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▶ ウニヴェルジテート レーゲンスブルクの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-21
(54)【発明の名称】ウイルス模倣性ナノ粒子
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/14 20060101AFI20230214BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230214BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230214BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20230214BHJP
   A61K 31/4418 20060101ALI20230214BHJP
   A61K 31/197 20060101ALI20230214BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230214BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230214BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230214BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230214BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230214BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230214BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230214BHJP
   C07D 403/10 20060101ALN20230214BHJP
   C07D 235/20 20060101ALN20230214BHJP
   C07D 213/64 20060101ALN20230214BHJP
   C07K 17/08 20060101ALN20230214BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20230214BHJP
【FI】
A61K9/14
A61K47/10 ZNM
A61K47/34 ZNA
A61K47/42
A61K31/4418
A61K31/197
A61P13/12
A61P43/00 111
A61P27/02
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P35/00
A61K47/22
C07D403/10
C07D235/20
C07D213/64
C07K17/08
C07K14/47
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537512
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(85)【翻訳文提出日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2020085363
(87)【国際公開番号】W WO2021130022
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】19219424.9
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PLURONIC
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】521129303
【氏名又は名称】ウニヴェルジテート レーゲンスブルク
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【弁理士】
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マルサンカ-フィゲロア, サラ
(72)【発明者】
【氏名】フライシュマン, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ゲプフェリヒ, アヒム
【テーマコード(参考)】
4C055
4C063
4C076
4C086
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C055AA06
4C055BA02
4C055BA42
4C055CA02
4C055CA06
4C055DA01
4C063AA01
4C063BB06
4C063CC47
4C063DD25
4C063EE01
4C076AA30
4C076AA95
4C076CC07
4C076CC10
4C076CC17
4C076CC27
4C076CC29
4C076CC41
4C076DD21
4C076DD21M
4C076DD21N
4C076DD63
4C076DD63M
4C076DD63N
4C076DD70
4C076DD70M
4C076DD70N
4C076EE23
4C076EE23M
4C076EE23N
4C076EE24
4C076EE24M
4C076EE24N
4C076EE30
4C076EE30M
4C076EE30N
4C076EE41
4C076EE41M
4C076EE41N
4C076EE59
4C076FF31
4C076FF34
4C076GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086BC39
4C086BC62
4C086GA07
4C086MA03
4C086MA05
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4C086NA12
4C086NA13
4C086ZA33
4C086ZA81
4C086ZA96
4C086ZB15
4C086ZB26
4C086ZC41
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA44
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA63
4C206NA11
4C206NA12
4C206NA13
4C206ZA33
4C206ZA81
4C206ZA96
4C206ZB15
4C206ZB26
4C206ZC41
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA40
4H045BA50
4H045BA62
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA86
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA80
(57)【要約】
本発明は、ナノ材料ならびにナノ粒子に係留された少なくとも第1のリガンドおよび第2のリガンドを含むナノ粒子に関する。本発明は、医薬または診断剤としての使用のためのナノ粒子にさらに関する。本発明は、糖尿病性腎症、糸球体腎炎、糸球体VEGF A調節不全、内皮VEGF A調節不全、糖尿病性網膜症、関節リウマチ、加齢性黄斑変性、および乳がんなどのがんから選択される疾患を予防または処置する方法における使用のためのナノ粒子にも関する。さらに、本発明は、ナノ粒子を調製する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ材料ならびに少なくとも第1のリガンドおよび第2のリガンドを含むナノ粒子であって、
- 前記第1のリガンドが、標的細胞への前記ナノ粒子の付着を媒介することが可能であり、
- 前記第2のリガンドが、前記標的細胞中への前記ナノ粒子の内在化を媒介することが可能であり、
- 好ましくは、前記ナノ材料が、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、オキサゾリン由来ポリマー、ポリ(アミノ酸)、多糖、リン脂質、スフィンゴ脂質、コレステロール、PEG-脂質、ブロックコポリマー、例えば、PEG-PLAまたはPEG-ポリ-カプロラクトン、無機物質、例えば、金またはqdot材料、およびそれらの組合せのいずれかを含む、
ナノ粒子。
【請求項2】
前記第1のリガンドが、GPCR、例えば、アンジオテンシンII受容体1型(AT1r)、ヒト神経ペプチドY1受容体およびC-X-Cケモカイン受容体4型に結合する非アゴニスト性薬剤、ならびに/または標的細胞表面上の糖タンパク質および/もしくは糖脂質、例えば、ヘパラン硫酸、シアロ糖タンパク質、ガングリオシドおよびマンノース受容体に結合する薬剤であり、好ましくは、EXP3174またはテルミサルタンである、請求項1に記載のナノ粒子。
【請求項3】
前記第2のリガンドが、i)好ましくは、RGD、配列番号1の配列を有する環状RGD-ペプチド、およびそれらの誘導体から選択される、インテグリン、例えば、αVβ3インテグリンまたはαVβ5インテグリンに結合する薬剤、ii)GPCR、例えば、AT1rに結合するアゴニスト性薬剤、好ましくは、活性化されたアンジオテンシン-II、iii)エクト酵素、例えば、レグマイン、膜型マトリックスメタロプロテイナーゼおよびアンジオテンシン変換酵素(ACE)に結合する薬剤、好ましくは、アンジオテンシン-I、ならびに/またはiv)トランスフェリン受容体に結合する薬剤、のいずれかである、請求項1または2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
治療剤、好ましくは、ピルフェニドンおよびシナシグアトのいずれかをさらに含む、前述の請求項のいずれかに記載のナノ粒子。
【請求項5】
前記第1のリガンドおよび前記第2のリガンドが各々、前記ナノ材料にカップリングされ、好ましくは、各々が前記ナノ材料のブロックコポリマー鎖にカップリングされる、前述の請求項のいずれかに記載のナノ粒子。
【請求項6】
前記ナノ材料が、1つよりも多くのブロックコポリマー鎖を含み、前記第1のリガンドが、前記ナノ材料の第1のブロックコポリマー鎖にカップリングされ、前記第2のリガンドが、前記ナノ材料の第2のブロックコポリマー鎖にカップリングされ、前記第1のブロックコポリマー鎖が、前記第2のブロックコポリマー鎖よりも長く、好ましくは、前記第2のブロックコポリマー鎖の少なくとも1.5倍の長さであり、より好ましくは、前記第2のブロックコポリマー鎖の少なくとも3倍の長さである、前述の請求項のいずれかに記載のナノ粒子。
【請求項7】
前記第1のブロックコポリマー鎖が、1k~20k、好ましくは1k~10kの範囲のPEGを含み、および/または5k~40k、好ましくは10k~20kの範囲のPLAを含み、必要に応じて、前記第1のブロックコポリマー鎖がPEG5k-PLA10kであり、前記第2のブロックコポリマー鎖がPEG2k-PLA10kである、請求項6に記載のナノ粒子。
【請求項8】
前記第2のリガンドが、前記標的細胞中への前記ナノ粒子の前記内在化の前に酵素的に活性化される、前述の請求項のいずれかに記載のナノ粒子。
【請求項9】
前記標的細胞が、メサンギウム細胞、内皮細胞、例えば網膜内皮細胞、B細胞、T細胞、マクロファージ、樹状細胞および腫瘍細胞から選択される、前述の請求項のいずれかに記載のナノ粒子。
【請求項10】
5nm~1000nmの、好ましくは、10nm~150nmの、より好ましくは、20nm~100nmのサイズを有する、前述の請求項のいずれかに記載のナノ粒子。
【請求項11】
前記第1のリガンドの前記第2のリガンドに対する比が、2:1~1:2の範囲であり、好ましくは1:1である、前述の請求項のいずれかに記載のナノ粒子。
【請求項12】
1pM~100nM、好ましくは50pM~1nMの、標的化された受容体に対する粒子アビディティを有する、前述の請求項のいずれかに記載のナノ粒子。
【請求項13】
前記ナノ材料が、PEGを含み、前記ナノ粒子が、少なくとも5%の、好ましくは、少なくとも15%の、より好ましくは、少なくとも25%のリガンド/PEGのリガンド密度を有する、前述の請求項のいずれかに記載のナノ粒子。
【請求項14】
医薬または診断剤としての使用のための、前述の請求項のいずれかに記載のナノ粒子。
【請求項15】
糖尿病性腎症、糸球体腎炎、糸球体VEGF A調節不全、内皮VEGF A調節不全、糖尿病性網膜症、関節リウマチ、加齢性黄斑変性、および乳がんなどのがんから選択される疾患を予防または処置する方法における使用のための、前述の請求項のいずれかに記載のナノ粒子。
【請求項16】
請求項1から13のいずれかに記載のナノ粒子を調製する方法であって、
a)好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、オキサゾリン由来ポリマー、ポリ(アミノ酸)、多糖、リン脂質、スフィンゴ脂質、コレステロール、PEG-脂質、ブロックコポリマー、例えば、PEG-PLAまたはPEG-ポリ-カプロラクトン、無機物質、例えば、金またはqdot材料、およびそれらの組合せのいずれかを含む1種または数種のナノ材料、ならびに必要に応じて治療剤を、任意の順序で提供するステップ;
b)必要に応じて、前記1種または数種のナノ材料のいずれかから、ブロックコポリマーを調製するステップ;
c)好ましくは、DCC/NHSカップリングまたはEDC/NHSカップリングによって、1つまたは複数のステップにおいて、第1のリガンドおよび第2のリガンドを前記ナノ材料にカップリングさせるステップ;
d)ステップa)において既に提供されていない場合に、治療剤、好ましくは親油性治療剤を提供するステップ;
e)好ましくはナノ沈殿によって、前記ナノ材料にカップリングされた前記リガンドと前記治療剤とを使用して、ナノ粒子を調製するおよび得るステップ
を含む、方法。
【請求項17】
ステップe)における前記得るステップが、0.01~0.5の、好ましくは、0.01~0.3の、より好ましくは、0.01~0.1の多分散性指数を有するナノ粒子を得ることを含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ナノ材料ならびに少なくとも第1のリガンドおよび第2のリガンドを含むナノ粒子に関する。本発明は、医薬または診断剤としての使用のためのナノ粒子にさらに関する。本発明は、糖尿病性腎症、糸球体腎炎、糸球体VEGF A調節不全、内皮VEGF A調節不全、糖尿病性網膜症、関節リウマチ、加齢性黄斑変性、および乳がんなどのがんから選択される疾患を予防または処置する方法における使用のためのナノ粒子にも関する。さらに、本発明は、ナノ粒子を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
無数のナノ材料が、薬物治療または診断法のための担体として、ここ数年にわたって開発されてきた。標的細胞をin vivoで十分な特異性で同定する能力をそれらに持たせるために、細胞受容体に結合するリガンドが、その表面に係留されてきた。しかし、この古い枠組みに単純に従うことは、ナノ材料のアビディティを増加させるが、疑いの余地のない細胞同定のためには不十分であることが分かった。現時点では、ヘテロ-多価結合のためのいくつかの異なるリガンドを提示するナノ材料であっても、異なる細胞型間を識別することができない。
【0003】
対照的に、ウイルスは、究極の標的細胞特異性を有するナノ粒子(NP)である。合成の生物医学的ナノ材料とは対照的に、ウイルスは、細胞同定のために連続的なマルチステップ認識プロセスを使用する。多くの現行のナノ粒子ベースのアプローチは、十分な特異性を欠如するので、ウイルス標的化戦略の活用は、この制限を克服するための実行可能な選択肢であり得る。したがって、ナノ材料を用いてインフルエンザAウイルスなどのウイルスの逐次的な認識戦略を模倣することによって、細胞を特異的に標的化することが可能になり得る。特に、ウイルスの標的細胞認識は、粒子がタンパク質吸着に起因する表面改変を受ける場合、in vivoで有利である可能性が高い。
【0004】
特に、粒子取り込みを生じないが、細胞表面上のウイルス粒子密度を増加させる、細胞膜へのウイルス付着の初期ステップは、現在のナノ粒子設計戦略では欠けている。糖脂質および糖タンパク質または特異的受容体へのこの初期の接着は、ウイルス感染性にとって必須であることが見出されている。さらに、粒子が標的組織に到達した後にクリアランスに供される場合、それらの粒子は、薬物送達目的にとって不適切なものになる。メサンギウムの場合、初期の報告は、70±25nmまたはそれ未満の直径を有する小さい粒子が、約80~100nmの直径を有する糸球体内皮開窓を貫通していたことを示している。しかし、これらの粒子は、メサンギウムクリアランスを受けてきた。組織から迅速にクリアランスされる場合が多い既知のナノ粒子のこの問題は、ナノ粒子が標的組織中の標的細胞によって内在化される場合、克服され得る。
【0005】
Maslanka Figueroa et al.[1]は、アンジオテンシン-Iであるリガンドを含むポリマーナノ粒子に関する。
【0006】
Sah et al.[2]は、ブロックコポリマーおよび薬物を含むナノ粒子に関する。
本発明は、in vitroおよびin vivoで細胞に向かう(address)ために、ウイルス模倣性細胞同定機構を持たせたナノ材料を提供することを目的とする。さらに、本発明の目的は、標的組織におけるin vivoでの前記ナノ粒子の有効な蓄積を可能にするナノ粒子を提供することである。本発明のさらなる目的は、薬物または診断剤を標的組織に送達することを可能にする薬物送達系を提供することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Maslanka Figueroaら、Proc.Natl.Acad.Sci.(2019)201902563
【非特許文献2】Sah E.ら、Journal of Nanomaterials, Volume 2015, Article ID 794601
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
以下では、本発明の要素が記載される。これらの要素は、具体的な実施形態に列挙されるが、さらなる実施形態を創出するために、任意の様式で任意の数でこれらの要素が組み合わされ得ることを理解すべきである。種々に記載された例および好ましい実施形態は、明確に記載された実施形態のみに本発明を限定すると解釈すべきではない。この記載は、明確に記載された実施形態のうち2つもしくはそれよりも多くを組み合わせる、または明確に記載された実施形態のうち1つもしくは複数を任意の数の開示されたおよび/もしくは好ましい要素と組み合わせる実施形態を支持および包含すると理解すべきである。さらに、本出願中の全ての記載された要素の任意の順列および組合せは、文脈が他を示さない限り、本出願の記載によって開示されたとみなすべきである。
【0009】
第1の態様では、本発明は、ナノ材料ならびに少なくとも第1のリガンドおよび第2のリガンドを含むナノ粒子であって、
- 前記第1のリガンドが、標的細胞への前記ナノ粒子の付着を媒介することが可能であり、
- 前記第2のリガンドが、前記標的細胞中への前記ナノ粒子の内在化を媒介することが可能であり、
- 好ましくは、前記ナノ材料が、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、オキサゾリン由来ポリマー、ポリ(アミノ酸)、多糖、リン脂質、スフィンゴ脂質、コレステロール、PEG-脂質、ブロックコポリマー、例えば、PEG-PLAまたはPEG-ポリ-カプロラクトン、無機物質、例えば、金またはqdot材料、およびそれらの組合せのいずれかを含む
ナノ粒子に関する。
【0010】
一実施形態では、前記第1のリガンドは、GPCR、例えば、アンジオテンシンII受容体1型(AT1r)、ヒト神経ペプチドY1受容体およびC-X-Cケモカイン受容体4型に結合する非アゴニスト性薬剤、ならびに/または標的細胞表面上の糖タンパク質および/もしくは糖脂質、例えば、ヘパラン硫酸、シアロ糖タンパク質、ガングリオシドおよびマンノース受容体に結合する薬剤であり、好ましくは、EXP3174またはテルミサルタンである。
【0011】
一実施形態では、前記第2のリガンドは、i)好ましくは、RGD、配列番号1の配列を有する環状RGD-ペプチド、およびそれらの誘導体から選択される、インテグリン、例えば、αVβ3インテグリンまたはαVβ5インテグリンに結合する薬剤、ii)GPCR、例えば、AT1rに結合するアゴニスト性薬剤、好ましくは、活性化されたアンジオテンシン-II、iii)エクト酵素、例えば、レグマイン(legumain)、膜型マトリックスメタロプロテイナーゼおよびアンジオテンシン変換酵素(ACE)に結合する薬剤、好ましくは、アンジオテンシン-I、ならびに/またはiv)トランスフェリン受容体に結合する薬剤、のいずれかである。
【0012】
一実施形態では、前記ナノ粒子は、治療剤、好ましくは、ピルフェニドンおよびシナシグアトのいずれかをさらに含む。
【0013】
一実施形態では、前記第1のリガンドおよび前記第2のリガンドは各々、前記ナノ材料にカップリングされ、好ましくは、各々が前記ナノ材料のブロックコポリマー鎖にカップリングされる。
【0014】
一実施形態では、前記ナノ材料は、1つよりも多くのブロックコポリマー鎖を含み、前記第1のリガンドは、前記ナノ材料の第1のブロックコポリマー鎖にカップリングされ、前記第2のリガンドは、前記ナノ材料の第2のブロックコポリマー鎖にカップリングされ、前記第1のブロックコポリマー鎖は、前記第2のブロックコポリマー鎖よりも長く、好ましくは、前記第2のブロックコポリマー鎖の少なくとも1.5倍の長さであり、より好ましくは、前記第2のブロックコポリマー鎖の少なくとも3倍の長さである。
【0015】
一実施形態では、前記第1のブロックコポリマー鎖は、1k~20k、好ましくは1k~10kの範囲のPEGを含み、および/または5k~40k、好ましくは10k~20kの範囲のPLAを含み、必要に応じて、前記第1のブロックコポリマー鎖は、PEG5k-PLA10kであり、前記第2のブロックコポリマー鎖は、PEG2k-PLA10kである。
