(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(54)【発明の名称】医薬品および化粧用途のための一酸化窒素担体としての硫黄官能化モノリスおよびそれに由来する粒子
(51)【国際特許分類】
A61K 33/00 20060101AFI20230213BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20230213BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230213BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20230213BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230213BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20230213BHJP
A61P 15/10 20060101ALI20230213BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230213BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230213BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20230213BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20230213BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230213BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20230213BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20230213BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230213BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20230213BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230213BHJP
【FI】
A61K33/00
A61P17/02
A61P17/00 101
A61P9/12
A61P9/00
A61P7/02
A61P15/10
A61P9/10
A61P29/00
A61P17/00
A61P7/06
A61K9/10
A61K47/14
A61K47/06
A61K47/44
A61K47/10
A61K47/24
A61K9/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022545074
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(85)【翻訳文提出日】2022-07-22
(86)【国際出願番号】 US2020038720
(87)【国際公開番号】W WO2020257641
(87)【国際公開日】2020-12-24
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522293766
【氏名又は名称】ザイロ セラピューティクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】ドラガンスキ,アンドリュー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA16
4C076AA31
4C076BB31
4C076CC04
4C076CC11
4C076CC18
4C076CC19
4C076DD34
4C076DD37F
4C076DD45
4C076DD64
4C076EE55
4C076FF31
4C076FF63
4C086AA01
4C086HA07
4C086HA21
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA21
4C086MA41
4C086MA63
4C086NA10
4C086NA12
4C086ZA36
4C086ZA39
4C086ZA42
4C086ZA54
4C086ZA55
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA90
4C086ZB11
(57)【要約】
本出願は、薬物送達および化粧用製剤における用途のための一酸化窒素(NO)担体としての、硫黄官能化モノリスおよびそれに由来する粒子に関する。本出願の例示的な一態様には、第2のモノマーと結合してフレームワークを形成する、硫黄官能化側基を有する第1のモノマーを含有するモノリス構造が挙げられる。本出願の別の態様には、モノリスに由来する粗表面を有する粒子が挙げられる。本出願のさらなる一態様には、反応して硫黄基に共有結合的に結合したNOを含有するニトロシル化粒子を形成した、粗表面を有する粒子が挙げられる。本出願において記載されるように、本開示の態様には、モノリス構造を作製するための方法、モノリスから粗表面を有する粒子(複数可)を得るための方法、ならびにニトロシル化粒子またはNOを担持した粒子を使用して状態を処置するための方法を挙げることができる。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化窒素または一酸化窒素を形成するための前駆体を担持した複数の粒子を含有する媒質を含む医薬組成物であって、前記複数の粒子が、
粗表面および官能基を有する少なくとも1つの粒子を含み、前記粗表面が各々約0.01μm~2μmのサイズを有する複数の突出を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記媒質が石油製品を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記石油製品が、メチルパラベン、鉱物油、ミリスチン酸イソプロピル、白色ワセリン、乳化ワックスおよびプロピルパラベンからなる群からの製品を含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記媒質が水および乳化剤をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記乳化剤が、アルコール、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤またはそれらの組合せを含む、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記粗表面を有する少なくとも1つの粒子が、モノリスを崩壊させることに由来する、請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記粗表面および官能基を有する少なくとも1つの粒子が、結合して表面積を有するマトリックスを形成する第1のモノマーおよび第2のモノマーを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記第1のモノマーが、化学構造
【化1】
(式中、R1、R2およびR3の各々は、独立して、水素、1~5個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルキル基、または1~5個の直鎖もしくは分岐鎖炭素原子を有するアルコキシ基であり;R4は、水素原子、1~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基からなる群から選択され、n=1~4である)
を含む、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記第2のモノマーが、化学構造
【化2】
(式中、R1~R4の各々は、独立して、水素または1~5個の炭素原子を有する分岐鎖もしくは直鎖アルキル基から選択される)
を含む、請求項7から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記官能基がチオールを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
一酸化窒素または一酸化窒素を形成するための前駆体を担持した、前記医薬組成物の全重量に対して5.0wt%以上かつ33.0wt%以下の複数の粒子を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記複数の粒子が、前記複数の粒子のミリグラムあたり約100nmol以上のNOかつ約1800nmol以下の一酸化窒素結合能力を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
障害と診断されている患者を処置するための方法であって、
一酸化窒素または一酸化窒素を形成するための前駆体を担持した複数の粒子を含有する組成物を、当該処置を必要とする患者の投与部位に投与するステップを含み、
