(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-21
(54)【発明の名称】特定の細胞タイプに対するカプセル特異性の決定
(51)【国際特許分類】
C12N 15/88 20060101AFI20230214BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20230214BHJP
【FI】
C12N15/88 Z
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538291
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(85)【翻訳文提出日】2022-07-13
(86)【国際出願番号】 EP2020000212
(87)【国際公開番号】W WO2021121646
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522244791
【氏名又は名称】カプコ バイオ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】CapCo Bio GmbH
【住所又は居所原語表記】Egonstrasse 51-53, 79106 Freiburg im Breisgau, Germany
(71)【出願人】
【識別番号】513139622
【氏名又は名称】アルベアト-ルートヴィヒス-ウニヴェアズィテート フライブルク
【氏名又は名称原語表記】Albert-Ludwigs-Universitaet Freiburg
【住所又は居所原語表記】Fahnenbergplatz,D-79098 Freiburg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イリーナ ナザレンコ
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー クラップロート
(72)【発明者】
【氏名】アーノルト マーティン
(57)【要約】
したがって、本発明の課題は、標的細胞タイプに取り込まれ、標的細胞を恒久的または一過的に修飾し、その過程で細胞に毒性作用を及ぼさないトランスファーカプセルを提供することである。本発明によるこの解決策は、細胞特異的なサイズを有する高分子電解質ナノカプセルを製造するための単分散コアの使用であって、その際、造血細胞に対するサイズは、20~80nmの範囲、好ましくは40~60nmの範囲である。この点で、毒性作用の発生を防ぐには、粒子のサイズが非常に狭い範囲であることが必要である。ナノ粒子の周囲にカプセルが構築されるが(コア)、ナノカプセルの毒性を低く抑えるために、使用前にこのナノ粒子を除去することが重要である。これに関する方法は、先行技術から公知である(例えば、EDTAによる溶解)。さらなる課題は、トランスファーカプセルの安定化である。本発明によるこの解決策は、カプセル、層および/または包装されるカーゴを官能基によって修飾することにあり、これによって、安定化、ひいては室温での長期保存が可能となる。第3の課題は、トランスファーカプセルの狙いどおりの導入である。本発明によるこの解決策は、化学修飾による層の官能化、および/または層への抗体、タンパク質もしくはペプチドの補充である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
初代細胞および幹細胞の標的分子の導入に適したナノカプセルであって、
- 前記カプセルは、少なくとも2つの生分解性層からなり、
- 前記少なくとも2つの層の間に、少なくとも1つの核酸、タンパク質および/または小分子または他の標的分子が存在し、
- ナノ粒子コアは、最大25%のばらつきで明確に定められたサイズを有し、
- 同様に、前記ナノ粒子コアは、前記サイズに加えて電荷によって分離することができ、
- 必要に応じて、カプセル表面および/または前記カプセル内の個々の層を官能基で修飾することができ、
- 同様に、前記層の間のカーゴ要素または前記層自体を修飾することができる
ことを特徴とする、ナノカプセル。
【請求項2】
前記明確に定められたサイズのナノ粒子は、20~80nmのサイズ範囲から選択される、請求項1記載のナノ粒子コア。
【請求項3】
前記ナノ粒子は、30~60nmのサイズ範囲から選択される、請求項2記載のナノ粒子コア。
