(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-21
(54)【発明の名称】段ボール用軽量ライナーボード
(51)【国際特許分類】
D21H 27/00 20060101AFI20230214BHJP
D21H 27/30 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
D21H27/00 E
D21H27/30 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022536757
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(85)【翻訳文提出日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 IB2020061801
(87)【国際公開番号】W WO2021124040
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ランパイネン, セッポ
(72)【発明者】
【氏名】ミリーカンガス, ヤンネ
(72)【発明者】
【氏名】パアッカネン, ペトリ
(72)【発明者】
【氏名】ラークソ, アトソ
(72)【発明者】
【氏名】バックフォルク, カイ
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AC03
4L055AC06
4L055AC09
4L055AF09
4L055AF46
4L055AG47
4L055AH01
4L055AH37
4L055AJ01
4L055BD18
4L055CD25
4L055CD27
4L055CE78
4L055CF42
4L055EA04
4L055EA05
4L055EA07
4L055EA08
4L055EA12
4L055EA20
4L055EA23
4L055EA32
4L055FA13
4L055FA15
4L055GA06
(57)【要約】
本発明は、高い曲げ抵抗および高い圧縮強度を示し、それが、そのように形成された段ボールにおけるフルート間座屈およびたるみに対する高い抵抗性を提供するライナーボードを製造する方法に関する。これは、ライナーボードの各層中の完成紙料の最適化された繊維精製レベル、最上層の別な形成、および多層ヘッドボックスの使用による2層プライの形成の発明的組合せにより達成される。さらに、本発明により製造されたライナーボードは、フルーティング構造に悪影響を与えずに、そのように製造された段ボールにおける、特にフレキソ印刷での良好な印刷特性を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライナーボードを製造する方法であって、
第1完成紙料を板紙製造機の第1フォーミングファブリック上に供給することにより、第1層を含むトッププライを形成する工程であって、第1完成紙料が第1ヘッドボックスから吐出される、トッププライを形成する工程、
第2および第3完成紙料を第2フォーミングファブリック上に供給することにより、第2層および第3層を含む2層プライを形成する工程であって、第2および第3完成紙料が多層ヘッドボックスから吐出される、2層プライを形成する工程、
前記第2層が前記第1層と前記第3層の間に配置されるように、前記トッププライおよび前記2層プライを一緒にコーチングして、それによりマルチプライウェブを形成する工程、
前記マルチプライウェブを脱水および乾燥させる工程
を含み、
第1および第3完成紙料が、22~80の、好ましくは24~50のISO 5267-1による第1ショッパーリグラー値(SR値)を示し、第2完成紙料が、30未満、好ましくは25未満のISO 5267-1による第2ショッパーリグラー値(SR値)を示し、第1SR値が第2SR値より少なくとも2単位高い、方法。
【請求項2】
ライナーボードのISO2493-1による曲げ抵抗指数GMが少なくとも7Nm
6/kg
3であり、かつ/またはライナーボードのISO 9895によるSCT指数(CD)が、少なくとも20Nm/g、好ましくは少なくとも23Nm/gである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ライナーボードが、少なくとも220J/m
2のTAPPI T569によるスコットボンドおよび/または少なくとも4.5kPam
2/gのISO 2758による比破裂強さを示す、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ライナーボードの密度が、900kg/m
3未満、好ましくは850kg/m
3未満、より好ましくは800kg/m