前記粒子の少なくとも一部が、前記粒子の前記投与部位での埋め込みを引き起こす粗表面を有する、方法。
【請求項14】
前記投与部位が前記患者の皮膚である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記化合物が、ある期間にわたり放出される、請求項13から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記化合物の少なくとも85%が36時間後に放出される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物の少なくとも50%が10時間後に放出される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の粒子が前記前駆体を担持し、
前記第1の化合物と反応して一酸化窒素を生成する第2の化合物を送達するステップをさらに含む、請求項13から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記投与部位へ被覆を適用するステップを含まない、請求項13から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
約1μm~約8μmの平均粒径を有する多分散の複数の粒子であって、
粗表面および官能基を有する粒子を含み、前記粒子が約9m
2/gよりも大きいBET表面積を有し、
前記複数の粒子が、結合してフレームワークを形成する第1のモノマーおよび第2のモノマーを含むモノリスを崩壊させることに由来する、多分散の複数の粒子。
【請求項21】
前記粗表面が、各々約0.1μm~約2μmのサイズを有する複数の突出を含む、請求項20に記載の多分散の複数の粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本出願は、その開示が参照により全体を本明細書に組み込まれる、2019年6月19日付の出願日を有する米国仮出願第62/863,503号の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
[0002]セラミックは好都合な化学特性、熱安定性および生体適合性を有するため、セラミック粒子、例えばシリカ、アルミナおよびケイ酸アルミニウムは有望な薬物担体である。加えて、ある特定のセラミックの製造は、ある特定の用途のために特性を修飾するための異なるモノマーを使用する様々な合成経路により達成することができる。シリカ粒子を製造する1つの方法は、加水分解性シラン前駆体をアルコール溶液中で水と反応させる核形成/成長ゾル-ゲル法であるストーバー法である。しかし、条件が、低い濃度のアルコキシシランモノマー、一定かつ継続的なモノマーの導入を伴う一定の剪断下での延長された反応時間、およびモノマーの粒子への不完全な変換を必要とすることがあるため、この方法に対するいくつかの短所が存在する。ストーバー法の結果は小さな単分散の粒子であり、これはある特定の用途のために有用であり得るが、該方法は、一部には長い反応時間、低い収率および費用に起因した、大規模製造についてのいくつかの欠点を有する。
【0003】
[0003]ストーバー法の発見に続き、メソポーラスシリカ粒子を製造するためのシリカ粒子中の孔のパターン形成を可能とする、2段階の修飾が報告された。孔の大きな表面積に起因して、これらの粒子は薬物送達における用途について大きな潜在性を有する。製作には、シラン前駆体を自己集合した六方配列の円筒型メソ細孔と反応させることを伴う。また、この新たな方法は、低い収率および生体適合性を保証するために界面活性剤を除去する必要を含む短所を有する。
【0004】
[0004]表面活性な基とのコンジュゲーションによるか、または孔中に担持させることによる、薬物(例えばタンパク質)の送達剤としてのシリカ粒子の用途は、疾患標的化の改善、副作用の減少および患者の転帰の改善を有する薬物送達のための新たな経路を提供した。しかし、製造方法を改善し、それにより患者および会社へのコストを減少させるための著しい進歩の余地が依然としてある。加えて、ある特定の逃散性(fugitive)小分子の送達のための担体の開発は、粒子担体を使用することのできる用途および処置を拡大するであろう。
【0005】
[0005]例えば、過去数十年にわたり、いくつかの一酸化窒素(NO)関連の治療法が出現した。一般に、これらのシステムは、プロドラッグからNOを生成するために酵素活性を使用する。これらのプロドラッグには、有機硝酸エステル、最も特にはニトログリセリンおよび有機金属のNO供与体、例えばニトロプルシドナトリウムが挙げられる。NOの生成のために必要とされる宿主酵素の枯渇に起因する進行性のタキフィラキシー、毒性の副生成物(例えばニトロプルシドナトリウムは、NOならびにシアニドを放出しながら分解する)からの毒性の潜在性および短期的な生物学的効果のような欠点は、すべてこれらの治療有効性を制限する。気体のNOは有効であり肺高血圧症の処置のためにFDAに承認されているが、患者における使用は、費用、ガスタンクを介した送達の必要性、およびNO2の産生による潜在的な毒性の問題により制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0006]NOは創傷治癒および消毒を含む様々な生物学的用途を有するため、酵素放出も高価な高圧の貯蔵タンクも必要としないNOの自発的な放出を可能とする方法およびシステムが、当該技術分野において必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007]本出願は、薬物送達および化粧用製剤における用途のための一酸化窒素(NO)担体としての、硫黄官能化モノリスおよびそれに由来する粒子に関する。本出願の例示的な一態様には、第2のモノマーと結合してフレームワークを形成する、硫黄官能化側基を有する第1のモノマーを含有するモノリス構造が挙げられる。本出願の別の態様には、当該モノリスに由来する粗表面を有する粒子が挙げられる。本出願のさらなる一態様には、反応して1つまたは複数の硫黄基に共有結合的に結合したNOを含有するニトロシル化(例えばS-ニトロソ官能化)粒子を形成した、粗表面を有する粒子が挙げられる。本出願において記載されるように、本開示の側面には、当該モノリス構造を作製するための方法、当該モノリスから粗表面を有する粒子(複数可)を得るための方法、ならびにニトロシル化粒子またはNOを担持した粒子を使用して状態を処置するための方法を挙げることができる。一般的に、本開示の実施形態は、より低いコストで製造でき、生体適合性を示すことができるため、他のNO送達システムおよび製造の方法に対する利点を提供することができる。加えて、シリカ粒子の粗表面は、担体粒子を皮膚に埋め込み、表面接触の増大を通して局所投与のような用途におけるNO送達を改善することができるため、予期せぬ利点を提供する。
【0008】
[0008]当業者向けの、その最良の形態を含む本発明の完全で権限を付与する開示が、本明細書の他の部分により特に記載され、これは添付の図面の参照を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】[0009]
図1A~1Hは、本開示の例示的な実施形態による、反応時間後のモノリス形成を示す図である。
【
図1B】
図1A~1Hは、本開示の例示的な実施形態による、反応時間後のモノリス形成を示す図である。
【
図1C】
図1A~1Hは、本開示の例示的な実施形態による、反応時間後のモノリス形成を示す図である。
【
図1D】
図1A~1Hは、本開示の例示的な実施形態による、反応時間後のモノリス形成を示す図である。
【
図1E】
図1A~1Hは、本開示の例示的な実施形態による、反応時間後のモノリス形成を示す図である。
【
図1F】
図1A~1Hは、本開示の例示的な実施形態による、反応時間後のモノリス形成を示す図である。
【
図1G】
図1A~1Hは、本開示の例示的な実施形態による、反応時間後のモノリス形成を示す図である。
【
図1H】
図1A~1Hは、本開示の例示的な実施形態による、反応時間後のモノリス形成を示す図である。
【
図2A】[0010]
図2A~2Cは、様々な倍率での、本開示の例示的な実施形態により形成された粒子を示す図である。
【
図2B】
図2A~2Cは、様々な倍率での、本開示の例示的な実施形態により形成された粒子を示す図である。
【
図2C】
図2A~2Cは、様々な倍率での、本開示の例示的な実施形態により形成された粒子を示す図である。
【
図3】[0011]本開示の例示的な実施形態により形成された、粒径についてのヒストグラムである。
【
図4】[0012]
図4Aは、本開示の例示的な実施形態による、即時的なNOの放出を示すグラフである。
図4Bは、本開示の例示的な実施形態による、累積的なNOの放出を示すグラフである。
【
図5-1】[0013]
図5A~5Jは、本開示の例示的な実施形態による、反応時間後のモノリス形成を示す図である。
【
図5-2】
図5A~5Jは、本開示の例示的な実施形態による、反応時間後のモノリス形成を示す図である。
【
図6A】[0014]RTまたは40℃で生成された例示的な実施形態についての収率対縮合時間を示す棒グラフである。
【
