(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-21
(54)【発明の名称】三相二重電気機械およびかかる機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
H02K 16/04 20060101AFI20230214BHJP
H02K 3/28 20060101ALI20230214BHJP
H02K 1/16 20060101ALI20230214BHJP
H02P 25/22 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
H02K16/04
H02K3/28 Z
H02K1/16 Z
H02P25/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537051
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 FR2020052542
(87)【国際公開番号】W WO2021123673
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501377391
【氏名又は名称】ムービング マグネット テクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ジェルベル,マチュ
(72)【発明者】
【氏名】ラフォルジュ,ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】カルラン,ギョーム
【テーマコード(参考)】
5H505
5H601
5H603
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505CC04
5H505DD03
5H505DD06
5H505EE49
5H505HB01
5H505HB05
5H505JJ03
5H505JJ26
5H505LL22
5H505LL41
5H505LL42
5H505PP01
5H601FF04
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB02
(57)【要約】
本発明は、第1の三相巻線と、第2の三相巻線と、を有し、半径方向に一組の歯が延びる軟質強磁性材料から作製された円筒状ヨークで形成されたステータを備え、上記一組の歯の部分は、複数の上記巻線を支持し、複数の上記巻線は、互いに別個のものであり、上記第1の三相巻線は、デルタ構成にて接続されており、上記第2の三相巻線は、スター構成にて接続されている電気機械に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の三相巻線(4a、4b、4c)と、第2の三相巻線(5a、5b、5c)と、を有し、
半径方向に一組の歯(7、8)が延びる軟質強磁性材料から作製された円筒状ヨーク(10)で形成されたステータ(3)を備え、
前記一組の歯(8)の部分は、複数の前記巻線を支持し、
複数の前記巻線(4a、4b、4c、5a、5b、5c)は、互いに別個のものであり、
前記第1の三相巻線(4a、4b、4c)は、デルタ構成にて電気的に接続されており、
前記第2の三相巻線(5a、5b、5c)は、スター構成にて電気的に接続されている電気機械において、
前記ステータ(3)の前記歯(7、8)の総数は、3(N1+N2)(k+1)に等しく、
kは、巻線における同じ相の連続するコイルの数を表す1以上の自然数であり、
N1およびN2はそれぞれ、前記第1の巻線および前記第2の巻線における、同じ相の連続するコイルからなるグループの数であり、
2つの前記巻線は、いかなる巻線も支持していない少なくとも1つの歯(7)により分離されている、電気機械。
【請求項2】
複数の前記巻線は、主歯(8)により支持されており、
いかなる巻線も支持していない前記歯は、分離歯(7)であり、
前記電気機械の中心から見た、前記歯の自由端の幅により画定される前記分離歯(7)の角度方向の幅は、前記主歯(8)の角度方向の幅以下である、請求項1に記載の電気機械。
【請求項3】
N1=N2=k=1であり、
前記ステータ(3)は、6個の巻線を有する歯と6個の巻線を有しない歯とを交互に含み、合計12個の歯(7、8)を有する、請求項1に記載の電気機械。
【請求項4】
前記第1の三相巻線は、巻線を有する歯と巻線を有しない歯とが交互に配置された連続するステータ歯の第1のグループによって支持されており、
前記第2の三相巻線は、巻線を有する歯と巻線を有しない歯とが交互に配置された連続するステータ歯の第2のグループによって支持されており、
前記ステータ歯の前記第1のグループと前記ステータ歯の前記第2のグループとは、互いに分離されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項5】
前記第1の三相巻線および前記第2の三相巻線は、前記第1の巻線のコイルを支持する前記ステータの第1の歯と、いかなる巻線も支持していない前記ステータの第2の歯と、前記第2の巻線のコイルを支持する前記ステータの第3の歯と、からなる周期パターンを形成するように、交互に配置されており、
前記第1の歯、前記第2の歯および前記第3の歯は、前記ステータの周方向において連続している、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項6】
前記第1の巻線は、180°の第1のセクタにわたり角度方向に分布しており、
前記第2の巻線は、180°の第2のセクタにわたり角度方向に分布しており、
前記第1のセクタと前記第2のセクタとは、互いに分離されており、
複数の前記巻線の各々は、複数の電気トラックのセットに電気的に接続されており、
前記複数の電気トラックの複数の前記セットは、互いに分離されており、かつ、互いに分離された2つの180°の角度方向セクタにわたり角度方向に分布している、請求項4に記載の電気機械。
【請求項7】
各三相巻線は、ブロックシーケンスによって制御され、
各三相巻線は、互いに電気的に30°オフセットした状態にて制御される、請求項1~6のいずれか一項に記載の三相二重巻線を有する機械の制御方法。
