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▶ ベイ マテリアルズ エルエルシーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-21
(54)【発明の名称】二重シェル歯科装置及び材料構造
(51)【国際特許分類】
   B32B 25/08 20060101AFI20230214BHJP
   B32B 27/08 20060101ALI20230214BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20230214BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20230214BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20230214BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230214BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20230214BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20230214BHJP
   A61C 7/08 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
B32B25/08
B32B27/08
B32B7/022
B32B7/023
B32B7/027
B32B27/30 B
B32B27/36
B32B27/40
A61C7/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537102
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-09
(86)【国際出願番号】 US2020065928
(87)【国際公開番号】W WO2021127384
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】16/719,256
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519424308
【氏名又は名称】ベイ マテリアルズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】スチュワート, レイ エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ラールー, ジョン
【テーマコード(参考)】
4C052
4F100
【Fターム(参考)】
4C052JJ01
4F100AK02C
4F100AK03C
4F100AK12C
4F100AK15A
4F100AK15B
4F100AK17A
4F100AK17B
4F100AK17C
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AK25C
4F100AK41C
4F100AK42A
4F100AK42B
4F100AK45A
4F100AK45B
4F100AK46A
4F100AK46B
4F100AK46C
4F100AK51A
4F100AK51B
4F100AK51C
4F100AK52C
4F100AK54C
4F100AK64A
4F100AK64B
4F100AL09C
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100GB66
4F100JA05A
4F100JA05B
4F100JA11A
4F100JA11B
4F100JB16A
4F100JB16B
4F100JK03
4F100JK07A
4F100JK07B
4F100JK08
4F100JK10
4F100JK12C
4F100JN01A
4F100JN01B
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
改善された歯科装置及びポリマーシート構成物が開示されている。ポリマーシート構成物は、約1,000MPA~2,500MPAの弾性率を有する(「硬質」)材料で構成される外部層と、エラストマー材料又は約50MPa~500MPaの弾性率を有する(「軟質」)材料で構成される内部コアとを有する歯科装置であって、改善された可撓性及び強度、並びに現在入手可能な材料及び歯科装置よりも良好な耐ステイン性及び耐引裂き性を示す、歯科装置を作るのに有用である。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの外部層A及びCと、エラストマー内部層Bとを含むポリマーシート構成物であって、前記外部層A及びCのうちの一方又は両方が、約1,000MPa~2,500Mpaの曲げ弾性率を有する熱可塑性ポリマーを個別に含み、前記内部層Bが、約A60~D85の硬度を有するエラストマー材料で構成されている、ポリマーシート構成物。
【請求項2】
前記ポリマーシート構成物の前記A、B及びC層が、250ミクロン~2,000ミクロンの合計厚さ、及び500MPa~1,500MPaの曲げ弾性率を有する、請求項1に記載のポリマーシート構成物。
【請求項3】
前記外部層A及びCが、ポリエステル、コポリエステル、ポリカーボネート、ポリエステルポリカーボネートブレンド、ポリウレタン、ポリアミド、ポリオレフィン、微結晶ポリアミド、テレフタル酸とシクロヘキサンジメタノールと2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールとのコポリエステル、テレフタル酸とエチレングリコールとジエチレングリコールとのコポリエステル、MDI及びヘキサンジオールをベースとする芳香族ポリウレタン、脂肪族ジオールを有する芳香族ポリウレタン、プロピレンとエチレンとC4~C8α-オレフィンとのコポリマー、脂環式ポリアミド、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリ塩化ビニルなどのビニルポリマー、並びにフルオロポリマーのうちの1種又は複数を含む、請求項2に記載のポリマーシート構成物。
【請求項4】
前記内部層Bが、ポリウレタンエラストマー、芳香族ポリエーテルポリウレタン、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、スチレン系エラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリエーテルポリアミド(ポリプロピレンオキシドベース、又はポリテトラメチレンオキシドベース)、環状オレフィンエラストマー、アクリル系エラストマー、芳香族又は脂肪族ポリエーテル、ポリエステルポリウレタン、シロキサンエラストマー、ポリエーテルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、オレフィンコポリマー、及びフルオロエラストマーのうちの1種又は複数を含む、請求項2に記載のポリマーシート構成物。
【請求項5】
前記外部層A及びCのうちの1つ又は複数が、20J/g未満の融解熱及び80%を超える光透過率を有する微結晶ポリアミドを含む、請求項3に記載のポリマーシート構成物。
【請求項6】
前記内部層Bが、約A60~D50の硬度を有する無水物官能化スチレン系エラストマーを含む、請求項4に記載のポリマーシート構成物。
【請求項7】
前記A及びC層のうちの1つ又は複数が、
(a)ジカルボン酸成分、及び
(b)ジオール成分
を有するコポリエステルを含み、前記コポリエステルが、80℃~150℃のガラス転移温度(Tg)を示す、請求項2に記載のポリマーシート構成物。
【請求項8】
前記A及びC層のうちの1つ又は複数が、
(a)ジイソシアネート、並びに
(b)ヘキサンジオール及びシクロヘキサンジメタノールのうちの1種又は複数を含むジオール成分
で構成されるポリウレタンを含み、前記ポリウレタンが、約85℃~約150℃のガラス転移温度Tgを有する、請求項2に記載のポリマーシート構成物。
【請求項9】
前記内部層Bが、35%未満の圧縮永久ひずみを有する芳香族ポリエーテルポリウレタンを含む、請求項2に記載のポリマーシート構成物。
【請求項10】
前記内部層Bが、芳香族ポリエーテルポリウレタンを含み、前記A及びC層と、前記B層との間の層間剥離強度が、2.5cm当たり50Nを超える、請求項2に記載のポリマーシート構成物。
【請求項11】
少なくとも2つの剛性又は硬質外部層A及びC、少なくとも2つの軟質内部層B及びB’、並びに少なくとも1つの剛性又は硬質内部層Dで構成されるポリマーシート構成物であって、前記剛性又は硬質層A、C、及びDが、約1,000MPa~2,500MPaの弾性率を有する熱可塑性ポリマーを個別に含み、前記軟質内部層B及びB’が、約A60~D85の硬度を有するエラストマー材料を個別に含む、ポリマーシート構成物。
【請求項12】
前記ポリマーシート構成物が、250ミクロン~2,000ミクロンの合計厚さ、及び500MPa~1,500MPaの曲げ弾性率を有する、請求項11に記載のポリマーシート構成物。
【請求項13】
前記剛性又は硬質層A、C及びDが、ポリエステル、コポリエステル、ポリカーボネート、ポリエステルポリカーボネートブレンド、ポリウレタン、ポリアミド、ポリオレフィン、微結晶ポリアミド、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸とシクロヘキサンジメタノールと2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールとのコポリエステル、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸とエチレングリコールとジエチレングリコールとのコポリエステル、MDI及びヘキサンジオールをベースとする芳香族ポリウレタン、脂肪族ジオールを有する芳香族ポリウレタン、プロピレンとエチレンとC4~C8α-オレフィンとのコポリマー、脂環式ポリアミド、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリ塩化ビニルなどのビニルポリマー、並びにフルオロポリマーのうちの1種又は複数を個別に含む、請求項12に記載のポリマーシート構成物。
【請求項14】
前記軟質内部層B及びB’が、ポリウレタンエラストマー、芳香族ポリエーテルポリウレタン、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、スチレン系エラストマー、無水物官能化スチレン系エラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリエーテルポリアミド(ポリプロピレンオキシドベース、又はポリテトラメチレンオキシドベース)、環状オレフィンエラストマー、アクリル系エラストマー、芳香族又は脂肪族ポリエーテル、ポリエステルポリウレタン、シロキサンエラストマー、ポリエーテルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、オレフィンコポリマー、アクリル系エラストマー、及びフルオロエラストマーのうちの1種又は複数を個別に含む、請求項12に記載のポリマーシート構成物。
