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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-22
(54)【発明の名称】体外血液治療装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/34 20060101AFI20230215BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
A61M1/34 123
A61M1/36 153
A61M1/34 125
A61M1/36 119
A61M1/34 145
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535219
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(85)【翻訳文提出日】2022-07-07
(86)【国際出願番号】 IB2020062407
(87)【国際公開番号】W WO2021130701
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】19219245.8
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501473877
【氏名又は名称】ガンブロ・ルンディア・エービー
【氏名又は名称原語表記】GAMBRO LUNDIA AB
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プーシュリン, ドミニク
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077CC03
4C077DD16
4C077EE01
4C077HH03
4C077HH10
4C077HH12
4C077JJ03
4C077JJ09
4C077JJ12
4C077KK05
4C077KK27
(57)【要約】
CRRT装置であって、濾過ユニット(2)、血液回路(17)、血液ポンプ(21)、透析液ライン(13)及び血液にそれぞれの溶液を移すための1つ以上のライン(8;51;57;58;63;69;67;74)、前記1つ以上のラインのそれぞれについての流体源を備え、前記溶液は重炭酸塩又は重炭酸塩前駆体の形態の少なくとも1つの緩衝剤を含む。制御部(12)は、患者の処方を受け取り、CRRT血液治療を受けなければならない前記患者の前記血液の定常状態の酸塩基平衡を示すパラメータを決定するように構成され、前記パラメータは、前記流体源の前記緩衝剤の前記濃度の関数として及び重炭酸塩及び/又は重炭酸塩前駆体の推定された又は計算された患者の全身定常状態濃度の関数として決定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
持続的腎代替療法(CRRT)装置であって、
半透膜(5)によって隔てられたプライマリチャンバー(3)とセカンダリチャンバー(4)を有する濾過ユニット(2)と、
前記プライマリチャンバー(3)の入口に接続された採血ライン(6)、及び前記プライマリチャンバー(3)の出口に接続された返血ライン(7)を有する血液回路であって、患者の心血管系に接続するように構成されている血液回路(17)と、
前記血液回路(17)で血液を循環させる血液ポンプ(21)と、
前記セカンダリチャンバー(4)の出口に接続された透析液ライン(13)と、
それぞれの溶液を血液中に移すための1つ以上のライン(8;51;57;58;63;69;67;74)と、
前記1つ以上のラインのそれぞれについての溶液の少なくとも1つの流体源であって、前記溶液が重炭酸塩又は重炭酸塩前駆体の形態で少なくとも1つの緩衝剤を含む、前記1つ以上のラインのそれぞれについての溶液の少なくとも1つの流体源と、
CRRT血液治療を設定するためのパラメータを含む患者の処方を受け取るように構成された制御部(12)と、を備え、
前記制御部(12)は、
CRRT血液治療を受けなければならない前記患者の前記血液の定常状態の酸塩基平衡を示すパラメータを決定し、ここで前記パラメータは、前記流体源の前記緩衝剤の前記濃度の関数として、及び、重炭酸塩及び/又は重炭酸塩前駆体の推定された又は計算された患者の全身定常状態濃度の関数として決定し、又は
前記CRRT血液治療を受けなければならない前記患者の前記血液の定常状態の重炭酸塩濃度を示すパラメータを決定し、ここで前記パラメータは、前記流体源の前記緩衝剤の前記濃度の関数として、及び、前記患者の前記血液の定常状態の酸塩基平衡を示す推定された又は計算された正味緩衝剤負荷の関数として決定される、
ようにさらに構成される、
持続的腎代替療法(CRRT)装置。
【請求項2】
血液にそれぞれの溶液を注入する前記1つ以上のライン(8;51;58;63;74)は、重炭酸塩又は重炭酸塩前駆体を含む置換液を前記血液に注入するための、特に前記置換液を前記血液回路(17)に直接注入するための注入ライン(63)を備え、前記装置は、置換液注入速度(Qrep)を決定するために前記注入ライン(63)で動作する注入ポンプ(65)と、重炭酸塩を含む溶液を血液に注入するための前記注入ライン(63)の端部に接続された置換液バッグ(64)と、をさらに備え、特に、前記注入ライン(63)は、重炭酸塩を含む前記溶液を後注入するために前記返血ライン(7)に接続され、任意で、前記注入ライン(63)は、前記濾過ユニット(2)の上流及び下流の両方に注入することを可能にするために、前注入ブランチ(67)と後注入ブランチ(69)を備える、
請求項1に記載のCRRT装置。
【請求項3】
血液にそれぞれの溶液を注入するための前記1つ以上のライン(8;51;58;63;74)は、抗凝固剤溶液を前記血液回路(17)に直接注入するための抗凝固剤ライン(51)を含み、前記装置は、抗凝固剤注入速度(Qcit)を決定するために前記抗凝固剤ライン(51)で作動する抗凝固剤ポンプ(54)と、クエン酸塩、及び任意にクエン酸を含む溶液を前記血液回路(17)に注入するための前記抗凝固剤ライン(51)の端部に接続された抗凝固剤溶液バッグ(10)とをさらに含み、前記抗凝固剤ライン(51)は、前記採血ライン(6)に接続される、
請求項1又は2に記載のCRRT装置。
【請求項4】
CRRT治療を受ける前記患者の前記血液の定常状態の酸塩基平衡を示す前記パラメータ(Jbuffer_load/BW)は、定常状態で予測される前記患者の正味緩衝剤負荷(NBL)、特に定常状態で予測される前記患者の正規化された正味緩衝剤負荷(nNBL)のパラメータ関数であり、前記正味緩衝剤負荷は患者の体重(BW)に対して正規化され、かつ、
前記制御部(12)は、前記患者の前記血液の定常状態の酸塩基平衡を示す前記パラメータ(Jbuffer_load/BW)を、
前記患者に注入された前記重炭酸塩前駆体、特にクエン酸塩(Jmet_cit)及び/又は乳酸塩(Jmet_lact)の代謝から生成された重炭酸塩の単位時間当りの量の推定、
単位時間当たりの量の観点における送達される前記CRRT血液治療からの重炭酸塩バランス(JHCO3_bal)、
単位時間当たりの量の観点における送達される前記CRRT血液治療からの乳酸塩バランス(Jlact_bal)、
単位時間当たりの量の観点における前記流体源に含まれるクエン酸からの酸注入(JH+)、
のうちの1つ以上、及び特に3つに基づいて決定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のCRRT装置。
【請求項5】
前記制御部(12)は、前記患者の前記血液の定常状態の酸塩基平衡を示す前記パラメータ(Jbuffer_load/BW)を以下のとおり決定し、
あるいは、乳酸塩バランスも考慮する場合、前記制御部(12)は、前記患者の前記血液の定常状態の酸塩基平衡を示す前記パラメータ(Jbuffer_load/BW)を以下のとおり決定する、
請求項4に記載のCRRT装置。
【請求項6】
体外血液治療中の前記正味緩衝剤負荷は、重炭酸塩前駆体の前記代謝から生成される重炭酸塩、前記体外血液治療からの重炭酸塩バランス(JHCO3_bal)、及び関連する場合には酸注入の合計である、
請求項4又は5に記載のCRRT装置。
【請求項7】
前記重炭酸塩前駆体は、前記患者に注入されるクエン酸塩及び/又は乳酸塩(Jmet_cit;Jmet_lact)を少なくとも含む、
請求項6に記載のCRRT装置。
【請求項8】
前記体外血液治療からの前記重炭酸塩バランス(JHCO3_bal)は、前記患者の重炭酸塩の正味の損失又は正味の利得である、
請求項6又は7に記載のCRRT装置。
【請求項9】
前記酸注入はクエン酸含有量を含む、
請求項6から8のいずれか一項に記載のCRRT装置。
【請求項10】
前記制御部(12)は、前記患者に注入されたクエン酸塩の代謝(Jmet_cit)から生成される重炭酸塩の単位時間当たりの量の推定に基づいて、前記患者の前記血液の定常状態の重炭酸塩濃度を示す前記パラメータ(CpHCO3_pat)を決定し、特に、クエン酸塩負荷の前記代謝が、定常状態でクエン酸塩のモル当たり重炭酸塩3モルをもたらす、すなわち、
である、
請求項1から9のいずれか一項に記載のCRRT装置。
【請求項11】
前記制御部(12)は、定常状態で前記患者の前記正規化された正味緩衝剤負荷(NBL)について一定値を課す前記患者の前記血液の定常状態の重炭酸塩濃度を示す前記パラメータ(CpHCO3_pat)を決定するように構成され、前記一定値は、例えば0.1mmol/h/kgである、
請求項1から10のいずれか一項に記載のCRRT装置。
【請求項12】
前記制御部(12)は、前記患者の前記血液の定常状態の重炭酸塩濃度を示す前記パラメータ(CpHCO3_pat)、より詳細には前記透析液の重炭酸塩損失(JHCO3_dial)を、
前記患者に注入された前記重炭酸塩前駆体、特にクエン酸塩(Jmet_cit)及び/又は乳酸塩(Jmet_lact)の代謝から生成される重炭酸塩の単位時間当りの量の推定、
単位時間当たりの量の観点における送達される前記CRRT血液治療からの重炭酸塩注入(JHCO3_inf)、
単位時間当たりの量の観点における送達される前記CRRT血液治療からの乳酸塩バランス(Jlact_bal)、
例えば0~0.35mmol/h/kgの間、特に0.1mmol/h/kgで選択された予め定義された正味緩衝剤負荷(Jbuffer_load)、
単位時間当たりの量の観点における前記流体源に含まれるクエン酸からの酸注入(JH+)、
