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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-21
(54)【発明の名称】タンパク質分解の調節
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/15 20060101AFI20230214BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20230214BHJP
   C12Q 1/25 20060101ALI20230214BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20230214BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20230214BHJP
   A61K 31/505 20060101ALI20230214BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230214BHJP
   A61K 47/55 20170101ALI20230214BHJP
【FI】
G01N33/15 Z
G01N33/50 Z
C12Q1/25
A61K31/454
A61K31/5377
A61K31/505
A61P43/00
A61K47/55
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537121
(86)(22)【出願日】2020-12-15
(85)【翻訳文提出日】2022-07-27
(86)【国際出願番号】 US2020065022
(87)【国際公開番号】W WO2021126805
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】62/949,021
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521437068
【氏名又は名称】オリオニス バイオサイエンシズ,インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】518268352
【氏名又は名称】オリオニス バイオサイエンシズ ビーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】クレイ,ニコライ
(72)【発明者】
【氏名】リーヴェンス,サムエル
(72)【発明者】
【氏名】サバティーニ,リカルド
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
2G045AA40
4B063QA01
4B063QA05
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ36
4B063QR20
4B063QS28
4B063QX02
4C076CC41
4C076CC50
4C086AA02
4C086BC10
4C086BC22
4C086BC42
4C086BC73
4C086GA07
4C086GA09
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZC41
(57)【要約】
薬剤が、アルギニノコハク酸合成酵素1(ASS1)の直接的または間接的なリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解を引き起こす、または阻害するかどうかを決定することを含む、疾患または障害の治療における薬剤の有効性を評価する方法が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
候補化合物を同定するための方法であって:
(a)セレブロン(CRBN)に結合する能力を有する試験化合物を得ること;
(b)アルギニノコハク酸合成酵素1(ASS1)の存在下で前記試験化合物をCRBNと接触させること;
(c)ASS1の直接的または間接的なリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解についてアッセイすること;ならびに
(d)ASS1の直接的または間接的なリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解の低減、低下、または実質的にないことが検出される場合に候補化合物として前記試験化合物を分類すること
を含む、方法。
【請求項2】
治療用組成物を製造するための方法であって:
(a)
(i)セレブロン(CRBN)に結合する能力を有する試験化合物を得ること;
(ii)アルギニノコハク酸合成酵素1(ASS1)の存在下で前記試験化合物をCRBNと接触させること;
(iii)ASS1の直接的または間接的なリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解についてアッセイすること;
(iv)ASS1の直接的または間接的なリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解の低減、低下、または実質的にないことが検出される場合に候補化合物として前記試験化合物を分類すること
により候補化合物を同定すること;ならびに
(b)治療における使用のために前記候補化合物を製剤化すること
を含む、方法。
【請求項3】
ASS1の前記リクルートメントが、CRBNへのASS1の直接結合である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質の直接的または間接的なリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解についてアッセイすることをさらに含み、ASS1ではないCRBNの前記基質および/またはネオ基質が、場合によっては:
(i)デグロンモチーフ、
(ii)場合によっては、ターンの頂点に3つの骨格水素結合受容体の配置を有し、グリシン残基が続く表面β-ヘアピンループ、および/または
(iii)保存されたCys-His(C)モチーフ
を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ASS1ではないCRBNの前記基質および/またはネオ基質が、イカロス(IKZF1)、ヘリオス(IKZF2)、アイオロス(IKZF3)、イオス(IKZF4)、ペガサス(IKZF5)、CSNK1A、CK1a、およびZFP91から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ASS1の直接的または間接的なリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解の前記低減、低下、または実質的にないことが、ASS1ではないCRBNの前記基質および/またはネオ基質の直接的または間接的なリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解の量に関連している、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記分類が、ASS1の直接的または間接的なリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解の、ASS1ではないCRBNの前記基質および/またはネオ基質の直接的または間接的なリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解に対する比率をシフトさせる前記試験化合物の能力に基づく、請求項4から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記分類が、ASS1の直接的または間接的なリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解の比率を、ASS1ではないCRBNの前記基質および/またはネオ基質の前記直接的または間接的なリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解を支持するASS1ではないCRBNの前記基質および/またはネオ基質の直接的または間接的なリクルートメントおよび/または分解にシフトさせる前記試験化合物の能力に基づく、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記試験化合物が、ASS1の直接的または間接的なリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解と比較してASS1ではないCRBNの前記基質および/またはネオ基質の直接的または間接的なリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解を支持する能力に基づいて候補化合物として分類される、請求項4から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ASS1の直接的または間接的なリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解の前記低減、低下、または実質的にないことが、前記試験化合物がない参照試料中でのASS1の直接的または間接的なリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解の量および/または基底レベルに関連している、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記候補化合物が、サリドマイド、レナリドミド、およびポマリドミドの1つと比べて前記候補化合物を受け取る被験者における低減した副作用を示す、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記副作用が、肝機能の低下もしくは不全を含む、および/または腎機能の低下もしくは不全、および/またはT細胞機能の低下もしくは不全を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記試験化合物または候補化合物が、CRBNを結合するが、ASS1に弱く結合するか、実質的に結合しない、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記試験化合物または候補化合物が、CRBNを結合するが、ASS1ではないCRBNの前記基質および/またはネオ基質に弱く結合するか、実質的に結合しない、請求項4から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記試験化合物または候補化合物が、約1μMまたはそれより高い親和性でCRBNを結合する、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記試験化合物または候補化合物が、約500nM、または約300nM、約100nM、約30nM、約10nM、または約1nMの親和性でCRBNを結合する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記試験化合物または候補化合物が、分子糊である、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記試験化合物または候補化合物が、グルタルイミド環およびフタルイミド環を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記フタルイミド環が化学的に修飾されている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記試験化合物または候補化合物の前記グルタルイミド環が、CRBNにおける3つのトリプトファン残基のケージと水素結合することができる、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記試験化合物または候補化合物が、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質との相互作用を可能にするCRBNの疎水性表面の曝露を誘導する、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
CRBNの疎水性表面の前記曝露が、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質との相互作用を可能にする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記試験化合物または候補化合物が、免疫調節剤または免疫調節薬(IMiD)、またはそれらの医薬適合性のある塩、溶媒和物、水和物、共結晶、クラスレート、または多形である、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記試験化合物または候補化合物が、CRBNを結合し、ASS1を結合しない、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記試験化合物または候補化合物が、CRBNならびにASS1ではないCRBNの前記基質および/またはネオ基質を結合する、請求項4から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記試験化合物または候補化合物が、ヘテロ二官能性である、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記試験化合物または候補化合物が、同時にCRBNならびにASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質を結合することができる、請求項24から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記試験化合物または候補化合物が、タンパク質分解誘導キメラ(PROTAC)である、請求項24から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記PROTACについて、前記試験化合物または候補化合物が、PROTACの成分である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記PROTACが、リンカーをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記PROTACが、標的タンパク質を結合することができる部分をさらに含み、前記標的タンパク質が、場合によってはASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質である、請求項24から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記PROTACが、(i)CRBNを結合する試験化合物または候補化合物ならびに(ii)前記リンカーに共有結合し、標的タンパク質を結合することができる部分を含み、前記標的タンパク質が、場合によってはASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記試験化合物または候補化合物が、ヘテロ二官能性であり、クリックケミストリーを介して共役することができる、請求項24から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記試験化合物または候補化合物が、細胞内クリック形成タンパク質分解誘導キメラ(CLIPTAC)である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記分解が、ユビキチン依存性である、請求項1から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記候補化合物が、場合によっては血液悪性腫瘍から選択され、さらに場合によっては多発性骨髄腫および5q欠失関連骨髄異形成症候群(del(5q)MDS)から選択される、癌を処置する際の使用に適している、請求項1から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
