(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】プラスチック材料製の部材を製造するための射出成形方法及び装置、並びにプラスチック材料製の部材
(51)【国際特許分類】
B29C 45/16 20060101AFI20230213BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
B29C45/16
B29C45/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537600
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-15
(86)【国際出願番号】 IT2020050315
(87)【国際公開番号】W WO2021124371
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】102019000025117
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512129996
【氏名又は名称】デロンギ アップリアンチェース エッセエレエッレ コン ウーニコ ソーチオ
【氏名又は名称原語表記】DE’LONGHI APPLIANCES SRL CON UNICO SOCIO
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】マッツォン レンツォ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィセンティン シルヴィオ
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AF10
4F202AF16
4F202AG03
4F202AG06
4F202AH51
4F202AK02
4F202AR06
4F202AR12
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB27
4F202CB28
4F202CK12
4F202CK17
4F202CN05
4F202CN12
4F202CN21
4F206AF10
4F206AF16
4F206AG03
4F206AG06
4F206AH51
4F206AK02
4F206AR06
4F206AR12
4F206JA07
4F206JB25
4F206JB28
4F206JF01
4F206JL02
4F206JN12
4F206JQ81
(57)【要約】
本願に記載されている実施形態は、収容体として、又は家庭用機器の筐体として、又はレセプタクルとして使用するために適したプラスチック材料製の部材を製造するための方法及び装置に関する。部材は第1の層と、第1の層の少なくとも一部を覆う第2の層と、を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容体、又は家庭用機器(50)若しくはレセプタクルの筐体を形成するために適したプラスチック材料製の部材(10)を製造するための方法であって、
パンチ(29)と第1の受け型(30)との間に画定された第1の成形容積(V1)に、第1の射出温度(T1)及び第1の射出圧力(P1)を含む第1の動作パラメータで第1のプラスチック材料を射出して、第1の厚さ(S1)を有する第1の層(11)を作製する第1の射出ステップと、
前記第1の射出ステップで得られた前記第1の層(11)と第2の受け型(34)との間に画定された第2の成形容積(V2)に、第2の射出温度(T2)及び第2の射出圧力(P2)を含む第2の動作パラメータで第2のプラスチック材料を射出して、第2の厚さ(S2)を有する第2の層(12)を作製する第2の射出ステップと、
を有し、
前記第2の射出ステップは前記第1の射出ステップの直後に行われる方法において、
前記第2の層(12)の前記第2の厚さ(S2)は前記第1の層(11)の前記第1の厚さ(S1)より大きく、
前記第2の射出ステップの前記動作パラメータのうち少なくとも1つは、前記第1の射出ステップの前記動作パラメータのうち対応するパラメータより低い
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第2の射出温度(T2)又は前記第2の射出圧力(P2)のうち少なくとも1つは、前記第1の射出温度(T1)又は前記第1の射出圧力(P1)よりそれぞれ低い、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の射出温度(T1)は120℃~270℃の範囲内であり、前記第2の射出温度(T2)は前記第1の射出温度(T1)より5~10%低い、
請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記第1の射出圧力(P1)は700kg/cm
2~1300kg/cm
2の範囲内であり、前記第2の射出圧力(P2)は前記第1の射出圧力(P1)より10~30%低い、
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記第1の射出ステップにおいて前記第1の成形容積(V1)内の前記第1のプラスチック材料を第1の冷却温度(T3)に冷却し、前記第2の射出ステップにおいて前記第2の成形容積(V2)内の前記第2のプラスチック材料を、前記第1の冷却温度(T3)より低い第2の冷却温度(T4)に冷却する、
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記第1の冷却温度(T3)は35℃~55℃であり、前記第2の冷却温度(T4)は前記第1の冷却温度(T3)より15~25%低い、
請求項5記載の方法。
【請求項7】
単色又は複数色の第1の不透明材料と、少なくとも部分的に透明な第2の材料とを使用して、内側の透明な前記第2の層(12)を通して外側の不透明な前記第1の層(11)を視認可能とすることができる、
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
第1の層(11)と第2の層(12)とを有するプラスチック材料製の部材(10)を製造するための装置であって、
パンチ(29)、第1の受け型(30)及び第1の射出ユニット(31)を備えた第1の成形アセンブリ(27)と、第2の受け型(34)及び第2の射出ユニット(36)を備えた第2の成形アセンブリ(28)と、を備えており、
前記第1の受け型(30)は、前記パンチ(29)と前記第1の受け型(30)との間に第1の幅(W1
max)を有する第1の成形容積(V1)を画定するために適した第1の成形面(33)を有し、
前記第1の射出ユニット(31)は前記第1の成形容積(V1)に第1のプラスチック材料を射出して第1の層(11)を得るように構成されており、
前記第2の受け型(34)は前記部材(10)の前記第1の層(11)と合わさって、第2の幅(W2
