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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】マイクロナノ粒子濃度の測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20230213BHJP
   G01N 15/06 20060101ALI20230213BHJP
   G01N 15/02 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
G01N33/543 581C
G01N33/543 541A
G01N15/06 E
G01N15/02 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538383
(86)(22)【出願日】2020-11-16
(85)【翻訳文提出日】2022-07-22
(86)【国際出願番号】 CN2020128991
(87)【国際公開番号】W WO2021120944
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】201911319390.8
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522246256
【氏名又は名称】レサン (シェンヂェン) テック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】RESUN (SHENZHEN) TECH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】D711, Silver Star Hi-Tech Building, 1301 Guanguang Rd., Xinlan Community, Guanlan Street, Longhua District, Shenzhen, Guangdong 518110 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】シィォン グゥイ
(72)【発明者】
【氏名】リィゥ クェァ
(72)【発明者】
【氏名】ワン ヂェァ
(57)【要約】
マイクロナノ粒子濃度の測定方法であって、測定対象のマイクロナノ粒子は一種又は多種のマーカーと結合して新たな粒子を生成させ、前記新たな粒子は粒子サイズ、電荷状態、粒子形態のうち少なくとも一つにおいて前記測定対象のマイクロナノ粒子又は前記マーカーと比べて変化する。前記新たな粒子と前記測定対象のマイクロナノ粒子又は前記マーカーの粒子サイズ、電荷状態又は粒子形態を測定し、且つ前記新たな粒子と前記測定対象のマイクロナノ粒子又は前記マーカーをそれぞれ計数してそれぞれの計数結果を得て、且つ前記計数結果に基づいて前記マーカーと結合した前記測定対象のマイクロナノ粒子の濃度を算出して得る。本発明は、測定精度が高く、測定限界が低く、化学試薬が安定するという利点を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロナノ粒子濃度の測定方法であって、
測定対象のマイクロナノ粒子は一種又は多種のマーカーと結合して新たな粒子を生成させ、前記新たな粒子は粒子サイズ、電荷状態、粒子形態のうち少なくとも一つにおいて前記測定対象のマイクロナノ粒子又は前記マーカーと比べて変化し、
前記新たな粒子と前記測定対象のマイクロナノ粒子又は前記マーカーの粒子サイズ、電荷状態又は粒子形態を測定し、且つ前記新たな粒子と前記測定対象のマイクロナノ粒子又は前記マーカーをそれぞれ計数してそれぞれの計数結果を得て、且つ前記計数結果に基づいて前記マーカーと結合した前記測定対象のマイクロナノ粒子の濃度を算出して得ることを特徴とするマイクロナノ粒子濃度の測定方法。
【請求項2】
