(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-21
(54)【発明の名称】生体外細胞培養による食肉生産方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/07 20100101AFI20230214BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20230214BHJP
【FI】
C12N5/07
C12N15/113 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558364
(86)(22)【出願日】2020-07-28
(85)【翻訳文提出日】2022-08-01
(86)【国際出願番号】 IB2020057119
(87)【国際公開番号】W WO2021111196
(87)【国際公開日】2021-06-10
(32)【優先日】2019-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522217821
【氏名又は名称】アヴァント ミーツ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AVANT MEATS COMPANY LIMITED
【住所又は居所原語表記】11 Science Park West Avenue Unit 620,6/F,Biotech Centre 2,Building 11 W Hong Kong(CN)
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】チン,ポ サン マリオ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,カイ イー キャリー
(72)【発明者】
【氏名】プーン,チュン ヘイ
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC20
(57)【要約】
【課題】生体外細胞培養による食肉生産の方法を提供する。
【課題を解決するための手段】生体外細胞培養による食肉生産の方法であって、動物又は植物を供給源として組織を分離し、細胞から細胞懸濁液を作り、タンパク質の発現を規制する一つ以上のマイクロRNAのレベルを変えることによって、分離された細胞におけるタンパク質の発現を増やし、培養基における食品グレードの骨組上で細胞を育てて、細胞を、動物の臓器を模した固体又は半個体の構造物へと成長させるステップを備える方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体外細胞培養による食肉生産の方法であって、
動物又は植物を供給源として組織を分離し、細胞から細胞懸濁液を作り、
タンパク質の発現を規制する一つ以上のマイクロRNAのレベルを変えることによって、分離された細胞におけるタンパク質の発現を増やし、
培養基における食品グレードの骨組上で細胞を育てて、細胞を、動物の臓器を模した固体又は半個体の構造物へと成長させる
ステップを備える方法。
【請求項2】
組織を分離するステップが、魚介から臓器組織を分離するステップを備える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
臓器組織が、硬骨魚鋼の魚の浮き袋から得られている請求項2に記載の方法。
【請求項4】
タンパク質がコラーゲンIである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
マイクロRNAが、マイクロRNA21 (miR-21)、マイクロRNA133 (miR 133)インヒビター又はそれらの組み合わせである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
生体外細胞培養による食肉生産の方法であって、
動物又は植物を供給源として組織を分離し、細胞から細胞懸濁液を作り、
培養基における食品グレードの骨組上で細胞を育てて、細胞を、動物の臓器を模した固体又は半個体の構造物へと成長させ、
前記細胞を、栄養素、成長因子、及び細胞の成長をサポートするサイトカインを分泌する生体工学的に作り出された細胞と同時培養する
ステップを備える方法。
【請求項7】
組織を分離するステップが、魚介から臓器組織を分離するステップを備える請求項6に記載の方法。
【請求項8】
臓器組織が、硬骨魚鋼の魚の浮き袋から得られている請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体外細胞培養を用いての改良した食肉生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
動物の肉は、タンパク質が豊富で、身体機能のサポートに用いられるタンパク質を作るために必要なすべてのアミノ酸の供給源となる。消費される食肉は、伝統的には、養殖場で飼われる動物や魚から得られる。しかしながら、動物の肉を生産する畜産業や水生動物養殖業では、大量のエネルギーと資源が必要であり、カーボンフットプリントも高くなる。畜産業や水生動物養殖業で生産された食肉は、生産プロセスにおいて、病気や汚染源や毒素に露呈されるかもしれないので、そのような食肉では、人々の健康が危険にさらされかねない。人口増加、食肉需要の高まり、環境問題、陸地や水域の限りある資源、生物多様性の損失及び動物の屠殺に関しての否定的な見方と言った多くの懸念があって、科学者が、代替のプロセスで食肉を生産する技法を開発する運びとなった。
【0003】
生体外食肉生産は、細胞培養技法を用いて、実験室で、動物の筋肉組織又は臓器組織を成長させて食肉及び食肉製品を製造するプロセスである。ここで用いられている通り、生体外食肉及び食肉製品には、可溶な形態や固形であったりする動物タンパク製品ならびに非食肉製品が含まれる。まだ開発の初期段階ではあるが、生体外食肉及び食肉製品には、健康及び環境上の利点及び動物の繁栄にとっての利益と言った、伝統的な食肉製品に無い数多くの利点がある。それは、細胞畜産業又は細胞培養での畜産製品の生産と言う、より広い分野の一部として運用される次世代の新興の技術である。
【0004】
生体外食肉の生産のための細胞は、動物バイオプシーから取られる細胞(例えば、筋肉細胞、体細胞、幹細胞など)であり、そして、それは、バイオリアクター又はその他の種類の無菌環境における培養基(培地)で、動物から分離されて育てられる。その細胞は、バイオリアクターに置かれる三次元の可食の骨組に付着することで、動物臓器を模した半固形又は固形へと成長する。出発細胞は、動物組織又は連続細胞株から直接得られる一次細胞である。適切な培養基において正しい条件で育てられたら、一次細胞は、成長して増殖するが、細胞のDNAの端におけるテロメア長に関連する有限の回数だけである。他方、連続細胞株は、生体外で、長期間培養できる。細胞生物学の研究によって、一次細胞を如何にして不死の連続細胞株に変えるのかについて手順が確立されている。ウイルス性癌遺伝子、化学処理、又は、テロメアが縮むのを防ぐためのテロメラーゼ逆転写酵素の過剰発現を用いて、一次細胞は、連続細胞株へと形質転換される。
【0005】
培養基は、アミノ酸、塩、ビタミン、成長因子、及びpHを制御するための緩衝システムといった細胞の増殖に必要な成分を含む。牛胎児血清(FBS)によって、生体巨大分子、成長因子、及び免疫分子が供給されるので、現在の方法では、FBSを、使用に先立って培養基に加える。しかしながら、FBSは、胎内の仔牛から得られるので、動物製品は使わないと言う目的と折りが合わない。動物成分を含まない培養基で細胞を育てると言うのが、生体外食肉生産の研究に従事する科学者が考える重要な要素である。成長因子には、ヒトを供給源として得られるものもある。