のうちの1つ以上、及び特に4つに基づいて決定する、
請求項1から11のいずれか一項に記載のCRRT装置。
【請求項13】
前記制御部(12)は、重炭酸塩形態の前駆体代謝(Jmet_cit;Jlact)の前記推定、前記重炭酸塩注入(JHCO3_bal)、前記予め定義された正味緩衝剤負荷(Jbuffer_load)、及び前記酸注入(JH+)の代数和、特に前記患者の緩衝剤の損失を提供する負の項である前記酸注入(JH+)に基づいて、前記患者の前記血液の定常状態の重炭酸塩濃度を示す前記パラメータ(CpHCO3_pat)、及びより詳細には前記透析液の重炭酸塩損失(JHCO3_dial)を決定する、
請求項1から12のいずれか一項に記載のCRRT装置。
【請求項14】
前記制御部(12)は、重炭酸塩形態の前駆体代謝(Jmet_cit;Jlact)の前記推定、前記重炭酸塩注入(JHCO3_bal)、前記予め定義された正味緩衝剤負荷(Jbuffer_load)、及び前記酸注入(JH+)の代数和、特に患者の緩衝剤の損失を提供する負の項である前記酸注入(JH+)に基づいて、前記患者の前記血液の定常状態の重炭酸塩濃度を示す前記パラメータ(CpHCO3_pat)、及びより詳細には前記透析液の重炭酸塩損失(JHCO3_dial)を決定する、
請求項1から13のいずれか一項に記載のCRRT装置。
【請求項15】
前記制御部(12)は、単位時間あたりの量の観点から、前記流体源に含まれる、例えばクエン酸からの酸注入(JH+)に基づいて、前記患者の前記血液の定常状態の酸塩基平衡を示す前記パラメータ(Jbuffer_load/BW)を決定し、前記酸注入(JH+)は酸の濃度(Ccitric_pbp)及び酸の注入速度(Qcit)の関数であり、特に、前記酸注入(JH+)はクエン酸の前記注入速度(Qcit)で乗じた前記クエン酸濃度(Ccitric_pbp)の3倍に等しい、
請求項1から14のいずれか一項に記載のCRRT装置。
【請求項16】
前記制御部(12)は、前記患者に注入されたクエン酸塩(Jmet_cit)の代謝から生成される重炭酸塩の単位時間当たりの量の推定に基づいて、前記患者の前記血液の定常状態の酸塩基平衡を示す前記パラメータ(Jbuffer_load/BW)を決定し、特に、クエン酸塩負荷の前記代謝が、定常状態でクエン酸塩のモル当たり重炭酸塩3モルを導く、すなわち
である、
請求項1から15のいずれか一項に記載のCRRT装置。
【請求項17】
前記制御部(12)は、クエン酸塩の代謝から生成される前記重炭酸塩の単位時間当たりの量を計算し、特に前記制御部が、患者のクエン酸塩代謝クリアランス(Kcit_met)の関数としてクエン酸塩負荷(Jcit_load)を計算し、特に前記代謝クリアランスは、患者の体重(BW)に基づいて、例えば直接正比例するように、以下のとおり決定される、
請求項16に記載のCRRT装置。
【請求項18】
クエン酸塩の代謝から生成される前記重炭酸塩の単位時間当たりの量、特に前記制御部が、前記クエン酸塩負荷(Jcit_load)を計算し、特に、前記制御部(12)は、特に1つ以上の透析液速度(Qd)、血漿水分速度(Qpwinlet)、濾過ユニット(2)における限外濾過速度(Qfil)の1つ以上を含む1つ以上の流速の関数として前記クエン酸塩クリアランス(Kcit)を決定し、及び、任意に、前記制御部(12)は、CRRT治療を意図した前記濾過ユニット(2)の関数として、特に、クエン酸塩に対する篩係数(SCcit)及び/又はクエン酸塩の拡散物質移動抵抗(K0cit)に対する濾過ユニット表面積の比の関数として、前記クエン酸塩クリアランス(Kcit)を決定する、
請求項16又は17に記載のCRRT装置。
【請求項19】
前記制御部(12)は、クエン酸塩の代謝から生成される前記重炭酸塩の単位時間当たりの量を計算し、特に前記制御部は、クエン酸塩投与量(Dcit)及び血液速度(Qb)の関数として、すなわちDcit・Qbに従って、又は
抗凝固剤ライン(51)におけるクエン酸塩速度(Qcit)及び総クエン酸塩濃度(Ccit_pbp)の関数として、すなわち、Qcit・Ccitpbpに従って、
代替的に前記クエン酸塩負荷(Jcit_load)を計算する、
請求項12から18のいずれか一項に記載のCRRT装置。
【請求項20】
前記制御部(12)は、クエン酸塩の代謝から生成される前記重炭酸塩の単位時間当たりの量を計算し、特に前記制御部は、以下の式に従って、
又は患者の全身クエン酸塩濃度がゼロであると仮定される場合、以下の計算式に従って、
前記クエン酸塩負荷(J_load)を計算する、
請求項12から19のいずれか一項に記載のCRRT装置。
【請求項21】
前記制御部(12)は、単位時間当たりの量の観点における送達される前記CRRT血液治療からの重炭酸塩バランス(JHCO3_bal)に基づいて、前記患者の前記血液の定常状態の酸塩基平衡を示す前記パラメータ(Jbuffer_load/BW)を決定し、特に前記重炭酸塩バランス(JHCO3_bal)は、前記透析液及び/又は前記置換液からの注入速度(JHCO3_inf)と、透析液への前記重炭酸塩除去(JHCO3_dial)との間の差分である、
請求項1から20のいずれか一項に記載のCRRT装置。
【請求項22】
前記制御部(12)は、前記重炭酸塩バランス(JHCO3_bal)を、
前記置換液の置換液速度(Qrep)と重炭酸塩濃度(CHCO3_rep)、すなわちQrep・CHCO3_repの関数として、
フィルター入口における重炭酸塩血漿水分濃度(CpwHCO3_inlet)、特にフィルター入口における重炭酸塩血漿水分濃度(CpwHCO3_inlet)と前記透析液の重炭酸塩濃度(CHCO3_d)との間の差分の関数として、
濾過ユニット(2)の限外濾過速度(Qfil)と前記透析液の重炭酸塩濃度(CHCO3_d)、
重炭酸塩クリアランス(KHCO3)、特に、前記制御部(12)は、特に、1つ以上の透析液速度(Qd)、血液速度(Qbwinlet)、濾過ユニット(2)の限外濾過速度(Qfil)を含む1つ以上の流速の関数として、前記重炭酸塩クリアランス(KHCO3)を決定し、及び任意に、前記制御部(12)は、CRRT治療を意図した前記濾過ユニット(2)の関数として、特に、重炭酸塩に対する篩係数(SCHCO3)及び/又は重炭酸塩の拡散物質移動抵抗(K0HCO3)に対する濾過ユニット表面積の比の関数として、前記重炭酸塩クリアランス(KHCO3)を計算する、
のうちの1つ以上の関数として算出する、
請求項21に記載のCRRT装置。
【請求項23】
前記制御部(12)は、前記患者の前記血液の定常状態の酸塩基平衡を示す前記パラメータを閾値と比較するように構成されており、前記閾値が上限閾値である場合、前記制御部(12)は、前記パラメータが前記上限閾値よりも高い場合にアラートを生成し、前記閾値が下限閾値である場合、前記制御部(12)は、前記パラメータが前記下限閾値よりも低い場合にアラートを生成し、前記パラメータが前記閾値を超える場合には、前記制御部(12)は、前記アラートを発行し、入力された患者の処方を維持するか、又は前記アラートを発行し、前記入力された患者の処方を拒否するように構成され、
特に、前記入力された処方が拒否される場合には、前記制御部(12)は、
以前の有効な患者の処方を復元するか、又は
血液速度、及び/又はクエン酸塩投与量などの前記患者の処方の一つ以上のパラメータを、新しい有効な患者の処方を定義する提案された値に自動的にシフトする、
ようにさらに構成されている、
請求項1から22のいずれか一項に記載のCRRT装置。
【請求項24】
定常状態の患者の重炭酸塩濃度の目標設定が、特に24mmol/l~26mmol/lの間で構成されると仮定すると、前記閾値は、特に、0.25~0.5mmol/h/kgの間で構成される上限閾値を含み、
第1の上限閾値(nNBL1)は0.25~0.35mmol/h/kgの間で構成され、例えば前記第1の閾値(nNBL1)は約0.3mmol/h/kgであり、及び/又は
第2の上限閾値(nNBL2)は0.35~0.5mmol/h/kgの間、より詳細には0.4~0.45mmol/h/kgの間で構成され、例えば前記第2の閾値(nNBL2)は約0.4mmol/h/kgであり、
及び、前記閾値は、0~-0.2mmol/h/kgの間で構成される下限閾値を含み、特に前記下限閾値(nNBL2)が約-0.1mmol/h/kgであり、前記制御部(12)は、前記パラメータが前記下限閾値より低い場合に、警告を発行及び/又は入力される処方をブロックするようにさらに構成されている、
請求項23に記載のCRRT装置。
【請求項25】
前記透析液供給ラインに流体を供給するための透析液の源であって、前記透析液は緩衝剤を実質的に含まない透析液の源と、
緩衝剤を有する置換液を含有する置換液バッグ(64)であって、前記置換液の緩衝剤濃度が0~1000mmol/lの間で構成される置換液バッグ(64)であり、
特に、100~200mmol/lの間で、任意に緩衝剤を含まない透析液及び/又は緩衝剤を含まない他の置換液と組み合わせられ、又は
特に、50mmol/l~100mmol/lの間で、任意に例えば25mmol/l未満の透析液における低緩衝剤含有量、及び/又は例えば25mmol/l未満の他の置換液における低緩衝剤含有量と組み合わせられる置換液バッグ(64)と、を備え、
血液にそれぞれの溶液を注入するための前記1つ以上のライン(8;51;58;63;74)は、前記血液に前記置換液を注入するための前記置換液バッグ(64)に接続された注入ライン(63)を含み、
特に、前記注入ライン(63)は、前記濾過ユニット(2)の下流の前記血液回路(17)へ前記緩衝剤を注入する後注入ラインであり、及び任意に前記緩衝剤は重炭酸塩を含むか又は重炭酸塩である、
請求項1から24のいずれか一項に記載のCRRT装置。
【請求項26】
前記制御部(12)は、前記患者の処方パラメータを受け取り、及び前記処方パラメータの1つ以上に基づいて、又は前記処方パラメータから直接導出されたパラメータに基づいて、前記患者の前記血液の定常状態の酸塩基平衡を示す前記パラメータを決定するように構成されており、前記制御部(12)は、前記血液回路(17)の血液速度(Qb)、透析液供給ライン(8)の透析液の透析液速度(Qd)、前記患者から除去すべき患者の流体除去速度(Qwl)、及び透析液速度(Qdial)の1つ以上を含む前記患者の処方を受け取り、特に前記制御部(12)は、前記血液回路(17)の前記血液速度(Qb)、前記透析液供給ライン(8)の前記透析液の透析液速度(Qd)及び前記患者から除去すべき前記患者の流体除去速度(Qwl)を含む患者の処方パラメータを受け取るように構成され、任意に、前記制御部(12)は、
