IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ガイア・ホールディング・エービーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-21
(54)【発明の名称】生分解可能で堆肥化可能な組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20230214BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20230214BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20230214BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20230214BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20230214BHJP
   C08L 3/02 20060101ALI20230214BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20230214BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20230214BHJP
   C05F 9/04 20060101ALN20230214BHJP
【FI】
C08L67/00 ZBP
C08L91/00
C08K5/053
C08K3/26
C08K3/34
C08L3/02
C08J3/12 Z CFD
C08L101/16
C05F9/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538231
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(85)【翻訳文提出日】2022-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2020086497
(87)【国際公開番号】W WO2021122798
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】19218674.0
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522244104
【氏名又は名称】ガイア・ホールディング・エービー
【氏名又は名称原語表記】GAIA HOLDING AB
【住所又は居所原語表記】Bunkagardsgatan 13,253 68 Helsingborg,Sweden
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ロセアン、オーケ
【テーマコード(参考)】
4F070
4H061
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4F070AA47
4F070AC16
4F070AC22
4F070AC72
4F070AC88
4F070AE01
4F070AE09
4F070DA55
4F070DC11
4H061AA01
4H061CC04
4H061CC15
4H061CC41
4H061CC47
4H061CC55
4J002AB042
4J002AE053
4J002CF051
4J002DE236
4J002DJ047
4J002EC058
4J002FB086
4J002FB262
4J002FB266
4J002GB00
4J002GC00
4J002GG01
4J002GG02
4J200AA04
4J200BA19
4J200BA37
4J200CA01
4J200DA21
4J200DA25
4J200EA11
4J200EA21
(57)【要約】
本発明は、i)15~70重量%の少なくとも1種の生分解可能な及び/又は腐敗可能な芳香族ポリエステル;ii)0~40重量%の表面が研磨されたドロマイト粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子;iii)0~30重量%の植物起源のデンプン;iv)1~5重量%の少なくとも1種の植物起源の油;v)5~30重量%のタルク粉末のような含水ケイ酸マグネシウムから選択される添加剤;vi)0~50重量%の少なくとも1種の脂肪族ポリエステルを含む、生分解可能で堆肥化可能な組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)15~70重量%の少なくとも1種の生分解可能な及び/又は腐敗可能な芳香族ポリエステル;
(ii)10~40重量%の表面が研磨されたドロマイト粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子;
(iii)0~30重量%の植物起源のデンプン;
(iv)1~5重量%の少なくとも1種の植物起源の油及び/又は少なくとも1種のポリオール;
(v)5~30重量%のタルク粉末のような含水ケイ酸マグネシウムから選択される添加剤;
(vi)0~50重量%の少なくとも1種の脂肪族ポリエステル
を含む、生分解可能で堆肥化可能な組成物。
【請求項2】
前記ドロマイト粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子が、前記少なくとも1種の植物起源の油及び/又は少なくとも1種のポリオールで前処理されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記植物起源のデンプンが、小麦、カラス麦、ライ麦及び大麦又はこれらの組合せの少なくとも1種から選択される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ドロマイト粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子の粒径が2~4μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記植物起源のデンプンの粒径が4~50μmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記植物起源のデンプンが、少なくとも1種の植物起源の油で前処理されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の生分解可能で堆肥化可能な組成物、たとえば顆粒の製造方法であって、
