(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-22
(54)【発明の名称】ヒトIL-13及びIL-17に対する結合特異性を有する多重特異性抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230215BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230215BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230215BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20230215BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230215BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230215BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230215BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230215BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230215BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230215BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230215BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20230215BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230215BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230215BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230215BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/13
C07K16/46
C07K16/24
C12N15/63 Z
C12P21/08
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/39
A61P37/08
A61P17/00
A61P1/04
A61P11/02
A61P17/00 171
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022534761
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-05
(86)【国際出願番号】 EP2020087046
(87)【国際公開番号】W WO2021123186
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514232085
【氏名又は名称】ユーシービー バイオファルマ エスアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カーン、アドナン ラーマン
(72)【発明者】
【氏名】ヘイウッド、サム フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ハンフリーズ、デイヴィッド ポール
(72)【発明者】
【氏名】ライトウッド、ダニエル ジョン
(72)【発明者】
【氏名】デイブ、エマ
(72)【発明者】
【氏名】バリー、エミリー メアリー ケアリスティン
(72)【発明者】
【氏名】スタンヨン、セアラ ジェイン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE10
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA01
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB31
4C085BB33
4C085BB34
4C085BB35
4C085BB36
4C085BB37
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE06
4C085FF24
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
4C085GG10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA22
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、ヒトIL-13、ヒトIL-17A及び/又はヒトIL-17Fに対する特異性を有する多重特異性抗体に関する。本発明は更に、多重特異性抗体を製造する方法、並びにアトピー性皮膚炎及び他の疾患を治療するためのその治療的使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトIL-13、ヒトIL-17A及び/又はヒトIL-17Fに結合する多重特異性抗体であって、
CDR-L1については配列番号15に示される配列、CDR-L2については配列番号16に示される配列、及びCDR-L3については配列番号17に示される配列を含む軽鎖可変領域と、
CDR-H1については配列番号18に示される配列、CDR-H2については配列番号19に示される配列、及びCDR-H3については配列番号20に示される配列を含む重鎖可変領域と
を含むIL-13結合部位を含む、多重特異性抗体。
【請求項2】
前記IL-13結合部位が、配列番号27に示される配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号28に示される配列を含む重鎖可変領域とを含む、請求項1に記載の多重特異性抗体。
【請求項3】
前記IL-13結合部位が、配列番号31に示される配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号32に示される配列を含む重鎖可変領域とを含む、請求項1に記載の多重特異性抗体。
【請求項4】
CDR-L1については配列番号1に示される配列、CDR-L2については配列番号2に示される配列、及びCDR-L3については配列番号3に示される配列を含む軽鎖可変領域と、
CDR-H1については配列番号4に示される配列、CDR-H2については配列番号5に示される配列、及びCDR-H3については配列番号6に示される配列を含む重鎖可変領域と
を含む、ヒトIL-17A及びヒトIL-17Fに結合する抗原結合部位を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項5】
ヒトIL-17A及びヒトIL-17Fに結合する前記抗原結合部位が、配列番号7に示される配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号9に示される配列を含む重鎖可変領域とを含む、請求項4に記載の多重特異性抗体。
【請求項6】
a)式(Ia)のポリペプチド鎖:
V
H-CH
1-X-V
1と、
b)式(IIa)のポリペプチド鎖:
V
L-C
L-Y-V
2と
を含み、
式中、
V
Hは重鎖可変ドメインを表し、
CH
1は重鎖定常領域のドメイン1を表し、
Xは結合又はリンカーを表し、
Yは結合又はリンカーを表し、
V
1はscFv、dsscFv、又はdsFvを表し、
V
Lは軽鎖可変ドメインを表し、
C
LはCカッパなどの軽鎖定常領域由来のドメインを表し、
V
2はscFv、dsscFv又はdsFvを表し、
式(Ia)のポリペプチド鎖はプロテインA結合ドメインを含み、
式(IIa)のポリペプチド鎖はプロテインAに結合しない、
ヒトIL-13、ヒトIL-17A及び/又はヒトIL-17Fに結合する、請求項1から5のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項7】
V
L及びV
HはヒトIL-17A及びヒトIL-17Fに結合する抗原結合部位を含み、
V
2はヒトIL-13に結合する抗原結合部位を含み、
V
1はヒト血清アルブミンに結合する抗原結合部位を含み、
V
Lは、CDR-L1については配列番号1に示される配列、CDR-L2については配列番号2に示される配列、及びCDR-L3については配列番号3に示される配列を含み、
V
Hは、CDR-H1については配列番号4に示される配列、CDR-H2については配列番号5に示される配列、及びCDR-H3については配列番号6に示される配列を含み、
V
1は、CDR-L1については配列番号39に示される配列、CDR-L2については配列番号40に示される配列、及びCDR-L3については配列番号41に示される配列を含む軽鎖可変領域と、CDR-H1については配列番号42に示される配列、CDR-H2については配列番号43に示される配列、及びCDR-H3については配列番号44に示される配列を含む重鎖可変領域とを含み、
V
2は、CDR-L1については配列番号15に示される配列、CDR-L2については配列番号16に示される配列、及びCDR-L3については配列番号17に示される配列を含む軽鎖可変領域と、CDR-H1については配列番号18に示される配列、CDR-H2については配列番号19に示される配列、及びCDR-H3については配列番号20に示される配列を含む重鎖可変領域とを含む、
請求項6に記載の多重特異性抗体。
【請求項8】
V
Lが、配列番号7に示される配列を含み、V
Hが配列番号9に示される配列を含む、請求項6又は請求項7に記載の多重特異性抗体。
【請求項9】
V
2が、配列番号27に示される配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号28に示される配列を含む重鎖可変領域とを含む、請求項6から8のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項10】
V
2が、配列番号31に示される配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号32に示される配列を含む重鎖可変領域とを含む、請求項6から8のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項11】
V
1が、配列番号45に示される配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号46に示される配列を含む重鎖可変領域とを含む、請求項6から10のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項12】
V
1が、配列番号49に示される配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号50に示される配列を含む重鎖可変領域とを含む、請求項6から10のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項13】
V
2の前記軽鎖可変領域及び前記重鎖可変領域がリンカーによって連結されており、前記リンカーが配列番号66に示される配列を含む、請求項6から12のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項14】
V
2が、配列番号35に示される配列を含むscFv、又は配列番号37に示される配列を含むdsscFvである、請求項13に記載の多重特異性抗体。
【請求項15】
V
1の前記軽鎖可変領域及び前記重鎖可変領域がリンカーによって連結されており、前記リンカーが配列番号68に示される配列を含む、請求項6から14のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項16】
V
1が、配列番号53に示される配列を含むscFv、又は配列番号55に示される配列を含むdsscFvである、請求項15に記載の多重特異性抗体。
【請求項17】
Yが、配列番号65に示される配列を含むリンカーである、請求項6から16のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項18】
Xが、配列番号67に示される配列を含むリンカーである、請求項6から17のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項19】
配列番号57又は配列番号59に示される配列を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項20】
配列番号61又は配列番号63に示される配列を含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項21】
配列番号59に示される配列及び配列番号63に示される配列を含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか一項で定義される多重特異性抗体をコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項23】
請求項22に記載のポリヌクレオチドを担持する発現ベクター。
【請求項24】
請求項23で定義されるベクターを含む宿主細胞。
【請求項25】
請求項24に記載の宿主細胞を、抗体の産生が可能な条件下で培養すること、及び産生された前記抗体を回収することを含む、請求項1から21のいずれか一項で定義される多重特異性抗体を産生する方法。
【請求項26】
プロテインA精製工程を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
請求項1から21のいずれか一項で定義される抗体と、薬学的に許容されるアジュバント及び/又は担体とを含む医薬組成物。
【請求項28】
治療によるヒト又は動物の身体の治療方法における使用のための、請求項1から21のいずれか一項で定義される抗体又は請求項27で定義される医薬組成物。
【請求項29】
アトピー性皮膚炎、慢性手湿疹、鼻マイクロポリポーシス若しくはポリポーシス、食物アレルギー、又は好酸球性食道炎の治療又は予防における使用のための、請求項28に記載の抗体又は医薬組成物。
【請求項30】
治療有効量の請求項1から21に記載の多重特異性抗体又は請求項27に記載の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与する工程を含む、アトピー性皮膚炎、慢性手湿疹、鼻マイクロポリポーシス若しくはポリポーシス、食物アレルギー、又は好酸球性食道炎を治療又は予防する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトIL-13、ヒトIL-17A及び/又はIL-17Fに対する特異性を有する多重特異性抗体に関する。本発明は更に、多重特異性抗体を製造する方法、並びにアトピー性皮膚炎及び他の疾患を治療するためのその治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アトピー性皮膚炎(AD)は、アトピー性湿疹としても知られており、強いかゆみ、発赤、腫脹、滲出、ひび割れた皮膚をもたらし、時間の経過と共に皮膚が厚くなることが多い炎症性疾患である。
【0003】
20世紀の初め以来、多くの粘膜炎症性障害がより一般的になってきており、アトピー性皮膚炎は、このような疾患の古典的な例である。現在、先進国及び米国では、小児の15~30%及び成人の2~10%が罹患しており、過去30~40年でほぼ3倍になっている。1500万人を超える米国の成人及び小児がアトピー性皮膚炎に罹患している。
【0004】
ADに使用される処置には、シクロスポリン、メトトレキサート、インターフェロンガンマ、ミコフェノラート、モフェチル及びアザチオプリンなどの全身免疫抑制剤が含まれる。抗うつ薬及びナルトレキソンを使用して、掻痒(かゆみ)を制御することができる。2016年に、ホスホジエステラーゼ-4阻害剤であるクリサボロールが軽度から中等度の湿疹について承認され、2017年に、IL-4Rαのモノクローナル抗体アンタゴニストであるデュピルマブが中等度から重度の湿疹を治療することについて承認された。
【0005】
既存の医薬品の制限のために、アトピー性皮膚炎の改善された治療が大いに必要とされている。
【0006】
国際公開第2013/102042号(Abbvie)は、IL-13及びIL-17に対する二重特異的結合タンパク質、並びに広範な疾患リストの治療におけるそれらの潜在的な使用を記載している。結合タンパク質は臨床開発に進まなかった。
【0007】
国際公開第2015/127405号(Genentech)は、抗IL-13/IL-17二重特異性抗体、並びに中等度から重度の喘息及び/又は好酸球性喘息を治療するためにそれらを使用する方法を記載している。第I相臨床試験では、BITS7201Aは、高い発生率の抗薬物抗体(ADA)に関連しており、臨床開発から撤退した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ヒトIL-13、ヒトIL-17A及び/又はヒトIL-17Fに結合することができる改善された多重特異性抗体を提供する。
【0009】
本発明の抗体は、現在利用可能な抗体と比較して改善された特性、例えばより低い免疫原性及び/又はより良好な薬物動態学的プロファイルを有する。加えて、本発明の抗体は、それらが、現在利用可能な方法よりも少ない工程を含む改善された精製方法を使用してより効率的に精製することができるように操作することができ、これは、工業的規模で費用効果及び時間効果がある。したがって、本発明の抗体は、改善された製造可能性を有することができる。
【0010】
本発明は、以下を更に提供する。
◆多重特異性抗体をコードする単離されたポリヌクレオチド。
◆ポリヌクレオチドを担持する発現ベクター。
◆ベクターを含む宿主細胞。
◆宿主細胞を培養し、産生された抗体を回収することを含む、多重特異性抗体を産生する方法。
◆前述の多重特異性抗体を含む医薬組成物。
◆治療によるヒト又は動物の身体の治療方法における使用のための多重特異性抗体又は医薬組成物。
◆治療有効量の多重特異性抗体又は医薬組成物を、それを必要とする患者に投与する工程を含む、アトピー性皮膚炎、慢性手湿疹、鼻マイクロポリポーシス若しくはポリポーシス、食物アレルギー、又は好酸球性食道炎を治療又は予防する方法。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】Ab650ヒト化アラインメント。 設計されたヒト化配列と共に、ラット抗体(ドナー)V領域配列とヒト生殖細胞系(アクセプター)V領域配列とのアラインメント。 (A)軽鎖移植片650: 650=ラットの可変軽鎖配列。 650gL8=アクセプターフレームワークとしてIGKV1-39ヒト生殖細胞系を使用した650可変軽鎖のヒト化移植片。 CDRを太字/下線で示す。 ドナー残基を太字/斜体で示し、I58及びY71を強調する。 (B)重鎖移植片650: 650=ラット可変重鎖配列。 650gH9=アクセプターフレームワークとしてIGHV1-69ヒト生殖細胞系を使用した650可変重鎖のヒト化移植片。 CDRを太字/下線で示す。 ドナー残基を太字/斜体で示し、A67、F69及びV71を強調する。
【
図3】IL-13/IL-17AF多重特異性抗体の精製。 (A)精製した多重特異性抗体のBEH200 SEC-UPLC分析、FLRによる検出。 (B)非還元(レーン1)又は還元(レーン2)条件下でトリス-グリシンSDS-PAGEによって分離したタンパク質試料。ゲルをクマシークイック染色で染色し、dH2Oで脱色した。Mark12タンパク質マーカー(Life Technologies)を標準(M)として使用した。分子量(MW)はキロダルトン(kDa)で測定した。
【
図4】IL-13/IL-17AF多重特異性抗体によるSTAT6シグナル伝達の阻害。
【
図5】(A)TNF-αと組み合わせたヒト又はカニクイザルIL-17Aに応答したIL-13/IL-17AF多重特異性抗体によるIL-6産生の阻害。(i)ヒトIL-17A。(ii)カニクイザルIL-17A。 (B)TNF-αと組み合わせたヒト又はカニクイザルIL-17Fに応答したIL-13/IL-17AF多重特異性抗体によるIL-6産生の阻害。(i)ヒトIL-17F。(ii)カニクイザルIL-17F。
【
図6】NHEK CXCL1放出バイオアッセイにおけるIL-13/IL-17AF多重特異性抗体によるIL-13、IL-17A及びIL-17Fの同時中和。 キー: 丸=抗IL-13/IL-17AF 正方形=抗IL-17A 上向き三角形=抗IL-17F 下向き三角形=抗IL-13
【
図7】本発明による多重特異性IL-13/IL-17AF抗体の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
IL-13
IL-13は、IL-4と25%の配列同一性を共有する短鎖サイトカインである。これは、残基33~36及び87~90にわたる2つのβ鎖と共に、残基10~21(ヘリックスA)、43~52(ヘリックスB)、61~69(ヘリックスC)及び92~110(ヘリックスD)にわたる4つのヘリックスの二次構造を形成する約132個のアミノ酸を含む。IL-13の溶液構造が解明され、IL-4でも観察される、アップ-アップ-ダウン-ダウン4ヘリックスバンドルコンフォメーションが明らかになった。(Eisenmesser 2001)。
【0013】
ヒトIL-13は17kDaの糖タンパク質であり、Th2系統の活性化T細胞によって産生されるが、Th0及びTh1 CD4+T細胞、CD8+T細胞、並びにマスト細胞などのいくつかの非T細胞集団もIL-13を産生する。IL-13の機能としては、ヒトB細胞におけるIgEへの免疫グロブリンアイソタイプスイッチング、並びにヒト及びマウスの両方における炎症性サイトカイン産生の抑制が挙げられる。
【0014】
IL-13は、その細胞表面受容体であるIL-13R-アルファ1及びIL-13R-アルファ2に結合する。IL-13R-α1は、低親和性(KD約10nM)でIL-13と相互作用し、続いてIL-4R-αを動員して高親和性(KD約0.4nM)シグナル伝達ヘテロ二量体受容体複合体を形成する。
【0015】
IL-4R/IL-13R-アルファ1複合体は、B細胞、単球/マクロファージ、樹状細胞、好酸球、好塩基球、線維芽細胞、内皮細胞、気道上皮細胞、及び気道平滑筋細胞などの多くの細胞型で発現される。IL-13R-アルファ/IL-4R受容体複合体のライゲーションは、シグナル伝達兼転写活性化因子6(STAT6)及びインスリン受容体基質2(IRS2)経路を含む様々なシグナル伝達経路の活性化をもたらす。
【0016】
IL-13R-アルファ2鎖のみがIL-13に対して親和性が高い(KD約0.25~0.4nM)。それは、IL-13結合を負に調節するデコイ受容体として、並びにマクロファージ及びおそらくは他の細胞型においてAP-1経路を介してTGF-β合成及び線維化を誘導するシグナル伝達受容体としての両方として機能する。
【0017】
IL-13は多くのヒト障害の病因に関与しており、IL-13活性を阻害又は打ち消すように治療戦略が設計されている。特に、IL-13活性を阻害する手段として、IL-13に結合してIL-13を中和する抗体が求められている。しかし、当該分野では、IL-13、特にヒトIL-13に結合することができる好適な抗体及び/又は改善された抗体、特にヒトIL-13を中和することができる抗体が必要とされている。
【0018】
本発明は、ヒトIL-13に結合し、高親和性で結合し、ヒトIL-13に結合して中和することができる、結合タンパク質、CDR移植抗体、ヒト化抗体及びそれらの断片の新規なファミリーを提供する。
【0019】
IL-13活性を阻害する抗体は、いくつかの可能な作用機序を介して作用することができる。Bin1は、ヒトIL-13に結合し、IL-13Rα1の結合を防止し、その結果、IL-4Rの結合もブロックする抗体を表す。Bin1抗体はまた、IL-13のIL-13Rα2への結合を阻害することができる。Bin2は、IL-13Rα1への結合を可能にするが複合体へのIL-4Rの動員を阻害するようにhIL-13に結合する抗体を表す。本発明者らは、Bin1を介して作用する抗体を選択していた。