【0006】
現在の生体外食肉生産は、細胞ベースのビーフ、ポーク及び家禽肉といった商品肉は、大抵の種類をカバーしている。しかしながら、これらの種類の食肉は、現在の生物医学技術の技法を用いて生産するのが困難であって費用もかさむ複数の細胞腫を含む複雑な組織の有機体を有する。細胞培養技法で生産される食肉においてタンパク質レベルとバイオマス産出高を上げるための非GM(非遺伝子組み換え)方法もまた欠如している。更には、上述の通り、現在の細胞培養技術は、栄養源としての動物成分(例えば、FBS)並びに高価な非食品グレードの成長因子に依存している。
【0007】
本発明の開示の例は、前記課題を解決する、ヒトが消費する生体外食肉の生産方法に適用される方法を提供する。
【発明の概要】
【0008】
本発明の開示の一つの例によると、生体外細胞培養による食肉生産の方法には、動物又は植物を供給源として組織を分離し、細胞から細胞懸濁液を作るステップが含まれる。その方法には更に、培養基における食品グレードの骨組上で細胞を育てて、細胞を、動物の臓器を模した固体又は半個体の構造物へと成長させるステップが含まれる。
加えて、その方法には更に、タンパク質の発現を規制する一つ以上のマイクロRNAのレベルを変えることによって、成長している細胞におけるタンパク質の発現を増やすステップも含まれる。
【0009】
本発明の開示の他の例によると、生体外細胞培養による食肉生産の方法には、植物又は動物を供給源として組織を分離し、細胞から細胞懸濁液を作り、かつ培養基における食品グレードの骨組上で細胞を育てて、細胞を、動物の臓器を模した固体又は半個体の構造物へと成長させるステップが含まれる。その方法には更に、前記細胞を、栄養素、成長因子、及び細胞の成長をサポートするサイトカインを分泌する生体工学的に作り出された細胞と同時培養するステップが含まれる。
【0010】
ここに開示される例は、上記課題を解決する、ヒトが消費する生体外食肉の生産方法に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面の簡単な説明を以下に記載する。
【0012】
添付した図面を関連させて考慮すると、本開示は、詳細な説明を参照することで、よりよく理解される。図面中の構成要素は、必ずしも一定の尺度に応じておらず、むしろ、開示の本質を例証することに重点が置かれている。
【0013】
【
図1】
図1は、本開示の一つの例による、生体外細胞培養による食肉生産の方法のフローチャートである。
【0014】
【
図2】
図2は、本開示の一つの例による、タンパク質発現の転写後増強の方法を概略的に描写する図である。
【0015】
【
図3】
図3は、本開示の一つの例による、コラーゲン、タイプ1、アルファ1(COL1A1) 発現の転写後増強の方法を概略的に描写する図である。
【0016】
【
図4】
図4は、本開示の一つの例による、コラーゲン、タイプ1、アルファ2(COL1A2) 発現の転写後増強の方法を概略的に描写する図である。
【0017】
【
図5】
図5は、本開示の一つの例による、固相サポートを有する生体外食肉生産に用いられるバイオリアクターの概略的又は概念上の断面図である。
【0018】
【
図6】
図6は、本開示の一つの例による、
図5に類似するが第二の固相を有するバイオリアクターの概略的又は概念上の断面図である。
【0019】
【
図7】
図7は、一つの例による、陰性対照miRNA、miRNA 132インヒビター(miR-132インヒビター)、miRNA 133 (miR-133インヒビター)、及びmiRNA 21ミミック(miR-21ミミック)によるトランスフェクション24時間後のYCB細胞におけるCOL1A1のmRNA発現に関するデータを描写するグラフである。
【0020】
【
図8】
図8は、一つの例による、陰性対照miRNA、miR-132インヒビター、miR-133インヒビター、及びmiR-21ミミックによるトランスフェクション24時間後のYCB細胞におけるCOL1A2のmRNA発現に関するデータを描写するグラフである。
【0021】
【
図9A】
図9Aは、miR-21ミミックによるトランスフェクション72時間後のYCB細胞におけるCOL1A1の発現のクロマトグラムである。
【
図9B】
図9Bは、一つの例による、miR-21ミミックによるトランスフェクション72時間後のYCB細胞におけるCOL1A1の発現に関するデータを描写するグラフである。
【0022】
【
図10A】
図10Aは、陰性対照miRNA、miR-21ミミック、miR-132インヒビター、及びmiR-133インヒビターによるトランスフェクション72時間後のYCB細胞におけるCTGFの発現のクロマトグラムである。
【
図10B】
図10Bは、一つの例による、陰性対照miRNA、miR-21ミミック、miR-132インヒビター、及びmiR-133インヒビターによるトランスフェクション72時間後のYCB細胞におけるCTGFの発現に関するデータを描写するグラフである。
【0023】
【
図11】
図11は、一つの例による、陰性対照miRNA及びmiR-21ミミック、*p<0.05対対照miRNAによるトランスフェクション24時間後の293個の細胞におけるCOL1A1のmRNA発現を描写するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
次に図面を参照し、とりわけ、
図1を参照すると、生体外食肉生産の方法10が示されている。ここで用いられている通り、「生体外食肉生産」とは、細胞培養技法を用いて動物及び/又は植物の組織を実験室で育て、食肉及び食肉製品を製造する、細胞ベースの食肉生産プロセス又は細胞ベースの畜産プロセスのことを指して言うものである。ブロック12で、動物又は植物から組織が分離される。一つの例において、その組織は、ハタ、スズキ、又はニベと言った海水魚を含む硬骨魚綱の硬骨魚から得られる。他の例においては、牛組織のような他の種類の動物組織が分離される。例によっては、ブロック12には、魚から浮き袋のような臓器組織を収集して細胞懸濁液を作ることが含まれる。以下の説明では、魚を供給源として得られる組織が主に記述されているが、この概念を、他の種類の動物及び/又は植物を供給源として得られる組織に適用して、他の種類の生体外食肉及び/又は動物タンパク質製品、及び菜食主義者用食肉及び/又はタンパク質製品が提供されるようにしても良いことは理解されるものである。
【0025】
分離される細胞の多くは成体細胞で、医療研究において確立された種々の方法を継続的に用いて増殖させることが可能である(ブロック14)。例えば、山中因子のような特定の遺伝子を用いて、成体細胞を人工多能性幹細胞(iPS細胞)のような幹細胞へとプログラムし直してもよい。代わりに、分離された成体細胞を、テロメラーゼ逆転写酵素過剰発現によって連続株細胞へと変換しても良い。他の例においては、他の種類の細胞が、成体幹細胞や胚性幹細胞のように分離されても良い。この点について、本発明の開示の方法には、あらゆる株細胞が供給源として含まれる。
【0026】
