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  • 特表-非水性架橋性組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】非水性架橋性組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20230213BHJP
   C09D 175/02 20060101ALI20230213BHJP
   C09D 201/02 20060101ALI20230213BHJP
   C09D 175/12 20060101ALI20230213BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20230213BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230213BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20230213BHJP
   C08G 18/72 20060101ALI20230213BHJP
   C08L 75/02 20060101ALI20230213BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D175/02
C09D201/02
C09D175/12
C09D7/65
C09D7/63
C08G18/00 A
C08G18/72 010
C08L75/02
C08L101/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537597
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(85)【翻訳文提出日】2022-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2020086750
(87)【国際公開番号】W WO2021122978
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】19218048.7
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518326445
【氏名又は名称】オルネクス ネザーランズ ビー.ヴイ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デ ウォルフ、エルウィン
(72)【発明者】
【氏名】ノールドーバー、バルト
(72)【発明者】
【氏名】ファラニ、フランチェスカ
(72)【発明者】
【氏名】マース、シャロン
(72)【発明者】
【氏名】コーケン、ロナルド
【テーマコード(参考)】
4J002
4J034
4J038
【Fターム(参考)】
4J002BG03X
4J002CF00X
4J002CG00X
4J002CH00X
4J002CK01W
4J002CK02X
4J002CM01X
4J002GH00
4J034BA08
4J034CA04
4J034CA15
4J034CA16
4J034CA36
4J034CB03
4J034CB04
4J034CB05
4J034CC02
4J034DA01
4J034DA03
4J034DF01
4J034DF02
4J034DF03
4J034HA01
4J034HA07
4J034HB08
4J034HB09
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC71
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC17
4J034KD02
4J034QC04
4J034RA07
4J038DG002
4J038DG072
4J038DG191
4J038DG262
4J038KA03
4J038KA04
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA09
4J038KA20
4J038MA13
4J038MA14
4J038NA01
4J038PB05
4J038PB07
4J038PC02
4J038PC08
(57)【要約】
コーティングの光沢を低減するための粒子状ポリ尿素化合物a2)、粒子状ポリ尿素化合物を含む樹脂組成物及び架橋性組成物であって、10μmより小さい直径を有する粒子状ポリ尿素化合物の粒子の体積百分率が40%以下であり、20μmより大きい直径を有するポリ尿素生成物の体積百分率が11%以上である、粒子状ポリ尿素化合物a2)、樹脂組成物及び架橋性組成物が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングの光沢を低減するための粒子状ポリ尿素化合物a2)であって、
・10μmより小さい直径を有する粒子状ポリ尿素化合物a2)の粒子の体積百分率は、40%以下、好ましくは30%未満、より好ましくは25%未満であり、20μmより大きい直径を有するポリ尿素生成物の粒子の体積百分率は、11%以上、好ましくは15%超、より好ましくは25%超、最も好ましくは40%超であり、
・ポリ尿素化合物a2)の平均粒径は、11~80μmであり、
・ポリ尿素化合物a2)は、1分子当たり少なくとも2個及び多くとも6個の尿素結合を有する平均尿素結合数を含む、
粒子状ポリ尿素化合物a2)。
【請求項2】
粒径分布の90体積%における粒径と粒径分布の10体積%における粒径との比である相対粒径分布幅が、1~10、好ましくは2~8、より好ましくは2~6である、請求項1に記載の粒子状ポリ尿素化合物a2)。
【請求項3】
ポリ尿素化合物a2)の平均粒径が、15~80μm、好ましくは15~60μm、より好ましくは19~41μmである、請求項1又は2に記載の粒子状ポリ尿素化合物a2)。
【請求項4】
ポリ尿素化合物a2)が、ポリイソシアナート若しくはそのイソシアヌラート、ビウレット、若しくはウレトジオン誘導体、又はポリイソシアナートの他の誘導体と少なくとも1種のアミン、好ましくはモノアミンとの反応により形成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の粒子状ポリ尿素化合物a2)。
【請求項5】
・ポリイソシアナートが、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアナート(HMDI)、そのイソシアヌラートトリマー又はビウレット、トランス-シクロへキシレン-1,4-ジイソシアナート、パラ-及びメタ-キシリレンジイソシアナート、トルエンジイソシアナート、並びにそれらの混合物からなる群から選択され、且つ/或いは
・アミンがモノアミンであり、第一級アミン、好ましくはn-脂肪族アミン、より好ましくはn-アルキルアミン、例えばヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、3-メトキシプロピルアミン、S-α-メチルベンジルアミン、2-フェネチルアミン、又はそれらの混合物である、
請求項4に記載の粒子状ポリ尿素化合物a2)。
【請求項6】
ポリ尿素化合物a2)の平均尿素結合数は、1分子当たり少なくとも2個及び多くとも4.5個、好ましくは少なくとも2個及び多くとも4個、より好ましくは少なくとも2個及び多くとも3.9個、最も好ましくは少なくとも3個及び多くとも3.9個である、請求項1~5のいずれか一項に記載の粒子状ポリ尿素化合物a2)。
【請求項7】
・下記を含むフィルム形成樹脂a1)
○各官能基が少なくとも1種の官能性を有する少なくとも2個の官能基、及び/又は
○少なくとも2種の官能性を有する少なくとも1個の官能基、
・請求項1~6に記載の粒子状ポリ尿素化合物a2)、
・任意選択により、分散剤a3)、並びに
・任意選択により、化合物a1)、a2)及びa3)と異なる化合物a4)の1種又は複数
を含む樹脂組成物A。
【請求項8】
粒子状ポリ尿素化合物a2)が、フィルム形成樹脂a1)及びポリ尿素化合物a2)の全重量に照らして3~30重量%、好ましくは4~20重量%、より好ましくは5~15重量%の含有量で存在する、請求項7に記載の樹脂組成物A。
【請求項9】
樹脂組成物Aの全重量に照らして、
・ポリ尿素化合物a2)が、2.5~20重量%存在し、
・フィルム形成樹脂a1)が、1~97.5重量%、好ましくは5~97.5重量%、より好ましくは15~97.5重量%、さらにより好ましくは30~97.5重量%存在し、
・分散剤a3)が、0~10重量%存在し、
・1種又は複数の化合物a4)が、0~96.5重量%、好ましくは0~92.5重量%、より好ましくは0~82.5重量%、さらにより好ましくは0~78重量%存在し、
重量百分率の総和は100%を超えない、
請求項7又は8に記載の樹脂組成物A。
【請求項10】
ポリ尿素化合物a2)が、フィルム形成樹脂a1)の存在下で調製される、請求項7~9のいずれか一項に記載の樹脂組成物A。
【請求項11】
分散剤a3)が存在し、顔料親和性アニオン、カチオン又は非イオン基を有するポリエステル、ポリウレタン、及びポリアクリラート、並びに塩基性顔料親和性基を有する高分子量ブロックコポリマー、並びにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項7~10のいずれか一項に記載の樹脂組成物A。
【請求項12】
a4)が、有機溶媒a4)-1及び/又は添加剤a4)-2である、請求項7~11のいずれか一項に記載の樹脂組成物A。
【請求項13】
反応性調節剤e)を含み、その反応性調節剤が、カルボン酸、一般式R-SHの化合物、pKa<12を有するX-H基を含む化合物、R-OH、β-ジケトン、β-ケトエステル、α-ヒドロキシケトン、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項7~12のいずれか一項に記載の樹脂組成物A。
【請求項14】
・フィルム形成樹脂a1)の官能基が、ヒドロキシ、第一級アミン、第二級アミン、メルカプタン、活性化不飽和C=C部分、カルボン酸、エポキシド、イソシアナート、活性化メチレン、メチン種、例えばアセチルアセトン、アセトアセタート又はマロナート(の誘導体)、及びそれらの混合物からなる群から選択され、且つ/或いは
・フィルム形成樹脂a1)が、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボナート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノ樹脂、並びにそれらの混合物及び混成体からなる群から選択される、
請求項7~13のいずれか一項に記載の樹脂組成物A。
【請求項15】
請求項7~14のいずれか一項に記載の樹脂組成物Aを含む架橋性組成物であって、
・フィルム形成樹脂b)及び/又はフィルム形成樹脂a1’)、
・任意選択により、架橋剤c)、
・任意選択により、フィルム形成樹脂a1)及び/又はフィルム形成樹脂b)の官能基と、架橋剤c)が存在する場合それとの反応、及び/又はフィルム形成樹脂b)との反応、及び/又はフィルム形成樹脂a1’)との反応を触媒するための触媒d)、
・任意選択により、反応性調節剤e)、
・任意選択により、揮発性有機化合物f)、
・任意選択により、反応性希釈剤g)、
・任意選択により、別の樹脂h)、並びに
・任意選択により、粒子状ポリ尿素化合物a2)と異なる又は同じである別のつや消し組成物i)
をさらに含み、フィルム形成樹脂a1)、a1’)、及びb)、並びに存在する場合架橋剤c)、は、少なくとも2個の官能基を含み、各官能基は少なくとも1種の官能性を有し、且つ/又は少なくとも1個の官能基は少なくとも2種の官能性を有し、
フィルム形成樹脂a1)、及び/又はフィルム形成樹脂a1’)及び/又はフィルム形成樹脂b)は、フィルム形成樹脂b)及び/又はフィルム形成樹脂a1’)及び/又は架橋剤c)が存在する場合それと反応可能であり、
フィルム形成樹脂a1’)及びフィルム形成樹脂b)は、フィルム形成樹脂a1)と異なる又は同じである、
架橋性組成物。
【請求項16】
・フィルム形成樹脂a1’)及びb)の官能基が、ヒドロキシ、第一級アミン、第二級アミン、メルカプタン、活性化不飽和C=C部分、カルボン酸、エポキシド、イソシアナート、活性化メチレン、メチン種、例えばアセチルアセトン、アセトアセタート又はマロナート(の誘導体)、及びそれらの混合物からなる群から選択され、且つ/或いは
・フィルム形成樹脂a1’)及びb)が、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボナート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノ樹脂、並びにそれらの混合物及び混成体からなる群から選択される、
請求項15に記載の架橋性組成物。
【請求項17】
架橋剤c)が、イソシアナート、ヒドロキシ、第一級アミン、第二級アミン、メルカプタン、活性化不飽和C=C部分、カルボン酸、エポキシド、活性化メチレン、メチン種、例えばアセチルアセトン、アセトアセタート又はマロナート(の誘導体)、及びそれらの混合物からなる群から選択される官能基を有するオリゴマー又はポリマー化合物を含む、請求項15又は16に記載の架橋性組成物。
【請求項18】
ポリ尿素化合物a2)の量が、架橋性組成物中のフィルム形成樹脂a1)、粒子状ポリ尿素化合物a2)、――並びに存在する場合には、分散剤a3)、添加剤a4)-2の不揮発性部分、架橋剤c)、フィルム形成樹脂b)、フィルム形成樹脂a1’)、触媒d)、反応性調節剤e)、反応性希釈剤g)、樹脂h)、及びつや消し組成物i)――の全量に対して0.5~25重量%、好ましくは4~20重量%、より好ましくは4~15重量%である、請求項15~17のいずれか一項に記載の架橋性組成物。
【請求項19】
物品又は基材をコーティングする方法であって、50~60μmの乾燥膜厚(DFT)で適用したとき、60°の角度で多くとも45光沢単位、好ましくは多くとも30光沢単位、より好ましくは多くとも20光沢単位の光沢測定値を有する低減された光沢コーティングをもたらすために
(i)請求項15~18に記載の架橋性組成物を適用するステップ、
(ii)適用された組成物を硬化するステップ
を含む方法。
【請求項20】
請求項15~18のいずれか一項に記載の組成物でコーティングされた基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低減された光沢をもつコーティングを提供することができる粒子状ポリ尿素化合物及びそのようなポリ尿素化合物を含む樹脂組成物に関する。さらに、本発明は、そのような樹脂組成物を含む架橋性組成物、低減された光沢を有するコーティング付き基材を得るために前記架橋性組成物で基材をコーティングする方法、及び前記架橋性組成物でコーティングされた基材に関する。
【背景技術】
【0002】
特に高固形分(架橋性)組成物のつや消しについて、シリカベースの添加剤、ワックス又は微粉化ポリマーつや消し剤などの従来技術は低光沢値に達するのに高充填量のそのようなつや消し添加剤を要するので、つや消しの達成が困難であることは一般的に知られている。シリカベースのつや消し剤の高充填量の使用は、数種の化学薬品に対する低耐性及び塗料の低安定性を引き起こすことが一般に知られている。したがって、製剤安定性並びに低光沢コーティングの機械的及び化学的抵抗性を改善する必要がある。さらに、コーティングフィルムの厚さに応じて一貫したつや消し性能を得ることは問題となることが多く、シリカベースの光沢低減剤の取扱いは典型的に煩雑である。また、シリカベースの添加剤を含むコーティングの耐久性及び透明性は最適でないことが多い。さらに、化学線によって硬化された塗料において、良好なつや消し効果を特に他の重要なコーティング特性の良好な性能とあいまって得ることが特に困難であることは公知である。最後に、塩基触媒塗料系において、多くの従来型つや消し剤の酸性の性質は、前記塗料の乾燥性能を強力に阻害する可能性がある。他の二成分系においても、これらの作用剤は、前記塗料の乾燥性能を阻害する可能性がある。
【0003】
フィルム形成樹脂においてポリ尿素ベースの化合物をレオロジー剤として使用することは、当技術分野において公知である。ポリ尿素化合物を垂れ制御剤として使用することができる。例えば、米国特許第4.851,294号、US4311622、US20140378587又は欧州特許出願公開第01 92 304号を参照のこと。US20030180539には、化学線を使用して硬化可能な組成物において尿素結晶のチキソトロープ剤としての使用が記載されている。これらの組成物すべてにおいて、ポリ尿素ベースの化合物は、適用された塗料のレオロジーを制御し、さらに詳細には塗料の垂れを防止するために使用される。これらの化合物は、一般的に非常に小さい、典型的に10μmをはるかに下回る平均粒径、及び狭い粒径分布を有する。しかし、先行技術において公知のこれらのポリ尿素粒子は、コーティング組成物の光沢を減少させない。
【0004】
JP2629747は、さまざまな樹脂溶液における尿素ベースの有機光沢モディファイヤーを記載し、そのような組成物の適用から生じるコーティングの光沢を効果的に低減できることを明らかにしている。また、改善された塗料安定性及び耐摩耗性も記載されている。しかし、JP2629747に提示された系は、非揮発性含有量が15~20重量%と低く、そのような系は、揮発性有機化合物(VOC)含有量が大変高いことを意味し、環境及び健康の観点から好ましくない。さらに、記載された尿素ポリマーは、化学量論量に近いジアミン及びジイソシアナートモノマーから調製され、多くの尿素連結を含む直鎖で比較的高分子量の種が得られる。分子量及びそのような系中の尿素連結の数は、制御するのが困難であり、粒径分布が幅広くなり、したがって、つや消しコーティング組成物の最終光沢の制御が限定されたものとなる。さらに、粒径分布の制御が欠如すると、適用されたコーティングの乾燥膜厚より大きな直径を有する大変大きな粒子が高百分率で存在することになり、最終コーティングに塊状欠陥が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、力強い調節可能なつや消し効果を、良好な化学的及び機械的安定性、良好なフィルム透明性及び耐久性と組み合わせてもたらし、高固形分においても適用可能な組成物が明らかに求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
今回驚くべきことに、出願人らは、請求項1に記載の粒子状ポリ尿素化合物a2)を提供することによって、上記の課題を完全にではないにしても少なくとも部分的に克服する化合物及び新しい組成物を見出した。したがって、本発明の第1の態様は、コーティングの光沢を低減するための粒子状ポリ尿素化合物a2)であって、
・粒子状ポリ尿素化合物a2)は、1分子当たり平均的に少なくとも2個及び多くとも6個の尿素結合(又は1分子当たり少なくとも2個及び多くとも6個の尿素結合を有する平均尿素結合数)を含み、
・ポリ尿素化合物a2)の平均粒径は、11~80μmであり、
・(レーザー回折装置を使用して測定された粒径分布データに基づいて)10μmより小さい直径を有する粒子状ポリ尿素化合物a2)の粒子の体積百分率は、40%以下、好ましくは30%未満、より好ましくは25%未満であり、20μmより大きい直径を有するポリ尿素生成物(又はポリ尿素化合物a2))の粒子の体積百分率は、11%以上、好ましくは15%超、より好ましくは25%超、最も好ましくは40%超である、
粒子状ポリ尿素化合物a2)に関連している。
【0007】
本明細書の文脈の中で、ポリ尿素化合物a2)は、ポリ尿素生成物と呼ばれることもある。本明細書の文脈の中で、尿素結合は、尿素基又は尿素連結と呼ばれることもある。本明細書の文脈の中で、分子は、共有化学結合によって一緒に保持される原子の電気的に中性の基と定義される。(粒子状ポリ尿素化合物a2)の)ある直径の粒子の体積百分率は、Malvern Mastersizer Sを使用してレーザー回折により測定される。
【0008】
第2の態様は、少なくとも2個の官能基を含むフィルム形成樹脂a1)であって、各官能基は少なくとも1種の官能性を有し、且つ/又は少なくとも1個の官能基は少なくとも2種の官能性を有する、フィルム形成樹脂a1);本発明の粒子状ポリ尿素化合物a2);任意選択により、分散剤a3);並びに任意選択により、a1)、a2)及びa3)と異なる化合物a4)の1種又は複数を含む樹脂組成物Aに関連している。
【0009】