前記マーカーは、特異的官能基、又は特異的抗原若しくは抗体を有する、ポリスチレン微小球、磁気ビーズ、シリカ球又はミセルであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記特異的官能基は、生物酵素及び基質、抗原及び抗体、リガンド及び受容体、並びにビオチン及びアビジンから選択されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記測定対象のマイクロナノ粒子と前記マーカーとの結合方法は、特異的抗原抗体結合、特殊な免疫化学反応、特異的化学合成反応、及びアプタマーの特異的結合を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記測定対象のマイクロナノ粒子と前記マーカーとの結合方法は、一つの測定対象のマイクロナノ粒子と一つのマーカーとの結合、一つの測定対象のマイクロナノ粒子と複数のマーカーとの結合、及び複数の測定対象のマイクロナノ粒子と一つのマーカーとの結合を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記測定対象のマイクロナノ粒子は、タンパク質、エキソソーム、ウイルス、ポリスチレン微小球、磁気ビーズ、シリカ球又はミセルから選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記新たな粒子及び前記測定対象のマイクロナノ粒子又は前記マーカーの粒子サイズ、電荷状態又は粒子形態を測定する前記方法は、ナノ粒子トラッキング解析法(NTA)、調整可能な抵抗パルスセンシング(TRPS)、単粒子パルス技術、及び顕微鏡イメージング法を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
マイクロナノ粒子の精製、及び濃度測定の方法であって、
測定対象のマイクロナノ粒子を含むサンプルと一種又は多種の磁気ビーズマーカーを溶液中で特異的に結合させ、磁気ビーズに前記測定対象のマイクロナノ粒子と特異的に結合する抗原又は抗体、アプタマー又は特異的官能基が付き、これにより結合物は粒子サイズ、電荷状態、粒子形態のうち少なくとも一つにおいて前記測定対象のマイクロナノ粒子又は前記磁気ビーズマーカーと比べて変化し、
前のステップで生成された混合液を磁場領域に置き、前記磁気ビーズを磁力によって磁場における局所領域に吸着させ、さらに洗浄液を加えて前記磁場領域における混合液を交換し、前記サンプルにおける非測定対象のマイクロナノ粒子が前記混合液の交換に伴って除去され、前記磁場領域における洗浄液に磁気ビーズ粒子のみを含有させ、
前のステップで得られた洗浄液における測定対象のマイクロナノ粒子と結合した磁気ビーズと、測定対象のマイクロナノ粒子と結合していない磁気ビーズとの粒子サイズ、電荷状態又は粒子形態における変化を測定し、且つ前記測定対象のマイクロナノ粒子と結合した磁気ビーズと、測定対象のマイクロナノ粒子と結合していない磁気ビーズとをそれぞれ計数してそれぞれの計数結果を取得し、そして前記計数結果に基づいて計算して前記磁気ビーズに結合した前記測定対象のマイクロナノ粒子の濃度を得ることを特徴とするマイクロナノ粒子の精製及び濃度測定の方法。
【請求項9】
前記洗浄液は、磁気ビーズの検出を妨害する粒子を含まない液体であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記測定対象のマイクロナノ粒子は、タンパク質、エキソソーム、ウイルス、ポリスチレン微小球、磁気ビーズ、シリカ球又はミセルから選択されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粒子測定技術分野に関し、特にマイクロナノ粒子濃度の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体における粒子の濃度は重要な物理パラメータとして、医薬、半導体、塗料インク、濾過等の業界標準において粒子濃度範囲に関して明確な規定がある。粒子濃度測定は、非常に重要な基礎的作業である。粒子濃度測定はセメント、セラミック、薬品、エマルジョン、塗料、染料、顔料、フィラー、化学製品、触媒、掘削泥、研磨材、潤滑剤、石炭粉、沈泥、粉塵、細胞、細菌、食品、添加剤、農薬、爆薬、黒鉛、感光材料、燃料、インク、金属と非金属粉末、炭酸カルシウム、カオリン、石炭-水スラリー及び他の粉状材料に広く応用されている。
