(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-22
(54)【発明の名称】多特異性抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230215BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230215BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230215BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230215BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230215BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230215BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230215BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230215BHJP
C07K 1/22 20060101ALI20230215BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230215BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230215BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20230215BHJP
C07K 16/18 20060101ALN20230215BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/46
C12P21/08
C07K1/22
A61K39/395 D
A61K39/395 M
C12N15/13
C07K16/00
C07K16/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022534750
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2020087134
(87)【国際公開番号】W WO2021123244
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514232085
【氏名又は名称】ユーシービー バイオファルマ エスアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バリー、エミリー メアリー ケアリスティン
(72)【発明者】
【氏名】デイブ、エマ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイウッド、サム フィリップ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC22
4C085DD61
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
多特異性抗体である。本開示は、a)式(I):VH-CH1-(CH2)-(CH3)-(X)-(VI)のポリペプチド鎖;及びb)式(II):(V3)-(Z)-VL-CL-(Y)-(V2)のポリペプチド鎖を含むか又はこれらからなる多特異性抗体であって、式(II)のポリペプチド鎖が、少なくとも1つのdsscFv、dsFv、scFv、VH、又はVHHを含み;式(I)のポリペプチド鎖が、プロテインA結合ドメインを含み;式(II)のポリペプチド鎖が、プロテインAに結合しない、多特異性抗体に関する。本開示は、前記多特異性抗体をコードするポリヌクレオチド配列、ポリヌクレオチドを含むベクター、並びに前記ベクター及び/又はポリヌクレオチド配列を含む宿主細胞も提供する。本開示は、例えば処置での使用のための、それを含む医薬組成物も提供する。宿主細胞から本開示の多特異性抗体を発現する方法も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
VH-CH1-(CH2)
s-(CH3)
t-X-(V1)
p
のポリペプチド鎖;及び
式(II):
(V3)r-Z-VL-C
L-Y-(V2)
q
のポリペプチド鎖
を含む多特異性抗体であって、
式中:
VHは重鎖可変ドメインを表し;
CH1は重鎖定常領域のドメイン1を表し;
CH2は重鎖定常領域のドメイン2を表し;
CH3は重鎖定常領域のドメイン3を表し;
Xは結合又はリンカーを表し;
V1はdsscFv、dsFv、scFv、VH、VL又はVHHを表し;
V3はdsscFv、dsFv、scFv、VH、VL又はVHHを表し;
Zは結合又はリンカーを表し;
VLは軽鎖可変ドメインを表し;
C
LはCカッパなどの軽鎖定常領域からのドメインを表し;
Yは結合又はリンカーを表し;
V2はdsscFv、dsFv、scFv、VH、VL又はVHHを表し;
pは0又は1を表し;
qは0又は1を表し;
rは0又は1を表し;
sは0又は1を表し;
tは0又は1を表し;
pが0である場合、Xは存在せず、qが0である場合、Yは存在せず、rが0である場合、Zは存在せず;
qが0である場合、rは1であり、rが0である場合、qは1であり;
該式(II)のポリペプチド鎖が、少なくとも1つのdsscFv、dsFv、scFv、VH、又はVHHを含み;
該式(I)のポリペプチド鎖が、プロテインA結合ドメインを含み;
該式(II)のポリペプチド鎖が、プロテインAに結合しない、多特異性抗体。
【請求項2】
前記式(I)のポリペプチド鎖が、1つ、2つ又は3つのプロテインA結合ドメインを含む、請求項1に記載の多特異性抗体。
【請求項3】
プロテインA結合ドメインが、VH及び/又はCH2-CH3及び/又はV1に存在する、請求項1又は2に記載の多特異性抗体。
【請求項4】
前記式(I)のポリペプチド鎖が、VH又はV1に存在する1つのプロテインA結合ドメインのみを含む、請求項1から3までのいずれか一項に記載の多特異性抗体。
【請求項5】
前記式(I)のポリペプチド鎖が、VHに存在する1つのプロテインA結合ドメインのみを含む、請求項4に記載の多特異性抗体。
【請求項6】
前記式(I)のポリペプチド鎖が、V1に存在する1つのプロテインA結合ドメインのみを含む、請求項4に記載の多特異性抗体。
【請求項7】
前記プロテインA結合ドメイン(単数又は複数)が、プロテインAに結合するVH3ドメイン又はそのバリアントを含むか又はそれらからなる、請求項1から6までのいずれか一項に記載の多特異性抗体。
【請求項8】
V2及び/又はV3がVH3ドメインを含まない、請求項1から7までのいずれか一項に記載の多特異性抗体。
【請求項9】
V2及び/又はV3が、プロテインAに結合しないVH3ドメイン又はそのバリアントを含むか又はそれらからなる、請求項1から7までのいずれか一項に記載の多特異性抗体。
【請求項10】
pが1である、請求項1から9までのいずれか一項に記載の多特異性抗体。
【請求項11】
qが1である、請求項1から10までのいずれか一項に記載の多特異性抗体。
【請求項12】
rが1である、請求項1から11までのいずれか一項に記載の多特異性抗体。
【請求項13】
qが0であり、rが1である、請求項1から10までのいずれか一項に記載の多特異性抗体。
【請求項14】
sが1であり、tが1であり、pが0であり、qが1であり、rが0であり、V2がdsscFv又はdsFvである、請求項1から9までのいずれか一項に記載の多特異性抗体。
【請求項15】
sが0であり、tが0であり、pが1であり、qが1であり、rが0であり、V1とV2の両方がdsscFvを表す、請求項1から11までのいずれか一項に記載の多特異性抗体。
【請求項16】
V1がアルブミンに結合し、配列番号78の配列のVH3を含む、請求項1から15までのいずれか一項に記載の多特異性抗体。
【請求項17】
X及び/又はY及び/又はZがペプチドリンカー、例えば配列番号1、2、69及び70である、請求項1から16までのいずれか一項に記載の多特異性抗体。
【請求項18】
V1及び/又はV2及び/又はV3が、dsscFv又はdsFvであり、V1の軽鎖及び重鎖可変ドメイン及び/又はV2の軽鎖及び重鎖可変ドメイン及び/又はV3の軽鎖及び重鎖可変ドメインが、2つの遺伝子工学的に作成されたシステイン残基の間のジスルフィド結合によって連結され、システイン残基の対の位置が、VH37及びVL95、VH44及びVL100、VH44及びVL105、VH45及びVL87、VH100及びVL50、VH100b及びVL49、VH98及びVL46、VH101及びVL46、VH105及びVL43並びにVH106及びVL57(Kabatによる番号付け)を含むかこれらからなる群から選択され、VH及びVLの価(Values)が独立して所与のV1又はV2又はV3、例えばVH44及びVL100内である、請求項1から17までのいずれか一項に記載の多特異性抗体。
【請求項19】
請求項1から18までのいずれか一項に規定される多特異性抗体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項20】
請求項19に規定されるポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項21】
それぞれ請求項19又は20のポリヌクレオチド又はベクターを含む宿主細胞。
【請求項22】
少なくとも2つのベクターを含む宿主細胞であって、各ベクターが、請求項1から18までのいずれか一項に規定される多特異性抗体の異なるポリペプチド鎖をコードするポリヌクレオチドを含む、宿主細胞。
【請求項23】
請求項1から18までのいずれか一項に記載の多特異性抗体と、少なくとも1つの賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項24】
処置での使用のための、請求項1から18までのいずれか一項に記載の多特異性抗体又は請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
治療有効量の請求項1から18までのいずれか一項に記載の多特異性抗体又は請求項23に記載の医薬組成物を投与するステップを含む、それを必要とする患者を処置する方法。
【請求項26】
請求項1に規定される式(I)のポリペプチド鎖及び式(II)のポリペプチド鎖を含む多特異性抗体を産生する方法であって:
a)宿主細胞において、上記で規定される式(I)のポリペプチド鎖及び式(II)のポリペプチド鎖を発現させるステップであって、該式(II)のポリペプチド鎖が、該式(I)のポリペプチド鎖より過剰である、ステップ;及び
b)ステップa)で発現されたポリペプチドの組成物を回収するステップであって、該組成物が多特異性抗体及び式(II-II)のLC二量体を含む、ステップ;及び
c)該多特異性抗体を精製するステップであって、sが1であり、tが1である場合、該多特異性抗体が、式(I)の2つの重鎖及び式(II)の2つの会合した軽鎖を有する二量体として精製され、sが0であり、tが0である場合、該多特異性抗体が、式(I)の1つの重鎖及び式(II)の1つの会合した軽鎖を有する二量体として精製される、ステップ
を含み、
該式(II)のポリペプチド鎖が、少なくとも1つのdsscFv、dsFv、scFv、VH又はVHHを含み;
該式(I)のポリペプチド鎖が、プロテインA結合ドメインを含み;
該式(II)のポリペプチド鎖が、プロテインAに結合せず;
ステップc)が、ステップb)、場合により続く少なくとも1つの精製ステップで回収したポリペプチドの該組成物を、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラムにかける、方法。
【請求項27】
請求項1に規定される式(I)のポリペプチド鎖及び式(II)のポリペプチド鎖を含む多特異性抗体を精製する方法であって:
a)上記で規定される式(I)のポリペプチド鎖及び式(II)のポリペプチド鎖の組成物を得るステップであって、該組成物が多特異性抗体と、式(II-II)の2つの軽鎖が共に会合した二量体(LC二量体)とを含み、
sが1であり、tが1である場合、多特異性抗体が、式(I)の2つの重鎖及び式(II)の2つの会合する軽鎖を有する二量体であり;sが0であり、tが0である場合、多特異性抗体が、式(I)の1つの重鎖及び式(II)の1つの会合する軽鎖を有する二量体であり;
該式(II)のポリペプチド鎖が、少なくとも1つのdsscFv、dsFv、scFv、VH又はVHHを含み;
該式(I)のポリペプチド鎖がプロテインA結合ドメインを含み;
該式(II)のポリペプチド鎖がプロテインAに結合しない、ステップ;及び
b)該LC二量体はカラムに結合しないが、該多特異性抗体はカラムに保持されるように、ステップa)で得られた該組成物を、プロテインAアフィニティーカラムにローディングするステップ;及び
c)該プロテインAアフィニティーカラムを洗浄するステップ;及び
d)該多特異性抗体を溶出するステップ;及び
e)該多特異性抗体を回収するステップ
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多特異性抗体、それを含む製剤、前記抗体をコードするポリヌクレオチド配列、前記ポリヌクレオチド配列を含むベクター並びに前記ベクター及び/又はポリヌクレオチド配列を含む宿主細胞に関する。本開示は、多特異性抗体及び製剤の治療における使用にも関する。本開示は、例えば宿主細胞において、多特異性抗体を発現する方法に及び、多特異性抗体を精製する方法であって、プロテインA精製ステップを含む方法にも及ぶ。
【背景技術】
【0002】
多特異性、特に二重特異性抗体を生成するための多くの手法がある。Morrison et al(Coloma and Morrison 1997,Nat Biotechnol.15,159-163)は、完全抗体、例えばIgGへの一本鎖可変断片(scFv)の融合を記載する。Schoonjans et al.,2000,Journal of Immunology,165,7050-7057は、抗体Fab断片へのscFvの融合を記載する。国際公開第2015/197772号は、ジスルフィド安定化scFv(dsscFv)のFab断片への融合を記載する。
【0003】
先行技術に記載された標準的な手法は、それぞれが完全抗体若しくはその抗原結合断片、例えばFabの重鎖(HC)又は軽鎖(LC)をコードする少なくとも2つのポリペプチドの宿主細胞での発現を含み、これに追加の抗体の抗原結合断片を重鎖及び/又は軽鎖のN及び/又はC末端位置で融合することができる。2つ(付加Fabを形成する1つの軽鎖及び1つの重鎖)又は4つ(付加IgGを形成する2つの軽鎖及び2つの重鎖)のポリペプチドを発現することによってそのような多特異性抗体を組換えにより産生しようとする場合、通常、対応する軽鎖とのアセンブリーの際に、重鎖の正確なフォールディングを確実にするために、過剰な重鎖中に軽鎖を発現する必要がある。特に、CH1(重鎖定常領域のドメイン1)は、対応するLCによって置き換えられ得る、BIPタンパク質によって自身のフォールディングが妨げられ;したがって、CH1/HCの正確なフォールディングは、対応するLCの利用可能性による(Lee et al.,1999,Molecular Biology of the Cell,Vol.10,2209-2219)。
【0004】
本発明者らは、多特異性抗体を発現するそれらの方法は、重鎖より軽鎖の過剰な産生をもたらし得、これが宿主細胞回収物中に残ることを観察し、この過剰な軽鎖は二量体複合体(又は「LC二量体」)を形成する傾向があり、所望の多特異性抗体、特に単量体と共に、産生方法の副産物として存在し、したがって精製して除く必要がある。
【0005】
重要なことは、さらなる抗原結合断片(単数及び複数)にN及び/又はC末端で融合する場合、軽鎖の二量体の形成と関連する技術的な問題は、これまでのところ同定されておらず、一般に使用される解析方法は、産生方法の異種産物の中でそれらの付加LC二量体の検出及び定量が可能ではなかった。これは、標準的な解析方法を使用して産物の量を推定する場合、重大なバイアスを生じ得る。
【0006】
したがって、多特異性抗体及びその産生方法を改善する必要があり、それは産生方法の初期のステップで容易に及び効率的に付加LC二量体の単離及び除去を可能にし、したがって、多特異性抗体であり、特にその単量体形態である、治療での使用のための目的のタンパク質の収量を改善する。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、精製後、特にプロテインAアフィニティクトマトグラフィーを含むワンステップ精製後に得られた「多特異性抗体」物質、特に単量体の収量を増加しながら同等の機能性及び安定性を有する改善された多特異性抗体を提供するように関係する多特異性抗体を工学的に再作成した。
【0008】
したがって、一態様では:
式(I):
VH-CH1-(CH2)s-(CH3)t-X-(V1)p
のポリペプチド鎖;及び
式(II):
(V3)r-Z-VL-CL-Y-(V2)q
のポリペプチド鎖
を含むか又はそれらからなる多特異性抗体であって、
式中:
VHは重鎖可変ドメインを表し;
CH1は重鎖定常領域のドメイン1を表し;
CH2は重鎖定常領域のドメイン2を表し;
CH3は重鎖定常領域のドメイン3を表し;
Xは結合又はリンカーを表し;
V1はdsscFv、dsFv、scFv、VH、VL又はVHHを表し;
V3はdsscFv、dsFv、scFv、VH、VL又はVHHを表し;
Zは結合又はリンカーを表し;
VLは軽鎖可変ドメインを表し;
CLはCカッパなどの軽鎖定常領域からのドメインを表し;
Yは結合又はリンカーを表し;
V2はdsscFv、dsFv、scFv、VH、VL又はVHHを表し;
pは0又は1を表し;
qは0又は1を表し;
rは0又は1を表し;
sは0又は1を表し;
tは0又は1を表し;
pが0である場合、Xは存在せず、qが0である場合、Yは存在せず、rが0である場合、Zは存在せず;
qが0である場合、rは1であり、rが0である場合、qは1であり;
式(II)のポリペプチド鎖は、少なくとも1つのdsscFv、dsFv、scFv、VH、又はVHHを含み;
式(I)のポリペプチド鎖は、プロテインA結合ドメインを含み;
式(II)のポリペプチド鎖は、プロテインAに結合しない、多特異性抗体を提供する。
【0009】
有利には、本開示の多特異性抗体は、当技術分野で一般に使用される方法を改善した精製方法によってより効果的に精製され得、特に、改善された方法は、工程が少なく、工業規模で費用及び時間効果を有する。特に、本開示の多特異性抗体は、プロテインAアフィニティクトマトグラフィーを含むワンステップ精製方法後に得られた目的のタンパク質(すなわち、正しい多特異性抗体フォーマット)の量を最大にし、それにより目的の多特異性抗体の精製及び付加LC二量体の除去が同時に起こる。有利には、本開示の多特異性抗体の産生及び精製の方法は、過剰な遊離の、未結合の軽鎖、特に付加LC二量体を捕獲するためのさらなる精製ステップを必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】抗アルブミン645抗体の配列を示す図である。
【
図2A】最終精製したTrYbe03の解析を示す図である。BHE200 SEC-UPLC(縦軸;EU(発光ユニット)、横軸;時間(分))を示す。
【
図2B】最終精製したTrYbe03の解析を示す図である。SDS-PAGE(レーンM:Mark12(商標);レーン1:非還元状態;レーン2:還元状態)を示す。
【
図3】Wittrup(Wittrup01及びWittrup02)及びTrYbe抗体(TrYbe03~TrYbe06)及び対応するLC二量体の模式図である。全てのWittrup分子は、共通のhg1FL及びFab領域を有する。全てのTrYbe分子は、共通のFab領域を有する。
【
図4A】Wittrup01及びWittrup02分子のローディング物質、溶出液及びフロースルーを含む、プロテインA及びプロテインLクロマトグラフィーの還元SDS-PAGE解析を示す図である。試料は以下のようにローディングした:レーンM:Mark12(商標);レーン1A~1E:Wittrup01(1A:プロテインAローディング(上清);1B:プロテインA溶出液;1C:プロテインLローディング(プロテインAフロースルー);1D:プロテインL溶出液;1E:プロテインLフロースルー);レーン2A~2E:Wittrup02(2A:プロテインAローディング(上清);2B:プロテインA溶出液;2C:プロテインLローディング(プロテインAフロースルー);2D:プロテインL溶出液;2E:プロテインLフロースルー)。
【
図4B】Wittrup01及びWittrup02分子のローディング物質、溶出液及びフロースルーを含む、プロテインA及びプロテインLクロマトグラフィーの非還元SDS-PAGE解析を示す図である。試料は以下のようにローディングした:レーンM:Mark12(商標);レーン1A~1E:Wittrup01(1A:プロテインAローディング(上清);1B:プロテインA溶出液;1C:プロテインLローディング(プロテインAフロースルー);1D:プロテインL溶出液;1E:プロテインLフロースルー);レーン2A~2E:Wittrup02(2A:プロテインAローディング(上清);2B:プロテインA溶出液;2C:プロテインLローディング(プロテインAフロースルー);2D:プロテインL溶出液;2E:プロテインLフロースルー)。
【
図5A】TrYbe03及びTrYbe04分子のローディング物質、溶出液及びフロースルーを含む、プロテインA及びプロテインLクロマトグラフィーの還元SDS-PAGE解析を示す図である。試料は以下のようにローディングした:レーンM:Mark12(商標);レーン3A~3E:TrYbe03(3A:プロテインAローディング(上清);3B:プロテインA溶出液;3C:プロテインLローディング(プロテインAフロースルー);3D:プロテインL溶出液;3E:プロテインLフロースルー);レーン4A~4E:TrYbe04(4A:プロテインAローディング(上清);4B:プロテインA溶出液:4C:プロテインLローディング(プロテインAフロースルー);4D:プロテインL溶出液;4E:プロテインLフロースルー)。
【
図5B】TrYbe03及びTrYbe04分子のローディング物質、溶出液及びフロースルーを含む、プロテインA及びプロテインLクロマトグラフィーの非還元SDS-PAGE解析を示す図である。試料は以下のようにローディングした:レーンM:Mark12(商標);レーン3A~3E:TrYbe03(3A:プロテインAローディング(上清);3B:プロテインA溶出液;3C:プロテインLローディング(プロテインAフロースルー);3D:プロテインL溶出液;3E:プロテインLフロースルー);レーン4A~4E:TrYbe04(4A:プロテインAローディング(上清);4B:プロテインA溶出液:4C:プロテインLローディング(プロテインAフロースルー);4D:プロテインL溶出液;4E:プロテインLフロースルー)。
【
図5C】還元SDS-PAGEの濃度測定解析を示す図である。試料は、TrYbe03及びTrYbe04(横軸)のプロテインA溶出液を含む。解析は、縦軸に、重鎖バンドの密度に対するパーセンテージとして示される。
【
図6A】TrYbe03及びTrYbe05分子のローディング物質、溶出液及びフロースルーを含む、プロテインA及びプロテインLクロマトグラフィーの還元SDS-PAGE解析を示す図である。試料は以下のようにローディングした:レーンM:Mark12(商標);レーン3A~3E:TrYbe03(3A:プロテインAローディング(上清);3B:プロテインA溶出液;3C:プロテインLローディング(プロテインAフロースルー);3D:プロテインL溶出液;3E:プロテインLフロースルー);レーン5A~5E:TrYbe05(5A:プロテインAローディング(上清);5B:プロテインA溶出液:5C:プロテインLローディング(プロテインAフロースルー);5D:プロテインL溶出液;5E:プロテインLフロースルー)。
【
