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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-22
(54)【発明の名称】ウイルスベクターの自動産生
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/85 20060101AFI20230215BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20230215BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20230215BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20230215BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230215BHJP
   C12P 19/34 20060101ALI20230215BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
C12N15/85 Z
C12N15/864 100Z
C12N15/867
C12N15/86 Z
C12N5/10
C12P19/34 A
C12N15/10 100Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535090
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-06-08
(86)【国際出願番号】 US2020066006
(87)【国際公開番号】W WO2021127432
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】62/950,177
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512190365
【氏名又は名称】ロンザ ウォーカーズヴィル,インコーポレーテッド
(71)【出願人】
【識別番号】522228126
【氏名又は名称】ロンザ セールス アーゲー
【氏名又は名称原語表記】LONZA SALES AG
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ディミトリアドゥ, エヴランピア
(72)【発明者】
【氏名】ヒューイット, マシュー
(72)【発明者】
【氏名】レイチャー, アンドリュー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AF27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE10
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AA93X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065BD14
4B065CA23
4B065CA44
(57)【要約】
本開示は、完全密閉式細胞工学システム内で人工ウイルスベクター産生細胞株、またはパッケージング細胞を利用する、ウイルスベクターの自動産生方法を提供する。産生され得る例示的なウイルスベクターには、レンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、およびレトロウイルスベクターが含まれる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスベクターの自動産生の方法であって、
(a)完全密閉式細胞工学システムに人工ウイルス産生細胞を導入することと、
(b)対象遺伝子をコードするベクターで前記人工ウイルス産生細胞を形質導入して、形質導入ウイルス産生細胞を産生することと、
(c)前記形質導入ウイルス産生細胞を増殖させ、前記形質導入ウイルス産生細胞内で前記ウイルスベクターを産生することと、
(d)前記増殖産生細胞を下流処理モジュールに移送することと、
(e)前記ウイルスベクターを単離することと、
(f)前記ウイルスベクターを精製することと、を含み、
(a)~(e)が、閉鎖型自動化プロセスで行われる、方法。
【請求項2】
前記人工ウイルス産生細胞が、哺乳動物細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記哺乳動物細胞が、哺乳動物細胞培養物である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記哺乳動物細胞培養物が、懸濁培養物である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ウイルスベクターが、レンチウイルスベクターである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ウイルスベクターが、レトロウイルスベクターである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ウイルスベクターが、バキュロウイルスベクターである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記哺乳動物細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項2~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記哺乳動物細胞が、ヒト細胞である、請求項2~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ヒト細胞が、ヒト胚腎臓(HEK)細胞である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ヒト細胞が、HEK293T細胞である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記人工産生細胞が、昆虫細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記人工産生細胞が、Sf9細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
産生されたウイルスベクターの量が、少なくとも約1010個のウイルスベクターである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記閉鎖型自動化プロセスが、
(a)温度センサ、pHセンサ、グルコースセンサ、ラクトースセンサ、酸素センサ、二酸化炭素センサ、および光学密度センサのうちの1つ以上で監視することと、
(b)温度、pHレベル、グルコースレベル、ラクトースレベル、酸素レベル、二酸化炭素レベル、および光学密度のうちの1つ以上を自動的に調節することと、を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記形質導入することが、ウイルス感染、エレクトロポレーション、リポソームトランスフェクション、または膜破壊を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記単離することが、前記増殖産生細胞を溶出カラムに通すことを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記精製することが、膜ポリッシングを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ウイルスベクターを製剤化することをさらに含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ウイルスベクターの自動産生の方法であって、
(a)完全密閉式細胞工学システムにパッケージング細胞を導入することと、
(b)ウイルスヘルパー遺伝子、ウイルスパッキング遺伝子、および対象遺伝子をコードする1つ以上のベクターで前記パッケージング細胞を形質導入して、形質導入細胞を産生することと、
(c)前記形質導入細胞を増殖させ、前記形質導入細胞内で前記ウイルスベクターを産生することと、
(d)前記増殖細胞を下流処理モジュールに移送することと、
(e)前記ウイルスベクターを単離することと、
(f)前記ウイルスベクターを精製することと、を含み、
(a)~(e)が、閉鎖型自動化プロセスで行われる、方法。
【請求項22】
