(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-21
(54)【発明の名称】CGRP阻害剤の鼻腔内医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20230214BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230214BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20230214BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230214BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230214BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230214BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230214BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230214BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230214BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20230214BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230214BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20230214BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230214BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20230214BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230214BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20230214BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20230214BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20230214BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20230214BHJP
A61P 25/36 20060101ALI20230214BHJP
A61P 25/32 20060101ALI20230214BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230214BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230214BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230214BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230214BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20230214BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230214BHJP
A61M 11/00 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K31/496
A61P1/04
A61P1/16
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A61P17/00
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A61P19/02
A61P21/04
A61P25/06
A61P25/04
A61P25/08
A61P25/36
A61P25/32
A61P29/00 101
A61P35/00
A61P43/00 111
A61K9/08
A61K9/72
A61K47/10
A61M11/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535816
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(85)【翻訳文提出日】2022-06-13
(86)【国際出願番号】 US2020065452
(87)【国際公開番号】W WO2021127070
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517178900
【氏名又は名称】バイオヘイブン・ファーマシューティカル・ホールディング・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biohaven Pharmaceutical Holding Company Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】コリック,ウラディミール
(72)【発明者】
【氏名】コンウェイ,チャールズ,エム.
(72)【発明者】
【氏名】クロープ,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】クマール,ラジェシュ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
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4C086ZB26
4C086ZC35
4C086ZC39
4C086ZC42
(57)【要約】
鼻腔内送達のための医薬組成物であって、医薬組成物がCGRP阻害剤を含む治療活性成分を含む、医薬組成物が提供される。CGRP阻害剤を対象に送達するための方法も提供され、方法は、CGRP阻害剤を含む治療活性構成要素を含む組成物を対象に鼻腔内投与することを含む。
【選択図】
図2D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組成物であって、前記医薬組成物が、鼻腔内で生物学的に利用可能なCGRP阻害剤を含む治療活性構成要素を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記鼻腔内で生物学的に利用可能なCGRP阻害剤が、CGRP抗体、CGRP受容体抗体、CGRP抗体もしくはCGRP受容体抗体からの抗原結合断片、CGRP注入阻害タンパク質、CGRP生体中和剤、小分子CGRP受容体拮抗薬、小分子CGRP阻害剤、またはポリペプチドCGRP阻害剤である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記小分子CGRP受容体拮抗薬が、ザベジェパント(zavegepant)、その溶媒和物、またはその薬学的に許容される塩である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記医薬組成物が、前記治療活性構成要素を可溶化するのに有効な量の薬学的に許容される可溶化剤をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記可溶化剤が、水、アルコール、またはそれらの組み合わせである、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記可溶化剤が、水である、請求項4または5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記医薬組成物が、前記対象内または対象上での投与の部位において、またはそれに近接して、前記医薬組成物に対する望ましくない応答を緩和することができる受容剤(receptivity agent)をさらに含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記受容剤が、天然甘味料、合成甘味料、香味料、芳香族化合物、矯味化合物、またはそれらの組み合わせを含む官能増強剤である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
装置であって、(a)鼻腔内で生物学的に利用可能なCGRP阻害剤を含む治療活性構成要素を含む噴霧可能な液体組成物を含むリザーバと、(b)鼻孔内に挿入するように構成された噴霧化デバイスと、(c)前記デバイスを作動させて前記組成物の液滴を前記鼻孔に送達するための手段と、を備える、装置。
【請求項10】
前記鼻腔内で生物学的に利用可能なCGRP阻害剤が、CGRP抗体、CGRP受容体抗体、CGRP抗体もしくはCGRP受容体抗体からの抗原結合断片、CGRP注入阻害タンパク質、CGRP生体中和剤、小分子CGRP受容体拮抗薬、小分子CGRP阻害剤、またはポリペプチドCGRP阻害剤である、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記小分子CGRP受容体拮抗薬が、ザベジェパント、その溶媒和物、またはその薬学的に許容される塩である、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記装置が、単回投与装置、二回投与装置、または複数回投与装置である、請求項8または9に記載の装置。
【請求項13】
CGRP阻害剤を対象に送達するための方法であって、CGRP阻害剤を含む治療活性構成要素を含む組成物を前記対象に鼻腔内投与することを含む、方法。
【請求項14】
前記CGRP阻害剤が、CGRP抗体、CGRP受容体抗体、CGRP抗体もしくはCGRP受容体抗体からの抗原結合断片、CGRP注入阻害タンパク質、CGRP生体中和剤、小分子CGRP受容体拮抗薬、小分子CGRP阻害剤、またはポリペプチドCGRP阻害剤である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記小分子CGRP受容体拮抗薬が、ザベジェパント、その溶媒和物、またはその薬学的に許容される塩である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
単回用量としての10mgのザベジェパントの前記鼻腔内投与が、前記対象において少なくとも22.5%の疼痛寛解をもたらす、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
単回用量としての20mgのザベジェパントの前記鼻腔内投与が、前記対象において少なくとも23.1%の疼痛寛解をもたらす、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
単回用量としての10mgのザベジェパントの前記鼻腔内投与が、前記対象において最も煩わしい羞明、音声恐怖、または吐き気の症状の少なくとも41.9%の寛解をもたらす、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
単回用量としての10mgのザベジェパントの前記鼻腔内投与が、前記対象において最も煩わしい羞明、音声恐怖、または吐き気の症状の少なくとも42.5%の寛解をもたらす、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
10mgまたは20mgのザベジェパントの前記鼻腔内投与が、単回投与を使用して2時間で、疼痛寛解および最も煩わしい羞明、音声恐怖、または吐き気を含む症状の寛解の同時主要評価項目で、プラセボよりも統計的に優れている、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
5mg、10mg、または20mgのザベジェパントの前記鼻腔内投与が、投薬後2~48時間持続的な疼痛寛解をもたらす、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
5mg、10mg、または20mgのザベジェパントの前記鼻腔内投与が、投薬後2~24時間持続的な疼痛寛解をもたらす、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
5mg、10mg、または20mgのザベジェパントの前記鼻腔内投与が、投薬後2~24時間持続的な疼痛緩和をもたらす、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
5mgまたは10mgのザベジェパントの前記鼻腔内投与が、投薬後2~48時間持続的な疼痛緩和をもたらす、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
CGRPの異常なレベルに関連する状態を治療または予防することを必要とする対象においてそれを行うための方法であって、治療有効量の、CGRP阻害剤を含む治療活性構成要素を含む組成物を前記対象に鼻腔内投与することを含む、方法。
【請求項26】