置換液の速度(Qrep)、すなわち、濾過ユニット(2)の前及び後で注入された置換液の総速度、及び置換液の前又は後の注入比率(PRE%)、又は、
置換液の注入後速度(Qpost)及び/又は置換液の注入前速度(Qpre)、
を含む患者の処方パラメータを受け取るように構成されている、
請求項1から25のいずれか一項に記載のCRRT装置。
【請求項27】
持続的腎代替療法(CRRT)装置であって、
半透膜(5)によって隔てられたプライマリチャンバー(3)とセカンダリチャンバー(4)を有する濾過ユニット(2)と、
前記プライマリチャンバー(3)の入口に接続された採血ライン(6)、及び前記プライマリチャンバー(3)の出口に接続された返血ライン(7)を有する血液回路(17)であって、前記血液回路は患者の心血管系に接続するように構成されていることを含む血液回路(17)と、
前記血液回路(17)で血液を循環させる血液ポンプ(21)と、
前記セカンダリチャンバー(4)の出口に接続された透析液ライン(13)と、
それぞれの溶液を血液中に移すための1つ以上のライン(8;51;57;58;63;69;67;74)と、
前記1つ以上のラインのそれぞれについての溶液の少なくとも1つの流体源であって、前記溶液は、重炭酸塩又は重炭酸塩前駆体の形態で少なくとも1つの緩衝剤を含む、前記1つ以上のラインのそれぞれについての溶液の少なくとも1つの流体源と、
CRRT血液治療を設定するためのパラメータを含む患者の処方を受け取るように構成された制御部(12)と、を備え、
前記制御部(12)は、
CRRT血液治療を受けなければならない前記患者の前記血液の定常状態の酸塩基平衡を示すパラメータを決定し、前記パラメータは、前記正味緩衝剤負荷又は正規化された正味緩衝剤負荷であり、前記流体源の前記緩衝剤の前記濃度の関数として、及び重炭酸塩及び/又は重炭酸塩前駆体の推定された又は計算された患者の全身定常状態濃度の関数として決定される、ように更に構成され、
体外血液治療中の前記正味緩衝剤負荷は、クエン酸塩を含む前記重炭酸塩前駆体の代謝から前記患者に生成される重炭酸塩、及び前記体外血液治療から前記患者への重炭酸塩バランス(JHCO3_bal)の合計である、
CRRT装置。
【請求項28】
前記制御部(12)は、以下の定義のいずれか1つによって前記患者の前記血液の定常状態の酸塩基平衡を示す前記パラメータを決定し、
又は
あるいは、酸注入を考慮する場合、前記制御部(12)は、前記患者の前記血液の定常状態の酸塩基平衡を示す前記パラメータを以下のように決定し、
又は
あるいは、乳酸塩バランスも考慮する場合、前記制御部(12)は、前記患者の前記血液の定常状態の酸塩基平衡を示す前記パラメータを以下のように決定し、
又は
前記用語の定義は前記用語集に定義されている、
請求項1から27のいずれか一項に記載のCRRT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体外血液処理のための装置及び体外血液治療装置を制御するための方法に関する。より詳細には、本発明は、抗凝固療法を伴う又は伴わない持続的腎代替療法(CRRT)、例えば、全身抗凝固療法(例えば、ヘパリン)を伴う又は伴わないCRRT/局所抗凝固療法(例えば、クエン酸塩)を伴う又は伴わないCRRTの文脈において適用可能である。
特に、本発明は、持続的腎代替療法(CRRT)中に局所クエン酸塩抗凝固(RCA)を投与するために有利に使用され得る。さらに、本発明の装置は、機械的換気の代替又は補足として体外血液循環を介して、体外CO除去、又はECCORを使用して効率的にCOを除去するためのCRRT治療において、有利に使用され得る。
【背景技術】
【0002】
腎臓は、水の除去、異化産物の排泄(又は代謝からの老廃物、例えば尿素とクレアチニン)、血液の電解質の濃度調節(例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、重炭酸塩、リン酸塩、塩素)、及び体内の酸/塩基平衡の調節(特に弱酸の除去及びアンモニウム塩の生成によって得られる)を含む、多くの機能を果たしている。それらの腎臓の使用を失った(一時的または永久的に)個人では、これらの排泄および調節機構がもはや働かなくなるため、体は代謝から水分と老廃物を蓄積し、電解質の過剰と、一般にアシドーシスを示し、下方に移動する血漿のpHは7.35を下回る(血液pHは正常では7.35~7.45の狭い範囲内で変動する)。述べた通り、腎機能障害を克服するために、従来、患者の血液を膜の片側に循環させる半透膜(ダイアライザー)と、健常者の血液に近い血中の主要電解質からなる透析液を反対側に循環させる交換体を介した体外循環による血液処理が行われている。さらに、半透膜によって区切られているダイアライザーの2つの区画間に圧力差が生じ、その結果、血漿液の一部は、限外濾過によって膜を通って透析液を含む区画内に通過する。代謝および電解質からの老廃物に関してダイアライザーで行われる血液処理は、膜を介した分子輸送の2つのメカニズムに起因する。一方、分子は、その濃度が高い液体から、その濃度が低い液体へと移動する。これは拡散輸送である。一方、ある異化産物とある電解質は、交換体の2つの区画間に生じた圧力差の影響下で膜を介して通過する血漿液によって同伴される。これは対流輸送である。腎臓の上記機能の3つ、すなわち水分の除去、異化産物の排泄および血液の電解濃度の調節は、従って、透析と血液濾過(この組合せを血液透析濾過と呼ぶ)の組み合わせにより、従来の血液治療装置で行われる。体内の酸/塩基平衡の調節に関して、腎不全を克服するために採用されるアプローチは、体内の酸/塩基平衡が調節される機構に作用することであり、この機構は血液の緩衝系から成り、その主要なものは、弱酸として、そのアルカリ塩である重炭酸塩と関連する炭酸を含む。これが、腎不全患者のアシドーシスを是正するために、血液透析セッション中に直接または間接的に、血管経路を介して重炭酸塩とともにその人に投与する理由である。腎治療の分野では、持続的腎代替療法(CRRT)が急性腎障害の重症患者に広く用いられており、回路の開存性を維持するためには体外血液の抗凝固療法が必要である。ここ数十年、異なる抗凝固戦略が臨床現場で使用されており、ヘパリンが最も一般的に使用されている抗凝固剤である。ヘパリンは低コストで、モニタリングが容易で、逆転が簡単であるという利点があるが、出血を増加させる可能性がある。さらに、生命を脅かす合併症をもたらす可能性のあるヘパリン起因性血小板減少症II型のリスクがある。1980年代初頭に臨床使用に初めて導入された局所クエン酸塩抗凝固療法(RCA)は、CRRT局所回路抗凝固療法の最も適した形態として推奨され、重度の肝機能障害患者でも安全に使用されている。しかしながら、重症患者におけるクエン酸塩注入は、代謝性アルカローシス、低カルシウム血症およびクエン酸塩過剰負荷/毒性につながる可能性のある様々な代謝系に影響を及ぼす。これらの潜在的な障害は、注意深いモニタリング、治療プロトコルの遵守、および臨床診療の訓練を受けたスタッフによるモニタリングによって部分的に解決されることがある。上記の重要性にもかかわらず、クエン酸塩抗凝固療法は、患者の出血リスク(局所抗凝固作用)を最小限にし、体外血液回路寿命を増加させるため、持続的腎代替療法(CRRT)に好ましい抗凝固療法の選択肢となっている。RCAは「大きい」血液速度との互換性に関していくつかの限界があるが、これはCRRTにおいては、効率が主に流体交換速度によって駆動され、かつ治療の大部分が200ml/分以下の血液速度で送達される場合、問題ではない。一方、ECCOR療法の効率は、血液速度に多かれ少なかれ比例し、350~450ml/minの範囲の血液速度が典型的に処方される。これらの大きな血液速度は、患者に注入された大量のクエン酸塩(クエン酸塩負荷)及び関連する作用のため、CRRTで使用される典型的なRCA処方(血液の3.0mmol/Lのクエン酸塩投与量)と明らかに適合しない。高い患者のクエン酸塩負荷の影響は、代謝性アルカローシスとクエン酸塩蓄積/低カルシウム血症を含む。患者に注入されたクエン酸塩の速い代謝は、RCAを成功させる重要なメカニズムの一部である。クエン塩酸代謝はエネルギーを産生するとともに、重炭酸塩とCOを産生する一方で、複合カルシウムを放出する。大量のクエン酸塩が患者に注入される状況では、代謝性アルカローシスが生成される時点まで、大量の重炭酸塩が生成される。クエン酸塩の蓄積は、全身クエン酸塩濃度が有意に増加するシナリオと一致する。「正常の」クエン酸塩負荷がクエン酸塩代謝不良と組み合わされた、及び「正常の」クエン酸塩代謝が大きなクエン酸塩負荷と組み合わされた2つの状況でそれは発症する可能性がある。第1のシナリオは、クエン酸塩からの重炭酸塩の産生速度が低いため、代謝性アシドーシスに至る可能性が高い。2番目のシナリオは、特にECCOR-RCA文脈におけるCRRT治療に関して考慮されるべきである。クエン酸塩の蓄積の結果は、(全身性の)イオン化カルシウムを生理的範囲内に保つために、総カルシウム濃度を上昇させる必要がある。これはカルシウム注入速度を上げることによって達成される。全身クエン酸塩濃度の安定化(6~8時間)後に安全な定常状態に到達されることから、この問題は治療開始中の一時的な問題である。しかしながら、治療を中止すると(クエン酸塩が代謝され、複合体に結合したカルシウムが放出されるため)高カルシウム血症のエピソードに至ることがある。臨床現場では、クエン酸塩蓄積は全身性のイオン化カルシウムに対する総量比(クエン酸塩蓄積の可能性を示す比>2.5)のモニタリングを介して診断される。したがって、局所抗凝固療法はヘパリンの悪影響を高度に軽減する可能性があるが、RCAは患者血液の酸塩基平衡を適切にモニタリングする必要があり、アルカローシスのリスクを大幅に増大させる。さらに、ECCOR療法では、ECCORとRCAモダリティの矛盾した要求のために、RCAを満足に実装することができない。
ECCORでは、CO除去性能は、血流に伴って除去率が強く増加する血液速度と直接的に関係している。
中程度の流体交換速度(約30ml/kg/h)の現在のCRRT動作条件では、高い血液速度は、代謝性アルカローシスと低カルシウム血症の両方につながる可能性のある患者への過剰なクエン酸塩注入(返血を介して)につながるため、不可能である。このように、現行のECCORおよびRCA-CRRTの設計は、入手可能な市販のCRRTシステムにおいて、RCAを有するCRRTが200ml/minを超える血液速度ではほとんど安全に実施されない場合、満足のいくCO除去(50ml/minを超える除去)の送達を不可能にする、血液速度に矛盾した要件で駆動する。
