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特表2023-507221光子集積技術に基づく真空のゆらぎ量子乱数発生器チップ
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  • 特表-光子集積技術に基づく真空のゆらぎ量子乱数発生器チップ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-21
(54)【発明の名称】光子集積技術に基づく真空のゆらぎ量子乱数発生器チップ
(51)【国際特許分類】
   G06F 7/58 20060101AFI20230214BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20230214BHJP
【FI】
G06F7/58 680
G02B6/12 301
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538455
(86)(22)【出願日】2021-06-01
(85)【翻訳文提出日】2022-06-21
(86)【国際出願番号】 CN2021097778
(87)【国際公開番号】W WO2022028078
(87)【国際公開日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】202010783534.1
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522125397
【氏名又は名称】シュロン エナジー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHRONG ENERGY TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】2F, No.24 A, Art Museum East Street, Dongcheng District, Beijing, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン チエチュン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ジークオ
【テーマコード(参考)】
2H147
【Fターム(参考)】
2H147AB04
2H147AB05
2H147BE13
2H147CD09
2H147DA15
2H147GA10
(57)【要約】
ヒートシンク基板(1)と、レーザ(2)と、ビームスプリッタ(3)と、少なくとも2つの光電検出器(4)とを備え、前記レーザ(2)は、前記ヒートシンク基板(1)の第1の端に固定され、前記少なくとも2つの光電検出器(4)は、前記ヒートシンク基板(1)の第2の端に固定され、前記ビームスプリッタ(3)は、前記ヒートシンク基板(1)の中部に固定され、前記レーザ(2)の光出口が前記ビームスプリッタ(3)の光路入口に揃えて設置され、前記少なくとも2つの光電検出器(4)は、それぞれ、前記ビームスプリッタ(3)の光路出口に配置される、光子集積技術に基づく真空のゆらぎ量子乱数発生器チップ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光子集積技術に基づく真空のゆらぎ量子乱数発生器チップであって、ヒートシンク基板(1)と、レーザ(2)と、ビームスプリッタ(3)と、少なくとも2つの光電検出器(4)とを備え、前記レーザ(2)は、前記ヒートシンク基板(1)の第1の端に固定され、前記少なくとも2つの光電検出器(4)は、前記ヒートシンク基板(1)の第2の端に固定され、前記ビームスプリッタ(3)は、レーザと検出器との間で前記ヒートシンク基板(1)に固定され、前記レーザ(2)の光は、ビームスプリッタ(3)を通って伝搬し、前記少なくとも2つの光電検出器(4)は、それぞれ、前記ビームスプリッタ(3)の光路出口に配置されることを特徴とする、真空のゆらぎ量子乱数発生器チップ。
【請求項2】
前記真空のゆらぎ量子乱数発生器チップは、前記ヒートシンク基板(1)の第1の端に固定された半導体冷却器(5)をさらに備え、前記レーザ(2)は前記半導体冷却器(5)に固定されていることを特徴とする、請求項1に記載の真空のゆらぎ量子乱数発生器チップ。
【請求項3】
前記真空のゆらぎ量子乱数発生器チップは、前記レーザ(2)の光出口と前記ビームスプリッタ(3)の光路入口との間に配置されたレンズ(6)をさらに有することを特徴とする、請求項1に記載の真空のゆらぎ量子乱数発生器チップ。