(a)ドロマイトの粒子及び/又は炭酸カルシウムの粒子を研磨して、表面の鋭利な縁を除去する工程;
(b)前記研磨された粒子を、少なくとも1種の植物起源の油又は少なくとも1種のポリオールと混合して、非粘着性混合物を得る工程;
(c)(i)少なくとも1種の生分解可能な及び/又は腐敗可能な芳香族ポリエステル;(ii)任意に植物起源のデンプン;(iii)タルク粉末のような含水ケイ酸マグネシウムから選択される添加剤;並びに(iv)任意に少なくとも1種の脂肪族ポリエステルを含む組成物を加熱混合する工程;
その後、混合を続け、
(d)工程(b)の前記非粘着性混合物を、前記加熱混合したベース組成物に添加する工程;並びに
(e)工程(d)の混合物を押し出して、前記組成物の顆粒にする工程
を含む、方法。
【請求項8】
工程(d)の混合及び工程(e)の押し出しを制御された圧力及び加熱下で行う、請求項7に記載の組成物の製造方法。
【請求項9】
工程(d)の混合及び工程(e)の押し出しを300bar未満で行う、請求項7又は8に記載の組成物の製造方法。
【請求項10】
工程(d)の混合及び工程(e)の押し出しを150~200℃で行う、請求項7~9のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物を含む、又は請求項7~10のいずれか一項に記載の方法によって製造された、顆粒。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物、請求項7~10のいずれか一項に記載の方法によって製造された組成物、又は請求項11に記載の顆粒の、化石燃料ベースのプラスチックを置き換えるための成形可能な材料としての使用。
【請求項13】
前記成形可能な材料が、ゴミ袋、袋、カトラリー、使い捨て物品、例えば、使い捨てシート、使い捨てエプロン及び使い捨て衛生用品に成形される、請求項12に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐敗後に完全に生分解可能で、完全に堆肥化可能な組成物をもたらす、異なる成分の独特な組成を有する、生分解可能で堆肥化可能な組成物に関する。また、本発明は、前記生分解可能で堆肥化可能な組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料ベースのプラスチック材料の使用は、特に使い捨て物品及び衛生製品で使用される場合、最近ますます問題となっている。広く使用されているプラスチックであるポリエチレン(PE)の従来の原料は石油又は天然ガスである。この原料は再生可能ではなく、分解可能ではなく、燃焼中にメタンガスを放出する。このうちのいくつかを克服するため、代わりに、PEはサトウキビから生産されている。しかし、たとえサトウキビが再生可能な原料であっても、サトウキビは、依然として燃焼中にメタンガスを放出し、分解されない。さらに、サトウキビはブラジルで生産されているので、その輸送に時間が必要であり、かつ、サトウキビの生産には多量の水が必要である。
【0003】
さらに、1つの物品からPEをリサイクルして、新しい物品の製造を可能にするためには、細菌を除去するためにオートクレーブ処理が必要である。この処理は新しいPEを生産するよりもコストがかかり、リサイクルが進まない原因となっている。
【0004】
加えて、リサイクルさせたプラスチック又はゴムは、場合によって、ヒト又は自然に有毒な物質を産生することが示されており、これらはヒトへの曝露がある場所での使用に適していない。
【0005】
その上、多くの製品におけるプラスチックの使用は、マイクロプラスチックと呼ばれる小さなプラスチック成分の地面や水系への放出を招いた。マイクロプラスチックは地球全体で発見されているが、大規模な分布が環境にどのような影響をもたらすかについては、現在は知られていない。
【0006】
政府及び国民から、使い捨て製品により良い材料を使用することに対する大きな需要がある。使用される材料は、かなりの程度、再生可能な資源で製造され、生分解可能で、堆肥化可能でなければならない。一般的に使用されているこのような材料の一つはデンプンから得られるポリ乳酸(PLA)である。モノマーは、通常、発酵性植物デンプン、例えば、キャッサバ、サトウキビ又はサトウダイコンパルプから得られる。しかし、この材料にはいくつかの弱点があり、そのいくつかは、分解温度は70℃で、軟化温度が50℃であることである。分解の開始には高温が必要とされることが分解の弱点であり、同時に、製品は50℃で軟化するため、製品を50℃より高い温度の環境で使用できないという制限がある。
【0007】
欧州特許出願公開第3260495号は、60~100部の生分解性脂肪族-芳香族ポリエステルを含む生分解性ポリエステル組成物を開示している。この組成物は、ポリ乳酸(PLA)、有機及び/又は無機賦形剤、並びに、エポキシ基を有し、スチレン、アクリレート及び/又はメタクリレートに基づくコポリマーを更に含む。
【0008】
したがって、多くの異なる領域、例えば、使い捨て製品及び衛生製品の領域において、プラスチックに代わる新規材料を開発する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0009】
本発明の1つの目的は、プラスチックを置き換えるのに適した組成物であって、再生可能な資源から作製され、生分解可能で堆肥化可能であり、マイクロプラスチックを残さない組成物を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、前記組成物の製造方法を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、前記組成物からの顆粒を提供することである。顆粒は、標準的な機械及び方法、例えば、ブロー成形、射出成形、熱折り曲げ成形、又は押し出しによって、さらに加工することが可能である。
【0012】
本発明は、プラスチックを置き換えるのに適した組成物であって、生分解可能で堆肥化可能であり、マイクロプラスチックを残さない組成物に関する。本発明によると、組成物は、(i)15~70重量%の少なくとも1種の生分解可能な及び/又は腐敗可能な芳香族ポリエステル;(ii)10~40重量%の表面が研磨されたドロマイト粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子;(iii)0~30重量%の植物起源のデンプン;(iv)1~5重量%の少なくとも1種の植物起源の油及び/又は少なくとも1種のポリオール;(v)5~30重量%のタルク粉末のような含水ケイ酸マグネシウムから選択される添加剤;並びに(vi)0~50重量%の少なくとも1種の脂肪族ポリエステルを含む。