【0020】
一実施形態では、多重特異性抗体はヒトIL-13に結合し、IL-13Rα1の結合を阻害する。
【0021】
一実施形態では、多重特異性抗体はヒトIL-13に結合し、IL-13Rα2の結合を阻害する。
【0022】
一実施形態では、多重特異性抗体はヒトIL-13に結合し、IL-13Rα1及びIL-13Rα2の結合を阻害する。
【0023】
一実施形態では、多重特異性抗体は、100pM未満のKDでヒトIL-13に結合する。
【0024】
IL-17
サイトカインのIL-17ファミリーは、23~36kDaの分子質量及び二量体構造を有する、構造類似性に基づく6つのメンバーからなる。初代メンバーであるIL-17A(文献では依然として単にIL-17と呼ばれることが多い)は、他のメンバーであるIL-17B、IL-17C、IL-17D、IL-17E(IL-25としても知られる)及びIL-17Fと16%~50%のアミノ酸配列同一性を共有する。IL-17A及びIL-17Fは、最大の相同性(50%)を共有し、同じ受容体複合体に結合し、したがって、共有された生物学的活性が、これらの2つのサイトカインの間で認められている。加えて、IL-17A及びIL-17Fは、ホモ二量体としてだけでなく、IL-17A/Fヘテロ二量体としても存在する。IL-17E(IL-25)は、IL-17Aとの類似性が最も低い。IL-17A及びIL-17Fの生物学的活性にとって重要かつ関連性があるのは、それらが同じIL-17RA/IL-17RC受容体複合体を共有しており、IL-17AがIL-17RAに対して最も大きい親和性を有するのに対して、IL-17FはIL-17RCにより強く結合するという知見である。IL-17RAを利用する他のファミリーメンバーは、IL-17RA/IL-17RB受容体複合体を介してシグナル伝達するIL-17Eである。
【0025】
IL-17A及びIL-17Fは、CD4+T細胞のTh17サブセットによって産生される。加えて、細胞傷害性CD8+T細胞(Tc17)、gdT細胞及びNK T細胞を含む他のT細胞サブセットは、IL-17A及びIL-17Fを産生する。IL-17Aを分泌すると報告されている他の細胞集団としては、好中球、単球、NK細胞、リンパ系組織誘導因子様(LTi様)細胞、腸パネート細胞、更にB細胞及び肥満細胞が挙げられる。加えて、上皮細胞はIL-17Fを分泌することが報告されている。
【0026】
IL-17サイトカインに応答する細胞型は、異なる受容体の発現によって反映される。IL-17RAは、造血組織において特に高レベルで遍在的に発現されるのに対して、IL-17RCは、関節、肝臓、腎臓、甲状腺及び前立腺の非免疫細胞においてより高度に発現される。高レベルのIL-17RCを発現する細胞はIL-17Fに対してより応答性であり得るが、IL-17RCよりもIL-17RAの発現が高い細胞はIL-17Aに対してより容易に応答し得るので、この差次的発現は、IL-17A及びIL-17Fの生物学的活性の差を説明することができる。IL-17A及びFに応答性である特定の細胞型としては、線維芽細胞、上皮細胞、ケラチノサイト、滑膜細胞及び内皮細胞が挙げられ、IL-17Aはまた、T細胞及びB細胞並びにマクロファージに作用することが報告されている。
【0027】
本発明の多重特異性抗体は、ヒトIL-17A及び/又はIL-17Fに結合することができる。したがって、抗体は、IL-17Aホモ二量体、IL-17Fホモ二量体及び/又はIL-17AFヘテロ二量体に結合することができる。
【0028】
一実施形態では、多重特異性抗体はヒトIL-17Aに結合する。一実施形態では、多重特異性抗体はヒトIL-17Fに結合する。一実施形態では、多重特異性抗体はヒトIL-17A及びIL-17Fに結合する。
【0029】
一実施形態では、多重特異性抗体は、50pM未満のKDでヒトIL-17Aに結合する。一実施形態では、多重特異性抗体は、25pM未満のKDでヒトIL-17Aに結合する。一実施形態では、多重特異性抗体は、10pM未満のKDでヒトIL-17Aに結合する。
【0030】
一実施形態では、多重特異性抗体は、200pM未満のKDでヒトIL-17Fに結合する。一実施形態では、多重特異性抗体は、100pM未満のKDでヒトIL-17Fに結合する。
【0031】
アルブミン
抗体の高い特異性及び親和性は、抗体を、特にタンパク質:タンパク質相互作用を調節するための理想的な診断薬及び治療薬にする。しかし、抗体は、特にインビボで長い寿命を付与するFcドメインを欠く場合、血清からのクリアランス速度の増加に悩まされることがある(Medasan et al.,1997,J.Immunol.158:2211-2217)。
【0032】
抗体の半減期を改善する手段は公知である。1つのアプローチは、断片をポリマー分子にコンジュゲートすることであった。したがって、動物におけるFab’、F(ab’)2断片の短い循環半減期は、ポリエチレングリコール(PEG、例えば、国際公開第98/25791号、国際公開第99/64460号及び国際公開第98/37200号を参照されたい)への結合によって改善されている。別のアプローチは、FcRn受容体と相互作用する薬剤へのコンジュゲーションによって抗体断片を修飾することであった(例えば、国際公開第97/34631号を参照されたい)。半減期を延長するための更に別のアプローチは、血清アルブミンに結合するポリペプチドを使用することであった(例えば、Smith et al.,2001,Bioconjugate Chem.12:750-756、欧州特許第0486525号、米国特許第6267964号、国際公開第04/001064号、国際公開第02/076489号、及び国際公開第01/45746号)。
【0033】
血清アルブミンは、血管コンパートメントと血管外コンパートメントの両方に豊富に存在するタンパク質であり、ヒトでの半減期は約19日である(Peters,1985,Adv Protein Chem.37:161-245)。これは、約21日であるIgG1の半減期に類似している(Waldeman&Strober,1969,Progr.Allergy,13:1-110)。
【0034】
抗血清アルブミン結合単一可変ドメインは、NCE(化学的実体)薬物、プロテイン及びペプチドを含む薬物の半減期を増加させるためのコンジュゲートとしてのそれらの使用と共に記載されており、例えば、Holt et al.,Protein Engineering,Design&Selection,vol 21,5,pp283-288、国際公開第04003019号、国際公開第2008/096158号、国際公開第05118642号、国際公開第2006/0591056号及び、国際公開第2011/006915号を参照されたい。他の抗血清アルブミン抗体及び多重特異性抗体フォーマットにおけるそれらの使用は、国際公開第2009/040562号、国際公開第2010/035012号及び国際公開第2011/086091号に記載されている。特に、本発明者らは、改善されたヒト化を有する抗アルブミン抗体を国際公開第2013/068571号に以前に記載している。
【0035】
本発明の多重特異性抗体は、それらのインビボ血清半減期を延長し、改善された薬物動態プロファイルをもたらすために、ヒト血清アルブミンに結合するように操作することができる。
【0036】
抗体
本開示の文脈で使用するための抗体は、全抗体及びその機能的に活性な断片、すなわち、抗原結合断片とも呼ばれる、IL-13、IL-17A及び/又はIL-17Fに特異的に結合する分子を含む。抗体に関して本明細書に記載される特徴は、文脈が特に指示しない限り、抗体断片にも適用される。
【0037】
「免疫グロブリン(Ig)」としても公知の全抗体は、一般に、インタクト又は全長抗体、すなわち、特徴的なY字形三次元構造を規定するように集合する、ジスルフィド結合によって相互に連結された2つの重鎖及び2つの軽鎖の要素を含む抗体に関する。古典的な天然全抗体は、1つの抗原タイプに結合するという点で単一特異性であり、2つの独立した抗原結合ドメインを有するという点で二価である。「インタクト抗体」、「全長抗体」及び「全抗体」という用語は、本明細書で定義されるFc領域を含む、ネイティブ抗体構造に類似した構造を有する単一特異性二価抗体を指すために互換的に使用される。
【0038】
各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略す)及び軽鎖定常領域(CL)で構成される。各重鎖は、Igクラスに応じて、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)と、3つの定常ドメインCH1、CH2及びCH3、又は4つの定常ドメインCH1、CH2、CH3及びCH4で構成される重鎖定常領域(CH)とで構成される。Ig又は抗体の「クラス」は、定常領域のタイプを指し、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMを含み、それらのいくつかはサブクラス、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4に更に分割することができる。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(Clq)を含む宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介することができる。
【0039】
本発明による抗体のVH領域及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより構造的に保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる、抗原の認識を決定する超可変性の領域(又は「超可変領域」)に更に細分することができる。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置された3つのCDR及び4つのFRで構成される。CDR及びFRは共に可変領域を形成する。慣例により、抗体又はその抗原結合断片の重鎖可変領域内のCDRはCDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3と呼ばれ、軽鎖可変領域内のCDRはCDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3と呼ばれる。それらは、各鎖のN末端からC末端の方向に連続して番号付けされる。
【0040】
CDRは、従来、Kabatらによって考案されたシステムに従ってナンバリングされる。このシステムは、Kabat et al.,1991,in Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Department of Health and Human Services,NIH,USA(以下「Kabat et al.(前出)」)に記載されている。このナンバリングシステムは、別段の指示がない限り、本明細書で使用される。
【0041】
Kabat残基の名称は、アミノ酸残基の直鎖状ナンバリングと必ずしも直接対応しない。実際の直鎖状アミノ酸配列は、フレームワーク又は相補性決定領域にかかわらず、基本可変ドメイン構造の構造成分の短縮又は挿入に対応する、厳密なKabatナンバリングよりも少ない又は追加のアミノ酸を含むことができる。残基の正しいKabatナンバリングは、抗体の配列における相同性の残基と「標準的な」Kabatナンバリング配列とのアラインメントによって、所与の抗体について決定することができる。
【0042】
重鎖可変ドメインのCDRは、Kabatナンバリングシステムに従って、残基31~35(CDR-H1)、残基50~65(CDR-H2)及び残基95~102(CDR-H3)に位置する。しかし、Chothia(Chothia,C.and Lesk,A.M.J.Mol.Biol.,196,901-917(1987))によれば、CDR-H1と等価なループは、残基26から残基32まで延びる。したがって、特に指示しない限り、本明細書で使用される「CDR-H1」は、KabatナンバリングシステムとChothiaのトポロジカルループ定義との組み合わせによって記載される残基26から35を指すことが意図される。
【0043】
軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabatナンバリングシステムに従って、残基24~34(CDR-L1)、残基50~56(CDR-L2)及び残基89~97(CDR-L3)に位置する。
【0044】
CDRループに加えて、第4のループが、CDR-2(CDR-L2又はCDR-H2)と、フレームワーク3(FR3)によって形成されるCDR-3(CDR-L3又はCDR-H3)との間に存在する。Kabatナンバリングシステムは、フレームワーク3を重鎖の位置66~94及び軽鎖の位置57~88として定義する。
【0045】
免疫グロブリンファミリーの異なるメンバーの配列のアラインメントに基づいて、ナンバリングスキームが提案されており、例えば、Kabat et al.,1991、及びDondelinger et al.,2018,Frontiers in Immunology,Vol 9,article 2278に記載されている。
【0046】
本明細書で使用される「定常ドメイン」、「定常領域」という用語は、可変領域の外側にある抗体のドメインを指すために交換可能に使用される。定常ドメインは、同じアイソタイプの全ての抗体において同一であるが、アイソタイプごとに異なる。典型的には、重鎖の定常領域は、N末端からC末端に向かって、3つ又は4つの定常ドメインを含むCH1-ヒンジ-CH2-CH3、場合によりCH4によって形成される。
【0047】
本発明の抗体分子の定常ドメインは、存在する場合、抗体分子の提案された機能、特に必要とされ得るエフェクター機能を考慮して選択することができる。例えば、定常ドメインは、ヒトIgA、IgD、IgE、IgG又はIgMドメインであってもよい。特に、抗体分子が治療用途を意図し、抗体エフェクター機能が必要とされる場合、ヒトIgG定常ドメイン、特にIgG1及びIgG3アイソタイプを使用することができる。或いは、抗体分子が治療目的を意図しており、抗体エフェクター機能が必要とされない場合、IgG2及びIgG4アイソタイプを使用することができる。これらの定常ドメインの配列変異体も使用することができることが理解されるであろう。例えば、Angal et al.(Angal et al.,1993.A single amino acid substitution the heterogeneity of chimeric mouse/human(IgG4)antibody during SDS-PAGE analysis Mol Immunol 30,105-108)に記載されているように(Kabatナンバリングシステムに従って番号付けされた)241位のセリンがプロリンに変更されており、本明細書でIgG4Pと呼ばれるIgG4分子を使用することができる。
【0048】
「Fc」、「Fc断片」、「Fcドメイン」及び「Fc領域」は、第1の定常免疫グロブリンドメインを除く抗体の定常領域を含む抗体のC末端領域を指すために互換的に使用される。したがって、Fcは、IgA、IgD及びIgGの最後の2つの定常ドメイン、CH2及びCH3、又はIgE及びIgMの最後の3つの定常ドメイン、及びこれらのドメインに対する可撓性ヒンジN末端を指す。ヒトIgG1重鎖Fc領域は、本明細書において、残基C226からそのカルボキシル末端までを含むと定義され、ナンバリングはKabatのようなEUインデックスに従う。ヒトIgG1の文脈において、下側ヒンジは、KabatのようなEUインデックスに従って、位置226~236を指し、CH2ドメインは、位置237~340を指し、CH3ドメインは、位置341~447を指す。他の免疫グロブリンの対応するFc領域は、配列アラインメントによって同定することができる。
【0049】
本開示の文脈において、存在する場合、定常領域又はFc領域は、上記で定義したように天然であってもよく、又は機能的FcR結合ドメイン、好ましくは機能的FcRn結合ドメインを含む限り、様々な方法で修飾することができる。好ましくは、修飾された定常領域又はFc領域は、機能性及び/又は薬物動態を改善する。修飾は、Fc断片の特定の部分の欠失を含むことができる。修飾は、抗体の生物学的特性に影響を及ぼすことができる様々なアミノ酸置換を更に含むことができる。FcRn結合、したがってインビボ半減期を増加させるための変異も存在することができる。修飾は、抗体のグリコシル化プロファイルの修飾を更に含むことができる。天然Fc断片は、CH2ドメインにおいてグリコシル化されており、2つの重鎖のそれぞれに、297位のアスパラギン残基(Asn297)に結合したN-グリカンが存在する。本開示の文脈において、抗体は、例えば、改善された特性、例えば改善されたエフェクター機能、又は改善された血清半減期をもたらす特定のグリコシル化プロファイルを有するように糖修飾、すなわち操作することができる。
【0050】
本明細書に記載の抗体を単離する。「単離」抗体は、その自然環境の成分から分離(例えば、精製手段によって)された抗体である。
【0051】
「抗体」という用語は、一価、すなわち、1つの抗原結合ドメインのみを含む抗体(例えば、「半抗体」とも呼ばれる、相互接続された完全長重鎖及び完全長軽鎖を含む1アーム抗体)、及び多価抗体、すなわち、2つ以上の抗原結合ドメインを含む抗体を包含する。
【0052】
本発明による「抗体」という用語はまた、抗体の抗原結合断片を包含する。抗体の抗原結合断片としては、一本鎖抗体(例えばscFv及びdsscfv)、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、単一ドメイン抗体又はナノボディ(例えば、VH若しくはVL、又はVHH若しくはVNAR)が挙げられる。本発明で使用するための他の抗体断片としては、国際公開第2011/117648号、国際公開第2005/003169号、国際公開第2005/003170号及び国際公開第2005/003171号に記載されているFab及びFab’断片が挙げられる。
【0053】
これらの抗体断片を生成及び製造する方法は、当技術分野で公知である(例えば、Verma et al.,1998,Journal of Immunological Methods,216,165-181を参照されたい)。
【0054】
本明細書で使用される「Fab断片」という用語は、VL(可変軽鎖)ドメイン及び軽鎖の定常ドメイン(CL)を含む軽鎖断片、並びにVH(可変重鎖)ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含む抗体断片を指す。
【0055】
典型的な「Fab’断片」は、重鎖と軽鎖の対を含み、重鎖は可変領域VH、定常ドメインCH1及び天然又は修飾ヒンジ領域を含み、軽鎖は可変領域VL及び定常ドメインCLを含む。本開示によるFab’の二量体はF(ab’)2を生成し、例えば、二量体化はヒンジを介することができる。
【0056】
本明細書で使用される「単一ドメイン抗体」という用語は、単一の単量体可変抗体ドメインからなる抗体断片を指す。単一ドメイン抗体の例としては、VH又はVL又はVHH又はV-NARが挙げられる。
【0057】
「Fv」という用語は、2つの可変ドメイン、例えば同族対又は親和性成熟可変ドメイン、すなわちVH及びVL対などの協同可変ドメインを指す。
【0058】
本明細書で使用される「一本鎖可変断片」又は「scFv」は、重鎖可変ドメイン(VH)と、VH可変ドメインとVL可変ドメインとの間のペプチドリンカーによって安定化された軽鎖可変ドメイン(VL)とを含むか、又はそれらからなる一本鎖可変断片を指す。VH及びVL可変ドメインは、任意の適切な配向であってもよく、例えば、VHのC末端はVLのN末端に連結されてもよく、又はVLのC末端はVHのN末端に連結されてもよい。
【0059】
本明細書で使用される「ジスルフィド安定化一本鎖可変断片」又は「dsscFv」は、VH可変ドメインとVL可変ドメインとの間のペプチドリンカーによって安定化され、VHとVLとの間のドメイン間ジスルフィド結合も含む一本鎖可変断片を指す(例えば、Weatherill et al.,Protein Engineering,Design&Selection,25(321-329),2012、国際公開第2007109254号を参照されたい)。
【0060】
本明細書で使用される「ジスルフィド安定化可変断片」又は「dsFv」は、VH可変ドメインとVL可変ドメインとの間にペプチドリンカーを含まず、代わりにVHとVLとの間のドメイン間ジスルフィド結合によって安定化される一本鎖可変断片を指す。
【0061】
一実施形態では、本発明の多重特異性抗体はアンタゴニスト抗体である。本明細書で使用される場合、「アンタゴニスト抗体」という用語は、例えばIL-13、IL-17A及び/又はIL-17Fの受容体への結合をブロックするか、又は結合を減少させることによって、1つ又は複数の抗原の生物学的シグナル伝達活性を阻害又は中和することができる抗体を表す。
【0062】
本発明で使用するための抗体は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体又はキメラ抗体であってもよいが、これらに限定されない。
【0063】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術(Kohler&Milstein,1975,Nature,256:495-497)、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor et al.,1983,Immunology Today,4:72)及びEBV-ハイブリドーマ技術(Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,pp77-96,Alan R Liss,Inc.,1985)などの当技術分野で公知の任意の方法によって調製することができる。
【0064】
抗体はまた、例えばBabcook,J.et al.,1996,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93(15):7843-7848l、国際公開第92/02551号、国際公開第2004/051268号及び国際特許出願第2004/106377号に記載される方法によって特定の抗体を産生するために選択した単一リンパ球から生成した免疫グロブリン可変領域cDNAをクローニングし発現させることにより、単一リンパ球抗体法を用いて生成することができる。
【0065】
抗体のスクリーニングは、抗原への結合を測定するアッセイ、及び/又は抗原の1つ又は複数の受容体への結合をブロックする能力を測定するアッセイを使用して行うことができる。結合アッセイの例は、例えば、プレート上に固定化されたIL-13の融合タンパク質を使用し、IL-13に結合した抗IL-13抗体を検出するために結合した二次抗体を使用するELISAである。ブロッキングアッセイの例は、IL-13Rに結合するIL-13リガンドタンパク質のブロッキングを測定するフローサイトメトリーに基づくアッセイである。蛍光標識二次抗体を使用して、IL-13Rに結合するIL-13リガンドタンパク質の量を検出する。
【0066】
ヒト化抗体(CDR移植抗体を含む)は、非ヒト種由来の1つ又は複数の相補性決定領域(CDR)及びヒト免疫グロブリン分子由来のフレームワーク領域を有する抗体分子である(例えば、米国特許第5,585,089号、国際公開第91/09967号を参照されたい)。CDR全体ではなくCDRの特異性決定残基を移入するだけでよいことが理解されよう(例えば、Kashmiri et al.,2005,Methods,36,25-34を参照されたい)。ヒト化抗体は、場合により、CDRが由来する非ヒト種に由来する1つ又は複数のフレームワーク残基を更に含むことができる。
【0067】
キメラ抗体は、要素が、それが由来する種の特徴を保持するように、2つの異なる種に由来する要素から構成される。一般に、キメラ抗体は、例えばマウス、ラット、ウサギなどのある種の可変領域と、ヒトなどの別の種の定常領域を含む。
【0068】
