(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-21
(54)【発明の名称】IL-17に特異的な二環式ペプチドリガンド
(51)【国際特許分類】
C07K 7/54 20060101AFI20230214BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230214BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20230214BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230214BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230214BHJP
C07K 7/08 20060101ALN20230214BHJP
【FI】
C07K7/54 ZNA
A61P43/00
A61K47/64
A61P35/00
A61P29/00
C07K7/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022536844
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(85)【翻訳文提出日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 GB2020053241
(87)【国際公開番号】W WO2021123770
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519226757
【氏名又は名称】バイスクルテクス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ポール ベスウィック
(72)【発明者】
【氏名】ジェマ マッド
【テーマコード(参考)】
4C076
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC04
4C076CC27
4C076EE59
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA17
4H045BA31
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA33
4H045FA52
4H045GA21
(57)【要約】
本発明は、2つのペプチドループがスキャフォールドへの取付点の間に内在するように、分子スキャフォールドに共有結合しているポリペプチドに関する。特に、本発明は、IL-17の高親和性バインダーであるペプチドを記載している。本発明は、1以上のエフェクター及び/又は官能基にコンジュゲートされた、該ペプチドを含む薬物コンジュゲート、該ペプチドリガンド及び薬物コンジュゲートを含む医薬組成物、並びにIL-17によって媒介される疾患又は障害の予防、抑制、又は治療における該ペプチドリガンド及び薬物コンジュゲートの使用も含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含むポリペプチド及び該ポリペプチドのシステイン残基と共有結合を形成する分子スキャフォールドを含み、その結果、2つのポリペプチドループが該分子スキャフォールド上に形成され、該分子スキャフォールドが、
【化1】
:であることを特徴とし、かつここで、
*が該システイン残基の取付点を表す、IL-17に特異的なペプチドリガンド。
【請求項2】
前記ループ配列が、その両方が6つのアミノ酸からなる2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含む、請求項1記載のペプチドリガンド。
【請求項3】
前記ペプチドリガンドが、IL-17A、IL-17E、又はIL-17Fに特異的である、請求項1又は請求項2記載のペプチドリガンド。
【請求項4】
IL-17Aに特異的であり、前記ループ配列が、その両方が6つのアミノ酸からなり、かつ
【化2】
例えば、A-(配列番号1)-A(本明細書において、BCY13059と称される);
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、又はその医薬として許容し得る塩
:であるアミノ酸配列を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含む、請求項3記載のペプチドリガンド。
【請求項5】
前記医薬として許容し得る塩が、遊離酸又はナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム塩から選択される、請求項1~4のいずれか一項記載のペプチドリガンド。
【請求項6】
前記IL-17がヒトIL-17である、請求項1~5のいずれか一項記載のペプチドリガンド。
【請求項7】
1以上のエフェクター及び/又は官能基にコンジュゲートされた、請求項1~6のいずれか一項記載のペプチドリガンドを含む薬物コンジュゲート。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項記載のペプチドリガンド又は請求項7記載の薬物コンジュゲートを1以上の医薬として許容し得る賦形剤との組合せで含む医薬組成物。
【請求項9】
IL-17によって媒介される疾患又は障害の予防、抑制、又は治療において使用するための、請求項1~6のいずれか一項記載のペプチドリガンド又は請求項7記載の薬物コンジュゲート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、2つのペプチドループがスキャフォールドへの取付点の間に内在するように、分子スキャフォールドに共有結合しているポリペプチドに関する。特に、本発明は、IL-17の高親和性バインダーであるペプチドを記載している。本発明は、1以上のエフェクター及び/又は官能基にコンジュゲートされた、該ペプチドを含む薬物コンジュゲート、該ペプチドリガンド及び薬物コンジュゲートを含む医薬組成物、並びにIL-17によって媒介される疾患又は障害の予防、抑制、又は治療における該ペプチドリガンド及び薬物コンジュゲートの使用も含む。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
環状ペプチドは、高い親和性及び標的特異性でタンパク質標的に結合することができ、それゆえ、治療薬の開発のための魅力的な分子クラスである。実際、いくつかの環状ペプチドは、例えば、抗菌ペプチドのバンコマイシン、免疫抑制薬のシクロスポリン、又は抗癌薬のオクトレオチドのように、診療所で使用されるのに既に成功している(Driggersらの文献(2008), Nat Rev Drug Discov 7(7), 608-24)。優れた結合特性は、ペプチドと標的との間で形成される比較的大きな相互作用表面だけでなく、環状構造の立体構造可撓性の低下にも起因する。通常、大環状分子は、例えば、環状ペプチドCXCR4アンタゴニストCVX15(400Å2; Wuらの文献(2007), Science 330, 1066-71)、インテグリンαVb3に結合するArg-Gly-Aspモチーフを有する環状ペプチド(355Å2)(Xiongらの文献(2002), Science 296(5565), 151-5)、又はウロキナーゼ型プラスミノゲン活性化因子に結合する環状ペプチド阻害剤ウパイン-1(603Å2; Zhaoらの文献(2007), J Struct Biol 160(1), 1-10)のように、数百平方オングストロームの表面に結合する。
【0003】
その環状立体配置のために、ペプチド大環状分子は、直鎖状ペプチドよりも可撓性が低く、標的に結合したときのエントロピー損失がより小さくなり、結果的に、より高い結合親和性が生じる。可撓性の低下はまた、標的特異的立体構造の固定をもたらし、直鎖状ペプチドと比較して結合特異性を増加させる。この効果は、その環が開いたときに、他のMMPに対するその選択性を失うマトリックスメタロプロテイナーゼ8(MMP-8)の強力かつ選択的な阻害剤によって例証されている(Cherneyらの文献(1998), J Med Chem 41(11), 1749-51)。大環状化によって達成される有利な結合特性は、例えば、バンコマイシン、ナイシン、及びアクチノマイシンのような、複数のペプチド環を有する多環性ペプチドにおいてさらにより顕著である。