【0013】
本発明はまた、上記組成物又は本明細書に記載の方法によって製造した組成物の、化石燃料ベースのプラスチックを置き換えるための成形可能な材料としての使用に関する。
【0014】
本発明はまた、本明細書に記載の組成物を含む顆粒、又は本明細書に記載の方法によって製造した顆粒に関する。
【0015】
プラスチックを置き換えるのに適した改善された組成物であって、マイクロプラスチックを残さず、いくつかの使い捨て製品において又は衛生製品として使用することが可能であり、生分解可能で堆肥化可能である組成物が提供される。
【0016】
本発明の1つの態様では、ドロマイト粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子は、大理石若しくは石灰石粒子、及び/又はこれらの混合物で置き換えてもよい。炭酸カルシウム、ドロマイト、大理石及び石灰石は地中で絶え間なく再生している。分解工程で、これは再度土壌に戻り、土壌改良剤として機能する。本発明において使用する炭酸カルシウム、ドロマイト、大理石及び/又は石灰石粒子は、好ましくは表面が研磨され、実質的に鋭利な縁は粒子表面に残留していない。粒子の実質的に全ての鋭利な縁を除去することは、本発明による組成物から又はこの組成物から得られた顆粒から製造したフィルムが裂ける危険性を低減させる。
【0017】
さらに、表面が研磨されたドロマイト及び/又は炭酸カルシウムと、少なくとも1種の植物起源の油とのミックスは、ドロマイト及び/又は炭酸カルシウムを滑剤に変換させる。滑剤の機能は、タルク粉末のような含水ケイ酸マグネシウムから選択される添加剤によりさらに改善され、使用する機械による引裂きを低減させる。加えて、植物起源のデンプンの使用は組成物を非弾性にし、生成物に「木質調」の外観の特徴的な色をもたらす。「木質調」の外観は、特定の消費者/購入者にとっては環境へのネガティブな影響に結び付けられてしまうこともある一般的なプラスチックの外観とは異なって認知されるため、特定の消費者に対して有益であり、魅力的である。さらに、少なくとも1種の植物起源の油の使用は、組成物中のカップリング剤として作用し、プラスチックと比較して浸透率が低くなる。
【0018】
一態様では、前記組成物は、(i)40重量%の少なくとも1種の生分解可能な及び/又は腐敗可能な芳香族ポリエステル;(ii)25重量%の表面が研磨されたドロマイト粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子;(iii)0重量%の植物起源のデンプン;(iv)5重量%の少なくとも1種の植物起源の油;(v)10重量%のタルク粉末のような含水ケイ酸マグネシウムから選択される添加剤;(vi)20重量%の少なくとも1種の脂肪族ポリエステルを含み、前記ドロマイト及び/又は炭酸カルシウムは、少なくとも1種の植物起源の油で前処理されている。組成物は、ブロー成形によりフィルムにさらに機械加工するのに適した顆粒として製造される。
【0019】
別の態様では、前記組成物は、(i)27重量%の少なくとも1種の生分解可能な及び/又は腐敗可能な芳香族ポリエステル;(ii)10重量%の表面が研磨されたドロマイト粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子;(iii)15重量%の植物起源のデンプン;(iv)3重量%の少なくとも1種の植物起源の油;(v)5重量%のタルク粉末のような含水ケイ酸マグネシウムから選択される添加剤;(vi)40重量%の少なくとも1種の脂肪族ポリエステルを含み、前記ドロマイト及び/又は炭酸カルシウムは少なくとも1種の植物起源の油で前処理されている。組成物は、熱折り曲げ成形により堆肥化可能な鉢にさらに機械加工するのに適した顆粒として製造される。
【0020】
別の態様では、前記組成物は、(i)30重量%の少なくとも1種の生分解可能な及び/又は腐敗可能な芳香族ポリエステル;(ii)10重量%の表面が研磨されたドロマイト粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子;(iii)0重量%の植物起源のデンプン;(iv)3重量%の少なくとも1種の植物起源の油;(v)10重量%のタルク粉末のような含水ケイ酸マグネシウムから選択される添加剤;(vi)47重量%の少なくとも1種の脂肪族ポリエステルを含み、前記ドロマイト及び/又は炭酸カルシウムは少なくとも1種の植物起源の油で前処理されている。組成物は、押し出しによりストローにさらに機械加工するのに適した顆粒として製造される。
【0021】
別の態様では、前記組成物は、(i)30重量%の少なくとも1種の生分解可能な及び/又は腐敗可能な芳香族ポリエステル;(ii)10重量%の表面が研磨されたドロマイト粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子;(iii)10重量%の植物起源のデンプン;(iv)3重量%の少なくとも1種の植物起源の油;(v)10重量%のタルク粉末のような含水ケイ酸マグネシウムから選択される添加剤;(vi)37重量%の少なくとも1種の脂肪族ポリエステルを含み、前記ドロマイト及び/又は炭酸カルシウムは少なくとも1種の植物起源の油で前処理されている。組成物は、射出成形によりカトラリーにさらに機械加工するのに適した顆粒として製造される。
【0022】
別の態様では、前記組成物は、(i)68重量%の少なくとも1種の生分解可能な及び/又は腐敗可能な芳香族ポリエステル;(ii)15重量%の表面が研磨されたドロマイト粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子;(iii)0重量%の植物起源のデンプン;(iv)2重量%の少なくとも1種の植物起源の油;(v)5重量%のタルク粉末のような含水ケイ酸マグネシウムから選択される添加剤;(vi)10重量%の少なくとも1種の脂肪族ポリエステルを含み、前記ドロマイト及び/又は炭酸カルシウムは少なくとも1種の植物起源の油で前処理されている。組成物は、ブロー成形によりフィルムに機械加工し、さらに加工して袋にするのに適した顆粒として製造される。
【0023】
別の態様では、前記組成物は、(i)15重量%の少なくとも1種の生分解可能な及び/又は腐敗可能な芳香族ポリエステル;(ii)20重量%の表面が研磨されたドロマイト粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子;(iii)0重量%の植物起源のデンプン;(iv)2重量%の少なくとも1種の植物起源の油;(v)15重量%のタルク粉末のような含水ケイ酸マグネシウムから選択される添加剤;(vi)48重量%の少なくとも1種の脂肪族ポリエステルを含み、前記ドロマイト及び/又は炭酸カルシウムは少なくとも1種の植物起源の油で前処理されている。組成物は、ブロー成形によりさらに機械加工して、袋としての使用に適したフィルムにするのに適した顆粒として製造されるか、又は熱折り曲げ成形により堆肥化可能な鉢にさらに機械加工するのに適した顆粒として製造される。
