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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-21
(54)【発明の名称】油性固形化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/92 20060101AFI20230214BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230214BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20230214BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20230214BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20230214BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
A61K8/92
A61K8/37
A61Q1/04
A61Q1/10
A61K8/39
A61Q1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537103
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-16
(86)【国際出願番号】 EP2020087021
(87)【国際公開番号】W WO2021123164
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2019/001421
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502189579
【氏名又は名称】エルブイエムエイチ レシェルシェ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】中村 恭介
(72)【発明者】
【氏名】端 晃一
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA081
4C083AA082
4C083AA121
4C083AA122
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC391
4C083AC392
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC431
4C083AC432
4C083AD021
4C083AD022
4C083AD491
4C083AD492
4C083BB12
4C083CC11
4C083CC12
4C083CC13
4C083CC14
4C083DD11
4C083DD21
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【要約】
本発明は、(A)キャンデリラワックス、(B)融点が70℃以上である植物系及び/又は動物系ワックス、(C)総炭素数40~48の、一価直鎖飽和脂肪酸と一価直鎖飽和脂肪アルコールとのモノエステル、及び(D)(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、ダイマージリノール酸水添ヒマシ油、イソステアリン酸水添ヒマシ油、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸ポリグリセリル-10、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10、デカイソステアリン酸ポリグリセリル-10及びポリブテンからなる群から選ばれる少なくとも1種、又は、油性固形化粧料全量に対して8質量%以下のジイソステアリン酸ダイマージリノレイル及び/又はダイマージリノール酸ダイマージリノレイルを含む油性固形化粧料に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)キャンデリラワックス、
(B)融点が70℃以上である植物系及び/又は動物系ワックス、
(C)総炭素数40~48の、一価直鎖飽和脂肪酸と一価直鎖飽和脂肪アルコールとのモノエステル、及び
(D)(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、ダイマージリノール酸水添ヒマシ油、イソステアリン酸水添ヒマシ油、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸ポリグリセリル-10、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10、デカイソステアリン酸ポリグリセリル-10及びポリブテンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む油性固形化粧料。
【請求項2】
(A)キャンデリラワックス、
(B)融点が70℃以上である植物系及び/又は動物系ワックス、
(C)総炭素数40~48の、一価直鎖飽和脂肪酸と一価直鎖飽和脂肪アルコールとのモノエステル、及び
(D)ジイソステアリン酸ダイマージリノレイル及び/又はダイマージリノール酸ダイマージリノレイルを油性固形化粧料全量に対して8質量%以下含む油性固形化粧料。
【請求項3】
前記植物系ワックスが、コメヌカワックス、カルナウバワックス及びヒマワリ種子ワックスからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項4】
