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特表2023-507206生体分析物を検出するためのセンサおよびその検出方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-21
(54)【発明の名称】生体分析物を検出するためのセンサおよびその検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/04 20060101AFI20230214BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20230214BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
G01N27/04 Z
G01N33/483 E
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538215
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-18
(86)【国際出願番号】 AU2020051396
(87)【国際公開番号】W WO2021119755
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】2019904865
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517333347
【氏名又は名称】ロイヤル メルボルン インスティチュート オブ テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】ROYAL MELBOURNE INSTITUTE OF TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】124 La Trobe Street,Melbourne,Victoria 3000,Australia
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アハメド,タイムール
(72)【発明者】
【氏名】デーリング,モリッツ
(72)【発明者】
【氏名】ペレラ,ガンガナート
(72)【発明者】
【氏名】ワリア,スミート
(72)【発明者】
【氏名】バースカラン,マドゥー
(72)【発明者】
【氏名】スリラム,シャラート
【テーマコード(参考)】
2G045
2G060
【Fターム(参考)】
2G045DA36
2G045FA34
2G045FB03
2G060AA05
2G060AA15
2G060AD06
2G060AF08
2G060AG03
2G060AG10
2G060GA02
2G060JA07
2G060KA09
(57)【要約】
本発明は、生体分析物を検出するためのセンサであって、基板と、基板上に、相互に間隔をあけて対向する関係で配置された一対の端子電極と、基板の表面に適用され、一対の端子電極の間で、一対の端子電極と電気的に接触する非絶縁性の検知素子であって、検知素子が端子電極間に導電路を提供し、検知素子が酸素欠乏金属酸化物層と生体分析物結合部位とを含み、センサを横切って電圧が印加されると、生体分析物の生体分析物結合部位への結合に対応する検知素子のコンダクタンスの変化に比例する電気信号を発生させるところの検知素子とを有するセンサを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体分析物を検出するためのセンサであって、
基板と、
前記基板上に、互いに間隔をあけて対向する関係で配置された一対の端子電極と、
前記基板の表面に適用され、前記一対の端子電極の間で、前記一対の端子電極と電気的に接触する非絶縁性の検知素子であって、前記検知素子が、前記端子電極間に導電路を提供し、前記検知素子が、酸素欠乏金属酸化物層および生体分析物結合部位を有し、前記センサを横切って電圧が印加されると、前記生体分析物結合部位への生体分析物の結合に対応する前記検知素子のコンダクタンスの変化に比例する電気信号が生成される、ことを特徴とするセンサ。
【請求項2】
前記酸素欠乏金属酸化物層は、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタンストロンチウム(STO)、酸化スズ、および二酸化チタンからなる群より選択される金属酸化物から形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記酸素欠乏金属酸化物層は、約50nmから約200μmの範囲に入る厚さを有する、ことを特徴とする請求項1または2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記酸素欠陥金属酸化物層は、反応性スパッタリング、物理的気相成長(PVD)、化学的気相成長(CVD)、有機金属化学気相成長(MOCVD)、パルスレ-ザ-蒸着(PLD)および分子線エピタキシ(MBE)からなる群から選択される技術によって前記基板表面に適用される、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項5】
生体分析物結合部位が、酸素欠陥金属酸化物層に物理的または化学的に吸着された中間層を介して、酸素欠陥金属酸化物層に固定されている、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項6】
前記中間層が、エポキシ基、チオ-ル基、アミノ基、カルボキシル基、および水酸基からなる群から選択される末端官能性を有するシラン化剤で、前記酸素欠乏金属酸化物層をシラン化することにより製造される、ことを特徴とする請求項5に記載のセンサ。
【請求項7】
前記シラン化剤が、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン(MTS)、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)、及びN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAPTS)からなる群から選択される、ことを特徴とする請求項6に記載のセンサ。
【請求項8】
前記酸素欠乏金属酸化物層は、約0.08ジ-メンス/mから約0.6ジ-メンス/mの範囲に入るコンダクタンスを有する、ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項9】
前記生体分析物結合部位が生体分子である、ことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項10】
前記生体分子が、タンパク質、ペプチド、リポペプチド、タンパク質結合性炭水化物、またはタンパク質結合性リガンドである、ことを特徴とする請求項9に記載のセンサ。
【請求項11】
前記生体分子が、捕獲タンパク質である、ことを特徴とする請求項9に記載のセンサ。
【請求項12】
前記捕獲タンパク質が、タンパク質結合足場、T細胞受容体、TCRの結合フラグメント、可変リンパ球受容体、抗体及び/又は抗体の結合フラグメントである、ことを特徴とする請求項11に記載のセンサ。
【請求項13】
前記タンパク質結合足場が、アドネクチン、アフィリン、アフィボディ、アフィマ-分子、アフィチン、αボディ、アプタマ-、アンチカリン、アルマジロ反復タンパク質ベ-スの足場、アトリマ-、アビマ-、デザインド・アンキリン反復タンパク質(DARPins)、フィノマ-、インヒビタ-・シスチン・ノット(ICK)足場、Kunitzドメインペプチド、モノボディ及び/又はナノフィチンからなる群から選択される、ことを特徴とする請求項12に記載のセンサ。
【請求項14】
抗体の前記結合フラグメントが、Fab、(Fab’)、Fab’、単鎖可変フラグメント(scFv)、ジ-及びトリ-scFvs、単一ドメイン抗体(sdAb)、ダイアボディ又は抗体の結合ドメインを含む融合タンパク質を有する、ことを特徴とする請求項12に記載のセンサ。
【請求項15】
前記生体分析物結合部位が、インタ-ロイキン-6(IL-6)を結合する、ことを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項16】
前記生体分析物結合部位が、C反応性タンパク質(CRP)を結合する、ことを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項17】
前記基板は、シリコンウェハ、ポリマ-、ガラスおよびセラミックからなる群から選択される材料から製造される、ことを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項18】
前記ポリマ-が、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリイミド(PI)及びポリエチレンナフタレ-ト(PEN)からなる群から選択される、ことを特徴とする請求項17に記載のセンサ。
【請求項19】
前記セラミックが、酸化アルミニウム(Al)、サファイア、および窒化ケイ素(Si)からなる群から選択される、ことを特徴とする請求項17に記載のセンサ。
【請求項20】
生体分析物を検出する方法であって、
a)請求項1から19のいずれか一項に記載のセンサの検知素子を、生体分析物を含むサンプル溶液に接触させる工程と、
