(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-21
(54)【発明の名称】体内又は体表上のバイオナノエレメントと体外又は体内のマクロ/マイクロデバイスとの間の無線通信を提供するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20230214BHJP
G01N 22/00 20060101ALI20230214BHJP
H04B 1/59 20060101ALI20230214BHJP
A61B 5/07 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
A61B5/00 N
G01N22/00 S
G01N22/00 V
A61B5/00 102A
H04B1/59
A61B5/07 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022536705
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(85)【翻訳文提出日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 TR2020051338
(87)【国際公開番号】W WO2021126135
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TR
(32)【優先日】2020-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522039474
【氏名又は名称】ボアズィチ ウニヴェルシテシ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デュマンリ オクタール、セマ
【テーマコード(参考)】
4C038
4C117
【Fターム(参考)】
4C038CC03
4C038CC09
4C117XB01
4C117XC11
4C117XC21
4C117XE02
4C117XE52
4C117XE62
4C117XF03
4C117XH02
(57)【要約】
本発明は、体内又は体表上のナノエレメント(300)からデータを受信するためのシステムである。したがって、前記システムは、体内から体外へデータを伝送するために身体上又は体表上に取り付けられるアンテナ(110)と、前記アンテナ(110)が電磁信号に曝されたとき電磁信号を変化させ、及び反射するように構成されたアンテナ本体(111)とを含む分子通信ユニット(100)を備え、前記アンテナ本体(111)が、体内又は体表上のファクタに曝されたとき形状を変化させる材料から成る再形状化可能な部分(112)を含む。本発明は、ナノエレメント(300)にデータを送るためのシステムでもある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内又は体表上のナノエレメント(300)からデータを受信するためのシステムであって、分子ナノ通信ネットワークからボディエリアネットワークへデータを伝送するための体内又は体表上に取り付けられるアンテナ(110)を備える分子通信ユニット(100)を備え、前記アンテナは、曝される電磁信号を変形させ、及び反射するように構成されたアンテナ本体(111)を備え、前記アンテナ本体(111)は、体内又は体表上のファクタに曝されたときにその形状を変化させる材料から成る再形状化可能な部分(112)を備える、システム。
【請求項2】
電磁信号を前記アンテナ(110)に送信し、且つ前記アンテナ(110)によって反射された前記電磁信号を受信するための受信機/送信機(220)と、該受信機/送信機(220)による前記アンテナ(110)への電磁信号の送信を制御し、及び前記受信機/送信機(220)から受信される電磁信号を受信するように構成されたプロセッサユニット(210)とを有する、別の通信ユニット(200)が提供されており、前記プロセッサユニット(210)は、前記アンテナ(110)から受信された前記電磁信号の少なくとも1つの特有の性質に従って体内のファクタに曝されているかどうかを決定するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記アンテナ本体(111)の全体が、前記再形状化可能な部分(112)である、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
体内又は体表上のファクタに曝されたときにその形状を変化させる前記材料が、生分解性材料である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記再形状化可能な部分(112)を少なくとも部分的に包むようにバイオフィルム(120)が提供されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記再形状化可能な部分(112)は、第1の物質(122)に曝されたとき生分解速度が上昇する材料を含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記システムが、メッセンジャー分子(310)に曝されたときに前記第1の物質(122)を生成する前記バイオフィルム(120)を生成するための遺伝子組換え微生物(121)を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1の物質(122)が、酸性の酸である、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記メッセンジャー分子(310)が、細菌感染に関連したクオラムセンシング分子であり、前記遺伝子組換え微生物(121)が前記クオラムセンシング分子に曝されると、前記第1の物質(122)として酸性の酸を生じる大腸菌株である、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記生分解性材料は、マグネシウム、鉄及び二層の亜鉛/鉄から選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記再形状化可能な部分(112)の分解速度を減速させるために前記アンテナ(110)を少なくとも部分的に包むように少なくとも1つの基板(130)が提供されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項12】