【0024】
本発明の一態様では、ドロマイト粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子の粒径は約2~4μmであってもよい。
【0025】
本発明によるドロマイト粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子は、表面が研磨されたので、粒子表面上に実質的にいかなる鋭利な縁も残っていない。粒子の実質的に全ての鋭利な縁を除去することは引裂強度を増加させる。少なくとも1種の植物起源の油により、粒子を飽和まで前処理することによって、ドロマイト粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子は、その加工中に装置の摩耗を制限する滑剤に変換する。
【0026】
本発明の一態様では、植物起源のデンプンの粒径は、4~50μm、たとえば4~15μm又は10~40μm(例.20~30μm)であってもよい。デンプンの使用は、デンプンを含む顆粒をさらに加工することにより、材料が非弾性となり、この材料が、指に裂傷を負わせることなく重い荷物を持ち運ぶ袋への使用に適したものになるような特徴を組成物に付与する。さらに、デンプンの使用は、色の特徴を付与し、本発明から製造された製品を類似の製品と区別することを可能にする。
【0027】
本発明の一態様では、植物起源のデンプンは、少なくとも1種の植物起源の油で前処理されてもよい。この前処理は、デンプンの毛細管を飽和させ、デンプンが水を含まないことを確実にし、その結果、組成物の強度を増加させる。
【0028】
本発明は、また、請求項1に記載の生分解可能で堆肥化可能な組成物、例えば、顆粒の製造方法に関する。本発明では、この方法は、(a)ドロマイトの粒子及び/又は炭酸カルシウムの粒子を研磨して、表面の鋭利な縁を除去する工程;(b)前記研磨された粒子を、少なくとも1種の植物起源の油と混合して、非粘着性混合物を得る工程;(c)(i)少なくとも1種の生分解可能な及び/又は腐敗可能な芳香族ポリエステル;(ii)任意に植物起源のデンプン;(iii)タルク粉末のような含水ケイ酸マグネシウムから選択される添加剤;並びに(iv)任意に少なくとも1種の脂肪族ポリエステルを含む組成物を加熱混合する工程;その後、混合を続け、(d)工程(b)の前記非粘着性混合物を、前記加熱混合したベース組成物に添加する工程;並びに(e)工程(d)の混合物を押し出して、前記組成物の顆粒にする工程を含む。
【0029】
本発明はまた、本明細書に記載の組成物を含む顆粒、又は本明細書に記載の方法によって製造した顆粒に関する。
【0030】
本発明による方法の一態様では、工程(d)の混合及び工程(e)の押し出しは、制御された圧力下及び加熱下で実施してもよい。圧力は300bar未満であってもよく、温度は150~200℃であってもよい。
【0031】
組成物から製造された顆粒は、例えば、ブロー成形、熱成形、押し出し及び射出成形のための標準的な機械を使用して、さらに加工することによって、さまざまな形状とすることができる。顆粒は、衛生製品、使い捨て製品、又は厚紙ボックスのコーティングとして使用してもよい。このような方法の1つでは、使い捨てフィルムを製造してもよい。得られた使い捨てフィルムは、延伸してフィルム内にマイクロクラックを形成させ、通気性のあるものにしてもよい。延伸後の前記マイクロクラックは、組成物の特徴の結果であり、この特徴は、本質的に、本発明で得られる顆粒から製造される製品に移行する。
【0032】
さらに、本発明による組成物の顆粒から製造した製品、例えば、フィルム又は使い捨て製品では、前記製品の分解は、細菌が存在する堆肥化可能な条件下に製品が存在する場合、30~35℃で始まってもよい。分解は2カ月以内で完了してもよく、この時点では土しか残らない。分解が始まるのに70℃が必要とされるPLAと比較すると、このことは分解を行う施設の需要が高くなる。分解の取扱いが容易なことは環境に優しい循環型経済において好ましいので、有利である。循環型経済は、材料を分解し再利用する能力に基づいており、新規原料を開発する必要性を減少させる。加えて、本発明による組成物の顆粒から製造した製品を食物を覆うフィルムとして使用する場合、PEより5倍低い浸透率及び厚紙より40倍低い浸透率のため、食物の品質が向上する。さらに、本発明による組成物の顆粒から製造した製品を地面又は水系に到達する用途で使用した場合、製品は環境にマイクロプラスチックを放出せず、ヒト及び自然に対して有毒な物質を作り出さない。本発明の組成物により、二酸化炭素(CO)排出は最大で80%減少する。ライフサイクル分析から、6トンの化石プラスチックを本発明の材料で置き換えることで、6.6トンの二酸化炭素排出が節約できることが結論づけられた。これは地球温暖化を減らす目標に合致する。
【0033】
本発明はまた、本明細書に記載の成分を含む組成物又は本明細書に記載の方法によって製造した組成物の、化石燃料ベースのプラスチックを置き換えるための成形可能な材料としての使用に関する。
【0034】
定義
「ドロマイト」という用語は、ミネラルCaMg(CO又は自然に生じるドロマイト堆積物から得た、又は「ドロマイト」として販売されている市販の製品を意味する。
【0035】
タルクとは、含水ケイ酸マグネシウムで構成される、化学式MgSi10(OH)を有する粘土ミネラルである。
【0036】
「生分解可能」という用語は、実質的に完全に分解し、焼却の間に汚染物質を放出しない、又は分解後にプラスチック断片を残さない材料を意味する。
【0037】
「粒径」という用語は、非球状粒子に対して、素材とは別に、容量、重量又は面積に関して、非球状粒子と同一である対応する球状粒子の直径を意味する。
【0038】
特許請求の範囲の中の用語は、他のいずれかの定義が上述されていない限り、技術的領域内でのこれらの一般的な意味を有するべきである。「a」又は「the」、「[組成物、層、容器、フィルム]」への全ての参照は、他に特定されていない限り、前記組成物、層、容器、フィルムなどの少なくとも1つへの参照と読み取るべきである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、生分解可能で堆肥化可能であり、使用中又は使用後にマイクロプラスチックを地中又は水中に残さない、プラスチックを置き換えるのに適した組成物に関する。本発明による組成物は、ポリ乳酸(PLA)が組成物の成分として存在する場合に必要とされる温度より低い温度で分解する。PLAは、分解するために約70℃の温度を必要とし、より高いエネルギーインプットが必要とされる。