前記CGRP阻害剤が、CGRP抗体、CGRP受容体抗体、CGRP抗体もしくはCGRP受容体抗体からの抗原結合断片、CGRP注入阻害タンパク質、CGRP生体中和剤、小分子CGRP受容体拮抗薬、小分子CGRP阻害剤、またはポリペプチドCGRP阻害剤である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記小分子CGRP受容体拮抗薬が、ザベジェパント、その溶媒和物、またはその薬学的に許容される塩である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記状態が、急性片頭痛、慢性片頭痛、群発頭痛、慢性緊張型頭痛、薬物過剰使用頭痛、外傷後頭痛、脳震盪後症候群、脳外傷、およびめまいから選択される障害である、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記状態が、慢性疼痛、神経原性血管拡張、神経原性炎症、炎症性疼痛、神経因性疼痛、糖尿病性末梢神経因性疼痛、小線維神経因性疼痛、モートン神経腫、慢性膝痛、慢性腰痛、慢性股関節痛、慢性指痛、運動誘発性筋肉痛、がん疼痛、慢性炎症性皮膚痛、火傷による疼痛、瘢痕による疼痛、複合性局所疼痛症候群、口腔灼熱症候群、アルコール性多発ニューロパチー、慢性炎症性脱髄性多発神経根障害、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)または後天性免疫不全症候群(AIDS)関連ニューロパチー、薬剤誘発性ニューロパチー、産業性ニューロパチー、リンパ腫性ニューロパチー、骨髄腫性ニューロパチー、多巣性運動性ニューロパチー、慢性特発性感覚性ニューロパチー、がん性、ニューロパチー、急性疼痛自律神経性ニューロパチー、圧迫性ニューロパチー、血管炎/虚血性ニューロパチー、側頭下顎関節痛、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、慢性局所疼痛症候群、眼痛、および歯痛から選択される障害である、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記状態が、非インスリン依存性真性糖尿病、血管障害、炎症、関節炎、熱傷、循環性ショック、敗血症、アルコール離脱症候群、オピエート離脱症候群、モルヒネ耐性、男性および女性のほてり、閉経に伴う潮紅、アレルギー性皮膚炎、乾癬、脳炎、虚血、脳卒中、てんかん、神経炎症性障害、神経変性疾患、皮膚疾患、神経原性皮膚発赤、皮膚酒さ、紅斑、耳鳴り、肥満、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、外陰部痛、多嚢胞性卵巣症候群、子宮線維症、神経線維腫瘍、肝線維症、腎線維症、巣状分節性糸球体硬化症、糸球体腎炎、IgAニューロパチー、多発性骨髄腫、重症筋無力症、シェーグレン症候群、変形性関節症、骨関節炎変性椎間板疾患、側頭下顎関節障害、むち打ち症、関節リウマチ、および間質性膀胱炎から選択される障害である、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記皮膚疾患が、再発性ヘルペス、接触過敏症、結節性痒疹、慢性そう痒、および尿毒症性そう痒から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記状態が、慢性閉塞性肺疾患、肺線維症、気管支過敏症、喘息、嚢胞性線維症、慢性特発性咳嗽、および毒性傷害から選択される障害である、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記毒性傷害が、塩素ガス傷害、マスタードガス傷害、アクロレイン傷害、煙傷害、オゾン傷害、戦争化学物質曝露、および工業化学物質曝露から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
患者におけるCGRPの異常なレベルに関連する状態を治療するためのキットであって、
(a)請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物と、
(b)前記医薬組成物を投与するための説明書と、を備える、キット。
【請求項35】
前記医薬組成物を投与するための装置をさらに備える、請求項34に記載のキット。
【請求項36】
薬物過剰使用頭痛を治療するための方法であって、前記方法が、治療有効量の、CGRP阻害剤を含む治療活性構成要素を含む組成物を前記対象に鼻腔内投与することを含む、方法。
【請求項37】
前記CGRP阻害剤が、CGRP抗体、CGRP受容体抗体、CGRP抗体もしくはCGRP受容体抗体からの抗原結合断片、CGRP注入阻害タンパク質、CGRP生体中和剤、小分子CGRP受容体拮抗薬、小分子CGRP阻害剤、またはポリペプチドCGRP阻害剤である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記小分子CGRP受容体拮抗薬が、ザベジェパント、その溶媒和物、またはその薬学的に許容される塩である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
外傷後頭痛を治療するための方法であって、前記方法が、治療有効量の、CGRP阻害剤を含む治療活性構成要素を含む組成物を前記対象に鼻腔内投与することを含む、方法。
【請求項40】
前記CGRP阻害剤が、CGRP抗体、CGRP受容体抗体、CGRP抗体もしくはCGRP受容体抗体からの抗原結合断片、CGRP注入阻害タンパク質、CGRP生体中和剤、小分子CGRP受容体拮抗薬、小分子CGRP阻害剤、またはポリペプチドCGRP阻害剤である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記小分子CGRP受容体拮抗薬が、ザベジェパント、その溶媒和物、またはその薬学的に許容される塩である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
脳震盪後症候群を治療するための方法であって、前記方法が、治療有効量の、CGRP阻害剤を含む治療活性構成要素を含む組成物を前記対象に鼻腔内投与することを含む、方法。
【請求項43】
前記CGRP阻害剤が、CGRP抗体、CGRP受容体抗体、CGRP抗体もしくはCGRP受容体抗体からの抗原結合断片、CGRP注入阻害タンパク質、CGRP生体中和剤、小分子CGRP受容体拮抗薬、小分子CGRP阻害剤、またはポリペプチドCGRP阻害剤である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記小分子CGRP受容体拮抗薬が、ザベジェパント、その溶媒和物、またはその薬学的に許容される塩である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
めまいを治療するための方法であって、前記方法が、治療有効量の、CGRP阻害剤を含む治療活性構成要素を含む組成物を前記対象に鼻腔内投与することを含む、方法。
【請求項46】
前記CGRP阻害剤が、CGRP抗体、CGRP受容体抗体、CGRP抗体もしくはCGRP受容体抗体からの抗原結合断片、CGRP注入阻害タンパク質、CGRP生体中和剤、小分子CGRP受容体拮抗薬、小分子CGRP阻害剤、またはポリペプチドCGRP阻害剤である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記小分子CGRP受容体拮抗薬が、ザベジェパント、その溶媒和物、またはその薬学的に許容される塩である、請求項46に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年12月17日に出願された米国仮特許出願第62/949351号の優先権、および米国特許法第119条の下でそこから生じるすべての利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)拮抗薬の鼻腔内医薬組成物およびそれらの送達方法に関する。組成物および方法は、片頭痛などのCGRP関連障害を治療するために使用され得る。
【背景技術】
【0003】
片頭痛は、吐き気もしくは嘔吐、ならびに/または音に対する感受性(音声恐怖)および光に対する感受性(羞明)に関連する中程度から重度の疼痛強度の典型的には一側性の脈動性頭痛を含む、複数の症状を伴う4~72時間にわたる再発性発作を特徴とする慢性および衰弱性の障害である。片頭痛は、多くの場合、前兆として知られる一過性の神経学的警告症状が先行し、これは、典型的には、点滅光などの視覚障害を伴うが、身体の一部にしびれまたは刺痛を伴う場合もある。片頭痛は、広範囲にわたるだけでなく障害ももたらす。Migraine Research Foundationは、片頭痛を世界で3番目に一般的な病気として位置付けており、Global Burden of Disease Study 2015は、片頭痛を世界で7番目に高い障害特異的原因として位置付けている。Migraine Research Foundationによると、米国では約3600万人が片頭痛発作に苦しんでいる。ほとんどの罹患者は月に1~2回の片頭痛発作を経験するが、400万人超の人が慢性片頭痛を患っている。慢性片頭痛は、3ヶ月超にわたって、月に少なくとも15日間頭痛を経験し、そのうち少なくとも8日間が片頭痛であると定義される。他には、月に15日未満の片頭痛を経験することを特徴とする突発性片頭痛がある。突発性片頭痛を有する人は、徐々に慢性片頭痛に進行する可能性がある。片頭痛発作は、4時間または最大3日間続くことがある。片頭痛発作に苦しんでいる個人の90%超が、片頭痛発作中は働くことができないか、または正常に機能することができず、多くの人が、うつ病、不安、および不眠などの併存疾患を経験している。また、片頭痛を患っている人は、吐き気を伴うことが多く、発作中に食物または液体を摂取することを嫌う。
【0004】
CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)は、37アミノ酸神経ペプチドであり、カルシトニン、アドレノメデュリン、およびアミリンを含むペプチドファミリーに属する。ヒトでは、2つの形態のCGRP(α-CGRPおよびβ-CGRP)が存在し、同様の活性を有する。それらは3つのアミノ酸だけ異なり、差異的な分布を示す。少なくとも2つのCGRP受容体サブタイプもまた、差異的な活性をもたらし得る。CGRP受容体は、疼痛シグナル伝達経路、頭蓋内動脈、およびマスト細胞内に位置し、その活性化は、片頭痛病態生理学に因果的役割を果たすと考えられている。例えば、研究および臨床研究は、片頭痛発作中にCGRPの血清レベルが上昇し、静脈内CGRPの注入が片頭痛罹患者および非片頭痛罹患者に持続的な疼痛をもたらし、抗片頭痛薬による治療がCGRP活性を正常化することを示している。
【0005】
現在、臨床医は、片頭痛の急性治療のためにいくつかの薬理学的薬剤を使用している。American Headache Societyが2015年に発表した研究では、片頭痛の急性治療に有効であると考えられている薬物は、次のクラス:トリプタン、エルゴタミン誘導体、非ステロイド性抗炎症薬(「NSAID」)、オピオイド、および併用薬に分類されると結論付けた。片頭痛の急性治療のための現在の標準治療は、セロトニン5-HT1B/1D受容体作動薬であるトリプタンの処方である。トリプタンは、過去20年間にわたり、片頭痛の急性治療のために開発され、承認されている。トリプタンの初期導入は、片頭痛の疑われる病態生理学をより選択的に標的とする薬物への移行を示した。トリプタンは、医療提供者によりオフィス訪問で処方された抗片頭痛療法のほぼ80%を占めているが、不十分な効果または頭痛の再発などの問題は、依然として重要な臨床的制限である。実際、臨床試験の患者の約30%のみが、トリプタンを服用した後2時間で痛みがなくなる。加えて、トリプタンは、5-HT1B媒介作用による潜在的な全身および脳血管収縮のために、心血管疾患、脳血管疾患、またはいずれかの重大な危険因子を有する患者に禁忌である。また、Headache誌で発表された2017年1月の研究によると、米国の推定260万人の片頭痛罹患者は、治療オプションとしてトリプタンの可能性を制限する心血管イベント、状態、または手順を有する。したがって、既存の療法と比較して向上した患者の利益を提供する新規の片頭痛特異的薬物に対する重要な満たされていない医学的必要性が依然として存在する。
【0006】
片頭痛におけるCGRPの関与の可能性は、例えば、Biohaven Pharmaceutical Holding Company Ltd.,New Haven,CTによって開発される高度臨床候補のリメジェパント(rimegepant)(BHV-3000)およびザベジェパント(zavegepant)(BHV-3500)を含む、いくつかの化合物の開発および臨床試験の基礎となってきた。
【0007】
ザベジェパント(バゼジェパントとしても知られている)は、以下の式Iを有する第3世代の高親和性で選択的かつ構造的に独自の小分子CGRP受容体拮抗薬である。
【化1】
【0008】
ザベジェパントは、例えば、2003年12月18日に公開されたWO03/104236および2013年7月9日に発行されたUS8,481,546に記載されており、それらは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0009】
ザベジェパントは非常に可溶性の分子であるが、そのバイオアベイラビリティ特徴により、経口剤形で薬物を調製することが困難になる可能性がある。したがって、異なる投与経路によるザベジェパントおよび他のCGRP阻害剤のバイオアベイラビリティを向上させることが望ましい。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、CGRP阻害剤を含む薬学的活性構成要素を含む医薬組成物を鼻腔内投与することによる、CGRP関連状態、例えば、片頭痛または非片頭痛関連障害の治療に関する。
【0011】
実施形態において、医薬組成物が提供され、医薬組成物は、鼻腔内で生物学的に利用可能なCGRP阻害剤を含む治療活性構成要素を含む。
【0012】
別の実施形態において、装置であって、(a)鼻腔内で生物学的に利用可能なCGRP阻害剤を含む治療活性構成要素を含む噴霧可能な液体組成物を有するリザーバと、(b)鼻孔内に挿入するように構成された噴霧化デバイスと、(c)デバイスを作動させて組成物の液滴を鼻孔に送達するための手段とを含む、装置が提供される。