図6B】[0015]RTまたは40℃で形成された例示的な実施形態についての平均粒径対縮合時間を示す棒グラフである。
【
図6C】[0016]RTまたは40℃で形成された例示的な実施形態についてのNOの担持量対縮合時間を示す棒グラフである。
【
図7A】[0017]
図7A~7Cは、本開示の例示的な実施形態が適用されたグレースケールでの皮膚組織を示す図である。
【
図7B】
図7A~7Cは、本開示の例示的な実施形態が適用されたグレースケールでの皮膚組織を示す図である。
【
図7C】
図7A~7Cは、本開示の例示的な実施形態が適用されたグレースケールでの皮膚組織を示す図である。
【
図8A】[0019]
図8A~8Cは、それぞれ
図7A~7Cで示される組織から採取された断面を示す図である。
【
図8B】
図8A~8Cは、それぞれ
図7A~7Cで示される組織から採取された断面を示す図である。
【
図8C】
図8A~8Cは、それぞれ
図7A~7Cで示される組織から採取された断面を示す図である。
【
図9】[0021]未処置の皮膚対照、塗布の1時間後、および塗布の6時間後についての、蛍光強度対ストリップ数を示すグラフである。
【
図10】[0022]相対圧力対容量を示すグラフである。
【
図11】[0023]本開示により形成された例示的な実施形態のBET分析から算出されたデータを示す表である。
【
図12】[0024]本開示により示されるMPTS/TEOS比を使用して形成された例示的な実施形態から決定されたデータを示す表である。
【
図13A】[0025]
図13Aおよび13Bは、本開示の例示的な実施形態による、NOのppmおよびNOの放出速度対時間をそれぞれ示すグラフである。
【
図13B】
図13Aおよび13Bは、本開示の例示的な実施形態による、NOのppmおよびNOの放出速度対時間をそれぞれ示すグラフである。
【
図14】[0026]
図14Aは、本開示の例示的な実施形態による、NOのppm対時間を示すグラフである。
図14Bは、本開示の例示的な実施形態による、NOの放出速度対時間を示すグラフである。
【
図15A】[0027]
図15Aおよび15Bは、本開示の例示的な実施形態による、NOの放出速度および累積的なNOの放出対時間をそれぞれ示すグラフである。
【
図15B】
図15Aおよび15Bは、本開示の例示的な実施形態による、NOの放出速度および累積的なNOの放出対時間をそれぞれ示すグラフである。
【
図16】[0028]本開示の例示的な実施形態による、累積的なNOの放出を示すグラフである。
【
図17】[0029]皮膚の毛包の開口部で収集した、本開示による粒子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0030]本明細書および図面において参照符号が繰り返し使用されている場合、これは、本発明の同じまたは類似の特性または要素を表すように意図される。
[0031]ここで、本発明の実施形態が参照され、その1つまたは複数の例は以下に記載されている。各例は、本発明の限定ではなく、本発明の説明として与えられる。事実、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、様々な修正および変更を本発明において行うことができることが、当業者に明らかであろう。例えば、一実施形態として図示または記載される特徴は、またさらなる実施形態をもたらすために、別の実施形態に対して使用することができる。したがって、本発明は、添付の特許請求項およびそれらの均等物の範囲内に入るような修正および変更をカバーすることが意図される。本議論は例示的な実施形態の説明のみであり、具象化された例示的な解釈である本発明のより広い態様を限定することを意図されないことが、当業者に理解されるべきである。
【0011】
[0032]概して、本開示は医薬品および化粧用途のための担体としての硫黄官能化モノリスおよびそれに由来する粒子に関する。開示される材料、組成物および方法は、これらの形成が様々な条件にわたり急速に起こるため、製造者および消費者の両方についてのコストを有意に減少させることができる速く有効かつ生産的な製造を可能とする利点を提供することができる。本開示の例示的な実施形態には、少なくとも2つのモノマーから形成され硫黄官能基(例えばチオール)を含むモノリス、当該モノリスに由来する粒子、当該モノリスを製造する方法、および当該モノリスから粒子を形成するための方法を挙げることができる。本開示の実施形態には、モノリスに由来する粒子を含む組成物、および組成物を使用した処置も挙げることができる。
【0012】
[0033]本開示の実施形態について、当該モノリスに由来する粒子は、化合物または前駆体(前駆体は、条件への曝露の際に化合物に変換する)を担持することができる。一例として、本開示の一実施形態には、当該モノリスに由来する粒子を含有する化粧用組成物を挙げることができる。この例では、化粧用組成物中に含有される粒子は、周囲条件下では気体として通常存在する高蒸気圧化合物(例えばNO)を担持することができる。一酸化窒素は身体により産生され、創傷治癒を改善することができ、老化の影響、例えばしわを低減するのにも役立ち得る循環の増大を含む、いくつかの生物学的効果を有することが公知である。よって、組成物の身体の領域への適用は、化合物の局所的送達のための手段を提供することができる。
【0013】
[0034]この例は、本開示の実施形態の実施において認識することのできる別の利点を示す。ある特定の実施形態では、モノリスに由来する粒子は不規則なまたは粗表面を有することができる。粗表面は、化合物への結合のための表面積の増大、または塗布領域(例えば皮膚または粘膜の上層)への埋め込みによるような複数の利点を提供することができる。表面積を増大することにより、本開示の実施形態は、化合物または前駆体の担持の改善をもたらすことができ、これは塗布の頻度を減少させることができる。外表面に埋め込むことにより、これらの実施形態は連続的なアプリケーター、例えばパッチの存在を必要とすることなく接触時間を改善することができる。逃散性化合物、例えば高蒸気圧2原子分子を局在化領域へと送達することは極めて困難なことがあるため、本開示の実施形態は、化合物、例えばNOを送達するための追加の利点を提供することができる。
【0014】
[0035]本開示の粒子は、外表面、例えば使用者の皮膚に埋め込むために製剤化および構築される。例えば、粒子は表面の粗度を高く形成され、これは粒子の皮膚への埋め込みを促進するだけでなく、皮膚との接触について最適化された粒径を有する。一態様では、粒子は、粒子を皮膚の毛包で集合させる径および形状を有する。毛包は、粒子のための漏斗として作用することができる。毛包に入ると、粒子は除去から保護されるだけでなく、化合物または前駆体、例えば一酸化窒素の放出を最大化する場所に位置する。例えば
図17を参照して、ヒトの皮膚(エクスビボのヒト組織)は、本開示の粒子とともに示される。図面に示されるように、粒子は、送達を最大化するために毛包開口部に集まる。
【0015】
[0036]本開示の一実施形態にはモノリスを挙げることができ、モノリスは、結合してフレームワークを形成する第1のモノマーおよび第2のモノマーを含み、第1のモノマーは硫黄官能化側基を含む。本開示の別の実施形態には、モノリスに由来する粒子を挙げることができる。一般に、モノリスに由来する粒子は、さらなる反応または処理を受けていない限り、それが由来するモノリスと同じ化学組成を含むと理解される。よって、モノリスに由来する粒子は、硫黄官能化側基を含む第1のモノマーおよび第2のモノマーも含む。
【0016】
[0037]ある特定の実施形態では、第1のモノマーは、第2のモノマーに対して約1:5~約5:1、例えば約1:3~約3:1および約4:6~約6:4のモル比で存在することができる。ここでの参照は第1のモノマーに対してのみ行われるが、他の部分は第2のモノマーのみを含む必要がないことを理解されたい。一部の実施形態では、モノリスまたはモノリスに由来する粒子の一部として、第3のモノマーが存在することができる。一部の実施形態では、モノリスまたはモノリスに由来する粒子が少なくとも4つの異なるモノマーを含むように、第3のモノマーおよび第4のモノマーが存在することができる。そのため、本開示の実施形態は、第1のモノマーおよび第2のモノマーのみを使用することを強制されない。
【0017】
[0038]一般に、第1のモノマーには、構造Iまたは構造II
【0018】
【0019】
に由来する構造を挙げることができ、R1~R3の各々は、独立して、水素(-H);ヒドロキシル(-OH);フッ素(-F)、塩素(-Cl)または臭素(-Br)またはヨウ素(-I)を含むハロゲン(-X);1~5個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基、および1~5個の直鎖または分岐鎖炭素原子を有するアルコキシ基(-OCxHy)から選択される。R4は、水素(-H)、1~4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基の群から選択され;R5は、水素、1~3個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル基、ヒドロキシル(-OH)、チオール(-SH)、ならびにフッ素(-F)、塩素(-Cl)および臭素(-Br)を含むハロゲン(-X)からなる群から選択され;nおよびmは独立して=1~4である。フェニル環上の炭素原子に付着していない置換基(例えばR5)は、フェニル環の任意の位置で置換されてもよい。