前記パッケージング細胞が、哺乳動物細胞である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記哺乳動物細胞が、哺乳動物細胞培養物である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記哺乳動物細胞培養物が、懸濁培養物である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記ウイルスベクターが、レンチウイルスベクターである、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記ウイルスベクターが、レトロウイルスベクターである、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記ウイルスベクターが、バキュロウイルスベクターである、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記哺乳動物細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項22~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記哺乳動物細胞が、ヒト細胞である、請求項22~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記ヒト細胞が、ヒト胚腎臓(HEK)細胞である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ヒト細胞が、HEK293T細胞である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記パッケージング細胞が、昆虫細胞である、請求項21に記載の方法。
【請求項34】
前記パッケージング細胞が、Sf9細胞である、請求項21に記載の方法。
【請求項35】
産生されたウイルスベクターの量が、少なくとも約1010個のウイルスベクターである、請求項21に記載の方法。
【請求項36】
前記閉鎖型自動化プロセスが、
(c)温度センサ、pHセンサ、グルコースセンサ、ラクトースセンサ、酸素センサ、二酸化炭素センサ、および光学密度センサのうちの1つ以上で監視することと、
(d)温度、pHレベル、グルコースレベル、ラクトースレベル、酸素レベル、二酸化炭素レベル、および光学密度のうちの1つ以上を自動的に調節することと、を含む、請求項21~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記形質導入することが、ウイルス感染、エレクトロポレーション、リポソームトランスフェクション、または膜破壊を含む、請求項21~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記単離することが、前記増殖産生細胞を溶出カラムに通すことを含む、請求項21~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記精製することが、膜ポリッシングを含む、請求項21~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記ウイルスベクターを製剤化することをさらに含む、請求項21~39のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、完全密閉式細胞工学システム内で人工ウイルスベクター産生細胞株、またはパッケージング細胞を利用する、ウイルスベクターの自動産生方法を提供する。産生され得る例示的なウイルスベクターには、レンチウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、およびレトロウイルスベクターが含まれる。
【0002】
[背景技術]
ウイルスベクターは、基礎研究ツール、および遺伝子療法に使用するための両方として非常に重要である。例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)は、その安全性プロファイルおよび長期発現能力から、ヒトの遺伝子療法のための優れたウイルスベクターである。同様に、レンチウイルスベクターは、遺伝子および細胞療法の分野で最も一般的に使用される送達方法の1つである。しかしながら、ウイルスベクターを産生する従来の手段は、大部分が高価で、時間がかかり、かつ煩雑なものである。さらに、架橋プラットフォーム(AAVなど)または複数回の一過性トランスフェクション(レンチウイルスなど)に依存する方法では、ベクターの収率が低すぎるか、またはプラスミドDNAの量が多すぎ、大部分の治療用途に対応することができない可能性がある。加えて、小規模なウイルスベクター産生では、大きなバッチプロセスは必要とされないか、または望ましくない場合がある。
【0003】
ウイルスベクターの産生の自動化の利点として、自動化の使用に関連付けられる労働時間の節約、ならびに製品の一貫性の改善、ルームの清浄度の減少、クリーンルームの設置面積の減少、複雑なトレーニングの減少、および規模の拡大ならびに物流追跡の改善が挙げられる。さらに、ソフトウェアを使用し、自動生成された電子バッチレコードを使用して、すべての処理装置、試薬、オペレータ識別、プロセス内センサデータなどの履歴を提供することにより、文書プロセスを合理化することができる。
【0004】
自動化された自己完結システムは、人工哺乳動物細胞がウイルスベクターを最適に産生するものであり、遺伝子療法の分野に革命をもたらすものである。大規模または小規模の大量産生のためのウイルス産生の制御を可能にする技術であって、再現可能で安定した結果をもたらすと同時に、汚染を制限し、コストを低減する、技術が急務となっている。
【0005】
[発明の概要]
いくつかの実施形態では、本明細書では、ウイルスベクターの自動産生の方法であって、完全密閉式細胞工学システムに人工ウイルス産生細胞を導入することと、対象遺伝子をコードするベクターで人工ウイルス産生細胞を形質導入して、形質導入ウイルス産生細胞を産生することと、形質導入ウイルス産生細胞を増殖させ、形質導入ウイルス産生細胞内でウイルスベクターを産生することと、増殖産生細胞を下流処理モジュールに移送することと、ウイルスベクターを単離することと、ウイルスベクターを精製することと、を含み、(a)~(e)が、閉鎖型自動化プロセスで行われる、方法を提供する。
【0006】
本明細書ではまた、ウイルスベクターの自動産生の方法であって、完全密閉式細胞工学システムにパッケージング細胞を導入することと、ウイルスヘルパー遺伝子、ウイルスパッキング遺伝子、および対象遺伝子をコードする1つ以上のベクターでパッケージング細胞を形質導入して、形質導入細胞を産生することと、形質導入細胞を増殖させ、形質導入細胞内でウイルスベクターを産生することと、増殖細胞を下流処理モジュールに移送することと、ウイルスベクターを単離することと、ウイルスベクターを精製することと、を含み、(a)~(e)が、閉鎖型自動化プロセスで行われる、方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本明細書の実施形態によるウイルスベクターの自動産生の流れ図を示す。
図2図2は、本明細書の実施形態に記載される、閉鎖型自動化細胞工学システムを示す。
図3図3は、本明細書の実施形態に記載される、例示的な閉鎖型自動化細胞工学システムを含む実験室空間を示す。
図4図4は、本明細書の実施形態に記載される、閉鎖型自動化システムのカセットで行われ得るウイルスベクター産生プロセスの図を示す。
図5図5は、本明細書に記載される、自動化細胞工学システム内のプロセスの流れ図を示す。
図6図6は、本明細書の実施形態による下流処理のブロック図を示す。
図7図7は、本明細書の実施形態による下流処理の流れ図を示す。
図8図8A~8Dは、本明細書の実施形態による下流処理モジュールの構成要素を示す。
図9A図9は、本明細書の実施形態による下流処理モジュールとともに使用するための例示的なソフトウェア制御設計を示す。
図9B図9は、本明細書の実施形態による下流処理モジュールとともに使用するための例示的なソフトウェア制御設計を示す。
図10図10Aおよび10Bは、本発明の実施形態による下流処理モジュールの2つの図を示す。
【0008】
[発明を実施するための形態]
「a」または「an」という単語の使用は、特許請求の範囲および/または明細書において「含む」という用語とともに使用される場合、「1つ」を意味してもよいが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、および「1または1を超える」の意味とも一致してもよい。
【0009】
本出願全体を通して、「約」という用語は、値が、該値を決定するために使用される方法/デバイスについての誤差の固有の変動を含むことを示すために使用される。典型的には、この用語は、状況に応じて、およそ1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、もしくは20%、または1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、もしくは20%未満の変動を含むことを意味する。
