(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-22
(54)【発明の名称】人工歯要素の内側に少なくとも1つの境界面を画定するための方法
(51)【国際特許分類】
A61C 13/36 20060101AFI20230215BHJP
【FI】
A61C13/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535209
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(85)【翻訳文提出日】2022-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2020084370
(87)【国際公開番号】W WO2021122013
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509207014
【氏名又は名称】ビタ ツァーンファブリク ハー.ラウター ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー
【氏名又は名称原語表記】VITA ZAHNFABRIK H.RAUTER GMBH & CO.KG
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】キルステン,アルミン
(72)【発明者】
【氏名】ファーレ,アニカ
(57)【要約】
本発明は、人工歯要素の内部に少なくとも1つの境界面(16)を画定するための方法であって、少なくとも、歯要素10を好ましくは解剖学的に規定された方向の用語に関連する座標系で座標系(図示せず)と位置合わせするステップと、歯面上に第1の境界曲線(12)を画定するステップと、第1の境界曲線に関して、切歯側/咬合側に位置する歯面(14)を決定するステップと、少なくとも1つの前記境界面(16)、特に第1の境界面(16)を生成するために、前記歯面(14)を表面法線の方向に異なる量だけ内側に変位させるステップと、を含み、異なる変位の量は可変設計パラメータに基づく方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工歯要素のデジタル歯データモデルの内部に少なくとも1つの境界面(16)を画定するための方法であって、前記方法は、少なくとも、
前記人工歯要素の歯面上に第1の境界曲線(12)を画定するステップと、
前記第1の境界曲線に関して、切歯側/咬合側に位置する歯面(14)を決定するステップと、
少なくとも1つの前記境界面(16)、特に第1の境界面(16)を生成するために、前記歯面(14)を表面法線の方向に異なる量だけ内側に変位させるステップと、を含み
異なる変位の量は可変設計パラメータに基づく、方法。
【請求項2】
前記歯面(14)が、いくつかの、特に複数の部分面に分割される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記部分面が、少なくとも1つの前記境界面(16)、特に前記第1の境界面(16)を生成するために、異なる量だけ関連する前記表面法線の方向に変位される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記部分面が、特に縮小された閉じた境界面(16)を形成するために変位される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記可変設計パラメータが、前記歯面(14)の最大の第1の変位と、移行面(18)を画定するための第1の長さ(22)と、を記述し、
第1の変位の場合、前記第1の境界曲線(18)において直接に前歯および後歯が変位しておらず、さらに中央亀裂(40)において後歯が変位しておらず、
前記第1の境界曲線(12)から切歯/咬合側に向かう前記表面法線の方向への前記第1の変位の量が、前記最大の第1の変位(17)に達するまで着実に増加し、前記第1の長さ(22)が設計パラメータとして指定される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
移行面(18)が切歯/咬合方向に延長する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記移行面(18)が前記第1の境界曲線(12)に隣接して形成される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
