(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-21
(54)【発明の名称】電鋳方法
(51)【国際特許分類】
C25D 1/00 20060101AFI20230214BHJP
C25D 1/20 20060101ALI20230214BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20230214BHJP
G03F 7/40 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
C25D1/00 381
C25D1/20
H01L21/92 604B
G03F7/40 521
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537159
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-12
(86)【国際出願番号】 NL2020050804
(87)【国際公開番号】W WO2021125959
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516380016
【氏名又は名称】ヴェコ・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・ヘルマン・ラウレンス・フーベルト・クスタース
(72)【発明者】
【氏名】ヨリス・アントニウス・ヴィルヘルムス・ミュンニングホフ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・ヒルデンブランド
(72)【発明者】
【氏名】ロイ・ヘラルドゥス・ヨハネス・ヨーゼフ・アルベルツ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・ヘンドリクス・マリア・ベレンショット
(72)【発明者】
【氏名】ハルム・ヘリット・クノル
【テーマコード(参考)】
2H196
【Fターム(参考)】
2H196AA30
2H196HA27
2H196JA01
(57)【要約】
金属構造体、特に隣接する外層から先端が突出している構造体を電鋳する方法。この方法は、第1の層を基板上に堆積し、続いて、前記基板に面する基板表面を有する中間構造体を形成するために、1つ又は複数の次の層を前記第1の層と部分的に重ねる段階と、次の段階として、前記中間構造体を前記基板から除去し、1つ又は複数のさらなる層を前記中間構造体の前記基板表面上に堆積する段階と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の層を基板上に堆積し、続いて、前記基板に面する基板表面を有する中間構造体を形成するために、1つ又は複数の次の層を前記第1の層と部分的に重ねる段階と、
次の段階として、前記中間構造体を前記基板から除去し、1つ又は複数のさらなる層を前記中間構造体の前記基板表面上に堆積する段階と、
を含む、金属構造体を電鋳する方法。
【請求項2】
前記中間構造体が前記基板から除去される前に、犠牲材料の層が前記中間構造上に形成され、最終段階において、前記犠牲材料の層が除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記犠牲材料の層が選択的エッチングによって除去される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記犠牲材料が銅である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記基板が、少なくとも前記第1の層の輪郭を画定する、フォトレジストなどの非導電性コーティングのパターンを有するマンドレルである、請求項1から4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の層が、それぞれの前記非導電性コーティングパターンを超えて成長しない、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記重なり合う層を形成する前に、前記非導電性コーティングが少なくとも部分的に除去され、新しい非導電性コーティングパターンが前記重なり合う層を閉じ込めるために付けられる、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の層が、前記重なり合う層とは異なる材料である、請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の層が、ロジウム又はロジウム合金である、請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記層の少なくとも一部が、ニッケル、又は、ニッケルコバルト合金などのニッケル合金である、請求項1から9の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属構造体を形成するための電鋳方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電鋳は、取り外し可能な基板上に1つ又は複数の金属層の生成物を形成するための電鋳方法である。