【0010】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、代替物のみを指すように明示的に示されるかまたはその代替物が互いに排他的でない限り、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、代替物のみおよび「および/または」を指す定義を支持する。
【0011】
本明細書および特許請求の範囲で使用する場合、「含む(comprising)」(および含む(comprising)の任意の形態、例えば、「含む(comprise)」および「含む(comprises)」)、「有する(having)」(およびhavingの任意の形態、例えば、「有する(have)」および「有する(has)」)、「含む(including)」(および含む(including)の任意の形態、例えば、「含む(includes)」および「含む(include)」)、または「含む(containing)」(および含む(containing)の任意の形態、例えば、「含む(contains)」および「含む(contain)」)という文言は、包括的またはオープンエンドであり、追加の、記載されていない、要素または方法ステップを除外しない。本明細書で論じられる任意の実施形態は、本発明の任意の方法、システム、宿主細胞、発現ベクター、および/または組成物に関して実施され得ることが企図される。さらに、本発明の組成物、システム、細胞、および/または核酸は、本明細書に記載の方法のうちのいずれかを達成するために使用することができる。
【0012】
実施形態では、ウイルスベクターの自動産生方法が本明細書に提供される。本明細書に記載される自動化された方法は、閉鎖型自動化プロセスで適切に行われる。
【0013】
本明細書に記載の方法によって産生される「ウイルスベクター」は、好適には、治療目的または工業目的でインビトロ、インビボ、またはエクスビボで核酸分子を細胞に導入するために使用され得る産物ウイルスを指す。本明細書に記載される様々な方法によって産生されるウイルスベクターは、採取または単離され、最終的な所望の適用まで貯蔵され得る。
【0014】
図1は、本明細書に記載の自動産生プロセスの流れのブロック図を示す。
【0015】
好適には、本明細書に記載の方法は、人工ウイルス産生細胞を完全密閉式細胞工学システムに導入することを含む。本明細書で言及されるように、本方法で利用される「人工ウイルス産生細胞」は、ウイルスベクターの産生を可能にするヘルパー遺伝子または発現システムをコードする1つ以上の核酸分子を好適に含む細胞である。
【0016】
本明細書で言及されるように、「導入する」という文言は、人工ウイルス産生細胞を複数のチャンバのうちの1つに添加することを意味し得るか、または方法を開始する前に、カセット内に人工ウイルス産生細胞が存在することを示し得る。
【0017】
実施形態では、本明細書に記載される方法は、人工ウイルス産生細胞の供給、洗浄、および監視のうちの1つ以上のラウンドを複数回行うように構成される。これらの様々な行動は、任意の順序で行われ得、単独で行われ得るか、または別の行動と組み合わせて行われ得る。実施形態では、細胞の濃縮には、遠心分離、沈殿後の上清除去、または濾過が含まれる。好適には、最適化プロセスは、自己調整プロセスにおいて好適に遠心分離または濾過のパラメータを調整することをさらに含む。
【0018】
本明細書に記載の方法は、好適には、人工ウイルス産生細胞を、対象遺伝子をコードするベクターで形質導入して、形質導入ウイルス産生細胞を産生することをさらに含む。
【0019】
本明細書で言及されるように、「形質導入」または「形質導入する」とは、ベクターを含む外因性核酸分子を細胞に導入することを意味する。「形質導入」細胞は、細胞内に外因性核酸分子を含んでおり、細胞中の表現型変化を誘導する。形質導入核酸分子は、宿主細胞のゲノムDNAに組み込まれていてもよく、かつ/もしくは細胞によって一時的に、または染色体外で長期間維持されてもよい。外因性核酸分子または断片を発現する宿主細胞または生物は、「組換え」、「形質導入」、「トランスフェクション」、または「トランスジェニック」生物として参照される。いくつかの形質導入およびトランスフェクション技術が当該技術分野において一般的に既知である。例えば、Graham et al.,Virology,52:456(1973)、Sambrook et al.,Molecular Cloning,a laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratories,New York(1989)、Davis et al.,Basic Methods in Molecular Biology,Elsevier(1986)およびChu et al.,Gene 13:197(1981)を参照のこと。形質導入には、リポソーム系、脂質系、またはポリマー系などのトランスフェクション系を使用することが含まれ得、遺伝子ガン、エレクトロポレーションなどのような機械的トランスフェクションを使用することも含まれ得る。
【0020】
本明細書で使用される場合、「ベクター」または「発現ベクター」は、プラスミド、ファージ、ウイルス、またはコスミドなどのレプリコンであり、本明細書に記載の核酸分子が結合されて、細胞中で結合された核酸分子の複製および/または発現をもたらし得る。「ベクター」は、エピソーム(例えば、プラスミド)および非エピソームベクターを含む。「ベクター」という用語は、インビトロ、インビボ、またはエクスビボで核酸分子を細胞に導入するためのウイルス手段および非ウイルス手段の両方を含む。ベクターという用語は、合成ベクターを含んでもよい。ベクターは、トランスフェクション、形質導入、細胞融合、およびリポフェクションを含むが、これらに限定されない、周知の方法によって所望の宿主細胞に導入されてもよい。ベクターは、プロモータを含む様々な調節要素を含むことができる。
【0021】
「遺伝子」は、ポリペプチドをコードし、cDNAおよびゲノムDNA核酸分子を含むヌクレオチドのアセンブリを指す。「遺伝子」はまた、コード配列の前(5’非コード配列)および後(3’非コード配列)での調節配列として機能することができる核酸断片を指す。いくつかの実施形態では、遺伝子は、複数のコピーで組み込まれる。いくつかの実施形態では、遺伝子は、所定のコピー数で組み込まれる。
【0022】
本明細書で言及する場合、「対象遺伝子」または「GOI」という用語は、異種遺伝子を記載するために使用される。本明細書で言及する場合、「異種遺伝子」または「HG」という用語は、コード配列または対照配列等の核酸配列に関連する場合、通常は一緒に連結されない、および/または通常特定の細胞と関連付けられない核酸配列、例えば、遺伝子を示す。いくつかの実施形態では、異種遺伝子は、コード配列自体が天然では見出されない構築物(例えば、天然遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)である。対立遺伝子変異または天然に存在する変異事象は、本明細書で使用する場合、異種DNAを生じない。
【0023】
好適には、ウイルス産生細胞に形質導入される対象遺伝子は、治療対象遺伝子である。本明細書で使用される場合、「治療対象遺伝子」は、任意の機能的に関連するヌクレオチド配列を指す。したがって、本開示の治療対象遺伝子は、標的細胞ゲノムから欠損もしくは喪失しているタンパク質をコードするか、または所望の生物学的もしくは治療効果(例えば、抗ウイルス機能)を有する非天然タンパク質をコードする、任意の所望の遺伝子を含むことができるか、あるいは、配列は、アンチセンス機能またはリボザイム機能を有する分子に対応することができる。好適な治療対象遺伝子の代表的(非限定的)な例には、AIDS、がん、神経疾患、心血管疾患、高コレステロール血症等の障害を含む、炎症性疾患、自己免疫疾患、慢性疾患、および感染性疾患;様々な貧血、サラセミア、および血友病を含む、様々な血液障害;嚢胞性線維症、ゴーシェ病、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症、肺気腫等の遺伝的欠陥の治療に使用されるものが含まれる。がんおよびウイルス疾患のアンチセンス治療に有用ないくつかのアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、mRNAの翻訳開始部位(AUGコドン)周囲の配列に相補的な短いオリゴヌクレオチド)が、当該技術分野で説明されており、好適な治療対象遺伝子の例でもある。
【0024】
例示的な実施形態では、本明細書に記載の方法、ひいては治療対象遺伝子は、超稀少疾患への適用のためのウイルスベクターの産生に有用である。かかる疾患は、(1人もしくは数人の患者、または10人の患者、または100人の患者が治療を必要とする場合のように)大量のウイルスベクターを必要としない場合があるが、無菌性、再現性、およびプロセス制御は、かかる用途において極めて重要である。閉鎖型自動化システムを利用する本明細書に記載の方法により、所望レベルの産生の制御が可能となる。