【0013】
別の実施形態において、ザベジェパントを対象に送達するための方法が提供され、方法は、CGRP阻害剤を含む治療活性構成要素を含む組成物を対象に鼻腔内投与することを含む。
【0014】
別の実施形態において、CGRPの異常なレベルに関連する状態を治療または予防することを必要とする対象においてそれを行うための方法が提供され、方法は、治療有効量の、CGRP阻害剤を含む治療活性構成要素を含む組成物を対象に鼻腔内投与することを含む。
【0015】
別の実施形態において、患者におけるCGRPの異常なレベルに関連する状態を治療するためのキットが提供され、キットは、(a)鼻腔内送達のための上記の医薬組成物と、(b)医薬組成物を投与するための説明書とを含む。キットは、医薬組成物を投与するための装置をさらに含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
これらおよび/または他の態様は、添付の図面と併せて以下の実施形態の説明から明らかになり、より容易に理解されるであろう。
【0017】
【
図1A】実施形態による組成物の鼻腔内投与のためのAptar Pharma Unidose Systemの画像である。
【
図1B】実施形態による組成物の鼻腔内投与のためのAptar Pharma Unidose Systemの断面画像である。
【
図2A-2F】日による血漿濃度レベルおよび実施形態による組成物での治療を示す平均血漿濃度(1ミリリットル当たりのナノグラム、ng/mL)対公称時間(時間、h)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施において当業者を支援するために、以下の詳細な説明が提供される。当業者は、本開示の趣旨または範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の実施形態に修正および変形を行うことができる。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。説明で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図するものではない。一般的に使用される辞書で定義される用語などの用語は、関連する技術分野および本開示の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されない限り、理想化されたまたは過度に形式的な意味で解釈されない。
【0019】
本出願で使用される場合、本明細書で明示的に提供される場合を除き、以下の用語の各々は、以下に記載される意味を有するものとする。追加の定義は、本出願を通じて説明される。本明細書において用語が具体的に定義されていない場合、その用語は、本発明を説明する際のその用語の使用に関連してその用語を適用する当業者によって、当技術分野において認識される意味が与えられる。
【0020】
冠詞「a」および「an」は、文脈により明らかにそうではないと指示されない限り、冠詞の文法的目的語の1つまたは2つ以上(すなわち少なくとも1つ)を指す。例として、「要素」は、1つの要素または2つ以上の要素を意味する。
【0021】
用語「または」は、「および/または」を意味する。本明細書で使用される場合、用語「含む(comprises)」および/もしくは「含む(comprising)」、または「含む(includes)」および/もしくは「含む(including)」は、記載された特徴、領域、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、領域、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を排除しないことをさらに理解されたい。
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、当業者によって決定される特定の値または組成に対する許容誤差範囲内にある値または組成を指し、それは、その値または組成がどのように測定または決定されるか、すなわち測定システムの限界に一部依存する。例えば、「約」は、当該技術分野における慣例に従って、1以内のまたは1を超える標準偏差を意味し得る。代替として、「約」は、最大10%または20%(すなわち±10%または±20%)の範囲を意味し得る。例えば、約3mgは、2.7mg~3.3mg(10%の場合)または2.4mg~3.6mg(20%の場合)の任意の数を含むことができる。さらに、特に生体系または生物学的過程に関して、この用語は、最大で1桁、または最大で5倍の値を意味し得る。本出願および特許請求の範囲において特定の値または組成物が提供される場合、別段の記載がない限り、「約」の意味は、その特定の値または組成について許容誤差範囲内であると考えるべきである。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「投与」は、当業者に既知の種々の方法および送達系のいずれかを使用して、治療薬を含む組成物を対象に物理的に導入することを指す。投与はまた、例えば、1回、複数回、および/または1つ以上の長期間にわたって行われ得、治療有効用量またはサブ治療用量であり得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「AUC」(曲線下面積)は、対象に吸収されるかまたは曝露される薬物の総量を指す。一般に、AUCは、濃度が無視できるほどになるまでの経時的な対象における薬物濃度のプロットにおいて、数学的方法により得ることができる。用語「AUC」(曲線下面積)はまた、指定された時間間隔での部分AUCを指すことができる。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「AUC[0-t]」は、時間0から最後の測定可能な濃度までの濃度-時間曲線下面積を指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「AUC[0-inf]」は、時間0から無限大までの濃度-時間曲線下面積を指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「Cmax」は、第1の用量の投与と第2の用量の投与との間の、対象の血液、血清、特定の区画、または試験領域における薬物の最大濃度を指す。用語Cmaxはまた、指定された場合、用量正規化比を指し得る。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「と組み合わせて」は、別の治療モダリティに加えた1つの治療モダリティの投与を指す。したがって、「と組み合わせて」とは、対象への他の治療モダリティの投与の前、間、または後に、1つの治療モダリティを投与することを指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される塩」は、本明細書に記載の化合物またはプロドラッグのうちの1つ以上の塩形態を指し、化合物の溶解およびバイオアベイラビリティを促進するために、患者の胃腸液または胃液への化合物の溶解性を増加させるために提示される。薬学的に許容される塩には、該当する場合、薬学的に許容される無機または有機塩基および酸に由来するものが含まれる。好適な塩としては、医薬分野で周知の多数の他の酸および塩基のうち、カリウムおよびナトリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウムおよびアンモニウム塩等のアルカリ土類金属に由来するものが挙げられる。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「対象」および「患者」は、任意のヒトまたは非ヒト動物を指す。用語「非ヒト動物」には、脊椎動物、例えば非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ならびにマウス、ラットおよびモルモットなどのげっ歯類が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。用語「対象」および「患者」は、本明細書において互換的に使用される。
【0031】
本明細書で使用される場合、薬剤(本明細書において「薬物」とも称されることがある)の用語「有効量」、「治療有効量」、「治療有効投与量」、および「治療有効用量」は、単独でまたは別の薬剤と組み合わせて使用される場合、疾患の発症から対象を保護するか、疾患症状の重症度の減少、疾患症状のない期間の頻度および期間の増加、または疾患の苦痛に起因する機能障害もしくは身体障害の防止によって証明される疾患退行を促進する薬剤の任意の量を指す。薬剤の治療有効量は、例えば臨床試験中のヒト対象において、ヒトにおける有効性を予測する動物モデル系において、またはインビトロアッセイにおいて薬剤の活性をアッセイすることによって、当業者に既知の様々な方法を使用して評価することができる。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「Tmax」は、対象の血液、血清、特定の区画または試験領域において最大濃度(Cmax)に達する薬物の投与後の時間または期間を指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「BID」は、1日2回の投薬を指す。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「CV」は、変動係数を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「GM」は、幾何平均を指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「Kel」は、消失速度定数を指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「max」は、「最大」を意味し、用語「min」は、「最小」を意味する。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「QD」は、1日1回の投薬を指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「t1/2 el」は、見かけの排出半減期を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「治療」は、対象における状態または疾患の任意の治療を指し、(i)疾患の素因があり得るが、まだそれを有すると診断されていない対象において疾患もしくは状態が発生するのを防止すること、(ii)疾患もしくは状態を阻害すること、すなわちその発症を阻止すること、疾患もしくは状態を軽減すること、すなわち状態の退行を引き起こすこと、または(iii)疾患によって引き起こされる状態、すなわち疾患の症状を改善もしくは軽減することを含み得る。治療は、他の標準的な療法と組み合わせることも、または単独で使用することもできる。対象の治療または「療法」には、疾患に関連する症状、合併症もしくは状態、または生化学的兆候の発症、進行、発達、重症度もしくは再発を逆転、緩和、改善、阻害、減速、または予防することを目的とする、対象に対して行われる任意の種類の介入もしくはプロセス、または対象への薬剤の投与も含まれる。
【0041】
CGRP関連疾患に関して、「治療」または「治療すること」は、有益なまたは所望の臨床結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のために、有益または所望の臨床結果には、以下のうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない:疾患または障害の治癒、重症度の軽減、主要な症状および他の関連する症状の強度の緩和、再発の頻度の低減、症状に罹患している人々の生活の質の向上、ならびに症状の治療に必要な他の医薬の用量の減少を含む、主要な症状の任意の態様の改善。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「鼻腔内で生物学的に利用可能なCGRP阻害剤」は、鼻腔内投与後に、1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、または95%以上のバイオアベイラビリティを有するCGRP阻害剤を指す。
【0043】
本明細書で使用する場合、用語「小分子」は、1000g/mol以下、950g/mol以下、900g/mol以下、850g/mol以下、800g/mol以下、750g/mol以下、700g/mol以下、650g/mol以下、600g/mol以下、550g/mol以下、500g/mol以下、450g/mol以下、400g/mol以下、350g/mol以下、300g/mol以下、250g/mol以下、または200g/mol以下のモル質量を有する分子を指す。
【0044】
本発明は、鼻腔内で生物学的に利用可能なCGRP阻害剤を含む、鼻腔内投与のための組成物を包含する。本発明はさらに、組成物を鼻腔内投与することによって、CGRPを調節し、CGRPまたはCGRP受容体シグナル伝達の異常なレベルに関連する医学的状態を有する患者を治療するための方法を包含する。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「CGRP阻害剤」は、CGRPリガンドまたはCGRP受容体の阻害剤であり得る化学物質を指す。したがって、用語「CGRP阻害剤」は、CGRP受容体阻害剤を包含する。CGRP阻害剤は、CGRP阻害剤またはCGRP受容体阻害剤であり得る。CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)は、37アミノ酸神経ペプチドであり、カルシトニン、アドレノメデュリン、およびアミリンを含むペプチドファミリーに属する。CGRPが片頭痛の病態生理学に関与していることを示す実質的な証拠が収集されている。CGRP阻害剤が片頭痛の治療に有効であることを証明するための臨床試験が行われた。