前記モノエステルが、ステアリン酸ベヘニル、エイコサン酸アラキジル、エイコサン酸へニコシル、エイコサン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、ベヘン酸ノナデカニル、ベヘン酸アラキジル、ベヘン酸へニコシル、及びベヘン酸ベヘニルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項5】
(C)成分がベヘン酸ベヘニルである、請求項1~4のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項6】
(D)成分に加えて、水酸基を少なくとも一つ有する液状油を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項7】
口紅、頬紅、リップクリーム、リップライナー、ファンデーション、コンシーラー、フェースカラー、アイライナー又はアイシャドーであり、好ましくは口紅、リップクリーム又はリップライナーである、請求項1~6のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項8】
スティック状である、請求項1~7のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項9】
更に着色剤を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の化粧料を、ケラチン質、特に肌又は唇に塗布することを含む、ケラチン質のケア及び/又は化粧のための美容方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
[0001]本発明は、油性固形化粧料、特にリップ(lips)に関する。
【0002】
発明の背景
[0002]近年、安全性及び美観の観点から、多くの天然由来の化粧品が市場に出現している。この市場状況の最中に、天然由来の油性固形化粧品に対する消費者需要も増加している。例えば国際公開第2018/123824号には、キャンデリラワックス、ベヘン酸ベヘニル及び液体油を含む固形ワックス組成物が開示されている。特開2006-342141号公報には、キャンデリラワックス、有機顔料及び液体油を含む油性固形化粧料が開示されている。
【0003】
技術的課題
[0003]従来の口紅等の油性固形化粧料においては、ポリエチレンワックス等の高い融点を有する炭化水素ワックスが、製品の安定性を保つために必要な成分と考えられてきた。炭化水素ワックスと極性油との組合せは、高温での安定性に優れる油性固形化粧料をもたらす。
【0004】
[0004]しかし、油性固形化粧料においては、高温安定性に加えて、肌又は唇に適用する際に、滑りがなめらかであり(smooth gliding)、溶け感(melting sensation)などのテクスチャーに優れることも求められる。油性固形化粧料を肌又は唇に塗布するに当たり、肌に接触させたまま滑らせる際に、ひっかかりが生じるなど、滑りが十分に滑らかでないと、適切に化粧料を肌又は唇に付着させられない場合がある。また、口紅等の着色剤を含む油性固形化粧料において、滑らかな滑り及び溶け感が劣ると、肌上に化粧料が適切に付与されない結果、色のりが悪くなり得る。
【0005】
[0005]溶け感及び滑らかな滑りを向上させるために、低融点を有するワックス、又はペースト状油(半固形ワックス)が油性固形化粧料において用いられ得る。しかしながら、十分な高温安定性を失うことなくテクスチャーを改善することは難しい。特に、天然由来ワックスを用いて、溶け感、滑らかな滑り及び高温安定性を両立させることは、炭化水素ワックスを主に含む従来の油性固形化粧料と比較して難しい。
【0006】
[0006]また、油性固形化粧料においては、耐久性(durability)が高いことも求められる。例えばスティック状の油性固形化粧料において耐久性が劣ると、化粧料を容器から繰り出した際に折れるおそれがあり、そもそも製造時にきちんと成型できないおそれがある。また、例えばコンパクト容器などの浅い容器に充填された固形化粧料においては、耐久性に劣ると、割れやひびが発生したり、使用時に必要量よりも著しく多くの量が筆やスポンジに付着したりするという問題がある。
【0007】
[0007]したがって本発明は、溶け感、滑らかな滑り、そして特に、高温安定性、及び耐久性に優れる、天然由来ワックス、特に植物系及び/又は動物由来ワックスを含む油性固形化粧料を提供することを目的とする。本発明における「天然由来のワックス」とは、植物由来及び/又は動物由来ワックスを意味し、本明細書の残りの部分では「植物系及び/又は動物系ワックス」とも呼ばれる。ここで、「天然由来ワックス」は、石油由来ワックスを含まない。本発明者らは、本発明による(A)から(D)の化合物の組合せが、組合せの化合物のうちの1つ又は2つに欠ける従来の組成物と比較して、溶け感、滑らかな滑り、並びに特に高い温度安定性及び耐久性の両方を有するという技術的問題に答えることを、説明中の例示的実施例及び比較例においてさらに実証する。
【0008】
発明の概要
[0008]本発明の一側面は、(A)キャンデリラワックス、(B)融点が70℃以上である植物系及び/又は動物系ワックス、(C)総炭素数40~48の、一価直鎖飽和脂肪酸と一価直鎖飽和脂肪族アルコールとのモノエステル、及び(D)(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、ダイマージリノール酸水添ヒマシ油、イソステアリン酸水添ヒマシ油、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸ポリグリセリル-10、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10、デカイソステアリン酸ポリグリセリル-10及びポリブテンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む油性固形化粧料に関する。