【0003】
ナノ粒子濃度の測定に対し、インピーダンス測定技術は単一粒子の特徴の効果的な識別を実現できる等の明らかな利点を有するが、インピーダンス法コールター原理は微粒子の等価粒径のみを測定することができ、粒子の電位及び形態を測定することができない。同時にインピーダンス法は小さいサイズの微粒子に対する測定精度が高くない。
【0004】
比色法は、ランバート-ベールの法則により溶液中の懸濁粒子の光に対する吸収度が濃度に比例する原理で測定するものであるが、この方法の正確度は吸光強度に制限され、吸光度が1~2の範囲で正確であるだけであり、比較的低濃度の微粒子を測定することができない。
【0005】
蛍光法及び化学発光法は、いずれも特異的な発光基によって目標粒子をマークし、発光強度によって目標粒子の濃度を測定し、一方で測定装置のコストが比較的高く、他方で発光基の化学試薬の安定性問題が存在する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は新規の単粒子に基づくマイクロナノ粒子濃度の測定方法を提供し、測定精度が高く、測定限界が低く、化学試薬が安定するという利点を有する。
【0007】
本発明の第一態様によれば、本発明はマイクロナノ粒子濃度の測定方法を提供し、当該方法は以下を含む。
【0008】
測定対象のマイクロナノ粒子は一種又は多種のマーカーと結合して新たな粒子を生成させ、上記新たな粒子は粒子サイズ、電荷状態、粒子形態のうち少なくとも一つにおいて上記測定対象のマイクロナノ粒子又は上記マーカーと比べて変化する。
【0009】
上記の新たな粒子と上記測定対象のマイクロナノ粒子又は上記マーカーの粒子サイズ、電荷状態又は粒子形態を測定し、且つ上記の新たな粒子と上記測定対象のマイクロナノ粒子又は上記マーカーをそれぞれ計数してそれぞれの計数結果を得て、且つ上記計数結果に基づいて上記マーカーと結合した上記測定対象のマイクロナノ粒子の濃度を算出して得る。
【0010】
好ましい実施例において、上記マーカーは、特異的官能基、又は特異的抗原又は抗体を有する、ポリスチレン微小球、磁気ビーズ、シリカ球又はミセルである。
【0011】
好ましい実施例において、上記の特異的官能基は、生物酵素及び基質、抗原及び抗体、リガンド及び受容体、並びにビオチン及びアビジンから選択される。
【0012】
好ましい実施例において、上記測定対象のマイクロナノ粒子と上記マーカーとの結合方法は特異的抗原抗体結合、特殊な免疫化学反応、特異的化学合成反応、アプタマーの特異的結合を含む。
【0013】
好ましい実施例において、上記測定対象のマイクロナノ粒子と上記マーカーとの結合方法は一つの測定対象のマイクロナノ粒子と一つのマーカーとの結合、一つの測定対象のマイクロナノ粒子と複数のマーカーとの結合、複数の測定対象のマイクロナノ粒子と一つのマーカーとの結合を含む。
【0014】
好ましい実施例において、上記測定対象のマイクロナノ粒子はタンパク質、エキソソーム、ウイルスから選択される。
【0015】
好ましい実施例において、上記の新たな粒子及び上記測定対象のマイクロナノ粒子又は上記マーカーの粒子サイズ、電荷状態又は粒子形態を測定する上記方法は、ナノ粒子トラッキング解析法(NTA)、調整可能な抵抗パルスセンシング(TRPS)、単粒子パルス技術、及び顕微鏡イメージング法を含む。
【0016】
本発明の第二態様によれば、本発明はマイクロナノ粒子の精製及び濃度測定の方法を提供し、当該方法は以下を含む。