【0004】
様々な研究チームが、以前に、システイン残基を有するポリペプチドを合成分子構造に繋いでいる(Kemp及びMcNamaraの文献(1985), J. Org. Chem; Timmermanらの文献(2005), ChemBioChem)。Meloen及び共同研究者らは、トリス(ブロモメチル)ベンゼン及び関連分子をタンパク質表面の構造的模倣用の合成スキャフォールド上での複数のペプチドループの迅速かつ定量的な環化に使用した(Timmermanらの文献(2005)、ChemBioChem)。候補薬物化合物(ここで、該化合物は、システイン含有ポリペプチドを、例えば、トリス(ブロモメチル)ベンゼンのような分子スキャフォールドに連結させることにより作製される)の作製方法は、WO 2004/077062号及びWO 2006/078161号に開示されている。
【0005】
対象となる標的に対する二環式ペプチドの大型ライブラリーを作製及びスクリーニングするためのファージディスプレイに基づくコンビナトリアルアプローチが開発されている(Heinisらの文献(2009), Nat Chem Biol 5(7), 502-7及びWO 2009/098450号)。簡潔に述べると、3つのシステイン残基及び2つのランダムな6アミノ酸領域を含有する直鎖状ペプチド(Cys-(Xaa)6-Cys-(Xaa)6-Cys)のコンビナトリアルライブラリをファージ上に提示させ、システイン側鎖を低分子スキャフォールドに共有結合させることにより環化させた。
【発明の概要】
【0006】
(発明の概要)
本発明の第一の態様によれば、2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含むポリペプチド及び該ポリペプチドのシステイン残基と共有結合を形成する分子スキャフォールドを含み、その結果、2つのポリペプチドループが該分子スキャフォールド上に形成され、該分子スキャフォールドが、
【化1】
:であることを特徴とし、かつここで、
*が該システイン残基の取付点を表す、IL-17に特異的なペプチドリガンドが提供される。
【0007】
本発明のさらなる態様によれば、1以上のエフェクター及び/又は官能基にコンジュゲートされた本明細書で定義されるペプチドリガンドを含む薬物コンジュゲートが提供される。
【0008】
本発明のさらなる態様によれば、本明細書で定義されるペプチドリガンド又は薬物コンジュゲートを1以上の医薬として許容し得る賦形剤との組合せで含む医薬組成物が提供される。
【0009】
本発明のさらなる態様によれば、IL-17によって媒介される疾患又は障害の予防、抑制、又は治療における使用のための本明細書で定義されるペプチドリガンド又は薬物コンジュゲートの使用が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(発明の詳細な説明)
一実施態様において、該ループ配列は両方とも、6つのアミノ酸を含む。
【0011】
一実施態様において、ペプチドリガンドは、IL-17A、IL-17E、又はIL-17Fに特異的である。
【0012】
さらなる実施態様において、ペプチドリガンドは、IL-17Aに特異的である。
【0013】
一実施態様において、ペプチドリガンドは、IL-17Aに特異的であり、該ループ配列は、その両方が6つのアミノ酸からなり、かつ:
【化2】
例えば、A-(配列番号1)-A(本明細書において、BCY13059と称される);
(ここで、C
i、C
ii、及びC
iiiは、それぞれ、第一、第二、及び第三のシステイン残基を表す)、又はその医薬として許容し得る塩
:であるアミノ酸配列を含む2つのループ配列によって隔てられた3つのシステイン残基を含む。
【0014】
別途定義されない限り、本明細書で使用される技術的及び科学的用語は全て、当該分野、例えば、ペプチド化学、細胞培養、及びファージディスプレイ、核酸化学、並びに生化学の分野の専門家によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。標準的な技法が、分子生物学、遺伝学、及び生化学の方法に使用される(引用により本明細書中に組み込まれる、Sambrookらの文献、分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、第3版、2001, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY; Ausubelらの文献、分子生物学のショートプロトコル(Short Protocols in Molecular Biology)(1999) 第4版、John Wiley & Sons社を参照)。
【0015】
(命名法)
(付番)
本発明のペプチド内のアミノ酸残基位置に言及する場合、システイン残基(Ci、Cii、及びCiii)は不変であるので、これらは付番から省略され、それゆえ、本発明のペプチド内のアミノ酸残基の付番は、以下のように言及される:
-Ci-P1-Q2-D3-L4-E5-L6-Cii-T7-F8-L9-F10-G11-D12-Ciii-(配列番号1)。
【0016】
(分子フォーマット)
二環コア配列へのN-又はC-末端伸長は、ハイフンによって隔てられた、配列の左側又は右側に付加される。例えば、N-末端βAla-Sar10-Alaテールは、
βAla-Sar10-A-(配列番号X)
:と表される。
【0017】
(逆向きのペプチド配列)
Nairらの文献(2003) J Immunol 170(3), 1362-1373における開示を考慮して、本明細書に開示されるペプチド配列は、そのレトロ-インベルソ(retro-inverso)形態でも有用性を見出すことが想定される。例えば、配列が逆転し(すなわち、N-末端がC-末端になり、C-末端がN-末端になる)、その立体化学も同様に逆転する(すなわち、D-アミノ酸がL-アミノ酸になり、L-アミノ酸がD-アミノ酸になる)。
【0018】
(ペプチドリガンド)
本明細書において言及されるペプチドリガンドは、分子スキャフォールドに共有結合したペプチドを指す。典型的には、そのようなペプチドは、スキャフォールドと共有結合を形成することができる2つの反応基(すなわち、システイン残基)と、ペプチドがスキャフォールドに結合するときにループを形成するのでループ配列と呼ばれる、該反応基間に内在する配列とを含む。この場合、ペプチドは、3つのシステイン残基(本明細書において、Ci、Cii、及びCiiiと呼ばれる)を含み、かつスキャフォールド上に2つのループを形成する。
【0019】
(ペプチドリガンドの利点)
本発明の特定の二環式ペプチドは、それを注射、吸入、経鼻、眼球、経口、又は局所投与のための好適な薬物様分子とみなすことができるいくつかの有利な特性を有する。そのような有利な特性としては、以下のもの挙げられる:
-種交差反応性。これは、前臨床的な薬力学及び薬物動態評価の典型的な必要条件である;
-プロテアーゼ安定性。二環式ペプチドリガンドは、理想的には、血漿プロテアーゼ、上皮(「膜固定型」)プロテアーゼ、胃腸プロテアーゼ、肺表面プロテアーゼ、細胞内プロテアーゼなどに対する安定性を示すべきである。プロテアーゼ安定性は、二環リード候補を動物モデルで開発するだけでなく、自信を持ってヒトに投与することもできるように、異なる種の間で維持されるべきである;
-望ましい溶解度プロファイル。これは、製剤化及び吸収目的で重要である、荷電残基及び親水性残基と疎水性残基の比率並びに分子内/分子間H-結合の関数である;
-循環中での最適な血漿半減期。臨床的適応及び治療レジメンに応じて、急性疾患管理設定で短期曝露用の二環式ペプチドを開発するか、又は循環中での保持が増強された二環式ペプチドを開発する必要があり得るため、より慢性的な疾患状態の管理に最適である。望ましい血漿半減期を推進する他の要因は、最大治療効率のための持続的曝露の要求と薬剤の持続的曝露による随伴毒性である;並びに
-選択性。本発明の特定のペプチドリガンドは、他のIL-17サブタイプよりも良好な選択性を示す。
【0020】
(医薬として許容し得る塩)
塩形態は本発明の範囲内であり、ペプチドリガンドへの言及が該リガンドの塩形態を含むことが理解されるであろう。
【0021】