【0016】
一実施形態では、前記第2のリガンドは、前記標的細胞中への前記ナノ粒子の前記内在化の前に酵素的に活性化される。
【0017】
一実施形態では、前記標的細胞は、メサンギウム細胞、内皮細胞、例えば網膜内皮細胞、B細胞、T細胞、マクロファージ、樹状細胞および腫瘍細胞から選択される。
【0018】
一実施形態では、前記粒子は、5nm~1000nmの、好ましくは、10nm~150nmの、より好ましくは、20nm~100nmのサイズを有する。
【0019】
一実施形態では、前記第1のリガンドの前記第2のリガンドに対する比は、2:1~1:2の範囲であり、好ましくは1:1である。
【0020】
一実施形態では、前記粒子は、1pM~100nM、好ましくは50pM~1nMの、標的化された受容体に対する粒子アビディティを有する。
【0021】
一実施形態では、前記ナノ材料は、PEGを含み、前記粒子は、少なくとも5%の、好ましくは、少なくとも15%の、より好ましくは、少なくとも25%のリガンド/PEGのリガンド密度を有する。
【0022】
さらなる態様では、本発明は、医薬または診断剤としての使用のための、上記実施形態のいずれかにおいて定義されたナノ粒子に関する。
【0023】
さらなる態様では、本発明は、糖尿病性腎症、糸球体腎炎、糸球体VEGF A調節不全、内皮VEGF A調節不全、糖尿病性網膜症、関節リウマチ、加齢性黄斑変性、および乳がんなどのがんから選択される疾患を予防または処置する方法における使用のための、上記実施形態のいずれかにおいて定義されたナノ粒子に関する。
【0024】
さらなる態様では、本発明は、ナノ粒子を調製する方法であって、
a)好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、オキサゾリン由来ポリマー、ポリ(アミノ酸)、多糖、リン脂質、スフィンゴ脂質、コレステロール、PEG-脂質、ブロックコポリマー、例えば、PEG-PLAまたはPEG-ポリ-カプロラクトン、無機物質、例えば、金またはqdot材料、およびそれらの組合せのいずれかを含む1種または数種のナノ材料、ならびに必要に応じて治療剤を、任意の順序で提供するステップ;
b)必要に応じて、前記1種または数種のナノ材料のいずれかから、ブロックコポリマーを調製するステップ;
c)好ましくは、DCC/NHSカップリングまたはEDC/NHSカップリングによって、1つまたは複数のステップにおいて、第1のリガンドおよび第2のリガンドをそれにカップリングさせるステップ;
d)ステップa)において既に提供されていない場合に、治療剤、好ましくは親油性治療剤を提供するステップ;
e)好ましくはナノ沈殿によって、前記ナノ材料にカップリングされたリガンドと前記治療剤とを使用して、ナノ粒子を調製するおよび得るステップ
を含む、方法に関する。
【0025】
一実施形態では、ステップe)における前記得るステップは、0.01~0.5の、好ましくは、0.01~0.3の、より好ましくは、0.01~0.1の多分散性指数を有するナノ粒子を得ることを含む。
【0026】
この態様では、前記ナノ粒子、前記ナノ材料、前記治療剤、前記ブロックコポリマー、前記第1のリガンドおよび前記第2のリガンドは、上で定義した通りである。
【0027】
さらなる態様では、本発明は、上で定義したナノ粒子および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0028】
さらなる態様では、本発明は、疾患を予防または処置する方法であって、有効量のナノ粒子および/または医薬組成物をそれを必要とする患者に投与するステップを含む方法に関する。
【0029】
この態様では、前記疾患、前記ナノ粒子、前記医薬組成物は、上で定義した通りである。
【0030】
さらなる態様では、本発明は、疾患の処置のための医薬の製造におけるナノ粒子の使用に関する。
【0031】
この態様では、前記ナノ粒子および前記疾患は、上で定義した通りである。
【0032】
さらなる態様では、本発明は、疾患の診断および/または予後判定のための診断剤の製造におけるナノ粒子の使用に関する。
【0033】
この態様では、前記ナノ粒子および前記疾患は、上で定義した通りである。
【0034】
詳細な説明
有害な物理化学的特性に起因する目的の組織における不十分なアベイラビリティは、薬物の失敗のよくある原因である。ウイルスは、それらの核酸をナノスケール粒子中に埋め込み、それらの標的細胞に高い特異性で向かうことによって、この制約を克服している。ナノテクノロジーは、薬物輸送のための多量のナノ担体を提供しているが、目的の細胞を疑いの余地なく同定するそれらの能力は、平凡なままであった。本発明者らは、本明細書で、細胞正体についての3回の連続的なチェックによって細胞を同定するウイルス様の能力を備えた粒子が、従来のナノ粒子と比較して、メサンギウム細胞をin vivoで同定する優れた能力を有することを示している。マウスでは、これは、腎臓メサンギウムにおける15倍高い蓄積と、その後の大量の細胞取り込みとをもたらした。本発明は、薬物を標的組織中に輸送するための驚くほど有効なツールを提供し、このツールは、種々の疾患、例えば、それに対する薬物療法が現在存在しない糖尿病性腎症の処置における使用に適切である。
【0035】
本発明者らは、受容体付着を媒介するために、NPコロナ中にアンジオテンシン-II 1型受容体(AT1R)リガンドであるEXP3174を例えば有する粒子を設計した(図1A)。Gタンパク質共役受容体(GPCR)アンタゴニストとして、これは、結合が細胞NP取り込みを誘発できず、膜結合のみを誘発し、したがって、AT1Rのみを有するオフターゲット細胞による粒子取り込みを防止するという、最重要の利点を有する。
【0036】
第2の認識基準として、本発明者らは、標的、例えば、粒子コロナ中のプロリガンドであるアンジオテンシン-I(Ang-I)を認識し、それを活性なリガンドのアンジオテンシン-II(Ang-II)に変換するアンジオテンシン変換酵素(ACE)の存在について細胞表面を探索する能力を、粒子に持たせた。
【0037】
第3の認識ステップとして、Ang-IIなどのリガンドが、AT1Rなどの標的に結合し、アゴニストとして、受容体結合の際に粒子の細胞取り込みを誘発する。標的細胞認識のプロセス全体は、フローチャートを用いて最良に例示され得る(図1B)。粒子を、それらの標的受容体アビディティおよび標的細胞特異性についてin vitroで試験した。さらに、同じ受容体に向かう2つのリガンドである、細胞膜結合を促進するアンタゴニストおよび細胞内在化を支持するアゴニストの同時の提示が、細胞取り込みを媒介するNPの能力にどのように影響を与えるかを評価した。最後に、本発明者らは、かかるウイルス模倣性三重認識戦略を有する粒子が、メサンギウム細胞にin vivoで到達することに関して、従来のNPよりも優れていたことを示した。
【0038】
NPは、典型的には受動輸送機構によって生物中に分布されるので、特定の組織におけるそれらの出現は、それらの物理化学的特性の問題である。しかし、目的の組織において蓄積する粒子の割合は、それらが目的の細胞と能動的に相互作用することができる場合に増加され得る。細胞の正体を確認するためには、それぞれの受容体に結合するリガンドをNPに持たせることでは十分ではない。本発明の粒子は、細胞の段階的同定の戦略、特に、標的細胞への付着を媒介するための第1のリガンドおよび標的細胞中へのナノ粒子の内在化を媒介するための第2のリガンドを含む戦略がより有利であることを、明らかに実証している。
【0039】
ウイルスを鋳型として使用して、本発明者らは、次々に行われる「if-then-else」決定のシーケンスを実施することができるNPを設計した。各単一のステップにおいて、NPは、それぞれ、受容体またはエクト酵素の存在について、リガンドまたは基質の助けにより細胞を探索する。それが成功である場合、次の同定ステップが続き、そうではない場合(else)、細胞が標的細胞ではあり得ないことを粒子が「決定する」。ウイルスと同様、これは、「間違った」細胞型によるNP取り込みの回避を助ける。
【0040】
例として、GPCRのファミリーに属する受容体、例えば、AT1Rを、決定実行粒子(decision making particle)のために使用した。リガンド、例えば、GPCR-アンタゴニストを用いて、例えば、EXP3174またはテルミサルタンを用いて細胞正体が検出される場合、(then)この相互作用のポジティブな成果は、粒子が細胞表面に結合し、その場に留まることである。次の相互作用がポジティブになれない場合(else)、粒子がオフターゲット細胞上に残るリスクがあることは明らかである。しかし、この場合、遊離粒子と結合粒子との間の熱力学的な平衡に起因して、予想され得るように、in vivoでの遊離粒子の濃度の経時的な低下は、粒子が、「間違った」標的から時間と共に解離するように、平衡をシフトさせる。対照的に、細胞正体が、同じGPCRについてのアゴニスト、例えば、Ang-IIを用いて検出される場合、(then)細胞のポジティブな応答(answer)は、粒子内在化である。したがって、相互作用のための標的およびリガンドの型を注意深く選択することによって、粒子に、この研究において調査した例示的な標的よりもさらにより隠れた標的細胞の同定を可能にし得るロジックを持たせることができる。例は、例えば、内皮細胞を特異的に標的化することによって、存在する60種よりも多くの細胞型間を粒子が識別することができる、網膜組織における局所的眼適用である。
【0041】
用語「ナノ粒子」および「NP」は、本明細書で使用される場合、第1のリガンドおよび第2のリガンドを含むナノ材料構造に関する。特に、ナノ粒子は、3つ全ての外形寸法がナノスケールであるナノ物体、例えば、リポソーム、ポリマーナノ粒子、ミセル、脂質ナノカプセル、リポソーム、無機ナノ粒子、例えば、金ナノ粒子またはQdotである。一実施形態では、ナノ粒子は、優れた生体適合性および高度に調節可能な組成を提供する。ナノ粒子は、広範な種々の材料、例えば、ポリマー、生体分子および金属から産生され得る。一実施形態では、本発明のナノ粒子は、例えば、腎臓のメサンギウム中の標的組織中に薬物を輸送することが可能なウイルス模倣性ナノ粒子である。一実施形態では、ナノ粒子は、ピルフェニドンおよび/またはシナシグアトを含み、糖尿病性腎症の処置における使用のためである。一実施形態では、本発明のナノ粒子は、PEGおよびPLAを含む生分解性ブロックコポリマーを含む。一実施形態では、第1および第2のリガンドは、DCC/NHSまたはEDC/NHSを介してナノ粒子に共有結合的にカップリングされる。一実施形態では、前記ブロックコポリマーは、アセトニトリル中に溶解され、ポリマー混合物を得るためにPLGAと混合される(70/30、m/m)。一実施形態では、ナノ粒子は、ポリマー混合物を水相中に液滴で注入することによって、ナノ沈殿を使用して調製される。一実施形態では、本発明のナノ粒子は、前記ナノ粒子の投与後非常に短い時間内に、即ち、<1時間で、腎臓組織などの標的組織中に蓄積する。
【0042】
一実施形態では、本発明のナノ粒子は、非常に小さく、即ち、<80nmであり、それらの小さいサイズに起因して、開窓された内皮を介して血流から迅速に抜け出し、メサンギウム組織などの標的組織中に蓄積することができる。一実施形態では、前記ナノ粒子は、治療剤、好ましくは、ピルフェニドンおよびシナシグアトのいずれかをさらに含む。一実施形態では、前記粒子は、5nm~1000nmの、好ましくは、10nm~150nmの、より好ましくは、20nm~100nmのサイズを有する。一実施形態では、粒子サイズは、動的光散乱、粒子散乱拡散測定(particle scattering diffusometry)、ナノ粒子追跡解析、原子間力顕微鏡または透過電子顕微鏡、好ましくは、動的光散乱または透過電子顕微鏡を使用して測定される。粒子のサイズは、球状粒子の中心を通り、その終点が球状粒子上にある任意の直線セグメントに関するその直径によって決定される。非球状粒子の場合、直径は、前記非球状粒子の中心を通り、その終点が粒子上にある最長の線セグメントに関する。一実施形態では、平均直径は、ナノ粒子のバッチ中に含まれるナノ粒子の直径の平均に関する。一実施形態では、本発明の粒子は、0.01~0.5の、好ましくは、0.01~0.3の、より好ましくは、0.01~0.1の多分散性指数を有する。一実施形態では、多分散性指数は、動的光散乱、粒子散乱拡散測定、ナノ粒子追跡解析、原子間力顕微鏡または透過電子顕微鏡、好ましくは、動的光散乱または透過電子顕微鏡を使用して測定される。一実施形態では、用語「ナノ粒子」および「粒子」は、互換的に使用される。一実施形態では、本発明のナノ粒子は、医薬における使用のためである。一実施形態では、ナノ粒子は、例えば、-20mV~0mVの、または-15mV~-5mVの、正の、負のまたは中性であるζ電位を有する。一実施形態では、ナノ粒子は、ナノ材料を含む少なくとも1つのコアならびに必要に応じてその表面上のポリマーおよび/またはリンカーを含み、前記第1のリガンドおよび第2のリガンドは、前記ポリマーおよび/またはリンカーにカップリングされる。一実施形態では、粒子は、ポリマーコアを有する。
【0043】
用語「ウイルス模倣性」は、本明細書で使用される場合、ウイルスの細胞標的化アプローチが模倣されるアプローチに関する。本発明のウイルス模倣性粒子は、少なくとも2つの逐次的なステップを有する認識プロセスによって、標的細胞によって内在化されている。かかる2ステッププロセスでは、第1のステップは、粒子上の第1のリガンド、例えば、EXP3174またはテルミサルタンが、標的細胞上で発現されている標的、例えば、メサンギウム細胞上のアンジオテンシン受容体に結合することである。引き続いて、粒子は、標的細胞中に内在化され、これは、標的細胞上の標的に結合する第2のリガンド、例えば、活性化されたアンジオテンシンIIまたは環状アミノ酸配列(シクロArg-Gly-Asp-D-Phe-Lys;配列番号1)によって媒介され、それにより、粒子のエンドサイトーシスを開始させる。一実施形態では、第1および第2のリガンドの逐次的な提示は、i)第2のリガンドのために使用されるより短いリンカー、例えばより短いPEG-PLA鎖と比較して、第1のリガンドのためにより長いリンカー、例えばより長いPEG-PLA鎖を使用することによって媒介される立体制御によって、および/またはii)内在化を媒介することが可能になるように第2のリガンドが活性化される必要がある活性化ステップ、例えば、アンジオテンシンIのアンジオテンシンIIへの変換によって、達成される。一実施形態では、リガンドの逐次的な提示は、リガンド改変なしの従来の粒子と比較して、メサンギウム細胞などの標的細胞におけるナノ粒子の15倍高い蓄積を可能にする。一実施形態では、前記粒子は、1pM~100nM、好ましくは50pM~1nMの、標的化された受容体に対する粒子アビディティを有する。一実施形態では、本発明のナノ粒子は、医薬または診断剤としての使用のためである。一実施形態では、本発明のナノ粒子は、糖尿病性腎症、糸球体腎炎、糸球体VEGF A調節不全、内皮VEGF A調節不全、糖尿病性網膜症、関節リウマチ、加齢性黄斑変性、および乳がんなどのがんから選択される疾患を予防または処置する方法における使用のためである。一実施形態では、用語「ナノ粒子」、「ウイルス模倣性粒子」および「決定実行ナノ粒子」は、互換的に使用される。
【0044】
用語「ナノ材料」は、本明細書で使用される場合、ナノスケールの任意の外形寸法を有する、またはナノスケールの内部構造もしくは表面構造を有する材料に関する。一実施形態では、前記ナノ材料は、好ましくは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、オキサゾリン由来ポリマー、ポリ(アミノ酸)、多糖、リン脂質、スフィンゴ脂質、コレステロール、PEG-脂質、例えば、DPSE-PEGおよびステアリン酸(acid stearic)PEG、ブロックコポリマー、例えば、PEG-PLAまたはPEG-ポリ-カプロラクトン、無機物質、例えば、金またはqdot材料、およびそれらの組合せのいずれかを含む。一実施形態では、前記第1のリガンドおよび前記第2のリガンドは各々、前記ナノ材料にカップリングされ、好ましくは、各々が前記ナノ材料のブロックコポリマー鎖にカップリングされる。一実施形態では、前記ナノ材料は、1つよりも多くのブロックコポリマー鎖を含み、前記第1のリガンドは、前記ナノ材料の第1のブロックコポリマー鎖にカップリングされ、前記第2のリガンドは、前記ナノ材料の第2のブロックコポリマー鎖にカップリングされ、前記第1のブロックコポリマー鎖は、前記第2のブロックコポリマー鎖よりも長く、好ましくは、前記第2のブロックコポリマー鎖の少なくとも1.5倍の長さであり、より好ましくは、前記第2のブロックコポリマー鎖の少なくとも3倍の長さである。一実施形態では、前記第1のブロックコポリマー鎖は、1k~20k、好ましくは1k~10kの範囲のPEGを含み、および/または、5k~40k、好ましくは10k~20kの範囲のPLAを含む。一実施形態では、前記第1のブロックコポリマー鎖のPEG鎖は、前記第2のブロックコポリマー鎖のPEG鎖よりも長い。一実施形態では、1つのリガンドは、1つのPEG分子にカップリングされる。用語「k」は、本明細書で使用される場合、ポリマー鎖、例えば、ブロックコポリマー鎖、PEGおよび/またはPLAに関して、キロダルトン(kDa)を指す。例えば、1k~20kの範囲のPEGは、1kDa~20kDaの範囲のPEG、例えば、PEG5kDaに関する。一実施形態では、PEG5k-PLA10kおよびPEG2k-PLA10kは、それぞれ、PEG5kDa-PLA10kDaおよびPEG2kDa-PLA10kDaに関する。一実施形態では、前記第1のブロックコポリマー鎖は、PEG5k-PLA10kであり、前記第2のブロックコポリマー鎖は、PEG2k-PLA10kである。一実施形態では、前記ナノ材料は、PEG(PEG)の総量を含み、前記粒子は、少なくとも5%の、好ましくは、少なくとも15%の、より好ましくは、少なくとも25%のリガンド/PEGのリガンド密度を有し、用語「リガンド」は、第1のリガンドおよび第2のリガンドの両方を含む。一実施形態では、リガンド/PEGのリガンド密度は、≦50%である。
【0045】
用語「第1のリガンド」は、本明細書で使用される場合、標的細胞へのナノ粒子の付着を媒介することが可能なリガンドに関する。一実施形態では、第1のリガンドは、標的細胞への粒子の結合を開始させるにすぎず、標的細胞中への粒子の内在化は開始させず、標的細胞への第2のリガンドの引き続く結合が、前記標的細胞中への前記粒子の内在化を開始させるために必要とされる。一実施形態では、第1のリガンドは、ナノ粒子に共有結合的または非共有結合的にカップリングされる。一実施形態では、第1のリガンドは、標的細胞へのナノ粒子の結合を誘発する任意の生体分子、例えば、抗体またはその抗原結合性断片、ペプチド、アプタマー、DNAナノ構造、受容体リガンドおよび受容体である。一実施形態では、前記第1のリガンドは、GPCR、例えば、アンジオテンシンII受容体1型(AT1r)、ヒト神経ペプチドY1受容体およびC-X-Cケモカイン受容体4型に結合する非アゴニスト性薬剤、ならびに/または標的細胞表面上の糖タンパク質および/もしくは糖脂質、例えば、ヘパラン硫酸、シアロ糖タンパク質、ガングリオシドおよびマンノース受容体に結合する薬剤であり、好ましくは、EXP3174またはテルミサルタンである。一実施形態では、GPCRに結合する非アゴニスト性薬剤は、標的細胞への粒子の結合を誘発するが、標的細胞中への粒子の内在化、例えばエンドサイトーシスは誘発しない。一実施形態では、第1のリガンドおよび/または第2のリガンドは、遍在的には発現されないが、標的組織中の標的細胞上で優勢に発現される標的に結合する。一実施形態では、第1のリガンドおよび/または第2のリガンドは、K<100nMの親和性で、標的細胞上の標的構造に結合する。一実施形態では、第1のリガンドおよび/または第2のリガンドは、<1500Daの分子量を有する。一実施形態では、用語「標的」および「標的構造」は、互換的に使用される。一実施形態では、用語「標的構造」は、標的細胞の表面上に提示されるタンパク質、ペプチド、核酸、サッカライド、糖脂質および/または糖タンパク質に関する。一実施形態では、第1のリガンドは、機能化(functionalization)のための遊離カルボン酸残基を有する任意のAT1Rアンタゴニストである。一実施形態では、第1のリガンドは、選択的AT1アンタゴニスト、例えば、EXP3174(ロサルタンカルボン酸)またはテルミサルタンであり、これらは、強力かつ選択的なAT1アンタゴニスト、または必要に応じて、その生物学的に活性な誘導体である。一実施形態では、「生物学的に活性な誘導体」は、それぞれEXP3174またはテルミサルタンと同じ生物学的機能、例えば、同じ結合機能および/または治療的機能を有する。
【0046】
用語「非アゴニスト性薬剤」は、本明細書で使用される場合、標的構造に対するアゴニスト性効果を有さない、好ましくは、標的細胞中への内在化を媒介する前記標的構造に対して効果を有さない、前記標的構造に結合する薬剤に関する。
【0047】