【請求項4】
初代細胞または細胞株にカーゴを導入する方法であって、ナノカプセルを細胞と接触させ、その際、
- ナノ粒子コアは、最大25%のばらつきで明確に定められたサイズを有し、
- 前記ナノカプセルは、少なくとも2つの生分解性層からなり、
- 前記少なくとも2つの層の間に、少なくとも1つの核酸、タンパク質、小分子および/または化学療法薬が存在し、
- 保存中の安定性または細胞内での分解時間を調整するために、1つ以上の層またはカーゴを官能基の結合によって修飾することができる
ことを特徴とする、方法。
【請求項5】
安定化の目的で官能基によって改変された、請求項1記載のナノカプセル。
【請求項6】
狙いどおりの移入のための、請求項1記載のナノカプセル。
【請求項7】
前記細胞は、造血系起源の健康なまたは悪性の細胞である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記細胞を一過的にトランスフェクトする、請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記細胞を安定的にトランスフェクトする、請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記細胞は、胚細胞またはiPS細胞である、請求項6記載の方法。
【請求項11】
ナノカプセルの製造方法であって、前記ナノカプセルを構築するためのコアは、単分散ナノ粒子であり、前記ナノカプセルには、核酸、タンパク質、小分子または化学療法薬が装填されており、かつ前記ナノカプセルを、官能基で修飾された状態で、または非修飾の状態で使用することを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
細胞内の生体分子および「小分子化合物」の輸送媒体としての高分子電解質ナノカプセルは、国際公開第2019020665号に記載されている。これらは、固体または液体のコアの周りに、いわゆるレイヤー・バイ・レイヤー技術によって構築することができる。この点で、ナノカプセルのサイズは、使用されるコアのサイズに依存する。特定の細胞への取り込みの選択および効率には、表面構造だけでなくナノ粒子のサイズも重要である。国際公開第002019020665号には、炭酸カルシウム製のコアの周囲にカプセルを形成し、これらのコアは、硝酸カルシウムおよび炭酸ナトリウムの溶液から沈降反応によって形成されることが記載されている。様々な助剤が沈降に影響を与え、沈降炭酸カルシウムコアの異なるサイズを得ることができる。
【0002】
この場合、問題点としてはサイズ分布に非常に大きな幅があることが挙げられ、すなわち、60nmの粒子を製造する際に100nm超の粒子も製造され、その逆もまた然りである。しかし、特定の細胞タイプにおいてこれらのナノカプセルをうまく使用するためには、粒子のサイズを約10~最大20nmに厳密に設定できることが不可欠であり、それにより、望ましくない細胞への取り込みを低減することができる。なぜならば、造血細胞は、とりわけ20~60nmのサイズを有するナノカプセルでトランスフェクトすることができ、腫瘍細胞については、100~200nmのサイズが好ましいからである。つまり、非特異的な取り込みによる非特異的な影響を避けるために、ナノカプセルは適切なサイズを有していなければならない。
【0003】
先行技術におけるさらなる重大な問題の1つに、例えばCD34+造血前駆細胞およびT細胞のような造血系起源を有する細胞に対する100nm超の粒子の毒性が挙げられる。これまで、そのような細胞への形質導入または電気穿孔は、ウイルスの使用によってのみ可能であった。これにより、様々な問題が生じる。
【0004】
現在の先行技術におけるさらなる重大な問題の1つに、カーゴ(cargo)を充填したカプセルの安定性が比較的低いことが挙げられる。これまで、siRNAを装填したカプセルのみが極めて安定であることが実証されており、他の分子、とりわけmRNAおよびDNAは、カプセル中で不安定であり、長期保存を妨げ、これはゲノムカーゴの分解および/またはカプセルの凝集をもたらす。さらに、小分子や化学療法薬の場合には長期保存中に拡散効果が生じるため、現時点ではこれらの物質群の有効利用も不可能である。カプセル層および/またはRNAもしくはDNAの化学修飾により安定性を明らかに向上させることができる。さらに、これらの修飾によって細胞特異的または器官特異的な導入を達成することができる。