【0040】
本発明におけるプラスチックを置き換えるのに適した生分解可能で堆肥化可能な組成物は、
(i)15~70重量%の少なくとも1種の生分解可能な及び/又は腐敗可能な芳香族ポリエステル;
(ii)10~40重量%の表面が研磨されたドロマイト粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子;
(iii)0~30重量%の植物起源のデンプン;
(iv)1~5重量%の少なくとも1種の植物起源の油;
(v)5~30重量%のタルク粉末のような含水ケイ酸マグネシウムから選択される添加剤;
(vi)0~50重量%の少なくとも1種の脂肪族ポリエステル
を含む。
【0041】
一態様では、前記ドロマイト及び/又は炭酸カルシウムは、少なくとも1種の植物起源の油で前処理されている。
【0042】
一態様では前記組成物は、40重量%の少なくとも1種の生分解可能な及び/又は腐敗可能な芳香族ポリエステル、25重量%の表面が研磨されたドロマイト粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子、0重量%の小麦、カラス麦、ライ麦及び大麦の少なくとも1種から選択される植物起源のデンプン、5重量%の少なくとも1種の植物起源の油、10重量%のタルク粉末のような含水ケイ酸マグネシウムから選択される添加剤;並びに20重量%の少なくとも1種の脂肪族ポリエステルを含み、前記ドロマイト及び/又は炭酸カルシウムは少なくとも1種の植物起源の油で前処理されている。組成物は、ブロー成形によりフィルムにさらに機械加工するのに適した顆粒として製造される。
【0043】
別の態様では前記組成物は、27重量%の少なくとも1種の生分解可能な及び/又は腐敗可能な芳香族ポリエステル、10重量%の表面が研磨されたドロマイト粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子、15重量%の小麦、カラス麦、ライ麦及び大麦の少なくとも1種から選択される植物起源のデンプン、3重量%の少なくとも1種の植物起源の油、5重量%のタルク粉末のような含水ケイ酸マグネシウムから選択される添加剤、並びに40重量%の少なくとも1種の脂肪族ポリエステルを含み、前記ドロマイト及び/又は炭酸カルシウムは少なくとも1種の植物起源の油で前処理されている。組成物は、熱折り曲げ成形により堆肥化可能な鉢にさらに機械加工するのに適した顆粒として製造される。
【0044】
別の態様では前記組成物は、30重量%の少なくとも1種の生分解可能な及び/又は腐敗可能な芳香族ポリエステル、10重量%の表面が研磨されたドロマイト粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子、0重量%の小麦、カラス麦、ライ麦及び大麦の少なくとも1種から選択される植物起源のデンプン、3重量%の少なくとも1種の植物起源の油、10重量%のタルク粉末のような含水ケイ酸マグネシウムから選択される添加剤、並びに47重量%の少なくとも1種の脂肪族ポリエステルを含み、前記ドロマイト及び/又は炭酸カルシウムは少なくとも1種の植物起源の油で前処理されている。組成物は、押し出しによりストローにさらに機械加工するのに適した顆粒として製造される。
【0045】
さらに別の態様では、前記組成物は、30重量%の少なくとも1種の生分解可能な及び/又は腐敗可能な芳香族ポリエステル、10重量%の表面が研磨されたドロマイト粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子、10重量%の小麦、カラス麦、ライ麦及び大麦の少なくとも1種から選択される植物起源のデンプン、3重量%の少なくとも1種の植物起源の油、10重量%のタルク粉末のような含水ケイ酸マグネシウムから選択される添加剤、並びに37重量%の少なくとも1種の脂肪族ポリエステルを含み、前記ドロマイト及び/又は炭酸カルシウムは少なくとも1種の植物起源の油で前処理されている。組成物は、射出成形によりカトラリーにさらに機械加工するのに適した顆粒として製造される。
【0046】
別の態様では、前記組成物は、(i)68重量%の少なくとも1種の生分解可能な及び/又は腐敗可能な芳香族ポリエステル;(ii)15重量%の表面が研磨されたドロマイト粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子;(iii)0重量%の小麦、カラス麦、ライ麦及び大麦の少なくとも1種から選択される植物起源のデンプン;(iv)2重量%の少なくとも1種の植物起源の油;(v)5重量%のタルク粉末のような含水ケイ酸マグネシウムから選択される添加剤;(vi)10重量%の少なくとも1種の脂肪族ポリエステルを含み、前記ドロマイト及び/又は炭酸カルシウムは少なくとも1種の植物起源の油で前処理されている。組成物はブロー成形によりフィルムに機械加工し、さらに加工して袋にするのに適した顆粒として製造される。
【0047】
別の態様では、前記組成物は、(i)15重量%の少なくとも1種の生分解可能な及び/又は腐敗可能な芳香族ポリエステル;(ii)20重量%の表面が研磨されたドロマイト粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子;(iii)0重量%の小麦、カラス麦、ライ麦及び大麦の少なくとも1種から選択される植物起源のデンプン;(iv)2重量%の少なくとも1種の植物起源の油;(v)15重量%のタルク粉末のような含水ケイ酸マグネシウムから選択される添加剤;(vi)48重量%の少なくとも1種の脂肪族ポリエステルを含み、前記ドロマイト及び/又は炭酸カルシウムは少なくとも1種の植物起源の油で前処理されている。組成物は、ブロー成形によりさらに機械加工して、袋として使用するのに適したフィルムにするのに適した、又は熱折り曲げ成形により堆肥化可能な鉢にさらに機械加工するのに適した顆粒として製造される。
【0048】
本発明の一態様では、生分解可能な及び/又は腐敗可能な芳香族ポリエステルは、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、アジピン酸から生成されるランダムコポリマー、1,4-ブタンジオール及びテレフタル酸であってもよい。PBATと類似の特性を有する他の芳香族ポリエステルも使用できる。少なくとも1種の生分解可能な及び/又は腐敗可能な芳香族ポリエステルは15~70重量%の量で存在する。例えば、15~25、25~35、35~45、45~55、55~70重量%。例えば、少なくとも1種の生分解可能な及び/又は腐敗可能な芳香族ポリエステルは、実施例で開示のとおり、15、27、30、40又は68重量%の量で存在する。