用語「第2のリガンド」は、本明細書で使用される場合、標的細胞中へのナノ粒子の内在化を媒介することが可能なリガンドに関する。一実施形態では、標的構造、例えば、標的細胞上の受容体への第2のリガンドの結合は、標的細胞中へのナノ粒子の内在化を開始させる。一実施形態では、標的細胞上の標的構造は、標的細胞の表面上で典型的には発現される任意の構造、例えば、表面分子、受容体および/またはバイオマーカーである。一実施形態では、標的細胞上の標的構造は、健康な細胞と比較して、病理学的状態にある細胞において、典型的には過剰発現される分子である。一実施形態では、第1のリガンドおよび第2のリガンドは、標的細胞上の同じ標的構造を標的化し、または標的細胞上の異なる標的構造を標的化する。一実施形態では、第2のリガンドは、ナノ粒子に共有結合的または非共有結合的にカップリングされる。一実施形態では、第2のリガンドは、標的細胞中へのナノ粒子の内在化を誘発する任意の生体分子、例えば、抗体またはその抗原結合性断片、ペプチド、アプタマー、DNAナノ構造、受容体リガンドおよび受容体である。一実施形態では、前記第2のリガンドは、i)好ましくは、RGD、配列番号1の配列を有する環状RGD-ペプチド、およびそれらの誘導体から選択される、インテグリン、例えば、αVβ3インテグリンに結合する薬剤、ii)GPCR、例えば、AT1rに結合するアゴニスト性薬剤、好ましくは、活性化されたアンジオテンシン-II、iii)エクト酵素、例えば、レグマイン、膜型マトリックスメタロプロテイナーゼおよびアンジオテンシン変換酵素(ACE)に結合する薬剤、好ましくは、アンジオテンシン-I、ならびに/またはiv)トランスフェリン受容体に結合する薬剤、のいずれかである。一実施形態では、前記第2のリガンドは、前記標的細胞中への前記ナノ粒子の前記内在化の前に酵素的に活性化される、例えば、アンジオテンシン-Iは、AT1rへの前記第2のリガンドの結合および前記標的細胞中への前記粒子の内在化の前に、ACEによってアンジオテンシン-IIへと活性化される。一実施形態では、第2のリガンドの酵素的活性化は、標的細胞の表面上のエクト酵素によって実施され、好ましくは、前記酵素的活性化は、前記第2のリガンドの酵素的切断を含み、それにより、活性化された第2のリガンドを提供する。代替的な実施形態では、前記第2のリガンドは、内在化を媒介する前に酵素的に活性化されない。一実施形態では、前記第1のリガンドの前記第2のリガンドに対する比は、2:1~1:2の範囲であり、好ましくは1:1である。一実施形態では、第2のリガンドは、前記第1のリガンドが前記標的細胞に結合した後に、前記標的細胞に結合する。一実施形態では、前記標的細胞への前記第1のリガンドおよび前記第2のリガンドの逐次的な結合は、前記標的細胞に対する特異性を増加させる。
【0048】
一実施形態では、第2のリガンドがAT1rを標的化する場合、アンジオテンシン-Iである第2のリガンドが、アンジオテンシン-IIである第2のリガンドよりも好ましいが、それは、アンジオテンシン-Iのアンジオテンシン-IIへの酵素的活性化の中間のステップが、ナノ粒子の増加した特異性を可能にするからである。一実施形態では、第1のリガンドがEXP3174であり、第2のリガンドがアンジオテンシン-II、またはアンジオテンシン-IIへと活性化されるアンジオテンシン-Iである場合、第1のリガンドおよび第2のリガンドは共に、標的細胞上の同じ標的構造、即ちAT1Rに結合する。この実施形態では、EXP3174である第1のリガンドは、アンタゴニストとしてAT1Rに結合し、必要に応じて酵素的活性化後にアンジオテンシン-IIである第2のリガンドは、アゴニストとしてAT1Rに結合する。第1のリガンド、例えばEXP3174の結合の後、第2のリガンドのために利用可能なAT1R結合部位がなおも存在する。一実施形態では、第1のリガンドによって結合される標的の結合部位および第2のリガンドによって結合される標的の結合部位は、異なる結合部位であり、または同じ結合部位であるが逐次的に結合される。
【0049】
一実施形態では、第2のリガンドは、i)立体障害、例えば、第1のリガンドのブロックコポリマー鎖もしくはリンカーよりも短い、第2のリガンドのブロックコポリマー鎖もしくはリンカーによって、および/またはii)第2のリガンドが内在化を媒介することが可能になる前の、第2のリガンドの酵素的活性化の必要性によって、前記標的細胞への結合から遮蔽される。
【0050】
用語「付着を媒介することが可能な」は、本明細書で使用される場合、標的細胞への第1のリガンドの結合能力に関する。第1のリガンドは、付着を媒介することが可能である、即ち、第1のリガンドは、好ましくは、標的細胞上の標的構造を標的化することによって、標的細胞へのナノ粒子の結合を誘発する。一実施形態では、標的細胞への第1のリガンドの前記結合は、標的細胞中へのナノ粒子の内在化を誘発しない。一実施形態では、標的細胞中へのナノ粒子の内在化のために、さらなる相互作用、即ち、好ましくは、第1のリガンドの標的構造と同じまたは異なる標的細胞上の標的構造を標的化する第2のリガンドを含む、第2のリガンドと標的細胞との相互作用が必要とされる。一実施形態では、第1および第2のリガンドは、同じ標的構造に結合し得るが、標的構造の異なる部位、例えば、アゴニスト結合部位およびアンタゴニスト結合部位に結合し得る。
【0051】
用語「内在化を媒介することが可能な」は、本明細書で使用される場合、第2のリガンドが標的細胞中へのナノ粒子の内在化を誘発する能力に関する。一実施形態では、第2のリガンドは、標的細胞上の標的構造に結合し、それにより、標的細胞中へのナノ粒子の内在化を開始させる。一実施形態では、内在化を誘発する前記能力は、内在化を誘発する前に、例えば酵素的活性化によって活性化される能力を含み得る。一実施形態では、前記内在化には、受容体媒介性エンドサイトーシス、クラスリン被覆されたピットおよび/またはカベオラのいずれかが関与する。
【0052】
用語「標的細胞」は、本明細書で使用される場合、病理学的状態、即ち疾患に関与する細胞に関する。一実施形態では、疾患の処置は、前記疾患に関与する細胞を、本発明のナノ粒子を用いて標的化することを含む。一実施形態では、本発明のナノ粒子は、薬物を前記標的細胞に輸送する薬物送達系として機能する。一実施形態では、前記標的細胞は、メサンギウム細胞、内皮細胞、例えば網膜内皮細胞、および腫瘍細胞から選択される。
【0053】
用語「治療剤」は、本明細書で使用される場合、医学的処置のために意図された任意の物質に関する。一実施形態では、治療剤は、ナノ粒子の粒子本体、即ちコア中に、例えば、前記ナノ粒子の内側に、および/もしくは粒子ナノ材料の至る所に含まれ、ならびに/またはリンカーを使用して前記ナノ粒子にカップリングされる。一実施形態では、前記治療剤は、親油性治療剤であり、粒子本体によって被包されるおよび/または含まれる。一実施形態では、治療剤は、例えば、切断可能なリンカーによって、前記粒子に非共有結合的または共有結合的にカップリングされる。一実施形態では、前記治療剤は、ナノ粒子の任意の構成成分に共有結合的または非共有結合的にカップリングされ得る。一実施形態では、前記治療剤は、抗線維化剤または化学療法剤である。一実施形態では、前記治療剤は、ピルフェニドンおよびシナシグアトのいずれかである。用語「粒子本体」は、本明細書で使用される場合、粒子の主要な支持構造に関する。例えば、粒子本体は、リポソームの脂質二重層に、またはポリマーおよび/もしくは固体脂質粒子のコア構造に関し得る。一実施形態では、本発明のナノ粒子には、メサンギウム細胞などの標的細胞を治療剤を用いて特異的に処置するための治療剤が負荷される。一実施形態では、粒子中に負荷される治療剤、例えば、ピルフェニドンまたはシナシグアトは、ポリマー相中に溶解され、粒子ポリマーコアの調製の間に前記粒子中に取り込まれ、および/または粒子によって含まれる水相、例えば、リポソームによって含まれる水相中に溶解され、および/または粒子によって含まれる脂質相、例えば、リポソームによって含まれる脂質相中に溶解される。ピルフェニドンは、TGF-ベータアンタゴニストであり、メサンギウム関連の病理学的線維症を処置するための候補として提唱されている。シナシグアト(BAY 58-2667)は、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)活性化因子であり、糖尿病性腎症を処置するために提唱されている。一実施形態では、治療剤ピルフェニドンまたはシナシグアトは、粒子の特性を顕著に変化させることなしに、ナノ粒子のポリマー性コア中に効率的に取り込まれ、これは、治療剤の親油性特性に起因して可能である。一実施形態では、前記ナノ粒子は、糖尿病性腎症の処置における使用のためであり、前記治療剤は、抗線維化剤である。一実施形態では、前記ナノ粒子は、がんの処置における使用のためであり、前記治療剤は、化学療法剤である。
【0054】
本発明は、本発明のナノ粒子および薬学的に許容される賦形剤を含む組成物にさらに関する。本発明のナノ粒子は、薬学的に許容される組成物を得るために、適切な補助物質および/または添加剤と混合され得る。かかる物質は、ナノ粒子の安定性、溶解度、生体適合性もしくは生物学的半減期を増加させる、薬理学的に許容される物質を含み、またはある特定の経路の適用など、例えば、静脈内溶液、スプレー、バンドエイド(登録商標)もしくは丸剤のために含められる必要がある物質を含む。本発明は、医薬における使用のため、例えば、糖尿病性腎症、糸球体腎炎、糸球体VEGF A調節不全、内皮VEGF A調節不全、糖尿病性網膜症、関節リウマチ、加齢性黄斑変性、および乳がんなどのがんから選択される疾患を予防または処置する方法における使用のための、本発明のナノ粒子を含む組成物にも関する。
【0055】
本発明のナノ粒子は、メサンギウム細胞などの標的細胞のための新規ウイルス模倣性認識原理を使用し、これは、メサンギウムなどの標的組織におけるナノ粒子の高度に効率的な蓄積を生じる。一実施形態では、ナノ粒子は、適切な治療剤と組み合わされる、即ち、治療剤は、ナノ粒子中に取り込まれおよび/またはナノ粒子に連結され、標的組織中の標的細胞、例えば、メサンギウム中のメサンギウム細胞の標的化された治療を可能にする。一実施形態では、治療剤を含むナノ粒子は、糖尿病性腎症を予防または処置するために使用される。一実施形態では、本発明のナノ粒子は、少なくとも2つのステップを有する認識プロセスを使用して標的細胞を標的化することを可能にする。一実施形態では、本発明のナノ粒子は、第1のリガンドとしての選択的AT1アンタゴニスト、例えばEXP3174を含み、治療剤、好ましくは、ピルフェニドンおよび/またはシナシグアトをさらに含む。一実施形態では、本発明のナノ粒子は、EXPcRGDナノ粒子、即ち、第1のリガンドとしてのEXP3174および第2のリガンドとしてのcRGD、特にcRGDfKを含むナノ粒子であり、またはナノ粒子は、EXPAng-Iナノ粒子、即ち、第1のリガンドとしてのEXP3174および第2のリガンドとしてのAng-Iを含むナノ粒子である。一実施形態では、前記EXPcRGDナノ粒子および/またはEXPAng-Iナノ粒子は、治療剤、好ましくは、ピルフェニドンおよび/またはシナシグアトをさらに含む。一実施形態では、前記ナノ粒子は、第1のリガンドとしての選択的AT1アンタゴニスト、例えばEXP3174を含むナノ粒子、好ましくは、EXPcRGDナノ粒子であり、シナシグアトである治療剤をさらに含む。一実施形態では、前記ナノ粒子は、PLGAおよび/またはPEG-PLAを含むまたはそれからなるナノ材料を含む。
【0056】
用語「投与する」は、本明細書で使用される場合、薬剤、例えば、本発明のナノ粒子および/または本発明の医薬組成物の投与に関し、これは、薬剤が標的細胞に到達するのを可能にする任意の方法によって達成され得る。これらの方法には、例えば、注射、経口摂取、吸入、経鼻送達、外用投与、沈着、移植、坐剤、またはナノ粒子による標的細胞へのアクセスが得られる、投与の任意の他の方法が含まれる。注射は、静脈内、皮内、皮下、筋肉内または腹腔内注射に関し得る。移植は、本発明のナノ粒子を含む移植可能な薬物送達系を挿入することを含み得、ならびに/またはナノ粒子を含むヒドロゲル、特に、in situでゲル化し、ナノ粒子を遅れて放出する皮下および/もしくは腹腔内注射されるヒドロゲルに関し得る。坐剤には、グリセリン坐剤が含まれる。吸入は、単独の、または吸収され得る担体に付着してのいずれかの、吸入器中のエアロゾルを用いてナノ粒子を投与することを含む。ナノ粒子は、液体中に、例えば、コロイド形態で懸濁され得る。
【0057】
「有効量」は、疾患および/または状態について見出された症状を軽減する、ナノ粒子または医薬組成物の量である。
【0058】
用語「患者」は、本明細書で使用される場合、ヒトまたは動物、好ましくは、哺乳動物に関する。患者の処置は、例えば、疾患もしくは状態、例えば、がんもしくは糖尿病性腎症を予防すること、処置すること、その症状を低減させること、またはかかる疾患もしくは状態を治癒させることを含む意味である。
【0059】
用語「ブロックコポリマー」は、本明細書で使用される場合、共有結合的結合によって連結された2つまたはそれよりも多くのホモ-またはコポリマーサブユニットを含むポリマーに関する。接合ブロック(junction block)である中間の非反復サブユニットが含まれ得る。ブロックコポリマーは、異なる重合したモノマーのブロックで構成される。用語「ブロックコポリマー鎖」は、ブロックコポリマーの鎖に関する。
【0060】
用語「DCC/NHSカップリング」および「EDC/NHSカップリング」は、本明細書で使用される場合、カップリング反応に関する。NHSで活性化された分子を合成するための一般的な方法は、NHSを、例えば、所望のカルボン酸、および少量の有機塩基と無水溶媒中で混合することである。次いで、カップリング試薬、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)またはエチル(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)が、高度に反応性の活性化された中間体を形成するために添加される。一実施形態では、第1のリガンドおよび第2のリガンドは、少なくとも2つのステップで、前記ナノ材料にカップリングされる。一実施形態では、第1のリガンドおよび第2のリガンドは、リンカーを介して、融合タンパク質を介しておよび/またはPEGを介して、前記ナノ材料にカップリングされる。
【0061】
本発明者らは、本明細書で、細胞正体を二重/三重チェックするウイルス模倣性NPが、標的化されたMCにおける増強されたNP蓄積をin vivoで可能にすることを首尾よく示している。ウイルスの初期細胞付着を模倣するアンタゴニスト性リガンドを、酵素媒介性の標的細胞認識プロセスと組み合わせることによって、粒子は、例外的な標的細胞特異性と共に、並外れて高いin vitro標的アビディティを有した。本発明者らは、同じGPCRへの、粒子に係留されたアゴニストおよびアンタゴニストの同時のヘテロ-多価結合が、粒子取り込みを驚くべきことにもたらすこともまた実証している。全体として、非特異的なサイズ媒介性の受動的標的化は、MCにおける満足できる粒子蓄積を達成するには十分ではない。単一のリガンドを用いた伝統的な粒子機能化であっても、不十分なアプローチのようである。しかし、複雑なマルチステップウイルス標的細胞結合および認識プロセスを模倣することによって、本発明者らは、MCを同定し、MC中に蓄積することができる粒子を得た。これは、腎疾患を含む種々の疾患の処置のための薬物の送達のための新たな選択肢を広げる。
【0062】
本発明者らは、立体的に制御された逐次的なリガンド-受容体相互作用に起因して糸球体メサンギウム細胞を効果的に標的化したアデノウイルス模倣性ブロックコポリマーナノ粒子をさらに製造した。ヘテロ-多価NPは、それにより、正確に調節可能な物理化学的特徴を示しただけでなく、両方の標的モチーフに対する優れたアビディティもまた示し、ピコモル濃度範囲での実質的なAT1r結合、および機能化されていないNPと比較して有意に増加したメサンギウム細胞取り込みをもたらした。これらの特色から利益を得て、ウイルス模倣性NPは、オフターゲット細胞の周辺環境においてさえ、メサンギウム細胞を選択的に標的化することができた。さらに、ヘテロ-多価NPは、必要なin vivoでの堅牢性を示し、腎臓内のわずかなオフターゲット沈着のみを伴って、メサンギウム領域におけるin vivoでの効率的な蓄積をもたらした。際立って、ヘテロ-多価EXPcRGD NPは、それにより、ホモ-機能的cRGDまたはEXP NPと比較して、はるかに良好なメサンギウム標的化を示した。本発明者らは、2つの異なるウイルスにインスピレーションを受けた概念を用いて、同じ明確な細胞型をin vivoで標的化することができたので、本発明者らは、ウイルス感染パターンの模倣が、高度に有効な標的化概念を可能にすると結論付けている。さらに、首尾よいメサンギウム細胞標的化は、メサンギウム関連腎臓病理の洗練された治療を可能にするが、それは、現在利用可能な全ての他のアプローチと比較して、薬物送達をこれが劇的に増加させるからである。
【0063】
本発明は、以下の図面を参照してここでさらに記載される。
【0064】
以下の図面の説明中で言及される全ての方法は、実施例において詳細に記載されるように実施した。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1図1は、ウイルス模倣性の付着および標的細胞認識を示す。(A)それらのコロナ上にEXP3174およびAng-Iを有するNP(NPEXPAng-I)は、EXP3174媒介性のAT1R結合を介して細胞膜に付着する。特異的認識は、酵素的Ang-IプロセシングおよびAng-II媒介性の内在化を介して誘発される。(B)決定実行NPの三重標的細胞認識を例示するフローチャート。
【0066】
図2図2は、ナノ粒子特徴付けを示す。(A)リガンドで修飾されたNPのアセンブリ。(B)PEG含量に対して正規化した異なるNP種のモル濃度リガンド含量、(C)サイズおよび多分散性指数(PDI)ならびに(D)得られたNP製剤のζ電位。結果は、少なくともn=3回の測定の平均±SDとして示される。
【0067】
図3図3は、AT1RおよびACEとのin vitro相互作用を示す。細胞内カルシウム測定によって決定した、リガンドで修飾されたNPの、それらの標的AT1R(A~D)およびACE(E~F)との相互作用。AT1Rについての(A)リガンド親和性および(B)粒子アビディティ。(C)遊離リガンドおよび粒子結合リガンドについてのIC50値。(D)リガンドで修飾された粒子によるAT1R阻害の動力学的測定。(E)NPEXPAng-IおよびNAng-Iのミカエリス・メンテン動力学。(F)リガンドおよびNP濃度に基づいて計算した、遊離Ang-Iおよび粒子結合Ang-Iについての特異性定数(Kcat/km)。結果は、少なくともn=3回の測定の平均±SDとして示される。統計的有意性のレベルは、異なる時点におけるNPEXPおよびNPEXPAng-IのAT1R阻害を比較して、**p≦0.01、***p≦0.001、****p≦0.0001ならびに#p≦0.0001およびx≦0.001として示される。n.s.:有意ではない。
【0068】
図4図4は、異なるインキュベーション時間におけるYFPタグ付きAT1R(緑色)でトランスフェクトした標的ラットメサンギウム細胞(rMC)細胞(白色)(pAT1R-rMC)中のNPEXPAng-I(赤色)の細胞内在化を示す。スケールバー20μm。
【0069】
図5図5は、ウイルス模倣性NPEXPAng-Iの取り込み特異性を示す。(A)遊離EXP3174およびカプトプリルによって阻害された、rMCにおけるNPEXPAng-I、NPAng-IおよびNPEXPのリガンド媒介性の内在化(図11および12もまた参照のこと)。(B)AT1RおよびACE陽性のrMCおよびHK-2細胞ならびにAT1RおよびACE陰性のHeLa細胞におけるNPEXPAng-Iの取り込み。フローサイトメトリーを介して解析した、標的rMCとオフターゲット(C)NCI-H295-R細胞または(D)HeLa細胞との共培養における粒子取り込みの特異性。(E)深い赤色で染色した(CTDR)オフターゲットHeLaまたはNCI-H295R細胞(白色)との共培養における、緑色で染色された(CTG)rMC(緑色)における粒子取り込み(赤色)のCLMSイメージ。スケールバー20μm。(図13もまた参照のこと)。結果は、少なくともn=3回の測定の平均±SDとして示される。統計的有意性のレベルは、カプトプリルまたはEXP3174阻害ありおよびなしの、細胞におけるNPの取り込みを比較して、**p≦0.01、***p≦0.001、****p≦0.0001および#p≦0.0001として示される。n.s.:有意ではない。
【0070】
図6図6は、マウス腎臓におけるNP分布を示す。(A)腎臓糸球体中に位置するNPEXPAng-I蛍光(白色矢印)。(B)対照の標的化されていないNPMeOは、腎臓糸球体中に蓄積せず、粒子関連蛍光を欠如する。青色:細胞核のDAPI染色;緑色:組織自己蛍光;赤色:NP関連蛍光。左から右に、四角く切り取られた領域は、拡大図として示される。
【0071】
図7図7は、蛍光顕微鏡を介して解析した、腎臓糸球体において検出されたNP関連蛍光の評価を示す。(A)異なる粒子製剤で処置したマウスの腎臓糸球体(点線の丸)のイメージ。スケールバー40μm。図14Bもまた参照のこと。(B)完全糸球体NP-蛍光の定量的解析。(C)外および内皮質の糸球体中の粒子関連蛍光の比較。(D)MCのCLSMおよびインテグリン-α8染色を介して決定した、NPEXPAng-Iの糸球体局在化(スケールバー20μm)。(C)および(D)中の結果は、NP試料1つ当たりn=6マウスの少なくともn=120の蛍光測定の平均±SDとして示される。統計的有意性のレベルは、****p≦0.0001として示される。n.s.:有意ではない。
【0072】
図8図8は、PEG-PLAブロックコポリマーへのリガンドカップリングを示す。(A)Lys-Ang-Iおよび(B)EXP3174を、それぞれ、EDC/NHSまたはDCC/NHS化学を使用して、カルボン酸で終わるまたはアミンで終わるPEG5k-PLA10kに連結させた。(C)モル濃度リガンドおよびPEG含量の定量化によって示された完全なポリマー機能化。(D)EXP3174改変ポリマー上の未反応のNHポリマー末端基の非存在を、フルオレスカミン(flurescamine)を使用して決定した。スチューデントt検定を、GraphPad Prism 6.0を使用して実施して、統計的有意性を評価した。統計的有意性のレベルは、MeO-およびEXP3174-の蛍光を、NHで終端したPEG5k-PLA10kと比較して、****p≦0.0001として示される。詳細な方法については、実施例1を参照のこと。
【0073】
図9図9は、最大カルシウムシグナルおよびNPEXPによる阻害を示す。rMCを、Ang-IIおよびNPEXPで同時に刺激し、得られた細胞内カルシウム応答を、1分間即座に測定した。使用したNPEXP濃度において、EXP3174リガンドは、アッセイ持続時間の間、アゴニストで誘発されたカルシウムシグナルを阻害しなかった。したがって、Ang-II測定値に対するEXP3174の影響は、無視できるとみなした。結果は、少なくともn=3回の測定の平均±SDとして示される。詳細な方法については、実施例1を参照のこと。
【0074】