max)を有する第2の成形容積(V2)を画定するために適した第2の成形面(35)を有し、
前記第2の射出ユニット(36)は前記第2の成形容積(V2)に第2のプラスチック材料を射出して第2の層(12)を得るように構成されている装置において、
前記第2の幅(W2
max)は前記第1の幅(W1
max)より大きい
ことを特徴とする装置。
【請求項9】
前記第2の成形容積(V2)の前記第2の幅(W2
max)と前記第1の成形容積(V1)の前記第1の幅(W1
max)との比は1.0~2.5である、
請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記第1の射出ユニット(31)は、前記第1のプラスチック材料を第1の射出温度(T1)に加熱するように構成された第1の加熱手段(53)を備えていると共に、前記第2の射出ユニット(36)は、前記第2のプラスチック材料を第2の射出温度(T2)に加熱するように構成された第2の加熱手段(54)を備えており、
少なくとも前記第1の加熱手段(53)及び前記第2の加熱手段(54)は互いに独立して作動及び調整されることが可能である、
請求項8又は9記載の装置。
【請求項11】
前記第1の成形アセンブリ(27)は第1の冷却回路(46)を備えると共に、前記第2の成形アセンブリ(28)は、前記第1の冷却回路(46)から独立した第2の冷却回路(47)を備えており、
前記第1の冷却回路(46)及び前記第2の冷却回路(47)は、前記第1のプラスチック材料及び前記第2のプラスチック材料をそれぞれの冷却温度(T2,T1)に冷却するように選択的に設定可能である、
請求項8から10までのいずれか1項記載の装置。
【請求項12】
収容体、又は家庭用機器(50)若しくはレセプタクルの筐体を形成するために適したプラスチック材料製の部材であって、
第1のプラスチック材料製の内側の第1の層(11)と、
前記第1の層(11)の少なくとも一部を覆う第2のプラスチック材料製の外側の第2の層(12)と、
を備えた部材であって、
前記第1の層(11)は第1の厚さ(S1)を有し、前記第2の層(12)は前記第1の厚さ(S1)より大きい第2の厚さ(S2)を有する
ことを特徴とする部材。
【請求項13】
内側の前記第1の層(11)は第1の不透明材料により作製されており、外側の前記第2の層(12)は、少なくとも部分的に透明な第2の材料により作製され、当該第2の材料を通して内側の不透明な前記第1の層(11)を視認可能とすることができる、
請求項12記載の部材。
【請求項14】
外側の前記第2の層(12)は、凸部(17)と凹部(18)とを交互に有する三次元の仕上部を外表面(15)に備えており、
内側の前記第1の層(11)は、前記凸部(17)及び前記凹部(18)の間の厚さの差を少なくとも部分的に補償するために適した充填通路又はキャビティ(19)であって、外側の前記第2の層(12)の凹部(18)の形状及び位置に対応し当該第1の層(11)の厚さに作製された充填通路又はキャビティ(19)を有する、
請求項12又は13記載の部材。
【請求項15】
ケトル(50A)又はトースター(50B)等の家庭用機器であって、
請求項12から14までのいずれか1項記載の部材(10)により少なくとも一部が作製された収容体又は筐体を備えている
ことを特徴とする家庭用機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に記載されている実施形態は、プラスチック材料の2層を重ね合わせたものを有するボディを備えた部材を製造するための方法及び装置に関するものである。
【0002】
かかる部材は特に収容体として、又は例えばケトル、トースター、掃除機、コーヒーマシン、ブレンダ、又はアイロン等の家庭用機器の筐体として使用するために適したものである。
【0003】
本発明はさらに、上記部材を備えたプラスチック材料製の部材及び家庭用機器又はレセプタクルにも関する。
【背景技術】
【0004】
家庭用機器の分野では、決定的な美的外観を提供するために、少なくとも部分的に互いに重なり合うプラスチック材料の2つ以上の層を有する部材又は仕上処理を施されたオブジェクトを製造することが知られている。かかる部材は、例えば家庭用の機器又はカラフェ、ボウル等の物品又はオブジェクトの外部構造を形成するために使用することができるが、上記物品又はオブジェクトの具体例は限定列挙ではない。
【0005】
魅力的で認識可能な審美的外観を提供して市場における類似のソリューションよりも傑出すべく、家庭用機器のデザイン及び製造において消費者の好みを満足させるための審美的研究に対する注目が一層強くなっていることも知られている。
【0006】
例えば、ケトルの収容体となる部材であって、透明なプラスチック材料の第1の層と、金属材料の第2の層と、を備えており、当該第2の層には複数の貫通孔が形成されており、当該貫通孔を通して第1の層ひいてはケトル内部自体が視認可能である部材が知られている。
【0007】
しかし、この解決手段は第1の層と第2の層とを別個に作製してから、その後に互いに結合して繋ぎ合わせる必要があり、このことによって相互間の結合及び密閉に問題が生じる。
【0008】
上記の審美的研究はまた、2層を重ね合わせて一体にオーバーモールド成形したものから成るプラスチック材料製の外部構造を備えた家庭用機器の製造にも繋がるものであった。
【0009】
家庭用機器の部材を製造する方法であって、第1の層のプラスチック材料を射出した後に第2の層のプラスチック材料を射出する方法も知られている。例えば、第1の射出層は透明材料とし、第2の層は着色及び/又は不透明材料とすることができる。
【0010】
特に、第2の層の材料は、製造される部材の外表面の全部に対して一部にのみ射出することができ、これにより、最終製品の外観を満足のいく求められた審美的外観とするために第1の射出層の少なくとも一部を視認可能に維持することができる。あるいは、第1の層の射出材料を着色及び/又は不透明とすると共に、第2の層を透明又は半透明の材料とし、その下の層の射出材料を視認可能とすることができる。
【0011】
あるいは、使用される材料は、食品との接触に不適切であるため第1の層に使用できない機械的及び/又は熱的及び/又は審美的なタイプの技術的特徴を有する。
【0012】
材料の第1の層の全部を材料の第2の層によって覆ったものを備えた、例えばボウル又はカトラリー取っ手等の物品も知られており、この物品の第1の層は第2の層の厚さより厚く、構造的部材として働くのに対し、第2の層は審美的な表面仕上部として働く。
【0013】
第2の層の材料を第1の層の材料に重ねてオーバーモールド成形することは問題となり得る。実際、第1の層に第2の層をオーバーモールド成形する際に第1の層の「洗い流し」現象が生じることがあり、審美的な問題に繋がる。この問題は特に、外側の層の少なくとも一部が透明である場合に目立つ。
【0014】