【0046】
CGRP阻害剤は、CGRP抗体、CGRP受容体抗体、CGRP抗体もしくはCGRP受容体抗体からの抗原結合断片、CGRP注入阻害タンパク質、CGRP生体中和剤、小分子CGRP受容体拮抗薬、小分子CGRP阻害剤、またはポリペプチドCGRP阻害剤であり得る。例えば、CGRP阻害剤は、小分子CGRP受容体拮抗薬であり得る。
【0047】
鼻腔内で生物学的に利用可能なCGRP阻害剤は、すべての薬学的に許容される塩形態で組成物に含まれ得る。薬学的に許容される塩は、対イオンが化合物の生理学的活性または毒性に著しく寄与せず、そのため薬理学的等価物として機能するものである。これらの塩は、市販の試薬を用いる一般的な有機技術に従って作製され得る。いくつかの陰イオン塩形態には、酢酸塩、アシストレート(acistrate)、ベシル酸塩、臭化物、塩化物、クエン酸塩、フマル酸塩、グルクロン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メシル酸塩、硝酸塩、パモ酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、およびシノフォエート(xinofoate)が含まれる。いくつかの陽イオン塩形態には、アンモニウム、アルミニウム、ベンザチン、ビスマス、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、リチウム、マグネシウム、メグルミン、4-フェニルシクロヘキシルアミン、ピペラジン、カリウム、ナトリウム、トロメタミン、および亜鉛が含まれる。
【0048】
本発明は、CGRP阻害剤において発生する原子のすべての同位体を含むことを意図する。同位体は、同じ原子番号であるが、異なる質量数を有する原子を含む。一般的な例として、また限定されないが、水素の同位体は、重水素およびトリチウムを含む。炭素の同位体には13Cおよび14Cが含まれる。本発明の同位体標識化合物は、一般に、当業者に既知の従来の技術によって、または本明細書に記載されるものに類似プロセスによって、さもなければ用いられる非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用して調製され得る。そのような化合物は、例えば、生物学的活性を決定する際の標準および試薬としての様々な潜在的用途を有し得る。安定した同位体の場合、そのような化合物は、生物学的、薬理学的、または薬物動態的特性を良好に修飾する可能性を有し得る。
【0049】
治療活性構成要素は、2つ以上の化合物を含んでもよく、それらの各々は、鼻腔内で生物学的に利用可能な活性医薬成分(「API」)、例えば、抗片頭痛薬であってもよい。
【0050】
医薬組成物は、鼻腔内投与に適している。これは、組成物が、治療活性構成要素の鼻腔内送達に物理的に好適な形態であることを意味する。実施形態において、組成物は、噴霧可能な液体の形態である。他の実施形態において、組成物は、半固体形態、例えば、クリーム、ゲル、または軟膏である。特定の理論に拘束されることなく、鼻腔内投与された場合のCGRP阻害剤の吸収の大部分は、鼻粘膜を介すると考えられる。
【0051】
いくつかの実施形態によれば、CGRP阻害剤は、組成物中に、少なくとも約1mg/mL、少なくとも約2mg/mL、少なくとも約3mg/mL、少なくとも約4mg/mL、少なくとも約5mg/mL、少なくとも約10mg/mL、少なくとも約15mg/mL、少なくとも約20mg/mL、少なくとも約25mg/mL、少なくとも約30mg/mL、少なくとも約35mg/mL、少なくとも約45mg/mL、少なくとも約50mg/mL、少なくとも約55mg/mL、少なくとも約60mg/mL、少なくとも約65mg/mL、少なくとも約70mg/mL、少なくとも約75mg/mL、少なくとも約80mg/mL、少なくとも約85mg/mL、少なくとも約90mg/mL、少なくとも約95mg/mL、少なくとも約100mg/mL、少なくとも約125mg/mL、少なくとも約150mg/mL、少なくとも約175mg/mL、または少なくとも約200mg/mLの濃度で存在し得る。CGRP阻害剤の濃度は、上記の値の任意の間の範囲であってもよい。例えば、CGRP阻害剤は、約1~約200mg/mL、約2~約100mg/mL、約5~約100mg/mL、または約5~約50mg/mLの濃度で存在し得る。
【0052】
CGRP阻害剤は、1日当たり約1~1000mgの用量で投与され得る。例えば、CGRP阻害剤は、1日当たり約1、5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、200、250、300、400、500、750、または1000mgの用量で投与され得る。CGRP阻害剤の1日用量は、上記の値の任意の間の範囲であってもよい。CGRP阻害剤を含む組成物は、単回用量として投与され得る。
【0053】
CGRP阻害剤は、少なくとも1週間、および必要な期間投与され得る。例えば、CGRP阻害剤は、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、または12週間投与され得る。
【0054】
本明細書で使用される場合、語句「単回用量として鼻腔内投与可能な組成物の量」は、単回用量のCGRP阻害剤を提供するために、ヒトまたは非ヒト対象の片方または両方の鼻孔に好適に投与することができる組成物の総容積を意味する。そのような量は、実用的な容量であり、任意の既知のデバイスによる投与が不可能であるほど少なくはないが、用量のかなりの部分が鼻孔に保持されないほど大きくはない。例えば、各鼻孔に1つずつ、2つのアリコートでヒト対象に投与することを意図した噴霧可能な製剤に関しては、用量当たり約0.1mL~約0.5mLの総量の、約0.05~約0.25mLの容量を各鼻孔に好適に投与することができる。一般に、鼻咽道を通るドレナージによって組成物が部分的に失われるあらゆる傾向を低減するために、可能な限り少ない容量を投与することが望ましい。したがって、特に好適な容量は、典型的には、鼻孔当たり約0.05~約0.15mLである。しかしながら、所望される場合、全用量が1つの鼻孔に投与されてもよい。
【0055】
本明細書の開示から明らかであろうように、医薬組成物は、任意の哺乳類種の対象、特にヒト対象への投与に有用である。
【0056】
組成物は、可溶化剤を含んでもよい。可溶化剤は、CGRP阻害剤のための溶媒または溶媒系を含み得、1つ以上の溶媒を含むこの溶媒系自体は、CGRP阻害剤が溶解される培地の大部分を形成し得る。可溶化剤の性質および1つ以上の溶媒を含むかどうかにかかわらず、実質的にすべてのCGRP阻害剤を可溶化するのに十分な量の可溶化剤が存在する。可溶化剤は、CGRP阻害剤を可溶化するために必要な量で存在する場合、薬学的に許容されるものでなければならない。例えば、可溶化剤は、鼻腔を覆う組織に対して毒性であってはならず、また過度の刺激を引き起こしてはならない。実施形態において、溶媒は、水、アルコール、またはそれらの組み合わせであり得る。別の実施形態において、溶媒は、水であり得る。
【0057】
組成物は、任意選択で、受容剤をさらに含む。本明細書における、用語「受容剤」は、対象に投与される医薬組成物に含まれる場合、対象内または対象上の投与の部位において、またはその部位に近接して、組成物に対する望ましくない応答を緩和することができる薬剤を意味する。具体的には、投与の部位が鼻腔内である場合、緩和され得るそのような望ましくない応答には、くしゃみ、過度の鼻汁、もしくは鼻組織の刺激などの非自発的または反射的応答、および/または不快な味もしくは臭気などに対する認知的応答が含まれ得る。認知的応答は、組成物の使用を低減または終了するための意識的または潜在的な決定を含み得、したがって、患者のコンプライアンスに影響を与え得る。受容剤は、1つ以上のそのような望ましくない応答を緩和することができる。
【0058】
いくつかの実施形態において、受容剤は、官能増強剤を含む。官能増強剤の例示的な例としては、天然および/もしくは合成甘味料、香味料、芳香族化合物、矯味化合物、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0059】
いくつかの実施形態において、受容剤として含まれる官能増強剤には、甘味料が含まれる。例示的な甘味料としては、サッカリン、アスパルテーム、ネオテーム、シクラメート、グルコース、フルクトース、スクロース、キシリトール、タガトース、スクラロース、マルチトール、イソマルツロース、水素化イソマルツロース、ラクチトール、ソルビトール、マンニトール、トレハロース、マルトデキストリン、ポリデキストロース、グリセリン、エリスリトール、マルトール、アセスルファム、アセスルファムカリウム、アリテーム、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、ステビオシド、タウマチン、糖類、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0060】
実施形態において、受容剤は、くしゃみを阻害することができる薬剤、すなわち、抗くしゃみ誘発剤を含む。
【0061】
医薬組成物は、任意選択で、1つ以上の薬学的に許容される成分、例えば、担体、防腐剤、希釈剤、安定剤、pH調節剤などとして有用な成分をさらに含む。実施形態によれば、組成物は、少なくとも1つの防腐剤を含む。防腐剤は、抗菌活性を有し得、かつ/または抗酸化剤として機能し得る。例示的な防腐剤としては、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
組成物が水性媒体に製剤化される場合、組成物は、例えば、組成物を実質的に等張にする量の1つ以上の等張調節剤を含み得る。例えば、生理食塩水は、そのような組成物のベースを形成し得る。
【0063】
CGRP阻害剤の鼻腔内投与のための装置も提供される。装置は、(a)鼻腔内で生物学的に利用可能なCGRP阻害剤を含む治療活性構成要素を含む噴霧可能な液体組成物を有するリザーバと、(b)鼻孔内に挿入するように構成された噴霧化デバイスと、(c)デバイスを作動させて組成物の液滴を鼻孔に送達するための手段とを含み得る。
【0064】
噴霧化デバイスは、デバイスが鼻孔に挿入され得る限り、組成物がリザーバから供給されたときに液体組成物の液滴を生成することができる任意のデバイスであり得る。実施形態において、デバイスは、液体組成物が圧力下でそれを通過するときに、液体を液滴に分けるノズルまたはくびれた通路を含む。噴霧化デバイスを作動させるための当該技術分野で既知の任意の手段、例えば、リザーバを圧迫することによって、もしくはプランジャを押し下げることによって、または電気的に操作されるデバイスの場合、スイッチを作動させることによって圧力を加えることを用いることができる。
【0065】
装置によってもたらされる液滴サイズの範囲は、組成物の物理的特性、例えば、その粘度、噴霧化デバイスの性質(例えば、ノズル開口部のサイズ)、およびデバイスが組成物を排出するように作動される方法に依存する。液滴は一般に、吸入可能なエアロゾルを形成するほど微細であってはならないが、鼻粘膜に容易に付着しないほど粗くてはならない。
【0066】
任意選択で、装置は、計量された量の組成物、例えば、約0.05~約0.25mL、より典型的には、約0.05~約0.15mLの量を鼻孔に送達するように動作可能である。装置は、任意選択で、異なる計量された量を送達するように調整可能である。いくつかの実施形態において、装置は、AptarGroup,Inc.の一部であるAptar Pharma(Crystal Lake,Illinois,USA)によって販売されるものなどの市販されている鼻用スプレーデバイス、またはそれらの改良されたものを含む。装置は、単回投与装置、二回投与装置、または複数回投与装置であってもよい。
【0067】
CGRP阻害剤を対象に送達するための方法も提供され、方法は、CGRP阻害剤を含む治療活性構成要素を含む組成物を対象に鼻腔内投与することを含む。
【0068】
CGRPの異常なレベルに関連する状態を治療することを必要とする対象においてそれを行うための方法も提供され、方法は、治療有効量の、CGRP阻害剤を含む治療活性構成要素を含む組成物を対象に鼻腔内投与することを含む。
【0069】
実施形態において、状態は、急性片頭痛、慢性片頭痛、群発頭痛、慢性緊張型頭痛、薬物過剰使用頭痛、外傷後頭痛、脳震盪後症候群、脳外傷、およびめまいから選択される疾患または障害であり得る。
【0070】
別の実施形態において、状態は、慢性疼痛、神経原性血管拡張、神経原性炎症、炎症性疼痛、神経因性疼痛、糖尿病性末梢神経因性疼痛、小線維神経因性疼痛、モートン神経腫、慢性膝痛、慢性腰痛、慢性股関節痛、慢性指痛、運動誘発性筋肉痛、がん疼痛、慢性炎症性皮膚痛、火傷による疼痛、瘢痕による疼痛、複合性局所疼痛症候群、口腔灼熱症候群、アルコール性多発ニューロパチー、慢性炎症性脱髄性多発神経根障害、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)または後天性免疫不全症候群(AIDS)関連ニューロパチー、薬剤誘発性ニューロパチー、産業性ニューロパチー、リンパ腫性ニューロパチー、骨髄腫性ニューロパチー、多巣性運動性ニューロパチー、慢性特発性感覚性ニューロパチー、がん性、ニューロパチー、急性疼痛自律神経性ニューロパチー、圧迫性ニューロパチー、血管炎/虚血性ニューロパチー、側頭下顎関節痛、ヘルペス後神経痛、三叉神経痛、眼痛、および歯痛から選択される疾患または障害であり得る。