b)前記センサを横切って電圧を印加する工程と、
c)前記生体分析物結合部位へ前記生体分析物が結合する際の前記生体分析物の検出に対応するコンダクタンスの変化に比例して発生される電気信号を検出する工程と
を備える方法。
【請求項21】
前記生体分析物結合部位が生体分子である、ことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記生体分析物結合部位が、インタ-ロイキン-6(IL-6)を結合する、ことを特徴とする請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
IL-6の濃度が4フェムトモルであるサンプル溶液内で検出されるコンダクタンスの変化が約9.2%である、ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記生体分析物結合部位が、C反応性タンパク質(CRP)を結合する、ことを特徴とする請求項20または21に記載の方法。
【請求項25】
CRPの濃度が13フェムトモルであるサンプル溶液内で検出されるコンダクタンスの変化が約12.5%である、ことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
生体分析物を検出するためのセンサを製造する方法であって、
基板を提供する工程と、
前記基板上に一対の端子電極を相互に間隔をあけて対向する関係で蒸着させる工程と、
生体触媒結合部位で被覆された酸素欠乏金属酸化物層の形態の非絶縁性検知素子を、前記一対の端子電極の間でかつ前記一対の端子電極と電気的に接触して適用する工程であって、前記検知素子が前記端子電極間に導電路を与え、前記生体分析物結合部位が、前記生体分析物結合部位へ前記生体分析物が結合する際の前記生体分析物の検出に対して選択的である、ところの工程と
を備える方法。
【請求項27】
前記酸素欠乏金属酸化物層が、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタンストロンチウム(STO)、酸化スズ、および二酸化チタンからなる群より選択される金属酸化物から形成される、ことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記酸素欠乏金属酸化物層が、約50nmから約200μmの範囲に入る厚さを有する、ことを特徴とする請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記酸素欠乏金属酸化物層が、反応性スパッタリング、物理的気相成長(PVD)、化学的気相成長(CVD)、有機金属化学気相成長(MOCVD)、パルスレ-ザ-蒸着(PLD)および分子線エピタキシ(MBE)からなる群から選択される技術によって前記基板表面に適用される、ことを特徴とする請求項26から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記生体分析物結合部位を酸素欠乏金属酸化物層に固定するために、中間層を前記酸素欠乏金属酸化物層に物理的または化学的に吸着させる工程をさらに備える、請求項26から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記中間層が、エポキシ基、チオ-ル基、アミノ基、カルボキシル基、および水酸基からなる群から選択される末端官能性を有するシラン化剤で、前記酸素欠乏金属酸化物層をシラン化することにより製造される、ことを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記シラン化剤が、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン(MTS)、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)、及びN-2(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAPTS)からなる群から選択される、ことを特徴とする請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサに関し、特に、体液中の生体分析物を検出するための非侵襲型センサおよびその検出方法に関するものである。
【0002】
本発明は、主に体液中の様々な生体分析物の検出に使用するために開発されたものであり、以下、本出願を参照して説明する。
【0003】
以下の発明の背景に関する考察は、本発明の理解を容易にすることを意図している。しかしながら、この考察は、言及された資料のいずれかが、本明細書の請求項のいずれかの優先日において、オ-ストラリアまたは他の国において公開されていた、知られていた、または一般的な知識の一部であったことを認めるものではないことを理解されたい。
【背景技術】
【0004】
組織や体液中のバイオマ-カ-(以下、生体分析物)をモニタリング・測定する方法には、2つのアプロ-チがある。第1の方法は、センサの部品が組織や体液に直接接触し、感染や組織損傷、不快感を引き起こす可能性のある侵襲的なセンサを使用する方法である。一方、非侵襲型センサは、光吸収、電気化学、トランスダクション、コンダクタノメトリ-など、さまざまな技術を用いて体液中の生体分析物の濃度を測定するもので、このようなセンサを用いることで、体液中の生体分析物の濃度を測定することができる。
【0005】
非侵襲型センサという点では、光吸収を利用した非侵襲型センサは、体液中に存在する可能性のあるさまざまな生体分析物の弱い吸収帯が密接に重なり合い、また、その測定に温度感受性があるため、特に精密な測定ができるわけではない。
【0006】
一方、電気化学センサは、より精密であるため、現在バイオセンシングの分野で主流となっている。電気化学センサは、センサに取り付けられた検出素子により、目的の生体分析物との反応によって発生する電気信号を測定することによって作動する。ここで、発生した電気信号は、生体分析物の濃度に比例する。センサの電気化学反応は、測定可能な電流(アンペロメトリック)、測定可能な電荷蓄積または電位(ポテンショメトリック)、媒体の導電特性(コンダクタメトリック)、抵抗とリアクタンスの組み合わせによるインピ-ダンス測定によって行われる。
【0007】
電気化学伝達を利用したセンサには、通常、作用電極、対向(または補助)電極、参照電極が必要である。参照電極は、既知の安定した電位を確立するために、生物学的認識要素および分析物の相互作用の部位から距離を置いて維持される。作用電極は、相互作用が起こるときに伝達成分として働き、対向電極は電流を測定し、作用電極への電流伝達を可能にする電解液の供給を容易にする。
【0008】
電気伝導度センサもまた、電極を使用して、媒体の間で電流を流す能力を測定するものである。しかし、電気伝導度センサは参照電極を必要としない。また、このセンサは低振幅の交流電圧で動作するため、電極のファラデ-現象を防ぐことができ、薄膜技術により容易に小型化・集積化することができる。
【0009】
電気伝導度センサには一定の利点があるが、検知素子としてポリマ-を使用するため、感度が阻害され、センサの耐久性や長期安定性が悪くなる場合が多い。
【0010】
直接電気を通すセンサに代わるものとして、電界効果トランジスタを用いたセンサも開発されている。電界効果トランジスタは、ソ-ス、ゲ-ト、ドレインという3つの端子を持つデバイスである。ゲ-トの変化により電界効果が生じ、ソ-スとドレイン間の導電性が変化することで動作するデバイスである。
【0011】
例えば米国特許出願公開第2010/2016256号は、基板と、基板上のソ-ス電極と、基板上のドレイン電極と、ソ-ス電極とドレイン電極の間の基板の表面上の少なくとも1つの機能化ナノベルトとを含むバイオセンサを記載し、機能化ナノベルトは、ナノベルト表面に結合した1つ以上の検出分子への分析物の結合によって電界ゲ-ト効果が発生するように、検出すべき生体分析物と結合するための1つ以上の検出分子が結合した化学的に官能化された表面を有することを示す。このデバイスは、分子の結合によってナノベルト(ゲ-ト)の電界効果が変化し、ソ-スとドレインの間の経路の導電率が変化し、その導電率の変化をモニタ-できるように機能する。一般に、このタイプのデバイスは2つの欠点に悩まされている。
【0012】
まず、電界効果トランジスタは、一般的にオン・オフを繰り返すデバイスであり、非線形な応答性を持っている。抵抗値が直線的に変化しないため、直線的な領域が少なく、その後平坦域になってしまうため、幅広い条件下で使用することが難しい。
【0013】
第二に、当業者に理解されるように、このようなデバイスが説明したように動作するためには、ソ-スとドレイン間の導電路とゲ-トバイアス(この場合、ナノベルト)のソ-スとの間に絶縁(誘電)層が存在することが必要である。したがって、このタイプのデバイスは、さまざまな構造要素があるため、製造が比較的複雑であり、構造的に単純なセンサに比べて工業的規模での生産が難しいという欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、先行技術の欠点の少なくともいくつかを克服するか、または実質的に改善するか、あるいは少なくとも代替手段を提供する、生体分析物の検出に使用するためのセンサおよびその検出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の態様に従い、生体分析物を検出するためのセンサが提供される。当該センサは、基板と、該基板上に、互いに間隔をあけて対向する関係で配置された一対の端子電極と、該基板の表面に適用され、一対の端子電極の間で、一対の端子電極と電気的に接触する非絶縁性の検知素子であって、検知素子が、端子電極間に導電路を提供し、検知素子が、酸素欠乏金属酸化物層および生体分析物結合部位を有し、センサを横切って電圧が印加されると、生体分析物結合部位への生体分析物の結合に対応する検知素子のコンダクタンスの変化に比例する電気信号が生成される、ことを特徴とする。