前記基板(130)が、生分解性材料を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記基板(130)が、セバシン酸ポリグリセリン、ポリオクタメチレンマレイン酸(無水物)クエン酸塩、ポリ乳酸及びポリ乳酸・グリコール酸共重合体のうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記アンテナ(110)が間に受け入れられるように2つの前記基板(130)が提供されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記再形状化可能な部分(112)が、所定のしきい値を超過する力に曝されたとき曲がるように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
メッセンジャー分子(310)に曝されたときに歪むことによって、及び前記再形状化可能な部分(112)に力を加えることによって前記再形状化可能な部分(112)の変形を提供する前記再形状化可能な部分(112)に関連した遺伝子組み換え組織(140)が提供されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記遺伝子組み換え組織(140)が、筋肉組織である、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記特有の性質が、周波数である、請求項2に記載のシステム。
【請求項19】
前記別の通信ユニット(200)が、前記プロセッサユニット(210)によってデータを読み取ることを可能にするように前記プロセッサユニット(210)と関連付けられて提供されたメモリユニット(230)を備え、前記プロセッサユニット(210)が、前記メモリユニット(230)に存在する少なくとも1つの特有の性質からの、前記アンテナ(110)から受信された前記信号の前記特有の性質の逸脱に従って、前記アンテナ(110)が体内のファクタに曝されているかどうかを決定するように構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項20】
前記別の通信ユニット(200)が、入力出力ユニットを備え、前記入力出力ユニットが、前記プロセッサユニット(210)に、体内のファクタへの前記アンテナ(110)の曝露に関連した出力を実現させる、請求項2に記載のシステム。
【請求項21】
前記別の通信ユニット(200)が、本体を含み、前記本体が、体内又は体表上に配置されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項22】
前記アンテナ本体(111)が、第1の部分(113)と、第1の再形状化可能な部分(117)によって前記第1の部分(113)に接続された第2の部分と、第2の再形状化可能な部分(118)によって前記第2の部分(114)に接続された第3の部分とを含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項23】
前記第1の再形状化可能な部分(117)及び前記第2の再形状化可能な部分(118)が、互いに異なるファクタに曝されたときに分解される生分解性材料から成る、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記第1の再形状化可能な部分(117)及び前記第2の再形状化可能な部分(118)が、互いに異なる生分解速度を有する基板(130)でコーティングされている、請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
前記基板の生分解速度を調節するために、コーティング厚さが、目標分解速度に従って所定の厚さのうちの1つのから選択される、請求項22に記載のシステム。
【請求項26】
体内のナノエレメント(300)からデータを受信する方法であって、
受信機/送信機(220)によって電磁信号に曝されたとき電磁信号を反射するように構成されたアンテナ本体(111)と、前記アンテナ本体(111)が体内のファクタに曝されたとき形状を変化させることができる材料から成る再形状化可能な部分(112)とを有するアンテナ(110)にプロセッサユニット(210)が呼掛け信号を送信するステップと、
前記プロセッサユニット(210)が、前記受信機/送信機(220)により、前記アンテナ(110)で前記呼掛け信号を反射することによって生成された応答信号を受信するステップと、
前記プロセッサユニット(210)が、所定の基準となる特有の性質からの、受信された前記応答信号の特有の性質の逸脱に従って、前記アンテナ(110)が体内のファクタに曝されているかどうかを決定するステップと
を含む、方法。
【請求項27】
体内のメッセンジャー分子(310)と通信するナノエレメント(300)にデータを伝送するためのシステムであって、分子通信ユニット(100)が、身体に取り付けられるように提供されており、前記分子通信ユニット(100)が、バイオフィルム(120)を有し、電磁信号に曝されたとき加熱され及び所定の温度レベルに達したときメッセンジャー分子(310)を生成する遺伝子組換え微生物を収容している、システム。
【請求項28】
電磁信号に曝されたとき前記電磁信号を反射するように構成されたアンテナ(110)が提供されている、請求項27に記載の通信するナノエレメント(300)にデータを伝送するためのシステム。
【請求項29】
別の外部通信ユニット(200)が提供されており、前記別の外部通信ユニット(200)が、電磁信号を前記アンテナ(110)に送信し、及び前記アンテナ(110)によって反射された前記電磁信号を受信するための受信機/送信機(220)と、前記受信機/送信機(220)による前記アンテナ(110)への電磁信号の送信を制御するように構成されたプロセッサユニット(210)とを有し、データが前記ナノエレメント(300)へ送られるとき、前記プロセッサユニット(210)が、前記受信機/送信機(220)によって送られた呼掛け信号に対応して反射された前記アンテナ(110)の応答信号に従って前記アンテナ(110)の共振周波数を検出し、検出された共振周波数において連続的且つモノリシックな形態で前記アンテナ(110)を加熱する目的のために電磁加熱信号を送信するように構成されている、請求項28に記載のシステム。
【請求項30】
体外から体内又は体表上への情報伝送を提供するために体内又は体表上に配置される生分解性カプセルが提供されており、前記カプセルは、分子通信において使用されるメッセンジャー分子(310)を含み、カプセル壁部が、体外から送られる前記電磁信号に曝されたとき、前記メッセンジャー分子(310)が、熱の増大により解放される、請求項1に記載のシステム。
【請求項31】
前記アンテナ(110)が、温度が上昇すると生分解速度が高まる生分解性材料から成り、前記プロセッサユニット(210)が、前記加熱信号の反射された形態で応答加熱信号を受信し、該応答加熱信号の特有の性質が所定の量において所定の基準となる特有の性質から逸脱することを検出した場合、前記加熱電磁信号の送信を停止させるように構成されている、請求項29に記載のシステム。