【0003】
EP0678301は、以下の事故または外科手術後の一時的な腎不全に苦しむ人の治療に特に適応した集中治療のための人工腎臓に関するものである。先行技術文献で明らかにされているように、血漿老廃物(例えば、尿素)の精製および過剰な水分の除去に加えて、腎臓は血液の酸塩基平衡の維持に重要な役割を果たす。血液の重炭酸塩の最終濃度は、潅流液又は透析液の重炭酸塩の濃度、それらのそれぞれの速度、及び膜交換体を通る患者の血液の速度に依存するので、文書EP0678301に基づく主な問題点は、患者の血液の重炭酸塩の濃度が所望の濃度に正確に対応することはほとんどないことである。EP0678301は、膜で隔てられた2つのチャンバーを有するダイアライザーを含む血液治療装置を記載している。透析液容器(いかなる重炭酸塩を含まない)は、ダイアライザーの第2チャンバーに通る管を介して流体ポンプに接続される。電磁クランプは、ダイアライザーまたは血液回路のいずれかに容器を接続するために提供される。血液回路の戻りラインにバブルトラップが設けられる。バブルトラップは、重炭酸塩の溶液を含む注入容器に連結されている。EP0678301に従い、式のいずれかによって患者に送達される治療の種類に関係なく、透析液ポンプの速度QOUTの関数として循環ポンプの速度QHCO3が制御される。
HCO3=QOUT [HCODES/[HCOSOL
又は次の式によって、
HCO3=Cl[HCODES/[HCOSOL
HCO3は循環ポンプの速度である、
OUTは透析液ポンプの速度QOUTである、
[HCO3]DESは患者の血液の重炭酸塩の所望濃度である、
[HCO3]SOLは容器の流体の濃度である、
Clは重炭酸塩のダイアライザーのクリアランスである。
【0004】
特に、この従来技術は、以下の透析機械構成、後希釈を伴うHFおよび後希釈を伴うHD(F)に専ら働くクリアランス/透析液速度に基づく重炭酸塩溶液の後注入の特定の制御を使用することによって、患者の血液の酸塩基平衡を適切に調整することに向けられている。したがって、クエン酸塩が血液ポンプ前に注入され(例えば、局所抗凝固システム)、および/または重炭酸塩含有溶液が前注入される構成における適切な酸塩基管理の問題は、未解決のままである。
【0005】
特定の患者の状態に適応することに関して、プロトコルは、患者のモニタリングデータがアルカローシスまたはアシドーシスの問題を証拠づけている場合に、クエン酸塩の注入または透析液/置換液速度を調節するためのガイドラインを(系統的にはほど遠くない)含むことができる。これらのガイドラインは、存在する場合には、大部分が経験的なものに見える。アシドーシスの場合、重炭酸塩「ボーラス」の注入に関する文献報告がいくつかある。いくつかの公表されたプロトコルは、いくつかの上流モデルから導き出されるが、いずれの「オリジナルの」プロトコルパラメータが使用されているか、あるいはこれらが患者モニタリングデータにさらに調整された後であっても、治療から期待される緩衝剤平衡を代表するパラメータは明示的に利用可能ではない。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、先行技術の欠点の少なくとも1つを軽減または修正することができる体外血液治療装置を提供することである。
【0007】
詳細には、酸-バランス制御/管理を可能にすることが本実施形態の目的であり、システムはまた、体外血液回路の緩衝剤平衡を容易かつ制御された方法で変化させるように設計されている。
【0008】
さらなる目標は、患者のアルカローシスまたはアシドーシスの重大なリスクにおける処方の場合、特に処方者が透析の専門家ではない可能性があるICU環境、および/またはRCAで開始する場合に、オペレータに警告することによりRCA処方の安全性を高めることである。
【0009】
いくつかの実施形態は、標準処方が適応されない可能性のある「異常の」サイズの患者に対してより容易で/安全なRCA処方を行う。
【0010】
記載された実施形態のいくつかのさらなる目的は、CRRT治療中に局所抗凝固を使用するCRRT+ECCOR治療および/または体外血液治療を安全に可能にするように構成された体外血液治療装置を提供すること、すなわち、ECCOR治療および局所抗凝固を使用するCRRT治療、特にRCAを提供できる透析装置を利用できるようにすることである。
【0011】
補助目標は、大きな血液速度でシステムを操作する構成であっても緩衝剤平衡を許容範囲内に保つように構成された体外血液治療装置を利用できるようにすることである。
【0012】
上記の目的の少なくとも1つは、単独で、又は任意の組合せでとられた、添付されたクレームの1つ以上のような装置及び対応する方法によって達成される。
【0013】
本発明の第一の独立した態様によれば、体外血液治療装置、特に持続的腎代替療法(CRRT)装置は、
半透膜(5)によって隔てられたプライマリチャンバー(3)とセカンダリチャンバー(4)を有する濾過ユニット(2)と、
前記プライマリチャンバー(3)の入口に接続された採血ライン(6)、及び前記プライマリチャンバー(3)の出口に接続された返血ライン(7)を有する血液回路であって、患者の心血管系に接続するように構成されている血液回路(17)と、
前記血液回路(17)で血液を循環させる血液ポンプ(21)と、
前記セカンダリチャンバー(4)の出口に接続された透析液ライン(13)と、
それぞれの溶液を血液中に移すための1つ以上のライン(8;51;57;58;63;69;67;74)と、
前記1つ以上のラインのそれぞれについての溶液の少なくとも1つの流体源であって、前記溶液が重炭酸塩又は重炭酸塩前駆体の形態で少なくとも1つの緩衝剤を含む、前記1つ以上のラインのそれぞれについての溶液の少なくとも1つの流体源と、
CRRT血液治療を設定するためのパラメータを含む患者の処方を受け取るように構成された制御部(12)と、を備え、
前記制御部(12)は、
CRRT血液治療を受けなければならない前記患者の前記血液の定常状態の酸塩基平衡を示すパラメータ(Jbuffer_load/BW)を決定する、前記パラメータは、前記流体源の前記緩衝剤の前記濃度の関数として、及び、重炭酸塩及び/又は重炭酸塩前駆体の前記推定された又は計算された患者の全身定常状態濃度の関数として決定され、又は
前記CRRT血液治療を受けなければならない前記患者の前記血液の定常状態の重炭酸塩濃度を示すパラメータ(CpHCO3_pat)を決定する、前記パラメータは、前記流体源の前記緩衝剤の前記濃度の関数として、及び、前記患者の前記血液の定常状態の酸塩基平衡を示す前記推定された又は計算された正味緩衝剤負荷(Jbuffer_load/BW)の関数として決定される、
ようにさらに構成される。
【0014】
さらなる独立態様において、CRRT血液治療を受けなければならない患者の血液の定常状態の重炭酸塩濃度を示すパラメータを決定する方法が提供され、方法は、体外血液治療装置、特に持続的腎代替療法(CRRT)装置用であり、体外血液治療装置は、
半透膜(5)によって隔てられたプライマリチャンバー(3)とセカンダリチャンバー(4)を有する濾過ユニット(2)と、
前記プライマリチャンバー(3)の入口に接続された採血ライン(6)、及び前記プライマリチャンバー(3)の出口に接続された返血ライン(7)を有する血液回路であって、患者の心血管系に接続するように構成されている血液回路(17)と、
前記血液回路(17)で血液を循環させる血液ポンプ(21)と、
前記セカンダリチャンバー(4)の出口に接続された透析液ライン(13)と、
それぞれの溶液を血液中に移すための1つ以上のライン(8;51;57;58;63;69;67;74)と、
前記1つ以上のラインのそれぞれについての溶液の少なくとも1つの流体源であって、前記溶液が重炭酸塩又は重炭酸塩前駆体の形態で少なくとも1つの緩衝剤を含む、前記1つ以上のラインのそれぞれについての溶液の少なくとも1つの流体源と、
制御部(12)と、を備える。
前記方法は、
CRRT血液治療を設定するためのパラメータを含む患者処方を受け取ることと、CRRT血液治療を受けなければならない患者の血液の定常状態の重炭酸塩濃度を示すパラメータ(Jbuffer_load/BW)を決定することと、を含み、前記パラメータは、前記流体源の前記緩衝剤の濃度の関数として、及び、重炭酸塩及び/又は重炭酸塩前駆体の前記推定された又は計算された患者の全身定常状態濃度の関数としてとして決定され、ステップは制御部によって実行される。
【0015】
さらなる独立態様において、CRRT血液治療を受けなければならない患者の血液の定常状態の重炭酸塩濃度を示すパラメータ(CpHCO3_pat)を決定する方法が提供され、方法は、体外血液治療装置、特に持続的腎代替療法(CRRT)装置用であり、体外血液治療装置は、
半透膜(5)によって隔てられたプライマリチャンバー(3)とセカンダリチャンバー(4)を有する濾過ユニット(2)と、
前記プライマリチャンバー(3)の入口に接続された採血ライン(6)、及び前記プライマリチャンバー(3)の出口に接続された返血ライン(7)を有する血液回路であって、患者の心血管系に接続するように構成されている血液回路(17)と、
前記血液回路(17)で血液を循環させる血液ポンプ(21)と、
前記セカンダリチャンバー(4)の出口に接続された透析液ライン(13)と、
それぞれの溶液を血液中に移すための1つ以上のライン(8;51;57;58;63;69;67;74)と、
前記1つ以上のラインのそれぞれについての溶液の少なくとも1つの流体源であって、前記溶液が重炭酸塩又は重炭酸塩前駆体の形態で少なくとも1つの緩衝剤を含む、前記1つ以上のラインのそれぞれについての溶液の少なくとも1つの流体源と、
制御部(12)と、を備える。
前記方法は、
CRRT血液治療を設定するためのパラメータを含む患者処方を受け取ることと、CRRT血液治療を受けなければならない患者の血液の定常状態の重炭酸塩濃度を示すパラメータ(CpHCO3_pat)を決定することと、を含み、前記パラメータは、前記流体源の前記緩衝剤の濃度の関数として、及び、重炭酸塩及び/又は重炭酸塩前駆体の前記推定された又は計算された患者の全身定常状態濃度の関数としてとして決定され、ステップは制御部によって実行される。
【0016】
以前の態様のいずれか1つによれば、第2の態様において、CRRT治療を受けている患者の血液の定常状態の酸塩基平衡を示すパラメータ(Jbuffer_load/BW)は、定常状態で予測される患者における正味緩衝剤負荷(NBL)、特に定常状態で予測される患者における正味の緩衝(nNBL)負荷のパラメータ関数であり、より詳細には、