【0071】
ある例では、状態は、薬物過剰使用頭痛(MOH)であり得、状態を有する対象は、疼痛の治療を受けていてもよく、疼痛の治療は、急性疼痛薬および慢性疼痛薬から選択される薬物を含み得る。例えば、疼痛の治療は、トリプタン、麦角アルカロイド、鎮痛剤、およびオピオイドから選択される薬物を含む。トリプタンは、リザトリプタン、スマトリプタン、ナラトリプタン、エレトリプタン、ドニトリプタン、アルモトリプタン、フロバトリプタン、アビトリプタン、およびゾルミトリプタンから選択され得る。麦角アルカロイドは、クラビン、リゼルグ酸アミド、およびエルゴペプチンから選択され得る。麦角アルカロイドはまた、エルゴノビン、メチルエルゴノビン、メチセルギド、エルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、ブロモクリプチン、メシル酸エルゴロイド、およびリゼルグ酸ジエチルアミド、またはそれらの組み合わせから選択され得る。
【0072】
MOHは、1つ以上の疼痛薬の慢性的な使用に起因し得る。対象は、片頭痛、群発型頭痛、または緊張型頭痛から選択される原発性頭痛障害を有し得る。対象は、現在治療を受けているか、または原発性頭痛障害の治療を受けていた可能性がある。
【0073】
疼痛の治療は、アスピリン、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ケトロラク、メクロフェナメート、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、サルサレート、スリンダク、トルメチン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、エトリコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、メロキシカム、ルミラコキシブ、またはそれらの組み合わせから選択される薬物を含み得る。
【0074】
MOHは、ケタミン、エスケタミン、アルフェンタニル、アリメマジン、アルプラゾラム、アンフェタミン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロナゼパム、コデイン、シクロベンザプリン、ジアゼパム、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルフィン、ドロナビノール、エスタゾラム、エゾピクロン、フェンタニル、フルラゼパム、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ロラゼパム、メトバルビタール、メチルフェニデート、メタドン、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルホン、フェノバルビタール、セコバルビタール、テンパゼパム、トラマドール、トリアゾラム、ザレプロン、ゾピクロン、およびゾルピデムから選択される薬物での治療に起因し得る。
【0075】
MOHは、アリメマジン、アルプラゾラム、アンフェタミン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、クロナゼパム、コデイン、シクロベンザプリン、ジアゼパム、ジヒドロコデイン、ジヒドロモルフィン、ドロナビノール、エスタゾラム、エゾピクロン、フェンタニル、フルラゼパム、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、ロラゼパム、メトバルビタール、メチルフェニデート、メタドン、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルホン、フェノバルビタール、セコバルビタール、テンパゼパム、トラマドール、トリアゾラム、ザレプロン、ゾピクロン、およびゾルピデムから選択される薬物の慢性使用に起因し得る。
【0076】
MOHは、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、アセトアミノフェン、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、メクロフェナメート、イソメテプテン、インドメタシン、コデイン、モルヒネ、ヒドロコドン、アセチルジヒドロコデイン、オキシコドン、オキシモルホン、パパベリン、フェンタニル、アルフェンタニル、スフェンタニル、レミフェンタニル、トラマドール、プロクロルペラジン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、メロキシカム、ピロキシカム、JTE-522、L-745,337、NS388、デラコキシブ、バルデコキシブ、イウムイラコキシブ、エトリコキシブ、パレコキシブ、4-(4-シクロヘキシル-2-メチルオキサゾール-5-イル)-2フルオロベンゼンスルホンアミド、(2-(3,5-ジフルオロフェニル)-3-(4-(メチルスルホニル)フェニル)-2シクロペンテン-1-オン、N-[2-(シクロヘキシルオキシ)-4-ニトロフェニル]メタンスルホンアミド、2-(3,4ジフルオロフェニルl)-4-(3-ヒドロキシ-3-メチルブトキシ)-5-[4-(メチルスルホニル)フェニル]-3(2H)ピリダジノン、2-[(2,4-ジクロロ-6-メチルフェニル)アミノ]-5-エチル-ベンゼン酢酸、(3Z)3-[(4-クロロフェニル)[4-(メチルスルホニル)フェニル]メチレン]ジヒドロ-2(3H)-フラノン、(S)-6,8-ジクロロ-2-(トリフルオロメチル)-2H-1-ベンゾピラン-3-カルボン酸、アモバルビタール、ブタルビタール、シクロバルビタール、ペントバルビタール、アロバルビタール、メチルフェノバルビタール、フェノバルビタール、セコバルビタール、ビニルビタール、ベラパミル、シルチアゼム、ニフェジピン、リドカイン、テトラカイン、プリロカイン、ブピビカイン、メピバカイン、エチドカイン、プロカイン、ベンゾカイン、フェヘルツィン、イソカルボキサジド、ジクロラルフェナゾン、ニモピジン、メトクロプラミド、カプサイシン受容体作動薬、カプトプリル、チオスピロン、ステロイド、カフェイン、メトクロプラミド、ドンペリドン、スコポラミン、ジメンヒドリナート、ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン、ジアゼパム、ロラゼパム、クロルプロマジン、メトトリメプラジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、プロメタジン、トリフルオペラジン、トリフルプロマジン、ベンズキナミド、次サリチル酸ビスマス、ブクリジン、シンナリジン、シクリジン、ジフェニドール、ドラセトロン、ドンペリドン、ドロナビノール、ドロペリドール、ハロペリドール、メトクロプラミド、ナビロン、チエチルペラジン、トリメトベンゼミド、および、エジオピタント(eziopitant)、メクリジン、ドンペリドン、オンダンセトロン、トロピセトロン グラニセトロン ドラセトロン、ヒドロドラセトロン、パロノセトロン、アロセトロン、シランセトロン、シサプリド、レンザプリドメトクロプラミド、ガラノラクトン、フェンサイクリジン、ケタミン、デキストロメトルファン、ならびにその異性体、薬学的に許容される塩、エステル、コンジュゲート、またはプロドラッグから選択される薬物の慢性使用に起因し得る。
【0077】
別の実施例において、状態は、外傷後頭痛(PTH)頭痛であり得、状態を有する対象は、外傷事象の1、2、3、4、5、6または7日後にPTHを経験し得る。外傷事象は、脳震盪または意識の喪失をもたらす可能性がある。対象は、めまい、不眠、集中力低下、記憶障害、羞明、音声恐怖、もしくは疲労、またはそれらの組み合わせに苦しむ可能性がある。
【0078】
別の実施形態において、状態は、非インスリン依存性真性糖尿病、血管障害、炎症、関節炎、熱傷、循環性ショック、敗血症、アルコール離脱症候群、オピエート離脱症候群、モルヒネ耐性、男性および女性のほてり、閉経に伴う潮紅、アレルギー性皮膚炎、乾癬、脳炎、虚血、脳卒中、てんかん、神経炎症性障害、神経変性疾患、皮膚疾患、神経原性皮膚発赤、皮膚酒さ、紅斑、耳鳴り、肥満、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、外陰部痛、多嚢胞性卵巣症候群、子宮線維症、神経線維腫瘍、肝線維症、腎線維症、巣状分節性糸球体硬化症、糸球体腎炎、IgAニューロパチー、多発性骨髄腫、重症筋無力症、シェーグレン症候群、変形性関節症、骨関節炎変性椎間板疾患、側頭下顎関節障害、むち打ち症、関節リウマチ、および間質性膀胱炎から選択される疾患または障害であり得る。皮膚疾患は、再発性ヘルペス、接触過敏症、結節性痒疹、慢性そう痒、および尿毒症性そう痒から選択され得る。
【0079】
別の実施形態において、状態は、慢性閉塞性肺疾患、肺線維症、気管支過敏症、喘息、嚢胞性線維症、慢性特発性咳嗽、および毒性傷害から選択される疾患または障害であり得る。毒性傷害は、塩素ガス傷害、マスタードガス傷害、アクロレイン傷害、煙傷害、オゾン傷害、戦争化学物質曝露、および工業化学物質曝露から選択され得る。
【0080】
別の実施形態において、患者におけるCGRPの異常なレベルに関連する状態を治療するためのキットが提供され、キットは、(a)鼻腔内で生物学的に利用可能なCGRP阻害剤を含む治療活性構成要素を含む上記の医薬組成物と、(b)医薬組成物を投与するための説明書とを備える。キットは、医薬組成物を投与するための装置をさらに含んでもよい。
【0081】
実施形態において、本発明は、(R)-N-(3-(7-メチル-1H-インダゾール-5-イル)-1-(4-(1-メチルピペリジン-4-イル)ピペラジン-1-イル)-1-オキソプロパン-2-イル)-4-(2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-3-イル)ピペリジン-1-カルボキサミド(BHV-3500、ザベジェパント、または式Iを有する化合物)を小分子CGRP受容体拮抗薬として含む、鼻腔内投与のための組成物を包含する。
【化2】
【0082】
ザベジェパントはまた、「バゼジェパント」としても知られており、「ザベジェパント」および「バゼジェパント」の両方とも、上記の式Iを有する同一の分子を指す。
【0083】
次に、ザベジェパントの合成方法を記載する。
【0084】
合成方法
略語は、一般に、当該技術分野で使用される規則に従う。本明細書および実施例で使用される化学物質の略語は以下のように定義される。ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドは「NaHMDS」;N,N-ジメチルホルムアミドは「DMF」;メタノールは「MeOH」;N-ブロモスクシンイミドは「NBS」;アリールは「Ar」;トリフルオロ酢酸は「TFA」;水素化アルミニウムリチウムは「LAH」;「BOC」、ジメチルスルホキシドは「DMSO」;時間は「h」;室温または保持時間は「rt」(文脈によって異なる);分は「min」;酢酸エチルは「EtOAc」;テトラヒドロフランは「THF」;エチレンジアミン四酢酸は「EDTA」;ジエチルエーテルは「Et2O」;4-ジメチルアミノピリジンは「DMAP」;1,2-ジクロロエタンは「DCE」;アセトニトリルは「ACN」;1,2-ジメトキシエタンは「DME」;1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物は「HOBt」;ジイソプロピルエチルアミンは「DIEA」;CF3(CF2)3SO2-は「Nf」、およびオルトギ酸トリメチルは「TMOF」である。
【0085】
本明細書で使用される略語は、以下のように定義される。「1×」は1回、「2×」は2回、「3×」は3回、「℃」は摂氏度、「eq」は当量、「g」はグラム、「mg」はミリグラム、「L」はリットル、「mL」または「ml」はミリリットル、「μL」はマイクロリットル、「N」は正常、「M」はモル、「mmol」はミリモル、「min」は分、「h」は時間、「rt」は室温、「RT」は保持時間、「atm」は気圧、「psi」はポンド/平方インチ、「conc.」は濃縮物、「sat」または「sat’d」は飽和、「MW」は分子量、「mp」は融点、「ee」はエナンチオマー過剰率、「MS」または「Mass Spec」は質量分析、「ESI」はエレクトロスプレーイオン化質量分析、「HR」は高分解能、「HRMS」は高分解能質量分析、「LCMS」は液体クロマトグラフィー質量分析、「HPLC」は高圧液体クロマトグラフィー、「RP HPLC」は逆相HPLC、「TLC」または「tlc」は薄層クロマトグラフィー、「NMR」は核磁気共鳴分光法、「1H」は陽子、「δ」はデルタ、「s」は一重項、「d」は二重項、「t」は三重項、「q」は四重項、「m」は多重項、「br」はブロード、「Hz」はヘルツであり、「α」、「β」、「R」、「S」、「E」、および「Z」は、当業者によく知られている立体化学の呼称である。
【0086】
化合物Iは、スキーム1に従って調製することができる。この合成は、14の化学ステップであり、非常に収束的であり、最後の3つのステップにおいて3つの主要な断片をカップリングする。したがって、合成は、主要断片A(スキーム2)およびB(スキーム3)の調製から始まる。
【0087】
【化3】
断片Aの合成は、N-Boc-4-ピペリドンとトリメチルホスホノ酢酸から生成されたイリドとのHorner-Emmons反応から開始して、高収率でtert-ブチル4-(2-メトキシ-2-オキソエチリデン)ピペリジン-1-カルボキシレートを得る(スキーム2)。パラジウム炭素により媒介される触媒水素化は、不飽和二重結合を還元する。tert-ブチル4-(2-メトキシ-2-オキソエチル)ピペリジン-1-カルボキシレートLDAで処理して、エノラートを生成し、2-ニトロベンズアルデヒドで捕捉することにより、ニトロアルコールを得る。酢酸中の鉄でニトロ基を還元し、続いてジオキサン中の塩化水素で処理すると、断片Aの合成が完了する。