【0005】
これまでのボトムアッププロセスで製造された粒子は、サイズ分布が広く、製造プロセスが非常に不安定であるという問題を有する。そのためこのプロセスは、均一なサイズのナノ粒子を工業的に製造するのには適していない。これに対し、トップダウンプロセスで製造された粒子は、簡便かつ安価に得ることができるが、形状が不均一であるという問題を有する。
【0006】
したがって、本発明の第1の課題は、標的細胞タイプに取り込まれ、標的細胞を恒久的または一過的に修飾し、その過程で特定の標的細胞タイプに毒性作用を及ぼさないカプセルを提供することである。第2の課題は、上記の化学修飾による長期保存の安定化である。
【0007】
本発明によるカプセルは、必要に応じて化学修飾を行って細胞特異的なサイズを有する高分子電解質ナノカプセルを製造するための、単分散ナノ粒子の使用であって、その際、国際公開第20199020665号に記載のように、造血細胞に対するサイズは、20~80nmの範囲、好ましくは40~60nmの範囲であり、上皮細胞および非造血細胞に対するサイズは、60~280nmの範囲である。この点で、毒性作用の発生を防ぐには、粒子のサイズが非常に狭い範囲であることが必要である。カプセルの構築に使用される生分解性ポリマー、例えばデキストランおよびポリ-L-アルギニンを、必要に応じて(官能基、例えば、炭化水素官能基、酸素を含む官能基、窒素を含む官能基、硫黄を含む官能基、またはリン酸塩を含む官能基の結合によって;これに関する方法は、先行技術から公知である)化学的に修飾することができ、そうすることで、カプセルの自発的凝集および自発的カーゴ拡散を防止し、かつカプセルの安定性を向上させることができる。ナノ粒子(いわゆるコア)の周囲にカプセルが構築されるが、ナノカプセルの毒性を低く抑えるために、場合によっては使用前にこのナノ粒子を除去することがさらに有利である。これに関する方法は、先行技術から公知である(例えば、EDTAによる溶解)。
【0008】
十分に狭いサイズの選択は、沈降によって得られたコアを用いて効率的に実施することができない。なぜならば、サイズ分布が非常に広いためである。本発明の範囲内では、中央値±15nmまたは任意に±25%、好ましくは±10nm(または中央値±20%)の狭く定められたサイズ分布を有するナノ粒子およびナノカプセルを単分散と称する。
【0009】
驚くべきことに、コアのサイズの問題は、単に、サイズ選別して機械的に製造したナノ粒子の使用によって解決されるわけではない。例えば、炭酸カルシウムをボールミルで粉砕することにより15~60nmのサイズを有するナノ粒子を製造することができ、その後、(沈殿または遠心分離による)分画によって均一な画分(±10nm)を製造することができる。その後、これらの粒子をレイヤー・バイ・レイヤープロセスによりポリマーでコーティングすることができる。しかし、これらの粒子の不均一な形状は、粒子の選別に支障をきたすため、障害となる。コアの溶解後にクロスフローろ過などによりこれらの粒子をさらに精製することによってのみ、十分に正確なサイズの選択が可能となる。
【0010】
ナノカプセルは、既知のレイヤー・バイ・レイヤープロセスによって製造することができる。化学療法薬、小分子、および核酸やタンパク質などのマクロ分子といった分子をレイヤー間に導入し、これらを細胞内に放出させることができる。例えば、DNAを装填したナノカプセルをT細胞に導入することで、キメラT細胞受容体を作製することができる。また、RNA分子を細胞に導入することで、細胞の一過性の修飾を作製することも可能である。さらに、上記のすべての分子やマクロ分子を単独で、あるいは考えられるすべての組み合わせで導入することも可能である。この特性により、例えば、CRISPR/Cas複合体のトランスフェクションが可能となる。前述の化学修飾は、カプセルポリマーとカーゴの双方に用いることができ、それにより、標的細胞における安定性およびその結果としての放出を調節することができる。
【0011】
初代細胞とは、生体から採取され、培養によって組織特異的な性質を失っていない細胞である。初代細胞は、例えば、生体内または生体外の、幹細胞、胚細胞、造血細胞、腫瘍細胞、またはさらには間葉系幹細胞、組織細胞であるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