【0016】
好ましくは、酸素欠乏金属酸化物層は、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタンストロンチウム(STO)、酸化スズ、および二酸化チタンからなる群より選択される金属酸化物から形成されている。
【0017】
一実施形態では、酸素欠乏金属酸化物層は、約50nmから約200μmの範囲に入る厚さを有する。
【0018】
好ましくは、酸素欠陥金属酸化物層は、反応性スパッタリング、物理的気相成長(PVD)、化学的気相成長(CVD)、有機金属化学気相成長(MOCVD)、パルスレ-ザ-蒸着(PLD)および分子線エピタキシ(MBE)からなる群から選択される技術によって基板表面に適用される。
【0019】
好ましくは、生体分析物結合部位が、酸素欠陥金属酸化物層に物理的または化学的に吸着された中間層を介して、酸素欠陥金属酸化物層に固定されている。
【0020】
一実施形態では、中間層が、エポキシ基、チオ-ル基、アミノ基、カルボキシル基、および水酸基からなる群から選択される末端官能性を有するシラン化剤で、酸素欠乏金属酸化物層をシラン化することにより製造される。
【0021】
一実施形態では、シラン化剤が、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン(MTS)、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)、及びN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAPTS)からなる群から選択される。
【0022】
一実施形態では、酸素欠乏金属酸化物層は、約0.08ジ-メンス/mから約0.6ジ-メンス/mの範囲に入るコンダクタンスを有する。
【0023】
好ましくは、生体分析物結合部位は生体分子である。
【0024】
好適には、生体分子は、タンパク質、ペプチド、リポペプチド、タンパク質結合性炭水化物またはタンパク質結合性リガンドである。
【0025】
一実施形態では、生体分子は、捕獲タンパク質である。
【0026】
好適には、捕獲タンパク質が、タンパク質結合足場、T細胞受容体、TCRの結合フラグメント、可変リンパ球受容体、抗体及び/又は抗体の結合フラグメントである。
【0027】
好ましくは、タンパク質結合足場が、アドネクチン、アフィリン、アフィボディ、アフィマ-分子、アフィチン、αボディ、アプタマ-、アンチカリン、アルマジロ反復タンパク質ベ-スの足場、アトリマ-、アビマ-、デザインド・アンキリン反復タンパク質(DARPins)、フィノマ-、インヒビタ-・シスチン・ノット(ICK)足場、Kunitzドメインペプチド、モノボディ及び/又はナノフィチンからなる群から選択される。
【0028】
好ましくは、抗体の前記結合フラグメントが、Fab、(Fab’)、Fab’、単鎖可変フラグメント(scFv)、ジ-及びトリ-scFvs、単一ドメイン抗体(sdAb)、ダイアボディ又は抗体の結合ドメインを含む融合タンパク質を有する。
【0029】
一実施形態では、生体分析物結合部位が、インタ-ロイキン-6(IL-6)を結合する。
【0030】
一実施形態では、生体分析物結合部位が、C反応性タンパク質(CRP)を結合する。
【0031】
好ましくは、基板は、シリコンウェハ、ポリマ-、ガラスおよびセラミックからなる群から選択される材料から製造される。
【0032】
好適には、ポリマ-が、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリイミド(PI)及びポリエチレンナフタレ-ト(PEN)からなる群から選択される。
【0033】
好適には、前記セラミックが、酸化アルミニウム(Al)、サファイア、および窒化ケイ素(Si)からなる群から選択される。
【0034】
本発明の第2の態様に従い、生体分析物を検出する方法が提供される。当該方法は、第1の態様に従うセンサの検知素子を、生体分析物を含むサンプル溶液に接触させる工程と、センサを横切って電圧を印加する工程と、生体分析物結合部位へ生体分析物が結合する際の生体分析物の検出に対応するコンダクタンスの変化に比例して発生される電気信号を検出する工程とを有する。
【0035】
好ましくは、生体分析物結合部位は生体分子である。
【0036】
一実施形態では、生体分析物結合部位が、インタ-ロイキン-6(IL-6)を結合する。
【0037】
好適には、IL-6の濃度が4フェムトモルであるサンプル溶液内で検出されるコンダクタンスの変化が約9.2%である。
【0038】
一実施形態では、前記生体分析物結合部位が、C反応性タンパク質(CRP)を結合する。
【0039】
好適には、CRPの濃度が13フェムトモルであるサンプル溶液内で検出されるコンダクタンスの変化が約12.5%である。
【0040】
本発明の第3の態様に従い、生体分析物を検出するためのセンサを製造する方法が提供される。当該方法は、基板を提供する工程と、基板上に一対の端子電極を相互に間隔をあけて対向する関係で蒸着させる工程と、生体触媒結合部位で被覆された酸素欠乏金属酸化物層の形態の非絶縁性検知素子を、一対の端子電極の間でかつ一対の端子電極と電気的に接触して適用する工程であって、検知素子が端子電極間に導電路を与え、生体分析物結合部位が、生体分析物結合部位へ生体分析物が結合する際の生体分析物の検出に対して選択的である、ところの工程とを有する。
【0041】
好ましくは、酸素欠乏金属酸化物層が、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタンストロンチウム(STO)、酸化スズ、および二酸化チタンからなる群より選択される金属酸化物から形成される。
【0042】
一実施形態では、酸素欠乏金属酸化物層が、約50nmから約200μmの範囲に入る厚さを有する。
【0043】
好ましくは、酸素欠乏金属酸化物層が、反応性スパッタリング、物理的気相成長(PVD)、化学的気相成長(CVD)、有機金属化学気相成長(MOCVD)、パルスレ-ザ-蒸着(PLD)および分子線エピタキシ(MBE)からなる群から選択される技術によって基板表面に適用される。
【0044】
好適には、本方法は、生体分析物結合部位を酸素欠乏金属酸化物層に固定するために、中間層を酸素欠乏金属酸化物層に物理的または化学的に吸着させる工程をさらに有する。
【0045】
好ましくは、中間層は、エポキシ基、チオ-ル基、アミノ基、カルボキシル基および水酸基からなる群から選択される末端官能基を有するシラン化剤で、酸素欠乏金属酸化物層をシラン化することによって製造される。
【0046】
一実施形態では、シラン化剤が、(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン(MTS)、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)、及びN-2(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAPTS)からなる群から選択される。
【0047】
また、本発明の他の態様も開示されている。
【0048】
本発明の範囲に入り得る他の形態にかかわらず、本発明の好適実施形態が、添付の図面を参照しながら、例示的にのみ説明される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1図1は、本発明の好適実施形態に従う生体分析物を検出するための非侵襲型電気伝導度センサの製造のための概略図であり、このセンサは、複数の生体分析物結合部位が結合された酸素欠乏金属酸化物薄膜層を含む検知素子を有している。
図2A図2Aは、IL-6抗体固定化電気伝導度センサ上での濃度(M)の関数として抵抗値の変化(%)を反映するプロット図である。プロット中の破線は、健康なヒトの体液(すなわち、汗中のIL-6)の抗原濃度(M)を示している。
図2B図2Bは、CRP抗体固定化電気伝導度センサ上での濃度(M)の関数として抵抗値の変化(%)を反映するプロット図である。プロット中の破線は、健康なヒトの体液(すなわち、唾液中のCRP)の抗原濃度(M)を示している。
図3A図3Aは、交差選択試験のために行った、抗IL-6抗体固定化電気伝導度センサ上のCRPの抵抗変化(%)を反映したプロット図である。IL-6の公称濃度(M)は、4pMである。
図3B図3Bは、交差選択試験のために行った、抗CRP抗体固定化電気伝導度センサ上のIL-6の抵抗変化(%)を反映したプロット図である。CRPの公称濃度(M)は、13pMである。
図4A図4Aは、図1の電気伝導度センサの基板表面に形成された、スパッタZnO薄膜から収集した(a,c)Zn2pの内殻順位XPSスペクトルである。
図4B図4Bは、図1の電気伝導度センサの基板表面に形成された、スパッタZnO薄膜から収集した(b,d)O1sの内殻順位のXPSスペクトルである。
図4C図4Cは、図1の電気伝導度センサの基板表面に形成された、スパッタZnO薄膜から収集した(a,c)Zn2pの内殻順位のXPSスペクトルである。