第2の境界曲線(20)を画定するために、前記第1の境界面(12)が前記第1の長さ(22)だけ切歯/咬合側に射影され、
前記移行面(18)が前記第1の境界曲線と前記第2の境界曲線(18,20)との間に画定される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記可変設計パラメータが前記第1の境界面の変位を記述し、前記第1または第2の境界曲線(12,20)が第2の長さ(26)だけ射影されることによって、第3の境界曲線(24)が画定され、
切歯/咬合側の第1の表面輪郭(28)が、前記第1の最大変位によって生じる前記第1の境界面(16)上の最も高い曲線として決定され、
前記第1の表面輪郭(28)上に節点が作成され、前記節点の位置が前記第1の表面輪郭(28)上に画定され、
根尖および/または切歯/咬合方向に節点を少なくとも部分的に変位させ、少なくとも部分的に変位した節点を接続することによって、第2の表面輪郭(36)が生成され、
前記第2の表面輪郭(36)は、前記切歯/咬合面輪郭(28)の領域における前記第1の境界面(16)の前記最大の第2の変位を画定し、
前記表面法線の方向の前記第2の変位の量は、最大でもそれぞれ前記第3の境界曲線(24)または前記中央亀裂(40)に達するまで、根尖方向の前歯および後歯、ならびに前記中央亀裂の方向の後歯についても第3の長さだけ着実に減少する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
決定された前記歯面の前記最大の第1の変位は約0~4.0mmであり、および/または前記第1の長さは0.1~10.0mmの延長部を有する、請求項5から9の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項11】
前歯について、前記第1および/または第2の切歯/咬合面輪郭(28,36)上の前記最も高い曲線の境界(30)が、前記歯軸(34)に対する前記切歯面輪郭(28,36)上の接線(32)の角度によって決定され、前記角度は0°~90°、好ましくは10°~70°、特に好ましくは40°~50°である、請求項9または10の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項12】
前記切歯面輪郭(28,36)の開始、終了、および経路が手動で画定または調整される、請求項9から11の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項13】
前歯の前記切歯面輪郭(28,36)上の前記節点の前記位置が、前記切歯面輪郭(28,36)の全長に対して指定される、請求項9から12の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項14】
後歯の前記切歯/咬合面輪郭(36)上の前記節点の前記位置が、それぞれ近心歯尖始点と歯尖先端部との間、または前記歯尖先端部と前記遠心歯尖端部との間の前記歯尖隆起部の長さに対して、前記歯尖ごとに指定される、請求項9から13の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項15】
前記切歯/咬合面輪郭(28)上の前記節点の根尖方向への変位は、-4.0mm~+4.0mmの範囲内である、請求項9から14の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項16】
前記歯要素の幾何学的分析およびそれらの基準幾何学的形状との比較によって、前記歯要素が、解剖学的に規定された方向の用語に対して位置合わせされる、請求項1から15の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項17】
前記歯要素の前記位置合わせは、前記外側輪郭を生成するときに生成されたメタデータに基づいており、および/または前記歯要素は手動で位置合わせされる、請求項1から16の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の境界曲線(12)は、前記解剖学的に規定された方向の用語に従って少なくとも4つの節点が記述される曲線として前記歯の赤道を検出することに基づいており、
前記少なくとも4つの節点は、前記歯面上の前記歯の大きさに対して規定された距離だけ根尖または切歯/咬合方向に変位され、