第1の層の材料を射出するステップの直後に第2の材料を射出するステップを行ういわゆる二材射出成形法(bi-injection process)の場合、材料のオーバーモールド成形は一層複雑となり得る。
【0015】
第2の材料が溶融する温度に起因して、実際には、その下にある既に射出された材料の層が、冷却速度が低い部位において二次的に不所望に溶融することがあり得る。
【0016】
内側の層の再溶融の問題を防ぐため、外側の層に用いられる材料の融点より高い融点を有する材料により内側の層を作製する解決手段が公知となっている。
【0017】
かかる解決手段は、ユーザにあまりオープンでなく馴染みのないより高級な材料を内側の層に使用することになり得るものであり、その結果としてコストの高騰に繋がる。
【0018】
欧州特許出願公開第2333421号明細書、米国特許第5045268号明細書、特開2019-202537号公報には、2つの材料の二材射出成形によりプラスチック材料製の部材を製造する方法が記載されている。
【0019】
特開昭63-317315号公報にはライトのカバーを製造するためのプラスチック材料製の部材が記載されており、これはダイヤモンドカット仕上げを有する。
【0020】
米国特許出願公開第2010/124002号明細書には、ビデオカメラ用のプラスチック材料製の部材が記載されている。
【0021】
米国特許出願公開第2016/374488号明細書には、プラスチック材料製のカトラリーが記載されている。
【0022】
上記文献に記載されている解決手段は、特にケトル又はトースター等の家庭用機器の筐体や収容体等のプラスチック材料製の部材であって、収容体が100℃以上の温度に耐えるために適したプラスチック材料製の部材を製造するために適したものではない。
【0023】
従って、従来技術の欠点のうち少なくとも1つを解消できるプラスチック材料製の部材を製造するための方法を完成させる必要がある。
【0024】
また、他の一目的は、高速で高い生産性と効率とを実現可能とするプラスチック材料製の部材を製造するための方法を提供することである。
【0025】
本発明の他の一目的は、内側の層と外側の層とを備えたプラスチック材料製の部材の製造方法であって、内側の層の生じる可能性のある「洗い流し」作用や再溶融を防ぐことができる製造方法を完成させることである。
【0026】
他の一目的は、着色した内側層と光沢のある透明な外側層とを備えた部材であって実質的に欠陥の無い部材を作製できるプラスチック材料製の部材の製造方法を完成させることである。
【0027】
他の一目的は、高効果で経済的なプラスチック材料製の部材の製造方法であって、高い生産性を達成すると同時に全体コストを抑えることができる製造方法を完成させることである。
【0028】
本願出願人は、従来技術の欠点を解消して上記及び他の目的及び利点を達成すべく考案及び試験を行って本発明を実現した。
【発明の概要】
【0029】
本発明は独立請求項に記載され、その特徴が記載されている。従属請求項は、本発明の他の特徴又はその主な発明的思想の変形形態を記載している。
【0030】
本発明は上記目的に即して、収容体、家庭用の機器の筐体、外殻、外部構造及び/若しくは外部ボディ、又はその少なくとも一部を構成するために適したプラスチック材料製の部材を製造するための方法及び装置に関するものである。
【0031】
本発明の部材の適用例には例えば、ケトル、トースター、掃除機、電動ブラシ、ブレンダ、電子レンジ、電気オーブン、フライヤ、ティーポット、コーヒーマシン、アイスクリーム製造機、ニーダー(こね機)、及びヘアドライヤ等の家庭用機器が含まれ得る。
【0032】
本発明の部材は、第1の材料の内側の第1の層と、当該内側の第1の層の少なくとも一部を覆う第2の材料の外側の第2の層と、を備えたプラスチック材料製のボディを有する。
【0033】
一部の実施形態では、第2の層は第1の層の全部を覆う。
【0034】
一部の実施形態では、外側の第2の層の厚さは内側の第1の層の厚さより大きい。
【0035】
一部の実施形態では、部材は筒状の形状を有し、当該筒状の形状は円形、多角形、若しくは楕円形の断面を有し、又は、直線区間と曲線区間とを組み合わせた周を有する。さらに、部材の断面は軸方向の推移に沿って不変又は変動的とすることができ、凹部又は凸部を有することができる。
【0036】
一部の実施形態では、第1の材料は不透明、又は単色、又は複数色とすると共に、第2の材料は少なくとも部分的に透明とすることができ、これにより第2の材料を通して不透明な第1の層を視認可能とすることができる。これにより、最終的な部材に一部凸状の三次元的な外観を与えることができる。
【0037】
他の実施形態では、透明な外側の第2の層は少なくとも軸方向において、内側の第1の層の端縁からはみ出す。かかる実施形態により、部材は透明な周部ストリップを有することとなり、これにより透明さ及び明るさの効果が奏される。
【0038】
一部の実施形態では、外側の第2の層は内側の層の端縁からはみ出して、それ自体でボディの1つ又は複数の一部分を形成することができ、例えばケトル若しくはカラフェの場合には注ぎ口若しくは取っ手を形成することができ、又はその他装飾部分を形成することができる。
【0039】
本発明のプラスチック材料製の部材を製造するための方法は、
-パンチと第1の受け型との間に画定された第1の成形容積に、第1の射出温度及び第1の射出圧力を含む第1の動作パラメータで第1のプラスチック材料を射出して、第1の厚さを有する内側の第1の層を作製する第1の射出ステップと、
-第1のステップで得られた内側の層と第2の受け型との間に画定された第2の成形容積に、第2の射出温度及び第2の射出圧力を含む第2の動作パラメータで第2のプラスチック材料を射出して、第2の厚さを有する外側の第2の層を作製する第2のステップと、
を有し、
第2の厚さは、内側の第1の層の第1の厚さより大きい。
【0040】
外側の第2の層の厚さを内側の第1の層の厚さより大きくすることにより、第2の材料の充填流に対する抵抗を低減し、これにより当該材料のいわゆる剪断応力現象を軽減することができ、成形型の壁や第1の層の材料へのこすれに起因する第2の材料の機械的摩擦により生じるおそれのある審美的欠陥の形成を阻止することができる。
【0041】
第2の層の厚さを第1の層の厚さより大きくすることにより、その表面に、プラスチック材料製の部材に格別で際立った審美的外観を与える三次元の仕上部を得ることも可能になる。
【0042】
一部の実施形態では、第1の材料と第2の材料とは同質の物理的特性を有する。
【0043】
好適な実施形態では、第1の材料は不透明であると共に第2の材料は少なくとも部分的に透明であることにより、第2の材料を通して第1の層を視認可能とすることができる。
【0044】
不透明な材料と透明な材料とを組み合わせることにより、最終的な部材に一部凸状の三次元的な外観を与えることができる。
【0045】
一部の実施形態では、第2の射出ステップの動作パラメータは第1の射出ステップの動作パラメータとは異なる。
【0046】