図4D図4Dは、図1の電気伝導度センサの基板表面に形成された、スパッタZnO薄膜から収集した(b,d)O1sの内殻順位のXPSスペクトルである。Ovは酸素空孔を表す。
図5A図5Aは、図1の電気伝導度センサの基板表面に形成された化学組成の異なるスパッタSTO薄膜における、(a,d)Sr元素の分解内殻順位XPSスペクトルである。
図5B図5Bは、図1の電気伝導度センサの基板表面に形成された化学組成の異なるスパッタSTO薄膜における、(b,e)Ti元素の分解内殻順位XPSスペクトルである。
図5C図5Cは、図1の電気伝導度センサの基板表面に形成された化学組成の異なるスパッタSTO薄膜における、(c,f)O元素の分解内殻順位XPSスペクトルである。
図5D図5Dは、図1の電気伝導度センサの基板表面に形成された化学組成の異なるスパッタSTO薄膜における、(a,d)Sr元素の分解内殻順位XPSスペクトルである。
図5E図5Eは、図1の電気伝導度センサの基板表面に形成された化学組成の異なるスパッタSTO薄膜における、(b,e)Ti元素の分解内殻順位XPSスペクトルである。
図5F図5Fは、図1の電気伝導度センサの基板表面に形成された化学組成の異なるスパッタSTO薄膜における、(c,f)O元素の分解内殻順位XPSスペクトルである。
図6A図6Aは、他の試験抗原の存在下での、IL-6抗体固定化デバイス上のIL-6抗原に対する選択性の抵抗値の変化(%)を反映したプロット図である。
図6B図6Bは、他の試験抗原の存在下での、CRP抗体固定化デバイス上のCRP抗原に対する選択性の抵抗値の変化(%)を反映したプロット図である。
図7A図7Aは、(a)新しい(ゼロ日経過)および古い(450日経過後)デバイスの抵抗値の変化をIL-6濃度の関数として反映したプロット図である。
図7B図7Bは、新しい(ゼロ日経過)および古い(450日経過後)デバイスの抵抗値の変化をCRP濃度の関数として反映したプロット図である。
図8A図8Aは、(a)PBSおよび人工唾液中のIL-6濃度の関数として抵抗値の変化を反映したプロット図である。
図8B図8Bは、本研究で使用した他の抗原の存在下での、IL-6抗体固定化デバイス上でのIL-6の選択性研究を反映したプロット図である。
図8C図8Cは、PBSおよび人工唾液中のCRP濃度の関数として抵抗値の変化を反映したプロット図である。
図8D図8Dは、本研究で使用した他の抗原の存在下での、CRP抗体固定化デバイス上でのCRPに対する選択性研究を反映したプロット図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下の説明において、異なる実施形態における同種または同一の参照番号は、同一または類似の特徴を示すことに留意されたい。
【0051】
本発明は、ヒトの唾液や汗などの体液中の様々な生体分析物のレベルを検出し、病状の予知・診断に役立てるための、安価な非侵襲型センサを見出したことに基づくものである。以下に詳述するように、本センサはシンプルで比較的容易に製作可能なデバイス構造を有しており、特殊な基板を必要とする、あるいは結果の精度が制限されるセンシング技術を採用した従来の非侵襲型センサに代わるコスト効率の良い代替手段を提供する。
【0052】
本発明者らは、以下に詳述する電気伝導度センサは、CMOS回路との互換性を有するため、フレキシブル/ウェアラブル電子機器と容易に統合でき、侵襲的な処置を必要とせずに、体液を介してタ-ゲット生体分析物のレベルを連続的に監視するために使用できる、携帯可能で個人用で再利用できるセンサを提供できると考えられる。これらの生体分析物は、個人の状態や健康状態を示すバイオマ-カ-として機能することができる。
【0053】
以下に、体液中の生体分析物(バイオマ-カ-など)の範囲のレベルを検出するための非侵襲型電気伝導度センサとその適用方法について詳しく説明する。
【0054】
<センサ>
次に、本発明の好適実施形態に係る生体分析物の検出に用いるセンサについて説明する。
【0055】
最も単純な形態では、図1の概略図に示すように、センサは、基板と、基板上に相互に間隔をあけて対向する関係で配置された一対の端子電極と、基板の表面に適用され、一対の端子電極の間で、端子電極と電気接触する非絶縁性の検知素子を有し、検知素子が端子電極間の導電路を提供し、この検知素子が、検出目的のためにタ-ゲットバイオマ-カ-または生体分析物をそこに選択的に結合できる部位を形成するべく、適切な表面改質剤および合成結合体または生体分子を用いて表面が改質された、酸素欠乏金属酸化物層で構成される。
【0056】
以下、非侵襲型電気伝導度センサを構成する各要素について説明する。
【0057】
<基板>
基板は、シリコンウェハ、ポリマ-、ガラスまたはセラミックからなる群から選択される材料から製造されてもよい。
【0058】
例えば、基板として使用するのに適したポリマ-は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリイミド(PI)、およびポリエチレンナフタレ-ト(PEN)からなる群より選択されてもよい。一方、適切なセラミックは、酸化アルミニウム(Al)、サファイア、および窒化ケイ素(Si)からなる群から選択されてもよい。
【0059】
ここでは、非侵襲型電気伝導度センサの製造手順を説明するために、図1のステップ(1)に示すように、基板はSiO表面を有する硬質シリコンウェハである。
【0060】
しかしながら、所望の目的が、携帯性と柔軟性が望ましい用途においてデバイスとして使用できる非侵襲型電気伝導度センサを提供することである場合、使用される基板は、理想的には、上述の硬質SiO/Siウェハではなく、ポリイミドホイルなどの柔軟なポリマ-であることが、当該技術分野の当業者には理解されよう。ポリイミド箔を用いたフレキシブルな非侵襲型電気伝導度センサの製造手順は、上述したものと同様である(図1参照)。
【0061】
<検知素子>
最も単純な形では、検知素子は、酸素欠乏金属酸化物層と、化学的または物理的吸着によって酸素欠乏金属酸化物層の表面に結合した1つまたは複数の生体分析物結合部位から構成される。
【0062】
金属酸化物層は、酸化亜鉛(ZnO)、酸化チタンストロンチウム(STO)、酸化スズ、および酸化チタンからなる群より選択される任意の適切な金属酸化物を用いて形成することができる。
【0063】
好ましい形態では、金属酸化物層は、酸化亜鉛(ZnO)または酸化チタンストロンチウム(STO)を用いて形成された酸素欠乏型金属酸化物層である。後述するように、本発明者らは、金属酸化物層が薄膜の酸素欠乏酸化亜鉛(ZnO)層である場合に、良好な結果が得られる可能性があることを見出した。
【0064】
酸素欠乏金属酸化物層は、反応性スパッタリング、物理的気相成長(PVD)、化学的気相成長(CVD)、有機金属化学気相成長(MOCVD)、パルスレ-ザ-蒸着(PLD)、および分子線エピタキシ(MBE)からなる群から選択される技術によって基板表面に適用することができる。
【0065】
好適実施形態では、図1のステップ(2)に示されるように、酸素欠乏金属酸化物層は、反応性スパッタリングによって硬質(SiO/Si)ウェハまたはフレキシブルポリイミドホイルの表面に適用されて、約50nm~約200μmの範囲に入る厚さを有する薄い金属酸化膜がもたらされる。
【0066】
例えば、図1のステップ(2)に示すように、硬質(SiO/Si)ウェハの表面に酸化亜鉛をスパッタリングして、表面に複数の水酸基(OH)を与える酸素欠陥酸化亜鉛層(ZnO1-x)を提供する。こうして堆積した酸素欠乏ZnO層は、所望の用途に適合するように、任意の適切な厚さであってよい。
【0067】
酸素欠乏ZnO層が約10nm~約1μmの範囲にある場合に、良好な結果が得られた。
【0068】
<金属酸化物薄膜>
ZnOやZnOなどの二元系やSrTiOなどの複合系金属酸化物薄膜は、IL-6やCRPなどの生体分析物を検出する非侵襲型電気伝導度センサとして応用されてきた。
【0069】
以下では、これらの二元系・複合系金属酸化物薄膜の合成過程と化学組成について説明する。
【0070】
<酸化亜鉛(ZnO)>
マグネトロンスパッタリングにより、酸素含有率の異なる2種類のZnO薄膜を作製した。これにより、異なる化学量論のスパッタリング薄膜が生成される。スパッタリングパラメ-タおよび関連する導電率を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
スパッタリングパラメ-タは、0.08~0.6S/mの範囲の電気伝導度を有する薄膜を設計するために選択される。この範囲の導電率で、センサの感度が最大となる。
【0073】
スパッタリングされたZnO薄膜の化学量論は、X線光電子分光法(XPS)によって評価される。図4は、ZnO薄膜とZnO薄膜から収集した内殻順位のZn2pおよびO1sのスペクトルである。
【0074】
図4に示すように、O1sスペクトルは、Zn-O結合(ピ-ク(1)で表される)、酸素空孔(Ov、(2)で表される)、-OH結合((3)で示される)に関連する3つの明確なピ-クでフィッティングされる(参照文献1、2参照)。
【0075】
フィッティングパラメ-タを表2に示す。両者の薄膜のピ-ク(2)を相対的に比較すると、ZnOは、ZnOよりも相対的に酸素欠乏が大きいことが示唆されている。
【0076】
【表2】
【0077】
<ストロンチウムチタン酸化物(STO)>