図6B】TrYbe03及びTrYbe05分子のローディング物質、溶出液及びフロースルーを含む、プロテインA及びプロテインLクロマトグラフィーの非還元SDS-PAGE解析を示す図である。試料は以下のようにローディングした:レーンM:Mark12(商標);レーン3A~3E:TrYbe03(3A:プロテインAローディング(上清);3B:プロテインA溶出液;3C:プロテインLローディング(プロテインAフロースルー);3D:プロテインL溶出液;3E:プロテインLフロースルー);レーン5A~5E:TrYbe05(5A:プロテインAローディング(上清);5B:プロテインA溶出液:5C:プロテインLローディング(プロテインAフロースルー);5D:プロテインL溶出液;5E:プロテインLフロースルー)。
【
図6C】還元SDS-PAGEの濃度測定解析を示す図である。試料は、TrYbe03及びTrYbe05(横軸)のプロテインA溶出液を含む。解析は、縦軸に、重鎖バンドの密度に対するパーセンテージとして示される。
【
図7A】TrYbe04及びTrYbe06分子のローディング物質、溶出液及びフロースルーを含む、プロテインA及びプロテインLクロマトグラフィーの還元SDS-PAGE解析を示す図である。試料は以下のようにローディングした:レーンM:Mark12(商標);レーン4A~4E:TrYbe04(4A:プロテインAローディング(上清);4B:プロテインA溶出液;4C:プロテインLローディング(プロテインAフロースルー);4D:プロテインL溶出液;4E:プロテインLフロースルー);レーン6A~6E:TrYbe06(6A:プロテインAローディング(上清);6B:プロテインA溶出液:6C:プロテインLローディング(プロテインAフロースルー);6D:プロテインL溶出液;6E:プロテインLフロースルー)。
【
図7B】TrYbe04及びTrYbe06分子のローディング物質、溶出液及びフロースルーを含む、プロテインA及びプロテインLクロマトグラフィーの非還元SDS-PAGE解析を示す図である。試料は以下のようにローディングした:レーンM:Mark12(商標);レーン4A~4E:TrYbe04(4A:プロテインAローディング(上清);4B:プロテインA溶出液;4C:プロテインLローディング(プロテインAフロースルー);4D:プロテインL溶出液;4E:プロテインLフロースルー);レーン6A~6E:TrYbe06(6A:プロテインAローディング(上清);6B:プロテインA溶出液:6C:プロテインLローディング(プロテインAフロースルー);6D:プロテインL溶出液;6E:プロテインLフロースルー)。
【
図7C】還元SDS-PAGEの濃度測定解析を示す図である。試料は、TrYbe04及びTrYbe06(横軸)のプロテインA溶出液を含む。解析は、縦軸に、重鎖バンドの密度に対するパーセンテージとして示される。
【
図8A】市販の精製プロテインAヘの試験分子及び対照の各濃度(横軸)での結合応答(応答単位又は共鳴単位のRU;縦軸)を示す図である。
【
図8B】精製した組換えプロテインAヘの試験分子及び対照の各濃度(横軸)での結合応答(応答単位又は共鳴単位のRU;縦軸)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の文脈での使用のための抗体は、完全抗体及びその機能的活性断片(すなわち、抗原結合断片とも呼ばれる、抗原を特異的に結合する抗原結合ドメインを含有する分子)を含む。抗体に関する本明細書に記載される特徴は、文脈が他に示さない限り、抗体断片にも適用される。抗体は、モノクローナル、多価、多特異性、二重特異性、完全ヒト、ヒト化又はキメラであってもよい(か又はこれらに由来してもよい)。
【0012】
「免疫グロブリン(Ig)」としても公知の完全抗体は、通常、無傷の又は完全長抗体に関し、すなわちアセンブルして特徴的なY型三次元構造を画定する、ジスルフィド結合によって相互接続される2つの重鎖及び2つの軽鎖のエレメントを含む。古典的な天然の完全抗体は、それらが1つの抗原型に結合する単一特異性、及びそれらが2つの独立した抗原結合ドメインを有する二価である。用語「無傷な抗体」、「完全長抗体」及び「完全抗体」は、交換可能に使用され、本明細書で規定されるFc領域を含む、天然の抗体構造と類似した構造を有する単一特異性二価抗体を指す。
【0013】
各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと省略)及び軽鎖定常領域(CL)を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと省略)及びIgクラスによって3つの定常ドメインCH1、CH2及びCH3又は4つの定常ドメインCH1、CH2、CH3、CH4で構成される重鎖定常領域(CH)を含む。Ig又は抗体の「クラス」は、定常領域の型を指し、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMを含み、それらのいくつかは、サブクラス、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4にさらに分けられ得る。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)及び古典的な補体系の第1の構成要素(C1q)を含む、宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0014】
本発明による抗体又はその抗原結合断片のVH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と名付けられる、より構造的に保存される領域と共に点在する、相補性決定領域(CDR)と名付けられる抗原の認識を決定する超可変性の領域(又は「超可変領域」)にさらに細分割され得る。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRから構成され、以下の順でアミノ末端からカルボキシ末端へと配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。CDR及びFRは共に可変領域を形成する。慣例では、抗体又はその抗原結合断片の重鎖可変領域のCDRは、CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3と呼ばれ、軽鎖可変領域のCDRは、CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3と呼ばれる。それらは、各鎖のN末端からC末端の方向で順に番号付けられる。
【0015】
CDRは、Kabatらによって考案されたシステムに従って慣例的に番号付される。このシステムは、Kabat et al.,1991,「免疫学的に関心のあるタンパク質の配列(Sequence of Proteins of Immunological Interest)」,US Department of Health and Human Services,NIH,USA(以降「Kabat et al.(上記)」)に記載される。この番号付けシステムは、他に指定される場合を除き、本明細書で使用される。Kabatの残基命名は、アミノ酸残基の直線状の番号付けにいつも直接対応するわけではない。実際の直線状のアミノ酸配列は、基本の可変ドメイン構造の、フレームワークか相補性決定領域(CDR)のいずれにせよ構造成分の短縮、又はそれへの挿入に対応する、厳密なKabat番号付けよりも、少ない又は追加のアミノ酸を含有し得る。残基の正確なKabat番号付けは、「標準の」Kabat番号付け配列との抗体の配列における相同性の残基のアライメントによって所与の抗体について決定され得る。
【0016】
重鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムにより、残基31~35(CDR-H1)、残基50~65(CDR-H2)及び残基95~102(CDR-H3)に位置する。しかしながら、Chothia(Chothia,C.and Lesk,A.M.J.Mol.Biol.,196,901-917(1987))により、CDR-H1にあたるループは、残基26~残基32に拡大する。したがって、他に指定されない限り、本明細書で用いられる「CDR-H1」は、Kabat番号付けシステムとChothiaの形態学的ループ定義の組合せによって記載されるように、残基26~35を指すことを意図する。軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号付けシステムにより、残基24~34(CDR-L1)、残基50~56(CDR-L2)及び残基89~97(CDR-L3)に位置する。免疫グロブリンファミリーの異なるメンバーの配列のアライメントに基づき、番号付けスキームが提示されており、例えばKabat et al.,1991,and Dondelinger et al.,2018,Frontiers in Immunology,Vol 9,article 2278に記載される。
【0017】
ヒト免疫グロブリンVH遺伝子座は、ヌクレオチド配列に基づいて分けられ得る6個の主なファミリーを表す。ファミリー及びそれら由来のVHドメインは、通常、VH1、VH2、VH3、VH4、VH5、VH6を指す。
【0018】
用語「定常ドメイン(単数又は複数)」、「定常領域」は、本明細書で使用する場合、交換可能に使用され、可変領域の外側である抗体のドメイン(単数又は複数)を指す。定常ドメインは、同じアイソタイプの全ての抗体で同一であるが、1つのアイソタイプと別のアイソタイプで異なる。典型的には、重鎖の定常領域が、3つ又は4つの定常ドメインを含む、CH1-ヒンジ-CH2-CH3-場合によりCH4により、N末端からC末端まで形成される。
【0019】
本発明の抗体分子の定常領域ドメインは、存在する場合、抗体分子の提案した機能、特に必要とされ得るエフェクター機能に関して選択され得る。例えば、定常領域ドメインは、ヒトIgG1、IgG2又はIgG4ドメインであり得る。特に、ヒトIgG定常領域ドメイン、特に抗体分子が治療使用を意図され、抗体エフェクター機能が必要とされる場合、IgG1アイソタイプの定常領域ドメインが使用され得る。或いは、抗体分子が治療目的を意図され、抗体エフェクター機能が必要とされない場合、IgG2及びIgG4アイソタイプが使用され得る。これらの定常領域ドメインの配列バリアントも使用され得ることが理解されるであろう。例えば、241位(Kabat番号付けシステムによる番号付け)のセリンが、Angal et al.(Angal et al.,1993.「単一アミノ酸置換は、SDS-PAGE解析中に観察されたようにキメラマウス/ヒト(IgG4)抗体の異種性を消失させる(A single amino acid substitution abolishes the heterogeneity of chimeric mouse/human(IgG4)antibody as observed during SDS-PAGE analysis Mol Immunol 30,105-108)に記載されるようにプロリンへと交換され、本明細書ではIgG4Pと呼ばれるIgG4分子が使用され得る。
【0020】
「Fc」、「Fc断片」、「Fc領域」は、交換可能に使用され、第1の定常領域ドメインを除く抗体の定常領域を含む抗体のC末端領域を指す。したがって、Fcは、IgA、IgD、及びIgGの最後2つの定常ドメイン、CH2及びCH3、又はIgE及びIgMの最後3つの定常ドメイン、及びこれらのドメインへの可動性ヒンジN末端を指す。ヒトIgG1重鎖Fc領域は、本明細書では、番号付けはKabatのようにEU指標に従い、そのカルボキシル末端に残基C226を含むことを定義される。ヒトIgG1の文脈では、KabatのようにEU指標に従って、下位(lower)ヒンジは226~236位を指し、CH2ドメインは237~340位を指し、CH3ドメインは341~447位を指す。他の免疫グロブリンの対応するFc領域は、配列アライメントによって同定され得る。
【0021】
本明細書に記載される抗体は単離される。「単離された」抗体は、その自然環境の成分から(例えば、精製手段によって)分離されたものである。
【0022】
「多特異性抗体」は、本明細書で用いられる場合、少なくとも2つの抗原結合ドメイン、すなわち2つ以上の抗原結合ドメイン、例えば2つ又は3つの抗原結合ドメインを有し、少なくとも2つの抗原結合ドメインが、独立して2つの異なる抗原又は同じ抗原の2つの異なるエピトープに結合する本明細書に記載される抗体を指す。多特異性抗体は、各特異性(抗原)に対して一価であり得る。本明細書に記載される多特異性抗体は、一価又は多価、例えば二価、三価、四価の多特異性抗体、並びに異なるエピトープに対して異なる結合価を有する多特異性抗体(例えば、第1の抗原特異性に対して一価、第1のものとは異なる第2の抗原特異性に対して二価である多価特異性抗体)を包含する。
【0023】
一実施形態では、多価特異性抗体は、二重特異性抗体である。
【0024】
「二重特異性(Bispecific又はBi-specific)抗体」は、本明細書で用いられる場合、2つの抗原特異性を有する抗体を指す。一実施形態では、抗体は、2つの抗原結合ドメインを含み、1つの結合ドメインはANTIGEN1に結合し、もう1つの結合ドメインはANTIGEN2に結合する、すなわち各結合ドメインは各抗原に対して一価である。一実施形態では、抗体は、四価の二重特異性抗体であり、すなわち抗体は4つの抗原結合ドメインを含み、例えば2つの結合ドメインはANTIGEN1に結合し、その他の2つの結合ドメインはANTIGEN2に結合する。一実施形態では、抗体は、三価の二重特異性抗体である。
【0025】
一実施形態では、多価特異性抗体は、三重特異性抗体である。
【0026】
「三重特異性抗体」は、本明細書で用いられる場合、3つの抗原結合特異性を有する抗体を指す。例えば、抗体は、3つの異なる抗原又は同じ抗原の3つの異なるエピトープに独立して結合する3つの抗原結合ドメイン(三価)を有する、すなわち、各結合ドメインは各抗原に対して一価である抗体である。一実施形態では、3つの結合ドメインがあり、3つの結合ドメインのそれぞれは異なる(別の)抗原に結合する。
【0027】
一実施形態では、3つの結合ドメインがあり、2つの結合ドメインは、同じ抗原の同じエピトープ又は異なるエピトープへの結合を含む、同じ抗原に結合し、第3の結合ドメインは、異なる(別の)抗原に結合する。
【0028】
本発明の抗体は、マルチパラトピック抗体であり得る。
【0029】
「マルチパラトピック抗体」は、本明細書で用いられる場合、2つ以上の異なるパラトープを含み、同じ抗原由来か又は2つの異なる抗原由来の異なるエピトープと相互作用する、本明細書に記載される抗体を指す。本明細書に記載されるマルチパラトピック抗体は、バイパラトピック、トリパラトピック、テトラパラトピックであり得る。
【0030】
「抗原結合ドメイン」は、本明細書で用いられる場合、標的抗原と特異的に相互作用する、1つ又はそれ以上の可変ドメイン、例えば可変ドメインVH及びVLの対の一部又は全体を含む、抗体の部分を指す。抗原結合ドメインは、単一ドメイン抗体を含み得る。一実施形態では、各抗原結合ドメインは、一価である。好ましくは、各抗原結合ドメインは、1つ以下のVH及び1つ以下のVLを含む。
【0031】
「特異的な」は、本明細書で用いられる場合、それに対して特異的である抗原だけを認識する結合ドメイン又はそれに対して非特異的な抗原に対する親和性と比較してそれに対して特異的である抗原に対する著しく高い結合親和性を有する結合ドメインを指すことを意図する。
【0032】
結合親和性は、標準的なアッセイ、例えば、BIAcoreのような表面プラズモン共鳴によって測定され得る。
【0033】
「プロテインA結合ドメイン」は、本明細書で用いられる場合、プロテインAに特異的に結合する結合ドメインを指すことを意図する。プロテインA結合ドメインは、プロテインAを結合する、すなわちプロテインA結合界面を含むVH3ドメイン又はVH3ドメインの部分を指し得る。プロテインAを結合するVH3ドメインの部分は、VH3ドメインのCDRを含まず、すなわちVH3のプロテインA結合界面はCDRを含まず;結果として、プロテインA結合ドメインは本明細書に開示されるように抗原結合ドメインと競合しないことが理解されるであろう。
【0034】
一実施形態では、sが0であり、tが0である場合、本開示による多特異性抗体は:
VH-CH1部分がVL-CL部分と一緒に機能性Fab又はFab’断片を形成する、それぞれ式(I)及び(II)
の重鎖及び軽鎖の二量体として提供される。
【0035】
一実施形態では、sが1であり、tが1である場合、本開示による多特異性抗体は:
2つの重鎖が鎖間相互作用によって、特にCH2-CH3のレベルで接続され、各重鎖のVH-CH1部分が各軽鎖のVL-CL部分と一緒に機能性Fab又はFab’断片を形成する、それぞれ式(I)及び(II)
の2つの重鎖及び2つの軽鎖の二量体として提供される。そのような実施形態では、2つのVH-CH1-CH2-CH3部分は2つのVL-CL部分と一緒に機能性完全長抗体を形成する。そのような実施形態では、完全長抗体は、機能性Fc領域を含み得る。
【0036】
VHは、重鎖可変ドメインを表す。一実施形態では、VHは、ヒト化される。一実施形態では、VHは、完全にヒトである。
【0037】
VLは、軽鎖可変ドメインを表す。一実施形態では、VLは、ヒト化される。一実施形態では、VLは、完全にヒトである。
【0038】
通常、VHとVLの対は、共に、例えばFab断片中で抗原結合ドメインを形成する。一実施形態では、VH及びVLは、同族対を形成する。
【0039】
「同族対」は、本明細書で用いられる場合、インビボで生成された、単一抗体からの可変ドメインの対、すなわち宿主から単離された可変ドメインの自然発生の対合を指す。同族対は、したがって、VHとVLの対である。一例では、同族対は、協力して抗原に結合する。
【0040】
いくつかの例では、例えばV1及び/又はV2、及び/又はV3に含まれる場合、VHは、それ自体で抗原結合ドメインを形成し得る、すなわちそれ自体で目的の抗原に結合する単一ドメイン抗体を表し得る。
【0041】
VHHは、重鎖可変ドメインからなる単一ドメイン抗体を表す。一実施形態では、VHHはラクダ類である。一実施形態では、VHHは、ヒト化される。一実施形態では、VHHは、完全にヒトである。
【0042】
いくつかの例では、例えばV1及び/又はV2、及び/又はV3に含まれる場合、VLはそれ自体で抗原結合ドメインを形成し得る、すなわちそれ自体で目的の抗原に結合する単一ドメイン抗体を表し得る。
【0043】
「可変領域」又は「可変ドメイン」は、本明細書で用いられる場合、CDR及びフレームワーク、特に好適なフレームワークを含む抗体鎖中の領域を指す。
【0044】
本開示での使用のための可変領域は、通常、抗体由来であり、当技術分野で公知の任意の方法によって生成され得る。
【0045】
「由来する」は、本明細書で用いられる場合、用いられる配列又は用いられる配列と非常に類似した配列が、オリジナルの遺伝物質、例えば抗体の軽鎖又は重鎖から得られた事実を指す。
【0046】
「非常に類似した」は、本明細書で用いられる場合、その完全長にわたるアミノ酸配列が、95%以上類似、例えば96、97、98又は99%類似していることを指すことを意図する。
【0047】
本発明での使用のための可変領域は、VH及びVLについて本明細書に上述したように、任意の好適な供給源由来であってもよく、例えば完全にヒトであるか又はヒト化されてもよい。
【0048】
一実施形態では、VH及びVLによって形成された結合ドメインは、第1の抗原に特異的である。
【0049】
一実施形態では、V1の結合ドメインは、第2の抗原に特異的である。
【0050】
一実施形態では、V2の結合ドメインは、第2又は第3の抗原に特異的である。
【0051】
一実施形態では、V3の結合ドメインは、第3又は第4の抗原に特異的である。
【0052】
一実施形態では、VH-VL、V1、V2及びV3の各1個が、示したように、そのそれぞれの抗原を別々に結合する。
【0053】
一実施形態では、CH1ドメインは、抗体重鎖又はその誘導体由来の自然発生のドメイン1である。一実施形態では、CH2ドメインは、抗体重鎖又はその誘導体由来の自然発生のドメイン2である。一実施形態では、CH3ドメインは、抗体重鎖又はその誘導体由来の自然発生のドメイン3である。
【0054】
一実施形態では、軽鎖のCL断片は、定常カッパ配列又はその誘導体である。一実施形態では、軽鎖のCL断片は、定常ラムダ配列又はその誘導体である。
【0055】
本明細書で用いられる場合、自然発生ドメインの誘導体は、自然発生配列中の少なくとも1個のアミノ酸が置き換え又は欠失され、例えば望ましくない特性を除去することによるなどドメインの特性を最適化するが、ドメインを特徴付けている特性(単数又は複数)は保持されることを指すことを意図する。一実施形態では、自然発生ドメインの誘導体は、自然発生配列と比較して、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、10個、11個又は12個のアミノ酸置換又は欠失を含む。
【0056】
一実施形態では、1つ又はそれ以上の天然の又は工学的に作成した鎖間(すなわち、軽鎖と重鎖の間)ジスルフィド結合は、機能性Fab又はFab’断片に存在する。
【0057】
一実施形態では、「天然の」ジスルフィド結合は、式(I)及び(II)のポリペプチド鎖中のCH1とCLの間に存在する。
【0058】
CLドメインが、カッパ又はラムダ由来である場合、結合形成システインの天然の位置は、ヒトcカッパ及びcラムダの214である(Kabat numbering 4th edition 1987)。
【0059】
CH1のジスルフィド結合形成システインの正確な位置は、実際に用いられる特定のドメインに依存する。したがって、例えば、ヒトガンマ-1では、ジスルフィド結合の天然の位置は233位に位置する(Kabat numbering 4th edition 1987)。ガンマ2、3、4、IgM及びIgDのような他のヒトアイソタイプの結合形成システインの位置は公知であり、例えば、ヒトIgM、IgE、IgG2、IgG3、IgG4の127位並びにヒトIgD及びIgA2Bの重鎖の128位である。
【0060】
場合により、式I及びIIのポリペプチドのVHとVLの間にジスルフィド結合があり得る。
【0061】
一実施形態では、本開示による多特異性抗体は、自然発生のCH1とCLの間と等価な又はそれに対応する位置にジスルフィド結合を有する。
【0062】
一実施形態では、CH1を含む定常領域及びCLなどの定常領域は、非自然発生の位置にあるジスルフィド結合を有する。これは、必要とされる位置(単数又は複数)のアミノ酸鎖にシステイン(単数又は複数)を導入することによって分子に工学的に作成され得る。この非天然のジスルフィド結合は、天然のジスルフィド結合に加えて又はその代替えとして、CH1とCLの間に存在する。天然の位置のシステイン(単数又は複数)は、ジスルフィド架橋を形成することができないセリンなどのアミノ酸によって置き換えられ得る。
【0063】
工学的に作成したシステインの導入は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して実施され得る。これらの方法は、限定はされないが、PCR伸長オーバーラップ変異導入、部位特異的変異導入又はカセット変異導入を含む(通常、Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory Press,Cold Spring Harbour,NY,1989;Ausbel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing & Wiley-Interscience,NY,1993参照)。部位特異的変異導入キットは市販されており、例えばQuikChange(登録商標)Site-Directed Mutagenesisキット(Stratagene,LA Jolla,CA)である。カセット変異導入は、Wells et al.,1985,Gene,34:315-323に基づいて実施され得る。或いは、変異体は、アニーリング、ライゲーション及びPCR増幅による全遺伝子合成並びにオーバーラップオリゴヌクレオチドのクローニングによって作成され得る。