【0088】
【化4】
インダゾールアミノ酸Bの合成は、一塩化ヨウ素の作用による2,6-ジメチルアニリンのヨウ素化から始まる(スキーム3)。この中間体は一時的に取っておいた。N-CBZ-L-セリンメチルエステルを、ワンポットメタンスルホニル化/脱離反応に供し、N-CBZ-デヒドロアラニンメチルエステルを得る。手元にあるヨウ化物およびデヒドロアラニンを用いて、それらを、ヘックカップリングにおいて酢酸パラジウム(II)を使用して効率的にカップリングし、生成物を65%の収率で得る。
【0089】
この時点で、キラル中心を、(-)-1,2-ビス((2R,5R)-2,5-ジエチルホスホラノ)ベゼン(シクロオクタジエン)ロジウム(I)テトラフルオロホウ酸塩および水素(60psi)を利用する触媒不斉水素化によって設置して、約96%eeでキラルアミノ酸を得る。次に、亜硝酸イソ-アミルの作用によってインダゾール環が形成される。得られたインダゾールは非常に結晶性である。アセトン/ヘキサンからの1つの再結晶化は、高純度で、改善された99.8%eeを有するインダゾールアミノ酸をもたらす。水素化条件下でCBZ保護基を除去することにより、断片Bの調製が完了する。
【0090】
インダゾールアミノ酸Bはまた、ラセミアミノ酸またはケト酸の酵素分解能を使用して調製することができる(Hanson,Ronald L.;Davis,Brian L.;Goldberg,Steven L.;Johnston,Robert M.;Parker,William L.;Tully,Thomas P.;Montana,Michael A.;Patel,Ramesh N.Process Research and Development,Bristol-Myers Squibb,New Brunswick,NJ,USA.Organic Process Research&Development(2008),12(6),1119-1129.)。
【0091】
【化5】
断片AおよびBは、N,N’-ジスクシンイミジルカーボネートを使用して効率的にカップリングされ、78%の収率で尿素部分を設置する(スキーム4)。メチルエステルを水酸化リチウムでけん化させることにより、ほぼ定量的収率のカルボン酸が得られる。酸と1-(1-メチルピペリジン-4-イル)ピペラジンとのTBTU(登録商標)媒介カップリングにより、化合物Iの合成が完了する。フラッシュクロマトグラフィーにより、生成物をアセトンから結晶化することができる非晶質粉末として得て、化合物Iを微細な白色の結晶性粉末として得る。
【0092】
【化6】
tert-ブチル4-(2-メトキシ-2-オキソエチリデン)ピペリジン-1-カルボキシレート。鉱油中の水素化ナトリウム(60%、7.92g、198.02mmole)をヘキサンで洗浄し、次いで、ジメチルホルムアミド(220mL)中に懸濁した。混合物を0℃に冷却した。トリメチルホスホノアセテート(29.0mL、189.82mmole)を、撹拌反応混合物に滴下した。0℃で20分後、ジメチルホルムアミド(80mL)中のN-tert-ブトキシカルボニル-4-ピペリドン(30.41g、152.62mmole)の溶液を混合物に滴下した。反応物を、室温で3時間撹拌し、次いで、ジエチルエーテル(650mL)で希釈した。混合物を水で1回洗浄し、水層をジエチルエーテルで1回抽出した。合わせた有機層を水で4回洗浄し、水相を廃棄した。有機相をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮乾固させた。表題化合物を、92%の収率で、白色の固体として得た。
1H-NMR(300MHz,CDCl
3):δ=5.68(s,1H),3.66(s,3H),3.40-3.51(m,4H),2.90(t,J=5.49,2H),2.25(t,J=5.49,2H),1.44(s,9H)。
【0093】
【化7】
tert-ブチル4-(2-メトキシ-2-オキソエチル)ピペリジン-1-カルボキシレート。1:1の酢酸エチル/メタノール(220mL)の混合物中のtert-ブチル4-(2-メトキシ-2-オキソエチリデン)ピペリジン-1-カルボキシレート35.71g、140mmole)の溶液を、50%含水10%パラジウム炭素(3.3g)で慎重に処理した。反応容器に55psiの水素ガスを充填し、混合物を、Parr装置上で室温で16時間振盪した。次いで、反応混合物を濾過して触媒を除去し、濾液を真空中で濃縮した。表題化合物を、97%の収率で、透明な無色の油状物として得た。
1H-NMR(300MHz,CDCl
3):δ=4.04(d,J=10.25,2H),3.64(s,3H),2.68(t,J=12.44,2H),2.21(d,J=6.95,2H),1.98-1.77(m,1H),1.64(d,J=13.54,2H),1.41(s,9H),1.25-0.99(m,2H)。
【0094】
【化8】
4-[2-ヒドロキシ-1-メトキシカルボニル-2-(2-ニトロ-フェニル)-エチル]-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル。N,N-ジイソプロピルアミン(4.40mL、31.3mmole)をテトラヒドロフラン(50mL)に溶解した。混合物を-78℃に冷却した。ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M、12.4mL、31mmole)を、撹拌溶液に滴下した。-78℃で30分間撹拌した後、テトラヒドロフラン(15mL)中のtert-ブチル4-(2-メトキシ-2-オキソエチル)ピペリジン-1-カルボキシレート(6.65g、25.8mmole)の溶液を、混合物に滴下した。-78℃で1時間、撹拌を続けた。次いで、テトラヒドロフラン(20mL)中の2-ニトロベンズアルデヒド(3.90g、25.8mmole)の溶液を混合物に滴下し、次いで、-78℃でさらに2.5時間、撹拌を続けた。反応物を、冷塩化アンモニウム水溶液でクエンチし、次いで、水で希釈した。混合物を酢酸エチルで2回抽出し、水相を廃棄した。材料を乾燥させ(硫酸マグネシウム)、濾過し、濃縮乾固させた。シリカゲルクロマトグラフィーにより、94%の収率で所望の生成物を薄黄色の発泡体として得た。MS m/e(M-C
4H
8+H)
+=353.1。
【0095】
【化9】
4-(4-ヒドロキシ-2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロ-キノリン-3-イル)-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル。窒素入口、温度計、および機械的撹拌器を備えた3つ首フラスコで、4-[2-ヒドロキシ-1-メトキシカルボニル-2-(2-ニトロ-フェニル)-エチル]-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(9.93g、24.3mmole)を酢酸(1.75mole、100mL)に溶解した。撹拌しながら、鉄粉末(8.90g、159mmole)を容器に添加した。撹拌した混合物を、30分間、80℃にゆっくり加熱し、次いで、室温に冷却した。次いで、酢酸エチルで希釈し、セライトパッドを通して濾過した。固体を、20%メタノール/酢酸エチルで洗浄し、次いで、メタノールで洗浄した。濾液を濃縮し、残留物を酢酸エチルと炭酸水素ナトリウム水溶液との間で分配した。層を分離した。得られた水相を酢酸エチルで2回抽出した。有機層を合わせた。混合物を水で2回洗浄し、水相を廃棄した。材料を乾燥させ(硫酸マグネシウム)、濾過し、濃縮乾固させた。シリカゲルクロマトグラフィーにより、表題化合物を、77%の収率で薄黄色の発泡体として得た。MS m/e(M-H)
-=345.1。
【0096】
【化10】
3-(ピペリジン-4-イル)キノリン-2(1H)塩酸塩。酢酸エチル(70mL)中の4-(4-ヒドロキシ-2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロ-キノリン-3-イル)-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(5.60g、16.2mmole)の撹拌溶液を、ジオキサン中のHCl(4N、40mmole、10mL)で処理した。混合物を室温で45分間撹拌した。次いで、より多くのジオキサン中のHCl(4N、120mmole、30mL)を添加し、室温で16時間撹拌を続けた。得られた固体を濾過により収集し、酢酸エチルで洗浄した。次いで、5%水-イソプロパノール(100mL)に懸濁し、混合物を温めて還流し、20分間撹拌した。混合物を室温に冷却し、室温で16時間撹拌した。固体を濾過により収集し、イソプロパノールで洗浄し、高真空下で乾燥させた。表題化合物を、75%の収率で、白色の固体として得た。
1H-NMR(DMSO-d
6)δ11.85(s,1H),9.02(bs,1H),8.88(bs,1H),7.70(t,J=3.81Hz,2H),7.53-7.30(d,J=8.24Hz,1H),7.17(t,J=7.48Hz,2H),3.36(d,J=12.51Hz,2H),3.10-2.94(m,3H),2.01(d,J=13.43Hz,2H),1.87-1.73(m,2H);MS m/e(M+H)
+=229.0。
【0097】
【化11】
4-ヨード-2,6-ジメチルベンゼンアミン塩酸塩。メタノール(700mL)中の炭酸水素ナトリウム(126g、1.5モル)および2,6-ジメチルアニリン(61.5mL、500mmole)の懸濁液に、一塩化ヨウ素(ジクロロメタン中1.0M、550mL、550mmole)を1時間にわたって室温で添加した。添加が完了した後、撹拌を3時間続けた。反応物を濾過して、過剰な炭酸水素ナトリウムを除去し、溶媒を真空中で除去した。残留物をジエチルエーテル(1.5L)に再溶解し、塩酸(エーテル中2M、375mL、750mmole)で処理した。得られた懸濁液を、冷凍庫(-15℃)内で一晩保管した。固体を濾過し、無色になるまでジエチルエーテルで洗浄して、126.5g(89%)を灰緑色の粉末として得た。
1H-NMR(DMSO-d
6)δ2.33(s,6H),7.48(s,2H),9.05(bs,3H);
13C-NMR(DMSO-d
6)δ17.4,91.5,133.1,131.2,136.9。
【0098】
【化12】
メチル2-(ベンジルオキシカルボニル)アクリレート。機械的撹拌器を装備した炎乾燥させた3つ首丸底フラスコに、(S)-メチル2-(ベンジルオキシカルボニル)-3-ヒドロキシプロパノエート(129g、509mmole)、無水ジクロロメタン(2L)、および塩化メタンスルホニル(49.3mL、636mmole)を添加した。混合物を-15℃に冷却し、トリエチルアミン(213mL、1527mmole)液滴で処理して、反応混合物の温度が0℃を超えないようにした。最初の当量のトリエチルアミンの添加は発熱的であった。トリエチルアミンの添加後、混合物を0℃で30分間撹拌した。冷却浴を取り外し、混合物を室温で1.5時間撹拌した。反応物を、メタノール(21mL)の添加によってクエンチした。混合物を、洗浄液がpH5になるまで、0.5%硫酸水素カリウム水溶液で洗浄し、次いで、飽和炭酸水素ナトリウム、およびブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、1:9酢酸エチル/ヘキサン)により、111g(92%)を粘性の無色の油状物として得、これは、静置すると結晶化した。
1H-NMR(DMSO-d
6)δ3.71(s,3H),5.10(s,2H),5.60(s,1H),5.76(s,1H),7.39-7.35(m,5H),8.96(s,1H);
13C-NMR(DMSO-d
6)δ52.3,65.9,127.8,128.1,128.3,128.8,133.3,136.3,153.5,163.7。
【0099】
【化13】
(Z)-メチル3-(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)-2-(ベンジルオキシカルボニル)アクリレート。2Lの丸底フラスコに、4-ヨード-2,6-ジメチルベンゼンアミン塩酸塩(55g、194mmole)、メチル2-(ベンジルオキシカルボニル)アクリレート(59.2g、252mmole)、塩化テトラブチルアンモニウム(59.2g、213mmole)、酢酸パラジウム(II)(4.34g、19.4mmole)、およびテトラヒドロフラン(1.2L、窒素流によって30分間脱気)を充填した。混合物を、懸濁液が形成されるように撹拌し、次いで、窒素流によって30分間脱気した。トリエチルアミン(110mL、789mmole)を添加し、得られた混合物を還流で3時間加熱した。室温に冷却した後、反応混合物をセライトパッドを通して濾過し、テトラヒドロフラン(2×100mL)で洗浄し、濃縮した。残留物をジクロロメタンに溶解し、水(3回)およびブライン(2回)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル
、1:9酢酸エチル/ジクロロメタンを使用)により、黄褐色の固体を得た。固体を、温メタノール(210mL)および水(100mL)から再結晶した。混合物を室温で一晩、次いで、0℃で2時間、最後に-15℃で2時間保持した。得られた固体を濾過し、氷冷1:1メタノール/水で洗浄し、高真空下で一晩乾燥させて、Z/E異性体(73:27)の混合物である薄黄褐色の固体として44.7g(65%)を得た。
1H-NMR(DMSO-d
6)δ,2.05(s,6H),3.61(s,0.8H),3.68(s,2.2H),5.00(s,0.54H),5.13(s,1.46H),5.24(s,2H),7.40-7.21(m,8H),8.51(s,0.27H),8.79(s,0.73H);