図10図10は、CLSMを介して解析したAT1R陽性pAT1R-rMCにおける経時的な異なる粒子製剤の取り込みを示す。(A)NPEXPは、細胞系において内在化されず、大部分は、細胞膜、および経時的に大きいクラスターを形成する細胞間の糸状仮足(filipodia)に位置する。受容体結合は、NP関連蛍光および受容体関連蛍光の共局在化によって示される。(B)NPAng-Iは、それらの細胞質局在化によって示されるように、細胞によって内在化される。(C)NPMeOは、特異的標的化を可能にする係留されたリガンドの欠如に起因して、細胞に関連しない。細胞:白色;AT1R-YFP:緑色;NP製剤:赤色。スケールバー20μm。詳細な方法については、実施例1を参照のこと。
【0075】
図11図11は、EXP3174が、NPEXPAng-I上の長いポリマー鎖によるAng-Iリガンドの立体障害に起因する取り込み減少を相殺することを示している。20%のAng-I密度を有するNPAng-I(灰色)を、変動するポリマー密度のCOOH-PEG5k-PLA10kを用いて調製し、フローサイトメトリーを使用してそれらの細胞取り込みについて解析した。付随して、NPEXPAng-I(黄色)を、変動する密度のEXP3174-PEG5k-PLA10kを用いて調製して、Ang-Iの立体障害に対する第2のリガンドの効果を比較した。EXP3174によるNPEXPAng-I上の長いポリマー鎖の機能化は、機能化されていない長いポリマーを添加した場合のAng-Iリガンドの立体障害に起因して減少した取り込みを相殺し、粒子内在化を有意に増加させた。結果は、少なくともn=3回の測定の平均±SDとして示される。シダックの多重比較検定を用いた二元配置ANOVAを、GraphPad Prism 6.0を使用して実施して、統計的有意性を評価した。統計的有意性のレベルは、****p≦0.0001として示される。詳細な方法については、実施例1を参照のこと。
【0076】
図12図12は、CLSMを介して解析したNP取り込みの特異性を示す。細胞を、異なるNP製剤(NPEXPAng-I、NPAng-IおよびNPEXP)の添加前に、遊離EXP3174と共に30分間事前インキュベートした。標的受容体の阻害は、粒子関連蛍光の抑制を生じた。スケールバー20μm。詳細な方法については、実施例1を参照のこと。
【0077】
図13図13は、標的細胞およびオフターゲット細胞の共培養における(A)NPEXPおよび(B)NPAng-Iの取り込みを示す。NPEXPは、rMCおよびNCI-H205R細胞における蓄積を示すが、それは、これらの細胞が共にAT1Rを有するからである。対照的に、rMCおよびHeLa細胞の共培養は、rMCにおけるNPEXPの優先的な蓄積を示すが、それは、HeLa細胞が、細胞膜上に少量の受容体のみを発現するからである([3]を参照のこと)。NPAng-Iは、より高い特異性を示すが、それは、これらが、ACEを欠如するオフターゲット細胞(HeLaまたはNCI-H295R細胞)よりも、標的rMC中に優先的に蓄積するからであり、標的rMCは、それらの内在化のために必要な装置(ACEおよびAT1R)を有する。細胞核:青色;オフターゲット細胞(HeLaまたはNCI-H295R):白色;標的細胞(rMC):緑色;NP:赤色。スケールバー20μm。詳細な方法については、実施例1を参照のこと。
【0078】
図14図14は、異なるNP製剤のin vivo分布を示す。(A)マウス腎臓におけるNPAng-IおよびNPEXPの腎臓分布。NPAng-Iは、この領域には蓄積しなかったNPEXPとは対照的に、糸球体の大多数において小さいNP関連蛍光を示す。糸球体には、より良い可視化のために、白色矢印でマークを付ける。左から右に、四角く切り取られた領域は、拡大図として示される。細胞核のDAPI染色:青色;組織自己蛍光:緑色;NP関連蛍光:赤色。(B)NPを標識するために使用した遊離色素の腎臓分布。CF647を、対照としてマウス中に注射して、腎臓におけるその分布を評価した。糸球体(白色の丸でマークを付けた)における蛍光を伴わずに、強い蛍光が尿細管領域において検出できた。これは、粒子-試料について見られた蛍光が、粒子自体に由来し、その低い分子量に起因して自由に濾過される漏出した色素由来ではないことを実証している。(C)NRMIマウスにおける1時間の循環後の異なるNP製剤の血漿滞留。注射の1時間後の血漿中のNP蛍光を測定し、注射の5分後に測定した蛍光(初期粒子血液蛍光)に対して正規化した。標的化されていないNP(NPMeO)は、それらのPEG-シェルによって付与されたステルス効果に起因する最も高い血液循環時間を示す。粒子ステルス効果を減少させる、NPEXPAng-I表面上の全てのポリマーの40%がリガンドにカップリングされても、それらは、標的化されていない粒子の血液滞留と一致することができる。これらは、1つのリガンドのみによって機能化した粒子(NPAng-IおよびNPEXP)と比較して、1時間後に血漿中で有意なより高い蛍光を示す。特異的2ステップウイルス模倣性認識機構を有するNPAng-Iはまた、NPEXPよりも有意な優れた血液滞留を示し、これは、共通して標的化されたNPを示す。対照として、粒子を標識するために使用した遊離色素(CF647)を、マウス中にさらに注射したが、これは、その後に血液循環からその自由濾過へと迅速に消失する(1時間後に初期蛍光の6%)。(C)の結果は、少なくともn=6の試料の平均±SDとして示される。スチューデントt検定を、GraphPad Prism 6.0を使用して実施して、統計的有意性を評価した。統計的有意性のレベルは、p≦0.05、***p≦0.001および****p≦0.0001として示される。n.s.:有意ではない。詳細な方法については、実施例1を参照のこと。
【0079】
図15図15は、標的細胞への付着のための第1のリガンドおよびナノ粒子の認識/前記標的細胞中へのその内在化のための第2のリガンドを含む、本発明の決定実行ナノ粒子の例示的なin vivo使用を示す。本発明のナノ粒子は、種々の標的組織、例えばメサンギウムを標的化するために使用され得る。ナノ粒子は、標的細胞の表面上の標的受容体および/または分子を標的化する第1および第2のリガンドを選択することによって、特異的標的組織を標的化するためにカスタマイズされ得る。
【0080】
図16図16は、粒子で処置した動物の横断腎臓切片を示す。A)ウイルス模倣性粒子は、腎小体における高い蓄積を示す(丸い標識)。B)第1のリガンドおよび第2のリガンドを有さない未改変のナノ粒子は、糸球体組織中への顕著な取り込みを示さない。
【0081】
図17図17は、アデノウイルス模倣性NPが、受動的および能動的標的化戦略の相乗的な組合せを介して糸球体メサンギウム細胞に進入することを示す。(a)投与の際に、NPは、糸球体毛細血管系へと次いで分岐する輸入細動脈を介して、腎濾過システムの糸球体領域に到達する。(b)糸球体毛細血管内で、NPは、その網状構造に起因して、腎フィルターを通過できないが、内皮開窓を介して血管外遊出することができ、それにより、隙間に位置するメサンギウムに到達する。(c)その後、ウイルス模倣性NPは、アンジオテンシンII受容体1型(AT1r)への初期結合および引き続くαVβ3インテグリン媒介性のエンドサイトーシスを介して、メサンギウム細胞に効果的に浸潤することができる。(AA:輸入細動脈;EA:輸出細動脈;MC:メサンギウム細胞;PO:有足突起;FP:小足;ET:内皮;BM:基底膜)。
【0082】
図18図18は、アデノウイルス模倣性NPの特徴付けを示す。(a)ヘテロ-多価EXPcRGD NPならびにホモ-機能的または機能化されていないNP種の粒子設計。(b)DLS解析。全ての粒子型を、顕著な凝集なしに、60nmのサイズ閾値を下回って製造した(PDI:多分散性指数)。(c)ゼータ電位測定値。ポリマーミックスへのCOOH-PEG2k-PLA10kの添加は、負の表面電荷を生じる。(d)/(e)NP製造後の、それぞれcRGDfKおよびEXP3174リガンド表面密度の定量化。最終表面含量は、cRGDfK(R=0.9957)およびEXP3174(R=0.9871)の両方について、リガンド機能化ポリマーの前もって添加された量と正比例した。結果は、平均±SDを示す(n=3)。
【0083】
図19図19は、アデノウイルス模倣性NPのAT1r相互作用を示す。(a)遊離EXP3174または粒子結合EXP3174で処置したrMCのAT1r刺激後の細胞内カルシウムレベル。EXPcRGD NP(IC50=276±31pM)およびEXP NP(IC50=552±73pM)は共に、AT1rに効果的に結合し、それにより、AT1rを阻害し、アンジオテンシンII(ATII)によるAT1r刺激の際の低いCa2+流入を生じた。この効果は、多価性由来のアビディティ増大に起因して、遊離EXP3174(IC50=2.66±0.9nM)についてよりも、さらに強かった。(b)AT1rリガンドなしのNPで処置したrMCについてのAT1r活性。機能化されていない対照NPもcRGD NPも、AT1rに有意には結合できず、ATII刺激の際に最大カルシウムレベルを生じ、アッセイの特異性を確認した(M=NPまたはEXP3174のいずれかの、モル濃度)。結果は、平均±SDを示す(n=3)。
【0084】
図20図20は、標的メサンギウム細胞によるin vitroでのNPの内在化を示す。(a)0.05mg/mLのAlexaFluor(商標)568で標識したEXPcRGDナノ粒子とのインキュベーション後の、CTDRで染色されたrMCのCLSM解析。NP関連蛍光(紫色)が、rMCサイトゾル内の小胞構造(灰色)において検出できた。インキュベーション時間の増加と共に、エンドサイトーシス小胞は、サイズ、数および強度において共に成長し、より大きいエンドソームへの小胞の融合を示す(スケールバー20μm)。(b)rMC中へのNP取り込みのフローサイトメトリー解析。ヘテロ-多価EXPcRGD NPは、対照NPならびにホモ-機能的NPと比較して、実質的に増加した細胞取り込みを示した。(c)60分間のNPインキュベーション後のフローサイトメトリー結果。EXPcRGD NPは、全ての他のNP型と比較して、最大細胞会合を示したが、過剰量の遊離cRGDfK(c=500μM)の添加は、蛍光シグナルを、EXP NPのレベルまで鋭く減少させ、これは、NP取り込みのαVβ3依存性を示す。結果は、平均±SDを示す(n=3)。◇P<0.0001、○P<0.001、****P<0.0001(AFU、任意の蛍光単位)。
【0085】
図21図21は、メサンギウム細胞とのNP相互作用のTEM解析を示す。(a)rMC内の多数の小胞構造(黒色矢印)中に蓄積したEXPcRGD NP。異なるサイズの小胞が、細胞サイトゾルの外側部分および内側部分の両方中に存在し、これは、細胞内プロセシングおよびより大きいエンドソームへの融合を示している。さらに、かなりの数のNPが、細胞膜になおも位置し、これは、粒子が初期細胞結合および引き続くエンドサイトーシスの段階的プロセスを受けたことを示唆している(右側のイメージは、左側の黒色の四角のズームインした図を示す)。(b)対照的に、EXP NPは、それらがrMC細胞の明確な表面構造に結合した場所である細胞境界においてのみ蓄積し、これは、膜に結合したAT1rとの可能な相互作用を示している(左上角のイメージは、黒色の四角のズームインした図を示す)。(c)対照NPは、rMCとの無視できるほどの相互作用のみを示し、金で増強されたNPはほとんど眼に見えなかった。
【0086】
図22図22は、in vitro共培養アッセイにおけるEXPcRGD NPのメサンギウム細胞選択性を示す。(a)オフターゲット細胞として作用したCTDRで標識したHeLaまたはNCI-H295R細胞(灰色)と共に共培養した、CTGで染色されたrMC(緑色)のCLSM解析。細胞核をHoechst 33258で染色した(青色)。rMC/HeLa共培養(上の横列)について、NP由来蛍光(紫色)は、rMCの領域内でのみ検出することができ、これは、標的細胞中への選択的EXPcRGD NP取り込みを示している。rMCとAT1r発現NCI-H295R細胞との共培養は、多様なNP分布をもたらす(下の横列)。EXPcRGD NPは、それにより、NCI-H295R細胞の表面にも結合し、細胞境界周囲の拡散したパターンをもたらした。しかし、丸形のエンドサイトーシス小胞中への効率的な粒子取り込みは、メサンギウム細胞においてのみ見ることができた(スケールバー20μm)。HeLa(b)およびNCI-H295R(c)の両方とのrMCのフローサイトメトリー解析は、CLSM結果を支持したが、それは、EXPcRGD NPが、両方の場合に、rMCとの有意により高い細胞会合を示したからである。興味深いことに、(c)における過剰量の遊離EXP3174(c=1mM)の添加は、NCI-H295R細胞とのNP相互作用を鋭く低減させ、これは、EXPcRGD NPが、AT1rを介してNCI-H295R細胞にもはや結合できなかったことを示している。結果は、平均±SDを示す(n=3)。****P<0.0001(n.s.:有意でない.AFU、任意の蛍光単位)。
【0087】
図23図23は、EXPcRGD NPが強い糸球体内蓄積をin vivoで示すことを示している。横断腎臓凍結切片を、蛍光顕微鏡を使用してイメージングした。組織学的評価を促進するために、細胞核をDAPIで染色し(青色)、組織自己蛍光を記録した(緑色)。EXPcRGD NP(赤色)は、皮質の糸球体領域(白色の丸)中にほぼ排他的に蓄積したことが見出されたが、尿細管領域中の蛍光は無視できた(左上から右下に、イメージは、白色の四角のズームインした図を示す)。
【0088】
図24図24は、EXPcRGD NPが、メサンギウム細胞における有意に増強された蓄積を示すことを示している。(a)蛍光顕微鏡解析により、糸球体(白色の丸)内の高い蛍光レベルが、EXPcRGD NPについて主に検出することができたことが明らかになった。EXP NPは、糸球体における中等度の蓄積を示したが、対照NPおよびcRGD NPは、顕著な程度まで一切シグナルを生じなかった(スケールバー20μm。較正バー:0~65535グレイの値)。(b)糸球体内蛍光強度の正確な定量化を、十分な数の糸球体について、糸球体の面積当たりの積分した密度を評価することによって達成した。それにより、EXPcRGD NPは、全ての他の粒子型と比較して、糸球体1つ当たり、はるかにより高い蛍光強度を示した。結果は、平均±SDを示す(n=60)。****P<0.0001(AFU、任意の蛍光単位)。(b)メサンギウム表面マーカーインテグリンα-8についての抗体染色は、EXPcRGD NP関連蛍光(赤色)が、メサンギウム細胞によって覆われた領域と共に共局在化したことを示し(黄色)、これは、EXPcRGD NPが、エンドサイトーシスを介してメサンギウム細胞に選択的に浸潤することができたことを示している。スケールバー20μm。
【0089】
図25図25は、リガンド機能化PEG-PLAブロックコポリマーのための合成概念を示す。(a)変動する鎖長さ(2kDa/5kDa)のヘテロ-二機能的PEGポリマー((1))を、3,6-ジメチル-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン((2))と混合して、開環重合を介してNH-PEG5k-PLA10kならびにCOOH-PEG2k-PLA10k((3))を創出した。(b)引き続いて、NH-PEG5k-PLA10kを、DCC/NHS化学を介して、EXP3174((4))のカルボキシル基に共有結合的にカップリングさせ、EXP3174-PEG5k-PLA10k((5))を得た。(c)さらに、COOH-PEG2k-PLA10kを、EDC/NHS化学を介して、cRGDfK((6))のリシン残基に結合させて、より短いcRGDfK-PEG2k-PLA10k((7))をもたらした。(d)合成されたEXP3174-PEG5k-PLA10kについてのカップリング効率を、PEGおよびEXP3174の両方のモル濃度を比較することによって決定した。それにより、モル濃度は、有意には変動せず、これは、首尾よい機能化を示している。(e)cRGDfK-PEG2k-PLA10kについてのカップリング効率もまた、PEGおよびcRGDfKのモル濃度における無視できるほどの差異のみを伴って、合理的な範囲内であった。結果は、平均±SDを示す(n=3)。
【0090】
図26図26は、TEM可視化の促進を可能にする金タグ付きNPを示す。NPを、極小の金ナノ粒子(直径:2.2nm)を、NPを製造するために次いで使用したPLGAのカルボキシル基に共有結合的に結合させることによって金で標識した。rMCと標識されたNPとのインキュベーション後、粒子コアを、NPコア上にさらなる金粒子を沈着させることによって金で増強し、それにより、試料の電子密度を増加させ、TEM顕微鏡における可視化を可能にし、このとき、NPは、暗黒色のスポットとして出現した。
【0091】
図27図27は、(a)フローサイトメトリー結果および(b)CLSMによって調査した、異なる細胞型によるαVβ3発現の定量化を示す。サイトメトリー解析のために、非特異的結合部位を、DPBS中2%のBSAでブロッキングし、10個の細胞を、DPBS中0.1%のBSA中1:20希釈のAlexaFluor(登録商標)抗CD51/61抗体(非特異的対照として機能するAlexaFluor(登録商標)マウスIgG1、κアイソタイプ対照(FC))と共に1時間インキュベートした。その後、細胞は、DPBS洗浄および遠心分離の複数のステップを受けた。最後に、試料を、DPBS中に再懸濁し、以前に記載されたようにフローサイトメトリーを使用して解析した(FACS Calibur、励起:633nm、発光:661/16nmバンドパスフィルター)。αVβ3由来の蛍光レベルは、それにより、rMCについて最大であったが、HeLaおよびNCI-H295R細胞は共に、無視できるほどのシグナルを示し、これらは共に、rMCについてよりも有意に低かった。結果は、平均±SDを示す(n=3)。****P<0.0001、**P<0.01、P<0.05(AFU、任意の蛍光単位)。フローサイトメトリー結果を確認するために、rMCを、8ウェルIbidiスライド中に播種し(15,000細胞/ウェル)、上記のように、αVβ3インテグリンについて染色した。次いで、細胞を、DPBSで洗浄し、DPBS中4%のPFAで固定し、Zeiss LSM 710で解析した。CLSMイメージは、rMC細胞体と共に共局在化した強いインテグリンシグナルを示し、これは、メサンギウム細胞による実質的なαVβ3発現を示している。スケールバー20μm。
【0092】
図28図28は、蛍光イメージングの結果を示す。A)NP注射後の相対的血漿蛍光。対照NPは、注射の60分後に、ほぼ50%の残留血漿蛍光を伴って、最大血液循環値を示した。両方が許容できる残留濃度を示したEXP NPならびにEXPcRGD NPとは対照的に、cRGD NPは、血液から迅速にクリアランスされた。結果は、平均±SDを示す(n=3)。****P<0.0001、***P<0.001、**P<0.01.(n.s.:有意でない)。B)遊離CF(商標)647蛍光色素の注射後の腎臓凍結切片の蛍光イメージング。細胞核を可視化するために、切片をDAPI染色した(青色)。匹敵するモル濃度の遊離色素の注射の後、強い蛍光シグナル(赤色から白色)が、腎臓の尿細管領域において検出され得、これは、低分子色素の自由な腎濾過を示している。予想したように、糸球体内蓄積は検出できなかった(白色の丸)(較正バー:0~65535グレイの値)。
【0093】
図29図29は、NPで補助されたシナシグアト送達の概念を示す。ヘテロ-多価EXPcRGD NPは、以前に記載された逐次的な認識シーケンスを介して、標的腎メサンギウム細胞に進入する。首尾良いエンドサイトーシスの後、NPは、エンドリソソーム分解を受け、シナシグアトの放出をもたらす(小さいドット)。次いで、CCGは、メサンギウムsGCを活性化および安定化し、増強されたNO媒介性のcGMP産生をもたらす。タンパク質調節型キナーゼ(PGK1-α)のcGMP媒介性の活性化を介して、いくつかの線維化促進性経路が阻害され、メサンギウム細胞の線維化促進性リモデリングにおける全体的低減をもたらす。
【0094】
図30図30は、例示的な実験的セットアップを示す。全ての実験について、遊離シナシグアト(c=2μM)を、0.2μMの濃度のCCGを有するまたは薬物を有さないEXPcRGD NPと比較した。遊離シナシグアトの量は、この濃度範囲において強力な効果を示した以前の研究に従って選択した。
【0095】
図31図31は、薬物標的に対するシナシグアトの効果のウエスタンブロット解析を示す。a)sGC刺激および安定化。遊離CCGおよびCCGで負荷されたEXPcRGD NPの両方が、24時間のインキュベーションの間に、sGCレベルにおける実質的な増加をもたらすが、CCGを欠如する対照NPは、顕著な効果を示さなかった。b)PGK1-αの活性化。PGK1-α活性を評価するために、その基質である血管拡張因子刺激リン酸化タンパク質(VASP)のリン酸化を評価した。遊離CCGおよびCCG保有EXPcRGD NPの両方が、それにより、P-VASP/VASP比における顕著な増加を示したが、対照NPは、検出可能な変化をもたらさない(n=3;****P<0.0001;***P<0.001;**P<0.01;P<0.05)。
【0096】
図32-1】図32は、シナシグアトで負荷されたNPの抗線維化効果および抗増殖効果を示す。メサンギウム細胞を、線維化変化および過剰増殖的変化を誘導するための10ng/mLのTGF-βとの48時間のインキュベーションの前に4時間にわたって、遊離CCGまたはNPと共に事前インキュベートした。a)MTTアッセイは、抗増殖効果を示す。メサンギウム細胞は、TGF-β刺激の際に有意な過剰増殖を示したが、遊離CCGまたはCCGで負荷されたNPとの事前インキュベーションは、この効果をかなり減少させた。b)α-SMAおよびc)コラーゲンIレベルの両方のウエスタンブロット解析は、TGF-β対照と比較して、CCGまたはCCGで負荷されたNPについて、両方の線維症マーカーの劇的な低減を示した(n=3;****P<0.0001;***P<0.001;n.s.有意でない)。d)LSM解析は、b)からの結果をさらに支持し、メサンギウム細胞は、CCGまたはCCG保有NPとの事前インキュベーションにより、α-SMAのかなり低減された産生を示した。スケールバー=2μm。
図32-2】同上。
【発明を実施するための形態】
【0097】
以下では、本発明を限定するためではなく例示するために与えられた実施例に対して参照がなされる。
【実施例
【0098】