【請求項15】
前記軟質内部層B及びB’のうちの1つ又は複数が、約A60~D50の硬度を有する無水物官能化スチレン系エラストマーを含む、請求項14に記載のポリマーシート構成物。
【請求項16】
前記剛性又は硬質層A、C及びDが、約100ミクロン~約750ミクロンの合計厚さを有する、請求項14に記載のポリマーシート構成物。
【請求項17】
前記軟質層B及びB’が、約150ミクロン~約1,000ミクロンの合計厚さを有する、請求項14に記載のポリマーシート構成物。
【請求項18】
請求項12に記載のポリマーシート構成物を含む、1本又は複数の歯と共形の歯科装置。
【請求項19】
3つ以上の層A、A1、及びBを含むポリマーシート構成物であって、最外層A及びA1が、互いに異なる厚さを有し、約1,000MPa~2,500MPaの曲げ弾性率を有する熱可塑性ポリマーを個別に含み、前記内部層Bが、約A60~D85の硬度を有するエラストマー材料で構成されている、ポリマーシート構成物。
【請求項20】
前記ポリマーシート構成物の前記A、A1、及びB層が、約500ミクロン~2,000ミクロンの合計厚さを有する、請求項19に記載のポリマーシート構成物。
【請求項21】
前記最外層A1が、約25~約250ミクロンの厚さを有する、請求項20に記載のポリマーシート構成物。
【請求項22】
前記最外層Aの厚さに対する前記最外層A1の厚さの比が、約0.9~約0.2である、請求項20に記載のポリマーシート構成物。
【請求項23】
前記最外層A及び最外層A1が、ポリエステル、コポリエステル、ポリカーボネート、ポリエステルポリカーボネートブレンド、ポリウレタン、ポリアミド、及びポリオレフィンのうちの1種又は複数で構成されている、請求項20に記載のポリマーシート構成物。
【請求項24】
前記外部層A及びA1が同じ材料を含む、請求項20に記載の歯科装置。
【請求項25】
前記外部層A及びA2が異なる材料を含む、請求項20に記載の歯科装置。
【請求項26】
前記中間層Bが、ポリウレタンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、スチレン系エラストマー、ポリアミドエラストマー、環状オレフィンエラストマー、アクリル系エラストマー、芳香族又は脂肪族ポリエーテル、及びポリエステルポリウレタンのうちの1種又は複数で構成されている、請求項20に記載のポリマーシート構成物。
【請求項27】
請求項20に記載のポリマーシート構成物を含む、1本又は複数の歯と共形の歯科装置。
【請求項28】
前記歯科装置が、前記A、C又はD層単独と比較して、改善された耐引裂き性を示す、請求項27に記載の歯科装置。
【請求項29】
前記歯科装置が、前記A、C、又はD層単独と比較して、改善された耐環境応力性を示す、請求項27に記載の歯科装置。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
[0001]本特許出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、2019年12月18日に出願された「DUAL SHELL DENTAL APPLIANCE AND MATERIAL CONSTRUCTIONS」と題する米国特許仮出願第16/719,256号の優先権を主張する。
【0002】
[技術分野]
[0002]ポリマーシート形態の構成物が開示されている。ポリマーシートは、例えば歯科装置に有用であり、当該シートから作られるデバイスに可撓性、強度、及び耐ステイン性を付与する層から構成される。
【0003】
[背景]
[0003]歯列矯正による歯の移動を円滑化すること、歯の位置を安定させること、又は損傷させる可能性のある外力から歯を保護することができる、改善された歯列矯正装置及び歯科装置が必要である。既存の材料及び製品は、限定された機能を有する単層材料、2層材料又は3層材料から構成されており、性能不足に苦しむことがある。アライナーは、歯に並進又は回転力を加えるように設計されている、歯に嵌合するプラスチックシェルである。歯を正確に移動させるアライナーの能力は、アライナーの有効弾性率、弾性、並びにクリープ及び応力緩和に抵抗する能力により限定される。さらに、アライナーは、一般に耐ステイン性及び耐環境応力亀裂性を示すべきである。
【0004】
[0004]歯を保護するための装置、例えばスポーツ用マウスガード及びデンタルスプリントは、相反する要件を有する。一方では、装置は、衝撃力を消散させることが可能であるべきであり、他方では、薄くあるべきであり、且つヒトの歯の自然な咬合を妨害するべきではなく、又は話すことを妨げるべきではない。
【0005】
[概要]
[0005]一態様において、少なくとも2つの外部層A及びCと中間層Bとで構成される構成物が提供される。A及びC層は、約1,000MPa~2,500MPaの弾性率、並びに約80℃~180℃のガラス転移温度及び/又は融点を有する熱可塑性ポリマーを個別に含み、中間B層は、約50MPa~約500MPaの弾性率、並びに約90℃~約220℃のガラス転移温度及び/又は融点のうちの1つ又は複数を有するエラストマーで少なくとも構成される。
【0006】
[0006]一実施形態において、A及びC層は、コポリエステル、ポリカーボネート、ポリエステルポリカーボネートブレンド、ポリウレタン、ポリアミド、又はポリオレフィンのうちの1種又は複数で構成される。
【0007】
[0007]別の実施形態において、中間B層は、ポリウレタンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、スチレン系エラストマー、ポリアミドエラストマー、環状オレフィンエラストマー、アクリル系エラストマー、芳香族又は脂肪族ポリエーテル、及びポリエステルポリウレタンのうちの1種又は複数で構成される。
【0008】
[0008]さらに別の実施形態において、中間B層の材料は、25℃で22時間後、35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、又は10%未満の圧縮永久ひずみを有する。
【0009】
[0009]さらに別の実施形態において、A及びC層は、互いに対して0.05mm~0.1mm変位させられた場合に、1cm当たり100N(ニュートン)未満、1cm当たり50N未満、1cm当たり25N未満、又は1cm当たり10N未満の横方向の復元力を有する。
【0010】
[0010]別の実施形態において、A及びC層と、B層との間の層間剥離強度は、2.5cm当たり50Nよりも大きい。
【0011】
[0011]一実施形態において、A、B、及びC層の合計厚さは、約250ミクロン~約2,000ミクロンであり、A及びC層の合計厚さは、25ミクロン~750ミクロン、50ミクロン~1,000ミクロン、100ミクロン~700ミクロン、150ミクロン~650ミクロン、100ミクロン~200ミクロン、200ミクロン~600ミクロン、100ミクロン、125ミクロン、150ミクロン、175ミクロン、200ミクロン、225ミクロン、250ミクロン、275ミクロン、又は300ミクロンである。
【0012】
[0012]さらに他の実施形態において、A及びC層のうちの1つ又は複数は、50~100モル%のC6~C14脂肪族二酸部分と約50~100モル%の4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルアミン)(CAS[1761-71-3])とで構成され、約100℃~180℃のガラス転移、20J/g未満の融解熱、及び80%を超える光透過率を有する、微結晶ポリアミドを含む。
【0013】
[0013]別の実施形態において、A及びC層のうちの1つ又は複数は、(a)70モル%~100モル%のテレフタル酸残基を含むジカルボン酸成分と、(b)ジオール成分とで構成されるコポリエステルを含み、ジオール成分は、i)0~95%のエチレングリコール、ii)5モル%~50モル%の2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール残基、iii)50モル%~95モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、iiii)3個以上のヒドロキシル基を有する0~1%のポリオールを含み、ジオール残基のi)、ii)、iii)及びiiii)のモル%の合計は、100モル%に達し、コポリエステルは、80℃~150℃のガラス転移温度Tgを示す。
【0014】
[0014]別の実施形態において、中間B層は、約A90~D55、約A85~D60、又は約A80~D65のショア硬度、及び35%未満の圧縮永久ひずみを有する、芳香族ポリエーテルポリウレタンを含み、A及びC層と、B層との間の層間剥離強度は、2.5cm当たり50Nを超える。
【0015】
[0015]一実施形態において、A及びC層のうちの1つ又は複数は、(a)80モル%~100モル%のメチレンジフェニルジイソシアネート残基、及び/又は水素化メチレンジフェニルジイソシアネートを含むジイソシアネートと、(b)ジオール成分とで構成されるポリウレタンを含み、ジオール成分はi)0~100モル%のヘキサメチレンジオール、及びii)0~50モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノールを含み、i)及びii)の合計は、90モル%を超え、ポリウレタンは、約85℃~約150℃のガラス転移温度Tgを有する。
【0016】
[0016]別の態様において、本明細書に記載されるような構成物又はポリマーシートから作られた、1本又は複数の歯と共形の歯科装置。
【0017】
[0017]歯科装置の一実施形態において、A、B、及びC層の合計厚さは、約250ミクロン~約2,000ミクロンであり、A及びC層の合計厚さは、25ミクロン~750ミクロン、50ミクロン~1000ミクロン、100ミクロン~700ミクロン、150ミクロン~650ミクロン、100ミクロン~200ミクロン、又は200ミクロン~約600ミクロンである。
【0018】
[0018]別の態様において、本明細書に記載されるような構成物又はポリマーシート材料で構成される可逆的に変形可能な歯科装置であって、エラストマー中間層及び外部層が、互いに対して可逆的に移動でき、且つ互いに対して0.05mm~0.1mm変位させられた場合に、1cm当たり100N未満、1cm当たり50N未満、1cm当たり25N未満、又は1cm当たり10N未満の横方向の復元力を有する、歯科装置が提供される。
【0019】
[0019]一実施形態において、エラストマー中間層は、約A80~D75、A85~D65、A90~D55、例えばA95、A90、A85、A80、A75、D50、D55、D60、D65又はD70の硬度を有するポリウレタンを含む。
【0020】