候補化合物を同定するための方法であって:
(a)セレブロン(CRBN)に結合する能力を有する試験化合物を得ること:
(b)アルギニノコハク酸合成酵素1(ASS1)の存在下で前記試験化合物をCRBNと接触させること;
(c)ASS1の直接的または間接的なリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解をアッセイすること;ならびに
(d)ASS1の高いまたは増加した直接的または間接的なリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解が検出される場合に候補化合物として前記試験化合物を分類すること
を含む、方法。
【請求項38】
治療用組成物を製造するための方法であって:
(a)
(i)セレブロン(CRBN)に結合する能力を有する試験化合物を得ること;
(ii)アルギニノコハク酸合成酵素1(ASS1)の存在下で前記試験化合物をCRBNと接触させること;
(iii)ASS1の直接的または間接的なリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解についてアッセイすること;ならびに
(iv)ASS1の高いまたは増加した直接的または間接的なリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解が検出される場合に候補化合物として前記試験化合物を分類すること
により候補化合物を同定すること;ならびに
(b)治療における使用のために前記候補化合物を製剤化すること
を含む、方法。
【請求項39】
前記試験化合物と接触させるCRBNの存在下で、ASS1ではないCRBNの前記基質および/またはネオ基質がイカロス(IKZF1)、ヘリオス(IKZF2)、アイオロス(IKZF3)、イオス(IKZF4)、ペガサス(IKZF5)、CSNK1A、CK1a、およびZFP91から選択される場合、ASS1の前記高いまたは増加した直接的または間接的なリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解が、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質の直接的または間接的なリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解に関連している、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
ASS1の前記高いまたは増加した直接的または間接的なリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解が、前記試験化合物がない参照試料中でのASS1の直接的または間接的なリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解の量に関連している、請求項37または38に記載の方法。
【請求項41】
前記候補化合物が、癌を処置する際の使用に適している、請求項37から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記癌が、ASS1に依存している、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記癌が、胃癌または結腸直腸癌である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記候補化合物が、治療用化合物である、請求項1から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
候補化合物を同定するための方法であって:
(a)セレブロン(CRBN)に結合する能力を有する試験化合物を得ること;
(b)アルギニノコハク酸合成酵素1(ASS1)の存在下で前記試験化合物をCRBNと接触させること;
(c)ASS1の直接的または間接的なリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解についてアッセイすること;ならびに
(d)ASS1の直接的または間接的なリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解の低減、低下、または実質的にないことが検出される場合に候補化合物として前記試験化合物を分類すること
を含み、
ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質の直接的または間接的なリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解についてアッセイすることをさらに含み、ASS1ではないCRBNの前記基質および/またはネオ基質が、イカロス(IKZF1)、ヘリオス(IKZF2)、アイオロス(IKZF3)、イオス(IKZF4)、ペガサス(IKZF5)、CSNK1A、CK1a、およびZFP91から選択され;そして
前記分類が、ASS1の直接的または間接的なリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解の、ASS1ではないCRBNの前記基質および/またはネオ基質の直接的または間接的なリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解に対する比率をシフトさせる前記試験化合物の能力に基づく、方法。
【請求項46】
前記試験化合物または候補化合物が、CRBNを結合するが、ASS1に弱く結合するか、実質的に結合しない、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記試験化合物または候補化合物が、約1μMまたはそれより高い親和性でCRBNを結合する、請求項45に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
化合物をスクリーニングするおよび/または疾患もしくは障害の処置における化合物の有効性を評価する方法は、セレブロン(CRBN)の有無、またはアルギニノコハク酸合成酵素1(ASS1)との相互作用のレベルに基づいて提供される。
【0002】
関連する出願の相互参照
本出願は、2019年12月17日に出願された米国仮出願第62/949,021号の利益を主張し、その内容全体は、本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
プロテアソームにルーティングすることにより細胞内で標的タンパク質を排除する方法による標的化タンパク質分解、または高次タンパク質複合体に標的タンパク質をトラップする方法による標的化タンパク質阻害は、創薬における魅力的な新規領域である。タンパク質分解の分子糊および二価誘導物質(タンパク質分解誘導キメラ(PROTAC)としても既知である)は、従来の阻害剤を使用することでは不可能である方法で、化学量論以下の濃度を含めて、以前は新薬開発に繋がらなかった、標的を阻害および/または分解する潜在力を有するので、治療における魅力的な新規方法を表す。分子糊およびPROTACは、細胞内部のある特定のタンパク質に結合して、疾患標的タンパク質を阻害または分解する分子複合体の形成を誘導する。
【0004】
これらの薬剤の潜在力は大きいが、治療的に関連する標的(オフターゲット)ではない標的と係合し、その係合が、薬物副作用および毒性の危険性のいずれかを保持する、ならびに/または治療的に関連する(例えば、任意のオフターゲットの競合的係合のために)標的の効果的な係合を低減する、薬剤などのある特定の傾向性により妨害される。そのような傾向性がない薬剤の開発の必要性が残っている。
【発明の概要】
【0005】
したがって、種々の態様において、本発明は、小分子タンパク質(または小分子タンパク質複合体)の相互作用を促進、誘導、強化、および/もしくは安定化する、ならびに/または標的の傾向性を欠くまたは実質的に低下している治療剤の発見を提供する。本発明は、種々の実施形態において、無関係であるか、リスクがあるか、有害であるもの、例えばオフターゲットとの交差反応および逸脱、相互作用なしで、疾患関連標的のより選択的な調節のためにより効果的であるおよび/または疾患処置に許容される化合物を同定するための方法を提供する。
【0006】
態様において、本発明は、アルギニノコハク酸合成酵素1(ASS1)との直接的もしくは間接的な相互作用および/または直接的もしくは間接的な相互作用を誘導することにより負担がない化合物を同定する方法に関する。例えば、本発明は、実施形態において、タンパク質複合体へのASS1のリクルートメントを誘導、誘発、強化または安定化する活性または能力が低減しているか、低下しているか、実質的にない、および/または、結果として、ASS1を阻害するおよび/またはASS1のユビキチン化および/または分解を促進する化合物の選択を提供する。実施形態において、本発明は、ASS1のCRBNとの直接的な結合を誘導、誘発、強化または安定化する活性または能力が低減しているか、低下しているか、実質的にない化合物の選択を提供する。
【0007】
種々の態様において、本発明は、セレブロン(CRBN)に結合する能力を有する試験化合物を得ること、ASS1の存在下で試験化合物をCRBNと接触させること、CRBNへのASS1のリクルートメント、CRBN/試験薬剤複合体へのASS1の強化された結合、ASS1のユビキチン化および/またはASS1の分解の1つまたは複数についてアッセイすること、ならびにCRBNへのASS1のリクルートメントの低減、低下、または実質的にないこと、CRBN/試験薬剤複合体への強化された結合、および/またはASS1のユビキチン化および/またはASS1の分解が検出される場合に候補化合物として試験化合物を分類することにより候補化合物を同定するための方法に関する。
【0008】
種々の態様において、本発明は、セレブロン(CRBN)に結合する能力を有する試験化合物を得ること、ASS1の存在下で試験化合物をCRBNと接触させること、ASS1およびCRBNの直接的な結合についてアッセイすること、ならびにCRBNへのASS1の直接結合の低減、低下、または実質的にないことが検出される場合に候補化合物として試験化合物を分類することにより候補化合物を同定するための方法に関する。
【0009】
他の態様において、本発明は、候補化合物を同定することおよび治療における使用のための候補組成物を製剤化することにより候補組成物を製造するための方法に関し、候補化合物の同定は、CRBNに結合する能力を有する試験化合物を得ること;ASS1の存在下で試験化合物をCRBNと接触させること;CRBN/試験薬剤複合体へのASS1のリクルートメント、強化された結合、ASS1のユビキチン化および/または分解についてアッセイすること;ならびにリクルートメント、CRBN/試験薬剤複合体へのASS1の強化された結合、および/またはASS1のユビキチン化および/または分解の低減、低下、または実質的にないことが検出される場合に候補化合物として試験化合物を分類することによる。
【0010】
他の態様において、本発明は、候補化合物を同定することおよび治療における使用のための候補組成物を製剤化することにより候補組成物を製造するための方法に関し、候補化合物の同定は、CRBNに結合する能力を有する試験化合物を得ること;ASS1の存在下で試験化合物をCRBNと接触させること;CRBN/試験薬剤複合体へのASS1の直接結合をアッセイすること;ならびにCRBN/試験薬剤複合体へのASS1の結合の低減、低下、または実質的にないことが検出される場合に候補化合物として試験化合物を分類することによる。
【0011】
実施形態において、方法は、ASS1ではないCRBNの基質またはネオ基質(例えば、限定されないが、デグロンモチーフ、例えば、限定されないが、イカロス(IKZF1)、ヘリオス(IKZF2)、アイオロス(IKZF3)、イオス(IKZF4)、ペガサス(IKZF5)、SALL4、CSNK1A、CK1a、および/またはZFP91を含むもの)のリクルートメント、ユビキチン化、および/または分解についてアッセイするステップをさらに含む。
【0012】
実施形態において、分類は、ASS1のリクルートメント、CRBNへの結合、ユビキチン化、および/または分解の、ASS1以外のCRBNの基質またはネオ基質のリクルートメント、CRBNへの結合、ユビキチン化、および/または分解に対する比率をシフトさせる試験化合物の能力に基づく。
【0013】
実施形態において、候補化合物は、サリドマイド、レナリドミド、およびポマリドミドの1つと比べて候補化合物を受け取る被験者における低減した副作用を示す。
【0014】
種々の実施形態において、試験化合物または候補化合物は、タンパク質分解誘導キメラ(PROTAC)の成分である。種々の実施形態において、PROTACは、(i)本明細書で記載されるような試験化合物または候補化合物、例えば、上述した分子糊化合物を含む、CRBNバインダ、および(ii)試験化合物により結合したタンパク質とは異なる標的タンパク質(例えば、試験化合物/CRBN複合体へのリクルートメントによりネオ基質になるであろうCRBN基質またはタンパク質)に結合することができる化合物を含み、(i)および(ii)は、リンカーを介して共有結合している。
【0015】
種々の実施形態において、試験化合物または候補化合物は、治療用化合物である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】分子糊誘導CRBNネオ基質としての組換えASS1の同定。ASS1は、以前説明された(Lemmens,et al.「MAPPIT,a mammalian two-hybrid method for in-cell detection of protein-protein interactions」,Methods Mol Biol.2015;1278:447-55およびLievens,et al.「Array MAPPIT:high-throughput interactome analysis in mammalian cells」,J Proteome Res.2009 Feb;8(2):877-86、その内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる)および実施例1において、より詳細に概説されている、ツーハイブリッド技術システムの変形、MAPPITを使用して、CC220、既知のIMiD薬物およびCRBNリガンドに応答してCRBNにリクルートされた標的についてヒトORF(eome)cDNAライブラリをスクリーニングすることにより同定された。細胞におけるタンパク質相互作用は、アレイ形式で表示された細胞クラスター内でアッセイされた。細胞マイクロアレイ中の各スポットは、CRBNとのリガンド誘導(この場合には、CC220誘導)相互作用について試験されている単一ORF/タンパク質候補物を発現するそのような細胞クラスターに対応した。正の相互作用は、細胞蛍光の増加として読み取られた。示されているのは、多数の個々のORF/標的タンパク質候補物にわたる/そのための細胞マイクロアレイスクリーンからの蛍光強度データのドットプロットである。X軸は、粒子数を示し、Y軸は、マイクロアレイにおける各細胞クラスターについての積分強度を示す。示されるように、また示唆されるように、ASS1 ORFを表す細胞アレイ座標でシグナルの有意な誘導が観察される。IKZF1、既知のCC220誘導CRBN相互作用物質についてのシグナルの誘導も、参照のために示される。