【0025】
実施形態では、本方法は、形質導入ウイルス産生細胞を増殖させ、形質導入ウイルス産生細胞内でウイルスベクターを産生することをさらに含む。本明細書に記載されるように、形質導入ウイルス産生細胞を増殖する方法は、好適には、供給、洗浄、および監視のうちの少なくとも1つ以上を含む。形質導入ウイルス産生細胞の「増殖」とは、細胞が所定の所望の培養サイズに達するまで成長することを可能にする様々な方法を指す。所定の培養サイズにより、好適または所望の数のウイルスベクターの産生を可能にする十分な数の細胞が含まれてもよい。いくつかの実施形態では、ウイルス産生細胞の数は、約10個の細胞、約10個の細胞、約10個の細胞、約10個の細胞、約10個の細胞、または約1010個の細胞である。
【0026】
図1に示すように、形質導入104および増殖106は、完全密閉式細胞工学システム102内で適切に行われる。好適には、これらの完全密閉式細胞工学システムは、自動化されたシステムである。
【0027】
本明細書に記載されるように、「完全密閉式細胞工学システム」は、複数のチャンバを好適に含む閉鎖型システムを指し、本明細書に記載される様々な方法のステップの各々は、細胞工学システムの複数のチャンバのうちの同じまたは異なるチャンバ行われる。好適には、様々な細胞、ベクター、および細胞培養培地の各々は、方法を開始する前に、複数のチャンバのうちの異なるチャンバに含まれている。細胞工学システムは、細胞を成長させるための温度(例えば、約37℃)で維持される1つ以上のチャンバを好適に含み、複数のチャンバのうちの少なくとも1つは、冷蔵温度(例えば、約4~8℃)で維持される。「完全密閉式」とは、複数のチャンバが相互接続されていることを好適に指しており、これには、完全密閉式システムの清浄性および好適な無菌性を維持するために、様々なチューブまたは他の流体接続経路および接続を介することが含まれる。
【0028】
本明細書に記載されるように、実施形態では、提供される方法は、単一のターンキープラットフォームで複数の単位動作を統合するCOCOONプラットフォーム(Octane Biotech社(オンタリオ州キングストン))を利用する。効率的かつ効果的な自動化翻訳を提供するために、記載される方法は、複数の単位動作を組み合わせるアプリケーション固有/スポンサー固有の使い捨てカセットの概念を利用しており、これらはすべて、ウイルスベクター産物の中核的要件に焦点を当てている。例示的な完全密閉式細胞工学システムは、米国特許出願第2019/0169572号に記載されており、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に記載の方法において有用な例示的な完全密閉式細胞工学システム102が、図2に示される。図3は、本明細書の実施形態に記載される、ハイスループット配置でのウイルスベクターの産生に有用な例示的な完全密閉式細胞工学システム102を含む実験室空間を示している。実施形態では、閉鎖型自動化システムの各々が、別個の独自のウイルスベクターを産生することができる。
【0029】
実施形態では、本明細書に記載の形質導入および増殖は、完全密閉式細胞工学システム102のカセット202内で行われる(図2および図4を参照)。カセット202には、細胞培養培地の貯蔵のための低温チャンバと、ウイルスベクターの産生に関与するプロセスを行うための高温チャンバであって、高温チャンバが、熱バリアによって低温チャンバから分離され、高温チャンバが、細胞培養チャンバを含む、高温チャンバと、細胞培養チャンバに接続された1つ以上の流体経路であって、流体経路が、細胞培養チャンバ内の細胞を乱すことなく、細胞培養チャンバへの再循環、老廃物の除去、および均質なガス交換ならびに栄養素の分配を提供する、1つ以上の流体経路と、が含まれ得る。図4は、本明細書の実施形態に記載される、カセット202行われ得るウイルスベクター産生プロセスの要素の流れ図を示す。
【0030】
図5は、カセット202の様々な構成要素の流れ図を示す。図5は、細胞培養チャンバ510とサテライトボリューム(satellite volume)530との間の接続を示す概略図を示す。図5にはまた、種々のセンサ(例えば、pHセンサ550、溶存酸素センサ551)、ならびに試料採取/試料ポート552、および様々なバルブ(コントロールバルブ553、バイパスチェックバルブ554)、ならびに構成要素を接続するシリコーンベースのチューブ構成要素を好適に備える1つ以上の流体経路540の位置決めも図示される。本明細書に記載されるように、シリコーンベースのチューブ構成要素の使用は、チューブ構成要素を介した酸素供給を可能にし、細胞培養のためのガス移送および最適な酸素供給を容易にする。また、図5には、ポンプチューブ557およびバッグ/バルブモジュール558とともに、カセットの流路における1つ以上の疎水性フィルタ555または親水性フィルタ556の使用が示されている。図5はまた、人工ウイルス産生細胞(またはパッケージング細胞)がカセット202に導入され得る入力部580、ならびに増殖産生細胞株(または増殖パッケージング細胞)が回収され、下流処理モジュール108に移送され得る出力部590の例示的な位置を示す。
【0031】
図1に示すように、増殖後、増殖産生細胞株(または増殖パッキング細胞株)は、下流処理モジュール108に移送される。本明細書で使用される場合、「移送される」とは、好適には、完全密閉式細胞工学システム102と下流処理モジュール108との間の直接接続を指し、例えば、閉鎖システムおよびプロセスを維持するようにシステム102の出力部590を下流処理モジュール108の入力部に接続することによるものである。本明細書に記載されるように、自動産生方法のすべての要素(形質導入、増殖、単離から精製まで)は、閉鎖型自動化プロセスで好適に行われる。「閉鎖型」プロセスという用語は、好適には、無菌プロセスを維持するように、下流処理モジュール108への直接接続を伴う、(所望されない限り)外部環境との相互作用を可能としない、カートリッジまたは他の含有システムを使用することを指す。「自動化」プロセス、またはプロセスの「自動化」は、本明細書に記載の1つ以上のプロセスの制御を指しており、これには、定義された、または事前に設定された状況または所望の特性に基づいてパラメータを監視および変更するためのマイクロプロセッサが含まれる。
【0032】
好適には、下流処理モジュール108は、ウイルスベクターの単離(または分離すること)およびウイルスベクターの精製(または精製すること)などのプロセスを行う。図1に示すように、下流処理モジュール108は、好適には、コンパクトで、自動化され、容易に構成されて変更される処理モジュールである。下流処理モジュール108は、好適に、電子制御および動作、ならびに機械的構成要素および感知を含む。適切には、電子制御および機械的構成要素は、各ウイルス産生プロセスで容易に交換する必要がないという点で耐久性のある構成要素である。下流処理モジュール108はまた、各ウイルス産生後(または少なくとも産生される異なるタイプのウイルスの間)に交換可能である(かつ適切に交換される)使い捨てカセットおよび試薬を好適に含む。
【0033】
図6は、下流処理モジュール108内で行われる好適なアクティビティの例示的なブロック図を示す。示されるように、実施形態では、増殖細胞産物(試料)は、最初に一次回収に供されて、細胞培養液から細胞を取り出す。次いで、好適には機械的手段(例えば、ビーズ、振盪等)または化学的手段(例えば、溶解緩衝液、洗剤等)によって、細胞を好適に溶解して産物ウイルスベクターを露出させる。次いで、キャプチャステップを使用してウイルスベクターを単離する。この単離は、好適には、産物(ウイルスベクター)がマトリックス内に残り、不純物がフロースルーする結合/溶出カラムステップである。好適なカラム条件および媒体は、当該技術分野で既知である。レトロネクチンまたはフィブロネクチンコーティングされた表面も使用することができる。このキャプチャステップは、ウイルスの総量が収集されるまで、必要な回数だけ繰り返すことができる。この単離には、沈降カラム、ならびにクロマトグラフィーカラムならびに機能化表面を含むことができるセファロースカラムを含む様々なアフィニティカラムの使用も含まれ得る。最初のキャプチャに続いて、溶液を5~約7まで好適に滴定する。
【0034】
次に、例えば、フロースルーモードでの膜ポリッシングステップ等のポリッシングステップを行い、ウイルスベクターを精製する。このようなポリッシングにおいて、不純物は膜に吸収され、所望の産物(ウイルスベクター)がフロースルーする。例示的なポリッシングステップは、SARTOBIND(登録商標)Qイオン交換体(SARTORIUS(登録商標)、Gottingen,Germany)等の強力なイオン交換体を利用する。このポリッシングステップは、望ましくないウイルス、DNA、宿主細胞タンパク質、浸出プロテインA、およびエンドトキシンを除去する。ポリッシングステップを実施するための例示的な緩衝液および条件は、当該技術分野で既知である。