【請求項8】
前記第1の巻線と前記第2の巻線とは、各々6つの電子スイッチセルを備えた異なる2つの電力ブリッジ(14、15)によって電力供給される、請求項6に記載の三相二重巻線を有する機械の制御方法。
【請求項9】
前記ブロック制御は、PWMと称されるパルス幅変調を使用して実行され、
第1のPWMは、前記第1の巻線に適用され、
第2のPWMは、前記第2の巻線に適用され、
前記第1のPWMおよび前記第2のPWMは、正の交流が同時に適用される重複時間を相殺または最小化するよう適用される、請求項8に記載の三相二重巻線を有する機械の制御方法。
【請求項10】
複数の前記PWMは、複数の前記電子スイッチセルに適用される、請求項9に記載の三相二重巻線を有する機械の制御方法。
【請求項11】
複数の前記PWMは、複数の前記電子スイッチセルに適用され、
一変形実施形態において、前記電気機械は、6つの電子スイッチセルを有する複数の前記電力ブリッジの上流に、中央制御ユニットから来る二線式電気信号を入力として受け取る4つの電子スイッチセルにより形成されるブリッジ整流器をさらに備え、
前記ブロック制御は、PWMと称されるパルス幅変調を使用して実行され、
前記PWM制御は、前記ブリッジ整流器の入力として適用され、
前記ブリッジ整流器は、前記PWM制御のアクティブ整流を実行し、
2つの前記電力ブリッジは、フルピッチにて制御される、請求項8に記載の三相二重巻線を有する機械の制御方法。
【請求項12】
2つの前記三相巻線の制御は、単一の同じマイクロプロセッサによって実行される、請求項7~11のいずれか一項に記載の三相二重巻線を有する機械の制御方法。
【請求項13】
2つの前記三相巻線の制御は、2つの別個のマイクロプロセッサによって実行される、請求項7~11のいずれか一項に記載の三相二重巻線を有する機械の制御方法。
【請求項14】
駆動要素、特にチェーンまたはベルトに対する、内燃機関のガス交換弁を制御するカムシャフトの回転角度の連続的な位相シフトのための調節装置であって、
外側リングギアに対して静止しているステータを有するブラシレス調節電気モータを備え、
前記ブラシレス調節電気モータは、前記外側リングギア(44)、入力要素(46)および出力ディスクを含む3つの入力/出力を有する減速ギア(43)に結合されており、
前記外側リングギア(44)は、前記駆動要素によって駆動され、
前記出力ディスクは、前記カムシャフト(41)に固定されている調節装置において、
前記ブラシレス調節電気モータは、請求項1~6のいずれか一項に記載の電気機械である、調節装置。
【請求項15】
ターボチャージャ用ウェイストゲートを制御することを目的とする電磁アクチュエータと、ウェイストゲートと、を備えるシステムにおいて、
前記モータは、請求項1~6のいずれか一項に記載の電気機械である、システム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本願は、多相電気機械およびその制御の分野に関する。より詳細には、本願は、比較的高い周囲温度(典型的には160℃)において動作する必要のある複数の巻線システムを有する機械に関する。
【0002】
好ましくは、本発明には、例えば電気的カムシャフト位相シフト器内、またはターボチャージャ用ウェイストゲートのアクチュエータ内等の、要求の厳しい自動車に関する用途において、特権的な使用が見出されるだろう。これらの用途では、著しい熱量放出の源が近くにあり、また、環境に統合させるため、かなりのコンパクト性が求められる。ただし、本発明は、これらの用途に限定されるものではない。
【0003】
[従来技術]
従来技術において以下の文献がすでに知られており、2つの三相システムを有する多相電気アーキテクチャ(構成)が提示されている:
文献EP3098963には、例えば、ベクトル制御において駆動されるときの機械のコモンモードを最小化する三相二重アーキテクチャが提示されている。ベクトル制御によって、トルクの規則性に関して良好な機械性能が得られる。しかし、ベクトル制御には、精密な位置センサおよび高度な制御電子機器による複雑な制御が必要だという欠点がある。
【0004】
また、文献US2014375232には、2つの三相システム間にエネルギー伝達回路を有する、2つの別々の電源を有する三相二重アーキテクチャが提示されている。この場合もやはり、機械の制御はベクトル制御であり、しかも電源を倍にする必要がある。
【0005】
さらに、文献WO2016012703には、自動車用の、2つの別個の制御モジュールを有する三相二重アーキテクチャが提示されている。当該2つのモジュールは、これらのモジュールの総損失を最小限に抑えるよう相互接続されている。制御の種類は特定されていないが、2つの電子モジュールに対して、一定の位相角制御が必要となる。また、バランス六相アーキテクチャと同等のものを得るために、2つの三相システム間に30°のオフセットを作り出すことが、よく知られている。
【0006】
最後に、文献EP3224929には、スター接続およびデルタ接続を用いる三相二重アーキテクチャが提示されている。2つの当該三相ネットワークは、異なる値を有する2つの電圧源に結合されている。
【0007】
[従来技術により解決されていない課題]
中パワー(典型的には数十ワット~数キロワット)において動作する、自動車に関する用途の文脈では、従来技術に係るアーキテクチャは、効率的かつ経済的に適用することができない。実際、複雑なベクトル制御または2つの別々の電子モジュールを採用することにより、このソリューションは、競合する三相ソリューションと比べて、過度に嵩高かつ高価なものになる。後者は現在、これらの用途では、最も代表的なものである。
【0008】
さらに、多くの場合、既存の三相二重システムには、一相につき数本の巻線を有する電気機械が使用される。二つの三相システムの異なる相が混交し、扱うべき巻線が典型的には12本以上存在するため、製造が非経済的かつ工業的に複雑なものとなる。
【0009】