次のブロック16では、バイオリアクターのような無菌室又は無菌容器において、食品グレードの生体適合骨組に付着/固着することによって、細胞が、魚臓器のような動物臓器を模した固体又は半固体構造体へと成長する。無菌室又は無菌容器は、温度制御され、化学薬品、栄養素、及び細胞のような物質を導入して取り除くための導入口と排出口を有していて良い。食品グレードの生体適合骨組は、最終可食製品の一部となり、アガロース、アルジネート、キトサン、菌糸体、及びコンニャクグルコマンナンと言った植物ベース又は菌類ベースの材料で作られる。ただし、材料が、それらに限定される訳では無い。アルジネートは、褐藻から自然に得られるバイオポリマーであって、生体適合性がある。加えて、菌類から得られる植物ベースのキトサンは、抗菌性を有する。例によっては、無菌容器において、抗生剤や抗菌化合物の無いままブロック16が行われる。ブロック18は、細胞の生存と成長をサポートするための、培養基のバイオリアクターへの供給を含む。培養基は、無機塩(例えば、塩化カルシウム(CaCl2)、塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、硫酸マグネシウム(MgSO4)、等々)、アミノ酸、ビタミン(例えば、チアミン、リボフラビン、葉酸、等々)と言った成分、及びグルコース、β-メルカプトエタノール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びピルビン酸ナトリウムと言ったその他の成分を含む緩衝溶液であって良い。ただし、成分が、それらに限定される訳では無い。限定されない成長培地には、例として、ライボビッツL-15培地、イーグル最小必須培地(MEM)、培地199、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、ハムF12培地、ハムF10培地、マッコイ5A培地、グラスゴー改変イーグル培地(GMEM)、イスコヴ改変ダルベッコ培地、及びRPMI 1640が含まれるが、それらに限定される訳ではない。
【0027】
ブロック20によると、食品グレードの成長因子及びサイトカインが、バイオリアクターの培養基に導入されて、細胞の成長と増殖をサポートする。成長因子及びサイトカインには、インシュリン成長因子1(IGF-1)、インシュリン、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン6受容体(IL-6R)、インターロイキン11(IL-11)、線維芽細胞成長因子(FGF)、表皮成長因子(EGF)、及びトランスフェリンが含まれるが、それらに限定される訳ではない。ブロック20は、牛胎児血清(FBS)無しでの、生体工学的に作り出された細胞の、分離された細胞との同時培養を含む。生体工学的に作り出された細胞は、前記成長因子とサイトカインを分泌するように作り出されており、これらの生体分子を、分離された細胞に、成長と増殖に必要なだけ供給する。ここで用いられている通り、「生体工学的に作り出された」細胞は、遺伝子組換え細胞と同等ではない。生体工学的に作り出された細胞は、一つ以上の特定のタンパク質を過剰発現する特定の遺伝子を有する。生体工学的に作り出された細胞は、魚の細胞又は、牛の細胞と言った、他の種類の動物の細胞であって良い。生体工学的に作り出された細胞は、最終食肉製品には含まれない。限定されない例として、生体工学的に作り出された魚の細胞が、分離された魚の細胞と同時培養されても良く、あるいは、生体工学的に作り出された牛の細胞が、分離された牛の細胞と同時培養されても良い。本発明の開示の同時培養方法によると、培養基において、動物由来である牛胎児血清(FBS)が必要で無くなる。更には、その同時培養方法によって、食品グレードの、特定の成長因子とサイトカインが、成長する細胞に本来の位置で継続的に供給され、製造プロセスが簡素化され、その費用が低減される。しかしながら、他の例においては、ブロック16では、細胞の成長をサポートするために、FBS、その他の血清、又は組換え供給源からのタンパク質を用いて、成長因子、サイトカイン、及びその他の栄養素を供給しても良い。
【0028】
加えて、ブロック22によると、細胞中のタンパク質発現が増大して、結果として得られる食肉製品のバイオマス産出高が増大する。ここで用いられている通り、「バイオマス産出高」は、結果として得られる食肉製品において、消費の際にエネルギーの産出に利用可能な消化できる材料(例えば、タンパク質)の量のことを言う。更に具体的には、ブロック22は、培養に先立って細胞の操作を行うことで、細胞におけるマイクロRNAレベルを変えてタンパク質発現を増大させることに関する。マイクロRNAは、転写後遺伝子発現の規制に関係する、内因性の、短い、非符号化単一撚線RNAシーケンスである。ブロック22は、メッセンジャーRNA(mRNA)翻訳を促進することによってタンパク質発現を増大させるマイクロRNAの上方制御の量を増やすこと、及び/又はmRNA翻訳を抑制することによってタンパク質発現を低減するマイクロRNAの下方制御の量を減らすことに関する。マイクロRNAレベルは、マイクロRNA、マイクロRNAミミック、又はマイクロRNAインヒビターを細胞に導入することによって、増やされたり減らされたりする。マイクロRNAミミックは、マイクロRNAと同じ機能を有するが、タンパク質発現を変える上で、より安定していてより効率的である。例によっては、エレクトロポレーションを用いて、特定のマイクロRNAを発現する命令を伝える細胞にエピソーマルベクターを導入する。代わりに、あるいはこれと組み合わせて、特定のマイクロRNAを発現するエピソーマル命令を伝える媒体としてアデノ随伴ウイルスを用いる。ターゲットとしたマイクロRNAの下方制御の量の低減は、ターゲットとしたマイクロRNAのインヒビターをトランスフェクションで細胞に導入することによって達成される。ここで、本開示による、タンパク質発現/バイオマス産出量を増大する方法は、細胞のゲノムを変えずに実施されることに注意する。
【0029】
図2には、細胞株のタンパク質発現を転写後に高める方法が、概略的に描写されている。一つ以上の上方制御マイクロRNA(miRNA)を増大させて、mRNA翻訳と選択されたタンパク質のタンパク質生産を増やす。代わりに、又はこれと組み合わせて、一つ以上の下方制御miRNAをインヒビター(anti-miRNA)でブロックしてmRNA翻訳と選択されたタンパク質のタンパク質生産を増やしても良い。
【0030】
魚の浮き袋は、主には、線維芽細胞とコラーゲンタンパク質を含んでいる。コラーゲンタイプ1(コラーゲンI)が、魚の浮き袋において主要なタンパク質であり、培養された魚の浮き袋細胞においてコラーゲンIの発現を増大させると、バイオマス産出量が増える。魚の浮き袋細胞におけるコラーゲンIには、コラーゲン、タイプ1、アルファ1(COL1A1)とコラーゲン、タイプ1、アルファ2(COL1A2)とが含まれている。miR-21のレベルが増大すると魚の浮き袋細胞におけるCOL1A1とCOL1A2の生産が増えると言うように、COL1A1とCOL1A2の発現は、上方制御miRNA 21 (miR-21) によって増やされる。加えて、miR-133のレベルを低下させるかmiR-133の作用をブロックするかすると、魚の浮き袋細胞におけるCOL1A1とCOL1A2の生産が増えると言うように、COL1A1とCOL1A2の発現は、下方制御miRNA 133 (miR-133) によって減らされる。
図3及び
図4には、miR-21のレベルを上げることによる、及び、インヒビター(anti-miR 133)を用いてmiR-133の作用をブロックすることによる、COL1A1(
図3)とCOL1A2(
図4)の生産の増加が示されている。COL1A1とCOL1A2の生産が増えた結果、結果として得られる食肉製品におけるバイオマス産出高が増える。同様の戦略を適用して、他の種類の動物細胞においても関係するタンパク質のレベルが上げられる。