【0009】
[0009]本発明の別の側面は、(A)キャンデリラワックス、(B)融点が70℃以上である植物系及び/又は動物系ワックス、(C)総炭素数40~48の、一価直鎖飽和脂肪酸と一価直鎖飽和脂肪族アルコールとのモノエステル、及び(D)ジイソステアリン酸ダイマージリノレイル及び/又はダイマージリノール酸ダイマージリノレイルを油性固形化粧料全量に対して8質量%以下含有する油性固形化粧料に関する。
【0010】
[0010]上記植物由来及び/又は動物由来ワックスが、コメヌカワックス、カルナウバワックス及びヒマワリ種子ワックスからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0011】
[0011]上記モノエステルが、ステアリン酸ベヘニル、エイコサン酸アラキジル、エイコサン酸へニコシル、エイコサン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、ベヘン酸ノナデカニル、ベヘン酸アラキジル、ベヘン酸へニコシル、及びベヘン酸ベヘニルからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0012】
[0012]上記化粧料は、(D)成分に加えて、水酸基を少なくとも一つ有する液状油を更に含むことが好ましい。
【0013】
[0013]上記化粧料は、口紅、頬紅、リップクリーム、リップライナー、ファンデーション、コンシーラー、フェースカラー、アイライナー又はアイシャドーであってよい。
【0014】
[0014]上記化粧料は、スティック状であってよい。
【0015】
[0015]上記化粧料は、更に着色剤(colorant)を含んでいてよい。
【0016】
[0016]本発明の別の一側面は、上記化粧料を、ケラチン質、特に肌(皮膚)又は唇に塗布することを含む、ケラチン質のケア及び/又は化粧(make-up)のための美容方法に関する。
【0017】
[0017]本発明の油性固形化粧料は、植物系及び/又は動物系ワックスを含み、溶け感、滑らかな滑り、そして特に、高温安定性、及び耐久性に優れる。
【0018】
詳細な説明
[0018]以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0019】
[0019]本実施形態に係る油性固形化粧料は、(A)キャンデリラワックス、(B)融点が70℃以上である植物系及び/又は動物系ワックス、(C)総炭素数40~48の、一価直鎖飽和脂肪酸と一価直鎖飽和脂肪アルコールとのモノエステル、及び(D)(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、ダイマージリノール酸水添ヒマシ油、イソステアリン酸水添ヒマシ油、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸ポリグリセリル-10、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10、デカイソステアリン酸ポリグリセリル-10及びポリブテンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0020】
[0020]別の実施形態の油性固形化粧料は、(A)キャンデリラワックス、(B)融点が70℃以上である植物系及び/又は動物系ワックス、(C)総炭素数40~48の、一価直鎖飽和脂肪酸と一価直鎖飽和脂肪族アルコールとのモノエステル、及び(D)ジイソステアリン酸ダイマージリノレイル及び/又はダイマージリノール酸ダイマージリノレイルを油性固形化粧料全量に対して8質量%以下含有する。
【0021】
[0021]本明細書において固形とは、常温(20℃)での状態を指す。「固体」は、一般に、20℃の温度及び常圧(760mmHg)で、30Nm-1より大きい、好ましくは40Nm-1より大きい硬度を有する組成物を意味する。硬度は、いわゆる「バター切断糸」法によって20℃で測定することができ、これは、300μmの剛性ワイヤを使用して、好ましくは回転円筒形の製品のスティックを横方向に切断することからなる。硬度は、60mm/分の速度でスティックに対してワイヤを移動させることによって測定することができる。試料の硬度はgで表され、TEXT Plusテクスチュロメータを使用して測定することができる。
【0022】
キャンデリラワックス
[0022](A)成分
本実施形態に係る油性固形化粧料は、(A)成分として、キャンデリラワックスを含む。キャンデリラワックスとは、トウダイグサ科のキャンデリラ草(タカトウダイ草:Euphorbia cerifera)から採取されるワックスである。キャンデリラワックスは、例えば、天日で乾燥させたキャンデリラ草から融出法で抽出されたワックスから爽雑物を除いた粗精製品を更に精製したものであってもよい。
【0023】
[0023]粗精製品に対する精製処理は、例えば、樹脂分の除去、脱色、又は脱臭等が挙げられ、これらを組み合わせて行うこともできる。(A)成分としては、例えば日本の医薬部外品原料規格2006に記載されている「キャンデリラロウ(Candelilla Wax)」が好適である。
【0024】