【0049】
本発明の一態様では、組成物はドロマイト粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子を含んでもよい。炭酸カルシウム粒子の代替物は石灰石粒子又は大理石粒子であってもよい。ドロマイト及び/又は炭酸カルシウムは土壌から得られる材料であり、土壌においてドロマイト及び/又は炭酸カルシウムは鉱物から生じる。前記粒子は表面が研磨されていてもよく、その表面の研磨により、粒子は、組成物から製造したフィルムで裂け始めを生じさせない。このように、例えば、フィルムにおける、裂け始めを生じる可能性のある全ての縁は、粒子から除去され、水平面が生成され、水平面はいかなる鋭利な角もなく平滑である。粒子は組成物の10~40重量%、例えば、10~20%、20~30%、30~40重量%を構成する。一態様では粒子は、組成物の25重量%を構成し、別の組成物では、粒子は組成物の35重量%を構成し、別の態様では粒子は組成物の15重量%を構成し、また他の態様では、粒子は組成物の10重量%を構成する。
【0050】
さらに、本発明の一態様では、前記粒子は約2~4μmのサイズを有してもよい。
【0051】
前記粒子は少なくとも1種の植物起源の油で前処理されて、飽和に到達する。粒子と油の混合は粒子を滑剤に変換し、使用する機械による引裂きを低減させる。
【0052】
一態様では、本発明による組成物は、植物起源の少なくとも1種の油及び/若しくは少なくとも1種のポリオール又はこれらの組合せを含んでもよい。油はナタネ種子油又はグリセロールであってもよい。少なくとも1種の植物起源の油は組成物の1~5重量%を構成する。例えば、3~5重量%。少なくとも1種の植物起源の油は、例えば、組成物の2、3、4又は5重量%を構成してもよい。
【0053】
一態様では、本発明による組成物は、含水ケイ酸マグネシウムから選択される添加剤を含んでもよい。タルク粉末は好ましい選択である。含水ケイ酸マグネシウムの使用は前記潤滑作用をさらに増加させ、機械による引裂きをさらに低減する。含水ケイ酸マグネシウム、たとえばタルクは組成物の5~30重量%を構成する。例えば、5~10重量%、10~15重量%、15~20重量%、20~25重量%又は25~30重量%。一態様では含水ケイ酸マグネシウムは組成物の15重量%を構成し、別の組成物では、含水ケイ酸マグネシウムは組成物の10重量%を構成する。さらに別の態様では、含水ケイ酸マグネシウムは組成物の総重量の5重量%を構成する。
【0054】
一態様では、本発明では、組成物は植物起源のデンプンを含んでもよく、前記デンプンは4~50μmのサイズ、例えば、約4、10、20、30、40又は50μmのサイズを有する。植物起源のデンプンは組成物の0~30重量%を構成する。例えば、0~5%、5~10%、10~15%、15~20%、20~25%又は25~30重量%。組成物は、例えば、デンプンの0、5、10又は15重量%を構成する。一態様では、植物起源のデンプンは、小麦、カラス麦、ライ麦及び大麦又はこれらの組合せの少なくとも1種から選択される。デンプン源は、ふすま又は穀粉の形態で存在してもよく、任意のデンプン源、例えば、小麦、カラス麦、ライ麦及び大麦又は他の利用可能なデンプン源から得てもよい。デンプンはそれ自体として存在してもよいし、又はデンプンが自然に存在する、例えば、穀物、例えば、ふすま、胚芽、胚乳又は組合せの任意の部分の形態で存在してもよい。例えば、ライ麦ふすまからのデンプンの使用は組成物に特徴的な「木質調」の色を付与する。この「木質調」の色は最終生成物に対して有益である。この色によって、その外観が、たとえばポリエチレン(PE)製品から製造された同じカテゴリーの他の製品とは異なるものとなるからである。デンプンの添加は、このデンプンを含む顆粒をさらに加工することにより、材料が非弾性となり、前記材料が、指に裂傷を負わせることなく重い荷物を持ち運ぶ袋への使用に適したものになるような特徴を組成物に付与する。さらなる態様では、本発明では、デンプンは少なくとも1種の植物起源の油で前処理され、デンプンから水を除去して、組成物の固さを増加させる。
【0055】
一態様では、脂肪族ポリエステルは、アルコールで修飾された酸である。別の態様では、脂肪族ポリエステルは重合単位からなり、その繰り返し単位は、15個までの炭素原子、例えば、10個までの炭素原子からなる。さらに別の態様では、脂肪族ポリエステルは生分解性のポリエステル、例えばポリブチレンサクシネート(PBS)である。ポリブチレンサクシネートは、1,4-ブタンジオール及びコハク酸から合成した化石燃料を含まない再生可能なポリエステルである。PBSは、繰り返し単位C12のブチレンサクシネートの重合単位からなる。別の態様では、脂肪族ポリエステルはポリアクリル酸ブチルであってもよい。ポリアクリル酸ブチル(PBA)は、例えば、アセチレン、1-ブチルアルコール、一酸化炭素、ニッケルカルボニル及び塩酸から合成される。PBAは、繰り返し単位(C12)のアクリル酸ブチルの重合単位からなる。さらに別の態様では、脂肪族ポリエステルはポリヒドロキシブチレート(PHB)であってもよい。一態様では、PHBはポリ-3-ヒドロキシブチレート(P3HB)であってもよい。さらに別の態様ではPHBはポリ-4-ヒドロキシブチレート(P4HB)であってもよい。ポリヒドロキシブチレートはポリヒドロキシアルカノエート(PHA)であり、これはバイオ由来で、生分解性なので、興味深いポリエステルに属するポリマーである。ポリヒドロキシアルカノエート又はPHAは、自然界で多くの微生物により生成されるポリエステルである。細菌により生成された場合、これらはエネルギー供給源及び炭素貯蔵として機能する。このファミリー内で150を超える異なるモノマーを組み合わせて、特性が極めて異なる材料を得ることができる。これらの材料は生分解性であり、バイオプラスチックの生成に使用される。PHBは堆肥化可能で、生分解性のポリエステルであり、生理学的ストレスに対する応答として微生物が生成するので、再生可能な供給源由来のものである。ポリヒドロキシブチレートの使用は、水中での最終生成物の分解を可能にする。類似の特性を有する他の脂肪族ポリエステル、例えば、ポリブチレンサクシネート、ポリアクリル酸ブチル又はポリヒドロキシブチレートなども使用できる。少なくとも1種の脂肪族ポリエステルは組成物の0~50重量%を構成してもよい。例えば、組成物の0~10重量%、10~20重量%、20~30重量%、30~40重量%、40~50重量%。組成物は、実施例に記載のとおり、少なくとも1種の脂肪族ポリエステルの、たとえば48、47、40、37、20又は10重量%を構成する。