従来技術には、単純な三相システムと比較したときの三相二重システムの利点(すなわち、より大きくかつより一定の平均トルク、信号の高調波成分およびより好ましいトルク)を有する、中パワーの自動車用途のためのコンパクトなアクチュエータを得ることを可能にする、単純かつ経済的なソリューションが存在していない。
【0010】
[発明の目的]
本発明の主な目的は、自動車産業用の中パワーの用途における単純で経済的に実施可能な三相二重電気機械を提供することである。
【0011】
特に、本発明の目的のうちの1つは、各半機械の複数の相および2つの半機械間の複数の相を磁気的に分離する分離歯の使用による、ブロック制御用に最適化された三相二重機械の一般的な接続形態を提案することである。その結果、提案された接続形態は、従来技術に係るベクトル制御と比較して、ブロック制御の単純さに適合している。
【0012】
本発明の他の複数の目的のうちの1つは、モータ巻線の数を著しく制限または単純化して、同等の三相ソリューションと比較したときのコンパクト性の改善を可能にすることである。
【0013】
また、本発明の目的の範囲内において、特にブロックスイッチングの使用の文脈において、かかる機械のための単純な制御が提案される。当該制御は、前述の利点を保ちつつ、経済的な電子機器によってサポートされ、ベクトル制御よりも実装がはるかに簡単である。
【0014】
より詳細には、本発明は、第1の三相巻線と、第2の三相巻線と、を有し、半径方向に一組の歯が延びる軟質強磁性材料から作製された円筒状ヨークで形成されたステータを備え、上記一組の歯の部分は、複数の上記巻線を支持し、複数の上記巻線は、互いに別個のものであり、上記第1の三相巻線は、デルタ構成にて電気的に接続されており、上記第2の三相巻線は、スター構成にて電気的に接続されている電気機械において、上記ステータの上記歯の総数は、3(N1+N2)(k+1)に等しく、kは、巻線における同じ相の連続するコイルの数を表す1以上の自然数であり、N1およびN2はそれぞれ、上記第1の巻線および上記第2の巻線における、同じ相の連続するコイルからなるグループの数であり、2つの上記巻線は、いかなる巻線も支持していない少なくとも1つの歯により分離されていることを特徴とする、電気機械に関する。
【0015】
本発明の趣旨において、「同じ相の連続するコイルの数」とは、同じ相および同じ半機械に属するコイルであって、巻線を有しない歯により分離されずに隣り合うコイルの数を意味する。
【0016】
同様に、本発明の趣旨において、「同じ相の連続するコイルからなるグループの数」とは、少なくとも1つの分離歯により分離された、同じ半機械の同じ相に属する、連続するコイルから構成されるグループの数を意味する。コイルからなるこれらのグループは、単一の分離歯によって分離されてもよいか、または、複数の歯および他の相に属するコイルからなる他のグループによって分離されてもよい。
【0017】
好ましくは、複数の上記巻線は、主歯により支持されており、いかなる巻線も支持していない上記歯は、分離歯であり、上記電気機械の中心から見た、上記歯の自由端の幅により画定される上記分離歯の角度方向の幅は、上記主歯の角度方向の幅以下である。このようにして、巻線を有する歯によって集められる磁束が最大化される。
【0018】
好ましい機械は、N1=N2=k=1という関係式に従い、6個の巻線を有する歯と6個の巻線を有しない歯とを交互に含み、合計12個の歯を有するだろう。その結果、機械の製造が経済的になる。
【0019】
可能性のある一実施形態において、上記第1の三相巻線は、巻線を有する歯と巻線を有しない歯とが交互に配置された連続するステータ歯の第1のグループによって支持されており、上記第2の三相巻線は、巻線を有する歯と巻線を有しない歯とが交互に配置された連続するステータ歯の第2のグループによって支持されており、上記ステータ歯の上記第1のグループと上記ステータ歯の上記第2のグループとは、互いに分離されている。
【0020】
別の実施形態では、上記第1の三相巻線および上記第2の三相巻線は、上記第1の巻線のコイルを支持する上記ステータの第1の歯と、いかなる巻線も支持していない上記ステータの第2の歯と、上記第2の巻線のコイルを支持する上記ステータの第3の歯と、からなる周期パターンを形成するように、交互に配置されており、上記第1の歯、上記第2の歯および上記第3の歯は、上記ステータの周方向において連続している。
【0021】
好ましくは、上記第1の巻線は、180°の第1のセクタにわたり角度方向に分布しており、上記第2の巻線は、180°の第2のセクタにわたり角度方向に分布しており、上記第1のセクタと上記第2のセクタとは、互いに分離されており、複数の上記巻線の各々は、複数の電気トラックのセットに電気的に接続されており、上記複数の電気トラックの複数の上記セットは、互いに分離されており、かつ、互いに分離された2つの180°の角度方向セクタにわたり角度方向に分布している。
【0022】
また、本発明は、各三相巻線は、ブロックシーケンスによって制御され、各三相巻線は、互いに電気的に30°オフセットした状態にて制御され、その結果、均等に電気的に分布した12個の制御ベクトルが生成されることを特徴とする、上述の三相二重巻線を有する機械の制御方法に関する。
【0023】
上記第1の巻線と上記第2の巻線とは、各々6つの電子スイッチセルを備えた異なる2つの電力ブリッジによって電力供給されることが好ましい。
【0024】
上記ブロック制御は、PWM(pulse width modulation)と称されるパルス幅変調を使用して実行され、第1のPWMは、上記第1の巻線に適用され、第2のPWMは、上記第2の巻線に適用され、上記第1のPWMおよび上記第2のPWMは、正の交流が同時に適用される重複時間を相殺または最小化するよう適用されることが、有利でありかつ好ましい。
【0025】
一実施形態において、複数の上記PWMは、複数の上記電子スイッチセルに適用され、一変形実施形態において、上記電気機械は、6つの電子スイッチセルを有する複数の上記電力ブリッジの上流に、中央制御ユニットから来る二線式電気信号を入力として受け取る4つの電子スイッチセルにより形成されるブリッジ整流器をさらに備え、上記ブロック制御は、PWMと称されるパルス幅変調を使用して実行され、上記PWM制御は、上記ブリッジ整流器の入力として適用され、上記ブリッジ整流器は、上記PWM制御のアクティブ整流を実行し、2つの上記電力ブリッジは、フルピッチにて制御される。