[0020]別の態様において、耐環境応力性を有し、少なくとも2つの外部層とエラストマー内部層とで構成される、構成物、ポリマーシート、又は歯科装置であって、外部層のうちの1つ又は複数が、約1,000MPa~2,500MPaの弾性率を有するポリエステル又はコポリエステルであり、内部層が、約50MPa~約500MPaの弾性率を有するエラストマーを含み、少なくとも1つの外部層と、エラストマーとの間の層間剥離強度が、約50N/インチを超える、構成物、ポリマーシート、又は歯科装置が提供される。
【0021】
[0021]別の態様において、可逆的に変形可能な歯科装置であって、外部A層の厚さが約175ミクロン~約250ミクロン、約100ミクロン~約200ミクロン、例えば、100ミクロン、125ミクロン、150ミクロン、175ミクロン、200ミクロン、225ミクロン又は250ミクロンであり、外部C層の厚さが約175ミクロン~約250ミクロン、100ミクロン~200ミクロン、例えば、100ミクロン、125ミクロン、150ミクロン、175ミクロン、200ミクロン、225ミクロン又は250ミクロンであり、中間B層の厚さが300~500ミクロンであり、A、B、及びC層の合計厚さが、850~1,000ミクロン、又は600ミクロン~800ミクロンである、歯科装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A図1Aは、単純なABC構造を有する3層シート断面図の概略図である。層A及び層Cは、同じ又は異なる材料であってもよく、各層は、1種若しくは複数の材料、又はブレンド若しくは合金で構成されてもよい。層Bは、単一材料、材料のブレンド、又は合金であってもよい。
図1B図1Bは、多層シート断面図の概略図である。各層A、B、及びCは、単層又は多層で構成されてもよく、各層は、1種若しくは複数の材料、又は材料のブレンドで構成されてもよい。図1Bに例示されているように、層Aは、1つより多い層、例えば層a及びa’で構成されてもよく、層Bは、1つより多い層、例えば層b及びb’で構成されてもよく、層Cは、1つより多い層、例えば層c及びc’で構成されてもよい。
図2A図2A及び図2Bは、A、B、及びCが、シートの個々の層である、2つの剛性外部層と内部エラストマー層とで構成される単純な3層シートの、変位(図2A)及び横方向の復元力(並進移動;図2B)を決定するための例示的な試験試料の概略図である。この例では、層A及びCが、互いに対して可逆的に並進移動させられ、層Bが、復元力をもたらす。より詳細な一例では、ABC層はそれぞれ、厚さ約250ミクロンであってもよく、層A、B及びCは、1種又は複数の材料で構成されてもよく、それぞれが1つ又は複数の層を個別に含んでもよい。
図2B図2A及び図2Bは、A、B、及びCが、シートの個々の層である、2つの剛性外部層と内部エラストマー層とで構成される単純な3層シートの、変位(図2A)及び横方向の復元力(並進移動;図2B)を決定するための例示的な試験試料の概略図である。この例では、層A及びCが、互いに対して可逆的に並進移動させられ、層Bが、復元力をもたらす。より詳細な一例では、ABC層はそれぞれ、厚さ約250ミクロンであってもよく、層A、B及びCは、1種又は複数の材料で構成されてもよく、それぞれが1つ又は複数の層を個別に含んでもよい。
図3A図3Aは、異なる程度の硬度を有するエラストマーの変位/力曲線のグラフ描写である。グラフは、異なる硬度のTPUエラストマーを含む中間B層を有する、層Cに対する層Aの並進移動から生じた復元力(N)を示し、且つエラストマーの硬度が、変位及び復元力に影響を及ぼすことを示す。より硬い熱可塑性ウレタン(TPU)は、より大きな復元力を発生させるが、移動の量を限定することがある。
図3B図3Bは、B層に異なる硬度のTPUエラストマーを含む中間B層を有するA層とC層との間における所与の変位に対する、時間(0~48時間)に応じた復元力(N)のグラフ描写である。TPU75Aは、低い圧縮永久ひずみを有し、且つ最小の初期の力を示すが、当該力は、経時的にほんの少ししか衰退しない。TPU75Dは、高い圧縮永久ひずみを有し、はるかに高い初期の復元力を示す一方で、当該力は、経時的に急速に衰退している。
図4図4は、48時間にわたって37℃及び水にさらされた異なる構造の、5%応力での保持力のグラフ描写である。
【0023】
[0028]図1図4に例示されている構造及び特性は、詳細な例であって、使用される可能性のある構造及び試験の範囲を限定するようには意図されないことが理解されるべきである。他の材料、構造、及びステップの順序も同様に、代替的な実施形態に従って実施されてもよい。例えば、代替的な実施形態は、密着層、顔料、光学添加剤、又は補強剤を含むさらなる層を含有することがあり、平板押出、同時押出インフレートフィルム、カレンダリング、ラミネート、及び接着剤接着などの当技術分野で公知のあらゆる手段で構成されてもよい。構造(又はポリマーシート)及びデバイスは、一部の実施形態において、3D印刷又はディップコーティングにより作られてもよい。当業者は、構造の多くの変形例、修正例、及び代替案を認識及び理解するであろう。
【0024】
[0029]したがって、本明細書及び図面は、限定的な意味というよりむしろ、例示的な意味で考えられるべきである。しかしながら、特許請求の範囲に記載されるような開示のより広い趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を開示に加えることができることは明らかである。
【0025】
[0030]他の変形例は、本開示の趣旨内にある。したがって、開示されている実施形態は、様々な修正例及び代替的な構造の影響を受けやすい一方で、そのある特定の例示されている実施形態は、図面に示されており、本明細書に記載されている。しかしながら、本開示を、開示された特定の1つ又は複数の形態に限定する意図は存在しないが、これに反して、添付された特許請求の範囲に定義されているような、本開示の趣旨及び範囲内に属するすべての修正例、代替的な構造、及び同等物を包含することが意図されていることが理解されるべきである。
【0026】
[詳細な説明]
[0031]現在の歯列矯正アライナーは、非常に限定された弾性域(典型的には4%~7%)を有し、変形した場合、回復力の急速な衰退を示す。その結果、装置の頻繁な交換が必要であることがあり、これにより製造コストが増加し、歯が希望通り移動しないことがあり、患者が、過度に高い初期の力から不快感を経験することがある。エラストマー(典型的には、例えば、米国特許第9,655,693号に記載されるようなポリウレタン)の薄い外部層を提供することにより弾性域を改善する試みは、容易に変形する歯接触面をもたらし、歯の移動の正確性を低減させることがあり、一般的な食品、飲料、又はたばこによる見かけの悪いステインの傾向を増大させることがある。米国特許第6,524,101号は、異なる弾性係数を有する領域を有する歯科装置、及び追加された補強要素を有する装置を記載する。BayMaterials,LLC(Fremont、CA)から入手可能なゼンデュラ(Zendura)(登録商標)Aなどの歯科装置を製作するために使用される非ステイン性ポリウレタン類は、優れた特性を有するが、吸湿性であり、熱成形前に厳密な乾燥を必要とし、最初は不快なことがあり、洗浄が困難であり、一部の用途には理想的ではないことがある。
【0027】
[0032]他の多くのポリウレタン類も同様に、熱成形前に乾燥しなければならず、製造工程に時間及びコストが追加される。芳香族ポリエステル又はコポリエステルは、アライナーを形成するために使用されてもよいが、芳香族ポリエステル又はコポリエステルは、乏しい耐薬品性、並びに低い衝撃強度及び引裂き強度を示す。ポリエステル類又は剛性のポリウレタン類などの堅い材料から構成されているアライナーは、例えば約1,000又は1,500MPaを超える高い弾性率を有し、変形した場合、歯根への不快感及び潜在的損傷の原因となる、歯に対する過度な力を及ぼす可能性がある。熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)、スチレン系エラストマー(例えばSBS、SEBS、SISなど)などの高エラストマー性ポリマーは、歯を移動させるには不十分な場合がある低い弾性率(典型的には、100MPa未満又は200MPa未満)を有し、且つ容易にステインが付けられる。これにより、アライナーを生産するための有用性が限定的なものとなる。
【0028】
[0033]本開示は、従来技術の材料、及び従来技術の材料から構成されている歯科装置における欠陥の多くは、約1,000MPa超~最大2,500MPaの弾性率を有する材料で構成される外部層と、約50MPa~500MPaの弾性率を有する1種又は複数のエラストマー材料で構成される内部エラストマー層又はコアとを有するシート又はデバイスを用いて低減又は排除でき、当該シート又はデバイスは、非ステイン性であってもよく、剛性のウレタン類よりもコストが低く、改善された弾性特性を示し、驚くほどより大きな耐環境応力亀裂性を有するという発見に基づく。
【0029】
[0034]ポリマーシート又はデバイスは、2つより多くの剛性層で構成されてもよく、例えば、第3の剛性層が、2つ以上のエラストマー層間に配されることがある。多層構造により、歯を移動させ、歯を既存の位置に保持し、又は衝撃から歯を保護するように適合することができる二重シェル歯科装置が提供される。本明細書に開示されるように、歯と接触する外部シェル材料は、歯と正確に噛み合うように実質的に剛性であり得、より長い距離にわたってより一定に近い力を及ぼす能力を維持しながら的確な力をもたらす。
【0030】
[0035]適切な外部及び内部材料の弾性率及び厚さを選択することにより、2つ以上の実質的に剛性のシェルは、同等の厚さ及び形状の剛性材料よりも大きい程度で、互いに対して可逆的に変位させることができ、歯に所望の力を加えて、より大きな範囲を移動させることができる一方で、過度の力を生じさせず、変形した場合に過度の応力緩和を示さない歯科装置を提供する。特定の構造に本開示を限定しない一方で、シート又は歯科装置は、本明細書において「二重シェル」シート又は装置と呼ばれることがある。「二重シェル」シート又は装置は、2つ以上のシェル又は層を含んでもよい。シェル又は層は、同じ又は異なる厚さを有してもよい。この「二重シェル」構造で構成される一連の歯科装置は、歯を段階的に移動させるために使用されてもよく、2つ以上の装置が、同じ又は異なる材料から構成されてもよい。歯科装置は、1本若しくは複数の歯の模型上に二重シェル材料を熱成形することにより構成されてもよく、又は剛性及びエラストマー性の前駆体シートを連続して熱成形することにより、又はポリマー溶液若しくはポリマー形成用モノマー若しくはオリゴマーで模型を連続してディップコーティングし、任意選択で硬化されるか、別の方法で後処理され得ることにより構成されてもよい。本発明者らは、この独自の構造が、シェル又は材料が示す応力亀裂の量を大幅に低減でき、それによって、シート又は装置に使用できる材料の範囲を拡張できることを発見した。
【0031】
[定義]