【0064】
一実施形態では、CH1とCLの間のジスルフィド結合は完全に不在であり、例えば、鎖間システインは、セリンなどの別のアミノ酸によって置き換えられ得る。したがって、一実施形態では、分子の機能性Fab断片に鎖間ジスルフィド結合は存在しない。参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第2005/003170号などの開示は、鎖間ジスルフィド結合の無いFab断片を提供する方法を記載する。
【0065】
本発明での使用のための好ましい抗体フォーマットは、付加IgG及び付加Fabを含み、これらにおいては、完全IgG又はFab断片が、それぞれ、例えば、全て参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第2009/040562号、国際公開第2010/035012号、国際公開第2011/030107号、国際公開第2011/061492号、国際公開第2011/061246号及び国際公開第2011/086091号に記載されるように、少なくとも1つの追加の抗原結合ドメイン(例えば、1個、2個、3個又は4個の追加の抗原結合ドメイン)、例えば、単一ドメイン抗体(例えばVH若しくはVL、又はVHH)、scFv、dsscFv、dsFvを、前記IgG又はFabの軽鎖のN末端及び/又はC末端に、場合により前記IgG又はFabの重鎖に付加することによって工学的に処理される。特に、Fab-Fvフォーマットは、国際公開2009/040562号に初めて開示され、そのジスルフィド安定化バージョン、Fab-dsFvは、国際公開第2010/035012号に初めて開示された。dsFvがFvのVL又はVHドメインのいずれかとFabのLCのC末端との間の単一リンカーを介してFabに接続される、単一リンカーFab-dsFvは、参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第2014/096390号に初めて開示された。dsFvをIgGの軽鎖(及び場合により重鎖)のC末端に付加することにより工学的に作成した完全長IgGを含む付加IgGは、参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第2015/197789号に初めて開示された。
【0066】
本発明での使用のための別の好ましい抗体フォーマットは、2つのscFv又はdsscFvに連結したFabを含み、各scFv又はdsscFbは同じ又は異なる標的に結合する(例えば、1つのscFv又はdsscFvは治療標的に結合し、1つのscFv又はdsscFvは例えばアルブミンを結合することによって半減期を増加させる)。そのような抗体断片は、その全体及び特に抗体断片の説明に関してが参照によって本明細書に組み込まれる国際特許出願公開第2015/197772号に記載される。本発明での使用のための別の好ましい抗体は、断片が、例えば参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第2013/068571号及びDave et al.,2016,Mabs,8(7)1319-1335に記載されるscFv又はdsscFvの1つのみに連結するFabを含む。
【0067】
V1は、存在する場合、dsscFv、dsFv、scFv、VH、VL又はVHH、例えばdsscFv、dsFv、又はscFvを表す。
【0068】
V2は、存在する場合、dsscFv、dsFv、scFv、VH、VL又はVHH、例えばdsscFv、dsFv、又はscFvを表す。
【0069】
V3は、存在する場合、dsscFv、dsFv、scFv、VH、VL又はVHH、例えばdsscFv、dsFv、又はscFvを表す。
【0070】
式(II)のポリペプチド鎖は、少なくとも1つのdsscFv、dsFv、scFv、VH、又はVHHを含む。
【0071】
「単鎖可変断片」又は「scFv」は、本明細書で用いられる場合、VH可変ドメインとVL可変ドメインの間のペプチドリンカーによって安定化される、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含むか、又はそれらからなる単鎖可変断片を指す。VH及びVL可変ドメインは、任意の好適な方向であってもよく、例えば、VHのC末端は、VLのN末端に連結されてもよく、又はVLのC末端は、VHのN末端に連結されてもよい。
【0072】
「ジスルフィド安定化単鎖可変断片」又は「dsscFv」は、本明細書で用いられる場合、VH可変ドメインとVL可変ドメインの間のペプチドリンカーによって安定化され、VHとVLの間にドメイン間ジスルフィド結合も含む単鎖可変断片を指す。
【0073】
「ジスルフィド安定化可変断片」又は「dsFv」は、本明細書で用いられる場合、VH可変ドメインとVL可変ドメインの間にペプチドリンカーを含まず、VHとVLの間のドメイン間ジスルフィド結合によって代わりに安定化される単鎖可変断片を指す。
【0074】
一実施形態では、V1及び/又はV2及び/又はV3がdsFv又はdsscFvである場合、V1及び/又はV2及び/又はV3の可変ドメインVH及び可変ドメインVLの間のジスルフィド結合は、以下に列挙した2つの残基間である(文脈が他に示さない限り、Kabatの番号付けが以下のリストに用いられる)。Kabat番号付けを参照する場合、関連参照はKabat et al.,1991(5th edition,Bethesda,Md.)「免疫学的関心のタンパク質の配列(Sequence of Proteins of Immunological Interest)」,US Department of Health and Human Services,NIH,USAである。
【0075】
一実施形態では、ジスルフィド結合は:
・VH37+VL95C 例えばProtein Science 6,781-788 Zhu et al(1997)参照;
・VH44+VL100 例えば、Weatherill et al.,Protein Engineering,Design&Selection,25(321-329),2012参照;
・VH44+VL105 例えばJ Biochem.118,825-831 Luo et al(1995)参照;
・VH45+VL87 例えばProtein Science 6,781-788 Zhu et al(1997)参照;
・VH55+VL101 例えばFEBS Letters 377 135-139 Young et al(1995)参照;
・VH100+VL50 例えばBiochemistry 29 1362-1367 Glockshuber et al(1990)参照;
・VH100b+VL49;例えばBiochemistry 29 1362-1367 Glockshuber et al(1990)参照;
・VH98+VL46;例えばProtein Science 6,781-788 Zhu et al(1997)参照;
・VH101+VL46;例えばProtein Science 6,781-788 Zhu et al(1997)参照;
・VH105+VL43 例えば;Proc.Natl.Acad.Sci.USA Vol.90 pp.7538-7542 Brinkmann et al(1993);又はProteins 19,35-47 Jung et al(1994)参照、
・VH106+VL57 例えばFEBS Letters 377 135-139 Young et al(1995)参照
を含む群から選択される位置、及び分子に位置する可変領域対のこれらの対応する位置にある。
【0076】
一実施形態では、ジスフィルド結合はVH44とVL100の位置の間に形成される。
【0077】
上記に列挙したアミノ酸対は、ジスルフィド結合が形成され得るように、システインによる置き換えを助ける位置にある。システインは、公知の技術によってこれらの所望の位置に工学的に作成され得る。一実施形態では、したがって、本開示による工学的に作成したシステインは、所与のアミノ酸位置の自然発生の残基がシステイン残基によって置き換えられる場所を指す。
【0078】
工学的に作成したシステインの導入は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して実施され得る。これらの方法は、限定はされないが、PCR伸長オーバーラップ変異導入、部位特異的変異導入又はカセット変異導入を含む(通常、Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory Press,Cold Spring Harbour,NY,1989;Ausbel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing & Wiley-Interscience,NY,1993参照)。部位特異的変異導入キットは市販されており、例えばQuikChange(登録商標)Site-Directed Mutagenesisキット(Stratagene,La Jolla,CA)である。カセット変異導入は、Wells et al.,1985,Gene,34:315-323に基づいて実施され得る。或いは、変異体は、アニーリング、ライゲーション及びPCR増幅による全遺伝子合成並びにオーバーラップオリゴヌクレオチドのクローニングによって作成され得る。
【0079】
したがって、一実施形態では、V1及び/又はV2及び/又はV3がdsFv又はdsscFvである場合、V1の可変ドメインVH及びVL及び/又はV2の可変ドメインVH及びVL、及び/又はV3の可変ドメインVH及びVLは、2つのシステイン残基間のジスルフィド結合によって連結されてもよく、システイン残基の対の位置は:VH37及びVL95、VH44及びVL100、VH44及びVL105、VH45及びVL87、VH100及びVL50、VH100b及びVL49、VH98及びVL46、VH101及びVL46、VH105及びVL43並びにVH106及びVL57からなる群から選択される。
【0080】
一実施形態では、V1及び/又はV2及び/又はV3がdsFv又はdsscFvである場合、V1の可変ドメインVH及びVL及び/又はV2の可変ドメインVH及びVL及び/又はV3の可変ドメインVH及びVLは、CDRの外側である、1つはVH及び1つはVLの2つのシステイン残基間のジスルフィド結合によって連結されてもよく、システイン残基の対の位置は、VH37及びVL95、VH44及びVL100、VH44及びVL105、VH45及びVL87、VH100及びVL50、VH98及びVL46、VH105及びVL43並びにVH106及びVL57からなる群から選択される。
【0081】
一実施形態では、V1がdsFv又はdsscFvである場合、V1の可変ドメインVH及びVLは、2つの工学的に作成したシステイン残基間、一方の位置はVH44であり他方はVL100のジスルフィド結合によって連結される。一実施形態では、V2がdsFv又はdsscFvである場合、V2の可変ドメインVH及びVLは、2つの工学的に作成したシステイン残基間、一方の位置はVH44であり他方はVL100のジスルフィド結合によって連結される。一実施形態では、V3がdsFv又はdsscFvである場合、V3の可変ドメインVH及びVLは、2つの工学的に作成したシステイン残基間、一方の位置はVH44であり他方はVL100のジスルフィド結合によって連結される。
【0082】
一実施形態では、V1がdsscFv、dsFv、又はscFvである場合、V1のVHドメインはXに接着される。
【0083】
一実施形態では、V1がdsscFv、dsFv、又はscFvである場合、V1のVLドメインはXに接着される。
【0084】
一実施形態では、V2がdsscFv、dsFv、又はscFvである場合、V2のVHドメインはYに接着される。
【0085】
一実施形態では、V2がdsscFv、dsFv、又はscFvである場合、V2のVLドメインはYに接着される。
【0086】
一実施形態では、V3がdsscFv、dsFv、又はscFvである場合、V3のVHドメインはZに接着される。
【0087】
一実施形態では、V3がdsscFv、dsFv、又はscFvである場合、V3のVLドメインはZに接着される。
【0088】
当業者は、V1及び/又はV2及び/又はV3がdsFvを表す場合、多特異性抗体は、X又はY又はZに接着しない対応する遊離のVH又はVLドメインをコードする第3のポリペプチドを含むことを理解するであろう。V1及びV2、V2及びV3、又はV1及びV2及びV3がdsFvである場合、次いで「遊離の可変ドメイン」(すなわち、ジスルフィド結合を介して残りのポリペプチドに連結するドメイン)は、両鎖に共通しているであろう。したがって、X又はY又はZを介してポリペプチドに融合又は連結された実際の可変ドメインは、各ポリペプチド鎖で異なってもよいが、それと対をなす遊離の可変ドメインは、通常、互いに同一であろう。
【0089】
一実施形態では、V1はVH、VL又はVHHであり、抗原結合ドメインを形成する。一実施形態では、V1は、相補的なVLと協力して目的の抗原に結合するVHである。一実施形態では、V1は、相補的なVHと協力して目的の抗原に結合するVLである。
【0090】
一実施形態では、V2はVH、VL又はVHHであり、抗原結合ドメインを形成する。一実施形態では、V2は、相補的なVLと協力して目的の抗原に結合するVHである。一実施形態では、V2は、相補的なVHと協力して目的の抗原に結合するVLである。
【0091】
一実施形態では、V3はVH、VL又はVHHであり、抗原結合ドメインを形成する。一実施形態では、V3は、相補的なVLと協力して目的の抗原に結合するVHである。一実施形態では、V3は、相補的なVHと協力して目的の抗原に結合するVLである。
【0092】
一実施形態では、V1はVHであり、V2はV1のVHと相補的であるVLであり、VH/VL、すなわちV1/V2は、対合し、抗原結合ドメインを形成する、すなわちV1のVHは、V2の相補的なVLと協力して目的の抗原に結合する。
【0093】
一実施形態では、V1はVLであり、V2はV1のVLと相補的であるVHであり、VL/VH、すなわちV1/V2は、対合し、抗原結合ドメインを形成する、すなわちV1のVLは、V2の相補的なVHと協力して目的の抗原に結合する。
【0094】
一実施形態では、V1がVHであり、V2が相補的なVLである場合、V1の可変ドメインVH及びV2のVLは、2つの工学的に作成したシステイン残基間、一方の位置はV1のVH44であり他方はV2のVL100のジスルフィド結合によって連結され得る。一実施形態では、V1がVLであり、V2が相補的なVHである場合、V1の可変ドメインVL及びV2のVHは、2つの工学的に作成したシステイン残基間、一方の位置はV1のVL100であり他方の位置はV2のVH44のジスルフィド結合によって連結され得る。
【0095】
本開示の式(I)のポリペプチド鎖は、プロテインA結合ドメインを含む。一実施形態では、式(I)のポリペプチド鎖は、1つ、2つ、又は3つのプロテインA結合ドメインを含む。
【0096】
プロテインAは、元々、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の細胞壁で見出された42kDaの表面タンパク質である。プロテインAは、免疫グロブリンの検出、定量及び精製に広く使用されてきた。プロテインAは、VH3ファミリー抗体由来のFab部分、及びIgGの定常領域部分(CH2ドメインとCH3ドメインの間)のFcガンマ領域に結合することが報告されている。プロテインAとFabによって形成された複合体の結晶構造は、例えば、Graille et al.,2000,PNAS,97(10):5399-5404に記載されている。
【0097】
本開示の文脈では、プロテインAは、プロテインAバリアント又は誘導体が、VH3ドメインに結合するその能力を維持する程度まで、天然のプロテインA及びその任意のバリアント又は誘導体を包含する。
【0098】
一実施形態では、式(I)のポリペプチド鎖は、VH及び/又はCH2-CH3及び/又はV1に存在するプロテインA結合ドメインを含む。一実施形態では、式(I)のポリペプチド鎖は、VH及び/又はCH2-CH3及び/又はV1に存在する1つ、2つ又は3つのプロテインA結合ドメインを含む。一実施形態では、式(I)のポリペプチド鎖は、VH又はV1に存在する1つのプロテインA結合ドメインのみを含む。一実施形態では、sは0であり、tは0であり、式(I)のポリペプチド鎖は、VH又はV1に存在する1つのプロテインA結合ドメインのみを含む。一実施形態では、式(I)のポリペプチド鎖は、VHに存在する1つのプロテインA結合ドメインのみを含む。一実施形態では、sは0であり、tは0であり、pは0であり、式(I)のポリペプチド鎖は、VHに存在する1つのプロテインA結合ドメインのみを含む。一実施形態では、式(I)のポリペプチド鎖は、V1に存在する1つのプロテインA結合ドメインのみを含む。一実施形態では、sは0であり、tは0であり、pは1であり、式(I)のポリペプチド鎖は、V1に存在する1つのプロテインA結合ドメインのみを含む。
【0099】
一実施形態では、式(I)のポリペプチド鎖は、2つのプロテインA結合ドメインを含む。一実施形態では、式(I)のポリペプチド鎖は、それぞれVH及びCH2-CH3に存在する2つのプロテインA結合ドメインを含む。別の実施形態では、式(I)のポリペプチド鎖は、それぞれVH及びV1に存在する2つのプロテインA結合ドメインを含む。別の実施形態では、式(I)のポリペプチド鎖は、それぞれCH2-CH3及びV1に存在する2つのプロテインA結合ドメインを含む。
【0100】
一実施形態では、式(I)のポリペプチド鎖は、それぞれVH、CH2-CH3及びV1に存在する、3つのプロテインA結合ドメインを含む。
【0101】
天然のプロテインAは、特に、IgGの定常領域部分のFcガンマ領域と相互作用することができる。より特には、プロテインAは、CH2とCH3の間の結合ドメインと相互作用することができる。一実施形態では、sが1であり、tが1である場合、CH2とCH3の両方が、IgGクラスの自然発生ドメインである。
【0102】
一部の実施形態では、プロテインA結合ドメイン(単数又は複数)は、プロテインAに結合するVH3ドメイン又はそのバリアントを含むか又はそれらからなる。一部の実施形態では、プロテインA結合ドメイン(単数又は複数)は、自然発生のVH3ドメインを含むか又はそれらからなる。一部の実施形態では、プロテインAに結合するVH3ドメインのバリアントは、自然発生のVH3ドメインのバリアントであり、前記自然発生のVH3ドメインは、プロテインAに結合することができない。
【0103】
式(II)のポリペプチド鎖は、少なくとも1つのdsscFv、dsFv、scFv、VH、又はVHHを含む。一実施形態では、式(II)のポリペプチド鎖は、1つのみのdsscFvを含む。一実施形態では、式(II)のポリペプチド鎖は、1つのみのdsFvを含む。一実施形態では、式(II)のポリペプチド鎖は、1つのみのscFvを含む。一実施形態では、式(II)のポリペプチド鎖は、1つのみのVHを含む。一実施形態では、式(II)のポリペプチド鎖は。1つのVHHのみを含む。
【0104】
本開示の式(II)のポリペプチド鎖は、プロテインAに結合しない。一実施形態では、V2の結合ドメインは、プロテインAに結合しない。一実施形態では、V3の結合ドメインは、プロテインAに結合しない。一実施形態では、V2とV3の両方が、プロテインAに結合しない。一部の実施形態では、V2及び/又はV3は、VH1及び/又はVH2及び/又はVH4及び/又はVH5及び/又はVH6を含むか、又はそれらからなり、VH3ドメインを含まない。一部の実施形態では、V2及び/又はV3は、プロテインAに結合しないVH3ドメイン又はそのバリアントを含むか、又はそれらからなる。一部の実施形態では、V2及び/又はV3は、プロテインAに結合することができない自然発生のVH3ドメインを含むか、又はそれらからなる。一部の実施形態では、プロテインAに結合しないVH3ドメインのバリアントは、自然発生のVH3のバリアントであり、前記自然発生のVH3ドメインはプロテインAに結合することができる。
【0105】
ヒトVH3生殖系列遺伝子及びVH3ドメイン(又はフレームワーク)は、よく特徴付けられている。多くの自然発生のVH3ドメインは、プロテインAに結合する能力を有するが、ある特定の自然発生のVH3ドメインは、プロテインAに結合する能力を有さない(Roben et al.,1995,J Immunol.;154(12):6437-6445)。
【0106】
本開示での使用のためのVH3ドメインは、いくつかの方法によって得ることができる。一実施形態では、本開示での使用のためのVH3ドメインは自然発生のVH3ドメインであり、本開示のポリペプチド(I)及び/又は(II)内のその位置によって、プロテインAに結合することができるか又はできないかで選択される。例えば、抗体のパネルは、非ヒト動物の免疫化によって目的の抗原に対して生成され、次いでヒト化され、ヒト化抗体は、例えばプロテインAアフィニティーカラムに対して、ヒト化VH3ドメインを介してプロテインAに結合することができるか又はできないかに基づき、スクリーニング又は選択され得る。或いは、ディスプレイ技術(例えば、ファージディスプレイ、イーストディスプレイ、リボソームディスプレイ、バクテリアディスプレイ、哺乳動物細胞表面ディスプレイ、mRNAディスプレイ、DNAディスプレイ)が使用され、抗体ライブラリーをスクリーニングし、特に、CDRを含まないプロテインA結合界面を介して結合する、又はプロテインAに結合しないVH3ドメインを含む抗体を選択することができる。
【0107】
或いは、本開示での使用のためのVH3ドメインは、自然発生のVH3のバリアントである。一実施形態では、VH3バリアントは、プロテインAに結合することができる自然発生のVH3の配列を含み、プロテインAに結合するその能力を消失させる少なくとも1つのアミノ酸変異をさらに含む。一実施形態では、プロテインAに結合するVH3バリアントは、プロテインAに結合することができない自然発生のVH3の配列を含み、少なくとも1つのアミノ酸変異をさらに含む。そのような実施形態では、変異(単数又は複数)は、VH3ドメインのプロテインAに結合する能力を得ることを担い、すなわち、変異(単数又は複数)は、天然には存在しないプロテインA結合ドメインの生成に寄与する。
【0108】
一実施形態では、VH3バリアントは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、又は12個のアミノ酸変異を含む。一実施形態では、VH3バリアントは、Kabatに従って番号付けられ、例えば、Graille et al.,2000,PNAS,97(10):5399-5404に記載されるように、VH3の位置15、17、19、57、59、64、65、66、68、70、81又は82に変異を含む。より特には、VH3バリアントは、Kabatに従って番号付けられ、例えば、Graille et al.,2000,PNAS,97(10):5399-5404に記載されるように、VH3の位置82a又は82bに変異を含み得る。変異は、置換、欠失、又は挿入であってもよい。一実施形態では、VH3バリアントは、Kabatに従って番号付けられ、VH3の位置15、17、19、57、59、64、65、66、68、70、81又は82に置換を含む。より特には、VH3バリアントは、Kabatに従って番号付けられ、例えば、Graille et al.,2000,PNAS,97(10):5399-5404に記載されるように、VH3の位置82a又は82bに置換を含み得る。
【0109】
自然発生のVH1、VH2、VH4、VH5及びVH6はプロテインAに結合しない。一実施形態では、プロテインAに結合しないVHドメインは、VH1である。一実施形態では、プロテインAに結合しないVHドメインは、VH2である。一実施形態では、プロテインAに結合しないVHドメインは、VH4である。一実施形態では、プロテインAに結合しないVHドメインは、VH5である。一実施形態では、プロテインAに結合しないVHドメインは、VH6である。