【0017】
測定対象のマイクロナノ粒子を含むサンプルと一種又は多種の磁気ビーズマーカーを溶液中で特異的に結合させ、磁気ビーズに上記測定対象のマイクロナノ粒子と特異的に結合する抗原又は抗体、アプタマー又は特異的官能基が付き、これにより結合物は粒子サイズ、電荷状態、粒子形態のうち少なくとも一つにおいて上記測定対象のマイクロナノ粒子又は上記磁気ビーズマーカーと比べて変化する。
【0018】
前のステップで生成された混合液を磁場領域に置き、上記磁気ビーズを磁力によって磁場における局所領域に吸着させ、さらに洗浄液を加えて上記磁場領域における混合液を交換し、上記サンプルにおける非測定対象のマイクロナノ粒子が上記混合液の交換に伴って除去され、上記磁場領域における洗浄液に磁気ビーズ粒子のみを含有させる。
【0019】
前のステップで得られた洗浄液における測定対象のマイクロナノ粒子と結合した磁気ビーズと、測定対象のマイクロナノ粒子と結合していない磁気ビーズの粒子サイズ、電荷状態又は粒子形態における変化を測定し、且つ上記測定対象のマイクロナノ粒子と結合した磁気ビーズと、測定対象のマイクロナノ粒子と結合していない磁気ビーズをそれぞれ計数してそれぞれの計数結果を取得し、そして上記計数結果に基づいて計算して上記磁気ビーズに結合した上記測定対象のマイクロナノ粒子の濃度を得る。
【0020】
好ましい実施例において、上記洗浄液は、磁気ビーズの検出を妨害する粒子を含まない液体である。
【0021】
好ましい実施例において、上記測定対象のマイクロナノ粒子はタンパク質、エキソソーム、ウイルスから選択される。
【0022】
本発明のマイクロナノ粒子濃度の測定方法は、単一粒子に基づいて測定し、測定対象のマイクロナノ粒子とマーカーを結合して新たな粒子を生成し、新たな粒子と測定対象のマイクロナノ粒子又はマーカーの粒子サイズ、電荷状態又は粒子形態の変化を測定し、新たな粒子と測定対象のマイクロナノ粒子又はマーカーをそれぞれ計数し、マーカーと結合した測定対象のマイクロナノ粒子の濃度を取得する。当該方法は測定精度が高く、測定限界が低く、化学試薬が安定するという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は本発明の実施例1における粒径分布の棒グラフである。
図2図2は本発明の実施例2における粒径-Zeta電位分布の散布図である。
図3図3は本発明の実施例3における磁気ビーズ粒径-長さと直径の比(length-to-diamater ratio)の散布図である。
図4図4は本発明の実施例4における粒径-Zeta電位分布の散布図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、具体的な実施形態を介して図面と併せて本発明について詳細に説明する。以下の実施形態では、本発明をよりよく理解できるように、多くの詳細を説明する。しかしながら、当業者であれば、様々な状況において特徴の一部が省略されてもよく、又は他の材料、方法によって置き換えられてもよいことを容易に認識することができる。
【0025】
さらに、本明細書に記載される特性、操作、又は特徴は、任意の適切な方法で組み合わせて、様々な実施形態を形成することができる。同時に、方法の説明における各ステップ又は動作も当業者に明らかな方式に従って順序の入れ替え又は調整をすることができる。したがって、明細書及び図面における様々な順序は、ある実施例を明確に説明するためのものに過ぎず、ある順序に必ず従うべきであることを特に明記しない限り、必須の順序を意味するものではない。
【0026】
本発明は従来技術におけるマイクロナノ粒子の測定コストが高く、測定限界が高く、精度が低いという欠陥に対し、新たなマイクロナノ粒子の濃度測定方法を提供し、測定対象のマイクロナノ粒子(目標粒子)に対してマーカーを用いて特異的に結合させ、粒子サイズ、電荷状態又は粒子形態に顕著な変化が発生することにより計数し、目標粒子の濃度を得る。