本発明の塩は、従来の化学的方法、例えば、医薬塩:特性、選択、及び使用(Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use)、P. Heinrich Stahl(編者)、Camille G. Wermuth(編者)、ISBN: 3-90639-026-8, Hardcover, 388頁、August 2002に記載されている方法によって、塩基性又は酸性部分を含有する親化合物から合成することができる。通常、そのような塩は、これらの化合物の遊離酸又は塩基形態を、適切な塩基又は酸と、水中もしくは有機溶媒中で、又はこれら2つの混合物中で反応させることにより調製することができる。
【0022】
酸付加塩(モノ塩又はジ塩)は、無機と有機の両方の多種多様な酸で形成することができる。酸付加塩の例としては、酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸(例えば、L-アスコルビン酸)、L-アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、ブタン酸、(+)カンファー酸、カンファースルホン酸、(+)-(1S)-カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、粘液酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、D-グルコン酸、グルクロン酸(例えば、D-グルクロン酸など)、グルタミン酸(例えば、L-グルタミン酸など)、α-オキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、ハロゲン化水素酸(例えば、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸)、イセチオン酸、乳酸(例えば、(+)-L-乳酸、(±)-DL-乳酸)、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、(-)-L-リンゴ酸、マロン酸、(±)-DL-マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロト酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、ピルビン酸、L-ピログルタミン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、(+)-L-酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、ウンデシレン酸、及び吉草酸、並びにアシル化アミノ酸及び陽イオン交換樹脂からなる群から選択される酸で形成されるモノ塩又はジ塩が挙げられる。
【0023】
塩の1つの特定の群は、酢酸、塩酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、クエン酸、乳酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、イセチオン酸、フマル酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、硫酸、メタンスルホン酸(メシル酸)、エタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、吉草酸、プロパン酸、ブタン酸、マロン酸、グルクロン酸、及びラクトビオン酸から形成される塩からなる。1つの特定の塩は、塩酸塩である。別の特定の塩は、酢酸塩である。
【0024】
化合物がアニオン性であるか、又はアニオン性であり得る官能基を有する(例えば、-COOHが-COO-であり得る)場合、塩を有機又は無機塩基で形成させ、好適なカチオンを生成させることができる。好適な無機カチオンの例としては、Li+、Na+、及びK+などのアルカリ金属イオン、Ca2+及びMg2+などのアルカリ土類金属カチオン、及びAl3+又はZn+などの他のカチオンが挙げられるが、これらに限定されない。適切な有機カチオンの例としては、アンモニウムイオン(すなわち、NH4
+)及び置換アンモニウムイオン(例えば、NH3R+、NH2R2
+、NHR3
+、NR4
+)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの好適な置換アンモニウムイオンの例としては、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン、及びトロメタミン、並びにリジン及びアルギニンなどのアミノ酸:に由来するものが挙げられる。一般的な第四級アンモニウムイオンの例は、N(CH3)4
+である。
【0025】
本発明のペプチドがアミン機能を含有する場合、これらは、例えば、当業者に周知の方法によるアルキル化剤との反応によって、第四級アンモニウム塩を形成し得る。そのような第四級アンモニウム化合物は、本発明のペプチドの範囲内である。
【0026】
(修飾誘導体)
本明細書で定義されるペプチドリガンドの修飾誘導体は、本発明の範囲内であることが理解されるであろう。そのような好適な修飾誘導体の例としては、N-末端及び/又はC-末端修飾; 1以上のアミノ酸残基の1以上の非天然アミノ酸残基による置換(例えば、1以上の極性アミノ酸残基の1以上の等配電子又は等電子アミノ酸による置換; 1以上の非極性アミノ酸残基の他の非天然等配電子又は等電子アミノ酸による置換);スペーサー基の付加; 1以上の酸化感受性アミノ酸残基の1以上の酸化抵抗性アミノ酸残基による置換; 1以上のアミノ酸残基のアラニンによる置換、1以上のL-アミノ酸残基の1以上のD-アミノ酸残基による置換;二環式ペプチドリガンド内の1以上のアミド結合のN-アルキル化; 1以上のペプチド結合の代用結合による置換;ペプチド骨格長の修飾; 1以上のアミノ酸残基のα-炭素上の水素の別の化学基による置換、システイン、リジン、グルタミン酸/アスパラギン酸、及びチロシンなどのアミノ酸を官能基化するような、該アミノ酸の好適なアミン、チオール、カルボン酸、及びフェノール反応性試薬による修飾、並びに官能基化に好適である直交反応性を導入するアミノ酸、例えば、それぞれ、アルキン又はアジドを有する部分による官能基化を可能にするアジド又はアルキン基を有するアミノ酸の導入又は置換:から選択される1以上の修飾が挙げられる。
【0027】
一実施態様において、修飾誘導体は、N-末端及び/又はC-末端修飾を含む。さらなる実施態様において、ここで、修飾誘導体は、好適なアミノ反応化学を用いるN-末端修飾、及び/又は好適なカルボキシ反応化学を用いるC-末端修飾を含む。さらなる実施態様において、該N-末端又はC-末端修飾は、限定されないが、細胞毒性剤、放射性キレート剤、又は発色団を含む、エフェクター基の付加を含む。
【0028】
さらなる実施態様において、修飾誘導体は、N-末端修飾を含む。さらなる実施態様において、N-末端修飾は、N-末端アセチル基を含む。この実施態様において、N-末端システイン基(本明細書においてCiと呼ばれる基)は、ペプチド合成の間に無水酢酸又は他の適切な試薬でキャッピングされ、N-末端がアセチル化された分子をもたらす。この実施態様は、アミノペプチダーゼの潜在的な認識点を除去するという利点を提供し、二環式ペプチドの分解の可能性を回避する。
【0029】
代わりの実施態様において、N-末端修飾は、エフェクター基のコンジュゲーション及びその標的に対する二環式ペプチドの効力の保持を促進する分子スペーサー基の付加を含む。一実施態様において、N-末端修飾は、G-Sar6-基、例えば、fl-G-Sar6-基の付加を含む。
【0030】
さらなる実施態様において、修飾誘導体は、C-末端修飾を含む。さらなる実施態様において、C-末端修飾は、アミド基を含む。この実施態様において、C-末端システイン基(本明細書において、Ciiiと呼ばれる基)は、ペプチド合成の間にアミドとして合成され、C-末端がアミド化された分子をもたらす。この実施態様は、カルボキシペプチダーゼの潜在的な認識点を除去するという利点を提供し、二環式ペプチドのタンパク質分解の可能性を低下させる。一実施態様において、C-末端修飾は、-Sar6-K基、例えば、(配列番号2~17のペプチドリガンドに付加されるような)-Sar6-K-fl基の付加を含む。
【0031】