【0031】
図5には、分離した細胞の培養に用いるのに適例のバイオリアクター30が示されている。バイオリアクター30における無菌室36に保持されている食品グレードの骨組34に備えられる固相サポート32に、細胞が付着して成長する。骨組34は、食肉製品の形を規定する。食品グレードの骨組34は、アガロース、アルジネート、キトサン、菌糸体、及びコンニャクグルコマンナンと言った植物ベース又は菌類ベースの材料で作られる。ただし、材料が、それらに限定される訳では無い。細胞が、固相サポート32の内側表面に付着して成長するように、サポート32は多孔質である。細胞に栄養素を供給する培養基が、導入口38からバイオリアクター30へと導入され、排出口40からバイオリアクター30の外に取り出される。
【0032】
図6には、
図5のバイオリアクター30に類似するが、細かいメッシュ54で固相サポート32から分離される第二の固相52を更に含むバイオリアクター50が示されている。第二の固相52は、本来の位置である固相サポート32上で成長する細胞に、栄養素、成長因子、及びサイトカインを分泌する、生体工学的に作り出された細胞を包含するかサポートし、固相サポート32上の細胞から生体工学的に作り出された細胞を物理的に分離している。第二の固相52は、固相サポート32に類似する植物ベースの材料から作られる。メッシュ54は、栄養素、成長因子、及びサイトカインを透過させるが、細胞は透過させない。
図6のバイオリアクター50は、生体工学的に作り出された細胞の、成長する細胞との同時培養を可能にする。例によっては、
図5及び
図6のバイオリアクター30及び50を縦に並べているものもある。他の例においては、プロセスの規模を拡大するために、バイオリアクター30が数台、バイオリアクター50が数台、又は、バイオリアクター30及び50が混合して、直列に並べられている。バイオリアクター30は、主に、バイオマス生産に用いられ、一方、バイオリアクター50は、成長する細胞に、栄養素、成長因子、及びサイトカインを提供するのに用いられる。
【0033】
本発明の開示の生体外食肉生産方法は、一細胞タイプの単純組織有機体を備える食肉製品を提供する。一細胞タイプの食肉製品は、複数細胞タイプを有する他の培養食肉と比べて、作ったり、発育させたり、商品化するのが容易である。本発明の開示の他の例は、複数細胞タイプの食肉製品を提供する。更には、出願人は、成長する細胞におけるマイクロRNAのレベル又は活性を変えることによって、バイオマス/タンパク質生産を増やす戦略を発見している。一例において、魚の浮き袋細胞に見出される主要なタンパク質(コラーゲンI)のレベルを増大させるのに、鍵となる二つのマイクロRNA(miR-21及びmiR-133)をターゲットとする。出願人が知る限りでは、培養食肉製品のタンパク質/バイオマス産出高の増大を達成するために、マイクロRNAレベル又は活性を変えることは、培養食肉の発育の分野において他の人が使ったことのないものである。タンパク質生産を増大させるためにマイクロRNAをターゲットとすることによって、既知のノックイン又はノックアウト方法よりも細胞へのストレスが引き起こされなくなる。生体工学的に作り出された細胞は、成長する動物細胞と同時培養され、成長する魚細胞に、本来の位置(in situ)での細胞成長と増殖のための食品グレードの成長因子とサイトカインを供給し、培養基における動物由来のFBSの必要性を低減又は削除する。同時培養技法によって、生産プロセスが簡素化され、生産費が低減される。
【0034】
更には、培養された食肉製品の栄養素をカスタマイズして、より健康的な食料製品を生成しても良い。例えば、培養された食肉製品を、栄養士からのダイエット勧告又は当人のゲノム試験に従ってカスタマイズしても良い。食肉製品における、高密度コレステロール、多価不飽和脂肪酸、及び一不飽和脂肪酸と言った健康的な栄養素を、細胞を特定の条件で培養することによって濃縮しても良い。代わりに、又はこれとの組み合わせにおいて、低密度コレステロールや飽和脂肪酸と言った健康を損なうことが知られている栄養素を、細胞を特定の条件で培養することによって低減しても良い。ビタミンやミネラルと言った微量栄養素もまた、強化されても良い。培養された食肉製品の栄養素のカスタマイズは、1) 細胞培養の間に成長する細胞に与えられる栄養素を調整する、及び/又は、2) 積層する骨組の、異なる細胞との比率を制御すると言った様々なやり方で達成される。ただし、そのやり方が、それらに限定されるものではない。
【0035】
培養食料製品は、清潔、無菌かつ高度に制御されたプロセスの元で生産される。そうして、食料製品における栄養素の、細菌や菌類と言った微生物による望ましくない劣化を最小限のものとする。微生物が栄養素を分解することによる望ましくない風味や臭いもまた最小限のものとされる。この特性によって、培養食品の、料理での新しい使い方が可能となり、新しいレシピを作り出すのに役立つ。培養食品を、そのように適用した一例が、魚の浮き袋から得られる魚の培養食道である。伝統的な魚の食道には、生産プロセスにおいて細菌がアミンを分解するために、望ましくない魚臭い風味と匂いがある。この望ましくない特性のために、食品の材料としては、熱いか温かいまま出されて風味のある料理に限定される。細胞培養技法で生産される魚の培養食道は、望ましくない魚臭さや匂いがない。熱くて風味のある料理に加え、魚の培養食道は、デザートとして、あるいは、冷やして又は環境温度で直ぐに食べられる形で出される甘い料理にも用いることができる。
【0036】
例1
miRNAミミックとインヒビターを用いるタンパク質の改良された発現
一つの例による例では、miRNAとインヒビターを用いてコラーゲンIα1 (COL1A1) とコラーゲンIα2 (COL1A2)の発現を改良する戦略を説明する。
【0037】
ここで用いられている通り、「インヒビター」と言う語は、miRNAインヒビターを指しており、小さな、一本鎖RNA分子で、とりわけ内因性のmiRNA分子に結び付いてこれを抑制し、miRNA活性の下方制御によってmiRNA機能分析を可能とするようデザインされている。
【0038】
材料と方法
【0039】
試薬
【0040】
サーモフィッシャーサイエンティフィック社から以下の試薬を得た。Glutamax(登録商標)を含むDMEM/F12、牛胎児血清(FBS)、トリプシン/EDTA、Lipofectamine(登録商標)3000、陰性対照miRNA(mirVana(登録商標)、miRNAミミック、陰性対照#1; サーモフィッシャーサイエンティフィック、カタログ番号#4464058)、miRNA21ミミック(miRBase受諾番号:MI0033728; SEQ ID NO: 1; miR-21ミミック)、miRNA132インヒビター(miRBase受諾番号:MI0000449; SEQ ID NO: 2; miR-132インヒビター)、miRNA133インヒビター(miRBase受諾番号:MI0000822; SEQ ID NO: 3; miR-133インヒビター)、RNAlater(登録商標)溶液、Purelink(登録商標)RNAミニキット、Purelink(登録商標)DNaseセット、及びPowerUp(登録商標)SYBR(登録商標)Green Mastermix。M-MuLVRT(RNase H-)cDNA合成キットは、ExCell Bioから購入した。
【0041】
ここで用いられている通り、「miRNA21ミミック」は、「miRNA21」と同じRNAシーケンスを有する。
【0042】
細胞
【0043】