および/または前記第1の境界曲線(12)は、前記解剖学的に規定された方向の用語に従って少なくとも4つの節点が記述される曲線として準備境界を検出することに基づいており、前記少なくとも4つの節点は、前記歯の大きさに対してまたは前記歯面上の前記準備境界までの前記距離に関して規定された距離だけ根尖または切歯/咬合方向に変位される、請求項1から17の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項19】
前記中央亀裂(40)は、近心から遠心に至る前記咬合面上の最も深い曲線を検出することによって、後歯について自動的に決定される、請求項1から18の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の境界曲線および/または前記第2の境界曲線および/または前記第3の境界曲線(12,20,24)が手動で画定または調整され、ならびに/あるいは前記後歯の中央亀裂が手動で画定または調整される、請求項1から19の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項21】
任意の層が仮想モデリングツールによって手動で調整され得る、請求項1から20の少なくとも一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工歯要素の内側に少なくとも1つの境界面を画定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工歯要素を製造する実質的な目的は、人工歯要素が患者の自然歯と外観が可能な限り類似するようにすることである。自然歯では、象牙質は可視領域において歯のエナメル質によって囲まれている。
【0003】
完全な人工歯、歯冠などであり得る歯要素を製造するために、歯要素を少なくとも2つの異なる材料からも製造し、象牙質と歯のエナメル質との間の境界を再現することが知られている。この目的のために、ドイツ特許出願公開第102010002484A1号明細書から、X線法によって患者の自然歯の象牙質とエナメル質との間の境界を決定し、次いで、象牙質を再現する内側材料が患者の自然の象牙質と同じ幾何学的形状を有する歯要素を製造し、特に、自然歯のエナメル質の厚さに従って歯のエナメル質に取って代わる材料の層厚を形成することが知られている。人工歯要素における歯のエナメル質および象牙質に取って代わる材料は、自然材料と同じ光学特性を有さないため、このようにして製造された人工歯要素は、患者の他の歯の外観と光学的外観が異なる。
【0004】
国際公開第2004/037112号パンフレットから、予め製作された歯の構成が知られている。これらは多数製造される歯(大量生産品)である。そのような予め製作された歯は、外側輪郭を機械加工することによって限られた範囲でのみ患者の歯の状況に適合させることができる。外側輪郭が変化しないままである場合には、光学的外観を所望の程度まで変化させることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第102010002484A1号明細書
【特許文献2】国際公開第2004/037112号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、人工歯要素の内側に境界面を画定する方法を提供することであり、満足のいく光学特性を有する人工歯要素をそのような方法を用いて製造することができ、人工歯要素の光学特性は、患者の自然歯の光学特性に可能な限り対応するか、または可能な限り近くなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。
【0008】
本発明による方法を用いて、人工歯要素のデジタル歯データモデル内の少なくとも1つの境界面が画定される。少なくとも1つの境界面は、人工歯要素が製造される少なくとも2つの異なる材料の間の境界面である。前記境界面は、患者の自然歯の象牙質と歯のエナメル質との間の境界面に、対応しないか少なくとも完全には対応せず、それぞれ実際の境界を考慮して画定されない。少なくとも1つの他の境界面、すなわち自然境界面と少なくとも部分的に異なる境界面を画定することにより、使用される材料の光学特性は、そのようにして製造された人工歯要素の光学的外観が可能な限り近づくように、好ましくは自然歯の光学的外観に実質的に対応するように利用される。本発明によれば、自然歯要素の光学的外観に対する人工歯要素の光学的外観のそのような正確かつ詳細な調整は、好ましくは、常にデジタル歯データモデルによって実行され、これにより、象牙質と歯のエナメル質との間の境界面を個別に調整することが可能になる。
【0009】