図2】分子糊誘導CRBNネオ基質としての内因性ASS1の同定。ViroTrapとして既知であり、以前説明された(Eyckerman,et al.「Trapping mammalian protein complexes in viral particles」,Nature Communications 7:11416(2016)、その内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる)および実施例2において、より詳細に概説されている「タンパク質トラップ」技術を使用して、CRBNのレナリドミド誘導相互作用物質として、内因性ASS1を同定した。レナリドミドに応答したASS1のCRBNへの結合は、粒子出芽プロセス中にそのような粒子(任意の会合タンパク質または複数のタンパク質を含む)にリクルートされたウイルス様粒子含有細胞CRBNからASS1トリプシンペプチドを同定することにより検出された。したがって、示されるものは、(LEN誘導CRBN相互作用物質を同定するために)ViroTrap手順を用いてレナリドミド(LEN)およびDMSO対照媒質に曝露された細胞から単離されたウイルス様粒子を含むCRBNから単離されたペプチドのためのトリプシンペプチド同一性のボルケーノプロットである。ASS1に対応するトリプシンペプチドシグナル(log10 p値)、およびレナリドミド(LEN)またはDMSO対照媒質の存在下でのASS1トリプシンペプチドシグナル(X軸)における相対倍率変化は、LEN誘導CRBN相互作用物質として内因性ASS1を同定する。
図3A-B】共免疫沈降分析により評価されたような、生細胞におけるリガンド誘導CRBN-ASS1相互作用。この研究において、我々は、CRBN lMiDリガンドCC220の存在下または不在下で、HEK293T細胞における各コンストラクトのトランスフェクションおよび発現時に生細胞において相互作用する、Flagタグ付きASS1(または図1において説明されたアッセイにおいて同定されたような、Flagタグ付きgp130-ASS1融合タンパク質)およびHAタグ付きCRBNの能力を検査した。CC220に応答して既知のCRBNネオ基質IKZF3と相互作用する、HAタグ付きCRBNの能力も(Flagタグ付きIKZF3融合タンパク質として発現されたIKZF3を用いて)調査した。図3Aは、抗Flag抗体を用いる共免疫沈降、それに続く免疫沈降試料のウェスタンブロット分析、およびFlagペプチドを使用するビーズからの溶出から得られた結果を示す。各試料(CC220曝露に応じて変化すると予想される)において免疫沈降したCRBNの程度を測定するために抗HA抗体を用いて、および、各試料(同じであると予想される)において免疫沈降したFlag-ASS1、Flag-gp130-ASS1またはFlag-IKZF3の程度を決定するために抗Flag抗体を用いて、ウェスタン解析を実行した。図3A(上パネル)に示すように、HA-CRBNは、CC220の存在下でのみASS1免疫沈降物において認められ、ASS1がCRBNのリガンド誘導ネオ基質-すなわちCRBNに結合するCC220に応答してCRBNにリクルートされる標的であるという、図1および図2において概説される知見と一致している。図3A(下パネル)は、同じ量のFlagタグ付きASS1またはFlagタグ付きIKZF3が、関連する試料全体で抗Flag共免疫沈降物にあったことを示す。図3Bは、図3Aに示す免疫沈降分析に供されたすべての試料において、HA-CRBNについては上パネルで、Flag-ASS1、Flag-gp130-ASS1またはFlag-IKZF3については下パネルで示すように、種々のコンストラクトでトランスフェクトされた細胞から得られた種々の試料全体で各タンパク質の相対的発現が類似していたことを示す。結果は、図3A(下パネル)に示される結果と一致している。
図4】CRBNへのASS1のリガンド誘導リクルートメントは、生細胞におけるASS1の分解に関連付けられている。この研究において、我々は、CRBNへのASS1のリガンド誘導リクルートメントが後に続くASS1分解(CRBN E3リガーゼとの相互作用により誘発されるように)をもたらす可能性があるかどうかを検査した。Flagタグ付きASS1およびHAタグ付きCRBNをコードするcDNAコンストラクトでHEK293細胞を同時トランスフェクトし、CC220の濃度増加に24時間曝露した。ウェスタンブロット分析のために試料を生成し、抗Flag抗体を使用して評価された異なる実験条件にわたってASS1の定常状態のレベルを決定した。示されるように、CC220曝露に特異的に反応して、そして用量依存的様式で、ASS1発現(アクチンコントロールタンパク質発現ではなく)の喪失を観察した。これらの結果は、ASS1がCRBNのネオ基質であり、IKZF1/3などのいくらかの他の既知のCRBNネオ基質について観察されたように、CRBNとのリガンド誘導相互作用がそのプロテアソーム分解を誘発することを示す。
図5A-L】CRBNに結合するが既知のCRBN IMiDリガンド、例えばレナリドミド/LENおよびCC220、または他のCRBNリガンドと比較してCRBNネオ基質ASS1を効果的にリクルートしない化合物の発見および特徴づけ(左側のローマ数字の名前)。この研究において、我々は、競合実験により示唆されるようにIMiDリガンド結合ポケット内でも高い効力でCRBNに結合するCRBNリガンドを同定することができるが、ASS1をリクルートしないことを示す。以下の実験設定を使用して、生細胞内の化合物のCRBN結合効率を最初に評価した:図1ならびに実施例1および実施例5の関連する方法のセクションで説明されるような、また導入遺伝子をコードする(DHFRおよびCRBN融合タンパク質をコードする)適切なcDNAでHEK293細胞をトランスフェクトしたMAPPIT様アッセイを使用して、DHFR融合タンパク質、トリメトプリム-レナリドミドハイブリッドリガンド(トリメトプリムはDHFRのリガンドである)、およびCRBN-gp130融合タンパク質(CRBNはリガンドレナリドミドを結合する)を含む三元タンパク質/化合物複合体形成-したがって、DHFR-Trim-Len-CRBN複合体形成の結果として、正のアッセイシグナルを生成した。複合体の形成は、結果として、STAT反応性ルシフェラーゼレポータ遺伝子の活性化となる。 図5A図5Cにおいて、そのシグナルは、100%ルシフェラーゼ活性として設定されている。別の試料設定において、同じ方法で細胞を調製したが、さらにCRBNとの相互作用が調査されている試験化合物とコインキュベートした。CRBN融合タンパク質への結合は、ハイブリッドリガンドの同じCRBNタンパク質への結合と競合し、したがって、アッセイシグナルを生成するために必要とされる三元複合体形成の防止によりアッセイシグナルを阻害する。試験化合物の濃度の増加を評価して、生細胞におけるこのタイプのリガンド競合実験で決定されたようにCRBN結合効率を決定した。示されるように、既知のIMiD化合物(レナリドミド/LEN、CC220)は、CRBNへの結合に関してレナリドミドハイブリッドリガンドと効率的に競合した(CRBN関連アッセイシグナル阻害についての用量反応曲線)。同様に、一連の他の化合物は、効果的に競合する。シグナル阻害の特異性は、ハイブリッドリガンドの不在下でDHFR融合タンパク質に直接結合する(すなわち、タンパク質の直接相互作用)対照のgp130融合タンパク質(CTRL)により生成したシグナルの阻害について試験化合物の効果が評価される並行実験設定により評価される。要約すると、図5A図5Cに示される結果は、種々の化合物を強力なCRBNバインダとして認定する。 図5D図5Gおよび図5H図5Lにおいて、我々は、これらのCRBN結合化合物のどれが効果的なIKZF1および/またはASS1ネオ基質リクルータ(それぞれ)であるかを決定した。この実験設定において、CRBN融合タンパク質およびIKZF1またはASS1融合タンパク質をコードするコンストラクトで細胞をトランスフェクトした。CRBNリガンド誘導タンパク質相互作用を促進する能力-すなわち、IKZF1またはASS1ネオ基質のリクルートメントを監視するため、試験化合物の濃度の増加で試験化合物の活性を評価した(用量反応研究)。示されるように、既知のIMiD化合物(LEN、CC220)は、いくらかの他の化合物と同様に、IKZF1(図5D図5G)およびASS1(図5H図5L)の両方のリクルートメントを促進する。対照的に、他の化合物と同程度にCRBN結合に効果的である(図5A図5C、競合曲線)、ここに示す2つの化合物(v、vi)は、IKZF1(図5D図5G)およびASS1(図5H図5L)をリクルートしない。これは、ASS1ネオ基質のリクルートメント活性がないCRBNリガンドが、それらの差別的なタンパク質リクルートメント活性について同定および特徴づけすることができることを示す。LENおよびCC220と比較して、他の基質(例えばIKZF1)に対してASS1をリクルートする能力が低下した化合物もまた、観察されている。
図6図6は、分子糊誘導CRBN-ASS1相互作用を、DDB1受容体融合を適用する代替MAPPITアッセイ構成を使用して検出することができることを示す。DDB1をMAPPITキメラ受容体コンストラクト(pSEL-DDB1)に融合させ、未融合のCRBNベイトタンパク質を、IKZF1(gp130-IKZF1)またはASS1(gp130-ASS1)のいずれかの基質gp130融合タンパク質とともに同時発現させた、代替のCRBN基質結合アッセイを試験した。CRBN同時発現の不在下で(「CRBNがない」)、レナリドミド(LEN)誘導シグナルを観察することができなかった。しかし、未融合CRBN発現コンストラクトが同時トランスフェクトされた場合、LEN依存シグナルは、IKZF1およびASS1相互作用の両方で得られた。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、特定のCRBN結合化合物がまた、CRBNおよびASS1の結合をリクルート、促進、強化、および/もしくは安定化する、ならびに/またはCRBNへのASS1のリクルートメント、ASS1のユビキチン化および/またはASS1の分解を引き起こすという発見に部分的に基づいている。理論に縛られることを望むことなく、CRBN結合化合物のASS1とのこれらの相互作用は、CRBNのより治療的に関連する基質またはネオ基質とのCRBNベースの相互作用を媒介するCRBN結合化合物の能力を低減するか枯渇させるオフターゲットの傾向性を表す可能性がある。したがって、種々の態様において、本発明は、ASS1媒介効果が実質的にないCRBN結合化合物を同定する方法を提供する。
【0018】
種々の実施形態において、本方法は、治療効果および種々の化合物のASS1または他の標的関連の傾向性ついての潜在力を強調する相互作用のCRBNベースネットワークにおける洞察を可能にし、そのため、疾患の治療のための現在販売されている薬物であるサリドマイド、レナリドミドおよびポマリドミドなどのIMiDに共通する交差反応性および傾向性を示さないか、低減したそれらを示す、新規または改善された化合物の発見および構築を可能にする。
【0019】
化合物を同定および/またはスクリーニングする方法
実施形態において、疾患または障害の処置における化合物をスクリーニングする、および/またはCRBN結合化合物の有効性を評価する方法は、ASS1との直接的または間接的な相互作用の有無またはそのレベルに基づいて提供される。実施形態において、疾患または障害の処置における化合物をスクリーニングする、および/またはCRBN結合化合物の有効性を評価する方法は、ASS1との直接的な相互作用の有無またはそのレベルに基づいて提供される。種々の実施形態において、CRBNに結合するか、それと相互作用するが、また、CRBNへのASSの直接的または間接的なリクルートメントを引き起こさない、誘導しない、強化しない、および/もしくは安定化させない、ならびに/またはASS1のユビキチン化および/もしくはASS1の分解を引き起こさない薬剤を発見する方法が提供される。
【0020】
種々の態様において、本発明は、CRBNに結合する能力を有する試験化合物を得ること、ASS1の存在下で試験化合物をCRBNと接触させること、CRBNへのリクルートメント、CRBN/試験薬剤複合体へのASS1の強化された結合、ASS1のユビキチン化および/またはASS1の分解の1つまたは複数についてアッセイすること、ならびにCRBNへのリクルートメント、CRBN/試験薬剤複合体へのASS1の結合、ASS1のユビキチン化および/またはASS1の分解における低減、低下、または実質的に変化がないことが検出される場合に候補化合物として試験化合物を分類することによる候補化合物を同定するための方法に関する。
【0021】
種々の態様において、本発明は、CRBNに結合する能力を有する試験化合物を得ること、ASS1の存在下で試験化合物をCRBNと接触させること、CRBN/試験薬剤複合体へのASS1の直接結合についてアッセイすること、ならびにCRBN/試験薬剤複合体へのASS1の直接結合における低減、低下、または実質的に変化がないことが検出される場合に候補化合物として試験化合物を分類することによる候補化合物を同定するための方法に関する。
【0022】
他の態様において、本発明は、候補化合物を同定することおよび治療における使用のための候補組成物を製剤化することにより候補組成物を製造するための方法に関し、候補化合物の同定は、CRBNに結合する能力を有する試験化合物を得ること;ASS1の存在下で試験化合物をCRBNと接触させること;CRBNへのASS1のリクルートメント、CRBN/試験薬剤複合体へのASS1の強化された結合、ASS1のユビキチン化および/またはASS1の分解の1つまたは複数についてアッセイすること;ならびにCRBNへのリクルートメント、CRBN/試験薬剤複合体へのASS1の強化された結合、ASS1のユビキチン化および/またはASS1の分解の低減、低下、または実質的にないことが検出される場合に候補化合物として試験化合物を分類することによる。
【0023】
他の態様において、本発明は、候補化合物を同定することおよび治療における使用のための候補組成物を製剤化することにより候補組成物を製造するための方法に関し、候補化合物の同定は、CRBNに結合する能力を有する試験化合物を得ること;ASS1の存在下で試験化合物をCRBNと接触させること;CRBN/試験薬剤複合体へのASS1の直接結合についてアッセイすること;ならびにCRBN/標的薬剤複合体へのASS1の直接結合の低減、低下、または実質的にないことが検出される場合に候補化合物として試験化合物を分類することによる。
【0024】
実施形態において、本発明は、タンパク質複合体形成、ユビキチン化および/または分解に影響を与える薬剤を開発するための方法に関する。例えば、種々の実施形態において、本発明は、例えば治療に関連するCRBN基質またはネオ基質(例えば、限定されないが、デグロンモチーフ、例えば、限定されないが、イカロス(IKZF1)、ヘリオス(IKZF2)、アイオロス(IKZF3)、イオス(IKZF4)、ペガサス(IKZF5)、CSNK1A、CK1a、および/またはZFP91を含むもの)のリクルートメントおよび/もしくは分解を支持する治療経路に向けて、ならびに、例えばASS1および/または他のオフターゲットタンパク質、例えば、限定されないが、SALL4のリクルートメントおよび/または分解を支持しない非治療経路から離れて(例えばオフターゲット)、CRBNの活性および/または影響をシフトすることにより、タンパク質複合体形成、ならびに/または、分解に影響を与える薬剤を開発するための方法に関する。
【0025】
いくらかの実施形態において、ASS1および/もしくはASS1ではないCRBNの基質もしくはネオ基質のリクルートメントならびに/またはユビキチン化、ならびに/または分解は、ASS1および/またはASS1ではないCRBNの基質またはネオ基質のタンパク質または核酸のレベル(例えばRNAレベル)を測定することにより評価される。いくらかの実施形態において、ASS1および/もしくはASS1ではないCRBNの基質もしくはネオ基質のリクルートメントならびに/またはユビキチン化、ならびに/または分解は、参照(および/または互いに)対して評価される。実施形態において、相対的なASS1のリクルートメント、および/またはユビキチン化、および/または分解における減少は、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%である。実施形態において、相対的なASS1のリクルートメント、および/またはユビキチン化、および/または分解における相対的な減少は、少なくとも2倍、または3倍、または4倍、または5倍、または7倍、または10倍、または15倍、または20倍である。実施形態において、ASS1ではないCRBN基質またはネオ基質のリクルートメント、および/またはユビキチン化、および/または分解における相対的な増加は、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%である。実施形態において、ASS1ではないCRBN基質またはネオ基質のリクルートメント、および/またはユビキチン化、および/または分解における相対的な増加は、少なくとも2倍、または3倍、または4倍、または5倍、または7倍、または10倍、または15倍、または20倍である。