本明細書の文脈の中で、官能基の官能性は、選択されたある種の反応性硬化化学において(すなわち、あるタイプの硬化を受けるとき)、官能基が(異なるタイプ又は同じタイプの)別の官能基と形成することができる単一の共有結合の数、さらに詳細には、官能基が異なるタイプ又は同じタイプの別の官能基と形成することができる(又は形成する)単一の共有結合の数を指す。例えば、ヒドロキシル官能基は、イソシアナート官能基又はカルボン酸官能基との反応において1の官能性を有する。例えば、アクリロイル官能基は、マイケル付加により酸性マロナートC-Hと反応するとき1種の官能性を有するが、同じアクリロイル官能基は、ラジカル開始剤の存在下で又は化学線の影響を受けて、(すなわち、同じタイプの)他のアクリロイル官能基又は別のタイプのエチレン性不飽和部分と反応するとき2種の官能性を有する。
【0010】
本明細書の文脈の中で、用語「少なくとも1つ」は、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上を指す。本明細書の文脈の中で、用語「少なくとも2つ」は、2つ、3つ、又はそれ以上を指す。
【0011】
驚くべきことに、そのような粒子状ポリ尿素化合物a2)及び粒子状ポリ尿素化合物a2)を含むそのような樹脂組成物Aの使用によって、適用及び硬化後に、低減された光沢を改善された耐久性及び化学的抵抗性と組み合わせて有する架橋性コーティング組成物を得ることが可能になることが見出される。樹脂組成物Aは、架橋性組成物、特に揮発性有機成分及び高固形物の含有量が低い架橋性組成物に製剤化するのに極めて適している。さらに、得られた架橋組成物は、乾燥膜厚に応じて、良好な機械的特性、優れた外観及びつや消し効果の大変良好な安定性を提供する。この架橋性組成物の場合、コーティングの引っ掻き時に光沢の増加が低かったこと、並びに架橋性組成物は、水及び太陽光への曝露時に白化が(当技術分野において公知の従来型つや消し添加剤を含む組成物と比べて)はるかに少ないことは特に驚きである。さらに、本発明によるポリ尿素化合物a2)は、不粘着時間に対して有意な消極的影響を与えず、又はそれどころか積極的影響を与え、優れたキセノン耐性を有することが見出された。さらに特に、本発明によるポリ尿素化合物を有する樹脂組成物Aは、二成分ポリウレタン(2K PU)やリアルマイケル付加(RMA)架橋性組成物などの液体二成分コーティング系のような周知の架橋性組成物に使用され得る。また、本発明によるポリ尿素化合物a2)を有する樹脂組成物Aは、UV硬化性又は他の化学線硬化性組成物などの架橋性液体コーティング系に使用され得る。さらに、樹脂組成物A中の前記ポリ尿素粒子は、二成分ポリウレタン(2K PU)やリアルマイケル付加(RMA)硬化性組成物などの液体二成分コーティング系の架橋性組成物の硬化にマイナスの影響を及ぼさないこと、及びこれらの架橋性組成物は、常温保存可能であることが見出された。さらに、ポリ尿素化合物a2)を含む樹脂組成物Aは、例えば木材用途で使用される低光沢塗料製剤のより容易な製剤を促進することも見出された。これらの塗料製剤は、典型的に好ましくは15~45%という低固形分を有するものである。木材に適用するためのそのような塗料は、典型的に従来型シリカ及び/又はワックス光沢低減剤を使用してつや消しされ、好適なレオロジー的挙動を塗料に付与するために酢酸酪酸セルロース(CAB)化合物を含むことが多い。本発明の粒子状ポリ尿素化合物を含む樹脂組成物Aは、これらのCAB添加剤を使用することなしに、記載されたより低い固形物で適用することができ、必要とされるレオロジー的挙動をやはり有することが見出された。さらに、本発明の架橋性組成物においてCABが存在していないことによって、適用層数に応じて、つや消し効果が改善され、つや消し効果の安定性が改善されることが見出された。また、本発明による粒子状尿素化合物は、当技術分野において既に記載されている周知のシリカベースのつや消し剤と比べて、水平面に近い視角におけるつや消し効果が改善される(すなわち、85°の角度における光沢低減)。
【0012】
本明細書の文脈の中で、つや消し剤は、つや消し組成物、つや消し化合物、又はつや消し添加剤と呼ばれることもある。
【0013】
したがって、本発明の第3の態様は、本発明の樹脂組成物A、さらに
・フィルム形成樹脂b)及び/又はフィルム形成樹脂a1’)、
・任意選択により、架橋剤c)、
・任意選択により、フィルム形成樹脂a1)及び/又はフィルム形成樹脂b)の官能基と、架橋剤c)が存在する場合それとの反応、及び/又はフィルム形成樹脂b)との反応、及び/又はフィルム形成樹脂a1’)との反応を触媒するための触媒d)、
・任意選択により、反応性調節剤e)、
・任意選択により、揮発性有機化合物f)、
・任意選択により、反応性希釈剤g)、
・任意選択により、別の樹脂h)、
・任意選択により、粒子状ポリ尿素化合物a2)と異なる又は同じである別のつや消し組成物i)、好ましくは粒子状ポリ尿素化合物a2)と異なるつや消し組成物i)
を含む架橋性組成物であって、フィルム形成樹脂a1)、a1’)、及びb)、並びに架橋剤c)が存在する場合それは、少なくとも2個の官能基を含み、各官能基は少なくとも1種の官能性を有し、且つ/又は少なくとも1個の官能基は少なくとも2種の官能性を有し、フィルム形成樹脂a1)、及び/又はフィルム形成樹脂a1’)、及び/又はフィルム形成樹脂b)は、フィルム形成樹脂b)及び/又はフィルム形成樹脂a1’)及び/又は架橋剤c)が存在する場合それと反応可能であり、フィルム形成樹脂a1’)及びフィルム形成樹脂b)は、フィルム形成樹脂a1)と異なる又は同じである、架橋性組成物に関連している。フィルム形成樹脂a1’)は、以下にさらに記載される樹脂組成物A’の一部分である。
【0014】
好ましくは、架橋性組成物は、(Fischer Permascope MP40E-Sを使用して測定して)50~60μmの乾燥膜厚(DFT)で適用したとき、(BYKヘーズ-光沢計を使用して決定して)60°の角度で多くとも45光沢単位、好ましくは多くとも30光沢単位、より好ましくは多くとも20光沢単位の光沢測定値を有する低減された光沢のコーティングをもたらすことができる。
【0015】
本発明は、第4の態様において、物品又は基材を本発明による架橋性組成物でコーティングする方法に関し、第5の態様において、本発明の架橋性組成物でコーティングされた基材に関する。コーティングされた基材は、(Fischer Permascope MP40E-Sを使用して測定して)50~60μmの乾燥膜厚(DFT)で適用したとき、(BYKヘーズ-光沢計を使用して決定して)60°の角度で多くとも45光沢単位、好ましくは多くとも30光沢単位、より好ましくは多くとも20光沢単位の光沢測定値を有する低減された光沢を有する。
【0016】
次に、本発明の態様をより詳細に説明する。そのために、添付の図、すなわち図1を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】粒径に照らして粒子状ポリ尿素化合物の粒子の体積%を示す粒径分布の代表を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
粒子状ポリ尿素化合物a2)
本発明の第1の態様は、粒子状ポリ尿素化合物a2)に関連している。粒子状ポリ尿素化合物a2)は、架橋性組成物において使用されることがあり、その組成物は、基材への適用後及び乾燥後にコーティングを形成する。
【0019】
本発明による粒子状ポリ尿素化合物a2)は、1分子当たり平均的に少なくとも2個及び多くとも6個の尿素結合を含む。本発明による粒子状ポリ尿素化合物a2)は、コーティングの光沢を低減することができる。10μmより小さい直径を有する粒子状ポリ尿素化合物の粒子の体積百分率は、40%以下、好ましくは30%未満、より好ましくは25%未満であり、20μmより大きい直径を有するポリ尿素生成物の粒子の体積百分率は、11%以上、好ましくは15%超、より好ましくは25%超、最も好ましくは40%超である。粒子状ポリ尿素化合物a2)の平均粒径は、11μm~80μmの範囲である。
【0020】
一実施形態において、粒子状ポリ尿素化合物の平均粒径は、11μm~80μmの範囲、好ましくは15μm~80μmの範囲、より好ましくは15~60μm、最も好ましくは19~41μmである。
【0021】
別の実施形態において、粒子状ポリ尿素化合物a2)は、10μmより小さい直径を有する粒子の体積百分率が0~40%、好ましくは0~30%、より好ましくは0~25%の範囲である粒径分布を有する。20μmより大きい直径を有する粒子の体積百分率は、11~100%、好ましくは15~100%、より好ましくは25~80%、最も好ましくは40~70%の範囲である。
【0022】
好ましくは、粒子状ポリ尿素化合物a2)は架橋されていない。
【0023】
好ましくは、粒子状ポリ尿素化合物a2)は、200~10,000ダルトン、より好ましくは280~7,500ダルトン、さらにより好ましくは380~4,500ダルトン、最も好ましくは380~3,000ダルトンの重量平均分子量を有する。
【0024】
好ましくは、ポリ尿素化合物a2)は、架橋性組成物を硬化させる温度より高い融点を有する。より好ましくは、ポリ尿素化合物a2)の融点と架橋性組成物の硬化温度の差は、10℃より大きく、より好ましくは20℃より大きく、最も好ましくは30℃より大きい。
【0025】
好ましくは、ポリ尿素化合物a2)の融点は、250℃未満、より好ましくは200℃未満、さらにより好ましくは150℃未満、最も好ましくは100℃未満である。
【0026】
ポリ尿素化合物a2)の融点は、ASTM E324に従って測定することができる。
【0027】
一実施形態において、基材に適用された架橋性組成物の乾燥後の厚さの2倍より大きい粒子状ポリ尿素化合物a2)の粒子の体積百分率は、10%より低く、好ましくは5%より低く、より好ましくは1%又は0.5%より低く、最も好ましくは0%である。本出願において、粒子状ポリ尿素化合物の粒子の10体積%超が乾燥した架橋性組成物(すなわち、コーティング)の厚さの2倍より大きい直径を有する場合、これはコーティングにおける塊状欠陥を引き起こし、したがって不十分なコーティング外観につながることが見出されている。
【0028】
別の実施形態において、基材に適用された架橋性組成物の乾燥後の厚さより大きい粒子状ポリ尿素化合物a2)の粒子の体積百分率は、10%より低く、好ましくは5%より低く、より好ましくは1%又は0.5%より低く、最も好ましくは0%である。
【0029】
本発明によれば、体積百分率又は体積%又は体積分率は、粒子状ポリ尿素化合物の全体積に対する、粒径分布においてある粒径(又は直径)、又は粒径範囲を有する粒子状ポリ尿素化合物の粒子の体積を意味する。さらに詳細には、体積百分率又は体積%又は体積分率は、粒子の全体積の百分率として計算して、各粒径クラスが粒径分布全体に占める割合を意味する。
【0030】
本発明によれば、粒径分布は、体積%が粒径に照らして測定された体積分布を意味する。
【0031】
体積%、粒径及び粒径分布に関して本発明に記載されている値は、Malvern Mastersizer Sレーザー回折装置を使用したレーザー回折により測定される(実験装置及びデータ処理に関するさらに詳細については実施例の項を参照のこと)。この装置を用いれば、全粒子体積に対する累積体積百分率(y軸)対粒子直径(μm)(x軸)をプロットすること又は対応する表を使用することによって解釈することができるいくつかのデータを得ることができる。例えば、20μmより大きい粒子の体積百分率を測定するために、最初に、すべての粒子の全体積に対する20μmより小さい直径の粒子の体積百分率を補間により決定した。20μmより大きい粒子の体積百分率は、100-20μmより小さい粒子の補間体積百分率である。
【0032】
ポリ尿素化合物の平均粒径は、Malvern Mastersizer Sレーザー回折装置を使用して、体積モーメント平均直径D[4,3]として決定される。
【0033】
非架橋ポリ尿素化合物a2)の平均尿素結合数は、1モルのポリイソシアナートとモノアミン及びジアミンの混合物との反応をイソシアナート基/全アミン基のモル比:1で転化率100%と仮定して、以下の方程式Iを使用して計算される。
方程式I:
ポリ尿素化合物a2)の平均尿素結合数=(ポリイソシアナートの平均官能性)/(1-ジアミンのモル数)
ただし、ジアミンのモル数は厳密に1未満である(すなわち、ジアミンのモル数が1と等しいことはあり得ない)ことを条件とする。
【0034】
例えば、ポリ尿素化合物a2)が、平均官能性2の1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート1モル及びベンジルアミン2モルから調製される場合、ポリ尿素化合物a2)の平均尿素結合数は、2/(1-0)=2個と計算される。ポリ尿素化合物a2)が、平均官能性3個のイソシアヌラート化合物1モル、ジアミン0.5モル及びモノアミン2モルから調製される場合、ポリ尿素化合物a2)の平均尿素結合数は、3/(1-0.5)=6個と計算される。
【0035】
ポリ尿素化合物a2)の平均尿素結合数は、1分子当たり少なくとも2個及び多くとも6個、好ましくは少なくとも2個及び多くとも4.5個、より好ましくは少なくとも2個及び多くとも4個、さらにより好ましくは少なくとも2個及び多くとも3.9個、最も好ましくは少なくとも3個及び多くとも3.9個である。
【0036】
好ましい特定の実施形態において、相対粒径分布幅は、10より小さく、好ましくは1~10、より好ましくは1.1~10、さらにより好ましくは2~8、最も好ましくは2~6である。粒径分布幅が10より小さいとき、本ポリ尿素化合物a2)を含む架橋性組成物から作製されたコーティングは、(Fischer Permascope MP40E-Sを使用して測定して)50~60μmの乾燥膜厚(DFT)で適用したとき、(BYKヘーズ-光沢計を使用して決定して)60°の角度で45光沢単位未満の光沢測定値を有する低減された光沢を有することが見出された。
【0037】
本発明による相対粒径分布幅は、粒径分布の90体積%における粒径と粒径分布の10体積%における粒径の比と定義される。相対粒径分布幅は、以下の方程式IIに従って計算される。
方程式II:
相対粒径分布幅=[(粒径分布の90体積%における粒径)/(粒径分布の10体積%における粒径)]
【0038】
粒径分布曲線の一例を図1に示す。図1は、粒径に照らして粒子状ポリ尿素化合物の粒子の体積%を示す粒径分布の代表である。曲線は、10体積%及び90体積%における粒径を示す。粒径分布幅は、90体積%及び10体積%における粒径を分けることによって測定することができる。
【0039】
相対粒径分布幅の測定の一例は、粒径分布における粒子の90体積%が50μm以下の粒径を有し、粒子の10体積%が8μm以下の粒径を有する場合、相対粒径分布幅は50/8=6.25であることである(方程式IIを参照のこと)。
【0040】
一実施形態において、ポリ尿素化合物a2)は、ポリイソシアナート若しくはそのイソシアヌラート、ビウレット、若しくはウレトジオン誘導体、又は(ポリイソシアナートの)他の(縮合)誘導体と少なくとも1種のアミン、好ましくはモノアミンとの反応により形成される。別の実施形態において、ポリ尿素化合物a2)は、モノ-イソシアナート(片側が選択的に反応しているジイソシアナートを含む)とポリアミンとの反応によって形成される。
【0041】
ポリイソシアナート及びポリアミンの接頭辞「ポリ」の使用は、記載された官能性の少なくとも2種が各多官能性化合物中に存在することを示す。
【0042】
ポリイソシアナートは、好ましくは脂肪族、脂環式、アラルキレン、及びアリーレンポリイソシアナートからなる群から選択され、より好ましくは置換又は非置換の直鎖状脂肪族ポリイソシアナート(及びそれらのイソシアヌラート、ビウレット、ウレトジオン、又は他の(縮合)誘導体)並びに置換又は非置換のアラルキレン及びシクロへキシレンポリイソシアナートからなる群から選択される。任意選択により、ポリイソシアナートは、例えばエーテル官能性、エステル官能性又はウレタン官能性などの他の官能基を含むことができる。
【0043】
ポリイソシアナートは、通常、NCO基間に2~40個、好ましくは4~15個の炭素原子を含む。ポリイソシアナートは、好ましくは平均的に2~5個のイソシアナート基、より好ましくは平均的に2~3.9個のイソシアナート基を含む。対称的脂肪族若しくはシクロへキシレンジイソシアナート又は誘導イソシアヌラートを使用することがさらにより好ましい。
【0044】
ジイソシアナートの好適な例は、好ましくは、テトラメチレン-1,4-ジイソシアナート、ペンタメチレン-1,5-ジイソシアナート、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアナート(HMDI)、オクタメチレン-1,8-ジイソシアナート、ドデカメチレン-1,12-ジイソシアナート、2,2,4-トリメチルヘキサン-1,6-ジイソシアナート、トランス-シクロへキシレン-1,4-ジイソシアナート、1,3-ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアナート、5-イソシアナート-1-(イソシアナートメチル)-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアナート、IPDI)、1,5-ジメチル-(2,4-[ω]-ジイソシアナートメチル)ベンゼン、1,5-ジメチル(2,4-[ω]-ジイソシアナートエチル)ベンゼン、1,3,5-トリメチル(2,4-[ω]-ジイソシアナートメチル)ベンゼン、1,3,5-トリエチル(2,4-[ω]-ジイソシアナートメチル)ベンゼン、1,5-ナフタレンジイソシアナート、1,3-フェニレンジイソシアナート、1,4-フェニレンジイソシアナート、メタ-キシリレンジイソシアナート、パラ-キシリレンジイソシアナート、ジシクロヘキシル-ジメチルメタン-4,4’-ジイソシアナート、2,4-トルエンジイソシアナート、2,6-トルエンジイソシアナート及びジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアナート(MDI)からなる非限定的な群から選択される。
【0045】
別の好適なポリイソシアナートは、好ましくは、HMDIの(縮合)誘導体を含む、HMDIをベースにしたポリイソシアナート、例えばウレトジオン、ビウレット、イソシアヌラート(トリマー)、及び非対称的トリマーなどからなる群から選択され、それらの多くは、DESMODUR(登録商標) N並びにTOLONATE(登録商標) HDB及びTOLONATE(登録商標) HDTとして市販されている。ジイソシアナートの(縮合)誘導体の他の非限定例は、メチレンジイソシアナート、トリメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、1,5-ジイソシアナートペンタン、イソホロンジイソシアナート、ω,ω’-ジプロピルエーテルジイソシアナート、チオジプロピルジイソシアナート、シクロヘキシル-1,4-ジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアナート、1,5-ジメチル-2,4-ビス-(イソシアナートメチル)-ベンゼン、1,3,5-トリメチル-2,4-ビス-(イソシアナートメチル)ベンゼン、1,3,5-トリエチル-2,4-ビス-(イソシアナートメチル)ベンゼン、ジシクロヘキシルジメチルメタン-4,4’-ジイソシアナート、2,4-トルエンジイソシアナート、2,6-トルエンジイソシアナート及びジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアナートをベースとすることができる。
【0046】
上記のイソシアナート官能性化合物の混合物も適用可能である。
【0047】
特に好ましいポリイソシアナートは、HMDI及びその(縮合)誘導体、例えばそのイソシアヌラートトリマー又はそのビウレット、トランス-シクロへキシレン-1,4-ジイソシアナート、パラ-及びメタ-キシリレンジイソシアナート、トルエンジイソシアナート、並びにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0048】
最も好ましいポリイソシアナートは、HMDI又はその(縮合)誘導体、例えばイソシアヌラート誘導体である。
【0049】
当業者によって理解されるように、ブロッキング剤が開裂後に粒子状ポリ尿素化合物a2)の形成を妨げない限り、2種以上のイソシアナートを現場で発生する従来通りにブロックされたポリイソシアナートを使用することもできる。本文献全体にわたって、用語「ポリイソシアナート」は、すべてのポリイソシアナート及びポリイソシアナート発生化合物を称するために使用される。
【0050】
本発明の好ましい実施形態によれば、ポリ尿素化合物a2)を調製するために使用されるアミンは、モノアミンを含む。
【0051】
アミンは、一般的に55個以下の炭素原子、好ましくは1~24個、より好ましくは1~12個の炭素原子を含む。ポリ尿素反応生成物を生成するために、多くのモノアミンをポリイソシアナートと組み合わせて使用することができる。脂肪族及び芳香族アミンを使用することができ、第一級及び第二級アミンを使用することができる。