抗体はまた、当技術分野で公知の様々なファージディスプレイ法を用いて生成することができ、Brinkman et al.(J.Immunol.Methods,1995,182:41-50)、AmesらJ.Immunol.Methods,1995,184:177-186)、(Kettleborough et al.(Eur.J.Immunol.1994,24:952-958)、Persic et al.(Gene,1997 187 9-18)、Burton et al.(Advances in Immunology,1994,57:191-280)並びに国際公開第90/02809号、国際公開第91/10737号、国際公開第92/01047号、国際公開第92/18619号、国際公開第93/11236号、国際公開第95/15982号、国際公開第95/20401号、並びに米国特許第5,698,426号、米国特許第5,223,409号、米国特許第5,403,484号、米国特許第5,580,717号、米国特許第5,427,908号、米国特許第5,750,753号、米国特許第5,821,047号、米国特許第5,571,698号、米国特許第5,427,908号、米国特許第5,516,637号、米国特許第5,780,225号、米国特許第5,658,727号、米国特許第5,733,743号及び米国特許第5,969,108号によって開示されたものを含む。
【0069】
完全ヒト抗体は、重鎖及び軽鎖の両方の可変領域及び定常領域(存在する場合)が全てヒト起源であるか、又はヒト起源の配列と実質的に同一であるが、必ずしも同じ抗体由来ではない抗体である。完全ヒト抗体の例としては、例えば上記のファージディスプレイ法によって産生される抗体、及び例えば欧州特許第0546073号、米国特許第5,545,806号、米国特許第5,569,825号、米国特許第5,625,126号、米国特許第5,633,425号、米国特許第5,661,016号、米国特許第5,770,429号、欧州特許第0438474号及び欧州特許第0463151号に一般的な用語で記載されているように、マウス免疫グロブリン可変遺伝子及び場合により定常領域遺伝子がそれらのヒト対応物によって置き換えられたマウスによって産生される抗体を挙げることができる。
【0070】
多重特異性抗体
本発明の抗体は多重特異性抗体である。本明細書で使用される「多重特異性(Multispecific)又は多重特異性(Multi-specific)抗体」は、少なくとも2つの結合ドメイン、すなわち2つ以上の結合ドメイン、例えば2つ又は3つの結合ドメインを有する本明細書に記載される抗体を指し、少なくとも2つの結合ドメインは、同じ抗原上の2つの異なる抗原又は2つの異なるエピトープに独立して結合する。多重特異性抗体は、一般に、各特異性(抗原)に対して一価である。本明細書に記載の多重特異性抗体は、一価及び多価、例えば二価、三価、四価の多重特異性抗体を包含する。
【0071】
パラトープは、抗原を認識して結合する抗体の領域である。本発明の抗体は、マルチパラトピック抗体であってもよい。本明細書で使用される「マルチパラトピック抗体」は、同じ抗原又は2つの異なる抗原のいずれかからの異なるエピトープと相互作用する2つ以上の異なるパラトープを含む本明細書に記載の抗体を指す。本明細書中に記載されるマルチパラトピック抗体は、バイパラトピック、トリパラトピック、テトラパラトピックであってもよい。
【0072】
本明細書で使用される「抗原結合ドメイン」は、標的抗原と特異的に相互作用する1つ又は複数の可変ドメインの一部又は全部、例えば一対の可変ドメインVH及びVLの一部又は全部を含む抗体の一部を指す。結合ドメインは、単一ドメイン抗体を含むことができる。一実施形態では、各結合ドメインは一価である。好ましくは、各結合ドメインは、1つ以下のVH及び1つのVLを含む。
【0073】
本明細書で使用される「特異的に」は、特異的である抗原のみを認識する結合ドメイン、又は非特異的である抗原に対する親和性と比較して、特異的である抗原に対して有意に高い結合親和性を有する結合ドメインを指す。結合親和性は、標準的なアッセイ、例えばBIAcoreなどの表面プラズモン共鳴によって測定することができる。
【0074】
様々な多重特異性抗体フォーマットが生成されている。様々な分類が提案されているが、多重特異性IgG抗体フォーマットとしては、一般に、例えばSpiess et al.,Alternative molecular formats and therapeutic applications for bispecific antibodies.Mol Immunol.67(2015):95-106に記載されているように、二重特異性IgG、付加IgG、多重特異性(例えば二重特異性)抗体断片、多重特異性(例えば二重特異性)融合タンパク質、及び多重特異性(例えば二重特異性)抗体コンジュゲートが挙げられる。
【0075】
二重特異性抗体を作製するための技術としては、CrossMab技術(Klein et al.Engineering therapeutic bispecific antibodies using CrossMab technology,Methods 154(2019)21-31)、Knobs-in-holes engineering(例えば、国際公開第1996027011号、国際公開第1998050431号)、DuoBody技術(例えば、国際公開第2011131746号)、Azymetric技術(例えば、国際公開第2012058768号)が挙げられるが、これらに限定されない。二重特異性抗体を作製するための更に技術が、例えば、Godar et al.,2018,Therapeutic bispecific antibody formats:a patent applications review(1994-2017)、Expert Opinion on Therapeutic Patents,28:3,251-276に記載されている。二重特異性抗体としては、特にCrossMab抗体、DAF(ツー・イン・ワン)、DAF(フォー・イン・ワン)、DutaMab、DT-lgG、Knobs-in-holes共通LC、Knobs-in-holesアセンブリ、電荷対、Fabアーム交換、SEEDbody、トリオマブ、LUZ-Y、Fcab、κλ-body及び直交Fabが挙げられる。
【0076】
付加IgGは、古典的には、IgGの重鎖及び/又は軽鎖のN末端及び/又はC末端に追加の抗原結合ドメイン又は抗原結合断片を付加することによって操作された全長IgGを含む。そのような追加の抗原結合断片の例としては、sdAb抗体(例えばVH又はVL)、Fv、scFv、dsscFv、Fab、scFavが挙げられる。付加IgG抗体フォーマットとしては、例えばSpiess et al.,Alternative molecular formats and therapeutic applications for bispecific antibodies.Mol Immunol.67(2015):95-106に記載されているように、特にDVD-IgG、IgG(H)-scFv、scFv-(H)lgG、IgG(L)-scFv、scFv-(L)IgG、IgG(L、H)-Fv、IgG(H)-V、V(H)-lgG、IgC(L)-V、V(L)-IgG、KIH IgG-scFab、2scFv-lgG、IgG-2scFv、scFv4-lg、Zybody及びDVI-IgG(フォー・イン・ワン)が挙げられる。
【0077】
多重特異性抗体断片としては、例えばSpiess et al.,Alternative molecular formats and therapeutic applications for bispecific antibodies.Mol Immunol.67(2015):95-106に記載されているように、ナノボディ、ナノボディ-HAS、BiTE、二重特異性抗体、DART、TandAb、sc二重特異性抗体、sc-二重特異性抗体-CH3、二重特異性抗体-CH3、トリプルボディ(Triple Body)、ミニ抗体、ミニボディ、Tri Biミニボディ、scFv-CH3 KIH、Fab-scFv、scFv-CH-CL-scFv、F(ab’)2、F(ab’)2-scFV3、scFv-KIH、Fab-scFv-Fc、四価HCab、sc二重特異性抗体-Fc、二重特異性抗体-Fc、タンデムscFv-Fc、及びイントラボディが挙げられる。
【0078】
多重特異性融合タンパク質としては、Dock及びLock、ImmTAC、HSabody、sc二重特異性抗体-HAS、及びタンデムscFv-トキシンが挙げられる。
【0079】
多重特異性抗体コンジュゲートとしては、IgG-lgG、Cov-X-ボディ、及びscFv1-PEG-scFv2が挙げられる。
【0080】
更に多重特異性抗体フォーマットは、例えばBrinkmann and Kontermann,The making of bispecific antibodies,mAbs,9:2,182-212(2017)、特に
図2に、例えばタンデムscFv、三重特異性抗体、Fab-VHH、taFv-Fc、scFv
4-Ig、scFv
2-Fcab、scFv
4-IgGで記載されている。二重特異性抗体、三重特異性抗体及びそれらの産生方法は、例えば国際公開第99/37791号に開示されている。
【0081】
本発明は、ヒトIL-13、ヒトIL-17A及び/又はヒトIL-17Fに結合する多重特異性抗体を提供する。
【0082】
一実施形態では、多重特異性抗体は、ヒトIL-13に結合する抗原結合部位を含み、IL-13結合部位は、CDR-L1については配列番号15に示される配列、CDR-L2については配列番号16に示される配列、及びCDR-L3については配列番号17に示される配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0083】
一実施形態では、多重特異性抗体は、ヒトIL-13に結合する抗原結合部位を含み、IL-13結合部位は、CDR-H1については配列番号18に示される配列、CDR-H2については配列番号19に示される配列、及びCDR-H3については配列番号20に示される配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0084】
一実施形態では、IL-13結合部位は、配列番号27に示される配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0085】
一実施形態では、IL-13結合部位は、配列番号28に示される配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0086】
一実施形態では、IL-13結合部位は、配列番号31に示される配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0087】
一実施形態では、IL-13結合部位は、配列番号32に示される配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0088】
一態様では、多重特異性抗体は、ヒトIL-17A及びヒトIL-17Fに結合する抗原結合部位を含み、抗原結合部位は、
CDR-L1については配列番号1に示される配列、CDR-L2については配列番号2に示される配列、及びCDR-L3については配列番号3に示される配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0089】
一態様では、多重特異性抗体は、ヒトIL-17A及びヒトIL-17Fに結合する抗原結合部位を含み、抗原結合部位は、
CDR-H1については配列番号4に示される配列、CDR-H2については配列番号5に示される配列、及びCDR-H3については配列番号6に示される配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0090】
一態様では、ヒトIL-17A及びヒトIL-17Fに結合する抗原結合部位は、配列番号7に示される配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0091】
一態様では、ヒトIL-17A及びヒトIL-17Fに結合する抗原結合部位は、配列番号9に示される配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0092】
一態様では、多重特異性抗体はFcドメインを欠き、半減期は血清アルブミンに結合する抗原結合部位によって提供される。
【0093】
一実施形態では、多重特異性抗体は、配列番号57又は配列番号59に示される配列を含む。
【0094】
一実施形態では、多重特異性抗体は、配列番号61又は配列番号63に示される配列を含む。
【0095】
一実施形態では、多重特異性抗体は、配列番号59に示される配列及び配列番号63に示される配列を含む。
【0096】
一実施形態では、多重特異性抗体は、
式(I)のポリペプチド鎖:
VH-CH1-(CH2)s-(CH3)t-X-(V1)p、及び
式(II)のポリペプチド鎖:
VL-CL-Y-V2
を含むか、又はこれらからなり、
式中、
VHは重鎖可変ドメインを表し、
CH1は重鎖定常領域のドメイン1を表し、
CH2は重鎖定常領域のドメイン2を表し、
CH3は重鎖定常領域のドメイン3を表し、
Xは結合又はリンカーを表し、
V1はdsscFv、dsFv、又はscFvを表し、
VLは軽鎖可変ドメインを表し、
CLはCカッパなどの軽鎖定常領域由来のドメインを表し、
Yは結合又はリンカーを表し、
V2はdsscFv、dsFv又はscFvを表し、
pは0又は1を表し、
sは0又は1を表し、
tは0又は1を表し、
式中、pが0である場合、Xは存在せず、qが0である場合、Yは存在せず、
式(I)のポリペプチド鎖はプロテインA結合ドメインを含み、
式(II)のポリペプチド鎖はプロテインAに結合しない。
【0097】
一実施形態では、sが0であり、tが0である場合、本開示による多重特異性抗体は、
式(I)及び(II)のそれぞれの重鎖及び軽鎖の二量体として提供され、VH-CH1部分がVL-CL部分と共に機能的Fab又はFab’断片を形成する。
【0098】
一実施形態では、sが1であり、tが1である場合、本開示による多重特異性抗体は、
式(I)及び(II)のそれぞれの2つの重鎖及び2つの軽鎖の二量体として提供され、2つの重鎖が鎖間相互作用により、特にCH2-CH3のレベルで接続され、各重鎖のVH-CH1部分が各軽鎖のVL-CL部分と共に、機能的Fab又はFab’断片を形成する。そのような実施形態では、2つのVH-CH1-CH2-CH3部分は、2つのVL-CL部分と共に機能的全長抗体を形成する。そのような実施形態では、全長抗体は、機能的Fc領域を含むことができる。
【0099】
VHは重鎖可変ドメインを表す。一実施形態では、VHはヒト化されている。一実施形態では、VHは完全にヒト型である。
【0100】
VLは軽鎖可変ドメインを表す。一実施形態では、VLはヒト化されている。一実施形態では、VLは完全ヒト型である。
【0101】
一般に、VH及びVLは一緒になって抗原結合ドメインを形成する。一実施形態では、VH及びVLは同族対を形成する。
【0102】
本明細書で使用される「同族対」は、インビボで生成された単一の抗体由来の可変ドメインの対、すなわち宿主から単離された可変ドメインの天然に存在する対を指す。したがって、同族対はVH及びVL対である。一例では、同族対は抗原に協同的に結合する。
【0103】
本明細書で使用される「可変領域」又は「可変ドメイン」は、CDR及びフレームワーク、特に適切なフレームワークを含む抗体鎖の領域を指す。
【0104】
本開示で使用するための可変領域は、一般に、当技術分野で公知の任意の方法によって産生することができる抗体に由来する。
【0105】
本明細書で使用される「由来する」とは、使用される配列又は使用される配列に非常に類似する配列が、抗体の軽鎖又は重鎖などの元の遺伝物質から得られたという事実を指す。
【0106】
本明細書で使用される「非常に類似している」とは、その全長にわたって、96、97、98又は99%など、95%以上類似しているアミノ酸配列を指すことを意図する。
【0107】
VH及びVLについて本明細書で上述した本発明で使用するための可変領域は、任意の適切な供給源からのものであってもよく、例えば完全ヒト型又はヒト化されていてもよい。
【0108】
一実施形態では、VH及びVLによって形成される結合ドメインは、第1の抗原に特異的である。
【0109】
一態様では、V1の結合ドメインは第2の抗原に特異的である。
【0110】
一態様では、V2の結合ドメインは第3の抗原に特異的である。
【0111】
一実施形態では、VH-VL、V1、及びV2の各々は、存在する場合、それぞれの抗原に別々に結合する。
【0112】
一実施形態では、CH1ドメインは、抗体重鎖由来の天然に存在するドメイン1又はその誘導体である。一実施形態では、CH2ドメインは、抗体重鎖由来の天然に存在するドメイン2又はその誘導体である。一実施形態では、CH3ドメインは、抗体重鎖由来の天然に存在するドメイン3又はその誘導体である。
【0113】
一実施形態では、軽鎖中のCL断片は、定常カッパ配列又はその誘導体である。一実施形態では、軽鎖中のCL断片は、定常ラムダ配列又はその誘導体である。
【0114】
本明細書で使用される天然に存在するドメインの誘導体は、例えば望ましくない特性を排除することなどによってドメインの特性を最適化するために、天然に存在する配列中の少なくとも1つのアミノ酸が置換又は欠失されているが、ドメインの特徴的な特徴が保持されていることを指すことを意図する。一実施形態では、天然に存在するドメインの誘導体は、天然に存在する配列と比較して、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、10個、11個又は12個のアミノ酸の置換又は欠失を含む。
【0115】
一実施形態では、1つ又は複数の天然又は操作された鎖間(すなわち軽鎖と重鎖との間)ジスルフィド結合は、機能性Fab又はFab’断片中に存在する。
【0116】
一実施形態では、式(I)及び(II)のポリペプチド鎖中のCH1とCLとの間に「天然」ジスルフィド結合が存在する。
【0117】
CLドメインがカッパ又はラムダのいずれかに由来する場合、システインを形成する結合の天然の位置は、ヒトcカッパ及びcラムダにおいて214である(Kabatナンバリング第4版1987)。
【0118】
CH1中のシステインを形成するジスルフィド結合の正確な位置は、実際に使用される特定のドメインに依存する。したがって、例えば、ヒトガンマ-1では、ジスルフィド結合の天然の位置は位置233に位置する(Kabatナンバリング第4版1987)。ガンマ2、3、4、IgM及びIgDなどの他のヒトアイソタイプのシステインを形成する結合の位置は公知であり、例えばヒトIgM、IgE、IgG2、IgG3、IgG4については位置127、ヒトIgD及びIgA2Bの重鎖については128である。
【0119】
場合により、式I及びIIのポリペプチドのVHとVLとの間にジスルフィド結合が存在してもよい。
【0120】
一実施形態では、本開示による多重特異性抗体は、CH1とCLとの間に天然に存在するものと同等又は対応する位置にジスルフィド結合を有する。
【0121】
一実施形態では、CH1を含む定常領域及びCLなどの定常領域は、天然に存在しない位置にあるジスルフィド結合を有する。これは、必要な1つ又は複数の位置でシステインをアミノ酸鎖に導入することによって分子に操作することができる。この天然に存在しないジスルフィド結合は、CH1とCLとの間に存在する天然ジスルフィド結合に加えて、又はその代わりとして存在する。天然の位置のシステインは、ジスルフィド架橋を形成することができないセリンなどのアミノ酸で置き換えることができる。
【0122】
操作されたシステインの導入は、当技術分野で公知の任意の方法を用いて行うことができる。これらの方法としては、PCR伸長オーバーラップ突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発又はカセット突然変異誘発(一般に、Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory Press,Cold Spring Harbour,NY,1989、Ausbel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing&Wiley-Interscience,NY,1993を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。部位特異的突然変異誘発キット、例えばQuikChange(登録商標)部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene、カリフォルニア州ラホヤ)が市販されている。カセット突然変異誘発は、Wells et al.,1985,Gene,34:315-323に基づいて行うことができる。
【0123】
或いは、変異体は、アニーリング、ライゲーション及びPCR増幅、並びに重複オリゴヌクレオチドのクローニングによる全遺伝子合成によって作成することができる。
【0124】
一実施形態では、CH1とCLとの間のジスルフィド結合は完全に存在せず、例えば、鎖間システインは、セリンなどの別のアミノ酸で置き換えられてもよい。したがって、一実施形態では、分子の機能性Fab断片に鎖間ジスルフィド結合は存在しない。参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2005/003170号などの開示は、鎖間ジスルフィド結合なしにFab断片を提供する方法を記載している。
【0125】
本発明で使用するための抗体フォーマットの例としては、付加IgG及び付加Fabが挙げられ、全IgG又はFab断片はそれぞれ、少なくとも1つの追加の抗原結合ドメイン(例えば、1つ、2つ、3つ又は4つの追加の抗原結合ドメイン)、例えば単一ドメイン抗体(例えば、VH若しくはVL、又はVHH)、scFv、dsscFv、dsFvを、当該IgG又はFabの軽鎖のN末端及び/又はC末端に、場合により当該IgG又はFabの重鎖に付加することによって操作され、例えば、全て参照により本明細書に組み入れられる、国際公開第2009/040562号、国際公開第2010035012号、国際公開第2011/030107号、国際公開第2011/061492号、国際公開第2011/061246号及び国際公開第2011/086091号に記載される。IgGの軽鎖のC末端に(及び場合により重鎖に)dsFvを付加することによって操作された全長IgGを含む付加IgGは、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2015/197789号に最初に開示された。
【0126】
本発明で使用するための好ましい抗体フォーマットは、2つのscFv又はdsscFvに連結されたFabを含み、各scFv又はdsscFvは同じ又は異なる標的に結合する(例えば、1つのscFv又はdsscFvは治療標的に結合し、1つのscFv又はdsscFvは、例えばアルブミンに結合することによって半減期を増加させる)。そのような抗体断片は、参照によりその全体が、特に抗体断片の考察に関して本明細書に組み込まれる国際特許出願公開第2015/197772号に記載されている。
【0127】
V1は、dsscFv、dsFv又はscFvを表す。
【0128】
V2は、dsscFv、dsFv又はscFvを表す。
【0129】
一実施形態では、V1及び/又はV2がdsFv又はdsscFvである場合、V1及び/又はV2の可変ドメインVHとVLとの間のジスルフィド結合は、以下に列挙される残基のうちの2つの間にある(文脈上別段の指示がない限り、以下のリストではKabatナンバリングが使用される)。Kabatナンバリングが参照される場合、関連する参照は、Kabat et al.,1991(5th edition,Bethesda,Md.),in Sequences of Proteins of Immunological Interest,US Department of Health and Human Services,NIH,USAである。
【0130】
一実施形態では、ジスルフィド結合は、
・例えば、Protein Science 6,781-788 Zhu et al(1997)を参照されたい、VH37+VL95C、
・例えば、Weatherill et al.,Protein Engineering,Design&Selection,25(321-329),2012)を参照されたい、VH44+VL100、