【0027】
本発明はタンパク質、エキソソーム、ウイルス等の直接計数ができない様々なマイクロナノ粒子に対し、本発明の方法によって測定・分析を行うことができる。例えば、本発明の実施例では、測定されるマイクロナノ粒子は、エキソソーム(例えば、腎臓細胞エキソソーム又は肺腫瘍細胞エキソソーム)、Tauタンパク質、トロポニンI などである。これらのマイクロナノ粒子は、様々な生物(例えば、ヒトなど)の様々な組織又は体液、例えば、尿中の腎臓細胞エキソソーム、脳脊髄液中のTauタンパク質、血液中のトロポニンI、又は血液中の肺腫瘍細胞エキソソームなどに由来し得る。
【0028】
本発明は測定可能な粒子の粒径範囲が比較的広く、ナノスケールからマイクロスケールまでの粒子はいずれも本発明の方法によって測定することができる。5nm~5μm の粒子が好ましく測定される。
【0029】
本発明の実施例によると、マイクロナノ粒子濃度の測定方法にあって、以下を含む。
【0030】
測定対象のマイクロナノ粒子は一種又は多種のマーカーと結合して新たな粒子を生成させ、上記新たな粒子は粒子サイズ、電荷状態、粒子形態のうち少なくとも一つにおいて上記測定対象のマイクロナノ粒子又は上記マーカーと比べて変化する。
【0031】
上記の新たな粒子と上記測定対象のマイクロナノ粒子又は上記マーカーの粒子サイズ、電荷状態又は粒子形態を測定し、且つ上記の新たな粒子と上記測定対象のマイクロナノ粒子又は上記マーカーをそれぞれ計数してそれぞれの計数結果を得て、且つ上記計数結果に基づいて上記マーカーと結合した上記測定対象のマイクロナノ粒子の濃度を算出して得る。
【0032】
本発明の実施例において、マーカーは測定対象のマイクロナノ粒子と結合することができ、且つ測定対象のマイクロナノ粒子の粒子サイズ、電荷状態及び粒子形態における一つ又は複数の特徴の変化を引き起こす物質であり、このようなマーカーは特異的官能基又は特異的抗原又は抗体付きのポリスチレン微小球、磁気ビーズ、シリカ球又はミセル等であってもよい。特異的官能基は、生物酵素及び基質、抗原及び抗体、リガンド及び受容体、並びにビオチン及びアビジン等の化合物又は基から選択することができる。
【0033】
本発明の実施例において、一般に、マーカーは、ナノスケール又はマイクロスケールの粒子でもある。例えば、本発明の一実施例において、マーカーは、粒径が数百ナノメートルの特異的に結合する抗体を有するポリスチレン微小球であり、例えば、100nm、150nm、200nm、300nm、400nm、500nmなど、好ましくは、300nmである。その濃度は測定溶液中で個別に計数され、1×10/mlから1×1010/mlまでであってもよく、好ましくは1×10/mlである。本発明の別の実施例において、マーカーは、粒径が数百ナノメートルの特異的に結合する抗体を有するシリカ微小球であり、例えば、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nmなど、好ましくは、200nmである。その濃度は測定溶液中で個別に計数され、1×10/mlから1×1010/mlまでであってもよく、好ましくは1×10/mlである。本発明のさらに別の実施例において、マーカーは、粒径が数十ナノメートル~数百ナノメートルの特異的に結合する抗体を有する磁性ビーズであり、例えば、30nm、50nm、80nm、100nm、150nm、200nm、300nm、400nm、500nmなど、好ましくは、100nmである。その濃度は測定溶液中で個別に計数され、1×10/mlから1×1010/mlまでであってもよく、好ましくは1×10/mlである。
【0034】
本発明の実施例において、測定対象マイクロナノ粒子とマーカーとの結合方法は特異的抗原抗体結合、特殊な免疫化学反応、特異的化学合成反応、アプタマーの特異的結合を含む。
【0035】