【0026】
いくらかの実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物は、CRBNに結合し、CRBNとASS1以外のCRBNの基質またはネオ基質との間の結合または相互作用を許可し、CRBNとASS1との間の実質的な結合または相互作用を許可しない。実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物は、CRBNとASS1以外のCRBNの基質またはネオ基質との結合または相互作用を媒介し、CRBNとASS1との間の結合または相互作用を実質的に媒介しない。
【0027】
種々の実施形態において、ASS1以外のCRBNの基質またはネオ基質の親和性(CRBNについて)および/またはリクルートメント(CRBNによる)および/またはユビキチン化、および/または分解は、ASS1よりも約5倍、10倍、または約100倍、または約1,000倍、または約10,000倍、または約100,000倍高い。種々の実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物により媒介される、ASS1以外のCRBNの基質またはネオ基質の親和性(CRBNについて)および/またはリクルートメント(CRBNによる)および/またはユビキチン化、および/またはリクルートおよび/または分解は、ASS1よりも約5倍、10倍、または約100倍、または約1,000倍、または約10,000倍、または約100,000倍高い。
【0028】
種々の実施形態において、ASS1以外のCRBNの基質またはネオ基質の親和性(CRBNについて)および/またはリクルートメント(CRBNによる)および/またはユビキチン化、および/または分解は、ASS1の親和性(CRBNについて)および/またはリクルートメント(CRBNによる)および/またはユビキチン化および/または分解よりも、約5倍から10倍、または約5倍から約25倍、または約5倍から約50倍、または約5倍から約100倍、または約5倍から約250倍、または約5倍から約500倍、または約5倍から約1,000倍、または約5倍から約3,000倍、または約5倍から約5,000倍、または約5倍から約10,000倍、または約5倍から約30,000倍、または約5倍から約50,000倍、または約5倍から約100,000倍、または10倍から約50倍、または約10倍から約100倍、または約10倍から約250倍、または約10倍から約500倍、または約10倍から約1,000倍、または約10倍から約3,000倍、または約10倍から約5,000倍、または約10倍から約10,000倍、または約10倍から約30,000倍、または約10倍から約50,000倍、または約10倍から約100,000倍、または約100倍から約1,000倍、または約100倍から約3,000倍、または約100倍から約5,000倍、または約100倍から約10,000倍、または約100倍から約30,000倍、または約100倍から約50,000倍、または約100倍から約100,000倍、または約1,000倍から約10,000倍、または約1,000倍から約30,000倍、または約1,000倍から約50,000倍、または約1,000倍から約100,000倍高い。
【0029】
種々の実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物により媒介される、ASS1以外のCRBNの基質またはネオ基質の親和性(CRBNについて)および/またはリクルートメント(CRBNによる)および/またはユビキチン化および/または分解は、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物により媒介される、ASS1の親和性(CRBNについて)および/またはリクルートメント(CRBNによる)および/またはユビキチン化および/または分解よりも、約10倍から約50倍、または約10倍から約100倍、または約10倍から約250倍、または約10倍から約500倍、または約10倍から約1,000倍、または約10倍から約3,000倍、または約10倍から約5,000倍、または約10倍から約10,000倍、または約10倍から約30,000倍、または約10倍から約50,000倍、または約10倍から約100,000倍、または約100倍から約1,000倍、または約100倍から約3,000倍、または約100倍から約5,000倍、または約100倍から約10,000倍、または約100倍から約30,000倍、または約100倍から約50,000倍、または約100倍から約100,000倍、または約1,000倍から約10,000倍、または約1,000倍から約30,000倍、または約1,000倍から約50,000倍、または約1,000倍から約100,000倍高い。
【0030】
いくらかの実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物により媒介される、ASS1の親和性(CRBNについて)および/またはリクルートメント(CRBNによる)および/またはユビキチン化および/または分解は、参照化合物によるASS1の親和性(CRBNについて)および/またはリクルートメント(CRBNによる)および/またはユビキチン化および/または分解に対してアッセイされる。
【0031】
種々の実施形態において、参照化合物は、サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド、CC-220、またはCC-122である。
【0032】
いくらかの実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物により媒介される、ASS1の親和性(CRBNについて)および/またはリクルートメント(CRBNによる)および/またはユビキチン化および/または分解は、基底状態にあるASS1の親和性(CRBNについて)および/またはリクルートメント(CRBNによる)および/またはユビキチン化および/または分解に対してアッセイされる。
【0033】
いくらかの実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物により媒介される、ASS1の親和性(CRBNについて)および/またはリクルートメント(CRBNによる)および/またはユビキチン化および/または分解は、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物により媒介される、ASS1以外のCRBNの基質またはネオ基質の親和性(CRBNについて)および/またはリクルートメント(CRBNによる)および/またはユビキチン化および/または分解に対してアッセイされる。
【0034】
いくらかの実施形態において、本方法は、(a)化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物により媒介される、ASS1の親和性(CRBNについて)および/またはリクルートメント(CRBNによる)および/またはユビキチン化および/または分解を、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物により媒介される、ASS1以外のCRBNの基質またはネオ基質の親和性(CRBNについて)および/またはリクルートメント(CRBNによる)および/またはユビキチン化および/または分解に対してアッセイすること、ならびに(b)参照化合物により媒介される、ASS1の親和性(CRBNについて)および/またはリクルートメント(CRBNによる)および/またはユビキチン化および/または分解を、参照化合物により媒介される、ASS1以外のCRBNの基質またはネオ基質の親和性(CRBNについて)および/またはリクルートメント(CRBNによる)および/またはユビキチン化および/または分解に対して比較することを提供する。
【0035】
種々の実施形態において、参照化合物は、サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミド、CC-220、またはCC-122である。
【0036】
いくらかの実施形態において、本方法は、(a)化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物により媒介される、ASS1の親和性(CRBNについて)および/またはリクルートメント(CRBNによる)および/またはユビキチン化および/または分解を、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物により媒介される、ASS1以外のCRBNの基質またはネオ基質の親和性(CRBNについて)および/またはリクルートメント(CRBNによる)および/またはユビキチン化および/または分解に対してアッセイすること、ならびに(b)レナリドミドにより媒介される、ASS1の親和性(CRBNについて)および/またはリクルートメント(CRBNによる)および/またはユビキチン化および/または分解を、レナリドミドにより媒介される、ASS1以外のCRBNの基質またはネオ基質の親和性(CRBNについて)および/またはリクルートメント(CRBNによる)および/またはユビキチン化および/または分解に対して比較することを提供する。
【0037】
いくらかの実施形態において、細胞を、CRBNを発現する細胞を用いてCRBNに結合する能力を有する試験化合物と接触させること;ASS1のリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解についてアッセイすること;ならびにASS1のリクルートメント、および/またはユビキチン化および/または分解の低減、低下、または実質的にないことが検出される場合に候補化合物として試験化合物を分類することを含む、候補化合物を同定する方法が提供される。実施形態において、細胞は、ASS1以外のCRBNの基質またはネオ基質のリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解についてさらにアッセイされる。
【0038】
実施形態において、本明細書に記載の方法は、ASS1および/またはASS1以外のCRBNの基質またはネオ基質のリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解についてアッセイすることをさらに含む。
【0039】
実施形態において、分解アッセイ、ユビキチン化アッセイ、またはプロテオミクス実験を使用して、リクルートメント、ユビキチン化、または分解をアッセイする。例えば、参照によりその全体が組み込まれる、Kim,Sung Ah,et al.「A novel cereblon modulator for targeted protein degradation」.European Journal of Medicinal Chemistry 166(2019):65-74;米国特許出願公開第2019/0017998号明細書を参照されたい。
【0040】
セレブロン(CRBN)
実施形態において、CRBNは、ヒトCRBNタンパク質(例えば、ヒトCRBNアイソフォーム1(GenBank受入番号NP_057386);またはヒトCRBNアイソフォーム2(GenBank受入番号NP_001166953)、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、およびそのSNP変異型を含む関連ポリペプチドなどの任意のCRBNのアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。関連CRBNポリペプチドは、対立遺伝子変異型(例えば、SNP変異型);スプライス変異型;フラグメント;誘導体;置換、欠失、および挿入の変異型;融合ポリペプチド;ならびに種間ホモログを含み、特定の実施形態において、CRBN活性を保持する、および/または抗CRBN免疫応答を生成するのに充分である。
【0041】
実施形態において、本発明は、CRBNを結合する化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物に関する。実施形態において、本発明は、CRBN配座の変化(例えば、CRBNの結合ポケット内で)を誘導するか、そうでなければCRBN表面(例えば、タンパク質の隣接領域上)の特性を変更する化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物に関し、上記CRBN配座の変化または変更は、結果としてネオ基質のユビキチン化となる。
【0042】
ASS1
実施形態において、ASS1は、ヒトASS1タンパク質(例えば、GenBank受入番号AAH21676.1、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、およびそのSNP変異型を含む関連ポリペプチドなどの任意のASS1のアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。関連ASS1ポリペプチドは、対立遺伝子変異型(例えば、SNP変異型);スプライス変異型;フラグメント;誘導体;置換、欠失、および挿入の変異型;融合ポリペプチド;ならびに種間ホモログを含み、特定の実施形態において、ASS1活性を保持する。
【0043】
ASS1は、アルギニノコハク酸リアーゼ(ASL)の助けを借りて、シトルリンをアルギニンに変換することにより、アルギニン生合成経路の律速段階を提示する尿素サイクル酵素である。より具体的には、ASS1は、シトルリンおよびアスパラギン酸の縮合を触媒してアルギニノコハク酸、アルギニンの直接の前駆体を形成する。ASS1は、尿素サイクルの一部として肝臓で広く見られ、他の組織においても遍在する酵素として認識されている。Haines,et al.,「Argininosuccinate synthase:at the center of arginine metabolism」,International Journal of Biochemistry and Molecular Biology 2.1(2011):8-23。
【0044】
ASS1は、種々の組織において遍在して発現され、肝臓および腎臓において最も豊富に発現する。Yu,et al.,Preparation of recombinant argininosuccinate synthetase and argininosuccinate lyase:expression of the enzymes in rat tissues,J Biochem.1995 May;117(5):952-7。
【0045】
ASS1欠乏は、異常なT細胞分化および機能に関連し、結果として、原発性免疫機能障害となる。ASS1欠乏は、異常なT細胞分化および機能に関連している。
【0046】
化合物および/または治療用化合物および/または候補化合物および/または試験化合物