【0026】
2つの上記三相巻線の制御は、1つの同じマイクロプロセッサによって、あるいは、2つの別個のマイクロプロセッサによって、実行することができる。
【0027】
また、本発明は、駆動要素、特にチェーンまたはベルトに対する、内燃機関のガス交換弁を制御するカムシャフトの回転角度の連続的な位相シフトのための調節装置であって、外側リングギアに対して静止しているステータを有するブラシレス調節電気モータを備え、上記ブラシレス調節電気モータは、上記外側リングギア(4)、入力要素および出力ディスクを含む3つの入力/出力を有する減速ギアに結合されており、上記外側リングギアは、上記駆動要素によって駆動され、上記出力ディスクは、上記カムシャフトに固定されている調節装置において、上記ブラシレス調節電気モータは、上述の複数の変形形態による電気機械であることを特徴とする、調節装置に関する。
【0028】
また、本発明は、ターボチャージャ用ウェイストゲートを制御することを目的とする電磁アクチュエータと、ウェイストゲートと、を備えるシステムにおいて、上記モータは、上述の複数の変形形態による電気機械であることを特徴とする、システムに関する。
【0029】
[図面の簡単な説明]
本発明のその他の特徴および利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な実施形態を読むことにより、明らかになるだろう。添付の図面はそれぞれ、以下の事柄を示す。
【0030】
[
図1]
図1は、第1の実施形態における、本発明に係る機械の概略断面図である。
【0031】
[
図2]
図2は、第2の実施形態における、本発明に係る機械の概略断面図である。
【0032】
[
図3]
図3は、第3の実施形態における、本発明に係る機械の概略断面図である。
【0033】
[
図4]
図4は、第4の実施形態における、本発明に係る機械の概略断面図である。
【0034】
[
図5]
図5は、第5の実施形態における、本発明に係る機械の概略断面図である。
【0035】
[
図6]
図6は、第1の実施例に係る上記相の電気的接続を有する、本発明に係る機械の斜視図である。
【0036】
[
図7]
図7は、第2の実施例に係る上記相の電気的接続を有する、本発明に係る機械の斜視図である。
【0037】
[
図8]
図8は、他の実施形態における、本発明に係る機械の概略断面図である。
【0038】
[
図9a]
[
図9b]
図9aおよび
図9bは、ある特定の実施形態における、本発明に係る機械の2つの概略断面図である。
【0039】
[
図10]
図10は、第1の例示的実施形態における、制御コンバータへの本発明に係る機械の接続の概略図である。
【0040】
[
図11]
図11は、第2の例示的実施形態における、制御コンバータへの本発明に係る機械の接続の概略図である。
【0041】
[
図12]
図12は、本発明に係る機械の制御に使用可能なパルス幅変調を用いたブロック制御のタイミングチャートである。
【0042】
[
図13]
図13は、異なるデューティサイクルに関する2つの詳細なパルス幅変調のタイミングチャート、および本発明に係る機械に適用可能な異なる2つの方法である。
【0043】
[
図14]
図14は、本発明に係る機械の制御に使用可能なパルス幅変調を用いたブロック制御のタイミングチャートである。
【0044】
[
図15]
図15は、本発明に係る機械を実装するメカトロニクスアセンブリの第1の実施例である。
【0045】
[
図16]
図16は、本発明に係る機械を実装するメカトロニクスアセンブリの第2の実施例である。
【0046】
[
図17]
図17は、本発明に係る機械を実装するメカトロニクスアセンブリの第3の実施例である。
【0047】
【0048】
[
図19a]
[
図19b]
図19aおよび
図19bは、制御コンバータへの本発明に係る機械の接続の概略図であり、第1の三相巻線の相を特性評価するために使用される2つのスイッチング状態を表す。
【0049】
[
図20a]
図20aは、三相インバータの2つの終端のターミナルにおける電圧の測定結果である。
【0050】
[
図20b]
図20bは、コイルの特性評価シーケンスのうちの1つの特性評価シーケンスの間の、電流測定素子内を流れる電流の測定結果である。
【0051】
[
図21a]
図21aおよび
図21bは、制御コンバータへの本発明に係る機械の接続の概略図であり、2つの三相巻線のうちの1つの三相巻線の非アクティブ化を伴う、高トルク制御およびその低トルク適応を表す。
【0052】
[実施形態の詳細な説明]
図1は、本発明に係る電気機械の第1の実施例を示す。当該第1の実施例は、2つの半機械(それぞれ(1)および(2))から構成されるステータ(3)を備える。各半機械はそれぞれ、三相巻線(4a、4b、4c)および三相巻線(5a、5b、5c)を支持している。添字a、bおよびcは各々、形成された三相システムの相(位相)を表す。ステータ(3)は、円筒リング(6)の形状であり、当該円筒リング(6)から、歯が半径方向に延びている。各半機械(1、2)は、互いに交互に配置された2つのタイプの歯を有する:コイルを支持する歯(8)は、主歯と称される。いかなる巻線も支持していない歯(7)は、分離歯と称される。当該歯(7)は、複数の相および2つの半機械を磁気的に分離する役割を有する。すべての主歯(8)および副歯(7)から構成される半機械(1)は、接線方向に連続して配置された3つの基本パターンを形成している。また、すべての主歯(8)および副歯(7)から構成される半機械(2)は、接線方向に連続して配置された3つの基本パターンを形成している。この
図1の実施例の場合、第1の半機械(1)の種々の相は、デルタ構成にて接続されており、第2の半機械(2)の種々の相は、スター構成にて接続されている。分離歯は、開放角度(拡がり角度)(a7)を有する。この角度の頂点は、モータの回転中心であり、当該角度は、その開放端部における歯の幅により定められる。主歯(8)により集められる磁束を最大にし、その結果装置の性能を向上させるために、当該角度は、主歯(a8)の開放角度以下である。ただし、本発明の範囲内において、この関係性は厳密には必要ではない。