一実施態様において、修飾誘導体は、1以上のアミノ酸残基の1以上の非天然アミノ酸残基による置換を含む。この実施態様においては、分解性プロテアーゼによって認識されることも、標的効力に何らかの有害作用を有することもない等配電子/等電子側鎖を有する非天然アミノ酸を選択してもよい。
【0032】
或いは、近くのペプチド結合のタンパク質分解性加水分解が立体構造的に及び立体的に妨害されるように、拘束されたアミノ酸側鎖を有する非天然アミノ酸を使用してもよい。特に、これらは、プロリン類似体、嵩高い側鎖、Cα-二置換誘導体(例えば、アミノイソ酪酸、Aib)、及びアミノ-シクロプロピルカルボン酸の単純な誘導体であるシクロアミノ酸に関する。
【0033】
一実施態様において、修飾誘導体は、スペーサー基の付加を含む。さらなる実施態様において、修飾誘導体は、N-末端システイン(Ci)及び/又はC-末端システイン(Ciii)へのスペーサー基の付加を含む。
【0034】
一実施態様において、修飾誘導体は、1以上の酸化感受性アミノ酸残基の1以上の酸化抵抗性アミノ酸残基による置換を含む。さらなる実施態様において、修飾誘導体は、トリプトファン残基のナフチルアラニン又はアラニン残基による置換を含む。この実施態様は、得られる二環式ペプチドリガンドの医薬安定性プロファイルを改善するという利点を提供する。
【0035】
一実施態様において、修飾誘導体は、1以上の荷電アミノ酸残基の1以上の疎水性アミノ酸残基による置換を含む。代わりの実施態様において、修飾誘導体は、1以上の疎水性アミノ酸残基の1以上の荷電アミノ酸残基による置換を含む。荷電アミノ酸残基と疎水性アミノ酸残基の正しいバランスは、二環式ペプチドリガンドの重要な特徴である。例えば、疎水性アミノ酸残基は、血漿タンパク質結合の程度、したがって、血漿中の利用可能な遊離画分の濃度に影響を及ぼし、一方、荷電アミノ酸残基(特に、アルギニン)は、ペプチドと細胞表面のリン脂質膜との相互作用に影響を及ぼす可能性がある。この2つの組合せは、ペプチド薬の半減期、分布容積、及び曝露に影響を及ぼす可能性があり、臨床的なエンドポイントに応じて調整することができる。さらに、荷電アミノ酸残基と疎水性アミノ酸残基の正しい組合せ及び数は、注射部位(ペプチド薬が皮下投与された場合)での刺激を軽減することができる。
【0036】
一実施態様において、修飾誘導体は、1以上のL-アミノ酸残基の1以上のD-アミノ酸残基による置換を含む。この実施態様は、立体障害により及びβ-ターン立体構造を安定化させるD-アミノ酸の傾向により、タンパク質分解の安定性を高めると考えられる(Tugyiらの文献(2005) PNAS, 102(2), 413-418)。
【0037】
一実施態様において、修飾誘導体は、任意のアミノ酸残基の除去及びアラニンによる置換を含む。この実施態様は、潜在的なタンパク質分解攻撃部位を除去するという利点を有する。
【0038】
上述の修飾の各々は、ペプチドの効力又は安定性を意図的に向上させる役割を果たすことに留意すべきである。修飾に基づくさらなる効力向上は、以下の機序によって達成することができる:
-より高い親和性が達成されるように、疎水性効果を利用し、より低い解離速度をもたらす疎水性部位を組み込むこと;
-長距離イオン相互作用を利用し、より速い会合速度をもたらし、より高い親和性をもたらす荷電基を組み込むこと(例えば、Schreiberらの文献、タンパク質の急速静電アシスト会合(Rapid, electrostatically assisted association of proteins)(1996)、Nature Struct. Biol. 3, 427-31を参照);並びに
-例えば、エントロピーの損失が標的結合時に最小になるように、アミノ酸の側鎖を正しく拘束すること、エントロピーの損失が標的結合時に最小になるように、骨格のねじれ角度を拘束すること、及び同一の理由で分子内にさらなる環化を導入することにより、さらなる拘束性をペプチドに組み込むこと
(総説については、Gentilucciらの文献、Curr. Pharmaceutical Design, (2010), 16, 3185-203、及びNestorらの文献、Curr. Medicinal Chem (2009), 16, 4399-418を参照)。
【0039】
(同位体バリエーション)
本発明は、1以上の原子が、同じ原子番号を有するが、天然に通常見られる原子質量又は質量数とは異なる原子質量又は質量数を有する原子によって置き換えられている、本発明の医薬として許容し得る全ての(放射性)同位体標識ペプチドリガンド、並びに関連する(放射性)同位体を保持することができる金属キレート基が取り付けられている本発明のペプチドリガンド(「エフェクター」と呼ばれる)、並びに特定の官能基が関連する(放射性)同位体又は同位体標識された官能基で共有結合的に置き換えられている本発明のペプチドリガンドを含む。
【0040】
本発明のペプチドリガンドに含めるために好適な同位体の例は、水素の同位体、例えば、2H(D)及び3H(T)、炭素の同位体、例えば、11C、13C及び14C、塩素の同位体、例えば、36Cl、フッ素の同位体、例えば、18F、ヨウ素の同位体、例えば、123I、125I、及び131I、窒素の同位体、例えば、13N及び15N、酸素の同位体、例えば、15O、17O、及び18O、リンの同位体、例えば、32P、硫黄の同位体、例えば、35S、銅の同位体、例えば、64Cu、ガリウムの同位体、例えば、67Ga又は68Ga、イットリウムの同位体、例えば、90Y、並びにルテチウムの同位体、例えば、177Lu、並びにビスマスの同位体、例えば、213Biを含む。
【0041】
本発明の特定の同位体標識ペプチドリガンド、例えば、放射性同位体を組み込んでいるものは、薬物及び/又は基質の組織分布研究において、並びに罹患組織上のIL-17標的の存在及び/又は不在を臨床的に評価するために有用である。本発明のペプチドリガンドは、標識化合物と他の分子、ペプチド、タンパク質、酵素、又は受容体との間の複合体の形成を検出又は同定するために使用することができるという点で、価値ある診断特性をさらに有することができる。検出又は同定方法は、例えば、放射性同位体、酵素、蛍光物質、発光物質(例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、イクオリン、及びルシフェラーゼ)などの標識剤で標識されている化合物を使用することができる。放射性同位体のトリチウム、すなわち、3H(T)及び炭素-14、すなわち、14Cは、その組込みの容易さ及び検出の手段が用意されていることを考慮して、この目的のために特に有用である。
【0042】
重水素、すなわち、2H(D)などのより重い同位体による置換は、より大きい代謝安定性、例えば、増加したインビボ半減期又は低下した必要投薬量の結果として得られる、特定の治療的利点をもたらす場合があり、それゆえ、いくつかの状況では、好ましい場合がある。
【0043】
11C、18F、15O、及び13Nなどの陽電子放出同位体による置換は、標的占有率を調べるための陽電子放出トポグラフィー(PET)試験において有用であり得る。
【0044】
本発明のペプチドリガンドの同位体標識化合物は、通常、当業者に公知の従来の技法によるか、又は以前に利用されていた非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用する添付の実施例に記載されているものと類似のプロセスによって調製することができる。
【0045】
(分子スキャフォールド)
本明細書に記載されているように、本発明において使用される分子スキャフォールドは、1,4,7-トリス(ビニルスルホニル)-1,4,7-トリアゾナン;(TAST)である:
【化3】
。
【0046】
したがって、C
i、C
ii、及びC
iiiシステイン残基上での本発明の二環式ペプチドによる環化の後、分子スキャフォールドは、以下の構造を有するTASTの三置換誘導体を形成する:
【化4】
(ここで、
*は、該システイン残基の取付点を表す)。
【0047】
(エフェクター及び官能基)
本発明のさらなる態様によれば、1以上のエフェクター及び/又は官能基にコンジュゲートされた本明細書で定義されるペプチドリガンドを含む薬物コンジュゲートが提供される。
【0048】
エフェクター及び/又は官能基は、例えば、ポリペプチドのN及び/もしくはC末端に、該ポリペプチド内のアミノ酸に、又は分子スキャフォールドに取り付けることができる。