2種類のストロンチウムチタン酸化物(SrTiO:STO)薄膜を、酸素含有率の異なるマグネトロンスパッタリングによって作製した。スパッタリングパラメ-タは表3に示されている。
【0078】
【表3】
【0079】
図5は、還元環境(酸素0%)と酸化環境(酸素5%)でスパッタリングしたSTOおよびSTOの両方のタイプのSTO薄膜における3元素すべてのXPS内殻結合エネルギ-スペクトルを示している。いずれのSTO酸化物でも、Sr3dの内殻準位スペクトル(図5A図5D)は単一成分でフィッティングし、化学状態での有意なシフトは観測されなかった。また、両酸化物に対して、Sr3d5/2の結合エネルギ-132.9eV(±0.1eV)およびSr3d3/2の結合エネルギ-134.7eV(±0.1eV)は、STO内のSr2+種に起因する(参照文献3および4参照)。
【0080】
Ti2pの内殻準位結合エネルギ-のデコンボリュ-ションスペクトル解析が図5Bおよび5Eに示されている。STOおよびSTOの両方のTi2pスペクトルは、2つの異なる成分、すなわちTi4+およびTi(4-x)+でフィッティングされる。Ti4+成分の単独での存在は、完全に化学量論的なSTO酸化物に対応し、Ti(4-x)+種(Ti3+やTi2+など)は、酸化物系に酸素空孔が存在することを表している。ただし、Ti3+およびTi2+の成分は、曖昧さを避けるため、低結合エネルギ-では1成分のみでフィッティングし、Ti(4-x)+と表記している。STOおよびSTO酸化物において、Ti2p3/2の結合エネルギ-のピ-ク458.4eVが、Ti4+酸化状態に割り当てられ、ピ-ク456.2eVおよび456.5eVがTi(4-x)+種に割り当てられている(参照文献5から8参照)。フィットしたピ-クを積分することにより個々のTi4+およびTi(4-x)+種の相対比が計算される。STOにおけるTi4+およびTi(4-x)+の相対比はそれぞれ72.9%および27.1%と算出された。
【0081】
一方、STOにおけるTi4+およびTi(4-x)+の相対比は、それぞれ75.2%および24.8%と算出された。これは、STO中のTi(4-x)+種の濃度が、STO中よりも比較的高いことを示している。このように、STO薄膜はSTO薄膜よりも酸素欠乏が大きい。
【0082】
さらに、O1sスペクトル(図5C図5F)は、529.5eVおよび531.3eVにピ-ク位置を持つ2つ成分でフィッティングされ、それぞれSTO酸化物中のO2-イオン(参照文献3参照)および表面に偶発的炭素の吸着で形成されたC-O結合(参照文献3、4、9参照)に相当する。
【0083】
<電極>
図1のステップ(3)に示すように、堆積された酸素欠乏金属酸化物薄膜の表面に、相互に間隔をおいて対向する関係で、センサの検出素子として機能する酸素欠乏金属酸化物薄膜に電気的に接触する一対の金端子電極が形成される。
【0084】
簡単に説明すると、電子ビ-ムリソグラフィ-を用いて、酸素欠乏金属酸化物層の上に金薄膜(250nm、100nmのクロム接着層)を蒸着することにより、端子電極を形成する。次に、蒸着した金薄膜を標準的なフォトリソグラフィ-およびウェットエッチングの技術を用いてパタ-ニングし、一対の端子電極を形成する。
【0085】
<中間層>
好ましい態様では、生体分析物結合部位は、表面改質剤として酸素欠陥金属酸化物層に物理的または化学的に吸着した複数の長鎖分子を用いて形成される中間層を介して、酸素欠陥金属酸化物層に固定される。
【0086】
一実施形態では、中間層は、エポキシ基、チオ-ル基、アミノ基、カルボキシル基及び水酸基からなる群から選択される末端官能性を有するシラン化剤で、酸素欠乏性酸化亜鉛層の水酸基をシラン化することによって生成される。
【0087】
例えば、図1のステップ(4)に示すように、シラン化剤は、エポキシ末端シラン化剤である(3-グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン(GPS)である。GPSを酸素欠乏酸化亜鉛層に吸着させるプロトコルは、以下の材料および方法のセクションに記載されている。
【0088】
他の実施形態では、表面改質剤は、(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシラン(MTS)、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)、及びN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル-トリメトキシシラン(AEAPTS)からなる群から選択されてもよい。
【0089】
<分析物結合部位>
図1のステップ(5)に示すように、酸素欠乏性酸化亜鉛層の今やシラン化された表面は、生体サンプルから所望の生体分析物と選択的に結合するための結合部位として作用するように、固定されたシラン化剤の各々の末端へ適切な結合体または生体分子を固定化することによってさらに改変される。
【0090】
生体サンプルから所望の生体分析物を選択的に結合させるための結合部位として、利用可能な様々な生体分子が存在する。
【0091】
例えば、このような生体分子には、タンパク質、ペプチド、リポペプチド、タンパク質結合性炭水化物、またはタンパク質結合性リガンドが含まれてよい。
【0092】
一実施形態では、生体分子は、捕獲タンパク質である。
【0093】
好適には、捕獲タンパク質は、タンパク質結合足場、T細胞受容体、TCRの結合フラグメント、可変リンパ球受容体、抗体および/または抗体の結合フラグメントである。
【0094】
<タンパク質結合型足場>
タンパク質結合足場は、タンパク質を含む多様な範囲の生体分析物と結合するための有効な分子として登場した。典型的に、タンパク質結合足場は、結合ドメインの相対的配置を変えることなく、指定された結合領域内のアミノ酸の改変を許容する、安定したタンパク質構造(足場)を有する。このようなタンパク質結合足場として(ただし、これらに限定されない)、アドネクチン、アフィリン(ナノフィチン)、アフィボディ、アフィマ-分子、アフィチン、αボディ、アプタマ-、アンチカリン、アルマジロ反復タンパク質ベ-スのスキャフォ-ルド、アビマ-、デザインド・アンキリン反復タンパク質(DARPins)、フィノマ-、インヒビタ-・シスチン・ノット(ICK)スキャフォ-ルド、Kunitzドメインペプチド、モノボディ(AdNectins(商標))およびナノフィチンが挙げられる。
【0095】
アフィリンは、約20kDaの人工的に作られたタンパク質である。それは、ヒトのユビキチンや脊椎動物のガンマBクリスタリンと構造的に関連する足場を含み、表面に露出した8個の操作可能なアミノ酸を有する。アフィリンは、タ-ゲット生体分析物に特異的に結合するように設計することができ、部位特異的変異導入やファ-ジディスプレイライブラリ-などの技術を用いて、多種多様な分子との結合に特異的に適合させることができる(参照文献10参照)。
【0096】
アフィボディは、その2つのαヘリックスの結合ドメインに位置する13個のアミノ酸残基のひとつ以上に改変を施した、IgGアイソタイプ抗体のZドメインのタンパク質足場を有する、約6kDaのタンパク質である(参照文献11参照)。
【0097】
アフィマ-分子は、シスタチンのシステインプロテア-ゼ阻害剤ファミリ-に由来するタンパク質足場を利用した、約12から14kDaのタンパク質である。アフィマ-分子は、タ-ゲット特異的結合に適応できるN末端配列に加えて、2つのペプチドル-プ領域を含む。結合部位に1010通りのアミノ酸の組み合わせを持つアフィマ-分子は、ファ-ジディスプレイライブラリ-および適切な技術を用いて生成できる(参照文献12参照)。
【0098】
アフィチンは、66アミノ酸残基(約7kDa)のタンパク質であり、Sulfolobus acidocaldarius内で発見されたDNA結合タンパク質Sac7dに由来するタンパク質足場を用いる(参照文献13参照)。それは、原核生物の細胞培養から生体外で容易に生産され、14個の結合アミノ酸残基を含み、3×1012以上の構造変異を生み出すべく変異可能である(参照文献13参照)。表面プラズモン共鳴などのスクリ-ニング技術が、これらの分子の特異的結合を同定するのに使用可能である。
【0099】
αボディは約10kDaの分子で、ほとんどの巨大分子とは異なり、細胞膜を透過することができるため(固定化されていない場合)、細胞内外の分子と結合することができる。αボディの足場は、天然構造とは類似しない3つのαヘリックス(A、B、およびC)を持つ、コンピュ-タによって設計されたコイルドコイル構造に基づいている。AおよびCのαヘリックス上のアミノ酸は、特定の抗原をタ-ゲットにするために改変され得る(参照文献14参照)。
【0100】
タンパク質に結合するためのアプタマ-には、様々な核酸(DNA、RNA、およびXNA)およびペプチドが挙げられ、それは、特定のタ-ゲット分子と結合するためにスクリ-ニングされ得る。核酸アプタマ-のデ-タベ-ス(参照文献15参照)により、生体外で同定されたDNAアプタマ-の選択が可能である。ペプチドアプタマ-は、安定なタンパク質足場フレ-ム内のル-プ構造(「フレ-ム上のル-プ」)に一般的に埋め込まれている、短いアミノ酸配列からなる。典型的に、5から20残基のペプチドル-プが、タ-ゲット分子への選択的な結合のための可変性の源となる。ペプチドアプタマ-を生成およびスクリ-ニングするのに、コンビナトリアルライブラリ-および、酵母-2ハイブリッドスクリ-ニングなどの技術を使用することができる。また、タンパク質アプタマ-を生成およびスクリ-ニングするための他の技術については、文献に記載されている(参照文献16参照)。