最初に、歯要素の3次元外側輪郭を決定することができる。ここで、人工歯要素の外側輪郭は、交換される自然歯の外側輪郭に対応する。これは、例えば、行われる修復の機能的および審美的要件を満たすために解剖学的構造に個別に調整された歯ライブラリから適切な外側輪郭を選択することによって行うことができる。歯ライブラリから形状を選択する代わりに、例えば、反対側の歯の歯の輪郭を単一の歯冠についてミラーリングすることもできる。本発明による方法の前のステップでは、特に、歯要素の3次元外側輪郭を決定し、特に記録することができる。歯要素の3次元外側輪郭を含むデータセットを開くことも可能である。
【0010】
さらに、本発明による方法の準備において、歯要素の3次元外側輪郭を座標系と位置合わせすることができる。座標系は、好ましくは、座標系が特に近心方向、遠心方向、根尖方向および切歯/咬合方向を有するように、解剖学的に規定された方向の用語に関する。歯要素を座標系と位置合わせすることは、歯要素の3次元外側輪郭から、歯要素の内側の少なくとも1つの境界面を簡単な方法で画定することが可能であるという利点を有する。
【0011】
本発明によれば、人工歯要素の歯面上に第1の境界曲線が画定される。第1の境界曲線は、歯の赤道に基づいて画定することができる。歯の赤道は、歯冠の領域における歯の最大の円周である。第1の境界曲線は、曲線としての準備境界に基づくこともでき、準備境界は、人工的に機械加工された歯要素と機械加工されていない歯面との間の境界である。第1の境界曲線を少なくとも部分的に手動で画定することも可能である。例えば、歯の赤道および/または準備境界に基づいて、特に自動的に画定された曲線を手動で調整することも可能である。第1の境界曲線は、歯の赤道と準備境界との間に画定されることが好ましい。ここで、例えば、歯の赤道および/または準備境界まで固定距離で第1の境界曲線を画定することが可能である。特に、第1の境界曲線は、歯の赤道および準備境界に対して同じ距離を有することができ、すなわち歯の赤道と準備境界との間に正確に提供され得る。
【0012】
第1の境界曲線に関して、切歯側/咬合側に位置する歯面が決定される。本発明によれば、前記歯面は内側に変位される。変位は表面法線の方向に起こり、変位は特に様々な量で起こる。したがって、多かれ少なかれ内向きに変位される歯面の表面積が存在する。これらの様々な変位量は、可変設計パラメータに基づく。歯面のこのような変位は、少なくとも1つの境界面を生成する。
【0013】
歯面の特に3次元の複雑な形状、したがって変位によって生成される特に第1の境界面に起因して、異なる表面法線の方向に変位が生じる。歯面は3次元表面であるため、表面法線は異なる方向を向いている。
【0014】
歯面をいくつか、特に複数の部分面に分割することが特に好ましい。少なくとも30個の部分面を設けることが特に好ましい。好ましくは、個々の部分面は、次いで、少なくとも1つの、特に第1の境界面を生成するために、関連する表面法線に向かって様々な量だけ変位される。ここで、縮小された部分面は、特に自動的に変位されて、特に閉じた境界面、すなわち隙間のない表面を形成する境界面を形成する。ここで、個々の部分面は、特に三角形の外側輪郭を有することができる。
【0015】
特に患者が異なる歯を有する場合には、設計パラメータは変化し得る。例えば、修復が異なる色の歯の残根に対して行われる場合、または修復が異なる厚さで設計される場合には、使用される材料の透光性に起因して歯の残根の光学的外観が人工歯要素の外観に影響を及ぼすため、異なる設計パラメータも必要とされ得る。特に、設計パラメータはまた、使用される材料に依存する。例えば、材料の最小壁厚を予め決定することができる。これは、安定性を実質的に決定する内側、特に象牙色材料の場合に特に当てはまる。さらに、ポリマーベースの材料の光学特性は、純粋なセラミック材料の光学特性とは異なる。
【0016】
本発明による方法の好ましいさらなる実施形態では、可変設計パラメータは、歯面の最大の第1の変位および/または移行面を画定するための第1の長さを記述する。
【0017】
好ましくは、第1の変位は、第1の境界曲線において前歯および後歯にまだ変位がないように選択される。後歯の場合、中央亀裂での変位もない。次いで、第1の変位の量は、好ましくは、変位の量が最大の第1の変位に達するまで、第1の境界曲線から、切歯または咬合に向かう表面法線の方向に着実に増加する。
【0018】
移行面は、例えば、第1の長さの設計パラメータを指定することによって画定することができる。したがって、好ましくは、第1の長さは、第1の境界曲線から、好ましくは切歯/咬合方向に延在する移行面を画定する。移行面は、0から完全な第1の変位まで画定される。移行領域は、特に、第1の境界曲線から完全な第1の変位までのフルエントな移行を実現するために設けられる。このような移行面を規定することにより、歯のエナメル質が根尖方向に向かってますます薄くなる歯の自然な外観を再現することができる。