[0024]本実施形態に係る油性固形化粧料において、(A)成分の含有量は、油性固形化粧料全量に対して、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上であってよく、12質量%、10質量%以下、9質量%以下、8.5質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、6質量%以下又は5.5質量%以下であってもよい。本実施形態に係る油性固形化粧料において、(A)成分の含有量は、油性固形化粧料全量に対して、例えば、2~12質量%であってよく、3~10質量%であることが好ましく、3~9質量%、4~8.5質量%であってもよい。以下、「質量%」を「重量%」ともいう。(A)成分の含有量が上記範囲であると、溶け感及び滑らかな滑りにおいて優れるものが得やすいため好ましい。
【0025】
[0025]本実施形態に係る油性固形化粧料における、(A)成分と後述の(C)成分との質量比は、例えば1~4:1であってよく、1.5~3.5:1であることが好ましく、2~3:1であることがより好ましい。
【0026】
融点70℃以上の植物系及び/又は動物系ワックス
[0026](B)成分
本実施形態に係る油性固形化粧料は、(A)成分に加えて、(B)成分として、融点が70℃以上である植物系及び/又は動物系ワックスを含む。油性固形化粧料は植物系ワックスを含むことが好ましい。(B)成分は、キャンデリラワックス以外の物質である。植物系及び/又は動物系ワックスは、植物由来及び/又は動物由来の材料を用いて合成されたワックスであってもよい。
【0027】
[0027](B)成分のワックスの融点は、例えば100℃以下であってよく、90℃以下であってもよい。ワックスの融点は、日本の医薬部外品原料規格の一般試験法である融点測定法第2法によって測定される。
【0028】
[0028](B)成分のワックスとしては、例えば、カルナウバワックス、コメヌカワックス、ヒマワリ種子ワックス、パームワックス等であってよい。
【0029】
[0029]本実施形態に係る油性固形化粧料は、(B)成分として、カルナウバワックス、コメヌカワックス、及びヒマワリ種子ワックスからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、コメヌカワックスを用いることがより好ましいい。(B)成分のワックスは、1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
[0030]本実施形態に係る油性固形化粧料における(B)成分のワックス含有量は、油性固形化粧料全量に対して、2質量%以上、2.5質量%以上、3質量%以上、又は4質量%以上であってよく、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、6質量%以下、4質量%以下、又は3質量%以下であってもよい。本実施形態に係る油性固形化粧料における(B)成分のワックス含有量は、油性固形化粧料全量に対して、2~20質量%であってよく、3~15質量%、3~12質量%、又は3~10質量%であることが好ましく、4~8質量%であることがより好ましい。
【0031】
[0031]本実施形態に係る油性固形化粧料における、(B)成分と後述の(C)成分との質量比は、例えば1~6:1であってよく、1~5:1であることが好ましく、1~4:1であることがより好ましい。本実施形態に係る油性固形化粧料における、(B)成分と(C)成分との質量比は、1.5~5:1、特に1.5~4:1、又は2~4:1であってもよい。(B)成分と(C)成分との質量比が上記範囲であると、本発明の効果により優れ、特に高温安定性をより高められるため好ましい。
【0032】
[0032]本実施形態に係る油性固形化粧料は、(A)成分及び(B)成分以外のワックスを更に含んでもよい。本実施形態に係る油性固形化粧料は、(A)成分及び(B)成分以外のワックスとして、石油由来の炭化水素ワックス又は合成ワックスを含んでいてもよいが、石油由来の炭化水素ワックス又は合成ワックスを含まないことが好ましい。本実施形態に係る油性固形化粧料に含まれるワックスは全て天然由来であることが好ましい。
【0033】
[0033](A)成分及び(B)成分の合計量は、油性固形化粧料全量に対して、5質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、9質量%以上、又は10質量%以上であってよく、30質量%以下、25質量%以下、23質量%以下、21質量%以下、19質量%以下、16質量%以下、15質量%以下、12質量%以下、10質量%以下又は8質量%以下であってもよい。(A)成分及び(B)成分の合計量は、油性固形化粧料全量に対して、5~30質量%、8~25質量%であってよく、9~23質量%、10~21質量%、10~19質量%又は10~16質量%であってもよい。(A)成分及び(B)成分の合計量が上記範囲であると、溶け感、滑らかな滑り、高温安定性、及び耐久性が更に向上するため好ましい。
【0034】
[0034]油性固形化粧料が(A)成分及び(B)成分以外に更にワックスを含む場合は、全ワックスの合計量が、本実施形態に係る油性固形化粧料全量に対して、5質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、9質量%以上、又は10質量%以上であってよく、30質量%以下、25質量%以下、23質量%以下、21質量%以下、19質量%以下又は16質量%以下であってもよい。全ワックスの合計量は、本実施形態に係る油性固形化粧料全量に対して、例えば5~30質量%又は8~25質量%であってよく、9~23質量%、10~21質量%、10~19質量%又は10~16質量%であることが好ましく、12~13.7%であることがより好ましい。全ワックスの合計量が上記範囲であると、溶け感、滑らかな滑り、高温安定性、及び耐久性が更に向上するため好ましい。
【0035】
一価脂肪酸と一価アルコールとのモノエステル
[0035](C)成分