【0101】
アンチカリンタンパク質は、リポカリンから派生したタンパク質結合分子である。典型的に、アンチカリンは抗体よりも小さな分子に結合する。アンチカリンをスクリ-ニングしかつ開発する方法については、文献に記載されている(参照文献17および18参照)。
【0102】
アルマジロ反復タンパク質ベ-スの足場は、約42アミノ酸のタンデムアルマジロ反復からなるアルマジロドメインが、各々が3つのαヘリックスからなる繰り返し単位のス-パ-ヘリックスに形成されて特徴づけられる(参照文献19参照)。保存された結合ドメイン内の残基を改変することにより、タ-ゲット特異的な結合体を選択するために使用できる様々なコンビナトリアルライブラリ-の調製が可能となる(参照文献19参照)。
【0103】
アビマ-ズ(アビディティマルチマ-、マキシボディ、低比重リポタンパク質受容体(LDLR)ドメインAとしても知られている)は、システインに富む細胞表面受容体タンパク質のAドメインをベ-スにした30~35アミノ酸長のペプチドを少なくとも2つ連結して構成されている。Aドメインを変更することにより、同一タ-ゲット上または複数のタ-ゲット上の様々なエピト-プへの結合が可能となり、連結したペプチドの数によりアビマ-あたりのタ-ゲットの数が決定される。アビマ-ファ-ジディスプレイライブラリ-は、Creative Biolabsのような商業的なライブラリ-を含め、当分野で知られているものである。
【0104】
設計アンキリン反復タンパク質(DARPins)は、アンキリンタンパク質から設計された結合タンパク質である。DARPinのスクリ-ニングおよび同定方法は、文献に記載されている(参照文献20、21参照)。
【0105】
阻害剤シスチンノット(ICK)足場は、配列の多様性が高い一連のル-プをつなぐ3つのジスルフィド架橋からなる安定な三次元構造を形成するミニタンパク質(30~50アミノ酸残基長)のファミリ-である。阻害剤シスチンノットには、ノッティン、サイクロチド、成長因子システインノットという3つのファミリ-がある。デ-タベ-スは、KNOTTINデ-タベ-ス(www.dsimb.inserm.fr/KNOTTIN/)のように、既知のノッチンおよびシクロチドの配列、構造および機能のような特定の特性を開示するものとして、当技術分野で知られている。さらに、ICKの製造方法および結合のためのスクリ-ニング方法は、文献に記載されている(参照文献22参照)。
【0106】
モノボディ(アドネクチンという商品名でも知られている)は、多様で操作可能な可変基を持つFN3(フィブロネクチンIII型ドメイン)の足場を利用するものである。アドネクチンは、抗体可変ドメインとβシ-トル-プを抗体と共有している。モノボディの結合親和性は、mRNAディスプレイ、ファ-ジディスプレイ、イ-ストディスプレイなどの生体外進化法により多様化・カスタマイズすることが可能である。モノボディのスクリ-ニングや作製方法は文献に記載されている(参照文献22、24参照)。
【0107】
<抗体および抗体フラグメント>
いくつかの実施形態では、生体分析物結合部位は、抗体、又はその結合フラグメントである。抗体は、1つの個体において1011~1012ものユニ-クな分子を潜在的に有する例示的な多様性を有するタンパク質結合分子であり、個体間の遺伝子変異がさらなる多様性を可能にする。生体内の抗体の多様性は、V(D)J接合における一連の遺伝子のランダムな組換えによってもたらされる。
【0108】
抗体の結合は、主に相補性決定領域(CDR)1、2、および3と呼ばれる重鎖と軽鎖の3つの超可変領域によって決定される。このように、各成熟抗体は6つのCDR(可変重鎖(VH)CDR1、CDR2およびCDR3、可変軽鎖(VL)CDR1、CR2およびCDR3)を有する。これらの超可変領域は3次元的な抗原結合ポケットを形成し、抗体の結合特異性はCDR、主にCDR3中の特定のアミノ酸配列により決定される。
【0109】
特定の生体分析物に対する抗体は、商業的に入手してもよいし、当技術分野で既知の方法によって作製してもよい。例えば、特定の生体分析物に対する抗体は、文献に一般的に開示されている方法を用いて調製することができる(参照文献25参照)。
【0110】
被験者の体内で生成された抗体の特異性、活性および親和性は、親和性成熟などの生体外プロセスによって改変することができる(参照文献26参照)。このように、生体内由来の抗体は、さらに改変して、異なるが系統的に関連する抗体を生成することが可能である。したがって、「抗体」という用語は、生体内由来の抗体と、生体内で生成された抗体と比較して固有の配列を有するようにCDR結合部位を改変する変異のプロセスを経た生体外由来の分子を包含する。
【0111】
また、抗体という用語には、ラクダ科動物、サメ、ジョ-フィッシュなどの種から生成される非従来型の抗体も含まれる。このように、抗体という用語は、ラクダ科の抗体、IgNARおよび可変リンパ球受容体(VLR)を含む重鎖抗体を含む。さらに、これらは、その結合部分(VNAR-IgNARの単一結合部分など)にフラグメント化されるか、または組換え的に融合タンパク質に統合されることができる。このような非従来型抗体を生成し、適応させるための方法が文献に記載されている(参照文献27、28参照)。
【0112】
<抗体結合フラグメント>
いくつかの実施形態では、生体分析物結合部位は、抗体結合フラグメントである。抗体結合フラグメントは、抗体に由来し得るか、又は抗体若しくは抗体フラグメントのCDRと同一の配列を有する組換え生成物であってもよい。実際、これらのCDRは、親和性成熟抗体からのものであってもよく、したがって、生体内由来の抗体と同一でない場合もある。
【0113】
抗体は4本の鎖(重鎖2本、軽鎖2本)からなり、Fc(画分結晶化可能)ドメインとFab(画分抗体)ドメインに分離することができる。抗体のFc部分は、Fc受容体や補体系と相互作用する。その結果、Fc部分は抗体の免疫機能にとって重要である。しかし、Fab部分には抗体の結合領域があり、所望のエピト-プのための抗体の特異性に対して重要である。
【0114】
したがって、いくつかの実施形態では、生体分析物結合部位は、抗体のFabフラグメントである。Fabフラグメントは、個々のFabフラグメント(すなわち、抗体フラグメントは、ジスルフィド架橋を連結していない状態で生成される)又はジスルフィド架橋を介して連結した抗体の2つのFabフラグメントからなるF(ab’)2フラグメントであり得る。これらのフラグメントは、通常、ペプシンのような消化酵素を用いて抗体をフラグメント化することにより生成される。方法は文献に記載されている(参照文献29参照)。
【0115】
抗体の各Fabフラグメントは、VH鎖とVL鎖がそれぞれ3つずつ、合計6つのCDRを有している(4つのフレ-ムワ-ク領域からなるフレ-ムワ-ク内)。Fabフラグメントの定常領域を除去して、VHおよびVL領域のみを残すことができる。個々のVH鎖およびVL鎖(それぞれ3つのCDRのみからなる)は、高い親和性で特異的に結合することが示されている。典型的に、個々の結合領域は単一抗体ドメイン(sdAbs)として知られている。また、VH鎖とVL鎖をリンカ-で連結し、単鎖可変フラグメント(scFv-ダイアボディとも呼ばれる)と呼ばれる融合タンパク質を形成することもできる。scFvはFabとは異なり、抗体からフラグメント化されたものではなく、通常、抗体のCDRおよびフレ-ムワ-ク領域に基づいて組換えにより形成される。さらに、sdAbsはまた、組換え的に生産され、より大きな融合タンパク質の結合成分を形成し、結合領域を安定化するように作用し、検知素子または中間層への固定を改善または促進し、例えば、結合領域の柔軟性を提供することにより結合を改善し、または生体分析物の抗原領域へのアクセスを可能にすることにより生体分析物結合部位の長さを最適化し得る部分を含み得る。その結果、いくつかの実施形態では、生体分析物結合部位は、scFv又はsdAbであるか、又はそれを含む。scFvは、ジscFv又はトリscFvなどの多価scFvを形成するために一緒に連結された複数のVH鎖及びVL鎖を含んでもよい。
【0116】
特定の生体分析物に対する抗体および抗体のフラグメント、または抗体由来の配列を含む融合タンパク質は、商業的に入手してもよいし、上述したような当技術分野で既知の方法によって生成してもよい。
【0117】
<タンパク質と受容体>
タンパク質と相互作用し、タンパク質と結合するタンパク質受容体またはリガンドは、生体分析物結合部位として使用することができる。このような受容体やリガンドには、受容体全体もしくはリガンド、またはその特定のフラグメント(例えば、受容体やリガンドの結合ドメインを構成するフラグメント)などが含まれる。具体的に想定される受容体には、インタ-ロイキンなどのサイトカイン、又は免疫系の状態について情報を得ることができるケモカインに対する受容体が含まれる。いくつかの実施形態では、受容体またはリガンド(またはそのフラグメント)は、融合タンパク質を形成するように統合されてもよい。
【0118】
例えば、インタ-ロイキン-6(IL-6)は炎症性多発性サイトカインであり、がん治療中の免疫反応をモニタ-するために使用できる重要なバイオマ-カ-である。また、心理的ストレスやインスリン活性のモニタリングにも用いることができる。
【0119】
例えば、本願発明者ら、IL-6を選択的に認識・結合させるために抗インタ-ロイキン-6(IL-6)抗体を使用すると、良好な結果を得ることができた。
