱重合工程b)は、1個または複数個の反応セクション、好ましくは少なくとも2個の反応セクション、好ましくは2~4個の反応セクションを含み、好ましくは直列で機能する。各反応セクションは、脱重合またはトランスエステル化の反応を行うことを可能とする当業者に知られているあらゆるタイプの反応器において、好ましくは、機械撹拌システムおよび/または再循環ループおよび/または流動化により撹拌される反応器において用いられてよい。前記反応器は、不純物をパージするための円錐底部を含んでよい。好ましくは、前記脱重合工程b)は、少なくとも2個の反応セクション、好ましくは2~4個の反応セクションを含み、これらは直列で機能し、第2の反応セクション以降からの反応セクション(1個または複数個)は、それらの間で同一または異なる温度および第1の反応セクションの温度以下、好ましくは第1の反応セクションより低い、第1の操作セクションの温度に相対して優先的には10~50℃低い、さらには20~40℃低い温度で操作される。
【0053】
前記反応セクション(1個または複数個)は、180~400℃、好ましくは200~300℃、好ましくは210℃~280℃の温度で、特に液相で操作され、反応セクション中の滞留時間は、0.1~10時間、好ましくは0.25~8時間、0.5~6時間である。滞留時間は、前記反応セクションの液体の容積対前記反応セクションを離れる流れの容積流量の比であるとして定義される。
【0054】
工程b)の前記反応セクション(1個または複数個)の操作圧力は、反応系を液相に維持するように決定される。この圧力は、有利には、最低0.1MPa、優先的には最低0.4MPa、かつ、好ましくは5MPa未満である。用語「反応系」は、前記工程の給送から得られた前記工程b)中に存在する成分および相の全てを意味する。
【0055】
ジオールは、有利には、モノエチレングリコールである。
【0056】
解糖反応は、触媒の存在中または非存在中で行われてよい。
【0057】
触媒の存在中で解糖反応が行われる場合、前記触媒は、均一系または不均一系であってよく、当業者に知られているエステル化触媒、例えば、アンチモン、スズまたはチタンの錯体、酸化物および塩、元素周期律表の第(I)族および第(IV)族からの金属のアルコキシド、有機過酸化物または酸性/塩基性の金属酸化物から選ばれる。
【0058】
好適な不均一系触媒は、有利には、触媒の全質量に相対して最低50質量%、優先的には最低70質量%、有利には最低80質量%、大いに有利には最低90質量%、さらにより有利には最低95質量%の固溶体を含む。この固溶体は、式ZxAl2O(3+x)の少なくとも1種のスピネルからなるものであり、式中、xは、0(限界値を除く)と1との間であり、Zは、Co、Fe、Mg、Mn、TiおよびZnから選ばれ、50質量%以下のアルミナおよび元素Zの酸化物を含んでいる。前記好適な不均一系触媒は、有利には、10質量%以下のドーパントを含有している。このドーパントは、ケイ素、リンおよびホウ素から選ばれ、これらは単独でまたは混合物として利用される。例えば、非限定的に、前記固溶体は、スポネルZnAl2O4およびスピネルCoAl2O4の混合物からなってよく、またはほかに、スピネルZnAl2O4、スピネルMgAl2O4およびスピネルFeAl2O4の混合物からなってよく、またはほかに、スピネルZnAl2O4のみからなってよい。
【0059】
好ましくは、前記脱重合工程は、外部触媒をポリエステル供給原料に加えることなく行われる。
【0060】
前記脱重合工程は、有利には、粉体の形態にあるかまたは成形されている固体吸着剤の存在中で行われてよく、その機能は、着色不純物の少なくとも一部を吸収し、それ故に、脱色工程e)を楽にすることにある。前記固体吸着剤は、有利には、活性炭である。
【0061】
解糖反応により、ポリエステル供給原料をエステルのモノマーおよびオリゴマーに、有利にはPETを少なくともモノマーであるビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタラート(BHET)およびBHETオリゴマーに転化させることが可能となる。前記脱重合工程におけるポリエステル供給原料の転化率は、50%超、好ましくは70%超、好適には85%超である。BHETモル収率は、50%超、好ましくは70%超、好適には85%超である。BHETモル収率は、前記工程b)の出口のところのBHETのモル流量対前記工程b)に給送するポリエステル供給原料中のジエステルのモル数に相当する。