ニベ浮き袋(YCB)細胞株を社内で発育させた。ATCCから293個の細胞が得られた。加湿された培養器(約2-10% CO2、好ましくは5% CO2;約90-98%空気、好ましくは95%空気;約24-37℃、好ましくは34℃)の内部で完全培地において双方の細胞株が維持された(DMEM/F12、約2-20% FBS、好ましくは10% FBS)。それらは、1 : 2から1 : 10という分割比において、決まった手順で二次培養された。分割比は、好ましくは1 : 4である。
【0044】
トランフェクション
【0045】
製造業社(サーモフィッシャーサイエンティフィック)のプロトコールに従って、細胞は、Lipofectamine(登録商標)3000を含む陰性対照miRNA、miR-21ミミック、miR-132インヒビター、miR-133インヒビターによってトランスフェクトされた。細胞は、(細胞コンフルエンシー~80%の時)トリプシン-EDTAによって分離された。それらは、約0.2-1.0 ml、好ましくは0.5 ml完全培地に、約1-10×105/24ウェル、好ましくは、約5×105/24ウェル(YCB細胞)、又は約1-10×105/24ウェル、好ましくは、約6.5××105/24ウェル(293細胞)で接種された。直後に、約50-300μl、好ましくは、約100μlのDMEM/F12において、約0.01-0.10 nmol、好ましくは、約0.06 nmol、miRNAが、約0.5-5μl、好ましくは、約1.5μlのLipofectamine(登録商標)3000試薬と混ぜられた。その混合物を、錯体形成のために、約5-30分間、好ましくは、約10分間、室温(約20℃-26℃、好ましくは、約24℃)で培養し、ウェルの異なる領域に滴状で加えて、50-300μM、好ましくは、100μMと言う最終miRNA濃度を達成した。
【0046】
全RNA抽出及び逆転写
【0047】
トランスフェクション後、約18-36時間、好ましくは約24時間で、培地を取り出し、ウェルにRNAlater(登録商標)溶液を加えて、RNAを保存し、プレートを約4-10℃で、好ましくは約4℃で、蓄積した。全RNAを抽出するために、RNAlater(登録商標)溶液を取り除いて、製造業社(サーモフィッシャーサイエンティフィック)のプロトコールに基づいて、Purelink(登録商標)RNAミニキットでRNAを洗浄した。Purelink(登録商標)DNaseセットによって、オンカラムDNase処置を行なった。サンプルにおけるRNAの濃度は、Nanodrop(登録商標)2000cで測定した。製造業社(Excell Bio)のプロトコールに従って、M-MuLVRT(RNase H-)cDNA合成キットとオリゴdTプライマーを用い、約0.5-5μgのRNA、好ましくは、約2μgのRNA(293細胞)又は約0.5μgのRNA (YCB細胞)をcDNAに逆転写した。
【0048】
リアルタイムPCR
【0049】
COL1A1とCOL1A2の発現をロシュLC480リアルタイムPCRシステム(ロシュ・ダイアグノスティックス)で分析した。cDNAサンプルを、約0.1-0.8μM、好ましくは、約0.4μMの遺伝子特異的プライマー(表1)及びPowerUp(登録商標)SYBR(登録商標)Green Mastermixと混ぜた。増幅プロトコールは、以下の通りである:(a) 約1-10分間約45-55℃で、好ましくは、約2分間約50℃で;(b) 約1-5分間約90-98℃で、好ましくは、約2分間約95℃で;(c) 約35-45サイクル、好ましくは、40サイクル(各サイクルには、以下のステップが含まれる:(i) 約10-30秒間約90-98℃で、好ましくは、15秒間95℃で;(ii) 約10-30秒間約50-60℃で、好ましくは、15秒間55℃で;(iii) 約15-60秒間約66-74℃で、好ましくは、30秒間72℃で;(iv)融解曲線分析(以下のステップを含む:(1) 約10-30秒間約90-98℃で、好ましくは、約15秒間約95℃で;(2) 約0.5-3分間約55-65℃で、好ましくは、約1分間約60℃で;(3)傾斜率:約90-98℃に到達するまで約0.05-0.3℃/s、好ましくは、約95℃に到達するまで約0.15℃/秒;及び(4)傾斜が付いている間信号を捕獲する)。PCRの妥当性は、以下によって確かめた:(a) 融解曲線分析後に単一ピークを示すアンプリコン、(b)ゲル電気泳動法による分析の後、PCR製品が観察されたときの正しいサイズの単一バンド、(c)増幅効率=約90-110%;エラー<約0.01-0.1。各サンプルにおけるターゲット遺伝子発現は、Pfaffl法によって決定され、ハウスキーピング遺伝子EF1αの発現によって正規化された。サンプルBに対しての、相対的なサンプルAにおける遺伝子の発現は、等式(1)によって決定される。
【0050】
【0051】
【0052】
統計分析
全ての結果は、平均±SEMとして表されている。グラフパッドプリズム5.0で統計分析を行なった。YCB細胞の遺伝子発現データについて、データは、一元配置分散分析(one-way ANOVA)で分析し、重要であるならば、続けて、テューキーの事後検定を行った。293個の細胞のデータについては、スチューデントのt検定でデータを分析した。結果は、p<0.05であるならば、統計的に異なると考えられるものであった。
【0053】
結果
この例において、我々は、YCB細胞を、陰性対照miRNA、miR-21ミミック、miR-132インヒビター、又はmiR-133インヒビターでトランスフェクトした。そして、トランスフェクション24時間後に、異なる二つのタイプのコラーゲン、COL1A1及びCOL1A2のmRNA発現をqPCRで数量化した。我々は、陰性対照miRNAによるトランスフェクションと比較して、miR-21ミミック又はmiR-133インヒビターによるトランスフェクションが、COL1A1(
図7)及びCOL1A2(
図8)mRNA発現を増大させることを見出した。
【0054】
図7に示される通り、miR-21ミミック及びmiR-133インヒビターによるトランスフェクション24時間後では、COL1A1のmRNA発現は、それぞれ、対照の約1.5倍及び対照の約1.5倍であった。COL1A1のmRNA発現は、陰性対照miRNA及びmiR-132インヒビターによるトランスフェクション約24時間後では、それぞれ、対照の約1倍及び対照の約1倍であった。
【0055】
図8に示される通り、miR-21ミミック及びmiR-133インヒビターによるトランスフェクション24時間後では、COL1A2のmRNA発現は、それぞれ、対照の約1.4倍及び対照の約1.4倍であった。COL1A2のmRNA発現は、陰性対照miRNA及びmiR-132インヒビターによるトランスフェクション約24時間後では、それぞれ、対照の約1倍及び対照の約0.9倍であった。
【0056】
従って、miR-21ミミック/miR-21又はmiR-133インヒビターのトランスフェクションは、YCB細胞におけるコラーゲンmRNA発現を増大させたことが示されている。
【0057】
次に、
図9A及び
図9Bによると、miR-21ミミックによるトランスフェクション約72時間後では、COL1A1のタンパク質発現が増大され、COL1A1のタンパク質発現は、約1.2相対発現であった。陰性対照miRNAによるトランスフェクション約72時間後では、COL1A1の発現は、約1相対発現であった。
【0058】
次に、
図10A及び