一部の実施形態では、第2の射出温度又は第2の射出圧力のうち少なくとも1つは、対応する第1の射出温度及び第1の射出圧力より低い。
【0047】
かかる実施形態により、第1の層にかかる温度/圧力での応力が低減することによって、第1の材料の生じる可能性のある洗い流し作用や再溶融が阻止され、これにより第2の材料に生じる可能性のあるコンタミネーションが阻止される。
【0048】
一部の実施形態では、第2の射出温度及び第2の射出圧力の両方が、第1の射出温度及び第1の射出圧力よりそれぞれ低い。
【0049】
一部の実施形態では、第2の射出温度は第1の射出温度より5~10%低い。
【0050】
第2の層の厚さをより大きくすることにより、第2の材料の量が多くなって第2の成形容積を充填する際に熱を維持することができるので、不所望の接合線を生じさせることなく射出温度を低減することができる。
【0051】
一部の実施形態では、第2の射出圧力は第1の射出圧力より10~30%低い。
【0052】
第2の成形容積の厚さは第1の成形容積の厚さより大きいので、上記実施形態により、第2の材料流をより低い圧力で生成することも可能になる。
【0053】
一部の実施形態では本方法は、第1の材料の第1の層を第1の冷却温度に冷却すると共に、第2の材料の第2の層を、第1の冷却温度より低い第2の冷却温度に冷却する。
【0054】
本発明はさらに、上述のようなプラスチック材料製の部材を製造するための装置にも関し、当該装置は、パンチ、第1の受け型及び第1の射出ユニットを備えた第1の成形アセンブリと、第2の受け型及び第2の射出ユニットを備えた第2の成形アセンブリと、を備えており、パンチ及び第1の受け型は、当該パンチと当該第1の受け型との間に第1の幅を有する第1の成形容積を画定するために適したものであり、第1の射出ユニットは第1の成形容積に第1のプラスチック材料を射出するように構成されており、第2の受け型は、材料の第1の層と合わさって第2の幅を有する第2の成形容積を画定するために適したものであり、第2の射出ユニットは第2の成形容積に第2のプラスチック材料を射出するように構成されている。
【0055】
本発明の一側面では、第2の幅は第1の幅より大きい。
【0056】
一部の実施形態では、第1の射出ユニットは、第1のプラスチック材料を第1の射出温度に加熱するように構成された加熱手段と、第1の材料を第1の射出圧力で射出するように構成された射出装置と、を備えており、第2の射出ユニットは、第2のプラスチック材料を第2の射出温度に加熱するように構成された加熱手段と、第2の材料を第2の射出圧力で射出するように構成された射出装置と、を備えている。
【0057】
一部の実施形態では、第1及び第2の加熱手段は互いに独立して作動及び調整されることができるものである。
【0058】
他の実施形態では、第1の成形ユニットは第1の冷却回路を備えると共に、第2の成形ユニットは第1の冷却回路から独立した第2の冷却回路を備えており、第1の冷却回路及び第2の冷却回路は、第1のプラスチック材料及び第2のプラスチック材料をそれぞれの冷却温度に冷却するように選択的に設定可能であり、第2の冷却温度は第1の冷却温度より低い。
【0059】
添付図面を参照して以下の一部の実施形態の説明を読めば、本発明の上記及び他の側面、特徴及び利点が明らかとなる。この一部の実施形態は限定列挙ではなく例示列挙である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】家庭用機器に適用される本発明の一実施形態の部材の概略図であり、本事例で示されている家庭用機器はケトルである。
【
図2】
図1の切断線 II-II に沿った断面図である。
【
図4】別の家庭用機器に適用される本発明の他の一実施形態の部材の概略図であり、本事例では当該別の家庭用機器はトースターである。
【
図4a】本発明の他の実施形態の部材の細部の立体図である。
【
図4b】他の実施形態の部材の一部の立体図である。
【
図4c】他の実施形態の部材の一部の立体図である。
【
図5】一部の実施形態のプラスチック材料製の部材を製造するための装置の概略図である。
【
図6】第1の材料を射出する第1のステップの終了時における本発明の部材の垂直断面図である。
【
図7】第2の材料を射出する第2のステップの終了時における本発明の部材の垂直断面図である。
【
図8】第1の射出ステップ中の
図5の装置の拡大細部図である。
【
図9】切断線 IX-IX に沿った
図5の装置の断面図である。
【
図10】
図6の線 X-X に沿った断面図である。
【
図11】切断線 XI-XI に沿った
図5の装置の断面図である。
【
図12】
図7の線 XII-XII に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
ここで、本発明の可能な実施形態について詳細に言及する。添付の図面には、これら実施形態のうち1つ又は複数の例が示されている。各例は、本発明の例示として提供されるものであり、本発明を限定すると解釈すべきものではない。
【0062】
これらの実施形態を説明する前に、明確にすべきこととして、本発明の適用は、添付の図面を参照する以下の説明に記載の部材の詳細な構造や配置に限定されるものではない。以下の説明は他の実施形態も提供することができ、他の種々の態様で生産又は実施できるものである。さらに明確にすべきこととして、本願にて用いられている文言や用語はあくまで説明目的のためであり、本発明を限定するとみなしてはならない。
【0063】
添付の図面を使用して、収容体、家庭用の機器50の筐体、外殻、外部構造及び/若しくは外部ボディ、若しくはその少なくとも一部、又は例えばボウル、カラフェ、魔法瓶等の他のオブジェクトを構成するために適したプラスチック材料製の部材10の実施形態を説明する。
【0064】
以下の説明では、ケトル50A及びトースター50B等の家庭用機器を例に挙げて説明するが、本発明の部材10は、収容体、又は、掃除機、電動ブラシ、ブレンダ、電子レンジ、電気オーブン、フライヤ、ティーポット、コーヒーマシン、アイスクリーム製造機、ニーダー、ヘアドライヤ、アイロン等の他の種類の家庭用機器の筐体となることができると解される。
【0065】
本発明の部材10は、内側の第1の層11と、内側の第1の層11と少なくとも部分的に重なる第2の外側の層12と、を備えている。
【0066】
一部の実施形態では、部材10は第1の層11及び第2の層12の2層のみを備える。
【0067】
好適な実施形態では、第1の層11及び第2の層12は例えば耐熱ポリマー材料等のプラスチック材料製とすることができる。
【0068】
可能な実施形態では、第1の層11と第2の層12とは、同様の性質や特性を有する材料により作製することができる。
【0069】
可能な実施形態では、第1の層11と第2の層12とは、異質の性質や特性を有する材料により作製することができる。
【0070】