【0056】
メタンガスの形成を開始するためには、堆肥容器内の温度が30~35℃であることを必要とする。メタンガスは細菌の増殖をさらに増加させ、細菌の増殖は分解を開始する。本発明では、これは分解を開始させるのに十分であるが、一方で従来技術のPLAを含むバイオプラスチック組成物は、分解を開始するのに70℃の温度を必要とする。本発明による組成物から得られた顆粒から製造した製品、例えば、70μmまで、例えば、25μm、さらには1mmまでの厚さを有するフィルムは、上記条件では、180日で完全に分解できる。温度がさらに55℃に増加した場合、分解は数週間に減少する。
【0057】
本発明の顆粒から製造した製品の分解の間、製品のいくつかは、腐敗し、バイオガスを生じてもよく、分解したスラッジ内の残留物は大地にまき散らされる。ドロマイト及び/又は炭酸カルシウムは分解工程に影響を与えず、pHを中性にするので、土壌に対して好ましく、フィールドで土壌改良剤として作用する。ドロマイト及び/又は炭酸カルシウムは、例えば、土壌に、成長因子、例えば、カルシウム及びマグネシウム及び他の重要な鉱物を提供する。
【0058】
化石供給源由来の又は自然界で分解しない原料由来のプラスチック材料の使用に伴う問題は、政府及び国民から増々注目を浴びている。土壌及び水中にマイクロプラスチックを生じるプラスチックを製品に使用することにもまた近年増々関心が向けられている。本発明の組成物は、マイクロプラスチックの供給源になることなく、完全に生分解可能で、堆肥化可能である。ドロマイト及び/又は炭酸カルシウムは、自然から離脱した形態と同じ形態で自然に戻るので、組成物内の中立の成分である。本発明によるデンプン及び油は、再生可能な原料である植物起源に由来するが、その一方で市販されている芳香族ポリエステルは、今日までのところ、大半が再生不可能な原料由来のものであるばかりでなく、部分的に再生可能な及び完全に分解可能な供給源、例えば、上記PBAT由来のものもある。本発明の組成物における再生が不可能な原料は、わずか6~30%である。
【0059】
本発明は、さらに、生分解可能で堆肥化可能な組成物、例えば、顆粒の製造方法に関する。本発明では、この方法は、
(a)ドロマイトの粒子及び/又は炭酸カルシウムの粒子を研磨して、表面の鋭利な縁を除去する工程;
(b)前記研磨された粒子を、少なくとも1種の植物起源の油と混合して、非粘着性混合物を得る工程;
(c)(i)少なくとも1種の生分解可能な及び/又は腐敗可能な芳香族ポリエステル;(ii)任意に植物起源のデンプン;(iii)タルク粉末のような含水ケイ酸マグネシウムから選択される添加剤;並びに(iv)任意に少なくとも1種の脂肪族ポリエステルを含む組成物を加熱混合する工程;
その後、混合を続け、
(d)工程(b)の前記非粘着性混合物を、前記加熱混合したベース組成物に添加する工程;並びに
(e)工程(d)の混合物を押し出して、前記組成物の顆粒にする工程
を含む。
【0060】
本発明の1つの態様では、本方法の工程(d)及び(e)は、制御された圧力下及び加熱下で実施される。
【0061】
制御された圧力は、300bar未満、例えば、温度に応じて100~200barであってもよい。制御された温度は150~200℃であってもよい。
【0062】
前記組成物の顆粒は、従来の機械及び加工技術、例えば、ブロー成形、熱成形、押し出し及び射出成形により加工されてもよい。少なくとも1種の植物起源の油で飽和されているドロマイト及び/又は炭酸カルシウムの使用は、機械に対して滑剤として作用し、他の材料の加工と比較して、その引裂けを低減させる。
【0063】
顆粒の加工によりいくつかの製品を生産できる。この中には、衛生用品及び使い捨て製品がある。ある使用において、フィルムが生成され、フィルムにマイクロクラックを作り出し、通気性を得るためにフィルムは延伸される。製品が地面又は水系と接触した場合のさらなる使用では、組成物はこの使用に対して利点を有する。組成物は周辺環境にマイクロプラスチックを放出せず、自然又はヒトに対して有毒な物質を含まず、気温が高い間でも軟質化しないからである。さらなる使用に対して、前記組成物は材料が高い柔軟性を得るような特徴を付与し、これにより、前記組成物の顆粒から製造した堅い製品でも破壊が難しくなり得る。製品の破壊により、有害となり得る鋭利な構造が生じる可能性があるので、これは利点となり得る。製品を、たとえば使い捨てのカトラリーとして使用した場合、柔軟性のある丈夫な製品は、製品が鋭利な武器として使用される危険性を取り払うことができる。さらに、本発明の顆粒から製造されたフィルムは、食物、例えば、乳製品に使用される、たとえば厚紙ボックス又は厚紙パッケージのコーティングとして使用できる。
【0064】
ドロマイト粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子並びに植物起源のデンプンを飽和させる少なくとも1種の植物起源の油の使用は、水が組成物に浸透するのを防ぎ、これは引裂強度を増加させ、浸透率を減少させる。これは、本発明で得られた顆粒をさらに加工して袋として使用する場合、快適さ及び有用性を増加させる。
【0065】
ドロマイト粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子を、飽和するまで少なくとも1種の植物起源の油及びタルク粉末のような含水ケイ酸マグネシウムから選択される添加剤と混合することは、ミックスを滑剤として作用させることを可能にし、使用される機械による引裂きを減少させる。
【0066】
少なくとも1種の植物起源の油で前処理された、研磨されたドロマイト粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子、任意に前処理された植物起源のデンプン、芳香族ポリエステル、並びに少なくとも1種の脂肪族ポリエステルの組成物は、継続した混合の間、150~200℃であってもよい温度で、300bar未満であってもよい圧力下で混合される。組成物の混合は、好ましくは押し出し機、最も好ましくは2軸スクリュー押し出し機を使用して行う。
【0067】
組成物は顆粒に切断される。次いで、顆粒は、標準的な機械処理、例えば、ブロー成形、熱成形、押し出し、又は射出成形によるさらなる加工に使用されてもよい。このような処理から、いくつかの異なる製品、例えば、衛生製品、使い捨て物品を製造できる。
【0068】