【0020】
[0039]構造Iに由来する例示的な化合物には、3-メルカプトプロピル(mercaptoproply)トリメトキシシラン(MPTS)、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン(MPTES)および3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(MPDMS)が挙げられる。これらの例は例示のみのために提供され、第1のモノマーの範囲をこれらの化合物のみに限定することは意図されない。加えて、これらの化合物または構造Iに由来する他の構造の組合せは、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、モノリスまたはモノリスに由来する粒子に含まれ得る。
【0021】
[0040]一般に、第2のモノマーには、構造III
【0022】
【0023】
に由来する構造を挙げることができる。
[0041]構造IIIに由来する例示的な化合物には、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、オルトケイ酸テトラメチル(TMOS)、オルトケイ酸テトラプロピル(TPOS)およびオルトケイ酸テトラブチル(TBOS)が挙げられる。これらの例は例示のみのために提供され、第2のモノマーの範囲をこれらの化合物のみに限定することは意図されない。加えて、これらの化合物または構造IIIに由来する他の構造の組合せは、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、モノリスまたはモノリスに由来する粒子に含まれ得る。
【0024】
[0042]構造IIIはケイ酸塩を示すが、他の金属アルコキシド、金属酸化物およびそれらの塩またはキレートを本開示の実施形態において使用することができることを理解されたい。例えば、一部の実施形態では、第2のモノマーには、金属酸化物のアルコキシド、塩またはキレートを挙げることができ、金属は、ケイ素、アルミニウム、ホウ素、ゲルマニウム、バリウム、リチウム、ナトリウム、チタン、ジルコニウム、マグネシウム、ストロンチウム、ハフニウムおよびバナジウムの群に含まれる。
【0025】
[0043]ある特定の実施形態の一態様には、モノリス構造の一部としてか、またはそのようなモノリスに由来する粒子の一部として、第1のモノマーおよび第2のモノマーに結合した第3のモノマーを挙げることができ、第3のモノマーはイオン基を含有する。例えば、第3のモノマーには、アニオン性オルガノシラン、例えば3-トリヒドロキシシリルプロピルメチルホスホネートまたは3-((トリヒドロキシシリル)-1-プロパンスルホン酸)またはカチオン性オルガノシラン(例えばアミノプロピルトリメトキシシラン)を挙げることができる。これらの実施形態について、荷電基の包含は、粒子の湿潤性を増大して、含水量の高い組成物のようなある特定の媒質中での組み込みの改善をもたらすことができる。また、荷電基の包含は、電荷-電荷斥力に少なくとも一部起因して、水中の粒子の分散性(離散)を改善することができる。
【0026】
[0044]本開示の実施形態では、モノリスまたはモノリスに由来する粒子は、化合物または前駆体への結合能力を有することができる。例示的な一実施形態では、化合物は一酸化窒素(NO)を含むことができ、NOについての結合能力は、乾燥したモノリスのmgあたり、またはモノリスに由来する乾燥した材料(例えば粒子)のmgあたり、約850~約3200nmolのNOであることができる。ある特定の実施形態では、NOについての結合能力は、モノリスのmgあたり約1800~約1100nmolのNOであることができる。
【0027】
[0045]本開示の実施形態について、化合物または前駆体は、化学的に結合した種または物理的に吸収された種として存在し得る。一例として、NOは、第1のモノマー上に存在する硫黄基に化学的に結合してS-ニトロソ結合を形成し得る。S-ニトロソ結合の調製のための方法は、本開示の他の部分にさらに詳細に記載される。
【0028】
[0046]ある特定の実施形態では、モノリスおよびモノリスに由来する粒子は、孔径および孔の体積を特徴とする多孔性構造を含むことができる。一部の実施形態では、多孔性構造は、第1のモノマーおよび第2のモノマーの異なる組合せを使用して調節することができる。ある特定の用途について、多孔性粒子の使用は、より大きな表面積を有することにより、化合物(例えばNO)の結合および/または送達速度論の修飾についての利点を提供することができる。
【0029】
[0047]本開示の一実施形態では、モノリスは、プレゲル、ゲル(例えばヒドロゲル)、キセロゲルまたはエアロゲルを含むフレームワークを有することができる。本明細書で使用される場合、プレゲルはゲルの前駆体を説明することを意味し、ここで短い範囲のフレームワークが形成され始めるが、フレームワークは自己支持形ではない。プレゲルは、本明細書において開示される試験を使用して視覚的および物理的に同定することができる。例えば、プレゲルは一般に、溶液中の沈殿(例えば曇り)を示す。プレゲルはまた一般に、反転した場合に流動および/または崩壊を示す。ゲルは、反転した場合に流動も崩壊も示さない、本明細書において自己支持形と称される特徴においてプレゲルと区別され得る。キセロゲルは、ゲルから湿潤剤を蒸発させることにより製造することができる乾燥ゲルを指す。ヒドロゲルについては、湿潤剤には水が挙げられるが、他の湿潤剤、例えばアルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール等)がゲル中に存在してもよい。よって、本開示の実施形態では、モノリスは、ゲル、プレゲル、キセロゲルおよびエアロゲルを含むフレームワークを有することができる。
【0030】
[0048]本開示の実施形態では、モノリスに由来する粒子は、任意のフレームワークを有するモノリス、同じフレームワークを有する複数のモノリス、または異なるフレームワークを有する複数のモノリスに由来し得る。加えて、粒子は複数のモノリスに由来することができ、次に合わせられて異なるモノリスに由来する粒子の混合物を形成することができる。
【0031】
[0049]一般に、モノリスに由来する粒子は、これらを有核粒子から区別することのできる物理的な特徴を示す。例えば、モノリスに由来する粒子には、粗表面を有する粒子を挙げることができる。本明細書で使用される場合、粗表面は、表面が、粒子表面から伸びる各々約0.1μm~約3μmのスケール、例えば約0.4μm~約2.5μm、約0.8μm~約2.2、および約1μm~約2μmを有する複数の突出を含むことを示す。一部の実施形態では、粗表面を有する粒子には、モノリスに由来する粒子を挙げることができる。
【0032】
[0050]粒子の粗表面は、粒子のBET表面積により示すことができる。大きな粗度を有する粒子ほど、一般により高いBET表面積を有するであろう。本開示の粒子は、例えば、約5m2/gよりも大きく、例えば約7m2/gよりも大きく、例えば約9m2/gよりも大きく、例えば約11m2/gよりも大きく、例えば約13m2/gよりも大きく、例えば約15m2/gよりも大きく、一般に約100m2/g未満であるBET表面積を有することができる。
【0033】
[0051]モノリスに由来する粒子および粗表面を有する粒子を含む、本明細書において開示されている粒子の例示的な態様は、約0.1~約100ミクロンの粒径を含む。平均粒径は、例えば、約0.5ミクロンよりも大きく、例えば約1ミクロンよりも大きく、例えば約1.5ミクロンよりも大きく、一般に約80ミクロン未満、例えば60ミクロン未満、例えば40ミクロン未満、例えば約30ミクロン未満、例えば約20ミクロン未満、例えば約10ミクロン未満、例えば約8ミクロン未満、例えば約5ミクロン未満であることができる。粒径は、任意の好適な光散乱またはレーザー法を使用して測定することができる。加えて、これらの粒子は、モノリスの実施形態において記載されるような第1のモノマーならびに第2のモノマーを含む。
【0034】
[0052]例示的な一実施形態では、複数の粒子には、各々が粗表面を有する粒子の群を挙げることができる。ある特定の実施形態では、粒子の群は多分散であり得る。あるいは、一部の実施形態では、粒子の群は単分散であり得る。ある特定の径範囲または粒子分布を達成するために、一部の実施形態では、モノリスに由来する粒子は追加の加工、例えば横型ビーズミル(horizontal bead mill)を使用する粉砕を受けることができる。例えば、粒子を湿式粉砕するために、遊星型ボールミルまたは横型ビーズミルを使用することができる。湿式粉砕は、粉砕ビーズを有する粉砕チャンバー(チャンバーおよびビーズは典型的には高い密度および高い硬度を有する適合する材料、例えばZrO2であり、ビーズの直径は0.1~1mmの範囲である)中で、粒子を適切な液体(典型的には水、アルコールまたは水/アルコールミックス、一部の場合では、粉砕効率を改善するためにpHを調節するための酸、塩基または緩衝液を含めることもできる)と混合することを伴う。粉砕チャンバーの高速回転は、粒径をサブミクロンの範囲へと減少させるための高い衝撃力を生成する。ビーズが小さく粉砕時間が長いほど、より小さな粒子を製造する。一部の用途については、粒子は約100nm以下の直径へとミルダウンされてもよい。