【請求項4】
前記ビームスプリッタ(3)は、Y導波路ビームスプリッタであることを特徴とする、請求項1に記載の真空のゆらぎ量子乱数発生器チップ。
【請求項5】
前記ビームスプリッタ(3)の出射端は、角度が90°より小さい斜面構造であることを特徴とする、請求項1に記載の真空のゆらぎ量子乱数発生器チップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2020年08月06日に中国特許局へ出願された、出願番号が202010783534.1であって、開示名称が「光子集積技術に基づく真空のゆらぎ量子乱数発生器チップ」である中国特許出願の優先権を主張し、その全体が、参照によって本開示に取り込まれる。
【0002】
本開示は、光子集積技術に基づく真空のゆらぎ量子乱数発生器チップに関するが、これに限定されるものではない。
【背景技術】
【0003】
量子真空のゆらぎ技術の基本原理は、量子光学では位相空間における真空状態の振幅と位相の直交成分を同時に精度良く検出できないことである。量子乱数発生器は、主に量子暗号、量子通信、光ファイバ通信等の分野で用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0004】
従来の光学構造では、光ファイバビームスプリッタ、レーザ、検出器などのデバイスが個別にパッケージ化され、デバイス間は光ファイバで接続されていた。一方、各個別部品は、サイズが大きく、光ファイバの曲げ半径が大きく、その結果、装置が大きくなり、各部品のピンの仕様が不均一であり、配置が複雑であり、使用時に手作業でプリント回路基板に半田付けをする必要がある。他方、光ファイバは、折れやすく、実装に不便であり、また、環境温度や振動等の影響を受け易く、製品性能が低下しやすい。
【0005】
レーザは、体積が大きく、光ファイバを備え、光ファイバは、曲げ半径が大きく、使用時に、光ファイバが振動及び温度の影響を受け易く、屈折率が変化し、光強度が変化し、且つ、その駆動回路は複雑であり、個別に温度制御する必要があり、消費電力が高く、全体の駆動回路は、体積が大きい。また、光ファイバビームスプリッタ自体のプロセスによっても光強度の分岐割合が不均一になるが、光ファイバビームスプリッタの分岐割合を調整するためにアッテネータを追加して調整することが一般的である。しかし、アッテネータは電圧精度への要求が高く、また、デバイスに作りこむことが困難であるため、回路設計の困難さが大きく向上する。このため、従来の光学構造では、光ファイバが外部の温度や振動の影響を受け易く、光学系全体が変動してしまい、従来の方式で実現された量子乱数発生器装置は、外部環境の影響を受けやすく、光学系全体が非常に不安定であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以下、本開示で詳細に説明する主題についての概括である。本概括は請求項の保護範囲を制限するためのものではない。
【0007】
本開示は、レーザ、ビームスプリッタ、光電検出器を一体に集積する真空のゆらぎ量子乱数発生器チップを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、光子集積技術に基づく真空のゆらぎ量子乱数発生器チップであって、ヒートシンク基板と、レーザと、ビームスプリッタと、少なくとも2つの光電検出器とを備え、前記レーザは、前記ヒートシンク基板の第1の端に固定され、前記少なくとも2つの光電検出器は、前記ヒートシンク基板の第2の端に固定され、前記ビームスプリッタは、レーザと光電検出器との間で前記ヒートシンク基板に固定され、前記レーザが生じたレーザ光は、ビームスプリッタを通って伝搬し、前記少なくとも2つの光電検出器は、それぞれ、前記ビームスプリッタの光路出口に配置される、真空のゆらぎ量子乱数発生器チップを提供する。
【0009】
前記真空のゆらぎ量子乱数発生器チップは、前記ヒートシンク基板の第1の端に固定された半導体冷却器をさらに備え、前記レーザは前記半導体冷却器に固定されている。
【0010】
前記真空のゆらぎ量子乱数発生器チップは、前記レーザの光出口と前記ビームスプリッタの光路入口との間に配置されたレンズをさらに有する。
【0011】
前記ビームスプリッタは、Y導波路ビームスプリッタであり、例えば、PLC光導波路である。
【0012】
前記レーザは、DFBチャンバーレーザを用いてもよいが、これに限定されない。
【0013】
前記ビームスプリッタの出射端は、角度が90°より小さい斜面構造である。
【0014】
前記光電検出器の数は、前記ビームスプリッタの出路ポートの数と同じである。