3未満である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ライナーボードが、充填剤を、前記ライナーボードの総重量に対して計算して5重量%未満、好ましくは4重量%未満の量で含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
接着剤がトッププライと2層プライの第2層の間に位置するように、トッププライおよび2層プライのコーチング前に、接着剤をトッププライに塗布する工程であって、接着剤がデンプンおよび任意にミクロフィブリル化セルロース(MFC)を含む、接着剤をトッププライに塗布する工程をさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
接着剤が、セルロース繊維および微細繊維を含むパルプ画分をさらに含み、そのパルプ画分が60~90のSR値を示す、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記マルチプライウェブを脱水する工程が、2つのシュープレスを含むプレスセクション中でウェブをプレスすることを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
加熱されたカレンダーロールとバッキングロールまたはベルトの間に形成された少なくとも1つのニップを含むカレンダーセクション中でのマルチプライウェブのカレンダリングの工程をさらに含み、そのニップが、カレンダーセクション中の最高のライン負荷を提供し、前記最高のライン負荷が、100kN/m未満、好ましくは50kN/m未満である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
加熱されたカレンダーロールの温度が、80~250℃の範囲、好ましくは100~250℃の範囲である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ライナーボードの坪量が、80以上から135gsm以下の範囲であり、ライナーボードのISO 8791-2によるベントセン粗さが700ml/分未満である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ライナーボードの坪量が、135超から225gsm未満の範囲であり、ライナーボードのISO 8791-2によるベントセン粗さが900ml/分未満である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
第1層および第3層を形成する第1および第3完成紙料が未晒クラフトパルプを含み、ライナーボードの第2層を形成する第2完成紙料が、未晒クラフトパルプおよび/またはケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)および/または回収繊維を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ライナーボードの第2層を形成する第2完成紙料が、20重量%未満、好ましくは10重量%未満のCTMPを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
トッププライおよび2層プライを含むライナーボードであって、トッププライが第1層を含み、2層プライが第2および第3層を含み、
第1層および第3層が、22~80の、好ましくは24~50のISO 5267-1による第1SR値を示す完成紙料から製造されており、
第2層が、30未満、好ましくは25未満のISO 5267-1による第2SR値を示す完成紙料から製造されており、
第2および第3層を含む2層プライが、多層ヘッドボックスの使用により形成され、第1SR値が、第2SR値より少なくとも2単位高く、
第2層が第1層と第3層の間に位置し、かつ
ライナーボードが、少なくとも20Nm/g、好ましくは少なくとも23Nm/gのISO 9895によるSCT指数(CD)および少なくとも7Nm
6/kg
3のISO 2493-1による曲げ抵抗指数GMを示す、ライナーボード。
【請求項16】
ライナーボードが、少なくとも220J/m
2のTAPPI T569によるスコットボンドおよび/または少なくとも4.5kPam
2/g、好ましくは4.8akPam
2/g超、最も好ましくは5.0kPam
2/g超のISO 2758による比破裂強さを示す、請求項15に記載のライナーボード。
【請求項17】
ライナーボードの密度が、900kg/m
3未満、好ましくは850kg/m
3未満、より好ましくは800kg/m
3未満である、請求項15または16に記載のライナーボード。
【請求項18】