【0035】
[0053]粒子の混合物についての多分散度を決定するための例示的な方法には式1が挙げられ、式中、分散度
【0036】
【0037】
は、標準偏差(SD)および平均粒径(平均)を使用して以下に示すように算出される:
【0038】
【0039】
[0054]粒子質量に対して表面積を増大することにより、粒径の調節を使用して粒子の担持能力を修飾することができる。粒径は、粒子の皮膚への浸透にも影響を与えることができる。よって、一部の実施形態については、粒子を形成するための方法はまた、粒子を粉砕して平均粒径を調節する(例えば平均粒径を減少させる)ことを含んでもよい。
【0040】
[0055]別の例示的な実施形態では、粗表面を有する粒子(複数可)は、粒子のmgあたり約1500μmol~約3000μmolの硫黄基の密度を含むことができる。
[0056]本開示の追加の実施形態には、モノリスを製造するための方法を挙げることができる。これらの方法は、第1のモノマーを7未満またはそれと等しいpHを有する溶液中で加水分解するステップ、第2のモノマーを溶液へと提供するステップ、第1のモノマーおよび第2のモノマーを反応時間反応温度で反応させるステップ、ならびに反応時間の終了時に塩基を溶液へと提供するステップを含むことができる。ここで、塩基を溶液へと提供するステップは、溶液のpHを開始pHよりも大きな最終pHへと増大する。
【0041】
[0057]一般に、第1のモノマーおよび第2のモノマーには、モノリス構造を形成する開示された第1のモノマーおよび第2のモノマーを挙げることができる。例えば、第1のモノマーには構造Iまたは構造IIに由来する構造を挙げることができ、第2のモノマーには構造IIIに由来する構造を挙げることができる。加えて、第1のモノマーの第2のモノマーに対する比には、モノリス構造を形成するものとして開示された比を挙げることができる。例えば、第1のモノマーは、1:5~約5:1の比、または約1:4~約4:1の比で存在することができる。
【0042】
[0058]第1のモノマーを溶液中で加水分解する例示的な態様には、第1のモノマーの濃度および溶媒を挙げることができる。モノリスを製造するために溶液中に含めることができる溶媒のいくつかの非限定的な例には、水;アルコール(例えばメタノール);直鎖または分岐鎖アルカン(例えばヘキサン);ジメチルスルホキシド(DMSO);ジメチルホルムアミド(DMF);テトラヒドロフラン(THF);ベンゼン;トルエン;およびそれらの任意の組合せが挙げられる。加えて、第1のモノマー濃度は、約5vol%~約20vol%の間、例えば約7vol%~約15vol%または約9vol%~約12vol%であることができる。
【0043】
[0059]本開示の実施形態では、モノリスを製造するための方法は、約6未満かまたはそれと等しい開始pHで行うことができる。例示的な一実施形態では、モノリスを製造するための方法は、約3未満かまたはそれと等しい開始pHで行うことができる。別の例示的な実施形態では、開始pHは約2未満かまたはそれと等しいものであることができる。
【0044】
[0060]本開示の実施形態では、モノリスを製造するための方法は、塩基を用意してpHを約6よりも大きいかまたはそれと等しい最終pHへと増大するステップを含むことができる。例示的な一実施形態では、最終pHは約7よりも大きいかまたはそれと等しいものであることができる。別の例示的な実施形態では、最終pHは約10よりも大きいかまたはそれと等しいものであることができる。
【0045】
[0061]本開示の実施形態では、モノリスを製造するための方法は、約25℃~約80℃の反応温度で行うことができる。例えば、本開示の例示的な一実施形態には、モノリスを製造するための方法を挙げることができ、ここで第1のモノマーの第2のモノマーとの反応は、約33℃~約60℃の間の反応温度で起こる。加えてまたはあるいは、モノリスを製造するための方法は、約0.5時間~約8時間の反応時間で行うことができる。例えば、本開示の例示的な一実施形態には、第1のモノマーおよび第2のモノマーを約1時間~約5時間の反応時間で反応させることを挙げることができる。
【0046】
[0062]例示的な一実施形態では、モノリスを製造するための方法は、反転試験を使用して反応時間を決定するステップをさらに含むことができる。この実装について、反転試験は、第1のモノマーおよび第2のモノマーをある期間反応容器中で反応させること、期間に達した際に反応容器を反転させること、また、反応容器を反転する際に反応容器中でモノリスが保持されるかに少なくとも一部基づいて、自己支持形構造が形成されたかどうかを決定することを含むことができる。ある特定の実装では、期間がより長いかまたはより短いものであり得るかどうかを決定するために、反転試験を反復して行うことが有用であり得る。これらの実装について、自己支持形構造が形成されるかどうかを決定することには、モノリスが反転の間に保持されるかどうかに基づく判断を挙げることができる。モノリスが保持される場合、期間を低減して反転試験を繰り返すことがある。そうでない場合(すなわち、モノリスが保持されない場合)、期間を増大して反転試験を繰り返すことがある。一部の実装では、反復の回数が設定されることがある。一部の実装では、反復の回数は、収束に基づくことがある(例えば、前の反復において期間が増大され、現在の反復で期間が低減された場合、試験は収束されている)。加えて、期間が増大または低減される量は固定的であってもよく、または変化させることができ、よって単一の値のみに限定されることは意図されない。
【0047】
[0063]本開示の別の実施形態には、各々が粗表面を有する複数の粒子を形成するための方法であって、結合してフレームワークを形成する第1のモノマーおよび第2のモノマーを含む三次元構造を機械的に崩壊させるステップを含む、方法を挙げることができる。
【0048】
[0064]ある特定の実装について、三次元構造を機械的に崩壊させるステップには、三次元構造を含有する溶液をボルテックスすること、溶液中のゲル形態もしくは溶液中にないキセロゲル形態のいずれかで三次元構造を研磨すること、またはこれらの組合せを含むことができる。一例として、本明細書中の例示的な実施形態において記載されるような溶液中に形成されたモノリスゲルは、ボルテックスされて複数の多分散粒子を形成することができる。本明細書で使用される場合、ボルテックスは、溶液中に流れを生成して溶液をモノリスと接触させて撹拌することができるデバイスまたは装置により達成することができる。本明細書で使用される場合、研磨は、モノリスと直接接触して三次元構造を崩壊または修飾するデバイスまたは装置により達成することができる。よって、三次元構造を崩壊させることはモノリスに直接接触することを要することを必要とせず、モノリスを取り巻く流体を撹拌すること、および/またはモノリス自体に力を直接適用することを挙げることができる。
【0049】
[0065]一般に、三次元構造を機械的に崩壊させるステップは、粗表面を有する粒子の多分散混合物をもたらす。ある特定の実装では、多分散粒子を分離して、各々が粗表面を有する単分散粒子の群を形成することが有利であり得る。多分散混合物を分離する例示的な方法には、沈降を挙げることができ、これはより軽い粒子をより重い粒子と比較して流体流の方向に沿ってさらに運搬するために、流体流と組み合わせて使用することができる。加えてまたはあるいは、径選択穴(size selective hole)を有するふるいを使用して多分散混合物を分離することができる。
【0050】
[0066]本開示の別の例示的な実施形態には、粗表面を有する粒子に担持させるための方法が挙げられる。粗表面を有する粒子に担持させるための例示的な実施形態には、モノリスに由来する複数の粒子を化合物または前駆体に提供することを挙げることができ、前駆体は条件への曝露時に化合物への変換を受ける。
【0051】
[0067]粗表面を有する粒子に担持させるための実装では、粒子は、化合物または前駆体を含有する溶液中に存在してもよい。ある特定の実装では、化合物または前駆体の濃度は約5wt%~約30wt%であることができる。例示的な一実装では、化合物または前駆体の濃度は約10wt%~約15wt%であることができる。
【0052】
[0068]加えて、粗表面を有する粒子に担持させる一態様には、担持温度を挙げることができる。例示的な一実装では、担持温度は約0℃~約40℃の間であることができる。別の例示的な実装では、担持温度は約15℃~約25℃の間であることができる。
【0053】
[0069]本開示の別の実施形態では、前駆体は、ニトリトまたはニトリト含有化合物であることができる。ニトリトまたはニトリト含有化合物のいくつかの非限定的な例には、ニトログリセリンまたは亜硝酸塩、例えば亜硝酸ナトリウムまたは亜硝酸カリウムを挙げることができる。
【0054】
[0070]本開示の一実施形態では、前駆体を化合物へと変換するための条件には、酸を挙げることができる。一実装では、酸には、有機酸(例えばグリコール酸、酢酸、酒石酸または乳酸)を挙げることができる。加えてまたはあるいは、酸には、無機酸(例えば塩酸、硫酸、リン酸等)を挙げることができる。
【0055】