(実施例1)
材料および方法
細胞培養
この研究で使用した細胞系を、37℃および5%COで培養した。rMC、NCI-H295RおよびHeLa細胞を、10%FBSおよびインスリン-トランスフェリン-セレンおよび100nMヒドロコルチゾンを補充したRPMI1640培地(Sigma Aldrich)中で培養した。HK-2細胞を、10%FBSを補充したDMEM-F12(1:1)培地(Sigma Aldrich)中で維持した。pAT1R-rMCを、製造業者の指示に従って市販のトランスフェクション試薬Lipofectamine 2000を使用して、YFP-タグを有するAT1Rをコードするプラスミド(CXN2-HA-AT1R-YFP)([4]を参照のこと)でrMCをトランスフェクトすることによって得た。pAT1R-rMCを、10%FBSおよび600μg/mlジェネティシン(G418)を補充したRPMI1640培地中で培養した。細胞系を、以前に示されたように[1、3]、それらの標的AT1RおよびACE発現について特徴付けた。
【0099】
マウス
動物に対する実験的手順は、国のおよび施設のガイドラインに従って実施し、現地の当局によって承認された(Regierung von Unterfranken、参照番号:55.2-2532-2-329)。Key Resources Table中に示したマウスを、10週齢で、この研究において使用した。雌性マウスだけを、全ての実験で使用した。これらのマウスを、標準条件(50±5%の相対湿度、21±1℃の温度、空気交換>8AC/時間、および12時間:12時間(L:D)の明期間)の下で、特定病原体除去(SPF)収容施設下で維持した。
【0100】
ポリマー調製:ブロックコポリマー合成
PEG-PLAブロックコポリマー(COOH-PEG2k-PLA10k、COOH-PEG5k-PLA10k、NH-PEG5k-PLA10kおよびMeO-PEG5k-PLA10k)を、環状3,6-ジメチル-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン(ラクチド)の開環重合を介して合成した。手短に言えば、ラクチドを、使用前に無水酢酸エチルから再結晶化し、室温(r.t.)で12時間にわたって40℃で真空下で乾燥させた。COOH-PEG5k-OH、COOH-PEG2k-OH、Boc-NH-PEG5k-OHまたはMeO-PEG5k-OHを、開環重合のためのマクロ開始剤として使用した。これらを、無水DCM中に溶解させ(0.3mmol)、精製されたラクチド(18mmol)と混合した。1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)(0.9mmol)を、触媒として添加した。重合を、1時間後に安息香酸(4.6mmol)でクエンチした。得られたポリマーを、ジエチルエーテル中で沈殿させ、12時間にわたって40℃(COOH-PEG2k-PLA10k、COOH-PEG5k-PLA10kおよびMeO-PEG5k-PLA10kについて)または35℃(Boc-NH-PEG5k-PLA10kについて)で真空下で乾燥させた。Boc保護基の切断のために、Boc-NH-PEG-PLAを、50%(v/v)TFA/DCM中に溶解させ、r.t.で30分間撹拌した。その後、これを、3倍体積のDCMで希釈し、飽和重炭酸ナトリウム溶液で3回洗浄した。有機相を、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮した。得られたNH-PEG5k-PLA10kを、ジエチルエーテル中での沈殿を介して精製し、引き続いて、12時間にわたって35℃で真空下で乾燥させた。
【0101】
ポリマー調製:リガンドカップリング
Ang-Iで改変されたポリマーの調製(図8もまた参照のこと)のために、14μmolのCOOH-PEG5k-PLA10kを、DMF中の25モル過剰なEDCおよびNHSを用いて2時間活性化した。その後、863μmolの2-メルカプトエタノール(2-mercapthoethanol)を添加して反応を20分間クエンチし、その後、DMF中66μmolのDIPEAおよび17μmolのLys-Ang-Iを滴下添加した。48時間後、得られたポリマーを、超純水(Millipore)中に希釈して、10%を下回るDMF濃度にし、24時間(30分、2時間および6時間後の媒体交換を伴う)にわたって6~8kDa分子量カットオフ再生セルロース透析メンブレンを使用して透析して、未反応のリガンドおよび試薬を除去した。EXP3174で改変されたポリマーの調製(図8もまた参照のこと)のために、96.4μmolのEXP3174を、DMF中の等モル量のDCCおよびNHSを用いて2時間活性化した。その後、得られた尿素副産物を、遠心分離(5分、12,000×g)および0.2μm Rotilabo PTFEシリンジフィルターを用いた引き続く濾過によって除去した。DMF中の27.6μmolのNH-PEG5k-PLA10kおよび17.5モル過剰なDIPEAを、活性化されたリガンドに添加し、20時間反応させた。リガンドで改変されたポリマーを、氷冷1:5(v/v)ジエチルエーテル:メタノール中での沈殿、および10mMホウ酸緩衝液(pH8.5)中10%のエタノールに対する24時間の引き続く透析によって精製して、過剰な遊離リガンドを除去し(30分および6時間後の媒体交換を伴う)、その後、超純水に対して透析して、24時間(30分、2時間および6時間後の媒体交換を伴う)にわたって6~8kDa分子量カットオフ再生セルロース透析メンブレン(Spectrum Laboratories)を使用して緩衝塩を除去した。リガンドで改変されたブロックコポリマーを、リガンドカップリング確認の前に、72時間凍結乾燥させた。そのために、ポリマーを、40mg/mlの濃度でACN中に可溶化し、撹拌超純水中で沈殿させて、ポリマーミセルを創出した(最終濃度1mg/ml)。PEG含量を、比色ヨウ素錯体形成アッセイを使用して定量化し、カップリングされたAng-Iを、FLUOstar Omegaマイクロプレートリーダーを使用して、製造業者の指示に従ってPierce BCAアッセイキットを使用して定量化した。EXP3174を、LS-5S蛍光プレートリーダーを使用して、λex=250nmおよびλem=370nmにおいて蛍光的に定量化した。NH-PEG5k-PLA10k上の未反応のNH末端基の非存在を、フルオレスカミンを使用して決定した(図8もまた参照のこと)。
【0102】
ポリマー調製:PLGAの蛍光標識
in vitroおよびin vivoの粒子検出のために、蛍光標識したPLGAを粒子コアにおいて使用した。その目的のために、TAMRA-アミン(CLSMのため)およびCF6467-アミン(フローサイトメトリーおよびin vivo実験のため)を、カルボン酸で終端した13.4kDaのPLGAに共有結合的にカップリングさせた。簡潔に述べると、5μmolの酸で終端したPLGAを、無水DMF中に溶解させ、129μmolのDMTMM(25倍過剰)を用いてr.t.で2時間活性化した。その後、1μmolの蛍光色素をDMF中に溶解させ、PLGAに滴下添加し、暗所でr.t.で72時間反応させた。反応産物を希釈し(DMF<10%)、遮光下で34時間(30分、2時間および6時間後の媒体交換を伴う)にわたって3.5kDa分子量カットオフ再生セルロース透析メンブレン(Spectrum Laboratories)を使用して、超純水に対して透析した。次いで、蛍光標識したPLGAを、3日間凍結乾燥させた。
【0103】
NPの調製および特徴付け:粒子調製
NP調製のために、PEG-PLAブロックコポリマーおよび13.4kDaのPLGAを、ACN中10mg/mLの最終濃度になるように、70:30の質量比で混合した。リガンドで改変された粒子のために、COOH-PEG2k-PLA10kおよびリガンドで改変されたポリマーを、NP構造を構成するポリマーの20%がAng-I(NPAng-I)または/およびEXP3174(それぞれ、NPEXPおよびNPEXPAng-I)で改変されるように、しかるべく混合した。NPを、激しく撹拌する10%DPBS(v/v)(pH7.4)中でのポリマー混合物のバルクナノ沈殿を介して、1mg/mlの最終濃度になるように調製した。粒子を2時間撹拌して、有機溶媒の蒸発を確実にし、30kDa分子量カットオフMicrosepアドバンス遠心分離デバイス(Pall Life Sciences)を使用する756gで20分間の超遠心分離によって濃縮した。
【0104】
NPの調製および特徴付け:動的光散乱およびζ電位
得られた粒子のサイズおよびζ電位を、173°の後方散乱角で633 He-Neレーザーを備えたZetaSizer Nano ZS(Malvern Instruments)およびMalvern Zetasizerソフトウェアバージョン7.11を用いて、それぞれ1mg/mLまたは3.5mg/mlの濃度を使用して、25℃の一定温度で10%PBS中で決定した。キュベット位置を、4.65mmに設定し、減衰器を、デバイスによって自動的に最適化した。使い捨てのマイクロキュベット(Brand)および折りたたみキャピラリーセル(Malvern Instruments)を、それぞれ、サイズおよびζ電位の測定に使用した。
【0105】
NPの調製および特徴付け:粒子定量化
粒子PEG濃度の定量化を、比色ヨウ素錯体形成アッセイを使用して実施し、凍結乾燥を介して決定した重量測定的NP含量と相関させた。手短に言えば、粒子試料を、超純水中に希釈して、5~30μg/mLの範囲のPEG濃度にした。MeO-PEG-OHの超純水中での希釈(0~40μg/mL)を、較正曲線のための標準として使用した。140μLの試料または標準を、1N HCl中5%(m/v)の塩化バリウム溶液および0.1Nヨウ素水溶液の2:1(v/v)混合物60μLと混合した。試料および標準を、96ウェルプレート中に移し、535nmにおけるそれらの吸光度を、FUOstarマイクロプレートリーダー(BMG Labtech)を使用して測定した。粒子PEG含量と正確なポリマー濃度との相関を、試料凍結乾燥後に重量測定的に決定した。モル濃度での粒子濃度を、比色ヨウ素錯体形成アッセイを介して決定した粒子質量、粒子密度(1.25g/cm)、および球状の粒子形状を仮定するDLS測定を介して得たNPの流体力学直径から計算した。粒子コロナ上のリガンド濃度を、上記のように、BCAアッセイを使用して、それぞれ、Ang-IおよびEXP3174について蛍光定量的に定量化した。
【0106】
細胞内カルシウム測定
異なるNP製剤のAT1R相互作用を評価するために、比率計測的Fura-2 Ca2+キレーター法を、AT1R陽性rMCを使用して、以前に記載されたように[1、3]使用した。その目的のために、rMCを、T-150フラスコ(Corning)中に播種し、コンフルエントになるまでインキュベートした。引き続いて、それらをトリプシン処理し、遠心分離し(200g、5分間)、5μM Fura-2、AM(Thermo Fisher)、0.05%Pluronic F-127および2.5mMプロベネシドを補充したLeibovitz培地中に再懸濁した。穏やかにかき混ぜながら(50rpm)、細胞を1時間インキュベートし、光保護した。その後、細胞懸濁物を、遠心分離(2×、200g、5分間、RT)によってDPBSで洗浄し、2.5mMプロベネシドを補充したLeibovitz培地中に、2百万細胞/mLのカウントで再懸濁した。AT1Rに対する粒子アビディティおよびリガンド親和性を決定するために(図3A~C)、懸濁物中のFura-2で負荷されたrMC(90,000細胞/ウェル)45μlを、96ウェルハーフエリアマイクロプレート中で10μLの異なる試料(NP、または1nm~300μM(リガンド濃度)の範囲の遊離リガンド)と共にr.t.で30分間インキュベートした。その後、細胞を、45μLの300nM Lys-Ang-II水溶液で刺激し、得られたカルシウムシグナルを、340/20nmおよび380/20nmの励起ならびに510/20nmの発光バンドパスフィルターを用いてFLUOstar Omegaマイクロプレートリーダー(BMG Labtech)を使用して、1分/ウェルにわたって即座に記録した。AT1R相互作用の動力学を決定するために(図3D)、同じ手順を使用したが、試料は、異なる期間(5~320分間)にわたって細胞と共にインキュベートした。最大および最小シグナル比を、それぞれ、0.1%Triton-X 100、または45mMエチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA)と合わせた0.1%Triton-X 100で細胞を刺激することによって決定した。細胞内カルシウム濃度を、225nMのK値を仮定するGrynkiewicz後に計算した。統計的有意性を、GraphPad Prism 6.0を使用して、スチューデントt検定(図3C)、およびシダックの多重比較を使用する二元配置ANOVA(図3D)を介して評価した。
【0107】
酵素の動力学的測定
NPAng-IおよびNPEXPAng-Iについてのミカエリス・メンテン動力学を、細胞膜結合酵素の可溶性代替物としてウサギ肺ACE(Sigma Aldrich)を使用して、以前に記載されたように[1]決定した。手短に言えば、異なる濃度のNP(10~120μMのAng-Iに対応する)を、異なる期間(5、15、30、60、90および120分間)にわたって18μMの酵素と共にインキュベートして、粒子コロナ上のAng-IをAT1R活性のリガンドAng-IIに変換した。得られたAng-IIを、直接的細胞内カルシウム測定によって定量化した。その目的のために、rMCに、上記のようにFura-2色素を負荷した。次いで、10μLの試料を、96ウェルハーフエリアプレート上にピペッティングし、90μLのFura-2で負荷されたrMC懸濁物(90,000細胞/ウェル)を、それらの上に注入した。得られたカルシウムシグナルを、上記のように、FLUOstar Omegaマイクロプレートリーダー(BMG、Labtech)を使用して1分間即座に記録した。使用した実験条件下でのNPEXPAng-Iに対するEXP3174リガンドの干渉を排除するために、NPEXPを対照として使用した(図9を参照のこと)。rMC(90,000細胞/ウェル)を、異なるNPEXP濃度およびLys-Ang-II(400nM)で同時に刺激し、得られたカルシウムシグナルを、1分間即座に記録した。1nm~300μMの範囲の既知の濃度の遊離Lys-Ang-IIを使用して、測定したカルシウム濃度を、加水分解された産物のpmolに変換した。15分間のインキュベーション時間における反応の速度(pmol/分)を、GraphPad Prism 6.0を使用して、アッセイにおいて使用した基質濃度に対してプロットして、粒子ベースのおよびリガンドベースの濃度についてのミカエリス・メンテン定数(Km)を決定した(図3E)。同じ酵素について異なる基質を比較するために使用した特異性定数(Kcat/Km)を計算するために、触媒定数(Kcat)を、同じソフトウェアを使用して得た(図3F)。統計的有意性(図3F)を、GraphPad Prism 6.0を使用して、チューキーの多重比較検定を用いた二元配置ANOVAを介して評価した。
【0108】
NPの細胞分布:共焦点顕微鏡
異なる粒子製剤の細胞分布を決定するために(図4)、pAT1R-rMCを、8ウェルμ-スライド(Ibidi、Graefelfing、Germany)中に10,000細胞/ウェルの密度で播種し、24時間インキュベートした(37℃)。次いで、これらを、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を補充したLeibovitz培地(LM)中の事前に温めたNP溶液(0.2mg/ml)と共に、15、45または90分間インキュベートした。その後、NPを廃棄し、細胞をDPBSで徹底的に洗浄し、その後、1×CellMask(商標)Deep Red Plasma Membrane Stainで5分間細胞染色し、DPBS中4%のパラホルムアルデヒド(PFA)でr.t.で10分間固定した。イメージを、Zenソフトウェア(Carl Zeiss Microscopy)を使用して、1.4μmに設定した焦点面を用いてZeiss LSM 700顕微鏡を使用して獲得した。粒子の取り込みおよび結合の阻害のために、細胞を、粒子添加前に、1mMの遊離EXP3174またはカプトプリルと共に事前インキュベートした。イメージを、Fijiソフトウェアを使用して解析した。
【0109】
NPの細胞分布:フローサイトメトリー
フローサイトメトリーを介した粒子取り込みの解析(図5A)を、以前に記載されたように実施した[1]。手短に言えば、rMCを、24ウェルプレート中に30,000細胞/ウェルの密度で播種し、48時間インキュベートした(37℃)。事前に温めたNP溶液(0.1%BSAを補充したLM中0.7mg/ml)を、細胞の上にピペッティングし、それらをDPBSで洗浄した後、37℃で45分間インキュベートした。取り込み特異性を確認するために、細胞を、粒子添加の前に30分間にわたって、1mMのカプトプリルおよび/またはEXP3174と共にインキュベートした。その後、粒子溶液を廃棄し、細胞をDPBSで徹底的に洗浄し、トリプシン処理し、遠心分離した(2×、200g 5分間、4℃)。NP関連細胞蛍光を、FACS Caliburサイトメーター(Becton Dickinson)を使用してDPBS中で解析した。蛍光を、633nmで励起し、661/16nmバンドパスフィルターを使用して記録した。生存細胞の集団を、Flowingソフトウェア2.5.1.(Turku Centre for Biotechnology)を使用してゲート処理し、NP関連蛍光の幾何平均を解析した。統計的有意性(図5A)を、GraphPad Prism 6.0を使用してスチューデントt検定を介して評価した。
【0110】
NP標的細胞特異性:フローサイトメトリー
異なる細胞系におけるNP取り込みを評価するために(図5B)、rMC、HK-2およびHeLa細胞を、24ウェルプレート中にそれぞれ30,000、50,000または100,000細胞/ウェルの密度で播種し、48時間インキュベートした(37℃)。その後、事前に温めたNP溶液(0.1%BSAを補充したLM中0.7mg/ml)を、上記のように細胞の上に添加し、処理した。統計的有意性(図5B)を、GraphPad Prism 6.0を使用して、シダックの多重比較検定を用いた二元配置ANOVAを介して評価した。
【0111】
標的細胞およびオフターゲット細胞の共培養における粒子特異性を、以前に記載されたように[1]、フローサイトメトリーを介して調査した(図5C~D)。簡潔に述べると、CTGで染色されたrMC(無血清培地中10μM、30分間、37℃)を、24ウェルプレート中にそれぞれ10,000および75,000細胞/ウェルの密度の未染色のオフターゲットNCI-H295RまたはHeLa細胞との共培養で播種し、48時間インキュベートした。0.1%BSAを補充したLM中0.02mg/mlの濃度の温かいNP溶液を、細胞の上に引き続いて添加し、37℃で45分間インキュベートした。その後、上記のように、粒子を廃棄し、細胞をフローサイトメトリー解析のために処理した。統計的有意性を、GraphPad Prism 6.0を使用してスチューデントt検定を介して評価した。
【0112】
NP標的細胞特異性:共焦点顕微鏡
フローサイトメトリー実験を確認するために、共培養における粒子特異性のCLSM解析(図5Eおよび図13)を、以前に記載されたように実施した[1]。手短に言えば、標的であるCTGで染色されたrMC(10μM、30分間、37℃)を、それぞれ2,000および10,000細胞/ウェルの密度の、CTDRで染色されたオフターゲットHeLaまたはNCI-H295R細胞(25μM、30分間、37℃)との共培養で播種し、24時間インキュベートした。その後、細胞核を、Hoechst 33258(DPBS中5μg/ml)で20分間染色し、0.1%BSAを補充したLM中の事前に温めた0.02mg/mLのNP溶液を、細胞の上にピペッティングし、45分間インキュベートした。次いで、NP溶液を廃棄し、細胞をDPBSで徹底的に洗浄し、DPBS中4%のPFAで10分間固定した(r.t.)。上記のように、イメージを獲得し、それぞれ、Zeiss LSM 700顕微鏡およびFijiソフトウェアを使用して解析した。
【0113】
in vivoのNP腎臓分布
異なるNP製剤(NPEXPAng-I、NPAng-I、NPEXPおよびNPMeO)の腎臓分布を評価するために、120nMのNP溶液(およそ10mg/mlのNPと等価)100μLを、イソフルラン吸入およびブプレノルフィン(0.1mg/kg体重)で麻酔した10週齢雌性NMRIマウス(Charles River)において、頸静脈を介して注射した(各粒子試料についてn=6)。さらに、対照として、粒子を蛍光標識するために使用した遊離色素(CF647)100μLを、粒子試料中に含めたのと同じ濃度(およそ50μM)で注射した。5分間後、血液試料を、i.v.穿刺を介して収集したが、マウスはなおも麻酔下にあった。1時間の粒子循環の後、マウスを、ケタミン/キシラジンで麻酔し、最終血液試料を収集し、4%PFAによる潅流固定を介して屠殺した。腎臓を回収し、横断して切断した。これらを、18%スクロースおよび1%PFAを補充したリン酸緩衝液(0.1M pH7.4)中に一晩置くことによって、凍結保護した。その後、これらを、液体窒素で冷却した2-プロパノール中で凍結させ(-40℃)、凍結切片のためにTissue Tek(登録商標)O.C.T.(商標)Compound中に包埋した。腎臓を、CryoStar NX70クライオスタット(Thermo Fisher Scientific)を使用して5μmの切片へと切断し、Superfrost(商標)プラスガラススライド上に移した。より良い可視化のために、細胞核を、Axiovert 200M(Zeiss)蛍光顕微鏡およびZenソフトウェア(Zeiss)を使用する切片イメージングの前に、DAPI(DPBS中12.5μg/ml)で染色した。腎臓全体のイメージを、10×対物レンズを使用して獲得した(図6)。糸球体蛍光定量化のために、イメージを、40×対物レンズを使用して取得し(試料1つ当たり120個の糸球体の平均)、Fijiソフトウェアを使用して解析した(Schneider et al., 2012)。より良い可視化のために、ルックアップテーブル「Red Hot」を、粒子関連蛍光に適用した。各糸球体の面積を定量化し、蛍光面積をゲート処理した。次いで、各ゲート処理した面積の積分した蛍光密度を定量化し、全糸球体面積と相関付けた。統計的有意性を、GraphPad Prism 6.0を使用してスチューデントt検定を介して評価した。内および外皮質の粒子関連蛍光を比較するために、皮質を、2つの等しい切片に分割し、糸球体蛍光を、上記のように解析した。統計的有意性を評価するために、シダックの多重比較検定を用いた二元配置ANOVAを、GraphPad Prism 6.0を使用して実施した。