【0017】
前の態様によれば、第3の態様において、正味緩衝剤負荷(NBL)は、患者の体重(BW)に対して正規化される。
【0018】
前の態様のいずれか1つによれば、第4の態様において、重炭酸塩前駆体は、クエン酸塩、乳酸塩および/または酢酸塩を含む。
【0019】
前の態様のいずれかによれば、第5の態様において、溶液の前記少なくとも1つの流体源は、溶液を血液に注入するためにラインの端部に接続された溶液バッグを含む。
【0020】
前の態様のいずれかによれば、第6の態様において、血液にそれぞれの溶液を注入する前記1つ以上のライン(8;51;58;63;74)は、重炭酸塩又は重炭酸塩前駆体を含む置換液を前記血液に注入するための、特に前記置換液を前記血液回路(17)に直接注入するための注入ライン(63)を備える。好ましくは、置換液は重炭酸塩を含む。
【0021】
前の態様のいずれかによれば、第7の態様において、装置は、重炭酸塩を含む溶液を血液に注入するための前記注入ライン(63)の端部に接続された置換液バッグ(64)を備える。
【0022】
前の2つの態様によれば、第8の態様において、前記注入ライン(63)は、重炭酸塩を含む前記溶液を後注入するために前記返血ライン(7)に接続され、特に、前記注入ライン(63)は、前記濾過ユニット(2)の上流及び下流の両方に注入することを可能にするために、前注入ブランチ(67)と後注入ブランチ(69)を備える。
【0023】
前の3つの態様のいずれか1つによれば、第9の態様において、前記注入ライン(63)は、重炭酸塩を含む前記溶液を前注入するために前記採血ライン(6)に接続され、特に、前記注入ライン(63)は、前記濾過ユニット(2)の上流及び下流の両方に注入することを可能にするために、前注入ブランチ(67)と後注入ブランチ(69)を備える。
【0024】
前の4つの態様のいずれか1つにれば、第10の態様において、置換液注入速度(Qrep)を決定するために前記注入ライン(63)で動作する注入ポンプ(65)を含む。
【0025】
前の態様のいくつかによれば、第11の態様において、血液にそれぞれの溶液を注入するための前記1つ以上のライン(8;51;58;63;74)は、前記血液回路(17)に重炭酸塩を含む透析液を、特に注入ブランチ(58)を介して、直接注入するための供給ライン(8)を含む。
【0026】
前の態様によれば、第12の態様において、前記装置は、濾過ユニット(2)へおよび/または血液回路(17)へ重炭酸塩を含む溶液を注入するために前記供給ライン(8)の端部に接続された透析液バッグ(64)を含む。
【0027】
前の2つの態様によれば、第13の態様において、前記注入ブランチ(58)は、重炭酸塩を含む前記溶液を後注入するために、前記返血ライン(7)に接続され、特に、前記供給ライン(8)は流体を前記濾過ユニットの前記第2のチャンバーに導くためのインテークブランチ(57)を含む。
【0028】
前の3つの態様のいずれかによれば、第14の態様において、前記装置は、前記供給ライン(8)で作動して透析液速度(Qd)を決定する透析流体ポンプ(25)を含む。
【0029】
前の態様のいずれかによれば、第15の態様において、血液にそれぞれの溶液を注入するための前記1つ以上のライン(8;51;58;63;74)は、カルシウムを含むイオン平衡液を前記血液に注入するためのイオン交換注入ライン(74)を含む。
【0030】
前の態様によれば、第16の態様において、前記装置は、イオン平衡液を前記患者に注入するため、又は前記血液回路(17)に注入するために、イオン平衡液バッグ(11)又はイオン交換注入ライン(74)の端部に接続されたシリンジを含む。
【0031】
前の3つの態様のいずれかによれば、第17の態様において、前記装置は、イオン平衡液注入速度(Qca)を決定するために、前記イオン交換注入ライン(74)で動作するイオン交換ポンプ/シリンジ(75)を含む。
【0032】
前の態様のいずれかによれば、第17の第2回の態様において、前記装置は、全身抗凝固剤を体外血液に注入するために、全身抗凝固剤(例えば、ヘパリン)の容器と、全身抗凝固剤の容器および血液回路(17)、特に濾過ユニット(2)の上流に接続された注入ラインを含む。
【0033】
前の態様のいずれかによれば、第18の態様において、それぞれの溶液を血液に注入するための前記1つ以上のライン(8;51;58;63;74)は、クエン酸塩を含み、かつ任意にクエン酸を含む抗凝固剤溶液を血液回路(17)に直接注入するための抗凝固剤ライン(51)を含む。
【0034】
前の態様によれば、第19の態様において、前記装置は、クエン酸塩、及び任意にクエン酸を含む溶液を血液回路(17)に注入するための抗凝固剤ライン(51)の端部に接続された抗凝固剤液バッグ(10)を含む。
【0035】
前の2つの態様のいずれかによれば、第20の態様において、前記抗凝固剤ライン(51)は、前記血液ポンプ(21)の上流の前記血液回路(17)に接続され、前記血液ポンプ(21)は、前記採血ライン(6)で作動する。
【0036】
前の3つの態様のうちのいずれか1つによれば、第21の態様において、前記装置は、抗凝固剤注入速度(Qcit)を決定するために、前記抗凝固剤ライン(51)で作動する抗凝固剤ポンプ(54)を含む。
【0037】
前の態様のいずれか1つによれば、第22の態様において、前記制御部(12)は、前記患者の前記血液の定常状態の酸塩基平衡を示す前記パラメータ(Jbuffer_load/BW)を、
前記患者に注入された前記重炭酸塩前駆体、特にクエン酸塩(Jmet_cit)及び/又は乳酸(Jmet_lact)の代謝から生成された重炭酸塩の単位時間当りの量の推定、
単位時間当たりの量の観点における送達される前記CRRT血液治療からの重炭酸塩バランス(JHCO3_bal)、
単位時間当たりの量の観点における送達される前記CRRT血液治療からの乳酸塩バランス、
単位時間当たりの量の観点における前記流体源に含まれるクエン酸からの酸注入(JH+)、
のうちの1つ以上、及び特に3つに基づいて決定する。
【0038】
前の態様によれば、第23の態様において、前記制御部(12)は、重炭酸塩形態の前駆体代謝(Jmet_cit;Jlact)の前記推定、前記重炭酸塩注入(JHCO3_bal)、前記予め定義された正味緩衝剤負荷(Jbuffer_load)、及び前記酸注入(JH+)の代数和、特に前記酸注入(JH+)は前記患者の緩衝の損失を提供する負の項であることに基づいて、前記患者の前記血液の定常状態の重炭酸塩濃度を示す前記パラメータを決定する。
【0039】
前の態様によれば、第24の態様において、前記制御部(12)は、前記患者の前記血液の定常状態の酸塩基平衡を示す前記パラメータ(Jbuffer_load/BW)を以下のとおり決定し、
あるいは、乳酸バランスも考慮する場合、前記制御部(12)は、前記患者の前記血液の定常状態の酸塩基平衡を示す前記パラメータ(Jbuffer_load/BW)を以下のとおり決定する。
【0040】
前の態様のいずれか1つによれば、第25の態様において、前記制御部(12)は、単位時間あたりの量の観点から、前記流体源に含まれる、例えばクエン酸からの酸注入(JH+)に基づいて、前記患者の前記血液の定常状態の酸塩基平衡を示す前記パラメータ(Jbuffer_load/BW)を決定し(又は前記患者の前記血液の定常状態の重炭酸塩濃度を示す前記パラメータ(CpHCO3_pat)を決定し)、前記酸注入(JH+)はクエン酸濃度(Ccitric_pbp)及び酸の注入速度(Qcit)の関数であり、特に、前記酸注入(JH+)はクエン酸の前記注入速度(Qcit)で乗じた前記クエン酸濃度(Ccitric_pbp)の3倍に等しい。
【0041】
前の態様のいずれか1つによれば、第26の態様において、前記制御部(12)は、前記患者に注入されたクエン酸塩の代謝(Jmet_cit)から生成される重炭酸塩の単位時間当たりの量の推定に基づいて、前記患者の前記血液の定常状態の酸塩基平衡を示す前記パラメータ(Jbuffer_load/BW)を決定し(又は前記患者の前記血液の定常状態の重炭酸塩濃度を示す前記パラメータ(CpHCO3_pat)を決定し)、特に、クエン酸塩負荷の前記代謝が、定常状態でクエン酸塩のモル当たり3モルの重炭酸塩をもたらす、すなわち、
【0042】
前の態様によれば、第27の態様において、前記制御部(12)は、クエン酸塩の代謝から生成される前記重炭酸塩の単位時間の当たりの量を計算し、特に前記制御部は、患者のクエン酸塩代謝クリアランス(Kcit_met)の関数としてクエン酸塩負荷(Jcit_load)を計算し、特に前記代謝クリアランスは、例えば、患者の体重(BW)に直接正比例することに基づいて、例えば、以下のとおり決定される、
患者のクエン酸塩の代謝クリアランスは[ml/min]として測定され、体重(BW)は[kg]として測定される。
【0043】
前の2つの態様のいずれかによれば、第28の態様において、クエン酸塩の代謝から生成される前記重炭酸塩の単位時間当たりの量、特に前記制御部は、クエン酸塩クリアランス(Kcit)の関数である前記クエン酸塩負荷(Jcit_load)を計算し、特に、前記制御部(12)は、1つ以上の速度、特に1つ以上の透析液速度(Qd)、血漿水分速度(Qpwinlet)、濾過ユニット(2)における限外濾過速度(Qfil)の1つ以上を含む関数として前記クエン酸塩クリアランス(Kcit)を決定する。
【0044】
前の態様によれば、第29の態様において、前記制御部(12)は、CRRT治療を意図した前記濾過ユニット(2)の関数として、特に、クエン酸塩に対する篩係数(SCcit)及び/又はクエン酸塩の拡散物質移動抵抗(K0cit)に対する濾過ユニット表面積の比の関数として、前記クエン酸塩クリアランス(Kcit)を決定する。
【0045】
前の2つの態様のいずれかによれば、第30の態様において、前記制御部12は、以下の関係に従って、前記クエン酸塩クリアランス(Kcit)を決定する、
前記表記は前記用語集に含まれている。
【0046】
前の5つの態様のいずれか1つによれば、第31の態様において、前記制御部(12)は、濾過ユニット入口および/または血漿速度(Qp)における血漿水分速度(Qpwinlet)の関数として、クエン酸塩の代謝から生成される単位時間当たりの重炭酸塩の量(Jmet_cit)を計算し、特に前記制御部(12)は、次の式に従って濾過ユニット入口における血漿水分速度(Qpwinlet)を決定する。
前記表記は前記用語集に含まれている。
【0047】