本実施形態に係る油性固形化粧料は、(C)成分として、一価直鎖飽和脂肪酸と一価直鎖飽和脂肪アルコールとのモノエステルを含む。該モノエステルは、総炭素数40~48である。該モノエステルは、一価の直鎖飽和脂肪酸と一価の直鎖飽和脂肪アルコールとのエステル化により得られる。(C)成分のモノエステルの原料となる一価直鎖飽和脂肪酸及び一価直鎖飽和脂肪アルコールは、エステル化により総炭素数40~48のモノエステルが得られるものであれば特に限定されない。
【0036】
[0036]一価脂肪酸としては、例えば、カプリル酸(オクタン酸)、ペラルゴン酸(ノナン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ラウリン酸(ドデカン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、ペンタデシル酸(ペンタデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、マルガリン酸(へプタデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、アラキジン酸(エイコサン酸)、ベヘン酸(ドコサン酸)、リグノセリン酸(テトラコサン酸)、ヘキサコサン酸、オクタコサン酸、又はトリアコンタン酸であってよい。一価アルコールとしては、例えば、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘフタデカノール、ステアリルアルコール(オクタデカノール)、ノナデシルアルコール(ノナデカノール)、アラキジルアルコール(エイコサニルアルコール)、ヘニコシルアルコール、ヘンエイコシルアルコール、ベヘニルアルコール(ドコサニルアルコール)、トリコサニルアルコール、リグノセリルアルコール(テトラコサニルアルコール)、ペンタコサニルアルコール、ヘキサコサニルアルコール、へプタコサニルアルコール、オクタコサニルアルコール、ノナコサニルアルコール、トリアコンタニルアルコール、ヘントリアコンタニルアルコール、又はドトリアコンタニルアルコールであってよい。
【0037】
[0037](C)成分のモノエステルは、一価の直鎖飽和脂肪酸と一価の直鎖飽和脂肪アルコールとのモノエステルであり、より高い結晶性及び融点が得られやすいことから、炭素数18~22の一価の直鎖飽和脂肪酸と炭素数18~22の一価の直鎖飽和脂肪アルコールとのモノエステルが好ましい。炭素数18~22の一価の直鎖飽和脂肪酸と炭素数18~22の一価の直鎖飽和脂肪アルコールとのモノエステルとしては、具体的には例えば、ステアリン酸ベヘニル、エイコサン酸アラキジル、エイコサン酸へニコシル、エイコサン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、ベヘン酸ノナデカニル、ベヘン酸アラキジル、ベヘン酸へニコシル、及びベヘン酸ベヘニルが挙げられる。
【0038】
[0038](C)成分のモノエステルは、化学合成品であってもよく、植物、微生物等の天然物から採取された油分又はこれを改変処理したものに含まれるものであってもよい。上記モノエステルは、一価直鎖飽和脂肪酸及び一価直鎖飽和脂肪アルコールを従来既知の方法でエステル化することにより合成することができる。例えば、一価直鎖飽和脂肪酸と一価直鎖飽和脂肪アルコールとをモル比1:1で反応容器に入れ、不活性ガス雰囲気下、160~250℃で加熱し、生成する水を除去しながら反応させる。このとき、触媒は使用してもよく、使用しなくてもよい。反応後、得られた反応物から、必要に応じて未反応の脂肪酸やアルコールを除去する。触媒を使用した場合は、触媒も除去する。必要に応じて当該反応物に対して脱色、脱臭などの精製を行い、モノエステルを得る。
【0039】
[0039](C)成分のモノエステルを構成する一価直鎖飽和脂肪酸と一価直鎖飽和脂肪アルコールとしては、化学合成品であってもよく、植物、微生物等の天然物から採取された油分から精製されたものであってもよい。上記モノエステルを構成する一価直鎖飽和脂肪酸及び一価直鎖飽和脂肪アルコールとしては、植物由来成分であることが好ましい。
【0040】
[0040](C)成分のモノエステルを含有する原料としては、該モノエステルの含有量が充分に高いものが好ましい。上記モノエステルを含有する原料としては、原料の総質量に対する上記モノエステルの含有量(質量)の割合が、例えば90質量%以上100質量%以下であってよく、94質量%以上100質量%以下が好ましく、96質量%以上100質量%以下がより好ましい。
【0041】
[0041](C)成分のモノエステルとして使用できる市販品の例は、ユニスター(登録商標)M-2222SL(日油)、又はKester Wax K-72(Koster Keunen)である。
【0042】
[0042]本実施形態に係る油性固形化粧料において、(C)成分の含有量は、油性固形化粧料全量に対して、1質量%以上、1.3質量%以上、1.5質量%以上、又は2質量%以上であってもよく、5質量%以下、4質量%以下、3.5質量%以下、又は3質量%以下であってもよい。本実施形態に係る油性固形化粧料において、(C)成分の含有量は、油性固形化粧料全量に対して、1~5質量%であってよく、1.3~4質量%であることが好ましく、1.5~3.5質量%又は2~3質量%であることがより好ましい。
【0043】
[0043]油性固形化粧料中の(C)成分のモノエステルの含有量は、ガスクロマトグラフィーを利用した分析方法等の従来既知の方法で分析できる。例えば、ガスクロマトグラフィーを利用した分析方法では、上記モノエステルを含有する原料を測定サンプルとし、この測定サンプルを以下の分析条件においてガスクロマトグラフィー分析する。総炭素数40の標準物質と総炭素数48の標準物質のメインピークに相当するリテンションタイムの間に出現するピーク面積の和を、ピーク面積の総和で除した割合が、測定サンプルの総質量に対する総炭素数40~48のモノエステルの含有量の割合である。