【0053】
この
図1において、ロータは、強磁性材料から作製されたロータヨーク(10)の内部の磁石(9)と、強磁性であってもなくてもよい軸(不図示)と、から構成されている。このロータは一例として示されているだけであり、任意のブラシレス機械において従来使用されている他の任意の種類のロータを使用してもよい。
【0054】
図2は、
図1に示されるものと同様の変形実施形態を示す。ただし、
図2は、ロータにより生成される磁束をより多く集めるため、主歯(8)がその開放端にフレア(29)、すなわち磁極片を有する点、および、ロータがヨーク(10)の表面上に磁石(9)を有し、当該ロータが第2の実施形態に係るロータである点において、
図1とは異なるものである。
【0055】
図3は、ロータの見えない、機械の代替実施形態を示す。この場合、各半機械(1、2)は、60°の機械角にわたり延在する3つの基本パターンから構成されている。当該基本パターンは、連続する3つの主歯(8)と、分離歯(7)と、を含むセットから作られている。当該3つの主歯の各々は、同じ半機械の同じ相に属する複数のコイルのセットを支持している。
図3において、添字A、添字Bおよび添字Cは、いかなる巻線も支持していない分離歯(7)により互いに分離された各半機械(添字_1および添字_2)の異なる3つの相を指す。この場合、2つの半機械(1)および(2)は、組み重なっている(ネストされている)。これは、第1の半機械(添字_1)の相に対して、第2の半機械(添字_2)の相が角度方向において後に従っており、これら2つは、分離歯(7)により分離されているからである。
【0056】
図4には、
図3の変形実施形態と同様の変形実施形態が示されている。ただし、2つの半機械(1)および(2)の各々が180°にわたり空間的に位置しており、第1の半機械(添字_1)は第2の半機械(添字_2)と同様に、接線方向に連続する3つの基本パターンから構成されている。各相(A_2、B_2、C_2、A_1、B_1、C_1)は、3つの主歯(8)により支持されており、分離歯(7)により分離されている。
【0057】
図5は、1つの相当たり4つのコイルを有する、36個の歯の機械を示す。当該相には、2つの歯からなるグループが、2つある。2つの当該グループの2つの歯は、直径上で対向している。2つの半機械(添字_1および添字_2)は、組み重なっている。すなわち、同じ機械における同じ相に属する巻線を有する2つの歯と、他方の機械における同じ相に属する巻線を有する2つの歯とが、互いに交互に配置されている。2つの歯からなるグループの各々は、分離歯(7)により、隣接する、2つの歯からなるグループから分離されている。
【0058】
図6は、非限定的な実施例として、6つの主歯(8)と6つの分離歯(7)とを有する装置の接続部品を示す。ステータ(3)は、各々が約180°の角度にわたって延在する2つの半機械(1)および(2)から作られている。このソリューションによって、2つの半機械間の電流の分配による複数の巻線の接続を確実にすることができる。そして、導電性部品の2つのセット(11)および(12)(通常は、銅から作製される)により、スター構成による第1の半機械(1)の巻線の電気的接続、および、デルタ構成による第2の半機械(2)の巻線の接続が確実になる。アセンブリのコンパクト性を向上させ、特定の絶縁を用いずにさまざまな電気部品間の電気的接触のリスクを低減するために、導電性部品のセット(11)および導電性部品のセット(12)は、有利には、同一平面上に配置してもよい。
【0059】
図7は、前述の導電性部品を使用せず、直接プリント回路(13)を使用してさまざまな巻線に接続することにより、2つの半機械の巻線を接続する代替形態である。プリント回路(13)のトラックにより、巻線のスター接続機能およびデルタ接続機能が実行される。このソリューションでは、各コイルは、圧入型接続により、プリント回路(13)に直接、接続されている。
【0060】
図8は、ステータの外側にロータを備え、磁石(9)のリングを支持するヨーク(10)を備える代替実施形態に係る電気機械を示す。半機械は組み重なっている。コイル(4A、4Bおよび4C)は、第1の半機械に属し、コイル(5A、5Bおよび5C)は、第2の半機械に属する。磁極片(29)、すなわち、主歯(8)上における、ロータに対向する歯の自由端の拡張部を有するという特殊性がある。分離歯は、半径方向に一定の幅を有し、その自由端において拡張していない。
【0061】
図9aおよび
図9bは、2つの半機械(1、2)が各々、半ステータ(1a、1b)上に構成されている、別の実施形態を示す。
図9aは、組み立て前の図であり、
図9bは、組み立て後の図である。2つの半ステータ(3a、3b)の境界は、分離歯(7)の中央にあってもよく、あるいは、図示のように、分離歯(7)の縁部上にあってもよい。この実施形態では、機械を完全に組み立てる前に2つの半機械のコイル(4、5)を装着することによって、他の実施形態のものよりも長いコイル(4、5)を主歯(8)上に挿入することが可能になる。さまざまな当該コイル(4、5)の組み付けは、単一のステータ上では不可能であっただろう。ロータ(図示せず)が収容される必要がある中央開口部には、これらのコイルは通過することができない。
【0062】
図10は、本発明に係る機械の、コンバータへの電気的接続の概略図を示す。スター(1)構成およびデルタ(2)構成にて接続された各半機械はそれぞれ、三相ブリッジ(14、15)により電圧が供給され、当該三相ブリッジ(14、15)は各々、6個の電子スイッチから構成されている。これは、当業者にとって通常の構成によるものである。コンバータは、入力としてフィルタ(16)を有する。当該フィルタ(16)は、電圧源(E)に接続されており、一組のインダクタ(17)、およびコンデンサバンク(18)により作られている。このフィルタ(16)は、2つの半機械(1、2)に接続された三相ブリッジ(14、15)のターミナルに接続されている。さまざまなスイッチの適応制御および交互制御により、フィルタ(16)のサイズを最小化することが可能になる。これにより、コストおよび全体のサイズが低減する。