【0114】
血漿中のNP関連蛍光を、それぞれ640nmおよび680nmの励起および発光波長を用いてFLUOstar Omegaマイクロプレートリーダー(BMG Labtech)を使用して測定した。注射の1時間後の蛍光を、注射の5分後に得た試料の初期蛍光と相関付けた。
【0115】
免疫組織化学
NPの糸球体局在化を評価するために、新たに切断した5μmの腎臓凍結切片を、DPBSで5分間洗浄し、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を補充したDPBSで5分間洗浄し、DPBSで5分間洗浄し、その後、0.04%Triton-X(m/v)を補充したDPBS中5%のBSAで10分間ブロッキングした。切片を、DPBSで再度洗浄し(5分間)、0.5%BSAおよび0.004%Triton-X(m/v)を補充したDPBS中の一次ポリクローナルヤギ抗インテグリン-α8抗体の1:200溶液中で4℃で一晩インキュベートした。次いで、これらを、DPBS中で5分間洗浄し、0.5%BSAおよび0.04%Triton-Xを補充したDPBS中のCy2-抗ヤギ二次抗体(1:400)およびDAPI(12.5μg/ml)と共に、暗所、r.t.で1時間インキュベートした。凍結切片を、DPBSおよび超純水で洗浄し、その後、これらを、Dako Faramount封入媒体を使用してマウントし、上記のように、Zeiss LSM 700顕微鏡およびFijiソフトウェアを使用して解析した。
【0116】
定量化および統計解析
統計解析を、GraphPad Prismソフトウェア6.0を使用して実施した。スチューデントt検定、またはシダックもしくはチューキーの多重比較検定を用いた二元配置ANOVAを使用して、方法の詳細に示されるように、統計的有意性を評価した。各実験についての統計的有意性のレベルおよび「n」数は、テキストおよび図の説明文中に示される。
【0117】
(実施例2)
ブロックコポリマーは、ウイルス模倣性粒子設計を可能にする
この実施例で言及される全ての材料および方法は、先の実施例に記載した通りであった。
【0118】
ウイルス模倣性NPの開発のために、本発明者らは、リガンドEXP3174およびAng-Iを、ポリ(エチレングリコール)5k-ポリ(乳酸)10k(PEG-PLA)ブロックコポリマーにカップリングさせ(図8)、これを、粒子にin vivoでの十分な安定性を与えるバルクナノ沈殿を介したNP製造のために、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)PLGAとブレンドした。残りの機能化されていないポリマーは、より短い2kのPEGおよび10kのPLAブロックを有するカルボン酸で終わるPEG-PLA(COOH-PEG2k-PLA10k)であった(図1A)。NP調製の前にポリマーをリガンドで改変することによって、リガンド密度の正確な制御を得ることができる。それらのPEG鎖の20%がAng-Iで修飾され、さらなる20%がEXP3174で修飾されるように、粒子を調製した(NPEXPAng-I)(図2B)。リガンド密度を、40%の最大で維持して、リガンド間での立体障害および非特異的相互作用を回避した。対照として、リガンドなしのメトキシ-PEGで終端した粒子(NPMeO)および20%のAng-IまたはEXPのいずれかを有する粒子(それぞれ、NPAng-IおよびNPEXP)を組み立てた(図1A)。長いリガンドを保有するポリマーを粒子調製のためにより短い機能化されていないポリマーと組み合わせることによって、NPのサイズを、80nm下で維持して、メサンギウム毛細血管の内皮開窓を通って通過する能力を粒子に提供できた(図2C)。カルボン酸で終端したブロックコポリマーを、負の細胞膜への非特異的静電気的吸着を回避するのに理想的な全体的な負の粒子電荷を提供するフィラーとして選択した(図2D)。
【0119】
(実施例3)
NPは、標的受容体をin vitroで認識する
この実施例で言及される全ての材料および方法は、先の実施例に記載した通りであった。
【0120】
三重チェックする粒子の能力を確認するために、細胞の正体を最初にin vitroで評価した。一次付着および引き続く内在化を媒介する、標的受容体に対する粒子アビディティを、カルシウム動員アッセイを使用して調査したが、それは、アゴニストまたはアンタゴニストによる、Gq共役型AT1Rの刺激またはサイレンシングが、それぞれ、サイトゾルCa2+流入またはその抑制を生じるからである。その目的のために、AT1R陽性ラットメサンギウム細胞(rMC)を、Ang-IIによる刺激の前に、変動する濃度の遊離リガンドまたはNP製剤のいずれかと共に30分間の期間にわたってインキュベートし、得られたカルシウムシグナルを記録した。図3Aに示されるように、遊離EXP3174およびAng-IIを用いた対照実験により、ナノモル濃度範囲内の、AT1Rに対する両方の化合物の高い親和性が明らかになった(それぞれ、0.6±0.4および1.5±0.1nMのIC50値)。受容体の結合および活性化は、細胞膜中に存在するACEによるAng-IIへの酵素的変換後にのみ生じるので、Ang-Iは、より低い親和性(IC50 0.9±0.6μM)を示す。
【0121】
リンカーへのカップリングは、数種の受容体の、同時の高いアビディティの多価結合によって補償される親和性喪失をもたらす(図3Bおよび3C)。それらの主な相互作用は、ACEとの相互作用であるので、Ang-Iのみを有する粒子(NPAng-I)は、EXP3174を有する粒子(0.4±0.1nMのIC50)よりも、AT1Rに対するより低いアビディティ(9.4±0.4nMのIC50)を示す。それにもかかわらず、Ang-Iの粒子結合は、NP界面における酵素的切断の促進および引き続く多価結合に起因して、遊離リガンドと比較して、IC50値における有意な減少をもたらす。EXP3174で改変されたNPは、対照的に、遊離リガンドについてと同じオーダーの大きさのアビディティを有した。驚くべきことに、両方のリガンドを有する粒子NPEXPAng-Iは、受容体結合に関して共同的効果を示したが、それは、これらが、1つの型のリガンドのみを有する粒子のいずれよりも、AT1Rに対する有意に高いアビディティ(0.2±0.09nMのIC50)を有したからである(図3C)。Ang-IIへのAng-Iの酵素的活性化の後、両方のリガンドが、同時のアゴニスト性およびアンタゴニスト性様式で同じ受容体を標的化するので、これは、これらのリガンドが互いの相互作用を妨害しないことを証明している。いかなる機能化も含まない粒子(NPMeO)は、一切応答を惹起しなかったので、アッセイがリガンド特異的であったことが確認された(図3B)。
【0122】
細胞/粒子相互作用の動力学を評価するために、細胞内カルシウム測定を、10μMのリガンドに対応する濃度のNPをrMCと共にインキュベートすることによって、5.5時間の期間にわたって実施した。本遊離アゴニストによって誘発されるカルシウムシグナル伝達をそれらがサイレンシングすることができる程度は、それぞれの粒子が異なる時点においてそれらのリガンドを介して細胞表面中のAT1Rに結合する完全性についての尺度として機能した(図3D)。それらの表面上にAng-Iのみを有する粒子は、緩徐な受容体結合を示したが、それは、これらが、AT1Rと相互作用できる前に、細胞膜結合ACEによってAng-II保有粒子へと最初に活性化される必要があるからである。受容体結合は、1時間のインキュベーション後に約40%で最大に達し、アッセイの持続時間にわたって一定のままであった。これは、ある特定の数のプロリガンドが活性化されたときの粒子の素早い内在化を指し、おそらく、全てのAng-IがAng-IIに変換されるわけではない。粒子表面上のAng-IIが受容体に結合すると、粒子は、迅速に内在化され(それらがピコモル濃度のAT1Rアビディティを有するので[1])、これは、NP内在化が起こるために全てのプロリガンドが活性化される必要がない可能性があることを意味している。この現象は、粒子表面上の付着因子としてEXP3174を添加した場合には回避される。非常に素早く完全な受容体遮断が、たった5分間の粒子インキュベーション後に生じる(NPEXPAng-IおよびNPEXPについて同様)。AT1R阻害は、測定のほぼ全体にわたって維持され、受容体の上方調節およびリサイクルにおそらくは起因して、最後の時点において約80%まで下降する。EXP3174による細胞膜への付着は、認識プロセスを緩徐化し、Ang-Iから、AT1Rにより効率的に結合することができるAng-IIへの、より高い活性化を可能にする。NPEXPAng-IおよびNPEXPを比較すると、45分間の粒子インキュベーション後に一定になる、NPEXPAng-Iの有意に高い初期AT1R阻害が存在する。これは、AT1Rに対するより高いアビディティをもたらす、2つのリガンドの組み合わせ効果に起因する可能性が高い(図3C)。
【0123】
粒子内在化のための必要条件は、Ang-IをAng-IIへと活性化するACEの能力である。したがって、本発明者らは、NPEXPAng-Iについての酵素動力学を調査して、粒子表面上のアンタゴニストの存在が酵素反応を妨害するかどうかを決定した。ACEの可溶性形態を、異なる粒子濃度と共に変動する期間にわたってインキュベートし、NPコロナ上の得られたAng-IIを、カルシウム動員アッセイを実行して定量化した。アッセイにおけるEXP3174リガンドの干渉を、NPEXPによって示されるシグナル阻害を測定することによって評価した(図9)。NPAng-IおよびNPEXPAng-Iの両方について決定されたミカエリス・メンテン定数(Km)(図3E)は、両方の粒子製剤について、遊離リガンドについてと同じオーダーの大きさの値を生じた([1]を参照のこと)。さらに、本発明者らは、触媒定数(Kcat)を決定して、同じ酵素に対する異なる基質の親和性を比較するための有用な指標である特異性定数(Kcat/Km)を計算した(図3F)。NPEXPAng-Iコロナ上のAng-Iの酵素的活性化は、NPAng-I上のものと有意には異ならず、これは、ACEがさらなるリガンドEXP3174によって立体的に妨害されていないことを示している。さらに、リガンド濃度に基づいて計算したKcat/Km値は、遊離Ang-Iおよび粒子結合Ang-Iについて等しかった。さらに、Kcat/KmがNP濃度に基づいて計算される場合、結合したリガンドは、酵素に対する有意に良い基質であり、これは、いくつかの酵素分子への粒子表面上のいくつかのリガンド分子の結合の結果である(図3F)。
【0124】
(実施例4)
決定実行NPは、標的細胞特異的である
この実施例で言及される全ての材料および方法は、先の実施例に記載した通りであった。
【0125】
それらの個々の標的との粒子相互作用が首尾よく確立された後、次のステップは、それらのコロナ上にアンタゴニストならびにアゴニストを有するNPが、それらの標的細胞による内在化をなおも誘発するかどうか、およびそうである場合に、取り込みが特異的リガンド-受容体相互作用から続いて起こるかどうかを決定することであった。アンタゴニストは、AT1R媒介性のエンドサイトーシスを引き起こさず、アゴニストは引き起こすので、本発明者らは、共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)を介して、YFPタグ付きAT1Rを発現するrMC(pAT1R-rMC)におけるNPEXPAng-Iの細胞局在化を調査した。図4に示されるように、NPEXPAng-I関連蛍光は、細胞の内側で見出された。これは、より長いインキュベーション時間と共に増加し、AT1R蛍光と共に強く共局在化した。
【0126】
したがって、AT1Rによって媒介される特異的粒子取り込みが存在する。しかし、アンタゴニストのみを有する粒子(NPEXP)は、細胞によって内在化されず、大部分は細胞表面上に位置する(図10A)。粒子蛍光は、受容体蛍光とも共に共局在化し、これは、受容体媒介性の付着を実証している。NPAng-Iもまた、細胞によって内在化されたので(図10B)、酵素的に創出されたAng-IIは、NPEXPAng-Iの細胞取り込みを媒介する。予想外に、インキュベーション時間の増加と共に、より拡散した均一な細胞膜分布(15分後)から、より濃縮されたクラスター化(90分の時点)まで、細胞膜上の受容体の再編成が存在し(図4)、これは、NP蛍光と強く共局在化した。これは、取り込みがAT1Rによって媒介されることのさらなる証拠であるが、それは、クラスリン被覆されたピットを介して内在化される受容体、例えば、AT1RなどのGPCRの活性化が、受容体のクラスター化を促進するからである。
【0127】
NPEXPについても、細胞膜上での受容体再編成が生じ、これは、細胞表面上での受容体の移動によって促進される多価受容体結合の結果である。細胞膜上の受容体にNPEXPが付着すると、それらの内在化の欠如は、細胞膜上での受容体-粒子移動性、およびさらには受容体結合をもたらし得る。リガンドなしの粒子(NPMeO)は、細胞によって取り込まれず(図10C)、これにより、特異的標的化機構が高い細胞内在化を媒介するために必須であることが確認された。
【0128】
全体として、本発明者らは、粒子コロナに連結された付着媒介アンタゴニスト性リガンドの存在が、引き続く粒子内在化を妨害しないことを実証している。さらに、粒子表面上にさらなるリガンドを含めることは、より多数の長いポリマー鎖の添加によるAng-Iリガンドの立体障害に起因する標的化喪失を補償した(図11)。粒子特異性およびリガンド媒介性の内在化をさらに確認するために、細胞を、遊離EXP3174、または粒子関連蛍光の抑制を生じるACE阻害剤であるカプトプリルと、粒子添加の前に30分間事前インキュベートし、フローサイトメトリー(図5A)およびCLSM(図12)によって解析した。
【0129】
さらに、本発明者らは、フローサイトメトリーによって、異なる細胞系における粒子内在化を試験した(図5B)。ACEを発現しないが微量のAT1Rレベルのみを発現するHeLa細胞は、低い粒子取り込みを示したが、これは、カプトプリルによってもEXP3174によっても抑制できなかったので、非特異的であった。対照的に、両方の標的を発現するrMCおよびHK-2細胞は、はるかに高い粒子関連細胞蛍光によって示されるように、粒子を取り込むことができた。カプトプリルまたはEXP3174との細胞の事前インキュベーションは、細胞蛍光を有意に抑制したので、内在化もまた、AT1Rへの活性化されたプロリガンド結合によって媒介された。したがって、粒子は、それらの標的細胞に対する高い特異性を示す。それにもかかわらず、NPが身体に進入する場合、これらには、標的細胞およびオフターゲット細胞が同時に提示される。したがって、本発明者らは、NPEXPAng-Iがそれらの間を区別することができたかどうかを調査した。
【0130】
標的細胞(rMC)を、過剰量のオフターゲットNCI-H295RまたはHeLa細胞と一緒に播種したが、これらの細胞は共にACEを欠如し、それぞれ高いおよび低いAT1Rレベルを発現する。これらを異なるNP製剤と共にインキュベートし、各細胞系を、フローサイトメトリーを介して粒子関連蛍光について調査した(図5C~D)。NPEXPAng-Iは、標的rMC中で有意により多く蓄積したので、ずばぬけた標的細胞特異性を示した。NPAng-Iもまた、両方のオフターゲット細胞において低い蓄積を示したので、特異性は、Ang-Iによって付与される。対照的に、NPEXPは、高いAT1Rレベルを発現するNCI-H295R細胞と同じ程度までrMCにおいて細胞表面に結合し、これは、単純な1ステップ認識プロセスが、粒子選択性を付与するために十分ではないことを実証している。CLSMイメージにより、フローサイトメトリーの知見が確認され(図5Eおよび13)、ここで、NPEXPAng-I-およびNPAng-I蛍光(赤色)は、標的rMC(緑色)に大部分は関連したが、オフターゲットHeLaでもNCI-H295R細胞でも関連せず(白色)、一方で、NPEXP蛍光は、rMCおよびAT1R発現NCI-H295R細胞の両方において見出された。全てを合わせると、これらの結果は、NPEXPAng-I取り込みが受容体媒介性であること、およびEXP3174リガンドを介した初期細胞付着が、ウイルス模倣性認識プロセスによって付与される標的細胞に対する粒子特異性を低減させないことを実証している。
【0131】
(実施例5)
NPは、MCをin vivoで標的化する
この実施例で言及される全ての材料および方法は、先の実施例に記載した通りであった。
【0132】
NPEXPAng-I上の両方のリガンドの相補的標的化能力および粒子特異性がin vitroで実証されたので、次のステップは、ウイルス認識原理がより高いin vivo MC蓄積をもたらすかどうかを決定することであった。その目的のために、標的化された粒子製剤(NPEXPAng-I、NPAng-IおよびNPEXP)(図1A)ならびに標的化されていない粒子製剤(NPMeO)を、NRMIマウス中に注射し、腎臓の凍結切片を、粒子関連蛍光について試験した(図6および14A)。図6Aに示されるように、NPEXPAng-I蛍光は、腎臓切片中の全ての糸球体にわたって均一に見出され得、尿細管などの他の腎臓構造には蛍光は見出されなかった。対照的に、標的化されていないNPMeOについて、腎臓切片においてNP蛍光はほとんど検出できなかった(図6B)。これは、単純なサイズ依存的な標的化が、MCにおいて粒子蓄積を達成するには十分でないことを実証しているが、それは、NPMeOが、特異的細胞相互作用の欠如に起因して、メサンギウムからおそらくはクリアランスされるからである。さらに、標的化されたNPであるが細胞内在化を媒介することができないNPEXPもまた、ごくわずかな糸球体蛍光を示し(図14A)、これは、粒子取り込みが、高いMC蓄積を達成するために重要であることを実証している。さらに、NPEXPAng-Iは、付着因子を欠如するNPAng-Iよりもはるかに強く均一な糸球体分布を達成し(図14A)、これは、in vivoの増強された標的細胞認識原理が高度に有利であることを示している。
【0133】
NP関連蛍光を定量的に評価し、異なる粒子製剤間での差異をより良く識別するために、糸球体のイメージを、より高い倍率で取得した(図7A)。糸球体蛍光の定量的解析は、一部の糸球体において小さい蛍光スポットのみを示した標的化されていない対照粒子(NPMeO)と比較して、増強された認識機構を有するウイルス模倣性粒子(NPEXPAng-I)について、15倍高い蛍光を生じた。
【0134】
さらに、NPEXPAng-Iは、1リガンドの標的化された粒子よりも有意に高い蓄積を示した(それぞれ、NPEXPおよびNPAng-Iよりも7倍および5倍高い)(図7B)。検出された蛍光が粒子関連であることは、自由に濾過され得るその小さいサイズに起因して強い尿細管蛍光を示したが糸球体蛍光は示さなかった(図14B)、粒子標識化に使用した遊離色素(CF647)の腎臓分布によって確認された。NP糸球体分布を評価するために、外および内皮質中の糸球体の蛍光を比較した(図7C)。全ての粒子製剤について、2つの集団間に有意な差異は存在しなかった。これは、腎臓皮質全体の糸球体中に均一に粒子が分布されることを示しており、これは、糸球体関連疾患の処置のために不可欠な必要条件である。最後に、MCとは別に、糸球体中には、NPを内在化できた他の細胞が存在したので、マーカーとしてインテグリン-α8を使用するMCの特異的抗体染色を実施して、MC中に粒子が蓄積したことを解明した。図7Dに示されるように、NPEXPAng-I蛍光は、抗体染色されたMCの内側に局在化し、これにより、粒子が、糸球体メサンギウムに到達することができるだけでなく、MCによって取り込まれることもできることが確認された。
【0135】
これらを合わせると、結果は、サイズ媒介性の標的化が、メサンギウムに到達するための必要条件であるが、MCにおける粒子蓄積を達成するには不十分であることを明らかに示している。NP内在化は、メサンギウムクリアランスを回避するために必要不可欠のようであり、これは、この特質を欠如する粒子(NPMeOおよびNPEXP)が最も低い糸球体蛍光をもたらすことを説明する。ウイルス模倣性認識原理(NPAng-I)の実装は、NP特異性を増加させ、より高いMC蓄積を次いでもたらす粒子取り込みを生じる。しかし、初期ウイルス様細胞付着を介して標的細胞認識を促進すること(NPEXPAng-I)は、NPの標的化潜在力を有意に増強し、これは、in vitro研究によって示されるように、2つのリガンドの組み合わせ効果の結果である。
【0136】
さらに、NPEXPAng-Iの増強された機能化は、粒子血液滞留における減少をもたらさない。一般に、NPは、PEGなどのポリマーでコーティングされ、これは、それらの循環時間を増加させ、血漿タンパク質吸着を減少させる。標的化された受容体を発現するオフターゲット細胞は、NPに結合でき、NPを妨害することができるので、リガンド機能化によって通常は対抗されるポジティブな効果。それにもかかわらず、注射の1時間後の血漿NP蛍光の定量化は、NPEXPAng-Iが、標的化されていないNPMeOと同じ程度まで、かつ他の標的化された製剤よりも有意に長く、循環中に残存したことを示した(図14C)。これは、より複雑な細胞認識プロセスから生じるより高い粒子特異性におそらくは起因する。全体として、これらの結果は、ウイルスの結合および内在化を密接に模倣し、それを最適なNPサイズと組み合わせることによって、MCを標的化し、MC中に大量に蓄積するNPを開発することが可能であることを実証している。
【0137】
(実施例6)
材料および方法
材料