【0015】
本開示の実施例における真空のゆらぎ技術に基づく量子乱数発生器は、以下の利点を達成することができる。
【0016】
本開示は、光子集積技術を採用し、レーザ、ビームスプリッタ及び光電検出器を結合した後、ヒートシンク基板に固定してパッケージを行い、製品体積を大幅に縮小し、光ファイバの応用及び光ファイバ自体の性能による弊害を低減し、製品性能及び耐用寿命を向上させる。また、パッケージング後の製品はピンの規格が統一されており、そのまま機器を用いてプリント基板にボンディングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する図面は、本開示の実施例を示し、かつ、説明と共に本開示の実施例の原理を説明するためのものである。これらの図面において、同様の符号が同様の要素を示すために用いられる。以下の説明における図面は、本開示のいくつかの実施例であり、すべての実施例ではない。当業者にとって、進歩性に値する労働を要しない前提でこれらの図面から他の図面を得ることができる。
図1】本開示の真空のゆらぎ量子乱数発生器チップの構造を例示的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示の実施例の目的、技術案、および利点をより明確にするために、以下、本開示の実施例における技術案を、本開示の実施例における図面と併せて、明確かつ完全に説明するが、明らかに、説明される実施例は、本開示の一部の実施例であり、すべての実施例ではない。本開示の実施例に基づいて、進歩性に値する労働を要せずに当業者によって得られる他のすべての実施例はいずれも、本開示の保護範囲に属する。なお、本願における実施例および実施例における特徴は、矛盾しない限り、互いに任意に組み合わせることができる。
【0019】
従来技術では、レーザ、ビームスプリッタ、光電検出器が個別にされたデバイスであり、個別にパッケージ化されている。能動素子及び受動素子間は光ファイバで接続され、製品全体の体積が大きく、光ファイバが損なわれやすい。光子集積技術を採用し、レーザ、ビームスプリッタ及び光電検出器などの能動素子及び受動素子を結合などの形態で一つのチップに集積してパッケージすることが開示され、製品体積が大幅に縮小し、光ファイバの応用及び光ファイバ自体の性能による弊害が低減し、製品性能及び耐用寿命が向上する。また、パッケージング後の製品はピンの規格が統一されており、そのまま機器を用いてプリント基板にボンディングすることができる。
【0020】
以下、図面を参照しながら、本開示で提供される光子集積技術に基づく真空のゆらぎ量子乱数発生器チップを詳細に説明する。
【0021】
図1は本開示の真空のゆらぎ量子乱数発生器チップの構造を示す模式図である。図1に示すように、この真空のゆらぎ量子乱数発生器チップは、ヒートシンク基板(1)と、レーザ(2)と、ビームスプリッタ(3)と、少なくとも2つの光電検出器(4)とを備える。レーザ(2)は、ヒートシンク基板(1)の第1の端に固定され、量子乱数発生器の光源として用いられる。少なくとも2つの光電検出器(4)は、ヒートシンク基板(1)の第2の端に固定され、ビームスプリッタ(3)によって発される各光路の光信号の強度を検出するとともに、各光路の光信号をぞれぞれ電気信号に変換して出力するために用いられる。ビームスプリッタ(3)は、ヒートシンク基板(1)の中部に固定され、2つのレーザ(2)によって発される光信号を少なくとも2光路に分けて出力するために用いられる。
【0022】
具体的には、レーザ(2)の光はビームスプリッタ(3)に入り、少なくとも2つの光電検出器(4)は、それぞれ、ビームスプリッタ(3)の光路出口に配置される。
【0023】
光電検出器(4)の数は、ビームスプリッタ(3)の出路に検出する必要のある光路の数と同じであり、例えば、ビームスプリッタ(3)が2光路の光ビームスプリッタである場合、2つの光電検出器(4)が対応して設けられる。
【0024】
一つの選択可能な実施例において、この真空のゆらぎ量子乱数発生器チップは、レーザ(2)の温度を制御するための半導体冷却器(5)をさらに有し、レーザ(2)の出射光の安定性及びレーザ(2)の使用寿命を保証する。具体的には、半導体冷却器(5)は、ヒートシンク基板(1)の第1の端に固定され、レーザ(2)は半導体冷却器(5)に固定されている。
【0025】
一つの選択可能な実施例において、真空のゆらぎ量子乱数発生器チップは、レーザ(2)の光出口とビームスプリッタ(3)の光路入口との間に配置されたレンズ(6)をさらに有し、レーザ(2)から発せられた光ビームをビームスプリッタ(3)の光路入口に集光させて光の伝導率を向上させるために用いられる。具体的には、レンズ(6)とレーザ(2)は、ともに半導体冷却器(5)に設けられているが、ヒートシンク基板(1)に直接設けられていてもよい。