実施形態において、本発明は、CRBNを結合する化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物に関する。実施形態において、本発明は、CRBN配座の変化(例えば、CRBNの結合ポケット内で)を誘導するか、そうでなければCRBN表面(例えば、タンパク質の隣接領域上)の特性を変更する化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物に関する。実施形態において、本発明は、CRBN配座の変化(例えば、CRBNの結合ポケット内で)を誘導するか、そうでなければCRBN表面(例えば、タンパク質の隣接領域上)の特性を変更する化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物に関し、上記CRBN配座の変化または変更は、CRBNおよびASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質の結合となる、ならびに/またはASS1ではないCRBNの基質および/もしくはネオ基質のユビキチン化および/もしくはASS1ではないCRBNの基質および/もしくはネオ基質の分解を引き起こす。
【0047】
実施形態において、本発明は、CRBNを結合するが、ASS1に弱く結合するか、実質的に結合しない化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物に関する。実施形態において、本発明は、CRBN配座の変化(例えば、CRBNのCMA結合ポケット内で)を誘導するか、そうでなければCRBN表面(例えば、タンパク質の隣接領域上)の特性を変更する化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物に関し、上記CRBN配座の変化または変更は、結果としてASS1ではないがASS1に弱く結合するか、実質的に結合しないCRBNの基質および/またはネオ基質のユビキチン化および/または分解となる。
【0048】
実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物は、CRBNを結合するが、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質に弱く結合するか、実質的に結合しない。実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物は、約1μMの親和性、またはより高い親和性でCRBNを結合する。実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物は、約500nM、または約300nM、約100nM、約30nM、約10nM、または約1nMの親和性でCRBNを結合する。実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物は、約500nM、または約300nM、約100nM、約30nM、約10nM、または約1nMの親和性でCRBNを結合するが、少なくとも1μM、または少なくとも3μM、または少なくとも10μM、または少なくとも30μM、または少なくとも100μM、または少なくとも300μM、または少なくとも1000μMの親和性でASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質を結合する。実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物は、ASS1に弱く結合するか、実質的に結合しない。実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物は、少なくとも1μM、または少なくとも3μM、または少なくとも10μM、または少なくとも30μM、または少なくとも100μM、または少なくとも300μM、または少なくとも1000μMの親和性でASS1を結合する。実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物は、少なくとも1μM、または少なくとも3μM、または少なくとも10μM、または少なくとも30μM、または少なくとも100μM、または少なくとも300μM、または少なくとも1000μMの親和性でASS1を結合するが、約500nM、または約300nM、約100nM、約30nM、約10nM、または約1nMの親和性でCRBNを結合する。
【0049】
種々の実施形態において、CRBNについての化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物の結合KまたはEC50は、ASS1についての化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物の結合KまたはEC50よりも実質的に低い(すなわち、CRBNの結合は、ASS1についての結合よりも実質的に堅い)。
【0050】
種々の実施形態において、CRBNについての化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物の親和性は、ASS1についての化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物の親和性よりも約10倍、または約100倍、または約1,000倍、または約10,000倍、または約100,000倍高い。
【0051】
種々の実施形態において、CRBNについての化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物の親和性は、ASS1についての化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物の親和性よりも、約10倍から約50倍、または約10倍から約100倍、または約10倍から約250倍、または約10倍から約500倍、または約10倍から約1,000倍、または約10倍から約3,000倍、または約10倍から約5,000倍、または約10倍から約10,000倍、または約10倍から約30,000倍、または約10倍から約50,000倍、または約10倍から約100,000倍、または約100倍から約1,000倍、または約100倍から約3,000倍、または約100倍から約5,000倍、または約100倍から約10,000倍、または約100倍から約30,000倍、または約100倍から約50,000倍、または約100倍から約100,000倍、または約1,000倍から約10,000倍、または約1,000倍から約30,000倍、または約1,000倍から約50,000倍、または約1,000倍から約100,000倍低い。
【0052】
種々の実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物は、ASS1を結合するよりも約10倍、または約100倍、または約1,000倍、または約10,000倍、または約100,000倍堅くCRBNを結合する。
【0053】
種々の実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物は、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物がASS1を結合するよりも、約10倍から約50倍、または約10倍から約100倍、または約10倍から約250倍、または約10倍から約500倍、または約10倍から約1,000倍、または約10倍から約3,000倍、または約10倍から約5,000倍、または約10倍から約10,000倍、または約10倍から約30,000倍、または約10倍から約50,000倍、または約10倍から約100,000倍、または約100倍から約1,000倍、または約100倍から約3,000倍、または約100倍から約5,000倍、または約100倍から約10,000倍、または約100倍から約30,000倍、または約100倍から約50,000倍、または約100倍から約100,000倍、または約1,000倍から約10,000倍、または約1,000倍から約30,000倍、または約1,000倍から約50,000倍、または約1,000倍から約100,000倍堅くCRBNに結合する。
【0054】
実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物は、分子糊である。実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物は、グルタルイミド環およびフタルイミド環を含み、そのいずれかまたは両方は、場合によっては化学的に修飾されている。実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物のグルタルイミド環は、CRBNにおける3つのトリプトファン残基のケージと水素結合することができる。実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物は、ネオ基質との相互作用を可能にするCRBNの疎水性表面の曝露を誘導する。
【0055】
実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物は、免疫調節剤または免疫調節薬(IMiD)である。実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物は、IMiD様グルタルイミド環を含む化合物であるが、そうでなければ、化学構造が異なり、CRBNにおけるグルタルイミド-IMiDと同じ小分子結合ポケット(CRBNにおけるIMiD結合ポケット)に結合する。実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物は、グルタルイミド環を含まず、IMiDポケット内のCRBNを結合することができる化合物である。実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物は、CRBNを結合するが、IMiDポケット内ではない化合物である。
【0056】
免疫調節剤(IMiD)として既知であるサリドマイド、およびその類似誘導体のレナリドミドおよびポマリドミドを使用して、多発性骨髄腫、リンパ腫および他の血液病などの多様な臨床状態を処置する。任意の特定の理論に制限されることなく、本発明において使用される免疫調節剤は、T細胞の強力な共刺激剤であり得、用量依存的様式で細胞増殖を高める。本発明の免疫調節剤はまた、CD4+T細胞サブセットに対してよりもCD8+T細胞サブセットに対してより大きい共刺激効果を有する可能性がある。加えて、免疫調節剤は、抗炎症特性を有し、T細胞を共刺激する。
【0057】
実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物は、CRBNを結合するが、ASS1を結合しない。実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物は、CRBNならびにASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質を結合する。実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物は、CRBNならびにASS1およびASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質の1つまたは複数を同時に結合することができる。
【0058】
実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物は、ヘテロ二機能性であるか、ヘテロ二機能性化合物の成分である。
【0059】
実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物は、タンパク質分解誘導キメラ(PROTAC)である。種々の実施形態において、試験化合物または候補化合物は、タンパク質分解誘導キメラ(PROTAC)の成分である。
【0060】
種々の実施形態において、本発明は、例えば、CRBNを結合することができるが、ASS1に弱く結合するか、実質的に結合しない特徴を有することにより、PROTAC内の包含に適している化合物(例えばPROTACの成分として)の発見または同定に関する。
【0061】
種々の実施形態において、本発明は、例えば、CRBNを結合することができるが、ASS1ならびに/またはASS1ではないCRBNの基質および/もしくはネオ基質に弱く結合するか、実質的に結合しない特徴を有することにより、PROTAC内の包含に適している化合物(例えばPROTACの成分として)の発見または同定に関する。
【0062】
実施形態において、PROTACは、標的タンパク質およびユビキチン化機構をまとめ、それによって目的のタンパク質のユビキチン化およびそれに続くプロテアソームにおける分解を誘発するのに適切な長さのリンカーにより結合されている、細胞内標的タンパク質ならびにE3ユビキチンリガーゼリクルート基のためのリガンドを組み込む。
【0063】
種々の実施形態において、PROTACは、(i)本明細書に記載されるような試験化合物または候補化合物、例えば、上述した分子糊化合物を含む、CRBNバインダ、および(ii)試験化合物により結合したタンパク質とは異なる標的タンパク質(例えば、試験化合物/CRBN複合体へのリクルートメントによりネオ基質になるであろうCRBN基質またはタンパク質)に結合することができる化合物を含み、(i)および(ii)は、リンカーを介して共有結合している。
【0064】
実施形態において、PROTACは、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質を結合することができる部分をさらに含む。
【0065】
実施形態において、PROTACは、リンカーをさらに含む。実施形態において、リンカーは、標的タンパク質(例えば、ASS1ならびに/またはASS1ではないCRBNの基質および/もしくはネオ基質)およびユビキチン化機構をまとめ、それによって目的のタンパク質のユビキチン化およびそれに続くプロテアソームにおける分解を誘発するのに適切な長さのものである。
【0066】
実施形態において、PROTACは、(i)化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物ならびに(ii)リンカーに共有結合した、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質を結合することができる部分を含む。
【0067】
種々の実施形態において、本発明は、(a)CRBNを結合するが、ASS1に弱く結合するか、実質的に結合しない化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物、ならびに(b)ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質を結合する化合物を含む、PROTACに関する。
【0068】
実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物は、(i)CRBNを結合する化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物、ならびに(ii)リンカーに共有結合した、ASS1ならびに/またはASS1ではないCRBNの基質および/もしくはネオ基質を結合することができる部分を含む。
【0069】
実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物は、ヘテロ二機能性であり、クリックケミストリーを介して共役することができる。クリックケミストリーは、高収率で、範囲が広く、クロマトグラフィなしで除去することができる副産物のみを生成し、立体特異的で、実行が単純であり、容易に除去可能であるか温和な溶媒で実行することができる反応を説明する(Rostovtsev et al.(2002) A Stepwise Huisgen Cycloaddition Process:Copper(l)-Catalyzed Regioselective ”Ligation” of Azides and Terminal Alkynes.Angew.Chem.Int.Ed.41:2596-2599)。クリックケミストリーは、多くの異なる形態で実施されており、化学および生物学の両方で幅広い用途がある。クリック反応のサブクラスは、周囲の生物学的環境に対して不活性である反応物質を含む。そのようなクリック反応は、バイオ直交型と呼ばれる(Sletten et al.(2009)Bioorthogonal Chemistry:Fishing for Selectivity in a Sea of Functionality.Angew.Chem.Int.Ed.48:6974-6998)。バイオ直交型クリックケミストリーに適したバイオ直交型の反応物質対は、以下の特性を有する分子群である:(1)それらは、相互に反応するが、細胞内環境で細胞生化学システムと有意に交差反応しないか、相互作用しない;(2)それらならびにそれらの産物および副産物は、生理学的設定において安定であり、非毒性である;ならびに(3)それらの反応は、高度に特異的であり、迅速である。実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物はヘテロ二機能性であり、バイオ直交型クリックケミストリーを介して共役することができる。