本発明はまた、成形可能な材料として組成物から製造した組成物又は顆粒の使用であって、前記成形可能な材料が、公知の方法で、ゴミ袋、袋、カトラリー、使い捨て物品、例えば、使い捨てシート、使い捨てエプロン及び使い捨て衛生用品に加工され、及び/又は成形される、使用に関する。
【実施例
【0069】
以下の実施例は、限定としてではなく例示して、本発明の態様に従ってさまざまな組成物を特定する。
【0070】
実験1
第1の実験において、最終組成物の25重量%のドロマイト粒子を研磨して、平滑化した縁を得た。次に、粒子を5重量%のナタネ油と混合して、粒子を飽和させた。混合の結果として、さらなる工程において滑剤として作用する非粘着性の混合物を得た。
【0071】
並行して、225barで150℃まで加熱しながら、40重量%のPBATを10重量%のタルク粉末及び20%のポリブチレンサクシネートと混合した。混合は押し出し機で行い、第1工程からの滑剤混合物を押し出し機に加えた。
【0072】
押し出し機を使用して、組成物を押し出し機から押し出し、顆粒に切断した。組成物の総重量は5000トンであった。顆粒をブロー成形でフィルムにさらに加工した。フィルムを冷却し、延伸して、フィルムにマイクロクラックを形成させ、フィルムを介する空気交換を可能にした。フィルムはその後、例えば、病院での使用のための使い捨てシートとして使用された。
【0073】
実験2
第2の実験では、最終組成物の10重量%のドロマイト粒子を研磨して、鋭利な縁を除去した。次に粒子を3重量%のグリセロールと混合して、粒子を滑剤に変換した。
【0074】
27重量%のPBATを、200℃及び225barで、デンプン源としての15重量%のライ麦ふすま、5重量%のタルク粉末及び40重量%のポリブチレンサクシネートと共に加熱混合した。混合は押し出し機で行い、タルク粉末とナタネ油の滑剤ミックスを混合物に加えた。
【0075】
混合物を押し出し機から押し出し、顆粒に切断した。組成物の総重量は5000トンであった。熱折り曲げ成形により顆粒を堆肥化可能な鉢にさらに加工した。混合物中のライ麦の使用により、鉢に特徴的な「木質調」の色が付与され、これにより鉢は、同じカテゴリーの他の製品との違いが容易に見分けられるようになった。
【0076】
実験3
第3の実験では、最終組成物の10重量%のドロマイト粒子を研磨して、鋭利な縁を除去した。これを3重量%のナタネ油と混合して、混合物の潤滑作用を得た。
【0077】
30重量%のPBATを、200℃及び225barで10重量%のタルク粉末及び47重量%のポリブチレンサクシネートと混合した。混合を押し出し機で行い、滑剤混合物を加えた。混合物を切断して顆粒にした。組成物の総重量は5000トンであった。顆粒を押し出しによりストローにさらに加工した。ストローは、完全に生分解可能で、堆肥化可能であった。
【0078】
実験4
第4の実験では、最終組成物の10重量%のドロマイト粒子を研磨して、鋭利な縁のない粒子を得た。粒子を2重量%のナタネ油と混合して、粒子を滑剤に変換した。
【0079】
30重量%のPBATをデンプン源としての10重量%のライ麦ふすま、10重量%のタルク粉末及び37重量%のポリブチレンサクシネートと混合した。混合は、150℃、225barで行った。混合する前に、ライ麦は1重量%のナタネ油で飽和するまで前処理した。混合を押し出し機で行い、滑剤ミックスを加えた。組成物を切断して顆粒にした。組成物の総重量は5000トンであった。顆粒を射出成形でカトラリーにさらに加工した。カトラリーは堅かったが柔軟性があるので、壊れても鋭利な縁を有するような小片にはなり得なかった。これによって、カトラリーを、たとえば鋭利な武器として使用する危険性が排除される。
【0080】
実験5
第5の実験では、全組成物の15重量%のドロマイト粒子を研磨して、粒子の平滑化した表面を得た。2重量%のナタネ油と混合し滑剤に変換した。
【0081】
170℃への加熱中、225barで、68重量%のPBATを5重量%のタルク粉末及び10重量%のポリブチレンサクシネートと混合した。混合を押し出し機で行い、滑剤混合物を加えた。
【0082】
組成物を切断して顆粒にした。組成物の総重量は5000トンであった。顆粒をブロー成形でフィルムにさらに加工した。フィルムは、例えば、食料雑貨類用の袋として使用した。
【0083】
実験6
第6の実験では、全組成物の10重量%のドロマイト粒子を研磨して、表面を平滑化し、2重量%のナタネ油とブレンドして、粒子を滑剤に変換した。
【0084】
15重量%のPBATを15%のタルク粉末及び48重量%のポリブチレンサクシネートと混合した。混合は、200℃、225barで、押し出し機を使用して行った。滑剤混合物を押し出し機に加えた。次に、組成物を切断して顆粒にし、顆粒を2つの方法でさらに加工した。1つはブロー成形により厚さ50μmのフィルムに加工し、その後ゴミ袋として使用し、1つは熱折り曲げ成形により鉢にした。
【0085】
実験7
第7の実験は分解実験であった。実験5で本発明の顆粒から得られたフィルムから製造したゴミ袋を、1週間、毎日加えられる70~95kgの有機廃棄物と一緒に堆肥の中に入れた。実験開始時の堆肥の温度はおよそ30℃であった。これが、メタンガスの形成を誘発し、ひいては細菌の増殖を誘発した。分解の間、温度は時間の経過と共に自然におよそ50℃まで増加し、この時点で袋の分解は非常に速く進んでいる。180日未満で袋は完全に分解し、残留するスラッジは土壌肥料として使用した。
【0086】
本発明の組成物で製造したフィルム(ゴミ袋)は、例えば、分解のために高い温度を必要とするPLAを含有する従来の技術のフィルムと比較して、低い温度で分解する。これは、従来の技術のプラスチック製の袋と比較して、優れた持続可能な改善である。
【0087】
実験8
第8の実験は分解実験であった。実験5で本発明の顆粒から得られたフィルムから製造したゴミ袋を、1週間、毎日加えられる70~95kgの有機廃棄物と一緒に堆肥の中に入れた。実験開始時の堆肥の温度はおよそ30℃であった。温度を工業的手段で55℃に到達するまで上げた。この昇温は、実験7と比較して分解を速め、1週間以内で袋は完全に分解し、残留する廃棄物は土壌のみとなった。比較として、PLAを含むゴミ袋を同じ実験に使用した。1週間後、PLAを含有するゴミ袋は依然として堆肥内に細片として残留し、この状態では、土壌改善として使用できなかった。
【0088】
【表1】
【0089】
したがって、本発明による組成物から製造したゴミ袋は、例えば、分解のために高い温度を必要とするポリ乳酸を含有する従来の技術のゴミ袋と比較して、優れた分解特性を有することが示された。加えて、分解後に、いかなるマイクロプラスチックも土壌内に残留しない。
【国際調査報告】