【0052】
好ましくは、第一級アミンが使用される。これらのうち、n-アルキルアミン及びエーテル置換n-アルキルアミンが、本発明によれば特に有用である。任意選択により、アミンは、ヒドロキシ基、エステル基、ウレタン基など他の官能基を含むことができる。好ましいモノアミンとしては、脂肪族アミン、特にアルキルアミン、例えばエチルアミン、n-プロピルアミン、sec-プロピルアミン、n-ブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、n-ペンチルアミン、α-メチルブチルアミン、α-エチルプロピルアミン、エチルブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、オクタデシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、S-α-メチルベンジルアミン、2-フェネチルアミン、エタノールアミン、6-アミノヘキサノール、2-メトキシエチルアミン、2-エトキシエチルアミン、3-メトキシ-1-プロピルアミン、1-メトキシメチルプロピルアミン、1,1-ジメトキシ-2-プロピルアミン、3-エトキシ-1-プロピルアミン、3-ブトキシ-1-プロピルアミン、3-(2-エチルヘキシルオキシ)-1-プロピルアミン、3-トリデシルオキシプロピルアミン、3-ステアリルオキシプロピルアミン、p-メトキシベンジルアミン、3,4-ジメトキシベンジルアミン、p-メトキシフェニルエチルアミン、3,4-ジメトキシフェニル-エチルアミン、9-フェノキシ-4,7-ジオキサノン-1-アミン、フルフリルアミン、テトラヒドロフルフリルアミン、2-(4-モルホリニル)エチルアミン、4-(3-アミノプロピル)モルホリン及び2,2’-アミノエトキシエタノール並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0053】
第一級アミンであるモノアミン、好ましくはn-脂肪族アミン、より好ましくはn-アルキルアミン、例えばヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、3-メトキシプロピルアミン、S-α-メチルベンジルアミン、2-フェネチルアミン、又はそれらの混合物が特に好ましい。
【0054】
モノアミンに次ぐ成分としてジアミンの使用も、選択肢とすることができる。使用に適したジアミンとしては、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミンヘキサン、イソホロンジアミン、4,4-ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジフェニルメタン-4,4’-ジアミン、4,7-ジオキサデカン-1,10-ジアミン、4,9-ジオキサデカン-1,12-ジアミン、7-メチル-4,10-ジオキサトリデカン-1,13-ジアミン、4,7,10-トリオキサトリデカン-1,13-ジアミン、ジデオキシ-ジアミノイソイジド及びジデオキシ-ジアミノイソソルビドが挙げられる。ポリ尿素化合物a2)がポリイソシアナート及びモノアミンとジアミンとの混合物から形成される実施形態において、ジアミンに起源をもつアミン基/モノアミンに起源をもつアミン基のモル比は、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.5未満、最も好ましくは0.3未満である。
【0055】
上記のアミンの混合物も適用可能である。
【0056】
ポリ尿素化合物a2)を調製するのに使用されるモノアミン又はモノアミンの一部分は、キラルなモノアミンとすることができ、US8207268に記載されているポリ尿素化合物は、本発明の一部分であるとみなされる。
【0057】
とりわけ好ましいポリ尿素化合物a2)は、HMDI(の誘導体)とベンジルアミン若しくはS-α-メチルベンジルアミン又はそれらの混合物の付加物、並びにHMDI(の誘導体)と3-メトキシ-1-プロピルアミンの付加物である。
【0058】
アミン/イソシアナートの相対モル比は、通常0.7~1.3、好ましくは0.9~1.1、より好ましくは0.95~1.05である。
【0059】
本発明の粒子状ポリ尿素化合物a2)は、1分子当たり少なくとも2個及び多くとも6個の平均尿素結合数を含む。好ましくは、ポリ尿素分子の平均尿素連結(又は尿素結合)数は、1分子当たり2~4.5個、より好ましくは2~4個、さらにより好ましくは2~3.9個、最も好ましくは3~3.9個である(さらに詳細には、ポリ尿素分子の平均尿素連結数は、1分子当たり少なくとも2個及び多くとも4.5個、好ましくは少なくとも2個及び多くとも4個、より好ましくは少なくとも2個及び多くとも3.9個、最も好ましくは少なくとも3個及び多くとも3.9個である)。このように、(粒子状ポリ尿素化合物a2)の)平均粒径を制御することができる。(平均)粒径が大きすぎる場合、適用されたコーティングにおいて、塊状欠陥が目に見えるものとなる可能性がある。
【0060】
10μm未満の直径を有するものが40%以下、好ましくは30%未満、より好ましくは25%未満の体積百分率を有し、20μm超の直径を有するものが11%以上、好ましくは15%超、より好ましくは25%超、最も好ましくは40%超の体積百分率を有する、粒子状ポリ尿素化合物a2)を得るために、ポリ尿素化合物は、いずれか好都合な方式によって、一般的に反応物を回分又は連続プロセスで撹拌又はかき混ぜを行って調製される。撹拌機の回転速度は、好ましくは撹拌機先端部の先端速度が1~30m/s、好ましくは1~20m/s、より好ましくは1~10m/sである。好ましくは、ポリ尿素化合物a2)の調製は、0~120℃、好ましくは10~80℃、より好ましくは10~60℃の温度で実施される。当業者は、プロセス条件が、ポリ尿素を調製するのに使用される容器に応じてさまざまであり得ることを知っており、特定の直径範囲を有する特定の体積百分率を得るためにパラメータを変更する方法を理解することになる。
【0061】
少量の共反応性成分が、ポリ尿素化合物a2)の調製反応において結晶化モディファイヤーとして作用し、さらに詳細には得られた結晶の沈殿時の結晶サイズ又はコロイド安定性を改変するために意図的に採用される可能性もある。同様に、分散剤及び他のアジュバントが、これらの導入ステップのいずれにおいても存在することができる。
【0062】
粒子状ポリ尿素化合物a2)を調製するためには、アミン成分をイソシアナートに添加すること又はイソシアナートをアミン成分に添加することのうち最も好都合な方を行うことができる。当業者は、ポリ尿素化合物の得られる粒径分布及び平均粒径を制御するようにプロセス条件(さらに詳細には、添加及び/又は混合の順序)を適合することができる。
【0063】
最終組成物又は他のいずれのコーティング製剤成分についても、ポリ尿素形成反応は、不活性溶媒、例えばアセトン、メチルイソブチルケトン、N-メチルピロリドン、ベンゼン、トルエン、キシレン、酢酸ブチル、石油エーテルなどの脂肪族炭化水素、アルコール、水、若しくはそれらの混合物の存在下、又はフィルム形成樹脂a1)(下記も参照のこと)の存在下で実施することができる。ここで、用語「不活性」は、溶媒及び/又はフィルム形成樹脂a1)がポリ尿素形成のプロセスに著しく干渉しないことを示し、溶媒が存在するときポリ尿素の量が、溶媒及び/又は樹脂が存在しないときに生成される量の少なくとも80%であることを意味する。
【0064】
樹脂組成物A
記載の通り、本発明の第2の態様は、
・下記を含むフィルム形成樹脂a1)
○各官能基が少なくとも1種の官能性を有する少なくとも2個の官能基、及び/又は
○少なくとも2種の官能性を有する少なくとも1個の官能基、
・上記の本発明の粒子状ポリ尿素化合物a2)、
・任意選択により、分散剤a3)、並びに
・任意選択により、a1)、a2)及びa3)と異なる化合物a4)の1種又は複数
を含む樹脂組成物Aに関連している。
【0065】
本発明によれば、フィルム形成樹脂は、任意選択により触媒の存在下で、別の若しくは同じフィルム形成樹脂又は架橋剤が存在する場合それと反応することができ、コーティング(フィルムとも呼ばれる)を形成する化合物と理解される。フィルム形成樹脂は、各官能基が少なくとも1種の官能性を有する少なくとも2個の官能基を有し、且つ/又は少なくとも2種の官能性を有する少なくとも1個の官能基を有し、したがって少なくとも2つの側面で他の化合物と架橋することができ、架橋コーティングが形成され得る。
【0066】
本発明の好ましい実施形態によれば、粒子状ポリ尿素化合物a2)は、フィルム形成樹脂a1)の存在下で調製される。これは、フィルム形成樹脂a1)とイソシアナートとの混合物をアミンと混合すること、又はイソシアナートをフィルム形成樹脂a1)とアミン成分との混合物と混合すること、又はフィルム形成樹脂a1)のそれぞれアミン成分及びNCO-成分との2種の混合物を混合する(すなわち、フィルム形成樹脂a1)とアミン成分との混合物をフィルム形成樹脂a1)とNCO-成分との混合物と混合する)こと;又はイソシアナート及びアミンをフィルム形成樹脂a1)と同時に混合することによって行うことができる。アミン成分及びイソシアナート成分は、上記の化合物のいずれとすることができる。
【0067】
フィルム形成樹脂a1)がアミン又はイソシアナートに対して高反応性である場合、フィルム形成樹脂及びその特定の感受性化合物を予混合することはできないことは自明である。ここで用語「高反応性」は、ポリ尿素化合物a2)を調製するためにアミン及びイソシアナートが混合される前に、感受性アミン又はイソシアナートの30%超がフィルム形成樹脂a1)と反応することを意味する。
【0068】
一実施形態において、粒子状ポリ尿素つや消し剤(又は粒子状ポリ尿素化合物)a2)の形成を引き起こす樹脂組成物Aにおけるアミン官能成分及びイソシアナート官能成分の濃度は、方程式IIIに従って、フィルム形成樹脂a1)及びポリ尿素化合物a2)の全重量に照らして3~30重量%、好ましくは4~20重量%、より好ましくは5~15重量%のポリ尿素含有量が得られるように選択される(さらに下記を参照のこと)。
【0069】
別の実施形態によれば、粒子状ポリ尿素つや消し剤a2)は、方程式IIIに従って、フィルム形成樹脂a1)及びポリ尿素化合物a2)の全重量に照らして3~30重量%、好ましくは4~20重量%、より好ましくは5~15重量%(の量の)含有量で存在する(下記を参照のこと)。
【0070】
方程式IIIは、フィルム形成樹脂a1)及びポリ尿素化合物a2)の全重量に対するポリ尿素a2)の重量百分率と定義される。すなわち、
方程式III(重量%):
粒子状ポリ尿素化合物a2)の重量%=[(粒子状ポリ尿素化合物a2)の重量)/((フィルム形成樹脂a1)の重量)+(粒子状ポリ尿素化合物a2)の重量))]×100%
【0071】
全樹脂組成物A(したがってa1)、a2)、並びに任意選択によりa3)及びa4)を含む)におけるポリ尿素化合物a2)の量は、(重量百分率の総和(重量%)が100%を超えない樹脂組成物Aの全重量に対して)好ましくは少なくとも2.5重量%、より好ましくは少なくとも4重量%である。
【0072】
別の実施形態において、樹脂組成物Aの全重量(重量百分率(重量%)の総和は100%を超えない)に対して、ポリ尿素化合物a2)は2.5~20重量%存在し、フィルム形成樹脂a1)は、1重量%~97.5重量%、好ましくは5重量%~97.5重量%、より好ましくは15重量%~97.5重量%、さらにより好ましくは30重量%~97.5重量%存在し、分散剤a3)は、0重量%~10重量%存在し、1種又は複数の化合物a4)は、0重量%~96.5重量%、好ましくは0重量%~92.5重量%、より好ましくは0重量%~82.5重量%、さらにより好ましくは0重量%~78重量%存在する。
【0073】
本発明による樹脂組成物Aにおけるフィルム形成樹脂a1)の量は、全樹脂組成物Aに対して通常1重量%~97.5重量%、好ましくは5重量%~97.5重量%、より好ましくは15重量%~97.5重量%、さらにより好ましくは30重量%~97.5重量%、さらにより好ましくは35重量%~80重量%、最も好ましくは35重量%~70重量%である。フィルム形成樹脂a1)の量は、全樹脂組成物Aに対して好ましくは少なくとも45重量%、より好ましくは少なくとも50重量%である。
【0074】
樹脂組成物Aにおける分散剤a3)の量は、全樹脂組成物Aに対して好ましくは0重量%~10重量%、より好ましくは0.1重量%~8重量%、最も好ましくは0.2重量%~7重量%である。
【0075】
35~80重量%のフィルム形成樹脂a1)、3~15重量%のポリ尿素化合物a2)、0~7重量%の分散剤a3)、20~70重量%の揮発性有機化合物(又は有機溶媒)a4)-1、及び0~8重量%の他の化合物(又は添加剤)a4)-2を含む樹脂組成物A(重量百分率(重量%)の総和は100%を超えない)が特に好ましい。
【0076】
樹脂組成物Aは、好ましくは10重量%未満の水、より好ましくは5重量%未満の水、最も好ましくは1重量%未満の水を含み、又はそれどころか水を実質的に含まない(すなわち、水を含まない、いわゆる非水性組成物である)。
【0077】
一実施形態において、ポリ尿素化合物a2)は、フィルム形成樹脂a1)の存在下で現場調製される。
【0078】
架橋性組成物を調製しながらポリ尿素化合物a2)を調製することもできる(さらに参照のこと)。これは、上記のアミン官能成分を、架橋性組成物のいずれかの成分、例えばフィルム形成樹脂a1)及び/若しくはb)並びに/又は架橋剤c)に溶解し、得られたアミンを含む溶液を架橋性組成物の別の又は同じ成分に別々に溶解された上記のポリイソシアナートと混合することによって行うことができる。或いは、ポリ尿素化合物a2)は、架橋性組成物のいずれかの成分、例えばフィルム形成樹脂a1)及び/又はb)に溶解したアミン官能性種を架橋剤c)と混合することによって現場生成することができ、それにより架橋剤c)は下記のポリイソシアナートである。
【0079】
フィルム形成樹脂a1)、a1’)及びb)
さらに述べる通り、本発明による架橋性組成物は、フィルム形成樹脂a1)と同じであるか異なる別のフィルム形成樹脂b)又はa1’)を含むことができる。フィルム形成樹脂a1)、a1’)及びb)は、以下に記載される。
【0080】
フィルム形成樹脂a1’)は、樹脂組成物A’の一部分であり、樹脂組成物A’は、粒子状ポリ尿素化合物a2’)、任意選択により、分散剤a3’)、並びに任意選択により、a1’)、a2’)及びa3’)と異なる化合物a4’)の1種又は複数をさらに含む。フィルム形成樹脂a1)がフィルム形成樹脂a1’)と反応可能である場合、樹脂組成物A’は、樹脂組成物Aと同じ又は異なる組成物を含むことができる。フィルム形成樹脂a1)はフィルム形成樹脂a1’)と同じでも異なってもよい。フィルム形成樹脂組成物A’及びその化合物a1’)、a2’)、a3’)及びa4’)は、必要な修正を加えて、それぞれフィルム形成樹脂組成物A及びその化合物a1)、a2)、a3)及びa4)について本明細書全体にわたって記載されているものである。したがって、本明細書において、a1)について本明細書に記載される特徴、実施形態及び例は、a1’)と同じである。
【0081】
フィルム形成樹脂a1)及びb)の骨格の組成物には制限がない。好ましくは、フィルム形成樹脂a1)又はb)は、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボナート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノ樹脂、並びにそれらの混合物及び混成体からなる群から選択される。そのようなポリマーは、一般的に当業者に公知であり、市販されている。
【0082】
フィルム形成樹脂b)は、フィルム形成樹脂a1)と異なっても同じでもよい。官能基はいずれの官能基でもよい。好ましい官能基は、ヒドロキシ、第一級アミン、第二級アミン、メルカプタン、活性化不飽和C=C部分、カルボン酸、エポキシド、イソシアナート、活性化メチレン、又はメチン種、例えばアセチルアセトン、アセトアセタート又はマロナート(の誘導体)である。より好ましい官能基は、ヒドロキシ、第一級アミン、第二級アミン、メルカプタン、活性化不飽和C=C部分、カルボン酸、エポキシド、活性化メチレン、又はメチン種、例えばアセチルアセトン、アセトアセタート又はマロナート(の誘導体)である。官能基は、例えばケトンによってブロックされた第一級アミンのブロックされた形としてケチミンなど化学反応によってブロックされ得る。当業者は、そのような化学的ブロッカーを十分認識している。フィルム形成樹脂a1)又はb)は、1つのタイプを超える官能基を含むことができる。これらの異なるタイプの官能基は、同じ又は異なる分子中に存在することができる。a1)又はb)の官能基は、a1)又はb)からの他の官能基と反応可能とすることができる。官能基a1)及び/又はb)は、架橋剤c)が存在する場合それと反応可能であり得る可能性もある。
【0083】
したがって、フィルム形成樹脂a1)は、a1)と同じでも異なってもよい別のフィルム形成樹脂a1’)と架橋可能であり得る;フィルム形成樹脂a1)は、a1)と同じでも異なってもよいフィルム形成樹脂b)と架橋可能であり得る;且つ/又はフィルム形成樹脂a1)及び/若しくはa1’)は、架橋剤c)が存在する場合それと架橋可能であり得る、且つ/又はフィルム形成樹脂b)は、フィルム形成樹脂c)と架橋可能であり得る。
【0084】
多種多様な潜在的に好適なフィルム形成樹脂a1)及びb)のうち、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂及び(メタ)アクリル樹脂、アミノ樹脂、又はそれらの混合物若しくは混成体が好ましい。
【0085】
本発明による樹脂組成物Aにおいて使用されるフィルム形成樹脂a1)又はb)は、好ましくは30,000ダルトン未満、より好ましくは10,000ダルトン未満、最も好ましくは5,000ダルトン未満の重量平均分子量Mwを有する。
【0086】
樹脂a1)又はb)の数平均分子量Mnは、好ましくは多くとも10,000ダルトン、より好ましくは多くとも5,000ダルトン、最も好ましくは多くとも3,000ダルトンである。
【0087】
樹脂a1)又はb)の分子量分布多分散度は、重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで割ることによって決定して、好ましくは1~10、より好ましくは1.5~6、最も好ましくは1.7~4である。
【0088】
フィルム形成樹脂a1)又はb)のガラス転移温度Tgは、好ましくは-80℃より高く、より好ましくは-40℃より高く、最も好ましくは-30℃より高い。樹脂a1)のガラス転移温度は、好ましくは100℃、より好ましくは90℃、最も好ましくは80℃を超えない。
【0089】
フィルム形成樹脂a1)又はb)は、官能基1モル当たり50~2500グラムの範囲の樹脂a1)又はb)、好ましくは官能基1モル当たり80~400グラムの範囲の樹脂a1)又はb)、より好ましくは官能基1モル当たり100~300グラムの範囲の樹脂a1)又はb)の当量を有する。
【0090】
フィルム形成樹脂a1)又はb)の第1の特に好ましい実施形態によれば、樹脂a1)又はb)はポリオールである。ポリオールa1)及びb)は、平均的に少なくとも2個、好ましくは2個を超える-OH基を含む。好ましくはポリオールa1)及び/又はb)は、平均的に少なくとも2.2個の-OH基、より好ましくは平均的に少なくとも2.5個の-OH基を含む。ポリオールb)は、ポリオールa1)と同じポリオールを含むことができ、且つ/又はポリオールb)は、ポリオールa1)と比べて異なるポリオールを含むことができる。
【0091】