[0071]本開示の別の例示的な実施形態には、化合物または前駆体を担持した複数の粒子を含有する媒質を含む医薬品および/または化粧用組成物が挙げられる。例示的な一実施形態では、化合物または前駆体を担持した複数の粒子は、本開示の実施形態において記載されるようなモノリスに由来する粒子から形成することができる。ある特定の実装では、媒質には石油製品を挙げることができる。石油製品のいくつかの非限定的な例には、メチルパラベン、鉱物油、ミリスチン酸イソプロピル、白色ワセリン、乳化ワックスおよびプロピルパラベンまたはそれらの組合せが挙げられる。加えてまたはあるいは、一部の実装では、媒質には天然物を挙げることができる。天然物のいくつかの非限定的な例には、ミツロウ、ソイワックス、植物由来の油、セルロース、グアーガムおよびそれらの組合せが挙げられる。
【0056】
[0072]いくつかの実装では、媒質は水および界面活性剤をさらに含むことができる。ある特定の実装では、界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、双性イオン性、非イオン性またはこれらの組合せであることができる。本開示の実施形態において使用することのできる非イオン性界面活性剤のいくつかの非限定的な例には、アルコール(例えば1-オクタノール)、脂肪酸(例えばパルミチン酸)、および脂肪酸エステル(例えばモノステアリン酸グリセロール)が挙げられる。
【0057】
[0073]本開示の別の例示的な実施形態には、化合物を局所領域へと送達するための方法が挙げられる。例示的な一実装では、化合物を局所領域へと送達するための方法は、疾患を有するかまたは障害と診断されている患者を処置するために使用することができる。例えば、本開示の一実施形態には、障害と診断されている患者を処置するための方法であって、患者の局所領域に粗表面を有する複数の粒子を含有する組成物を投与するステップを含む、方法を挙げることができる。例示的な一実装では、局所領域への組成物の投与が化合物の放出を引き起こすように、化合物または前駆体を複数の粒子に担持させることができる。ある特定の実装では、放出は、化合物の少なくとも50%が60秒未満で送達されるような、実質的に即時的なものである。一部の実装では、放出は、化合物の少なくとも50%が300秒未満で送達されるような、持続的なものである。
【0058】
[0074]実質的に即時的な放出を達成するために、化合物を担持した複数の粒子を含有する組成物の投与と組み合わせて、促進剤を使用することができる。
[0075]一般に、本開示の実施形態は、本明細書において開示されている他の実施形態と合わせるか、または併せて使用することができる。例えば、粗表面を有する複数の粒子を含有する組成物は、モノリスに由来する粒子を含むことができ、モノリスは第1のモノマーおよび第2のモノマーを含む。加えて、粒子には、粒子の一部と物理的または化学的に関連することができる化合物または前駆体を含めるために記載される方法のいずれかを使用して、担持させることができる。
【0059】
[0076]例示的な一実装では、局所領域には、患者の身体の一部、例えば皮膚(例えば顔、胴体、肢、手、爪および足)および/または粘膜(例えば口、洞、直腸および膣)を挙げることができる。一部の粒子が局所領域から移動し得るかまたはそうでなければ除去され得るが、本開示のある特定の実施形態の態様は、大半の粒子の保持の改善をもたらすことができる。例えば、粗表面を有する粒子を含む組成物は、軟部組織の表面に埋め込むことができ、これは全身障害および疾患よりもむしろ局所を処置するための利益、または感染部位または汚染部位に抗菌剤を提供するための利益を提供することができる。
【0060】
[0077]化合物を送達するための方法を含む本開示の実施形態では、粗表面を有する粒子は、化合物についての放出速度をさらに含むことができ、それにより化合物の所定量を時間をかけて送達する。例示的な一実装では、化合物の量を期間にわたり放出することができる。例えば、化合物の85%を36時間後に放出することができる。よって、この例については、化合物の量は、投与前に粒子中に含有される量に対して85%であり、期間は36時間である。本開示の実施形態では、化合物の量は約5%~約100%(完全な送達)であることができ、期間は約0.5時間~約36時間であることができる。
【0061】
[0078]一部の事例では、放出速度は、放出条件を使用して修飾または調節することができる。例えば、
図4Aおよび4BはNOの即時的な放出およびNOの累積的な放出をそれぞれ示すグラフを示す。これらのグラフは、加速条件(例えば光、酸および/または熱への曝露)下および水溶液中で決定された。対照的に、
図13A、13B、15Aおよび15Bは、生理学的に妥当な条件を使用して得られた。
【0062】
[0079]一部の実施形態では、化合物を送達することには、粗表面を有する複数の粒子を使用してNOを送達することを挙げることができる。例えば、例示的な一実施形態には、NOを担持した、NOの85%が約36時間後に放出されるような放出速度を有する複数の粒子を含有する組成物を患者に投与することを挙げることができる。別の例示的な実施形態には、NOを担持した、NOの少なくとも50%が約10時間後に放出されるような放出速度を有する複数の粒子を含有する組成物を患者に投与することを挙げることができる。追加の例示的な一実施形態には、NOを担持した、NOの少なくとも25%が約3時間後に放出されるような放出速度を有する複数の粒子を含有する組成物を患者に投与することを挙げることができる。
【0063】
[0080]ある特定の利益は、パッチの使用の必要なしに粒子を皮膚または粘膜を含む部位に投与することにより認識され得る。一般に、本明細書において記載される粒子は、限定されるものではないが、経皮、吸入、経口、局所注射および静脈内導入を含む様々な局所または全身の送達の経路により、対象に送達することができる。粒子は、例えばクリーム剤、軟膏剤、経皮パッチ、埋め込み可能な生物医学デバイスまたはスクラブ中に組み込むことができる。
【0064】
[0081]本開示の追加の一態様には、対象における感染を処置するための方法であって、感染を処置するのに有効な量および様式で、NOを担持した粒子またはそれを含む組成物を対象に投与するステップを含む、方法を挙げることができる。感染部位に依存して、粒子は局所または全身に投与することができる。
【0065】
[0082]「感染」という用語は、感染症をもたらすことのある感染を含むために使用される。感染症には、伝染病および接触伝染病が含まれ得る。本明細書で使用される場合、感染を処置することは、感染を排除すること、感染のサイズを減少させること、感染が対象中で拡散することを予防すること、または対象中の感染のさらなる拡散を減少させることを意味することができる。
【0066】
[0083]感染は、例えば細菌、ウイルス、真菌または寄生虫感染であることができる。細菌感染は、Staphylococcal感染であることができる。細菌感染は、例えば細菌、例えばS.aureus、多剤耐性またはメチシリン耐性S.aureus(MRS A)、P.aeruginosa、B.circulans、B.cerius、E.coli、P.vulgaris、P.acnes、S.pyognenus、S.enterica、V.angulillarum、K.pneumoniae、P.piscicida、P.aeruginosa、A.tumefaciens、C.micgiganence、A.mali、E.chourysanthemi、X campestris、C.diplodiella、P.piricoloa、M.tuberculosisおよびM ulceransにより引き起こされることがある。真菌感染は、例えば真菌、例えばT.equinum、C.Albicans、F.oxysporum、R.solani、B.cinereal、T.rubrumおよびA.flavusにより引き起こされることがある。ウイルス感染は、例えばウイルス、例えばM.contagiosum、Rota、Papilloma、ParvoおよびVaricellaにより引き起こされることがある。寄生虫感染は、例えばPlasmodium、Leishmania、Schistosoma、Austrobilharzia、Heterobilharzia、OrnithobilharziaまたはCryptosporidium属、例えばP.falciparumの寄生虫により引き起こされることがある。
【0067】
[0084]本開示の追加の一態様には、対象において血管新生、血管拡張、平滑筋弛緩、創傷治癒、勃起機能または発毛を促進するための方法であって、血管新生、血管拡張、平滑筋弛緩、創傷治癒、勃起機能または発毛を促進するのに有効な量および様式で、NOを担持した粒子またはそれを含む組成物を対象に投与するステップを含む、方法を挙げることができる。
【0068】
[0085]本開示のさらなる一態様には、対象における疾患または障害を処置するための方法であって、高血圧、末梢血管疾患、血小板凝集、勃起不全、虚血、炎症、創傷、膿瘍、強皮症および鎌状赤血球貧血を処置するのに有効な量で、NOを担持した粒子またはそれを含む組成物を対象に投与するステップを含む、方法を挙げることができる。
【0069】
実施例1