【請求項32】
体内のメッセンジャー分子(310)と通信するナノエレメント(300)にデータを伝送する方法であって、
プロセッサユニット(210)が、入力としてデータ伝送コマンドを受信するステップと、
前記プロセッサユニット(210)が、電磁波が受信機/送信機(220)によってアンテナに当たると、アンテナに当たる反射された電磁波を反射するアンテナ(110)に電磁波を送信するステップと、
前記プロセッサユニット(210)が、前記受信機/送信機(220)により前記アンテナ(110)によって反射された前記電磁波の共振周波数を決定するステップと、
前記プロセッサユニット(210)が、前記アンテナ(110)の近傍に提供された遺伝子組換え微生物(121)のバイオフィルム(120)の温度を上昇させ、温度が、決定された前記共振周波数において所定のレベルまで増大したときメッセンジャー分子(310)を生成するために、決定された前記共振周波数において前記アンテナ(110)に連続的且つ単調な電磁信号を送信するステップと
を含む、方法。
【請求項33】
前記アンテナ本体(111)が、温度上昇の場合に分解速度が上昇する生分解性材料から成り、
前記プロセッサユニット(210)が、前記受信機/送信機(220)により前記アンテナ(110)で共振周波数において連続的且つモノリシックな電磁信号を反射することによって生成される応答信号を受信し、
前記プロセッサユニット(210)が、応答信号の特有の性質が、所定の量において所定の基準となる特有の性質から逸れていることを検出した場合、電磁信号の送信を停止させる、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内又は体表上に提供されたナノエレメントと、体外又は体内に提供されたマクロ/マイクロエレメントとの間のデータ交換を提供し、及び分子ナノ通信ネットワークからボディエリアネットワークへのデータ伝送を提供するシステム、並びに前記システムが適用される方法に関する。
【背景技術】
【0002】
身体に存在するナノマシン、ナノドラッグ、細菌などのナノエレメントは、メッセンジャー分子によって互いに通信する。
【0003】
欧州特許第1850513号の出願番号を有するEPO出願において、分子によって互いに通信するナノマシンが説明されている。
【0004】
体内のイベントを瞬間的に追跡するために、ナノエレメントは、体外に存在するデバイスと通信することができなければならない。体外のデバイスと体内のナノエレメントとの通信は、診断、治療及び感知の目的のために使用することができる。現在の技術において、ナノセンサを有し、ナノセンサから受信されたデータを、体外の外部通信ユニット(例えば、ボディエリアネットワーク(BAN))へ送信するエージェント・デバイス(agent devices)が公知である。
【0005】
L.Felicettiらの非特許文献、「Applications of molecular communications to medicine:A survey」、Nano Communication Networks 7(2016)、27~45頁には、血管内のナノエレメントと体外の通信ユニットとの間のデータ交換を提供するためにナノエレメントによって使用されるメッセンジャー分子を感知するナノセンサと、ナノセンサから取得されたデータを処理するプロセッサと、プロセッサからデータを受信するために血管に挿入されたプロップと、を含む方法が説明されている。しかしながら、この方法は、ナノエレメントと通信するのに適さず、さらに、データを取得したいとき、プロップが血管内に挿入されなければならない。
【0006】
その結果、上記全ての問題により、関連技術分野において改善が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】L.Felicettiら、「Applications of molecular communications to medicine:A survey」、Nano Communication Networks 7(2016)、27~45頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の欠点を排除し且つ関連技術分野に新たな利点をもたらすための、通信システム及び方法に関する。
【0010】
本発明の目的は、体内又は体表上のナノエレメントと、体外又は体内のマイクロ/マクロ電子デバイスとの間の通信を提供するシステム及び方法を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、体内又は体表上に電源を必要とすることなく、体内又は体表上のナノエレメントと、体外又は体内のマイクロ/マクロ電子デバイスとの間の通信を提供するシステム及び方法を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、無線式で、体内又は体表上のナノエレメントと、体外又は体内のマイクロ/マクロ電子デバイスとの間の通信を提供するシステム及び方法を提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、通信のために体内に配置された通信エレメントが、通信が終了した後に外科手術によって身体から除去される必要がない、システム及び方法を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、通信のために体内又は体表上に配置された通信エレメントによって身体に与えられる害が低減される、システム及び方法を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、体内又は体表上のナノエレメントと通信し、診断及び治療を提供する、システム及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の目的及び以下の詳細な説明から推論される目的を実現するために、本発明は、体内又は体表上のナノエレメントからデータを受信するためのシステムである。したがって、改善は、前記システムが、体内から又は身体を通じて体外へデータを伝送するために体内又は体表上に取り付けられるアンテナを含む分子通信ユニットを備え、前記アンテナは、曝される電磁信号を変形させ、及び反射するように構成されたアンテナ本体を備え、前記アンテナ本体は、体内又は体表上のファクタに曝されたときにその形状を変化させる材料から成る再形状化可能な部分を備える。アンテナの形状が変化すると、共振周波数が変化し、それによって、この周波数が別の通信ユニットによって感知され、データを体内から又は身体を通じて体外へ伝送することができる。受動アンテナが使用され、かつアンテナが体内のファクタに従って変化を示すので、電源、ケーブル、プロップなどは必要ない。