【0019】
移行面はまた、第1の境界曲線が切歯側または咬合側に第1の長さだけ射影され、第2の境界曲線がこの射影によって画定されるように画定することもできる。次いで、移行面は、第1の境界曲線と第2の境界曲線との間に画定される。
【0020】
移行面を画定するための第1の長さの設計パラメータは、第1の境界曲線からの歯要素の最大高さよりも小さいことが好ましい。好ましくは、第1の長さは、前記最大高さの80%未満、特に好ましくは50%未満である。
【0021】
本発明による方法の好ましいさらなる実施形態では、可変設計パラメータは、第1の境界面のさらなるvを記述する。第1の境界面が変位するような本発明による方法の好ましいさらなる発展により、歯要素を製造することができ、その外観は歯の自然な外観にさらに近い。特に、このさらなる変位は、そうでなければ見え得る鋭い縁部を回避することができる。このさらなるvは、歯の自然層構造の不規則性(いわゆるマメロン)を模倣する。
【0022】
第1に、第3またはさらなる境界曲線がそれぞれ画定または生成される。これは、第1または第2の境界曲線を第2の長さだけ射影することによって行われ、第2の境界曲線を設けることは任意である。特に、第3またはさらなる境界曲線は、第1の境界曲線の切歯もしくは咬合射影によって、または第2の境界曲線の根尖射影によって生成される。あるいは、第3の境界曲線は、第1または第2の境界曲線とは独立して、手動で、または歯要素の他の特徴、例えば赤道または準備境界に基づいて生成することができる。
【0023】
さらに、好ましくは、切歯または咬合側の第1の表面輪郭が決定される。第1の表面輪郭は、第1の最大変位によって生成される第1の境界面上の最も高い曲線によって画定される。最も高い曲線は、必要に応じて自動的に決定され、手動で補正され得る。節点は、第1の表面輪郭上に生成または指定される。次いで、節点は、根尖方向または切歯/咬合方向に少なくとも部分的に変位する。少なくとも部分的に変位した節点は、第2の表面輪郭によって互いに接続されている。このようにして生成された第2の表面輪郭は、切歯または咬合面輪郭の領域における歯面(または第1の境界面)の最大の第2の変位を画定する。
【0024】
本発明による方法のこの好ましい実施形態では、第2の変位の量は、最大で第3の境界曲線またはこの目的のために最大として画定される長さにそれぞれ達するまで、第3の長さだけ、根尖方向の前歯および後歯の表面法線の方向に着実に減少する。後歯の場合、第2の変位量はまた、中央亀裂に達するまで、中央亀裂の方向に徐々に減少する。好ましくは、第3の境界曲線で直接または中央亀裂で直接の第2の変位量は0である。中央亀裂は、手動で画定することもでき、および/または自動で画定または事前に画定された中央亀裂は、手動で修正することができる。
【0025】
好ましくは、歯面の最大の第1の変位は、0~4mmの範囲内である。
【0026】
さらに、移行面を生成するために必要とされる第1の長さは、0.1mm~10mmの延長部を有することが好ましい。
【0027】
境界、すなわち、第1および/または第2の切歯面輪郭上の自動的に決定された最も高い曲線の開始および終了は、ある角度だけ前歯の本発明の好ましいさらなる実施形態で画定される。上記角度は、切歯面輪郭線の接線と歯軸とのなす角度であり、好ましくは0°~90°、好ましくは10°~70°、特に好ましくは40°~50°である。歯の場合、歯軸は、それぞれ、単一根歯の根元先端部と切歯縁部または咀嚼面の中心との間の接続線として、および根元分岐部と咀嚼面の中心との間の複数根歯の接続線として規定される。特に、境界、すなわち開始部および終了部、ならびに切歯面輪郭の経路を手動で画定または調整することも可能である。
【0028】
好ましくは、前歯の切歯面輪郭上の節点の位置は、切歯面輪郭の全長に対して指定または画定される。ここで、切歯面輪郭上には、少なくとも5点が規定されていることが好ましい。より多くの点、特に10を超える点、特に20を超える点を規定することが好ましい。
【0029】
後歯の場合、切歯/咬合面輪郭上の節点の位置は、歯尖隆起部の長さに対して歯尖ごとに指定されることが好ましい。特に、近心歯尖始点と歯尖先端部との間、または歯尖先端部と遠心歯尖端部との間の歯尖隆起部の長さが、それぞれここで使用される。次いで、咬合面輪郭の全長において、歯尖ごとに少なくとも5つの点が規定されることが好ましい。少なくとも10点、特に少なくとも20点のより高い数の点が好ましい。