例えば食品処理用の家庭用機器等に適用可能な一部の実施形態では、第1の層11及び第2の層12は、食品分野の用途に適した例えばポリプロピレン等の樹脂により作製することができる。
【0071】
可能な実施形態では、第1の層11のみが食品分野の用途に適したものであるのに対し、第2の層12は当該用途に適したものではない。
【0072】
他の実施形態では、用途に応じて、第1の層11及び/又は第2の層12は異なる性質の熱可塑性樹脂により作製することができる。
【0073】
一部の実施形態では、第1の層11を不透明な第1の材料により、又は単色若しくは複数色で作製すると共に、第2の層12を少なくとも部分的に透明な第2の材料により作製することにより、当該第2の材料を通して内側の不透明な第1の層11を視認可能とすることができる。
【0074】
層が透明又は半透明とは、層の全厚を光放射が透過することができ、層の向こうに位置する物体が視認可能であることを意味する。
【0075】
これにより、一部凸状となった三次元の外観を最終的な部材10に与えることができる。
【0076】
一部の実施形態では、第1の層11及び第2の層12は二材射出成形法によって作製することができる。
【0077】
一部の実施形態では、第1の層11は第1の厚さS1を有し、第2の層12は第1の厚さS1より大きい第2の厚さS2を有する。
【0078】
一部の実施形態では、第1の厚さS1及び第2の厚さS2は各層の最大厚さとして定義することができる。
【0079】
有利には、第2の層12の第2の厚さS2と第1の層11の第1の厚さS1との比は1.05~2.5の範囲、より好適には1.1~2の範囲とすることができる。
【0080】
第1の層11は第1の表面13を有し、第1の表面13は部材10の内表面となり、使用時に家庭用機器50の内部を向く。
【0081】
第1の層11はまた、第1の表面13とは反対側に第2の表面14を有し、第2の表面14に外側の第2の層12が接触して配置される。
【0082】
一部の実施形態では内側の第1の表面13は、凹凸の無い滑らかで一様な推移を有することができる。
【0083】
第2の層12は、内表面13とは反対側に外表面15を有し、外表面15は使用時に部材10の外表面となり、ひいては、部材10の適用先である家庭用機器50の外表面となる。
【0084】
一部の実施形態では、外表面15は三次元の仕上部を有すると共に、複数の審美的なレリーフ16が突出する少なくとも一部分を有し、このレリーフ16は部材10に満足のいく審美的外観を与えるために適したものである。
【0085】
例えば
図1,2,3,4,4a及び4b等に示されている可能な実施形態の例のレリーフは、複数の平行なリブ状、バブル、半球状、ダイヤモンド状加工部、又は他の幾何学的若しくは非幾何学的形状の審美的なレリーフ16を含むことができる。
【0086】
特に、外表面15は凸部17と凹部18とを交互に有し、これにより部材10に三次元の外観が与えられると共に、全体的に家庭用機器50に三次元の外観が与えられる。
【0087】
一部の実施形態では、凸部17及び凹部18はそれぞれ、部材10の内表面13における異なる厚さの部位に対応する。
【0088】
可能な実施形態では、凸部17は、互いに実質的に平行に隣り合う垂直リブとして形成される。
【0089】
可能な変形形態では、水平若しくは斜めに配置されたリブ、又は螺旋状若しくは渦巻状の推移の凸部若しくはレリーフを設けることができる。
【0090】
図4aに示された他の一実施形態では、凸部17は、均等又は所望の配置に分布して隣り合う半球又はバブルの部分として形成することができる。
【0091】
図4bに示された他の一実施形態では、凸部17は多角形ベースの角錐形に形成することができ、本具体例の矩形型の場合、隣り合って形成することができる。
【0092】
不図示の他の変形形態では、レリーフ16は他の形状とすることができ、また、例えば花形、ハート形等の非幾何学的形状とすることもできる。
【0093】
一部の実施形態では、部材10は筒状の形状を有することができる。
【0094】
部材10の断面は要望又は用途に応じて、円形、多角形又は楕円形とすることができ、又は、直線区間と曲線区間とを組み合わせた周を有することができる。
【0095】
さらに、部材10の断面は軸方向の推移に沿って不変又は変動的とすることができ、凹部又は凸部を有することができる。
【0096】
他の実施形態では、部材10を開曲線状とし、他の同様の部材10に接続して収容体若しくは家庭用機器50の筐体となるように構成し、又は異なる部材に接続して収容体若しくは筐体となるように構成することもできる。
【0097】
一部の実施形態では、外側の第2の層12は内側の第1の層11の全部を覆う。
【0098】
他の可能な実施形態では、第2の層12は外側端縁23を有し、この外側端縁23は軸方向Xにおいて、第1の層11の内側端縁24からはみ出す。
【0099】
具体的には、本実施形態では、実際に第2の層12の一部が軸方向に第1の層11から突出する。
【0100】
このようにして部材10は、第2の材料により作製された単層の周部ストリップ25を有し、この周部ストリップ25はとりわけ透明型である。この透明な周部ストリップ25は、部材10に明るい三次元の外観を与える。
【0101】
他の実施形態では第2の層12は、例えばケトル50Aの注ぎ口51又は取っ手52等の他のパーツにおいて部材10の本体に対して延在することができ、これにより一層の軽快感を与えることができる。一部の実施形態では、内側の第1の層11は、その厚さに形成された充填通路又はキャビティ19を有する。
【0102】
充填通路又はキャビティ19の形状及び位置は、外表面15の凹部18の形状及び位置に対応する。
【0103】
特に充填キャビティ19は、審美的レリーフ16により形成される第2の層12の外表面15の形状、すなわち凸部17と凹部18とを交互に配することにより形成される第2の層12の外表面15の形状に追従するように、第1の層11の厚さに第2の表面14に対応して作製することができる。
【0104】
換言すると、第1の層11の第2の表面14は、充填キャビティ19を挟む平坦部19aを有し、その形状及び位置は第2の層12の凸部17及び凹部18の形状及び位置とそれぞれ一致する。
【0105】
第1の厚さS1は、凹部18に当たる充填キャビティ19に対応する最小値S1minと、第2の層12の凸部17に当たる平坦部19aに対応する最大値S1maxと、を有する。
【0106】
筒状の部材10の場合、各充填キャビティ19は、それぞれ対応する凹部と径方向において当たることとなる。
【0107】
レリーフ16の形状及びサイズに応じて、第1の厚さS1は、最小値S1minと最大値S1maxとに直接変化することができ、又は中間値をとることができる。
【0108】
一部の実施形態では、最大値S1maxは最小値S1minより20~50%大きくすることができる。
【0109】
有利には充填キャビティ19は、凸部17と凹部18との厚さの差の少なくとも一部を補償することができる。
【0110】