【0049】
適切なエフェクター基は、抗体及びその部分又は断片を含む。例えば、エフェクター基は、1以上の定常領域ドメインの他に、抗体軽鎖定常領域(CL)、抗体CH1重鎖ドメイン、抗体CH2重鎖ドメイン、抗体CH3重鎖ドメイン、又はこれらの任意の組合せを含むことができる。エフェクター基は、抗体のヒンジ領域(IgG分子のCH1ドメインとCH2ドメインの間に通常見られるそのような領域)を含むこともできる。
【0050】
本発明のこの態様のさらなる実施態様において、本発明によるエフェクター基は、IgG分子のFc領域である。有利には、本発明によるペプチドリガンド-エフェクター基は、1日以上、2日以上、3日以上、4日以上、5日以上、6日以上、もしくは7日以上のtβ半減期を有するペプチドリガンドFc融合体を含むか、又はそれからなるものである。最も有利には、本発明によるペプチドリガンドは、1日以上のtβ半減期を有するペプチドリガンドFc融合体を含むか、又はそれからなる。
【0051】
官能基としては、一般に、結合基、薬物、他の実体の取付けのための反応基、大環状ペプチドの細胞への取込みを補助する官能基などが挙げられる。
【0052】
ペプチドが細胞内に透過する能力は、細胞内標的に対するペプチドが効果的になることを可能にする。細胞内に透過する能力を有するペプチドによりアクセスされ得る標的としては、転写因子、チロシンキナーゼなどの細胞内シグナル伝達分子、及びアポトーシス経路に関与する分子が挙げられる。細胞の透過を可能にする官能基としては、ペプチド又はペプチドもしくは分子スキャフォールドのいずれかに付加された化学基が挙げられる。例えば、Chen及びHarrisonの文献、Biochemical Society Transactions(2007)、第35巻、第4部、821頁; Guptaらの文献、Advanced Drug Discovery Reviews(2004)、第57巻、9637に記載されている、例えば、VP22、HIV-Tat、ショウジョウバエのホメオボックスタンパク(アンテナペディア)などに由来するものなどのペプチド。細胞膜を通る移動に効率が良いことが示されている短いペプチドの例としては、ショウジョウバエのアンテナペディアタンパク質由来の16アミノ酸のペネトラチンペプチド(Derossiらの文献(1994) J Biol. Chem. 第269巻、10444頁)、18アミノ酸の「モデル両親媒性ペプチド」(Oehlkeらの文献(1998) Biochim Biophys Acts、第1414巻、127頁)、HIV TATタンパク質のアルギニンリッチ領域が挙げられる。非ペプチド性アプローチとしては、生体分子に容易に取り付けることができる低分子模倣物又はSMOCの使用が挙げられる(Okuyamaらの文献(2007) Nature Methods、第4巻、153頁)。分子にグアニジニウム基を付加する他の化学的戦略も、細胞透過を増強する(Elson-Scwabらの文献(2007) J Biol Chem、第282巻、13585頁)。ステロイドなどの低分子量の分子を分子スキャフォールドに付加して、細胞への取込みを増強することができる。
【0053】
ペプチドリガンドに取り付けることができる官能基の1つのクラスとしては、抗体及びその結合断片、例えば、Fab、Fv、又は単一ドメイン断片が挙げられる。特に、ペプチドリガンドの半減期をインビボで増加させることができるタンパク質に結合する抗体を使用することができる。
【0054】
一実施態様において、本発明によるペプチドリガンドエフェクター基は: 12時間以上、24時間以上、2日以上、3日以上、4日以上、5日以上、6日以上、7日以上、8日以上、9日以上、10日以上、11日以上、12日以上、13日以上、14日以上、15日以上、又は20日以上からなる群から選択されるtβ半減期を有する。有利には、本発明によるペプチドリガンド-エフェクター基又は組成物は、12時間~60時間の範囲のtβ半減期を有する。さらなる実施態様において、それは、1日以上のtβ半減期を有する。なおさらなる実施態様において、それは、12~26時間の範囲である。
【0055】
本発明の1つの特定の実施態様において、官能基は、医薬関連の金属放射性同位体を錯化させるのに好適である金属キレート剤から選択される。
【0056】
可能なエフェクター基としては、例えば、ペプチドリガンドがADEPTにおいて抗体の代わりになる酵素/プロドラッグ療法において使用するためのカルボキシペプチダーゼG2などの酵素も挙げられる。
【0057】
本発明の1つの特定の実施態様において、官能基は、癌療法用の細胞毒性剤などの薬物から選択される。好適な例としては、シスプラチン及びカルボプラチンなどのアルキル化剤、並びにオキサリプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロランブシル、イホスファミド;プリン類似体、アザチオプリン、及びメルカプトプリン又はピリミジン類似体を含む代謝拮抗物質;ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、及びビンデシンなどのビンカアルカロイドを含む植物アルカロイド及びテルペノイド;ポドフィロトキシン並びにその誘導体エトポシド及びテニポシド;もともとタキソールとして知られていたパクリタキセルを含むタキサン;カンプトテシンを含むトポイソメラーゼ阻害剤:イリノテカン及びトポテカン、並びにアムサクリン、エトポシド、リン酸エトポシド、及びテニポシドを含むII型阻害剤:が挙げられる。さらなる薬剤としては、抗腫瘍抗生物質を挙げることができ、これには、免疫抑制物質のダクチノマイシン(これは、腎移植で使用される)、ドキソルビシン、エピルビシン、ブレオマイシン、カリケアミシン、及びその他が含まれる。
【0058】
本発明の1つのさらなる特定の実施態様において、細胞毒性剤は、メイタンシノイド(例えば、DM1)又はモノメチルオーリスタチン(例えば、MMAE)から選択される。
【0059】
DM1は、メイタンシンのチオール含有誘導体である細胞毒性剤であり、以下の構造を有する:
【化5】
。
【0060】
モノメチルオーリスタチンE(MMAE)は、合成の抗新生物剤であり、以下の構造を有する:
【化6】
。
【0061】
一実施態様において、細胞毒性剤は、ジスルフィド結合又はプロテアーゼ感受性結合などの切断可能な結合によって、二環式ペプチドに連結される。さらなる実施態様において、ジスルフィド結合に隣接する基は、ジスルフィド結合の障害、並びにこれにより、細胞毒性剤の切断及びそれに付随する放出の速度を制御するように修飾される。
【0062】
発表された研究により、ジスルフィド結合のどちらかの側に立体障害を導入することにより、還元に対するジスルフィド結合の感受性を修飾する可能性が確立された(Kelloggらの文献(2011) Bioconjugate Chemistry, 22, 717)。より大きい程度の立体障害は、細胞内グルタチオン、そしてまた細胞外(全身)還元剤による還元の速度を低下させ、結果的に、細胞の内側と外側の両方において、毒素が放出される容易さを低下させる。したがって、細胞内環境における効率的な放出(これは、治療効果を最大化する)の最適化と対比した循環中のジスルフィド安定性(これは、毒素の望ましくない副作用を最小化する)における最適条件の選択は、ジスルフィド結合のどちらかの側における障害の程度の注意深い選択によって達成することができる。
【0063】
ジスルフィド結合のどちらかの側における障害は、標的化実体(ここでは、二環式ペプチド)又は分子コンストラクトの毒素側のどちらかに1以上のメチル基を導入することにより調節される。
【0064】
一実施態様において、細胞毒性剤及びリンカーは、WO 2016/067035号に記載されているものの任意の組合せから選択される(細胞毒性剤及びそのリンカーは、引用により本明細書中に組み込まれる)。
【0065】
(合成)
本発明のペプチドは、標準的な技法によって合成的に製造した後、インビトロで分子スキャフォールドと反応させることができる。これを実施する場合、標準的な化学を使用することができる。これにより、さらなる下流での実験又は検証のための可溶性材料の迅速な大規模調製が可能になる。そのような方法は、Timmermanらの文献(上記)に開示されているもののような従来の化学を用いて達成され得る。
【0066】