【0017】
本発明の別の好適な実施形態において、電磁信号をアンテナに送信し、且つアンテナによって反射された電磁信号を受信するための受信機/送信機と、該受信機/送信機によるアンテナへの電磁信号の送信を制御し、及び受信機/送信機から受信される電磁信号を受信するように構成されたプロセッサユニットとを有する、別の通信ユニットが提供されており、前記プロセッサユニットは、アンテナから受信された電磁信号の少なくとも1つの特有の性質に従って体内又は体表上の領域からのファクタに曝されているかどうかを決定するように構成されている。したがって、アンテナにおける形状の変化が検出され、ナノエレメントによって送られるデータは、体内又は体表上の領域において電源、ケーブル、プロップを必要とすることなく取得することができる。
【0018】
本発明の好適な実施形態において、前記アンテナ本体の全体が、再形状化可能な部分である。
【0019】
本発明の別の好適な実施形態において、体内又は体表上のファクタに曝されるときにその形状を変化させる前記材料は、生分解性材料である。したがって、外科手術を必要とすることなく、アンテナは、身体において生分解され、身体から除去される。
【0020】
本発明の別の好適な実施形態において、体表上のファクタに曝されたときにその形状を変化させることができる前記材料は、好ましくは、生分解性の容器、シース(sheath)などに類似の実施形態において提供されている。
【0021】
本発明の別の好適な実施形態において、再形状化可能な部分を少なくとも部分的に包むバイオフィルムが提供されている。
【0022】
本発明の別の好適な実施形態において、再形状化可能な部分は、第1の物質に曝されたとき生分解速度が上昇する材料を含む。
【0023】
本発明の別の好適な実施形態において、前記システムは、メッセンジャー分子に曝されたときに前記第1の物質を生成するバイオフィルムを生成するための遺伝子組換え微生物を含む。したがって、メッセンジャー分子がナノエレメントからのバイオフィルムと接触したとき、遺伝子組換え微生物は、第1の物質を生成し、再形状化可能な部分を生分解させる。
【0024】
本発明の別の好適な実施形態において、前記メッセンジャー分子は、細菌感染に関連したクオラムセンシング分子(quorum sensing molecule)であり、遺伝子組換え微生物が前記クオラムセンシング分子に曝されると、第1の物質として酸性の酸を生じる大腸菌株である。したがって、システムを、診断のために使用することができ、これに関連したデータを、細菌感染の場合に体外へ送ることができる。
【0025】
本発明の別の好適な実施形態において、前記生分解性材料は、体内又は体表上での使用に適したバイオ材料から選択される。前記生分解性材料は、好ましくは、マグネシウム、鉄及び二層の亜鉛/鉄から選択される。
【0026】
本発明の別の好適な実施形態において、再形状化可能な部分の分解速度を減速させるために、アンテナを少なくとも部分的に包むように少なくとも1つの基板が提供される。したがって、アンテナが作動条件において体内にとどまることが望まれる期間を増大することができる。
【0027】
本発明の別の好適な実施形態において、前記基板は、生分解性材料を含む。
【0028】
本発明の別の好適な実施形態において、前記基板は、好ましくは、セバシン酸ポリグリセリン(polyglycerol sebacate)、ポリオクタメチレンマレイン酸(無水物)クエン酸塩(polyoctamethylene meleate (anhydrite) citrate)、ポリ乳酸(polylactic acid)及びポリ乳酸・グリコール酸共重合体(poly(lactic-co-glycolic acid))のうちの少なくとも1つを含む。
【0029】
本発明の別の好適な実施形態において、前記基板の生分解速度を調節するために、コーティング厚さは、目標分解速度に従って所定の厚さのうちの1つから選択される。
【0030】
本発明の別の好適な実施形態において、体内での使用時にアンテナを間に取り込むように2つの基板が提供されている。したがって、分子通信ユニットの全体が体内で分解され、外科手術によるそれの除去の必要性が排除される。
【0031】
本発明の別の好適な実施形態において、前記再形状化可能な部分が、所定のしきい値を超過する力に曝されたとき曲がるように構成されている。
【0032】
本発明の別の好適な実施形態において、メッセンジャー分子に曝されたときに歪むことによって、及び再形状化可能な部分に力を加えることによって再形状化可能な部分の変形を提供する再形状化可能な部分に関連した遺伝子組み換え組織が提供されている。
【0033】
本発明の別の好適な実施形態において、前記遺伝子組み換え組織が、筋肉組織である。したがって、外部エネルギーを必要とすることなくアンテナを変形させることができる。
【0034】
本発明の別の好適な実施形態において、別の通信ユニットが、プロセッサユニットによってデータを読み取ることを可能にするようにプロセッサユニットと関連付けられて提供されたメモリユニットを備え、プロセッサユニットが、メモリユニットに存在する少なくとも1つの特有の性質からの、アンテナから受信された信号の特有の性質の逸脱に従って、アンテナが体内又は身体上の領域のファクタに曝されているかどうかを決定するように構成されている。
【0035】
本発明の別の好適な実施形態において、前記特有の性質が、周波数である。したがって、共振周波数におけるアンテナの逸脱が検出され、メッセンジャー分子が取得されるか否かが検出される。
【0036】
本発明の別の好適な実施形態において、別の外部通信ユニットが、入力出力ユニットを備え、入力出力ユニットが、プロセッサに、体内又は体表上の領域のファクタへのアンテナの曝露に関連した出力を実現させる。
【0037】
本発明の別の好適な実施形態において、別の外部通信ユニットは、デバイス本体を含み、前記デバイス本体は体内又は体表上に配置されている。
【0038】
本発明の別の好適な実施形態において、アンテナ本体は、第1の部分と、第1の再形状化可能な部分によって前記第1の部分に接続された第2の部分と、第2の再形状化可能な部分によって前記第2の部分に接続された第3の部分とを含む。
【0039】
本発明の別の好適な実施形態において、第1の再形状化可能な部分及び第2の再形状化可能な部分が、互いに異なるファクタに曝されたときに分解される生分解性材料から成る。
【0040】
本発明の別の好適な実施形態において、第1の再形状化可能な部分及び第2の再形状化可能な部分は、互いに異なる生分解速度を有する基板でコーティングされている又は異なる厚さを有する同じ生分解性材料でコーティングされている。アンテナの異なる部分は、異なるメッセンジャー分子に応答し、アンテナから受信された信号は検査され、どのメッセンジャー分子が取得されるかに関するデータが受信され、これにより、データ伝送帯域が増大する。