【0044】
[0044]ガスクロマトグラフ条件;
カラム:DB-1ht(アジレント社製)
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)
昇温速度:15℃/分
カラム温度:50~350℃
標準物質:総炭素数40のモノエステル(例えば、ベヘン酸ステアリル)、総炭素数48のモノエステル(例えば、テトラコサン酸テトラコサニル)
【0045】
[0045]標準物質として用いるベヘン酸ステアリル及びテトラコサン酸テトラコサニルは、例えば、ベヘン酸及びステアリルアルコール、又はリグノセリン酸及びリグノセリルアルコールを、モル比1:1で、窒素雰囲気下で加熱し、生成する水を除去しながら反応させて得ることができる。標準物質調製のための一価脂肪酸と一価アルコールは、試薬として市販されているもの(例えば、東京化成社製)が使用できる。
【0046】
[0046](C)成分は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。(C)成分は、炭素数18~22の一価の直鎖飽和脂肪酸と炭素数18~22の一価の直鎖飽和脂肪アルコールとのモノエステルを1種又は2種以上含有していることが好ましく、ベヘン酸ステアリル、ベヘン酸ノナデカニル、ベヘン酸アラキジル、ベヘン酸へニコシル、及びベヘン酸ベヘニルからなる群より選択される1種又は2種以上を含有していることがより好ましく、ベヘン酸ベヘニル、及びベヘン酸ステアリルからなる群より選択される1種又は2種以上を含有していることが更に好ましく、ベヘン酸ベヘニルを含有していることがより更に好ましい。
【0047】
[0047]本実施形態に係る油性固形化粧料は、(C)成分以外のモノエステルを更に含んでいてもよい。
【0048】
[0048](D成分)
本実施形態に係る油性固形化粧料は、(D)成分として、(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー、ダイマージリノール酸水添ヒマシ油、イソステアリン酸水添ヒマシ油、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸ポリグリセリル-10、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10、デカイソステアリン酸ポリグリセリル-10及びポリブテンからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0049】
[0049]本実施形態に係る油性固形化粧料における成分(D)の含有量は、油性固形化粧料全量に対して、3質量%以上、4質量%以上、6質量%以上、又は8質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、又は80質量%以上であってもよい。本実施形態に係る油性固形化粧料における(D)成分の含有量は、油性固形化粧料全量に対して、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、17質量%以下、15質量%以下、又は13質量%以下であってもよい。本実施形態に係る油性固形化粧料における(D)成分の含有量は、3~90質量%であってよい。特定の実施形態では、本実施形態に係る油性固形化粧料における、(D)成分の含有量は、油性固形化粧料全量に対して、3~20質量%であってよく、特に4~17質量%であってよい。また、(D)成分の含有量は、油性固形化粧料全量に対して、20~70質量%が好ましく、22~60質量%がより好ましく、24~50質量%がさらに好ましく、25~45質量%が特に好ましい。(D)成分の含有量が上記範囲であることによって、本発明の効果により優れ、特に耐久性に優れる油性固形化粧料を得ることができる。
【0050】
[0050]本実施形態の油性固形化粧料は、(D)成分として、ジイソステアリン酸ダイマージリノレイル及び/又はダイマージリノール酸ダイマージリノレイルを含有してもよい。(D)成分としてジイソステアリン酸ダイマージリノレイル及び/又はダイマージリノール酸ダイマージリノレイルを含有する場合、ジイソステアリン酸ダイマージリノレイル及びダイマージリノール酸ダイマージリノレイルの合計含有量は、油性固形化粧料全量に対して8質量%以下であり、7質量%以下、6質量%以下、又は5質量%以下であってもよい。ジイソステアリン酸ダイマージリノレイル及びダイマージリノール酸ダイマージリノレイルの合計含有量は、油性固形化粧料全量に対して3質量%以上であってもよく、4質量%以上であってもよい。特定の実施形態では、ジイソステアリン酸ダイマージリノレイル及びダイマージリノール酸ダイマージリノレイルの合計含有量は、油性固形化粧料の総量に対して3質量%~8質量%、特に4質量%~7質量%である。
【0051】
[0051](D)成分は植物由来等の自然由来であってよい。原料である脂肪酸及びアルコールが植物由来である(D)成分としては、例えば、高級アルコール工業社のHAILUCENT ISDAを使用できる。
【0052】

[0052]本実施形態に係る油性固形化粧料は、(A)、(B)、(C)、(D)成分に加えて、更に(E)成分として油を含むことが好ましい。(E)成分は特に限定されず、例えば、極性油又は非極性油であってよく、半固形又は液状であってよい。(E)成分は、植物由来又は動物由来等の天然由来であってよく、石油由来であってもよい。特定の実施形態では、(E)成分は、水酸基を少なくとも1つ有する油である。(E)成分は、1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