ポリオールa1)及びb)は、好ましくはポリエステルポリオール、(メタ)アクリルポリオール、ポリカーボナートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール、並びにそれらの混合物及び混成体からなる群から選択される。そのようなポリマーは、一般的に当業者に公知であり、市販されている。ポリオールa1)又はb)は、好ましくは以下にさらに記載されているポリエステルポリオール及び(メタ)アクリルポリオール、並びにそれらの混合物及び混成体からなる群から選択される。多種多様な潜在的に好適なポリオールa1)及びb)のうち、ポリエステルポリオール、(メタ)アクリルポリオール、又はそれらの混成体若しくは混合物が好ましい。好適なポリエステルポリオールは、例えば、1種又は複数の二官能性及び/若しくはそれ以上の官能性ヒドロキシ化合物と1種又は複数の二官能性及び/若しくはそれ以上の官能性カルボン酸、それらのC1~C4アルキルエステル及び/若しくは無水物を、任意選択により1種若しくは複数の単官能性カルボン酸及び/又はそれらのC1~C4アルキルエステル及び/又は単官能性ヒドロキシ化合物と組み合わせて重縮合することによって得ることができる。モノカルボン酸の非限定例は、ステアリン酸、2-エチルヘキサン酸及びイソノナン酸など4~30個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状アルキルカルボン酸である。非限定的例として、二官能性及び/又はそれ以上の官能性ヒドロキシ化合物は、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、イソソルビド、スピログリコール、トリメチロールプロパン、グリセロール、トリヒドロキシエチルイソシアヌラート及びペンタエリトリトールからなる群から選択される1種又は複数のアルコールとすることができる。非限定的例として、二官能性及び/又はそれ以上の官能性カルボン酸は、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキシルジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸及びそれらの官能性等価物からなる群から選択される1種又は複数である。ポリエステルポリオールは、二官能性及び/又はそれ以上の官能性ヒドロキシ化合物と、カルボン酸並びに/又はそれらの酸の無水物及び/若しくはC1~C4アルキルエステルとから調製することができる。
【0092】
ポリオールの典型的な好ましい酸価は、15mgKOH/g未満、好ましくは10mgKOH/g未満、最も好ましくは8mgKOH/g未満である。酸価は、ISO 3682-1996に従って決定することができる。
好適な(メタ)アクリルポリオールは、例えば、ヒドロキシ官能性(メタ)アクリルモノマーと他のエチレン性不飽和コモノマーを、ラジカル開始剤の存在下で(共)重合することによって得ることができる。非限定的例として、(メタ)アクリルポリオールは、例えば(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸のポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸のポリプロピレングリコールエステル、並びに(メタ)アクリル酸のポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール混合エステルなど、(メタ)アクリル酸の1種又は複数のヒドロキシアルキルエステルの重合から形成された残基を含むことができる。(メタ)アクリルポリオールは、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(置換)(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸などのヒドロキシル基を含まないモノマーを含む。(メタ)アクリルポリオールは、スチレン、ビニルトルエン又は他の置換スチレン誘導体、(分枝状)モノカルボン酸のビニルエステル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、及びマレイン酸のモノアルキルエステルなどの非(メタ)アクリラートモノマーを任意選択で含む。
【0093】
第2の好ましい実施形態によれば、ポリオールa1)又はb)は、上記の好ましい実施形態について記載された、1種より多いポリオールa1)又はb)の混合物、特に少なくとも1種の(メタ)アクリルポリオールa1)又はb)と少なくとも1種のポリエステルポリオールa1)又はb)との混合物を含む。
【0094】
ポリオールa1)又はb)は、(メタ)アクリルポリオールがポリエステルポリオール中で現場調製される、いわゆる混成体ポリアクリラートポリエステルポリオールとすることができる。(メタ)アクリルポリオール及びポリエステルポリオールは、好ましくは(メタ)アクリルポリオール及びポリエステルポリオールについて以上に記載されたものと同じモノマーを用いて得られる。
【0095】
第3の特に好ましい実施形態によれば、フィルム形成樹脂a1)又はb)は、アミノ樹脂、好ましくはメラミン-ホルムアルデヒド樹脂を含む。メラミン-ホルムアルデヒド樹脂は、大変周知であり、商品化されて久しく、allnexからCYMEL(登録商標)及びSETAMINE(登録商標)の販売名で得ることができる。これらのメラミン-アミノ樹脂は任意選択により対応する有機溶媒に溶解した状態で、さまざまなメチロール化度、エーテル化度又は縮合度(単環式又は多環式)の生成物を含む。
【0096】
第4の特に好ましい実施形態によれば、フィルム形成樹脂a1)又はb)は、活性化メチレン又はメチン基における酸性プロトン(C-H)である官能性を含む。この好ましい実施形態において、フィルム形成樹脂a1)又はb)は、マロナート又はアセトアセタート、好ましくは優位にマロナート又はその混合物であることが好ましい。フィルム形成樹脂a1)又はb)は、主鎖、懸垂部、末端部又はそれらの組合せにマロナート及び/又はアセトアセタート部分を含むポリエステル、アルキド、ポリウレタン、ポリアクリラート、エポキシ樹脂、ポリアミド及びポリビニル樹脂の群から選択される1種又は複数のポリマーであることが好ましい。
【0097】
この特定の第4の実施形態は、典型的に塩基である触媒d)の存在下で、下記の活性化不飽和C=C部分である官能性を含む化合物と反応することができる。そのような組成物は、リアルマイケル付加(RMA)架橋性組成物として公知であり、当技術分野において公知である。WO11/124663、WO11/124664及びWO11/124665には、コーティング層において二酸化炭素デブロッキング時に強塩基を発生させる二酸化炭素ブロックされた塩基触媒を含む潜在性塩基触媒を有するRMA架橋性組成物が記載されている。WO14/166880には、二酸化炭素デブロッキングに頼らない触媒を有するRMA架橋性組成物が記載され、これは、蒸発が例えばより厚い層のために妨げられている層に特に適している。WO13/050622、WO13/050623、WO13/050624及びWO13/050574には、特殊な可使時間及びオープン時間調節剤を有するRMA架橋性組成物が記載されている。WO16/166361、WO16/166381、WO16/166382及びWO2018/005077には、RMA架橋性組成物がさらに記載されている。これらの先行技術文献中のRMA架橋性組成物のさまざまな実施形態に関する記載は、参照により本明細書に含まれる。特に、RMA架橋性組成物のすべての成分、それらの調製、RMA架橋性組成物において使用される量、並びに測定方法及び定義についての詳細な記載に関する上記の特定された先行技術を参照し、それらの記載は、本明細書に別段の記載のない限り、参照により本明細書に組み込まれ、適用可能である。
【0098】
第5の特に好ましい実施形態によれば、フィルム形成樹脂a1)又はb)は、活性化不飽和C=C部分である官能性を含む。この第5の好ましい実施形態によれば、フィルム形成樹脂a1)又はb)は、(メタ)アクリロイル化合物、好ましくはアクリロイル化合物である。炭素-炭素二重結合が電子求引性基、例えばα位のカルボニル基によって活性化される、エチレン性不飽和官能基を有する好適なフィルム形成樹脂が、US2759913(第6欄、35行~第7欄、45行)、DE-PS-835809(第3欄、16~41行)、US4871822(第2、14行~第4欄、14行)、US4602061(第3、14行~第4欄、14行)、US4408018(第2欄、19~68行)及びUS4217396(第1欄、60行~第2欄、64行)に開示されている。
【0099】
この第5の好ましい実施形態によるフィルム形成樹脂a1)又はb)は、好ましくはアクリラート、フマラート及びマレアートである。最も好ましくは、そのようなフィルム形成樹脂a1)又はb)は、不飽和アクリロイル官能成分である。活性化不飽和C=C部分を有する前記成分は、2~6個のヒドロキシル基及び1~30個の炭素原子を含む成分のアクリル酸エステルの第1の好ましい群から選択することができる。これらのエステルは、ヒドロキシル基を任意選択で含んでもよい。特に好ましい例としては、トリメチロールプロパントリアクリラート、ペンタエリトリトールトリアクリラート及びジ-トリメチロールプロパンテトラアクリラートが挙げられる。他の好適な化合物は、懸垂型活性化不飽和基を含む、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルなどの樹脂、エポキシ樹脂、及び/又はアルキド樹脂の群から選択することができる。好ましくは、他の好適な化合物は、懸垂型活性化不飽和基を含む、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテルなどの樹脂、及び/又はアルキド樹脂の群から選択することができる。これらとしては、例えば、ポリイソシアナートと、ヒドロキシル基を含むアクリル酸エステル、例えばアクリル酸のヒドロキシアルキルエステル又はポリヒドロキシル成分を化学量論量未満のアクリル酸でエステル化することによって調製された成分との反応によって得られたウレタンアクリラート;ヒドロキシル基を含むポリエーテルをアクリル酸でエステル化することによって得られたポリエーテルアクリラート;ヒドロキシアルキルアクリラートとポリカルボン酸及び/又はポリアミノ樹脂の反応によって得られた多官能性アクリラート;アクリル酸とエポキシ樹脂の反応によって得られたポリアクリラート;並びにモノアルキルマレアートエステルとエポキシ樹脂及び/又はヒドロキシ官能性オリゴマー若しくはポリマーの反応によって得られたポリアルキルマレアートが挙げられる。そのような化合物は、大変周知であり、商品化されて久しく、allnexからEBECRYL(登録商標)の販売名で得ることができる。アクリロイルエステルの他に、好適な成分のクラスは、アクリルアミドである。各官能基が少なくとも1種の官能性を有する(少なくとも)2個の官能基を有する先に記載のフィルム形成樹脂a1)又はb)に加えて、少なくとも2種の官能性を有する少なくとも1個の官能基を有するフィルム形成樹脂a1)又はb)を使用することもできる。例えば、(メタ)アクリル酸のエステルなどのエチレン性不飽和コモノマーは、例えば(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸のポリエチレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸のポリプロピレングリコールエステル、並びに(メタ)アクリル酸のポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール混合エステル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(置換)(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸など、この第5の好ましい実施形態において使用することができる。スチレン、ビニルトルエン又は他の置換スチレン誘導体、(分枝状)モノカルボン酸のビニルエステル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸及びマレイン酸のモノアルキルエステルなどの非(メタ)アクリラートエチレン性不飽和コモノマーも使用することができる。
【0100】
任意選択の分散剤a3)
樹脂組成物Aは、分散剤a3)も任意選択で含む。分散剤は、一般的に当技術分野において公知であり、市販されている。分散剤a3)は、当技術分野において公知である任意のタイプの分散剤とすることができる。
【0101】
一実施形態において、分散剤a3)は存在し、顔料親和性アニオン、カチオン又は非イオン基を有するポリエステル、ポリウレタン、及びポリアクリラート、並びに塩基性顔料親和性基を有する高分子量ブロックコポリマーからなる群から選択される。分散剤の組合せも使用することができる。
【0102】
分散剤a3)としての使用に適している化合物は、例えば、本質的に直鎖状の骨格及び溶媒可溶ポリエステル、ポリアクリル、ポリエーテル又はポリオレフィン側鎖(そのような側鎖の混合物を含む)が横方向に結合している側鎖を提示するポリウレタン分散剤の群から選択することができる。そのようなポリウレタン分散剤は、反応性炭素-炭素二重結合で任意選択により官能化することができる。ポリウレタン分散剤は、ポリイソシアナートを例えば(環式)アミン基、ポリエステル及び/又はポリエーテルと反応させることによって得ることもできる。脂肪酸をヒドロキシ-C4~5-アルキレンカルボン酸又はラクトンと反応させることによって得られ得るポリエステルも、分散剤として使用することができる。好適な分散剤の別のクラスとしては、ポリエステル鎖が結合しているアミン官能性種に由来し得るポリエステルアミン分散剤が挙げられる。ポリエステル鎖は、12-ヒドロキシステアリン酸に由来することができ、又は異なる2種以上のヒドロキシカルボン酸に由来することができる。そのようなポリエステルアミン分散剤は、ヒドロキシカルボン酸からのポリエステルとジアミンの反応によって得ることができる。前記分散樹脂は、1つ又はいくつかのポリエーテル鎖も含むことができる。或いは、そのようなポリエステルアミン分散剤は、溶媒ベースの分散剤系の製造を可能にする「グラフティングフロム」法によって特徴づけられるポリエチレンイミン(PEI)ベースの化合物からなる。ポリエチレンイミン(PEI)ベースの顔料分散剤は、式X-(T)m-P-(T)n-Hによって提示することができ、式中、Pは、ポリエチレンイミン(PEI)骨格であり、Tは、残基-CO-A-O-であり、Aは、C1~C6アルキルで任意選択により置換されているC2~C12アルキレンであり、ただし、PとTの間の各連結がアミド結合であり、XとTの間の各連結がエステル結合であることを条件とする、Xは、モディファイヤー又はターミネーター残基R-CO-であり、ここで、Rは、1~22個の炭素原子を有する直鎖状若しくは分枝状、飽和若しくは不飽和のアルカンカルボン酸、又はヒドロキシカルボン酸の重縮合から得られた不飽和脂肪酸残基若しくはヒドロキシカルボキシリック残基若しくはポリエステル残基、又は酸末端ポリエーテルであり、n、mは独立に、1~100の数である。樹木状分子も分散剤として適用することができ、前記デンドリマーは、官能性部分と反応した官能基を含み、前記部分は、R-Xと定義され、Xは、顔料親和性基であり、Rは、鎖中に少なくとも2個の原子を有する連結部分鎖である、ただし、官能基及び顔料親和性基が異なることを条件とする。
【0103】
好適な分散剤は、とりわけallnex、Altana及びEvonikから入手可能であり、顔料親和性アニオン、カチオン若しくは非イオン基を有するポリエステル、ポリウレタン若しくはポリアクリラート、又は塩基性顔料親和性基を有する高分子量ブロックコポリマー、或いはそれらの組合せを含むが、これらに限定されない。好適な例として、ADDITOL(登録商標) XL 6577、ADDITOL(登録商標) VXW 6208/60 ADDITOL(登録商標) XL 6521、ADDITOL(登録商標) VXW 6208/60、DISPERBYK(登録商標) 2150がある。
【0104】
本発明による樹脂組成物Aへの分散剤の添加は、粘度の低下をもたらすことが見出された。これは、低VOC塗料を得るのに有益であり得る。低粘度は、例えば噴霧適用において使用されるとき良好なレベリング及び外観を得る助けともなり得る。
【0105】
任意選択により、a1)、a2)及びa3)と異なる化合物a4)の1種又は複数
本発明による樹脂組成物Aは、a1)、a2)及びa3)と異なる1種又は複数の他の化合物a4)を任意選択で含むことができる。
【0106】
一実施形態において、1種又は複数の他の化合物a4)は、有機溶媒(さらにa4)-1として表わされる)及び/又は添加剤(さらにa4)-2として表わされる)である。
【0107】
有機化合物は、例えば揮発性有機化合物とすることができる。一般に、これらは、大気圧における沸点が190℃以下の化合物である。好ましくは、全樹脂組成物Aに対する揮発性有機化合物a4)-1の量は、60%未満、より好ましくは50%未満、最も好ましくは40%未満である。いくつかの実施形態において、樹脂組成物Aの全質量に対する揮発性有機溶媒a4)-1の量は、30%未満であり、又は20%未満でさえあり得る。
【0108】
好適な揮発性有機化合物a4)-1の例として、炭化水素又はそれらの混合物、例えばトルエン、キシレン、Solvesso 100、Solvesso 150、ケトン、テルペン、例えばジペンテン又はパイン油;ハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン;エーテル、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル;エステル、例えば酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸ヘキシル;エーテルエステル、例えば酢酸メトキシプロピル、酢酸ブチルグリコール及びプロピオン酸エトキシエチル;アルコール、例えばn-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、メトキシプロパノール及び2-エチルヘキサノールがある。これらの化合物の混合物も使用することができる。
別の実施形態において、樹脂組成物Aは、a1)、a2)、a3)及びa4)-1と異なる、添加剤の化合物a4)-2をさらに含む。添加剤は、コーティング組成物においてよく使用される補助剤も包含する。添加剤a4)-2は、いくつかの重要な塗料特性を改善するためにより少ない量でよく使用される。これらの添加剤a4)-2は、大気圧における沸点が190℃以下の溶媒を含む揮発性部分及び不揮発性部分を含むことができる。そのような添加剤の例として、界面活性剤、レベリング剤、湿潤剤、クレーター防止剤、消泡剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤及び下記の反応性調節剤e)がある。
【0109】
そのような化合物a4)-2の量は、フィルム形成樹脂a1)、ポリ尿素化合物a2)、並びに分散剤a3)、揮発性有機化合物a4)-1及び化合物a4)-2が存在する場合それらの全重量に対して通常0~10重量%、好ましくは1~8重量%、最も好ましくは2~7重量%である。
【0110】
架橋性組成物
記載の通り、本発明の第3の態様は、上記の樹脂組成物Aを含む架橋性組成物に関連している。架橋性組成物は、フィルム形成樹脂b)及び/又はフィルム形成樹脂a1’)、及び任意選択により架橋剤c)をさらに含む。フィルム形成樹脂a1)、a1’)、及びb)、並びに架橋剤c)が存在する場合それは、少なくとも2個の官能基を含み、各官能基は少なくとも1種の官能性を有し、且つ/又は少なくとも1個の官能基は少なくとも2種の官能性を有する。フィルム形成樹脂a1)及び/又はフィルム形成樹脂b)は、フィルム形成樹脂b)及び/又はフィルム形成樹脂a1’)及び/又は架橋剤c)が存在する場合それと反応可能である。フィルム形成樹脂a1’)及びフィルム形成樹脂b)は、フィルム形成樹脂a1)と異なる又は同じである。したがって、フィルム形成樹脂a1)は、架橋剤c)が存在する場合それと、及び/又はフィルム形成樹脂b)及び/又はフィルム形成樹脂a1’)と反応可能であり得る。フィルム形成樹脂可能b)は、架橋剤c)が存在する場合それと、及び/又はフィルム形成樹脂a1’)及び/又はフィルム形成樹脂b)と反応する可能性もある。フィルム形成樹脂a1’)も、架橋剤c)が存在する場合それと、及び/又はフィルム形成樹脂b)及び/又はフィルム形成樹脂a1’)と反応可能である。
【0111】
本発明による架橋性組成物は、フィルム形成樹脂a1)及び/又はフィルム形成樹脂b)の官能基と、架橋剤c)が存在する場合それと、及び/又はフィルム形成樹脂b)及び/又はフィルム形成樹脂a1’)との反応を触媒するための触媒d);任意選択により、反応性調節剤e);任意選択により、揮発性有機化合物f);任意選択により、反応性希釈剤g)、任意選択により、別の樹脂h)、及び任意選択により、粒子状ポリ尿素化合物a2)と異なる又は同じである他のつや消し組成物i)を任意選択でさらに含むことができる。好ましくは、反応性希釈剤g)は、フィルム形成樹脂b)と異なる。好ましくは、つや消し組成物i)は、粒子状ポリ尿素化合物a2)と異なる。
【0112】
好ましくは、架橋性組成物は、組成物の全重量に対して少なくとも20重量%、好ましくは30重量%超、より好ましくは40重量%超、さらにより好ましくは50重量%超の固形分を有する。
一実施形態において、粒子状ポリ尿素化合物a2)は、架橋性組成物において使用されるとき、架橋性組成物における粒子状ポリ尿素化合物a2)の量が、方程式IVに従って、架橋性組成物中のフィルム形成樹脂a1)、粒子状ポリ尿素化合物a2)、並びに分散剤a3)、添加剤a4)-2の不揮発性部分、架橋剤c)、フィルム形成樹脂b)、フィルム形成樹脂a1’)、触媒d)、反応性調節剤e)、反応性希釈剤g)、他の樹脂h)、及びつや消し組成物i)が存在する場合それらの全量に対して0.5~25重量%、好ましくは4~20重量%、より好ましくは4~15重量%であるような量でフィルム形成樹脂A中に存在する。