2000および5000g/molの分子質量を有するヘテロ二機能的ヒドロキシルポリ(エチレングリコール)カルボン酸(COOH-PEG2k/5k-OH)ならびに2000g/molの分子質量を有するヒドロキシルポリ(エチレングリコール)Boc-アミン(Boc-NH-PEG2k-OH)は、Jenkem Technology USA Inc.(Allen、TX、USA)から購入したが、5000g/molの分子質量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)(MeO-PEG5k-OH)およびResomer RG 502(PLGA)は、Sigma-Aldrich(Taufkirchen、Germany)から得た。EXP3174(ロサルタンカルボン酸としても公知)は、Santa Cruz(Heidelberg、Germany)から購入したが、環状RGDfK(cRGDfK)は、Synpeptide Co.Ltd.(Shanghai.China)から得た。AlexaFluor(商標)568 Hydrazide(Alexa568)、CellTracker(商標)Green Dye(CTG)およびCellTracker(商標)Deep Red Dye(CTDR)は、Thermo Fisher Scientific(Schwerte、Germany)から購入した。2.2nmの平均直径を有するアミン機能化球状金NP(Au2.2-NH)は、Nanopartz Inc.(Loveland、CO、USA)から得た。GoldEnhance(商標)EM Plusキットは、Nanoprobes(Yaphank、NY、USA)から購入した。ヤギ由来インテグリンα-8抗体は、R&D Systems(Minneapolis、MN、USA)から得た。全ての他の化学物質は、異なって述べられない場合、Sigma-Aldrichから解析グレードで購入した。超純水は、Milli-Q水精製システム(Millipore、Billerica、MA、USA)から得た。NCI-H295R(CRL-2128)およびHeLa(CCL-2)細胞は、ATCC(Manassas、VA、USA)から購入した。全ての細胞系は、10%胎仔ウシ血清、インスリン-トランスフェリン-セレン(ITS)(1×)および100nMヒドロコルチゾンを含むRPMI1640培地中で培養した。
【0138】
ポリマー合成
COOH-PEG2k-PLA10k、Boc-NH-PEG5k-PLA10kおよびMeO-PEG5k-PLA10kブロックコポリマーを、以前に記載されたように開環重合を介して合成した。簡潔に述べると、ヘテロ二機能的PEGポリマー(1当量(equivalent)=当量(equiv))を、3,6-ジメチル-1,4-ジオキサン-2,5-ジオン(70当量)および1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(1,8-diazabicylo[5.4.0] undec-7-ene)(3当量)と混合した。重合を安息香酸(14当量)でクエンチするまで、ポリマー混合物を室温(RT)で1時間撹拌した。得られたブロックコポリマーを、ジエチルエーテル中で沈殿させ、濾過を介して単離し、真空下で乾燥させた。合成されたポリマーの分子量を、Bruker Avance 300分光計(Bruker BioSpin GmbH、Rheinstetten、Germany)を使用して、295Kで重水素化クロロホルム中で決定した。
【0139】
cRGDfK-PEG2k-PLAポリマーの調製のために、以前に合成されたCOOH-PEG2k-PLA10kを、以前に示されたように、cRGDfKのリシン残基に共有結合的にカップリングした。手短に言えば、COOH-PEG2k-PLA10k(1当量)を、3-(エチルイミノメチレンアミノ)-N,N-ジメチルプロパン-1-アミン(EDC)/N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)(25当量)を使用してRTで2時間活性化し、その後、β-メルカプトエタノール(BME)(30当量)でクエンチした。活性化されたポリマーを、cRGDfK(3当量)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(10当量)とRTで24時間反応させた。ジエチルエーテル/メタノール(15:1 V/V))中での、得られたcRGDfKカップリングされたポリマーの沈殿の後、遊離cRGDfKおよび過剰の反応物を、millipore水(mpHO)に対する透析を使用して除去した。
【0140】
EXP3174-PEG5k-PLA10kのために、Boc-NH-PEG5k-PLA10kのBoc保護基を最初に切断した。簡潔に述べると、Boc保護されたポリマーを、ジクロロメタン(DCM)/トリフルオロ酢酸(TFA)(1:1 V/V)中に溶解させた。30分間撹拌した後、過剰のTFAを、飽和炭酸水素ナトリウム溶液を使用して中和した。有機相を、mpHOで洗浄し、その後、上記のようにポリマーを単離した。
【0141】
得られたNH-PEG5k-PLA10kを、イミダゾール構成成分のカルボニル残基を介してEXP3174にカップリングした。EXP3174(3.5当量)を、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)/NHS(3.3当量)でRTで2時間活性化した。遠心分離を介した得られたジシクロヘキシル尿素の除去後に、NH2-PEG5k-PLA10k(1当量)およびDIPEA(17.5当量)を添加し、RTで24時間反応させた。得られたEXP3174-PEG5k-PLA10kを、メタノール/ジエチルエーテル(1:5 V/V)中で沈殿させ、産物を、エタノール/100mMホウ酸緩衝液pH8.5/水(1/1/8 V/V)に対して24時間透析し、その後、mpHOに対して12時間透析して、未反応のEXP3174および過剰の反応物を除去した。
【0142】
蛍光色素を用いたPLGA標識化
粒子可視化のために、コア形成性PLGAを、NP調製前に蛍光色素に共有結合的に連結させた。その目的のために、カルボン酸で終端したPLGAを、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMTMM)を触媒剤として使用して2時間活性化した。次いで、活性化されたPLGAを、AlexaFluor(商標)568 HydrazideまたはCF(商標)647アミンのいずれかとRTで24時間反応させた。標識したPLGAを、mpHOに対して24時間透析して、未反応の蛍光色素を除去した。
【0143】
ナノ金を用いたPLGA標識化
電子顕微鏡解析のために、PLGAをナノ金にコンジュゲートした。PLGAを、DCM中のEDCおよびNHSで2時間最初に活性化した。減圧下でのDCM除去の後、活性化されたPLGAを、DMSO中に溶解させ、DIPEAおよび2.2nmの平均直径を有する凍結乾燥させたモノアミノ金ナノ粒子(Au2.2-NH)と混合した。RTで24時間撹拌した後、金コンジュゲートしたPLGAを、mpHO中で沈殿させ、2500gで10分間の遠心分離を介して単離し、凍結乾燥させた。
【0144】
NP調製
ブロックコポリマーナノ粒子を、一般的な溶媒蒸発技法を使用して製造した。PEG-PLAポリマーおよびPLGAの対応する量を、70/30(m/m)の比で混合し、アセトニトリル(ACN)中に希釈して、10mg/mLの最終濃度にした。ヘテロ-/ホモ-機能的NP種について所望のリガンド表面密度に到達するために、cRGDfK-PEG2k-PLAおよび/またはEXP3174-PEG5k-PLA10kを、図18d/eに示される較正に従って、COOH-PEG2k-PLA10kと混合した。次いで、有機相を、激しく撹拌する10%ダルベッコリン酸緩衝食塩水(DPBS)(7.5mM、pH7.4)に滴下添加し、RTで3時間撹拌して、有機溶媒を除去した。
【0145】
得られたNP分散物を、Pall Microsepフィルター(分子量カットオフ30kDa;Pall Corporation、NY、USA)を使用して、1250gで25分間の遠心分離を介して濃縮した。製造したNPの質量濃度を得るために、PEG含量を、比色ヨウ素錯体形成アッセイを使用して評価した。次いで、NPを凍結乾燥させ、重量測定的に解析して、PEG含量およびNP重量の比を得た。以下の実験では、この比を使用して、各NP種について、評価したPEG含量から質量濃度を計算した。
【0146】
NP特徴付け
NPサイズおよびζ電位を、Malvern Zetasizer Nano ZS(Malvern、Herrenberg、Germany)を使用して評価した。試料を、PMAAセミマイクロキュベット(DLS;Brand、Wertheim、Germany)または折りたたみキャピラリーセル(ζ電位;Malvern、Herrenberg、Germany)のいずれかを使用して、7.5mM DPBS中で、173°の角度で633nm He-Neレーザーを用いて測定した(25℃、RT)。
【0147】
cRGDfK定量化
NP表面上のcRGDfKのレベルを、アルギニンの測定値に基づいて評価した。簡潔に述べると、50μLのNP試料(1mg/mL)を、9,10-フェナントレンキノン(エタノール中150μM)および2N NaOH(6:1 V/V)からなる作業溶液175μLと混合した。60℃での3時間のインキュベーション後、1当量の試料を、1当量の1N HClと混合し、RTでもう1時間インキュベートした。最後に、蛍光を、312/7nmの励起波長および395/7nmの発光波長を用いてSynergy(商標)Neo2 Multi-Mode Microplate Reader(BioTek Instrument Inc.、Winooski、VT、USA)で測定した。cRGDfKの希釈(0~40μg/mL)は、較正として機能した。cRGDfKモル濃度およびモル濃度cRGDfK含量とモル濃度PEG含量との比を決定し、理論値に対してプロットした(図18d)。
【0148】
EXP3174定量化
製造した粒子上のEXP3174の表面レベルを決定するために、1当量のNP試料(1mg/mL)を、10当量の0.2M酢酸と混合した。0.2M酢酸中でのEXP3174の希釈(0~30μM)は、較正として機能した。試料および標準の蛍光を、Synergy(商標)Neo2 Multi-Mode Microplate Reader(上記を参照のこと)(励起250/10nm、発光370/5nm)で測定した。EXP3174モル濃度およびモル濃度EXP3174含量とモル濃度PEG含量との比を決定し、理論値に対してプロットした(図18e)。
【0149】
カルシウム動員アッセイ
NPのAT1r結合を調査するために、細胞内カルシウムレベルを、fura-2をCa2+キレーターとして使用して測定した。簡潔に述べると、rMCを、LeibovitzのL-15培地中の5μM fura-2AM、2.5mMプロベネシドおよび0.05%Pluronics F-127と共にRTで1時間インキュベートした。細胞をその後遠心分離し(5分間、200g、RT)、Leibovitzの培地中に再懸濁した。異なる濃度の45μLのNPまたは遊離EXP3174を、96ウェルプレート(Greiner Bio One、Frickenhausen、Germany)中にピペッティングし、その後、45μLのrMC懸濁物(2×10/mL)をピペッティングした。以下では、細胞を、試料と共にRTで45分間インキュベートした。インキュベーション後、10μLの30nM AT IIを各ウェルに添加して、未阻害のAT1rを活性化し、細胞サイトゾル中へのCa2+流入を結果として誘導した。注射後最初の30秒間の間の蛍光シグナルを、340/20nmおよび380/20nmの励起フィルターならびに510/20nmの発光フィルターをそれぞれ用いてFluoStar Omega蛍光マイクロプレートリーダー(BMG Labtech、Ortenberg、Germany)を使用して測定した。Ca2+が結合したFura-2の、Ca2+が結合していないFura-2に対する最大比を、負荷された細胞を0.1%Triton-X 100と共にインキュベートし、上記のように蛍光レベルを測定することによって評価した。同様に、最小比は、45mMエチレングリコール-ビス(2-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA)と合わせた0.1%Triton-X 100とのインキュベーションによって達成された。試料1つ当たりの細胞内カルシウムのレベルを、Grynkiewicz et alの方程式を使用して計算した。半数阻害濃度(IC50)を、GraphPad Prism(San Diego、CA、USA)を使用し、シグモイド用量応答方程式(可変勾配)を適用して計算した。
【0150】
CLSM解析
NP-細胞相互作用の詳細な解析のために、rMCを、15,000細胞/ウェルの密度で8ウェルスライド(Ibidi、Graefelfing、Germany)中に播種し、37℃で24時間インキュベートした。細胞サイトゾルの可視化を促進するために、rMCを、播種の前に、無血清RPMI1640培地中でCTDR(25μM、45分間、37℃)で染色した。NPを、AlexaFluor(商標)568で標識したPLGAを使用して製造し、0.1%BSAを補充したLeibovitzの緩衝液中で0.05mg/mLに調整した。メサンギウム細胞を、250μLのNPと共に37℃で15、45および90分間インキュベートし、事前に温めたDPBSで洗浄し、DPBS中4%のパラホルムアルデヒド(PFA)で10分間固定した。最終洗浄ステップの後、固定された試料を、Zeiss LSM 710(Carl Zeiss Microscopy GmbH、Jena、Germany)を使用して解析した。
【0151】
フローサイトメトリー
NP試料のメサンギウム細胞会合を評価するために、rMCを、40,000細胞/ウェルの密度で24ウェルプレート(Greiner Bio One、Frickenhausen、Germany)中に播種し、37℃で48時間インキュベートした。NPを、CF(商標)647で標識したPLGAを使用して製造し、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を補充したLeibovitzの緩衝液中で0.05mg NP/mLに調整した。NPの細胞進入のαβ依存性を確認するために、300μLの遊離cRGDfK(c=500μM)を、NPインキュベーションの前に、関連する細胞試料に15分間添加した。細胞をDPBSで洗浄し、300μLの事前に温めたNP溶液を37℃で60分間添加した。時間依存的取り込みのそれぞれの解析のために、細胞を、120分間の期間にわたってインキュベートし、NPを、0、15、30、45、60、90および120分後に除去した。細胞をDPBSで洗浄し、トリプシン処理し、200gおよび4℃で5分間遠心分離し、その後、2回のさらなる洗浄および遠心分離のステップが続いた(DPBS、200g、5分間、4℃)。最終試料を、DPBS中に再懸濁し、FACS Caliburサイトメーター(Becton Dickinson、Franklin Lakes、NJ、USA)を使用して解析した。NP関連蛍光を、633nmで励起させ、対応する発光を記録した(661/16バンドパスフィルター)。フローサイトメトリーデータを、Flowingソフトウェア2.5.1(Turku Centre for Biotechnology、Turku、Finland)を使用して解析した。生存細胞の集団内で、細胞関連蛍光の幾何平均を評価した。
【0152】
透過電子顕微鏡
NPの細胞局在化を評価するために、rMCを、12.000細胞/ウェルの密度で24ウェルプレート中に播種し、72時間インキュベートした。ナノ金にコンジュゲートしたPLGAを含むNP製剤を、0.1%BSAを含むLeibovitzの緩衝液中に希釈し、0.05mg/mL(V=300μL)の濃度で45分間添加した。インキュベーション後、試料をDPBSで洗浄し、電子顕微鏡解析のために調製した。簡潔に述べると、細胞を、0.1Mカコジル酸ナトリウム溶液(Caco緩衝液)中の2.5%PFAおよび2.5%グルタルアルデヒドでRTで60分間固定し、Caco緩衝液で洗浄し、DPBS中0.1%のTriton-Xで10分間透過処理した。mpHOによる洗浄ステップの後、試料を、GoldEnhance(商標)EM Plusキット(Nanoprobes Inc.、Yaphank、NY、USA)を製造業者の仕様書に従って使用して金で増強し、その後、さらに洗浄し、mpHO中2.5%のチオ硫酸ナトリウム溶液中で後固定した。細胞を、0.5%四酸化オスミウムで染色し、リンス濃度のエタノール(50~99.5%)中で脱水した。対比染色のために、2%酢酸ウラニルを、70%のエタノール濃度で5分間適用した。Epon中に包埋した後、150nmの極薄切片を、6300×ならびに12500×の倍率で100kV Zeiss Libra 120電子顕微鏡(Carl Zeiss NTS GmbH、Oberkochen、Germany)を使用してイメージングした。
【0153】
共培養実験
製造したNPの細胞選択性を評価するために、本発明者らは、本発明者らが以前に実装した共培養設計を使用した。フローサイトメトリー解析のために、rMCを、24ウェルプレート中にそれぞれ10,000および75,000細胞/ウェルの密度のHeLaまたはNCI-H295R細胞と一緒に播種し、37℃で48時間インキュベートした。細胞型間を区別するために、rMCを、播種の前に、無血清RPMI1640培地中でCTG(15μM、45分間、37℃)で染色した。次いで、共培養した細胞を、0.05mg/mL(V=300μL)の濃度のCF(商標)647で標識したNPと共に45分間インキュベートした。試料の調製およびフローサイトメトリー解析を、上記のように実施した。さらに、rMC関連蛍光を、488nmで励起し、530/30バンドパスフィルターを使用して記録した。データ解析の間に、生存細胞の集団を、染色されたrMC細胞についてさらにゲート処理し、NP関連蛍光を細胞特異性に関して解析した。
【0154】
CLSM解析のために、rMC細胞を、上記のように播種の前にCTG染色した。全ての細胞型を可視化するために、HeLaまたはNCI-H295R細胞もまた、CTDRを使用して染色した(25μM、45分間、37℃)。CellTracker(商標)インキュベーションの後、rMCを、2,000および10,000/20,000細胞/ウェルの密度のHeLa/NCI-H295R細胞と一緒に8ウェルIbidiスライド中に播種した。37℃で48時間のインキュベーションの後、細胞核を、Hoechst 33258(DPBS中5μg/mL)で20分間染色した。細胞を、事前に温めたDPBSで2回洗浄し、AlexaFluor(商標)568で標識したNPを、0.05mg/mL(V=250μL)の濃度で37℃で45分間添加した。NPインキュベーションの後、試料を上記のように処置し、Zeiss LSM 710顕微鏡を使用して解析した。
【0155】
in vivo細胞標的化
動物実験は、国のおよび施設のガイドラインに従って実施し、現地の当局によって承認された(Regierung von Unterfranken、参照番号:55.2-2532-2-329)。雌性10週齢NMRIマウス(Charles River、Sulzfeld、Germany)は、モデル動物として作用した。ブプレノルフィン(0.1mg/kg体重)による鎮痛の後、マウスを2.5%イソフルランで麻酔し、100μLのCF(商標)647で標識したNP(c=120nM)を頸静脈を介して注射した。マウスを麻酔下で維持し、5分後、初期血液試料を、i.v.穿刺を介して採取した。60分後、マウスを、ケタミン/キシラジンで麻酔し、最終血液試料を採取し、動物を、潅流固定を介して屠殺した。両方の腎臓を取り出し、リン酸緩衝液(0.1M pH7.4)中18%のスクロースおよび14%のPFAの溶液に、即座に移した。6時間後、腎臓をDPBSで洗浄し、さらなる処理まで-80℃で凍結保護した。凍結切片のために、臓器を、Tissue Tek(登録商標)O.C.T.(商標)Compound(Sakura Finetek、Torrance、CA、USA)中に包埋し、CryStar NX70クライオトーム(cryotome)(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA、USA)を使用して5μmの切片へと切断し、Superfrost(商標)プラスガラススライド(Thermo Fisher Scientific、Schwerte、Germany)上で固定した。NP腎臓沈着の解析および糸球体蛍光定量化のために、切片を、DPBS中でリンスし、DPBS中の0.04%のTriton-Xを補充した5%のBSAでRTで10分間ブロッキングした。DPBS中でさらにリンスした後、試料を、DPBS中0.5%のBSAおよび0.04%のTriton-X中1:400希釈の4’,6-ジアミジン-2’-フェニルインドール二塩酸塩(DAPI)で、細胞核について染色した。それぞれDPBSおよびmpHO中での最終洗浄ステップの後に、凍結切片を、Mowiol封入媒体を用いてマウントし、Zeiss Axiovert 200Mで解析した。イメージ解析のために、Fijiソフトウェア(Madison、WI、USA)を使用した。糸球体蛍光強度を、ある特定の蛍光閾値を超える面積の積分した密度を測定し、糸球体面積によって除算することによって評価した。NPの正確な細胞位置を評価するために、腎臓凍結切片を上記のように調製した。切片の洗浄およびブロッキングの後に、試料を、ヤギ由来インテグリンα-8抗体(DPBS中0.5%のBSA/0.04%のTriton-X中1:200希釈)で4℃で一晩染色した。その後、試料をDPBSで洗浄し、DPBS中0.5%のBSA/0.04%のTriton-X中1:400希釈のCy2(登録商標)ロバ抗ヤギおよびDAPIでRTで1時間染色した。最終洗浄ステップの後、試料をマウントし、Zeiss LSM 710で解析した。
【0156】
(実施例7)
モジュラー概念を使用するヘテロ-多価EXPcRGD NPの調製
この実施例で言及される全ての材料および方法は、実施例6で記載した通りであった。
【0157】