基板は、カソードと電気的に接触している電解槽に配置される。アノードでは、堆積される金属のイオンが電解質に溶解する。これらのイオンは基板に流れ、そこで電子が補充され、中性金属分子の層として基板表面に堆積する。金属生成物が所望の厚さになると、それは基板から除去される。
【0003】
典型的には、非導電性コーティングのパターンが、電鋳される構造体の幾何学的輪郭を画定する基板の部分に付けられる。このような非導電性コーティングは、通常、UV感受性フォトレジストコーティング材料を使用するフォトリソグラフィープロセスによって基板上に付けられる。フォトレジストは、例えば、スピンコーティングによって付けられ、均一な厚さの非常に滑らかな層を得ることができる。フォトレジストの部分は、例えば、レーザー直接イメージング(LDI)を使用することによって、又は、フォトマスクを使用することによって、UV光に選択的に露光される。フォトレジストがポジ型フォトレジストの場合、露光された部分が除去される。フォトレジストがネガ型フォトレジストの場合、露光されていない部分が除去される。フォトレジストのパターン化されたコーティングは、基板上に残る。フォトレジストパターンを備えた導電性基板は、マンドレルを形成する。電鋳は、フォトレジストパターンでシールドされていない基板のセクションでのみ行われる。
【0004】
米国特許出願公開第2005/0253606号明細書には、千鳥状の層及び凹部を有する複雑な多層構造体を形成するための電着方法が開示されている。次の層を付ける前に、各層を平坦化する必要がある。
【0005】
蘭国特許発明第1031259号明細書には、基板上に金属層を形成すること、及び、基板の除去後に構造体を支持する犠牲層を形成することを含む電鋳方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0253606号明細書
【特許文献2】蘭国特許発明第1031259号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、より広い範囲の金属製品、特に1つ又は複数の内層が外層から突出している製品に使用できる電鋳方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、
-第1の層を基板上に堆積し、続いて、基板に面する基板表面を有する中間構造体を形成するために、1つ又は複数の次の層を第1の層と部分的に重ねる段階と、
-次の段階として、中間構造体を基板から除去し、1つ又は複数のさらなる層を中間構造体の基板表面上に堆積する段階と、
を含む、金属構造体を電鋳する方法によって達成される。
【0009】
基板を除去した後、中間構造体の覆われていない表面は、それが作られた基板と同じくらい平らになる。したがって、最初に平坦化する必要なしに、中間構造体のこちら側にさらなる層を付けることができる。
【0010】
第1の層自体は、1つ又は複数の層を含むことができる。また、部分的に重なり合う層は、1つ又は複数の層を含むことができる。層は電着によって形成することができる。
【0011】
次の層が部分的に重なっているため、第1の層は、この次の層に対して突出する。特定の実施形態では、第1の層はまた、中間構造体の基板表面上の1つ又は複数の層に対して突出する。このようにして、第1の層は、両側の外層から突出し、例えば先端を形成する。第1の層の両側の層は、対称又は非対称であり得る。
【0012】
任意に、犠牲材料の層は、中間構造体が基板から除去される前に、中間構造体上に形成される。最終ステップにおいて、犠牲材料の層は、例えば選択的エッチングによって除去することができる。適切な犠牲材料には、例えば、銅、銀、又はポリマー材料が含まれる。犠牲材料の本体は、補助基板を形成し、中間構造体の基板側にさらなる層が付けられるときに、基板の除去後に中間構造体を支持する。基板側は、基板を除去の前に基板と直接接触する中間構造体の側である。
【0013】