[0053](E)成分は、例えば、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、テトライソステアリン酸ポリグリセリル-2、ダイマージリノール酸水添ヒマシ油、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、スクワラン、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2、ホホバ種子油、ホホバエステル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、リンゴ酸ジイソステアリル、ノナイソステアリン酸ポリグリセリル-10、ヒマワリ種子油、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、トリメリト酸トリトリデシル等であってよい。
【0054】
[0054](E)成分は、水酸基を少なくとも1つ有する液状油を含むことが好ましい。水酸基を1つ以上有する液状油としては、例えば、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、リンゴ酸ジイソステアリル等が挙げられる。また、(E)成分は、スクワラン及び/又はラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)を含むことが好ましい。
【0055】
[0055]本実施形態に係る油性固形化粧料における(E)成分の含有量は、油性固形化粧料全量に対して、35質量%以上、37質量%以上、38質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、又は80質量%以上であってよい。本実施形態に係る油性固形化粧料における(E)成分の含有量は、油性固形化粧料全量に対して、90質量%以下、88質量%以下、85質量%以下、82質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、又は50質量%以下であってもよい。本実施形態に係る油性固形化粧料における、(E)成分の含有量は、油性固形化粧料全量に対して、35~85質量%、37~82質量%、38~80質量%、38~70質量%、38~60質量%、又は38~50質量%であってもよい。
【0056】
[0056]本実施形態に係る油性固形化粧料における、(E)成分と(D)成分との質量比は、1~16:1、2~16:1、3~16:1、4~16:1、6~16:1、1~14:1、1~12:1、1~10:1、1~9:1、1~7:1、1~6:1、1:1~16、1:2~16、1:3~16、1:4~16、1:6~16、1:1~14、1:1~12、1:1~10、1:1~9、1:1~7、1:1~6であってよい。本実施形態に係る油性固形化粧料における、(E)成分と(D)成分との質量比は、6~13:1、6~11:1又は6~9:1であることが好ましい。
【0057】
着色剤
[0057]本実施形態に係る油性固形化粧料は、着色剤を含んでいてもよい。着色剤は、例えば、有機合成色素、天然色素、無機顔料、光沢顔料等であってよい。有機合成色素は例えば、染料、レーキ、有機顔料であってよく、無機顔料は例えば、体質顔料、着色顔料、白色顔料等であってよい。本実施形態に係る油性固形化粧料は、着色剤を含んでいなくてもよい。着色剤を含まない油性固形化粧料は例えばリップクリーム等として好適である。本実施形態に係る油性固形化粧料が着色剤を含む場合、着色剤の含有量は、油性固形化粧料の全量に対して、例えば0.01~30質量%又は0.001~2質量%であってよい。
【0058】
[0058]本実施形態に係る油性固形化粧料は、水を含んでいてもよい。ただし、本実施形態に係る油性固形化粧料は、実質的に水を含まないことが好ましい。油性固形化粧料の、水の含有量は、油性固形化粧料全量に対して1.0質量%以下であってよく、0.5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが更に好ましい。
【0059】
[0059]本実施形態に係る油性固形化粧料は、更にその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、防腐剤、紫外線吸収剤、保湿剤、界面活性剤、溶剤、香料、薬剤、キレート剤、pH調整剤等を用いることができる。
【0060】
[0060]本実施形態に係る油性固形化粧料は、例えば、肌又は唇に適用されるメイクアップ用化粧料であってよい。該油性固形化粧料は、例えば、口紅、頬紅、リップクリーム、リップライナー、ファンデーション、コンシーラー、フェースカラー、アイライナー、アイシャドー等であってよい。特定の実施形態では、油性固体化粧品は、口紅、リップバーム、又はリップライナーである。
【0061】
[0061]本実施形態に係る油性固形化粧料は、ISO16128で定義される自然由来指数(水を含まない)が、例えば80%以上であってよく、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることが更に好ましい。自然由来指数は98%以上であってもよい。自然由来指数は、100%未満であってよく、99%以下であることが好ましい。
【0062】
[0062]本実施形態に係る油性固形化粧料は、例えば、スティック状にであってよく、その他の任意の形状であってよい。本実施形態に係る油性固形化粧料は、例えば、スティック状の容器、薄い皿状の容器等の容器に収容されていてよい。本実施形態に係る油性固形化粧料は、粉末が固められた固形物ではないことが好ましい。本実施形態に係る油性固形化粧料は、十分に高い耐久性を有することから、スティック状の化粧料として特に好適である。