換言すると、平均値に対して例えば10~20%程度の僅かな偏差を除いて、外側の第2の層12は部材10の横寸法に沿って実質的に不変の厚さであり、又はいずれの場合においても実質的に不変の平均厚さである。
【0111】
内側の第1の層11は、部材10の横方向における平均厚さが変動的となっている。
【0112】
一部の実施形態では、充填キャビティ19が設けられた第2の表面14の部分と充填キャビティ19が設けられていない第2の表面14の部分との間に挟まれた移行部位20は、
図3等に示されているようにベベル状に形成することができる。
【0113】
有利には、ベベル状の移行部位20により、第2の材料を射出して第2の層12を作製するステップ中に熱の集中を阻止し、又は少なくとも抑えることができ、ひいては第1の層11を作製する第1の材料の不所望の再溶融を阻止し、又は少なくとも抑えることができる。
【0114】
このようにして、第2の材料の流れにより機械的なこすれが生じることによる浸食も低減される。
【0115】
一部の実施形態では、部材10は透明窓22を備えることができ、この透明窓22は、ユーザがこれを通して向こう側を見るために適したものである。
【0116】
例えばケトル50Aの場合、この透明窓22によってユーザが、部材10から成る収容体に入った水の液面高さを確認することができる。
【0117】
他の適用態様では、窓22は、家庭用機器の他の可能な特徴、例えば50Bのトースターのサーモスタット又はタイマー等をユーザが見ることができるように構成することができる。
【0118】
他の実施形態では、窓22は、ユーザが家庭用機器50の可能な内部パーツを見るため、及び/又は調理中の製品を視認可能とするため、又は掃除機の集塵容器内の粉塵の蓄積状態を見るためのものとすることができる。
【0119】
一部の実施形態では、窓22は、外側の透明な第2の層12によって直接作製することができる。
【0120】
特に、第1の層11は、作製しようとしている窓22の形状と実質的に同一形状の開口21又はスロットを有することができる。
【0121】
実際に第1の層11を覆う第2の層12は、第1の層11とは対照的に、開口21又はスロットを完全に覆うように、外表面15と連続して作製することができる。
【0122】
可能な解決手段では、部材10は窓22に応じて第2の層12に、当該窓22を通してより良好に視認可能となるように異なる表面仕上部、例えば実質的に平坦で滑らかな仕上部等を設けることができる。
【0123】
上述のようにして作製された窓22は、その気密シールを保証できるいかなる特定のアセンブリも、いかなるパッキングその他の装置も要しないという利点を奏する。実際、上述のようにして作製された窓22は最大限の密閉を保証し、家庭用機器内の可能性のある液体、蒸気又は粉塵が内部から外部に漏出することを阻止し、またその逆に、外部環境から内部環境に侵入することも阻止する。
【0124】
ここで
図5~12を参照して説明する実施形態は、部材10を製造するための装置26にも関するものである。
【0125】
装置26は、第1の層11を作製するために構成された第1の成形アセンブリ27と、第2の層12を作製するために構成された第2の成形アセンブリ28とを備えている。
【0126】
装置26の一実施形態では、第1の成形アセンブリ27は第2の成形アセンブリ28の隣に隣接し、近接して配置される。
【0127】
一部の実施形態では、第1の成形アセンブリ27及び第2の成形アセンブリ28は前後に連続して配置され、時間的に直接順番に動作して仕上処理済み部材10を1つの工程で作製するように構成することができる。
【0128】
一部の実施形態では、第1の成形アセンブリ27はパンチ29と第1の成形受け型30と第1の射出ユニット31とを備えており、パンチ29及び第1の成形受け型30は、協働して両者間に第1の成形容積V1を画定するために適したものであり、第1の射出ユニット31は第1の成形容積V1に第1のプラスチック材料を射出するように構成されている。
【0129】
一部の実施形態では、第1の成形容積V1は、第1の層11の第1の厚さS1と一致する第1の最大幅W1maxを有する。
【0130】
一部の実施形態では、第1の射出ユニット31は第1のプラスチック材料を第1の射出温度T1まで加熱するように構成された第1の加熱手段53を備える。
【0131】
一部の実施形態では、パンチ29は、部材10の第1の層11の内表面13の形状のネガ型となるように構成されたコントラスト面32を有する。
【0132】
一部の実施形態では、コントラスト面32は実質的に一様で滑らかとすることができる。
【0133】
例えば、部材10がケトル50Aを製造するために適したものである場合、パンチ29は実質的に円錐台状とすることができ、部材10がトースター50Bを製造するために適したものである場合、パンチ29は四角形の断面を有する平行六面体の形状とすることができる。
【0134】
第1の受け型30は、第1の層11の第2の表面14の形状のネガ型となる第1の成形面33を備えている。
【0135】
一部の実施形態では、第1の成形受け型30は1つ又は複数の第1の成形側部37を備えることができ、この第1の成形側部37は、使用時に隣り合って位置決めされて第1の成形受け型30の1つの第1の成形面33となるように構成されている。
【0136】
一部の実施形態では、第1の成形面33の少なくとも一部は、使用時に第1の成形容積V1の内部に突出する第1の成形リッジ38を有する。
【0137】
第1の成形リッジ38は、第1の層11に形成される充填キャビティ19の形状のネガ型となる。
【0138】
一部の実施形態では、第2の成形アセンブリ28は第2の成形受け型34を備えており、第2の成形受け型34は部材10の外表面15の形状のネガ型となるために適した第2の成形面35を有する。
【0139】
第2の成形受け型34は、使用時に材料の第1の層11の第2の表面14と協働して、当該第2の成形受け型34と第2の表面14との間に第2の成形容積V2を画定するために適したものである。
【0140】
一部の実施形態では、第2の成形容積V1は、第2の層12の第2の厚さS2と一致する第2の幅W2maxを有し、第2の幅W2maxは第1の幅W1maxより大きい。
【0141】
一部の実施形態では、第2の幅W2maxと第1の幅W1maxとの比は1.05~2.5、好適には1.1~2である。
【0142】
第2の成形アセンブリ28はさらに、第2の成形容積V2に第2のプラスチック材料を射出するように構成された第2の射出ユニット36を備えている。
【0143】
一部の実施形態では第2の射出ユニット36は、第2のプラスチック材料を第2の射出温度T2まで加熱するように構成された第2の加熱手段54を備える。
【0144】
一部の実施形態では、第1の加熱手段53と第2の加熱手段54とは互いに独立して作動及び調整されることができる。
【0145】
一部の実施形態では、第2の成形受け型34は1つ以上の第2の成形側部39を備える。