【0070】
実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物は、クリック可能なタンパク質分解誘導キメラ(CLIPTAC)である。そのようなCLIPTACは、実施形態において、(a)細胞内標的タンパク質(例えば、ASS1ならびに/またはASS1ではないCRBNの基質および/もしくはネオ基質)のためのリガンドを含む第1の部分;(b)E3ユビキチンリガーゼのためのリガンドを含む第2の部分;ならびに(c)第1の部分および第2の部分を共有的にカップリングしているリンカー部分を含み、リンカーは、反応性部分の互換性のある対間のバイオ直交型クリック反応により生産された共有結合を含む。
【0071】
実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物は、細胞内クリック形成タンパク質分解誘導キメラ(CLIPTAC)である。
【0072】
他の基質/比率の決定
実施形態において、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質は、例えばCRBNを含むE3ユビキチンリガーゼ複合体のタンパク質基質、またはその下流の基質である。
【0073】
実施形態において、本明細書に記載の方法は、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質のリクルートメントおよび/またはユビキチン化および/または分解についてアッセイすることをさらに含む。実施形態において、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質は、デグロンモチーフを含む。
【0074】
実施形態において、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質は、iの側鎖とi+3の骨格NHとの間およびiの骨格カルボニル酸素とi+4の骨格NHとの間の水素結合を有するAsxまたはSTモチーフなどの水素結合アクセプタを有する側鎖を保持するi残基を有するbヘアピンaターンを含む。実施形態において、i+4の残基は、グリシンである(非限定例には、GSPT1、CK1aが含まれる)。
【0075】
実施形態において、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質は、残基iおよびシステインであるi+3およびグリシンであるi+4の残基を有するbヘアピンaターンを有する。2つのCys残基は、亜鉛イオンに結合してターンの形状を強固にする(非限定例には、IKZF1、ZnF692および参照によりその全体が組み込まれた「Defining the human C2H2 zinc finger degrome targeted by thalidomide analogs through CRBN」,Sievers t al,Science Vol.362,Issue 6414,DOI:10.1126/science.aat0572(2018)に報告されているすべての基質が含まれる)。
【0076】
実施形態において、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質は、i+3の位置にグリシンを保持する「擬似ループ」、bヘアピンbターンを有する。ターン構造は、i-1の側鎖の水素結合アクセプタとi+3のグリシンのカルボニルとの間の水素結合により強固にされている可能性がある(非限定例には、CDC7が含まれる)。
【0077】
実施形態において、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質は、イカロス(IKZF1)、ヘリオス(IKZF2)、アイオロス(IKZF3)、イオス(IKZF4)、ペガサス(IKZF5)、CSNK1A、CK1a、およびZFP91から選択される。
【0078】
実施形態において、本明細書に記載の方法は、ASS1のリクルートメントおよび/または分解についてアッセイすることをさらに含む。
【0079】
種々の実施形態において、本方法は、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質と比較したASS1のレベルの決定を可能にする。種々の実施形態において、本方法は、ASS1と比較したASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質のレベルの決定を可能にする。
【0080】
種々の実施形態において、ASS1のリクルートメントおよび/または分解の低減、低下または実質的にないことは、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質のリクルートメントおよび/または分解の量に関連する。
【0081】
実施形態において、本明細書に記載の分類は、CRBNによるリクルートメント、CRBNへの結合、ASS1ではないCRBNの異なる基質および/またはネオ基質のユビキチン化、および/または分解に対して、リクルートメント、CRBNへの結合、ASS1のユビキチン化、および/またはASS1の分解の比率をシフトさせる試験化合物の能力に基づく。
【0082】
例えば、一実施形態において、シフトは、ASS1ではないCRBN基質および/またはCRBNのネオ基質のリクルートメントに対するASS1のリクルートメントの比率におけるものであるか、シフトは、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質のCRBNへの結合に対するASS1のリクルートメントの比率におけるものであるか、シフトは、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質のユビキチン化に対するASS1のリクルートメントの比率におけるものであるか、シフトは、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質の分解に対するASS1のリクルートメントの比率におけるものである。
【0083】
例えば、一実施形態において、シフトは、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質のリクルートメントに対するASS1のCRBNへの結合の比率におけるものであるか、シフトは、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質のCRBNへの結合に対するASS1のCRBNへの結合の比率におけるものであるか、シフトは、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質のユビキチン化に対するASS1のCRBNへの結合の比率におけるものであるか、シフトは、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質の分解に対するASS1のCRBNへの結合の比率におけるものである。
【0084】
別の例として、一実施形態において、シフトは、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質のリクルートメントに対するASS1のユビキチン化の比率におけるものであるか、シフトは、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質のCRBNへの結合に対するASS1のユビキチン化の比率におけるものであるか、シフトは、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質のユビキチン化に対するASS1のユビキチン化の比率におけるものであるか、シフトは、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質の分解に対するASS1のユビキチン化の比率におけるものである。
【0085】
さらなる例として、一実施形態におい、シフトは、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質のリクルートメントに対するASS1の分解の比率におけるものであるか、シフトは、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質のCRBNへの結合に対するASS1の分解の比率におけるものであるか、シフトは、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質のユビキチン化に対するASS1の分解の比率におけるものであるか、シフトは、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質の分解に対するASS1の分解の比率におけるものである。
【0086】
種々の実施形態において、化合物または試験化合物は、ASS1のリクルートメント、ユビキチン化、および/または分解と比較して、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質のリクルートメント、ユビキチン化、および/または分解を支持する能力に基づいて候補化合物または治療用化合物として分類される。
【0087】
種々の実施形態において、ASS1のリクルートメントおよび/または分解の低減、低下または実質的にないことは、化合物または試験化合物を欠く参照試料におけるASS1のリクルートメント、ユビキチン化および/または分解の量に関連する。
【0088】
種々の実施形態において、ASS1のリクルートメントおよび/または分解の低減、低下または実質的にないことは、基底状態でのASS1のリクルートメント、ユビキチン化および/または分解の量に関連する。
【0089】
実施形態において、分解は、ユビキチン依存性である。
【0090】
実例となる疾患
本開示による化合物、試験化合物、候補化合物、または治療用化合物は、種々のタイプの癌の処置のために製剤化することができる。
【0091】
実施形態において、CRBNに結合する能力を有する試験化合物を得ること、ASS1の存在下で試験化合物をCRBNと接触させること、ASS1のリクルートメントおよび/または分解についてアッセイすること、ならびにASS1のリクルートメントおよび/または分解の低減、低下、または実質的にないことが検出され、癌における使用のために候補化合物を製剤化する場合に候補化合物として試験化合物を分類することによって候補化合物を同定することによる癌療法のための候補化合物を製造するための方法が提供される。
【0092】
実施形態において、治療用化合物を同定することおよび治療における使用のための治療用組成物を製剤化することにより癌療法のための治療用化合物を製造する方法が提供され、治療用化合物の同定は、CRBNに結合する能力を有する試験化合物を得ること;ASS1の存在下で試験化合物をCRBNと接触させること;ASS1のリクルートメントおよび/または分解についてアッセイすること;ならびにASS1のリクルートメントおよび/または分解の低減、低下、または実質的にないことが検出され、癌における使用のための治療用化合物を製剤化する場合に治療用化合物として試験化合物を分類することによる。
【0093】
実施形態において、癌は、基底細胞癌、胆道癌;膀胱癌;骨癌;脳および中枢神経系の癌;乳癌;腹膜癌;子宮頸癌;絨毛癌;結腸および直腸癌;結合組織癌;消化器系の癌;子宮内膜癌;食道癌;眼癌;頭頸部癌;胃癌(胃腸癌を含む);神経膠芽腫;肝癌;肝細胞腫;上皮内腫瘍;腎臓癌または腎癌;咽頭癌;白血病;肝癌;肺癌(例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、および肺の扁平上皮癌);メラノーマ;骨髄腫;神経芽細胞腫;口腔癌(唇、舌、口、および咽頭);卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;網膜芽細胞腫;横紋筋肉腫;直腸癌;呼吸器系の癌;唾液腺癌;肉腫;皮膚癌;扁平上皮癌;胃癌;精巣癌;甲状腺癌;子宮または子宮内膜癌;泌尿器系の癌;外陰癌;ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫ならびにB細胞リンパ腫を含むリンパ腫(低悪性度/濾胞性の非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性のNHL;中悪性度のびまん性NHL;高悪性度の免疫芽細胞NHL;高悪性度のリンパ芽球性NHL;高悪性度の小型非切れ込み核細胞性NHL;巨大腫瘤病変NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;およびワルデンシュトレームマクログロブリン血症を含む;慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ性白血病(ALL);有毛細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;ならびに他の癌腫および肉腫;および移植後リンパ増殖性障害(PTLD)、ならびに母斑症に関連する異常な血管増殖、浮腫(脳腫瘍に関連するものなど)、およびメーグス症候群から選択される。
【0094】
いくらかの実施形態において、癌は、白血病またはリンパ腫である。実例となる白血病またはリンパ腫には、限定されないが、低悪性度および中悪性度の非ホジキンリンパ腫(NHL)、再発したホジキン病、抵抗性ホジキン病高悪性度、ホジキンリンパ腫のリンパ球優勢サブタイプ、前駆B細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫、成熟B細胞新生物、B細胞慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、B細胞性前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、低悪性度、中悪性度および高悪性度の濾胞性リンパ腫(FL)を含むFL、皮膚濾胞中心リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、MALTタイプの辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、脾辺縁帯B細胞リンパ腫、有毛細胞白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、形質細胞腫、形質細胞骨髄腫、移植後リンパ増殖性障害、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、多発性骨髄腫、および未分化大細胞リンパ腫(ALCL)を含むB細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)から選択される白血病またはリンパ腫が含まれる。
【0095】
実施形態において、癌は、血液悪性腫瘍であり、場合によっては、多発性骨髄腫および5q欠失関連骨髄異形成症候群(del(5q)MDS)から選択される。
【0096】
いくらかの実施形態において、癌は、多発性骨髄腫である。
【0097】
副作用プロファイリングおよび/または低減