【0062】
内部再循環ループが、有利には、工程b)において用いられる。すなわち、内部再循環ループは、反応系の部分の抜き出し、この部分のろ過および前記部分の前記工程b)への再注入である。この内部ループにより、反応液中に存在するかもしれない巨視的固体不純物を取り除くことが可能となる。
【0063】
有利には、脱重合工程b)により、反応流出物を得ることが可能となり、この反応流出物は、ジオール分離工程c)に送られる。
【0064】
(ジオールの分離の工程c))
本発明による方法は、ジオール分離工程c)を含み、工程b)からの流出物を少なくとも給送され、100~250℃の温度、工程b)の圧力より低い圧力で行われ、ジオール流出物および液体モノマーに豊富な流出物を生じさせる。
【0065】
工程c)の主要な役割は、未反応ジオールの全部または一部を回収することにある。
【0066】
工程c)は、工程b)からの流出物の部分を蒸発させてガス流出物および液体流出物を与えるように工程b)の圧力より低い圧力で行われる。前記液体流出物は、液体モノマーに豊富な流出物を構成する。50重量%超、好ましくは70重量%超、好ましくは90重量%超のジオールからなるガス流出物は、ジオール流出物を構成する。
【0067】
工程c)は、有利には、1個または連続する複数個の気-液分離セクション、有利には1~5個の連続する気-液分離セクション、大いに有利には3~5個の連続する気-液分離セクションにおいて行われる。気-液分離セクションのそれぞれは、液体流出物およびガス相を生じさせる。先行セクションからの液体流出物は、次のセクションに給送する。ガス流出物は、全て、回収されて、ジオール流出物を構成する。最後の気-液分離セクションから得られた液体流出物は、液体モノマーに豊富な流出物を構成する。
【0068】
有利には、気-液分離セクションの少なくとも1個は、流下膜式エバポレータまたは薄膜式エバポレータまたは短経路蒸留装置において実施されてよい。
【0069】
工程c)は、液体流出物の温度が、この値より下であるとポリエステルモノマーが沈殿するという値より上かつジオール/モノマーのモル比に応じてこの値より上であるとモノマーが有意に再重合するという高い値より下に維持されるように行われる。工程c)における温度は、100~250℃、好ましくは110~220℃、好ましくは120~210℃である。連続する複数個、有利には連続する2~5個、優先的には連続する3~5個の気-液分離としての操作が特に有利であるのは、それにより、各分離において上述の制約に対応する液体流出物の温度を調節することが可能となるからである。
【0070】
工程c)における圧力は、工程b)における圧力より低く、有利には、温度でジオールの蒸発を可能にする一方で同時に再重合を最小にしかつ最適なエネルギー統合を可能にするように調節される。それは、好ましくは0.00001~0.2MPa、優先的には0.00004~0.15MPa、好ましくは0.00004~0.1MPaである。
【0071】
分離セクション(1個または複数個)は、有利には、当業者に知られているあらゆる方法を介して撹拌される。
【0072】
ジオール流出物は、他の化合物、例えば、染料、軽質アルコール、水またはジエチレングリコールを含有してよい。ジオール流出物の少なくとも1つの部分は、有利には、液体の形態で(すなわち、凝縮の後に)、工程a)および/または工程b)に、および場合によっては工程e)に、場合によっては、本発明による方法に対して外部のジオールの供給物との混合物としてリサイクルされてよい。
【0073】
前記ジオール流出物の全部または一部は、液体の形態で、工程a)および/またはb)にリサイクルされる前に、および/または工程e)において混合物として用いられる前に精製工程において処理されてよい。この精製工程は、包括的ではない方法で、染料を取り除くための固体(例えば活性炭)上への吸収、および不純物、例えば、ジエチレングリコール、水および他のアルコールを分離除去するための1回または複数回の蒸留を含んでよい。