【0030】
切歯/咬合面輪郭上の節点の根尖方向への変位は、-4.0mm~+4.0mmの範囲内であることが好ましい。
【0031】
歯要素は手動で位置合わせされ得る。
【0032】
歯要素は、歯要素の幾何学的分析およびそれらの基準幾何学的形状との比較によって、解剖学的に規定された方向の用語に関して自動的に位置合わせされることが好ましい。例えば、歯冠の切歯/咬合方向と比較して、根尖方向は、歯要素の表面形状の画定された境界角度によって準備境界を自動的に検出することによって決定することができる。残りの歯要素に関して、準備境界は、歯軸にも対応する根尖方向を指す。前記歯軸を中心とした歯要素の正確な回転を自動的に決定するために、歯要素の歯尖先端部は、最も高い咬合/切歯点として検出することができ、咬合/切歯点は、咬合面の最も根尖側の線である中央亀裂に関連する曲率および角度特徴によって位置合わせすることができる。前歯の場合、切歯縁部は、湾曲および角度特徴によって近心および遠心への正しい位置合わせを決定するために、遠い切歯端部に位置するシルエット曲線として使用することができる。
【0033】
さらに、歯要素の位置合わせは、外側輪郭を生成するときに生成されるメタデータに基づくことが好ましい。外側輪郭を生成するために使用されるCADプログラムに応じて、例えば、歯要素の形状データは、例えば、常にz方向の切歯、常にy方向の唇、または同様のものを画定するxzy座標系に対して位置合わせすることができる。これらの情報の一部は、XMLデータとして出力される。前記情報に基づいて、本明細書に記載の方法の位置合わせを自動的に実行することができる。
【0034】
上述したように、第1の境界曲線は、歯の赤道の検出に基づくことができる。ここで、解剖学的に画定された方向の用語に従ってこの曲線上に少なくとも4つの節点が記述され、節点は歯面上の歯の大きさに対して画定された距離だけ根尖または切歯/咬合方向に変位することが好ましい。第1の境界曲線は、例えば、歯の赤道と準備境界との間の距離の半分だけ根尖方向に少なくとも4つの節点で歯の赤道を変位させることによって非常に良好に生成することができる。
【0035】
説明したように、第1の境界曲線は、準備境界の検出に基づくこともできる。この曲線上では、解剖学的に画定された方向の用語に従って少なくとも4つの節点が記述され、節点は、歯面上の歯のサイズに対して規定された距離だけ、根尖または切歯/咬合方向に変位することも好ましい。
【0036】
中央亀裂は、近心から遠心に至る咬合面上の最も深い曲線を検出または決定することによって、後歯について自動的に決定することができる。このように決定された中央亀裂は、手動で調整することができる。中央亀裂は、手動でマークすることもできる。マーキングまたは決定は、例えば、画像化方法を用いて行うことができるが、これは、中央亀裂が切歯/根尖方向で最も深い曲線であるためである。
【0037】
したがって、本発明によれば、人工歯要素の内側に画定された少なくとも1つの境界面は、好ましくは、歯要素内の異なる材料の空間的膨張を画定するのに役立つ。ここで、異なる材料は、特に異なる光学特性を有する。画定された空間的拡張のために、異なる光学特性を有する材料は、人工歯要素に、好ましくは少なくとも象牙質または歯のエナメル質の光学特性をそれぞれ模倣する自然な外観を与える。異なる材料はまた、異なる機械的特性を有することができる。
【0038】
デジタル歯データモデルのデータセットを開くことは任意選択であり、対応するデータが以前に保存されている場合にのみ必要である。データを収集した直後に復元を実行する場合、格納されているデータセットを開く必要はない。
【0039】
本発明による人工歯要素は、好ましくは、歯科修復物の一部としてまたは歯科修復物の形態で製造される個々の歯を模倣する。ここで、歯科修復物は、好ましくは、歯付きまたはインプラント式の歯冠、ブリッジ、または取り外し可能な完全または部分義歯を含む。
【0040】
本発明による方法の助けを借りて、人工歯要素の内側の境界面によって、歯要素に使用される異なる材料の空間的拡張も画定することが特に可能である。ここで、異なる材料が異なる光学特性を有することが特に可能である。特に本発明によれば、人工歯要素内の個々の材料の空間的膨張を指定することにより、歯の自然な外観に非常に近い外観を達成することができる。
【0041】
使用される異なる材料はまた、種々の機械的特性を有することができる。
【0042】
特に、本発明による歯要素は歯科修復物である。これは、歯付きまたはインプラント式のクラウン、ブリッジ、または取り外し可能な完全または部分義歯であってもよい。