図10Bによると、miR-21ミミック及びmiR-132インヒビターによるトランスフェクション約72時間後では、CTGFのタンパク質発現が増大され、COL1A1の発現は、それぞれ、約1.4及び約1.6相対発現であった。陰性対照miRNA及びmiR-133インヒビターによるトランスフェクション約72時間後では、CTGFの発現は、約1相対発現及び約1相対発現であった。
【0059】
この例によって、miRNAは、魚の浮き袋細胞(例えば、YCB細胞)においてコラーゲン発現を制御できることが示されている。
【0060】
miR-21ミミックのトランスフェクションは、293細胞においても同様にコラーゲンmRNA発現を増大させた。我々は、miR-21ミミックをヒト293細胞にトランスフェクトして、トランスフェクション約24時間後にコラーゲンmRNA発現を分析した。
図11に示される通り、陰性対照miRNAグループと比べると、 miR-21ミミックは、293細胞においてCOL1A1 mRNA発現を増大させた。
【0061】
図11に示される通り、miR-21によるトランスフェクション約24時間後では、COL1A1の mRNA発現は、対照の約1.6-1.8倍である。陰性対照miRNAによるトランスフェクション24時間後では、COL1A1のmRNA発現は、対照の約1倍である。
【0062】
この例では、miRNAのコラーゲン発現に対する作用が、他の種類の細胞において複製できることが示されている。
【0063】
結論
【0064】
この例では、発明の観点によって、エピソーマルレベルでmiRNAを制御することで、異なる種類の細胞において、タンパク質発現が増大されることが示されている。特異的なmiRNAのエピソーマル調整を用いて、培養食肉の生産において細胞の生産性を上げることができる。
【0065】
上記の記載は、例示的なものであって、制限的なものではない。開示を基礎として、例に対する多くの変形が可能であることが、当業者には明らかである。従って、例の範囲は、上記の記述で決められるべきではなく、それらの全範囲又はそれと同等なものの他に特許請求の範囲を参照して決められるべきである。
【0066】
いずれかの例の一つ以上の特徴を、その他の例の一つ以上の特徴と組み合わせても本発明の例の範囲から逸脱するものではない。冠詞については、特に反対のことを指していなければ、「一つ以上の」ものを意味するよう意図されている。「及び/又は」は、特に反対のことを指していなければ、用語の最も包括的な意味を表すよう意図されている。
【0067】
本発明の開示は、多くの異なる形で実施されて良いが、本発明の開示は、一つ以上の発明の原理の例証であって、いずれか一つの例を、例示された例に限定することを意図するものではないとの理解の上で、図面と説明が呈示されている。
【0068】
従って、開示は、その最も広い観点において、特定の細部、代表的なシステム及び方法、及び上に示されて記述されている説明的な例に限定されるものではない。本発明の開示の範囲や精神から逸脱することなく、上記明細事項に種々の修正や変更を加えても良く、本開示は、そのような修正や変更が、特許請求の範囲やそれと同等なものの範囲内に収まるならば、それら全てをカバーすることが意図されている。
【0069】
代表的なプロトコール
A. 魚の浮き袋の細胞株の発育
1. 地元の魚市場で、健康なニベ、スズキ又は同じ部類の魚を得る。
2. 細胞を分離するまでその魚を氷で冷やしておく。
3. その魚を10%の漂白剤に浸す。
4. 防腐処置を施した状態でその魚から浮き袋を取り出す。
5. その臓器を次亜塩素酸で一回以上洗浄する。
6. その臓器を抗生物質培地(ペニシリン400 IU/ml、ストレプトマイシン400 pg/mlを含むライボビッツL-15又はDMEM又はEMEM)で一回以上洗浄する。
7. 洗浄後、臓器を小さな片(2-3 mm3)に切る。
8. 切った臓器を、PBS中に0.25%トリプシンEDTAを含む遠心分離管に移す。
9. 1時間継続的に揺動させて室温で培養する。
10. 100 pmメッシュで上澄みを濾過して未消化の組織を取り除く。
11. 濾液を200 g、5分間、遠心分離機にかける。
12. 細胞ペレットを完全培地(ペニシリン200 IU/ml、ストレプトマイシン200 pg/ml、牛胎児血清10% を含むライボビッツL-15又はDMEM又はEMEM)で再懸濁する。
13. 細胞をT25フラスコ中に接種する。
14. 24-28℃で培養する。
15. 翌日、組織培養フラスコに付着していない細胞を取り除く。
16. 2-3日おきに培地の半分を新鮮な培地と取り替える。
17. 完全な単層が形成されると細胞が定着したと考えられ、定着した細胞は、二次培養の準備ができている。
【0070】
B. 組織外植による魚の浮き袋の細胞株の発育
1. 地元の魚市場で、健康なニベ、スズキ又は同じ部類の魚を得る。
2. 細胞を分離するまでその魚を氷で冷やしておく。
3. その魚を10%の漂白剤に浸す。
4. 防腐処置を施した状態でその魚から浮き袋を取り出す。
5. その臓器を次亜塩素酸で一回以上洗浄する。
6. その臓器を抗生物質培地(ペニシリン400 IU/ml、ストレプトマイシン400 pg/mlを含むライボビッツL-15又はDMEM又はEMEM)で一回以上洗浄する。
7. 洗浄後、臓器を小さな片(1-2 mm3)に切る。
8. 個々に、完全培地(ペニシリン200 IU/ml、ストレプトマイシン200 pg/ml、牛胎児血清10% を含むライボビッツL-15又はDMEM又はEMEM)が入っている24ウェルプレートに、臓器片を載せる。
9. 24-28℃で培養する。
10. 組織外植をかき乱さずに、2-3日おきに培地の半分を新鮮な培地と取り替える。
11. 付着した細胞が観察されるまで組織外植を培養する。
12. 組織外植を取り出す。
13. 完全な単層が形成されると細胞が定着したと考えられ、定着した細胞は、二次培養の準備ができている。
【0071】
C. 魚の筋肉細胞株の発育
1. 地元の魚市場で、健康なハタ、タラ、シタビラメ、オヒョウ、カレイ又は同じ部類の魚を得る。
2. 細胞を分離するまでその魚を氷で冷やしておく。
3. その魚を10%の漂白剤に浸す。
4. 防腐処置を施した状態でその魚から筋肉を取り出す。
5. その組織を次亜塩素酸で一回以上洗浄する。
6. その組織を抗生物質培地(ペニシリン400 IU/ml、ストレプトマイシン400 pg/mlを含むライボビッツL-15又はDMEM又はEMEM)で一回以上洗浄する。
7. 洗浄後、組織を小さな片(2-3 mm3)に切る。
8. 切った組織を、PBS中にコラゲナーゼとディスパーゼを含む遠心分離管に移す。
9. 1時間継続的に揺動させて室温で培養する。
10. 100 pmメッシュで上澄みを濾過して未消化の組織を取り除く。
11. 濾液を200 g、5分間、遠心分離機にかける。
12. 細胞ペレットを完全培地(ペニシリン200 IU/ml、ストレプトマイシン200 pg/ml、牛胎児血清10% を含むライボビッツL-15又はDMEM又はEMEM)で再懸濁する。
13. 細胞をT25フラスコ中に接種する。
14. 24-28℃で培養する。
15. 翌日、組織培養フラスコに付着していない細胞を取り除く。
16. 2-3日おきに培地の半分を新鮮な培地と取り替える。
17. 完全な単層が形成されると細胞が定着したと考えられ、定着した細胞は、二次培養の準備ができている。
【0072】
D. 組織外植からの魚の筋肉細胞株の発育
1. 地元の魚市場で、健康なハタ、タラ、シタビラメ、オヒョウ、カレイ又は同じ部類の魚を得る。
2. 細胞を分離するまでその魚を氷で冷やしておく。
3. その魚を10%の漂白剤に浸す。
4. 防腐処置を施した状態でその魚から筋肉を取り出す。