したがって、本発明はまた、本明細書に記載されているように選択されるポリペプチド又はコンジュゲートの製造に関するものであり、ここで、該製造は、以下に説明されるような任意のさらなる工程を含む。一実施態様において、これらの工程は、化学合成によって作られた最終生成物のポリペプチドコンジュゲートに対して実施される。
【0067】
任意に、対象となるポリペプチド中のアミノ酸残基は、コンジュゲート又は複合体を製造するときに置換されてもよい。
【0068】
ペプチドを伸長させて、例えば、別のループを組み込み、それゆえ、複数の特異性を導入することもできる。
【0069】
ペプチドを伸長させるために、それは、単純に、標準的な固相又は液相化学を用いて、直交保護されたリジン(及び類似体)を用いて、そのN-末端もしくはC-末端で又はループ内で化学的に伸長されてもよい。標準的な(バイオ)コンジュゲーション技法を用いて、活性化された又は活性化可能なN-又はC-末端を導入してもよい。或いは、付加は、例えば、(Dawsonらの文献、1994、ネイティブケミカルライゲーションによるタンパク質の合成(Synthesis of Proteins by Native Chemical Ligation). Science 266:776-779)に記載されている断片縮合もしくはネイティブケミカルライゲーションによるか、又は例えば(Changらの文献、Proc Natl Acad Sci U S A. 1994 Dec 20; 91(26):12544-8もしくはHikariらの文献、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、第18巻、第22号、2008年11月15日、6000~6003頁)に記載されているサブチリガーゼを用いて、酵素により行われてもよい。
【0070】
或いは、ペプチドは、ジスルフィド結合を介するさらなるコンジュゲーションによって伸長又は修飾されてもよい。これは、第一及び第二のペプチドが細胞の還元環境内で互いに解離することを可能にするという追加の利点を有する。この場合、分子スキャフォールド(例えば、TAST)は、3つのシステイン基と反応するように第一のペプチドの化学合成の間に付加されることができ;その後、さらなるシステイン又はチオールが第一のペプチドのN又はC-末端に付加されることができ、その結果、このシステイン又はチオールが第二のペプチドの遊離のシステイン又はチオールとのみ反応して、ジスルフィド結合した二環式ペプチド-ペプチドコンジュゲートを形成した。
【0071】
同様の技法は、四重特異性分子を潜在的に生じさせる、2つの二環式二重特異性大環状分子の合成/カップリングに等しく適用される。
【0072】
さらに、他の官能基又はエフェクター基の付加は、適切な化学を用いて、N-もしくはC-末端で、又は側鎖を介してカップリングさせて、同じ方法で達成されてもよい。一実施態様において、カップリングは、いずれかの実体の活性を遮断しないような方法で実行される。
【0073】
(医薬組成物)
本発明のさらなる態様によれば、本明細書で定義されるペプチドリガンド又は薬物コンジュゲートを1以上の医薬として許容し得る賦形剤との組合せで含む医薬組成物が提供される。
【0074】
通常、本ペプチドリガンドは、薬理学的に適切な賦形剤又は担体と一緒に精製された形態で利用される。典型的には、これらの賦形剤又は担体は、生理食塩水及び/又は緩衝化媒体を含む、水性もしくはアルコール/水性溶液、エマルジョン、又は懸濁液を含む。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンガーデキストロース、デキストロース、及び塩化ナトリウム、並びに乳酸加リンガーが挙げられる。生理的に許容し得る好適なアジュバントは、ポリペプチド複合体を懸濁状態に保つために必要な場合、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、及びアルギネートなどの増粘剤から選択されてもよい。
【0075】
静脈内ビヒクルとしては、流体及び栄養補充液及び電解質補充液、例えば、リンガーデキストロースに基づくものが挙げられる。また、防腐剤並びに他の添加物、例えば、抗微生物薬、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガスが存在してもよい(Mackの文献(1982)、レミントンの医薬品科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)、第16版)。
【0076】
本発明のペプチドリガンドは、別々に投与される組成物として、又は他の薬剤と併せて使用されてもよい。これらとしては、抗体、抗体断片、並びに様々な免疫療法薬、例えば、シルコスポリン、メトトレキサート、アドリアマイシン、又はシスプラチン、及び免疫毒素を挙げることができる。医薬組成物は、本発明のタンパク質リガンドと併せた様々な細胞毒性剤もしくは他の薬剤の「カクテル」、又は投与前にプールされているか、プールされていないかを問わず、異なる標的リガンドを用いて選択されたポリペプチドなどの、異なる特異性を有する本発明による選択されたポリペプチドの組合せさえも含むことができる。
【0077】
本発明による医薬組成物の投与の経路は、当業者に一般的に公知の任意のものであってもよい。療法のために、本発明のペプチドリガンドは、標準的な技法に従って任意の患者に投与することができる。投与は、非経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮的、肺経路を介するもの、又は同じく適切に、カテーテルを用いる直接注入によるものを含め、任意の適切な様式によるものであることができる。好ましくは、本発明による医薬組成物は、吸入によって投与される。投薬量及び投与の頻度は、患者の年齢、性別、及び状態、他の薬物の同時的な投与、禁忌、並びに臨床医によって考慮される他のパラメーターによって決まる。
【0078】
本発明のペプチドリガンドは、保存前に凍結乾燥し、使用前に好適な担体中で再構成することができる。この技法は、効果的であることが示されており、当技術分野で公知の凍結乾燥及び再構成技法を利用することができる。凍結乾燥及び再構成は様々な程度の活性損失をもたらし得ること、及び補償するために、レベルを上方に調整する必要があり得ることが当業者によって理解されるであろう。
【0079】
本発明のペプチドリガンド又はそのカクテルを含有する組成物は、予防的及び/又は治療的処置のために投与することができる。特定の治療用途において、選択される細胞の集団の少なくとも部分的な阻害、抑制、調節、死滅化、又は何らかの他の測定可能なパラメーターを達成するために十分な量は、「治療有効用量」として定義される。この投薬量を達成するために必要とされる量は、疾患の重症度及び患者自身の免疫系の全般的な状態によって決まるが、概ね、体重1キログラム当たり0.005~5.0mgの選択されるペプチドリガンドの範囲であり、0.05~2.0mg/kg/用量の用量がより一般的に使用される。予防用途のために、本ペプチドリガンド又はそのカクテルを含有する組成物はまた、同様の又はわずかに少ない投薬量で投与されてもよい。
【0080】
本発明によるペプチドリガンドを含有する組成物を予防的及び治療的な設定で利用して、哺乳動物における選択標的細胞集団の変化、不活性化、死滅化、又は除去を助けることができる。さらに、本明細書に記載されるペプチドリガンドを体外で又はインビトロで用いて、細胞の異成分集合体から標的細胞集団を選択的に死滅させるか、枯渇させるか、又は他の形で効果的に除去することができる。哺乳動物由来の血液を選択されたペプチドリガンドと体外で組み合わせることができ、それにより、標準的な技法に従って哺乳動物に戻すために、望ましくない細胞を死滅させるか、又は別の形で血液から除去する。
【0081】
(治療的使用)
本発明の二環式ペプチドは、IL-17A、IL-17E、及びIL-17FなどのIl-17結合剤としての具体的な有用性を有する。
【0082】
IL-17A及びCTLA-8としても知られるインターロイキン-17(IL-17)は、種々の細胞型において様々な他のサイトカインの分泌を刺激する炎症促進性サイトカインである。例えば、IL-17は、IL-6、IL-8、G-CSF、TNF-a、IL-Iβ、PGE2、及びIFN-γ、並びに数多くのケモカイン及び他のエフェクターを誘導することができる(Gaffen, SLの文献(2004) Arthritis Research & Therapy 6, 240-247を参照)。