【0110】
本発明の文脈では、新しい方法が開発されており、本発明によるポリペプチド又は結合ドメインのプロテインAへの結合を評価するために使用され得る。プロテインA相互作用アッセイは、プロテインAへの結合を定性的に評価するために開発された。したがって、一態様では、本発明は、本発明によるポリペプチド又は結合ドメインを選択するための方法であって、プロテインA相互作用アッセイの使用を含む方法を提供する。実施例に記載されるように、プロテインA相互作用アッセイが使用され得る。
【0111】
一態様では、本発明は、本発明によるポリペプチド(II)での使用のための、すなわちプロテインAに結合しないdsscFv、dsFv、scFv、VH、又はVHHを選択するための方法であって:
a)dsscFv、dsFv、scFv、VH、又はVHHを付加した、プロテインAに結合しないFabを含む試験分子を産生するステップ;及び
b)ステップa)で得られた試験分子をプロテインAクロマトグラフィーカラムにローディングするステップ;及び
c)ステップb)から得られたフロースルーを回収するステップ;及び
d)ステップb)のカラムをランニングバッファーで洗浄するステップ;及び
e)酸性ステップ溶出を実施するステップ;及び、
f)フロースルーから回収された試験分子中に含まれるdsscFv、dsFv、scFv、VH、又はVHHを選択するステップ
を含む方法を提供する。
【0112】
一実施形態では、プロテインAに結合しないFabは、マウスFabである。一実施形態では、プロテインAクロマトグラフィーカラムは、POROS(商標)A 20μmカラム(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)である。一実施形態では、ランニングバッファーは、PBS pH7.4である。一実施形態では、ステップd)では、カラムは、30分間60カラム容積で洗浄した。一実施形態では、ステップe)での酸性ステップ溶出は、2分間、2.0ml/分で、0.1M グリシン-HCl pH2.7によって実施した。
【0113】
さらに、Biacoreを使用する表面プラズモン共鳴アッセイは、プロテインAヘの結合を定量的に評価するために開発された。したがって、一態様では、本発明は、本発明によるポリペプチド又は結合ドメインを選択するための方法であって、Biacoreアッセイの使用を含む方法を提供する。実施例に記載されるように、Biacoreアッセイが使用され得る。
【0114】
一態様では、本発明は、本発明によるポリペプチド(II)での使用のための、すなわちプロテインAに結合しないdsscFv、dsFv、scFv、VH、又はVHHを選択するための方法であって:
a)dsscFv、dsFv、scFv、VH、又はVHHを付加した、プロテインAに結合しないFabを含む試験分子を産生するステップ;及び
b)例えばBiacoreを使用して、表面プラズモン共鳴により、ステップa)で得られた試験分子の結合を測定するステップ;及び
c)非結合陰性対照を滴定するステップ;及び
d)非結合陰性対照で観察された応答よりも2倍以下の結合応答を示す試験分子に含まれるdsscFv、dsFv、scFv、VH、又はVHHを選択するステップ
を含む方法を提供する。
【0115】
一実施形態では、プロテインAに結合しないFabは、マウスFabである。
【0116】
実施例に記載されるように、本発明者らは、式(I)のポリペプチド鎖はプロテインAに結合するが、抗体軽鎖、すなわち式(II)のポリペプチド鎖の本発明の文脈でプロテインAに結合する能力を完全に消失させることの重要性を示した。したがって、この方法は、ポリペプチド(I)の一部として選択及び使用され得る、プロテインAへの強い結合を示すポリペプチド又はプロテインA結合ドメイン、及び式(II)のポリペプチド鎖に含まれてはならないプロテインAへの弱い結合を示すポリペプチド又はプロテインA結合ドメインの同定を可能にする。
【0117】
一部の実施形態では、pは1である。一部の実施形態では、pは0である。一部の実施形態では、qは1である。一部の実施形態では、qは0であり、rは1である。一部の実施形態では、rは1である。一部の実施形態では、qは1であり、rは0である。一部の実施形態では、qは1であり、rは1である。一部の実施形態では、sは1である。一部の実施形態では、sは0である。一部の実施形態では、tは1である。一部の実施形態では、tは0である。一部の実施形態では、sは1であり、tは1である。一部の実施形態では、sは0であり、tは0である。
【0118】
一実施形態では、pは1であり、qは1であり、rは0であり、sは0であり、tは0であり、V1とV2の両方はdsscFvを表す。したがって、一態様では:
a)式(Ia):
VH-CH1-X-V1
のポリペプチド鎖;及び
b)式(IIa):
VL-CL-Y-V2
のポリペプチド鎖
を含むか又はこれらからなる多特異性抗体であって、
式中:
VHは重鎖可変ドメインを表し;
CH1は重鎖定常領域のドメイン1を表し;
Xは結合又はリンカーを表し;
Yは結合又はリンカーを表し;
V1はdsscFvを表し;
VLは軽鎖可変ドメインを表し;
CLはCカッパなどの、軽鎖定常領域由来のドメインを表し;
V2はdsscFvを表し;
式(Ia)のポリペプチド鎖はプロテインA結合ドメインを含み;
式(IIa)のポリペプチド鎖はプロテインAに結合しない、多特異性抗体を提供する。
【0119】
そのような実施形態では、V2はプロテインAに結合せず、すなわちV2のdsscFvはプロテインA結合ドメインを含まない。一実施形態では、V2、すなわちV2のdsscFvは、VH1ドメインを含む。別の実施形態では、V2、すなわちV2のdsscFvは、プロテインAに結合しないVH3ドメインを含む。一実施形態では、V2、すなわちV2のdsscFvは、VH2ドメインを含む。一実施形態では、V2、すなわちV2のdsscFvは、VH4ドメインを含む。一実施形態では、V2、すなわちV2のdsscFvは、VH5ドメインを含む。一実施形態では、V2、すなわちV2のdsscFvは、VH6ドメインを含む。一実施形態では、式(Ia)のポリペプチド鎖は、VH又はV1に存在する1つだけのプロテインA結合ドメインを含む。一実施形態では、式(Ia)のポリペプチド鎖は、V1に存在する1つのみのプロテインA結合ドメインを含む。別の実施形態では、式(Ia)のポリペプチド鎖は、それぞれVH又はV1に存在する2つのプロテインA結合ドメインを含む。
【0120】
別の実施形態では、pは0であり、qは1であり、rは0であり、sは1であり、tは1であり、V2はdsscFvである。したがって、一態様では:
a)式(Ib):
VH-CH1-CH2-CH3
のポリペプチド鎖;及び
b)式(IIb):
VL-CL-Y-V2
のポリペプチド鎖
を含むか又はこれらからなる多特異性抗体であって、
式中:
VHは重鎖可変ドメインを表し;
CH1は重鎖定常領域のドメイン1を表し;
CH2は重鎖定常領域のドメイン2を表し;
CH3は重鎖定常領域のドメイン3を表し;
Yは結合又はリンカーを表し;
VLは軽鎖可変ドメインを表し;
CLはCカッパのような、軽鎖定常領域由来のドメインを表し;
V2はdsscFvを表し;
式(Ib)のポリペプチド鎖はプロテインA結合ドメインを含み;
式(IIb)のポリペプチド鎖はプロテインAに結合しない、多特異性抗体を提供する。
【0121】
そのような実施形態では、V2はプロテインAに結合せず、すなわちV2のdsscFvはプロテインA結合ドメインを含まない。一実施形態では、V2、すなわちV2のdsscFv、VH1ドメインを含む。別の実施形態では、V2、すなわちV2のdsscFvは、プロテインAに結合しないVH3ドメインを含む。一実施形態では、式(Ib)のポリペプチド鎖は、VH又はCH2-CH3に存在する1つのみのプロテインA結合ドメインを含む。別の実施形態では、式(Ib)のポリペプチド鎖は、それぞれVH及びCH2-CH3に存在する2つのプロテインA結合ドメインを含む。
【0122】
別の実施形態では、pは0であり、qは1であり、rは0であり、sは1であり、tは1であり、V2はdsFvである。したがって、一態様では:
a)式(Ic):
VH-CH1-CH2-CH3
のポリペプチド鎖;及び
b)式(IIc):
VL-CL-Y-V2
のポリペプチド鎖
を含むか又はこれらからなる多特異性抗体であって、
式中:
VHは重鎖可変ドメインを表し;
CH1は重鎖定常領域のドメイン1を表し;
CH2は重鎖定常領域のドメイン2を表し;
CH3は重鎖定常領域のドメイン3を表し;
Yは結合又はリンカーを表し;
VLは軽鎖可変ドメインを表し;
CLはCカッパのような、軽鎖定常領域由来のドメインを表し;
V2はdsFvを表し;
式(Ic)のポリペプチド鎖はプロテインA結合ドメインを含み;
式(IIc)のポリペプチド鎖はプロテインAに結合しない、多特異性抗体を提供する。
【0123】
そのような実施形態では、V2、すなわちV2のdsFvは、プロテインAに結合しない。一実施形態では、V2、すなわちV2のdsFvは、VH1ドメインを含む。別の実施形態では、V2、すなわちV2のdsFvは、プロテインAに結合しないVH3ドメインを含む。一実施形態では、式(Ic)のポリペプチド鎖は、VH又はCH2-CH3に存在する1つのみのプロテインA結合ドメインを含む。別の実施形態では、式(Ic)のポリペプチド鎖は、それぞれVH及びCH2-CH3に存在する2つのプロテインA結合ドメインを含む。
【0124】
別の実施形態では、pは0であり、qは0であり、rは1であり、sは1であり、tは1であり、V3はdsscFvである。したがって、一態様では:
a)式(Id):
VH-CH1-CH2-CH3
のポリペプチド鎖;及び
b)式(IId):
V3-Z-VL-CL;
のポリペプチド鎖
を含むか又はこれらからなる多特異性抗体であって、
式中:
VHは重鎖可変ドメインを表し;
CH1は重鎖定常領域のドメイン1を表し;
CH2は重鎖定常領域のドメイン2を表し;
CH3は重鎖定常領域のドメイン3を表し;
Zは結合又はリンカーを表し;
VLは軽鎖可変ドメインを表し;
CLはCカッパのような、軽鎖定常領域由来のドメインを表し;
V3はdsscFvを表し;
式(Id)のポリペプチド鎖はプロテインA結合ドメインを含み;
式(IId)のポリペプチド鎖はプロテインAに結合しない、多特異性抗体を提供する。
【0125】
そのような実施形態では、V3、すなわちV3のdsscFvは、プロテインAに結合しない。一実施形態では、V3、すなわちV3のdsscFvは、VH1ドメインを含む。別の実施形態では、V3、すなわちV3のdsscFvは、プロテインAに結合しないVH3ドメインを含む。一実施形態では、式(Id)のポリペプチド鎖は、VH又はCH2-CH3に存在する1つのみのプロテインA結合ドメインを含む。別の実施形態では、式(Id)のポリペプチド鎖は、それぞれVH及びCH2-CH3に存在する2つのプロテインA結合ドメインを含む。
【0126】
一実施形態では、Xは結合である。
【0127】
一実施形態では、Yは結合である。
【0128】
一実施形態では、Zは結合である。
【0129】
一実施形態では、XとYの両方が結合である。一実施形態では、XとZの両方が結合である。一実施形態では、YとZの両方が結合である。一実施形態では、X、Y及びZが結合である。
【0130】
一実施形態では、Xはリンカー、好ましくはペプチドリンカー、例えばsが0であり、tが0である場合、部分CH1とV1を接続するために好適なペプチド、又は例えばtが1である場合、部分CH3とV1を接続するために好適なペプチドである。
【0131】
一実施形態では、Yはリンカー、好ましくはペプチドリンカー、例えば部分CLとV2を接続するために好適なペプチドである。
【0132】
一実施形態では、Zはリンカー、好ましくはペプチドリンカー、例えば部分VLとV3を接続するために好適なペプチドである。
【0133】
一実施形態では、XとYの両方がリンカーである。一実施形態では、XとYの両方がペプチドリンカーである。一実施形態では、XとZの両方がリンカーである。一実施形態では、XとZの両方がペプチドリンカーである。一実施形態では、YとZの両方がリンカーである。一実施形態では、YとZの両方がペプチドリンカーである。一実施形態では、X、Y及びZがリンカーである。一実施形態では、X、Y及びZがペプチドリンカーである。
【0134】
用語「ペプチドリンカー」は、本明細書で使用される場合、アミノ酸を含むペプチドを指す。好適なペプチドリンカーの範囲は、当業者には公知であろう。
【0135】
一実施形態では、ペプチドリンカーは、50アミノ酸長又はそれ未満、例えば25アミノ酸又はそれ未満、例えば20アミノ酸又はそれ未満、例えば15アミノ酸又はそれ未満、例えば5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14アミノ酸長である。
【0136】
一実施形態では、リンカーは、配列1~67に示す配列から選択される。
【0137】
一実施形態では、リンカーは、配列番号1又は配列番号2に示す配列から選択される。
【0138】
一実施形態では、Xは、配列SGGGGTGGGGS(配列番号1)を有する。一実施形態では、Yは、配列SGGGGTGGGGS(配列番号1)を有する。一実施形態では、Zは、配列SGGGGTGGGGS(配列番号1)を有する。一実施形態では、Xは、配列SGGGGSGGGGS(配列番号2)を有する。一実施形態では、Yは、配列SGGGGSGGGGS(配列番号2)を有する。一実施形態では、Zは、配列SGGGGSGGGGS(配列番号2)を有する。一実施形態では、pが1であり、qが1であり、rが0であり、Zがない場合、Xは配列番号1に示す配列を有し、Yは配列番号2に示す配列を有する。
【0139】
一実施形態では、Xは、配列番号69又は70に示す配列を有する。一実施形態では、Yは、配列番号69又は70に示す配列を有する。一実施形態では、Zは、配列番号69又は70に示す配列を有する。一実施形態では、pが1であり、qが1であり、rが0であり、Zがない場合、Xは配列番号69に示す配列を有し、Yは配列番号70に示す配列を有する。
【表1】
【表2-1】
【表2-2】
【0140】
(S)は、配列14~18において場合による。
【0141】
剛性リンカーの例は、ペプチド配列GAPAPAAPAPA(配列番号52)、PPPP(配列番号53)及びPPPを含む。
【0142】
一実施形態では、ペプチドリンカーは、アルブミン結合ペプチドである。
【0143】
アルブミン結合ペプチドの例は、国際公開第2007/106120号に提供され、
【表3】
を含む。
【0144】
有利には、リンカーとしてのアルブミン結合ペプチドの使用は、多特異性抗体の半減期を増加させることができる。
【0145】
一実施形態では、V1がscFv又はdsscFvである場合、リンカー、例えばV1の可変ドメインVHとVLを接続するための好適なペプチドリンカーがある。
【0146】
一実施形態では、V2がscFv又はdsscFvである場合、リンカー、例えばV2の可変ドメインVHとVLを接続するための好適なペプチドリンカーがある。
【0147】
一実施形態では、V3がscFv又はdsscFvである場合、リンカー、例えばV3の可変ドメインVHとVLを接続するための好適なペプチドリンカーがある。
【0148】
一実施形態では、scFv又はdsscFvのペプチドリンカーは、15~20アミノ酸など、12~25アミノ酸長の範囲である。一実施形態では、scFv又はdsscFvのペプチドリンカーは、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25アミノ酸である。
【0149】
一実施形態では、V1がscFv又はdsscFvである場合、V1の可変ドメインVHとVLを接続するリンカーは、配列GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号68)を有する。一実施形態では、V2がscFv又はdsscFvである場合、V2の可変ドメインVHとVLを接続するリンカーは、配列GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号68)を有する。一実施形態では、V3がscFv又はdsscFvである場合、V3の可変ドメインVHとVLを接続するリンカーは、配列GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号68)を有する。
【0150】
一実施形態では、V1がscFv又はdsscFvである場合、V1の可変ドメインVHとVLを接続するリンカーは、配列SGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号69)を有する。一実施形態では、V2がscFv又はdsscFvである場合、V2の可変ドメインVHとVLを接続するリンカーは、配列SGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号69)を有する。一実施形態では、V3がscFv又はdsscFvである場合、V3の可変ドメインVHとVLを接続するリンカーは、配列SGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号69)を有する。
【0151】
一実施形態では、V1がscFv又はdsscFvである場合、V1の可変ドメインVHとVLを接続するリンカーは、配列SGGGGSGGGGTGGGGS(配列番号70)を有する。一実施形態では、V2がscFv又はdsscFvである場合、V2の可変ドメインVHとVLを接続するリンカーは、配列SGGGGSGGGGTGGGGS(配列番号70)を有する。一実施形態では、V3がscFv又はdsscFvである場合、V3の可変ドメインVHとVLを接続するリンカーは、配列SGGGGSGGGGTGGGGS(配列番号70)を有する。
【0152】
本開示は、本明細書に開示される配列と80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%類似している配列も提供する。
【0153】
「同一性」は、本明細書で使用される場合、アラインした配列の任意の特定の位置で、アミノ酸残基が配列間で同一であることを示す。
【0154】
「類似性」は、本明細書で使用される場合、アラインした配列の任意の特定の位置で、アミノ酸残基が配列間で類似の型であることを示す。例えば、ロイシンは、ロイシンはイソロイシン又はバリンに置換される。互いに置換されることが多い他のアミノ酸としては、限定はされないが:
-フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン(芳香族側鎖を有するアミノ酸);
-リシン、アルギニン及びヒスチジン(塩基性側鎖を有するアミノ酸);
-アスパラギン酸及びグルタミン酸(酸性側鎖を有するアミノ酸);
-アスパラギン及びグルタミン(アミド側鎖を有するアミノ酸);並びに
-システイン及びメチオニン(硫黄含有側鎖を有するアミノ酸)
を含む。
【0155】
同一性及び類似性の程度は、容易に算出され得る(Computational Molecular Biology,Lesk,AM,ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing.Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part 1,Griffin,AM,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987,Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991、NCBIから利用できるBLAST(商標)ソフトウェア(Altschul,S.F.et al.,1990,J.Mol.Biol.215:403-410;Gish,W.&States,D.J.1993,Nature Genet.3:266-272.Madden,T.L.et al.,1996,Meth.Enzymol.266:131-141;Altschul,S.F.et al.,1997,Nucleic Acids Res.25:3389-3402;Zhang,J.&Madden,T.L.1997,Genome Res.7:649-656,)。
【0156】
本発明の多特異性抗体は、当技術分野で公知の任意の好適な方法によって生成され得る。
【0157】
抗原ポリペプチドに対して生成した抗体を得ることができ、周知の及び慣例のプロトコールを使用して、動物、好ましくは非ヒト動物にポリペプチドを投与することによる、動物の免疫化が必要である(例えば、Handbook of Experimental Immunology,D.M.Weir(ed.),Vol4,Blackwell Scientific Publishers,Oxford,England,1986を参照)。ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ウシ、ラクダ又はブタのような多くの温血動物が免疫され得る。しかしながら、マウス、ウサギ、ブタ及びラットが通常最も好適である。
【0158】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術(Kohler&Milstein,1975,Nature,256:495-497)、トリオーマ(trioma)技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor et al 1983,Immunology Today,4:72)及びEBVハイブリドーマ技術(Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,pp77-96,Alan R Liss,Inc.,1985)のような、当技術分野で公知の任意の方法によって調製され得る。
【0159】
抗体は、例えば、Babcook,J.et al 1996,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93(15):7843-7848l;国際公開第92/02551号;国際公開第2004/051268号及び国際公開第2004/106377号によって記載された方法による特定の抗体の産生のために選択した単一のリンパ球から生成された免疫グロブリン可変領域cDNAをクローニング及び発現することにより、単一リンパ球抗体法を使用しても生成することができる。
【0160】
本開示での使用のための抗体は、当技術分野で公知の様々なファージディスプレイ法を使用しても生成することができ、Brinkman et al.(J.Immunol.Methods,1995,182:41-50)、Ames et al.(J.Immunol.Methods,1995,184:177-186)、Kettleborough et al.(Eur.J.Immunol. 1994,24:952-958)、Persic et al.(Gene,1997 187 9-18),Burton et al.(Advances in Immunology,1994,57:191-280)及び国際公開第90/02809号;国際公開第91/10737号;国際公開第92/01047号;国際公開第92/18619号;国際公開第93/11236号;国際公開第95/15982号;国際公開第95/20401号;及び米国特許第5698426号;同第5223409号;同第5403484号;同第5580717号;同第5427908号;同第5750753号;同第5821047号;同第5571698号;同第5427908号;同第5516637号;同第5780225号;同第5658727号;同第5733743号;同第5969108号、及び国際公開第2011/30305号に開示されるものを含む。
【0161】
一実施形態では、本開示による多特異性抗体はヒト化される。
【0162】