【0035】
ポリッシング後、pH滴定および保持ステップを好適に行う。これは、pHをpH6またはpH5未満まで低下させ、所望の時間保持し、次いでpHを約pH7まで滴定することを好適に含む。該処理は、所望の濃度を達成するためにウイルス粒子を濃縮またはダイアフィルトレーションすることをさらに好適に含む。
【0036】
濃縮後、ウイルスベクター産物を最終産物として製剤化することができる。これには、様々な賦形剤(例えば、塩、緩衝液、浸透圧調整剤)、ならびに異なる媒体等の添加が含まれ得る。次いで、ウイルスベクター産物は、それが患者に投与されるか、パッケージング/出荷されるもしくは貯蔵されることができるまで、低温(例えば、約4~8℃)で適切に保持される。
【0037】
下流処理モジュールの様々な要素の間では、細菌汚染から保護し、沈殿物を除去するために、インライン0.2ミクロンフィルタが好適に使用される。
【0038】
図7は、本明細書に記載の下流処理モジュール108の例示的な流れ図および例示的な構成要素を示す。示されるように、下流処理モジュールは、実行ごとに、または異なるウイルスベクターシステムのために交換することができる様々な緩衝液および試薬、ならびにカラム、ならびに交換されない構成要素、例えば、ポンプ、バルブ、制御システムなどを好適に含む。
【0039】
図8Aは、例示的な下流処理モジュール108を示す。図8B~8Dは、切り替え可能な異なる緩衝液およびカラムを含む使い捨て/交換可能要素を示す。
【0040】
図9は、下流処理モジュール108のための例示的なコンピュータ制御セットアップを示し、様々なバルブ、ポンプなどを制御するためのインターフェース、ならびにシステムの監視を示す。pH、導電率、UV、温度、圧力等の監視可能な様々な要素を示す模擬出力も示される。
【0041】
図10Aおよび10Bに示されるように、下流処理モジュール108は、ユーザまたは特定の試料を特定のモジュールと相関させるための無線周波数認識(RFID)リーダ等の構成要素を含むことができる。圧力センサ、導電率センサ、pHセンサ、UVセンサ、蠕動ポンプ、サーボバルブも示されている。
【0042】
図1に例示されるように、下流処理モジュール108に続いて、ウイルスベクター産物は、ウイルス力価、活性レベル、汚染等の測定を含むさらなる分析110に渡すことができる。
【0043】
実施形態では、閉鎖型自動化プロセスは、自己調整プロセスである。すなわち、閉鎖型自動化プロセスは、外部(ヒト)ユーザからの入力を必要とせず、様々なコンピュータプログラムおよび条件を介して、自動化プロセスを最適化するために細胞培養物または他の特性に対する必要な修正を決定し得るプロセスである。実施形態では、閉鎖型自動化プロセスは、温度センサ、pHセンサ、グルコースセンサ、ラクトースセンサ、酸素センサ、二酸化炭素センサ、および光学密度センサのうちの1つ以上で監視することを含む。本明細書に記載されるように、完全密閉式細胞工学システムにおけるこれらの様々なセンサの使用は、システム内の様々な時間および場所で行われ協調しながら協働して、最適化を実現している。例えば、閉鎖型自動化プロセスは、この監視に基づいて、ウイルス産生細胞培養物の温度、pHレベル、グルコースレベル、ラクトースレベル、酸素レベル、二酸化炭素レベル、および光学密度のうちの1つ以上を調節(例えば、上昇または低下)することができる。
【0044】
自動化プロセスはまた、例えば、総細胞数、細胞の供給源、細胞の密度、細胞の年齢などを含む、出発細胞集団の固有の特徴に基づくことができる。これらの出発細胞集団特性は、自動化された方法を開始する前にコンピュータ制御システムに入力することができ、その上でシステムは、方法最適化するために、例えば、ラクトース、酸素および二酸化炭素濃度、流量、インキュベーション時間、pHなどの様々な初期修正を行う。代替的に、細胞プロセスの監視により、出発集団からの細胞培養配列の進行の自動特徴付けが可能となり最適化された最終細胞培養特性の条件をケースバイケースで調整することができる。
【0045】
さらなる実施形態では、細胞工学システムは、様々な方法プロセス中に、栄養素、老廃物、放出サイトカイン、および/または溶解ガスを再循環させる。この再循環は、所望のウイルスベクターの産生を補助する。ウイルスベクターの産生を最適化するための他の機構として、細胞に提供される培地の流量を修正および制御することが挙げられる。細胞が成長し始めるにつれて、提供される培地の循環速度が増加し、ガス交換が改善され、条件に応じて酸素および二酸化炭素が細胞培養物に出入りできるようになる。
【0046】
追加の実施形態では、本明細書に記載の方法およびシステムは、一過性トランスフェクションシステムとともに使用することもできる。そのような実施形態では、ウイルスベクターの自動産生の方法は、完全密閉式細胞工学システムにパッケージング細胞を導入することと、ウイルスヘルパー遺伝子、ウイルスパッキング遺伝子、および対象遺伝子をコードする1つ以上のベクターでパッケージング細胞を形質導入して、形質導入細胞を産生することと、形質導入細胞を増殖させ、形質導入細胞内で前記ウイルスベクターを産生することと、増殖細胞を下流処理モジュールに移送することと、ウイルスベクターを単離することと、ウイルスベクターを精製することと、を含み、方法の要素が、閉鎖型自動化プロセスで行われる。
【0047】
一過性トランスフェクションを利用する実施形態では、パッケージング細胞を利用することができる。本明細書で使用される場合、「パッケージング細胞」は、1つ以上のウイルスヘルパーおよび/またはパッケージング遺伝子がそのゲノムに組み込まれていないが、代わりにこれらの遺伝子がトランスフェクションを介して追加され、一過性にトランスフェクトされた細胞を産生する細胞を指す。
【0048】
実施形態では、自動化された方法において利用される人工ウイルス産生細胞またはパッケージング細胞は、哺乳動物細胞である。本明細書で使用する場合、「哺乳動物細胞」という用語は、例えば、ヒト細胞、マウス細胞、ラット細胞、サル細胞、ハムスター細胞等の、哺乳動物目の任意のメンバー由来の細胞を含む。いくつかの実施形態では、細胞は、マウス細胞、ヒト細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、CHOK1細胞、CHO-DXB11細胞、CHO-DG44細胞、すべてのバリアントを含むCHOK1SV細胞(例えば、POTELLIGENT(登録商標)、Lonza,Slough,UK)、すべてのバリアントを含むCHOK1SV GS-KO(グルタミン合成酵素ノックアウト)細胞(例えば、XCEED(商標)、Lonza,Slough,UK)である。例示的なヒト細胞としては、HEK293、HEK293T、HeLa細胞、またはHT1080細胞などのヒト胚腎臓(HEK)細胞が挙げられる。
【0049】
哺乳動物細胞には、接着培養物または懸濁培養物のいずれかであり得る哺乳動物細胞培養物が含まれる。接着培養物は、基質表面、例えば、プラスチック表面、プレート、皿、または他の好適な細胞培養成長プラットフォーム上で成長する細胞であって、接着依存性であり得る細胞を指す。懸濁培養物は、例えば、気体および栄養素交換のための大きな表面積を可能にする培養フラスコまたは大きな懸濁槽内で維持することができる細胞を指す。懸濁細胞培養物は、適切な混合を提供するために、撹拌または撹拌機構をしばしば利用する。細胞を懸濁液中で維持するための培地および条件は、当該技術分野で一般的に既知である。例示的な懸濁細胞培養物には、ヒトHEK293クローン細胞が含まれる。
【0050】
実施形態では、本明細書で提供するウイルスベクターの産生方法により、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが産生される。
【0051】
本明細書で使用される場合、「アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター」という用語は、パルボウイルス科およびデペンドパルボウイルス属の一本鎖DNAを含有する小さなサイズの複製欠損性非エンベロープウイルスを指す。これまでに10種を超えるアデノ随伴ウイルス血清型が同定されており、血清型AAV2が最もよく特性評価されている。AAV血清型の他の非限定的な例は、ANC80、AAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、およびAAV11である。これらの血清型に加えて、AAV偽型が開発されている。AAV偽型は、第1の血清型のカプシドおよび第2の血清型のゲノムを含む(例えば、擬型AAV2/5は、血清型AAV2のゲノムおよびAAV5のカプシドを有するAAVに対応する)。
【0052】