[0036]用語「1つの(a)」及び「1つの(an)」及び「その(the)」、並びに開示された実施形態を説明する文脈における同様な指示物(特に、以下の特許請求の範囲における文脈中)の使用は、本明細書で別途指示がない限り、又は文脈により明白に否定されない限り、単数及び複数の両方を包含するように解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含有する(containing)」は、特に断りのない限り、非限定的用語(すなわち、「それに限定されないが、~を含む」を意味する)として解釈されるべきである。用語「接続される」は、何らかが介在する場合でも、部分的又は全体的に、内部に含有されるか、結び付けられるか、又は共に接合されると解釈されるべきである。句「に基づく」は、非限定的であり、決して限定することがないと理解されるべきであり、必要に応じて、「少なくとも部分的に基づく」と解釈されるか、又は別の方法で読み取られるように意図される。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書で別途指示がない限り、その範囲内に属する各別々の値を個別に指す簡単な方法としての役割を果たすことを単に意図しており、各別々の値は、あたかも本明細書において個々に列挙されているかのように本明細書へと組み込まれている。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書で別途指示がない限り、又は別の方法で文脈により明白に否定されない限り、任意の適切な順序で実施できる。ありとあらゆる例、又は本明細書で示される例示的な言葉(例えば「などの」)の使用は、本開示の実施形態をより理解しやすくすることを意図したものに過ぎず、別に特許請求されない限り、本開示の範囲を限定するものではない。本明細書におけるいかなる言葉も、本開示の実施に不可欠であるとして、特許請求されていない任意の要素を示すものとして解釈されるべきでない。
【0032】
[0037]用語「歯科装置」は、対象の歯の中又は上に配置される任意のデバイスに関連して本明細書で使用される。歯科装置は、これらに限定されるものではないが、歯列矯正、補綴、保持、いびき/気道、化粧用、治療用、保護用(例えばマウスガード)、及び癖修正のデバイスを含む。
【0033】
[0038]用語「ASTM D638」、は、プラスチックの引張強度のための試験に関連して本明細書で使用される。
【0034】
[0039]用語「ASTM D1364」は、層間剥離強度のための試験に関連して本明細書で使用される。
【0035】
[0040]用語「圧縮永久ひずみ」は、力が加えられ、除去された場合の、材料の永久変形に関連して本明細書で使用される。特に指定のない限り、圧縮永久ひずみは、ASTM D305-Bに従って、規定の時間及び温度、例えば23℃で22時間測定される。
【0036】
[0041]用語「曲げ弾性率」は、材料の剛性、及び/又は曲げにおける材料の耐変形性に関連して本明細書で使用される。材料の曲げ弾性率が高いほど、耐曲げ性も高くなる。等方性材料に関しては、あらゆる方向で測定される弾性係数は同じである。
【0037】
[0042]用語「硬度」は、ショア硬度のスケールに関連して本明細書で使用され、特に明記しない限り、ASTM D2240に従って測定される。デュロメータは、金属製の脚又はピンの、材料表面への押し込みを測定する。デュロメータには様々なスケールがあるが、ショアA及びショアDが一般的に使用される。デュロメータの値が高い材料は、デュロメータの値が低い材料と比較して硬い。ショア硬度及び弾性率は、一般に相関性があり、当技術分野で説明されている方法で1つの値だけが分かっている場合、近似により変換できる。
【0038】
[0043]「弾性率」、「ヤング率」及び「弾性係数」という表現は、材料の剛性、及び/又は材料の耐伸張性に関連して本明細書で使用される。材料の弾性率が高いほど、より剛性となる。材料の曲げ弾性率及び弾性係数は、同じであってもよく、又は異なっていてもよい。A、B、及びCなどの等方性材料に関して、曲げ弾性率及び弾性率(弾性係数と呼ばれることもある)は、実質的に同じであり、どちらか一方を、状況に応じて測定できる。ポリマーの場合、弾性係数及び他の特性を含む機械的特性は、ASTM D638で規制されている通り測定できる。曲げ弾性率は、ASTM D790)に記載されている試験で測定することができ、面積当たりの力の単位を使用する。特に指定のない限り、「弾性率」は弾性係数を指す。
【0039】
[0044]用語「ポリマーシート」は、本明細書では、用語「プラスチックシート」と同じ意味で使用される。
【0040】
[0045]ポリマーシートのA及びC層に関しての用語「横方向の復元力」は、所定の位置に固定された別の層に対して並進移動させられている1つの層により及ぼされる可能性がある力に関連して使用される。A及びC層を互いに独立的に移動させる場合、A及びC層は、制止されなければ、後に原位置に戻る。
【0041】
[0046]「並進力」は、A及びC層を、中立位置から所与の距離だけ変位させるのに必要な力の量を指し、所与の変位において1cm当たりのニュートン(N/cm2)として測定される。当該面積(cm)は、A層及びC層が重なる領域として計算される。測定は、重なり部分が既知の試験試料を準備し、例えばInstronMaterialsTesterなどの機械力試験機を使用して0.04MPa/分の力を加えることで、A層及びC層を、互いに対して所定の距離だけ変位させることによって行うことができる。様々な変位で測定された力が記録される。横方向の並進力及び横方向の復元力は、弾性材料の場合同じになる。
【0042】
[0047]図2Aは、変位力を決定するための試験を示している。図2Bは、復元力を決定するための試験を示している。図2A及び図2Bの図は、2つの剛性外部層と内部エラストマー層とで構成される単純な3層シートであって、層A及びCが、互いに対して可逆的に並進移動させられ、層Bが、復元力をもたらす、3層シートを示す。図3Aは、層Aを伸張させ、中間エラストマーB層(エラストマーの硬度が変位及び復元力に影響を与える)を有する層Cに対して層Aの並進移動を引き起こす力(N)を示している。実施例2及び表4は、様々なB層における横方向/並進方向の復元力を示している。
【0043】
[0048]用語「剪断力」は、本明細書で使用する場合、弾性材料により接続される2つの表面に加えられる並進力を意味する。
【0044】
[0049]用語「シェル」は、歯に嵌合し、且つ歯に取り外し可能に配置可能であるポリマーシェルに関連して本明細書で使用される。
【0045】
[0050]用語「耐ステイン性」は、ステインが付けられることに耐性を示すように設計された材料に関連して本明細書で使用される。
【0046】
[0051]用語「熱可塑性ポリマー」は、熱及び圧力でポリマーが化学的に分解されなければ、特定の温度以上で柔軟又は成形可能となり、冷却で凝固するポリマーに関連して本明細書で使用される。
【0047】
[0052]用語「(1本及び複数の)歯」は、詰め物又は歯冠により改良された天然歯、インプラントの歯、1本又は複数の天然又はインプラントの歯に固定されている、ブリッジ又は他の取付具の一部である人工歯、及び取り外し可能な取付具の一部である人工歯を含む天然歯を含む。
【0048】
[0053]以下の記載には、様々な実施形態が記載される。説明目的のために、特定の構成及び詳細が、実施形態の完全な理解をもたらすために記載される。しかしながら、実施形態が特定の詳細なしで実行できることも、当業者に明白であろう。さらに、周知の特徴は、記載されている実施形態を曖昧にしないために、省略又は単純化されることがある。
【0049】
[実施形態]
[0054]一部の実施形態(本明細書で実施形態#1と呼ばれる)において、熱成形可能ポリマーシートは、少なくとも2つの外部層A及びC、並びに中間層Bで構成され、A及びC層は、約1,000MPaを超える、例えば1,000MPa~1,500MPa;1,100MPa~1,600MPa;1,200MPa~1,700MPa;1,300MPa~1,800MPa;1,400MPa~1,900MPa;1,500MPa~2,000MPa;1,100MPa;1,200MPa;1,300MPa;1,400MPa;1,500MPa;1,600MPa;1,700MPa;1,800MPa、1,900MPa;2,000MPa;又は最大2,500MPaの弾性率;並びに約80℃~180℃;90℃~170℃;100℃~160℃;110℃~150℃;120℃~150℃;130℃~170℃;140℃~180℃;80℃;90℃;100℃;110℃;120℃;130℃;140℃;150℃;160℃;170℃;又は180℃のガラス転移温度(Tg)及び/又は融点を有する熱可塑性ポリマーで個別に構成される。
【0050】
[0055]そのような実施形態において、中間B層は、約50MPa~約500MPa;60MPa~470MPa;70MPa~440MPa;80MPa~400MPa;100MPa~350MPa;150MPa~300MPa;200MPa~400MPa;60MPa、70MPa;80MPa、90MPa;100MPa;110MPa;120MPa;130MPa;140MPa;150MPa、160MPa;170MPa;180MPa;190MPa;200MPa、250MPa、300MPa、350MPa、400MPa、450MPa、又は最大500MPaの弾性率、及び約90℃~約220℃;100℃~約200℃;120℃~約180℃;140℃~220℃;又は160℃~約220℃の(a)ガラス転移温度、又は(b)融点のうちの1つ又は複数を有するエラストマーで少なくとも構成される。一部の実施形態において、中間B層は、1種又は複数の材料及び1つ又は複数の層を含んでもよい、エラストマー層又はシェルである。
【0051】
[0056]実施形態#1において、層A及びCは、ポリエステル若しくはコポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリオレフィン、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルなどのビニルポリマー、又はフルオロポリマーを含んでもよい。
【0052】
[0057]実施形態#1において、層Bは、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー、スチレン系エラストマー、ポリアミドエラストマー、シロキサンエラストマー、ポリエーテルエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、オレフィンコポリマー、アクリル系エラストマー、又はフルオロエラストマーを含んでもよい。
【0053】
[0058]実施形態#1において、B層材料は、約35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、10%未満の、すなわち35%未満、34%未満、33%未満、32%未満、31%未満、30%未満、29%未満、28%未満、27%未満、26%未満、25%未満、24%未満、23%未満、22%未満、21%未満、20%未満、19%未満、18%未満、17%未満、16%未満、15%未満、14%未満、13%未満、12%未満、11%未満、又は10%未満の、22時間25℃での圧縮永久ひずみを有する。エラストマーが外部層として使用される米国特許第9,655,693号の発見に反して、本出願人らは、より高い圧縮永久ひずみではなく、むしろ、より低い圧縮永久ひずみがより効果的であることを発見した。