本発明の実施例において、測定対象マイクロナノ粒子とマーカーとの結合方法は、一つの測定対象のマイクロナノ粒子と一つのマーカーとの結合、一つの測定対象のマイクロナノ粒子と複数のマーカーとの結合、複数の測定対象のマイクロナノ粒子と一つのマーカーとの結合を含む。
【0036】
本発明の実施例において、マーカーと測定対象のマイクロナノ粒子とが結合して生成された新たな粒子はマーカー又は測定対象のマイクロナノ粒子に対して、粒子サイズ、電荷状態及び粒子形態における一つ又は複数の特徴が変化する。そのうち、粒子サイズを測る指標は一般的に粒径であり、すなわち粒子の直径であり、特に平均粒径である。電荷状態を測定する指標は一般的に電荷量又は電子移動度(すなわち電気泳動における移動速度)である。粒子形態は、例えば、球形、楕円形又は他の不規則な形状などであり得る。
【0037】
本発明の実施例において、生成された新たな粒子と測定対象のマイクロナノ粒子又はマーカーの粒子サイズ、電荷状態又は粒子形態を測定する方法は様々であり、典型的であるが非限定的な例としては、ナノ粒子トラッキング解析法(NTA)、調整可能な抵抗パルスセンシング(TRPS)、単粒子パルス技術、及び顕微鏡イメージング法を含む。例えば、本発明の一実施例では、ナノ粒子トラッキング解析法(NTA)技術により、ポリスチレン微小球の粒径と粒子数、及び、エキソソームがポリスチレン微小球に結合した後に形成される新たな粒子の粒径と粒子数を測定する。例えば、本発明の他の一実施例では、調整可能な抵抗パルスセンシング(TRPS)技術により、シリカ微小球の粒径と粒子数、及び、Tauタンパク質がシリカ微小球に結合した後に形成される新たな粒子の粒径と粒子数を測定する。例えば、本発明の更なる一実施例では、単粒子パルス技術により、ナノ磁気ビーズの長さと直径の比と粒子数、及び、トロポニンIがナノ磁気ビーズに結合した後に形成される新たな粒子の長さと直径の比と粒子数を測定する。本発明のさらに別の実施例では、単粒子パルス技術により、血液サンプル中の肺腫瘍細胞エキソソームの特異的抗体との結合前後の粒径及び電荷を測定し、粒子径-Zeta電位分布の散布図を得る。
【0038】
本発明は新たな粒子と測定対象のマイクロナノ粒子又はマーカーの計数結果に基づき、マーカーと結合する測定対象のマイクロナノ粒子の濃度を算出することができる。計算結果は、様々な粒子の計数結果及び反応パターンと相関しており、例えば、本発明の一実施例では、ポリスチレン微小球(マーカーとして)とエキソソーム(測定対象のマイクロナノ粒子として)が一対一で結合している。ここでポリスチレン微小球の濃度はnであり、エキソソームと結合していないポリスチレン微小球の数はN1であり、エキソソームと結合した後のポリスチレン微小球の数はN2であり、測定対象の溶液におけるエキソソームの数は、n*N2/(N1+N2)である。本発明の他の実施例において、シリカ微小球(マーカーとして)はTauタンパク質(測定対象のマイクロナノ粒子として)と二対一結合の方式で結合し、そのうちシリカ微小球の濃度はnであり、Tauタンパク質と結合していないシリカ微小球の数はN1であり、Tauタンパク質と結合するシリカ微小球の数はN2であり、測定対象の溶液におけるTauタンパク質の数は、2*n*N2/(N1+2*N2)である。
【0039】
本発明の別の実施例はマイクロナノ粒子の精製及び濃度測定の方法を提供し、以下を含む。
【0040】
測定対象のマイクロナノ粒子を含むサンプルと一種又は多種の磁気ビーズマーカーを溶液に特異的に結合し、磁気ビーズに上記測定対象のマイクロナノ粒子と特異的に結合する抗原又は抗体、アプタマー又は特異的官能基が付き、これにより結合物は粒子サイズ、電荷状態、粒子形態のうち少なくとも一つにおいて上記測定対象のマイクロナノ粒子又は上記磁気ビーズマーカーと比べて変化する。
【0041】
前のステップで生成された混合液を磁場領域に置き、上記磁気ビーズを磁力によって磁場における局所領域に吸着させ、さらに洗浄液を加えて上記磁場領域における混合液を交換し、上記サンプルにおける非測定対象のマイクロナノ粒子が上記混合液の交換に伴って除去され、上記磁場領域における洗浄液に磁気ビーズ粒子のみを含有させる。