前の6つの態様のいずれかによれば、第32の態様において、前記制御部(12)は、クエン酸塩の代謝から生成される前記重炭酸塩の単位時間当たりの量を計算し、特に前記制御部は、クエン酸塩投与量(Dcit)及び血液速度(Qb)の関数として、すなわちDcit・Qbに従って、又は抗凝固剤ライン(51)及び総クエン酸塩濃度(Ccit_pbp)におけるクエン酸塩速度(Qcit)の関数として、すなわち、Qcit・Ccitpbpに従って、代替的に前記クエン酸塩負荷(Jcit_load)を計算する。
【0048】
前の7つの態様のいずれかによれば、第33の態様において、前記制御部(12)は、以下の式に従って、クエン酸塩の代謝から生成される単位時間当たりの重炭酸塩の量を算出する。
【0049】
前の8つの態様のいずれかによれば、第33の第2回の態様において、前記制御部(12)は、以下の式に従って、クエン酸塩(Jmet_cit)の代謝から生成される単位時間当たりの重炭酸塩の量を計算する。
患者の全身濃度を0と仮定するものとする。
【0050】
前の態様のいずれか1つによれば、第34の態様において、前記制御部(12)は、単位時間当たりの量の観点における送達される前記CRRT血液治療からの重炭酸塩バランス(JHCO3_bal)に基づいて、前記患者の前記血液の定常状態の酸塩基平衡を示す前記パラメータ(Jbuffer_load/BW)を決定し、特に前記重炭酸塩バランス(JHCO3_bal)は、前記透析液及び/又は前記置換液からの注入速度(JHCO3_inf)と、透析液への前記重炭酸塩除去(JHCO3_dial)との間の差分である。
【0051】
前の態様によれば、第35の態様において、前記制御部(12)は、前記重炭酸塩バランス(JHCO3_bal)を、前記置換液の速度(Qrep)と重炭酸塩濃度(CHCO3_rep)、すなわちQrep・CHCO3_repの関数として計算する。
【0052】
前の2つの態様のいずれか1つによれば、第36の態様において、前記制御部(12)は、重炭酸塩クリアランス(KHCO3)の関数として重炭酸塩バランス(JHCO3_bal)を計算し、特に、前記制御部(12)は、1つ以上の速度、特に、1つ以上の透析液速度(Qd)、血液速度(Qbwinlet)、濾過ユニット(2)の限外濾過速度(Qfil)を含む関数として、前記重炭酸塩クリアランス(KHCO3)を決定する。
【0053】
前の態様によれば、第37の態様において、前記制御部(12)は、CRRT治療を意図した前記濾過ユニット(2)の関数として、特に、重炭酸塩に対する篩係数(SCHCO3)及び/又は重炭酸塩に対する濾過ユニット表面積の拡散物質移動抵抗(S/RTHCO3)に対する比の関数として、前記重炭酸塩クリアランス(KHCO3)を計算する。
【0054】
前の2つの態様のいずれかによれば、第38の態様において、前記制御部(12)は、次のような関係に従って、前記重炭酸塩クリアランスを決定するように構成されている。
表記は用語集に含まれている。
【0055】
前の5つの態様のいずれかによれば、第39の態様において、前記制御部(12)は、濾過ユニット入口および/または血液速度(Qbw)における血液速度(Qbwinlet)の関数として、重炭酸塩バランス(JHCO3_bal)を計算するように構成されており、特に前記制御部(12)は、次の式に従って、フィルター入口における血液速度(Qbwinlet)を決定する。
前記表記は前記用語集に含まれる。
【0056】
前の5つの態様のいずれかによれば、第40の態様において、前記制御部(12)は、前記重炭酸塩バランス(JHCO3_bal)を、フィルター入口における重炭酸塩血漿水分濃度(CpwHCO3_inlet)、特にフィルター入口における重炭酸塩血漿水分濃度(CpwHCO3_inlet)と前記透析液の重炭酸塩濃度(CHCO3_d)との間の差分の関数として、計算する。
【0057】
前の6つの態様のいずれかによれば、第41の態様において、前記制御部(12)は、前記透析液の重炭酸塩濃度(CHCO3_d)の関数として、特に、フィルター入口における重炭酸塩血漿水分濃度(CpwHCO3_inlet)と前記透析液の重炭酸塩濃度(CHCO3_d)との差分の関数として、前記重炭酸塩バランス(JHCO3_bal)を計算する。
【0058】
前の2つの態様のいずれかによれば、第42の態様において、前記制御部(12)は、フィルター入口での前記重炭酸塩血漿水分濃度(CpwHCO3_inlet)を、血液速度(Qbw)、フィルター入口での血液速度(Qbwinlet)、置換液注入前の速度(Qrep_pre)の1つ以上を含む流速の関数として、および/または、置換液の重炭酸塩濃度(CHCO3_pre)と患者の血漿重炭酸塩濃度の1つ以上を含む重炭酸塩濃度(CpHCO3_pat)の関数として、計算するように構成されている。
【0059】
前の8つの態様のいずれか1つによれば、第43の態様において、前記制御部(12)は、濾過ユニット(2)における限外濾過速度(Qfil)と透析液の重炭酸塩濃度(CHCO3_d)、すなわち、Qfil・CHCO3_dの関数として、前記重炭酸塩バランス(JHCO3_bal)を計算する。
【0060】
前の9つの態様のいずれかによれば、第44の態様において、前記制御部(12)は、次の式に従って、前記重炭酸塩バランス(JHCO3_bal)を計算するように構成されている。
【0061】
前の態様のいずれかによれば、第45の態様において、前記制御部(12)は、単位時間当たりの量の観点における送達されるCRRT血液治療からの乳酸バランス(Jlact_bal)に基づいて、患者の血液の定常状態の酸塩基平衡を示す前記パラメータ(Jbuffer_load/BW)を決定し(又は、患者の血液の定常状態の重炭酸塩濃度を示すパラメータ(CpHCO3_pat)を決定し)、特に、前記乳酸塩バランス(Jlact_bal)は、透析液および/または置換液からの乳酸塩注入速度(Jlact_inf)と透析液への乳酸塩除去(Jlact_dial)との間の差分である。
【0062】
前の態様のいずれかによれば、第46の態様において、前記制御部(12)は、前記置換液の置換液速度(Qrep)と乳酸塩濃度(Clact_rep)の関数として、すなわち、Qrep・Clact_repの関数として、乳酸塩バランス(Jlact_bal)を計算する。
【0063】
前の2つの態様のいずれかによれば、第47の態様において、前記制御部(12)は、乳酸塩クリアランス(Klact)の関数として、乳酸塩バランス(Jlact_bal)を計算し、特に、前記制御部(12)は、特に、透析液速度(Qd)、血液速度(Qbwinlet)、濾過ユニット(2)における限外濾過速度(Qfil)の1つ以上を含む、1つ以上の流速の関数として、乳酸塩クリアランス(Klact)を決定する。
【0064】
前の態様によれば、第48の態様において、前記制御部(12)は、CRRT治療のために意図された前記濾過ユニット(2)の関数として、特に、乳酸塩についての篩係数(SClact)および/または乳酸塩についての拡散物質移動抵抗(S/RTlact)に対する濾過ユニット表面積の比の関数として、前記乳酸塩クリアランス(Klact)を計算する。
【0065】
前の2つの態様のいずれかによれば、第49の態様において、前記制御部(12)は、以下の関係に従って、前記乳酸塩クリアランスを決定するように構成される。
前記表記は前記用語集に含まれる。
【0066】
前の5つの態様のいずれかによれば、第50の態様において、前記制御部(12)は、濾過ユニット入口および/または血液速度(Qbw)における血液速度(Qbwinlet)の関数として、乳酸塩バランス(Jlact_bal)を計算し、特に、前記制御部(12)は、次の式に従って、フィルター入口における血液速度(Qbwinlet)を決定する。
前記表記は前記用語集に含まれる。
【0067】
前の6つの態様のいずれか1つによれば、第51の態様において、前記制御部(12)は、フィルター入口における乳酸塩血漿水分濃度(Cpwlact_inlet)の関数として、特に、フィルター入口における乳酸塩血漿水分濃度(Cpwlact_inlet)と透析液における乳酸塩濃度(Clact_d)との差分の関数として、乳酸塩バランス(Jlact_bal)を算出する。
【0068】
前の7つの態様のいずれか1つによれば、第52の態様において、前記制御部(12)は、透析液の乳酸塩濃度(Clact_d)の関数として、特にフィルター入口における乳酸血漿水分濃度(Cpwlact_inlet)と透析液の乳酸塩濃度(Clact_d)との差分の関数として、乳酸塩バランス(Jlact_bal)を算出する。
【0069】
前の2つの態様のいずれかによれば、第53の態様において、前記制御部(12)は、フィルター入口での乳酸血漿水分濃度(Cpwlact_inlet)を、血液速度(Qbw)、フィルター入口での血液水分速度(Qbw_inlet)及び置換液の注入前速度(Qrep_pre)の1つ以上を含む注入速度、および/または置換液の乳酸塩濃度(Clact_rep)および患者の血漿乳酸塩濃度(Cplact_rep)の1つ以上を含む乳酸塩濃度の関数として計算するように構成されている。
【0070】
前の8つの態様のいずれか1つによれば、第54の態様において、前記制御部(12)は、濾過ユニット(2)における限外濾過速度(Qfil)および透析液の乳酸塩濃度(Clact_d)の関数として、すなわち、Qfil・Clact_dの関数として、乳酸塩バランス(Jlact_bal)を算出する。
【0071】
前の9つの態様のいずれか1つによれば、第55の態様において、前記制御部(12)は、以下の式に従って、乳酸塩バランス(Jlact_bal)を算出する。
【0072】
前の態様のいずれかによれば、第56の態様において、前記制御部(12)は、前記患者の前記血液の定常状態の酸塩基平衡を示す前記パラメータ(又は前記患者の前記血液の定常状態の重炭酸塩濃度(CpHCO3_pat)を示す前記パラメータ)を閾値と比較するように構成されており、前記閾値が上限閾値である場合、前記制御部(12)は、前記パラメータが前記上限閾値よりも高い場合にアラートを生成し、前記閾値が下限閾値である場合、前記制御部(12)は、前記パラメータが前記下限閾値よりも低い場合にアラートを生成する。
【0073】
前の態様によれば、第57の態様において、前記パラメータが前記閾値を超える場合には、前記制御部(12)は、前記アラートを発行し、入力された患者の処方を維持するか、又は前記アラートを発行し、前記入力された患者の処方を拒否するように構成され、
特に、前記入力された処方が拒否される場合には、前記制御部(12)は、
以前の有効な患者の処方を復元するか、又は