方程式IV(重量%):
架橋性組成物に照らした粒子状ポリ尿素化合物a2)の重量%=[(粒子状ポリ尿素化合物a2)の重量)/(フィルム形成樹脂a1)の重量+粒子状ポリ尿素化合物a2)の重量+分散剤a3)の重量+添加剤a4)-2の不揮発性部分+架橋剤c)の重量+フィルム形成樹脂b)の重量+フィルム形成樹脂a1’)の重量+触媒d)の重量+反応性調節剤e)の重量+反応性希釈剤g)の重量+他の樹脂h)の重量+つや消し組成物i)の重量)]×100%
【0113】
この方程式IVでは、揮発性有機化合物f)及びa4)-1、並びに添加剤a4)-2の揮発性部分が存在する場合その重量%は考慮されない。
【0114】
架橋性組成物において使用される樹脂組成物Aの量は、全架橋性組成物の通常5~99重量%、好ましくは5~80重量%、最も好ましくは10~75重量%である。
【0115】
通常固形分と呼ばれる、適用粘度における本発明による架橋性組成物の不揮発性分は、全架橋性組成物に対して好ましくは少なくとも20重量%、より好ましくは30重量%超、最も好ましくは35重量%超である。ここで、固形分は、方程式Vに従うことによって計算される。
方程式V:
固形分[重量%]={[フィルム形成樹脂a1)の重量+ポリ尿素化合物a2)の重量+分散剤a3)の重量+添加剤a4)-2の不揮発性部分の重量+フィルム形成樹脂b)の重量+架橋剤c)の重量+フィルム形成樹脂a1’)の重量+触媒d)の重量+反応性調節剤e)の重量+反応性希釈剤g)の重量+結合剤h)の重量+a2)以外のつや消し剤i)の重量+(他の)添加剤の不揮発性部分の重量)]/[適用粘度における架橋性組成物の全重量-顔料の重量-充填剤の重量]}×100
【0116】
好ましくは、本発明による架橋性組成物は、フィルム形成樹脂a1)、ポリ尿素化合物a2)、任意選択のフィルム形成樹脂a1’)、任意選択の分散剤a3)、a1)、a1’)、a2)、及びa3)と異なる他の任意選択の不揮発性化合物a4)-2、任意選択のフィルム形成樹脂b)、任意選択の架橋剤c)、任意選択の触媒d)、任意選択の反応性調節剤e)、任意選択の反応性希釈剤g)、任意選択の他の結合剤h)、及び任意選択のつや消し組成物i)を含む全固体架橋性組成物に対して、
・0.5~25重量%、好ましくは4~20重量%、より好ましくは4~15重量%の粒子状ポリ尿素化合物a2)、
・0.5~99重量%、好ましくは5~99重量%、より好ましくは10~95重量%、さらにより好ましくは20~90重量%のフィルム形成樹脂a1)+フィルム形成樹脂b)+フィルム形成樹脂a1’)(又は0.5~99重量%、好ましくは5~99重量%、より好ましくは10~95重量%、さらにより好ましくは20~90重量%のフィルム形成樹脂a1)+b)+a1’))、
・0~20重量%、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは0.2~10重量%の分散剤a3)、
・0~95重量%、好ましくは10~80重量%、より好ましくは15~50重量%の架橋剤c)、
・0~10重量%、好ましくは0.001~5重量%、より好ましくは0.005~2重量%の触媒d)、
・0~15重量%、好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.2~7重量%の反応性調節剤e)、
・0~70重量%、好ましくは0~50重量%、より好ましくは0~20重量%の反応性希釈剤g)、
・0~50重量%、好ましくは0~30重量%、より好ましくは0~20重量%の別の樹脂h)、
・0~25重量%、好ましくは0~15重量%、より好ましくは0~10重量%の、粒子状ポリ尿素化合物a2)と異なる又は同じである別のつや消し組成物i)
(重量百分率(重量%)の総和は100%を超えない)を含む。好ましくは、反応性希釈剤g)は、フィルム形成樹脂b)と異なる。好ましくは、つや消し組成物i)は、粒子状ポリ尿素化合物a2)と異なる。
【0117】
架橋性組成物は、好ましくは樹脂組成物A、並びにフィルム形成樹脂b)、架橋剤c)、触媒d)、及び反応性調節剤e)が存在する場合それらの全量がコーティング組成物の全量に対して25~100重量%を占める。
【0118】
架橋性組成物は、好ましくは揮発性有機化合物f)及び揮発性有機化合物a4)-1の全量が架橋性組成物の全重量に対して0~80重量%、より好ましくは0~70重量%、さらにより好ましくは0~60重量%、最も好ましくは0~50重量%を占める。
【0119】
本発明の架橋性組成物は、低減された光沢をもつコーティング、(Fischer Permascope MP40E-Sを使用して測定して)50~60μmの乾燥膜厚(DFT)で適用したとき、(BYKヘーズ-光沢計を使用して決定して)60°の角度で多くとも45光沢単位、好ましくは多くとも30光沢単位、より好ましくは多くとも20光沢単位の光沢測定値、改善された耐久性及び耐引掻性、良好な透明度を有する低減された光沢のコーティングを提供し、硬度、化学的抵抗性、柔軟性及び耐久性などのよくバランスの取れた他の適切なコーティング特性を提供する。
【0120】
架橋剤c)
フィルム形成樹脂a1)、a1’)及び/又はb)は、架橋剤c)と任意選択で反応可能である(記載されているにせよそうでないにせよ、フィルム形成樹脂a1)、a1’)及び/又はb)は、架橋剤c)が上記の架橋性組成物中に存在する場合それと反応可能であり得る)。
【0121】
架橋剤c)は、少なくとも2個の官能基を含み、各官能基が少なくとも1種の官能性を有し、且つ/又は少なくとも1個の官能基が少なくとも2種の官能性を有し、官能基(複数可)がフィルム形成樹脂a1)、a1’)及び/若しくはb)と反応可能であるオリゴマー又はポリマー化合物を含む。架橋剤c)のタイプには制限がなく、当業者が理解している通り、架橋剤c)における官能基は、フィルム形成樹脂a1)、a1’)及び/又はb)中に存在する官能基に極めて依存する。
【0122】
一実施形態において、架橋剤c)の官能基は、好ましくはイソシアナート、ヒドロキシ、第一級アミン、第二級アミン、メルカプタン、活性化不飽和C=C部分、カルボン酸、エポキシド、活性化メチレン、メチン種、例えばアセチルアセトン、アセトアセタート又はマロナート(の誘導体)、及びそれらの混合物からなる群から選択される。官能基は、化学反応によってもブロックされ得る。当業者は、そのような化学的ブロッカーをよく認識している。架橋剤c)の骨格の組成物には制限がない。好ましくは、架橋剤c)は、ジイソシアナートの(縮合)誘導体、例えばウレトジオン、ビウレット、イソシアヌラート(トリマー)、及び非対称トリマー、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボナート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノ樹脂、並びにそれらの混合物及び混成体からなる群から選択される。そのような架橋剤は、一般的に当業者に公知であり、市販されている。
【0123】
好ましくは、フィルム形成樹脂a1)及び/又はb)中に存在し、架橋剤c)及び架橋剤c)における官能基と反応可能な官能基の相対量は、架橋剤c)における官能基/フィルム形成樹脂a1)、a1’)及びb)における全官能基のモル比が0.5~3、好ましくは0.75~2又は0.8~1.8であるように選択される。
【0124】
架橋剤成分c)は、大変周知であり、商品化されて久しく、allnexからCYMEL(登録商標)及びSETAMINE(登録商標)の販売名で得ることができるメラミン-ホルムアルデヒド樹脂などのアミノ樹脂を含むことができる。これらのメラミン-ホルムアルデヒド樹脂は任意選択により対応する有機溶媒に溶解した状態で、さまざまなメチロール化度、エーテル化度又は縮合度(単環式又は多環式)の生成物を含む。
【0125】
架橋剤成分c)は、好ましくは少なくとも2個の遊離-NCO(イソシアナート)基を有するイソシアナート化合物も含むことができる。イソシアナート架橋剤は、周知であり、当技術分野において広範に記載されている。イソシアナート化合物は、通常、少なくとも2個の-NCO基を含む脂肪族、脂環式、及び/又は芳香族のポリイソシアナート、及びそれらの混合物からなる群から選択される。次いで、架橋剤c)は、好ましくはヘキサメチレンジイソシアナート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、1,2-シクロへキシレンジイソシアナート、1,4-シクロへキシレンジイソシアナート、4,4’-ジシクロへキシレンジイソシアナートメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロへキシレンジイソシアナートメタン、ノルボルナンジイソシアナート、m-及びp-フェニレンジイソシアナート、1,3-及び1,4-ビス(イソシアナートメチル)ベンゼン、キシリレンジイソシアナート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアナート(TMXDI)、1,5-ジメチル-2,4-ビス(イソシアナートメチル)ベンゼン、2,4-及び2,6-トルエンジイソシアナート、2,4,6-トルエントリイソシアナート、4,4’-ジフェニレンジイソシアナートメタン、4,4’-ジフェニレンジイソシアナート、ナフタレン-1,5-ジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、4-イソシアナートメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアナート、並びに上記のポリイソシアナートの混合物からなる群から選択される。他の好ましいイソシアナート架橋剤は、ジイソシアナート(縮合)誘導体、例えばビウレット、イソシアヌラート、イミノ-オキサジアジンジオン、アロファナート、ウレトジオン、及びそれらの混合物である。そのような付加物の例として、ヘキサメチレンジイソシアナート又はイソホロンジイソシアナート2分子のエチレングリコールなどのジオールへの付加物、ヘキサメチレンジイソシアナート3分子の水1分子への付加物、トリメチロールプロパン1分子のイソホロンジイソシアナート3分子への付加物、ペンタエリトリトール1分子のトルエンジイソシアナート4分子への付加物、ヘキサメチレンジイソシアナートのイソシアヌラート(例えば、販売名DESMODUR(登録商標) (E) N3390、TOLONATE(登録商標) HDT-LV、TOLONATE(登録商標) HDT-90又はDESMODUR(登録商標) ultra 2822で入手可能)、販売名DESMODUR(登録商標) N 75で入手可能なヘキサメチレンジイソシアナートのビウレット、販売名DESMODUR(登録商標) N3400で入手可能なウレトジオンとヘキサメチレンジイソシアナートのイソシアヌラートの混合物、販売名DESMODUR(登録商標) LS 2101で入手可能なヘキサメチレンジイソシアナートのアロファナート、及び販売名VESTANAT(登録商標) T1890で入手可能なイソホロンジイソシアナートのイソシアヌラートがある。さらに、α,α’-ジメチル-m-イソプロペニルベンジルイソシアナートなどのイソシアナート官能性単量体の(コ)ポリマーは、使用に適している。希望するなら、特定の特性をコーティングに付与するために、疎水性又は親水性改変ポリイソシアナートを使用することもできる。
【0126】
架橋剤成分c)は、上記のポリイソシアナート架橋剤成分c)のいずれかをブロックするために、十分に低いデブロッキング温度を有するブロッキング剤を使用できるとき、ブロックされたイソシアナートも含むことができる。その場合、架橋剤成分c)は、ブロックされていないイソシアナート基を含む化合物を実質的に含まず、架橋性組成物は、一成分製剤として製剤化することができる。ブロックされたイソシアナート成分を調製するために使用することができるブロッキング剤は当業者に周知である。
【0127】
架橋性組成物において使用される架橋剤成分c)は、多官能性アミノ官能性及び/又は潜在性アミノ官能性化合物も含むことができる。これらとしては、例えば、それぞれが2~10個の第一級又は第二級アミノ基及び2~100個の炭素原子を有する脂肪族及び脂環式アミンなどの遊離の第一級又は第二級アミン官能基を有する多官能性種が挙げられる。好ましい多官能性アミンは、2~4個の第一級アミノ基及び2~20個の炭素原子を含む。好適な多官能性アミンとしては、ヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノペンタン、ドデカンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、パラ-フェニレンジアミン、3-メチルピペリジン、ピペラジン、N-アミノエチルピペラジン、イソホロンジアミン、ビス-ヘキサメチレントリアミン、ジエチレントリアミン、エチレンジアミン、ジプロピレントリアミン、ジエチルアミントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、エチレンオキシド-アミン、2~6個のオキシアルキレン単位、好ましくは2~4個のオキシプロピレン単位を有するポリオキシアルキレンアミン、例えば米国特許第4,120,839号に開示された、例えばJEFFAMINE D、ED及びT(JEFFAMINEは商標である)シリーズのポリオキシプロピレンアミン、アミン官能性アクリル樹脂、トリメチルヘキサメチレンジアミン;及びテトラエチレンペンタミンが挙げられるが、これらに限定されない。これらのアミン官能性硬化剤の混合物、及びこれらのアミン及びエポキシ基を含む化合物の付加物、並びに脂肪族ポリアミンに由来するポリアミドアミン及び不飽和脂肪族脂肪酸のダイマーも使用することができる。潜在性アミノ官能性化合物、例えば水分デブロック可能な多官能性第一級又は第二級アミン種、好ましくはケチミン、アルジミン、ジイミン又はオキサゾリジンも使用することができる。これらの化合物は水と反応して、遊離アミン基を形成する。特に好ましい例としては、アミンとケトンの縮合反応を通して形成されたケチミンが挙げられる。例としては、ケトンブロックされたジエチレントリアミン又はジプロピレントリアミン及びエポキシ又はイソシアナートを含む化合物の付加物の反応生成物が挙げられる。
【0128】
別の実施形態において、架橋剤c)は、活性化メチレン又はメチン基における酸性プロトン(C-H)である官能性も含むことができる。この実施形態は、フィルム形成樹脂a1)の第4の特に好ましい実施形態に記載されている特徴と同じ特徴を含む。
【0129】
別の実施形態によれば、架橋剤c)は、活性化不飽和C=C部分である官能性を含む。この実施形態は、フィルム形成樹脂a1)の第5の特に好ましい実施形態について記載されている特徴と同じ特徴を含む。
【0130】
触媒d)
架橋性組成物は、フィルム形成樹脂a1)の官能基、及び/又はフィルム形成樹脂b)と、架橋剤c)が存在する場合それと、及び/又はフィルム形成樹脂b)及び/又はフィルム形成樹脂a1’)との反応を触媒するための触媒d)を任意選択で含むことができる。当業者は、触媒d)のタイプが、一般的にフィルム形成樹脂a1)及び/又はフィルム形成樹脂b)の官能基のタイプ並びに架橋剤成分c)が存在する場合そのタイプに依存することを知っている。
【0131】
一実施形態において、触媒d)は、有機酸、さらに詳細にはスルホン酸、カルボン酸、リン酸、酸性リン酸エステル、及びそれらの混合物からなる群から選択される有機酸である。スルホン酸が好ましい。好適なスルホン酸の例として、ドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)、ジノニルナフタレンジスルホン酸(DNNSA)、パラ-トルエンスルホン酸(pTSA)がある。酸触媒は、ブロックされた形としても使用され得る。その結果、公知の通り、改善、例えばブロックされた触媒を含む組成物の貯蔵寿命の改善が得られる。酸触媒をブロックするのに適した作用剤の例として、好ましくは第三級アルキル化又はヘテロ環式アミンなどのアミンがある。ブロックされたスルホン酸触媒は、例えばブロックされたDDBSA、ブロックされたDNNSA又はブロックされたp-TSAとすることができる。スルホン酸触媒のこのブロッキングは、例えば、好ましくは第三級アルキル化又はヘテロ環式アミンなどのアミン、例えば2-アミノ-2-メチルプロパノール、ジイソプロパノールアミン、ジメチルオキサゾリジン又はトリメチルアミンなどを介して同様に行われる。共有結合ブロックされたスルホン酸触媒の使用も可能である。この場合、ブロッキングは、例えばエポキシ化合物又はエポキシ-イソシアナート化合物などの共有結合ブロッキング剤を使用して行われる。これらの種類のブロックされたスルホン酸触媒については、米国特許第5,102,961号に詳細に記載されている。触媒は、例えば、販売名CYCAT(登録商標)(allnexから)又はNACURE(登録商標)で入手可能であり、本発明の組成物においてそのまま使用することができる。
【0132】
別の実施形態において、触媒d)は金属ベースの触媒である。金属ベースの触媒において好ましい金属としては、スズ、ビスマス、亜鉛、ジルコニウム及びアルミニウムが挙げられる。好ましい金属ベースの触媒d)は、上記金属のカルボキシラート又はアセチルアセトナート複合体である。本発明において任意選択で使用される好ましい金属ベースの触媒d)は、スズ、ビスマス及び亜鉛カルボキシラートであり、さらに詳細には、ジラウリン酸ジメチルスズ、ジバーサチック酸ジメチルスズ、ジオレイン酸ジメチルスズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジオクチルスズ、及びオクチル酸スズ、2-エチルヘキサン酸亜鉛、ネオデカン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマスが好ましい。マレイン酸ジアルキルスズ及び酢酸ジアルキルスズも好適である。金属ベースの触媒の混合物及び組合せ、(ブロックされた)酸触媒の混合物、並びに金属ベースの触媒と(ブロックされた)酸触媒の混合物を使用することもできる。
【0133】
別の実施形態において、フィルム形成樹脂a1)及び/若しくはフィルム形成樹脂b)の官能基と、架橋剤c)が存在する場合それと、並びに/又はフィルム形成樹脂b)並びに/又はフィルム形成樹脂a1’)との反応は、塩基によって最も好都合に触媒され得る。ここで、当技術分野において公知の塩基であればいずれも好適である。通常の塩基触媒の一部には、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド、第四級アンモニウムヒドロキシド(テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドなど)、及びアミン化合物(ジアザ化合物、グアニジン化合物、環式アミジン、ピリジン、イミダゾリンを含むアミジンなど)がある。好適な触媒は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるEP1462501に記載されている。この実施形態において、触媒d)は、好ましくは二酸化炭素ブロックされた強塩基触媒、より好ましくは第四級アルキルアンモニウムビアルキルカーボナート又はアルキルカーボナート(例えば、EP2556108に記載されている)である。この実施形態における使用に適した別の触媒は、EP0326723に記載されている第三級アミン及びエポキシドの組合せからなる触媒、或いはPCT/EP2014/056953に記載されている、酸性X-H基を含む化合物からの塩基性アニオンX-の塩である均一系触媒[ここで、Xは、N、P、O、S又はCであり、アニオンX-は、フィルム形成樹脂a1)及び/若しくはb)及び/若しくはa1’)並びに/又は架橋剤c)と反応可能である]である、均一系塩基触媒d)である。本発明の本実施形態において使用するのに適した別の触媒は、例えばWO2018/005077に記載されているカルバマートブロックされた触媒である。
【0134】
反応性調節剤e)
一実施形態において、本発明による架橋性組成物及び/又は樹脂組成物Aは、少なくとも1種の反応性調節剤e)を含む。
【0135】
一実施形態において、反応性調節剤は、カルボン酸、一般式R-SHの化合物、pKa<12を有するX-H基を含む化合物、R-OH、β-ジケトン、β-ケトエステル、α-ヒドロキシケトン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0136】