・例えば、J Biochem.118,825-831 Luo et al(1995)を参照されたい、VH44+VL105、
・例えば、Protein Science 6,781-788 Zhu et al(1997)を参照されたい、VH45+VL87、
・例えば、FEBS Letters 377 135-139 Young et al(1995)を参照されたい、VH55+VL101、
・例えば、Biochemistry 29 1362-1367 Glockshuber et al(1990)を参照されたい、VH100+VL50、
・例えば、Biochemistry 29 1362-1367 Glockshuber et al(1990)を参照されたい、VH100b+VL49、
・例えば、Protein Science 6,781-788 Zhu et al(1997)を参照されたい、VH98+VL46、
・例えば、Protein Science 6,781-788 Zhu et al(1997)を参照されたい、VH101+VL46、
・例えば、Proc.Natl.Acad.Sci.USA Vol.90pp.7538-7542 Brinkmann et al(1993)、又はProteins 19,35-47 Jung et al(1994)を参照されたい、VH105+VL43、
・例えば、FEBS Letters 377 135-139 Young et al(1995)を参照されたい、VH106+VL57からなる群から選択される位置
及び分子内に位置する可変領域対中のそれに対応する位置にある。
【0131】
一実施形態では、ジスルフィド結合は、位置VH44と位置VL100との間に形成される。
【0132】
上記のアミノ酸対は、ジスルフィド結合を形成することができるようにシステインによる置換を助長する位置にある。システインは、公知の技術によってこれらの所望の位置に操作することができる。したがって、一実施形態では、本開示による操作されたシステインは、所与のアミノ酸位置の天然に存在する残基がシステイン残基で置換されている場合を指す。
【0133】
操作されたシステインの導入は、当技術分野で公知の任意の方法を用いて行うことができる。これらの方法としては、PCR伸長オーバーラップ突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発又はカセット突然変異誘発(一般に、Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory Press,Cold Spring Harbour,NY,1989、Ausbel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing&Wiley-Interscience,NY,1993を参照されたい)が挙げられるが、これらに限定されない。部位特異的突然変異誘発キット、例えばQuikChange(登録商標)部位特異的突然変異誘発キット(Stratagen、カリフォルニア州ラホヤ)が市販されている。カセット突然変異誘発は、Wells et al.,1985,Gene,34:315-323に基づいて行うことができる。
【0134】
或いは、変異体は、アニーリング、ライゲーション及びPCR増幅、並びに重複オリゴヌクレオチドのクローニングによる全遺伝子合成によって作成することができる。
【0135】
したがって、一実施形態では、V1及び/又はV2がdsFv又はdsscFvである場合、V1の可変ドメインVH及びVL並びに/又はV2の可変ドメインVH及びVLは、2つのシステイン残基間のジスルフィド結合によって連結されてもよく、システイン残基の対の位置は、VH37及びVL95、VH44及びVL100、VH44及びVL105、VH45及びVL87、VH100及びVL50、VH100b及びVL49、VH98及びVL46、VH101及びVL46、VH105及びVL43、並びにVH106及びVL57からなる群から選択される。
【0136】
一実施形態では、V1及び/又はV2がdsFv又はdsscFvである場合、V1の可変ドメインVH及びVL並びに/又はV2の可変ドメインVH及びVLは、CDRの外側にある2つのシステイン残基、VH中に1つ及びVL中に1つのシステイン残基の間のジスルフィド結合によって連結されてもよく、システイン残基の対の位置は、VH37及びVL95、VH44及びVL100、VH44及びVL105、VH45及びVL87、VH100及びVL50、VH98及びVL46、VH105及びVL43、VH106及びVL57からなる群から選択される。
【0137】
一実施形態では、V1がdsFv又はdsscFvである場合、V1の可変ドメインVH及びVLは、一方がVH44位置にあり、他方がVL100位置にある2つの操作されたシステイン残基間のジスルフィド結合によって連結される。一実施形態では、V2がdsFv又はdsscFvである場合、V2の可変ドメインVH及びVLは、一方がVH44位置にあり、他方がVL100位置にある2つの操作されたシステイン残基間のジスルフィド結合によって連結される。
【0138】
一実施形態では、V1がdsscFv、dsFv、又はscFvである場合、V1のVHドメインはXに結合している。
【0139】
一実施形態では、V1がdsscFv、dsFv、又はscFvである場合、V1のVLドメインはXに結合している。
【0140】
一実施形態では、V2がdsscFv、dsFv、又はscFvである場合、V2のVHドメインはYに結合している。
【0141】
一実施形態では、V2がdsscFv、dsFv、又はscFvである場合、V2のVLドメインはYに結合している。
【0142】
当業者は、V1及び/又はV2がdsFvを表す場合、多重特異性抗体は、X又はYに結合していない対応する遊離VH又はVLドメインをコードする第3のポリペプチドを含むことを理解するであろう。V1及びV2がdsFvである場合、「遊離可変ドメイン」(すなわち、ジスルフィド結合を介してポリペプチドの残りの部分に連結されたドメイン)は両方の鎖に共通である。したがって、X又はYを介してポリペプチドに融合又は連結された実際の可変ドメインは、各ポリペプチド鎖において異なっていてもよいが、それと対になった遊離可変ドメインは、一般に互いに同一である。
【0143】
いくつかの実施形態では、pは1である。いくつかの実施形態では、pは0である。
【0144】
いくつかの実施形態では、sは1である。いくつかの実施形態では、sは0である。
【0145】
いくつかの実施形態では、tは1である。いくつかの実施形態では、tは0である。
【0146】
いくつかの実施形態では、sは1であり、tは1である。いくつかの実施形態では、sは0であり、tは0である。
【0147】
一実施形態では、pは1であり、qは1であり、rは0であり、sは0であり、tは0であり、V1及びV2は両方ともdsscFvを表す。したがって、一態様では、
a)式(Ia)のポリペプチド鎖:
VH-CH1-X-V1、及び
b)式(IIa)のポリペプチド鎖:
VL-CL-Y-V2
を含むか、又はこれらからなり、
式中、
VHは重鎖可変ドメインを表し、
CH1は重鎖定常領域のドメイン1を表し、
Xは結合又はリンカーを表し、
Yは結合又はリンカーを表し、
V1はscFv、dsscFv、又はdsFvを表し、
VLは軽鎖可変ドメインを表し、
CLはCカッパなどの軽鎖定常領域由来のドメインを表し、
V2はscFv、dsscFv又はdsFvを表し、
V1又はV2の少なくとも1つはdsscFv又はdsFvであり、
式(Ia)のポリペプチド鎖はプロテインA結合ドメインを含み、
式(IIa)のポリペプチド鎖はプロテインAに結合しない、ヒトIL-13、ヒトIL-17A及び/又はヒトIL-17Fに結合する、多重特異性抗体を提供する。
【0148】
そのような実施形態では、V2はプロテインAに結合しない、すなわち、V2のscFv、dsscFv又はdsFvはプロテインA結合ドメインを含まない。一実施形態では、V2、すなわちV2のscFv、dsscFv又はdsFvはVH1ドメインを含む。別の実施形態では、V2、すなわちV2のscFv、dsscFv又はdsFvは、プロテインAに結合しないVH3ドメインを含む。一実施形態では、V2、すなわちV2のscFv、dsscFv又はdsFvは、VH2ドメインを含む。一実施形態では、V2、すなわちV2のscFv、dsscFv又はdsFvはVH4ドメインを含む。一実施形態では、V2、すなわちV2のscFv、dsscFv又はdsFvはVH5ドメインを含む。一実施形態では、V2、すなわちV2のscFv、dsscFv又はdsFvはVH6ドメインを含む。一実施形態では、式(Ia)のポリペプチド鎖は、VH又はV1中に存在する1つのプロテインA結合ドメインのみを含む。一実施形態では、式(Ia)のポリペプチド鎖は、V1中に存在する1つのプロテインA結合ドメインのみを含む。別の実施形態では、式(Ia)のポリペプチド鎖は、それぞれVH及びV1に存在する2つのプロテインA結合ドメインを含む。
【0149】
別の実施形態では、pは0であり、qは1であり、rは0であり、sは1であり、tは1であり、V2はdsscFvである。したがって、一態様では、
a)式(Ib)のポリペプチド鎖:
VH-CH1-CH2-CH3、及び
b)式(IIb)のポリペプチド鎖:
VL-CL-Y-V2
を含むか、又はこれらからなり、
式中、
VHは重鎖可変ドメインを表し、
CH1は重鎖定常領域のドメイン1を表し、
CH2は重鎖定常領域のドメイン2を表し、
CH3は重鎖定常領域のドメイン3を表し、
Yは結合又はリンカーを表し、
VLは軽鎖可変ドメインを表し、
CLはCカッパなどの軽鎖定常領域由来のドメインを表し、
V2はdsscFvを表し、
式(Ib)のポリペプチド鎖はプロテインA結合ドメインを含み、
式(IIb)のポリペプチド鎖はプロテインAに結合しない、ヒトIL-13、ヒトIL-17A及び/又はヒトIL-17Fに結合する、多重特異性抗体を提供する。
【0150】
そのような実施形態では、V2はプロテインAに結合しない、すなわちV2のdsscFvはプロテインA結合ドメインを含まない。一実施形態では、V2、すなわちV2のdsscFvはVH1ドメインを含む。別の実施形態では、V2、すなわちV2のdsscFvは、プロテインAに結合しないVH3ドメインを含む。一実施形態では、式(Ib)のポリペプチド鎖は、VH又はCH2-CH3に存在する1つのプロテインA結合ドメインのみを含む。別の実施形態では、式(Ib)のポリペプチド鎖は、それぞれVH及びCH2-CH3に存在する2つのプロテインA結合ドメインを含む。
【0151】
別の実施形態では、pは0であり、qは1であり、rは0であり、sは1であり、tは1であり、V2はdsFvである。したがって、一態様では、
a)式(Ic)のポリペプチド鎖:
VH-CH1-CH2-CH3、及び
b)式(IIc)のポリペプチド鎖:
VL-CL-Y-V2
を含むか、又はこれらからなり、
式中、
VHは重鎖可変ドメインを表し、
CH1は重鎖定常領域のドメイン1を表し、
CH2は重鎖定常領域のドメイン2を表し、
CH3は重鎖定常領域のドメイン3を表し、
Yは結合又はリンカーを表し、
VLは軽鎖可変ドメインを表し、
CLはCカッパなどの軽鎖定常領域由来のドメインを表し、
V2はdsFvを表し、
式(Ic)のポリペプチド鎖はプロテインA結合ドメインを含み、
式(IIc)のポリペプチド鎖はプロテインAに結合しない、ヒトIL-13、ヒトIL-17A及び/又はヒトIL-17Fに結合する、多重特異性抗体を提供する。
【0152】
そのような実施形態では、V2、すなわちV2のdsFvはプロテインAに結合しない。一実施形態では、式(Ic)のポリペプチド鎖は、VH又はCH2-CH3に存在する1つのプロテインA結合ドメインのみを含む。別の実施形態では、式(Ic)のポリペプチド鎖は、それぞれVH及びCH2-CH3に存在する2つのプロテインA結合ドメインを含む。
【0153】
本発明の多重特異性抗体の一実施形態では、
VL及びVHは、ヒトIL-17A及び/又はヒトIL-17Fに結合する抗原結合部位を含み、
V1は、ヒト血清アルブミンに結合する抗原結合部位を含み、
V2は、ヒトIL-13に結合する抗原結合部位を含む。
【0154】
一実施形態では、VLは、CDR-L1については配列番号1に示される配列、CDR-L2については配列番号2に示される配列及びCDR-L3については配列番号3に示される配列を含み、VHは、CDR-H1については配列番号4に示される配列、CDR-H2については配列番号5に示される配列、及びCDR-H3については配列番号6に示される配列を含む。
【0155】
一実施形態では、V1は、CDR-L1については配列番号39に示される配列、CDR-L2については配列番号40に示される配列、及びCDR-L3については配列番号41に示される配列を含む軽鎖可変領域、並びにCDR-H1については配列番号42に示される配列、CDR-H2については配列番号43に示される配列、及びCDR-H3については配列番号44に示される配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0156】
一実施形態では、V2は、CDR-L1については配列番号15に示される配列、CDR-L2については配列番号16に示される配列、及びCDR-L3については配列番号17に示される配列を含む軽鎖可変領域、並びにCDR-H1については配列番号18に示される配列、CDR-H2については配列番号19に示される配列、及びCDR-H3については配列番号20に示される配列を含む重鎖可変領域を含み、
一実施形態では、VLは配列番号7に示される配列を含み、VHは配列番号9に示される配列を含む。
【0157】
一実施形態では、V1は、配列番号45に示される配列を含む軽鎖可変領域及び配列番号46に示される配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0158】
一実施形態では、V1は、配列番号49に示される配列を含む軽鎖可変領域及び配列番号50に示される配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0159】
一実施形態では、V1の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域はリンカーによって連結されており、当該リンカーは配列番号68に示される配列を含む。
【0160】
一実施形態では、V1は、配列番号53に示される配列を含むscFv、又は配列番号55に示される配列を含むdsscFvである。
【0161】
一実施形態では、V2は、配列番号27に示される配列を含む軽鎖可変領域及び配列番号28に示される配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0162】
一実施形態では、V2は、配列番号31に示される配列を含む軽鎖可変領域及び配列番号32に示される配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0163】
一実施形態では、V2の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域はリンカーによって連結されており、当該リンカーは配列番号66に示される配列を含む。
【0164】
一実施形態では、V2は、配列番号35に示される配列を含むscFv、又は配列番号37に示される配列を含むdsscFvである。
【0165】
一実施形態では、Xは、配列番号67に示される配列を含むリンカーである。
【0166】
一実施形態では、Yは、配列番号65に示される配列を含むリンカーである。
【0167】
一実施形態では、式(Ia)のポリペプチド鎖は、配列番号57又は配列番号59に示される配列を含む。
【0168】
一実施形態では、式(IIa)のポリペプチド鎖は、配列番号61又は配列番号63に示される配列を含む。
【0169】
一実施形態では、式(Ia)のポリペプチド鎖は配列番号59に示される配列を含み、式(IIa)のポリペプチド鎖は配列番号63に示される配列を含む。
【0170】
抗体が抗原に結合し、その生物学的活性を中和する能力を有意に変化させることなく、本発明によって提供される配列に対して1つ又は複数のアミノ酸の置換、付加及び/又は欠失を行ってもよいことが理解されるであろう。任意のアミノ酸の置換、付加及び/又は欠失の効果は、例えば、本明細書に記載の方法、特に例に例示される方法を使用して、抗原結合及び生物学的活性の阻害を決定することによって、当業者によって容易に試験することができる。
【0171】
したがって、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、15、16、17、18、19、20、39、40、41、42、43及び44に示される配列によって定義されるCDRを含む多重特異性抗体であって、CDRの1つ又は複数における1つ又は複数のアミノ酸が別のアミノ酸、例えば本明細書において以下に定義される類似のアミノ酸で置換されている多重特異性抗体を提供する。
【0172】
本明細書で使用される「同一性」は、整列した配列の任意の特定の位置で、アミノ酸残基が配列間で同一であることを示す。本明細書で使用される「類似性」は、整列した配列の任意の特定の位置で、アミノ酸残基が配列間で類似のタイプであることを示す。例えば、イソロイシン又はバリンの代わりにロイシンを用いてもよい。互いに置換され得る他のアミノ酸としては、
-フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン(芳香族側鎖を有するアミノ酸)、
-リジン、アルギニン及びヒスチジン(塩基性側鎖を有するアミノ酸)、
-アスパラギン酸及びグルタミン酸(酸性側鎖を有するアミノ酸)、
-アスパラギン及びグルタミン(アミド側鎖を有するアミノ酸)、及び
-システイン及びメチオニン(硫黄含有側鎖を有するアミノ酸)が挙げられるが、これらに限定されない。同一性及び類似性の程度は、容易に計算することができる(Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988、Biocomputing.Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993、Computer Analysis of Sequence Data,Part 1,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994、Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987,Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991、NCBIから入手可能なBLAST(商標)ソフトウェア(Altschul,S.F.et al.,1990,J.Mol.Biol.215:403-410、Gish,W.&States,D.J.1993,Nature Genet.3:266-272.Madden,T.L.et al.,1996,Meth.Enzymol.266:131-141、Altschul,S.F.et al.,1997,Nucleic Acids Res.25:3389-3402、Zhang,J.&Madden,T.L.1997,Genome Res.7:649-656,)。
【0173】
一実施形態では、多重特異性抗体のCDRは、配列番号1、2、3、4、5、6、15、16、17、18、19、20、39、40、41、42、43及び44に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含む。
【0174】
一実施形態では、VLは、配列番号7に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含み、VHは、配列番号9に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含む。
【0175】
一実施形態では、V1は、配列番号45に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%若しくは98%の同一性若しくは類似性を有する配列を含む軽鎖可変領域及び/又は配列番号46に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%若しくは98%の同一性若しくは類似性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0176】
一実施形態では、V1は、配列番号49に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%若しくは98%の同一性若しくは類似性を有する配列を含む軽鎖可変領域及び/又は配列番号50に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%若しくは98%の同一性若しくは類似性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0177】
一実施形態では、V1の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域はリンカーによって連結されており、当該リンカーは、配列番号68に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含む。
【0178】
一実施形態では、V1は、配列番号53に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%若しくは98%の同一性若しくは類似性を有する配列を含むscFv、又は配列番号55に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%若しくは98%の同一性若しくは類似性を有する配列を含むdsscFvである。
【0179】
一実施形態では、V2は、配列番号27に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%若しくは98%の同一性若しくは類似性を有する配列を含む軽鎖可変領域及び/又は配列番号28に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%若しくは98%の同一性若しくは類似性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0180】
一実施形態では、V2は、配列番号31に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%若しくは98%の同一性若しくは類似性を有する配列を含む軽鎖可変領域及び/又は配列番号32に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%若しくは98%の同一性若しくは類似性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0181】
一実施形態では、V2の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域はリンカーによって連結されており、当該リンカーは、配列番号66に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含む。
【0182】
一実施形態では、V2は、配列番号35に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%若しくは98%の同一性若しくは類似性を有する配列を含むscFv、又は配列番号37に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%若しくは98%の同一性若しくは類似性を有する配列を含むdsscFvである。
【0183】
一実施形態では、Xは、配列番号67に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含むリンカーである。
【0184】
一実施形態では、Yは、配列番号65に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含むリンカーである。
【0185】