ライナーボードが、トッププライの前記第1層と2層プライの前記第2層の間に塗布されたデンプンおよび任意にMFCを含む接着剤を含む、請求項15から17のいずれか一項に記載のライナーボード。
【請求項19】
接着剤が、セルロース繊維および微細繊維を含むパルプ画分をさらに含み、その微細繊維画分が60~90のSR値を示す、請求項18に記載のライナーボード。
【請求項20】
ライナーボードが、加熱されたカレンダーロールとバッキングロールまたはベルトの間に形成された少なくとも1つのニップを含むカレンダーセクション中のカレンダリングに供されており、そのニップがカレンダーセクション中の最高のライン負荷を提供し、前記最高のニップ負荷が、100kN/m未満、好ましくは50kN/m未満であり、加熱されたカレンダーロールの温度が、80~250℃の範囲、好ましくは100~250℃の範囲である、請求項15から19のいずれか一項に記載のライナーボード。
【請求項21】
ライナーボードの坪量が80以上から135gsm以下の範囲であり、ライナーボードのISO 8791-2によるベントセン粗さが、700ml/分未満、好ましくは650ml/分未満である、請求項15から20のいずれか一項に記載のライナーボード。
【請求項22】
ライナーボードの坪量が、135超から225gsm未満の範囲であり、ライナーボードのISO 8791-2によるベントセン粗さが、900ml/分未満、好ましくは850ml/分未満である、請求項15から21のいずれか一項に記載のライナーボード。
【請求項23】
フルーティングおよび請求項15から22のいずれか一項に記載のライナーボードを含む段ボール。
【請求項24】
フルート間座屈傾向を減少させるための、段ボールの製造における請求項15から22のいずれか一項に記載のライナーボードの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボール用のライナーボードを製造する方法、ライナーボード、前記ライナーボードの使用、および前記ライナーボードを含む段ボールに関する。
【背景技術】
【0002】
段ボールは、異なる種類の包装に関する解決策に変換できる包装材料である。段ボールは、中芯(フルーティング)および波形媒体の表面に結合した少なくとも1つの仕上げ材またはライナーボードを含み、そのようにしてサンドイッチ構造を形成する繊維系材料である。中芯と呼ばれる中心の紙層は、コルゲーターを使用して、熱、水分、および圧力を使用して波形形状にすることにより形成される。ライナーと呼ばれる1または2つの仕上げ材は、中芯の頂点に糊付けされる。サンドイッチは、Kirwan M.,J.,Paper and Paperboard.Packaging Technology,Blackwell Publishing 2005に記載されている通り、両面、複両面、および複々両面などの異なる方法で形成できる。
【0003】
異なる種類の段ボールグレードがあり、これらは、異なる種類のライナーおよび中芯を含み得る。異なる種類のライナーの例としては、クラフトライナー、ホワイトトップクラフトライナー、およびテストライナーがある。クラフトライナーは、典型的には、漂白されていても未漂白でもよいクラフトパルプから製造され、1つまたは複数のプライを含み得るが、多くの場合、最上層/プライが良好な印刷表面および良好な耐湿性を与えるように最適化されている。テストライナーは、主に、回収された古段ボールから製造され、ほとんどが2プライにされている。クラフトライナーは、しばしば、強度特性が強く求められる波形包装に使用される。
【0004】
環境面での関心により、より軽量で原料の消費が少ないライナーボードの需要が増加した。しかし、ライナーボードの坪量の減少は、強度特性に悪影響を与え得る。フルート間座屈およびたるみの問題を回避するために、ライナーボードが、高い曲げ抵抗ならびに高い圧縮強度を示すことが重要である。フルート間座屈の問題は、波形構造のライナープライが荷重を受けて曲がり、そのため構造強度が弱くなる場合に起こる。たるみは、荷重を受けた波形包装の底部の変形の結果である。さらに、坪量が低めのライナーボードは、ウォッシュボーディングおよび印刷性不良の問題をより起こしやすくなり得る。「ウォッシュボーディング」または「ウォッシュボード効果」は、表面の印刷後にさらにより明らかになり得る、段ボール製造プロセスから生じる望ましくない効果である。ウォッシュボード効果は、通常、界面の糊の広がり/吸収および乾燥の間のライナーとフルーティングの間の糊の収縮と関連する。接着剤が乾燥するにつれて、ライナーは、フルートの輪郭を取るようになり、ウォッシュボードの外観を起こし得る。
【0005】