【0146】
特に、第2の成形側部39は、使用時に隣り合って位置決めされて第2の成形受け型34の1つの第2の成形面35となるように構成されている。
【0147】
一部の実施形態では、上記の第2の成形面35の少なくとも一部分に、複数のキャビティ40aが各成形レリーフ40bと交互になるように作製されている。
【0148】
特に、キャビティ40a及び成形レリーフ40bは、外表面15に設けられた審美的レリーフ16の形状のネガ型となることができるようにされている。
【0149】
よって、キャビティ40a及び成形レリーフ40bの形状及びサイズは、外表面15の凸部17及び凹部18の形状及び最終サイズに対応したものとなる。
【0150】
キャビティ40a及び成形レリーフ40bは、第1の成形受け型30の成形リッジ38に対応したものとなっている。
【0151】
換言すると、第2の成形受け型34のキャビティ40a及び成形レリーフ40bの形状、サイズ及び位置は、第1の成形受け型30の成形リッジ38の形状、サイズ及び位置と整合している。
【0152】
特に、成形レリーフ40bは使用時に、成形リッジ38の位置に対応する位置に配置される。
【0153】
一部の実施形態では、第1の成形側部37及び第2の成形側部39は、異なる審美的形状を有する部材10を同一の装置26により製造することができるように交換可能となっている。
【0154】
例えば、部材10に施そうとする最終外観に応じて、それぞれ異なる表面仕上部を有する第1の成形側部37及び第2の成形側部39の複数のセットを設けることができる。
【0155】
他の実施形態では、第1の成形アセンブリ27は、第1の層11に第1の材料の無い開口21又はスロット又は空所部を形成すると同時にパンチ29と第1の受け型30とを互いに分離した状態に維持する少なくとも1つの結合突起41を有する。
【0156】
一部の実施形態では、少なくとも1つの結合突起41は第1の成形側部37のうち1つに設けられている。
【0157】
特に、結合突起41はパンチ29と協働して第1の成形容積V1の一部を閉じ込めて制限し、この場所への第1の材料の侵入を阻止するように形成されている。
【0158】
一部の実施形態では、パンチ29のコントラスト面32の仕上部及び光沢を保存するため、結合突起41はパンチ29との結合接触が最小限となるように形成される。
【0159】
例えば
図8等を参照して説明する一部の実施形態では、結合突起41は少なくとも1つの突起当接部42を有し、これは、パンチ29のコントラスト面32と接触して位置決めされて、パンチ29と、対応する第1の成形面33との間に空きスペース又はキャビティ43を形成するために適したものである。
【0160】
他の実施形態では、結合突起41をパンチ29に設けることができ、その際には、パンチ29と当該パンチ29の第1の受け型30との間に、より具体的にはコントラスト面32に沿ってキャビティ43を形成することがあり得る。
【0161】
例えば
図10等を参照して説明する一部の実施形態では、結合突起41は、第1の成形容積V1からキャビティ43を隔絶してこれを画定するために適した一対の当接部42又は1つの環状の当接部を備えることができる。
【0162】
当接部42は、使用時にパンチ29の表面32に当接して突っ張り、キャビティ43の気密シールを保証するように構成されている。
【0163】
このようにして第1の成形容積V1は、第1の層11における開口21が設けられた対応する部位において制限される。
【0164】
一部の実施形態では、キャビティ43は、パンチ29及び第1の受け型30の相対向する各面間の距離として定義される高さを有し、当該高さは数十マイクロメートル~数百マイクロメートルである。
【0165】
一部の実施形態では、当接部42の幅は数百マイクロメートル、例えば0.2~1.5mm等である。
【0166】
0.2~0.9mmの値の幅により、パンチ29と受け型30との接触を最小限に抑え、より大きな領域のキャビティ43を得ることができる。
【0167】
例えば0.9~1.5mm等、幅の値を僅かに大きくすると、キャビティ43の領域が若干減少するという欠点があるがそれだけであり、閉鎖力が比較的小さい場合であっても、又は所要加工精度が低い場合、パンチ29と受け型30との気密シールを保証することができる。
【0168】
一部の実施形態では、形成しようとする開口21の形状及びサイズに応じて1つ又は複数の結合突起41を設けることができ、結合突起41が複数の場合には互いに同一又は異なる形状を有する。
【0169】
例えば、ケトル50Aに適用される部材10の場合、水位を確認するための窓22を形成するために適した第1の結合突起41(
図10)と、注ぎ口51を形成するための第2の結合突起41と、透明な周部ストリップ25を形成するための第3の結合突起41(
図10)と、を設けることができる。
【0170】
一部の実施形態では、当接部42は、部材10に形成しようとする窓22の形状に応じた形状とすることができる。
【0171】
他の実施形態では、当接部42は、第1の層11の端縁24の形状を定める形状とすることができる。
【0172】
パンチ29と第1の成形受け型30との間に存在するキャビティ43により、数回の成形サイクル後であっても、パンチ29のコントラスト面32の仕上部及び光沢を保存することができるという利点が奏される。
【0173】
一部の実施形態では、第1の射出ユニット31及び第2の射出ユニット36はそれぞれ少なくとも1つの射出装置44と少なくとも1つの射出通路45とを備えており、射出通路45は、各射出装置44を第1の射出容積V1又は第2の射出容積V2のいずれか1つと流体接続できるものである。
【0174】
一部の実施形態では、各射出ユニット31,36ごとに複数の射出装置44を設けることも可能である。
【0175】
一部の実施形態では、少なくとも1つの射出通路45は第1の成形側部37のうち少なくとも1つと第2の成形側部39のうち少なくとも1つとに形成される。
【0176】
一部の実施形態では、装置26は各成形アセンブリ27,28ごとにそれぞれ第1の冷却回路46と第2の冷却回路47とを備えることができる。
【0177】
一部の実施形態では、第1の冷却回路46及び第2の冷却回路47は互いに独立しており、第1の層11及び第2の層12を相異なる各対応する冷却温度T3,T4にそれぞれ冷却するように構成されている。
【0178】
一部の実施形態では、第1の冷却回路46は第1の層11を第1の冷却温度T3に冷却するように構成されていると共に、第2の冷却回路47は第2の層12を、第1の冷却温度T3より低い第2の冷却温度T4に冷却するように構成されている。
【0179】
第1の冷却回路46は、図面に示されていない公知の形式の1つ又は複数の冷却通路48と、冷媒をポンピングするためのユニット、又は冷却循環路を備えた熱交換器、を備えている。
【0180】
第2の冷却回路47は、図面に示されていない公知の形式の1つ又は複数の冷却通路49と、冷媒をポンピングするためのユニット、又は冷却循環路を備えた熱交換器、を備えている。