一実施形態では、式(Ia)のポリペプチド鎖は、配列番号57又は配列番号59に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含む。
【0186】
一実施形態では、式(IIa)のポリペプチド鎖は、配列番号61又は配列番号63に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含む。
【0187】
一実施形態では、式(Ia)のポリペプチド鎖は、配列番号59に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含み、式(IIa)のポリペプチド鎖は、配列番号63に示される配列と少なくとも70%、80%、90%、95%又は98%の同一性又は類似性を有する配列を含む。
【0188】
エピトープ
エピトープは、抗体によって結合される抗原の領域である。エピトープは、構造的又は機能的として定義することができる。機能的エピトープは、一般に、構造的エピトープのサブセットであり、相互作用の親和性に直接寄与する残基を有する。エピトープはまた、立体配座であってもよく、すなわち、非直鎖状アミノ酸から構成されてもよい。特定の実施形態では、エピトープは、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基、又はスルホニル基などの分子の化学的に活性な表面基である決定基を含むことができ、特定の実施形態では、特定の三次元構造特性及び/又は特定の電荷特性を有してもよい。
【0189】
抗体が参照抗体と同じエピトープに結合するか、又は参照抗体と結合について競合するかどうかは、当技術分野で公知の日常的な方法を使用することによって容易に決定することができる。例えば、試験抗体が本発明の参照抗体と同じエピトープに結合するかどうかを決定するために、参照抗体を飽和条件下でタンパク質又はペプチドに結合させる。次に、タンパク質又はペプチドに結合する試験抗体の能力を評価する。試験抗体が参照抗体との飽和結合後にタンパク質又はペプチドに結合することができる場合、試験抗体は参照抗体とは異なるエピトープに結合すると結論付けることができる。一方、試験抗体が参照抗体との飽和結合後にタンパク質又はペプチドに結合することができない場合、試験抗体は、本発明の参照抗体によって結合されるエピトープと同じエピトープに結合し得る。
【0190】
抗体が参照抗体との結合について競合するかどうかを決定するために、上記の結合方法論は2つの方向で行われる。第1の方向では、参照抗体を飽和条件下でタンパク質/ペプチドに結合させ、続いて試験抗体のタンパク質/ペプチド分子への結合を評価する。第2の方向では、試験抗体を飽和条件下でタンパク質/ペプチドに結合させ、続いて参照抗体のタンパク質/ペプチドへの結合を評価する。両方向において、第1の(飽和)抗体のみがタンパク質/ペプチドに結合することができる場合、試験抗体及び参照抗体はタンパク質/ペプチドへの結合について競合すると結論付けられる。当業者には理解されるように、参照抗体と結合について競合する抗体は、必ずしも参照抗体と同一のエピトープに結合するわけではないが、重複又は隣接するエピトープに結合することによって参照抗体の結合を立体的にブロックすることができる。
【0191】
2つの抗体は、各々が抗原への他方の結合を競合的に阻害(ブロック)する場合、同じ又は重複するエピトープに結合する。すなわち、1倍、5倍、10倍、20倍又は100倍過剰の一方の抗体は、競合結合アッセイで測定した場合に、他方の結合を少なくとも50%、75%、90%又は更に99%阻害する(例えば、Junghans et al.,Cancer Res,1990:50:1495-1502を参照されたい)。或いは、一方の抗体の結合を低減又は排除する抗原中の本質的に全てのアミノ酸変異が他方の結合を低減又は排除する場合、2つの抗体は同じエピトープを有する。一方の抗体の結合を低減又は排除するいくつかのアミノ酸変異が他方の結合を低減又は排除する場合、2つの抗体は重複エピトープを有する。
【0192】
次いで、試験抗体の結合の観察された欠如が実際に参照抗体と同じエピトープへの結合によるものであるかどうか、又は立体ブロッキング(又は別の現象)が観察された結合の欠如の原因であるかどうかを確認するために、更に慣用的な実験(例えば、ペプチド突然変異及び結合分析)を行うことができる。この種の実験は、ELISA、RIA、表面プラズモン共鳴、フローサイトメトリー、又は当技術分野で利用可能な任意の他の定量的若しくは定性的抗体結合アッセイを使用して行うことができる。
【0193】
抗体は、配列番号1/2/3/4/5/6のCDR-L1/CDR-L2/CDR-L3/CDR-H1/CDR-H2/CDR-H3配列の組み合わせを含む多重特異性抗体とIL-17A又はIL-17Fへの結合について競合するか、又は多重特異性抗体と同じエピトープに結合することができる。
【0194】
抗体は、配列番号15/16/17/18/19/20のCDR-L1/CDR-L2/CDR-L3/CDR-H1/CDR-H2/CDR-H3配列の組み合わせを含む多重特異性抗体とIL-13への結合について競合するか、又は多重特異性抗体と同じエピトープに結合することができる。
【0195】
抗体は、配列番号39/40/41/42/43/44のCDR-L1/CDR-L2/CDR-L3/CDR-H1/CDR-H2/CDR-H3配列の組み合わせを含む多重特異性抗体と血清アルブミンへの結合について競合するか、又は多重特異性抗体と同じエピトープに結合することができる。
【0196】
エフェクター分子
所望であれば、本発明で使用するための多重特異性抗体は、1つ又は複数のエフェクター分子にコンジュゲートすることができる。エフェクター分子は、本発明の抗体に結合することができる単一部分を形成するように連結された単一のエフェクター分子又は2つ以上のそのような分子を含むことができることが理解されるであろう。エフェクター分子に連結された抗体断片を得ることが望ましい場合、抗体断片が直接又はカップリング剤を介してエフェクター分子に連結される標準的な化学的又は組換えDNA手順によって調製することができる。そのようなエフェクター分子を抗体にコンジュゲートさせるための技術は、当技術分野で公知である(Hellstrom et al.,Controlled Drug Delivery,2nd Ed.,Robinson et al.,eds.,1987,pp.623-53、Thorpe et al.,1982,Immunol.Rev.,62:119-58及びDubowchik et al.,1999,Pharmacology and Therapeutics,83,67-123を参照されたい)。特定の化学的手順としては、例えば、国際公開第93/06231号、国際公開第92/22583号、国際公開第89/00195号、国際公開第89/01476号及び国際公開第03031581号に記載されているものが挙げられる。或いは、エフェクター分子がタンパク質又はポリペプチドである場合、例えば国際公開第86/01533号及び欧州特許第0392745号に記載されているように、組換えDNA手順を使用して連結を達成することができる。
【0197】
本明細書で使用されるエフェクター分子という用語は、例えば、抗悪性腫瘍薬、薬物、毒素、生物学的に活性なタンパク質、例えば酵素、他の抗体又は抗体断片、合成又は天然に存在するポリマー、核酸及びその断片、例えばDNA、RNA及びその断片、放射性核種、特に放射性ヨウ化物、放射性同位体、キレート化金属、ナノ粒子及びレポーター基、例えば蛍光化合物又はNMR若しくはESR分光法によって検出することができる化合物を含む。
【0198】
エフェクター分子の例としては、細胞に有害な(例えば、死滅させる)任意の薬剤を含む細胞毒素又は細胞傷害剤を挙げることができる。例としては、コンブレスタチン、ドラスタチン、エポチロン、スタウロスポリン、メイタンシノイド、スポンジスタチン、リゾキシン、ハリコンドリン、ロリジン、ヘミアステリン、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール及びピューロマイシン並びにそれらの類似体又はホモログが挙げられる。
【0199】
エフェクター分子としてはまた、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシルデカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、及びシス-ジクロロジアミン白金(II)(DDP シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アントラマイシン(AMC)、カリケアマイシン又はデュオカルマイシン)、及び抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチン及びビンブラスチン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0200】
他のエフェクター分子としては、111In及び90Y、Lu177、ビスマス213、カリフォルニウム252、イリジウム192及びタングステン188/レニウム188などのキレート化放射性核種、又はアルキルホスホコリン、トポイソメラーゼI阻害剤、タキソイド及びスラミンなどの薬物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0201】
他のエフェクター分子としては、タンパク質、ペプチド及び酵素が挙げられる。目的の酵素としては、タンパク質分解酵素、加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。目的のタンパク質、ポリペプチド及びペプチドとしては、免疫グロブリン、毒素、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナス外毒素又はジフテリア毒素、タンパク質、例えば、インスリン、腫瘍壊死因子、α-インターフェロン、β-インターフェロン、神経成長因子、血小板由来成長因子又は組織プラスミノーゲン活性化因子、血栓剤又は抗血管新生剤、例えば、アンギオスタチン又はエンドスタチン、又は生物学的応答調節剤、例えば、リンホカイン、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、神経成長因子(NGF)又は他の成長因子及び免疫グロブリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0202】
他のエフェクター分子としては、例えば診断に有用な検出可能な物質を挙げることができる。検出可能な物質の例としては、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性核種、(陽電子放出断層撮影に使用するための)陽電子放出金属、及び非放射性常磁性金属イオンが挙げられる。診断薬として使用するために抗体にコンジュゲートさせることができる金属イオンについては、一般に米国特許第4,741,900号を参照されたい。適切な酵素としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼが挙げられ、適切な補欠分子族としては、ストレプトアビジン、アビジン及びビオチンが挙げられ、適切な蛍光物質としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、イソチオシアン酸フルオレセイン、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル及びフィコエリトリンが挙げられ、適切な発光物質としては、ルミノールが挙げられ、適切な生物発光物質としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンが挙げられ、適切な放射性核種としては、125I、131I、111In及び99Tcが挙げられる。
【0203】
別の例では、エフェクター分子は、インビボでの抗体の半減期を増加させ、及び/又は抗体の免疫原性を低下させ、及び/又は上皮バリアを越えて免疫系への抗体の送達を増強することができる。このタイプの適切なエフェクター分子の例としては、国際公開第05/117984号に記載されているものなどのポリマー、アルブミン、アルブミン結合タンパク質、又はアルブミン結合化合物が挙げられる。
【0204】
エフェクター分子がポリマーである場合、それは一般に、合成又は天然に存在するポリマー、例えば置換されていてもよい直鎖若しくは分岐鎖ポリアルキレン、ポリアルケニレン若しくはポリオキシアルキレンポリマー又は分岐若しくは非分岐多糖、例えばホモ又はヘテロ多糖であってもよい。
【0205】
上記の合成ポリマー上に存在し得る特定の任意選択の置換基としては、1つ又は複数のヒドロキシ、メチル又はメトキシ基が挙げられる。
【0206】
合成ポリマーの具体例としては、置換されていてもよい直鎖又は分岐鎖のポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)ポリ(ビニルアルコール)又はその誘導体、特に置換されていてもよいポリ(エチレングリコール)、例えばメトキシポリ(エチレングリコール)又はその誘導体が挙げられる。
【0207】
具体的な天然に存在するポリマーとしては、ラクトース、アミロース、デキストラン、グリコーゲン又はそれらの誘導体が挙げられる。
【0208】
本明細書で使用される「誘導体」は、反応性誘導体、例えば、マレイミドなどのチオール選択的反応性基を含むことを意図している。反応性基は、ポリマーに直接又はリンカーセグメントを介して連結することができる。そのような基の残基は、場合によっては、抗体断片とポリマーとの間の連結基として生成物の一部を形成することが理解されるであろう。
【0209】
ポリマーのサイズは、所望に応じて変えることができるが、一般に、500Da~50000Da、例えば5000~40000Da、例えば20000~40000Daの平均分子量範囲である。ポリマーサイズは、特に、生成物の意図される用途、例えば腫瘍などの特定の組織に局在する能力又は循環半減期を延長する能力に基づいて選択することができる(総説については、Chapman,2002,Advanced Drug Delivery Reviews,54,531-545を参照されたい)。したがって、例えば、生成物が循環を離れて組織に浸透することを意図する場合、例えば約5000Daの分子量を有する低分子量ポリマーを使用することが有利である可能性がある。生成物が循環中に留まる用途では、例えば20000Da~40000Daの範囲の分子量を有する高分子量ポリマーを使用することが有利である可能性がある。
【0210】
適切なポリマーとしては、ポリアルキレンポリマー、例えばポリ(エチレングリコール)又は特にメトキシポリ(エチレングリコール)若しくはその誘導体、特に約15000Da~約40000Daの範囲の分子量を有するものが挙げられる。
【0211】
一例では、本発明で使用するための抗体は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)部分に結合している。1つの特定の例では、抗体は抗体断片であり、PEG分子は、抗体断片中に位置する任意の利用可能なアミノ酸側鎖又は末端アミノ酸官能基、例えば任意の遊離アミノ、イミノ、チオール、ヒドロキシル又はカルボキシル基を介して結合することができる。そのようなアミノ酸は、抗体断片中に天然に存在してもよいか、又は組換えDNA法(例えば、米国特許第5,219,996号、米国特許第5,667,425号、国際公開第98/25971号を参照されたい)を使用して断片に操作することができる。一例では、本発明の抗体分子は、修飾されたFab断片であり、修飾は、エフェクター分子の結合を可能にするためのその重鎖のC末端への1つ又は複数のアミノ酸の付加である。適切には、追加のアミノ酸は、エフェクター分子が結合することができる1つ又は複数のシステイン残基を含む修飾ヒンジ領域を形成する。複数の部位を使用して、2つ以上のPEG分子を結合することができる。
【0212】
適切には、PEG分子は、抗体断片中に位置する少なくとも1つのシステイン残基のチオール基を介して共有結合することができる。修飾抗体断片に結合した各ポリマー分子は、断片中に位置するシステイン残基の硫黄原子に共有結合することができる。共有結合は、一般にジスルフィド結合、又は特に硫黄-炭素結合である。チオール基が結合点として使用される場合、適切に活性化されたエフェクター分子、例えば、マレイミド又はシステイン誘導体などのチオール選択的誘導体を使用することができる。活性化ポリマーは、上記のポリマー修飾抗体断片の調製における出発材料として使用することができる。活性化ポリマーは、α-ハロカルボン酸又はエステル、例えばヨードアセトアミド、イミド、例えばマレイミド、ビニルスルホン又はジスルフィドなどのチオール反応性基を含む任意のポリマーであってもよい。そのような出発材料は、商業的に得ることができ(例えば、Nektar、以前はShearwater Polymers Inc.、米国アラバマ州ハンツビル)、又は従来の化学的手順を使用して商業的に入手可能な出発材料から調製することができる。特定のPEG分子としては、20Kメトキシ-PEG-アミン(Nektar、以前はShearwater、Rapp Polymere及びSunBioから得ることができる)及びM-PEG-SPA(Nektar、以前はShearwaterから得ることができる)が挙げられる。
【0213】
一実施形態では、抗体は、例えば欧州特許第0948544号又は欧州特許第1090037号に開示されている方法に従って、PEG化された、すなわち、それに共有結合したPEG(ポリ(エチレングリコール))を有する修飾Fab断片又はdiFabである[’’Poly(ethyleneglycol)Chemistry,Biotechnical and Biomedical Applications’’,1992,J.Milton Harris(ed),Plenum Press,New York、’’Poly(ethyleneglycol)Chemistry and Biological Applications’’,1997,J.Milton Harris and S.Zalipsky(eds),American Chemical Society,Washington DC及び’’Bioconjugation Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences’’,1998,M.Aslam and A.Dent,Grove Publishers,New York、Chapman,A.2002,Advanced Drug Delivery Reviews 2002,54:531-545も参照されたい]一例では、PEGはヒンジ領域内のシステインに結合している。一例では、PEG修飾Fab断片は、修飾ヒンジ領域内の単一のチオール基に共有結合したマレイミド基を有する。リジン残基は、マレイミド基に共有結合することができ、リジン残基上の各アミン基に、約20,000Daの分子量を有するメトキシポリ(エチレングリコール)ポリマーが結合することができる。したがって、Fab断片に結合したPEGの総分子量は、約40,000Daであってもよい。
【0214】
一実施形態では、多重特異性抗体はエフェクター分子に結合していない。
【0215】
ポリヌクレオチド/ベクター/宿主細胞
本発明はまた、IL-13/IL-17AF多重特異性抗体分子のポリペプチド鎖をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0216】
変異体ポリヌクレオチドは、配列表に示される配列からの1、2、3、4、5、最大10、最大20、最大30、最大40、最大50、最大75又はそれ以上の核酸置換及び/又は欠失を含むことができる。一般に、変異体は、1~20、1~50、1~75又は1~100の置換及び/又は欠失を有する。
【0217】
適切な変異体は、本明細書に開示される核酸配列のいずれか1つのポリヌクレオチドと少なくとも約70%相同であってもよく、典型的には少なくとも約80又は90%、より適切には少なくとも約95%、97%又は99%相同であってもよい。変異体は、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を保持することができる。変異体は、典型的には、約60%~約99%の同一性、約80%~約99%の同一性、約90%~約99%の同一性又は約95%~約99%の同一性を保持する。これらのレベルでの相同性及び同一性は、一般に、少なくともポリヌクレオチドのコード領域に関して存在する。相同性を測定する方法は当技術分野で公知であり、本文脈において、相同性は核酸同一性に基づいて計算されることが当業者によって理解されるであろう。そのような相同性は、(長さに応じて)少なくとも約15、少なくとも約30、例えば少なくとも約40、60、100、200又はそれ以上の連続するヌクレオチドの領域にわたって存在することができる。そのような相同性は、非修飾ポリヌクレオチド配列の全長にわたって存在することができる。
【0218】
ホモログは、関連するポリヌクレオチド中の配列と、約3、5、10、15、20未満又はそれ以上の変異(それぞれが置換、欠失又は挿入であってもよい)だけ異なる可能性がある。例えば、ホモログは、3~50個の変異、多くは3~20個の変異によって異なる可能性がある。これらの変異は、ホモログの少なくとも30個、例えば少なくとも約40個、60個又は100個又はそれ以上の連続するヌクレオチドの領域にわたって測定することができる。
【0219】
本発明のDNA配列は、例えば化学処理によって生成された合成DNA、cDNA、ゲノムDNA又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0220】
ベクターを構築することができる一般的な方法である、トランスフェクション方法及び培養方法は、当業者に公知である。この点に関しては、’’Current Protocols in Molecular Biology’’,1999,F.M.Ausubel(ed),Wiley Interscience,New York and the Maniatis Manual produced by Cold Spring Harbor Publishingを参照されたい。
【0221】
IL-13/IL-17AF多重特異性抗体をコードする1つ又は複数のDNA配列を含む1つ又は複数のクローニングベクター又は発現ベクターを含む宿主細胞も提供される。IL-13/IL-17AF多重特異性抗体をコードするDNA配列の発現には、任意の適切な宿主細胞/ベクター系を使用することができる。細菌、例えば大腸菌(E.coli)、及び他の微生物系を使用することができ、又は真核生物、例えば哺乳動物、宿主細胞発現系もまた使用することができる。適切な哺乳動物宿主細胞としては、CHO細胞が挙げられる。
【0222】
本発明はまた、IL-13/IL-17AF多重特異性抗体をコードするDNAからのタンパク質の発現に適した条件下でベクターを含む宿主細胞を培養すること、及びIL-13/IL-17AF多重特異性抗体を単離することを含む、IL-13/IL-17AF多重特異性抗体の産生方法を提供する。
【0223】
多重特異性抗体の産生
多重特異性抗体、特に二重特異性抗体を産生するためのいくつかのアプローチがある。Morrison et al.(Coloma and Morrison 1997,Nat Biotechnol.15,159-163)は、一本鎖可変断片(scFv)の全抗体、例えばIgGへの融合を記載している。Schoonjans et al.,2000,Journal of Immunology,165,7050-7057は、scFvと抗体Fab断片との融合を記載している。国際公開第2015/197772号は、ジスルフィド安定化scFv(dsscFv)とFab断片との融合を記載している。
【0224】