【0063】
図11は、本発明に係る機械の、コンバータへの電気的接続の概略図を示す。当該電気的接続により、例えば、PWMとして知られるパルス幅変調を介する、バッテリ(E)等の電圧源により電力供給される車両の電子制御ユニット(electronic control unit:ECU)により供給されるような二線式パルス制御(30)を介した、六相機械の制御が可能になる。二線式信号(30)が負または正の極性を有し得る、すなわち、電気グランドが上部または下部ライン上にあり得るので、コンバータは、4つの電子スイッチにより制御された、この場合アクティブの整流器(19)を備える。これにより、正または負のパルス信号から、正のパルスへと通過させ、当該正のパルスを三相ブリッジ(14、15)に供給することが可能になる。
【0064】
図12は、2つの半機械の相に適用される制御の原理を示している。コマンドC1およびC2は、
図10の三相ブリッジの分岐に適用される。例えば、コマンドC2は、コマンドC1に対して30°の電気的オフセットを有する。この角度オフセットは、第2の半機械の複数の相の誘導電圧の、第1の半機械のものと比較した電気的オフセットに由来する。各コマンドC1およびC2は、PWM型のチョップされた電圧(PWM1、PWM2)を受け取る、「ハイサイド(high side)」と称される電圧側トランジスタの制御(HS1、HS2)と、一定電圧(ON)を受け取る、「ローサイド(low side)」と称されるグランド側トランジスタの制御(LS1、LS2)と、から構成される。この図に示す各制御は従来、三相機械のためのブロックとして使用され、「スローディケイ(slow decay)」とも称されている。
図13では、各半機械の三相ブリッジに適用されるパルス幅変調コマンドPWM1およびPWM2による、それぞれP1およびP2と記された、半機械を制御するための2つの方法が記載されている。2つの方法P1およびP2の目的は、電流リップルを低減し、その結果、機械を駆動するコンバータのための上述したフィルタのサイズを最小化するために、2つの半機械が同時に供給されるリカバリ時間を最小にすることである。2つの半機械の電源を可能な限り交互に替えることで、図中にパーセンテージで示したデューティサイクルにしたがって、この目標を達成することができる。この方法は、デューティサイクルが低いとき、より一層効果的であるだろう。
図13に示すように、方法P1またはP2のいずれについても、デューティサイクルが50%未満であるときには、PWM1とPWM2との間に重複は観察されない。
【0065】
例えばP1の場合の方法は、周期の中央に関する制御対称性を達成することに基づく。例えばP2の場合の方法は、デューティサイクルが50%未満であるとき、正のコマンドPWM1の終了後にコマンドPWM2をトリガし、この値を超える信号の重複を最小限に抑えることに基づく。
【0066】
図14は、
図12に示すようなコンバータに加えられる典型的な信号を示す。DIR1およびDIR2は、二線式信号(30)を表す。図の左側の場合CAS1では、PWM制御がDIR1線上で生成されるため、正の平均電圧値がこの線上において得られる。一方、DIR2線は、電気グランドに対応するゼロの値になる。右側の場合CAS2では、DIR2は、正の平均値を示し、DIR1は、ゼロの値である。素子(19)により整流された後、電力ブリッジ(14、15)に入る信号は、線Vに示されているようなものになる。だが、電力ブリッジ(14、15)のスイッチの制御(HS1、LSI、HS2、LS2)は、DIR1およびDIR2の極性に応じて実行され、CAS1とCAS2との両方の場合において異なっているだろう。
【0067】
図15は、一定電圧を送る車両用バッテリ(31)のエネルギーを使用することによって、運動を作り出すことを可能にするメカトロニクスアセンブリを示す。当該車両用バッテリ(31)は、フィルタリング(16)の後に、2つの三相ブリッジ(14、15)に接続されている。これにより、六相機械(20)のターミナルにおいて、交流電圧を生成することが可能になる。当該六相機械(20)は、機械的負荷(21)に直接、接続されている。三相ブリッジ(14、15)は、マイクロコントローラ(22)により制御される。当該マイクロコントローラ(22)は、中央コンピューティングユニット(ECU)に接続されている。当該コントローラ(22)は、ツーウェイリンク(24)を介して中央処理ユニット(ECU)と情報を交換し、位置センサ(25、26)、および、負荷出力における絶対位置センサ(27)から、情報を受け取る。当該位置センサ(25、26)により、エンジン位置を知ることができる。バッテリ(19)への接続は、コネクタ(28)を介して行われる。当該コネクタ(28)により、コンピューティングユニット(ECU)、および、バッテリ(31)から来る電力線からのオーダーを転送することできる。
【0068】
図16は、
図15と同様のメカトロニクスアセンブリの代替実施形態を示す。ただし、1つのコントローラのみではなく、2つのコントローラ(23a、23b)が使用されている。これらのコントローラ(23a、23b)の各々は、機械(20)のロータの位置センサ(25、26)から来る位置情報から、それぞれの三相ブリッジ(14、15)を駆動する。
【0069】
図17は、本発明に係る機械を使用するメカトロニクスアセンブリの特定の実施形態を示し、
図11に示すコンバータが実装されている。この構成では、バッテリ(31)は、電子制御ユニット(ECU)に電力供給する。当該電子制御ユニット(ECU)は、コネクタ(28)を通じて、好ましくはPWM信号形式において、二線式信号(30)を供給する。六相機械を駆動および制御するために、当該二線式信号(30)は、三相ブリッジ(14、15)およびマイクロコントローラ(23)に供給される前に、整流器(19)を通過する。
【0070】
[用途:電気的位相シフト器]
本発明に係る電気機械は、カムシャフト位相シフト器を駆動するのに特に適している。
【0071】
図18は、カムシャフト(41)に連結された、一実施形態に係る装置の断面図を示す。この装置は、減速ギア(43)と結合した、上述したような電気機械(42)から構成されている。当該減速ギア(43)は、ここではトロコイド型である。