[0086]実施例1は様々な方法および手順を議論し、本明細書において提供される図面および説明と併せて理解され得る例示的な実施形態を提供する。本開示は提供された実施例のみに限定されず、開示される条件および材料は例示的であることを理解されたい。
【0070】
方法
2ポットシリカゲルモノリス合成
[0087]メルカプトプロピル官能基を含有するシリカゾル-ゲルモノリスを、シリカモノマーであるテトラエトキシシラン(TEOS)および3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(mercaptoproyltrimethoxysilane)(MPTS)の独立した加水分解を行い、モノマー縮合を続けて橋架けネットワーク(spanning network)を形成することにより、合成した。縮合に続けて、ボルテックスミキサーの高設定での適用により(この混合工程は、以下で「ボルテックス」または「ボルテックスすること」と称される)、モノリスを別々のシリカ粒子へと分散させた。この例では、MPTSのモル%は37.4%(残りはTEOS)であるが、異なる機械的特性のゾル-ゲルモノリスは、5%~80%(残りはTEOS)の範囲のMPTSのモル%で形成することができる。この様式でのモノリス強度の変動は、様々な平均粒径および径分布を得る粒子変換工程に影響を与える方法として採用することができる。
【0071】
[0088]MPTSおよびTEOSの加水分解反応は異なる時間の長さで進むため、各反応の開始を、両方の加水分解反応が同時に終了するように調整した。MPTSの加水分解を、以下:3.2ミリリットル(ml)のメタノール;0.655mlの脱イオン化(DI)H
2O;0.153mlの0.1N塩酸(HCl);および0.4mlのMPTSを合わせることにより開始し、ボルテックスして十分に混合した。MPTSの加水分解反応を、室温(RT)で90分乱されずに進めた。TEOSの加水分解を、MPTSの加水分解を開始した30分後に、以下:1.24mlの無水エタノール;0.655mlのDI H
2O;0.073mlの0.1N HCl;0.8mLのTEOSを別々の容器中で合わせることにより開始し、ボルテックスして十分に混合した。TEOSの加水分解反応を、60分、RTで乱されずに進めた。各加水分解反応の終了は同時に起こった。加水分解の終了時、MPTSおよびTEOSの加水分解物を合わせ、ボルテックスして混合した。次に、縮合(ゾル-ゲルモノリス橋架けネットワーク形成)を、5.8mlのリン酸ナトリウム緩衝液(0.1M、pH7.4)を添加し、ボルテックスして十分に混合することにより、開始した。透明~曇り~不透明な白色への色の変化(
図1A~D)により明らかになるように、モノリス橋架けネットワークがおよそ5分後に形成した。ゾル-ゲルモノリスを含有する容器を、縮合の開始の15分後に40℃の水浴に移し、そこで4時間、縮合が完了するまで乱されずに保持した。続いて、シリカゾル-ゲルモノリスをボルテックスしてゲルを崩壊させることにより粒子へと分散させ、材料を粘性の粒子懸濁液へと変換した(
図1G~H)。分散した粒子を、脱イオン化H
2Oを用いて、水中に分散させWhatmanグレード1濾紙を備えたブフナー漏斗中で真空濾過することにより、3回洗浄した。しかし、粒子の洗浄は任意である。3回目の濾過の後、生成物を室温で少なくとも2時間、または30分の期間にわたり重量の変化がないことにより示されるように完全に乾燥するまで真空乾燥した。乾燥が完了した後、生成物を濾紙から回収し、秤量して収率を評価し、続けて特徴付けまたは使用までRTで保管した。
【0072】
[0089]合成したシリカ粒子を、いくつかの方法で特徴付けした。走査型電子顕微鏡検査法(SEM)を利用して、粒子の形態学を可視化し、およその径を決定した(
図2A~2C)。SEM画像は、径分布が比較的狭く、不規則な円形であるが球状の形態学を有しない、凝集した粒子を示した。これらの粒子は再懸濁の際にさらに分散することに留意されたい。水和および分散した粒子の粒径分布をレーザー回折粒径分析器(Beckman Coulter LS 13 320)を使用して定量的に決定すると、3μm前後の平均粒径を示した(
図3)。一酸化窒素(NO)の収容能力を、分散粒子をモル当量の亜硝酸ナトリウムおよび1モルの塩酸とともに混合することにより粒子上にR-SNO基を形成させることにより決定し、続けてEcoPhysics CLD60化学発光NO分析器上で測定した。NOの担持量を、粒子のmgあたりの放出されたNOのモルとして決定した。NOの放出プロファイルおよび累積的な放出曲線を
図4A~4Bに示す。合計のNOの担持効率は、理論的なチオール担持量の50~63%であるか、または粒子のmgあたり最大で約2.8μmolのNOであると決定された。SNO粒子合成の4つのバッチについての粒径、収率およびNOの担持量についての関連する値の列挙は、表1において見出すことができる。
【0073】
【0074】
1ポットシリカゲル合成
[0090]試薬の量および条件は、TEOSの加水分解のための試薬をMPTSの加水分解が進行中の容器に直接添加し、リン酸緩衝液をこの容器に直接添加して縮合を開始したことを除き、2ポットシリカゲル合成において記載したものと同じであった。37.4%のMPTS(残りはTEOS)を用いると、1ポット合成は、2ポット合成手法により合成された粒子と類似した収率、粒径分布およびS-ニトロソ化効率を有するシリカ粒子を生じた。2ポットおよび1ポット合成の各々のn=3のバッチについての収率、粒径およびNOの収容能力についての平均値を、表2において比較する。これは、1ポット手法をシリカゾル-ゲルモノリスの合成において採用して、標準的な2ポット手法と類似した特性でメルカプトプロピル官能化粒子を生成することができることを示す。
【0075】
【0076】
縮合/ゲルエージング時間および温度の変動
[0091]ゾル-ゲル縮合/エージング時間を計画的に変動させて、2つの縮合温度である室温および40℃での、ゾル-ゲルモノリスの剛性および結果として生じた収率、粒径およびNOの担持能力に対するその効果を決定した。メルカプトプロピル官能化シリカゾル-ゲルモノリスを、縮合/ゲル時間を30分~96時間まで計画的に変動させ、室温(RT)または40℃で行うことを除いて、実施例1に記載される2ポット手法を使用して合成した。ゾル-ゲルモノリスを形成し、粒子への分散の前に以下の時間:30分、1時間、90分、2時間、4時間、24時間、96時間で縮合を進めた。ゲルの剛性を、各時点で、モノリスを含有する容器を反転してゲルが管の底部に浮遊したままであるかどうかを観察することにより評価した。各時点で、分析の前にゲルを分散させ、洗浄/濾過し、乾燥させた。RTでの縮合は、40℃での縮合よりも明白に剛性のゲルを生じ、これは初期の縮合時間で最も明らかであったが、すべての時点において顕著であった(
図5A~5J)。40℃での縮合は縮合の30分後でさえゲルを生じたが、ゲルは剛性でなく、4時間の縮合時間まで管の上部に浮遊したままではなかった。4時間以上の縮合についてさえも、管の最小限の振盪はゲルの落下を引き起こすのに十分であり、より弱いゲルであることを示した。
【0077】
[0092]粒子の収率は初期の縮合時間から高く、縮合時間とともに約95%まで僅かに増大した(
図6A)。粒径分析は、両方の縮合温度について、粒径が縮合時間とともに、径が3μm前後の直径でプラトーに達するまで低減することを示した(
図6B)。とりわけ、このプラトーは40℃でRTよりもはるかに短い縮合時間で達成され、粒径およびゲルの剛性が縮合時間とともに変化するが、より剛性のゲルは必ずしもより小さい粒子を生じないことを示した。加えて、NOの担持量および放出の分析は、NOの担持量が縮合時間とともに2.8μmolのNO/粒子のmgに近いプラトーで増大することを示した(
図6C)。粒径と同様に、このプラトーは40℃でRTよりも短い縮合時間で達成され、縮合温度がNOの担持量に影響を与えることができることを示した。NOの担持量の結果は、文献と一貫して、ゲルのエージングが動的な工程であり、粒子への崩壊の前にゲル中に組み込まれることとなるMPTSの画分が時間をかけて変化し続けることを示した。サイズ統計、収率および一酸化窒素の担持量についてのデータを、すべての試料について表3にまとめる。
【0078】
【0079】
ゾル-ゲルモノリスの特性に対するMPTS/TEOS比の効果
[0093]ゾル-ゲルモノリスが形成するMPTS/TEOS比の範囲および結果として生じたモノリスの特性を調査した。ゾル-ゲルモノリスを、実施例1に従って2ポット合成により合成したが、MPTSとTEOSとの比を変動させた。MPTSのモル%を、10%~80%に変動させた(残りはTEOS)。0~60%のMPTSのモルパーセンテージについて形成されたゾル-ゲルモノリスを評価した。0~30%のMPTS画分は、ボルテックス混合の際に分散しない、より剛性でより透明なゾル-ゲルモノリスを生じた。色は、MPTS画分が低減するにつれてますます透明となった。37~60%のMPTS画分は様々な剛性の不透明な白色のゾル-ゲルモノリスを生じ、剛性はMPTSの増大に伴い低減した。35~40%のMPTS画分のみが典型的な比較的剛性のゾル-ゲルを形成し、MPTS画分が増大すると、密度は高いがより弱いゲルを生じることに留意されたい。
【0080】