ヒト化(CDR移植抗体を含む)は、本明細書で用いられる場合、非ヒト種由来の1つ又はそれ以上の相補性決定領域(CDR)及びヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する分子を指す(例えば、米国特許第5585089号;国際公開第91/09967号参照)。CDR全体よりもCDRの特異性決定残基を移行することだけが必要であり得ることが理解されるであろう(例えば、Kashmiri et al.,2005,Methods,36,25-34参照)。ヒト化抗体は、場合により、CDRが由来する非ヒト種由来の1つ又はそれ以上のフレームワーク残基をさらに含み得る。
【0163】
本明細書で使用される場合、用語「ヒト化抗体」は、重鎖及び/又は軽鎖が、アクセプター抗体(例えばヒト抗体)の重鎖及び/又は軽鎖可変領域フレームワークへと移植されたドナー抗体(例えばマウスモノクローナル抗体)由来の1つ又はそれ以上のCDR(所望であれば、1つ又はそれ以上の改変CDRを含む)を含有する抗体を指す。検討のため、Vaughan et al,Nature Biotechnology,16,535-539,1998参照。一実施形態では、CDR全体が移行されるよりも、本明細書に記載されるいずれか1つのCDR由来の1つ又はそれ以上の特異性決定残基だけがヒト抗体フレームワークに移行される(例えば、Kashmiri et al.,2005,Methods,36,25-34参照)。一実施形態では、本明細書に記載の1つ又はそれ以上のCDR由来の特異性決定残基のみが、ヒト抗体フレームワークに移行される。別の実施形態では、本明細書に記載の各CDR由来の特異性決定残基のみが、ヒト抗体フレームワークに移行される。
【0164】
CDR又は特異性決定残基が移植される場合、任意の適切なアクセプター可変領域フレームワーク配列は、マウス、霊長類及びヒトフレームワーク領域を含む、CDRが由来するドナー抗体のクラス/型を鑑みて使用され得る。好適には、本発明によるヒト化抗体は、ヒトアクセプターフレームワーク領域並びに本明細書で提供される1つ又はそれ以上のCDRを含む可変ドメインを有する。
【0165】
本開示で使用され得るヒトフレームワークの例は、KOL、NEWM、REI、EU、TUR、TEI、LAY及びPOM(上記のKabat et al)である。例えば、KOL及びNEWMは重鎖のために使用することができ、REIは軽鎖のために使用することができ、並びにEU、LAY及びPOMは重鎖と軽鎖の両方のために使用することができる。或いは、ヒト生殖系列配列が使用されてもよい;これらはhttp://www2.mrc-lmb.cam.ac.uk/vbase/list2.phpで利用可能である。
【0166】
本開示のヒト化抗体では、アクセプター重鎖及び軽鎖は必ずしも同じ抗体由来である必要はなく、所望であれば、異なる鎖由来のフレームワーク領域を有する複合鎖を含む。
【0167】
フレームワーク領域は、アクセプター抗体のものと正確に同じ配列を持つ必要はない。例えば、異常な残基が、そのアクセプター鎖クラス又は型のためのより頻繁に生じる残基に変更され得る。或いは、ドナー抗体の同じ位置に見出される残基に対応するように、アクセプターフレームワーク領域中の選択された残基は変更され得る(Reichmann et al 1998,Nature,332,323-324参照)。そのような変更は、ドナー抗体の親和性を回復するために必要な最小限に維持するべきである。変更される必要があり得る、アクセプターフレームワーク領域中の残基を選択するためのプロトコールは、国際公開第91/09967号に記載される。
【0168】
フレームワークの誘導体は、代替えのアミノ酸、例えばドナー残基と置き換えられる1個、2個、3個又は4個のアミノ酸を有し得る。
【0169】
ドナー残基は、ドナー抗体、すなわち元々CDRが由来する抗体由来の残基である。ドナー残基は、ヒト受容体フレームワーク由来の好適な残基(アクセプター残基)によって置き換えられ得る。
【0170】
一実施形態では、本開示の多特異性抗体は、完全にヒトであり、特に1つ又はそれ以上の可変ドメインは完全にヒトである。
【0171】
完全ヒト抗体は、重鎖と軽鎖の両方の可変領域及び定常領域(存在する場合)が全てヒト起源であるか、又はヒト起源の配列と実質的に同一であり、必ずしも同じ抗体由来ではないものである。完全ヒト抗体の例は、例えば、欧州特許第0546073号、米国特許第5545806号、米国特許第5569825号、米国特許第5625126号、米国特許第5633425号、米国特許5661016号、米国特許第5770429号、欧州特許第0438474号及び欧州特許第0463151号の一般項に記載されるように、例えば、上記のファージディスプレイ法によって産生された抗体、及びマウス免疫グロブリン可変領域及び場合により定常領域遺伝子がそれらのヒトの相対物によって置き換えられたマウスによって産生された抗体を含み得る。
【0172】
一実施形態では、本開示の多特異性抗体は、2個、3個又はそれより多くの目的の異なる抗原に選択的に結合することができる。一実施形態では、本開示の多特異性抗体は、2個、3個又はそれより多くの目的の異なる抗原に同時に結合することができる。
【0173】
一実施形態では、VH/VL、又はV1又はV2又はV3によって形成された抗原結合ドメインによって結合された目的の抗原は、独立して、細胞会合タンパク質、例えば細菌細胞、酵母細胞、T細胞、B細胞、内皮細胞又は腫瘍細胞のような細胞の細胞表面タンパク質、及び可溶性タンパク質から選択される。
【0174】
目的の抗原は、疾患又は感染の間に上方制御されるタンパク質、例えば受容体及び/又はそれらの対応するリガンドのような、任意の医学的な関連タンパク質であってもよい。抗原の特定の例は、T細胞又はB細胞シグナル伝達受容体のような細胞表面受容体、共刺激分子、チェックポイント阻害剤、ナチュラルキラー細胞受容体、免疫グロブリン受容体、TNFRファミリー受容体、B7ファミリー受容体、接着分子、インテグリン、サイトカイン/ケモカイン受容体、GPCR、増殖因子受容体、キナーゼ受容体、組織特異的抗原、がん抗原、病原体認識受容体、補体受容体、ホルモン受容体又は、サイトカイン、ケモカイン、ロイコトリエン、増殖因子、ホルモン若しくは酵素のような可溶性分子、又はイオンチャネル、エピトープ、断片及びそれらの翻訳後改変形態を含む。
【0175】
一実施形態では、本開示の多特異性抗体は、目的の抗原(単数又は複数)の活性を機能的に変更するために使用され得る。例えば、抗体融合タンパク質は、直接又は間接的に、前記抗原の活性を中和、アンタゴナイズ又はアゴナイズしてもよい。
【0176】
一実施形態では、V1、V2及びV3は同じ抗原に特異的であり、例えばその同じ又は異なるエピトープに結合する。一実施形態では、V3は存在せず、V1及びV2は同じ抗原、例えば同じ抗原の同じ又は異なるエピトープに特異的である。一実施形態では、V3は存在せず、V1及びV2は2つの異なる抗原に特異的である。
【0177】
一実施形態では、VH/VL又はV1又はV3によって結合される目的の抗原は、補体経路活性化及び/又はエフェクター細胞動員のようなエフェクター機能を動員する能力を提供する。
【0178】
エフェクター機能の動員は、細胞と関連するエフェクター機能に直接であってもよく、前記細胞は、その表面に動員分子を担持している。間接的な動員は、本開示による多特異性抗体の抗原結合ドメイン(例えばV1又はV2又はV3)に抗原が結合する場合に生じてもよく、動員ポリペプチドは、例えば、次いで直接又は間接的にエフェクター機能を動員し得るか、又はシグナル伝達経路の活性化を介し得る因子の放出を引き起こす。例としては、IL2、IL6、IL8、IFNγ、ヒスタミン、C1q、オプソニン並びに古典的な及び代替えの補体活性化カスケードの他のメンバー、例えばC2、C4、C3転換酵素、及びC5~C9が挙げられる。
【0179】
本明細書で使用される場合、「動員ポリペプチド」は、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIのようなFcγR、限定はされないが、C1q及びC3のような補体経路タンパク質、CDマーカータンパク質(分化抗原群マーカー)又は直接的又は間接的に細胞媒介性のエフェクター機能を動員する能力を維持しているその断片を含む。動員ポリペプチドは、エフェクター機能を保持する、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgE及びIgAなどの免疫グロブリン抗体も含む。
【0180】
一実施形態では、本開示による多特異性抗体の抗原結合ドメイン(例えばV1又はV2又はV3又はVH/VL)は、C1qが特に好まれる、補体経路タンパク質に特異性を有する。
【0181】
さらに、本開示の多特異性抗体を使用して、核種キレータータンパク質に結合する単一ドメイン抗体によって、放射性核種をキレートすることができる。そのような融合タンパク質は、治療への画像化又は放射線核種標的化手法で使用される。
【0182】
一実施形態では、本開示による多特異性抗体内の抗原結合ドメイン(例えばV1又はV2又はV3又はVH/VL)は、血清キャリアタンパク質、循環免疫グロブリン分子、又はCD35/CR1に特異性を有し、例えば前記血清キャリアタンパク質、循環免疫グロブリン分子、又はCD35/CR1に結合することによって目的の前記抗原に特異性を有する抗体断片に半減期の延長を提供する。
【0183】
本明細書で使用する場合、「血清キャリアタンパク質」は、チロキシン結合タンパク質、トランスチレチン、α1-酸性糖タンパク質、トランスフェリン、フィブリノーゲン及びアルブミン、又は任意のそれらの断片を含む。
【0184】
本明細書で使用する場合、「循環する免疫グロブリン分子」は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、sIgA、IgM及びIgD、又は任意のそれらの断片を含む。
【0185】
CD35/CR1は、赤血球に存在し、36日の半減期を有するタンパク質である(正常範囲28~47日;Lanaro et al.,1971,Cancer,28(3):658-661)。
【0186】
一実施形態では、VH/VLが特異性を有する目的の抗原は、血清キャリアタンパク質、例えばヒト血清キャリア、例えばヒト血清アルブミンである。
【0187】
一実施形態では、V1が特異性を有する目的の抗原は、血清キャリアタンパク質、例えばヒト血清キャリア、例えばヒト血清アルブミンである。したがって、一実施形態では、V1はアルブミン結合ドメインを含む。
【0188】
一実施形態では、V2が特異性を有する目的の抗原は、血清キャリアタンパク質、例えばヒト血清キャリア、例えばヒト血清アルブミンである。したがって、一実施形態では、V2はアルブミン結合ドメインを含む。
【0189】
一実施形態では、V3が特異性を有する目的の抗原は、血清キャリアタンパク質、例えばヒト血清キャリア、例えばヒト血清アルブミンである。したがって、一実施形態では、V3はアルブミン結合ドメインを含む。
【0190】
一実施形態では、VH/VL、V1又はV2又はV3の1つだけが、血清キャリアタンパク質、例えばヒト血清キャリア、例えばヒト血清アルブミンである。したがって、一実施形態では、VH/VL、V1又はV2又はV3の1つだけがアルブミン結合ドメインを含む。
【0191】
一実施形態では、アルブミン結合ドメインは、プロテインAにさらに結合する。一実施形態では、アルブミン結合ドメインは、6個のCDR、例えばCDRH1の配列番号71、CDRH2の配列番号72、CDRH3の配列番号73、CDRL1の配列番号74、CDRL2の配列番号75及びCDRL3の配列番号76を含む。一実施形態では、前記6個のCDR、配列番号71~76は、本開示の構築物のVH/VLに位置する。一実施形態では、前記6個のCDR、配列番号71~76は、本開示の構築物のV1に位置する。一実施形態では、前記6個のCDR、配列番号71~76は、本開示の構築物のVH/VL及びV1に位置する。
【0192】
一実施形態では、アルブミン結合ドメインは、配列番号77及び配列番号78から選択される重鎖可変ドメイン並びに配列番号79及び配列番号80から選択される軽鎖可変ドメイン、特に、それぞれ重鎖及び軽鎖の配列番号77及び79又は配列番号78及び80を含む。一実施形態では、アルブミン結合ドメインは、配列番号81の配列のscFvである。一実施形態では、アルブミン結合ドメインは、以下に示すように配列番号82の配列のdsscFvである:
645scFv(VH/VL)(配列番号81):
【化1】
645dsscFv(VH/VL)(ジスルフィド結合のために工学的に作成したシステインを有する、下線)(配列番号82):
【化2】
【0193】
一実施形態では、これらのドメインは、本開示の構築物のVH/VLに位置する。一実施形態では、これらの可変ドメインは、V1に位置する。一実施形態では、これらの可変ドメインは、本開示の構築物のVH/VL及びV1に位置する。可変ドメインが本開示の構築物の2つの場所に位置ある場合、可変ドメインの同じ対は各場所にあってよく、又は可変ドメインの2つの異なる対が用いられ得る。
【0194】
一実施形態では、本開示の多特異性抗体は、標的抗原(単数又は複数)への親和性を改善するように処理される。そのようなバリアントは、CDRに変異導入(Yang et al J.Mol.Biol.,254,392-403,1995)、chainシャッフリング(Marks et al.,Bio/Technology,10,779-783,1992)、大腸菌(E.coli)の変異誘発株の使用(Low et al.,J.Mol.Biol.,250,359-368,1996)、DNAシャッフリング(Patten et al.,Curr.Opin.Biotechnol.,8,724-733,1997)、ファージディスプレイ(Thompson et al.,J.Mol.Biol.,256,77-88,1996)及びsexual PCR(Crameri et al Nature,391,288-291,1998)を含む、多くの親和性成熟プロトコールによって得ることができる。Vaughan et al(上記)は、親和性成熟のこれらの方法を議論する。
【0195】
本明細書で用いられる親和性の改善は、この文脈では、開始分子を超える改善を指す。
【0196】
所望であれば、本開示での使用のための多特異性抗体構築物は、1つ又はそれ以上のエフェクター分子(単数又は複数)にコンジュゲートされ得る。エフェクター分子が、単一のエフェクター分子又は本発明の抗体に接着することができる単一部分を形成するように連結される2つ以上のそのような分子を含み得ることは理解されるであろう。エフェクター分子に連結する抗体断片を得ることが望まれる場合、これは、抗体断片が直接又は結合材を介してエフェクター分子に連結される標準的な化学又は組換えDNA手順によって調製され得る。そのようなエフェクター分子を抗体にコンジュゲートするための技術は、当技術分野で周知である(Hellstrom et al Controlled Drug Delivery,2nd Ed.,Robinson et al eds.,1987,pp.623-53;Thorpe et al 1982,Immunol.Rev.,62:119-58及びDubowchik et al 1999,Pharmacology and Therapeutics,83,67-123参照)。特定の化学手順は、例えば、国際公開第93/06231号、国際公開第92/22583号、国際公開第89/00195号、国際公開第89/01476号及び国際公開第03031581に記載されるものを含む。或いは、エフェクター分子がタンパク質又はポリペプチドである場合、結合は、例えば国際公開第86/01533号及び欧州特許第0392745号に記載される、組換えDNA手順を使用して達成され得る。
【0197】
用語「エフェクター分子」は、本明細書で使用される場合、例えば生物学的に活性なタンパク質、例えば酵素、他の抗体又は抗体断片、合成又は自然発生のポリマー、核酸及びその断片、例えば、DNA、RNA及びその断片、放射線核種、特に放射性ヨウ素、放射性同位体、キレート化金属、ナノ粒子及びレポーター群、例えば蛍光化合物又はNMR若しくはESR分光法によって検出され得る化合物を含む。
【0198】
他のエフェクター分子は、キレート化放射性核種、例えば111In及び90Y、Lu177、ビスマス213、カリフォルニウム252、イリジウム192及びタングステン188/レニウム188;又は薬物、例えば、限定はされないが、アルキルホスホコリン、トポイソメラーゼI阻害剤、タキソイド及びスラミンを含み得る。
【0199】
他のエフェクター分子は、例えば診断において有用な検出可能な物質を含み得る。検出可能な物質の例としては、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性核種、陽電子放出金属(陽電子放射断層撮影法での使用のため)、及び非放射性常磁性金属イオンが挙げられる。
【0200】
別の実施形態では、エフェクター分子は、インビボでの抗体の半減期を増加させる、及び/又は抗体の免疫原性を低減する及び/又は上皮性関門を通過する免疫系への抗体の送達を増強することができる。この型の好適なエフェクター分子の例としては、ポリマー、アルブミン、アルブミン結合タンパク質又は国際公開第05/117984号に記載のもののような、アルブミン結合化合物が挙げられる。
【0201】
エフェクター分子がポリマーである場合、それは、通常、合成又は自然発生のポリマー、例えば場合により、置換直鎖若しくは分岐鎖ポリアルキレン、ポリアルケニレン若しくはポリオキシアルキレンポリマー又は分岐鎖若しくは非分岐鎖多糖類、例えば、ホモ又はヘテロ多糖類であり得る。
【0202】
上記の合成ポリマーに存在し得る特定の場合による置換は、1つ又はそれ以上のヒドロキシ、メチル又はメトキシ基を含む。
【0203】
「誘導体」は、本明細書で使用される場合、反応性の誘導体、例えばマレイミドなどのようなチオール選択性反応基を含むことを意図する。反応基は、直接又はリンカーセグメントを介してポリマーに連結され得る。そのような基の残基が、一部の例では、抗体断片とポリマーの間の連結基として、産物の一部を形成することは理解されるであろう。
【0204】
ポリマーの大きさは、所望のように変わり得るが、通常、平均分子量が500Da~50000Daの範囲であり、例えば、20000~40000Daのような5000~40000Daであろう。ポリマーの大きさは、特に、産物の使用意図、例えば、腫瘍のような特定の組織に局在するか又は循環の半減期を延長する能力に基づいて選択され得る(検討のため、Chapman,2002,高度な薬物送達概説(Advanced Drug Delivery Reviews),54,531-545参照)。
【0205】
好適なポリマーは、ポリアルキレンポリマー、例えばポリ(エチレングリコール)又は、特に、メトキシポリ(エチレングリコール)又はその誘導体を含み、特に、約15000Da~約40000Daの範囲の分子量を有する。
【0206】
一実施形態では、本開示での使用のための抗体は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)部分に接着される。特定の一例では、抗体は抗体断片であり、PEG分子は、抗体断片、例えば任意の遊離アミノ、イミノ、チオール、ヒドロキシル又はカルボキシル基に局在する任意の利用可能なアミノ酸側鎖又は末端アミノ酸官能基を介して接着され得る。そのようなアミノ酸は、抗体断片に自然に生じるか、又は組換えDNA法を使用して断片に工学的に作成され得る(例えば、米国特許第5219996号;米国特許第5667425号;国際公開第98/25971号、国際公開第2008/038024号参照)。一実施形態では、本発明の抗体分子は、改変Fab断片を含み、改変はその重鎖のC末端への1つ又はそれ以上のアミノ酸の追加であり、エフェクター分子の接着を可能にする。好適には、追加アミノ酸は、エフェクター分子が接着され得る1つ又はそれ以上のシステイン残基を含有する改変ヒンジ領域を形成する。複数部位が、2つ以上のPEG分子の接着に使用され得る。
【0207】
好適には、PEG分子は、抗体断片に局在する少なくとも1つのシステイン残基のチオール基を介して共有結合される。改変抗体断片に接着した各ポリマー分子は、断片に局在するシステイン残基の硫黄原子に共有結合され得る。共有結合は、通常、ジスルフィド結合か、又は特に、硫黄-炭素結合であろう。チオール基が接着点として使用される場合、適切に活性化されたエフェクター分子、例えばマレイミドのようなチオール選択性誘導体及びシステイン誘導体が使用され得る。活性化ポリマーは、上記のようにポリマー改変抗体断片の調製において開始物質として使用され得る。活性化ポリマーは、例えばα-ハロカルボキシル酸又はエステルのようなチオール反応基、例えばヨードアセトアミド、イミド、例えばマレイミド、ビニルスルホン又はジスルフィドを含有する任意のポリマーであリ得る。そのような開始物質は、市販されている(例えば、Nektar,formerly Shearwater Polymers Inc.,Huntsville,AL,USA)か、又は従来の化学手順を使用して市販の開始物質から調製されてもよい。特定のPEG分子は、20K メトキシ-PEG-アミン(Nektar,formerly Shearwater;Rapp Polymere;及びSunBioから入手可能)及びM-PEG-SPA(Nektar,formerly Shearwaterから入手可能)を含む。
【0208】
一実施形態では、分子中のF(ab’)2、Fab又はFab’はペグ化され、すなわち、例えば、欧州特許第0948544号又は欧州特許第1090037号に開示される方法により、それに共有結合したPEG(ポリ(エチレングリコール))を有する[「ポリ(エチレングリコール)化学、生物工学及び生物医学応用(Poly(ethyleneglycol) Chemistry,Biotechnical and Biomedical Applications)」,1992,J.Milton Harris(ed),Plenum Press,NEW York,「ポリ(エチレングリコール)化学及び生物学応用(Poly(ethyleneglycol)Chemistry and Biological Applications)」,1997,J.Milton Harris and S.Zalipsky(eds),American Chemical Society,Washington DC及び「生物医学科学のための生体共役反応タンパク質カップリング技術(Bioconjugation Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences)」,1998,M.Aslam and A.Dent,Grobe Publishers,New York;Chapman,A.2002,Advanced Drug Delivery Reviews 2002,54:531-545も参照]。一実施形態では、PEGは、ヒンジ領域のシステインに接着される。一例では、PEG改変Fab断片は、改変ヒンジ領域中の単一のチオール基に共有結合したマレイミド基を有する。リシン残基は、マレイミド基に共有結合され、リシン残基の各アミノ基は、およそ20,000Daの分子量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)ポリマーを接着し得る。Fab断片に接着したPEGの総分子量は、したがって、およそ40,000Daであり得る。
【0209】
特定のPEG分子は、N,N’-ビス(メトキシポリ(エチレングリコール) MW20,000)改変リシンの2-[3-(N-マレイミド)プロピオンアミド]エチルアミドを含み、PEG2MAL40Kとしても公知である(Nektar,formerly Shearwaterから入手可能)。
【0210】
PEGリンカーの代替の供給源は、GL2-400MA2(構造中のmは5未満である)及びGL2-400MA(mは2である)を供給するNOFを含み、nはおよそ450である:
【化3】
【0211】
すなわち、各PEGは約20,000Daである。
【0212】
以下の型のさらなる代替えのPEGエフェクター分子:
【化4】
は、Dr.Reddu,NOF及びJenkemから利用可能である。
【0213】