血液速度、及び/又はクエン酸塩投与量などの前記患者の処方の一つ以上のパラメータを、新しい有効な患者の処方を定義する提案された値に自動的にシフトする、
ようにさらに構成されている。
【0074】
前の2つの態様のいずれかによれば、第58の態様において、定常状態の患者の重炭酸塩濃度、特に25mmolに等しい目標設定を仮定すると、閾値は、特に、0.25~0.5mmol/h/kgの間で構成される上限閾値を含み、特に、
第1の上限閾値(nNBL1)は0.25~0.35mmol/h/kgの間で構成され、例えば前記第1の閾値(nNBL1)は約0.3mmol/h/kgであり、及び/又は
第2の上限閾値(nNBL2)は0.35~0.5mmol/h/kgの間、より詳細には0.4~0.45mmol/h/kgの間で構成され、例えば前記第2の閾値(nNBL2)は約0.4mmol/h/kgである。
【0075】
前の3つの態様のいずれかによれば、第59の態様において、前記閾値は、0~0.2mmol/h/kgの間で構成される下限閾値を含み、特に前記下限閾値(nNBL2)が約0.1mmol/h/kgであり、前記制御部(12)は、前記パラメータが前記下限閾値より低い場合に、入力される処方を発行及び警告及び/又はブロックするようにさらに構成されている。
【0076】
前の態様のいずれかによれば、第60の態様において、制御ユニット(12)は、第1の上限閾値(nNBL1)を有するおよび/または第1の上限閾値(nNBL1)よりも高い第2の上限閾値(nNBL2)を有する患者の血中の定常状態の酸塩基平衡を示すパラメータを比較するように構成されており、前記パラメータが第1の上限閾値(nNBL1)よりも高く、第2の上限閾値(nNBL2)よりも低い場合、制御ユニット(12)は、警告を発するように構成されており、特に入力された患者処方が許容可能なままであり、パラメータが第2の上限閾値(nNBL2)よりも高い場合、制御ユニット(12)は、入力された患者処方を拒否するように構成される。
【0077】
前の態様のいずれかによれば、第61の態様において、前記制御部(12)は、CRRT血液治療を開始する前に、患者の血液の定常状態の酸塩基平衡を示すパラメータを決定する(又は患者の血液の定常状態の重炭酸塩濃度を示すパラメータを決定する)ように構成されている。
【0078】
前の態様のいずれかによれば、第62の態様において、前記制御部(12)は、患者の処方パラメータを受け取り、1つ以上の処方パラメータ又は処方パラメータから直接導かれるパラメータに基づいて、患者の血液の定常状態の酸塩基平衡を示すパラメータを決定する(又は患者の血液の定常状態の重炭酸塩濃度(CpHCO3_pat)を示すパラメータを決定する)ように構成されている。
【0079】
前の態様のいずれかによれば、第63の態様において、前記制御部(12)は、前記血液回路(17)の血液速度(Qb)、透析液供給ライン(8)の透析液の透析液速度(Qd)、前記患者から除去すべき患者の流体除去速度(Qwl)、及び透析液速度(Qdial)の1つ以上を含む前記患者の処方を受け取り、特に前記制御部(12)は、前記血液回路(17)の前記血液速度(Qb)、前記透析液供給ライン(8)の前記透析液の透析液速度(Qd)及び前記患者から除去すべき前記患者の流体除去速度(Qwl)を含む患者の処方パラメータを受け取るように構成されている。
【0080】
前の態様のいずれかによれば、第64の態様において、前記制御部(12)は、
置換液の速度(Qrep)、すなわち、前及び後の濾過ユニット(2)に注入された置換液の総速度、及び置換液の前又は後の注入比率(PRE%)、又は、
置換液の注入後速度(Qpost)及び/又は置換液の注入前速度(Qpre)、
を含む患者の処方パラメータを受け取るように構成されている。
【0081】
前の態様のいずれかによれば、第65の態様において、前記制御部(12)は、カルシウム補償パラメータ(CaComp)を含む患者処方パラメータ、すなわち、百分率で表される透析液の推定カルシウム損失を補償するためのカルシウム注入の相対投与量を受け取るように構成されている。
【0082】
前の態様のいずれかによれば第66の態様において、前記制御部(12)は、乳酸塩の影響を無視して、患者の血液の定常状態の酸塩基平衡を示すパラメータを決定するように構成されている。
【0083】
前の態様のいずれかによれば、第67の態様において、前記制御部(12)は、患者の血漿重炭酸塩濃度(CpHCO3_pat)について一定値を課す患者の血液の定常状態の酸塩基平衡を示すパラメータを決定するように構成されており、前記一定値は例えば25mMである。
【0084】
前の態様のいずれかによれば、第67の第2回の態様において、前記制御部(12)は、定常状態における患者のための正規化された正味緩衝剤負荷(NBL)に対して一定値を課す患者の血液の定常状態の重炭酸塩濃度を示すパラメータ(CpHCO3_pat)を決定するように構成され、前記一定値が例えば0.1mmol/h/kgである。
【0085】
前の態様のいずれかによれば、第68の態様において、前記制御ユニット(12)は、患者の血漿乳酸塩濃度(Cplact)に対して一定値を課して、患者の血液の定常状態の酸塩基平衡を示すパラメータを決定する(又は患者の血液の定常状態の重炭酸塩濃度を示すパラメータ(CpHCO3_pat)を決定する)ように構成され、前記一定値は例えば1.5mMである。
【0086】
前の態様のいずれかによれば、第69の態様において、患者の血液の定常状態の酸塩基平衡を示すパラメータは、患者の血漿重炭酸塩濃度(CpHCO3_pat)が、例えば25mMなどの設定された一定値で安定化されている定常状態で予期される正味緩衝剤負荷バランスである。
【0087】
前の態様のいずれかによれば、第70の態様において、前記制御部(12)は、前記患者の全身定常状態の重炭酸塩濃度、特に25mMについて推定される固定値を受け取る。
【0088】
前の態様のいずれかによれば、第71の態様において、前記制御部(12)は、患者の全身の定常状態における重炭酸塩前駆体濃度、特に乳酸塩について推定した固定値を受け取り、任意で前記推定した固定値は1.5mMである。
【0089】
前の態様のいずれかによれば、第72の態様において、前記装置は、セカンダリチャンバー(4)の入口に接続された透析液供給ライン(8)を含む。
【0090】
前の態様のいずれかによれば、第73の態様において、前記装置は、血液回路(17)に接続された血液入口(46a)および血液出口(46b)を有するCO除去のためのガス交換体(46)を含み、ガス交換体(46)が、濾過ユニット(2)に直列に血液回路(17)に接続されている。
【0091】
前の態様のいずれかによれば、第74の態様において、前記制御部(12)は、特に、血液速度(Qb)に基づいて、クエン酸塩注入速度(Qcit)を計算するように構成されている。
【0092】
前の態様のいずれかによれば、第75の態様において、局所抗凝固剤(10)の源は、クエン酸塩、特にクエン酸三ナトリウムおよび任意にクエン酸を含む。
【0093】
第73の態様と前の態様のいずれかによれば、第76の態様において、ガス交換体(46)は、膜によって隔てられた血液チャンバーとガスチャンバーを有し、ガス交換体は、ガスチャンバーと流体連通しているガス入口(52)およびガス出口(53)を含み、血液入口(46a)および血液出口(46b)は、血液チャンバーと流体連通している。
【0094】
前の態様によれば、第77の態様において、ガス交換体(46)は、採血ライン(6)と接続されて流体連通された濾過ユニット(2)の上流に位置しているか、又はガス交換体(46)が返血ライン(7)と接続されて流体連通された濾過ユニット(2)の下流に位置している。
【0095】
前の態様のいずれかによれば、第78の態様において、前記装置は、透析液供給ラインに流体を供給するための透析液の源を含み、透析液はカルシウムイオンを実質的に含まない。
【0096】
前の態様のいずれかによれば、第79の態様において、装置は、透析液供給ラインに流体を供給するための緩衝剤を含む透析流体の源を含み、透析流体の緩衝剤濃度は、0~50mmol/l、特に10mmol/l~40mmol/lの間で構成される。
【0097】
前の第1~78の態様のいずれかによれば、第80の態様において、装置は、透析液供給ラインに流体を供給するための透析液の源を含み、透析液は緩衝剤を実質的に含まない。
【0098】
前の態様のいずれか1つによれば、第80の第2回の態様において、装置は、緩衝剤を含む置換液バッグ(64)を含み、置換液の緩衝剤濃度は、0~1000mmol/lの間、特に100mmol/l~200mmol/lの間、任意で緩衝剤を含まない透析液および/または緩衝剤を含まない他の置換液との組み合わせにおいて、特に50mmol/l~100mmol/lの間、任意で透析液の低緩衝剤含有量(例えば、<25mmol/l)および/または他の置換液の低緩衝剤含有量(例えば、<25mmol/l)と組み合わせて含まれ、それぞれの溶液を血液に注入するための前記1つ以上のライン(8;51;58;63;74)は、血液に置換液を注入するための置換液バッグ(64)に接続された注入ライン(63)を含む。
【0099】
前の態様のいずれかによれば、第80の第3回の態様において、装置は、置換液を含む置換液バッグ(64)を備え、置換液は、緩衝剤を実質的に含まず、それぞれの溶液を血液に注入するための1つ以上のライン(8;51;58;63;74)は、置換液を血液に注入するための置換液バッグ(64)に接続された注入ライン(63)を備える。
【0100】
前の態様のいずれか1つによれば、第80の第4回の態様において、緩衝剤は、重炭酸塩を含む(および任意である)。
【0101】
前の態様のいずれかによれば、第81の態様において、装置は、透析液供給ライン(8)で作動する透析ポンプ(25)と、透析ポンプ(25)を動作可能なように接続される制御部(12)とを含み、制御部は、透析液速度(Qd)を発生させるために透析ポンプ(25)を駆動するように構成されている。
【0102】
前の態様のいずれかによれば、第82の態様において、装置は、透析液ライン(13)で作動する透析液ポンプ(26)と、透析液ポンプ(26)を動作可能なように接続される制御部(12)とを含み、制御部は透析液速度(Qdial)を生成するために透析液ポンプ(26)を駆動するように構成されている。
【0103】
前の態様のいずれかによれば、第83の態様において、制御部(12)は、血液に抗凝固剤を送達するために、抗凝固剤ポンプ(10)を動作可能なように接続され、クエン酸塩を含む抗凝固剤および抗凝固剤投与量は、1,5mmol/l~6mmol/lの間で構成され、特に、2mmol/l~4mmol/lの範囲に含まれ、詳細には約3mmol/lである。