【0083】
IL-17は、炎症及び自己免疫の病理に関与するTH17細胞によって発現される。これは、CD8+ T細胞、γδ細胞、NK細胞、NKT細胞、マクロファージ、及び樹状細胞によっても発現される。IL-17及びThl7は、多様な自己免疫及び炎症性疾患の発症と関連付けられているが、多くの微生物、特に、細胞外細菌及び真菌に対する宿主防御にとって不可欠である。ヒトIL-17Aは、17,000ダルトンのMwを有する糖タンパク質である(Spriggsらの文献(1997) J Clin Immunol, 17, 366-369)。IL-17は、ホモ二量体又はそのファミリーメンバーであるIL-17Fとのヘテロ二量体を形成することができる。IL-17は、IL-17 RAとIL-17 RCの両方に結合して、シグナル伝達を媒介する。その受容体を通じてシグナルを伝達するIL-17は、NF-KB転写因子及び様々なMAPKを活性化する(Gaffen, SLの文献(2009) Nature Rev Immunol 9, 556-567を参照。
【0084】
IL-17は、TNF-a、IFN-γ、及びIL-Iβなどの他の炎症性サイトカインと協調して作用し、炎症促進効果を媒介することができる(Gaffen, SLの文献(2004) Arthritis Research & Therapy 6, 240-247を参照。IL-17のレベルの増加は、関節リウマチ(RA)、骨侵食、腹腔内膿瘍、炎症性腸疾患、同種異系移植拒絶反応、乾癬、血管新生、アテローム性動脈硬化症、喘息、及び多発性硬化症を含む、数多くの疾患に関係があるとされている(Gaffen, SLの文献(2004)、上記及びUS 2008/0269467号を参照)。IL-17は、全身エリテマトーデス(SLE)を有する患者において、より高い血清濃度で見出され、単独で又はB細胞活性化因子(BAFF)との相乗効果で作用して、B細胞の生存、増殖、及び免疫グロブリン産生細胞への分化を制御することが最近明らかにされた(Doreauらの文献(2009) Nature Immunology 7, 778-7859)。IL-17は、ドライアイなどの角結膜障害とも関連付けられている(WO 2010/062858号及びWO 2011/163452号)。IL-17は、強直性脊椎炎(Appelらの文献(2011) Arthritis Research and Therapy, 13, R95)及び乾癬性関節炎(Mclnnesらの文献(2011) Arthritis & Rheumatism 63(10),779)において役割を果たすことにも関係があるとされている。
【0085】
IL-17及びIL-17産生TH17細胞は、最近、特定の癌に関係があるとされている(Ji及びZhangの文献(2010) Cancer Immunol Immunother 59, 979-987)。例えば、IL-17発現TH17細胞は、多発性骨髄腫に関与すること(Prabhalaらの文献(2010) Blood、オンラインDOI 10.1182/blood-2009-10-246660)及びHCCを有する患者の予後不良と相関することが示された(Zhangらの文献(2009) J Hepatology 50, 980-89。また、IL-17は、乳癌関連マクロファージによって発現されることが分かった(Zhuらの文献(2008) Breast Cancer Research 10, R95)。しかしながら、癌におけるIL-17の役割は、多くの場合、不明である。特に、IL-17及びIL-17産生TH17細胞は、時として、同じタイプの癌における腫瘍免疫において、正の役割と負の役割の両方を有するものとして特定されている(Ji及びZhangの文献(2010) Cancer Immunol Immuother 59, 979-987)。
【0086】
IL-17Aは、IL-17受容体(RA/RC複合体)に結合する。IL-17Aは、ホモ二量体又はIL-17Fとのヘテロ二量体として存在することができる。IL-17Aは、制限された発現を有する(リンパ球、好中球、及び好酸球)。IL-17Aは、気道炎症及び乾癬に関係があるとされている。
【0087】
IL-17E(IL-25としても知られる)は、IL-17受容体(RA/RB複合体)に結合する。IL-17Eは、気道炎症に関係があるとされており、好酸球を肺組織に動員する。IL-17Eは、IL-17Aとの関連がより遠い(17%)。IL-17Eは、極めて低い発現を有する(Th2、好酸球、肥満細胞、及びマクロファージ)。
【0088】
IL-17Fは、IL-17Aよりも低い親和性でIL-17受容体(RA/RC複合体)に結合する。これは、IL-17Aと同様の発現パターンを有する。IL-17Fは、気道炎症及び乾癬に関係があるとされている。IL-17Fは、IL-17Aと最も密接な関連があり(44~55%)、ホモ二量体又はIL-17Aとのヘテロ二量体として存在することができる。
【0089】
本発明の方法に従って選択されたポリペプチドリガンドは、インビボでの治療的及び予防的用途、インビトロ及びインビボでの診断用途、インビトロでのアッセイ及び試薬用途などにおいて利用することができる。選択されたレベルの特異性を有するリガンドは、交差反応性が望ましい非ヒトの動物における試験を伴う用途において、又はホモログもしくはパラログとの交差反応性を注意深く制御する必要がある診断用途において有用である。ワクチン用途などの一部の用途では、所定の範囲の抗原に対する免疫応答を誘発する能力を活用して、特定の疾患及び病原体に合わせたワクチンを作成することができる。
【0090】
少なくとも90~95%の均質性の実質的に純粋なペプチドリガンドは、哺乳動物への投与に好ましく、98~99%又はそれを上回る均質性は、特に、哺乳動物がヒトである場合、医薬としての使用に最も好ましい。部分的に又は所望の均質性になるまで精製したら、選択されたポリペプチドを、診断的にもしくは治療的に(体外を含めて)使用してもよく、又はアッセイ手順、免疫蛍光染色などを開発及び実施する際に使用してもよい(Lefkovite及びPernisの文献(1979年及び1981年)、免疫学的方法(Immunological Methods)、第I巻及び第II巻、Academic Press, NY)。
【0091】
本発明のさらなる態様によれば、IL-17によって媒介される疾患又は障害の予防、抑制、又は治療において使用するための、本明細書で定義されるペプチドリガンド又は薬物コンジュゲートが提供される。
【0092】
本発明のさらなる態様によれば、IL-17によって媒介される疾患又は障害を予防、抑制、又は治療する方法であって、それを必要としている患者に、エフェクター基及び本明細書で定義されるペプチドリガンドの薬物コンジュゲートを投与することを含む、方法が提供される。
【0093】
一実施態様において、IL-17は、哺乳動物IL-17である。さらなる実施態様において、哺乳動物IL-17は、ヒトIL-17である。
【0094】
一実施態様において、IL-17によって媒介される疾患又は障害は、炎症性障害及び癌から選択される。さらなる実施態様において、IL-17によって媒介される疾患又は障害は、関節リウマチ(RA)、骨侵食、腹腔内膿瘍、炎症性腸疾患、同種異系移植拒絶反応、乾癬、血管新生、アテローム性動脈硬化症、喘息、多発性硬化症、全身エリテマトーデス(SLE)、角結膜障害(例えば、ドライアイ)、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、癌(例えば、多発性骨髄腫及び乳癌):から選択される。
【0095】
さらなる実施態様において、IL-17によって媒介される疾患又は障害は、癌から選択される。
【0096】