本明細書で言及する場合、「アデノウイルス」という用語は、アデノウイルス科の二本鎖DNAを含む二十面体ヌクレオカプシドを有する非エンベロープウイルスを指す。50種を超えるアデノウイルスサブタイプが、ヒトから単離されており、多くの追加のサブタイプが、他の哺乳動物および鳥類から単離されている。例えば、Ishibashi et al.,“Adenoviruses of animals,”The Adenoviruses,Ginsberg,ed.,Plenum Press,New York,N.Y.,pp.497-562(1984)、Strauss,“Adenovirus infections in humans,”The Adenoviruses,Ginsberg,ed.,Plenum Press,New York,N.Y.,pp.451-596(1984)を参照のこと。これらのサブタイプは、アデノウイルス科に属し、該アデノウイルス科は、現在、2つの属、すなわち、マストアデノウイルスおよびアビアデノウイルスに分けられる。すべてのアデノウイルスは、形態学的および構造的に類似している。しかしながら、ヒトでは、アデノウイルスは、異なる免疫学的特性を示し、したがって、血清型に分類される。アデノウイルスの2つのヒト血清型、すなわちAV2およびAV5は、精力的に研究され、アデノウイルスに関する一般的な情報の大部分を提供している。
【0053】
実施形態では、本明細書で提供するウイルスベクターの産生方法により、レンチウイルスベクターが産生される。
【0054】
本明細書で言及される場合、「レンチウイルスベクター」という用語は、レトロウイルス科に属する2つの一本鎖RNA分子を含有する小さな球形を有するエンベロープウイルスを指す。レンチウイルスは、gag、pol、およびenv遺伝子を含有し、2つの調節遺伝子、すなわちtatおよびrevを有することによって、他のレトロウイルスファミリーメンバーとさらに区別される。レンチウイルスベクターは、培養細胞および動物組織における対象遺伝子の発現を誘導するための分子生物学における有用なツールとして、当該技術分野において広く知られている。
【0055】
実施形態では、本明細書で提供するウイルスベクターの産生方法により、レトロウイルスベクターが産生される。
【0056】
本明細書で言及される場合、「レトロウイルス」という用語は、2つの一本鎖RNA分子を含有する小さな球形を有するエンベロープウイルスであるレトロウイルス科の1つ以上のメンバーを指す。レトロウイルスは、それらのRNA分子をDNAに変換し、次いで、感染細胞の宿主ゲノムに組み込まれる。レトロウイルスベースのベクターは、がん治療のための遺伝子療法の分野で周知であり、免疫細胞は、がん細胞を標的化して破壊するように再プログラムされる。
【0057】
実施形態では、本明細書で提供するウイルスベクターの産生方法により、バキュロウイルスベクターが産生される。
【0058】
本明細書で言及される場合、「バキュロウイルス」という用語は、環状dsDNAを含有する棒状ウイルスであり、バキュロウイルス科の1つ以上のメンバーを指す。これは、主に昆虫幼虫内に感染し、複製することが知られている。バキュロウイルス発現ベクターシステムは、十分に確立されており、真核細胞におけるタンパク質の産生に非常に有用である(Summers et al.,2006)。
【0059】
追加の実施形態では、本方法は、ウイルス産生細胞として、昆虫細胞を好適に利用する。本明細書で言及される場合、「昆虫細胞」は、好適には、タンパク質および/またはバキュロウイルスベクター産生の発現および製造に使用される鱗翅目のメンバーなどの昆虫に由来する細胞を指すが、これらに限定されない。
【0060】
実施形態では、本方法は、Sf9細胞を好適に利用する。本明細書で言及される場合、「Sf9細胞」は、タンパク質および/またはバキュロウイルスベクター産生の発現および製造に一般的に使用される、ワームスポドプテラフルギペルダ(Spodoptera frugiperda)の蛹卵巣組織に由来する昆虫細胞株である。
【0061】
実施形態では、本明細書に記載の方法によって産生されるウイルスベクターの量は、少なくとも約1010個のウイルスベクターである。例えば、本明細書に記載の方法によって産生されるウイルスベクターの量は、少なくとも約1010個のウイルスベクター、または少なくとも約1011個のウイルスベクター、または少なくとも約1012個のウイルスベクター、または少なくとも約1013個のウイルスベクター、または少なくとも約1014個のウイルスベクター、または約1010~1014個のウイルスベクター、または約1010~1013個のウイルスベクター、または約1010~1012個のウイルスベクター、または約1010個、約1011個、約1012個、または約1013個のウイルスベクターである。
【0062】
実施形態では、本明細書に記載の方法は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスベクターの産生のためのものである。かかるプロセスは、好適には、人工哺乳動物AAVウイルス産生物を完全密閉式細胞工学システムに導入することを含む。本明細書で使用される場合、「ウイルス産生細胞」は、そのゲノムに組み込まれた、またはより多くのウイルスヘルパーもしくはウイルスパッケージング遺伝子を含む細胞を指す。AAVウイルス産生細胞は、そのゲノムに組み込まれた、第1の抑制解除性(derepressible)プロモータの制御下でE2AおよびE4Orf6遺伝子を含むアデノウイルスヘルパー遺伝子を好適に含む。AAVウイルスベクターを産生する方法で好適に利用される例示的な人工哺乳動物AAVウイルス産生細胞は、米国仮特許出願第62/783,589号、および同第62/866,092号に詳細に記載されており、これらは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0063】
本明細書に記載されるように、本方法で利用される哺乳動物AAVウイルス産生細胞は、ウイルスヘルパー遺伝子をコードする核酸分子を好適に含む。ウイルスヘルパー遺伝子には、様々なアデノウイルス遺伝子、ヘルペスウイルス遺伝子、およびボカウイルス遺伝子が含まれる(例えば、Guido et al.,“Human bocavirus:Current knowledge and future challenges,”World J.Gateroenterol 22:8684-8697(その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。例示的な実施形態では、ウイルスヘルパー遺伝子は、アデノウイルスヘルパー遺伝子である。本明細書で言及する場合、「アデノウイルスヘルパー遺伝子」または「AVヘルパー遺伝子」という用語は、アデノ随伴ウイルスの複製およびパッケージングに寄与する、1つ以上のアデノウイルスサブタイプまたは血清型に由来する1つ以上の核酸配列から構成される遺伝子を指す。いくつかの実施形態では、アデノウイルスヘルパー遺伝子は、E1A、E1B、E2A、E4(E4Orf6を含む)、VA、もしくはそれらの組み合わせ、または任意の他のアデノウイルスヘルパー遺伝子である。例示的な実施形態では、アデノウイルスヘルパー遺伝子は、E2A遺伝子およびE4Orf6遺伝子の両方を含む。好適には、内部リボソーム侵入部位(IRES)要素は、E2A遺伝子とE4Orf6遺伝子との間に含まれる。IRES要素は、単一発現カセットにおけるE2A遺伝子の後にE4Orf6遺伝子の翻訳を開始し、構築物に安定性を提供する。このようなウイルスヘルパー遺伝子は、一過性トランスフェクションを使用した導入によってパッケージング細胞に追加することもできる。
【0064】
さらなる実施形態では、AAVウイルスベクターの自動産生方法は、プロモータの制御下でRepおよびCap遺伝子を含むAAV遺伝子を含有する人工哺乳動物ウイルス産生細胞を含む。これらのAAV遺伝子は、ウイルスパッケージング細胞に一過性にトランスフェクトすることもできる。
【0065】
本明細書で言及する場合、「Rep」遺伝子という用語は、ウイルスゲノムを複製するために一緒に必要とされるウイルスの複製タンパク質をコードする当該技術分野で認識されているAAVゲノム領域、またはその機能的相同体、例えば、AAV-2DNA複製を媒介することも既知であるヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)rep遺伝子を指す。したがって、repコード領域は、AAV Rep78およびRep68(「長い形態のRep」)ならびにRep52およびRep40(「短い形態のRep」)をコードする遺伝子、またはそれらの機能的相同体を含むことができる。repコード領域は、本明細書中で使用する場合、本明細書に記載のAAV血清型等の任意のウイルス血清型に由来し得る。上記領域は、野生型遺伝子のすべてを含む必要はないが、存在するrep遺伝子が好適な標的細胞で発現された場合に十分な組み込み機能を提供する限り、(例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失、または置換によって)改変されていてもよい。例えば、Muzyczka,N.,Current Topics in Microbiol.and Immunol.158:97-129(1992)、およびKotin,R.M.,Human Gene Therapy 5:793-801(1994)を参照のこと。