軽量ライナーボードおよびフルーティングの使用に関連する別の課題は、そのように製造された段ボールのフレキソ印刷での良好な印刷特性を達成しながら、フルーティング構造をそのままに維持することである。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、高い強度特性を示し、段ボールにおける先行技術軽量ライナーボードの使用の欠点の少なくともいくつかを無くすかまたは緩和する軽量ライナーボードを提供することである。より具体的な目的としては、フルート間座屈およびウォッシュボードに対するより高い抵抗性を有し、フレキソ印刷、インクジェットおよびオフセット印刷を使用して印刷する場合に良好な印刷特性も提供するライナーボードおよび段ボールを提供することがある。
【0007】
本発明は、添付される独立請求項により定義される。実施形態は、添付される従属請求項および以下の説明に述べられる。
【0008】
第1の態様において、本発明は、ライナーボードを製造する方法であって、
-第1完成紙料を、板紙製造機の第1フォーミングファブリック上に供給することにより、第1層を含むトッププライを形成する工程であって、第1完成紙料が第1ヘッドボックスから吐出される、トッププライを形成する工程、
-第2および第3完成紙料を、第2フォーミングファブリック上に供給することにより、第2層および第3層を含む2層プライを形成する工程であって、第2および第3完成紙料が多層ヘッドボックスから吐出される、2層プライを形成する工程、
-前記第2層が前記第1層と前記第3層の間に配置されるように、前記トッププライおよび前記2層プライを一緒にコーチングして、マルチプライウェブを形成する工程、
-前記マルチプライウェブを脱水および乾燥させる工程
を含み、
第1および第3完成紙料が、22~80の、好ましくは24~50のISO 5267-1による第1SR値を示し、第2完成紙料が、30未満、好ましくは25未満のISO 5267-1による第2SRを示し、第1SR値が第2SR値より少なくとも2単位高い、方法に関する。
【0009】
本発明の方法により製造されるライナーボードは、高い曲げ抵抗および高い圧縮強度を示し、それが、そのように形成された段ボールにおいてフルート間座屈およびたるみに対して高い抵抗性を与える。これは、ライナーボードの各層中の完成紙料の最適化された繊維精製レベル、最上層の別な形成、および多層ヘッドボックスの使用による2層バックプライの形成の発明的組合せにより達成される。さらに、本発明により製造されたライナーボードは、フルーティング構造に悪影響を与えずに、そのように製造された段ボールにおいて、特にフレキソ印刷で良好な印刷特性を提供する。かさ高い中間層は高い圧縮性を発生させ、それにより、ドットゲインおよびフルーティングに対する応力の望ましくない効果が、印刷プロセスの間に軽減されるだろう。構造は、表面粗さをさらに減少させ、そのため印刷特性がさらに増大する。
【0010】
第2の態様において、本発明は、第1層を含むトッププライならびに第2および第3層を含む2層プライを含むライナーボードであって、
-第1層および第3層が、22~80、好ましくは24~50のISO 5267-1によるSR値を示す完成紙料から製造されており、
-第2層が、30未満、好ましくは25未満のISO 5267-1によるSR値を示す完成紙料から製造されており、第1SR値が、第2SR値より少なくとも2単位高く、
-第2および第3層を含む2層プライが、多層ヘッドボックスの使用により形成され、
-第2層が第1層と第3層の間に位置し、ここで、
-ライナーボードが、少なくとも20Nm/g、好ましくは少なくとも23Nm/gのISO 9895によるSCT指数(CD)および少なくとも7Nm6/kg3のISO 2493-1による曲げ抵抗指数GMを示す、ライナーボードに関する。
【0011】
第3の態様において、本発明は、フルーティングおよび第2の態様のライナーボードによるライナーボードを含む段ボールに関する。
【0012】
本発明は、フルート間座屈傾向を減少させるための、段ボールの製造における第2の態様のライナーボードの使用にさらに関する。
【0013】
測定および評価方法
以下の方法および評価方法が、明細書および特許請求項において言及される。
【0014】
ショッパーリグラー(°SR)値は、ISO 5267-1に従って測定される。SRは、ネバードライパルプおよび精製パルプに関して、精製後の繊維完成紙料に測定される。
【0015】
SCT指数(CD)はISO 9895に従って測定される。
【0016】
曲げ抵抗指数は、15°の角度で、ISO 2493-1によるLorentzen & Wettre装置の使用により測定される。曲げ抵抗指数は、MDおよびCDで測定される。曲げ抵抗指数幾何平均(GM)は、CDおよびMDでの曲げ抵抗指数の積の平方根として計算される。
【0017】
スコットボンドはTappi T569に従って測定される。