【0041】
本発明は、さらに、体内又は体表上の領域のナノエレメントからデータを受信する方法である。したがって、改善は、その方法が、
受信機/送信機によって電磁信号に曝されたとき電磁信号を反射するように構成されたアンテナ本体と、前記アンテナ本体が体内又は体表上の領域のファクタに曝されたとき形状を変化させることができる材料から成る再形状化可能な部分とを有するアンテナにプロセッサユニットが呼掛け信号を送信するステップと、
前記プロセッサユニットが、前記受信機/送信機により、応答信号、アンテナによって反射された呼掛け信号を受信するステップと、
プロセッサユニットが、所定の基準となる特有の性質からの、受信された応答信号の特有の性質の逸脱に従って、アンテナが体内又は体表上の領域のファクタに曝されているかどうかを決定するステップとを含む、方法。
【0042】
本発明は、さらに、体内又は体表上の領域のメッセンジャー分子と通信するナノエレメントにデータを伝送するためのシステムである。したがって、本発明のシステムの改善は、外部通信ユニットが、体内又は体表上の領域に取り付けられるように提供されており、電磁信号に曝されたとき熱を生成するように構成されたアンテナを有し、バイオフィルムが、前記アンテナに関連し、所定の温度レベルに達したときメッセンジャー分子を生成する遺伝子組換え微生物を収容していることである。
【0043】
本発明の別の好適な実施形態において、外部通信ユニットが提供されており、外部通信ユニットが、電磁信号をアンテナに送信し、及びアンテナによって反射された電磁信号を受信するための受信機/送信機と、前記受信機/送信機によるアンテナへの電磁信号の送信を制御するように構成されたプロセッサユニットとを有し、データがナノエレメントへ送られるとき、前記プロセッサユニットが、受信機/送信機によって送られた呼掛け信号に対応して反射されたアンテナの応答信号に従ってアンテナの共振周波数を検出し、検出された共振周波数において連続的且つモノリシックな形態でアンテナに電磁加熱信号を送信するように構成されている。したがって、データ伝送は、マイクロ/マクロデバイスから体内のナノエレメントへ提供される。
【0044】
本発明の別の好適な実施形態において、前記アンテナが、温度が上昇すると生分解速度が高まる生分解性材料から成り、プロセッサユニットが、前記加熱信号の反射された形態で応答加熱信号を受信し、応答加熱信号の特有の性質が所定の量において所定の基準となる特有の性質から逸脱することを検出した場合、加熱プロセスを停止させるように構成されている。したがって、データ伝送が完了したとき、加熱プロセスが停止される。
【0045】
本発明は、さらに、体内又は身体上の領域のメッセンジャー分子と通信するナノエレメントにデータを伝送する方法である。したがって、改善は、その方法が、
プロセッサユニットが、入力としてデータ伝送コマンドを受信するステップと、
プロセッサユニットが、電磁波が受信機/送信機によってアンテナに当たると、アンテナに当たる反射された電磁波を反射するアンテナに電磁波を送信するステップと、
プロセッサユニットが、受信機/送信機によりアンテナによって反射された電磁波の共振周波数を決定するステップと、
プロセッサユニットが、アンテナの近傍に提供された遺伝子組換え微生物を含むバイオフィルムの温度を上昇させ、温度が、決定された共振周波数において所定のレベルまで増大したときメッセンジャー分子を生成するために、決定された共振周波数においてアンテナに連続的且つ単調な電磁信号を送信するステップとを含む、方法。
【0046】
本発明の別の好適な実施形態において、情報が、マイクロ/マクロデバイスから体内又は体表上の分子通信へ伝送される。この実施形態において、体内又は体表上に配置される生分解性カプセルが存在する。カプセルは、分子通信において使用される分子を含む。カプセル壁部が、体外から送られる電磁信号に曝されたとき、熱の増大により分解され、メッセンジャー分子の解放につながる。
【0047】
本発明の別の好適な実施形態において、前記アンテナ本体が、温度上昇の場合に分解速度が上昇する生分解性材料から成り、
プロセッサユニットが、受信機/送信機によりアンテナで共振周波数において連続的且つモノリシックな電磁信号を反射することによって生成される応答信号を受信し、
プロセッサユニットが、応答信号の特有の性質が、所定の量において所定の基準となる特有の性質から逸れていることを検出した場合、電磁信号の送信を停止させる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】体内で使用するための本発明のシステムの典型的な図である。
【
図2a】データを体内から体外へ送信する、体内で使用するためのシステムの典型的な図である。
【
図2b】体内で使用するための、データを体内から体外へ送信する通信ユニットのアンテナの再形状化可能な部分における部分的な生分解された形態の典型的な図である。
【
図2c】体内で使用するための、データを体内から体外へ送信する通信ユニットのアンテナの再形状化可能な部分における部分的な生分解された形態の典型的な図である。
【
図3】体内で使用するための、データを体内から体外へ送信する通信ユニット及び前記通信ユニットを含むシステムの可能な実施形態の典型的な図である。
【
図4】体内で使用するための、データを体内から体外へ送信する、バイオフィルムを含む通信ユニット及び前記通信ユニットを含むシステムの可能な実施形態の典型的な図である。
【
図5】体内で使用するための、体内から体外へデータを送信する通信ユニットの可能な実施形態の典型的な図であり、前記実施形態は、段階的にデータの伝送を提供し、システムは、前記通信ユニットを含む。
【
図6】体内で使用するための、体内から体外へデータを送信する通信ユニットの可能な実施形態の典型的な図であり、前記実施形態は、遺伝子組み換え組織によって変形されたようにデータの送信を提供し、システムは、前記通信ユニットを含む。
【
図7】体内で使用するための、体外から体内へデータを送信する通信ユニットの典型的な図であり、システムは、前記通信ユニットを含む。
【
図8】体内で使用するための本発明のシステムのより詳細な典型的な図である。
【
図9】別の通信ユニットが、外部で人体に接続されており、分子通信ユニットが体内で使用するために体内に配置されている典型的な図である。
【
図10】血清中に配置された生分解性材料と、大腸菌を含む血清中に配置された生分解性材料との分解速度の測定の典型的な図である。
【
図11】生分解速度が