【0072】
減速ギア(43)は、内燃機関のチェーンまたはタイミングベルト(図示せず)により駆動される外側リングギア(44)を備える。この外側リングギア(44)は、100~150ミリメートルの典型的な外径を有し、上記のタイミングチェーンによって駆動されるのに適した外歯を有する。当該外側リングギア(44)は、その内面上に、管形状の歯付きトラック(45)を有する。この外側リングギア(44)は、カムシャフト(41)に対して自由に回転する。
【0073】
偏心ギアは、外側リングギア(44)の内側セクションよりも小さなセクションを有する。当該ギアの歯数は、外側リングギア(44)の内面上の歯付きトラック(45)の歯数よりも少なく、同一のモジュールを有する。
【0074】
トロコイド型減速ギア(43)の減速比を最大にするためには、偏心ギアの歯数と外側リングギアの内面上の歯付きトラックの歯数との差は、1つであることが有利である。
【0075】
偏心ギアは、単一シャフト(48)上に装着されたベアリングによって案内され、偏心の回転軸は、当該単一シャフト(48)の中心軸に対してオフセットされている。これら2つの軸の間のオフセットは、一般に0.1~1mmであり、トロコイド型メッシュの歯のモジュールに依存する。
【0076】
また、この出力ディスク(49)は、スクリュー(50)により、カムシャフト(41)に固定されている。当該出力ディスク(49)は、形成されたアセンブリの回転軸の近くの半径方向拡大部(15)を介して、当該スクリュー(50)により結合されている。
【0077】
本発明は、トロコイド型減速ギアに限定されるものではない。実際、その他の減速ギア、例えばエピサイクリック型減速ギアを使用してもよい。1つの減速ギアまたは別の減速ギアの選択は、所望の減速比、および、ソリューションの最終コストにしたがって、決定されてもよい。
【0078】
かかるカムシャフト位相シフト器の製造の種々の詳細は、欧州特許EP3464841に記載されている。ただし、これは保護の制限を構成するものではなく、本発明に係る電気機械により駆動することができる機構の簡単な一例を構成するものである。
【0079】
[用途:ターボチャージャ用ウェイストゲートのアクチュエータ]
本発明に係る電気機械は、一般に「ウェイストゲート(wastegate)」と称される、内燃機関のターボチャージャの吐出弁を制御するのに特に適している。このウェイストゲートにより、ターボチャージャタービン内のガス圧力が調節される。
【0080】
(自動車両、トラック、建設機械等のための)熱機関は、シリンダの燃焼室内の混合気の爆発により、動作する。
【0081】
エンジンエアループは、エンジンに供給する空気を導き、管理し、放出する機能を有し、さまざまなバルブを用いて動作する。内燃機関の性能を改善するために、一部の車両には、燃焼室を空気によって過給する役割を有するターボチャージャが取り付けられている。
【0082】
本発明に係る電気機械は、これらの要求の厳しいターボチャージャ等の用途に対して、特に適したソリューションである。
【0083】
[用途:電子相平衡法(electronic phase balancing method)]
本発明に係る電気機械は、その相のインピーダンスまたはインダクタンスの不均衡に対する感度を、本質的に有する。これらの不均衡は、一般的であるが、通常の機械ではしばしば無視できるものである。これらの不均衡は、コイルを構成する巻数における製造上のばらつき、圧入または溶接による電気的接続の質の変動、電気的接続の長さの不均衡等により、生じ得る。本発明に係る電気機械の特定の場合において、一方がスター構成にて接続され、他方がデルタ構成にて接続される2つの半機械の接続形態の相違には、同一のインバータ電圧において等しい電流を得るために、これら2つの半機械のコイル間において異なる巻数を用いることが、必然的に伴う。この相違は、理想比に対応し、2つの半機械の各々の有効巻数は、最も近い整数へと丸めることによって得られる。これは、半巻きのインピーダンス以上の誤差が生じ得ることを意味する。この誤差は、巻線を構成する巻数が小さくなるにつれて、さらに顕著になる。その結果、10%を上限とする、2つの半機械の複数の相の間の電流の不均衡が生ずる。この不均衡は、2つの半機械のうちの一方の半機械に、他方の半機械よりも大きな応力が生ずることによる電子部品の早期摩耗、案内システムの早期摩耗、および、制御を複雑にするトルクリップルの原因となる。
【0084】
図19a、
図19b、
図20aおよび
図20bには、経済的な特性評価および補償方法が提案されている。この方法では、
図19aおよび
図19bに見ることができるように、インバータとフィルタとの間のDC線のうちの1つに、少なくとも1つの電流測定素子(100)を追加する必要がある。当該少なくとも1つの電流測定素子(100)は、インバータとフィルタとの間に配置され、各インバータ/モータアセンブリの組成の識別を可能にするアルゴリズムに結び付けられている。当該少なくとも1つの電流測定素子(100)を使用することにより、電気的構成(アーキテクチャ)の最適化が可能となる。この測定の精度を向上させるために、例えばインバータ1つにつき1個の、複数の電流測定素子(100)を使用することができることに注意されたい。
【0085】
このように、製造ラインの出力における、モータの各相のインピーダンスおよびインダクタンスの特性評価は、簡単な制御シーケンスの適用および上記の電流の分析を用いて、行うことができる。
図19aに示すように、このシーケンスは、スター構成の巻線を有する半機械(1)の相に対して、誘導効果による過渡電流レジームを解析するために十分長い時間、相のターミナルにバッテリ電圧を印加し、その後、
図19bに示すように、この同じ相に対して、新たな電流変動を観測するために十分長い時間、逆の電圧を印加することに基づく。電圧は、電力供給される相の終端(101、102)のターミナルにおいて測定され、
図20aに与えられている形状を典型的に有する。電流は、電流測定素子(100)を用いて測定され、