一実施形態では、鎖中アミノ酸226の又は約アミノ酸226のシステインアミノ酸残基、例えば重鎖のアミノ酸226(配列による番号付により)を介して接着される、ペグ化される(例えば本明細書に記載のPEGを有する)抗体分子を提供する。
【0214】
一実施形態では、DNA配列のような、本開示の多特異性抗体をコードするポリヌクレオチド配列を提供する。
【0215】
一実施形態では、本開示の多特異性抗体の1つ又はそれ以上、例えば2つ以上、又は3つ以上のポリペプチド成分、例えば:
式(I):
VH-CH1-(CH2)s-(CH3)t-X-(V1)p
のポリペプチド鎖;及び
式(II):
(V3)r-Z-VL-CL-Y-(V2)q
のポリペプチド鎖
(式中:
VHは重鎖可変ドメインを表し;
CH1は重鎖定常領域のドメイン1を表し;
CH2は重鎖定常領域のドメイン2を表し;
CH3は重鎖定常領域のドメイン3を表し;
Xは結合又はリンカーを表し;
V1はdsscFv、dsFv、scFv、VH、VL又はVHHを表し;
V3はdsscFv、dsFv、scFv、VH、VL又はVHHを表し;
Zは結合又はリンカーを表し;
VLは軽鎖可変ドメインを表し;
CLはCカッパなどの、軽鎖定常領域由来のドメインを表し;
Yは結合又はリンカーを表し;
V2はdsscFv、dsFv、scFv、VH、VL又はVHHを表し;
pは0又は1を表し;
qは0又は1を表し;
rは0又は1を表し;
sは0又は1を表し;
tは0又は1を表し;
pが0である場合、Xは存在せず、qが0である場合、Yは存在せず、rが0である場合、Zは存在せず;
qが0である場合、rは1であり、rが0である場合、qは1であり、
式(II)のポリペプチド鎖は、少なくとも1つのdsscFv、dsFv、scFv、VH又はVHHを含み;
式(I)のポリペプチド鎖は、プロテインA結合ドメインを含み;
式(II)のポリペプチド鎖は、プロテインAに結合しない)、
をコードするポリヌクレオチド配列を提供する。
【0216】
一実施形態では、ポリヌクレオチド、例えばDNAは、ベクターに含まれる。
【0217】
当業者は、V1及び/又はV2及び/又はV3がdsFvを表す場合、多特異性抗体が、X又はY又はZに接着しない、対応する遊離のVH又はVLドメインをコードする第3のポリペプチドを含むことを理解するであろう。したがって、本発明の多特異性抗体は、1つ又はそれ以上、2つ以上、又は3つ以上のポリヌクレオチドによってコードされてもよく、これらは、1つ又はそれ以上のベクターに組み込まれてもよい。
【0218】
ベクターが構築され得る一般的な方法は、トランスフェクション法及び培養法が当業者に周知である。この点において、“Current Protocols in Molecular Biology”,1999,F.M.Ausubel(ed),Wiley Interscience,New York and the Maniatis Manual produced by Cold Spring Harbor Publishingを参照する。
【0219】
また、本発明の多特異性タンパク質をコードする1つ又はそれ以上のDNA配列を含む1つ又はそれ以上のクローニング又は発現ベクターを含む宿主細胞も提供する。任意の好適な宿主細胞/ベクター系が、本発明の抗体をコードするDNA配列の発現のために使用され得る。細菌、例えば大腸菌、及び他の微生物系が使用されてもよく、又は真核生物、例えば哺乳動物の宿主細胞発現系が使用されてもよい。好適な哺乳動物宿主細胞としては、HEK、例えばHEK293、CHO、骨髄腫、NSO骨髄腫細胞及びSP2細胞、COS細胞又はハイブリドーマ細胞が挙げられる。
【0220】
本開示は、本発明の多特異性抗体をコードするDNAからタンパク質の発現をもたらし、及び多特異性抗体を単離するために好適な条件下で、本発明のベクターを含有する宿主細胞を培養するステップを含む、本開示による多特異性抗体の産生のための方法も提供する。
【0221】
重鎖と軽鎖の両方を含む産物の産生のため、細胞系は2つのベクターによってトランスフェクトされてもよく、第1のベクターは軽鎖ポリペプチドをコードし、第2のベクターは重鎖ポリペプチドをコードする。或いは、単一のベクターが使用されてもよく、ベクターは軽鎖及び重鎖ポリペプチドをコードする配列を含む。一例では、細胞系は、2つのベクターによってトランスフェクトされてもよく、それぞれ本発明の抗体のポリペプチド鎖をコードする。V1及び/又はV2及び/又はV3がdsFvである場合、細胞系は、3つのベクターによってトランスフェクトされてもよく、それぞれ本発明の多特異性抗体のポリペプチド鎖をコードする。
【0222】
一実施形態では、細胞系は2つのベクターによってトランスフェクトされ、それぞれ:
式(I):
VH-CH1-(CH2)s-(CH3)t-X-(V1)p
のポリペプチド鎖;及び
式(II):
(V3)r-Z-VL-CL-Y-(V2)q
のポリペプチド鎖
(式中:
VHは重鎖可変ドメインを表し;
CH1は重鎖定常領域のドメイン1を表し;
CH2は重鎖定常領域のドメイン2を表し;
CH3は重鎖定常領域のドメイン3を表し;
Xは結合又はリンカーを表し;
V1はdsscFv、dsFv、scFv、VH、VL又はVHHを表し;
V3はdsscFv、dsFv、scFv、VH、VL又はVHHを表し;
Zは結合又はリンカーを表し;
VLは軽鎖可変ドメインを表し;
CLはCカッパなどの、軽鎖定常領域由来のドメインを表し;
Yは結合又はリンカーを表し;
V2はdsscFv、dsFv、scFv、VH、VL又はVHHを表し;
pは0又は1を表し;
qは0又は1を表し;
rは0又は1を表し;
sは0又は1を表し;
tは0又は1を表し;
pが0である場合、Xは存在せず、qが0である場合、Yは存在せず、rが0である場合、Zは存在せず;
qが0である場合、rは1であり、rが0である場合、qが1であり、
式(II)のポリペプチド鎖は、少なくとも1つのdsscFv、dsFv、scFv、VH又はVHHを含み;
式(I)のポリペプチド鎖は、プロテインA結合ドメインを含み;
式(II)のポリペプチド鎖は、プロテインAに結合しない)、
から選択される異なるポリペプチドをコードする。
【0223】
一実施形態では、V1がdsFvであり、V1のVHドメインがXに接着される場合、細胞系は、V1のVLドメインをコードする第3のベクターによってトランスフェクトされてもよい。
【0224】
一実施形態では、V1がdsFvであり、V1のVLドメインがXに接着される場合、細胞系は、V1のHドメインをコードする第3のベクターによってトランスフェクトされてもよい。
【0225】
一実施形態では、V2がdsFvであり、V2のVHドメインがYに接着される場合、細胞系は、V2のVLドメインをコードする第3のベクターによってトランスフェクトされてもよい。
【0226】
一実施形態では、V2がdsFvであり、V2のVLドメインがYに接着される場合、細胞系は、V2のVHドメインをコードする第3のベクターによってトランスフェクトされてもよい。
【0227】
一実施形態では、V3がdsFvであり、V3のVHドメインがYに接着される場合、細胞系は、V3のVLドメインをコードする第3のベクターによってトランスフェクトされてもよい。
【0228】
一実施形態では、V3がdsFvであり、V3のVLドメインがYに接着される場合、細胞系は、V3のVHドメインをコードする第3のベクターによってトランスフェクトされてもよい。
【0229】
一実施形態では、V3が存在しない場合及びV1とV2の両方がdsFvであり、V2のVLドメインがYに接着され、V1のVLドメインがXに接着される場合、細胞系は、V1とV2両方の共通のVHドメインをコードする第3のベクターによってトランスフェクトされてもよい。
【0230】
一実施形態では、V3が存在しない場合及びV1とV2の両方がdsFvであり、V2のVHドメインがYに接着され、V1のVHドメインがXに接着される場合、細胞系は、V1とV2両方の共通のVLドメインをコードする第3のベクターによってトランスフェクトされてもよい。
【0231】
宿主細胞にトランスフェクトされる各ベクターの比が、多特異性抗体産物の発現を最適化するために変わり得ることは理解されるであろう。一実施形態では、2つのベクターが使用され、1つは式(I)のポリペプチド鎖、すなわち重鎖をコードし、別の1つは式(II)のポリペプチド鎖、すなわち軽鎖をコードし、ベクターの比(LC含有ベクター):(HC含有ベクター)は、1:1と5:1の間、好ましくは1.5:1と5:1の間を含んでもよく、例えば比は、2:1、3:1、4:1、5:1であってもよい。一実施形態では、3つのベクターが使用され、ベクターの比(LC含有ベクター):(HC含有ベクター):遊離ドメイン含有ベクターは、1:1:1と5:1:1の間を含む。当業者が、トランスフェクション後のタンパク質発現レベルの通常の試験によって最適な比を見出すことができることは、理解されるであろう。或いは、又はさらに、各ベクターからの多特異性構築物の各ポリペプチド鎖の発現のレベルは、同じ又は異なるプロモーターを使用することによって制御され得る。
【0232】
2つ以上又は存在する場合、3つのポリペプチド成分が、単一ベクターのポリヌクレオチドによってコードされ得ることは理解されるであろう。2つ以上、特に3つ以上のポリペプチド成分が、単一ベクターのポリヌクレオチドによってコードされ、各ポリペプチド成分の相対発現が、本開示のポリペプチド成分をコードする各ポリヌクレオチドにつき異なるプロモーターを利用することによって変わり得ることも理解されるであろう。
【0233】
一実施形態では、ベクターは、単一のプロモーターの制御下の本発明の多特異性抗体の2つ又は存在する場合、3つのポリペプチド鎖をコードする単一のポリヌクレオチド配列を含む。
【0234】
一実施形態では、ベクターは、各ポリペプチド鎖をコードする各ポリヌクレオチド配列が異なるプロモーターの制御下にある、本開示の多特異性抗体の2つ又は存在する場合、3つのポリペプチド鎖をコードする単一のポリヌクレオチド配列を含む。
【0235】
一態様では、本発明は、上に規定される式(I)のポリペプチド鎖及び式(II)のポリペプチド鎖を含む多特異性抗体を産生するための方法であって:
a)宿主細胞において、上に規定される式(I)のポリペプチド鎖及び式(II)のポリペプチド鎖を発現させるステップであって、式(II)のポリペプチド鎖が、式(I)のポリペプチド鎖より過剰である、ステップ;及び
b)ステップa)で発現されたポリペプチドの組成物を回収するステップであって、前記組成物が多特異性抗体及び式(II-II)のLC二量体を含む、ステップ;及び
c)多特異性抗体を精製するステップであって、sが1であり、tが1である場合、前記多特異性抗体が、式(I)の2つの重鎖及び式(II)の2つの会合した軽鎖を有する二量体として精製され、sが0であり、tが0である場合、前記多特異性抗体が、式(I)の1つの重鎖及び式(II)の1つの会合した軽鎖を有する二量体として精製される、ステップ
を含み、
式(II)のポリペプチド鎖が、少なくとも1つのdsscFv、dsFv、scFv、VH又はVHHを含み;
式(I)のポリペプチド鎖が、プロテインA結合ドメインを含み;
式(II)のポリペプチド鎖が、プロテインAに結合せず;
ステップc)が、ステップb)で回収したポリペプチドの組成物を、場合により少なくとも1つの精製ステップ、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラムにかけるステップを含む、方法を提供する。
【0236】
重鎖より過剰な軽鎖を発現するための手段は当技術分野で周知であり、例えば上記のように宿主細胞のトランスフェクションのために使用されるベクターの比を変えることを含む。一実施形態では、2つのベクターが使用され、1つは式(I)のポリペプチド鎖、すなわち重鎖をコードし、別の1つは式(II)のポリペプチド鎖、すなわち軽鎖をコードし、ベクターの比(LC含有ベクター):(HC含有ベクター)は、1,5:1と5:1の間、例えば1,5:1、2:1、3:1、4:1、5:1である。別の実施形態では、ユニークな発現ベクターが使用され、HCをコードする転写単位より過剰なLCをコードする転写単位を含む。別の実施形態では、同じ量のベクター又は転写単位が使用されるが、前記ベクター又は転写単位は、HCコード単位が無く、LCの過剰発現を促進するLCコード単位中に改変転写又は翻訳制御エレメント(例えばプロモーター)を含む。
【0237】
一実施形態では、ステップc)は清澄ステップを含む。清澄のための手段は、当技術分野で周知であり、細胞成分及び他のデブリを含む不純物を除去するための遠心分離、濾過、凝集、及びpH調整を含む。一実施形態では、ステップc)は、ステップb)で回収したポリペプチドの組成物を、その後の清澄ステップ、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラムにかけるステップを含む。そのような実施形態では、ステップb)で回収されるポリペプチドの組成物は、まず清澄され、次いでプロテインAアフィニティークロマトグラフィーカラムにローディングされる。別の実施形態では、ステップc)は、1つだけの精製ステップ、すなわちプロテインA精製ステップを含む。
【0238】
一実施形態では、本発明の多特異性抗体を産生するための方法は、プロテインLアフィニティークロマトグラフィーを含まない。
【0239】
有利には、本発明者らは、先行技術に開示された多特異性抗体を工学的に再操作し、いずれのさらなる精製ステップも必要とせずに、プロテインA精製ステップを使用して容易に及び効果的に精製され得る改善された多特異性抗体を提供する。本発明の抗体の式(II)のポリペプチドは、プロテインAに結合せず、多特異性抗体のみが、その重鎖を介してプロテインAに結合し、LC二量体は、未結合の画分中で維持される。
【0240】
一実施形態では、5%未満、好ましくは4%未満、又は3%未満、又は2%未満、及びより好ましくは1%未満の式(II-II)のLC二量体が多特異性抗体と同時精製され、前記多特異性抗体は、sが1であり、tが1である場合、式(I)の2つの重鎖及び式(II)の2つの会合する軽鎖を有する二量体として、並びにsが0であり、tが0である場合、式(I)の1つの重鎖及び式(II)の1つの会合する軽鎖を有する二量体として精製される。
【0241】
別の態様では、上に規定される式(I)のポリペプチド鎖及び式(II)のポリペプチド鎖を含む多特異性抗体を精製するための方法であって:
a)上に規定される式(I)のポリペプチド鎖及び式(II)のポリペプチド鎖の組成物を得るステップであって、前記組成物が多特異性抗体を含み、sが1であり、tが1である場合、多特異性抗体が、式(I)の2つの重鎖及び式(II)の2つの会合する軽鎖を有する二量体であり;sが0であり、tが0である場合、多特異性抗体が式(I)の1つの重鎖及び式(II)の1つの会合する軽鎖を有する二量体であり;式(II-II)の2つの軽鎖が共に会合した二量体(LC二量体)であり;
式(II)のポリペプチド鎖が少なくとも1つのdsscFv、dsFv、scFv、VH又はVHHを含み;
式(I)のポリペプチド鎖がプロテインA結合ドメインを含み;
式(II)のポリペプチド鎖がプロテインAに結合しない、ステップ;及び
b)LC二量体はカラムに結合しないが、多特異性抗体はカラムに保持されるように、ステップa)で得られた組成物を、プロテインAアフィニティーカラムにローディングするステップ;及び
c)プロテインAアフィニティーカラムを洗浄するステップ;及び
d)多特異性抗体を溶出するステップ;及び
e)多特異性抗体を回収するステップ
を含む方法を提供する。
【0242】
一実施形態では、プロテインAカラムにローディングした組成物は、清澄された。いくつかのプロテインAカラム、特に天然のプロテインAカラム、例えばカラムMabSelect(GE Healthcare)が使用され得る。一実施形態では、プロテインAアフィニティーカラムは、MabSelectカラムである。一実施形態では、プロテインAは、自然発生のプロテインAのバリアントであり、前記プロテインAバリアントは、VH3ドメインに結合するその能力を維持する。ローディングする(又は結合する)ステップは、pH7~8、例えば7.4で実施されてもよい。ステップa)で得られた組成物は、5、10又は15分の接触時間の間、プロテインAアフィニティーカラムにローディングされ得る。一実施形態では、ローディングするステップb)は、200mM グリシンを含む、pH7.5の結合バッファーによって実施される。
【0243】
一実施形態では、溶出ステップd)は、酸性条件下で実施される。一実施形態では、溶出ステップd)は、2と4.5の間を含むpH、好ましくは3と4の間を含むpHで実施される。一実施形態では、ステップd)は、0.1M クエン酸ナトリウム、pH3.1溶出ステップである。一実施形態では、ステップd)は、0.1M クエン酸ナトリウム、pH3.2溶出ステップである。一実施形態では、ステップd)は、0.1M クエン酸ナトリウム、pH3.2による第1の溶出ステップ、及び0.1M クエン酸 pH2.1による第2の溶出ステップを含む。或いは、ステップd)での溶出は、カオトロピック条件下又は優しい溶出を含む、結合した多特異性抗体の溶出を促進する任意の他の条件下で実施され得る。
【0244】
一実施形態では、多特異性抗体を精製するための方法は、ステップd)の前又は後に、少なくとも1つのさらなる精製ステップを含む。
【0245】
例えば、方法は追加のクロマトグラフィーステップ(単数又は複数)をさらに含んでもよく、産物及び方法に関連する不純物が産物ストリームから適切に除去されるのを確実にし、イオン(陽イオン又は陰イオン)交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、及びミックスモードクロマトグラフィーを含む。精製方法は、1つ又はそれ以上の限外濾過ステップ、例えば濃縮及び透析濾過ステップも含んでもよい。
【0246】
上記で使用したように、精製形態は、少なくとも90%の純度、例えば91、92、93、94、95、96、97、98、99%w/w又はそれより高い純度を指すことを意図する。
【0247】
エンドトキシンを実質的に含まないことは、通常、mg抗体産物当たり1EU又はそれ以下、例えばmg産物当たり0.5又は0.1EUのエンドトキシン含量を指すことを意図する。
【0248】
宿主細胞タンパク質又はDNAを実質的に含まないことは、通常、mgの抗体産物当たり宿主細胞タンパク質及び/又はDNA含量400μg以下、例えばmg当たり100μg以下、特に、必要に応じてmg当たり20μgを指すことを意図する。
【0249】
本開示による多特異性タンパク質は、宿主細胞から良好なレベルで発現される。したがって、抗体及び/又は断片の特性は、商業用処理に最適化され、その助けとなるようである。
【0250】
有利には、本開示の多特異性抗体は、精製後に見られる凝集の量を最小にし、医薬品濃度での構築物の製剤中の単量体の量を最大にし、例えば単量体は、50%、60%、70%若しくは75%又はそれより多くの、例えば80%若しくは90%又はそれより多くの、例えば91、92、93、94、95、96、97、98若しくは99%又はそれより多くの総タンパク質として存在し得る。一例では、本開示の多特異性抗体の精製試料は、4℃で28日間保存後、98%若しくは99%より多くが単量体を維持する。一例では、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中5mg/mlの本開示の多特異性抗体の精製試料は、4℃で28日間保存後、98%より多くが単量体を維持する。単量体収量は、任意の好適な方法、例えばサイズ排除クロマトグラフィーを使用して決定され得る。
【0251】
本開示の抗体及びそれを含む組成物は、処置、例えば病態の処置及び/又は予防において有用である。
【0252】
本開示は、1つ又はそれ以上の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体と組み合わせて、本開示の抗体を含む医薬又は診断用組成物も提供する。したがって、処置での使用のための、及び医薬品の製造のための、特に本明細書に開示する適応症のための本開示の抗体の使用を提供する。
【0253】
組成物は、通常薬学的に許容される担体を含む、滅菌の医薬組成物の一部として通常供給されるであろう。本開示の医薬組成物は、さらに、薬学的に許容されるアジュバントを含み得る。
【0254】
本開示は、本開示の抗体を、1つ又はそれ以上の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤又は担体と一緒に付加及び混合するステップを含む、医薬又は診断用組成物の調整のための方法も提供する。
【0255】
抗体は、医薬又は診断用組成物中の単独の活性成分であってもよく、又は他の活性成分を伴ってもよい。
【0256】
さらなる実施形態では、本開示による抗体、断片又は組成物は、さらなる薬学的活性剤と組み合わせて用いられる。
【0257】
医薬組成物は、好適には、治療有効量の本発明の抗体を含む。用語「治療有効量」は、本明細書で使用される場合、標的疾患又は症状を処置、改善又は防止する、又は検出可能な治療若しくは予防効果を示すのに必要な治療剤の量を指す。任意の抗体について、治療有効量は、最初に細胞培養アッセイ又は動物モデル、通常齧歯類、ウサギ、イヌ、ブタ又は霊長類のいずれかにおいて見積もることができる。動物モデルは、適切な濃度範囲及び投与の経路を決定するためにも使用され得る。そのような情報は、次いで、ヒトでの投与のための有用な用量及び経路を決定するために使用され得る。
【0258】
ヒト対象のための正確な治療有効量は、疾患状態の重症度、対象の健康全般、対象の年齢、体重及び性別、食事、投与の時間及び頻度、合剤(単数又は複数)、反応感度及び治療への耐性及び応答によるであろう。この量は、通常の実験によって決定することができ、臨床医の判断内である。
【0259】
組成物は、個々に患者に投与されてもよく、又は他の薬剤、薬物若しくはホルモンと組み合わせて(例えば同時に、順に又は別々に)投与されてもよい。
【0260】
本開示の抗体が投与される用量は、処置される状態の性質、炎症の程度及び抗体が予防的に使用されるか又は既存の状態を処置するために使用されるかによる。
【0261】
投与の頻度は、抗体の半減期及びその効果の期間によるであろう。
【0262】
薬学的に許容される担体は、それ自体、組成物を受け取る個体に有害な抗体の産生を誘導してはならず、毒性であってもならない。薬学的に許容される担体は、当技術分野で周知である。
【0263】
薬学的に許容される塩は、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩及び硫酸塩などの鉱酸塩、又は酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩及び安息香酸塩などの有機酸の塩が使用され得る。
【0264】
治療組成物中の薬学的に許容される担体は、水、生理食塩水、グリセロール及びエタノールなどの液体をさらに含有してもよい。さらに、湿潤剤又は乳化剤又はpH緩衝物質などの補助剤が、そのような組成物中に存在し得る。そのような担体は医薬組成物を、患者による摂取のための、錠剤、ピル剤、糖剤、カプセル剤、液剤、ゲル、シロップ、スラリー及び懸濁剤として製剤化することができる。
【0265】
投与の好適な形態は、例えば注射又は注入による、例えばボーラス注射又は連続注入による非経口投与の好適な形態を含む。産物が注射又は注入用である場合、油性又は水性ビヒクル中で懸濁液、溶液又は乳状液の形態をとってもよく、懸濁剤、保存剤、安定剤及び/又は分散剤などの調合剤を含有してもよい。或いは、抗体は、適切な滅菌液による使用前の再構成のための乾燥形態であってもよい。
【0266】
製剤化されると、本発明の組成物は、対象に直接投与され得る。処置される対象は動物であり得る。しかしながら、1つ又はそれ以上の実施形態では、組成物はヒト対象への投与に適当である。
【0267】