【0018】
比破裂強さはISO 2758に従って測定される。
【0019】
密度はISO 534:2005に従って測定される。
【0020】
ベントセン粗さはISO 8791-2に従って測定される。
【0021】
坪量または坪量は、平方メートルあたりのグラム、gsmまたはg/m2として表される重量を指し、ISO 536に従って測定される。本明細書では、gsmとg/m2は互換的に使用され得る。
【0022】
引張剛性指数はISO 1924-3に従って測定される。引張剛性指数幾何平均(GM)は、MDおよびCDでの引張剛性指数の積の平方根として計算される。
【0023】
全測定は、別途指定のない限り、ISO 187による条件で実施される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書で使用される「多層ヘッドボックス」は、いくつか(少なくとも2つ)の別なCD分配チャンネルを含むヘッドボックスを定義する。ヘッドボックスノズルは、層が混合するのを防ぐ分離羽根を備えている。ヘッドボックスは、好ましくは、油圧タイプのヘッドボックスである。
【0025】
本明細書で使用される「完成紙料」は、セルロース繊維ならびに潜在的に、ライナーボード製造に従来使用される充填剤および添加剤を含む完成紙料を定義する。
【0026】
本明細書で使用される「充填剤」は、好ましくは、重質炭酸カルシウム(GCC)、カオリン、沈降炭酸カルシウム(PCC)、タルク、および二酸化チタンを含むがこれらに限定されない天然鉱物から製造された無機充填剤を定義するものとする。
【0027】
本明細書で使用される「ミクロフィブリル化セルロース(MFC)」は、少なくとも1つの寸法が1000nm未満であるナノスケールセルロース粒子繊維またはフィブリルを定義するものとする。MFCは、部分的または全体的にフィブリル化セルロースまたはリグノセルロース繊維を含む。遊離したフィブリルは1000nm未満の直径を有するが、実際のフィブリル直径または粒径分布および/またはアスペクト比(長さ/幅)は、源および製造方法に依存する。セルロースミクロフィブリル、フィブリル化セルロース、ナノフィブリル化セルロース、フィブリルアグリゲート、ナノスケールセルロースフィブリル、セルロースナノファイバー、セルロースナノフィブリル、セルロースマイクロファイバー、セルロースフィブリル、ミクロフィブリラーセルロース、ミクロフィブリルアグリゲート、およびセルロースミクロフィブリルアグリゲートなど、MFCの異なる頭字語がある。本発明は、トッププライおよび2層プライを含むライナーボードを製造する方法を開示する。本発明のライナーボードは、好ましくは、2つの形成ユニットならびに第1および第2ヘッドボックスを備えた従来のフォードリニアマシンであって、その第2ヘッドボックスが多層ヘッドボックスである、フォードリニアマシンで製造される。
【0028】
トッププライは、本発明によると、第1完成紙料を第1ヘッドボックスから第1フォーミングファイバー上に吐出することにより、第1完成紙料から形成される。第1ヘッドボックス中の完成紙料の粘稠性は、0.35%未満、好ましくはおよそ0.1~0.2%であり得る。
【0029】
第2工程において、第2および第3層を含む2層プライが、第2および第3完成紙料を多層ヘッドボックスから第2フォーミングワイヤ上に吐出することにより、第2および第3完成紙料から形成される。2層プライは、好ましくは、第3層が第2フォーミングワイヤ上に形成され、第2層が第3層上に形成されるように、完成紙料を多層ヘッドボックスから吐出することにより形成される。多層ヘッドボックス中の完成紙料の粘稠性は、0.45%未満、好ましくはおよそ0.2~0.35%であり得る。
【0030】
その後に、トッププライおよび2層プライは一緒にコーチングされて、第2層が第1層と第3層の間に配置されるようにマルチプライウェブを形成する。トッププライおよび2層プライは、好ましくは、コーチング前に、10~15重量%など7重量%を超える固体含有量まで脱水され得る。
【0031】
コーチング後に、マルチプライウェブはプレスセクションに入り得るが、それは、さらなる水を、典型的にはおよそ37~42重量%の固体含有量まで除去する。プレスセクションは、少なくとも1つのシュープレスユニット、好ましくは2または3つのシュープレスユニットを含み得る。マルチプライウェブは、従来の乾燥技術の使用によりさらに乾燥され得る。本発明と関連して使用される板紙製造機のスピードは、ウェットエンドで1300m/sまでになり得る。
【0032】