反応性調節剤e)は、可使時間延長剤及び/又はオープン時間延長剤とすることができる。これは、可使時間延長剤又はオープン時間延長剤のいずれのタイプでもよく、可使時間延長剤及びオープン時間延長剤の異なる多くのタイプが当業者に公知である。可使時間延長剤は、架橋性組成物の粘度が倍増するのに必要とされる時間及び/又は前記架橋性組成物の好都合な適用を妨げるほど高くなるのに必要とされる時間を延ばす成分である。オープン時間延長剤は、架橋性組成物を基材に適用した後に、組成物の流動が起こり得る、したがって溶媒閉込めの低減のために組成物の流動及びレベリングを改善し、よりよい硬度進展をもたらす期間を延長する成分である。当業者は、反応性調節剤e)のタイプが、一般的にフィルム形成樹脂a1)及び/又はb)中に存在する官能基のタイプ、(架橋剤c)が存在する場合)架橋剤成分c)中に存在する官能基のタイプ、並びに本発明による架橋性組成物のために選択された触媒d)のタイプに依存することも知っている。例えば、β-ジケトン、β-ケトエステル及びα-ヒドロキシケトンのタイプの可使時間延長剤が周知である。そのような化合物の例として、2,4-ペンタンジオン、1,1,1-トリフルオロ-2,4-ペンタンジオン、1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロ-2,4-ペンタンジオン、2,4-ヘキサンジオン、2,4-ヘプタンジオン、5-メチル-2,4-ヘキサンジオン 2,4-オクタンジオン、5,5-ジメンチル-2,4-ヘキサンジオン、3-エチル-2,4-ペンタンジオン、2,4-デカンジオン、2,2-ジメチル-3,5-ノナンジオン、3-メチル-2,4-ペンタンジオン、2,4-トリデカンジオン、1-1-シクロヘキシル-1,3-ブタンジオン、5,5-ジメチル-1,3-シクロヘキサンジオン、1,3-シクロヘキサンジオン、1-フェニル-1,3-ブタンジオン、1(4-ビフェニル)-1,3-ブタンジオン、1-フェニル-1,3-ペンタンジオン、3-ベンジル-2,4-ペンタンジオン、1-フェニル-5,5-ジメチル-2,4-ヘキサンジオン、1-フェニル-2-ブチル-1,3-ブタンジオン、1-フェニル-3-(2-メトキシフェニル)-1,3-プロパンジオン、1-(4-ニトロフェニル)-1,3-ブタンジオン、1-(2-フリル)-1,3-ブタンジオン、1-(テトラヒドロ-2-フリル)-1,3-ブタンジオン、ジベンゾイルメタン、メチルアセトアセタート、エチルアセトアセタート、α-メチルエチルアセトアセタート、α-n-ブチルエチルアセトアセタート、α-sec-ブチルエチルアセトアセタート、α-エチルメチルアセトアセタート、及びα-エチルエチルアセトアセタート、α-アセチル-ブチロラクトン、ジメドン及び1-ヒドロキシアントラキノン、ベンゾイン、アセトイン、並びにα-ヒドロキシアセトフェノンがある。このクラスの特に好ましい可使時間延長剤化合物は、2,4-ペンタンジオンである。
【0137】
本発明による架橋性組成物において特に有用な別のクラスの反応性調節剤e)は、カルボン酸、好ましくは単官能性カルボン酸、例えば酢酸、酪酸、プロピオン酸、アクリル酸、メタクリル酸、フェニル酢酸、安息香酸、p-メチル安息香酸、p-ニトロ安息香酸、p-クロロ安息香酸、p-メトキシ安息香酸、イソノナン酸、2-エチルヘキサン酸、ペンタン酸、3-メチルブタン酸、ネオデカン酸、ベルサチン酸、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、アビエチン酸、1-メチルシクロヘキサン酸、ジメチルマロン酸、エチルメチルマロン酸、ジエチルマロン酸、2,2-ジメチルコハク酸、2,2-ジエチルコハク酸、2,2-ジメチルグルタル酸、2,2-ジメチルプロピオン酸、2,2-ジメチル酪酸、2-エチル-2-メチル酪酸、2,2-ジエチル酪酸、2,2-ジメチル吉草酸、2-エチル-2-メチル吉草酸、2,2-ジエチル吉草酸、2,2-ジメチルヘキサン酸、2,2-ジエチルヘキサン酸、2,2-ジメチルオクタン酸、2-エチル-2,5-ジメチルヘキサン酸、3-メチルイソクエン酸、4,4-ジメチルアコニット酸、1-メチルシクロペンタンカルボン酸、1,2,2-トリメチル-1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1-メチルシクロヘキサンカルボン酸、2-メチルビシクロ[2.2.1]-5-ヘプテン-2-カルボン酸、2-メチル-7-オキサビシクロ[2.2.1]-5-ヘプテン-2-カルボン酸、1-アダマンタンカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-カルボン酸及びビシクロ[2.2.2]オクタン-1-カルボン酸又はそれらの混合物である。酢酸、プロピオン酸、イソノナン酸、安息香酸若しくは第三級酸のいずれか、又はそれらの混合物が好ましい。
【0138】
本発明による架橋性組成物において特に有用な反応性調節剤e)の別のタイプは、一般式R-SHの化合物である[式中、Rは、アルキル、アルケニル、アリール又はアラルキル基とすることができる]。-SH基は、第一級、第二級又は第三級-SH基とすることができる。Rは、直鎖状基、環式基又は分枝状基とすることができ、例えばヒドロキシル基、第一級、第二級又は第三級アミン基、シラン又はシロキサン基、エーテル基、エステル基、カルボン酸基などの1種又は複数の他の官能基を含むことができる。好ましくは、Rは、一般式-C2n+1[式中、nは4~40、より好ましくは8~30である]の直鎖状又は分枝状アルキル基である。例として、n-C1225SH、n-C1633SH、式C1123SH、C1225SH及びC1327SHの直鎖状又は分枝状分子、並びにそれらの混合物、並びに(CH(iPr)C-C(CH-C(CHSHがある。Rが1種を超える他の官能基を含む場合、これらは異なっても同じでもよい。特にヒドロキシル又はエステル基が他の官能基として好ましい。Rがエステル基を含む場合、Rは、好ましくは一般式-(CH(C=O)O-R’を有する。ここにおいて、nは、1~20の範囲、好ましくは1~10の範囲で選択することができ、特に好ましいnは、1又は2である。R’は、例えばブチル、2-エチルヘキシル、iso-オクチル、トリデシル、オクタデシルなど、好ましくは1~24個の炭素原子を含む、任意のアルキル、アルケニル、アリール又はアラルキル基とすることができる。式HS-(CH(C=O)O-R’の複合体形成剤[式中、nは、1又は2であり、R’は、3~20個の炭素原子を含むアルキル基である]が特に好ましい。
【0139】
R-SHタイプから選択されるとき反応性調節剤e)は、複数の-SH基を含むことができる。式HS-(CH-SHの化合物[式中、x=1~20である]、式(HSCH4-mC(CHSCHCHSH)の化合物[式中、m=1~4である]、並びに例えば特許EP 0665219及びEP 0435306などに記載されている同様の化合物が好ましい。特に好ましい他の可使時間/オープン時間延長剤e)は、SH-官能性酸、特にSH-官能性カルボン酸とポリオールからのエステルである。必ずしも縮合反応合成のみに限定されているというわけではなく、そのような生成物は、例えばHS(CHCOOH(ここで、n=1~20)とポリオールの間に(ポリ)エステル結合を形成することにより得られ得る。式HS(CHCOOHのカルボン酸[式中、nは、1~20である]と2種以上のOH-官能性を有するポリオールとの反応生成物であるものが好ましい。この場合、ポリオールは、通常2種以上のOH-官能性を有し、モノマー、オリゴマー又はポリマーとすることができる。そのようなポリオールの非限定例は、グリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、エトキシ化トリメチロールプロパン、トリ(ヒドロキシエチル)イソシアヌラート、ヒマシ油、OH官能性ポリエステル、OH官能性ポリアクリラート、ポリカプロラクトン、OH官能性ポリカーボナート、特許US6486298に記載されているジエピスルフィドモノマーをベースにしたポリマーとすることができる。
【0140】
本発明による架橋性組成物において特に有用な反応性調節剤e)の別のタイプは、一般式R-OHの化合物[式中、Rは、アルキル、アルケニル、アリール又はアラルキル基とすることができる]である。さらに、Rは、直鎖状、環式又は分枝状基とすることができ、例えばエーテル基やエステル基などの1種又は複数の他の官能基を含むことができる。R-OHは、好ましくは第一級アルコール、より好ましくは1~20個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~6個の炭素原子を有するモノアルコールであり、好ましくはエタノール、n-プロパノール、n-ブタノール、n-アミルアルコール及びブチルグリコールの群から選択される。
【0141】
本発明による架橋性組成物において特に有用な反応性調節剤e)の別のクラスは、X-H基を含む化合物[ここで、Xは、C、N、P、O、又はSである]である。X-H、好ましくはN-H基を含む成分は、好ましくは12未満、より好ましくは11未満、最も好ましくは10未満であるpKa(水性環境で定義される)を有し、好ましくは7超、より好ましくは8超、より好ましくは8.5超である。X-Hを含む反応性調節剤e)は、好ましくはN-Hを-(C=O)-NH-(C=O)-基若しくは-NH-(O=S=O)-基の一部分として含む分子、或いは好ましくは置換又は非置換スクシンイミド、グルタルイミド、ヒダントイン、トリアゾール、ピラゾール、イミダゾール又はウラシルの基から選択され、好ましくはスクシンイミド、ベンゾトリアゾール及びトリアゾールの基又はそれらの混合物から選択されるヘテロ環式環にN-H基の窒素が含まれているヘテロ環を含む。
【0142】
本発明による架橋性組成物において特に有用な反応性調節剤e)の別のタイプは、化学線硬化性ポリマー組成物の重合をUV光下で開始することができる光化学開始剤である。光化学開始剤(光開始剤とも呼ばれる)は、光、典型的にUV光の吸収によりラジカルを発生させることができる化合物である。そのような放射線硬化性組成物における光開始剤の量は、放射線硬化性組成物の全重量に対して好ましくは0.1~10重量%、より好ましくは0.5~5重量%である。放射線硬化性組成物は、当技術分野において周知である1種又は複数の光増感剤も0~5重量%含むことができる。或いは、組成物は、開始剤が存在しない場合、特に電子線によって硬化され得る。好適な光開始剤の例は、α-ヒドロキシケトン、α-アミノケトン、ベンジルジメチル-ケタール、アシルホスフィン、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン、及びそれらの混合物とすることができ、好ましくは好適な光開始剤は、α-ヒドロキシケトン、ベンゾフェノン、アシルホスフィン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0143】
異なるタイプの反応性調節剤e)の混合物、例えばカルボン酸と式R-SHによって記載される化合物の混合物又は第一級アルコールR-OHと式X-Hによって記載されている化合物の混合物などを使用することができる。
【0144】
架橋性組成物の残部
本発明による架橋性組成物は、揮発性有機化合物f)の1種又は複数を任意選択で含むことができる。揮発性有機化合物f)は、a4)-1の下で以上に記載と同様の特性を有する。好適な揮発性有機化合物f)は、上記のように、a4)-1の下で記載のもののうちから選択することができる。そのような揮発性有機化合物f)の性質は、樹脂組成物Aにおいて使用されるものと同じでも異なってもよい。通常、本発明による組成物は、そのような揮発性有機化合物で、ある適用粘度に希釈され得る。適用粘度は、ASTM D4287に従ってレオメータを用いて決定することができる。一般に、組成物中に存在する揮発性有機化合物a4)-1+f)の量は25℃で測定して、せん断速度1000s-1で20~20000mPa.s、好ましくはせん断速度1000s-1で20~10000mPa.s、より好ましくはせん断速度1000s-1で40~5000mPa.s、さらにより好ましくはせん断速度1000s-1で70~3000mPa.sの適用粘度を得るような量である。好ましくは、本発明によるコーティング組成物は、適用粘度で全組成物に対して700g/L未満、好ましくは650g/L未満、より好ましくは600g/L未満、より好ましくは500g/L未満、最も好ましくは400g/L未満の揮発性有機化合物a4)-1+f)を含む。
【0145】
本発明による樹脂組成物A又は架橋性組成物は、反応性希釈剤g)も含むことができる。反応性希釈剤は、一般に少なくとも1種の官能性を有する少なくとも1個の官能基を含むモノマー又はオリゴマーの液体化合物である。官能基のタイプは、フィルム形成樹脂a1)、a1’)及び/又はb)中に存在する官能基と同様であり得る。反応性希釈剤g)が、全架橋性組成物の粘度を低減するために使用され、架橋剤c)が存在する場合それと、並びにフィルム形成樹脂a1)、a1’)及び/又はフィルム形成樹脂b)と反応することができ、好ましくは反応性希釈剤g)はフィルム形成樹脂b)と異なる。好ましくは、反応性希釈剤は揮発性ではなく(大気圧において190℃より高い沸点を有する)、したがって組成物の全揮発性有機含有量に寄与しない。
【0146】
上記の成分に加えて、他の化合物が、本発明による架橋性組成物中に存在し得る。そのような化合物は、フィルム形成樹脂a1)、a1’)又はb)以外の結合剤樹脂h)とすることができ、上記のフィルム形成樹脂a1)及び/若しくはb)並びに/又は架橋剤c)が存在する場合それで架橋され得る官能性を任意選択で含む。そのような他の化合物の例として、ケトン樹脂、及び潜在性アミノ官能性化合物、例えばオキサゾリジン、ケチミン、アルジミン、及びジイミンがある。上記その他の化合物は、当業者に公知であり、とりわけUS5214086に記載されている。
【0147】
架橋性組成物は、粒子状ポリ尿素化合物a2)と異なる又は同じである他のつや消し剤i)も含むことができる。そのようなつや消し剤i)の例として、無機つや消し添加剤、ワックス又は微粉化ポリマーつや消し剤がある。無機つや消し剤i)、特に無機酸化物は、SiO、Al、AlPO、MgO、TiO、ZrO、Fe及びそれらの混合物からなる群から選択される。酸化物は、ゲル化、沈降、ヒュームド、コロイド状などを含むさまざまな形をとることができる。無機酸化物としては、天然鉱物、加工/活性化鉱物、モンモリロナイト、アタパルジャイト、ベントナイト、珪藻土、ケイ砂、石灰石、カオリン、ボールクレー、タルク、パイロフィライト、パーライト、ケイ酸ナトリウム、アルミニウムケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、シリカヒドロゲル、シリカゲル、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、透析用シリカ、アルミナゼオライト、モレキュラーシーブ、珪藻土、逆相シリカ、漂白クレー、及びそれらの混合物も挙げることができる。シリカベースのつや消し剤i)は、ワックス、ポリマー又は無機材料で任意選択で処理され得る。つや消し剤i)として使用されるワックスは、ポリエチレン、ポリプロピレン、カルナウバ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、脂肪酸ベースの化合物、例えばステアリン酸亜鉛を含むステアラート、及びアミドをベースにすることができる。微粉化ポリマーつや消し剤i)は、高分子量ポリメチル尿素樹脂をベースにすることが多い。さらに、グルコース、デンプン又は他の再生可能な材料をベースにしたワックス様微粉化ポリマーを、同様につや消し剤i)として使用することができる。
【0148】
架橋性組成物は、少なくとも1種のラジカル阻害剤も含むことができる。好適なラジカル阻害剤の例としては、ヒドロキノン(HQ)、メチルヒドロキノン(THQ)、tert-ブチルヒドロキノン(TBHQ)、ジ-tert-ブチルヒドロキノン(DTBHQ)、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)などが挙げられる。好適な阻害剤の他の例としては、トリフェニルホスフィン(TPP)のようなホスフィン及びトリス-ノニルフェニルホスフィット(TNPP)、フェノチアジン(PTZ)、トリフェニルアンチモン(TPS)、並びにそれらのいずれかの混合物が挙げられる。使用される阻害剤の全量は、一般的に架橋性組成物の0~1重量%、好ましくは0.01~0.5重量%、最も好ましくは0.01~0.1重量%である。
【0149】
架橋性組成物は、コーティング組成物においてよく使用される他の材料、添加剤又は補助剤をさらに含むことができる。これらは、いくつかの重要な塗料特性を改善するためにより少量でよく使用される添加剤を含むことができる。これらの添加剤は、大気圧で沸点が190℃以下の溶媒を含む揮発性部分及び不揮発性部分を含むことができる。そのような添加剤の例として、例えば界面活性剤、顔料分散助剤、レオロジーモディファイヤー、レベリング剤、スリップ添加剤、湿潤剤、クレーター防止剤、消泡剤、接着促進剤、アルコキシシラン、流動改変剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、燃焼抑制剤、水、酸化防止剤、及びそれらの混合物がある。尿素を含む製剤の粘度は、例えば酸又は塩基基を有するよく使用される分散添加剤を使用して効果的に改変することができる。さらに詳細には、ADDITOL(登録商標) XL 6521、ADDITOL(登録商標) XL 6583及びDISPERBYK(登録商標) 2150などの分散添加剤を使用することができる。本発明の架橋性組成物を使用して、適用された最終のコーティングの外観、質感及び感触は、さまざまなタイプの流動及びレベリング及び/又は湿潤及び分散添加剤、例えばADDITOL(登録商標) XL 204、ADDITOL(登録商標) XL 122、ADDITOL(登録商標) XL 123N、ADDITOL(登録商標) XL 6577、BYK(登録商標) 306、BYK(登録商標) 307、BYK(登録商標) 104、BYK(登録商標) 358N、BYK(登録商標) 310又はBYK(登録商標) 315を使用して効果的に改変することができる。本発明の架橋性組成物における顔料、着色料、不活性樹脂、充填剤及び/又は添加剤の全量は、架橋性組成物の全重量と比べて一般的に60重量%を超えず、好ましくは40重量%を超えない。
【0150】
架橋性組成物は、顔料含有組成物とすることもできる。その場合、顔料及び充填剤が組成物中に存在する。顔料は、普通、塗料媒体に対する溶解度が低い固体成分であり、色を与えるために組成物に添加される。顔料含有組成物は、1種又は複数の無機顔料及び/又は1種又は複数の有機顔料を含むことができる。充填剤も、普通、塗料媒体に対する溶解度が低い固体成分であり、塗料の体積を増大し、又は耐蝕特性を与えるなどの他の塗料パラメータを改善するために組成物に添加される。
【0151】
好ましい一実施形態において、架橋性組成物は、ヒドロキシル官能基を好ましくは含むポリエステル又はポリアクリラート樹脂を含む少なくとも1種のフィルム形成樹脂a1)、ポリ尿素化合物a2)、任意選択により、分散剤a3)、イソシアナート官能基を好ましくは含む少なくとも1種の架橋剤c)、任意選択により、カルボン酸金属塩を好ましくは含み、ジカルボン酸ジアルキルスズをより好ましくは含む少なくとも1種の触媒d)、及び任意選択により、カルボン酸、一般式R-SHを有する化合物又はそれらの混合物を好ましくは含む少なくとも1種の反応性調節剤e)を含む。
【0152】
別の好ましい実施形態において、架橋性組成物は、酸性C-H官能基を含むポリエステル樹脂を好ましくは含む少なくとも1種のフィルム形成樹脂a1)、ポリ尿素化合物a2)、任意選択により、分散剤a3)、活性化不飽和C=C部分を好ましくは含む少なくとも1種の架橋剤c)、任意選択により、塩基を好ましくは含み、二酸化炭素ブロックされた強塩基触媒をより好ましくは含み、第四級テトラアルキルアンモニウムビアルキルカーボナート又はアルキルカーボナートをより好ましくは含む少なくとも1種の触媒d)、及び任意選択により、第一級アルコール、一般式X-Hを有する化合物又はそれらの混合物を好ましくは含む少なくとも1種の反応性調節剤e)を含む。
【0153】
別の好ましい実施形態において、架橋性組成物は、酸性C-H官能基を含むポリエステル樹脂を好ましくは含む少なくとも1種のフィルム形成樹脂a1)、活性化不飽和C=C部分を好ましくは含む少なくとも1種のフィルム形成樹脂a1’)、ポリ尿素化合物a2)、任意選択により、分散剤a3)、任意選択により、塩基を好ましくは含み、二酸化炭素ブロックされた強塩基触媒をより好ましくは含み、第四級テトラアルキルアンモニウムビアルキルカーボナート又はアルキルカーボナートをより好ましくは含む少なくとも1種の触媒d)、及び任意選択により、第一級アルコール、一般式X-Hを有する化合物又はそれらの混合物を好ましくは含む少なくとも1種の反応性調節剤e)を含む。