【0054】
[0059]実施形態#1のある特定の態様において、シートは、約250ミクロン~約2,000ミクロンの全体厚さを有する。
【0055】
[0060]実施形態#1のある特定の態様において、A及びC層の合計厚さは、約25ミクロン~約1,000ミクロン、50ミクロン~750ミクロン、100~750ミクロン、250ミクロン~750ミクロン、又は250ミクロン~約600ミクロンである。
【0056】
[0061]実施形態#1のある特定の態様において、熱成形可能シートは、約100MPa~約2,000MPa、約250MPa~約2,000MPa、約500MPa~1,500MPa、約750MPa~約2,000MPa、又は約750ミクロン~約1,500MPaの曲げ弾性率を有する。
【0057】
[0062]実施形態#1のある特定の態様において、A及びC層は、約80℃~150℃の間のTgを有し、B層は、約180℃~220℃の間のTg又は融点、及び約5ジュール/g~約20ジュール/g、又は5ジュール/g~15ジュール/gの融解熱を有する。
【0058】
[0063]実施形態#1のある特定の態様において、A層の層間剥離強度は、約50N/インチ超、約60N/インチ超、約70N/インチ超である。
【0059】
[0064]実施形態#1のある特定の態様において、A及びC層はそれぞれ、25ミクロン~約1000ミクロン、50ミクロン~750ミクロン、100~750ミクロン、125~300ミクロン、250ミクロン~750ミクロン、又は250ミクロン~約600ミクロンの厚さを有し、約250ミクロン~約600ミクロン、200ミクロン~300ミクロン、又は150ミクロン~250ミクロンの合計厚さを有してもよく、95℃~150℃の間のTg、1000MPa~2,500MPaの弾性率を有する剛性のコポリエステル又はポリウレタンで構成され、約200ミクロン~約1,000ミクロン又は200~500ミクロン、例えば200ミクロン、225ミクロン、250ミクロン、300ミクロン、350ミクロン、375ミクロン、400ミクロン、425ミクロン、450ミクロン、475ミクロン、500ミクロン、550ミクロン、600ミクロン、650ミクロン、700ミクロン、750ミクロン、800ミクロン、850ミクロン、900ミクロン、950ミクロン、又は1,000ミクロンの厚さを有するエラストマーB層は、約D35~約D65、例えばD35、D40、D45、D50、D55、D60、又はD65の硬度、及び、約35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、10%未満の、すなわち35%未満、34%未満、33%未満、32%未満、31%未満、30%未満、29%未満、28%未満、27%未満、26%未満、25%未満、24%未満、23%未満、22%未満、21%未満、20%未満、19%未満、18%未満、17%未満、16%未満、15%未満、14%未満、13%未満、12%未満、11%未満、又は10%未満の、22時間25℃での圧縮永久ひずみを有し、ポリエーテル又はポリエステルポリウレタンで構成され、A層は約50N/インチ超、約60N/インチ超、又は約70N/インチ超の層間剥離強度を有し、当該ポリマーシートは、約750MPa~約1,500MPa;約100MPa~約2,000MPa;約250MPa~約2,000MPa;約500MPa~1,500MPa;又は約750MPa~約2,000MPaの曲げ弾性率を有する。
【0060】
[0065]実施形態#1の一部の態様において、さらなるポリマー類の薄層(密着層)が、互いに自然に接着しないポリマー層の接着を改善するために存在してもよく、例えば、無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレンの層が、ポリプロピレンA層と、ポリエステル又はポリアミドB層との間の接着性を増大させるために使用されてもよい。
【0061】
[0066]一部の実施形態(本明細書で実施形態#2と呼ばれる)において、シート又はデバイスのA及びC層は、1cm当たり100N未満、1cm当たり50N未満、1cm当たり25N未満、又は1cm当たり10N未満の力で、互いに対して(例えば並進に)、約0.05mm~約0.1mm可逆的に移動できる。
【0062】
[0067]実施形態#2の一部の態様において、シート又はデバイスのA及びC層は、約500ミクロン~1,000ミクロンの総厚を有し、1cm当たり100N未満、1cm当たり50N未満、1cm当たり25N未満、又は1cm当たり10N未満の力で、互いに対して、0.05mm~0.1mmの距離だけ可逆的に移動できる。
【0063】
[0068]実施形態#2の一部の態様において、B層材料は、約35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、10%未満の、すなわち35%未満、34%未満、33%未満、32%未満、31%未満、30%未満、29%未満、28%未満、27%未満、26%未満、25%未満、24%未満、23%未満、22%未満、21%未満、20%未満、19%未満、18%未満、17%未満、16%未満、15%未満、14%未満、13%未満、12%未満、11%未満、又は10%未満の、22時間25℃での圧縮永久ひずみを有する。
【0064】
[0069]一部の実施形態(本明細書で実施形態#3と呼ばれる)において、A及びC層のうちの1つ又は複数は、50~100、50~90、50~80、50~70、60~90、60~80、又は70~90モル%のC6~C14脂肪族二酸部分と、約50~100、50~90、50~80、50~70、60~90、60~80、又は70~90モル%の4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルアミン)(CAS[1761-71-3])とで構成される微結晶ポリアミドを含み、約100℃~180℃の間のガラス転移温度、20J/g未満の、例えば5ジュール/g~約20ジュール/g、又は5ジュール/g~15ジュール/gの融解熱を有する。例えば、独国特許出願公開第4310970号(実施形態3)を参照されたい。実施形態#3の一部の態様において、A及びC層の合計厚さは、約500ミクロン未満、約400ミクロン未満、約300ミクロン未満である。
【0065】
[0070]一部の実施形態(本明細書で実施形態#4と呼ばれる)において、1本又は複数の歯と共形の歯科装置は、少なくとも2つの外部層A及びCと、中間層Bとを含み、A及びC層は、約1,000MPaを超える、例えば、1,000MPa~1,500MPa;1,100MPa~1,600MPa;1,200MPa~1,700MPa;1,300MPa~1,800MPa;1,400MPa~1,900MPa;1,500MPa~2,000MPa;1,100MPa;1,200MPa;1,300MPa;1,400MPa;1,500MPa;1,600MPa;1,700MPa;1,800MPa、1,900MPa;2,000MPa;最大2,500MPaの、ある特定の態様では1,500MPaを超える弾性率、並びに約80℃~180℃;90℃~170℃;100℃~160℃;110℃~150℃;120℃~150℃;130℃~170℃;140℃~180℃;80℃;90℃;100℃;110℃;120℃;130℃;140℃;150℃;160℃;170℃:又は180℃、ある特定の態様では80~150℃又は95~150℃のガラス転移温度及び/又は融点を有する、熱可塑性ポリマーで個別に構成される。そのような実施形態において、中間B層は、約50MPa~500MPa;70MPa~450MPa;80MPa~400MPa;100MPa~350MPa;150MPa~300MPa;200MPa~400MPa;60MPa、70MPa;80MPa、90MPa;100MPa;110MPa;120MPa;130MPa;140MPa;150MPa、160MPa;170MPa;180MPa;190MPa;200MPa、最大250MPaの弾性率、及び約90℃~約220℃のガラス転移温度、又は融点のうちの1つ又は複数を有するエラストマーで少なくとも構成される。
【0066】
[0071]実施形態#4の一部の態様において、A及びC層は、約25ミクロン~約600ミクロン、例えば、100ミクロン、125ミクロン、150ミクロン、175ミクロン、200ミクロン、225ミクロン、250ミクロン、300ミクロン、350ミクロン、400ミクロン、450ミクロン、500ミクロン、550ミクロン又は600ミクロンの合計厚さを有し、Tgが80℃~180℃;90℃~170℃;100℃~160℃;110℃~150℃;120℃~150℃;130℃~170℃;140℃~180℃;80℃;90℃;100℃;110℃;120℃;130℃;140℃;150℃;160℃;170℃:又は180℃、例えば、80~150℃又は95~150℃であり、1,000MPaを超える、例えば1,000MPA~1,500MPA;1,100MPA~1,600MPA;1,200MPA~1,700MPA;1,300MPA~1,800MPA;1,400MPA~1,900MPA;1,500MPA~2,000MPA;1,100MPA;1,200MPA;1,300MPA;1,400MPA;1,500MPA;1,600MPA;1,700MPA;1,800MPA、1,900MPA;2,000MPA;又は最大2,500MPAの弾性率を有する、剛性のコポリエステル又はポリウレタンで構成される。
【0067】
[0072]実施形態#4の一部の態様において、エラストマーB層は、約200ミクロン~約1,000ミクロン、例えば、100ミクロン、125ミクロン、150ミクロン、175ミクロン、200ミクロン、225ミクロン、250ミクロン、300ミクロン、350ミクロン、375ミクロン、400ミクロン、425ミクロン、450ミクロン、475ミクロン、500ミクロン、550ミクロン、600ミクロン、650ミクロン、700ミクロン、750ミクロン、800ミクロン、850ミクロン、900ミクロン、950ミクロン、又は1,000ミクロンの厚さを有し、約D35~約D65、例えば、D35、D40、D45、D50、D55、D60、又はD65の硬度、及び約35%未満、34%未満、33%未満、32%未満、31%未満、30%未満、29%未満、28%未満、27%未満、26%未満、25%未満、24%未満、23%未満、22%未満、21%未満、20%未満、19%未満、18%未満、17%未満、16%未満、15%未満、14%未満、13%未満、12%未満、11%未満、又は10%未満の、22時間25℃での圧縮永久ひずみを有する、ポリエーテル又はポリエステルポリウレタンで構成され、A層は約50N/インチ超、約55N/インチ超、約60N超、約70N超の層間剥離強度を有し、当該ポリマーシートは、約100MPa~約2,000MPa、約250MPa~約2,000MPa、約500MPa~1,500MPa、約750MPa~約2,000MPa、例えば約750ミクロン~約1,500MPaの曲げ弾性率を有する。