種々の実施形態において、本方法は、種々の副作用、例えばIMiD、例えばレナリドミドに関連するものを低減または防止するのに役立つ可能性がある改善された化合物の同定を可能にする。薬物誘発性肝損傷は、多くの薬物の使用後に発症する可能性がある既知の深刻な問題である。薬物誘発性肝損傷は、処方薬に曝露された10,000人から100,000人あたり毎年10から15の間で発生すると推定された。Sgro et al.,Hepatology 2002;36(2):451を参照されたい。ASS1が免疫組織およびT細胞に存在しており、T細胞機能において役割を果たすことが示唆されている。Tarasenko et al.,Impaired T cell function in argininosuccinate synthetase deficiency.Journal of Leukocyte Biology.2015;97(2):273-278を参照されたい。研究は、T細胞中のASS1酵素における欠陥が異常なT細胞分化および機能に関連しており、結果として原発性免疫不全となることを示した。
【0098】
それらの治療上の利益にもかかわらず、サリドマイド、レナリドミド、およびポマリドミドは、例えば、腎臓および肝臓の毒性などの合併症に関連していることが知られている。サリドマイドおよびレナリドミドは両方とも、重度である可能性があり、急性肝不全による死につながる可能性がある急性肝損傷の事例に関係している。例えば、腎不全は、多発性骨髄腫におけるレナリドミド療法の深刻な潜在的合併症である。Kreiniz et al.2016.Acute Renal Failure Associated with Lenalidomide Treatment in Multiple Myeloma:A Rare Occurrence?Anticancer Res.36(6):2889-2892を参照されたい。1つの研究において、ALアミロイドーシスを有する患者の66%は、レナリドミド処置中の腎機能の悪化を示し、腎機能障害は、患者の32%で重度であった。Specter et al.(2011).Kidney dysfunction during lenalidomide treatment for AL amyloidosis.Nephrology Dialysis Transplantation,26(3):881-886。多発性骨髄腫患者および他の癌患者について報告されている腎毒性は、レナリドミドおよびポマリドミド処置の潜在的な合併症として現在認識されている。Wanchoo et al.(2017).Renal Toxicities of Novel Agents Used for Treatment of Multiple Myeloma.Clinical Journal of the American Society of Nephrology:CJASN,12(1):176-189。
【0099】
実施形態において、本発明は、薬剤の潜在的な副作用を低減または排除する方法で、候補化合物および/または治療用化合物を製造する方法に関する。実施形態において、候補化合物および/または治療用化合物は、CRBNの副作用誘導の下流の活性に対するCRBNの治療的に関連する下流の活性の比率を変化させるために化合物がCRBNに結合するか、それと相互作用するかどうかを決定することにより同定され、CRBNの治療的に関連する下流の活性は、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質(例えば、デグロンモチーフを含むもの、例えばイカロス(IKZF1)、ヘリオス(IKZF2)、アイオロス(IKZF3)、イオス(IKZF4)、ペガサス(IKZF5)、CSNK1A、CK1a、および/またはZFP91)のリクルートメントおよび/または分解を含み、CRBNの副作用誘導の下流の活性は、ASS1の切除されたリクルートメントおよび/または分解の低減を含む。つまり、薬剤は、CRBNの治療的な下流の効果を支持し、CRBNの非治療的な下流の効果を支持しない。
【0100】
いくらかの実施形態において、本方法は、化合物が安全性の懸念、例えば腎臓または肝臓の安全性の懸念、またはT細胞に対する効果(例えば、限定されないが、T細胞機能の不全)を有するかどうかの指標としてのASS1の照合を含む。例えば、ASS1の分解の検出は、化合物が安全性の懸念に悩まされていることを示唆する可能性がある。
【0101】
いくらかの実施形態において、本方法は、副作用が少ないかない方法での疾患の処置に関する。例えば、処置方法は、実施形態において、副作用が少ないことを支持するASS1プロファイル(例えば、ASS1の切除されたリクルートメントおよび/または分解の低減)に基づいて治療用のCRBN結合化合物を選択することを含む。
【0102】
実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、および/または治療用化合物は、他のCRBN結合化合物と比べて化合物、試験化合物、候補化合物、および/または治療用化合物を受けた被験者における副作用の低減を示す。実施形態において、化合物、試験化合物、候補化合物、および/または治療用化合物は、サリドマイド、レナリドミド、およびポマリドミドの1つと比べて化合物、試験化合物、候補化合物、および/または治療用化合物を受けた被験者における副作用の低減を示す。
【0103】
実施形態において、副作用には、肝機能の低下または不全が含まれる、および/または腎機能の低下または不全が含まれる。実施形態において、副作用には、T細胞効果(例えば、限定されないがT細胞機能の不全)が含まれる。
【0104】
ASS1の分解の促進/ASS1依存性癌
ASS1は、肺癌、結腸癌、胃癌および卵巣癌を含む種々のヒトの癌において過剰発現している。Delage et al.(2010).Arginine deprivation and argininosuccinate synthetase expression in the treatment of cancer.Int.J.Cancer 126(12):2762-2772。例えば、近年、ASS1が原発性ヒト結腸直腸腫瘍においてアップレギュレートされた標的であり、ASS1の薬理学的阻害または遺伝的切除が、結腸直腸癌の病原性を損なうことが示されている。Bateman et al.(2017).Argininosuccinate Synthase 1 is a Metabolic Regulator of Colorectal Cancer Pathogenicity.ACS Chem Biol.12(4):905-911。したがって、結腸直腸癌の処置には、ASS1の阻害を含むことができる。
【0105】
理論に縛られることを望むことなく、ASS1は、オートファジーを調節することにより胃癌の浸潤および進行に寄与する。さらにASS1は、結腸直腸癌の病原性の代謝調節因子である。したがって、種々の実施形態において、本発明は、ASS1のリクルートメントおよび/または分解を促進する化合物の同定に関する。
【0106】
種々の実施形態において、本発明は、CRBNに結合する能力を有する試験化合物を得ること;ASS1の存在下で試験化合物をCRBNと接触させること;ASS1のリクルートメントおよび/または分解をアッセイすること;ならびにASS1の高いまたは増加したリクルートメントおよび/または分解が検出される場合に候補化合物として試験化合物を分類することにより、候補化合物を同定するための方法に関する。
【0107】
種々の実施形態において、本発明は、候補化合物を同定することおよび治療における使用のための候補組成物を製剤化することを含む、候補組成物を製造するための方法に関し、同定は、CRBNに結合する能力を有する試験化合物を得ること、ASS1の存在下で試験化合物をCRBNと接触させること、ASS1のリクルートメントおよび/または分解についてアッセイすること、ならびにASS1の高いまたは増加したリクルートメントおよび/または分解が検出される場合に候補化合物として試験化合物を分類することによる。
【0108】
実施形態において、ASS1の高いまたは増加したリクルートメントおよび/または分解は、試験化合物と接触されるCRBNの存在下で、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質がイカロス(IKZF1)、ヘリオス(IKZF2)、アイオロス(IKZF3)、イオス(IKZF4)、ペガサス(IKZF5)、CSNK1A、CK1a、およびZFP91から選択される場合、ASS1ではないCRBNの基質および/またはネオ基質のリクルートメントおよび/または分解に関連している。
【0109】
実施形態において、ASS1の高いまたは増加したリクルートメントおよび/または分解は、試験化合物がない参照試料中でのASS1のリクルートメントおよび/または分解の量に関連している。
【0110】
実施形態において、ASS1の高いまたは増加したリクルートメントおよび/または分解が検出される場合に同定された候補化合物は、例えば癌が例えば胃癌または結腸直腸癌など、ASS1に依存している癌を処置する際の使用に適している。
【0111】
実施例
実施例1:分子糊によるセレブロンに直接リクルートされた基質/ネオ基質としての組換えアルギニノコハク酸合成酵素1(ASS1)の発見
リガンド誘導CRBN基質、またはネオ基質を同定するために、MAPPIT細胞マイクロアレイスクリーンは、Lievens,et al.「Proteome-scale binary interactomics in human cells」.Molecular & Cellular Proteomics 15.12(2016):3624-3639に記載の手順を使用して実行された。従来のMAPPITアッセイは、タンパク質-タンパク質相互作用を監視するために使用されている。ベイトタンパク質(プロテインA)は、それ自体がエリスロポエチン(Epo)受容体の細胞外ドメインに融合しているレプチン受容体の操作された細胞内受容体ドメインに遺伝的に融合している融合タンパク質として発現される。EpoリガンドのEpoR成分への結合は、結果として、受容体関連細胞内JAK2の活性化となる。しかし、活性化されたJAK2は、通常は活性化されたJAK2によりリン酸化されたそのチロシン残基が突然変異されているので、STAT3結合およびそのリン酸化を誘発するためにレプチン受容体を活性化することができない。JAK2リン酸化可能なSTAT3ドッキン部位の再構成は、代わりにプロテインBのプロテインAとの相互作用を通じて作成され、それによって、プロテインBは、gp130受容体(現在、活性化されたJAK2キナーゼにより認識される適切なチロシン残基を保持する)の細胞質ドメインに融合される。したがって、プロテインAのプロテインBとの物理的相互作用は再構成し、EPOは、JAK2-STAT3シグナル伝達経路の活性化を誘発した。STAT3の活性化は、ルシフェラーゼをコードする遺伝子、またはGFPもしくはいくらかのその他の種類の蛍光タンパク質(EGFPなど)などの蛍光マーカーをコードする遺伝子を含むSTAT3反応性レポータ遺伝子の導入により監視することができる。このように、MAPPITアッセイは、無傷の細胞におけるそのような組換えタンパク質-タンパク質相互作用を評価するための用途の広いアッセイを提供する。プロテインB融合タンパク質(すなわち、プロテインB-gp130融合タンパク質)をコードするcDNAライブラリを、この方法を用いてスクリーニングし、プロテインAベイト(EpoR-LepR融合タンパク質に融合)と相互作用することができる任意のタンパク質を同定することができる。
【0112】
この実施例1において、我々は、CRBNリガンド誘導タンパク質相互作用を決定する際に使用する、すなわち、特異的CRBNベイトタンパク質(この系において突然変異レプチン受容体に融合された)を使用して、プロテインB融合タンパク質(プロテインB-gp130融合タンパク質)を含む、タンパク質複合体形成のリガンド依存性誘導についてアッセイするために我々が特別に開発したMAPPITアッセイの派生物を使用した。このように、我々は、リガンド依存性候補CRBNネオ基質についてcDNAライブラリをスクリーニングすることができた。このアッセイはまた、この文書における他の実施例(実施例5)におけるそのような相互作用(またはその欠如)の特徴づけにも使用されている。
【0113】
簡潔に、HEK293T細胞をCRBNベイト発現プラスミド(pSEL-CRBN)でトランスフェクトし、15K ORFをカバーするprey発現プラスミドコレクションを含むマイクロアレイスクリーニングプレートに加えた。トランスフェクションの24時間後、CRBNリガンドCC-220(10μM)の有無にかかわらず、細胞をエリスロポエチンで差次的に刺激し、レポータシグナル(GFP様蛍光レポータ)を48時間後に読み取った。蛍光強度データを以前報告されたように分析し、図1に示すドットプロットを作成した。上のランクのヒットは、イカロス(IKZF1)、既知のCC-220誘導CRBN基質を含んでいた。この研究において、示されるように、我々はまた、アルギニノコハク酸合成酵素1(ASS1)を新規CC220誘導CRBNネオ基質として同定した。ASS1はまた、レナリドミド、CRBNに結合する別のタイプのIMiD(周知の抗癌剤であるRevlimid(商標)として商業的に既知である)などの化合物でもこのように同定された。
【0114】
実施例2:分子糊によるセレブロンにリクルートされた基質/ネオ基質としての内因性アルギニノコハク酸合成酵素1(ASS1)の発見
この研究において、我々は、レナリドミドなどのIMiDが内因性ASS1のCRBNへのリクルートメントを誘導することができることを確認するために着手した。この目的のため、我々は、ViroTrap(Titeca,et al.「Analyzing trapped protein complexes by Virotrap and SFINX」.Nature Protocols 12.5(2017):881)として既知である以前説明された方法を使用した。この方法を用いて、CRBNは、ウイルスタンパク質HIV-GAGとの融合タンパク質として発現される。HIV-GAGは、HEK293などの細胞内で発現した場合、細胞から発芽するウイルス様粒子の形成を誘発することができる。粒子内で、HIV-GAGタンパク質は、粒子の中心に向けられている。CRBNに融合した場合、CRBNは、粒子の内部コアにも呈示される。そのイベントにおいて、GAG-CRBN融合体は、細胞内のタンパク質と相互作用し、そのようなタンパク質は、GAG-CRBNとともにウイルス様粒子に引き込まれる/捕捉される。このように、CRBNリガンドの存在下または不在下で、CRBNと相互作用する内因性タンパク質を同定することができる。これは、粒子の溶解および試料のトリプシン消化の標準の質量分析により達成される。その後、サブトラクティブ分析により、レナリドミドなどのCRBNリガンドに応答して粒子と特異的に会合するタンパク質が同定される。この方法を使用して、我々は、レナリドミドが内因性ASS1のCRBNとの会合を誘導すること、すなわち、ASS1トリプシン消化物が、レナリドミドに依存してウイルス粒子にリクルートされたタンパク質としてASS1を同定したことを発見した。要するに、HEK293T細胞をgag-CRBNベイト発現プラスミドおよびFlag-VSV-Gコードプラスミドで同時トランスフェクトし(細胞培地からの粒子精製のため)、24時間インキュベートした。次に、細胞を10μMレナリドミドまたは陰性対照としてのDMSOで処理した。化合物添加の24時間後、抗Flagがコートされた磁気ビーズを使用してウイルス様粒子(VLP)を細胞上清から単離した。Flagペプチドを使用してビーズから溶出させた後、精製されたVLPを溶解し、タンパク質内容物をトリプシンで一晩消化した。ペプチド試料をLC-MS/MSで分析し、MaxQuantソフトウェアパッケージを使用して3連の試料からのデータを処理し、Perseusツールを用いてボルケーノプロット(図2)を生成した。レナリドミド対DMSO対照試料について高いシグナル比を示し、低p値のトップヒットの中でASS1を同定した。
【0115】
実施例3:生細胞におけるリガンド誘導CRBN-ASS1相互作用-共免疫沈降分析による評価として