本開示の医薬組成物は、限定はされないが、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、脊髄内、髄腔内、脳室内、経皮(transdermal)、経皮的(transcutaneous)、皮下、腹腔内、鼻腔内、経腸的、局所的、舌下、膣内又は直腸経路を含むいくつかの経路によって投与され得る。典型的には、治療組成物は、液体溶液又は懸濁液のいずれかとして、注射可能に調整され得る。注射前の液体ビヒクル中の溶液、又は懸濁液に好適な固体形態も調製され得る。
【0268】
組成物の直接送達は、通常、皮下、腹腔内、静脈内又は筋肉内の注射によって達成されるか、又は組織の間質腔に送達される。組成物は、目的の特定の組織にも投与され得る。投薬処置は、単回投与スケジュール又は複数回投与スケジュールであってもよい。
【0269】
組成物中の活性成分が抗体であることは、理解されるであろう。そのため、胃腸管での分解に感受性であろう。したがって、組成物が、胃腸管を使用する経路によって投与される場合、組成物は有利には、分解から抗体を保護するが、胃腸管から一度吸収された抗体を放出する薬剤を含有するであろう。
【0270】
病態又は障害は、例えば、感染症(ウイルス、細菌、真菌及び寄生虫)、感染症と関連するエンドトキシンショック、間接リウマチなどの関節炎、重症喘息などの喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、骨盤内炎症性疾患、アルツハイマー病、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、ペイロニー病、セリアック病、胆嚢疾患、毛巣洞、腹膜炎、乾癬、血管炎、術後癒着、脳卒中、I型糖尿病、ライム病、髄膜脳炎、自己免疫性ブドウ膜炎、多発性硬化症、ループス(例えば全身性エリテマトーデス)及びギランバレー症候群などの中枢神経系又は末梢神経系の免疫介在性炎症性障害、アトピー性皮膚炎、自己免疫性肝炎、線維性肺胞炎、グレーブス病、IgA腎症、突発性血小板減少性紫斑病、メニエール病、天疱瘡、原発性胆汁性肝硬変、サルコイドーシス、強皮症、ウェグナー肉芽腫症、他の自己免疫障害、膵炎、外傷(外科手術)、移植片対宿主病、移植片拒絶、心筋梗塞などの虚血性疾患を含む心臓病並びにアテローム性動脈硬化、血管内凝固、骨吸収、骨粗鬆症、変形性関節症、歯周炎及び低塩酸症からなる群から選択され得る。
【0271】
本開示は、痛み、特に炎症と関連する痛みの処置又は予防における使用のための本発明による多特異性抗体も提供する。
【0272】
したがって、処置での使用のための本開示による多特異性抗体及びそれを用いる処置の方法を提供する。
【0273】
特定の状態の予防又は処置のために必要な本発明の抗体の量は、抗体及び処置される状態によって変わるであろう。本発明の抗体は、診断、例えばインビボ診断及び疾患状態の画像化でも使用され得る。
【0274】
「含む(comprising)」は、本明細書の文脈では、含む(including)を意味することが意図される。技術的に適切な場合、本発明の実施形態は、組み合わされ得る。実施形態は、特定の特徴/エレメントを含むように、本明細書に記載される。本開示は、前記特徴/エレメントからなる又はそれらから基本的になる別々の実施形態にまで及ぶ。
【0275】
特許及び明細書などの技術的な参照は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で特に及び明白に列挙される任意の実施形態は、単独で又は1つ又はそれ以上のさらなる実施形態と組み合わせて、放棄条項の基本を形成し得る。
【0276】
本開示は、以下の実施例において例示のためにのみさらに記載され、添付の図面を参照する。
【実施例】
【0277】
(例1)本発明の改善された多特異性抗体フォーマットの産生、Fab-2xdsscFv(TrYbe)の例
遺伝子設計及びCHO-S XE細胞系での発現
TrYbe抗体は、Fab位置に固定された抗Antigen#1(又は「Ag#1」)V領域によって設計され;抗アルブミン(Antigen#2、又は以下の例では「Ag#2」)V領域(645gL4gH5)及びAntigen#3(又は「Ag#3」)V領域(VH1)は、HL方向(dsHL)でジスルフィド安定化scFvへと再フォーマットされ、11アミノ酸のグリシン-セリンリッチリンカーを介してそれぞれ重鎖及び軽鎖定常領域のC末端に連結される。生じる抗体は、Trybe03と呼ばれる。抗アルブミン645抗体の配列は、
図1に示す。
【0278】
軽鎖及び重鎖遺伝子は、hCMVプロモーターの制御下で一過性発現のための所有の哺乳動物発現ベクターに独立してクローニングした。等しい比の両プラスミドは、市販のExpiCHOエクスピフェクタミン一過性発現キット(Termo Scientific)を使用して、CHO-S XE細胞系(UCB)にトランスフェクトした。培養物は、Corningのベントキャップを有するローラーボトル中、37℃、8.0%CO2、190rpmでインキュベートした。18~22時間後、培養物は、製造業者によって提供されるように、適切な容積のCHOエンハンサー及びHiTiter法のフィードを供給した。培養物は、さらに10~12日間、32℃、8.0%CO2、190rpmで再インキュベートした。上清は、0.45μm、続いて0.2μmフィルターを通す、フィルター滅菌の前に、4℃で1時間、4000rpmでの遠心分離によって回収した。発現力価は、1ml GE HiTrapプロテインGカラム(GE Healthcare)及び社内で作成したFab標準を使用して、プロテインG HPLCによって定量した。発現力価は、160mg/Lであった。
【0279】
プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを使用するTrYbe03の精製
TrYbe03は、天然プロテインA捕捉ステップの後、分取サイズ排除研磨ステップによって精製した。標準的な一過性CHO発現から清澄した上清を、MabSelect(GE Healthcare)カラムにローディングし、接触時間を5分与え、結合バッファー(20mM Hepes pH7.4+150mM NaCl)で洗浄した。結合した物質は、0.1Mクエン酸ナトリウムpH3.1溶出ステップによって溶出し、2M Tris/HCl pH8.5で中和し、280nmでの吸光度によって定量した。
【0280】
サイズ排除クロマトグラフィー(SE-UPLC)を使用して、溶出した産物の純度状態を決定した。抗体(~2μg)を、BEH200、200Å、1.7μm、4.6mm ID×300mmカラム(Waters ACQUITY)にローディングし、0.35mL/分での0.2Mリン酸 pH7の均一濃度勾配によって展開した。連続検出は、280nmでの吸光度及び多チャンネル蛍光(FLR)検出器(Waters)によった。溶出したTrYbe03抗体は、72%単量体であることが見出された。
【0281】
中和試料は、Amicon Ultra-15濃縮機(10kDa分画分子量メンブレン)及びスイングアウトローター中4000×gでの遠心分離を使用して濃縮した。濃縮試料は、PBS、ph7.4中で平衡化したXK16/60 Superdex200カラム(GE Healthcare)に適用し、1ml/分でのPBS、pH7.4の均一濃度勾配によって展開した。画分を回収し、BEH200、200Å、1.7μm、4.6mm ID×300mmカラム(Aquity)でのサイズ排除クロマトグラフィーによって解析し、0.35mL/分での0.2Mリン酸、pH7の均一濃度勾配によって展開し、280nmでの吸光度及び多チャンネル蛍光(FLR)検出器(Waters)によって検出した。選択された単量体画分をプールし、0.22μmで滅菌濾過し、最終試料は、A280Scanning on DropSense96(Trinean)による濃縮をアッセイした。エンドトキシンレベルは、Limulus Amebocyte Lysate(LAL)試験カートリッジを備えたCharles Riber’s EndoSafe(登録商標)Portable Test Systemによって評価した場合、1.0EU.mg以下であった。
【0282】
サイズ排除クロマトグラフィーによる解析
最終TrYbe03の単量体状態は、BEH200、200Å、1.7μm、4.6mm ID×300mmカラム(Aquity)でのサイズ排除クロマトグラフィーによって決定し、0.35mL/分での0.2Mリン酸、pH7の均一濃度勾配によって展開し、280nmでの吸光度及び多チャンネル蛍光(FLR)検出器(Waters)によって検出した。最終TrYbe03抗体は、>99%単量体であることが見出された(
図2A)。
【0283】
SDS-PAGE解析
ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)による解析のため、試料は、4×Novex NuPAGE LDS試料バッファー(Life Technologies)及び10×NuPAGE試料還元剤(Life Technologies)又は100mM N-エチルマレイミド(Sigma-Aldrich)のいずれかを~5μgの精製タンパク質に添加することによって調製し、3分間100℃に加熱した。試料は、10ウェルのNovex4~20% Tris-グリシン1.0mm SDS-ポリアクリルアミドゲル(Life Technologies)にローディングし、Tris-グリシンSDSランニングバッファー(Life Technologies)中40分間、225Vの定常電圧で分離した。Novex Mak12広範囲タンパク質標準(Life Technologies)を標準として使用した。ゲルは、Coomassie Quick Stain(Generon)によって染色し、蒸留水中で脱染した。
【0284】
非還元SDS-PAGEでは、理論分子量~100kDaのTrYbe(レーン1)は、~120kDaに移動した(
図2B)。TrYbeタンパク質が還元された場合(レーン2)、両鎖は、それらのそれぞれの理論MW、重鎖(HC)~52kDa及び軽鎖(LC)~51kDaに達する移動速度で移動した。非還元ゲル(レーン1)の~45~50kDaのさらなるバンドは、分子のFab部分でジスルフィド結合を消失した「遊離の」LC及びHCであり、それらは完全には還元されていないため、レーン2のLC及びHCと同じ位置には移動しない。
【0285】
本発明者らは、TrYbe03が先行技術の多特異性抗体よりも改善された特性を有する、特に、プロテインAクロマトグラフィーカラムでの一段階精製後に得られる目的のタンパク質(すなわち回収した多特異性抗体)の量を最大にすることを観察した。実際、以前には、本発明者らは、それらの対応する重鎖と対形成しない付着した軽鎖を検出し、目的の及び付着軽鎖の二量体(付着LC二量体)を形成する性質を有する多特性抗体によって共精製され、さらなる捕捉ステップによって精製される必要がある。予想外に、プロテインA精製ステップ後、TrYbe03の産生方法の副産物として軽鎖又はLC二量体は検出されず、所望の多特異性抗体のみがプロテインAカラムから溶出された。さらに、多特異性抗体は高度に単量体であった。
【0286】
本発明者らは、付着LC二量体の単離及び除去は、TrYbe03の精製と同時に生じたと仮説を立てた。
【0287】
この仮説を確かめるため、代替えの多特異性抗体フォーマットによるさらなる実験を実施し、以下の実施例に記載する。
【0288】
(例2)例3~6でのさらなる解析のための代替えの抗体フォーマットの産生
図3に示す構築物は、表1及び以下に記載するように産生した。全てのWittrup分子は、共通の重鎖(hg1FL)及びFab領域を有する。全てのTrYbe分子は、共通のFab領域を有する。
【表4】
【0289】
以下の実施例では、645 gH5gL4 dsscFv(HL)、すなわちAg#2 dsscFv HLは、dsscFv1と呼ばれる。
【0290】
VH1ドメインを含むAg#3 dsscFv HL(VH1)は、dsscFv3Bと呼ばれる。
【0291】
VH3ドメインを含むAg#3 dsscFv HL(VH3)は、dsscFv3Aと呼ばれる。
【0292】
Ag#4 dsscFv HLは、dsscFv2と呼ばれる。
【0293】
一過性発現
重鎖及び軽鎖抗体遺伝子は、hCMV-mieプロモーターの制御下で一過性発現のための所有の哺乳動物発現ベクターに独立してクローニングした。プラスミドは、市販のExpiCHOエクスピフェクタミン一過性発現キット(Termo Scientific)を使用して、所有のCHO-SXE細胞系にトランスフェクトした。培養物は、Corningのベントキャップを有するローラーボトル中、37℃、8.0%CO2、190rpmでインキュベートした。18~22時間後、培養物は、製造業者によって提供されるように、適切な容積のCHOエンハンサー及びHiTiter法のフィードを供給した。次いで培養物は、さらに10~12日間、32℃、8.0%CO2、190rpmで再インキュベートした。上清は、0.45μm、続いて0.2μmフィルターを通す、フィルター滅菌の前に、4℃で1時間、4000rpmでの遠心分離によって回収された。
【0294】
発現力価は、1ml HiTrapプロテインAカラム又は1ml HiTrapプロテインLカラム(GE Healthcare)のいずれかを使用して、プロテインA HPLC及びプロテインL HPLCによって定量した。カラムは、リン酸緩衝液で平衡化し、100μlの試料を注入し、カラムを洗浄し、酸性ステップ溶出を使用して抗体を溶出した。濃度は、適当なモル吸光係数コレクションを有する社内で精製したFab標準を使用して作成した標準曲線と比較して、各試料の溶出ピーク面積を使用して算出した。
【0295】
プロテインLリガンドは、VLドメイン、すなわち抗体の軽鎖を介して結合する。プロテインAは、FcのCH2/CH3界面に結合し、ヒトVHドメインの選択はプロテインA結合ドメインを含む。
【0296】
軽鎖プラスミドのみの発現
ジスルフィド安定化単鎖Fvを付着した軽鎖(LC-dsscFv)の発現のため、軽鎖プラスミドのみが、上記の方法によってトランスフェクト、発現及び定量された。表1aは、プロテインAとプロテインL HPLCアッセイの両方によって定量した、これらの発現された軽鎖二量体の力価を列挙する。
【0297】
LC-dsscFv-1の上清の定量は、プロテインLアッセイとプロテインAアッセイで等しい結果を示した。対照的に、LC-dsscFv-2及びLC-dsscFv-3Bの上清は、プロテインLアッセイによって定量可能であったが、プロテインAアッセイは定量のレベル未満であった。LC-dsscFv-3A発現の定量は、プロテインLアッセイの約3分の1のプロテインAアッセイの値を示した。
【表5】
【表6】
【0298】
表1bに示すように、LC-dsscFv-1は、プロテインAに結合するdsscFvを含有し、算出されたプロテインL及びプロテインA力価が同等である理由を説明している(表2a)。反対に、LC-dsscFv-2及びLC-dsscFv-3Bは、プロテインLアッセイによってのみ定量可能であり、プロテインAアッセイでは定量できず、それらがプロテインA結合ドメインを含まないことが確認された。LC-dsscFv-3Aは、プロテインAに弱く結合するdsscFvを含有し、したがって算出された濃度は、プロテインLアッセイからの濃度の3分の1だけであったことが観察された。
【0299】
したがって、結果は、dsscFv-1及びdsscFv-3AがプロテインA結合ドメインを含むことを示す。特に、dsscFv-3Aは、プロテインAに結合することができるVH3ドメインを含む。
【0300】
反対に、dsscFv-2及びdsscFv-3AはプロテインAに結合しない。特に、dsscFv-3Bは、プロテインAに結合することができないVH1ドメインを含む。
【0301】
重鎖及び軽鎖プラスミドの共発現
抗体構築物の発現のため、等しい比の重鎖及び軽鎖プラスミドがコトランスフェクトされ、上記の方法によって発現された。これらの抗体は、同じFab領域及びアイソタイプを共有する。
【0302】
以下の例(3、4、5及び6)で試験した試験上清が過剰な軽鎖を含有することを確かめるため、対応する軽鎖のみの上清を抗体上清に添加した。生じる試験上清は、プロテインA及びプロテインL HPLCアッセイによって定量した(表2a)。
【0303】
Wittrup01、TrYbe05及びTrYbe06の試験上清の定量は、プロテインAアッセイとプロテインLアッセイの両方で同等の結果を示した。Wittrup02、TrYbe03及びTrYbe04は、プロテインAアッセイによって決定された濃度が、プロテインLアッセイによって決定されたもののおよそ半分であった。
【0304】
Wittrup01、TrYbe05及びTrYbe06は、表1b及び表2bに記載されるように、同じ軽鎖を共有し、この軽鎖はプロテインA結合dsscFvを有し、そのため算出したプロテインL及びプロテインA力価は、両アッセイで結合することができる抗体と軽鎖二量体の両方と同等であった。抗体がプロテインAに結合することができるため、プロテインAアッセイを使用して、Wittrup02とTrYbe03の濃度を決定することができるが、両方とも軽鎖にプロテインAを結合しないdsscFvを有し、それぞれの軽鎖二量体が、プロテインLアッセイによってのみ定量することができることを意味し、したがって、2つのアッセイ間の2倍の差を説明する。TrYbe04は、軽鎖に弱いプロテインA結合dsscFvを有し、したがって、軽鎖二量体の一部のみが結合し、算出された濃度は、プロテインLアッセイからの濃度の半分のみであった。
【表7】
【表8】
【0305】
(例3)Wittrup抗体フォーマットのプロテインA精製:適切なプロテインA結合特性を有するdsscFv可変領域を選択する
両Wittrup分子の試験上清は、例2に記載のように調製し、抗体と軽鎖二量体の両方を含有する。これらのWittrup抗体は、同じIgG成分(Fc及びFab)を共有するが、それぞれ異なるdsscFvが軽鎖に付着している。Wittrup01は、軽鎖に付着したプロテインA結合dsscFvを有するが、Wittrup02は、軽鎖に付着した非プロテインA結合dsscFvを有する。
【0306】
例2に示すように、Wittrup01とWittrup02の試験上清は、プロテインA及びプロテインL HPLCアッセイによって定量された(表3a)。Wittrup01は、両アッセイでほぼ同等な結果を示したが、Wittrup02については、プロテインAアッセイはプロテインLアッセイの半分のみであった。Wittrup01は、軽鎖に付着したプロテインA結合dsscFbを有し(表3b)、プロテインL及びプロテインAによって算出された力価は、両リガンドが軽鎖二量体を検出できるため、同等であった。軽鎖に付着した非プロテインA結合dsscFvを有するWittrup02のプロテインAアッセイの結果は(表3b)、抗体のみがプロテインAに結合できるが、両Wittrup抗体及び軽鎖二量体がプロテインLに結合できるため、プロテインLアッセイよりも著しく低い。
【表9】
【表10】
【0307】
プロテインA精製
試験上清を、接触時間15分でMabSelect(GE Healthcare)カラムにローディングし、結合バッファー(200mM グリシン pH7.5)で洗浄した。フロースルーを回収し、0.22μmで滅菌濾過した。結合した物質は、0.1Mクエン酸ナトリウムpH3.2溶出ステップによって溶出し、溶出ピークを回収し、2M Tris-HCl pH8.5で中和し、精製タンパク質を280nmでの吸光度によって定量した。タンパク質が、カラムから完全に溶出されたか確かめるため、0.1Mクエン酸pH2.1による第2の溶出を実施した。
【0308】
プロテインL精製
プロテインA精製からのフロースルーを、接触時間10分でプロテインL(GE Healthcare)カラムにローディングし、結合バッファー(200mM グリシン pH7.5)で洗浄した。フロースルーを回収し、0.22μmで滅菌濾過した。結合した物質は、0.1Mグリシン/HCl pH2.7溶出ステップによって溶出し、溶出ピークを回収し、2M Tris-HCl pH8.5で中和し、精製タンパク質を280nmでの吸光度によって定量した。タンパク質が、カラムから完全に溶出されたか確かめるため、0.1Mクエン酸pH2.1による第2の溶出を実施した。
【0309】
SDS-PAGE
ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)による解析のため、試料は、4×Novex NuPAGE LDS試料バッファー(Life Technologies)及び10×NuPAGE試料還元剤(Life Technologies)又は100mM N-エチルマレイミド(Sigma-Aldrich)のいずれかを添加することによって調製し、3分間100℃に加熱した。試料は、15ウェルのNovex4~20% Tris-グリシン1.0mm SDS-ポリアクリルアミドゲル(Life Technologies)にローディングし、Tris-グリシンSDSランニングバッファー(社内で作成)中40分間、225Vの定常電圧で分離した。Novex Mak12広範囲タンパク質標準(Life Technologies)を分子量マーカーとして使用した。ゲルは、Coomassie Quick Stain(Generon)によって染色し、蒸留水中で脱染した。
【0310】
結果
連続的なプロテインA及びプロテインL精製を評価するため、還元(
図4A)及び非還元(
図4B)試料をSDS-PAGE解析のために調製した。これらの試料は、プロテインAローディング物質、プロテインA溶出物、プロテインLローディング物質(プロテインAフロースルー)、プロテインL溶出物及びプロテインLフロースルーを含んだ。
【0311】
Wittrup01は、軽鎖に付着したプロテインA結合dsscFvを有する。還元プロテインA溶出物(レーン1B)では、サイズが似ており、したがって同じ位置に共移動した重鎖及び軽鎖として1つのバンドがある。プロテインL溶出物(レーン1D)では、検出可能なバンドはない。これは、軽鎖二量体が、プロテインA精製中にWittrup01抗体によって共精製されたことを示す。対照的に、Wittrup02は、軽鎖に付着した非プロテインA結合dsscFvを有する。プロテインA溶出物(レーン2B)は、Wittrup01プロテインA溶出物に匹敵するように見えるが、プロテインL溶出物では、軽鎖バンドが存在し、軽鎖二量体がプロテインA精製では捕捉されないが、カラムを通り抜け、続いてプロテインL精製で捕捉されたことを示す。
【0312】
Wittrup01の非還元ゲルでは、プロテインA溶出物中にWittrup抗体と軽鎖二量体のバンドがある(レーン1B)。このレーンには、さらなるバンドも存在し、分子の一部のCH1とCκの間の天然の鎖間ジスルフィド(ds)結合の不完全な形成による。プロテインL溶出物(レーン1D)は、プロテインA精製においてWittrup01によって共精製された軽鎖二量体を再び示す検出可能なバンドはなかった。Wittrup02については、プロテインA溶出物中にWittrupバンド(レーン2B)、並びに不完全なジスルフィド形成によるさらなるバンドがある。軽鎖二量体バンドは、プロテインLローディングとプロテインL溶出物の両方で見ることができるが(レーン2C、レーン2D)、プロテインA溶出物中では見られなかった。これは、プロテインA精製ではWittrup02抗体のみが捕捉され、軽鎖二量体はカラムを通り抜け、続いてプロテインL精製で捕捉されたことをさらに示す。
【0313】
要約すると、Wittrup抗体の軽鎖に付着したプロテインAに結合することができるdsscFvの存在は、軽鎖二量体の共精製をもたらし、Wittrupフォーマットの軽鎖に付着したプロテインAに結合できないdsscFvを選択することによって避けることができる。したがって、本発明者らは、軽鎖が非プロテインA結合剤であるように選択又は工学的に作成され得る、改善された多特異性抗体を提供する。
【0314】
(例4)異なる可変領域移植を有するTrYbe抗体フォーマットのプロテインA精製;軽鎖に付着したdsscFvの適切なプロテインA結合特性のためのフレームワーク選択
TrYbe03分子とTrYbe04分子の両方の試験上清は、例2に記載されるように調製し、抗体と軽鎖二量体の両方を含有する。これらのTrYbeが同じFab及び重鎖に付着した同じプロテインA結合dsscFvを共有する。軽鎖に付着したdsscFvは、同じ親可変領域に由来するが、TrYbe03では、CDRが非プロテインA結合フレームワーク(VH1ドメイン)に移植されたが、TrYbe04では、CDRはプロテインA結合フレームワーク(CH3ドメイン)に移植された。