図20bに与えられている。時定数および上記電流の振幅の測定により、相のインピーダンスおよびインダクタンスの値を導出することが可能になる。2つの半機械のすべての相についてこの測定を繰り返すことにより、特性が最も劣る相に対する、各相の比を計算することができる。次いで、半機械に供給される電圧の波を制御するパルス幅変調のデューティサイクルを個々に重み付けるように、この比が利用される。
【0086】
[用途:トルク制御最適化のための電子的方法]
本発明に係る電気機械は、その機能範囲の全体にわたって、一定分解能のトルク調節を有する。これは、相の電圧制御を可能にするパルス幅変調のデューティサイクルの変更によるものである。また、この事実は、従来の電気機械、例えば三相電気機械に対しても成り立つ。しかしながら、2つの回転システムの同期適用において、小さな負荷変動を調節するために非常に良好な分解能を有することが必要となり、したがって、電気機械の正確なトルク応答を有することがしばしば必要となる。当該2つの回転システムは、限定するものではないが、2つの電気的サブアセンブリから構成されている。負荷変動が著しく、かつ電気機械のより大きなトルク応答が要求されるときには、かかる分解能は必要ではない。
【0087】
図21aに記載されているように、本発明の特異性により、アセンブリの公称トルクの半分のトルクを上限とするトルクが最も低い動作範囲において、トルク調節の分解能を向上させることが可能になる。この図において、T
nは、通常動作時のトルクであり、γは、トルク定数であり、nは、各コイルの巻数であり、V
DCは、インバータ供給電圧であり、Dは、インバータを構成するトランジスタのデューティサイクルであり、Rφ
eqおよびLφ
eqは、スター構成およびデルタ構成にて接続された、異なるデューティサイクルを有する2つの半機械に対するコイルの等価抵抗および等価インダクタンスである。次式にしたがって、電圧制御のデューティサイクルの最小変動ΔDに応じて、通常動作時のトルクの最小の可能な変動を決定することができる。
【0088】
【数1】
したがって、
図21bに示すように、必要なトルク調節が公称トルクの半分未満であるときに、2つの半機械のうちの1つの半機械を非アクティブ(非作動状態)にするためのアルゴリズム的方法が提案される。ここで、T
mは、この最適化されたモードにおいて到達可能なトルクである。これにより、パルス幅変調の全工程を、両方の半機械間で分担する代わりに、アクティブ(作動状態)の半機械のみが担当することが可能になる。これは、アクティブの半機械に対する変調周波数を2倍にすることに相当する。また、これにより、デューティサイクルの最小変動ΔDを半分にすることができ、その結果、アセンブリのトルク分解能が半分になる。
【0089】
【数2】
第2の機械を非アクティブにすることにより、アクティブの機械の変調周波数を2倍にすることだけが、可能な選択肢であるのではない。1つの機械のみがアクティブである低トルク範囲と、両方の機械がアクティブである高トルク範囲との間の移行がより良好になることが確実となるように、特定のトルク範囲にわたり、それを自発的に低下させることも考えられる。さらに、漸進的に変化する分解能が得られるように、非アクティブの機械の制御工程の全てを移すのではなく、非アクティブの機械の制御工程の一部のみを移すことも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【
図1】第1の実施形態における、本発明に係る機械の概略断面図である。
【
図2】第2の実施形態における、本発明に係る機械の概略断面図である。
【
図3】第3の実施形態における、本発明に係る機械の概略断面図である。
【
図4】第4の実施形態における、本発明に係る機械の概略断面図である。
【
図5】第5の実施形態における、本発明に係る機械の概略断面図である。
【
図6】第1の実施例に係る上記相の電気的接続を有する、本発明に係る機械の斜視図である。
【
図7】第2の実施例に係る上記相の電気的接続を有する、本発明に係る機械の斜視図である。
【
図8】他の実施形態における、本発明に係る機械の概略断面図である。
【
図9a】ある特定の実施形態における、本発明に係る機械の2つの概略断面図である。
【
図9b】ある特定の実施形態における、本発明に係る機械の2つの概略断面図である。
【
図10】第1の例示的実施形態における、制御コンバータへの本発明に係る機械の接続の概略図である。
【
図11】第2の例示的実施形態における、制御コンバータへの本発明に係る機械の接続の概略図である。
【
図12】本発明に係る機械の制御に使用可能なパルス幅変調を用いたブロック制御のタイミングチャートである。
【
図13】異なるデューティサイクルに関する2つの詳細なパルス幅変調のタイミングチャート、および本発明に係る機械に適用可能な異なる2つの方法である。
【
図14】本発明に係る機械の制御に使用可能なパルス幅変調を用いたブロック制御のタイミングチャートである。
【
図15】本発明に係る機械を実装するメカトロニクスアセンブリの第1の実施例である。
【
図16】本発明に係る機械を実装するメカトロニクスアセンブリの第2の実施例である。
【
図17】本発明に係る機械を実装するメカトロニクスアセンブリの第3の実施例である。
【
図19a】制御コンバータへの本発明に係る機械の接続の概略図であり、第1の三相巻線の相を特性評価するために使用される2つのスイッチング状態を表す。
【
図19b】制御コンバータへの本発明に係る機械の接続の概略図であり、第1の三相巻線の相を特性評価するために使用される2つのスイッチング状態を表す。
【
図20a】三相インバータの2つの終端のターミナルにおける電圧の測定結果である。
【
図20b】コイルの特性評価シーケンスのうちの1つの特性評価シーケンスの間の、電流測定素子内を流れる電流の測定結果である。
【
図21a】制御コンバータへの本発明に係る機械の接続の概略図であり、2つの三相巻線のうちの1つの三相巻線の非アクティブ化を伴う、高トルク制御およびその低トルク適応を表す。
【
図21b】制御コンバータへの本発明に係る機械の接続の概略図であり、2つの三相巻線のうちの1つの三相巻線の非アクティブ化を伴う、高トルク制御およびその低トルク適応を表す。
【国際調査報告】