【0068】
[0073]実施形態#4の一部の態様において、A及びC層は、1cm当たり100N未満、1cm当たり50N未満、1cm当たり25N未満、又は1cm当たり10N未満の力で、0.05mm~0.1mmの横方向の復元力を有する。
【0069】
[0074]一部の実施形態(本明細書で実施形態#5と呼ばれる)において、歯科装置は、歯の模型上で多層シートを熱成形することにより形成され、熱成形は、外部層のガラス転移温度及び/又は融点よりも少なくとも高く、並びに少なくとも、それより高い内部層エラストマー材料のガラス転移温度及び/又は融点未満の温度で実施される。
【0070】
[0075]実施形態#5の一実施形態において、歯科装置は、約80℃~180℃;90℃~170℃;100℃~160℃;110℃~150℃;120℃~150℃;130℃~170℃;140℃~180℃;80℃;90℃;100℃;110℃;120℃;130℃;140℃;150℃;160℃;170℃;又は180℃のTgを有する、少なくともA及びC層を有する多層シートを熱成形することにより作製され、B層は、約90℃~220℃、例えば180℃~220℃のガラス転移温度及び/又は融点、並びに約5J/g~約20J/g、例えば約5J/g~約20ジュール/g、又は5ジュール/g~15ジュール/gの融解熱を有する。
【0071】
[0076]実施形態#5の一態様において、A及びC層は、約90℃~約120℃のTgを有するコポリエステル又はポリウレタンを含み、B層は、約50MPa~500MPaの弾性率、並びに約170℃~約220℃のガラス転移温度及び/又は融点を有するポリウレタンで構成され、熱成形は、約150℃~200℃の間の温度で実施される。
【0072】
[0077]2つ以上の実施形態の要素を組み合わせることができることが理解されるべきである。
【0073】
[0078]一部の実施形態において、熱成形可能ポリマーシートは、少なくとも2つの外部層A及びCと、中間層Bとで構成され、A及びC層のうちの1つ又は複数は、50~100モル%のC6~C14脂肪族二酸部分と、約50~100モル%の4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルアミン)(CAS[1761-71-3])とで構成される微結晶ポリアミドを含み、約100℃~180℃のガラス転移、20J/g未満の融解熱、及び80%を超える光透過率を有する。
【0074】
[0079]一部の実施形態において、熱成形可能ポリマーシートは、少なくとも2つの外部層A及びCと、中間層Bとで構成され、A及びC層のうちの1つ又は複数は、70モル%~100モル%のテレフタル酸残基を含むジカルボン酸成分と、ジオール成分とで構成されるコポリエステルを含み、ジオール成分は、(i)0~95%のエチレングリコール、(ii)5モル%~50モル%の2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール残基、(ii)50モル%~95モル%の1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、及び(iii)3個以上のヒドロキシル基を有する0~1%のポリオールを含み、ジオール残基の(i)、(ii)、及び(iii)のモル%の合計は、100モル%に達し、コポリエステルは、80℃~150℃のガラス転移温度Tgを示す。この実施形態の一部の態様において、熱成形可能ポリマーシートは、約A90~D55のショア硬度、及び35%未満の圧縮永久ひずみを有する芳香族ポリエーテルポリウレタンを含む中間B層を含み、A及びC層と、B層との間の層間剥離強度は、2.5cm当たり50Nを超える。
【0075】
[0080]一部の実施形態において、1本又は複数の歯と共形の歯科装置は、上記の微結晶ポリアミド又はコポリエステルから作られる。
【0076】
[0081]一実施形態において、少なくとも2つの剛性又は硬質外部層A及びC、少なくとも2つの軟質内部層B及びB’、並びに少なくとも1つの剛性又は硬質内部層Dで構成されるポリマーシート構成物が提供される。A、C及びD層は、同じであってもよく、又は異なっていてもよい。B及びB’層は、同じであってもよく、又は異なっていてもよい。
【0077】
[0082]一部の実施形態において、剛性層又は硬質層A、C、及びDは、約1,000MPa~2,500MPaの弾性率を有する熱可塑性ポリマーを個別に含む。
【0078】
[0083]一部の実施形態において、剛性又は硬質層A、C及びDは、約80℃~180℃のガラス転移温度及び/又は融点を有する熱可塑性ポリマーを個別に含む。
【0079】
[0084]一部の実施形態において、剛性又は硬質層A、C及びDは、ポリエステル、コポリエステル、ポリカーボネート、ポリエステルポリカーボネートブレンド、ポリウレタン、ポリアミド、ポリオレフィン、微結晶ポリアミド、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸とシクロヘキサンジメタノールと2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールとを含むコポリエステル、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸とエチレングリコールとジエチレングリコールとを含むコポリエステル、MDI及びヘキサンジオールをベースとする芳香族ポリウレタン、脂肪族ジオールを有する芳香族ポリウレタン、ポリプロピレン又はプロピレンとエチレンとC4~C8α-オレフィンとのコポリマー、脂環式ポリアミド、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリ塩化ビニルなどのビニルポリマー、並びにフルオロポリマーのうちの1種又は複数を含む。
【0080】
[0085]一部の実施形態において、内部層B及びB’は、ポリウレタンエラストマー、芳香族ポリエーテルポリウレタン、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、スチレン系エラストマー、無水物官能化スチレン系エラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリエーテルポリアミド(ポリプロピレンオキシドベース、又はポリテトラメチレンオキシドベース)、環状オレフィンエラストマー、アクリル系エラストマー、芳香族又は脂肪族ポリエーテル、ポリエステルポリウレタン、シロキサンエラストマー、ポリエーテルエラストマー、オレフィンコポリマー、アクリル系エラストマー、及びフルオロエラストマーのうちの1種又は複数を個別に含む。
【0081】
[0086]一部の実施形態において、内部層B及びB’は、約A60~D85、約A70~D75、約A80~D65、又は約D40~D70の硬度を有するポリマー材料を含む。
【0082】
[0087]一部の実施形態において、内部層B及びB’は、約90℃~220℃のガラス転移温度及び/又は融点を有するポリマー材料を含む。
【0083】
[0088]一部の実施形態において、内部層B及びB’は、約50MPa~500MPaの弾性率を有するポリマー材料を含む。
【0084】
[0089]一部の実施形態において、シートは、約250ミクロン~約2,000ミクロン、約300ミクロン~約1,900ミクロン、約400ミクロン~約1,750ミクロン、又は約500ミクロン~約1500ミクロンの全体厚さを有する。
【0085】
[0090]一部の実施形態において、剛性又は硬質層A、C及びDは、約100ミクロン~約750ミクロン、約150ミクロン~約600ミクロン、又は約200ミクロン~約500ミクロンの合計厚さを有する。
【0086】
[0091]一部の実施形態において、剛性層又は硬質層A及びCは、約50ミクロン~約250ミクロン、約40ミクロン~約150ミクロン、又は約25ミクロン~約50ミクロンの合計厚さを有する。
【0087】
[0092]一部の実施形態において、軟質層B及びB’は、約200ミクロン~約1,000ミクロン、約250ミクロン~約900ミクロン、約150ミクロン~約750ミクロンの合計厚さを有する。
【0088】
[0093]一部の実施形態において、1本又は複数の歯と共形の歯科装置が、本明細書に記載されるような層A、B、B’、C、及びDを少なくとも含むポリマーシート構成物から作られている。一部の実施形態において、これらの層の順序は異なっていてもよい。
【0089】
[0094]一部の実施形態において、歯科装置は、約250ミクロン~2,000ミクロンの合計厚さ、及び約500MPa~1,500MPaの曲げ弾性率を有する。
【0090】
[0095]一部の実施形態において、歯科装置は、歯を順次配置するように構成されている。
【0091】
[0096]一部の実施形態において、歯科装置は、A、C、又はD層単独と比較して、改善された耐引裂き性を示す。
【0092】
[0097]一部の実施形態において、歯科装置は、A、C、又はD層単独と比較して、改善された耐環境応力性を示す。
【0093】
[0098]1つの硬質外部層が別の硬質外部層よりも薄い場合、模型に対して薄い硬質層を熱成形することにより、模型への接触及び適合性を改善し、快適性、嵌合性、及び機械力の結合(mechanical force coupling)を高めることができる。
【0094】
[0099]一部の実施形態において、装置内部の、歯に接触する硬質層は、別の硬質層よりも薄い厚さを有する。
【0095】
[00100]一部の実施形態において、歯に接触する硬質層の厚さは、約250ミクロン未満、又は約50ミクロンまでも薄くすることができる。
【0096】
[00101]一実施形態において、ポリマーシート構成物は、3つ以上の層で構成され、一方の最外硬質層(A1)は、別の最外硬質層(A)とは異なる厚さを有する。一部の実施形態において、一方の最外硬質層(A1)は、別の最外硬質層(A)よりも薄い。
【0097】
[00102]一部の実施形態において、最外硬質層(A1)は、約25~約250ミクロン、約25~約150ミクロン、又は約25~約100ミクロンの厚さを有する。
【0098】
[00103]一部の実施形態において、第2の最外硬質層(A)の厚さに対する最外硬質層(A1)の厚さの比は、約0.9未満、0.85未満、0.8未満、0.75未満、0.7未満、0.6未満、0.5未満、0.35未満、0.25未満、0.15未満、例えば、約0.9~約0.2、約0.8~約0.3、約0.5~約0.15である。
【0099】
[00104]一部の実施形態において、最外硬質層(A)、内部軟質層B、及び最外硬質層(A1)を含むポリマーシート構成物の厚さは、約500ミクロン~約2,000ミクロン、又は約625ミクロン~約1,000ミクロンである。この実施形態の一部の態様において、第2の最外硬質層(A)の厚さに対する最外硬質層(A1)の厚さの比は、約0.9~約0.2、約0.8~約0.3、又は約0.75~約0.25である。
【0100】
[00105]
【表1】
【0101】