【0026】
本開示の技術案において、ビームスプリッタ(3)は、1分岐多光路のスプリッタであってもよいし、N分岐多光路のスプリッタであってもよく、Nは1より大きい自然数である。
【0027】
一つの典型的な実施例において、ビームスプリッタ(3)は、1つの光路入口と2つの光路出口とを有するY導波路ビームスプリッタ、例えばPLC光導波路ビームスプリッタを選択する。これに対応して、この真空のゆらぎ量子乱数発生器チップは、それぞれ、ビームスプリッタ(3)の2つの光路出口に配置される2つの光電検出器(4)を備えている。レーザ(2)から発せられたレーザ光はビームスプリッタ(3)の光路入口から入射し、2つの光路に分けられてから2つの光路出口からそれぞれ2つの光電検出器(4)に出射される。例示的に、前記ビームスプリッタ(3)は、等比例ビームスプリッタであってもよく、即ち、分光比率が50%:50%であってもよく、非等比例ビームスプリッタであってもよく、例えば、分光比率が40%:60%であってもよい。
【0028】
一つの具体的な実施例において、ビームスプリッタ(3)の出射端は、角度が90°より小さい斜面構造である。各分岐光は、この斜面で反射された後、光線方向が回転されて、光電検出器(4)に照射される。他の実施例において、ビームスプリッタ(3)の出射端は、出射光線が光電検出器(4)によって正確に受光されることを保証する限り、他の角度の傾斜構造又は垂直平面構造であってもよい。
【0029】
本開示の真空のゆらぎ量子乱数発生器チップは、光子集積技術を採用し、レーザ(2)、ビームスプリッタ(3)及び光電検出器(4)をいずれもヒートシンク基板(1)に集積し、光学チップレーザ(1)と導波路素子ビームスプリッタ(3)を結合し、集積接続することで、光ファイバによる接続が不要となるだけでなく、集積後に全体としてパッケージされたチップは、小型化、軽量化で、ピンの規格が統一されており、そのまま機器を用いてプリント基板にボンディングすることができ、製品の耐用性及び使用容易性を大幅に向上させる。
【0030】
本開示の実施例における光子集積技術に基づく真空のゆらぎ量子乱数発生器チップは、以下の利点を達成することができる。
【0031】
本開示は、光子集積技術を採用し、レーザ、ビームスプリッタ及び光電検出器を結合した後、ヒートシンク基板に固定してパッケージを行い、製品体積を大幅に縮小し、光ファイバの応用及び光ファイバ自体の性能による弊害を低減し、製品性能及び耐用寿命を向上させる。また、パッケージング後の製品はピンの規格が統一されており、そのまま機器を用いてプリント基板にボンディングすることができる。
【0032】
本明細書において、表現用語の「含む」、「含有する」、またはそれらの任意の他の変形形態は、非排他的な包含をカバーすることが意図されて、一連の要素を含む物品または設備は、それらの要素だけでなく、明示的に列挙されていない他の要素も含み、またはそのような物品または設備の固有の要素も含むようになる。「……を含む」という表現によって定義される要素は、これ以上限定しない場合、追加の同一の要素が、前記要素を含む物品又は設備中にさらに存在することを除外しない。
【0033】
本開示の他の実施形態は、明細書を考慮し、本明細書に開示される内容を実践する当業者に容易に想起される。本願は、本開示の一般原理に従い、本開示に開示されていない当技術分野における通常の知識又は従来の技術手段を含む、本開示のあらゆる変形、使用、又は適応的変更を包含することが意図される。本明細書および実施例は、単に例示としてみなされるものであり、本開示の真の範囲および精神は、以下の特許請求の範囲によって規定される。
【0034】
本開示は、上記で説明され、添付の図面に示された厳密な構造に限定されず、その範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更がなされ得ることを理解されたい。本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本開示は、光子集積技術を採用し、レーザ、ビームスプリッタ及び光電検出器を結合した後、ヒートシンク基板に固定してパッケージを行い、製品体積を大幅に縮小し、光ファイバの応用及び光ファイバ自体の性能による弊害を低減し、製品性能及び耐用寿命を向上させる光子集積技術に基づく真空のゆらぎ量子乱数発生器チップを提供する。また、パッケージング後の製品はピンの規格が統一されており、そのまま機器を用いてプリント基板にボンディングすることができる。