異なる細胞タイプや組織に分化できる体細胞は、一般に幹細胞と呼ばれる。幹細胞は、幹細胞の種類およびその影響に応じて、あらゆる種類の組織(胚性幹細胞)または特異的に確立された組織タイプ(成体幹細胞/前駆細胞)に成長する可能性がある。
【0013】
ナノカプセルの層(レイヤー)の構築に適したポリマーは、ポリカチオンおよびポリアニオンであり、これらは交互にナノカプセルの層を形成する。電荷が反対であるため、ポリマーは自己組織化によって層を形成することができる。各層の形成後、ポリマーの未消費部分をナノカプセルから分離しなければならない。本発明の趣意でのポリマーには、古典的なポリマーおよびコポリマーだけでなく、アミノ酸、核酸、および多糖類またはオリゴ糖から構成された秩序のある構造を有するマクロ分子などのバイオポリマーも包含される。
【0014】
ポリカチオンの例としては、
- ポリエチレンイミン(PEI)
- キトサン(CS)
- ポリ(L-リジン)(PLL)
- ポリ(アミドアミン)(PAA)
- オリゴリジン
- ポリ-(l)-オルニチン(PLO)
- (ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)(PDAC)
- ヒスチジンおよびリジンに富むペプチドおよびタンパク質、例えばCys-Gly-Ala-Gly-Pro-(Lys)3-Arg-Lys-Val-Cys
が挙げられる。
【0015】
ポリアニオンの例としては、
- ポリ(メタクリル酸)(PMA)
- ポリ(N-ビニルピロリドン)(PVP)
- タンニン酸(TA)
- ポリ(2-n-プロピル-2-オキサゾリン)(PnPropOx)
- ポリ(1-ビニルイミダゾール)
- 乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)
- デキストラン硫酸塩
- ポリエチレングリコール
- ウシ血清アルブミン
- ヒト血清アルブミン
- プロタミン硫酸塩
- 1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)
が挙げられる。
【0016】
核酸の安定化に使用できる物質は、核酸とともにカプセル内に施与される物質、または完成したカプセルを用いたインキュベーションによりカプセルおよびカプセルの内腔に拡散して、カプセルが細胞内に入るまで少なくとも部分的にそこに留まる物質である。そのような物質の例としては、
- プロタミン硫酸塩
- 細胞貫通ペプチド
- グルタチオン
- TATタンパク質
- RNAse阻害剤
- DNAse阻害剤
が挙げられる。
【0017】
ナノカプセルの製造のためのコアに適したナノ粒子の例としては、
- 鉄ナノ粒子(マグネタイトを含む)
- シリカナノ粒子
- 市販のCaCO3ナノ粒子
- 他の炭酸塩ナノ粒子、例えばMgCO3
- ベシクル
- 金ナノ粒子
- ラテックスナノ粒子
が挙げられる。
【0018】
ナノ粒子の表面は、標的細胞への浸透性を向上させるために、さらなる基によって修飾されていてよい。このような基は、例えば、葉酸基、COOH基、NH3基である。これらの基はまた、リガンドおよび受容体(抗体を含む)のような特定の結合分子をそれらに結合させるために、バイオコンジュゲーションに供することができる。
【0019】
実施例1.炭酸カルシウムナノ粒子の分画
炭酸カルシウムナノ粒子を、SkySpring Nanomaterials社より調達した。平均粒子径は15~40nmであった。これらの粒子を用いて、PBSに10mg/mlの懸濁液を作製した。これらの粒子を分離するために、超音波を5分間使用した。次に、エッペンドルフ遠心分離機で分画遠心分離することにより、サイズ別に精製した。2mlの懸濁液を、500RCF、1000RCF、2000RCF、5000RFC、10000RCF、15000RFCおよび20000RCFで遠心分離した。この場合、最も低いRCFから始まり、上澄みを除去し、次に高いRCFで遠心分離した。その後、遠心分離のペレットを測定した。500RCFの画分を廃棄した(粒子が凝集していた、または大きすぎた)。
【0020】
実施例2:高分子電解質ナノカプセルの製造