先行技術に記載されている標準的なアプローチは、少なくとも2つのポリペプチドの宿主細胞における発現を含み、各ポリペプチドは、抗体全体又はその抗原結合断片、例えばFabの重鎖(HC)又は軽鎖(LC)をコードし、抗体の追加の抗原結合断片は、重鎖及び/又は軽鎖のN末端及び/又はC末端位置に融合することができる。2つ(付加Fabを形成するための1つの軽鎖及び1つの重鎖)又は4つのポリペプチド(付加IgGを形成するための2つの軽鎖及び2つの重鎖)を発現させることによってこのような多重特異性抗体を組換え産生しようとする場合、通常、その対応する軽鎖とのアセンブリの際に重鎖の適切な折り畳みを確実にするために、重鎖よりも過剰に軽鎖を発現させることが必要である。特に、CH1(重鎖定常領域のドメイン1)は、対応するLCによって置換することができるBIPタンパク質によって、それ自体で折り畳まれることが防止され、したがって、CH1/HCの正しい折り畳みは、その対応するLCの利用可能性に依存する(Lee et al.,1999,Molecular Biology of the Cell,Vol.10,2209-2219)。
【0225】
本発明者らは、多重特異性抗体を発現するそれらの方法が、宿主細胞採取物中に残る重鎖よりも過剰な軽鎖の産生をもたらす可能性があること、及び過剰な軽鎖が、所望の多重特異性抗体、特に単量体との産生プロセスの副産物として存在する二量体複合体(又は「LC二量体」)を形成する傾向があり、したがって精製除去する必要があることを観察した。
【0226】
重要なことに、軽鎖の二量体の形成に関連する技術的問題は、N末端及び/又はC末端で追加の抗原結合断片に融合された場合、これまで同定されておらず、一般的に使用される分析方法は、産生プロセスの不均一な生成物の中で、付加LC二量体の検出及び定量を可能にしていない。これは、標準的な分析方法を使用して生成物の量を推定するときに大きなバイアスをもたらす可能性がある。
【0227】
したがって、多重特異性抗体及びその産生方法を改善する必要があり、これは、産生プロセスの最も早い段階で、付加LC二量体の単離及び除去を容易かつ効率的に可能にし、したがって、治療に使用するための目的のタンパク質、すなわち多重特異性抗体、特にその単量体形態のタンパク質の収率を改善する。
【0228】
本発明の多重特異性抗体は、精製後、特にプロテインAアフィニティクロマトグラフィを含む一段階精製後に得られる「多重特異性抗体」材料、特に単量体の収率を増加させながら、同等の機能性及び安定性を有する改善された多重特異性抗体を提供するように操作されている。
【0229】
有利には、本開示の多重特異性抗体は、先行技術で一般的に使用される方法よりも改良された精製方法で、特に、改良された方法がより少ない工程を含むという点で、より効率的に精製することができ、これは、工業規模で費用及び時間効率が高い。特に、本開示の多重特異性抗体は、プロテインAアフィニティクロマトグラフィを含む一段階精製方法の後に得られる目的のタンパク質(すなわち、正しい多重特異性抗体フォーマット)の量を最大化し、それにより、目的の多重特異性抗体の精製及び付加LC二量体の除去が同時に起こる。有利には、本開示の多重特異性抗体の産生及び精製方法は、遊離の未結合軽鎖、特に付加LC二量体を過剰に捕捉するための追加の精製工程を必要としない。
【0230】
プロテインA
プロテインAは、細菌の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の細胞壁に最初に見出された42kDaの表面タンパク質である。プロテインAは、免疫グロブリンを検出、定量及び精製するために広く使用されている。プロテインAは、VH3ファミリー抗体に由来するFab部分、及びIgGの定常領域部分(CH2ドメインとCH3ドメインとの間)のFcガンマ領域に結合することが報告されている。プロテインAとFabとによって形成される複合体の結晶構造は、例えば、Graille et al.,2000,PNAS,97(10):5399-5404に記載されている。本開示の文脈において、プロテインAは、プロテインA変異体又は誘導体がVH3ドメイン及び/又はFcガンマドメインに結合する能力を維持する限り、天然プロテインA及びその任意の変異体又は誘導体を包含する。
【0231】
本発明の式(I)のポリペプチド鎖は、プロテインA結合ドメインを含む。一実施形態では、式(I)のポリペプチド鎖は、1、2又は3つのプロテインA結合ドメインを含む。
【0232】
本明細書で使用される「プロテインA結合ドメイン」は、プロテインAに特異的に結合する結合ドメインを指すことを意図している。プロテインA結合ドメインは、プロテインAに結合する、すなわちプロテインA結合界面を含むVH3ドメイン又はVH3ドメインの一部を指すことができる。プロテインAに結合するVH3ドメインの部分は、VH3ドメインのCDRを含まない、すなわち、VH3のプロテインA結合界面はCDRを含まず、したがって、プロテインA結合ドメインは、本出願に開示される抗原結合ドメインと競合しないことが理解されるであろう。
【0233】
一実施形態では、式(I)のポリペプチド鎖は、VH及び/又はCH2-CH3及び/又はV1中に存在するプロテインA結合ドメインを含む。一実施形態では、式(I)のポリペプチド鎖は、VH及び/又はCH2-CH3及び/又はV1中に存在する1、2又は3つのプロテインA結合ドメインを含む。一実施形態では、式(I)のポリペプチド鎖は、VH又はV1中に存在する1つのプロテインA結合ドメインのみを含む。一実施形態では、sは0であり、tは0であり、式(I)のポリペプチド鎖は、VH又はV1中に存在する1つのプロテインA結合ドメインのみを含む。一実施形態では、式(I)のポリペプチド鎖は、VH中に存在する1つのプロテインA結合ドメインのみを含む。一実施形態では、sは0であり、tは0であり、pは0であり、式(I)のポリペプチド鎖は、VH中に存在する1つのプロテインA結合ドメインのみを含む。一実施形態では、式(I)のポリペプチド鎖は、V1中に存在する1つのプロテインA結合ドメインのみを含む。一実施形態では、sは0であり、tは0であり、pは1であり、式(I)のポリペプチド鎖は、V1中に存在する1つのプロテインA結合ドメインのみを含む。
【0234】
一実施形態では、式(I)のポリペプチド鎖は、2つのプロテインA結合ドメインを含む。一実施形態では、式(I)のポリペプチド鎖は、それぞれVH及びCH2-CH3に存在する2つのプロテインA結合ドメインを含む。別の実施形態では、式(I)のポリペプチド鎖は、それぞれVH及びV1に存在する2つのプロテインA結合ドメインを含む。別の実施形態では、式(I)のポリペプチド鎖は、それぞれCH2-CH3及びV1に存在する2つのプロテインA結合ドメインを含む。
【0235】
一実施形態では、式(I)のポリペプチド鎖は、それぞれがVH、CH2-CH3及びV1に存在する3つのプロテインA結合ドメインを含む。
【0236】
天然のプロテインAは、IgGの定常領域部分において、特にFcガンマ領域と相互作用することができる。より具体的には、プロテインAは、CH2とCH3との間の結合ドメインと相互作用することができる。一実施形態では、sが1であり、tが1である場合、CH2及びCH3の両方がIgGクラスの天然に存在するドメインである。
【0237】
いくつかの実施形態では、プロテインA結合ドメインは、プロテインAに結合するVH3ドメイン又はその変異体を含むか、又はそれらからなる。いくつかの実施形態では、プロテインA結合ドメインは、天然に存在するVH3ドメインを含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、プロテインAに結合するVH3ドメインの変異体は、天然に存在するVH3ドメインの変異体であり、当該天然に存在するVH3ドメインはプロテインAに結合することができない。
【0238】
本開示の式(II)のポリペプチド鎖は、プロテインAに結合しない。一実施形態では、V2の結合ドメインは、プロテインAに結合しない。
【0239】
いくつかの実施形態では、V2は、VH1及び/又はVH2及び/又はVH4及び/又はVH5及び/又はVH6を含むか、又はそれらからなり、VH3ドメインを含まない。いくつかの実施形態では、V2は、プロテインAに結合しないVH3ドメイン又はその変異体を含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、V2は、プロテインAに結合することができない天然に存在するVH3ドメインを含むか、又はそれからなる。いくつかの実施形態では、プロテインAに結合しないVH3ドメインの変異体は、天然に存在するVH3の変異体であり、当該天然に存在するVH3ドメインは、プロテインAに結合することができる。
【0240】
ヒトVH3生殖細胞系遺伝子及びVH3ドメイン(又はフレームワーク)は、十分に特徴付けられている。天然に存在するVH3ドメインの多くはプロテインAに結合する能力を有するが、特定の天然に存在するVH3ドメインはプロテインAに結合する能力を有しない(Roben et al.,1995,J Immunol.;154(12):6437-6445を参照されたい)。
【0241】
本開示で使用するためのVH3ドメインは、いくつかの方法によって得ることができる。一実施形態では、本開示で使用するためのVH3ドメインは、本開示のポリペプチド(I)及び/又は(II)内のその位置に応じて、プロテインAに結合する能力又は不能性について選択される、天然に存在するVH3ドメインである。例えば、非ヒト動物の免疫化によって目的の抗原に対して抗体のパネルを生成し、次いでヒト化し、ヒト化抗体をスクリーニングし、例えばプロテインAアフィニティカラムに対して、ヒト化VH3ドメインを介してプロテインAに結合する能力又は不能性に基づいて選択することができる。或いは、ディスプレイ技術(例えば、ファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、リボソームディスプレイ、細菌ディスプレイ、哺乳動物細胞表面ディスプレイ、mRNAディスプレイ、DNAディスプレイ)を使用して、抗体ライブラリをスクリーニングし、特にCDRを含まないプロテインA結合界面を介してプロテインAに結合するか又は結合しないVH3ドメインを含む抗体を選択することができる。
【0242】
或いは、本開示で使用するためのVH3ドメインは、天然に存在するVH3の変異体である。一実施形態では、VH3変異体は、プロテインAに結合することができる天然に存在するVH3の配列を含み、プロテインAに結合するその能力を消失させる少なくとも1つのアミノ酸変異を更に含む。一実施形態では、プロテインAに結合するVH3変異体は、プロテインAに結合することができない天然に存在するVH3の配列を含み、少なくとも1つのアミノ酸変異を更に含む。そのような実施形態では、変異は、VH3ドメインがプロテインAに結合する能力を得ることに関与し、すなわち変異は、天然には存在しなかったプロテインA結合ドメインの生成に寄与する。
【0243】
一実施形態では、VH3変異体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又はは12個のアミノ酸変異を含む。一実施形態では、VH3変異体は、VH3上の15、17、19、57、59、64、65、66、68、70、81又は82の位置に変異を含み、ナンバリングはKabatによるものであり、例えば、Graille et al.,2000,PNAS,97(10):5399-5404に記載されている。変異は、置換、欠失又は挿入であってもよい。一実施形態では、VH3変異体は、VH3上の15、17、19、57、59、64、65、66、68、70、81又は82の位置に置換を含み、ナンバリングはKabatによるものである。
【0244】
天然に存在するVH1、VH2、VH4、VH5及びVH6は、プロテインAに結合しない。一実施形態では、プロテインAに結合しないVHドメインは、VH1である。一実施形態では、プロテインAに結合しないVHドメインは、VH2である。一実施形態では、プロテインAに結合しないVHドメインは、VH4である。一実施形態では、プロテインAに結合しないVHドメインは、VH5である。一実施形態では、プロテインAに結合しないVHドメインは、VH6である。
【0245】
医薬組成物、投与量及び投与レジメン
本発明の多重特異性抗体は、医薬組成物中に提供することができる。医薬組成物は通常無菌であり、典型的には薬学的に許容される担体及び/又はアジュバントを含む。本発明の医薬組成物は、薬学的に許容されるアジュバント及び/又は担体を更に含むことができる。
【0246】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」としては、生理学的に適合性である、あらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などが挙げられる。担体は、例えば注射又は注入による非経口、例えば静脈内、筋肉内、皮内、眼内、腹腔内、皮下、脊髄又は他の非経口投与経路に適してもよい。或いは、担体は、局所、表皮又は粘膜投与経路などの非経口投与に適してもよい。担体は、経口投与に適してもよい。投与経路に応じて、モジュレータは、化合物を不活性化することができる酸及び他の自然条件の作用から化合物を保護するために材料でコーティングすることができる。
【0247】
本発明の医薬組成物は、1つ又は複数の薬学的に許容される塩を含むことができる。「薬学的に許容される塩」は、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、いかなる望ましくない毒物学的効果も付与しない塩を指す。そのような塩の例としては、酸付加塩及び塩基付加塩が挙げられる。
【0248】
薬学的に許容される担体は、水性担体又は希釈剤を含む。本発明の医薬組成物に使用することができる適切な水性担体の例としては、水、緩衝水及び生理食塩水が挙げられる。他の担体の例としては、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)及びそれらの適切な混合物、オリーブ油などの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。多くの場合、等張剤、例えば糖、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、又は塩化ナトリウムを組成物に含めることが望ましい。
【0249】
治療用組成物は、典型的には、製造及び貯蔵の条件下で無菌かつ安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、又は高薬物濃度に適した他の秩序構造として製剤化することができる。
【0250】
本発明の医薬組成物は、追加の活性成分を含むことができる。
【0251】
本発明の抗体又は調節剤を含むキット及び使用説明書も本発明の範囲内である。キットは、1つ又は複数の追加の試薬、例えば上記の追加の治療薬又は予防薬を更に含むことができる。
【0252】
本発明のモジュレータ及び/又は抗体若しくはその製剤又は組成物は、予防的処置及び/又は治療的処置のために投与することができる。
【0253】
治療用途では、化合物は、上記の障害又は状態に既に罹患している対象に、その状態又は1つ又は複数のその症状を治癒、緩和又は部分的に停止させるのに十分な量で投与される。そのような治療的処置は、疾患症状の重症度の低下、又は無症状期間の頻度若しくは持続期間の増加をもたらすことができる。これを達成するのに十分な量を「治療有効量」と定義する。
【0254】
予防的適用では、製剤は、上記の障害又は状態のリスクがある対象に、状態若しくは1つ又は複数のその症状のその後の効果を予防又は低減するのに十分な量で投与される。これを達成するのに十分な量を「予防有効量」と定義する。各目的のための有効量は、疾患又は損傷の重症度並びに対象の体重及び一般状態に依存する。
【0255】
投与対象は、ヒト又は非ヒト動物であってもよい。「非ヒト動物」という用語は、全ての脊椎動物、例えば哺乳動物及び非哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などを含む。ヒトへの投与が典型的である。
【0256】
本発明の抗体/モジュレータ又は医薬組成物は、当技術分野で公知の様々な方法の1つ又は複数を使用して、1つ又は複数の投与経路を介して投与することができる。当業者によって理解されるように、投与経路及び/又は投与様式は、所望の結果に応じて変化する。本発明の化合物又は医薬組成物の投与経路の例としては、例えば注射又は注入による、静脈内、筋肉内、皮内、眼内、腹腔内、皮下、脊髄又は他の非経口投与経路が挙げられる。本明細書で使用される「非経口投与」という語句は、経腸及び局所投与以外の投与様式を意味し、通常は注射によるものである。或いは、本発明の抗体/調節剤又は医薬組成物は、局所、表皮又は粘膜投与経路などの非経口経路を介して投与することができる。本発明の抗体/調節剤又は医薬組成物は、経口投与用であってもよい。
【0257】
本発明の抗体/調節剤又は医薬組成物の適切な投与量は、当業者によって決定することができる。本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、患者に対して有毒になることなく、特定の患者、組成物、及び投与様式に対して所望の治療応答を達成するのに有効な活性成分の量を得るように変化することができる。選択される投与量レベルは、使用される本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物の排泄速度、治療の期間、使用される特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物及び/又は材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康状態及び以前の病歴、並びに医学分野で周知の同様の因子を含む様々な薬物動態学的因子に依存する。
【0258】
適切な用量は、例えば、治療される患者の約0.01μg/kg~約1000mg/kg体重、典型的には約0.1μg/kg~約100mg/kg体重の範囲であってもよい。例えば、適切な投与量は、約1μg/kg~約10mg/kg体重/日又は約10μg/kg~約5mg/kg体重/日であってもよい。
【0259】
投与レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供するように調整することができる。例えば、単回用量を投与することができ、いくつかの分割用量を経時的に投与することができ、又は治療状況の緊急性によって示されるように用量を比例的に減少又は増加させることができる。本明細書で使用される投薬単位形態は、治療される対象のための単位投薬量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要とされる薬学的担体と会合して所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性化合物を含有する。
【0260】
投与は、単回投与又は複数回投与であってもよい。複数回投与は、同じ又は異なる経路を介して、同じ又は異なる位置に投与することができる。或いは、用量は徐放性製剤を介したものであってもよく、この場合、必要とされる投与頻度はより少ない。投与量及び頻度は、患者におけるアンタゴニストの半減期及び所望の治療期間に応じて変化することができる。
【0261】
上述のように、本発明のモジュレータ/抗体又は医薬組成物は、1つ又は複数の他の治療薬と同時投与することができる。
【0262】
2つ以上の薬剤の併用投与は、いくつかの異なる方法で達成することができる。両方を単一の組成物で一緒に投与することができ、又は併用療法の一部として別々の組成物で投与することができる。例えば、一方は、他方の前、後又は同時に投与することができる。
【0263】
治療適応症
本発明の抗体は、IL-13及び/又はIL-17A及び/又はIL-17F活性に関連する任意の状態、例えば、IL-13、IL-17A及び/又はIL-17F受容体を介したシグナル伝達から全体的又は部分的に生じる任意の状態の治療、予防又は改善において使用することができる。
【0264】
そのような疾患としては、原発性及び転移性の癌が挙げられ、乳癌、結腸癌、直腸癌、肺癌、中咽頭癌、下咽頭癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、胆嚢癌及び胆管癌、小腸癌、尿路癌(腎臓、膀胱及び尿路上皮を含む)、女性生殖器癌(子宮頸部、子宮及び卵巣並びに絨毛癌及び妊娠性絨毛性疾患を含む)、男性生殖器癌(前立腺、精嚢、精巣及び生殖細胞腫瘍を含む)、内分泌腺癌(甲状腺、副腎、及び下垂体腺を含む)及び皮膚癌、並びに血管腫、黒色腫、肉腫(骨及び軟組織から生じるもの並びにカポジ肉腫を含む)、脳、神経、眼及び髄膜の腫瘍(星状細胞腫、神経膠腫、神経膠芽腫、網膜芽細胞腫、神経腫、神経芽細胞腫、シュワン細胞腫及び髄膜腫を含む)、白血病及びリンパ腫などの造血器悪性腫瘍から生じる固形腫瘍(ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫の両方)、関節リウマチ、骨関節炎、若年性慢性関節炎、化膿性関節炎、ライム関節炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、脊椎関節症、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、インスリン依存性糖尿病、甲状腺炎、アレルギー性疾患、乾癬、皮膚炎、強皮症、移植片対宿主病、臓器移植拒絶反応、臓器移植に伴う急性又は慢性免疫疾患、サルコイドーシス、アテローム性動脈硬化症、播種性血管内凝固、川崎病、グレーブス病、腎症候群、慢性疲労症候群、ウェゲナー肉芽腫症、ヘノッフ・シェンライン病、腎臓の微細血管炎、慢性活動性肝炎、ブドウ膜炎、敗血症性ショック、毒性ショック症候群、敗血症症候群、悪液質、感染症、寄生虫症、後天性免疫不全症候群、急性横断性脊髄炎、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、脳卒中、原発性胆汁性肝硬変、溶血性貧血、悪性腫瘍、心不全、アジソン病、散発性多腺性欠乏症I型及び多腺性欠乏症II型、シュミット症候群、成人(急性)呼吸窮迫症候群、脱毛症、円形脱毛症、関節症、ライター病、乾癬性関節症、潰瘍性大腸炎性関節症、腸炎性滑膜炎、クラミジア、エルシニア及びサルモネラ関連関節症、アテローム性疾患/動脈硬化症、アトピー性アレルギー、自己免疫性水疱性疾患、尋常性天疱瘡、落葉性天疱瘡、類天疱瘡、線状IgA病、自己免疫性溶血性貧血、クームス陽性溶血性貧血、後天性悪性貧血、若年性悪性貧血、筋痛性脳炎/慢性疲労症候群、慢性皮膚粘膜カンジダ症、巨細胞性動脈炎、原発性硬化性肝炎、突発性自己免疫性肝炎、後天性免疫不全関連疾患、B型肝炎、C型肝炎、分類不能型免疫不全症(分類不能型低ガンマグロブリン血症)、拡張型心筋症、女性不妊、卵巣機能不全、早期卵巣機能不全、線維性肺疾患、特発性線維化性肺胞炎、炎症後間質性肺疾患、間質性肺炎、結合組織病関連間質性肺疾患、混合性結合組織病関連肺疾患、全身性硬化症関連間質性肺疾患、関節リウマチ関連間質性肺疾患、全身性エリテマトーデス関連肺疾患、皮膚筋炎/多発性筋炎関連肺疾患、シェーグレン病関連肺疾患、強直性脊椎炎関連肺疾患、血管炎性びまん性肺疾患、血鉄症関連肺疾患、薬物誘発性間質性肺疾患、線維症、放射線線維症、閉塞性細気管支炎、慢性好酸球性肺炎、リンパ球性浸潤性肺疾患、感染後間質性肺疾患、痛風性関節炎、自己免疫性肝炎、1型自己免疫性肝炎(古典的自己免疫又はルポイド肝炎)、2型自己免疫性肝炎(抗LKM抗体肝炎)、自己免疫性低血糖、黒色表皮症を伴うB型インスリン抵抗性、副甲状腺機能低下症、臓器移植に伴う急性免疫疾患、臓器移植に伴う慢性免疫疾患、骨関節症、原発性硬化性胆管炎、1型乾癬、2型乾癬、特発性白血球減少症、自己免疫性好中球減少症、腎疾患NOS、糸球体腎炎、腎臓の顕微鏡的血管炎、ライム病、円板状エリテマトーデス、男性不妊特発性又はNOS、精子自己免疫、多発性硬化症(全サブタイプ)、交感性眼炎、結合組織病に続発する肺高血圧症、グッドパスチャー症候群、結節性多発性動脈炎の肺症状、急性リウマチ熱、リウマチ性脊椎炎、スチル病、全身性硬化症、シェーグレン症候群、高安病/動脈炎、自己免疫性血小板減少症、特発性血小板減少症、自己免疫性甲状腺疾患、甲状腺機能亢進症、甲状腺腫性自己免疫性甲状腺機能低下症(橋本病)、萎縮性自己免疫性甲状腺機能低下症、原発性粘液浮腫、水晶体起因性ブドウ膜炎、原発性血管炎、白斑性急性肝疾患、慢性肝疾患、アルコール性肝硬変、アルコール誘発性肝損傷、胆汁うっ滞、特発性肝疾患、薬物誘発性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎、アレルギー、B群連鎖球菌(GBS 