図1
【手続補正書】
【提出日】2022-06-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、2020年08月06日に中国特許局へ出願された、出願番号が202010783534.1であって、開示名称が「光子集積技術に基づく真空のゆらぎ量子乱数発生器チップ」である中国特許出願の優先権を主張し、その全体が、参照によって本開示に取り込まれる。
【0002】
本開示は、光子集積技術に基づく真空のゆらぎ量子乱数発生器チップに関するが、これに限定されるものではない。
【背景技術】
【0003】
量子真空のゆらぎ技術の基本原理は、量子光学では位相空間における真空状態の振幅と位相の直交成分を同時に精度良く検出できないことである。量子乱数発生器は、主に量子暗号、量子通信、光ファイバ通信等の分野で用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0004】
従来の光学構造では、光ファイバビームスプリッタ、レーザ、検出器などのデバイスが個別にパッケージ化され、デバイス間は光ファイバで接続されていた。一方、各個別部品は、サイズが大きく、光ファイバの曲げ半径が大きく、その結果、装置が大きくなり、各部品のピンの仕様が不均一であり、配置が複雑であり、使用時に手作業でプリント回路基板に半田付けをする必要がある。他方、光ファイバは、折れやすく、実装に不便であり、また、環境温度や振動等の影響を受け易く、製品性能が低下しやすい。
【0005】
レーザは、体積が大きく、光ファイバを備え、光ファイバは、曲げ半径が大きく、使用時に、光ファイバが振動及び温度の影響を受け易く、屈折率が変化し、光強度が変化し、且つ、その駆動回路は複雑であり、個別に温度制御する必要があり、消費電力が高く、全体の駆動回路は、体積が大きい。また、光ファイバビームスプリッタ自体のプロセスによっても光強度の分岐割合が不均一になるが、光ファイバビームスプリッタの分岐割合を調整するためにアッテネータを追加して調整することが一般的である。しかし、アッテネータは電圧精度への要求が高く、また、デバイスに作りこむことが困難であるため、回路設計の困難さが大きく向上する。このため、従来の光学構造では、光ファイバが外部の温度や振動の影響を受け易く、光学系全体が変動してしまい、従来の方式で実現された量子乱数発生器装置は、外部環境の影響を受けやすく、光学系全体が非常に不安定であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以下、本開示で詳細に説明する主題についての概括である。本概括は請求項の保護範囲を制限するためのものではない。
【0007】
本開示は、レーザ、ビームスプリッタ、光電検出器を一体に集積する真空のゆらぎ量子乱数発生器チップを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、光子集積技術に基づく真空のゆらぎ量子乱数発生器チップであって、ヒートシンク基板と、レーザと、ビームスプリッタと、少なくとも2つの光電検出器とを備え、前記レーザは、前記ヒートシンク基板の第1の端に固定され、前記少なくとも2つの光電検出器は、前記ヒートシンク基板の第2の端に固定され、前記ビームスプリッタは、レーザと光電検出器との間で前記ヒートシンク基板に固定され、前記レーザが生じたレーザ光は、ビームスプリッタを通って伝搬し、前記少なくとも2つの光電検出器は、それぞれ、前記ビームスプリッタの光路出口に配置される、真空のゆらぎ量子乱数発生器チップを提供する。
【0009】
前記真空のゆらぎ量子乱数発生器チップは、前記ヒートシンク基板の第1の端に固定された半導体冷却器をさらに備え、前記レーザは前記半導体冷却器に固定されている。
【0010】
前記真空のゆらぎ量子乱数発生器チップは、前記レーザの光出口と前記ビームスプリッタの光路入口との間に配置されたレンズをさらに有する。
【0011】
前記ビームスプリッタは、Y導波路ビームスプリッタであり、例えば、PLC(Planar Lightwave Circuit)光導波路スプリッタである。
【0012】
前記レーザは、DFB(Distributed-feedback)チャンバーレーザを用いてもよいが、これに限定されない。
【0013】
前記ビームスプリッタの出射端は、角度が90°より小さい斜面構造である。
【0014】
前記光電検出器の数は、前記ビームスプリッタの出路ポートの数と同じである。
【0015】
本開示の実施例における光子集積技術に基づく真空のゆらぎ量子乱数発生器チップは、以下の利点を達成することができる。