図10に示された材料の分解により、電磁波によって監視することを含むS21パラメータ-周波数測定グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
この詳細な説明において、本明細書は、発明をより理解可能にするためにのみいかなる限定的効果も形成することなく実例を参照して説明される。
【0050】
図1を参照すると、本発明は、体内のナノエレメント(300)と体外の別の通信ユニットとの間の通信のためのゲートウェイとして機能する、本発明の好適な方法である分子通信ユニット(100)、及びそのような分子通信ユニットを含むシステムである。
【0051】
本明細書で言及されるナノエレメント(300)は、体内のメッセンジャー分子(310)と通信するエレメントを意味する。ナノエレメント(300)は、細菌などの細胞又はナノドラッグ、ナノマシンなどの人工的エレメントであってもよい。互いに通信することによりナノエレメント(300)によって形成されるネットワークは、当技術分野において分子ナノ通信ネットワーク(Molecular Nano Communication Network(MNCN))として知られている。
【0052】
メッセンジャー分子(310)は、ナノエレメント(300)によって生成される又は受け取られる分子を意味する。例えば、ナノエレメント(300)は、メッセンジャー分子(310)を生成し、信号を他のナノエレメント(300)又は他の細胞へ送信する。別の実例において、細菌が感染症につながる場合、メッセンジャー分子(310)が生じる場合がある。
【0053】
本発明のシステムは、基本的に、分子通信ユニット(100)のおかげで体内又は体外での使用におけるメッセンジャー分子(310)を検出し、それに応じて信号の生成を提供し、別の通信ユニット(200)は、この信号を受信し、体内又は体表上の領域から体外への通信の部分を実現し、別の通信ユニット(200)は、信号を分子通信ユニット(100)へ送信し、メッセンジャー分子(310)は分子通信ユニット(100)によって生成され、体外から体内又は体表上の領域への通信の部分が実現される。その詳細が以下に示される分子通信ユニット(100)の新規の構造は、体内においてバッテリなどのいかなる電源も必要とすることなく体外から体内へ、及び体内から体外へのデータ伝送を提供する。
【0054】
図2aには、分子通信ユニット(100)の構造が示されており、分子通信ユニット(100)は、体内又は体表上の領域のナノエレメント(300)から体外の別の通信ユニット(200)へデータを伝送する。この可能な実施形態における分子通信ユニット(100)は、アンテナ本体(111)を有するアンテナを備え、アンテナ本体(111)は、アンテナ本体が受信する電磁信号に従って電磁信号を反射する。当技術分野においても知られているように、前記アンテナ本体(111)は、受動RFIDタグのアンテナと同様に動作する。言い換えれば、アンテナ本体(111)は、後方反射との通信を行うように配置されている。アンテナ本体(111)は、曝される電磁信号のタイプ及び自己の形態に従って応答信号を生成する。
【0055】
アンテナ本体(111)は、アンテナ本体(111)の少なくとも1つの部分が体内の少なくとも1つのファクタに曝されたときに形状を変化させる材料から成る再形状化可能な部分を含む。本発明のこの可能な実施形態において、アンテナ本体(111)の全体が、再形状化可能な部分を含む。再形状化可能な部分が体内のファクタに曝されると、前記再形状化可能な部分の形態が変化し、アンテナによって生成される電磁信号が変化し、アンテナは、この変化に関連した情報を間接的に送信し、体内又は体表上の領域から体外へデータフローを提供する。
【0056】
システムの別の通信ユニット(200)は、電磁信号をアンテナへ送信し、及びアンテナによって反射された応答を受信するための受信機/送信機(220)を備える。前記受信機/送信機(220)は、広帯域で動作し、電磁波を分配/受信するためのデジタル化に必要とされる、当技術分野において公知の調節可能アンテナ(図示せず)及びその他の構成要素を備える。別の通信ユニット(200)は、受信機/送信機(220)を制御し、受信機/送信機(220)によって受信された電磁信号を処理するためのプロセッサユニット(210)を備える。別の通信ユニット(200)は、メモリユニット(230)も備え、メモリユニット(230)においてプロセッサユニット(210)がデータを読み取り、及び書き込むことができる。別の通信ユニット(200)は、さらに、入力/出力ユニット(240)を備えることができ、入力/出力ユニット(240)は、プロセッサユニット(210)に入力データを提供し、プロセッサユニット(210)によって外方へデータの伝送を提供する。入力/出力ユニット(240)は、キーボード、マウス、スクリーンなど及び無線通信モジュールなどのような周辺ユニットのポートであってもよい。可能な実施形態において、別の通信ユニット(200)は、ボディエリアネットワーク(BAN)又はその他の外部デバイス(400)に接続されるように構成されている。可能な実施形態において、別の通信ユニット(200)は、本体を備え、前記本体は、ウェアラブルの形態で提供されている。前記本体は、リストバンド、腕時計などの形態であってもよく、体内に配置してもよい。
【0057】
体内又は体表上から体外へのデータの伝送中、別の通信ユニット(200)は以下のように機能する。
【0058】
プロセッサユニット(210)は、受信機/送信機(220)によってアンテナへの呼掛け信号の送信を提供する。アンテナ(111)は、呼掛け信号を反射することによって応答信号を生成する。プロセッサユニット(210)は、受信機/送信機(220)によって応答信号を受信する。プロセッサユニット(210)は、応答信号の特有の性質を評価する。前記特有の性質は、振幅、周波数などであってもよい。プロセッサユニット(210)は、応答信号の特有の性質が所定の基準となる特有の性質から逸脱していることをプロセッサユニット(210)が検出した場合にデータ(例えば、ビット「1」)がアンテナから来ることを決定し、プロセッサユニット(210)は、体内又は体表上の領域からデータを取得するプロセスの完了を提供する。
【0059】
より詳細には、プロセッサユニット(210)は、アンテナの深さに関して又はアンテナが通常条件下に配置された時間からの時間に関してアンテナによって送信されることになっている又はアンテナによって送信されることが想定される応答信号の基準となる特有の性質を含む、メモリユニット(230)に記録された表又はグラフィック(
図11に例として示されている)にアクセスすることができる。応答信号の特有の性質が前記表又はグラフィックにおいて逸脱することが検出された場合、アンテナの再形状化可能な部分が変形され又は予想よりも大きく変形され、メッセンジャー分子(310)がアンテナに到達し、データがこれに関連して生成されることが検出される。したがって、身体において、ナノエレメント(300)によって生成された通信分子が感知され、体外へ伝送される。これは、通信、感知、診断などの目的のために使用することができる。