【0063】
[0063]本実施形態に係る油性固形化粧料は、常法にしたがって製造することができ、例えば、各原料を必要に応じて加熱溶解し、均一に混合して、冷却固化することによって製造することができる。
【0064】
[0064]本実施形態の別の一側面は、上述の油性固形化粧料を、ケラチン質、特に肌又は唇に塗布することを含む、ケラチン質のケア及び/又は化粧のための美容方法に関する。
【実施例
【0065】
[0065]以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
[0066]表1、3及び5に示す配合の口紅を調製した。組成物は、組成物の総重量の重量%で表される成分を含む。口紅は、常法に従い、ワックス類を加熱溶解し、全成分を混合してスティック型容器を用いて成型した。油性固形化粧料における、(C)成分に対する(A)成分の質量比、(C)成分に対する(B)成分の質量比、(D)成分に対する(E)成分の質量比、及びワックスの総量を表2、4及び6に示す。
【0067】
[0067]各例で用いた成分の詳細は以下のとおりである。
キャンデリラ(Euphorbiacerifera)ワックス:INA Trading, Candelilla wax SR-3
コメ(Oryza sativa)ヌカワックス:Cerarica Noda, RiceWax N゜1
カルナウバ(Copernicia cerifera)ワックス:Baerlocher FR, Cerauba Jaune Flor Paillettes
ヒマワリ (Helianthus Annuus)種子ワックス:横関油脂工業株式会社
(イソステアリン酸ポリグリセリル-2/ダイマージリノール酸)コポリマー:高級アルコール工業株式会社、HAILUCENT ISDA
ダイマージリノール酸水添ヒマシ油:高級アルコール工業株式会社、RISOCAST DA-L
ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル:日本精化株式会社、LUSPLAN DD-DA7
イソステアリン酸水添ヒマシ油:高級アルコール工業株式会社, RISOCAST MIS
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル):味の素株式会社、ELDEW PS-203
ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル:高級アルコール工業株式会社、RISOCAST ODSHS
イソステアリン酸ポリグリセリル-10:阪本薬品工業株式会社、S FACE IS-1001P
ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10: 阪本薬品工業株式会社、S FACE IS-1002P
デカイソステアリン酸ポリグリセリル-10:阪本薬品工業株式会社、S FACE IS-1009P
テトライソステアリン酸ポリグリセリル-2:阪本薬品工業株式会社、S FACE IS-204P
【0068】
[0068]
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
【表5】
【0073】
【表6】
【0074】
【表7】
【0075】
【表8】
【0076】
[0076][官能評価]
実施例及び比較例の油性固形化粧料について官能評価を実施した。官能評価は、油性固形化粧料をスティック状に成型し、スティックを唇に塗布することにより実施した。官能評価の項目としては、溶け感、滑らかな滑り感、及びカラーペイオフとした。溶け感とは、唇に乗せたときのとろけるような感触である。滑らかな滑り感とは、滑らかなひっかかりのない伸び感である。カラーペイオフは、塗布膜(メイクアップフィルム)の発色の良さである。
【0077】
[0077]官能評価は、化粧品専門評価パネル10人(25歳-55歳)による、唇への単回使用により、以下の基準にて評価した。評価A~Cである場合に、総合的に優れていると判断される。結果を表9~12に示す。
A:すばらしい
B:より良い
C:良い
D:不合格
E:良くない
F:悪い
【0078】
[0078][品質・安定性評価]
実施例及び比較例の油性固形化粧料について、品質及び安定性を評価した。品質においては、油性固形化粧料をスティック状に成型し25℃に24時間静置した後、油性固形化粧料を容器から5mm繰り出し、手のひらに10往復塗布したときの化粧品の状態を観察することで評価した。10往復塗布し化粧品の状態を観察した結果、スティックの形状が損なわれた場合に「F」と評価し、問題なく使用できた場合「A」と評価した。
【0079】
[0079]安定性については、スティック状に成型した油性固形化粧料を45℃に1か月間、スティック天面を上に向けた状態で静置させた後、外観を観察することによって評価した。外観を観察した結果、著しい変化(ブルーミング)が生じる、又はスティック形状を維持できなかった場合「F」と評価し、外観に変化がみられなかったものを「A」と評価した。品質及び安定性評価においていずれも評価Aである場合に、品質・安定性に優れていると判断した。結果を表9~12に示す。
【0080】
【表9】
【0081】
【表10】
【0082】
【表11】
【0083】
【表12】
【0084】
[0084]表に示した結果は、(A)~(D)成分を含む本発明の実施例の油性固形化粧料の全てが、(A)~(D)成分の1つ又はいくつかを欠いている比較例と比較して、溶け感、滑らかな滑り感、カラーペイオフの全てに関して、また特に破断試験及び安定性に関しても優れていることを実証した(注「A」は、全ての組成物について優れた品質及び安定性を意味する)。
【国際調査報告】