【0016】
本開示は、光子集積技術を採用し、レーザ、ビームスプリッタ及び光電検出器を結合した後、ヒートシンク基板に固定してパッケージを行い、製品体積を大幅に縮小し、光ファイバの応用及び光ファイバ自体の性能による弊害を低減し、製品性能及び耐用寿命を向上させる。また、パッケージング後の製品はピンの規格が統一されており、そのまま機器を用いてプリント基板にボンディングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する図面は、本開示の実施例を示し、かつ、説明と共に本開示の実施例の原理を説明するためのものである。これらの図面において、同様の符号が同様の要素を示すために用いられる。以下の説明における図面は、本開示のいくつかの実施例であり、すべての実施例ではない。当業者にとって、進歩性に値する労働を要しない前提でこれらの図面から他の図面を得ることができる。
図1】本開示の真空のゆらぎ量子乱数発生器チップの構造を例示的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示の実施例の目的、技術案、および利点をより明確にするために、以下、本開示の実施例における技術案を、本開示の実施例における図面と併せて、明確かつ完全に説明するが、明らかに、説明される実施例は、本開示の一部の実施例であり、すべての実施例ではない。本開示の実施例に基づいて、進歩性に値する労働を要せずに当業者によって得られる他のすべての実施例はいずれも、本開示の保護範囲に属する。なお、本願における実施例および実施例における特徴は、矛盾しない限り、互いに任意に組み合わせることができる。
【0019】
従来技術では、レーザ、ビームスプリッタ、光電検出器が個別にされたデバイスであり、個別にパッケージ化されている。能動素子及び受動素子間は光ファイバで接続され、製品全体の体積が大きく、光ファイバが損なわれやすい。光子集積技術を採用し、レーザ、ビームスプリッタ及び光電検出器などの能動素子及び受動素子を結合などの形態で一つのチップに集積してパッケージすることが開示され、製品体積が大幅に縮小し、光ファイバの応用及び光ファイバ自体の性能による弊害が低減し、製品性能及び耐用寿命が向上する。また、パッケージング後の製品はピンの規格が統一されており、そのまま機器を用いてプリント基板にボンディングすることができる。
【0020】
以下、図面を参照しながら、本開示で提供される光子集積技術に基づく真空のゆらぎ量子乱数発生器チップを詳細に説明する。
【0021】
図1は本開示の真空のゆらぎ量子乱数発生器チップの構造を示す模式図である。図1に示すように、この真空のゆらぎ量子乱数発生器チップは、ヒートシンク基板(1)と、レーザ(2)と、ビームスプリッタ(3)と、少なくとも2つの光電検出器(4)とを備える。レーザ(2)は、ヒートシンク基板(1)の第1の端に固定され、量子乱数発生器の光源として用いられる。少なくとも2つの光電検出器(4)は、ヒートシンク基板(1)の第2の端に固定され、ビームスプリッタ(3)によって発される各光路の光信号の強度を検出するとともに、各光路の光信号をぞれぞれ電気信号に変換して出力するために用いられる。ビームスプリッタ(3)は、ヒートシンク基板(1)の中部に固定され、レーザ(2)によって発される光信号を少なくとも2光路に分けて出力するために用いられる。
【0022】
具体的には、レーザ(2)の光はビームスプリッタ(3)に入り、少なくとも2つの光電検出器(4)は、それぞれ、ビームスプリッタ(3)の光路出口に配置される。
【0023】
光電検出器(4)の数は、ビームスプリッタ(3)の出路に検出する必要のある光路の数と同じであり、例えば、ビームスプリッタ(3)が2光路の光ビームスプリッタである場合、2つの光電検出器(4)が対応して設けられる。
【0024】
一つの選択可能な実施例において、この真空のゆらぎ量子乱数発生器チップは、レーザ(2)の温度を制御するための半導体冷却器(5)をさらに有し、レーザ(2)の出射光の安定性及びレーザ(2)の使用寿命を保証する。具体的には、半導体冷却器(5)は、ヒートシンク基板(1)の第1の端に固定され、レーザ(2)は半導体冷却器(5)に固定されている。
【0025】
一つの選択可能な実施例において、真空のゆらぎ量子乱数発生器チップは、レーザ(2)の光出口とビームスプリッタ(3)の光路入口との間に配置されたレンズ(6)をさらに有し、レーザ(2)から発せられた光ビームをビームスプリッタ(3)の光路入口に集光させて光結合効率を向上させるために用いられる。具体的には、レンズ(6)とレーザ(2)は、ともに半導体冷却器(5)に設けられているが、ヒートシンク基板(1)に直接設けられていてもよい。