【0181】
一部の実施形態では、冷却通路48,49は第1の成形側部37及び/又は第2の成形側部39及び/又はパンチ29のうち少なくとも1つを貫通するように形成することができる。
【0182】
特に、冷却通路48,49は例えば水、エマルジョン及び/又は油等の冷媒を通すように構成されている。
【0183】
ここで
図5~12を参照して説明する実施形態は、部材10を製造するための方法にも関するものである。
【0184】
この方法は、第1のプラスチック材料を射出して第1の厚さS1を有する第1の層11を作製する第1のステップと、
-第2のプラスチック材料を射出して、第1の厚さより大きい第2の厚さS2を有する第2の層12を作製する第2の射出ステップと、を有する。
【0185】
一部の実施形態では、本方法は第1の動作パラメータで第1の材料を射出し、第1の動作パラメータとは異なる第2の動作パラメータで第2の材料を射出する。
【0186】
一部の実施形態では、第1の層11に対して第2の層12の厚さを別の大きな厚さとして第2の層12を作製することにより、より低い温度及び圧力の加工パラメータを使用することができ、これにより表面の安定性及び明るさを改善すること、つまり後収縮ステップにおいて生じる可能性のある変形を低減することができる。
【0187】
一部の実施形態では、本方法はパンチ29と第1の成形受け型30との間に第1の成形容積V1を画定するように当該パンチ29と第1の成形受け型30とを相互間で位置決めし、このように画定された第1の容積V1に第1の材料を射出する。第1の成形容積V1は、
図5の右手と
図9とに示すように、パンチ29のコントラスト面32と第1の成形面33との間に画定される。
【0188】
一部の実施形態では、本方法は規定の温度及び圧力パラメータで第1の材料を射出する。
【0189】
一部の実施形態では、本方法は(少なくともプロピレンの場合)150℃~260℃の第1の温度T1で第1の材料を射出する。
【0190】
他の実施形態では、第1の温度T1は120℃~240℃、好適には160℃~220℃、さらに好適には180℃~200℃の範囲である。
【0191】
一実施形態では本方法は、700kg/cm2~1300kg/cm2の第1の圧力P1で第1の材料を射出する。
【0192】
他の実施形態では、第1の圧力P1は750kg/cm2~1250kg/cm2、より好適には800kg/cm2~1200kg/cm2とすることができる。
【0193】
第1の射出工程により、部材10の第1の層11を得ることができる(
図6及び
図10)。
【0194】
一部の実施形態では、本方法は第1の射出ステップにおいて、第1の層11を第1の冷却温度T3に冷却することを含むことができる。
【0195】
一部の実施形態では、本方法は第1の層11を冷却するため、第1の冷却回路46内において冷媒を循環させて第1の受け型30及び/又はパンチ29のうち少なくとも1つを冷却することを含むことができる。
【0196】
一部の実施形態では、本方法は、35℃~55℃、より好適には40℃~50℃の範囲の第1の冷却温度T3を用いる。
【0197】
その後、本方法はパンチ29表面に形成された第1の層11と共にパンチ29を第2の成形アセンブリ28内に配置する。ここで第2の受け型34は、第1の層11の第2の表面14と合わさって第2の成形容積V2を画定するように位置決めされる。
【0198】
第2の成形容積V2は、例えば
図7の右手側及び
図11等に示すように、充填キャビティ19を有する第1の層11の第2の表面14と第2の成形面35との間に画定される。
【0199】
その後、本方法は、第2のプラスチック材料を第2の射出温度T2及び第2の射出圧力P2で第2の成形容積V2に射出する第2の射出ステップを有する。
【0200】
可能な一実施形態では、第2の射出ステップは第1の射出ステップの直後である。
【0201】
一実施形態では、本方法は、第1の射出温度T1より低い第2の温度T2を使用する。
【0202】
好適な一実施形態では、第2の射出温度T2は第1の射出温度T1の0.90倍~0.95倍の範囲である。換言すると、第2の射出温度T2は第1の射出温度T1より5~10%低い。
【0203】
一実施形態では、第2の圧力P2は有利には、第1の圧力P1より低くすることができる。
【0204】
一実施形態では、第2の射出圧力P2は第1の圧力P1の0.70倍~0.90倍の範囲とすることができる。換言すると、第2の圧力P2は第1の圧力P1より10~30%低い。
【0205】
第2の射出ステップは、部材10の外側の第2の層12を作製する。
【0206】
一部の実施形態では、本方法は第2の射出ステップにおいて、第2の層12を第2の冷却温度T4に冷却することを含むことができる。
【0207】
一部の実施形態では、本方法は第2の層12を冷却するため、第2の冷却回路47内において冷媒を循環させて第2の受け型34及び/又はパンチ29のうち少なくとも1つを第2の冷却温度T4まで冷却することを含むことができる。
【0208】
一部の実施形態では、第2の冷却温度T3は第1の冷却温度T4より15%~25%低くすることができる。
【0209】
好適な一実施形態では、第2の冷却温度T4は25℃~45℃、より好適には30℃~40℃の範囲とすることができる。
【0210】
本方法は他の実施形態では、凸部17と凹部18とを交互に有する三次元の仕上部を外表面15に備えた外側の第2の層12を作製する。
【0211】
他の実施形態では、本方法は少なくとも1つの透明窓22を作製する。
【0212】
窓22を作製するため、本方法は第1の層11に開口21又はスロットを形成し、第2の射出ステップにおいて当該開口21又はスロットを第2の材料により覆う。この第2の材料は、本具体例では透明な材料である。
【0213】
一部の実施形態では、本方法は第2の射出ステップの終了時に成形パンチ29と第2の成形受け型35とを切り離して部材10を取り出す。
【0214】
<実施例>
本願出願人は実証試験を行い、第1の層11の厚さS1と第2の層12の厚さS2との差に依存して射出温度T1,T2及び冷却温度T3,T4並びに射出圧力P1及びP2を考察対象の範囲内で変化させることが可能であることを実証した。
【0215】
以下の表1は、第1及び第2の射出ステップにおいて使用できる、厚さS1,S2の比に対応した加工温度及び圧力の可能な比を示す。
【表1】
【0216】
上記にて説明した部材10、装置26及び方法については、本発明の分野及び範囲から逸脱することなく、各部分又は各ステップの改良及び/又は追加を行うことが可能であることが明らかである。
【0217】
また、一部の具体例を参照して本発明を説明したが、当業者であれば確実に、特許請求の範囲に記載の特徴を有する部材10、装置26及び方法の他の多くの均等形態を達成できるので、かかる均等形態は全て、特許請求の範囲に記載の保護範囲に属することも明らかである。
【国際調査報告】