【0074】
(モノマー分離工程d))
本発明による方法は、工程c)から得られたモノマーリッチ流出物を分離除去する工程d)を含み、重質不純物流出物および予備精製済みモノマー流出物を生じさせる。
【0075】
前記工程d)は、有利には、250℃以下、好ましくは230℃以下、大いに好ましくは200℃以下、かつ好ましくは110℃以上の温度、および0.001MPa以下、好ましくは0.0005MPa以下、好ましくは0.000001MPa以下の圧力で行われ、液体滞留時間は、10分以下、好ましくは5分以下、好ましくは1分以下、かつ好ましくは0.1秒以上である。
【0076】
この分離工程d)の目的は、蒸発したモノマー、特にBHETを、全く転化させられなかったオリゴマーであって、液体のままにあり、それ故に重質不純物、特に顔料を吸収しているオリゴマーから、未転化ポリエステルポリマーから、存在するかもしれない他のポリマーからおよび重合触媒から分離する一方で同時に、再重合によるモノマーの喪失を最小にすることにある。わずかなオリゴマーが、場合によっては、モノマー、特に、小サイズのものと同伴されてよい。これらの重質不純物は、オリゴマーと共に重質不純物流出物中に見出される。
【0077】
ポリエステル供給原料中の重合触媒の考えられる存在に起因して、分離は、この工程の間のモノマーの再重合のあらゆるリスクを制限するために非常に短い液体滞留時間により250℃を超えない温度で行われなければならない。簡単な常圧蒸留による分離は、それ故に、想定され得ない。
【0078】
分離工程d)は、有利には、流下膜式または薄膜式の蒸発システムにおいてまたは短経路流下膜式または薄膜式の蒸留によって行われる。非常に低い操作圧力が必要であるのは、250℃未満、好ましくは230℃未満の温度で工程d)を行うことができるようにする一方で同時にモノマーの気化を可能にするためである。
【0079】
重合阻害剤は、有利には、前記工程d)に給送する前に液体モノマーリッチ流出物と混合されてよい。
【0080】
溶剤(flux)が、有利には、前記工程d)に給送する前に液体モノマーリッチ流出物と混合されてもよく、短経路蒸留または蒸発システムの底部のところで重質不純物、特に顔料の除去が促進される。この溶剤は、工程d)の操作条件下に、モノマー、特にBHETの沸点よりはるかに高い沸点を有してよい。それは、例えば、ポリエチレングリコールまたはPETオリゴマーであってよい。
【0081】
前記重質不純物流出物は、分離除去されなかった、顔料、オリゴマーおよび場合によるBHETを特に含む。前記重質不純物流出物は、有利には、場合によりリサイクルされる前に少なくとも1回の分離工程を、例えば、ろ過によって経てよく、顔料および/または他の固体不純物の量が低減する。分離除去されかつ高固体含有率を有している前記重質不純物流出物の一部は、有利には、本方法からパージされかつ焼却システムに送られてよい。
【0082】
前記予備精製済みモノマー流出物は、有利には、気-液分離セクションに送られ、当業者に知られているあらゆる設備において、100~250℃、好ましくは110~200℃、好ましくは120~180℃の温度、0.00001~0.1MPa、好ましくは0.00001~0.01MPa、好ましくは0.00001~0.001MPaの圧力で実施される。前記分離セクションにより、ガス状ジオール流出物および予備精製済み液体モノマー流出物を分離することが可能となる。前記気-液分離により、前記ガス状ジオール流出物中に、工程d)において予備精製済みモノマー流出物と同伴されるジオールの50重量%超、好ましくは70重量%超、好適には90重量%超を回収することによって、予備精製済みモノマー流出物中に残っているジオールの量をさらに低減させることが可能となる。前記ガス状ジオール流出物中に同伴されるモノマーの量は、予備精製済みモノマー流出物中に存在するモノマーの量の好ましくは1重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、より好ましくは0.01重量%未満である。次いで、前記ガス状ジオール流出物は、有利には、凝縮させられ、場合によっては、精製工程において前処理され、工程c)から得られたジオール流出物と共に工程a)および/または工程b)および/または混合物として工程e)にリサイクルされる。