この研究において、我々は、タンパク質複合体の共免疫沈降を介して、HEK293細胞で発現した場合のASS1との相互作用を誘導するCRBNリガンドCC220の能力を評価した。実施例1および2における知見と一致して、この代替アプローチは、CC220がASS1のCRBN-CC220複合体へのリクルートメントを特異的に誘導することを示した。同様の観察は、陽性対照として並んでいる既知のCRBNネオ基質IKZF3についてもなされた。簡潔に、(i)FLAGタグ付きgp130-ASS1(実施例1におけるMAPPITアッセイで使用されたバージョン)、(ii)FLAGタグ付きASS1、または(iii)FLAGタグ付きIKZF3をコードするプラスミドを、HEK293T細胞においてHAタグ付き-CRBNと一時的に同時トランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞を異なる用量(0μM、1μM、および3μM)のCC-220でさらに24時間処理した。翌日、細胞を溶解し、溶解物の1/10をFLAGタグ付き融合タンパク質およびHAタグ付きCRBNの発現分析(図3Bに示す)のために保管した。抗FLAG Ab(シグマ)およびDynabeadsストレプトアビジンT1(インビトロジェン)を用いるCo-IPは、溶解物の残りの9/10で実行された(図3A)。免疫沈降後、結合したFLAGタンパク質、および任意の会合したタンパク質をFLAGペプチド(シグマ)を用いる溶出によりビーズから溶出させた。HA-CRBNの存在(図3A、上パネル)、すなわちFLAG-ASS1免疫沈降物へのそのリクルートメントを、抗HA Ab(ロシュ)を使用する溶出試料のSDS-PAGEおよびウェスタンブロット分析を介して調査した。FLAG Ab(シグマ)を使用して、それぞれFLAGタグ付きASS1を検出した(図3A、下パネル)。細胞溶解物中のすべてのタンパク質の発現を、図3Bに示すように、抗FLAGおよび抗HA Ab(シグマまたはロシュ、それぞれ)を用いる発現溶解物のSDS-PAGEおよびウェスタンブロット分析を介して調査した。
【0116】
実施例4:ASS1のCRBNへのリガンド誘導リクルートメントは、生細胞におけるASS1の分解と関連している。
この研究において、我々は、ASS1のCRBNへのCC-220 CRBNリガンド誘導リクルートメントが、その後のASS1分解(CRBN E3リガーゼとの相互反応により誘発される)をもたらすことができるかどうかを調べた。この分析のため、細胞をFLAGタグ付きASS1およびHAタグ付きCRBNコードコンストラクトでトランスフェクトし、指定された時間のCC220との細胞のインキュベーションに応答したASS1の定常状態レベルにおける任意の変化を、ウェスタンブロット分析により評価した。研究により、ASS1のASS1定常状態レベルがCC220に応答して用量応答的様式で確かに減少し、ASS1のCRBNへのリガンド誘導リクルートメントがASS1タンパク質分解を誘発することを確認することが示される。簡潔に、FLAG-ASS1およびHA-CRBNをコードするプラスミドをHEK293T細胞に同時トランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞を未処理のまま放置するか、異なる用量(0.3μM、1μM、3μM、10μMまたは30μM)のCC-220でさらに24時間処理した。次に、細胞を溶解し、溶解物の画分を、抗FLAG抗体(シグマ)を用いるSDS-PAGEおよびウェスタンブロット分析を介して分析した。ローディング対照として、抗アクチン抗体(シグマ)を用いてウェスタンブロット分析を実行した。
【0117】
実施例5:CRBNに結合するが、レナリドミド/LENおよびCC220、または他のCRBNリガンドなどの既知のCRBN IMiDリガンドと比較してCRBNネオ基質ASS1を効果的にリクルートしない化合物の発見および特徴づけ
この研究において、我々は、CRBNに結合する一連の化合物、およびASS1ネオ基質を差次的にリクルートするそれらの能力について比較研究を実行した。我々は、レナリドミドおよびCC220などの既知のIMiD(実施例1~4を参照されたい)がすべて、ASS1のCRBNへのリクルートメントを誘導すること、ならびにこれが細胞におけるASS1の分解と関連していること(実施例4)を我々の研究で認めた。ASS1が重要な細胞タンパク質であり、その発現の喪失が、免疫系のT細胞などの細胞代謝および生存における欠陥に関連していることが示されていることを考慮すると、我々は、CRBNを結合するが、ASS1をリクルートしない化合物を同定および特徴づけることが可能であったかどうかについて疑問を提示した。要約すると、この研究は、我々がレナリドミドのCRBNへの結合について競合するCRBNバインダが細胞内で強力な(レナリドミドと同等またはさらに強力な)CRBNのバインダであるが、レナリドミドとは対照的にASS1のリクルートメントを誘導しないことを確かに発見することができたことを示す。これは、ASS1リクルートメントの傾向性を回避するCRBNリガンドの開発における差次的なスクリーニングおよび特徴づけの機会を強調する。研究の詳細を図5A図5Lに示し、その中で、我々は、a)細胞内でのCRBNへの結合、b)ASS1またはIKZF1のCRBNへのリクルートメントの誘導における化合物の潜在力を認定する。
【0118】
CRBN結合は、実施例1に記載のMAPPIT様アッセイを用いて-細胞内でのCRBNへの結合についてレナリドミドハイブリッドリガンドと競合する試験化合物の能力を決定することにより評価された。HEK293T細胞を、10%ウシ胎児血清を添加したダルベッコ改変イーグル培地で培養し、37℃、8%COでインキュベートした。突然変異したレプチン受容体の細胞質ドメインのテールに融合した大腸菌ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)をコードするプラスミド(pCLG-eDHFR)、gp130細胞質ドメインに融合したCRBN preyをコードするプラスミド(pMG1-CRBN)またはDHFR融合タンパク質のレプチン受容体と直接相互作用することができるREM対照preyをコードするプラスミド(pMG1-REM2)、ならびにSTAT3反応性pXP2d2-rPAPI-ルシフェラーゼレポータプラスミドで、記載されるように(Lievens,et al.「Array MAPPIT:high-throughput interactome analysis in mammalian cells」.Journal of Proteome Research 8.2(2009):877-886)標準トランスフェクション法を使用して、細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞をレプチンで処理してレプチン受容体融合タンパク質を活性化し、示された用量の試験化合物がない、または含む状態で、300nMトリメトプリム-レナリドミド融合化合物(ハイブリッドリガンド、トリメトプリムは、DHFRと相互作用し、レナリドミドはCRBNと相互作用する)を添加した。DHFR-トリメトプリム-レナリドミド-CRBNを含む三元複合体の形成により誘導されるルシフェラーゼ活性およびその結果として生じるSTAT3シグナル伝達の活性化を、Ensightプレートリーダー(パーキンエルマーライフサイエンス、ウォルサム、MA)を用いるルシフェラーゼアッセイシステムキット(プロメガ、マジソン、WI)を使用して化合物処理の24時間後に測定した。図5A図5Cのデータポイントは、レプチン(CTRL)またはレプチン+ハイブリッドリガンド(CRBN)のみで処理された試料と比べて、REM2対照(CTRL)のためのレプチン+試験化合物で処理された細胞またはレプチン+ハイブリッドリガンド+試験化合物(CRBN)で処理された細胞に由来する3連の試料の平均ルシフェラーゼ活性を表す(両方の場合について、添加された試験化合物がない状態で得られたシグナルをy軸でのルシフェラーゼ活性の100%に設定する)。エラーバーは、標準偏差を表す。GRAPHPAD PRISMソフトウェアにおける4パラメータ非線形回帰を使用して曲線をフィットさせた。図5A図5Cに示すように、レナリドミドおよびCC220などの既知のIMiD化合物は、用量依存的様式でハイブリッドリガンド誘導ルシフェラーゼレポータ活性化を特異的に阻害する。これは、CRBNへの結合についての効果的な競合およびCRBNへのハイブリッドリガンドの結合の防止(したがって、アッセイシグナルの阻害)を反映する。
【0119】
図5D図5Gおよび図5H図5Lは、図5A図5Cにおいて特徴づけられた任意の試験化合物が、細胞内でCRBNに効果的に結合するか、分子糊として作用するか、およびASS1またはIKZFのCRBNへのリクルートメントを誘導するかの疑問に対処する。この分析のため、HEK293T細胞を、10%ウシ胎児血清を添加したダルベッコ改変イーグル培地で培養し、37℃、8%COでインキュベートした。それ自体がエリスロポエチン(EPO)受容体の細胞外ドメインに融合しているレプチン受容体の細胞質ドメインに融合したCRBNベイトをコードするプラスミド(pSEL-CRBN)で細胞をトランスフェクトした。細胞外EPO受容体ドメインは、受容体/受容体関連JAK2活性化(それぞれEPOまたはレプチンを用いる)を促進するために、(図5A図5Cにおいて使用されるように)細胞外レプチン受容体ドメインと交換可能に使用することができる。加えて、gp130細胞質ドメインに融合したIKZF1(アイソフォーム7)をコードするプラスミド(pMG1-IKZF1(iso7))またはgp130の細胞質ドメインに融合したASS1をコードするプラスミド(pMG1-ASS1)、およびSTAT3反応性ルシフェラーゼコードレポータプラスミド(pXP2d2-rPAPI-ルシフェラーゼレポータプラスミド)で、記載されるように(Lievens,et al.「Array MAPPIT:high-throughput interactome analysis in mammalian cells」.Journal of Proteome Research 8.2(2009):877-886)細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、示された用量の試験化合物がない、または含む状態で、細胞をエリスロポエチン(EPO)で処理した。ルシフェラーゼ活性を、Ensightプレートリーダー(パーキンエルマーライフサイエンス、ウォルサム、MA)を用いるルシフェラーゼアッセイシステムキット(プロメガ、マジソン、WI)を使用して化合物処理の24時間後に測定した。データポイントは、EPO+試験化合物処理細胞対EPOのみの処理細胞からの3連の試料の平均ルシフェラーゼ活性の誘導倍率を示す。エラーバーは、標準偏差を表す。GRAPHPAD PRISMソフトウェアにおける4パラメータ非線形回帰を使用して曲線をフィットさせた。図5D図5Gおよび図5H図5Lの両方に示すように、我々は、CRBNに効果的に結合するにもかかわらず、レナリドミドおよびCC220を含む既知のIMiDと比較してASS1のリクルートメントを誘導しなかった化合物を同定することができた。
【0120】
表1は、図5A図5Lの結果を要約する。図5A図5C(用量応答曲線)における競合分析に由来するIC50として計算されたCRBNに結合する化合物の効力/有効性が示される。また、IKZF1またはASS1リクルートメント試験の場合のいずれかの任意の用量で達成された最大ルシフェラーゼレポータ誘導も示される。LENと同程度に強力なCRBNバインダである化合物「v」および「vi」は、ASS1(またはIKZF1)標的を30マイクロモル濃度の高濃度でリクルートしない。示されるように、リクルートメントの異なるパターンを観察することができ、ASS1リクルートメントの不足は、ダイヤルアウトされた標的リクルートメントの傾向性(すなわち、ASS1リクルートメント)を有する化合物の進化のための競合分析において選択的に監視された。
【0121】
【表1】
【0122】
実施例6:DDB1 MAPPIT受容体融合コンストラクトを使用する化合物誘導CRBN-ASS1相互作用の検出
未融合バージョンのCRBNベイトを使用する化合物誘導CRBN-基質相互作用を試験することが有利な場合があるので、我々は、DDB1をCRBNよりもMAPPITキメラ受容体コンストラクトに融合するMAPPIT派生アッセイを開発した。DDB1は、CRBNをコアE3ユビキチンリガーゼ複合体足場サブユニットCUL4AまたはCUL4B(カリン4Aまたはカリン4B)に接続するアダプタータンパク質である。EPO受容体細胞外ドメインを含むMAPPIT受容体融合体に係留したDDB1をコードするプラスミド(pSEL-DDB1)、部分gp130ドメインに融合したCRBN基質タンパク質(IKZF1アイソフォーム7またはASS1)をコードするプラスミドおよびSTAT3反応性ルシフェラーゼコードレポータプラスミド(pXP2d2-rPAPI-ルシフェラーゼレポータプラスミド)で、記載されるように(Lievens,et al.「Array MAPPIT:high-throughput interactome analysis in mammalian cells」.Journal of Proteome Research 8.2(2009):877-886)HEK293T細胞をトランスフェクトした。加えて、細胞はまた、異なる量の未融合CRBN発現コンストラクトで同時トランスフェクトされた。トランスフェクションの24時間後、示された用量のレナリドミド(LEN)がない、または含む状態で、細胞をEPOで処理した。ルシフェラーゼ活性を、Ensightプレートリーダー(パーキンエルマーライフサイエンス、ウォルサム、MA)を用いるルシフェラーゼアッセイシステムキット(プロメガ、マジソン、WI)を使用して化合物処理の24時間後に測定した。データポイントは、EPO+試験化合物処理細胞対EPOのみの処理細胞からの3連の試料の平均ルシフェラーゼ活性の誘導倍率を示す。エラーバーは、標準偏差を表す。図6に示すように、強力なレナリドミド依存性MAPPITシグナルは、IKZF1およびASS1の相互作用の両方で得られるが、同時発現させた未融合CRBNの存在下でのみ、シグナルが基質gp130融合タンパク質のCRBNへの結合により媒介されることを示す。
【0123】
等価物
本発明がその特定の実施形態に関連して説明されているが、さらなる修正が可能であり、本出願が、一般に、本発明の原理に従い、本発明が関係する当技術分野の中で既知であるか慣習的な実行の範囲内にあるような本開示からのそのような逸脱を含む、本発明の任意の変形、使用、または適合をカバーすることを意図しており、添付の特許請求の範囲に記載され、その範囲において、前述された本質的な特徴に適用することができることが理解されるであろう。
【0124】
当業者は、日常的な実験だけを使用して、本明細書に具体的に記載された特定の実施形態に対して多数の等価物を認識する、または確認することができるであろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲の範囲内に含まれることを意図している。
【0125】
参照による組み込み
本明細書に参照されたすべての特許および刊行物は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0126】
本明細書で議論された刊行物は、本出願の出願日の前にそれらの開示のためだけに提供されている。本明細書のいかなるものも、本発明が先行発明の理由によりそのような刊行物に先行する権利を与えないことを認めるものと解釈されるべきではない。
【0127】
本明細書で使用されるように、すべての見出しは、単に組織化のためであり、いかなる方法でも本開示を制限することを意図するものではない。あらゆる個々のセクションの内容は、すべてのセクションに等しく適用可能である可能性がある。
図1
図2
図3A-B】
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図5I
図5J
図5K
図5L
図6
【国際調査報告】