特定の実施形態において、基板は、フォトレジストパターンなどの非導電性コーティングパターンを備えたマンドレルであり、少なくとも第1の層の輪郭を画定する。電着を使用すると、それぞれのフォトレジストを大きくし過ぎることなく、第1の層を非常に正確に堆積させることができる。
【0014】
重なり合う層を形成する前に、フォトレジストを少なくとも部分的に除去することができるので、新しいフォトレジストパターンを付けて、重なり合う層を閉じ込めることができる。任意に、完全なフォトレジストコーティングは、完全に除去して、所望のパターンの新しいフォトレジストコーティングと交換することができる。
【0015】
任意に、第1の層は、重なり合う層及び/又は反対側に堆積された層とは異なる材料のものであり得る。これは、ニッケル又はニッケル合金などの第1の材料の多層体と、ロジウムなどの第2の材料の突出した先端とを有する構造体を作製するのに特に適している。このような構造体は、例えば、ウェハ上の半導体を試験するためのプローブカードの試験プローブとして使用することができる。
【0016】
特定の実施形態では、この方法は、例えば、先端を備えた構造体を製造するための以下のステップを含み得る:
-第1の層を電鋳した後、第1の層を新しい非導電性コーティング、例えば、フォトレジストで覆う;
-次のステップでは、非導電性コーティングの一部を除去して、第1の層の片側に隣接する基板の一部を露出させる;
-次のステップでは、第2の層が基板表面の露出部分に電鋳される;
-次のステップでは、第1の層の上部の非導電性コーティングの一部が除去され、第3の層が第2層の露出部分の上部と第1の層の隣接部分の上部に電鋳される;
-次のステップでは、非導電性コーティングの残りの部分が除去され、犠牲材料の本体が第1の層と第3の層の上に付けられる;
-次のステップでは、基板を除去して中間構造体の基板側を露出させる;
-次のステップでは、第3の層から突出する第1の層の部分を覆い、第1の層に隣接する犠牲層の覆われていない部分を覆う、さらなる非導電性コーティングが付けられる;
-次のステップでは、非導電性コーティングが存在しない場所に、さらなる層が電鋳される;
-次のステップでは、非導電性コーティング及び犠牲材料が除去される。
【0017】
電鋳用の基板は、完成した電鋳構造体のその後の分離を可能にするために導電性材料、例えば不動態化された金属で作られる。非導電性基板は、例えば、ガラス、シリコン又はプラスチックポリマー材料で作ることができ、電着の前に導電層の堆積を必要とする。
【0018】
犠牲材料は、最終構造体の材料に影響を与えることなく選択的エッチングを可能にする任意の材料であり得る。適切な犠牲材料には、例えば、銅、銀又はポリマー材料が含まれる。
【0019】
非導電性コーティングは、典型的には、フォトレジスト材料、例えば、ポジティブまたはネガティブフォトレジストであるが、必要に応じて、他のタイプの非導電性コーティングも使用することができる。本発明によるプロセスは、非常に正確かつ信頼できる方法で、任意のスケールで、また非常に小さいスケール、例えばマイクロメートルスケールで、突出する内層を有する多層金属構造体を製造することを可能にする。
【0020】
フォトレジスト層の厚さは、例えば、10から100マイクロメートルの範囲であり得るが、必要に応じて、この範囲外であってもよい。
【0021】
電鋳層の厚さは、例えば、層あたり10から100マイクロメートルの範囲であり得るが、必要に応じて、この範囲外であってもよい。
【0022】
適切な金属の例には、とりわけ、ニッケル、ニッケル-パラジウム合金などのニッケル合金、クロム、ロジウム、銅又は銅合金などが含まれる。
【0023】
ニッケルに適した電気めっき浴の例には、すなわち、ワット浴(NiSO4)、スルファミン酸浴が含まれ、銅に適した電気めっき浴の例には、硫酸銅浴が含まれる。
【0024】
本発明は、本発明によるプロセスの例示的な実施形態の連続するステップを示す添付の図面、
図1A~Nを参照してさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1A】本発明によるプロセスの例示的な実施形態の連続するステップを示す。
【
図1B】本発明によるプロセスの例示的な実施形態の連続するステップを示す。
【
図1C】本発明によるプロセスの例示的な実施形態の連続するステップを示す。
【
図1D】本発明によるプロセスの例示的な実施形態の連続するステップを示す。
【
図1E】本発明によるプロセスの例示的な実施形態の連続するステップを示す。
【
図1F】本発明によるプロセスの例示的な実施形態の連続するステップを示す。
【
図1G】本発明によるプロセスの例示的な実施形態の連続するステップを示す。
【
図1H】本発明によるプロセスの例示的な実施形態の連続するステップを示す。