【0026】
本開示の技術案において、ビームスプリッタ(3)は、1分岐多光路のスプリッタであってもよいし、N分岐多光路のスプリッタであってもよく、Nは1より大きい自然数である。
【0027】
一つの典型的な実施例において、ビームスプリッタ(3)は、1つの光路入口と2つの光路出口とを有するY導波路ビームスプリッタ、例えばPLC光導波路ビームスプリッタを選択する。これに対応して、この真空のゆらぎ量子乱数発生器チップは、それぞれ、ビームスプリッタ(3)の2つの光路出口に配置される2つの光電検出器(4)を備えている。レーザ(2)から発せられたレーザ光はビームスプリッタ(3)の光路入口から入射し、2つの光路に分けられてから2つの光路出口からそれぞれ2つの光電検出器(4)に出射される。例示的に、前記ビームスプリッタ(3)は、等比例ビームスプリッタであってもよく、即ち、分光比率が50%:50%であってもよく、非等比例ビームスプリッタであってもよく、例えば、分光比率が40%:60%であってもよい。
【0028】
一つの具体的な実施例において、ビームスプリッタ(3)の出射端は、角度が90°より小さい斜面構造である。各分岐光は、この斜面で反射された後、光線方向が回転されて、光電検出器(4)に照射される。他の実施例において、ビームスプリッタ(3)の出射端は、出射光線が光電検出器(4)によって正確に受光されることを保証する限り、他の角度の傾斜構造又は垂直平面構造であってもよい。
【0029】
本開示の真空のゆらぎ量子乱数発生器チップは、光子集積技術を採用し、レーザ(2)、ビームスプリッタ(3)及び光電検出器(4)をいずれもヒートシンク基板(1)に集積し、光学チップレーザ()と導波路素子ビームスプリッタ(3)を結合し、集積接続することで、光ファイバによる接続が不要となるだけでなく、集積後に全体としてパッケージされたチップは、小型化、軽量化で、ピンの規格が統一されており、そのまま機器を用いてプリント基板にボンディングすることができ、製品の耐用性及び使用容易性を大幅に向上させる。
【0030】
本開示の実施例における光子集積技術に基づく真空のゆらぎ量子乱数発生器チップは、以下の利点を達成することができる。
【0031】
本開示は、光子集積技術を採用し、レーザ、ビームスプリッタ及び光電検出器を結合した後、ヒートシンク基板に固定してパッケージを行い、製品体積を大幅に縮小し、光ファイバの応用及び光ファイバ自体の性能による弊害を低減し、製品性能及び耐用寿命を向上させる。また、パッケージング後の製品はピンの規格が統一されており、そのまま機器を用いてプリント基板にボンディングすることができる。
【0032】
本明細書において、表現用語の「含む」、「含有する」、またはそれらの任意の他の変形形態は、非排他的な包含をカバーすることが意図されて、一連の要素を含む物品または設備は、それらの要素だけでなく、明示的に列挙されていない他の要素も含み、またはそのような物品または設備の固有の要素も含むようになる。「……を含む」という表現によって定義される要素は、これ以上限定しない場合、追加の同一の要素が、前記要素を含む物品又は設備中にさらに存在することを除外しない。
【0033】
本開示の他の実施形態は、明細書を考慮し、本明細書に開示される内容を実践する当業者に容易に想起される。本願は、本開示の一般原理に従い、本開示に開示されていない当技術分野における通常の知識又は従来の技術手段を含む、本開示のあらゆる変形、使用、又は適応的変更を包含することが意図される。本明細書および実施例は、単に例示としてみなされるものであり、本開示の真の範囲および精神は、以下の特許請求の範囲によって規定される。
【0034】
本開示は、上記で説明され、添付の図面に示された厳密な構造に限定されず、その範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更がなされ得ることを理解されたい。本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本開示は、光子集積技術を採用し、レーザ、ビームスプリッタ及び光電検出器を結合した後、ヒートシンク基板に固定してパッケージを行い、製品体積を大幅に縮小し、光ファイバの応用及び光ファイバ自体の性能による弊害を低減し、製品性能及び耐用寿命を向上させる光子集積技術に基づく真空のゆらぎ量子乱数発生器チップを提供する。また、パッケージング後の製品はピンの規格が統一されており、そのまま機器を用いてプリント基板にボンディングすることができる。
【国際調査報告】