本発明の方法は、第1および第3層を形成する第1および第3完成紙料が、22~80、好ましくは24~50、最も好ましくは24~30または22~26または24~26のISO 5267-1による第1SR値を示すことをさらに特徴とする。第2層(中間層)を形成する第2完成紙料は、30未満、好ましくは25未満、または15~23もしくは17~22などの23未満もしくは21未満のISO 5267-1による第2SRを示す。本発明によると、第1SR値は、第2SR値より少なくとも2単位高く、好ましくは少なくとも5単位高いか、または少なくとも7単位高い。本発明は、方法に従って製造されたライナーボードおよび前記ライナーボードを含む段ボールをさらに開示する。
【0033】
本発明によるトッププライと第2および第3層を含む2層プライの別な形成は、トッププライのより微細な材料が2層プライの第2層のより粗い材料と混合することを妨げる。このようにして、ライナーボードの表面粗さは減少し、ボードの印刷性を改善する。本発明の発明者らは、そのように形成された段ボールにおけるフルート間座屈傾向を減少させるために、ライナーボードが高い曲げ抵抗および高いSCT指数(CD)値の両方を示す必要があることをさらに見出した。本発明のライナーボードは、少なくとも7Nm6/kg3、好ましくは少なくとも9Nm6/kg3、最も好ましくは少なくとも10Nm6/kg3のISO 2493-1によるライナーボードの曲げ抵抗指数(GM)および/または少なくとも20Nm/g、好ましくは少なくとも23Nm/g、最も好ましくは少なくとも24Nm/gのISO 9895によるSCT指数(CD)を示し得る。SCT指数(CD)は、例えば、20~40Nm/gまたは24~30Nm/gであり得る。曲げ抵抗指数(GM)は、例えば、7~20Nm6/kg3または9~20Nm6/kg3であり得る。曲げ抵抗指数MDは、好ましくは、少なくとも12Nm6/kg3、または少なくとも13.5Nm6/kg3、または少なくとも15Nm6/kg3である。曲げ抵抗指数CDは、好ましくは、少なくとも5Nm6/kg3、または少なくとも6Nm6/kg3、または少なくとも7Nm6/kg3である。ライナーボードは、少なくとも5.8kNm/g、好ましくは少なくとも6kNm/g、最も好ましくは少なくとも6.1kNm/gの引張剛性指数GMをさらに示し得る。
【0034】
本発明の使用により、低密度ライナーボードを製造し、それでも、高い強度特性、特に高い曲げ抵抗および高いSCT指数(CD)値を達成することが可能であることがさらに示された。本発明のライナーボードの密度は、900kg/m3未満、好ましくは850kg/m3未満、より好ましくは800kg/m3未満であり得る。本発明のライナーボードの坪量は、好ましくは80~225gsmの範囲内である。
【0035】
本発明により製造されたライナーボードは、少なくとも220J/m2、好ましくは少なくとも250J/m2、もしくは少なくとも270J/m2のTAPPI T569によるスコットボンドおよび/または少なくとも4.5kPam2/g、好ましくは少なくとも4.8kPam2/g、最も好ましくは5kPam2/gのISO 2758による比破裂強さをさらに示し得る。
【0036】
一実施形態によると、本発明の方法により製造されたライナーボードは、充填剤を、前記ライナーボードの総重量に対して計算して5重量%未満、好ましくは4重量%未満、または3重量%未満の量で含む。一実施形態において、ライナーボードは充填剤を全く含まない。
【0037】
ライナーボードを製造する方法は、接着剤が最上層と2層プライの第2層の間に位置するように、トッププライおよび2層プライをコーチングする前に最上層に接着剤を塗布する工程をさらに含み得る。好ましくは、接着剤は、デンプンおよび任意にミクロフィブリル化セルロース(MFC)を含む。このようにして、z-方向引張強度および層間剥離強度が増大される。接着剤は、噴霧またはカーテンコーティングなどの非衝撃式の方法を利用して塗布され得る。接着剤は、デンプンを、接着剤の総乾燥重量に対して計算して50~100重量%、好ましくは70~99重量%の量で含み得る。一実施形態において、接着剤は、ミクロフィブリル化セルロース(MFC)も、1~100重量%乾燥重量の量で、好ましくは1~30重量%の量で含む。プライの間のMFCの使用は、層間混合を少なくでき、それが剛性特性を増大させる。一実施形態において、接着剤は、セルロース繊維および微細繊維を含むパルプ画分をさらに含み、パルプ画分は、60~90、好ましくは70~90のSR値を示す。接着剤は、パルプ画分を、1~100重量%の量で、または1~30重量%の量で含み得る。この特定のSR値を有するパルプ画分の使用は層間混合を妨げるが、それでも、それは、ボードの乾燥時にクラックを誘導し得る堅すぎるフィルムを形成しない。微細繊維画分は、例えば、パルプの分別から受け取られた不合格画分であり得る。パルプは、より粗い画分とより微細な画分に分別され得るが、そのより粗い画分は、板紙(ライナーボードなど)製造において中間層に使用され得て、60~90のSR値を示すより微細な画分は、板紙プライの間の接着剤中に使用され得る。