13C-NMR(DMSO-d
6)δ17.8,51.7,65.3,119.4,120.0,120.3,127.3,127.7,128.3,130.9,135.8,137.2,146.9,154.7,166.0。
【0100】
【化14】
(R)-メチル3-(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)-2-(ベンジルオキシカルボニル)プロパノエート。炎乾燥させた2LのParr水素化ボトルに、(Z)-メチル3-(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)-2-(ベンジルオキシカルボニル)アクリレート(84.5g、239mmole)、ジクロロメタン(300mL)、およびメタノール(300mL)を充填した。薄茶色の懸濁液が形成されるようにボトルを旋回させた。混合物を、窒素流を使用して30分間脱気した。これに、(-)-1,2-ビス((2R,5R)-2,5-ジエチルホスホラノ)-ベゼン(シクロオクタジエン)ロジウム(I)テトラフルオロホウ酸塩([(2R,5R)-Et-DuPhosRh]BF
4)(2.11g、3.20mmole)を速やかに添加した。ボトルをすぐにParr水素化装置に取り付けた。5サイクルの水素(60psi)および真空後、ボトルを65psiに加圧し、懸濁液を室温で16時間撹拌した。反応物は均質になった。反応混合物を濃縮し、得られた残留物をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、1:9酢酸エチル/ジクロロメタン)により精製して、82.9g(98%)を得た。
1H-NMR(DMSO-d
6)δ2.04(s,6H),2.65(dd,J=13.4,9.8Hz,1H),2.82(dd,J=13.7,5.2Hz,1H),3.62(s,3H),4.15-4.10(m,1H),4.41(s,2H),5.00(s,2H),6.68(s,2H),7.37-7.28(m,5H),7.70(d,J=7.9Hz,1H);
13C-NMR(DMSO-d
6)δ17.7,35.9,51.7,56.1,65.3,120.4,124.0,127.5,127.7,128.2,128.3,136.9,142.6,155.9,172.5。
【0101】
【化15】
(R)-メチル2-(ベンジルオキシカルボニル)-3-(7-メチル-1H-インダゾール-5-イル)プロパノエート。(R)-メチル3-(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)-2-(ベンジルオキシカルボニル)プロパノエート(50.0g、140mmole)を、炎乾燥させた5Lの3つ首丸底フラスコに量り入れ、続いて、トルエン(2.4L)および氷酢酸(120mL、2.1mmole)を添加した。混合物を機械的に撹拌して透明な溶液を形成し、次いで、酢酸カリウム(103g、1.05モル)を添加した。得られた白色の懸濁液に、室温で亜硝酸イソ-アミル(20.7mL、154mmole)を滴下し、得られた混合物を室温で16時間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム(1L)を添加し、続いて、固体の炭酸水素ナトリウムを慎重に添加して、酢酸を中和した。混合物を、ジクロロメタン(2L)およびブライン(1.5L)の混合物で抽出した。分離後、水層をジクロロメタン(500mL)で抽出した。合わせた有機層を、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。溶媒を除去して、黄褐色の固体を得、これをヘキサン(2L)およびトルエン(150mL)で洗浄した。固体を、熱アセトン(260mL)およびヘキサン(700mL)から再結晶した。わずかに濁った混合物を、ゆっくりと室温に、次いで1.5時間0℃に、最後に1.5時間-15℃に冷却した。得られた固体を濾過し、氷冷アセトン/ヘキサン(1:1、200mL)で洗浄して、39.1gを得た(収率76%)。分析HPLCは、98%超のUV純度を示した。エナンチオマー過剰率(ee)は、99.8%であると決定された(条件:Chiralpak ADカラム、4.6×250mm、10μm;A=エタノール、B=0.05%ジエチルアミン/ヘプタン;85%B@1.0mL/分、55分間。Rの保持時間は44.6分、Sの保持時間は28.8分であった)。
1H-NMR(DMSO-d
6)δ2.48(s,3H),2.93(dd,J=13.4,10.7Hz,1H),3.10(dd,J=13.7,4.9Hz,1H),3.63(s,3H),4.32-4.27(m,1H),4.97(s,2H),7.03(s,1H),7.24-7.22(m,2H),7.29-7.27(m,3H),7.41(s,1H),7.83(d,J=8.2Hz,1H),7.99(s,1H),13.1(s,1H);
13C-NMR(DMSO-d
6)δ16.7,36.5,51.8,56.0,65.3,117.6,119.6,122.7,127.2,127.4,127.6,128.2,129.3,133.4,136.8,139.2,155.9,172.4。質量分析:368.16(MH)
+。
【0102】
【化16】
(R)-メチル2-アミノ-3-(7-メチル-1H-インダゾール-5-イル)プロパノエート。Parr水素化ボトルに、(R)-メチル2-(ベンジルオキシカルボニル)-3-(7-メチル-1H-インダゾール-5-イル)プロパノエート(11.0g、29.9mmole)およびメタノール(75mL)を充填した。懸濁液を窒素でパージし、パラジウム(木炭10%、700mg)で処理した。ボトルを、水素下(15psi)で、一晩振盪した。混合物をセライトパッドを通して濾過し、触媒を除去した。溶出液の濃縮により、7.7g(定量的)を油状物として得、これをさらに精製することなく使用した。
1H-NMR(CD
3OD)δ2.54(s,3H),2.98(dd,J=13.5,7.0Hz,1H),3.09(dd,J=13.5,5.9Hz,1H),3.68(s,3H),3.75(dd,J=7.0,6.2Hz,1H),7.01(s,1H),7.39(s,1H),7.98(s,1H)。質量分析:232.34(M-H)
-。
【0103】
【化17】
(R)-メチル3-(7-メチル-1H-インダゾール-5-イル)-2-(4-(2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-3-イル)ピペリジン-1-カルボキサミド)プロパノエート。室温でジメチルホルムアミド(50mL)中の(R)-メチル2-アミノ-3-(7-メチル-1H-インダゾール-5-イル)プロパノエート塩酸塩(7.26g、27.0mmole)の溶液に、N,N’-ジスクシンイミジルカーボネート(7.60g、29.7mmole)、続いて、トリエチルアミン(11.29mL、81mmole)を添加した。得られた混合物を30分間撹拌し、少しずつ3-(ピペリジン-4-イル)キノリン-2(1H)-オン(6.77g、29.9mmoleで処理した。反応物を24時間撹拌した。混合物を、濃縮し、酢酸エチルに溶解し、水、ブライン、および0.5N HCl(2回)で順次洗浄した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。得られた残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、20:1酢酸エチル/メタノール)により精製して、11.9g(78%)を得た。
1H-NMR(CD
3OD)δ13.0(s,1H),11.8(s,1H),7.98(s,1H),7.63(d,J=7.6Hz,1H),7.57(s,1H),7.45-7.41(m,2H),7.27(d,J=8.2Hz,1H),7.16(t,J=7.9Hz,1H),7.03(s,1H),6.85(d,J=7.9Hz,1H),4.31-4.26(m,1H),4.10-4.08(m,2H),3.60(s,3H),3.07-3.01(m,2H),2.93-2.88(m,1H),2.77-2.67(m,2H),2.48(s,3H),1.78-1.72(m,2H),1.34-1.26(m,2H)。質量分析:488.52(MH)
+。
【0104】
【化18】
(R)-3-(7-メチル-1H-インダゾール-5-イル)-2-(4-(2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-3-イル)ピペリジン-1-カルボキサミド)プロパン酸。テトラヒドロフラン(50mL)およびメタノール(10mL)中の(R)-メチル3-(7-メチル-1H-インダゾール-5-イル)-2-(4-(2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-3-イル)ピペリジン-1-カルボキサミド)プロパノエート(5.50g、11.3mmole)の溶液を、0℃に冷却した。これに、水(20mL)中の水酸化リチウム一水和物(0.95g、22.6mmole)の冷(0℃)溶液を、15分間かけて滴下した。反応物を室温でさらに3時間撹拌した。混合物を濃縮して、有機溶媒を除去した。得られた残留物を、最小量の水に溶解し、0℃に冷却し、pH2に達するまで、冷(0℃)1N HClで処理した。得られた固体を、濾過により回収し、冷水およびエーテルで洗浄し、次いで、高真空下で一晩乾燥させて、白色の固体として、5.0g(94%)を得た。
1H-NMR(DMSO-d
6)δ13.05(bs,1H),11.77(s,1H),7.98(s,1H),7.62(d,J=8.0Hz,1H),7.55(s,1H),7.44(d,J=8.2Hz,1H),7.42(s,1H),7.27(d,J=8.2Hz,1H),7.16(t,J=7.6Hz,1H),7.05(s,1H),6.65(d,J=7.9Hz,1H),4.27-4.22(m,1H),4.10-4.07(m,2H),3.12-3.07(m,1H),3.03-2.99(m,1H),2.93-2.88(m,1H),2.77-2.66(m,2H),2.47(s,3H),1.77-1.74(m,2H),1.34-1.27(m,2H)。質量分析:474.30(MH)
+。
【0105】
【化19】
(R)-N-(3-(7-メチル-1H-インダゾール-5-イル)-1-(4-(1-メチルピペリジン-4-イル)ピペラジン-1-イル)-1-オキソプロパン-2-イル)-4-(2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-3-イル)ピペリジン-1-カルボキサミド(I)。フラスコに、(R)-3-(7-メチル-1H-インダゾール-5-イル)-2-(4-(2-オキソ-1,2-ジヒドロキノリン-3-イル)ピペリジン-1-カルボキサミド)プロパン酸(2.9g、6.11mmole)、トリエチルアミン(3.00mL、21.5mmole)、1-(1-メチルピペリジン-4-イル)ピペラジン(1.23g、6.72mmole)、およびジメチルホルムアミド(10mL)を充填した。得られた溶液を、少しずつ2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸塩(2.26g、7.03mmole)で処理した。反応物を室温で一晩撹拌した。混合物を、真空下で濃縮して、ジメチルホルムアミドを除去した。粗生成物をジクロロメタン中7%のメタノールに溶解し、溶出液として2%の水酸化アンモニウム水溶液を含有するジクロロメタン中7%のメタノールを使用するフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。純粋な画分を収集し、溶媒を真空下で除去した。所望の生成物を熱アセトンから結晶化して、77%の収率で式Iを有する化合物を得た。分析HPLCは、230nmで99.0%のUV純度を示した。エナンチオマー過剰率(ee)は、99.9%超であると決定された(条件:Chiralpak ADカラム4.6×250mm、10μm;溶出液:70%(0.05%ジエチルアミン)/ヘプタン/30%エタノール;@1.0mL/分、45分間。保持時間は、Rが18.7分、Sが28.1分であった)。
1H-NMR(500MHz,DMSO-d
6)δppm 13.01(s,1H),11.76(s,1H),7.96(s,1H),7.62(d,J=7.10Hz,1H),7.60(s,1H),7.42(m,1H),7.36(s,1H),7.26(d,J=8.25Hz,1H),7.14(m,1H),7.00(s,1H),6.69(d,J=8.25Hz,1H),4.78(q,J=7.79Hz,1H),4.14(d,J=12.37Hz,2H),3.54(dd,J=9.16,4.58Hz,1H),3.24(m,1H),3.11(m,1H),2.97(m,1H),2.89(m,2H),2.69(m,4H),2.32(m,1H),2.21(m,1H),2.07(m,4H),1.95(t,J=8.25Hz,1H),1.87(m,J=11.28,11.28,3.55,3.44Hz,1H),1.76(t,J=12.03Hz,2H),1.68(t,J=11.11Hz,2H),1.53(t,J=8.25Hz,1H),1.32(m,4H),1.16(m,2H);
13C-NMR(DMSO-d
6)δ16.80,27.30,30.51,30.51,30.67,35.50,38.04,41.74,44.00,44.16,45.35,45.78,48.14,48.39,51.45,54.76,54.76,60.61,114.53,117.79,119.29,119.34,121.57,122.78,127.46,127.79,129.29,129.79,133.31,133.72,136.98,137.41,139.12,156.50,161.50,170.42。正確な質量分析:m/z 639.3770、