【0154】
別の好ましい実施形態において、架橋性組成物は、活性化不飽和C=C部分を好ましくは含む少なくとも1種のフィルム形成樹脂a1)、ポリ尿素化合物a2)、任意選択により、分散剤a3)、酸性C-H官能基を含むポリエステル樹脂を好ましくは含む少なくとも1種の架橋剤c)、任意選択により、塩基を好ましくは含み、二酸化炭素ブロックされた強塩基触媒をより好ましくは含み、第四級テトラアルキルアンモニウムビアルキルカーボナート又はアルキルカーボナートをより好ましくは含む少なくとも1種の触媒d)、及び任意選択により、第一級アルコール、一般式X-Hを有する化合物又はそれらの混合物を好ましくは含む少なくとも1種の反応性調節剤e)を含む。
【0155】
別の好ましい実施形態において、架橋性組成物は、活性化不飽和C=C部分を好ましくは含む少なくとも1種のフィルム形成樹脂a1)、ポリ尿素化合物a2)、任意選択により、分散剤a3)、任意選択により、活性化不飽和C=C部分を好ましくは含む1種又は複数のフィルム形成樹脂a1’)、任意選択により、活性化不飽和C=C部分を好ましくは含む1種又は複数のフィルム形成樹脂b)、任意選択により、光開始剤を好ましくは含む少なくとも1種の反応性調節剤e)を含む。
【0156】
架橋性組成物は、樹脂組成物Aをフィルム形成樹脂a1’)及び/又はb)及び/又は任意選択により架橋剤c)及び任意選択により触媒d)と混合するステップを含む方法によって、一成分組成物用に好適に調製され得る。或いは、架橋性組成物は、結合剤成分を形成するために樹脂組成物Aを任意選択のフィルム形成樹脂a1’)又はb)及び触媒d)と混合するステップ、並びに前記結合剤成分を架橋剤c)又はフィルム形成樹脂a1’)若しくはb)と混合するステップを含む方法によって、二成分組成物用に調製され得る。或いは、架橋剤c)が存在する場合それが、又はフィルム形成樹脂a1’)若しくはb)が、触媒dが存在しない場合に貯蔵温度においてフィルム形成樹脂a1)及び/又はフィルム形成樹脂b)と容易に反応しない場合、例えば架橋剤c)が活性化不飽和C=C部分を含むとき、及びフィルム形成樹脂a1)及び/又はb)が酸性C-H種を含むとき、架橋性組成物は、結合剤成分を形成するために樹脂組成物Aを任意選択のフィルム形成樹脂b)又はa1’)、架橋剤c)が存在する場合それと、又はフィルム形成樹脂b)又はa1’)及び任意選択により反応性調節剤e)と混合させ、二成分架橋性組成物用に前記結合剤成分を触媒d)と混合させることによって調製され得る。
【0157】
従来通り、架橋剤c)がイソシアナート官能性架橋剤であり、樹脂組成物がヒドロキシ官能性フィルム形成樹脂及びイソシアナート官能性架橋剤を含む場合、本発明による架橋性組成物は、可使時間が限定される。したがって、組成物を、好適には多成分組成物、例えば二成分組成物又は三成分組成物として提供することができ、一方のヒドロキシル官能性フィルム形成樹脂a1)、フィルム形成樹脂a1’)及び/又はフィルム形成樹脂b)、他方のイソシアナート官能性架橋剤c)が、異なる少なくとも2種の成分の一部分である。したがって、本発明は、架橋性組成物を調製するためのパーツのキットであって、二成分を含むパーツのキットは、
i. 少なくとも1種のヒドロキシル官能性フィルム形成樹脂a1)、任意選択によりフィルム形成樹脂a1’)、粒子状ポリ尿素成分a2)、任意選択により分散剤a3)、任意選択により他の成分a4)を含む樹脂組成物Aを含み、任意選択により少なくとも1種の(ヒドロキシル官能性)フィルム形成樹脂b)、及び任意選択により少なくとも1種の触媒d)、及び任意選択により少なくとも1種の反応性調節剤e)を含む結合剤モジュール、
ii. イソシアナート基を含む少なくとも1種の架橋剤c)を含む架橋剤モジュール
を含む、キットにも関する。
【0158】
或いは、パーツのキットは、
i. ヒドロキシル官能性フィルム形成樹脂成分a1)、任意選択によりフィルム形成樹脂a1’)、粒子状ポリ尿素成分a2)、任意選択により分散剤a3)、任意選択により他の成分a4)を含む樹脂組成物Aを含み、任意選択により(ヒドロキシル官能性)フィルム形成樹脂b)を含む結合剤モジュール、
ii. イソシアナート基を含む架橋剤c)を含む架橋剤モジュール、及び
iii. 揮発性有機希釈剤を含む希釈剤モジュール
を含む三成分を含むことができ、任意選択の触媒d)を、モジュールi、ii又はiiiにわたって分配することができ、モジュールの少なくとも1つが触媒d)を任意選択で含む。
【0159】
架橋剤c)が存在する場合それが、又はフィルム形成樹脂b)若しくはa1’)が、貯蔵温度においてフィルム形成樹脂a1)及び/又はフィルム形成樹脂b)と容易に反応しない場合、例えば架橋剤c)が存在する場合それが、又はフィルム形成樹脂b)又はa1’)が、メラミン-アミノ樹脂及び/又はブロックイソシアナート基を含むとき、すべての成分a)~e)は、1パーツで供給され得る。架橋剤c)が必要とされず(したがって、架橋剤c)が存在せず、すなわち架橋剤c)の非存在下で)、フィルム形成樹脂b)又はa1’)が貯蔵温度において化学線の非存在下でフィルム形成樹脂a1)及び/又はフィルム形成樹脂b)と容易に反応しない場合にも、例えばフィルム形成樹脂a1)及び/又はb)及び/又はa1’)が活性化不飽和C=C種を含むとき、樹脂組成物A、b)及びe)のすべての成分は1パーツで供給され得る。
【0160】
架橋剤c)が存在する場合それが、又はフィルム形成樹脂b)若しくはa1’)が、貯蔵温度において触媒d)の非存在下でフィルム形成樹脂a1)及び/又はフィルム形成樹脂b)と容易に反応しない場合に、例えば架橋剤c)が存在する場合それが、又はフィルム形成樹脂b)若しくはa1’)が、活性化不飽和C=C部分を含み、フィルム形成樹脂a1)及び/又はb)が酸性C-H種を含むとき、樹脂組成物A、A’、b)、c)及びe)のすべての成分を1パーツで供給することができ、触媒d)を別個のパーツで供給することができる。この場合、本発明は、架橋性組成物を調製するためのパーツのキットであって、
i. 少なくとも1種の酸性C-H及び/又は不飽和C=C官能性フィルム形成樹脂a1)、任意選択によりフィルム形成樹脂a1’)、粒子状ポリ尿素成分a2)、任意選択により分散剤a3)、任意選択により他の成分a4)を含む樹脂組成物Aを含み、任意選択により少なくとも1種のフィルム形成樹脂b)、任意選択により、活性化不飽和C=C部分及び/又は少なくとも1種の酸性C-Hを含む少なくとも1種の架橋剤c)、及び任意選択により少なくとも1種の反応性調節剤e)を含む結合剤モジュール、
ii. 少なくとも1種の触媒d)を含む触媒モジュール
を含むキットに関する。
【0161】
架橋性組成物の他の成分は、モジュールが必要とされる貯蔵安定性を示す限り、さまざまな形で上記のモジュールにわたって分配され得る。貯蔵時に互いに反応する架橋性組成物の成分を、1つのモジュール中で組み合わせないことが好ましい。希望するなら、コーティング組成物の成分を、はるかに多いモジュール、例えば4つ又は5つのモジュールにわたって分配してもよい。
【0162】
第4の態様において、本発明は、物品又は基材をコーティングする方法であって、(Fischer Permascope MP40E-Sを使用して測定して)50~60μmの乾燥膜厚(DFT)で適用したとき、(BYKヘーズ-光沢計を使用して決定して)60°の角度で多くとも45光沢単位、好ましくは多くとも30光沢単位、より好ましくは多くとも20光沢単位の光沢測定値を有する低減された光沢コーティングを与えるために、
(i)上記の架橋性組成物に適用するステップ、
(ii)適用された組成物を硬化させるステップ
を含む方法に関連している。
【0163】
第5の態様において、本発明は、上記の架橋性組成物でコーティングされた基材に関連している。コーティングの乾燥後の適用された膜厚は、30~500μm、好ましくは40~250μm、より好ましくは40~100μm、最も好ましくは50~60μmである。基材は、(Fischer Permascope MP40E-Sを使用して測定して)50~60μmの乾燥膜厚(DFT)で適用したとき、(BYKヘーズ-光沢計を使用して決定して)60°の角度で多くとも45光沢単位、好ましくは多くとも30光沢単位、より好ましくは多くとも20光沢単位の光沢測定値を有する低減された光沢コーティングを有する。
【0164】
基材は、例えば金属、例えば鉄、鋼、ブリキ及びアルミニウム、又はプラスチック、木材、ガラス、合成材料、紙、皮革、コンクリート又は別のコーティング層とすることができる。他のコーティング層は、本発明のコーティング組成物からなることができ、又は異なるコーティング組成物とすることができる。本発明のコーティング組成物は、クリアコート、ベースコート、顔料含有トップコート、プライマー、及び充填剤として特定の有用性を示す。
【0165】
本発明による架橋性組成物は、クリアコート又は顔料含有トップコートとしての使用に大変適している。クリアコートは、顔料を本質的に含まず、可視光に対して透過性である。
【0166】
本発明の架橋性組成物がクリアコートであるとき、それを木製基材に適用することが好ましく、木材は、シーリング層で任意選択で前処理されている。木製基材にそのまま適用されると、クリアコートは、モノコートの上部層を形成する。木材が別の層で前処理されている場合に、本発明のクリアコートは、多層コーティングの上部層を形成する。
【0167】
本発明の架橋性組成物の別の好ましい適用は、色付与及び/又は効果付与ベースコートにわたって適用されたクリアコートである。その場合、クリアコートは、自動車のエクステリアに典型的に適用されたものなどの多層ラッカーコーティングの上部層を形成する。ベースコートは、水性ベースコートでも、溶媒性ベースコートでもよい。
【0168】
本発明の架橋性組成物の別の好ましい実施形態は、プラスチック物体、例えばプラスチック家具、自動車及び運搬用車両の部品、玩具並びに電気器具にわたって適用されたクリアコートである。
【0169】
本発明の架橋性組成物の別の好ましい実施形態は、コンクリート基材、例えばコンクリート床又はタイルにわたって適用されたクリアコートである。
【0170】
本発明の架橋性組成物の別の好ましい実施形態は、シーリング層で任意選択で前処理された木製物体、例えば家具、台所キャビネット、木製床、例えば自動車又はヨットにおける化粧パネル、木製建築要素をコーティングし、金属物体、例えば家具、橋、パイプライン、農業用、建築用及び地ならし用設備、工業用プラント又は建物、石油及びガス用設備又は船舶をコーティングし、コンクリート基材、例えばコンクリート床又はタイルをコーティングし、プラスチック物体、例えば家具、自動車及び運搬用車両の部品、玩具及び電気器具をコーティングするための顔料含有トップコートである。組成物は、自動車及び大型運搬用車両、例えば列車、トラック、バス、及び航空機の仕上げ及び再仕上げにも適している。一般に、本発明の架橋性組成物は、組成物を基材に移すために吹付け、刷毛塗り、引き落とし又は他のいずれかの方法によって適用され得る。
【0171】
したがって、本発明はまた、いずれかのコーティング適用のためにいずれかの基材にコーティングを提供する方法であって、本発明によるコーティング組成物をコーティング対象の物体の表面の少なくとも一部分に適用するステップ、及び適用されたコーティング組成物を、好ましくは5~180℃の温度範囲で硬化させるステップを含む方法にも関する。当業者は、硬化温度が、架橋剤c)が存在する場合そのタイプ及び/又はフィルム形成樹脂a1)のタイプに依存し、例えば5~100℃、又はより好ましくは10~60℃で実施され得ることを知っている。本発明のコーティング組成物は、化学線に曝露すると少なくとも部分硬化可能であり得る。放射線硬化性組成物は、一般的に光開始剤の存在下で照射、典型的に紫外(UV)線によって硬化される。それらは、電子線照射によっても硬化させることができ、光開始剤を含まない組成物の使用が可能になる。放射線硬化は、好ましくは高エネルギー放射線、すなわち紫外線若しくは昼光、例えば172~750nmの波長の光への曝露によって、又は高エネルギー電子線(電子線、70~300keV)を用いた照射によって達成される。紫外(UV)線、γ線、及び電子線などのさまざまなタイプの化学線を使用することができる。放射線硬化の好ましい手段は紫外線である。一実施形態によれば、紫外線は、UV-A、UV-B、UV-C及び/又はUV-V放射線である。
【実施例
【0172】
方法及び材料
分子量及び分子量分布は、ASTM D3593規格に従って、ポリスチレン標準物質を使用するゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、さらに詳細にはサイズ排除クロマトグラフィーを使用して決定した。使用したサイズ排除装置は、ポンプ、オートサンプラー及びHe脱気装置(UniflowsのDegasys DG-1210)からなり、PLgel 5μmのMIXED-C 600×7.5mmのカラム及びPlgel 5μmのガードカラム(50×7.5mm-Polymer Laboratories)を装備したAllianceシステムであった。カラムオーブン(Separations Analytical Instruments)を30℃で設定した。テトラヒドロフラン(THF-Extra Dry、Biosolve 206347)+2%酢酸(Baker 6052)を、溶離液として流速0.8ml/分で使用した。二硫化炭素(Backer)をマーカーとして使用した。Waters 410屈折率を検出器として使用した。注入量は、濃度1.5mg/mlで100μlであった。ポリスチレン標準物質(Polymer Laboratories、Easical PS-1、2010-0501(M範囲580g/mol~8.500.000g/mol)及びEasical PS-2、2010-0601(M範囲580g/mol~400.000g/mol))を使用し、三次多項式を使用して校正した。データ分析に使用したソフトウェアはEmpower(Waters)であった。こうして得られた溶出重量分率対分子量のプロットにおいて、Mnは、分子の50%が溶出した分子量であり、Mwは、全質量の50%が溶出した分子量である。
【0173】
ガラス転移温度Tgは、Mettler DSC 822E熱量計を使用して、DEN EN ISO 16805及びISO 11357に従って決定した。7~12mgの試料を、最初にTgを優に超えて120℃で加熱した。この温度を5分間維持し、その後温度を10分で予想されるTgを下回る少なくとも60℃に下げた。続いて、試料を、10℃/分の昇温で120℃に加熱した。Tgは、熱流対温度のプロットにおいてベースラインの接線と最大負勾配の接線の交点における温度である。
【0174】
ヒドロキシル価は、ASTM E222-17法に従って測定される。
【0175】
マロナート/アセトアセタート活性C-H当量は、25重量%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液を用いてマロナート/アセトアセタートを含む樹脂を滴定することによって決定した。アゾバイオレット指示薬溶液を使用して、当量点を検出した。
【0176】
体積%、粒径及び粒径分布は、波長632.8nm、ビーム長2.4mmのHe-Neレーザー、及び2台の後方散乱検出器を含む、光散乱測定のために最適化された42素子アレー検出器を備えたMalvern Mastersizer Sを使用して決定される。試料は、ポリ尿素付加物を含むフィルム形成樹脂1グラムを酢酸ブチル9グラムに希釈することによって調製した。続いて、ボルテックスミキサーを使用して、試料を2~3分間予撹乱した。オブスキュレーションが10~12.5%であり、試料が測定セルにおいて少なくとも30秒間循環したとき、測定を開始した。粒子屈折率1.5330、連続媒質屈折率1.4000と仮定し、粒子は完全に不透明であると仮定し、Mie理論に基づいた多分散分析モデルを使用して、測定データを分析した。
【0177】
不粘着乾燥時間は、以下の通り決定した。順応させた環境(22℃、相対湿度60%)で、綿ボールを乾燥コーティングに置き、1kgのおもりを綿ボールに10秒間置き、おもりを除去し、綿ボールを吹き飛ばした。架橋性組成物を適用した後の時間に応じて、この手順を繰り返した。コーティングは、綿ボールが目に言える痕跡を何も残さないとき不粘着性であると言われた。この時間を不粘着時間として記録した。
【0178】
ペルソ硬度は、23℃及び相対湿度55±5%の順応室で測定した。硬度は、ASTM D4366に記載されているペルソによる振り子を用いて測定した。
【0179】
ヘーズ及び光沢は、BYKヘーズ-光沢計を使用して決定した。耐摩耗性は、3M281Q WETORDRY(商標)サンドペーパーを用いてコーティングを等しい力で10回引っ掻くことによって決定し、引っ掻き前の60°における光沢値-引っ掻き後の60°における光沢値の絶対値として表した。低い値は、コーティングが良好な耐摩耗性を有することを意味する。
【0180】
キセノン耐性は、ISO 11341に従って決定した。
【0181】
乾燥膜厚(DFT)は、Fischer Permascope MP40E-Sを使用して金属パネルで測定した。
【0182】
0.1s-1における粘度は、Anton-Paarから供給されたコーンプレートMCR302レオメータを使用して決定した。
【0183】
樹脂1の調製:ヒドロキシル価132mg KOH/g(不揮発性分による)、酸価2.4mg KOH/g(不揮発性分による)、Mw 2,867g/mol及びMn 1,303g/mol(GPC、ポリスチレン標準物質)及びTg -4℃を有する(メタ)アクリルポリオールを、アクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリラート、ブチルアクリラート、ブチルメタクリラート及びスチレンの混合物の重合により調製した。(メタ)アクリルポリオールを酢酸ブチルに溶解し、不揮発性分78重量%の溶液を得た。
【0184】
SETALUX(登録商標)1915 BA-75は、75%アクリルポリオールの酢酸ブチル溶液である。
【0185】
SETALUX(登録商標)D A 450 BA-50は、50%アクリルポリオールの酢酸ブチル溶液である。
【0186】
ACURE(登録商標) 510-100は、85%マロナート官能性ポリエステルの酢酸ブチル溶液である。
【0187】
ACURE(登録商標) 510-200は、85%マロナート官能性ポリエステルの酢酸ブチル溶液である。
【0188】
ACURE(登録商標) 550-105は、アクリロイル官能性オリゴエステルである。
【0189】
ACURE(登録商標) 500は、マイケル付加反応用のカーボナートブロックされた塩基触媒(固形分29.5重量%)である。
【0190】
DBTLは、TINSTAB(登録商標) BL 277の名称で市販されているジラウリン酸ジブチルスズベースの触媒である。
【0191】
MBCHAは、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)である。
【0192】
ACEMATT(登録商標) OK 500は、微細粒ワックスで後処理された沈降シリカである。
【0193】
ACEMATT(登録商標) 3300は、アドバンスドポリマーで処理された環式シリカである。
【0194】
DEUTERON(登録商標) PMH-Cは、微粉化熱硬化ポリメチル尿素である。
【0195】
CERAFLOUR(登録商標) 1000は、ワックス様特性をもつ微粉化ポリマーである。
【0196】
CERIDUST(登録商標) 9615Aは、コーティングの光沢低減に使用される、ポリエチレン及びアミドワックスの微粉化ブレンドである。
【0197】
TOLONATE(商標) HDT 90は、酢酸ブチル/ハイフラッシュ芳香族溶媒のブレンド中90%固形物で供給されている、HDI-トリマー(イソシアヌラート)をベースにした脂肪族ポリイソシアナートである。平均NCO官能性/トリマー分子は約3.6である。
【0198】
TOLONATE(商標) HDT-LV2は、HDI-トリマー(イソシアヌラート)をベースにした、溶媒不含の低粘度脂肪族ポリイソシアナートである。平均NCO官能性/トリマー分子は約3.2である。
【0199】
DESMODUR(登録商標) ultra 2822は、脂肪族ポリイソシアナート(固形物55%)(HDIトリマー)である。平均NCO官能性/トリマー分子は約3.5である。
【0200】
DESMODUR(登録商標) N3800は、脂肪族ポリイソシアナート(柔軟化されたHDIトリマー)である。平均NCO官能性/トリマー分子は約3.8である。
【0201】
DESMODUR(登録商標) N 75 MPA/Xは、ポリウレタンコーティング系用の硬化剤成分として使用される脂肪族ポリイソシアナート(固形物75%)(HDIビウレット)である。
【0202】