【0315】
TrYbe03及びTrYbe04の試験上清は、プロテインA及びプロテインL HPLCアッセイ(表4a)によって定量され、両方の場合で、プロテインAアッセイは、プロテインLアッセイより低い。
【0316】
このTrYbeは、軽鎖に非プロテインA結合dsscFvを有し(表4b)、TrYbe抗体のみがプロテインAに結合できるが、TrYbe03と軽鎖二量体の両方がプロテインLアッセイによって定量され得るため、プロテインAアッセイによって決定されたTrYbe03の濃度は、プロテインLアッセイの約半分である。TrYbe04は、軽鎖に弱いプロテインA結合dsscFvを有し(表4b)、全てのTrYbe及び軽鎖二量体がプロテインLアッセイに結合できるが、プロテインAアッセイは全てのTrYbe及び一部の軽鎖二量体のみ結合する。したがって、この状況で、プロテインAにより全ての軽鎖二量体及びTrYbeを正確に定量することは不可能である。
【表11】
【表12】
【0317】
プロテインA及びプロテインL精製ステップ、及びSDS PAGE解析は、例3に上記したように実施した。
濃度測定
濃度測定解析は、ImageQuant画像解析ソフトウェア(GE Healthcare)を使用して還元SDS-PAGEで実施した。解析は、重鎖バンドの密度と比較したパーセンテージとして示す。
【0318】
結果
連続的なプロテインA及びプロテインL精製を評価するため、還元(
図5A)及び非還元(
図5B)試料をSDS-PAGE解析のために調製した。これらの試料は、プロテインAローディング物質、プロテインA溶出物、プロテインLローディング物質(プロテインAフロースルー)、プロテインL溶出物及びプロテインLフロースルーを含んだ。さらに、還元プロテインA溶出物で濃度測定解析を実施し、重鎖と軽鎖の存在の割合を比較した(
図5C)。
【0319】
TrYbe03は、軽鎖に付着した非プロテインA結合dsscFvを有する。還元ゲルのプロテインA溶出物(レーン3B)では、重鎖及び軽鎖に対応する2つのバンドがあり;プロテインL溶出物(レーン3D)では、軽鎖のバンドのみが存在する。濃度測定解析は、プロテインA溶出物中に存在する重鎖と軽鎖の比が等しいことを示した。したがって、TrYbe03のみが、プロテインA精製によって捕捉され、軽鎖二量体はカラムを通り抜け、続いてプロテインL精製によって捕捉された。対照的に、TrYbe04は、軽鎖に付着したプロテインA結合dsscFvを有する。還元ゲルのプロテインA溶出物(レーン4B)では、より強い軽鎖及び弱い重鎖がある。濃度測定(
図5C)は、重鎖よりも軽鎖が3倍多いことを示した。プロテインL溶出物(レーン4D)では、バンドがない。これは、軽鎖二量体が、プロテインA精製中にTrYbe04と共精製されたことを示している。表4bでは、TrYbe04は軽鎖に付着した弱いプロテインA結合dsscFvを有すると記載され、これはプロテインA HPLCアッセイによる定量を難しくしている。しかしながら、分取プロテインAクロマトグラフィーで使用した条件下では、結合強度は十分であり、プロテインAに十分結合することができる。
【0320】
非還元ゲルでは、TrYbe03については、プロテインA溶出物(レーン3B)中にTrYbeのバンドがあり、プロテインL溶出物(レーン3D)中に軽鎖二量体のバンドがあり、それらはサイズが似ているため、バンドは同じ位置に移動する。また、プロテインA溶出物中には重鎖と軽鎖のバンド、及びプロテインL溶出物中には軽鎖のバンドもあり、これは、わずか一部の分子のCH1とCκの間の天然の鎖間ジスルフィド(ds)結合の不完全な形成による。これは、非ds結合した軽鎖が存在するため、プロテインL溶出物(レーン3E)でも明らかである。また、これらの観察は、TrYbe03抗体のみがプロテインA精製によって捕捉され、軽鎖二量体はカラムを通り抜け、続いてプロテインL精製によって捕捉されたことを示している。TrYbe04については、プロテインA溶出物(レーン4B)中に、TrYbe及び軽鎖二量体バンドが、サイズが似ているため、同じ位置に共移動する。不完全な鎖間ds結合形成により、重鎖及び軽鎖のバンドも存在し、2つのCK間のds結合形成がCH1/Ck対形成よりも効率が悪いため、より非ds結合の軽鎖がある。また、プロテインL溶出物(レーン4D)中にはバンドがなく、軽鎖二量体がプロテインA精製中にTrYbe04によって共精製されたことを示している。
【0321】
要約すると、軽鎖のこのdsscFvのプロテインA結合移植片の存在は、TrYbeによる軽鎖二量体の共精製を生じる。同じdsscFvは、非プロテインA結合フレームワークに移植され、次いで軽鎖二量体は捕捉されず、TrYbeのみがプロテインAクロマトグラフィーによって精製された。
【0322】
したがって、本発明者らは改善された多特異性抗体を提供し、軽鎖に付着したdsscFvのVHフレームワークが非プロテインA結合剤であるように選択された。本場合では、VH1は、プロテインAに結合できないその能力のために選択された。同じ結果が、プロテインAに結合しないフレームワーク、例えばVH1、VH2、VH4、VH5、VH6、プロテインAに結合できない自然発生のVH3、又はプロテインAに結合するその能力を廃止する少なくとも1つの変異を含む、プロテインAに結合できる自然発生のVH3のバリアントを選択することによっても得られることは当業者にも理解されるであろう。
【0323】
(例5)軽鎖に付着したdsscFvの適切なプロテインA結合特性のためにdsscFvの位置が変更した、TrYbe抗体フォーマットのプロテインA精製
TrYbe03分子とTrYbe05分子の両方の試験上清は、例2に記載されるように調製し、抗体と軽鎖二量体の両方を含有する。これらのTrYbeは、同じFab及びdsscFvの同じ対を共有するが、dsscFvは反対のFab鎖に付着された。TrYbe03では、プロテインA結合dsscFvは重鎖に付着され、非プロテインA結合dsscFvは軽鎖に付着される。或いは、TrYbe05では、プロテインA結合dsscFvは軽鎖に付着され、非プロテインA結合dsscFvは重鎖に付着される。
【0324】
TrYbe03とTrYbe05の試験上清は、プロテインA及びプロテインL HPLCによって定量した(表5a)。TrYbe03については、プロテインAアッセイは、プロテインLアッセイよりも著しく低かったが、TrYbe05は両アッセイで同等の結果を示した。
【0325】
このTrYbeは、軽鎖に非プロテインA結合dsscFvを有し(表5b)、TrYbe抗体のみがプロテインAに結合できることを意味するが、TrYbeと軽鎖二量体の両方がプロテインLアッセイに結合できるため、TrYbe03のプロテインAアッセイの結果は、プロテインLアッセイよりも著しく低い。TrYbe05は、軽鎖に付着したプロテインA結合dsscFvを有する(表5b)ため、算出したプロテインL及びプロテインAの力価は、両アッセイがTrYbe及び軽鎖二量体に結合できるため、同等である。
【表13】
【表14】
【0326】
プロテインA及びプロテインL精製ステップは、上記のように実施した。SDS PAGE及び濃度測定解析も上記のように実施した。
結果
連続的なプロテインA及びプロテインL精製を評価するため、還元(
図6A)及び非還元(
図6B)試料をSDS-PAGE解析のために調製した。これらの試料は、プロテインAローディング物質、プロテインA溶出物、プロテインLローディング物質(プロテインAフロースルー)、プロテインL溶出物及びプロテインLフロースルーを含んだ。さらに、還元プロテインA溶出物で濃度測定解析を実施し、重鎖と軽鎖の存在の割合を比較した(
図6C)。
【0327】
TrYbe03は、軽鎖に付着した非プロテインA結合dsscFvを有する。還元ゲルのプロテインA溶出物(レーン3B)では、重鎖及び軽鎖に対応する2つのバンドがあり;プロテインL溶出物(レーン3D)では、軽鎖のバンドのみが存在する。濃度測定解析は、プロテインA溶出物中に存在する重鎖と軽鎖の比が等しいことを示す。したがって、TrYbe03のみが、プロテインA精製によって捕捉され、軽鎖二量体はカラムを通り抜け、続いてプロテインL精製によって捕捉された。対照的に、TrYbe05は、軽鎖に付着したプロテインA結合dsscFvを有する。還元プロテインA溶出物(レーン5B)では、重鎖よりも40%多い軽鎖が存在し、プロテインL溶出物(レーン5D)では、検出可能なバンドがない。これは、軽鎖二量体が、プロテインA精製中にTrYbe05と共精製されたことを示している。
【0328】
非還元ゲルでは、TrYbe03については、プロテインA溶出物(レーン3B)中にTrYbeのバンドがあり、プロテインL溶出物(レーン3D)中に軽鎖二量体のバンドがあり、それらはサイズが似ているため、バンドは同じ位置に移動する。また、プロテインA溶出物中には重鎖と軽鎖のバンド、及びプロテインL溶出物中には軽鎖のバンドもある。これらは、わずか一部の分子のCH1とCκの間の天然の鎖間ジスルフィド(ds)結合の不完全な形成又は軽鎖二量体中の対応するCκ/Cκ鎖間ジスルフィドによる。また、これらの結果は、TrYbeのみがプロテインA精製によって捕捉され、軽鎖二量体はカラムを通り抜け、続いてプロテインL精製によって捕捉されたことを示している。TrYbe05では、プロテインA溶出物(レーン5B)中に、TrYbe及び軽鎖二量体バンドが、サイズが非常に似ているため、同じ位置に共移動する。また、鎖間ジスルフィド結合の非形成による重鎖及び軽鎖が、レーン3Bに存在する。さらに、プロテインL溶出物(レーン5D)中には検出可能なバンドがなく、軽鎖二量体がプロテインA精製中にTrYbeによって共精製されたことをさらに示している。
【0329】
要約すると、プロテインA結合dsscFvが軽鎖に付着され、非プロテインA結合dsscFvが重鎖に付着されるようなTrYbe分子の配置は、軽鎖二量体とTrYbeの両方の共精製を生じた。プロテインA結合dsscFvが重鎖にあり、非プロテインA結合dsscFvが軽鎖にあるように、この設計を逆転し、2つのdsscFvをスワッピングすることにより、本発明者らは、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーにより、軽鎖二量体はカラムを通り抜け、TrYbeのみを精製することが可能であることを示した。
【0330】
(例6)軽鎖に付着したscFvのプロテインA結合特性のための不適切なscFv選択による、TrYbe抗体フォーマットのプロテインA精製
両TrYbe分子の試験上清は、例1に記載のように調製され、抗体と軽鎖二量体の両方を含有する。これらのTrYbeは、同じFab及びdsscFvの同じ対を共有するが、dsscFvは、反対のFab鎖に付着された。両方のdsscFvがプロテインAに結合するが、強度は異なる。TrYbe04では、弱いプロテインA結合dsscFvが軽鎖に付着され、強いプロテインA結合dsscFvが重鎖に付着される。或いは、TrYbe06では、弱いプロテインA結合dsscFvが重鎖に付着され、強いプロテインA結合dsscFvが軽鎖に付着される。
【0331】
TrYbe04及びTrYbe06の試験上清は、プロテインA及びプロテインL HPLCアッセイ(表6a)によって定量された。TrYbe06については、プロテインA及びプロテインLアッセイは同等の結果を示したが、TrYbe04については、プロテインAアッセイは、プロテインLアッセイより低い。
【0332】
TrYbe06は、軽鎖に付着した強いプロテインA結合dsscFvを有し(表7b)、プロテインLアッセイとプロテインAアッセイの両方で算出された濃度は、TrYbeと軽鎖二量体の両方が両アッセイに結合できるため、同等である。TrYbe04は、軽鎖に弱いプロテインA結合dsscFvを有し(表6b)、したがって、全てのTrYbe及び軽鎖二量体の一部のみがプロテインAアッセイに結合するであろう。対照的に、TrYbeと軽鎖二量体の両方が、プロテインLアッセイに完全に結合する。したがって、プロテインAアッセイを使用して、この試験上清中に存在する全ての軽鎖二量体を完全に定量することは不可能である。
【表15】
【表16】
【0333】
プロテインA及びプロテインL精製ステップは、上記のように実施した。SDS PAGE及び濃度測定解析も上記のように実施した。
結果
連続的なプロテインA及びプロテインL精製を評価するため、還元(
図7A)及び非還元(
図7B)試料をSDS-PAGE解析のために調製した。これらの試料は、プロテインAローディング物質、プロテインA溶出物、プロテインLローディング物質(プロテインAフロースルー)、プロテインL溶出物及びプロテインLフロースルーを含んだ。さらに、還元プロテインA溶出物で濃度測定解析を実施し、重鎖と軽鎖の存在の割合を比較した(
図7C)。
【0334】
TrYbe04は、軽鎖に付着した弱いプロテインA結合dsscFvを有する。還元ゲルのプロテインA溶出物(レーン4B)では、より強い軽鎖及び弱い重鎖がある。濃度測定は、重鎖よりも軽鎖が3倍多いことを示した。プロテインL溶出物(レーン4D)では、バンドがない。これは、軽鎖二量体が、プロテインA精製中にTrYbe04によって共精製されたことを示している。TrYbe06は、軽鎖に付着した強いプロテインA結合dsscFvを有する。還元プロテインA溶出物(レーン6B)では、この例ではバンドが共移動するため、重鎖と軽鎖の両方の1つのバンドがある。プロテインL溶出物(レーン6D)には、検出可能なバンドがない。TrYbe06に関する限りでは、これは、軽鎖二量体が、プロテインA精製中にTrYbeによって共精製されたことを示している。
【0335】
TrYbe04については、非還元のプロテインA溶出物(レーン4B)では、TrYbeと軽鎖二量体のバンドは、サイズが似ているため、同じ位置に共移動する。不完全な鎖間ds結合形成による重鎖及び軽鎖のバンドもある。軽鎖二量体の存在により、及び2つのCκ間の鎖間ジスルフィド結合形成がCH1/Cκ対合よりも効率が悪いため、より軽鎖がある。
【0336】
TrYbe04のように、非還元ゲルのTrYbe06のプロテインA溶出物(レーン6B)は、TrYbe及び軽鎖二量体を含有するが、この場合、それらがわずかに異なって移動するため、2つのバンドがある。重鎖及び軽鎖のバンドもあるが、還元ゲルとは対照的に、それらは共移動するため1つのバンドのみが明らかである。前の通りに、TrYbe04又はTrYbe06(レーン4D、レーン6D)のいずれについてもプロテインL溶出物中にバンドはなく、軽鎖二量体が、プロテインA精製中に、TrYbeによって共精製されたことを示している。
【0337】
要約すると、軽鎖に付着されたプロテインA結合dsscFvの存在が、TrYbeによる軽鎖二量体の共精製をもたらす。この共精製は、軽鎖に付着したdssFvがプロテインAの弱い結合剤であった場合でさえも起こる。したがって、本発明者らは、抗体LCのプロテインAヘの結合を完全に排除することが重要であることを示した。
【0338】
(例7)プロテインA相互作用アッセイ
新しい方法が開発され、相互作用アッセイを通してプロテインA結合のための抗体断片を定性的に試験した。
【0339】
アッセイは4つの重要な段階からなる:ローディング、洗浄、溶出、再平衡化。100μl 2.1×30mm POROS(商標)A 20μmカラム(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)は、ランニングバッファー(PBS pH7.4)中で平衡化した。50μlの1mg/mlの試験分子又は対照分子を、Agilent 1100高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システム(Palo Alto,CA)を使用して0.2ml/分でカラムにローディングした。次いで、カラムは、任意の残存する強い結合剤を除去するため、2分間、2.0ml/分での0.1M グリシン-HCl pH2.7による酸性ステップ溶出を適用する前に30分間、PBS pH7.4などのランニングバッファーにより60カラム容積以上ゆっくりと洗浄した。最終的に、カラムは、次の注入のための調製において、ランニングバッファー(例えば流速2.0ml/分で50CV PBS pH7.4及びさらに0.2ml/分で10CV)中で再平衡化した。吸光度は、280nm(A280)で読み取った。
【0340】
試験分子:
試験分子は、一価及び単量体でなければならず、この場合、マウスFab(プロテインAに結合しない)を有する精製BYbe(Fab-dsscFv)分子及び重鎖(HC)に付着したdsscFv試験V領域を使用した。dsscFv-1、dsscFv-2、dsscFv-3A、dsscFv-3Bは、先の例で使用したdsscFv分子に対応する。さらに、強い結合剤であることが公知のhFab-4結合断片のものに対応するVH及びVL領域を含むdsscFv-4を使用した。
【0341】
対照分子:
対照分子を使用して、結果が正確であるか確かめた。hFav-1は、中程度の結合剤であることが公知のヒトFabである。hFab-4は、強い結合剤であることが公知のヒトFabである。muFabは、マウスFabであり、プロテインAに結合しない。IgGはプロテインAに強く結合するため、不適切なIgGを対照として使用した。最終的に、ヒト血清アルブミン(HSA)を陰性対照として使用した。
【0342】
結果
保持時間は表7に示す。このプロテインA相互作用アッセイでは、プロテインA非結合剤は、主要ピークがフロースルー中に溶出し、したがって保持時間が0.9分以下であると定義することができる。弱いから強いプロテインA結合剤のピーク保持時間は、それぞれ1~30分の範囲であろう。強い結合剤では、分子がカラムを転がり落ちるため、ピーク形状は幅広であろう。強い結合剤は、酸性溶出ステップまで結合を維持したままであり、31分でのピークが観察され得る。
【0343】
IgGはプロテインAに強く結合し、そのためIgG対照は、アッセイの酸性ステップの間にのみカラムから溶出され、主要ピーク保持時間は31分であった。対照的に、HSA陰性対照は、カラムを真っ直ぐに通り抜け、したがって主要ピークは0.7分の保持時間を有する。Fab-dsscFv試験分子中で使用するmuFabは、主要ピーク保持時間<0.9分を有し、したがって、プロテインAへの試験分子の結合は、Fabの重鎖に付着したdsscFvを介してのみ起こることを確認した。
【0344】
全てのプロテインA結合V領域について、主要ピークの保持時間は>1分であった。dsscFv-3Aは、弱いプロテインA結合剤であり、1.8分だけの最短の保持時間を有するとして先に記載された。
【0345】
他のプロテインA結合V領域(dsscFv-1、dsscFv-4)は、より遅い保持時間を有し、それらがdsscFv3よりも強い結合剤であることを示している。
【0346】
プロテインA非結合V領域(dsscFv-2、dsscFv-3B、dsscFv-mu1)については、Fab-dsscFvはカラムを真っ直ぐに通り抜け、主要ピークの保持時間は<0.9分である。
【表17】
【0347】
(例8)Biacoreアッセイ
天然又は工学的に作成した可変領域のいずれかを含む抗体構築物のプロテインAに結合する能力を確かめるため、結合は、表面プラズモン共鳴(SPR)、特にBiacoreを使用して測定され得る。
【0348】
SPRは、タンパク質-タンパク質相互作用の詳細及び定性的な研究のための一般的に使用される技術である。それらの平衡及び動的パラメーターを決定するために使用されることが多い(Hashimoto,2000)。Biacore法は、抗体試験分子(BYbesなど)のプロテインAヘの結合を定性的に評価するために確立された。BIAcore(商標)T200装置(GE Healthcare)を使用してSPR実験を行った。
【0349】
天然のプロテインAの2つの形態への結合を評価した:黄色ブドウ球菌(S.aureus)(Sigma Aldrich)から精製した市販のプロテインA、及び組換え精製形態(社内で調製した)。それぞれ、標準的なアミンカップリング化学によってCM5センサーチップ表面(GE Healthcare)へとおよそ400RUのレベルまで固定化した。その後、試験分子の結合を、30μl/分での60秒注入を使用して、チップ表面でそれぞれ滴定することにより評価した。HBS-EP+(10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA及び0.05%ポリソルベート20)を試料希釈とランニングバッファーの両方として使用した。各注入の間、表面は、10mMグリシン pH1.7の60秒注入(10μl/分)を使用して、再生成した。各試料は、ストック濃度(90、30又は10μM)に応じて達成可能な最高濃度から3倍希釈で10点濃度シリーズにわたり力価測定し、0nMブランク注入は、装置ノイズ及びドリフトを差し引くため、各試料に含めた。
【0350】
dsscFv配列に融合したマウスFab試料は、先の例に記載したように選択された。さらに、Mu Fab、dsscFv-mu1を、プロテインAに結合しないことが公知の陰性対照マウス配列を含む陰性対照として使用した。
【0351】
結果
表8a及び8b、並びに
図8は、市販の精製プロテインA(表8a及び
図8A)及び精製組換えプロテインA(表8b及び
図8B)の各濃度について、試料注入の終わり(ブランクを引いた後)の結合応答を表す。このアッセイフォーマットを使用して、固定化したプロテインAへの結合を評価することができる(およそ400RUの固定化レベルで)。滴定可能な結合応答(ブランクを引いた後)は、公知のプロテインA結合陽性のヒトVH3ドメインを持つ全ての構築物について見られた。完全な結合応答は、固定化プロテインAの質及び観察されたバックグラウンドシグナルのレベルによる。非結合陰性対照の力価測定は、最小であるが10μMの濃度まで測定可能な結合応答を示す。
【0352】
試験分子の非結合は、10μMの陰性対照について観察された応答よりも2倍以下の結合応答(10μMで)により、10μMの濃度までの滴定可能な結合応答の欠如を実証することにより確かめることができる。
【表18】
【表19】
【配列表フリーテキスト】
【0353】
配列番号1~2:<223>ペプチドリンカー
配列番号3~11:<223>ヒンジリンカー
配列番号12~19:<223>可動性リンカー
配列番号20:<223>可動性リンカー<223>Xaaは任意の自然発生のアミノ酸であり得る
配列番号21:<223>可動性リンカー<223>Xaaは任意の自然発生のアミノ酸であり得る<223>Xaaは任意の自然発生のアミノ酸であり得る
配列番号22:<223>可動性リンカー<223>Xaaは任意の自然発生のアミノ酸であり得る<223>Xaaは任意の自然発生のアミノ酸であり得る<223>Xaaは任意の自然発生のアミノ酸であり得る
配列番号23:<223>可動性リンカー<223>Xaaは任意の自然発生のアミノ酸であり得る<223>Xaaは任意の自然発生のアミノ酸であり得る<223>Xaaは任意の自然発生のアミノ酸であり得る<223>Xaaは任意の自然発生のアミノ酸であり得る
配列番号24:<223>可動性リンカー<223>Xaaは任意の自然発生のアミノ酸であり得る
配列番号25~51:<223>可動性リンカー
配列番号52~53:<223>剛性リンカー
配列番号54~67:<223>アルブミン結合ペプチド
配列番号68~70:<223>リンカー
配列番号71:<223>抗体645 CDRH1
配列番号72:<223>抗体645 CDRH2
配列番号73:<223>抗体645 CDRH3
配列番号74:<223>抗体645 CDRL1
配列番号75:<223>抗体645 CDRL2
配列番号76:<223>抗体645 CDRL3
配列番号77:<223>抗体645重鎖可変ドメイン
配列番号78:<223>抗体645重鎖可変ドメイン、変異
配列番号79:<223>抗体645軽鎖可変ドメイン
配列番号80:<223>抗体645軽鎖可変ドメイン、変異
配列番号81:<223>645 scFv(VH-VL)
配列番号82:<223>645 dsscFv
【配列表】
【国際調査報告】