【0066】
本明細書で言及する場合、「Cap」遺伝子という用語は、ウイルスのカプシドタンパク質をコードする、当該技術分野で認識されているAAVゲノム領域を指す。これらのカプシドタンパク質の例示的(非限定的)な例は、AAVカプシドタンパク質VP1、VP2、およびVP3である。本開示で使用されるCap遺伝子は、任意のAAV血清型またはAAV血清型の組み合わせに由来し得る。
【0067】
さらなる実施形態では、本方法は、好適には、形質導入されたものを増殖させ、AAVウイルスベクターを産生し、その後、ウイルスベクターを単離することを含む。
【0068】
実施形態では、本方法のステップは、閉鎖型自動化プロセスで行われる。
【0069】
実施形態では、産生方法において利用される人工哺乳動物AAVウイルス産生細胞を含む細胞は、いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞培養物であり、好適には懸濁培養物である。例示的な哺乳動物細胞としては、CHO細胞またはHEK細胞を含むヒト細胞が挙げられる。
【0070】
実施形態では、AAVウイルスベクターの自動産生方法は、少なくとも約1010個のウイルスベクターを産生する。例えば、本明細書に記載の方法によって産生されるAAVウイルスベクターの量は、少なくとも約1010個のAAVウイルスベクター、または少なくとも約1011個のAAVウイルスベクター、または少なくとも約1012個のAAVウイルスベクター、または少なくとも約1013個のAAVウイルスベクター、または少なくとも約1014個のAAVウイルスベクター、または約1010~1014個のAAVウイルスベクター、または約1010~1013個のAAVウイルスベクター、または約1010~1012個のAAVウイルスベクター、または約1010個、約1011個、約1012個、または約1013個のAAVウイルスベクターである。
【0071】
追加の例示的な実施形態では、人工哺乳動物レンチウイルスベクター産生細胞を完全密閉式細胞工学システムに導入することを含む、レンチウイルスベクターの自動産生方法が開示される。パッケージング細胞はまた、レンチウイルスベクターを産生するために使用することもできる。レンチウイルスを産生する例示的な方法は、2019年8月23日に出願された米国仮特許出願第62/890,904号、および2019年12月18日に出願された同第62/949,848号に記載されており、これらのそれぞれの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0072】
本明細書で使用される場合、「レンチウイルスベクター産生細胞」は、そのゲノムに組み込まれ、レンチウイルスベクターを産生するために必要な要素を含有する細胞を指す。これらの要素は、パッケージング細胞に導入して、レンチウイルスベクターを産生することもできる。
【0073】
実施形態では、本方法は、第1のプロモータの制御下のビリオンタンパク質(REV)遺伝子の発現のレンチウイルス調節因子、第2のプロモータの制御下のレンチウイルスエンベロープ遺伝子、ならびに第3のプロモータの制御下の、レンチウイルス群特異抗原(GAG)遺伝子およびレンチウイルスポリメラーゼ(POL)遺伝子の両方をそのゲノムに組み込んで含むレンチウイルスベクター産生細胞を利用する。好適な実施形態では、核酸配列は、トランスポゾン特異的逆位末端反復(ITR)の組換えから生じる配列によって5’末端および3’末端の両方に隣接している。
【0074】
本明細書に開示されるように、ビリオンタンパク質(REV)の発現のレンチウイルス調節因子は、後期遺伝子発現を促進するRNA結合タンパク質である。核から細胞質へのウイルス構造タンパク質をコードする、非スプライシングまたは単一スプライシングmRNA輸送にも重要である。
【0075】
レンチウイルスエンベロープ(ENV)遺伝子は、好適には、水疱性口内炎糖タンパク質(VSV-G)遺伝子であり、細胞プロテアーゼによって表面(SU)エンベロープ糖タンパク質gp120および膜貫通(TM)糖タンパク質gp41に切断されるポリタンパク質前駆体をコードする。
【0076】
GAGは、非スプライシングmRNAから翻訳されたポリタンパク質をコードし、その後、ウイルスプロテアーゼ(PR)によってマトリックスタンパク質、カプシド、およびヌクレオカプシドタンパク質に切断される。レンチウイルスポリメラーゼ(POL)は、GAG mRNA翻訳中のリボソームフレームシフトの結果としてGAG-POLポリタンパク質として発現され、酵素タンパク質の逆転写酵素、プロテアーゼ、およびインテグラーゼをコードする。これら3つのタンパク質は、ビリオン内のウイルスゲノムに関連付けられている。好適には、GAG遺伝子はHIV GAG遺伝子であり、POL遺伝子はHIV POL遺伝子である。
【0077】
好適な実施形態では、発現カセットは、5’末端および3’末端の両方でトランスポゾン特異的逆位末端反復(ITR)に隣接している。
【0078】
レンチウイルスベクター産生細胞で使用するための例示的なプロモータは、当該技術分野において既知であり、抑制解除プロモータを含んでいる。好適には、発現カセットは、第1、第2、および第3の抑制解除プロモータの抑制要素をさらにコードする。実施形態では、抑制解除プロモータは、機能的プロモータおよびテトラサイクリンオペレータ配列(TetO)を含み、抑制要素は、本明細書に記載されるように、テトラサイクリン抑制タンパク質である。
【0079】
さらなる実施形態では、レンチウイルスベクターを産生する方法は、対象遺伝子をコードするベクターで哺乳動物レンチウイルスベクター産生細胞を形質導入することを含む。実施形態では、対象遺伝子は、治療対象遺伝子である。
【0080】
さらなる実施形態では、本方法は、レンチウイルスベクター産生細胞内の第1、第2、および第3のプロモータの活性化および形質導入ウイルス産生細胞の増殖を含む。
【0081】
さらなる実施形態では、本方法は、産生されたレンチウイルスベクターを好適に単離することを含む。単離産生されたウイルスベクターの方法が本明細書に記載されている。
【0082】
例示的な実施形態では、本方法は、閉鎖型自動化プロセスで行われる。
【0083】
本明細書に記載されるように、自動化された方法は、好適には、哺乳動物細胞を利用するものであり、哺乳動物細胞は、哺乳動物細胞培養物であり、実施形態では、懸濁培養物である。例示的な細胞には、HEK293またはHEK293T細胞などのヒト細胞が含まれる。
【0084】
実施形態では、レンチウイルスウイルスベクターの自動産生方法は、少なくとも約1010個のウイルスベクターを産生する。例えば、本明細書に記載の方法によって産生されるレンチウイルスベクターの量は、少なくとも約1010個のレンチウイルスベクター、または少なくとも約1011個のレンチウイルスベクター、または少なくとも約1012個のレンチウイルスベクター、または少なくとも約1013個のレンチウイルスベクター、または少なくとも約1014個のレンチウイルスベクター、または約1010~1014個のレンチウイルスベクター、または約1010~1013個のレンチウイルスベクター、または約1010~1012個のレンチウイルスベクター、または約1010個、約1011個、約1012個、または約1013個のレンチウイルスベクターである。
【0085】
実施形態では、本方法のステップは、閉鎖型自動化プロセスで行われ、好適には、温度センサ、pHセンサ、グルコースセンサ、ラクトースセンサ、酸素センサ、二酸化炭素センサ、および光学密度センサのうちの1つ以上で監視することと、温度、pHレベル、グルコースレベル、ラクトースレベル、酸素レベル、二酸化炭素レベル、および光学密度のうちの1つ以上を自動的に調整することと、を含む。
【0086】
本明細書では、本明細書に記載の様々な方法に従って産生されるAAVまたはレンチウイルスベクターを用いて、哺乳動物対象、好適にはヒト対象を治療する方法も提供される。好適には、本方法は、治療対象遺伝子を含む、対象遺伝子を有するヒト対象を治療するために使用される。ヒト対象への投与は、例えば、吸入、注射、または静脈内投与、ならびに当該技術分野で既知の他の投与方法を含むことができる。
【0087】
追加の例示的な実施形態