5. その組織を次亜塩素酸で一回以上洗浄する。
6. その組織を抗生物質培地(ペニシリン400 IU/ml、ストレプトマイシン400 pg/mlを含むライボビッツL-15又はDMEM又はEMEM)で一回以上洗浄する。
7. 洗浄後、筋肉を小さな片(1-2 mm3)に切る。
8. 個々に、完全培地(ペニシリン200 IU/ml、ストレプトマイシン200 pg/ml、牛胎児血清10% を含むライボビッツL-15又はDMEM又はEMEM)が入っている24ウェルプレートに、筋肉片を載せる。
9. 24-28℃で培養する。
10. 組織外植をかき乱さずに、2-3日おきに培地の半分を新鮮な培地と取り替える。
11. 付着した細胞が観察されるまで組織外植を培養する。
12. 組織外植を取り出す。
13. 完全な単層が形成されると細胞が定着したと考えられ、定着した細胞は、二次培養の準備ができている。
【0073】
E. 成体幹細胞の分離と培養
1. 地元の魚市場で、健康なハタ、タラ、シタビラメ、オヒョウ、カレイ又は6ヶ月かそれより若い同じ部類の魚を得る。
2. 細胞を分離するまでその魚を氷で冷やしておく。
3. その魚を10%の漂白剤に浸す。
4. 防腐処置を施した状態でその魚から筋肉を取り出す。
5. その組織を次亜塩素酸で一回以上洗浄する。
6. その組織を抗生物質培地(ペニシリン400 IU/ml、ストレプトマイシン400 pg/mlを含むライボビッツL-15又はDMEM又はEMEM)で一回以上洗浄する。
7. 洗浄後、組織を小さな片(2-3 mm3)に切る。
8. 切った組織を、PBS中にコラゲナーゼとディスパーゼを含む遠心分離管に移す。
9. 1時間継続的に揺動させて室温で培養する。
10. 100 pmメッシュで上澄みを濾過して未消化の組織を取り除く。
11. 濾液を200 g、5分間、遠心分離機にかける。
12. 細胞ペレットを完全培地(ペニシリン200 IU/ml、ストレプトマイシン200 pg/ml、牛胎児血清10%、塩基性線維芽細胞成長因子100 ng/mlを含むライボビッツL-15又はDMEM又はEMEM)で再懸濁する。
13. 細胞を、被覆のない平板上で1時間、24-28℃で培養する。
14. 上澄みを採取して、ラミニン、ゼラチン、マトリゲル又は類似する素地で被覆された平板上に載せる。
15. 24-28℃で培養する。
16. 24時間後に、しっかりと付着していない細胞を洗い落とす。
17. 培地を毎日、完全培地(ペニシリン200 IU/ml、ストレプトマイシン200 pg/ml、牛胎児血清10%、塩基性線維芽細胞成長因子100 ng/mlを含むライボビッツL-15又はDMEM又はEMEM)と取り替える。
【0074】
F. iPSCの生成と培養
1. トランスフェクションの2-4日前、組織培養フラスコ中の完全培地(10%FBSを含むL15)で細胞を培養する。トランスフェクションの当日(デイ0)、細胞は、およそ75-90%コンフルエントである。
2. ゼラチンで被覆された6ウェルプレートから培地を吸い出して、ウェル毎に2mLの新鮮な完全培地と置き換える。被覆されたプレートを使う用意が整うまで37℃に置く。
3. Epi5(登録商標)ベクターを37℃で解凍し、使う用意が整うまでそれらを濡れた氷上に置く。使用前、解凍したベクターを軽く遠心分離機にかけて、それらを管の底に集める。
4. PBSで細胞を洗う。
5. 細胞が入っている培養フラスコに0.05%のトリプシン/EDTAを3 mL加える。
6. 室温で3分間フラスコを培養する。
7. 各フラスコに完全培地を5-8 mL加える。細胞を、空で無菌の15 mL 円錐管に注意深く移す。
8. トリパンブルー色素排除細胞生存アッセイによって生存率をチェックする。
9. 細胞を200g、2分間、遠心分離機にかける。
10. 上澄みの大半を注意深く吸い出して、完全培地で再懸濁する。
11. 細胞を、ゼラチンで被覆された深皿プレート上に接種して、2 mL完全培地において30-60%コンフルエンスで6ウェルプレートにウェル当たり50,000から100,000細胞とし、24-28℃で一晩培養する。
12. Opti-MEM/Reduced-Serum Mediumを予め室温まで温めて、以下に記述する通り管A及び管Bを準備する。
13. 二つのEpi5(登録商標)Reprogramming Vector mixを各々1.2μL(合計2.4μL)、管Aとラベルを貼られた1.5 mLマイクロ遠心分離管の中のOpti-MEM培地118μLに加える。P3000(登録商標)試薬を4.8μL加えて良く混ぜる。
14. Lipofectamine 3000試薬3.6μLを、管Bとラベルを貼られた1.5 mLマイクロ遠心分離管の中の予め温められたOpti-MEM培地121μLで希釈する。
15. トランスフェクションマスターミックスを準備するために、管Aの中身を管Bに加えて良く混ぜる。
16. トランスフェクションマスターミックスを室温で5分間培養する。
17. もう一度混ぜて、トランスフェクションマスターミックス250μL全部を各ウェルに加える。
18. 24-28℃で一晩培養する。
19. トランスフェクションの24時間後に、培地をプレートから吸い出す。N2B27培地(IX N-2サプリメント、IX B27サプリメント、bFGF 100 ng/mLを含むL15)2 mLを各ウェルに加える。
20. 使用済みの培地をN2B27培地2 mLと交換して、合計14日間毎日N2B27培地を変える。
21. デイ14に、使用済みのN2B27培地を吸い出して、それを完全培地と交換する。ウェル毎に2 mL、毎日の培地交換を再開する。
22. 細胞が変形したことを示す、細胞塊の出現について、顕微鏡で1日おきにプレートを観察する。トランスフェクション後15日から21日以内に、iPSCコロニーは、移植に適切なサイズまで成長する。
23. デイ21までにコロニーがはっきりして、更なる培養及び増殖のために摘み取ることができる。
【0075】
G. 細胞を二次培養する方法
1. 培養基を取り除いて廃棄する。
2. 細胞をPBSでゆすいでトリプシンインヒビターを含む血清の形跡を全て取り除く。
3. 0.25%トリプシンEDTA溶液を2-3 mLフラスコに加える。
4. 室温で1分間培養する。
5. 完全成長培地を5-8 mL加える。
6. 細胞をピペットで丁寧に吸い出す。
7. 適当な分量の細胞懸濁液を1 : 2から1 : 3という二次培養比で新しい培養フラスコに加える。
8. 24-28℃で培養する。
【0076】
H. 懸濁培養液への適応
1. トリプシン処理によって問題の細胞にとって適切な頻度で単一層培地を継代培養する。
2. 継代培養を行う毎に、細胞単一層をPBSで洗い、0.25%トリプシンを上塗りする。
3. 室温で5分間培養する。
4. 完全培地で酵素を不活性化する。
5. 細胞懸濁液を採取して、トリパンブルー色素排除細胞生存アッセイによって生存率をチェックする。
6. 細胞懸濁液を別の培地フラスコに接種する。
7. 懸濁した細胞の生存率が90%以上になるまで継代培養を繰り返す。
8. 撹拌又は振動フラスコにおいて50 mL完全培地で細胞密度が10万-50万/mlの懸濁培養液を定着させる。
9. 単一層培養にとって最適な温度、湿度及び雰囲気が同じ条件のもとCO2培養器において撹拌又は振動フラスコの懸濁培養液を培養する。
10. 2-3日毎に新鮮な培地で、細胞密度を10万-50万/mlに調整する。
11. トリパンブルー色素排除細胞生存アッセイによって生存率をチェックする。
12. 健全な細胞の成長を促進する細胞密度で、複数の培養を並行して定着させる。