[00106]一部の実施形態において、最外硬質層(A)、内部軟質層B、及び最外硬質層(A1)を含むポリマーシート構成物の曲げ弾性率は、約100MPa~約2,000MPa、約250MPa~約2,000MPa、約500MPa~1,500MPa、約750MPa~約2,000MPa、又は約750ミクロン~約1,500MPaである。
【0102】
[00107]一部の実施形態において、最外硬質層(A)及び最外硬質層(A1)の曲げ弾性率は、約1000MPa~2,500MPa、約1,000MPA~約1,500MPA、約1,100MPA~約1,600MPA;約1,200MPA~約1,700MPA;約1,300MPA~約1,800MPA;約1,400MPA~約1,900MPA;約1,500MPA~約2,000MPA、約1,100MPA;約1,200MPA;約1,300MPA;約1,400MPA;約1,500MPA;約1,600MPA;約1,700MPA;約1,800MPA、約1,900MPA;約2,000MPA;又は最大2,500MPAである。最外硬質層(A)の曲げ弾性率及び最外硬質層(A1)の曲げ弾性率は、同じであってもよく、又は異なっていてもよい。
【0103】
[00108]一部の実施形態において、内部軟質層Bのショア硬度は、約A60~約D85、約A65~約D80、約A70~約D75、約A85~約D70、約A90~約D65;又は約D35~約D65である。
【0104】
[00109]一部の実施形態において、最外硬質層(A)及び最外硬質層(A1)のガラス転移温度又は融点は、約80℃~180℃;90℃~170℃;100℃~160℃;110℃~150℃;120℃~150℃;130℃~170℃;140℃~180℃;80℃;90℃;100℃;110℃;120℃;130℃;140℃;150℃;160℃;170℃;又は180℃;95℃~150℃である。
【0105】
[00110]一部の実施形態において、内部軟質層Bのガラス転移温度又は融点は、約90℃~約220℃;100℃~約200℃;120℃~約180℃;140℃~220℃;又は160℃~約220℃である。
【0106】
[00111]一部の実施形態において、内部軟質層Bの圧縮永久ひずみは、25℃で22時間後、約35%未満、30%未満、25%未満、20%未満、又は10%未満、すなわち35%未満、34%未満、33%未満、32%未満、31%未満、30%未満、29%未満、28%未満、27%未満、26%未満、25%未満、24%未満、23%未満、22%未満、21%未満、20%未満、19%未満、18%未満、17%未満、16%未満、15%未満、14%未満、13%未満、12%未満、11%未満、又は10%未満である。
【0107】
[00112]一部の実施形態において、最外硬質層(A)及び最外硬質層(A1)は、コポリエステル、ポリカーボネート、ポリエステルポリカーボネートブレンド、ポリウレタン、ポリアミド又はポリオレフィンのうちの1種又は複数で構成される。一部の実施形態において、最外硬質層(A)及び最外硬質層(A1)は、同じ材料を含む。一部の実施形態において、最外硬質層(A)及び最外硬質層(A1)は、異なる材料を含む。
【0108】
[00113]一部の実施形態において、中間B層は、ポリウレタンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、スチレン系エラストマー、ポリアミドエラストマー、環状オレフィンエラストマー、アクリル系エラストマー、芳香族又は脂肪族ポリエーテル、及びポリエステルポリウレタンのうちの1種又は複数で構成される。
【0109】
(構築方法)
[00114]多層シートは、限定されないが、ホット又はコールドラミネート、接着ラミネート、溶融ラミネート、同時押出、多層押出、又は他の公知の方法を含むいくつかの手段により作製されてもよい。シートは、歯列矯正装置に形成する前に完全に作製されてもよく、又は装置は、多層を作る一連の個々の熱成形ステップを使用して生産されてもよい。
【0110】
[00115]試験試料又は歯科装置を生産するためのシートの熱成形は、本業界で一般的に使用される手順を使用し、Great Lakes Orthodonticsから入手可能な「Biostar」圧力成形機を使用して実施されてもよい。代替的に、熱成形は、ロール供給熱成形機、真空成形機、又は他の公知の熱成形技術を使用して実施されてもよい。熱成形は、延伸比及び成形品の厚さを変更するために、異なる条件、形態、又は模型を使用して実行されてもよい。多層装置は、1つ又は複数の3D印刷プロセスにより、又は順次的なディップコーティング、スプレーコーティング、パウダーコーティング、若しくはフィルム、シート、及び3D構造体を生産するのに知られている同様なプロセスにより製作されてもよい。
【0111】
[00116]熱成形中のシート温度は、赤外線放射温度計又は表面熱電対を使用して測定できる。
【0112】
(有用性)
[00117]本明細書に記載されるシート及び材料は、優れた寸法安定性、衝撃緩衝作用、及び復元力を有する熱成形可能材料としての有用性を有する。シートは、例えば、歯を移動させるため、改善された耐衝撃性を有するスポーツ用マウスガードとして使用するため、及び歯列矯正リテーナーとして使用するための、いくつかのタイプの口腔用装置に変えることができる。現在入手可能な材料及び装置と比較して、本明細書に記載される材料及び装置の改善された特性は、これらに限定されるものではないが、エンドユーザの快適さの改善をもたらす、より高い可撓性、歯の移動結果の改善、より高い耐ステイン性及び耐応力亀裂性、並びに優れた外観を含み、それらのすべてが、対象によるより着実な着用を促進する。
【0113】
(試験方法)
[00118]引張特性を、Instron Universal Materials Testerを使用して測定した。特に断りのない限り、ASTM D638の手順を使用した。色及び透明度を、BYK Gardner Spin比色計を使用して測定した。
【0114】
[00119]耐衝撃性を、Gardner衝撃試験機を使用して測定した。引裂き強度を、毎分250mmの速度で材料試験機を使用して測定した。
【0115】
[00120]37℃の水中における試料の応力緩和を、米国特許第8,716,425号に記載されている方法により測定した。
【0116】
[00121]耐ステイン性を、37℃で24時間、マスタード又はコーヒーなどのステイン付与媒体に試験物をさらし、さらす前後に白色タイル上で色を測定することにより測定した。
【0117】
[00122]並進回復力を、図1及び2に示されるような3層構造(又はポリマーシート)を構成することにより測定した。試料を0~0.5mm変位させ、その力をN/cmで報告した。
【0118】
[00123]層間剥離強度は、50mm/分の速度で測定され、1インチ当たり又は2.54cm(N)当たりのニュートン(N)として報告されることがある。詳細は、試験方法ASTM D3164に見出すことができる。
【0119】
[00124]ガラス転移温度、融点及び凝固点を決定するための熱試験を、別途指示がない限り、毎分10℃の加熱及び冷却速度で、示差走査熱量計を使用して測定した。
【0120】
[00125]耐環境応力亀裂性は、円筒形のマンドレルの周囲にシート試料を固定して、外部表面に特定のひずみ、例えば3%又は5%のひずみをもたらし、規定の環境、例えば唾液模倣溶液、口内洗浄剤、又は他の目的の溶液に試料を規定時間さらすことにより決定することができる。応答は、亀裂のタイプ及び数の目視観測により半定量的に、又は引裂き強度などの機械的特性を後に測定することにより定量的に測定できる。
【0121】
(材料及び方法)
[00126]構造の材料。多数の市販されている材料を、本明細書に記載されるシート及び装置を生産する際に利用することができる。表1は、A又はC成分で使用される例示的な材料のリストを示す。表2は、B成分で使用される例示的な材料のリストを示す。同様の又は関係する材料は、他の製造業者から得るか、又は公知の方法により生産できる。
【表2】

【表3】
【0122】
[00127]A、B又はC層のためのさらなる適切な材料は、相溶性又は非相溶性ブレンド、例えば2種以上のコポリエステルのブレンド、ポリプロピレンとポリエチレンとエチレンプロピレンエラストマーとのブレンド、ポリフッ化ビニリデン又はそのコポリマーなどのフルオロポリマー、スチレンアクリロニトリル樹脂、アクリロニトリルスチレンブタジエン樹脂(ABS)、ポリカーボネートソフトブロックを含有するポリウレタン類、シロキサンソフトブロック、ジェニオマー(Geniomer)(商標)などのシリコーンエラストマー、シロキサン尿素コポリマー、並びに環状オレフィンコポリマー及び環状オレフィンエラストマーを含むことができる。
【実施例
【0123】
[00128]本開示は、以下の実施例によりさらに例示される。実施例は、説明の目的のためだけに提供される。実施例は、本開示の範囲又は内容を限定するものと決して解釈されるべきでない。
【0124】
[実施例1]
[00129]公称総厚が0.76mmの一連の単一層及び多層シートを、表3に示されるように作製した。試験試料1~4を、圧縮成形及び個々のフィルムの熱ラミネートにより、又は押出ラミネートにより作製した。従来技術の材料の例P1、P2、及びP3を、フィルムを圧縮成形すること、及び任意選択で当該フィルムを熱ラミネートすることにより作製した。
【0125】
[00130]プレスラミネートを、200~220℃で実行し、押出ラミネートを、210~240℃のポリウレタン溶融温度を用いて行い、同時押出を、240℃~260℃のポリエステル溶融温度、及び210~240℃のポリウレタン溶融温度を用いて行った。時間、温度、及び圧力の条件を、構造(ポリマーシート)品質、厚さ、及び接着性を最大化するように変更した。
【0126】
[00131]機械的特性、光学的特性、応力緩和、及び形状回復を、得られた構造(ポリマーシート)の適切性を比較するために測定した。
【表4】
【0127】
[00132]従来技術の材料P1は、Bay Materials,LLC,Fremont Ca.によって供給される市販の熱成形可能なアライナー材料である。従来技術の材料P2は、Eastman Chemicalによって製造されている、約90℃のガラス転移温度を有するポリエステルであり、Eastar 6763の商標名にて販売されている。従来技術の材料P3は、米国特許第9,655,693号に記載されている。試験試料1~4は、(本明細書に記載されるような)多層ラミネートであり、応力緩和特性の改善、引裂き強度の増大、及び優れた耐ステイン性を実証する。
【0128】
[00133]従来技術の材料と比較して、試験試料1~4は、いくつかの予想外の特性を示した。試験試料1~4並びに従来技術の材料P1及びP2を比較すると、試験試料1~4が、応力緩和試験において実質的により小さい初期の力を示す(より良好なユーザの快適さにつながると考えられている)が、驚くべきことに、より長時間にわたって力を維持することが分かる。これは、内部硬質層を保護するためにエラストマーの外部層が必要であると教示する米国特許第9,655,693号の教示に反する。過酷な条件下で長時間にわたって適切な力レベルを維持する多層シートの能力は、図4において容易に分かる。図4の試料A及びBは、単一層シートである一方で、試料1及び2は、表3に記載されるような多層シートである。