実施形態1は、ウイルスベクターの自動産生の方法であって、完全密閉式細胞工学システムに人工ウイルス産生細胞を導入することと、対象遺伝子をコードするベクターで人工ウイルス産生細胞を形質導入して、形質導入ウイルス産生細胞を産生することと、形質導入ウイルス産生細胞を増殖させ、形質導入ウイルス産生細胞内でウイルスベクターを産生することと、増殖産生細胞を下流処理モジュールに移送することと、ウイルスベクターを単離することと、ウイルスベクターを精製することと、を含み、上記要素が、閉鎖型自動化プロセスで行われる、方法である。
実施形態2は、人工ウイルス産生細胞が、哺乳動物細胞である、実施形態1に記載の方法を含む。
実施形態3は、哺乳動物細胞が、哺乳動物細胞培養物である、実施形態2に記載の方法を含む。
実施形態4は、哺乳動物細胞培養物が、懸濁培養物である、実施形態3に記載の方法を含む。
実施形態5は、ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、実施形態1~4のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態6は、ウイルスベクターが、レンチウイルスベクターである、実施形態1~4のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態7は、ウイルスベクターが、レトロウイルスベクターである、実施形態1~4のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態8は、ウイルスベクターが、バキュロウイルスベクターである、実施形態1~4のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態9は、哺乳動物細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、実施形態2~8のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態10は、哺乳動物細胞が、ヒト細胞である、実施形態2~8のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態11は、ヒト細胞が、ヒト胚腎臓(HEK)細胞である、実施形態10に記載の方法を含む。
実施形態12は、ヒト細胞が、HEK293T細胞である、実施形態10に記載の方法を含む。
実施形態13は、人工産生細胞が、昆虫細胞である、実施形態1に記載の方法を含む。
実施形態14は、人工産生細胞が、Sf9細胞である、実施形態1に記載の方法を含む。
実施形態15は、産生されたウイルスベクターの量が、少なくとも約1010個のウイルスベクターである、実施形態1に記載の方法を含む。
実施形態16は、閉鎖型自動化プロセスが、温度センサ、pHセンサ、グルコースセンサ、ラクトースセンサ、酸素センサ、二酸化炭素センサ、および光学密度センサのうちの1つ以上で監視することと、温度、pHレベル、グルコースレベル、ラクトースレベル、酸素レベル、二酸化炭素レベル、および光学密度のうちの1つ以上を自動的に調整することと、を含む、実施形態1~15のいずれか一項に記載の方法を含む。
実施形態17は、形質導入することが、ウイルス感染、エレクトロポレーション、リポソームトランスフェクション、または膜破壊を含む、実施形態1~16のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態18は、単離することが、増殖産生細胞を溶出カラムに通すことを含む、実施形態1~17のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態19は、精製することが、膜ポリッシングを含む、実施形態1~18のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態20は、ウイルスベクターを製剤化することをさらに含む、実施形態1~19のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態21は、ウイルスベクターの自動産生の方法であって、完全密閉式細胞工学システムにパッケージング細胞を導入することと、ウイルスヘルパー遺伝子、ウイルスパッキング遺伝子、および対象遺伝子をコードする1つ以上のベクターでパッケージング細胞を形質導入して、形質導入細胞を産生することと、形質導入細胞を増殖させ、形質導入細胞内でウイルスベクターを産生することと、増殖細胞を下流処理モジュールに移送することと、ウイルスベクターを単離することと、ウイルスベクターを精製することと、を含み、上記要素が、閉鎖型自動化プロセスで行われる、方法である。
実施形態22は、パッケージング細胞が、哺乳動物細胞である、実施形態21に記載の方法を含む。
実施形態23は、哺乳動物細胞が、哺乳動物細胞培養物である、実施形態22に記載の方法を含む。
実施形態24は、哺乳動物細胞培養物が、懸濁培養物である、実施形態23に記載の方法を含む。
実施形態25は、ウイルスベクターが、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、実施形態21~24のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態26は、ウイルスベクターが、レンチウイルスベクターである、実施形態21~24のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態27は、ウイルスベクターが、レトロウイルスベクターである、実施形態21~24のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態28は、ウイルスベクターが、バキュロウイルスベクターである、実施形態21~24のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態29は、哺乳動物細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、実施形態22~28のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態30は、哺乳動物細胞が、ヒト細胞である、実施形態22~28のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態31は、ヒト細胞が、ヒト胚腎臓(HEK)細胞である、実施形態30に記載の方法を含む。
実施形態32は、ヒト細胞が、HEK293T細胞である、実施形態30に記載の方法を含む。
実施形態33は、パッケージング細胞が、昆虫細胞である、実施形態21に記載の方法を含む。
実施形態34は、パッケージング細胞が、Sf9細胞である、実施形態21に記載の方法を含む。
実施形態35は、産生されたウイルスベクターの量が、少なくとも約1010個のウイルスベクターである、実施形態21に記載の方法を含む。
実施形態36は、閉鎖型自動化プロセスが、温度センサ、pHセンサ、グルコースセンサ、ラクトースセンサ、酸素センサ、二酸化炭素センサ、および光学密度センサのうちの1つ以上で監視することと、温度、pHレベル、グルコースレベル、ラクトースレベル、酸素レベル、二酸化炭素レベル、および光学密度のうちの1つ以上を自動的に調整することと、を含む、実施形態21~35のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態37は、形質導入することが、ウイルス感染、エレクトロポレーション、リポソームトランスフェクション、または膜破壊を含む、実施形態21~36のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態38は、単離することが、増殖産生細胞を溶出カラムに通すことを含む、実施形態21~37のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態39は、精製することが、膜ポリッシングを含む、実施形態21~38のいずれかに記載の方法を含む。
実施形態40は、ウイルスベクターを製剤化することをさらに含む、実施形態21~39のいずれかに記載の方法を含む。
【0088】
本明細書では特定の実施形態を例示および記載しているが、特許請求の範囲は、記載および図示される部分の特定の形態またはアレンジメントに限定されるべきではないことが理解されるべきである。本明細書では、例示的な実施形態が開示され、特定の用語が用いられるが、それらは、限定の目的ではなく、一般的かつ説明的な意味でのみ使用される。上記の教示に照らして、実施形態の修正および変形が可能である。したがって、実施形態は、具体的に記載される以外の方法で実施され得ると理解されるべきである。
【0089】
本明細書中に言及されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、各個々の刊行物、特許、または特許出願が参照により組み込まれると具体的かつ個別に示されるのと同程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
【国際調査報告】