感染症、精神障害、うつ病、統合失調症、Th2型及びTh1型媒介性疾患、急性及び慢性疼痛、疼痛の異なる形態、癌、肺癌、乳癌、胃癌、膀胱癌、結腸癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、直腸癌、造血性悪性腫瘍、白血病、リンパ腫、無βリポタンパク血症、先端チアノーゼ、急性及び慢性寄生虫又は感染プロセス、急性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性又は慢性細菌感染症、急性膵炎、急性腎不全、腺癌、空気異所性拍動、AIDS認知症合併症、アルコール誘発性肝炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性接触性皮膚炎、アレルギー性鼻炎(季節性アレルギー性鼻炎を含む)、非アレルギー性鼻炎、同種移植片拒絶、α-I-アンチトリプシン欠損症、筋萎縮性側索硬化症、貧血、狭心症、前角細胞変性症、抗cd3療法、抗リン脂質症候群、抗受容体過敏反応、大動脈及び末梢動脈瘤、大動脈解離、動脈高血圧症、動脈硬化症、動静脈瘻、運動失調、心房細動(持続性又は発作性)、心房粗動、房室ブロック、B細胞リンパ腫、骨移植片拒絶、骨髄移植(BMT)拒絶、脚ブロック、バーキットリンパ腫、熱傷、不整脈、心機能不全症候群、心臓腫瘍、心筋症、心肺バイパス炎症応答、軟骨移植拒絶、小脳皮質変性症、小脳疾患、無秩序又は多源性心房頻脈、化学療法関連障害、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性アルコール依存症、慢性炎症性病態、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性サリチル酸中毒、結腸直腸癌、うっ血性心不全、結膜炎、接触性皮膚炎、肺性心、冠動脈疾患、クロイツフェルトヤコブ病、培養陰性敗血症、嚢胞性線維症、サイトカイン療法関連障害、拳闘家認知症、脱髄性疾患、デング出血熱、皮膚炎、皮膚病、糖尿病、真性糖尿病、糖尿病性動脈硬化性疾患、びまん性レビー小体病、拡張型うっ血性心筋症、基底核の障害、中年期のダウン症候群、CNSドーパミン受容体をブロックする薬物によって誘発される薬物誘導性運動障害、薬物感受性、湿疹、脳脊髄炎、心内膜炎、内分泌障害、喉頭蓋炎、エプスタイン・バーウイルス感染症、紅痛症、錐体外路障害及び小脳障害、家族性血球貪食性リンパ組織球症、胎児胸腺移植片拒絶、フリードライヒ運動失調症、機能性末梢動脈障害、真菌性敗血症、ガス壊疽、胃潰瘍、糸球体腎炎、任意の臓器又は組織の移植片拒絶、グラム陰性敗血症、グラム陽性敗血症、細胞内生物による肉芽腫、ヘアリー細胞白血病、ハラーフォルデン・シュパッツ病、橋本病、花粉症、心臓移植拒絶、ヘモクロマトーシス、血液透析、溶血性尿毒症症候群/血栓溶解性血小板減少性紫斑病、出血、A型肝炎、ヒス束性不整脈、HIV感染/HIVニューロパシー、ホジキン病、多動性運動障害、過敏反応、過敏性肺炎、高血圧症、運動不足性運動機能低下症、視床下部・下垂体・副腎皮質系、特発性アジソン病、特発性肺線維症、抗体媒介性細胞傷害性、無力症、乳児脊髄性筋萎縮症、大動脈の炎症、インフルエンザ、電離放射線被曝、虹彩毛様体炎/ブドウ膜炎/視神経炎、虚血-再灌流傷害、虚血性脳卒中、若年性関節リウマチ、若年性脊髄性筋萎縮症、カポジ肉腫、腎移植拒絶、レジオネラ、リーシュマニア症、ハンセン病、皮質脊髄系の病変、肝移植拒絶、リンパ水腫、マラリア、悪性リンパ腫、悪性組織球増加症、悪性黒色腫、髄膜炎、髄膜炎菌血症、代謝性/特発性、片頭痛、ミトコンドリア性多臓器疾患、混合性結合組織病、モノクローナル高γグロブリン血症、多発性骨髄腫、多系統変性症(Mencel Dejerine-Thomas Shi-Drager及びMachado-Joseph)、マイコバクテリウム・アビウム・イントラセルラーレ、結核菌、骨髄異形成症候群、心筋梗塞、心筋虚血性障害、上咽頭癌、新生児慢性肺疾患、腎炎、ネフローゼ、神経変性疾患、神経原性筋萎縮症、好中球減少性発熱、非ホジキンリンパ腫、腹部大動脈及びその分岐部の閉塞、閉塞性動脈障害、okt3治療、精巣炎/精巣上体炎、精巣炎/精管切除反転処置、臓器肥大、骨粗鬆症、膵臓移植拒絶、膵臓癌、腫瘍随伴症候群/悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症、副甲状腺移植拒絶、骨盤内炎症性疾患、通年性鼻炎、心膜疾患、末梢動脈硬化性疾患、末梢血管障害、腹膜炎、悪性貧血、ニューモシスチス・カリニ肺炎、肺炎、POEMS症候群(多発神経障害、臓器肥大、内分泌疾患、モノクローナル高γグロブリン血症及び皮膚変化症候群)、灌流後症候群、ポンプ後症候群、Ml心臓切開後症候群、子癇前症、進行性核上性麻痺、原発性肺高血圧症、放射線療法、レイノー現象及び疾患、レイノー病、レフサム病、正常QRS波の規則的な頻脈、腎血管性高血圧症、再灌流傷害、拘束性心筋症、肉腫、老人性舞踏病、レビー小体型老人性認知症、血清反応陰性関節症、ショック、鎌状赤血球貧血、皮膚同種移植片拒絶、皮膚症状症候群、小腸移植拒絶、固形腫瘍、特異的不整脈、脊髄運動失調、脊髄小脳変性、連鎖球菌性筋炎、小脳の構造病変、亜急性硬化性汎脳炎、失神、心血管系の梅毒、全身性無髄軸、全身性炎症反応症候群、全身発症若年性関節リウマチ、T細胞又はFAB ALL毛細血管拡張症、閉塞性血栓血管炎、血小板減少症、毒性、移植片、外傷/出血、III型過敏症反応、IV型過敏症、不安定狭心症、尿毒症、尿路敗血症、心臓弁膜症、静脈瘤、血管炎、静脈疾患、静脈血栓症、心室細動、ウイルス感染及び真菌感染、ウイルス性脳炎(vital encephalitis)/無菌性髄膜炎、ウイルス関連血球貪食症候群(vitalassociated hemaphagocytic syndrome)、ウェルニッケ・コルサコフ症候群、ウィルソン病、任意の臓器又は組織の異種移植片拒絶、急性冠動脈症候群、急性特発性多発性神経炎、急性炎症性脱髄性多発神経炎、急性虚血、成人スチル病、アナフィラキシー、抗リン脂質抗体症候群、再生不良性貧血、アトピー性湿疹、アトピー性皮膚炎、自己免疫性皮膚炎、連鎖球菌感染に関連する自己免疫障害、自己免疫性腸症、自己免疫性難聴、自己免疫性リンパ増殖性症候群(ALPS)、自己免疫心筋炎、自己免疫性早発性卵巣不全、眼瞼炎、気管支拡張症、水疱性類天疱瘡、心血管疾患、突発性抗リン脂質症候群、セリアック病、頸椎症、慢性虚血、瘢痕性類天疱瘡、多発性硬化症のリスクを伴う臨床的に孤立した症候群(シス)、小児期発症の精神障害、涙嚢炎、皮膚筋炎、糖尿病性網膜症、椎間板ヘルニア、円板隆起、薬物誘発性免疫性溶血性貧血、子宮内膜症、眼内炎、上強膜炎、多形性紅斑、多形性紅斑重症型、妊娠性類天疱瘡、ギラン・バレー症候群(GBS)、ヒューズ症候群、特発性パーキンソン病、特発性間質性肺炎、IgE媒介性アレルギー、免疫性溶血性貧血、封入体筋炎、感染性眼炎症性疾患、炎症性脱髄性疾患、炎症性心疾患、炎症性腎臓疾患、IPF/UIP、虹彩炎、角膜炎、乾性角結膜炎、クスマウル病又はクスマウル・マイヤー病、ランドリー麻痺、ランゲルハンス細胞組織球症、網状皮斑、黄斑変性、顕微鏡的多発血管炎、強直性脊椎炎、運動ニューロン障害、粘膜類天疱瘡、多臓器不全、重症筋無力症、骨髄異形成症候群、心筋炎、神経根障害、ニューロパチー、非A型非B型肝炎、視神経炎、骨溶解、少関節型JRA、末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)、末梢血管疾患(PVD)、末梢動脈疾患(PAD)、静脈炎、結節性多発動脈炎(又は結節性動脈周囲炎)、多発性軟骨炎、ポリオ、多関節型JRA、多発性内分泌不全症候群、多発性筋炎、リウマチ性多発筋痛症(PMR)、原発性パーキンソニズム、前立腺炎、純粋赤血球形成不全、原発性副腎機能不全、再発性視神経脊髄炎、再狭窄、リウマチ性心疾患、SAPHO(滑膜炎、座瘡、膿疱症、骨増殖症及び骨炎)、続発性アミロイドーシス、ショック肺、強膜炎、坐骨神経痛、
続発性副腎機能不全、シリコーン関連結合組織疾患、スニドン・ウィルキンソン皮膚病、強直性脊椎炎、スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)、側頭動脈炎、トキソプラズマ網膜炎、中毒性表皮壊死症、横断性脊髄炎、TRAPS(腫瘍壊死因子受容体、1型アレルギー反応、II型糖尿病、蕁麻疹、通常型間質性肺炎(UIP)、血管炎、春季結膜炎、ウイルス性網膜炎、フォークト・小柳・原田症候群(VKH症候群)、滲出型黄斑変性、又は創傷治癒、アスピリン過敏性喘息、アトピー性喘息、慢性手湿疹、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、セリアック病、チャーグ・ストラウス症候群(結節性動脈周囲炎+アトピー)、好酸球増加筋痛症候群、好酸球増加症候群、偶発性血管浮腫を含む浮腫性反応、蠕虫感染症、毛嚢性皮膚炎、好酸球関連胃腸障害、好酸球性食道炎、好酸球性胃炎、好酸球性胃腸炎、好酸球性腸炎、好酸球性大腸炎、鼻マイクロポリポーシス及びポリポーシス、食物アレルギー、アスピリン不耐性、及び閉塞性睡眠時無呼吸、慢性喘息、クローン病及び心筋内膜線維症、癌(例えば、膠芽腫(多形性膠芽腫など)、非ホジキンリンパ腫(NHL))、線維症、炎症性腸疾患、肺線維症(特発性肺線維症(IPF)、及び硬化症に続発する肺線維症を含む)、COPD、及び肝線維症が挙げられる。
【0265】
本発明の多重特異性抗体は、アトピー性皮膚炎、慢性手湿疹、鼻マイクロポリポーシス若しくはポリポーシス、食物アレルギー、又は好酸球性食道炎の治療又は予防に特に有用である可能性がある。したがって、一実施形態では、本発明の多重特異性抗体又は医薬組成物は、治療によるヒト又は動物の身体の治療方法における使用のために提供される。一実施形態では、アトピー性皮膚炎、慢性手湿疹、鼻マイクロポリポーシス若しくはポリポーシス、食物アレルギー、又は好酸球性食道炎を治療する方法における使用のための多重特異性抗体又は医薬組成物が提供される。一実施形態では、本発明は、治療有効量の多重特異性抗体又は医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、アトピー性皮膚炎、慢性手湿疹、鼻マイクロポリポーシス若しくはポリポーシス、食物アレルギー、又は好酸球性食道炎を治療又は予防する方法を提供する。
【0266】
以下の例は、本発明を例示する。
【0267】
例
例1 治療用抗IL-13抗体CA650の作製及び選択
ラットを、精製ヒトIL-13(Peprotech)又はヒトIL-13を発現するラット線維芽細胞(培養上清中に約1ug/mlを発現する)のいずれか、又は場合によってはこれら2つの組み合わせで免疫化した。3~6回の注射の後、動物を屠殺し、PBMC、脾臓、骨髄及びリンパ節を採取した。血清を、ELISAにおいてヒトIL-13への結合について、また、HEK-293 IL-13R-STAT-6レポーター細胞アッセイ(HEK-Blueアッセイ、Invivogen)においてhIL-13を中和する能力について監視した。
【0268】
B細胞培養物を準備し、Applied Biosystems FMATアッセイにおけるビーズに基づくアッセイにおいて、hIL-13に結合するそれらの能力について上清を最初にスクリーニングした。これは、ストレプトアビジンビーズ上にコーティングされたビオチン化ヒトIL-13及びリビール剤としてヤギ抗ラットFc-Cy5コンジュゲートを使用した均一アッセイであった。次いで、このアッセイからの陽性をHEK-293 IL-13R-STAT-6レポーター細胞アッセイ(HEK-Blueアッセイ、Invivogen)に進めて中和剤を同定した。次いで、中和上清をBiacoreでプロファイリングして、オフレートを推定し、また中和の作用様式を特徴付けた。中和をビン1又はビン2のいずれかに分類した。Bin1は、ヒトIL-13に結合し、IL-13Rα1の結合を防止し、その結果、IL-4Rの結合もブロックする抗体を表す。Bin1抗体はまた、IL-13のIL-13Rα2への結合を阻害することができる。Bin2は、IL-13Rα1への結合を可能にするが複合体へのIL-4Rの動員を阻害するようにhIL-13に結合する抗体を表す。本発明者らは、Bin1を介して作用する抗体を選択していた。
【0269】
合計27×100プレートSLAM実験からの一次FMATスクリーニングにおいて、約7500個のIL-13特異的陽性が同定された。800ウェルは、HEK-青色アッセイにおいて中和を実証した。170ウェルは、望ましいBiacoreプロファイル、すなわち、5×10-4 s-1未満のオフレートを有するビン1抗体を有していた。これらの170ウェルからの可変領域クローニングを試みたところ、160個が蛍光フォーカスを得ることに成功した。100ウェルは、逆転写(RT)-PCR後に重鎖可変領域遺伝子対及び軽鎖可変領域遺伝子対を生成した。これらのV領域遺伝子をマウスIgG1全長抗体としてクローニングし、HEK-293一過性発現系において再発現させた。配列分析により、抗ヒトIL-13抗体の27のユニークなファミリーが存在することが明らかにされた。次いで、これらの組換え抗体を、細胞ベースアッセイにおいて、組換えhIL-13(大腸菌(E.coli)由来及び哺乳動物由来)、組換え変異体hIL-13(R130 Q)(大腸菌(E.coli)由来)、天然の野生型及び変異体hIL-13(ヒトドナー由来)並びにカニクイザルIL-13(哺乳動物由来)をブロックする能力について再試験した。組換え抗体もまた、Biacoreにおいて変異体ヒトIL-13(R130Q)及びカニクイザルIL-13に結合するそれらの能力について試験した。この特徴付けの後、抗体ファミリーを、本発明者らの基準を満たすように、すなわち、全てのヒトIL-13調製物及びカニクイザルIL-13調製物に対する効力及び親和性の低下が最小限である100pM未満の抗体を満たすように選択した。
【0270】
ヒト化移植片における中和効力、親和性及びドナー含量に基づいて(下記参照)、ヒト化CA650を更に進行のために選択した。
【0271】
例2 抗体CA650のヒト化
ラットV領域からのCDRをヒト生殖細胞系抗体V領域フレームワークに移植することによって、抗体650をヒト化した。抗体の活性を回復するために、ラットV領域からのいくつかのフレームワーク残基もヒト化配列に保持した。これらの残基は、Adair et al.(1991)(Humanised antibodies.国際公開第91/09967号)によって概説されたプロトコルを用いて選択した。設計されたヒト化配列と共に、ラット抗体(ドナー)V領域配列とヒト生殖細胞系(アクセプター)V領域配列とのアラインメントを
図1に示す。(
図1(A)軽鎖移植片650及び
図1(B)重鎖移植片650)。ドナーからアクセプター配列に移植されたCDRは、Chothia/Kabatの組合せ定義が使用されるCDR-H1(Adair et al.,1991 Humanised antibodies.国際公開第91/09967号を参照されたい)を除いて、Kabat(Kabat et al.,1987)によって定義される通りである。
【0272】
初期V領域配列をコードする遺伝子を設計し、Entelechon GmbHによる自動合成アプローチによって構築し、オリゴヌクレオチド指向型変異誘発によって移植片化バージョンgL8及びgH9を生成するように修飾した。gL8配列を、ヒトC-κ定常領域(Km3アロタイプ)をコードするDNAを含むUCB Celltechヒト軽鎖発現ベクターpVhCKにサブクローニングした。gH9配列を、ヒト重鎖ガンマ-1 CH1定常領域をコードするDNAを含むpVhg1Fabにサブクローニングした。
【0273】
ヒトV領域IGKV1-39+JK2 J領域(International Immunogenetics Information System(登録商標)IMGT、http://www.imgt.org)を、抗体650軽鎖CDRのアクセプターとして選択した。移植片gL8中の軽鎖フレームワーク残基は全て、ドナー残基イソロイシン(I58)及びチロシン(Y71)がそれぞれ保持された残基58及び71(ナンバリングはKabatに従う)を除いて、ヒト生殖細胞系遺伝子に由来する。残基I58及びY71の保持は、ヒト化抗体の完全な効力に必須であった。
【0274】
ヒトV領域IGHV1-69+JH4 J領域(IMGT、http://www.imgt.org)を、抗体650の重鎖CDRのアクセプターとして選択した。移植片gH9中の重鎖フレームワーク残基は全て、ドナー残基アラニン(A67)、フェニルアラニン(F69)及びバリン(V71)がそれぞれ保持された残基67、69及び71(ナンバリングはKabatに従う)を除いて、ヒト生殖細胞系遺伝子に由来する。残基A67、F69及びV71の保持は、ヒト化抗体の完全な効力に必須であった。ヒトフレームワークの1位のグルタミン残基をグルタミン酸(E1)で置換して、均一な生成物の発現及び精製をもたらし、抗体及び抗体断片のN末端でのグルタミンからピログルタミン酸への変換は広く報告されている。最終的に選択された可変移植片配列gL8及びgH9をそれぞれ
図1(A)及び
図1(B)に示す。
【0275】
抗体650のCDR、重鎖及び軽可変領域、scFv及びdsscFVフォーマットをコードするアミノ酸及びDNA配列を
図2に示す。
【0276】
例3 抗IL-17 AF抗体496.g3の作製
ヒトIL-17A及びヒトIL-17Fに対する抗体CA028_00496.g3(本明細書では抗体496.g3とも呼ばれる)の産生は、国際公開第2012/095662号に以前に記載されている。抗体は、ヒトIL-17A、IL-17F及びIL-17A/Fヘテロ二量体にpMの親和性で結合する。抗体496.g3のFabフォーマットのCDR、重鎖及び軽可変領域並びに軽鎖及び重鎖をコードするアミノ酸配列及びDNA配列を
図2に示す。496.g3(IL-17A/F結合)Fab定常領域は、ヒトC-κ定常領域(K1m3アロタイプ)並びにヒトγ-1 CH
1定常領域及びヒンジ(G1m17アロタイプ)を含んでいた。
【0277】
例4 抗ヒトアルブミン抗体645の作製
抗ヒトアルブミン抗体645の産生は、国際公開第2013/068571号に以前に記載されている。抗体645のCDR、重鎖及び軽可変領域、scFv及びdsscFVフォーマットをコードするアミノ酸及びDNA配列を
図2に示す。
【0278】
例5 多重特異性抗体IL-13/IL-17AF-一過性プラスミドの構築及び細胞における発現。
Fab位置に固定された抗IL-17AFV領域(496.g3)を用いて多重特異性抗体を設計し、抗アルブミンV領域(645gL4gH5)及びIL-13(1539gL8gH9)を、HL配向(dsHL)でジスルフィド結合scFvに再フォーマット化し、11アミノ酸グリシン-セリンリッチリンカーを介してFabのそれぞれの重鎖定常領域及び軽鎖定常領域のC末端に結合させた。(
図7)多重特異性抗体の全長重鎖及び軽鎖をコードするアミノ酸及びDNA配列を
図2に示す。
【0279】
軽鎖及び重鎖遺伝子を、hCMVプロモーターの制御下での一過性発現のために哺乳動物発現ベクターに独立してクローニングした。等しい比率の両方のプラスミドを、市販のExpiCHO Expifectamine一過性発現キット(Thermo Scientific)を使用してCHO-S XE細胞株(UCB)にトランスフェクトした。培養物を、通気キャップを備えたCorningローラーボトル内で37℃、8.0%CO
2、190rpmでインキュベートした。18~22時間後、培養物に、製造業者によって提供された適切な容量のCHOエンハンサー及びHiTiter法のための供給物を供給した。培養物を32℃、8.0%CO
2、190rpmで更に10~12日間再インキュベートした。4℃で1時間、4000rpmで遠心分離することによって上清を回収した後、0.45μm、続いて0.2μmのフィルターで濾過滅菌した。発現力価を、1mlのGE HiTrapプロテインGカラム(GE Healthcare)及び本発明者らが作製したFab標準を使用してプロテインG HPLCによって定量した。発現力価を表1に示す。
【表1】
【0280】
例6 IL-13/IL-17AF多重特異性抗体-哺乳動物細胞株の発達。
IL-13/IL-17AF多重特異性抗体の安定な発現を実証するために、安定に発現する哺乳動物細胞株を作製した。CHO細胞株を、496.g3 Fab、1539gH9gL8 dsscFv HL(LC、INS0025609)、645gH5gL4 dsscFv HL(HC、INS0025306)及び選択マーカーを含有するベクターでトランスフェクトした。細胞株をクローニングし、適切な製造プロセスへの適合について評価した。タンパク質の質及び量を評価し、最適な細胞株が選択されたことを確実にするために、細胞株を製造流加バイオリアクターの小規模モデルにおいて評価した。1.8g/L超及び75%超の単量体でIL-13/IL-17AF多重特異性抗体を発現するCHO細胞株を選択した。
【0281】
例7 IL-13/IL-17AF多重特異性抗体の精製方法。
多重特異性抗体タンパク質を、未変性プロテインA捕捉工程、続いて分取サイズ排除研磨工程によって精製した。標準的な一過性CHO発現からの清澄化上清をMabSelect(GE Healthcare)カラムにロードして5分間接触させ、結合緩衝液(20mM Hepes pH7.4+150mM NaCl)で洗浄した。結合した物質を0.1Mクエン酸ナトリウムpH3.1段階溶出で溶出し、2M Tris/HCl pH8.5で中和し、280nmでの吸光度によって定量した。
【0282】
サイズ排除クロマトグラフィ(SE-UPLC)を使用して、溶出生成物の純度状態を決定した。抗体(約2μg)をBEH200、200Å、1.7μm、4.6mmID×300mmカラム(Waters ACQUITY)にロードし、0.35mL/分で0.2MホスファートpH7の定組成勾配で展開した。連続検出は、280nmでの吸光度及びマルチチャネル蛍光(FLR)検出器(Waters)によるものであった。溶出した多重特異性抗体は72%単量体であることが見出された。
【0283】
中和された試料を、Amicon Ultra-15濃縮器(10kDaの分子量カットオフ膜)を使用して濃縮し、スイングアウトロータにおいて4000xgで遠心分離した。濃縮した試料を、PBS、pH7.4で平衡化したXK16/60 Superdex200カラム(GE Healthcare)に適用し、PBS、pH7.4の定組成勾配を用いて1ml/分で展開した。画分を回収し、BEH200、200Å、1.7μm、4.6mmID×300mmカラム(Aquity)でサイズ排除クロマトグラフィによって分析し、0.35mL/分で0.2MホスファートpH7の定組成勾配で展開し、280nmでの吸光度及びマルチチャネル蛍光(FLR)検出器(Waters)によって検出した。選択された単量体画分をプールし、0.22μm滅菌濾過し、最終試料をDropSense96(Trinean)でのA280走査によって濃度についてアッセイした。Limulus Amebocyte Lysate(LAL)試験カートリッジを備えたCharles RiverのEndoSafe(登録商標)ポータブル試験システムによって評価したところ、エンドトキシンレベルは1.0EU/mg未満であった。
【0284】
最終的な多重特異性抗体の単量体状態を、BEH200、200Å、1.7μm、4.6mmID×300mmカラム(Aquity)でのサイズ排除クロマトグラフィによって決定し、0.35mL/分で0.2MホスファートpH7の定組成勾配で展開し、280nmでの吸光度及びマルチチャネル蛍光(FLR)検出器(Waters)によって検出した。最終的な多重特異性抗体は、
図3(A)に示すように99%超の単量体であることが見出された。
【0285】
ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)による分析のために、4×NovexNuPAGE LDS試料緩衝液(Life Technologies)及び10×NuPAGE試料還元剤(Life Technologies)又は100mM N-エチルマレイミド(Sigma-Aldrich)のいずれかを約5μgの精製タンパク質に添加することによって試料を調製し、3分間100℃に加熱した。試料を10ウェルNovex 4~20%Tris-グリシン1.0mm SDS-ポリアクリルアミドゲル(Life Technologies)にロードし、Tris-グリシンSDS泳動緩衝液(Life Technologies)中、225Vの定電圧で40分間分離した。Novex Mark12広範囲タンパク質標準(Life Technologies)を標準として使用した。ゲルをクマシークイック染色(Generon)で染色し、蒸留水中で脱色した。
【0286】