所望のアデノウイルス模倣特性を有するNPを創出するために、本発明者らは、異なる生体適合性ポリマー構成成分の、ヘテロ-多価粒子種への相乗的な組合せに基づくモジュラー設計を実装した(図18a)。NPの全体的ポリマー組成は、両方の標的化概念を適切に比較することができるように、本発明者らの以前のインフルエンザA模倣性NP設計と類似させることを意図した。それにより、広く確立されたポリ(乳酸-コグリコール酸)(PLGA)は、水性媒体中で増強された構造的完全性を保証するだけでなく、蛍光色素またはナノ金のカップリングを介したNP可視化もまた可能にする、疎水性NPコアを形成する。第2の構成成分としてのポリ(エチレングリコール)-ポリ(乳酸)(PEG-PLA)ブロックコポリマーは、追及されるウイルス模倣性NP設計を実装するために必要とされる構造的柔軟性を提供する。第1のステップでは、より長い(PEG5k-PLA10k)またはより短い(PEG2k-PLA10k)PEG鎖のいずれかを有するPEG-PLAポリマーを、以前に記載された開環重合を介して合成した(図25a)。EXP3174は、自由に移動するリガンドとしてメサンギウムAT1rに最初に結合するように意図したので、より長い、したがってより柔軟性のあるPEG5k-PLA10k鎖に共有結合的にカップリングさせた(図25b)。対照的に、第2のリガンド(cRGDfK)は、最初のAT1r結合およびNPの引き続く空間的接近が起こっていない限り、表面に結合したインテグリンと相互作用することができないはずである。それに関して、第2のリガンド(cRGDfK)を、より短いPEG2k-PLA10kに結合させた(図25c)。cRGDfKおよびEXP3174の両方の表面密度は、ナノ沈殿を介したNP製造の前に、リガンド機能化または機能化されていないPEG-PLAポリマーのいずれかの明確な量をPLGAと混合することによって、正確に調整され得る(図18d/e)。
【0158】
本発明者らは、それらの表面上に25%のEXP3174および15%のcRGDfKを有するヘテロ-機能的ナノ粒子(EXPcRGD NP)を調製することを決定し、それにより、リガンドの受容体結合能を十分に活用したが、製造した粒子の構造的完全性は保存した。粒子は、立体的に柔軟性のあるEXP3174を介したAT1rへの結合によって標的細胞に位置し、次いで、細胞表面までの空間的距離を低下させ、引き続いて、以前には隠れていたcRGDfKを介してαVβ3インテグリンを活性化し、最終的に、NPエンドサイトーシスを開始させることができるはずである(図17c)。60nmのサイズ閾値を下回るヘテロ-機能的EXPcRGD NPならびにホモ-機能的(EXP NP/cRGD NP)および機能化されておらず、メトキシで終端した粒子(対照NP)を製造したところ、負のゼータ電位値が示された(図18b/c)。これらの特徴は、内皮開窓を介した首尾よい溢出を促進するだけでなく(図17a/b)、NPファゴサイトーシスまたは広範な血清タンパク質吸着もまた防止するはずである。
【0159】
(実施例8)
ヘテロ-多価EXPcRGD NPは、標的モチーフに対する優れたリガンド親和性を示す
この実施例で言及される全ての材料および方法は、実施例6および7で記載した通りであった。
【0160】
本発明者らは、ラットメサンギウム細胞(rMC)によって発現されるAT1rへの、EXP3174媒介性のNP結合を試験した。G共役型AT1rの、その一次リガンドであるアンジオテンシンII(AT II)による活性化は、細胞サイトゾル中へのカルシウム流入を生じるので、AT II刺激後の細胞内Ca2+レベルは、NPインキュベーション後のAT1r活性のマーカーとして使用することができる。それにより、リガンド自体が強力なアンタゴニストとして作用するので、低い受容体活性は、結合したEXP3174の高い比を示す。図19は、NPまたは遊離EXP3174と共に45分間事前インキュベートしたAT IIで刺激したrMCの細胞内Ca2+レベルを示す。EXPcRGD NP(IC50=276±31pM)およびEXP NP(IC50=552±73pM)は共に、優れたAT1rアビディティを示し、これは、ピコモル濃度範囲での受容体の高度に有効な阻害と、結果として生じる最小のサイトゾル内Ca2+レベルとを生じる(図19a)。さらに、EXP3174保有NP型の阻害有効性は、遊離リガンドについてよりも、さらに高かった(IC50=2.66±0.9nM)。これは、EXP3174機能化粒子が、標的受容体と多価形式で相互作用することができ、全体的アビディティの増大をもたらしたことを強く示唆している。EXPcRGDおよびEXP NPの両方のIC50レベルは、同じ範囲内であることが見出されたので、本発明者らは、1つの粒子型におけるEXP3174およびcRGDfKの両方の組合せが、EXP3174自体の結合能を有意には妨害しなかったと結論付けた。さらに、対照NPおよびcRGD NPは、AT1rとの相互作用を示さず、受容体刺激の際に最大Ca2+シグナルを生じ、AT1rに対するアッセイの特異性が確認された(図19b)。
【0161】
アデノウイルス模倣性EXPcRGD NPのAT1r結合能を検証した後、次のステップは、cRGDfK-αVβ3相互作用を介したrMC中への粒子取り込みを調査することであった。したがって、本発明者らは、メサンギウム細胞を、蛍光標識したNPと共にインキュベートし、共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)を介して細胞分布を解析した。細胞体を可視化するために、rMCを、CellTracker(商標)Deep Red(CTDR)で事前処置した。図20aは、エンドサイトーシス小胞を示す球状構造におけるAlexaFluor(商標)568で標識したEXPcRGD NPの強い細胞内蓄積を示している。経時的に、眼に見える蓄積の数および強度の両方が増加した。さらに、小胞は、より長いインキュベーション時間でサイズが増大するようであった。これらの知見は、cRGDfK機能化NPが標的細胞に結合することができ、インテグリン媒介性のエンドサイトーシスを介して細胞内小胞中に取り込まれることができることを支持している。経時的に、これらのエンドサイトーシス小胞は、より大きいエンドソームへと融合し、サイズならびに強度がさらに増大する。
【0162】
CLSM結果に基づいて、本発明者らは、NPで処置したrMCのフローサイトメトリー解析を実施し、120分間のインキュベーション期間にわたって細胞関連蛍光を決定した。図20bに示されるように、NP由来蛍光のレベルは、全インキュベーション期間にわたって、全ての他のNP種と比較して、EXPcRGD NPについて最大であった。EXP NPならびに対照NPは、中等度の蛍光シグナルを示したに過ぎないが、かなりのレベルの細胞会合が、cRGD NPについて検出できた。際立って、それぞれの蛍光レベルは、およそ60分後にプラトーに達したが、EXPcRGD NPの細胞会合はさらに増加した。これは、ホモ-機能的cRGD NPと比較して長期の、蛍光レベルの増加を生じる、EXPcRGD NPとそれらの標的細胞との間での逐次的な相互作用の仮説を強く支持する。
【0163】
EXPcRGD NP細胞取り込みに対するαVβ3インテグリンの影響を調査するために、過剰量の遊離cRGDfK(c=500μM)を添加し、その後、rMCをEXPcRGD NPと共に60分間インキュベートした。結果として、細胞関連蛍光のレベルは、EXP NPまたは対照NPのものと匹敵するレベルまで鋭く減少した(図20c)。ヘテロ-多価粒子は、見かけ上、必要なαVβ3インテグリンにもはや向かうことができず、したがって、AT1r結合後にエンドサイトーシスを実質的に開始させることができなかった。
【0164】
インテグリン媒介性のNPエンドサイトーシスの概念をさらに検証するために、本発明者らは、透過電子顕微鏡(TEM)を利用することを決定し、これは、はるかにより高い倍率レベルでのNP-細胞相互作用の評価を可能にした。電子密度を増加させ、適用されたNPの結果として生じるTEM可視性を増加させるために、2.2nmの平均直径を有する超小型金ナノ粒子を、さらなるNP製造のために次いで使用したPLGAに共有結合的にカップリングさせた(図26)。粒子の金コアを増感させ、したがってそれを可視化し、それらの正確な位置を評価するために、これらの金タグ付きNPと共にインキュベートしたメサンギウム細胞を次いで金で増強させることができた。このレトロスペクティブな金増強は、ナノ金で標識したNPの物理化学的特徴が未標識のNPと有意に異ならないという実質的な利点を提供するが、これは、通常利用される金NPについては当てはまらない。
【0165】
図21aは、金タグ付きEXPcRGD NPと共にインキュベートした2つのメサンギウム細胞の細胞体を示している。細胞サイトゾル内で、金で増強されたNPで満たされた多数の丸形の小胞が検出できた。分布パターンは、以前に記載されたCLSM結果(図20a)との顕著な類似性を示し、それにより、リガンド媒介性のNPエンドサイトーシスを強く支持している。さらに、粒子は、細胞境界において蓄積したことが観察され、これは、これらのNPが膜に位置する表面構造になおも結合していたことを示している。これらの知見は、適用されたEXPcRGD NPが、AT1rへの事前の結合および引き続くインテグリン媒介性のエンドサイトーシスの段階的プロセスにおいて、標的細胞と相互作用したことをさらに示している。この評価に従って、表面に結合したcRGDfKなしのEXP NPは、rMC膜においてのみ検出でき、エンドサイトーシス小胞中には粒子蓄積は見出されなかった(図21b)。さらに、対照NPについての細胞-粒子会合はわずかのみであった(図21c)。適用された金増強の特異性は、粒子なし細胞における金蓄積の欠如によって示された。
【0166】
(実施例9)
リガンド相乗作用は、増強されたメサンギウム細胞選択性をin vitroでもたらす
この実施例で言及される全ての材料および方法は、実施例6~8で記載した通りであった。
【0167】
ヘテロ-多価EXPcRGD NPがその表面リガンドの両方の重要な特色を相乗的に組み合わせ、立体的に制御された様式でそれらを提示することが実証されたので、本発明者らは、この設計がメサンギウム細胞選択性を増加させるために実際に利用することができることを実証することを意図した。したがって、本発明者らは、in vitroベースのアッセイを実装し、標的rMCを、標的受容体を有さないまたは2つの標的受容体のうち一方のみを有する優勢な数(5~10倍)のオフターゲット細胞と共に共培養した。HeLa細胞は、AT1rもαVβ3-インテグリンも顕著な程度まで発現しなかったが、NCI-H295R細胞は、高いAT1r発現を示したが、低いαVβ3発現を示したので、これを選択した(図27)。
【0168】
CLSM解析において共培養した細胞間を区別するために、CellTracker(商標)Green(CTG)を使用してrMCを染色したが、オフターゲット細胞はCTDRでマークした。蛍光標識したEXPcRGD NPとの45分間のインキュベーションの後に、NPの細胞分布を評価した。rMC/HeLa共培養モデルでは、粒子由来の蛍光は、メサンギウム細胞の領域内でほぼ排他的に検出することができた。HeLa細胞は、対照的に、NPとの弱い相互作用を示したに過ぎず、わずかな蛍光レベルを生じた(図22a)。したがって、本発明者らは、EXPcRGD NPが、細胞表面上での受容体発現における差異に起因して、HeLa細胞の間のメサンギウム細胞に選択的に位置できたと結論付けた。これらの知見は、EXPcRGD NPの細胞関連蛍光がオフターゲットHeLa細胞においてよりもrMCにおいて有意に高かったが、対照NPについての細胞相互作用は、両方の細胞型についてわずかだけであったことを示すフローサイトメトリー解析によって支持された(図22b)。対照的に、rMC/NCI-H295R共培養は、多様な粒子分布を提供した。NP関連蛍光は、rMCにおいて見出すことができただけでなく、NCI-H295R細胞によってカバーされる領域内でも見出すことができた。しかし、分布パターンは、有意に異なった。rMCの間での蛍光は、以前に見られたように、丸形の小胞様構造において見出されたが、NCI-H295R関連蛍光は、より拡散しており、細胞膜において主に増大された(図22a)。したがって、本発明者らは、EXPcRGD NPが、rMCのエンドサイトーシス小胞中に蓄積するが、NCI-H295R細胞の細胞膜中に存在するAT1rに結合することができただけであり、αVβ3インテグリンの非存在に起因してサイトゾル中に取り込まれることができなかったと結論付けた。さらに、フローサイトメトリー解析により、NCI-H295R細胞についてのNP関連蛍光がHeLa細胞と比較してより高かったが、EXPcRGD NPがメサンギウム細胞において有意に増強されたシグナルをなおも示したことが示された(図22c)。際立って、NPインキュベーションの前の過剰量の遊離EXP3174(c=1mM)の添加は、NCI-H295R細胞についての蛍光レベルの鋭い減少をもたらしたが、rMCについての細胞関連蛍光は、なおも有意に高かった。この観察は、EXPcRGD NPがメサンギウム細胞を標的化するために両方の表面リガンドを利用することが実際にでき、それにより、ヘテロ-機能的設計から利益を得るという見解をさらに支持する。
【0169】
まとめると、本発明者らの共培養モデルは、ヘテロ-多価EXPcRGD NPが、数において主流であるだけでなく、さらには2つの標的受容体のうち一方を発現するオフターゲット細胞の存在下で、受容体陽性メサンギウム細胞を効果的に同定する能力を有することを実証した。
【0170】
(実施例10)
メサンギウム細胞におけるin vivoでのアデノウイルス模倣性EXPcRGD NPの蓄積
この実施例で言及される全ての材料および方法は、実施例6~9で記載した通りであった。
【0171】
rMC結合および取り込み研究の両方が、逐次的なリガンド-受容体相互作用の、本発明者らのウイルス模倣概念により、ヘテロ-多価EXPcRGD NPがメサンギウム細胞をin vitroで選択的に標的化することができるようになることを、首尾よく示した。しかし、多くの戦略が所望の標的特異性を送達することに失敗しているので、十分なin vivo効率を有する堅牢な系へとin vitro結果を移行させることは、ナノ粒子設計における主要な障害であることが示されている。したがって、本発明者らは、能動的な細胞取り込み促進を要求するだけでなく、標的領域における適切な受動的蓄積もまた要求する、メサンギウム領域にin vivoで実際に到達するNPの能力を評価することを決定した。それに関して、蛍光標識したNPを、10週齢の雌性NMRIマウス中に注射した。1時間のNP循環後、マウスを屠殺し、腎臓を抽出した。調製された凍結切片の蛍光解析により、EXPcRGD NPが糸球体領域中に効果的に蓄積したが、腎臓の尿細管部分における蛍光は無視できたことが明らかになった(図23)。対照的に、対照NPならびにホモ-機能的EXPまたはcRGD NPは、腎臓凍結切片においてかなり低い沈着を示した。
【0172】
観察された差異を定量化するために、糸球体関連蛍光レベルを、全てのNP型について、面積当たりの糸球体蛍光強度を評価することによって決定した(図24a/b)。それにより、EXPcRGD NPは、対照NPと比較して、蛍光強度における10倍を超える増加を示した。さらに、ヘテロ-多価NPの糸球体蓄積は、両方のホモ-機能的NP型についてよりも有意に大きかった。際立って、cRGD NP蛍光は、機能化されていない対照NPについてよりもさらに低かった。優勢な数の粒子が、注射の直後にαVβ3発現内皮細胞に結合し、結果として、腎臓のより深い領域に到達する前に血流から離れるので、本発明者らは、cRGD NPが、糸球体領域に到達することができなかったと仮説を立てている。この仮説は、1時間のインキュベーション後のcRGD NPの相対的血漿レベルが全ての粒子型の間で最小であったという知見によってさらに支持された(図28a)。対照的に、EXPcRGD NPでは、より短いcRGDfK機能化PEG-PLA鎖は、より長いEXP3174機能化PEG-PLA鎖の添加によって、αVβ3インテグリンへの早すぎる提示から遮蔽された。結果として、ヘテロ-多価粒子は、オフターゲット沈着を回避し、したがって、腎臓内の糸球体領域に首尾よく到達した。メサンギウム細胞マーカーインテグリン-α8についての抗体染色により、糸球体におけるEXPcRGD NP関連蛍光が、メサンギウム細胞内でほぼ完全に見出され得ることがさらに明らかになり(図24c)、これは、メサンギウム間質中への溢出および引き続くエンドサイトーシスの仮説を証明した(図17a/b)。メサンギウム領域中の検出された蛍光が、構造的にインタクトなNPに由来したことを検証するために、本発明者らは、さらに、匹敵する用量の遊離蛍光色素をマウス中に注射し、蛍光沈着を解析した。これらの試料についての糸球体内シグナルは無視できるほどであったが、尿細管細胞は、非常に強い蛍光レベルを示した(図28b)。これは、注射したNP種とは対照的に、低分子色素が腎濾過されたことを示した。したがって、本発明者らは、全てのNP型についての糸球体内蛍光がインタクトな粒子に由来したと結論付けたが、それは、そうでなければ、分解は、尿細管シグナルにおける増加をもたらしたからである。
【0173】
したがって、本明細書で記述されるin vivo研究は、本発明の新たなアデノウイルス模倣性NP設計の可能性を首尾よく実証した。ヘテロ-多価EXPcRGD NPは、糸球体のメサンギウム領域に効果的に蓄積したが、ホモ-機能的または機能化されていないNP種は、そのように蓄積できなかった。これは、十分なレベルのバイオアベイラビリティに到達するために、NPが、適切な表面リガンドを有する必要があるだけでなく、それぞれの標的化戦略に適切な組織化された形式でそれらを提示しなければならないことを強く示唆している。さらに、メサンギウムにおけるNP蓄積は、立体的に制御された粒子-細胞相互作用のアデノウイルス模倣性システムが高度に有効であることも証明した。
【0174】
(実施例11)
シナシグアトで負荷されたEXPcRGD NPは、高い効率を示す
インフルエンザA模倣性またはアデノウイルス模倣性の標的細胞認識概念のいずれかを使用するナノ粒子(NP)は、in vivo状況においてメサンギウム細胞内に効率的に蓄積することが検出された。次のステップでは、実験的薬物シナシグアト(BAY 58-2667)を、アデノウイルス模倣性EXPcRGD NP中に被包した。シナシグアト(CCG)は、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)の強力な活性化因子であり、メサンギウム線維症を有意に減少させ、糖尿病動物モデルにおいて糸球体損傷を低減させることが示されている。本発明者らの有望なNP種中にCCGを被包することによって、病理学的メサンギウム部位へのCCGの細胞選択的送達がかなり増加され得、最小化されたオフターゲット効果と共に、増強された治療効果がもたらされる(図29)。
【0175】
本発明者らの実験的セットアップでは、CCGを、ヘテロ-多価EXPcRGD NP中に最初に被包した。得られたNPは、NP1つ当たりおよそ500~700個のCCG分子を有した(データ示さず)。全ての以下の実験では、2μMの濃度での遊離シナシグアトの投与を、およそ0.5nM(0.2μMのCCGと等しい)の濃度のCCGで負荷されたEXPcRGD NP、および薬物なしのEXPcRGD対照NPと比較した(図30)。遊離シナシグアトの濃度は、この濃度範囲においてCCGの抗線維化効果を示した以前の刊行物に従って選択した。しかし、CCG保有NPは、可能な薬物送達効果を試験するために、それぞれのCCG量の10%のみを有した。
【0176】
標的sGCに対するCCGで負荷されたEXPcRGD NPの効果を評価するために、メサンギウム細胞を24時間最初にインキュベートし、タンパク質量を、ウエスタンブロット解析を使用して評価した。興味深いことに、sGCの全体量は、それにより、遊離薬物およびCCGで負荷されたNPとのインキュベーション両方の後に徐々に増加しており、これは、sGCに対するシナシグアトの、以前に示された活性化効果だけでなく、安定化効果もまた示している(図31)。対照的に、シナシグアトを欠如するNPは、sGCレベルに対する有意な効果を全く示さなかった。
【0177】
最後に、NPで補助されたCCG送達の抗線維化潜在力および抗増殖潜在力を解析した。それに関して、メサンギウム細胞を、遊離CCG、CCGで負荷されたEXPcRGD NP、または被包された薬物なしの対照NPのいずれかと共に最初に4時間インキュベートした。4時間後、10ng/mLのトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)を48時間にわたって添加して、線維化および過剰増殖的リモデリングを誘導した。TGF-βの投与は、メサンギウム細胞増殖における顕著な増加をもたらすが、遊離CCGおよびCCGで負荷されたNPとの事前インキュベーションは共に、この効果を有意に逆転させることができた(図32)。また、線維症マーカーα-SMAおよびコラーゲンIのウエスタンブロットおよび蛍光顕微鏡解析により、メサンギウム細胞の線維化促進性リモデリングの阻害に対する、CCG(負荷されたNP)の類似の効果が明らかになった。
【0178】
合わせると、これらの結果により、2つの主要な成果が明らかになった:
1.遊離シナシグアトおよびNPで被包されたシナシグアトの両方が、その標的酵素sGCに対する有意な効果を示し、これは、記載された抗線維化経路の顕著な活性化をもたらす(図29)。これらの結果は、CCGについての以前の知見と一致しており、抗線維化治療における治療剤の際立った可能性を示している。
2.全ての実験を通じて、シナシグアトで負荷されたEXPcRGD NPは、被包されたCCGの全体的な量が遊離薬物用量のたった10%であっても(0.2μM 対 2μM)、遊離CCGの投与と匹敵する効果を示した。これは、その意図した細胞内標的へと医薬剤をより効率的に送達する、記載されたNPの顕著な可能性を示している。
【0179】
参考文献
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【0180】
本明細書、特許請求の範囲および/または添付の図面に開示された本発明の特色は、別々におよびそれらの任意の組合せでの両方で、その種々の形態で本発明を実現するための材料であり得る。
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【配列表】
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【国際調査報告】