【0129】
[00134]引裂き強度は、歯科装置の重要な特性である。低い引裂き強度を有する材料は、耐久性が低く、応力が集中する位置で割れることがある。従来技術の材料P1、P2、及びP3の引裂き強度を、試験試料1~4と比較することにより、エラストマーB層を含むそのような多層構造(又はポリマーシート)が、同等の単一層構造、又は従来技術の多層構造よりも著しく高い引裂き強度を有することが示される。
【0130】
[00135]引裂き強度に対する構造の効果をさらに調査するために、別のラミネート(#5)を、86℃のTgを有する、Eastman Chemicalから入手可能なコポリエステルであるEastar 6763で構成され、0.25mmのA及びC層、並びにショア50Dのウレタンエラストマーである0.2mmのB層で作製して、0.7mmの総厚を得た。この試料の引裂き強度を、従来技術の材料P1、P2、及びP3と比較した。試料#5は、ポリウレタン及びポリエステルの同様な比率を有しながら、従来技術の材料P3における値の200%を超える120Nの引裂き強度を示した。
【0131】
[実施例2(並進力の測定)]
[00136]3層シートを、試験材料2のために、実施例1に記載されているように作製した。2.54cm×1cmの1片のシートを、幅2.54cmである2片の剛性のポリエステル間に接着させて、0.5cmの重なり部分を作った(「多層試料A2」)。対照試験試料を、2片の剛性のポリエステル間に同じサイズ及び厚さのポリエステルA(従来技術)を使用して作製した。変位/力の応答を、0.04MPa/分の速度で測定し、結果を表4に報告する。多層構造は、装置の2つの外部層(又は2つのシェル)が、適切な力で従来技術の構造よりも大きい弾性運動に適応することを可能とする。
【表5】
【0132】
[00137]歯列矯正デバイスを、本明細書に記載される材料及び方法を使用して作り、ゼンデュラA及びEssix Plusから作られた、同じ形状及び厚さのデバイスと比較した。開示されているデバイスは、実質的に、より弾性であり、より快適に着用できた。内部及び外部シェルが互いに独立的に変形できるので、デバイスは、不必要な不快感を患者にもたらさずに、実際の歯と装置との間のより大きなオフセットに適応でき、且つほぼ一定の力を長時間及ぼして、歯を正確に移動させることができる。
【0133】
[実施例3]
[00138]厚さ0.25mmの、Blue RidgeFilms(Petersburg、Virginia)により供給される、BFI257と命名された透明なポリプロピレンフィルムを、180Fのホットプレスで、Kraton GF(マレイン酸変性SEBS、Kraton Polymersから入手可能)から作製された0.25mm厚のフィルムの両側にラミネートし、冷却し、切断して125mmの円とした。ポリプロピレンの弾性率は、1,100MPaで報告される。SEBSエラストマーは、71Aの報告された硬度、及び25MPaの弾性率を有する。多層フィルムは少ないステインを示し、歯科模型上で熱成形して、優れた弾性回復特性を備えるリテーナーを生産することが可能であった。
【0134】
[実施例4]
[00139]歯科装置が、アルコール及び/又は界面活性剤により容易に損傷する可能性があることが知られているため、口内洗浄液の存在下におけるシート材料の耐久性を調査した。0.75mmの厚さを有する試験シートを、幅2.54cm×長さ12cmで作製した。従来技術の材料P1、P2、及びP3、並びに多層シート(試験材料)#2を、十分な径のマンドレルに巻き付けて、5%のひずみを生じさせた。試料を口内洗浄剤に浸漬し、37℃に維持した。この環境が、環境応力亀裂を促進し、材料が平坦の代わりにフープ形状となるひずみを誘発することが知られている。24時間後、試料を脱イオン水ですすぎ、回復の量を、周囲温度で直ちに測定し、24及び48時間後に再び測定した。後に、試料を顕微鏡で見て、伸張下にあった側の応力亀裂の量を決定した。完全に平坦に戻った試料を、100%回復を有するとして採点する。応力亀裂を1~5(5は可視の亀裂がなく、1は激しい亀裂)で評価した。試料の形状回復を表5に示す。多層シート(#2)は、従来技術の材料P1、P2、及びP3よりも、急速及び完全に回復した。
【表6】
【0135】
[実施例5]
[00140]3つのラミネートを、実施例1、試料2のように作製し、試料#6、#7、及び#8と命名した。試料#6は、40℃のロール温度で、未処理のポリエステルフィルムを使用して押出ラミネートしたものであり、試料#7は、60℃のロール温度で、コロナ処理ポリエステルフィルムを使用して押出ラミネートしたものであり、試料#8は、80℃のロール温度で、コロナ処理フィルムを使用して押出ラミネートしたものであった。コロナ処理は、フィルム表面を活性化して、フィルム表面の極性を増大させるために一般的に使用される。ポリエステルAの対照試料を、試料#9と命名した。3つの試料の機械的特性及び耐環境応力亀裂性を、表6に示す。
【表7】
【0136】
[00141]試料#6及び#9と比較される、試料#7及び#8で観察された耐環境性の劇的な改善は、予期されておらず、予想外である。各場合において、環境にさられている材料は、化学的に同一であり、等しい量の応力下にある。理論に縛られることは望まないが、本出願人らは、外部ポリエステル層に存在するいくらかの集中したひずみ誘発性応力が、エラストマー材料に伝達され得、力の伝達が、より高い層間接着強度を有する材料においてより効率的であると仮定する。しかしながら、本出願人らは、この結果に関するあらゆる先例を認識していない。
【0137】
[00142]熱可塑性非晶質コポリエステル(PETG及びPCTG)が、乏しい耐環境応力亀裂性を有し、歯科装置として使用される場合に急速に分解する傾向があることがよく知られている。米国特許第9,655,691号は、約60A~約85Dの硬度を有する熱可塑性ポリウレタンエラストマーを用いてそのようなコポリエステルの両側を覆うことで、驚くべきことに、そのような材料(「2つの軟質ポリマー層間に配される硬質ポリマー層」として記載されている)から作られた歯のアライナーの耐久性が増大したことを教示する。推測上、外部材料は、物理的及び/又は化学的な保護層を提供する。そのような材料の短所は、ポリウレタンエラストマー及び他のエラストマーが、乏しい耐ステイン性を有し、開示されている多層構造が、乏しい耐引裂き性を有することである。
【0138】
[00143]本発明者らは、非晶性ポリエステルのフィルム、シート、又はそれらから作製される熱成形部品の耐応力亀裂性が、2層のポリエステル間に、ポリウレタンなどのエラストマー材料を接着させることにより劇的に改善できることを予想外に発見した。2つの硬質ポリマー層間に配された軟質ポリマー層を有する得られた構造は、優れた耐薬品性、高透明性、及び優れた耐ステイン性を有する。さらに、多層構造の耐引裂き性は、ポリエステル又はエラストマー単独のいずれかを超える。本発明者らは、特性の改善が、層間の高い接着強度を必要とすること、及び不十分に接着する層を有する材料が、耐亀裂性及び引裂き強度において劣ることも発見した。
【0139】
[00144]当技術分野では、剛性のポリウレタンシートは、それ自体が非常に良好な耐応力亀裂性を有することが知られている。予想外に、本出願人らは、剛性のポリウレタンA(外部)層及び優れた接着性を有するエラストマーB(内部)層を有する3層ABA構造が、剛性のポリウレタン単独よりも劣る耐環境応力亀裂性を有していたことを観察し、その反対の効果が、ポリエステル外部層で観察された。
【0140】
[実施例6]
[00145]シートから作られたデバイスの性能に対する、熱処理及び熱成形条件の効果を調査するために、試験を実行した。試験材料2(3層、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエステル)の3枚のシート(2A、2B、及び2C)を、12時間、真空下で、60℃において乾燥させた。試料を、吸湿防止バッグに入れ、表7に示される熱処理及び熱成形条件に供した。試料2Aを22℃で維持し、試料2B及び2Cを100℃で24時間アニールした。その後、試料を、異なる熱成形温度を用いて平板を生産するように熱成形した。試料2A及び2Bを、ポリウレタンの融解範囲の上限未満である温度で熱成形した一方で、2Cを、ポリウレタンの融解範囲を超える温度で熱成形した。
【表8】
【0141】
[00146]試験試料を、熱成形試料から切断し、DSCにより分析し、水中、37℃で、応力緩和試験に供した。DSCにより、試料の融点及び融解熱が、100℃でアニールすることにより上昇したこと、並びに熱成形が、融解熱量及び融解範囲を低減させたことが示された。しかしながら、ポリウレタンの融解範囲の上限未満で熱成形された試料は、より高い結晶化度を保持し、応力緩和試験においてより良好な性能を示した。表7の試料2Bの条件を、歯科装置を製作するために使用した。
【0142】
[実施例7]
[00147]さらなる構成物を、表8に示されるような弾性率及び弾性の差を有する適切な層材料を選択することにより作ることができる。
【表9】
【0143】
[実施例8]
[00148]厚さ2mmのシートを、厚さ0.250mmのポリプロピレンホモポリマー(Blue Ridge Films BFI3270、弾性率1,200MPa)の2つの外部フィルム、及び1.50mm厚のエチレンプロピレン微結晶エラストマー(Noito PN2070、三井化学、弾性率150MPa)の内部層をラミネートすることにより作製した。シートを、切断して直径125mmの円板とし、個人の上顎歯の模型上で熱成形し、形を整えて、高い耐衝撃性のスポーツ用マウスガードを作った。驚くべきことに、マウスガードは、より良好な衝撃保護をもたらし、Drufosoftの商標名にてDreveにより販売されている4mm厚のエチレン酢酸ビニルコポリマーから製作される標準のデバイスよりも快適である。
【0144】
[実施例9]
[00149]アライナーを、歯の模型上で3層シートを熱成形することにより作った。2つの外部層は、約120℃のTgを有する剛性のポリウレタンで構成され、内部B層は、160~195℃のハードブロック融点及び8J/グラムの融解熱を有するショアA85の芳香族エーテルポリウレタンで構成された。装置を、外部層のTg未満である100℃で24時間アニールした。変形は観察されなかった。試験により、この装置が、100℃でアニールする前よりも弾性があり、荷重クリープがより小さかったことが実証された。当該改善は、ポリウレタンエラストマーの微細構造の改善によるものと思われる。
【0145】
[00150]第2の試験では、多層デバイス及び単一層デバイスを比較し、各場合において、ゼンデュラA材料を、それぞれ、A/C材料として、又はA/B/C材料として使用した。デバイスを、90℃で24時間アニールした。単一層デバイスが広範に変形した一方で、多層デバイスはその形状を維持したことが観察された。多層デバイスでは、アニールの間に、エラストマーがより剛性の材料に安定化力を維持し、望ましくない寸法変化を防止すると仮定される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
【国際調査報告】