治療(又は抑制)され得る癌(及びその良性対応物)の例としては、上皮起源の腫瘍(腺癌、扁平上皮癌、移行細胞癌、及び他の癌腫を含む、様々なタイプの腺腫及び癌腫)、例えば、膀胱及び尿路、乳房、消化管(食道、胃(stomach)(胃(gastric))、小腸、結腸、直腸、並びに肛門を含む)、肝臓(肝細胞癌)、胆嚢及び胆管系、外分泌膵臓、腎臓、肺(例えば、腺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、気管支肺胞上皮癌、及び中皮腫)、頭頸部(例えば、舌、口腔、喉頭、咽頭、上咽頭、扁桃、唾液腺、鼻腔、及び副鼻腔の癌)、卵巣、卵管、腹膜、膣、外陰部、陰茎、子宮頸部、子宮筋層、子宮内膜、甲状腺(例えば、甲状腺濾胞癌)、副腎、前立腺、皮膚、及び付属器の癌(例えば、黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、角化棘細胞腫、異形成母斑);血液悪性腫瘍(すなわち、白血病、リンパ腫)並びに前悪性血液障害及びリンパ系譜の血液悪性腫瘍及び関連疾患を含む境界領域悪性腫瘍の障害(例えば、急性リンパ性白血病[ALL]、慢性リンパ性白血病[CLL]、B細胞リンパ腫、例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫[DLBCL]、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫及び白血病、ナチュラルキラー[NK]細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、有毛細胞白血病、意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症、形質細胞腫、多発性骨髄腫、及び移植後リンパ増殖性障害)、並びに骨髄系譜の血液悪性腫瘍及び関連疾患(例えば、急性骨髄性白血病[AML]、慢性骨髄性白血病[CML]、慢性骨髄単球性白血病[CMML]、好酸球増多症候群、骨髄増殖性障害、例えば、真性多血症、本態性血小板血症、及び原発性骨髄線維症、骨髄増殖性症候群、骨髄異形成症候群、並びに前骨髄細胞性白血病);間葉起源の腫瘍、例えば、軟部組織、骨、もしくは軟骨の肉腫、例えば、骨肉腫、線維肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、血管肉腫、カポジ肉腫、ユーイング肉腫、滑膜肉腫、類上皮性肉腫、消化管間質性腫瘍、良性及び悪性の組織球腫、並びに隆起性皮膚線維肉腫;中枢もしくは末梢神経系の腫瘍(例えば、星細胞腫、神経膠腫、及び膠芽細胞腫、髄膜腫、上衣腫、松果体腫瘍、及びシュワン細胞腫);内分泌腫瘍(例えば、下垂体腫瘍、副腎腫瘍、膵島細胞腫瘍、副甲状腺腫瘍、カルチノイド腫瘍、及び甲状腺の髄様癌);眼球及び付属器腫瘍(例えば、網膜芽腫);生殖細胞及び栄養膜腫瘍(例えば、奇形腫、精上皮腫、未分化胚細胞腫、胞状奇胎、及び絨毛癌);並びに小児性及び胎児性腫瘍(例えば、髄芽腫、神経芽腫、ウィルムス腫瘍、および未分化神経外胚葉性腫瘍);又は患者を悪性腫瘍に罹りやすい状態にしておく先天性もしくはその他の症候群(例えば、色素性乾皮症)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
一実施態様において、IL-17によって媒介される疾患又は障害は、IL-17Aによって媒介される疾患又は障害である。さらなる実施態様において、ペプチドリガンドは、本明細書で定義されるIL-17Aに特異的であり、IL-17によって媒介される疾患又は障害は、IL-17Aによって媒介される疾患又は障害である。さらなる実施態様において、IL-17Aによって媒介される疾患又は障害は、気道炎症性疾患及び乾癬から選択される。
【0098】
一実施態様において、IL-17によって媒介される疾患又は障害は、IL-17Eによって媒介される疾患又は障害である。さらなる実施態様において、ペプチドリガンドは、本明細書で定義されるIL-17Eに特異的であり、IL-17によって媒介される疾患又は障害は、IL-17Eによって媒介される疾患又は障害である。さらなる実施態様において、IL-17Aによって媒介される疾患又は障害は、気道炎症性疾患から選択される。
【0099】
一実施態様において、IL-17によって媒介される疾患又は障害は、IL-17Fによって媒介される疾患又は障害である。さらなる実施態様において、ペプチドリガンドは、本明細書で定義されるIL-17Fに特異的であり、IL-17によって媒介される疾患又は障害は、IL-17Fによって媒介される疾患又は障害である。さらなる実施態様において、IL-17Fによって媒介される疾患又は障害は、気道炎症性疾患及び乾癬から選択される。
【0100】
「予防」という用語への本明細書における言及は、疾患の誘導前の防御的な組成物の投与を含む。「抑制」は、誘導性事象の後であるが、疾患の臨床的出現の前の組成物の投与を指す。「治療」は、疾患症状が顕在化した後の防御的な組成物の投与を含む。
【0101】
疾患からの防御又は疾患の治療におけるペプチドリガンドの有効性をスクリーニングするために使用することができる動物モデル系が利用可能である。動物モデル系の使用は、ヒト及び動物の標的と交差反応することができるポリペプチドリガンドの開発を可能にする本発明によって促進される。
【0102】
本発明を、以下の実施例を参照して、以下でさらに説明する。
【実施例】
【0103】
(実施例)
(材料及び方法)
(ペプチド合成)
ペプチド合成は、Fmoc化学に基づき、Peptide Instrumentsにより製造されたSymphonyペプチド合成装置及びMultiSynTech製のSyro II合成装置を使用した。標準的なFmoc-アミノ酸(Sigma, Merck)を適切な側鎖保護基とともに利用し:適用可能な場合、標準的なカップリング条件を各々の場合に使用し、その後、標準的な方法論を用いて、脱保護を行った。HPLCを用いてペプチドを精製し、単離後、これを1,4,7-トリス(ビニルスルホニル)-1,4,7-トリアゾナン(TAST)で修飾した。このために、直鎖状ペプチドをH2Oで約35mLまで希釈し、アセトニトリル中の約500μLの100mM TASTを添加し、H2O中の5mLの1M NH4HCO3で反応を開始させた。反応をRTで約30分から60分間進行させておき、(MALDIにより判断して)反応が終了したら、凍結乾燥させた。凍結乾燥後、修飾されたペプチドを上記のように精製し、一方、Luna C8をGemini C18カラム(Phenomenex)と交換し、酸を0.1%トリフルオロ酢酸に変更した。正しいTAST修飾材料を含有する純粋な画分をプールし、凍結乾燥させ、保存のために-20℃で保持した。
【0104】
別途特記しない限り、アミノ酸は全て、L-立体配置で使用した。
【0105】
(生物学的データ)
(ヒトIL-17A蛍光偏光(FP)競合)
蛍光偏光(FP)競合による親和性決定。二環をスクリーニングして、IL-17Aに対する既知の親和性を有するフルオレセインで標識された二環(トレーサーと呼ばれる)と競合させる蛍光偏光アッセイで親和性(Ki)を決定した。ペプチドを、最大1%DMSOを含むアッセイバッファー(PBS+0.01%Tween20、NaOH(1M)を用いてpH7.4に調整)に適切な濃度まで希釈し、その後、アッセイバッファーに2分の1で連続希釈した。黒色の384-ウェル低容量プレート中、5μLの希釈したペプチドをプレートに添加し、その後、10μLのIL-17Aを一定濃度で添加し(トレーサーBCY13196の場合、75nM IL-17A、トレーサーBCY13351の場合、50nM IL-17A)、その後、10μLのトレーサーを1nMの最終濃度で添加した。測定は、485nmで励起し、520nmで平行及び垂直放出を検出する「FP 485 520 520」光モジュールを備えたBMG PHERAstar FSで行った。PHERAstar FSを、ウェル当たり200フラッシュ及び0.1秒の位置決め遅延で、25℃に設定し、各々のウェルを5~10分間隔で60分間測定した。測定に使用されるゲインは、トレーサーのみのウェルでの実験点で決定した。データ解析はDotmaticsで行い、その場合、Ki値を得るために、mP値をチェン=プルソフ(Cheng Prusoff)式に当てはめた。
【0106】
使用されたトレーサーは、BCY13196:
【化7】
(ここで、Flは、フルオレセインを表し、かつSarは、サルコシンを表す)
であった。
【0107】
本発明の選択されたペプチドリガンドを上述のIL-17Aヒト蛍光偏光(FP)競合アッセイで試験した。結果は、表1に示されている:
表1:本発明のペプチドリガンドのヒト結合アッセイデータ
【表1】
【手続補正書】
【提出日】2022-09-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】