【0042】
前のステップで得られた洗浄液における測定対象のマイクロナノ粒子と結合した磁気ビーズと、測定対象のマイクロナノ粒子と結合していない磁気ビーズの粒子サイズ、電荷状態又は粒子形態における変化を測定し、且つ上記測定対象のマイクロナノ粒子と結合した磁気ビーズと、測定対象のマイクロナノ粒子と結合していない磁気ビーズをそれぞれ計数してそれぞれの計数結果を取得し、そして上記計数結果に基づいて計算して上記磁気ビーズに結合した上記測定対象のマイクロナノ粒子の濃度を得る。
【0043】
本発明の実施例において、磁気ビーズを洗浄するための洗浄液において磁気ビーズ粒子の測定に対する干渉を回避し、例えば磁性粒子状物質の含有を回避する。本発明の一実施例では、磁気ビーズを洗浄するための洗浄液は、磁気ビーズの測定を妨害する粒子を含まない液体、例えば生理食塩水洗浄液である。
【0044】
本発明のマイクロナノ粒子濃度の測定方法は、単一粒子に基づいて測定し、測定対象のマイクロナノ粒子とマーカーを結合して新たな粒子を生成し、新たな粒子と測定対象のマイクロナノ粒子又はマーカーの粒子サイズ、電荷状態又は粒子形態の変化を測定し、新たな粒子と測定対象のマイクロナノ粒子又はマーカーをそれぞれ計数し、マーカーと結合した測定対象のマイクロナノ粒子の濃度を取得する。当該方法は測定精度が高く、測定限界が低く、化学試薬が安定するという利点を有する。
【0045】
以下は具体的な実施例によって本発明の技術的解決手段を詳細に説明し、理解すべきものとして、実施例は例示的なものに過ぎず、本発明の保護範囲を限定するものと理解できない。
【0046】
実施例1
特異的結合抗体を有するポリスチレン微小球を用いて尿液における腎臓細胞エキソソームの濃度を測定する。
【0047】
腎炎患者の尿サンプルを超遠心機で遠心し、上澄みを取り、上澄みを抗体で修飾されたポリスチレン微小球(粒径は300nmであり、濃度nは1×10/mlである)を含む試薬溶液と1:1で混合し、ポリスチレン微小球には、腎臓細胞エキソソームの表面膜タンパク質と特異的に結合できる抗体が付いている。混合液を37°Cの温度で20分間反応させた後、混合液をNTA(ナノ粒子トラッキング解析法)技術を用いて測定し、ポリスチレン微小球の粒径の測定を実現する。図1に示すような粒径分布の棒グラフを得た。
【0048】
粒径300±20nmの範囲内で、粒子数N1が11254個であることを計測し、この範囲の粒子数はエキソソームと結合していないポリスチレン微小球の数である。340~460nmの範囲内の粒子数N2は、2430個であり、この範囲内の粒子数は、エキソソームと結合した後のポリスチレン微小球の数である。
【0049】
原サンプルにおける腎臓細胞エキソソームの数は、n*N2/(N1+N2)=1.77×10/mlである。
【0050】
実施例2
特異的結合抗体を有するシリカ微小球を用いて脳脊髄液におけるTauタンパク質の濃度を測定する。
【0051】
アルツハイマー病患者の脳脊髄液サンプルを多孔質樹脂で濾過し、濾過後の上澄みを取り、上澄みを二種類の抗体修飾されたシリカ微小球(粒径はいずれも、200nmであり、濃度nはいずれも、1×10/mlであり、Zeta電位は-25mVである)を含む試薬溶液と1:1で混合する。そのうちの一つのシリカ微小球にTauタンパク質と特異的に結合できる抗体を有し、他のシリカ微小球にTauタンパク質の他の結合部位と特異的に結合できる抗体を有する。混合液を37°Cの温度で20分間反応させた後、混合液をTRPS(調整可能な抵抗パルスセンシング)技術を用いて測定し、シリカ微小球の粒径と電荷の測定を実現する。図2に示すような粒径-Zeta電位分布の散布図を得た。
【0052】