【0038】
一実施形態において、マルチプライウェブは、加熱されたカレンダーロールとバッキングロールまたはベルトの間に形成された少なくとも1つのニップを含むカレンダーセクションでカレンダリングされるが、そのニップは、カレンダーセクションの最高のライン負荷を形成し、最高のライン負荷は、100kN/m未満、好ましくは50kN/m未満である。この文脈で使用される「最高のライン負荷」とは、カレンダーセクションのニップのいずれかで使用される最高のライン負荷を意味する。
【0039】
カレンダーセクションは、ソフトニップカレンダーおよび/またはベルトカレンダーまたはエクストラソフトニップカレンダーなどの広幅ニップカレンダーを含み得る。カレンダーセクションは、2または3つのニップなどのいくつかのニップを含み得て、オンラインでもオフラインでもあり得る。
【0040】
本発明のライナーボードの構造は、カレンダリングにおけるより低いライン負荷の使用を可能にし、それでも、低い表面粗さを達成するのを可能にする。このようにして、バルクおよび曲げ抵抗は、第2層にCTMPが全くまたは少量しか使用されない実施形態においても、依然として高いレベルに保たれる。表面粗さをさらに改善するには、高温をカレンダリングに使用できる。加熱されたカレンダーロールの温度は、80~250℃の範囲、好ましくは100~200℃の範囲であり得る。
【0041】
ライナーボードの坪量が80~135gsmである実施形態において、ライナーボードのISO 8791-2によるベントセン粗さは、700ml/分未満、好ましくは650ml/分未満であり得る。
【0042】
ライナーボードの坪量が、135~225gsmなど135gsm超である実施形態において、ライナーボードのISO 8791-2によるベントセン粗さは、900ml/分未満、好ましくは800ml/分未満であり得る。
【0043】
本発明のライナーボードは、未晒または晒化学パルプ、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、および/または例えばOCCからの回収パルプを含む硬材または軟材由来の未晒または晒パルプを含み得る。一実施形態において、ライナーボードの第1および第3層を形成する第1および第3完成紙料は未晒クラフトパルプを含み、ライナーボードの第2層を形成する第2完成紙料は、未晒クラフトパルプおよび/またはケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)および/または回収繊維を含む。第2層は損紙をさらに含み得る。好ましい実施形態において、第1および第3層を形成する第1および第3完成紙料は100重量%未晒クラフトパルプを含む。第2層は、好ましくは、未晒クラフトパルプを50~100重量%の量で、CTMPを50~0重量%の量で含み得る。好ましくは、全層に使用されるパルプは、バージンファイバーから、最も好ましくはネバードライパルプから製造される。
【0044】
一実施形態において、ライナーボードの第2層を形成する第2完成紙料は、40重量%未満のCTMPまたは30重量%未満のCTMPまたは20重量%未満のCTMP、好ましくは10重量%未満、または5重量%未満、またはさらには1重量%未満のCTMPを含む。一実施形態において、ライナーボードはCTMPを全く含まない。本発明の方法の結果、低い表面粗さおよび良好な剛性特性の両方を示すライナーボードが、増量繊維(CTMP)が全くまたは少量しか使用されない場合でも達成できる。
【0045】
好ましくは、ライナーボードの第1層が印刷表面を提供する最上層を形成し、第3層が、中芯に結合するように適合された背面層を形成する。第2層は、好ましくは、中間層を形成する。
【0046】
本発明は、本発明の第1の態様の方法に従って製造されたライナーボードをさらに開示する。ライナーボードは、方法と同じ特徴をさらに特徴とし得る。
【0047】
本発明は、フルーティングおよび本発明のライナーボードを含む段ボールをさらに開示する。段ボールは、好ましくは、少なくとも2つのライナーおよび少なくとも1つの中芯を含み、ライナーの少なくとも1つは本発明のライナーボードから製造される。段ボールは、2つ以上の中芯および3つ以上のライナーも含み得る。ライナーは、中芯の少なくとも1つの表面に接着剤により結合している。本発明のライナーボードは、クラフトライナーの軽量な代替品として使用され、そのため高品質段ボールに使用されることが意図される。
【0048】
本発明は、フルート間座屈傾向を減少させるための、段ボールの製造におけるライナーボードの使用をさらに開示する。
【国際調査報告】