【0060】
本発明のこの可能な実施形態において、再形状化可能な部分は、生分解性材料から成る。再形状化可能な部分(112)が所定のメッセンジャー分子(310)に曝されると、生分解速度が高まり、それ故に、通常の生分解中に反射される電磁信号の変化の速度が、異なるようになる。前記身体ファクタは、細菌感染によって生成されるメッセンジャー分子(310)、メッセンジャー分子(310)によって形成される熱変化又はメッセンジャー分子(310)によって形成される化学的変化であり得る。
【0061】
図2bにおいて、アンテナ本体(111)の再形状化可能な部分の部分的な生分解された形態の典型的な図が示されており、
図2bにおいて、生分解がより大きい場合の典型的な図が示されている。
図2a、
図2b及び
図2cにおけるアンテナによって反射される電磁信号は、アンテナの形態が変化し、ひいては、共振周波数が変化するため、識別可能に互いに異なる。
【0062】
図3において、体内から体外へデータを伝送する通信ユニットの別の可能な実施形態が示されている。通信ユニットは、受信する電磁信号に従って電磁信号を反射するアンテナ本体(111)を有するアンテナを備える。アンテナ本体(111)は、生分解性材料から成る再形状化可能な部分を含む。再形状化可能な部分(112)は、生分解された材料、又は前記再形状化可能な部分が、第1の物質(122)、又は第1の物質(122)の効果と類似の効果を有する物質に曝されたとき、生分解速度を高める材料から成る。
【0063】
生分解性材料は、マグネシウム、鉄、二層の亜鉛/鉄などであってもよい。
【0064】
分子通信ユニット(100)は、アンテナ本体(111)の再形状化可能な部分を少なくとも部分的に包むように提供されたバイオフィルム(120)を含む。前記バイオフィルム(120)は、メッセンジャー分子(310)に曝されたときに第1の物質(122)を生成する遺伝子組み換え微生物(121)によって形成されている。バイオフィルム(120)がメッセンジャー分子(310)に曝されると、バイオフィルム(120)は第1の物質(122)を生成し、アンテナの再形状化可能な部分が生分解に曝され、形態を変化させる。アンテナに到達する電磁信号の反射によりアンテナ(110)によって生成される応答は、生分解により変化し、これにより、メッセンジャー物質の存在に関連した識別可能な信号が生成される。
【0065】
限定するわけではなく、実例としてこの実施形態において言及されたメッセンジャー分子(310)は、細菌感染に関連したクオラムセンシング分子である。遺伝子組換え微生物(121)は、前記クオラムセンシング分子に曝されたとき第1の物質(122)として酸性の酸を生成/分泌する大腸菌株である。再形状化可能な部分は、マグネシウムを含む導体であってもよいが、これに限定されない。再形状化可能な部分の周囲に提供されたバイオフィルム(120)から分泌された酸性の酸は、再形状化可能な部分の生分解速度を高める。
【0066】
図4を参照すると、分子通信ユニット(100)は、少なくとも部分的に生分解の速度を低下させるためのアンテナを包む基板(130)も備えることができる。これにより、体内でのアンテナの寿命が長くなり、データをより長時間にわたって取得することができる。可能な実施形態において、アンテナは、2つの基板(130)の間に設けられている。同時に、基板(130)は、体内へのアンテナの配置を容易にする。前記基板(130)は、セバシン酸ポリグリセリン、ポリオクタメチレンマレイン酸(無水物)クエン酸塩、ポリ乳酸及びポリ乳酸・グリコール酸共重合体のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0067】
図5を参照すると、本発明の可能な実施形態において、アンテナ本体(111)は、第1の部分(113)と、第1の再形状化可能な部分(117)によって前記第1の部分(113)に接続された第2の部分と、第2の再形状化可能な部分(118)によって前記第2の部分(114)に接続された第3の部分とを含む。第1の再形状化可能な部分(117)及び第2の再形状化可能な部分(118)は、異なる材料から成る、又は異なる厚さを有する基板(130)によって包まれており、生分解は、段階的に実現することができる。第1の再形状化可能な部分(117)及び第2の再形状化可能な部分(118)は、異なる条件及び異なる時間において生分解を受けることができ、これにより、同じアンテナをより長時間使用することができ、同じアンテナがより多くのデータを送信することができる。本発明の別の可能な実施形態において、第1の再形状化可能な部分(117)及び第2の再形状化可能な部分(118)は、体内の異なるファクタに応答するように配置することができる。これにより、アンテナによる複数のファクタに関連したデータフローを提供することができる。
【0068】
図6を参照すると、分子通信ユニット(100)は、アンテナ本体(111)と、前記アンテナ本体(111)に設けられた再形状化可能な部分とを有するアンテナを備える。前記再形状化可能な部分は、力が加えられたとき物理的形態を変化させる材料から成る。より詳細には、再形状化可能な部分は、力が加えられたときにその物理的形態を変化させ、及び加えられた力が除去されたときにその物理的形態を回復させる材料から成る。分子通信ユニット(100)は、歪まされたときにアンテナ本体(111)の形態を変化させるためにアンテナ本体(111)の近傍に設けられた遺伝子組み換え組織(140)を備える。前記遺伝子組み換え組織(140)は、例えば昆虫から取り出された試料の筋肉組織の遺伝子を変化させることによって得られた組織であり得る。遺伝子組み換え組織(140)がメッセンジャー分子(310)に接触すると、遺伝子組み換え組織(140)は歪み、アンテナ本体(111)の再形状化可能な部分を変形させること、アンテナ本体(111)の共振周波数を変化させること、体内から体外へのデータ伝送を提供する。
【0069】
本発明の可能な実施形態において、遺伝子組み換え組織(140)は、心筋である。アンテナ(110)は、その形状を人体によって変形させることができ、その後アンテナ(110)が人体に配置されるように、遺伝子組み換え心筋と一緒に製造される。アンテナの寸法は、筋肉のリズムと一緒にリズミカルに変化し、これにより、反射された信号の振幅が2つの状態、つまり、高い状態と低い状態を有する。これは、受信された信号に心筋の周波数を有する方形波を乗じるようにモデル化することができる。遺伝子組み換え心筋がメッセンジャー分子に曝されると、遺伝子組み換え心筋はリズムを変化させ、ひいては、乗算信号の周波数が変化させられる。したがって、プロセッサユニット(210)は、周波数変調によってアンテナからデータを取り出す。