非還元SDS-PAGEでは、多重特異性抗体の理論分子量(MW)は約100kDaであり、約120kDaに移動した。多重特異性抗体タンパク質が還元されると、両方の鎖は、それぞれの理論上の分子量である重鎖(HC)約52kDa及び軽鎖(LC)約51kDaに近づく移動度で移動した。約45~50kDaの非還元ゲル上の更にバンドは、分子のFab部分のジスルフィド結合を欠く「遊離」LC及びHCであり、完全に還元されていないので、レーン2のLC及びHCと同じ位置に移動しない。(
図3(B))
【0287】
例8 IL-13/IL-17AF多重特異性抗体分子の抗原結合。
(i)抗原結合親和性
ヒト及びカニクイザルIL-13、IL-17A、AF、F及びアルブミンの結合動態を表面プラズモン共鳴(Biacore T200)によって評価した。
【0288】
ヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)2断片特異的抗体(Jackson ImmunoResearch)を、アミンカップリング化学を介してCM5センサーチップ上に約5000RUのレベルに固定化した。各分析サイクルは、抗F(ab’)2表面へのIL-13/IL-17AF/アルブミン多重特異性抗体分子の捕捉、分析物の注入(25℃、流速30μl/分)、その後の表面再生からなった。ヒト及びカニクイザル分析物を、IL-13については10nM~0.3125nM、IL-17A、AF、Fについては5nM~0.156nM、アルブミンについては100nM~3.125nMの濃度で、HBS-EP+泳動緩衝液(GE Healthcare)に2倍段階希釈で注入した。ヒトIL-13(R&D Systems)、カニクイザルIL-13(Sinobiologicals)及びヒト血清アルブミン(Jackson ImmunoResearch)を除いて、抗原を本発明者らが調製した。装置ノイズ及びドリフトを差し引くために、緩衝液ブランク注入を含めた。
【0289】
Biacore T200評価ソフトウェア(バージョン3.0)を使用して1:1結合モデルを使用して速度論的パラメータを決定し、表2(1)及び2(2)に要約した。解離速度(kd)が1.0×10-5未満として測定された場合、それらを1.0×10-5(製造業者GE Healthcareによって定義されるBiacore T200装置の検出限界)に固定して、親和性(KD)を計算した。
【0290】
結果は、多重特異性抗体がヒト及びカニクイザルのIL-17A、IL-17AF、IL-17F、IL-13及びアルブミンに効果的に結合することを実証した。
【表2】
【表3】
【0291】
(ii)同時抗原結合
表面プラズモン共鳴を使用して、IL-17A、IL-13及びアルブミンが、ヒト又はカニクイザルのいずれかの形態のタンパク質を使用してIL-13/IL-17AF多重特異性抗体に同時に結合することができることを実証した。
【0292】
分析物のIL-13/IL-17AF多重特異性抗体への同時結合を評価するための方法フォーマットは、抗体試料を固定化抗ヒトIgG F(ab’)2断片特異的抗体に捕捉することであった。次いで、ヒト又はカニクイザルIL-13、IL-17A及びアルブミンを、捕捉されたIL-13/IL-17AF多重特異性抗体(最終濃度は30nM IL-13、15nM IL-17A、150nMアルブミン)上に、単独で、又は3つ全ての分析物の混合溶液中に(30μl/分で300秒間)注入した。
【0293】
各サイクルの最後に、50mM HClの60秒間の注入、続いて5mM NaOHの30秒間の注入及び50mM HClの最終60秒間の注入を用いて、10μl/分の流量で表面を再生した。
【0294】
単独で注射した場合の各抗原の結合応答を決定し、個々の応答の合計を、3つ全ての抗原の混合物を注射した場合の結合応答と比較した。
【0295】
IL-13/IL-17AF多重特異性抗体に対するヒトIL-17A、IL-13及びアルブミンの混合物の平均結合応答は、個々の結合応答の合計の100%であり(表3に要約)、IL-13/IL-17AF多重特異性抗体が各抗原に同時に独立して結合することができたことを示した。
【表4】
【0296】
IL-13/IL-17AF多重特異性抗体に対するカニクイザルIL-17A、IL-13及びアルブミンの混合物の平均結合応答は、個々の結合応答の合計の97%であり(表4に要約)、IL-13/IL-17AF多重特異性抗体が各抗原に同時に独立して結合することができたことを示した。
【表5】
【0297】
例9 IL-13/IL-17AF多重特異性抗体によるIL-13の中和。
HEK293ヒトIL4/IL-13SEAPレポーター細胞株アッセイを使用して、IL-13を中和するIL-13/IL-17AF多重特異性抗体の活性を評価した。STAT6経路の活性化時にSEAP分泌を測定して、IL-13応答を評価した。
【0298】
HEK293ヒトIL4/IL-13SEAPレポーター細胞(#hkb-il413)を、サンディエゴのInvivogenから入手した。細胞株の培養、凍結及び維持は製造業者のプロトコルに従った。
【0299】
組換えヒトIL-13を、ミネソタ州ミネアポリスのR&D Systemsから入手した(#213-ILB)。
【0300】
96平底ウェル中で刺激時に細胞が約80%コンフルエントになるように細胞を播種した。
【0301】
細胞を、250pg/mLのIL-13と共に37℃、5%CO2、湿度100%で30分間プレインキュベートした抗体で二連で処理した後、細胞に24時間添加した。
【0302】
24時間後、20μLの上清を細胞刺激からピペットで取り、製造業者の指示に従って180μLのQuanti-blue#rep-qbs(サンディエゴのInvivogen)に添加した。
【0303】
可視の色変化勾配が存在するまでアッセイを展開し、分光光度計を使用して620nmで吸光度を読み取った。IC50を、Graphpadプリズム(カリフォルニア州サンディエゴ)を使用した非線形回帰によって計算した。
図4は、IL-13/IL-17AF多重特異性抗体によるSTAT6シグナル伝達の阻害%の代表的なグラフを示す。
【表6】
【0304】
例10 ヒト及びカニクイザルIL-17A及びIL-17Fに対するヒト皮膚線維芽細胞によるIL-6応答におけるIL-13/IL-17AF多重特異性抗体の中和効果
この研究の目的は、ヒト初代細胞系におけるヒト及びカニクイザルIL-17A及びIL-17Fに対するIL-13/IL-17AF多重特異性抗体の中和能を決定することであった。IL-17がTNF-αなどの他のサイトカインと組み合わせて存在する場合、炎症促進性応答が誘導される。したがって、この相乗効果を利用して、IL-17及びTNF-αで刺激した初代正常新生児ヒト皮膚線維芽細胞(nHDF)からIL-6放出アッセイを作成した。
【0305】
nHDFからのIL-17誘導性IL-6放出を阻害するIL-13/IL-17AF多重特異性抗体の能力をこのアッセイで測定した。具体的には、IL-13/IL-17AF多重特異性抗体(IL-17A研究については5000pM~0.25pMの濃度範囲、IL-17F研究については500,000pM~25pM)の力価の存在下で、TNF-α(25pM)と組み合わせたヒト又はカニクイザルIL-17A(50pM)又はIL-17F(25,000pM)でnHDFを刺激した。次いで、得られたIL-6応答を、均一時間分解FRET(HTRF)を使用して測定した。
【0306】
nHDF細胞(Sigma#106-05n)を完全培地(DMEM+10%FCS+2mM L-グルタミン)中で培養し、標準的な技術を使用して組織培養フラスコ中で維持した。細胞を、TrypLE(Invitrogen#12605036)を使用して組織培養フラスコから回収した。完全培地(45ml)を使用してTrypLEを中和し、細胞を300×gで3分間遠心分離した。細胞を完全培地(3~5ml)に再懸濁し、計数し、3.125×104細胞/mLの濃度に調整した後、40μl/ウェルで384ウェルアッセイプレート(Corning#3701)に添加した。細胞を37℃/5%CO2で3時間インキュベートしてプレートに接着させた。IL-13/IL-17AF多重特異性抗体を、384ウェル希釈プレート(Greiner#781281)中の完全培地中で、IL-17Aに対する評価については5000pM~0.25pM、及びIL-17Fに対する評価については500,000pM~25pMの最終濃度範囲に連続希釈した。ヒト又はカニクイザルIL-17A 50pM又はIL-17F 25,000pMのいずれかと共に、TNF-α及びIL-17サイトカインの混合物を完全培地中でTNF-α 25pMの最終濃度に調製した。次いで、30μl/ウェルのこれらの溶液を384ウェル試薬プレート(Greiner#781281)に添加した。次いで、IL-13/IL-17AF多重特異性抗体段階希釈プレートからの10μlを、30μlの希釈サイトカインを含有する試薬プレートに移した。次いで、IL-13/IL-17AF多重特異性抗体をサイトカイン混合物と共に37℃/5%CO2で1時間インキュベートした。インキュベーション後、10μlを試薬プレートから細胞を含むアッセイプレートに移した。次いで、アッセイプレートを37℃/5%CO2で18時間±2時間インキュベートした。インキュベーションが完了した後、Cisbio IL-6 HTRFキット(Cisbio#62IL6PEB)からのユウロピウムクリプタート及びAlexa665抗体を再構成緩衝液で希釈し、キット添付文書に従って1:1で混合した。続いて、10μl/ウェルのこの抗体混合物を白色低容量384ウェルHTRFプレート(Greiner#784075)に添加した。次いで、アッセイプレートからの上清を10μl/ウェルでHTRFプレートに移した。次いで、HTRFプレートを穏やかに振盪しながら室温で2時間インキュベートした。次いで、製造者の説明書に従って、Synergy Neo2プレートリーダでHTRFプレートを読み取り、330/620nm及び330/665nmの読み取り値で蛍光を測定した。次いで、以下の式(330/665nm÷330/620nm)×10,000を使用して比の値を計算し、これを使用して、対照ウェルと比較した相対阻害率をMicrosoft Excelを使用して決定した。4PL曲線フィッティング及びIC50値の計算を、GraphPad Prism7.0を使用して行った。
【0307】
示される結果は、3つの独立した実験の平均(+/-SEM)である。IL-13/IL-17AF多重特異性抗体のIC50値を、ヒトIL-17Aについては42pM、カニクイザルIL-17Aについては49pMとして計算した。IL-13/IL-17AF多重特異性抗体のIC50値を、ヒトIL-17Fについては28,030pM、カニクイザルIL-17Fについては34,320pMと計算した。(
図5)
【表7】
【0308】
例11 NHEK CXCL1放出バイオアッセイにおけるIL-13/IL-17AF多重特異性抗体によるIL-13、IL-17A及びIL-17Fの同時中和
このアッセイの目的は、初代細胞系においてIL-13、IL-17A及びIL-17Fを同時に中和するIL-13/IL-17AF多重特異性抗体の能力を評価することであった。NHEKをIL-13又はIL-17A又はIL-17Fで個別に処理すると、それらは、炎症部位への細胞動員に関与するケモカインであるCXCL1の分泌を誘導する。アトピー性皮膚炎の状況では、CXCL1が、より低い興奮閾値を有するようにニューロンを感作する役割を有するという証拠がある。この観察は、患者が経験するかゆみに関連する可能性がある(Yang T.B.and Kim B.S.2019;’’Pruritus in allergy and immunology’’J Allergy Clin Immunol 144(2):353-360)。
【0309】
NHEK(PromoCell、ハイデルベルク)を、製造業者のプロトコルに従って保存、培養及び使用した。48平底ウェルプレート中で刺激時に100%コンフルエントになるように細胞を播種した。細胞を漸増濃度の抗IL-13、抗IL-17A、抗IL-17F又はIL-13/IL-17AF多重特異性抗体とそれぞれ30分間プレインキュベートした後、100ng/mLのIL-13及び100ng/mLのIL-17A、1μg/mLのIL-17Fで72時間処理した。経過時間後、製造業者のプロトコル(R&D Systems)に従って、ELISAによるCXCL1濃度の定量のために50μlの無細胞上清を回収した。各実験群のIC50を、Graphpadプリズム(カリフォルニア州サンディエゴ)を使用した非線形回帰によって計算した。
【0310】
結果は、IL-13/IL-17AF多重特異性抗体がIL-13、IL-17A及びIL-17F活性を同時に中和したことを実証した。(
図6)アッセイで利用可能な結合部位の数について正規化すると、IL-13/IL-17AF多重特異性抗体(81.3%)は、CXCL1放出の阻害において抗IL-17A(52.7%)、抗IL-17F(0.7%)又は抗IL-13(48.8%)よりも有効であった。抗IL-17A、抗IL-17F又は抗IL-13の濃度を単独で増加させても、達成される最大阻害は改善されなかった。結果は、単一のサイトカイン中和と比較して、IL-13、IL-17A及びIL-17Fを同時に阻害する利点を強調している。
【0311】
例12 多重特異性IL-13/IL-17抗体と先行技術のIL-13/IL-17抗体との比較。
序論
本発明によるIL-13/IL-17AF多重特異性抗体の例を
図7に示す。これは、一方がIL-13に特異的であり、他方がアルブミンに特異的である2つのscFvドメインに連結された、IL-17A及びIL-17Fに対する二重特異性を有するFabドメインを含む。抗アルブミンドメインは、半減期が延長された多重特異性抗体を付与する。
【0312】
IL-13及びIL-17に結合する二重特異性抗体は、Abbvie(国際公開第2013/102042号)及びGenentech(国際公開第2015/127405号)によって以前に記載されている。しかし、IL-13、IL-17A及びIL-17Fにどのように結合し、どの程度結合するかについてはほとんど開示されていない。これらの特性を比較するために、本発明者らは、先行技術に記載される抗体を作製し、以下の特徴についてそれらの結合挙動を調べた。
・IL-13に対する親和性
・分子とIL-13及びIL-13Rα1との相互作用
・IL-17Aに対する親和性
・IL-17Fに対する親和性
【0313】
比較抗体の作製
国際公開第2015/127405号の例6に記載されている配列を使用して、BITS7201A(Genentech)を構築した。
【0314】
国際公開第2013/102042号、表6及び表7に記載されている配列を使用して、DVD2166及びDVD2174(Abbvie)を構築した。これらの分子は、IL-13及びIL-17に対する二重特異性の個々のアームの報告された活性が、それぞれの親抗体とほぼ同等又は同等であることに基づいて選択された(国際公開第2013/102042号、例4、83頁、0195)。
【0315】
ExpiCHOトランスフェクションシステム(ThermoFisher Scientific)の高力価プロトコルを使用して、DNA構築物をCHO-SXE細胞にトランスフェクトした。回収したら、細胞培養物を4000RPMで少なくとも1時間遠心分離し、0.22μMのStericupフィルターユニットを使用した濾過によって上清を清澄化した。
【0316】
DVD2166+DVD2174の精製
10mlのMabSelect Sureカラムに清澄化上清を適用することによってDVD-IgGタンパク質を精製し、3カラム容積(CV)のPBS、pH7.4で洗浄した。タンパク質を0.1Mクエン酸ナトリウムpH3.6段階溶出でカラムから溶出し、2M Tris-HCl、pH8.5で中和した。PBS、pH7.4で平衡化したHiLoad 16x60 Superdex200pgカラム(Sigma)に適用することによって、単量体タンパク質を単離した。単量体タンパク質を含有する画分をプールし、滅菌濾過し、4℃で保存した。
【0317】
BITS7201Aの精製
親ノブ及びホールタンパク質を、10mLのMabSelect Sureカラムに清澄化上清を適用することによって精製し、3CVのPBS、pH7.4で洗浄した。0.1Mクエン酸ナトリウムpH3.6を用いてタンパク質をカラムから溶出した。タンパク質を中和及び安定化するために、試料を1Mアルギニン/コハク酸緩衝液、pH8.7で1:1に希釈した。次いで、親抗体を、0.15M酢酸ナトリウム、0.5Mアルギニン緩衝液、pH8.5で平衡化したHiLoad 26x60 Superdex200pgカラム(Sigma)に適用した。続いて、5mMシステアミンの存在下で親抗体を1:1の比で混合し、室温で一晩インキュベートすることによって二重特異性材料を生成させた。PBS、pH7.4で平衡化したHiLoad 26x60 Superdex200pgカラムに適用することによって、第2の分取ゲル濾過工程を実施して、交換された二重特異性材料から任意の高分子量種を除去した。単量体二重特異性タンパク質を含有する画分をプールし、滅菌濾過し、4℃で保存した。
【0318】
結合特性の比較
「UCBXXXX」と呼ばれるIL-13/IL-17AF多重特異性抗体及び先行技術の抗体へのヒトIL-13、IL-17A及びIL-17Fの結合動態を、表面プラズモン共鳴(Biacore T200)によって評価し、単一の実験内で直接比較した。加えて、表面プラズモン共鳴を使用して、IL-13/IL-17AF多重特異性抗体UCBXXXX又は比較分子のIL-13に対する結合が、IL-13受容体とのIL-13相互作用のブロッキングをもたらしたかどうかを評価した。
【0319】
ヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)2断片特異的抗体(Jackson ImmunoResearch)を、アミンカップリング化学を介してCM5センサーチップ上に約5000RUのレベルに固定化した。親和性評価のために、各分析サイクルは、抗F(ab’)2表面へのIL-13/IL-17AF多重特異性抗体又は比較二重特異性分子の捕捉(50~100RU)、分析物の注入(25℃、流速30μl/分で180秒間)からなり、その後、解離をIL-13及びIL-17Aについては1200秒間、IL-17Fについては600秒間監視した。各サイクルの最後に、50mM HClの60秒間の注入、続いて5mM NaOHの30秒間の注入及び50mM HClの最終60秒間の注入を用いて、10μl/分の流量で表面を再生した。分析物を、IL-13については10nM~0.3125nM、IL-17A及びIL-17Fについては5nM~0.156nMの濃度で、HBS-EP+泳動緩衝液(GE Healthcare)に2倍段階希釈で注入した。IL-17A及びIL-17Fは本発明者らが調製したが、ヒトIL-13はR&D Systemsから供給された。装置ノイズ及びドリフトを差し引くために、緩衝液ブランク注入を含めた。
【0320】
Biacore T200評価ソフトウェア(バージョン3.0)を使用して1:1結合モデルを使用して速度論的パラメータを決定した。結果を表7に要約する。
【表8】
【0321】
IL-13Rα1受容体ブロッキングを評価するために、各抗体分子をヤギ抗ヒトIgG、F(ab’)
2表面に捕捉し(約50~100RU)、続いてIL-13(25nM、10μl/分で180秒間)を注入し、IL-13Rα1(R&D Systems、100nM、10μl/分で300秒間)を注入した。任意のドリフト応答又はバックグラウンド応答を差し引くために、IL-13及びIL-13Rα1の両方のブランク注入を含めた。表8に要約されるように、UCBXXXXはIL-13とIL-13Rα1との相互作用をブロックすることができたが、BITS7210A、DVD2166及びDVD2174分子はブロックしなかった。
【表9】
【0322】
IL-13Rα1及びIL-13Rα2への結合をブロックするIL-13/IL-17AF多重特異性抗体の能力を評価するために、更に実験を行った。この実験では、約260RUのUCBXXXXを固定化マウス抗ヒトCH1抗体(UCB本発明者ら)に捕捉し、続いてIL-13を注入し(25nM、10μl/分で180秒間)、次いでIL-13Rα1又はIL-13Rα2のいずれかを注入した(R&D Systems、100nM、10μl/分で300秒間)。任意のドリフト応答又はバックグラウンド応答を差し引くために、IL-13、IL-13Rα1及びIL-13Rα2のブランク注入を含めた。結果は、IL-13と、IL-13Ra1及びIL-13Ra2の両方との相互作用をUCBXXXXがブロックできることを実証した。(表9)
【表10】
【0323】
考察
比較研究は、IL-13/IL-17AF多重特異性抗体UCBXXXX、二重特異性抗体BITS7210A、並びに二重可変ドメイン抗体DVD2166及びDVD2174がIL-13に対して高い親和性で結合することができることを実証した。しかし、結合相互作用の特徴は非常に異なっていた。UCBXXXXはIL-13とIL-13-Rα1との相互作用をブロックすることができたが、BITS7210A、DVD2166及びDVD2174はブロックできなかった。
【0324】
比較研究は、多重特異性抗体UCBXXXX、二重特異性抗体BITS7210A、並びに二重可変ドメイン抗体DVD2166及びDVD2174がIL-17に結合することができることを更に実証した。しかし、やはり、結合相互作用の特徴は非常に異なっていた。IL-17Aに対するUCBXXXXの結合親和性は、BITS7210A及びDVD抗体の結合親和性よりも有意に高かった。UCBXXXX及びBITS7210AはIL-17Fに対して同様の親和性で結合したが、DVD抗体はIL-17Fに全く結合することができなかった。
【0325】
これらの抗体の存在下でのIL-13とIL-13Rα1との間の相互作用は、潜在的な免疫原性を低下させるという観点で重要である。潜在的な新規二重特異性抗体治療薬を調べる場合、免疫原性、特に抗薬物抗体(ADA)の生成を綿密に考慮すべきであることを証拠が示唆している。ADA生成の主な駆動源は、細胞表面上に発現される標的抗原との治療用抗体の会合及びその後の内在化である(Schellekens,H.,2002;Clin Ther.24(11):1720-40)。内在化された治療用抗体/標的抗原複合体は、様々な細胞内コンパートメントを介した輸送を受け、細胞表面に再循環することができるか、又は分解を受けることができ(St Pierreら、2011)、これは、抗原提示分子によるペプチド提示及びADA生成をもたらすことができる。
【0326】
二重特異性抗体BITS7201Aでは、分子のIL-13F(ab)部分は、抗IL-13抗体であるレブリキズマブと同じである(国際公開第2015/127405号の例6を参照されたい)。レブリキズマブは、IL-13がその受容体IL-13Rα1及びIL-13Rα2に結合することを可能にするが、IL-4Rα受容体との相互作用をブロックする部位でIL-13に結合すると考えられている(Popovic et al.,2017;J Mol Biol.429(2):208-19)。この特定のタイプの相互作用は、IL-13Rα2を介した抗体/標的抗原/受容体複合体の内在化を可能にし、したがって免疫原性応答の可能性を高める可能性がある。第I相臨床試験では、BITS7201Aは、高い発生率の抗薬物抗体(ADA)に関連しており、臨床開発から撤退した。
【0327】
同様に、二重可変ドメイン抗体DVD2166及びDVD2174は、IL-13とIL-13-Rα1との相互作用をブロックすることができなかった。
【0328】
潜在的な免疫原性リスクを軽減するために、UCBXXXXは、そのそれぞれの標的抗原IL-13、IL-17A及びIL-17Fと会合すると、それらが細胞上の受容体と相互作用するのを防止し、したがって、内在化、分解の機会及びADA生成の可能性を減少させるように、特異的に設計されている。UCBXXXXによるヒトでのADAの発生率は、臨床データが利用可能になって初めて確実なものとなる。
【0329】
上記で生成されたデータは、IL-13/IL-17AF多重特異性抗体UCBXXXXが、有効性が改善され、免疫原性のリスクが低い、有効なIL-13/IL-17抗体治療薬になるための正しい特性を有することを示している。
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【国際調査報告】