[MH]
+、Δ=-0.2ppm。旋光度:-27.36°@589nm、濃度=メタノール中4.71mg/mL。
【0106】
説明および剤形
ザベジェパント(BHV-3500)原薬一塩酸塩形態の物理的および化学的特性を表1に提供する。
【表1】
【0107】
【0108】
ザベジェパントの鼻腔内投与
製剤は、50mMのコハク酸溶液中、1mg/mL~200mg/mLで調合され、pH6.0で1.25%(w/w)のデキストロース(防腐剤不含)を含有するBHV-3500を含む。製造は、必要な注射用水(WFI)USPの一部に賦形剤を可溶化し、水酸化ナトリウムまたは塩酸でpHを6.0±0.2に調整することを伴う。バッチを、WFIで標的容量にし、バイオバーデンについてサンプリングし、0.22μmフィルタを通して濾過して、バイオバーデンを低減する。
【0109】
次いで、濾過した溶液をタイプ1のガラスバイアルに充填し(125μL)、ゴム栓で密封して、100μLの製剤を提供する。次に、密封されたバイアルをAptar Pharma UDS(Unidose System)デバイスに組み立て(
図2)、次いで、適切な二次包装に入れられる。デバイスおよび二次包装の両方には、研究番号、製品名、強度、保管条件、製造元、ならびにFDAが要求する治験使用および子供のアクセスを制限する注意書きを含む情報が片側または両側にラベル付けされている。市販品については、各BHV-3500製品は、剥離式の蓋を備える単一のブリスターにさらに包装され、次に、商品流通のために他の三次包装(例えば、カートン)に包装される。
図2Aは、すべての構成要素の位置を伴う断面図(
図2B)のAptar Pharma UDS装置を示す。BHV-3500点鼻液は、室温保管を指定する20℃~25℃(68°F~77°F)で保管する必要がある。光から保護する付属の二次包装では、15℃~30℃の可動域が許可される。
【0110】
BHV-3500は、すぐに使用できる単位用量の使い捨て鼻用スプレー薬物-デバイスの組み合わせ製品である。組み合わせ製品のデバイス構成部品は、アクチュエータサブアセンブリ(鋼製カニューレを備えたポリプロピレン成形部品のサブアセンブリ、Aptar Pharmaから調達)およびバイアルホルダー(ポリプロピレン成形部品、Aptar Pharmaから調達)(すなわち、二次包装部品)とともに組み立てられた、ゴム栓(シリコン処理された黒色のクロロブチル栓、West Pharmaceutical Servicesから調達)を備えた透明ガラスバイアル(単位用量、透明、USPタイプIガラスバイアル、Nipro GlassまたはOmpiのいずれかから調達)(すなわち、主要包装部品)を含む。
【0111】
BHV-3500鼻用スプレーデバイスは、以下のサブアセンブリおよび従属部品からなる。
アクチュエータASM(サブアセンブリ)、以下から構成される:
・アクチュエータ(構造材-ポリプロピレン-ホワイトカラー、Aptar Pharmaから調達)
・スプレーピン(ポリプロピレン-ナチュラルカラー-Aptar Pharmaから調達)
・カニューレ(ステンレス鋼-ナチュラルカラー-Aptar Pharmaから調達)
●バイアルホルダー(ポリプロピレン-ホワイトカラー-Aptar Pharmaから調達)
●栓を備えた製剤充填バイアル
・ガラスバイアル-以下の2つの供給業者によって製造および供給される:
■Nipro Glass、Germany AG
■Nuova Ompi
【0112】
両方の供給元のバイアルの構造材は、USPタイプIの透明のガラスである。両供給元のバイアルは、USP660に設定されている要件に準拠している:ガラス容器;USP 211:Arsenic;およびUSP 1660:ガラス容器の内面耐久性の評価。
・ゴム栓-West Pharmaceutical Services,Inc.が製造および供給している。構造材はクロロブチルゴム(天然ゴムのラテックスは使用していない)であり、色は黒である。栓は、USP 381「Elastomeric Closures for Injections」に記載されている生理化学試験に適合している。
【0113】
アクチュエータサブアセンブリは、Aptar Pharmaから事前に組み立て済みの状態で受け取る。サブアセンブリおよび部品の両方は、すべての性能要件が満たされていることを保証する供給業者の適合証明書および視覚的外観、アイデンティティ、寸法検査を含む入荷する部品検査に基づいてRenaissance(BHV-3500製品の製造元)によって受領され、リリースされる。
【0114】
臨床薬理学:単回漸増用量研究
BHV3500-101は、完了した第1相、単一施設、プラセボ対照、無作為化、二重盲検、連続SAD試験である。この研究は、最大11のコホートからなった。各コホートにおいて、対象を無作為に割り当てて、単回用量のザベジェパントまたはプラセボのいずれかを3対1の比率で、合計8人の対象に与えた。本研究の主な目的は、健常な対象において、0.1mg~40mgの範囲の単回漸増用量のIN投与後のザベジェパントの安全性および忍容性を評価することであった。副次的な目的は、単回投与後のザベジェパントのPKプロファイルを特徴付けること、40mg未満の場合のザベジェパントの最大耐用量(MTD)を特定すること、およびザベジェパントが心電図パラメータ(すなわち、QTc、PR間隔、QRS群、心拍数[HR]、およびT波形態)に及ぼす影響を説明することであった。
【0115】
BHV3500-101は、安全性、忍容性、およびPK情報を収集して、化合物を用いたその後の臨床研究を裏付けるためにザベジェパントを用いて実施された最初の臨床試験であった。ザベジェパントは、単一の100μLスプレーを送達する使い捨てデバイスであるAptar Pharma UDSを使用して投与された。ザベジェパント0.1mgおよび0.3mgを受けたすべての対象、ならびにザベジェパント1mgコホートからの対象は、これらの対象が測定されたすべての時点で検出可能な血漿濃度(定量化[LLOQ]の下限を下回る)を有しないため、PK分析から除外された。合計41人の対象がPK分析に含まれた。PK記述統計の要約を表10に示し、結果の概要を以下に要約する。
●5mg~20mgの単回IN用量としてのザベジェパントの投与は、非臨床モデルから有効性があると予測される治療範囲内の全身曝露をもたらした。
●吸収速度および程度は、低用量群および中用量群(ザベジェパント1mg、3mg、5mg、および10mg)と比較して、20mg用量群で大きかった。最高用量群(ザベジェパント40mg[2×20mg])の吸収速度および程度は、ザベジェパント20mg(1×20mg)用量群よりも低かった。
●ザベジェパントは、単一IN用量(ザベジェパント10mg)の投与後0.54時間で観察されたピークザベジェパント濃度で急速に吸収され、Tmaxの中央値は、すべての用量にわたって0.54~0.96時間、5mg~20mgにわたって0.54~0.77時間の範囲であった。
●ザベジェパントのt1/2の中央値は、すべての用量にわたって1.6~4.7時間、5mg~20mgにわたって2.5~4.4時間の範囲であった。
●ザベジェパントの平均残存面積は、1mg(31.66%)を除くすべての用量で20%未満であり、96時間のサンプリング期間がザベジェパントのPKプロファイルを特徴付けるのに十分であったことを示した。これは、80%を超える平均AUC[0-t]対AUC[0-inf]比に相当する。
【0116】
【0117】
臨床薬理学:複数回漸増用量研究
第1相、単一施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、連続複数回漸増用量(MAD)研究を、2つの代替投薬群を用いて行った。ザベジェパント(およびプラセボ)は、単一の100μLスプレーを送達する使い捨てデバイスであるAptar Pharma UDSを使用して投与された。研究のMAD部分は4つのコホートからなり、最大用量の20mgは、3つのコホートで1日1回最大14日間投与され、第4のコホートでは20mgが1日2回最大8日間投与された。
【0118】
4つのMADコホートに加えて、2つの代替投薬コホートがあり、それぞれ1日の投薬からなる。第1の代替投薬コホートは、20mgの2回連続投与(別の鼻孔に20mgのスプレー[100μLの200mg/mL])の効果を評価し、投与間隔は30分であった。第2の代替投薬コホートは、20mgの2回連続投与(別の鼻孔に20mgのスプレー[100μLの200mg/mL])の効果を評価し、■鼻および投与間隔は5分であった。
【0119】
PKデータは、コホート1~4の対象から収集した。コホート1~4でザベジェパントを受けた36人の対象全員が、PK分析に含まれた。PK記述統計の要約を表4に示し、結果を以下に要約する。
●ザベジェパントの単回用量IN投与(1日目)後、Cmaxの幾何平均は、5、10、および20mg用量レベルでそれぞれ11.37、16.31、および34.71ng/mLである。AUC0-24の幾何平均は、それぞれ24.95ng・h/mL、29.61ng・h/mL、および80.09ng・h/mLである。
●ザベジェパントの複数回用量IN投与(14日目)後、Cmaxの幾何平均は、5、10、および20mg用量レベルでそれぞれ7.58、12.98、および40.93ng/mLである。AUCtauの幾何平均は、それぞれ20.66、32.85、および90.98ng・h/mLである。
●Tmaxは、投与用量に関係なく、IN投与の約30分後に発生した。
●平均排出半減期は、3.69~4.93時間の範囲であり、用量とともに増加する傾向があった。
●ザベジェパントのすべての尿濃度は、コホート1~3のすべての試料の定量限界を下回った。
【0120】
研究した用量レベルにわたって、ザベジェパントの蓄積なしから最小の蓄積が観察された(CmaxおよびAUC0-24の14日目対1日目の比は2倍未満であり、0.67から1.18の間の範囲であった)。
【0121】
複数回漸増用量研究の結果は、表4および5a~5cに示される。
【表4】
【表5-a】
【表5-b】
【表5-c】
【0122】
【0123】
BHV-3500の有効性および安全性の評価
鼻腔内ザベジェパント5、10、および20mg対プラセボの有効性および安全性は、1,673人の患者が片頭痛の急性治療を受けた無作為化、用量範囲、プラセボ対照、中心的第2/3相臨床試験(BHV3500-201、または研究201)で評価された。
【0124】
試験201において、単回用量として投与された5、10、および20mgのザベジェパントは、層別化CMH試験mITT対象を使用して、投与後早ければ15分で疼痛緩和を示した(表6)。
【表6】
【0125】
また、研究201において、10および20mgのザベジェパントは、単回用量を使用して2時間で、疼痛寛解および最も煩わしい症状(MBS)の寛解の同時主要評価項目でプラセボより統計学的に優れていた(p<0.05)(表7)。ザベジェパントの利点は、永続的であり、救済薬なしで48時間まで持続した(公称p<0.05)。これには、持続的疼痛寛解2~24時間(5、10、および20mg)、持続的疼痛寛解2~48時間(5、10、および20mg)、持続的疼痛緩和2~24時間(5、10、および20mg)、持続的疼痛緩和2~48時間(5および10mg)が含まれる。
【表7】
【0126】
ザベジェパントはまた、早期活性を示す複数の副次的評価項目においてプラセボよりも優れていた(公称p<0.05)。ザベジェパントは、投与後15分(10および20mg)での迅速な疼痛緩和の開始、投与後2~24時間の持続的疼痛緩和(3つすべてのザベジェパント群)、投与後2~24時間の持続的疼痛寛解(3つすべてのザベジェパント群)、投与後2~48時間の持続的疼痛緩和(ザベジェパント5mgおよび10mg)、投与後2~48時間の持続的寛解(3つすべてのザベジェパント群)を示し、早ければ30分(20mg)で正常な機能に戻る。10および20mgの用量は、疼痛緩和および2時間で正常な機能に戻る両方の治療上の利点を示した(表8)。
【表8-1】
【表8-2】
【表8-3】
【表8-4】
【0127】
この単回用量試験では、鼻腔内ザベジェパントは良好な忍容性を示し、安全であった。5%を超える個々の有害事象(AE)は、味覚異常(ザベジェパント群では13.5~16.1%、プラセボ群では3.5%)および鼻不快感(ザベジェパント群では1.3~5.2%、プラセボ群では0.2%)であった。AEの大部分(>80%)の強度は軽度であった。いずれの治療群においても、ASTもしくはALT>3xULN、または総ビリルビン>2xULNを有する対象がいなかったため、肝毒性のシグナルはなかった(表9)。
【表9】
【0128】
本出願を通じて、様々な刊行物は、著者の氏名および日付、または特許番号もしくは特許公開番号によって参照される。これらの刊行物の開示は、本明細書に記載および特許請求される本発明の日付時点での当業者に既知の技術の状態をより完全に説明するために、参照によりそれらの全体が本出願に組み込まれる。しかしながら、本明細書における参考文献の引用は、そのような参考文献が本発明の先行技術であるという認識として解釈されるべきではない。
【0129】
当業者は、本明細書に記載される特定の手順に対する多数の均等物を、日常的な実験のみを使用して認識するか、または確認することができるであろう。かかる均等物は、本発明の範囲内であるとみなされ、以下の特許請求の範囲によってカバーされる。例えば、本明細書の説明および実施例で具体的に開示されるもの以外の薬学的に許容される塩を用いることができる。さらに、項目リスト内の特定の項目、またはより大きな項目の群内の項目のサブセットの群は、そのような組み合わせを特定する本明細書の特定の開示の有無にかかわらず、他の特定の項目、項目のサブセットの群、または項目のより大きな群と組み合わせることができることが意図される。
【国際調査報告】