【0120】
例えば、本願発明者らは、CRPを選択的に認識・結合させるために抗C反応性タンパク質(CRP)抗体を使用すると、良好な結果を得ることができた。
【0121】
<概要>
要するに、上記の非侵襲型電気伝導度センサは、単純な面内2端子電極形状で構成された受動電子デバイスであり、センサの検知素子は、センサ基板の表面に適用され、続いてヒト唾液及び/又は汗などの体液中の検出されるべき1つ以上の生体分析物に対して選択的である、特定の生体分析物結合部位によって官能化された酸素欠乏金属酸化物薄膜の形態をとる。センサを横切って電圧が印加されると、生体分析物と生体分析物結合部位との間に形成される複合体と、酸素欠乏金属酸化物薄膜層との間の電荷移動の結果として生成される検出素子のコンダクタンスの変化に比例した電気信号が生成される。この電気信号は、体液中に存在するタ-ゲットバイオマ-カ-または生体分析物のレベルと同等とみなすことができる。
【0122】
次に、上記の非侵襲型電気伝導度センサを用いた体液中のタ-ゲット生体分析物の検出方法について説明する。
【0123】
<検出方法>
本発明の別の好ましい実施形態に従い、生体分析物を検出する方法が提供される。
【0124】
簡単に説明すると、酸素欠乏金属酸化物ベ-スのセンサを使用して生体分析物を検出する方法は、(i)酸素欠乏金属酸化物ベ-スの検出素子を、生体分析物を含む体液のサンプル溶液と接触させる工程と、(ii)センサを横切って電圧を印加する工程と、(iii)酸素欠乏金属酸化物検出素子の表面上の生体分析物結合部位に生体分析物が結合する際、生体分析物の検出に対応するコンダクタンスの変化に比例する一対の端子電極間で生成される電気信号を検出するべく、電流源メ-タ-を使用する工程とを有する。
【実施例
【0125】
<抗原濃度依存性試験>
IL-6とCRPの両抗原は、デバイスのベ-スライン抵抗に関して、濃度依存的な抵抗値変化を示す。ベ-スライン抵抗は、抗原を添加する前に抗体固定化-GPSシラン化センサで測定された。IL-6抗原とCRP抗原の両方について、抗原濃度の関数として、抵抗の変化について線形相関が観察される(図2参照)。IL-6およびCRPの応答性(すなわち曲線の傾き)は、それぞれ5.1および4.1%/Mである。これらの値から、抗IL-6抗体固定化ZnOセンサは、抗CRP抗体固定化ZnO電気伝導度センサがCRP抗原を検出するのに比べ、IL-6抗原の検出に対してより高い感度を示すことが示唆された。抗原溶液のマトリックスからの寄与を調べるために、両方のタイプの抗体固定化ZnOセンサのPBS溶液に対する抵抗値を測定した。両タイプの抗体固定化センサにおいて、PBS溶液の存在下での抵抗値の変化は1%未満であった。このことから、抵抗値変化に対する抗原溶液のマトリックスからの寄与は無視できる程度である。
【0126】
両抗原とも、非侵襲型酸化亜鉛電気伝導度センサは、健常者の体液以下の濃度でも検出可能な応答を示した。健常者の汗のIL-6濃度は約0.38pM(10ng/L)(参照文献30参照)であり、健常者の唾液のCRP濃度は約12pM(285ng/L)(参照文献31参照)である。ZnO電気伝導度センサは、健常者の汗中のIL-6濃度の100分の一以下の4fMに対して9.2%の抵抗変化を示している。同様に、センサが検出した最も低いCRP濃度(13fM)に対する抵抗値の変化は~12.5%であり、これは健康なヒトの唾液中のCRP濃度のほぼ1000分の1である。このように、健康なヒトの体液よりはるかに低い濃度に対して高い感度で応答することは、ヒトの体液中の生体分析物を検出する上で、ZnO系電気伝導度センサが重要であることを明確に示している。
【0127】
<交差選択性試験1>
他の抗原の存在下での各抗体固定化デバイスの実現性を調べるために、交差選択性試験を実施した。抗IL-6抗体固定化デバイスは13pMのCRPの存在下で3%の抵抗値変化を示し、CRP抗体固定化デバイスは4pMのIL-6の存在下で3.5%の抵抗値変化を示した(図3参照)。本実験で使用した抗原濃度は、健康なヒトの体液の抗原濃度にできるだけ近いものを選択した。両抗原を混合してデバイスに添加した場合、抗IL-6抗体固定化デバイスは17.6%の抵抗値変化を示し、4pMのIL-6を添加した場合と比較して4%程度低い抵抗値変化を示した。一方、抗CRP抗体固定化デバイスの抵抗値変化は27.4%であり、同じデバイス上の13pMのCRPと比較して3%程度高い。この交差選択性試験の結果から、抗IL-6抗体固定化ZnOデバイスはCRP抗原の存在下でIL-6に対して選択性を示し、抗CRP抗体固定化ZnOデバイスはIL-6抗原の存在下でCRP抗原に対して選択性を示すことが明らかとなった。抗原混合物の存在下でIL-6抗体デバイスの変化率が4%低下し、CRP抗体デバイスの変化率が3%上昇する理由は、現在のところ不明である。
【0128】
<交差選択性試験2>
他の抗原の存在下での各抗体固定化デバイスの実現性を決定するために、交差選択性試験を行った。カテリシジン、Bナトリウム利尿ペプチド(BNP)、心筋トロポニンI(cTnI)をIL-6およびCRP抗原とともにこの試験に使用した。原始抗原と混合抗原の公称濃度は4pMに維持された。抗原混合物を対応する抗体固定化デバイスと反応させると、タ-ゲット抗原に対して有意に高い抵抗値変化が観察された(図6参照)。IL-6抗体固定化デバイスで処理した場合、抗原混合物中のIL-6について31%の抵抗変化が観測された。CRPでは3%の抵抗変化しか観測されなかった。また、CRP抗体固定化デバイスは、抗原混合物中のCRPに対して30%の抵抗値変化を示し、IL-6は5%の抵抗値変化に寄与した。カテリシジン、BNP、およびcTnIは、IL-6およびCRP抗体固定化装置における抵抗値変化には寄与していなかったことが重要である。IL-6およびCRP抗原の抵抗変化への寄与が小さいのは、これらの分子が抗体に物理的に吸着しているためと考えられる。また,カテリシジン、BNP、およびcTnIの抵抗変化へのネガティブな寄与は、これら3つの抗原が試験抗体に結合していなかったか、またはこれらの抗原の電荷移動効果が抗体上のCRPおよびIL-6抗原と異なるメカニズムを採用することを示唆している。
【0129】
[材料および方法]
<センサの製造>
センサは、硬質(SiO/Si)およびフレキシブルなプラスチック(ポリイミドホイル)基板上に、センサ内で検知素子として作用する酸化亜鉛(ZnO)などの金属酸化物の薄膜を100nmの厚さで堆積させることによって製造された。検出素子の組成は、0.08~2ジ-メンス/mの範囲、より好ましくは0.08~0.6ジ-メンス/mの範囲のコンダクタンスを有する酸素欠乏金属酸化物膜を生成するべく、反応性スパッタリングによって設計される。コンダクタンス測定のために、2つの端子面内電極が、16×10-6の検出面積でパタ-ン化される。分配された抗体および抗原に対応するコンダクタンスの変化は、市販の電流源メ-タ-(キ-サイト・テクノロジ-社製B2901A精密ソ-ス/測定ユニット)を用いて測定される。
【0130】
<抗体および抗原溶液の調製>
インタ-ロイキン-6(IL-6)、抗IL-6、C反応性タンパク質(CRP)、および抗CRPは、商業ベンダ-(Sigma-Aldrich社)から購入し、そのまま使用した。カテリシジン、Bナトリウム利尿ペプチド(BNP)、および心筋トロポニンI(cTnI)は、複数の商業ベンダ-(Abcam、MyBioSource、およびProSpec Bio)から供給され、受け取ったままで使用された。
【0131】
抗IL-6原液は、リン酸緩衝液(PBS、pH7.4)で1:106に希釈し、酸素欠乏性ZnOセンサの表面に固定化した。抗CRP溶液は、固定化前にPBS(pH7.4)で1:50に希釈しておいた。受け取ったままのIL-6粉末を既知量のオ-トクレ-ブしたMilli-Q水に完全に溶解し、pH7.4のPBS溶液で希釈して標準シリ-ズのIL-6溶液を調製した。調製したIL-6濃度は、4nM、100pM、4pM、100fM、および4fMである。また、受け取ったままのCRP溶液をpH7.4の所定量のPBSで希釈して、CRP溶液の標準シリ-ズを調製した。調製したCRP濃度は、13nM、100pM、13pM、100fM、および13fMである。他の抗原の溶液も同様の方法で調製した。
【0132】
<GPSシラン化処理したセンサの準備>
3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GPS)を用いた酸素欠乏性金属酸化物センサ表面のシラン化は、すでに報告され、侵襲的センサ向けである(参照文献32参照)。ここでは、報告されているシラン化手順に少し改良を加えてZnOのシラン化を実行した。簡単に言えば、調製したばかりのZnOデバイスをOプラズマ(プラズマクリ-ナ- PDC-002、Harrick Plasma社製)に10分間暴露し、ZnO表面の水酸基を活性化させた。次に、調製したばかりのGPS溶液20μLをAl箔上に滴下し、これを真空デシケ-タ内に置いて、デシケ-タ内にGPS蒸気を蓄積させた。その後、O2プラズマ洗浄したZnOセンサをこのGPS蒸気に30~45分間暴露した。プラズマ洗浄したZnOセンサのGPS蒸気への曝露は、LC200グロ-ブボックス・システム内で行った。GPS蒸気への曝露が完了したら、ZnOセンサの表面から未結合のシラン基を除去するために、Milli-Q水で2分間十分に洗浄した。次に、洗浄したZnOセンサを150℃で10分間加熱し、ZnO表面へのシラン基の結合を強化した。このGPSシラン処理したセンサを抗体の固定化に使用した。