IPDIは、イソホロンジイソシアナートである。
【0203】
ADDITOL(登録商標) XL 123Nは、修飾シリコーン油をベースにしたフロー剤及び消泡剤である。
【0204】
ADDITOL(登録商標) VXL 4951Nは、フルオロ修飾シリコーン消泡剤である。
【0205】
ADDITOL(登録商標) XL 6521は、カチオン性をもつ高分子湿潤及び分散剤である。
【0206】
DISPERBYK(登録商標) 2150は、塩基性顔料親和性基を有する高分子量の湿潤及び分散添加剤である。
【0207】
CAB 381-20は、中程度ブチリル含有量及び高粘度を有するセルロースエステルである酢酸酪酸セルロースである。
【0208】
KRONOS(登録商標) 2310は、ルチル型二酸化チタン顔料である。
【0209】
以下の実施例において、相対粒径分布幅は、方程式IIに従って計算され、表中で「(90体積%におけるPS /10体積%におけるPS)」と略される。
方程式II:
相対粒径分布幅=[(粒径分布の90体積%における粒径)/(粒径分布の10体積%における粒径)]
【0210】
下記のすべての実施例において、イソシアナート-及びアミン官能性の(ほとんど)化学量論量を使用した。さらに、使用されたイソシアナート官能性種は、1分子当たり3~4個のNCO基の平均官能性を有する、ヘキサメチレンジイソシアナートをベースにしたトリマーである(上記のイソシアナートトリマーの使用されるグレードに従って平均官能性値を参照のこと)。そのようなトリマー種をモノアミンと反応させると、1分子当たり形成された尿素基の量(又は形成された尿素結合又は尿素連結の数)は、方程式Iに従って使用されたポリイソシアナートグレードの平均官能性に直接的に対応する。したがって、下記の実施例において、1分子当たりの平均尿素基数(又は平均尿素結合数又は平均尿素連結数)は、3~4であり、6を十分に下回る。
【0211】
(例A)
下記の表において、実施例はExと略され、比較例は、Comp Exと略される。
【0212】
製剤は、表1に従って調製した。TOLONATE(商標) HDT-90を除くすべての成分を混合した。続いて、プロペラー攪拌機を使用して370~420RPMで撹拌しながら、TOLONATE(商標) HDT-90をゆっくりと添加した。ポリ尿素付加物について例1の得られた平均粒径は、40μmであり、10μmより小さい粒子の累積体積百分率は10%であり、20μmより大きい粒子の累積体積百分率は82%であった。例1では、(90体積%におけるPS /10体積%におけるPS)=4.9。
【表1】
【0213】
塗料をガラスに適用し、次に不粘着時間及びペルソ硬度の測定を行った。塗料を、アルミニウムパネルに予め適用した黒色溶媒性ベースコートにも適用した。すべての試料の層厚さは同様であった。結果を表2に示す。
【表2】
【0214】
表2のデータから、本発明によるポリ尿素粒子をつや消し剤として使用することによって、はるかに高い品質のコーティングになることが明らかとなる。つや消し剤を含まない製剤(比較例1)と比べて、本発明によるポリ尿素粒子を含む塗料(例1)は速く乾燥し、不粘着時間が短い一方で、シリカつや消し剤を含む塗料は、不粘着時間を許容しがたいほど増加させる。さらに、本発明によるポリ尿素つや消し剤を含むコーティングの透明度はより高かった。これは、比較例2及び3と比べて、例1で測定されたヘーズ値が低いことから明らかになる。さらに、乾燥引っ掻き後及びキセノン耐性後の光沢変化は、シリカベースのつや消し剤を用いて得られた光沢の変化と比べてはるかに低かったことも特に驚きであった。
【0215】
(例B)
表3に従って、「ポリ尿素含有ポリオール」の下に示した組成物を用いて、ポリ尿素つや消し剤を含むフィルム形成樹脂を調製した。ここで、粒径は、プロセス条件で調整した。さらに詳細には、記載された量のベンジルアミンを、反応器中でSETALUX(登録商標) 1915ポリオールに予め溶解し、続いてアンカー型撹拌機を使用して、約400RPM(Ex 2及び4及びComp Ex 5)又は125RPM(Ex 3及びEx 5並びにComp Ex 4)で撹拌しながら、21~32℃でTOLONATE(商標) HDT-90(酢酸ブチルを使用して、固形分50%に希釈)を反応器に投入した。続いて、表3に「塗料」の下で示す残りの成分を添加することによって、架橋性組成物を調製した。すべての試料を、等しく固形分58重量%で製剤化した。
【表3】
【0216】
塗料を、アルミニウムパネルに予め適用した黒色溶媒性ベースコートに適用した。ヘーズ及び光沢を決定した。すべての試料の層厚さは同様であり、70~80μmに及んだ。結果を表4に示す。
【表4】
【0217】
これらのデータから、本発明によれば10μmより小さい直径を有する粒子の体積百分率が40%以下であり、20μmより大きい直径を有する粒子の体積百分率が11%以上であるポリ尿素粒子を含むフィルム形成樹脂は、著しいつや消し効果を示す(例2~5)が、10μmより小さい直径を有する粒子の体積百分率が40%超であり、又は20μmより大きい直径を有する粒子の体積百分率が11%未満であるポリ尿素粒子を含む、したがって本発明によらないフィルム形成樹脂(比較例4及び5)は、比較例1と比べると大変わずかな、許容できないほどのつや消し効果しか示さないことが明らかである。さらに、比較例4及び5は、大変高いヘーズを示す。
【0218】
(例C)
表5aに従って、ポリ尿素つや消し剤及び任意選択により分散剤を含むフィルム形成樹脂を調製した。記載された量のベンジルアミンを、反応器中でSETALUX(登録商標) 1915ポリオールに予め溶解し、続いてアンカー型撹拌機を使用して、20~30℃において約125RPMで撹拌しながら、TOLONATE(商標) HDT-90(酢酸ブチルを使用して、固形分60%に希釈)を反応器に投入した。続いて、粒径分布を決定した。ポリ尿素付加物を含むフィルム形成樹脂を固形分53%に希釈し、続いて粘度を測定した。さらに、表5bに示す成分を添加することによって、架橋性組成物を調製した。すべての試料を、等しく架橋性組成物固形分55%で製剤化した。
【表5a】

【表5b】
【0219】
表5a及び5bによる架橋性組成物を、Lenetaカードに等しい層厚さで引き落すことによって適用した。ヘーズ及び光沢を決定した。結果を表6に示す。
【表6】
【0220】
表5a及び6のデータにより、本発明によるポリ尿素粒子を含むフィルム形成樹脂に分散剤を添加することによって、やはり良好なつや消し効果がもたらされ、低光沢値が得られたことが示される。興味深いことに、本発明によるポリ尿素粒子を含むフィルム形成樹脂の粘度は、分散剤を添加すると、自明のことながらそれぞれ例7~9を例6と比較し、又は例11及び12を例10と比較したとき有意に低下した。この粘度の低下は、塗料が等粘度で調製されたとき低VOCを得る際に大変有益である。さらに、噴霧適用において、低粘度は、良好なレベリング及び外観を得るためにも有益である。
【0221】
(例D)
比較例Comp Ex 6として、本発明の実施例より有意に低い(平均)粒径を有するポリ尿素粒子を含む組成物を作製した。ポリ尿素樹脂2は、以下の通り調製した。温度ジャケット及び撹拌機を装備した5リットルのガラス容器に、樹脂1(上記)を投入し、30℃に加熱した。続いて、ベンジルアミンを反応容器に添加し、混合物を10~15分間均質化し、続いて氷水で冷却した。撹拌機速度を750rpmに上げ、酢酸ブチルで希釈したヘキサメチレンジイソシアナートを添加した。反応混合物を30分間撹拌し、酢酸ブチルでさらに希釈して、固形分66.3重量%にした。得られたポリオール成分のポリ尿素樹脂2には、4.6重量%のポリ尿素生成物及び61.7重量%のポリアクリラートポリオールが含まれていた。表7は、組成、並びにポリ尿素粒径データ及び適用された最終フィルムの光沢を示す。
【表7】
【0222】
Comp Ex 6は、本発明に記載されている範囲外の(平均)粒径を有する小型のポリ尿素粒子が、架橋性組成物の光沢を低減しないことを明確に示す。
【0223】
(例E)
表8に従って、ポリ尿素つや消し剤を含む組成物を調製した。例13及び14の場合には、以下の手順に従って、ポリ尿素生成物をRMAアクセプタ樹脂ACURE(登録商標) 550-105において調製した。記載された量のACURE(登録商標) 550-105、TOLONATE(商標) HDT-90及びDISPERBYK(登録商標) 2150の混合物を撹拌容器で調製した。続いて、記載された量の酢酸ブチルの1/3中の記載された量のベンジルアミンの溶液を、撹拌しながら容器に送り込み、目標とされた(平均)粒径が得られるように加工条件を適合させた。さらに詳細には、アンカー型撹拌機を使用して400~450RPMで撹拌しながら、前記溶液を23~30℃の反応温度において容器に送り込んだ。得られたポリ尿素修飾樹脂溶液の粒径を先に記載の方法に従って決定し、ポリ尿素を含む溶液を、続いて残りの酢酸ブチル及び表8に記載の他の成分と混合して、最終リアルマイケル付加(RMA)架橋性組成物を得た。例15の場合に、RMAドナー樹脂ACURE(登録商標) 510-100とRMAアクセプタ樹脂ACURE(登録商標) 550-105の両方を、以下の手順に従ってポリ尿素生成物で修飾した。0.26gのベンジルアミン及び0.04gのDISPERBYK(登録商標) 2150を16.9のACURE(登録商標) 510-100に溶解した。続いて、撹拌しながら、11.02gの酢酸ブチル中の0.51gのTOLONATE(商標) HDT-90の別々に調製された溶液を添加し、目標とされた(平均)粒径が得られるように加工条件を適合させた。さらに詳細には、アンカー型撹拌機を使用して350~400RPMで撹拌しながら、前記別々に調製された溶液を23~30℃で添加した。得られたポリ尿素修飾RMAドナー樹脂溶液の粒径を決定した。別々に、8.9gのACURE(登録商標) 550-105、0.04gのDISPERBYK(登録商標) 2150及び0.63gのTOLONATE(商標) HDT-90の混合物を作製し、それに、撹拌しながら4.0gの酢酸ブチル中0.32gのベンジルアミンの溶液を添加し、目標とされた(平均)粒径が得られるように加工条件を適合させた。さらに詳細には、以上の例13及び14について記載されたものと同様の加工条件で撹拌しながら、前記溶液を添加した。得られたポリ尿素修飾RMAアクセプタ樹脂の粒径を決定した。続いて、ポリ尿素を含むRMAドナー及びアクセプタ樹脂溶液を混合し、表8に記載された残りの成分を添加して、例15の最終リアルマイケル付加(RMA)架橋性組成物を得た。
【表8】
【0224】
塗料を、引き落としによってLenetaカードに適用し、次に、BYK光沢計を使用して光沢の測定を行った。すべての試料の乾燥膜厚は、約90μmと同様であった。表8から、固体結合剤に対してポリ尿素負荷3.0%(Ex 13)は、参照クリアコートComp Ex 7と比べて光沢のわずかな低減に至ることが明らかになる。固体結合剤樹脂に対してポリ尿素負荷3.7%のEx 14についても、同じことが言える。より高い負荷(例えば、Ex 15では6.5%)では、ポリ尿素粒子は、大変効果的な光沢低減をもたらす。したがって、例13及び14は、確かに光沢の低減を示すが、実際には固体結合剤に対してポリ尿素負荷が大きくなると、光沢低減の効果が高くなる。
【0225】
(例F)
表9に従って、ポリ尿素並びに/又は従来型シリカベースのつや消し剤及び分散剤を含む組成物を調製した。この場合、表9のAの下に記載された組成物を達成するために、以下の手順に従って、ポリ尿素化合物をRMAドナー樹脂において調製した:記載された量の1/3の酢酸ブチル中の記載された量の1/3のACURE(登録商標) 510-100及び記載された量のDISPERBYK(登録商標) 2150の溶液を撹拌容器で調製した。続いて、以下の別々に調製された2種の溶液を容器に同時に送り込んだ:1)記載された量の1/3の酢酸ブチル中の記載された量の3-メトキシプロピルアミン又はベンジルアミン及び記載された量の1/3のACURE(登録商標) 510-100;2)記載された量の1/3の酢酸ブチル中の記載された量のTOLONATE(商標) HDT-90又はDESMODUR(登録商標) ultra 2822及び記載された量の1/3のACURE(登録商標) 510-100。目標とされた粒径が得られるように加工条件を適合させた。さらに詳細には、アンカー型撹拌機を使用して350~400RPMで撹拌しながら、前記別々に調製された2種の溶液を、23~30℃で容器に同時に送り込んだ。得られたポリ尿素修飾樹脂溶液の粒径分布を決定し、ポリ尿素を含む溶液を、続いて表9のBの下に記載された顔料分散剤及び表9のCの下に記載された残りの成分と混合し、最終リアルマイケル付加(RMA)架橋性組成物を得た。
【0226】
これらの組成物を、従来型噴霧適用によってガラス及び金属パネルに乾燥膜厚約70μmに適用した。結果を表10に示す。
【表9-1】

【表9-2】
【0227】
Comp Ex 8は、つや消し添加剤が添加されていない高光沢白色トップコートである。明確に、ACEMATT(登録商標) 3300シリカベースのつや消し剤の添加は、RMA組成物の乾燥時間及びコーティングの最終硬度に対して有害な効果を及ぼす(Comp Ex 9、表10)。また、ポリ尿素を含むEx 17と比べて十分に低い光沢値を達成するために、やや高量のこの添加剤が必要とされる。
【表10】
【0228】
Ex 16から、架橋性組成物に対して5.1%のポリ尿素で、既に著しいつや消しが達成されていることが見られる。ポリ尿素及びシリカつや消し剤を組み合わせることによって、光沢を幾分さらに低減することができる(それぞれ、Ex 16をEx 18と比較、Ex 17をEx 19と比較)。
【0229】
(例G)
本発明のポリ尿素つや消し粒子を、非シリカベースのつや消し剤とも組み合わせた(表11)。これらの組成物を先に記載の一般手順に従って調製した。例Fも参照のこと。Ex 20は、ポリ尿素粒子のみを含む参照組成物である。Comp Ex 10及びComp Ex 11はそれぞれ、微粉化熱硬化ポリメチル尿素粒子又はワックス様微粉化ポリマー粒子のみ含む。Ex 20は、強く低減された光沢(表12)を示し、Comp Ex 10及びComp Ex 11は、光沢がかなり高い。本発明のポリ尿素粒子をDEUTERON(登録商標) PMH-C (Ex 21)又はCERAFLOUR(登録商標) 1000 (Ex 22)と組み合わせると、特に60°での光沢を、Ex 20と比べて低減することができ、軽微な乾燥遅延及び硬度低下のみ伴う(表12)。
【表11-1】

【表11-2】

【表12】
【0230】
(例H)
さまざまなマロナート官能性ポリエステル結合剤をベースにした追加のクリアなRMA架橋性組成物を、表13に示したように調製した。先に記載の一般手順に従って、例23及び25の場合に、ポリ尿素成分をACURE(登録商標) 550-105 RMAアクセプタ樹脂において調製し、例24の場合に、ポリ尿素成分をACURE(登録商標) 510-100ドナー樹脂において調製した。例Eも参照のこと。本発明のポリ尿素粒子のある負荷の効果は力強く、光沢低減は、使用されたマロナート化ポリエステル結合剤樹脂のタイプにかかわらず同様である(Ex 24及びEx 25を比較)ことが明らかである(表13に示した結果から)。また、光沢は、この特定のポリ尿素付加物の負荷をさらに高めることによって、大変低いレベルに低減され得ることが示される(Ex 23及びEx 24を比較)。
【表13】
【0231】
(例I)
本発明のフィルム形成、つや消し組成物は、Ex 26、表14及び15(クリアコーティング)、並びにEx 27、表14及び16(白色顔料含有コーティング)によって明らかなように、乾燥膜厚(DFT)に応じてつや消し効果の大変良好な安定性も示す。これは、力強く再現性のある低光沢を、適用されたDFTにかかわらず達成できることを意味する。
【表14】


【表15】

【表16】
【0232】
(例J)
【表17】

Comp Ex 12及びComp Ex 13の架橋性組成物は、JP2629747に記載されている方法に従って調製された、ジアミン及びジイソシアナートをベースにしたポリ尿素粒子を含む。この方法によって、相対粒径分布幅によって表される大変大きい直径を有する高量のポリ尿素粒子が形成された(表17中)。さらに、(JP2629747に記載されている方法によって)形成されたポリ尿素化合物の平均尿素結合数は6より高い。さらに、Comp Ex 12及びComp Ex 13におけるポリ尿素粒子の平均粒径は本発明によるポリ尿素粒子の平均粒径と同様であり、光沢低減が観察されたが、その上、さらに重要なことに、得られたコーティングが重度の塊状欠陥を被った(不十分なコーティング外観につながる)ことが観察され、JP2629747に記載されているこの方法が、低減された光沢をもつ高品質のコーティングの調製にあまり適さなくなる。したがって、Comp Ex 12及びComp Ex 13は、良好な外観をもつ低光沢コーティングを調製するために使用することができない。
【0233】
(例K)
本発明による粒子状ポリ尿素化合物を含む本発明による架橋性組成物を、UV硬化性塗料系において適用した。とりわけ、尿素組成物、(ポリ尿素化合物の)含有量及び(粒子状ポリ尿素化合物の粒子の)粒径を調整することによって、また粘度及び塗料流動/外観を改善するために適切な添加剤を使用することによって、(大変)低い光沢エネルギー硬化性コーティングに効果的に至ることができる、尿素を含むアクリラート官能性結合剤及び/又は架橋剤が存在する場合それを調製することができる。
【0234】
トリメチロールプロパントリスアクリラート(TMPTA)及びジトリメチロールプロパンテトラアクリラート(DiTMPTA)をキャリヤー樹脂として使用し、本発明による粒子状ポリ尿素化合物が前述のように作製された。表18のセクションAの下に記載されたこれらの樹脂組成物を、表18のセクションBの下に記載された、光開始剤を含む混合物と混合した。粒子状ポリ尿素化合物を含む組成物、並びにポリ尿素化合物及び適切な特性を含まない比較組成物を表18に記載する。これらの試料を金属、木材及びプラスチック基材にバー適用し、フラッシュオフ後にUV光を照射することによって硬化した。乾燥膜厚は約40~50μmであった。フィルムを硬化するために、Panacol-Elosol GmbHのUV-H 254 UVランプを使用した。
【表18-1】

【表18-2】
【0235】
表18のEx 28及びEx 29についての結果は、ポリ尿素粒子を含まない対応する参照Comp Ex 14及びComp Ex 15と比べて、本発明による粒子状ポリ尿素化合物を使用して、TMPTA及びDiTMPTAベースのUV硬化コーティングの光沢が大変効果的に低減されたことをはっきりと示している。さらに、Ex 30から、粒子状ポリ尿素化合物を含む樹脂組成物を他の樹脂と混合して、光沢低減度及び他の適切なコーティング特性をさらに調整することもできることが明らかになる。
【0236】
(例L)
本発明による粒子状ポリ尿素化合物a2)を含む本発明による架橋性組成物を、木材用途向けに低固形物クリアコート製剤としても適用し(以下の本発明による例31)、好適なレオロジー的挙動を塗料に付与するためにシリカ及びワックスベースのつや消し剤並びに酢酸酪酸セルロース(CAB)化合物を含む、従来通りにつや消しされたクリアコート(以下の比較例16)と比較した。クリアコート組成物を表19に示し、試験結果を表20に示す。
【0237】
本発明による粒子状ポリ尿素化合物a2)を含む樹脂組成物Aを調製するために、表19に記載された3-メトキシプロピルアミンの量を、反応器中でSETALUX(登録商標) D A 450ポリオールに予め溶解し、続いてアンカー型撹拌機を使用して、約125RPMで撹拌しながら、20~30℃でDESMODUR(登録商標) ultra 2822を反応器に投入した。
【表19】

【表20】
【0238】
表20において明確に示されたように、Ex 31は、Comp Ex 16より有意に力強いつや消し性能をもたらす。Ex 31では、約30μmの1層として適用されると、低ヘーズ及び大変低い光沢値が、水平角に近い85°でさえ認められる。Comp Ex 16は、より高いヘーズを有し、光沢は、光沢測定角の増大につれて高まる。第2の30μm層が第1の層の上に適用されると、ヘーズ及び光沢は、Ex 31では大変低いままであるが、Comp Ex 16では、透明性の低下(すなわち、ヘーズの増加)、及び特に60度及び85度の角度でのつや消し効果の著しい低減が明らかである。本発明によるEx 31の結果は、Comp Ex 16の結果よりも優れていると結論づけることができる。実際、Ex 31は、本発明の粒子状尿素化合物を使用する架橋性組成物においてCAB化合物が存在しないと、(水平面に近い視角においてさえ)つや消し効果の改善、及び適用された層数に応じたこの効果の安定性の改善がもたらされることを明確に示している。
図1
【国際調査報告】