粒径200±5nmの範囲内で、Zeta電位が-25mV付近にある粒子数N1は5434個、この範囲の粒子数は、Tauタンパク質に結合していないシリカ微小球の数である。380±10nmの範囲内の粒子数N2は630個、この範囲内の粒子数は、Tauタンパク質と二つの抗体で結合したシリカ微小球の数である。
【0053】
原サンプルにおけるTauタンパク質の数は、2*n*N2/(N1+2*N2)=1.88×10/mlである。
【0054】
実施例3
特異的結合抗体を有する磁気ビーズを用いて血液中のトロポニンIの濃度を測定する。
【0055】
心臓病患者の血液サンプルと二種類の抗体修飾された磁気ビーズを含む試薬溶液を1:1で混合し、そのうちの一種の磁気ビーズにトロポニンI (cTnI)と特異的に結合できる抗体が付き、粒径は100nmであり、濃度nは1×10/mlであり、他方の磁気ビーズには、トロポニンI (cTnI)の他方の部位に特異的に結合可能な抗体が付き、粒径は200nmであり、濃度nは1×10/mlである。混合液を37°Cで20分間反応させた。
【0056】
混合液を試験管に注ぎ、試験管を強磁場に置き、磁気ビーズを試験管の下部に富化させる。ピペットで試験管上部領域の液体を除去し、磁場を除去し、生理食塩水を加えて均一に混合する。さらに試験管を強磁場に置き、試験管中の生理食塩水が高純度の磁気ビーズのみになるまで上記ステップを繰り返す。
【0057】
上記磁気ビーズを含む生理食塩水を単粒子パルス技術を用いて測定し、図3に示すような磁気ビーズ粒径-長さと直径の比の散布図を得た。
【0058】
粒径200±5nmの範囲内で、長さと直径の比が1.0付近である粒子数N1を測定したところ、4246個であった。粒径100±5nmの範囲で、長さと直径の比が1.0付近である粒子数N2は4240個であり、この範囲の粒子数は、トロポニンI と結合していない磁気ビーズの数である。290±10nmの範囲で、長さと直径の比が1.5付近である粒子数N3は543個であり、この範囲内の粒子数は、トロポニンI と二つの抗体で結合した磁気ビーズの数である。
【0059】
原サンプルにおけるトロポニンIの数は、2*n*N3/(N1+N2+2*N3)=1.13×10/mlである。
【0060】
実施例4
特異的抗体を用いて血液サンプルにおける肺腫瘍細胞エキソソームの濃度を測定する。
【0061】
肺腫瘍患者の血液サンプルを超遠心機で遠心し、上澄みを取り、上澄みには細胞、血小板などの大粒子を含まない。上澄みの一部は単粒子パルス技術を使用して測定され、エキソソームの粒径及び電荷の測定を実現する。図4の左図に示すような粒径-Zeta電位分布の散布図を得た。
【0062】
測定された総エキソソーム個数N1は4230個であり、測定された総エキソソーム濃度nは5.34×10/mlであった。Zeta電位が20mV未満であるエキソソームの数N2は、1014個であった。
【0063】
上澄みに肺細胞エキソソームの表面膜タンパク質に対する抗体を含む試薬溶液(試薬中の抗体が過剰であり、抗体が負のZeta電位を有する)を加える。混合液を37°Cの温度で20分間反応させた後、混合液を単粒子パルス技術を用いて測定し、エキソソームの粒径と電荷の測定を実現する。図4の右図に示すような粒径-Zeta電位分布の散布図を得た。肺細胞エキソソームが抗体と結合した後に電荷が小さくなり、総エキソソーム個数M1を測定すると、3802個であり、Zeta電位が20mV未満のエキソソームの数M2は2011個、Zeta電位が20mV未満であるエキソソームの増加数は、肺細胞エキソソームの数である。
【0064】
原サンプルにおける肺細胞エキソソームの数は、n*(M2/M1-N2/N1)=1.54×10/mlである。
【0065】
以上、具体的な例を用いて本発明について詳述したが、上記の実施形態は、本発明の理解を深めるためのものにすぎず、本発明を限定するものではない。本発明が属する分野の当業者は、本発明の趣旨に基づいて、ほかの複数の簡単な演繹、変形又は置換を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】