【
図1I】本発明によるプロセスの例示的な実施形態の連続するステップを示す。
【
図1J】本発明によるプロセスの例示的な実施形態の連続するステップを示す。
【
図1K】本発明によるプロセスの例示的な実施形態の連続するステップを示す。
【
図1L】本発明によるプロセスの例示的な実施形態の連続するステップを示す。
【
図1M】本発明によるプロセスの例示的な実施形態の連続するステップを示す。
【
図1N】本発明によるプロセスの例示的な実施形態の連続するステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1Aは、フォトレジスト3の非導電性コーティングで部分的に覆われた基板2を示している。フォトレジスト3は、例えば、スピンコーティングによって塗布されて、均一な厚さのUV感受性コーティングを形成する。フォトレジスト3の一部は、例えば、レーザー直接イメージングによって、UV光への選択的曝露後に除去される。結果として、基板1の上面2は、
図1Aに示されるように、フォトレジストでコーティングされた導電性の裸のセクション4及び非導電性のセクション3を有する。
【0027】
次に、マンドレル1を電解浴に入れ、電気伝導的にカソードに接続する。ロジウムカチオンを供給することにより、ロジウム層7がマンドレル1の導電性セクション4に堆積される(
図1B)。ロジウム層7の厚さは、フォトレジスト3の厚さを超えない。
【0028】
次に、マンドレル1が電解槽から取り出され、第1のフォトレジスト3及びロジウム層7を覆う第2のフォトレジスト層8でスピンコーティングされる。あるいは、第1のフォトレジストを除去して、新しい第2のフォトレジストで完全に置き換えることができる。第2のフォトレジスト8の一部は、硬化のためにUVに選択的に曝され、未硬化の部分は洗い流される。
図1Dでは、ロジウム層7に直接隣接する第1及び第2のフォトレジスト層が除去され、基板2の一部は覆われていない(
図1D)。
【0029】
次に、マンドレル1は、第2の電解浴に配置され、カソードに接続され、アノードは、ニッケルカチオンを放出するように構成される。ニッケル層9は、マンドレルの上面2の覆われていない導電性セクションに堆積される。ニッケル層9は、ロジウム層7と同じ厚さである(
図1E)。
【0030】
次のステップでは、マンドレル1を電解槽から取り外し、ニッケル層9に隣接するロジウム層7の上にあるフォトレジスト8の一部を除去できるようにする(
図1F)。次に、マンドレル1を同じ電解浴に戻し、ロジウム層7の覆われていない部分及び第1のニッケル層9の上にさらにニッケル層10を電鋳する(
図1G)。得られた中間構造体は、ニッケル体から突出したロジウム先端を持っている。その後、残りのフォトレジストが除去される(
図1H)。
【0031】
次に、犠牲材料の層11(この場合は銅)を付けて、マンドレル1全体と、ニッケル及びロジウムの層7、10を覆う(
図1I)。銅は、電鋳又は他の適切な堆積プロセスによって付けることができる。銅層の厚さは、マンドレル1の厚さとほぼ同じであるが、必要に応じてさらに厚くすることもできる。
【0032】
銅、ニッケル及びロジウムの層7、10、11は、マンドレル1から共同で除去される(
図1J)。ロジウム層のマンドレル側12、すなわち、マンドレルが除去される前にマンドレルに面している側が、ここでは覆われていない。この側面12は、マンドレル表面2と同じくらい平坦であり、従って、平坦化ステップを必要とすることなく、さらなる層を電鋳するのに非常に適した基板である。
【0033】
新しいフォトレジスト層13が、ロジウム層7の突出部分の上に付けられ、硬化される(
図1K)。ニッケル層10と同様に、ロジウム層7の残りの部分は覆われていないままである。
【0034】
次に、この構造体は第2の電解槽に戻され、再びカソードに接続される。ニッケルのさらなる層14が、ロジウム層7の覆われていない部分及びニッケル部分10の隣接する表面上に堆積される(
図1L)。
【0035】
最後のフォトレジスト13及び銅11は、ここで、例えば選択的エッチングによって除去することができる。残りの最終構造体15は、一端が突出したロジウム先端を挟むニッケル本体16を含む。代替の実施形態では、ロジウム先端に沿った層は、異なる材料、例えば、ニッケル又はニッケル合金の層によって挟まれた銅であり得る。
【符号の説明】
【0036】
1 基板
2 上面
3 フォトレジスト
4 導電性セクション
7 ロジウム層
8 フォトレジスト層
9 ニッケル層
10 ニッケル層
11 犠牲材料層
12 マンドレル側
13 フォトレジスト層
14 ニッケル層
15 最終構造体
16 ニッケル本体
【国際調査報告】