【0043】
以下では、添付の図面を参照して、好ましい実施形態によって本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図3】
図1および
図2による前歯の人工歯要素の概略正面図であり、追加の表面および曲線が示されている。
【
図4】
図1および
図2による前歯の人工歯要素の概略側面図であり、追加の表面および曲線が示されている。
【
図5】
図1および
図2による前歯の人工歯要素の概略正面図であり、追加の表面および曲線が示されている。
【
図6】
図1および
図2による前歯の人工歯要素の概略側面図であり、追加の表面および曲線が示されている。
【
図8a】異なる接線角度を有する
図5の代替図である。
【
図8b】異なる接線角度を有する
図5の代替図である。
【
図8c】異なる接線角度を有する
図5の代替図である。
【
図10】
図1および
図2による前歯の歯要素の概略正面図であり、追加の表面および曲線が示されている。
【
図13】
図12に示す後歯の人工歯要素の切歯側からの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1および
図2は、前歯の人工歯要素10を示す正面図および側面図である。これは、歯要素の3次元外側輪郭であり、好ましくは、歯要素の3次元外側輪郭のデータを含む対応するデータセットが開かれている。歯要素10を座標系(図示せず)と位置合わせした後に、第1の境界曲線12が画定され、第1の境界曲線12は手動で、および/または準備境界に基づいて、または歯の赤道に基づいて画定することができる。切歯方向、すなわち
図1および
図2の第1の境界曲線12の上方では、歯面14が第1の境界曲線12によって画定される。
【0046】
歯面14は、第1の境界面16(
図3および
図4)を生成するために、表面法線の方向に内側に変位される。ここでは、最大変位17を例示している。
【0047】
図3および
図4に示すように、本発明の好ましい実施形態により、切歯方向19に延びる移行面18を、第1の境界曲線12から画定することができる。図示する例示的な実施形態では、移行面18は、第2の境界曲線20が画定されるように画定される。第2の境界曲線20は、第1の長さ22による第1の境界曲線12の射影によって画定することができる。
【0048】
図示する例示的な実施形態では、第3の境界曲線24(
図5および
図6)も画定されている。第3の境界曲線24は、第2の長さ26による第1の境界曲線12の射影によって画定され得る。
【0049】
第1の最大変位によって生成される第1の境界面16上の最も高い曲線は、切歯/咬合側の第1の表面輪郭28として画定される。第1の表面輪郭28は、2つの境界30、具体的には、それぞれ始まりと終わりを有する。ここで、境界30は接線32によって画定される。
図5では、接線32は歯軸34に対して約45°の角度を有する。
【0050】
図8a~
図8cに示すように、接線角度が変化すると、境界30の位置が変化する。
【0051】
第1の表面輪郭28の経路は、平面図または切歯図(
図7)に示されている。
【0052】
多数の節点(
図9)が表面輪郭上に規定される。一例として、前記節は、節1~節9で指定され、
図9の表に列挙されている。矢印で示すように、第1の表面輪郭28上に位置する節点は、根尖方向に変位する。変位した節を接続することにより、第2の表面輪郭36が得られる。
【0053】
上述の方法ステップにより、図示する例示的な実施形態では、第3の境界曲線24、第1の境界面16の一部、および第2の表面輪郭36(
図10および
図11)によって画定される三次元境界面が得られる。この三次元表面内、すなわち空間38内には、本発明による好ましい実施形態では、前記空間を取り囲む人工歯要素10の体積とは異なる材料が提供される。これらの2つの体積は、特に異なる材料によって画定され、内部体積38は歯のエナメル質を再現する。ここで、歯のエナメル質を形成する体積と周囲の体積との間の境界面は、関連する自然歯の対応する境界面と同一ではない。
【0054】
図12および
図13は、後歯の対応する輪郭を示し、前記輪郭は、前歯の突出縁部について説明した輪郭に対応する。さらに、中央亀裂40(
図13)が示されている。中央亀裂40を示す線は、それぞれ歯尖始点または歯尖終点をそれぞれ表す2つの境界点42を有する。さらに、歯尖先端部44は、第2の表面輪郭36上にマークされている。点46は、次の歯尖の歯尖終点および歯尖始点を示す。
【国際調査報告】