【0083】
(脱色工程e))
本発明による方法は、予備精製済みモノマー流出物を脱色する工程を含み、吸着剤の存在中、100~250℃、好ましくは110~200℃、好ましくは120~180℃の温度、0.1~1.0MPa、好ましくは0.2~0.8MPa、好ましくは0.3~0.5MPaの圧力で行われ、精製済みモノマー流出物を生じさせる。
【0084】
前記吸着剤は、染料を吸収することができる当業者に知られているあらゆる吸着剤であってよく、例えば、活性炭または粘土であり、有利には活性炭である。
【0085】
予備精製済みモノマー流出物は、有利には、工程c)から得られかつ場合によっては精製工程において前処理されたジオール流出物の部分とまたは本発明による方法に対して外部のジオールの供給物と混合される。
【0086】
精製済みモノマー流出物は、有利には、当業者に知られている重合工程に、未加工PETと決して区別され得ないPETを生じさせるという目的のために、有利には、選択された重合工程の後にエチレングリコール、テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチルを給送する下流に給送する。重合工程における精製済みモノマー流出物の給送により、等価な流量で、テレフタル酸ジメチルまたはテレフタル酸の給送を低減させることが可能となる。
【0087】
以下の図面および実施例は、本発明を例証するが、本発明の範囲を制限するものではない。
【0088】
以下の図および実施例は、本発明を説明するが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0089】
(実施例)
(実施例1-本発明に合致する)
この実施例において、コンディショニング工程a)および脱重合工程b)のみを、100%PET供給原料を連続的に脱重合するための方法について記載する。リサイクリング容量は、PET20KTY(キロトン/年)(すなわち、2500kg/時間)である。
【0090】
コンディショニングおよび予備混合の工程(a)を、
図1に示されるように、PET供給原料を融解させるための押出機および溶解PET供給原料をエチレングリコール(MEG)と予備混合するための静的ミキサにおいて実施する。
【0091】
反応セクションは、カスケード状の2基の完全撹拌反応器から構成される。反応器の作業容積は、R1:3.75m3、R2:22.4m3である。反応器を機械的に撹拌する。反応器R1は、スパイラルリボンタイプの撹拌ヘッドを備えている。この撹拌ヘッドは、当業者に周知であり、高粘度での混合に特に適している。
【0092】
押出機、静的ミキサおよび第1の反応器R1における操作条件を下記の表1にまとめる。
【0093】
【0094】
融解供給原料とエチレングリコールとの重量比0.23での予備混合の使用により、融解PET供給原料のみについての530Pa・sの値から混合物の粘度約10Pa・sに、特に、第1の反応器R1の入口のところで供給原料の粘度を低下させることが可能となる。本発明の方法によるコンディショニング工程a)により、それ故に、第1の反応器R1に入る前に供給原料の粘度を著しく低下させることが可能となる。
【0095】
第1の反応器の混合の質に関するこのような粘度の効果をチェックするために、基準t*>10を満たすために必要とされる撹拌力を、反応器R1について計算する。
【0096】
10Pa・sのオーダーの反応器R1の入口のところの粘度により、反応器R1における1500W/m3未満の吸収された撹拌力について、撹拌基準t*>10を確実にすることが可能になるのに対して、融解したPET供給原料のみにより、1500W/m3未満の撹拌力は、撹拌基準t*>10を満たすことを保証しない。
【0097】
それ故に、供給原料を、溶媒、例えば、MEGと、反応セクションの上流で予備混合することは、PET供給原料を脱重合するための方法に柔軟性を与えることおよび脱重合反応器において良好な質の混合を保証する一方で同時に全体的に合理的な撹拌力に応じることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【国際調査報告】