【0133】
3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GPS)または代替のシラン化剤を用いた酸素欠乏酸化チタンストロンチウム(STO)センサ表面のシラン化は、上述と同様の方法で実行できることが理解されよう。
【0134】
<抗体の固定化>
GPSシラン化ZnOセンサ上への抗体(IgG)固定化は、すでに報告され、侵襲的センサ向けである(参照文献32参照)。新たにGPSシラン化したZnOセンサの各々の表面に、新たに調整した1:106希釈抗IL-6溶液25μLを滴下し、2時間インキュベ-トして、ZnOセンサ表面上にIL-6抗体を固定化させることができた。その後、センサをpH7.4のPBS溶液ですすぎ、結合していない抗体を除去した。その後、PBSで洗浄したZnOセンサをNガス気流中で乾燥させた。これらの抗IL-6抗体固定化センサは、IL-6抗原濃度および交差選択性測定に使用された。同様の手順で、新たに調製した1:50希釈抗CRP溶液25μLを用いて、CRP固定化GPSシラン化ZnOセンサを調製した。
【0135】
<抗原の電気伝導度測定>
抗体固定化ZnOセンサのベ-スラインコンダクタンスは、抗原を添加する前に測定された。15μLの抗原溶液を抗体固定化ZnOセンサの表面に滴下し、10分間インキュベ-トした。その後、センサ上に残った抗原溶液を除去し、Nガス気流下でセンサ表面を乾燥させた。続いて、各濃度のコンダクタンス測定を行った。交差選択性測定では、4pMのIL-6溶液(15μL)を抗CRP抗体固定化ZnOデバイスに、13pMのCRP溶液(15μL)を抗IL-6抗体固定化ZnOデバイスに滴下した。交差選択性測定用のプレミックス溶液中のIL-6抗原およびCRP抗原の公称濃度は、それぞれ4pMおよび13pMであった。
【0136】
<デバイスの貯蔵寿命試験>
GPSシラン化デバイスは、少なくとも15ヶ月間は安定である。この結論は、15ヶ月(450日)経過した機器について得られたIL-6抗原およびCRP抗原の抵抗変化に基づいて導き出された(図7参照)。両抗原とも抵抗値の変化は、その濃度に応じて直線的な変化を示した。調製したばかりの装置(0日経過)でも、両タイプの抗原について同様の直線的な傾向が観測された。選択抗原の所定濃度に対する抵抗値変化の標準誤差がほぼ重なっていることから、選択抗原の所定濃度に対する新鮮なデバイスの平均抵抗値変化と古いデバイスの平均抵抗値変化との間には統計的な差がないことが強く示唆されている。
【0137】
<人工唾液中のデバイス性能>
IL-6およびCRPの抗体固定化デバイスは、人工唾液中の対応する抗原を検出することに成功した(図8参照)。両タイプの抗原に対する抵抗値の変化は、その濃度に対して線形に変化した。人工唾液中のIL-6およびCRPに対する反応性(すなわち傾き)は、それぞれ1.6(%/M)および1.2(%/M)であり、デバイスは人工唾液中のCRPよりもIL-6に対してより敏感であることが示唆された。これらの抗原の所定濃度に対する抵抗値変化は、PBS中の抵抗値変化に関して、人工唾液中では著しく低い。人工唾液からの大きなバックグラウンド寄与(IL-6で83%、CRPで85%)が、この顕著な抵抗変化の低さの原因であった。人工唾液のイオン組成がPBSと比較して高いことで、電荷移動効果が高くなったためと考えられる。また、デバイスが対応する抗体によって固定化された場合、PBSでの効果と類似して、これらのデバイスは、人工唾液内のタ-ゲット抗原に対する有意な選択性を示した。例として、人工唾液中で調製した抗原混合物中のIL-6に対する抵抗値変化は、IL-6抗体固定化デバイスの存在下で、他の抗原よりも有意に高い。同様に、CRP抗体固定化デバイスは、人工唾液中で調製した抗原混合物中のCRP抗原に対して有意に高い抵抗変化率を示した。
【0138】
[利点]
前述の議論から、本発明の様々な実施形態の非侵襲型酸素欠乏金属酸化物ベ-スの電気伝導度センサが、既存の同等品よりも多くの利点を提供することは、当業者にとって明らかである。
【0139】
実際、酸素欠乏金属酸化物ベ-スの電気伝導度センサは、ヒトの体液中のそれぞれのレベルよりも低いタ-ゲット生体分析物の濃度を測定することが可能である。このため、本発明者らは、このようなセンサが、個人向けで再利用可能なヘルスケア監視装置として広く応用でき、費用対効果の高い、生体適合性のある、機能的なセンサの開発のための大きな可能性を提供すると考えている。実際、本発明者らは、これらのセンサが以下に大きな影響を与える可能性があると大いに予想している。
1.心血管系疾患の警告:これらのセンサを用いた定期的な検査により、炎症性バイオマ-カ-のレベル上昇を警告し、心臓発作や脳卒中に事前に介入することが期待される。
2.がん治療:がんおよびその治療のためのバイオマ-カ-をモニタ-するのに役立つと期待される。
3.腹部疾患治療:CRP抗原を感知することにより、生体の疾患など腹部疾患を感知することが期待される。
【0140】
酸素欠乏金属酸化物ベ-スの電気伝導度センサは、従来の携帯用集積回路やウェアラブル電子機器と組み合わせることで、必要に応じて身につけることができる携帯機器として利用することができる。
【0141】
実際、酸素欠乏金属酸化物ベ-スの電気伝導度センサは、あらゆるタイプの絶縁基板やプラスチック基板上に作製することができ、タ-ゲットとするバイオマ-カ-や生体分析物に対する選択性を維持することができる。さらに、これらのセンサは再利用可能であるため、コスト面でのメリットも大きい。
【0142】
[参照文献]
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【0143】
[定義]
本明細書において、例えば、温度範囲、時間範囲、又は濃度範囲などの範囲が与えられるときはいつでも、与えられた範囲に含まれるすべての中間範囲及び下位範囲、並びにすべての個々の値が、本開示に含まれることが意図されている。本明細書の説明に含まれる範囲または下位範囲における任意の下位範囲または個々の値は、本明細書の請求項から除外できることが理解されよう。
【0144】
本書で定義され使用されるすべての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文書における定義、および/または定義された用語の通常の意味を支配すると理解されるべきである。
【0145】
本明細書で使用される不定冠詞 “a”および“an”は、明確に反対の指示がない限り、“少なくとも一つ”を意味すると理解すべきである。
【0146】
本明細書で使用されるフレ-ズ「および/または」は、そのように結合された要素の「いずれかまたは両方」、すなわち、ある場合には接続的に存在し、他の場合には分離的に存在する要素を意味すると理解されるべきである。「および/または」で列挙された複数の要素は、同じ方法で、すなわち、そのように結合された要素の「1つまたは複数」を意味すると解釈されるべきである。他の要素は、「及び/又は」節によって具体的に特定された要素以外に、具体的に特定された要素に関連するか否かにかかわらず、任意に存在することができる。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「comprising」などのオ-プンエンドの言語と組み合わせて使用される場合、ある実施形態では、Aのみ(任意にB以外の要素を含む)、別の実施形態では、Bのみ(任意にA以外の要素を含む)、さらに別の実施形態では、A及びBの両方(任意に他の要素を含む)等を指すことが可能である。
【0147】
本発明は、限られた数の実施形態と関連して説明されてきたが、前述の説明に照らして多くの代替案、修正および変形が可能であることは、当業者には理解されよう。したがって、本発明は、開示された本発明の思想および態様内に入る可能性のある、そのような代替案、修正および変形をすべて包含することを意図するものである。
【0148】
本明細書(特許請求の範囲を含む)において、用語「comprise」、「comprises」、「comprised」または「comprising」が使用される場合、それらは、記載された特徴、整数、ステップまたは成分の存在を特定するが、1以上の他の特徴、整数、ステップもしくは成分、またはそれらの群の存在を排除しないものと解釈される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0149】
特許文献1 米国特許出願公開第2010/2016256号明細書
特許文献2 米国特許出願公開第2010/0305304号明細書
特許文献3 韓国特許第101774891号公報
特許文献4 中国特許出願公開第102706939号公報
特許文献5 米国特許第8,133,698号明細書
【非特許文献】
【0150】
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図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
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図5A
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図5F
図6A
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図8D
【国際調査報告】