[0094]モノリスを、それぞれのモノリスの特性に応じて異なる方法により粒子へと分散させた。不透明な白色のモノリスを形成した37~60%のMPTSの範囲でのゾル-ゲルモノリスを、ボルテックスにより分散させ、乾燥前に3回洗浄/濾過した。硬質でより透明なゲルを形成したモノリスは、ボルテックスのみにより分散させることができなかった。0~10%のMPTSの画分を、すすいで乾燥させる前に、スパチュラを用いて手動で崩壊させた。20~30%のMPTSの画分は、分散させるために、ボルテックスする前に脱イオン化(DI)H2Oの添加および振盪を必要とした。モノリスを生じなかったMPTSの画分でのゾル-ゲルもボルテックスして混合し、次に3回洗浄して乾燥させた。
【0081】
[0095]
図11は、結果として生じた粒子の特徴付けの結果を含有する。各MPTS/TEOS比についての収率を算出すると、モノリスの特性に関わらず同様に高いことが判明した。しかし、粒径は有意に変動した。より剛性のモノリスについては、粒径はより大きく(約250μm)、モノリスに由来する粒子はより顆粒状でガラス質の特徴を示した。モノリスが形成しなかったMPTS/TEOS範囲(MPTS>60%)では、結果として生じた生成物は密度が高く粘着質であり、粒子へと分散しなかったため、さらに分析しなかった。
【0082】
[0096]NOの担持量およびニトロソ化効率も評価した。NOの担持量は、5~40%のMPTSの範囲でのMPTS画分の増大に伴い増大したが、次に40を超えると低減した。これは、NOの担持の差異としても言い換えられる様々なモノリスおよび結果として生じた粒子の特性を達成するために、MPTS/TEOS比を選択できることを示す。
【0083】
シミュレートされた皮膚条件を使用したNOの放出
[0097]局所塗布される場合に起こるであろう拡散をシミュレートするために、NOを担持した粒子を含む組成物からのNOの放出を評価した。このシミュレーションのために、NOを担持した乾燥した粒子を含む組成物を、石油ビヒクル中に組み込んだ。組成物は、無水ワセリン送達ビヒクルとともに混合された乾燥S-ニトロソ化粒子を含み、粒子は組成物の25重量%で存在した。組成物を次に、6cm2の表面積を有する一片のワックス紙にすぐに塗布し、薄く広げて局所塗布をシミュレートした。ワックス紙を次に、34℃に保ったサンプリングチャンバーへと移し、NOの放出をモニタリングした。サンプリングチャンバーを外部照明から隔離し、調節可能な設定で高精度のLED顕微鏡の白色光ランプ下(AmScope LED-6WD)に置き、ルクスを、デジタルルクス計(Dr.Meter、モデル:LX1010B)を使用して測定した。一酸化窒素のレベルを、60時間の期間で毎分測定した。
【0084】
水性条件でのNOの放出
[0098]代わりの送達経路、例えば静脈内投与をシミュレートするために、水性条件でのNOの放出を評価した。これについては、S-ニトロソ化粒子の50mgのアリコートを、一酸化窒素分析器に接続された37℃のサンプリングチャンバー中の5mLのリン酸緩衝液に添加した。一酸化窒素のレベルを、12時間の期間で30秒毎に測定した。
【0085】
結果
[0099]図面中に示され本明細書において記載される結果は例示的であることを意味し、方法および組成物を、努力傾注分野の当業者により理解されるであろう修正物または代替物に限定することを意図されない。
【0086】
[0100]ここで、ゾル-ゲルモノリス縮合の進行を例示する
図1A~1Hを参照する。示された画像は、縮合の開始後(A)1分、(B)3分、(C)5分、(D)10分時点のものである。縮合の終了時(4時間、40℃)、ゾル-ゲルモノリスは不透明な白色であり、反転した場合に管中で保持される(E~F)。ボルテックスによるゾル-ゲルの崩壊はモノリスを粒子へと分散させ(G~H)、これは液体形態を呈した。
【0087】
[0101]ここで、モノリスに由来する粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を例示する
図2A~2Cを参照する。画像は、(A)1500×、(B)4000×および(C)60000×の倍率を含む、様々な倍率で示される。画像中に示された粒子は、不規則であり、およそミクロンスケールの突出を含む粗表面を示す。
【0088】
[0102]ここで、モノリスに由来する例示的な粒子を特徴付けるデータを示す
図3を参照する。グラフは、0.017μm~2000μmの径分布を示す。さらに、分布は、2.956μmの平均径および2.561のメジアン径、2.030μmの標準偏差(SD)、0.661μmの下方の10パーセンタイル、2.561μmの50パーセンタイル、および5.901μmの上方の90パーセンタイルを示す。
【0089】
[0103]ここで
図4Aおよび4Bを参照し、示されたグラフは、モノリスに由来する代表的なニトロシル化シリカ粒子についての(A)即時的なNOの放出(ppm)および(B)累積的なNOの放出(nmol/粒子のmg)を測定した例示的な放出プロファイルを示す。これらの放出プロファイルは、熱および光を使用した溶液中の加速条件下で得た。これらのグラフについては、試料を調製した後、NO濃度をモニタリングするために溶液をチャンバーに入れた。チャンバーを明るい白色光で照らし、チャンバーの温度を70℃に保った。
【0090】
[0104]ここで
図5A~5Jを参照し、示された画像は、(A~E)0℃または(F~J)40℃での経時的なゾル-ゲルモノリスの進行の写真を示す。反転試験に基づくと、ゲルは室温で40℃よりも急速に固化する。
【0091】
[0105]ここで
図6A~6Cを参照し、示されたグラフは、シリカ粒子の(A)縮合時間および温度の関数としての収率、(B)縮合時間および温度の関数としての径、および(C)異なる縮合時間および温度を使用して調製されたS-ニトロシル化粒子のNOの収容能力を示す。
【0092】
[0106]ここで
図7A~7Cを参照し、示された画像は、(A)媒質単独および(B~C)硫黄官能化シリカ粒子を有する媒質についての、蛍光標識されたシリカ粒子を含む石油ベースの媒質の死体のヒトの皮膚上への塗布を示す、全体の皮膚のグレースケールの画像を示す。
図7D~7Fは、それぞれ
図7A~7Cをカラーで示す。
【0093】
[0107]ここで
図8A~8Cを参照し、示された画像は、
図7A~Cにそれぞれ示された試料についての組織断面を示し、(A)明視野、(B)蛍光、ならびに(C)
図8Bおよび8Cの重ね合わせにおける皮膚浸透を示す。
図8D~8Fは、それぞれ
図8A~8Cをカラーで示す。
【0094】
[0108]ここで
図9を参照し、画像は、ヒトの皮膚に塗布されたモノリスに由来する蛍光標識されたシリカ粒子についての蛍光強度を追跡したグラフを示す。グラフは、皮膚領域がテープストリップを数ラウンド受けた後の検出可能な蛍光を測定した。塗布およびテープストリップの除去はフルオレセインを減少させることが可能であるが、データは、10ラウンドのテープストリップ後にも依然として蛍光標識された粒子を検出することができることを示し、これは皮膚上層中のいくつかの粒子の埋め込みを示す。
【0095】
[0109]ここで
図10を参照し、画像は、モノリスに由来するシリカナノ粒子についてのBET分析を示す。分析は、窒素ガスを使用し、Autosorb(登録商標)iQ Station 1デバイスを使用して行った。
図10に関するさらなる情報は
図11に含められ、これはデータ削減パラメーター(data reduction parameters)の要約、マルチポイントのBETデータおよび要約を含む。
【0096】
[0110]ここで
図12を参照し、画像は、表に示されるMPTS/TEOSの比を使用して作製されたモノリスから形成された粒子を特徴付ける情報を提供する表を示す。
[0111]ここで
図13Aおよび13Bを参照し、これらの画像はそれぞれ、NOを担持した25重量%の粒子を含有する150mgの軟膏剤の1回の塗布の後の時間に対する、NOのppmの濃度およびNOの放出速度を示す。示されるように、放出はほぼ指数関数的な低減を示し、NOの検出可能な濃度は48時間後でさえ存在する。
図14Aおよび14Bは、最大144時間での24時間毎の新たに調製された軟膏剤の連続的な塗布により、放出プロファイルを再現することができることを示すグラフを示すが、この傾向はおそらく必要なだけの多数の用途にわたり再現することができる。これらの実験は新たに調製された軟膏剤を用いて行われるが、ニトロソ化粒子が軟膏剤中に組み込まれた後、軟膏剤は0℃に保たれた冷凍庫中で少なくとも3カ月、NOを有意に失うことなく保管することができる。
【0097】
[0112]ここで
図15Aおよび15Bを参照し、これらの画像は、方法のシミュレートされた皮膚条件を使用したNOの放出の項において記載される条件を使用して測定した場合の、NOの放出速度および累積的な放出を示すグラフを示す。グラフは、生理学的に妥当な条件で、NOの制御放出を長期間にわたり達成することができ、NOの大部分(50%以上)が最初の12時間以内に放出されることを示す。
【0098】
[0113]ここで
図16を参照し、画像は、方法の水性条件でのNOの放出の項において記載される条件を使用して測定した場合の、累積的なNOの放出を示すグラフを示す。グラフは、NOの放出は溶液中では局所投与と比較してより速く、NOの大部分(50%以上)が最初の3時間以内に放出されることを示す。
【国際調査報告】