【0070】
言い換えれば、遺伝子組み換え心筋は、スイッチングミキサとして動作し、人体内に配置されたアンテナから反射された信号を変調する。筋肉の歪み周波数は、スイッチングの周波数と等しくなる。人間の心筋のリズムがアドレナリンによって変化する現象と同様に、遺伝子組み換え心筋のリズムは、分子通信において使用されるメッセンジャー分子によって変化させることができる。これにより、周波数シフトされたスイッチング法におけるように、心筋周波数との乗算の結果として反射される信号の周波数(f1=f0+fheart又はf2=f0+fexcited_heart)及びメッセンジャー分子の存在しない場合、及び存在する場合で遺伝子組み換え心筋との乗算の結果として反射された信号の周波数(f2=f0+fheart’)は、空間周波数及びマーク周波数(Mark frequencies)に対応する。
【0071】
本発明のこの可能な実施形態において、この材料は金である。代替的な実施形態において、この性質を有する異なる材料を使用することもできる。
【0072】
物理的形態の変化及び物理的形態の回復を提供する言及した力は、遺伝子組み換え組織によって生成される力を意味し、この力は、前記アンテナ本体(111)の共振周波数を変化させることができるようにアンテナ本体(111)の物理的形態を変化させることができる。この力及びこの力に対して柔軟である材料は、組織のタイプ並びにアンテナ本体(111)の形態及び厚さに従って変化を示す。
【0073】
図7において、分子通信ユニット(100)の図が示されており、分子通信ユニット(100)は、データを体外の別の通信ユニット(200)から体内又は身体上の領域のナノエレメント(300)へ伝送する。別の通信ユニット(200)は、データを体内から体外へ送信する構造を有する生分解性材料から成るアンテナと、アンテナを包むバイオフィルム(120)とを備える。遺伝子組換え微生物(121)におけるバイオフィルムが所定の温度に達すると、バイオフィルム(121)は、メッセンジャー分子(310)を分泌する。前記遺伝子組換え微生物(121)は、熱活性化による開始剤を含む大腸菌であってもよい。例えば、大腸菌が45度に達すると、大腸菌は、メッセンジャー分子(310)として機能するタンパク質を分泌する場合がある。当技術分野において公知の様々な微生物を、バイオフィルム(120)において使用される遺伝子組換え微生物(121)として使用することができる。微生物は、分泌されるメッセンジャー分子(310)に従って様々な分野で使用することができる。メッセンジャー分子(310)はナノエレメント(300)へ送られるので、通信を実現することができ、同時に、この性質を治療のために使用することができる。
【0074】
システムの別の通信ユニット(200)は、分子通信ユニット(100)におけるバイオフィルム(120)の加熱のためにプロセッサユニット(210)により受信機/送信機(220)によってアンテナに呼掛け信号の送信を提供する。プロセッサユニット(210)は、呼掛け信号から受信された応答信号に従ってアンテナの現在の共振周波数を決定する。後でナノエレメント(300)にデータを送信することが望まれる場合、プロセッサユニット(210)は、加熱する目的のための電磁信号をアンテナに受信機/送信機(220)によって、検出された共振周波数で送信する。アンテナは、受信された加熱信号を反射し、マイクロ波効果によりその周囲の加熱を提供する。アンテナの周囲が加熱され、遺伝子組換え微生物(121)のバイオフィルム(120)がメッセンジャー分子(310)を分泌する温度に達すると、体表上の領域又は体外から、体内への通信の部分が完了される。
【0075】
媒体の温度が上昇すると、アンテナ本体(111)における再形状化可能な部分の生分解速度も上昇する。プロセッサユニット(210)は、分解速度を監視し、加熱プロセスを停止させるために目標温度に達したかどうかを決定する。
【0076】
分子通信ユニット(100)が体内に配置されると、別の通信ユニット(200)が分子通信ユニット(100)に接近され、データ交換が容易に提供される。
図9を参照すると、可能な実施形態において、別の通信ユニット(200)は、身体に付着することができる形態で提供される。これにより、データ交換を継続的に実現することができ、患者を容易に監視することができる。
【0077】
図10には、血清内に配置されたマグネシウム試料の分解速度と、大腸菌を含む血清内に配置されたマグネシウム試料の分解速度との比較が示されている。前記試料は、DC Mg break-off法によってガラス上で生成された。マグネシウムは約8時間で血清中において完全に分解し、大腸菌を含む血清において完全に分解されたことが観察された。これは、大腸菌の細菌活性が分解速度を高めることを示している。
【0078】
分解は、細菌活性に関連しており、遺伝子組換え微生物(121)のおかげで、特定の分子によって制御可能な細菌活性に関連しているので、分解は、前記分子の存在に関連させられることができる。体内に配置されたアンテナ(100)(共振器)が分解するときの共振周波数の変化及び体外に存在するウェアラブルアンテナによるこの変化の監視により、分子通信が電磁通信に接続される。
図11において、血清中に配置された、アンテナの測定された周波数応答が、分解前及び分解中(再形状化可能な部分(112)が分解した後)の別の通信ユニット(200)とともに示されている。
【0079】
これは、体内のファクタに曝されたときに再形状化可能な部分の形態が変化するので、アンテナ(110)によって反射される電磁信号が変化することを示している。これにより、この変化に関連した情報は、体内又は体表上から体外へ伝送される。
【0080】
本発明の権利範囲は、添付の請求の範囲に示されており、詳細な説明の下で、上記に示された例示的な開示に限定することはできない。なぜならば、本発明の主要な原理から逸脱することなく、前述の開示に照らして、当業者が類似の実施形態を明らかに作り出すことができるからである。
【符号の説明】
【0081】
100 分子通信ユニット
110 アンテナ
111 アンテナ本体
112 再形状化可能な部分
113 第1の部分
114 第2の部分
115 第3の部分
117 第1の再形状化可能な部分
118 第2の再形状化可能な部分
120 バイオフィルム
121 遺伝子組換え微生物
122 第1の物質
130 基板
140 遺伝子組み換え組織
200 別の通信ユニット
210 プロセッサユニット
220 受信機/送信機
230 メモリユニット
240 入力/出力ユニット
300 ナノエレメント
310 メッセンジャー分子
400 外部デバイス
【国際調査報告】