ナノ粒子をコーティングするために、国際公開第2019020665号に記載されているように、デキストラン硫酸塩(ナトリウム塩として)およびポリ-L-アルギニン塩酸塩を使用した。この場合、層間に1つ以上の核酸(さらに追加の生体分子)を導入することが可能である。核酸は、静電結合によってカプセル壁に付着するため、生体分子を用いたカプセルのインキュベーションで十分である。この方法は、国際公開第2019020665号に記載されている。
【0021】
これらを化学的に修飾することで、保存中の安定性や細胞内での分解時間を変化させることが可能であった。例えば、炭化水素、酸素を含む基、窒素を含む基、硫黄(S/SH)基、N/NH基、およびPを含む他の基のような1つ以上の官能基の使用による化学修飾を導入し、試験した。この化学修飾により、第1の試験において、より長期間の保存を保証できることがわかった。さらに、カプセルを室温である時間間隔で保存することも可能であった。これは、特に輸送(積荷)にとってコストおよび管理労力(キーワード:ドライアイスおよび冷蔵製品に関わる関税規制)を低減することになり、大きな便益となる。
【0022】
実施例3:タンジェンシャルフローろ過による完成したナノカプセルの精製
次に、50nmのフィルターモジュールを備えたKrosFlo Research IIiシステムを用いて、存在する可能性のある大きなナノカプセルを除去するために、完成したナノカプセルを精製した。50nm超のサイズを有する粒子は保持された。この目的のために、PBS中のナノカプセルの10mg/mlの懸濁液50mlを作製した。これを製造者の指示に従ってろ過した。
【0023】
実施例4:非対称の流動場分画(AF4)による分離
次いで、完成したナノカプセルを、Wyatt Technology社のEclipse AF4を用いて、存在する可能性のある大きなナノカプセルを除去するために精製した。ここでは、粒子を電荷およびサイズに応じて分離した。この目的のために、PBS中のナノカプセルの10mg/mlの懸濁液50mlを作製した。これを製造者の指示書に従って分離した。
【0024】
実施例5:初代細胞のトランスフェクション
とりわけ、造血細胞については40~80nmのサイズを有するナノカプセルが明らかに有利である。50nm~80nmのサイズを有するナノカプセルのカーゴとして、タンパク質、DNA、mRNA、miRNAおよびsiRNAを使用した。CD34+造血幹細胞、CD4+およびCD8+T細胞を、カプセルを用いて48時間インキュベートした。この際、10カプセル/細胞を使用した。蛍光標識カプセルの場合には共焦点顕微鏡によって、およびPCRによって、導入の成功を制御した。
【0025】
実施例6:さらなる初代細胞のトランスフェクション
胚性幹細胞および人工多能性幹細胞(iPS細胞)に対して、50~120nmのサイズを有するナノカプセルを作製した。50~120nmのサイズを有するナノカプセルのカーゴとして、タンパク質、DNA、mRNA、miRNAおよびsiRNAを使用した。胚性幹細胞およびiPS細胞を、カプセルを用いて48時間インキュベートした。この際、20カプセル/細胞を使用した。蛍光標識カプセルの場合には共焦点顕微鏡によって、およびPCRによって、導入の成功を制御した。
【0026】
実施例7:カプセルの安定化および室温(RT)での保存
上記の実施例に挙げたすべてのカプセルについて、炭化水素、酸素を含む基、窒素を含む基、硫黄(S/SH)基、N/NH基、およびPを含む他の基などの官能基を導入することによってコアまたは層のさらなる修飾を実施し、それによって、カプセルの安定化、ひいてはRTでの保存という所望の目標を達成することができた。
【0027】
実施例8:カプセルの自然分解に影響を与えること
実施例2および7で導入した、コアおよび層での官能基の修飾によって、各標的細胞への導入後のカプセルの自然分解に影響を与えることが可能であった。これに関して、例えば間葉系細胞株や腫瘍細胞株では1層あたりの分解時間が4時間であり、造血系起源の細胞では分解時間が24時間となった。
【0028】
実施例9:狙いどおりの導入:抗体、ペプチド、タンパク質の使用
所望の標的細胞へのカーゴの狙いどおりの導入をより明確にするために、対応する抗体、ペプチドまたはタンパク質をカプセルの外層に導入した。
【0029】
実施例10:小分子をカーゴとして有するカプセルの安定化
小分子または化学療法薬を装填したカプセルを安定化するために、小分子または化学療法薬をクリックケミストリーによってカプセルに固定化し、それによって拡散効果を阻止した。
【国際調査報告】