13. 培養の一部を用いて細胞密度を徐々に100万/mlまで高める。
14. 細胞密度を高めることで細胞が死滅してしまうなら、高密度の培養を破棄する。
15. ステップ12の細胞を用いて高密度適応を再開する。
16. 細胞が懸濁液において成長するよう適応するとき、3 Lのバイオリアクターへと規模を拡大する。
【0077】
I. 血清を含まない培地(植物水解物)への適応
1. DMEM/F12完全培地(DMEM培地とハムF12培地の1 : 1混合物、2-4 mMグルタミン、10% FBS)において細胞を培養する。
2. 血清を含まない培地(DEMEM培地とハムF12培地の1 : 1混合物、2-4 mMグルタミン、20% 植物水解物、例えば、大豆、綿実、菜種、小麦、酵母又はそれらに相当する物)への適応
3. 細胞が、コンフルーエンスに到達すると、培地を適応培地I(新鮮な完全培地40%、以前の継代培地からの条件培地40%、血清を含まない培地20%)と取り替える。
4. 2-3日毎にトリパンブルー色素排除細胞生存アッセイによって生存率をチェックする。
5. 適応によって細胞が死滅してしまうなら、培養を破棄してステップ3を繰り返す。
6. 細胞が、コンフルーエンスに到達すると、培地を適応培地II(新鮮な完全培地30%、ステップ1における細胞からの条件培地30%、血清を含まない培地40%)と取り替える。
7. 2-3日毎にトリパンブルー色素排除細胞生存アッセイによって生存率をチェックする。
8. 適応によって細胞が死滅してしまうなら、培養を破棄してステップ6を繰り返す。
9. 細胞が、コンフルーエンスに到達すると、培地を適応培地III(新鮮な完全培地20%、ステップ1における細胞からの条件培地20%、血清を含まない培地60%)と取り替える。
10. 2-3日毎にトリパンブルー色素排除細胞生存アッセイによって生存率をチェックする。
11. 適応によって細胞が死滅してしまうなら、培養を破棄してステップ9を繰り返す。
12. 細胞が、コンフルーエンスに到達すると、培地を適応培地IV(新鮮な完全培地10%、ステップ1における細胞からの条件培地10%、血清を含まない培地80%)と取り替える。
13. 2-3日毎にトリパンブルー色素排除細胞生存アッセイによって生存率をチェックする。
14. 適応によって細胞が死滅してしまうなら、培養を破棄してステップ12を繰り返す。
15. 細胞が、コンフルーエンスに到達すると、培地を、血清を含まない培地と取り替える。
16. 2-3日毎にトリパンブルー色素排除細胞生存アッセイによって生存率をチェックする。
17. 適応によって細胞が死滅してしまうなら、培養を破棄してステップ15を繰り返す。
18. 血清を含まない培地の使用は、各ステップにおいて、より緩やかに増やすこと、すなわち、各ステップで20%以下の増加が可能である。
【0078】
J. 血清を含まない培地(既知組成)への適応
1. DMEM/F12完全培地(DMEM培地とハムF12培地の1 : 1混合物、2-4 mMグルタミン、10% FBS)において細胞を培養する。
2. 血清を含まない培地(DMEM培地とハムF12培地の1 : 1混合物、2-4 mMグルタミン、アスコルビン酸2リン酸65-130μg/ml、NaHCO3 550-1100μg/ml、亜セレン酸ナトリウム14-28 ng/ml、インシュリン19-38μg/ml、トランスフェリン11-22μg/ml、FGF-2 100-200 ng/ml、TGF-beta 2-4 ng/ml)を調合する。
3. 細胞が、コンフルーエンスに到達すると、培地を適応培地I(新鮮な完全培地40%、以前の継代培地からの条件培地40%、血清を含まない培地20%)と取り替える。
4. 2-3日毎にトリパンブルー色素排除細胞生存アッセイによって生存率をチェックする。
5. 適応によって細胞が死滅してしまうなら、培養を破棄してステップ3を繰り返す。
6. 細胞が、コンフルーエンスに到達すると、培地を適応培地II(新鮮な完全培地30%、ステップ1における細胞からの条件培地30%、血清を含まない培地40%)と取り替える。
7. 2-3日毎にトリパンブルー色素排除細胞生存アッセイによって生存率をチェックする。
8. 適応によって細胞が死滅してしまうなら、培養を破棄してステップ6を繰り返す。
9. 細胞が、コンフルーエンスに到達すると、培地を適応培地III(新鮮な完全培地20%、ステップ1における細胞からの条件培地20%、血清を含まない培地60%)と取り替える。
10. 2-3日毎にトリパンブルー色素排除細胞生存アッセイによって生存率をチェックする。
11. 適応によって細胞が死滅してしまうなら、培養を破棄してステップ9を繰り返す。
12. 細胞が、コンフルーエンスに到達すると、培地を適応培地IV(新鮮な完全培地10%、ステップ1における細胞からの条件培地10%、血清を含まない培地80%)と取り替える。
13. 2-3日毎にトリパンブルー色素排除細胞生存アッセイによって生存率をチェックする。
14. 適応によって細胞が死滅してしまうなら、培養を破棄してステップ12を繰り返す。
15. 細胞が、コンフルーエンスに到達すると、培地を、血清を含まない培地と取り替える。
16. 2-3日毎にトリパンブルー色素排除細胞生存アッセイによって生存率をチェックする。
17. 適応によって細胞が死滅してしまうなら、培養を破棄してステップ15を繰り返す。
18. 血清を含まない培地の使用は、各ステップにおいて、より緩やかに増やせる。例えば、各ステップで20%以下の増加となる。
【0079】
L. 細胞培養のための骨組(コンニャク+ゴム)
1. サフランを2、3片入れた水を薄黄色になるまで沸騰させる。
2. サフランを取り除いてぬるくなるまで溶液を放置する。
3. 全ての乾燥成分を調合する
a. コンニャク-0.5-5%、好ましくは3%
b. ふくらし粉-0.3%-3%、好ましくは2%
c. 完全キサンタンガム-0.2%-2%、好ましくは1.5%
4. サフラン溶液を100 ml計りとる。
5. ふくらし粉、キサンタンガムを連続して加える。各原料を加えた後、混合物をよく撹拌する。
6. コンニャクを溶液上に少しずつ振り撒いて加える。撹拌し続ける。溶液はお粥状になる。
7. コンニャクの混合物を型に入れておよそ1-15 mm の厚さに広げる。
8. 型を蓋で覆い、室温で30分を超えて放置する。
9. 型を4℃の冷蔵庫に4時間入れる。
10. 弱い熱で型を40分間蒸す。
11. 型を室温で2時間放置する。
12. 骨組を45-55℃で15分間脱水する。
【0080】
M. 細胞培養のための骨組(アルギン酸塩+コンニャク)
1. アルギン酸ナトリウムを0.1-2 g (0.1-2%)、好ましくは約1g(1%)計量する。
2. ブレンダーに水を100 ml加える。
3. ブレンダーにアルギン酸塩粉を加え、溶解するまで混合物を混ぜる。
4. 容器をプラスチックフィルムで覆い、アルギン酸溶液を一晩冷蔵庫に入れて気泡を除去する。
5. コンニャクを0.5-5 g、好ましくは約3 g計量して型に入れる。
6. アルギン酸溶液を型に加え、およそ1-15 mm、好ましくは、約8 mmの厚さとする。
7. 粉末が全て溶けるまで混合物を撹拌する。
8. 形に固まるまで弱い熱で混合物を30分間蒸す。
9. 型を蓋で覆い、室温で30分間放置する。
10. 乳酸カルシウムを0.1-2 %、好ましくは、約1.5 %計量し、水中で撹拌して溶かす。
11. 骨組を、0.1-2%、好ましくは、約1.5%の乳酸カルシウム溶液に、少なくとも2.5時間浸し、骨組のまわりへの膜組織の形成を可能とする。
【配列表】
【国際調査報告】