【0104】
前の態様のいずれか1つによれば、第84の態様において、制御部(12)は、患者の血液の定常状態の重炭酸塩濃度を示すパラメータ(CpHCO3_pat)を、より詳しくは、透析液の重炭酸塩損失(JHCO3_dial)を、
患者に注入された重炭酸塩前駆体、特にクエン酸塩(Jmet_cit)および/または乳酸塩(Jmet_lact)の代謝から生成された重炭酸塩の単位時間当りの量の推定、
単位時間当たりの量の観点における送達されるCRRT血液治療からの重炭酸塩注入(JHCO3_inf)、
単位時間当たりの量の観点における送達されるCRRT血液治療からの乳酸塩バランス(Jlact_bal)、
例えば0~0.35mmol/h/kg、特に0.1mmol/h/kgで選択された予め定義された正味緩衝剤負荷(Jbuffer_load)、
単位時間当たりの量の観点における流体源に含まれるクエン酸からの酸注入(JH+)、
のうちの1つ以上、特に4つに基づいて決定する。
【0105】
前の態様によれば、第85の態様において、制御部(12)は、重炭酸塩形態の前駆体代謝(Jmet_cit;Jlact)、重炭酸塩注入(JHCO3_bal)、予め定義された正味緩衝剤負荷(Jbuffer_load)、および酸注入(JH+)の推定の代数和に基づいて、患者の血液の定常状態の重炭酸塩濃度を示すパラメータ(CpHCO3_pat)、および透析液のより詳細な重炭酸塩損失(JHCO3_dial)を決定し、特に、酸注入(JH+)は患者の緩衝剤損失を提供する負の項である。
【0106】
前の態様のいずれか1つによれば、第86の態様において、制御部(12)は、血漿の体積分率(Fp)および/または血液速度(Qbw)の関数として、特にそれらの比率の関数として、患者の血液の定常状態の重炭酸塩濃度を示すパラメータ(CpHCO3_pat)を決定する。
【0107】
前の態様のいずれか1つによれば、第87の態様において、制御部(12)は、置換液/速度(Qrep_pre)および/または置換液の重炭酸塩濃度(CHCO3_rep)、特にそれらの生成物の関数として、患者の血液の定常状態の重炭酸塩濃度を示すパラメータ(CpHCO3_pat)を決定する。
【0108】
前の態様のいずれか1つによれば、第88の態様において、制御部(12)は、患者の血液の定常状態の重炭酸塩濃度を示すパラメータ(CpHCO3_pat)を、フィルター入口における血漿の重炭酸塩濃度(CpwHCO3_inlet)および/または入口における血液速度(Qbwinlet)、特にそれらの生成物の関数として決定する。
【0109】
前の態様のいずれか1つによれば、第89の態様において、制御部(12)は、透析液、特にそれらの生成物における透析液速度(Qd)および/または重炭酸塩濃度(CHCO3_dial)の関数として、フィルター入口における血漿水分重炭酸塩濃度(CpwHCO3_inlet)を決定する。
【0110】
前の態様のいずれか1つによれば、第90の態様において、制御部(12)は、患者の血液の定常状態の重炭酸塩濃度を示すパラメータ(CpHCO3_pat)を、濾過ユニット(2)の限外濾過速度(Qfil)および/または透析液、特にそれらの生成物における重炭酸塩濃度(CHCO3_dial)の関数として決定する。
【0111】
前の態様のいずれか1つによれば、第91の態様において、制御部(12)は、透析液への重炭酸塩損失(JHCO3_eff)の関数として、患者の血液の定常状態の重炭酸塩濃度を示すパラメータ(CpHCO3_pat)を決定する。
【0112】
前の態様のいずれか1つによれば、第92の態様において、制御部(12)は、重炭酸塩クリアランス(KHCO3)の関数として、患者の血液の定常状態の重炭酸塩濃度を示すパラメータ(CpHCO3_pat)を決定する。
【0113】
前の態様のいずれか1つによれば、第93の態様において、制御部(12)は、透析液の重炭酸塩濃度(CHCO3_dial)、及び、透析液速度(Qd)及び/又は透析液の重炭酸塩濃度(CpHCO3_dial)及び/又は濾過ユニット(2)の限外濾過速度(Qfil)及び/又は透析液への重炭酸塩損失(JHCO3_eff)及び/又は重炭酸塩クリアランス(KHCO3)の1つ以上の追加の項関数の和である患者の血液の定常状態の重炭酸塩濃度を示すパラメータ(CpHCO3_pat)を決定する。
【0114】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面の図に非限定的な例として示されている、本発明のいくつかの実施形態の以下の詳細な説明からよりよく明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0115】
以下に、非限定的な例として提供される、添付の図を参照して説明を続ける。
図1図1は、集中治療(CRRTなど)に適するが特に排他的ではない体外血液治療装置を模式的に表す。
図2図2は、局所抗凝固療法(RCA)によるCRRT治療中の関心のある物質移動速度を模式的に表している。
【発明を実施するための形態】
【0116】
前述のように、体外血液治療(透析)は、急性腎不全と呼ばれる腎機能の急な損失、またはステージ5慢性腎臓病(または末期腎疾患)と呼ばれるゆっくりと悪化する腎機能のある患者に使用される。以下の説明では、体外血液治療装置のいくつかの実施形態は、最初に、主に(排他的ではないが)集中治療に適しているか、または設計されていることが記述されるであろう。患者における代謝性アルカローシス/アシドーシスを発症するリスクを減少させるために主として講じられるリスクコントロール措置は、その後に記載され、以下の記載から明らかであるように、記載された実施形態のいずれにおいても実施され得る。
【0117】
定義
他に規定されていない限り、使用されるすべての技術および科学用語は、当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。
【0118】
用語「下流」とは、用語「下流」とは、第2コンポーネントに対する流路における第1コンポーネントの位置を指し、通常運転の間、流体が第1コンポーネントよりも前に第2コンポーネントによって通過する。第1コンポーネントは第2コンポーネントの「下流」にあるといえるが、第2コンポーネントは第1コンポーネントの「上流」である。図1は、装置1の通常運転の間の流体循環方向(参照200で示される)を示す。
【0119】
我々は、「透析液」を、濾過ユニット2の第2チャンバーに導入される処理液と定義する。透析液はオンラインで準備するか、滅菌バッグにあらかじめ包装される。
【0120】
我々は、「透析液」を、濾過ユニット2の第2チャンバーからの出口からの流体と定義する。透析液は使用済みの透析流体であり、血液から除去された尿毒素を備え、限外濾液を含む。
【0121】
我々は、「局所抗凝固剤」を体外血液と一旦混合すると、体外血液回路内の血液凝固を実質的に防止し、患者によって速やかに代謝され、したがって全身抗凝固を回避する物質として定義する。
【0122】
我々は、体外血液処理(例えば、CRRT)中の「正味緩衝剤負荷」を、患者に注入されたクエン酸塩および/または乳酸塩などの重炭酸塩前駆体の代謝から生成された重炭酸塩の組合せ(Jmet_cit;Jmet_lact)、患者にとっての正味の損失または正味の利得と一致しうる体外血液療法(JHCO3_bal)からの重炭酸塩バランス、および必要に応じて、例えば、抗凝固剤溶液のクエン酸含有量からの酸注入を定義する。数学的視点から、以下に用いる正味緩衝剤負荷(mmol/h)の一般的定義は、
【0123】
我々は、「クエン酸塩投与量」を、血液処理(mmol/L血液)1リットル当たりのクエン酸塩の注入速度として定義する。
【0124】
我々は、患者の「クエン酸塩負荷量」をクエン酸塩が患者に戻されるレート(mmol/h)として定義する。
【0125】
我々は、「重炭酸塩バランス」を、透析液および/または置換液からの注入速度と透析液への重炭酸塩除去速度との差分と一致する体外血液治療における重炭酸塩の正味の注入または損失レートとして定義する。
【0126】
我々は、「カルシウム補償」(またはカルシウム補償パラメータ)を、パーセンテージで表される透析液中の推定カルシウム損失を補償するためのカルシウム注入の相対投与量として定義する。
【0127】
我々は、「K0A」を濾過ユニットの物質移動面積係数と定義し、K0は無限血液および透析液速度でのクリアランスであり、Aは濾過ユニット表面積である。「K0A」は、所定の溶質に特異的であり、それによって、特に考慮される溶質に応じて変化する。本明細書において、「クエン酸塩」という用語は、その成分が、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、またはそれらのカリウム塩のようなクエン酸の塩の形態であることを意味する。クエン酸(Cと表記)は段階的に脱プロトン化されるので、ゆえに「クエン酸塩」はクエン酸塩(C 3-と表記)、クエン酸水素(C 2-と表記)、及びクエン酸二水素(C7-と表記)のすべての異なる形態を含む。
【0128】
用語「クエン酸塩」または「総クエン酸塩」とは、クエン酸の総量およびそのナトリウム、マグネシウム、カルシウム、またはカリウムなどの任意の塩を意味する。
【0129】
用語「緩衝剤」は、重炭酸塩または乳酸塩、クエン酸塩または酢酸塩などの重炭酸塩前駆体を意味する。
【0130】
用語集
【0131】
速度の式
以下の速度の式は、以下の詳細な説明で使用される速度間の関係を表す。
【0132】
血漿水分速度は、以下のように血流速の関数である。
【0133】
血液水分速度は、以下のように血流速の関数である。
【0134】
濾過ユニット内の限外濾過速度は、以下の通りである。
【0135】
置換液の注入前速度は、以下の通りである。
【0136】
透析液速度は、以下の通りである。
【0137】
特にCRRT治療のための体外血液治療装置
図1を参照すると、世界的には、数字1は、体外血液治療装置、特に集中治療用のものを指す。図1に従った装置は、持続的腎代替療法(CRRT)のために特に設計されている。CRRTシステムは、急性疾患状態の患者および一時的に腎機能を完全に損失した患者のために設計された非常に特異的な治療を提供するために構成されている。慢性患者とは対照的に、急性患者は、典型的には同時期の重度の損傷状態または手術からの回復中に、腎機能の完全な損失を一時的に経験する。したがって、急性患者は極めて衰弱していることが多く、典型的には定期的な透析治療を受けるべき状態にないため、それらの状態がさらに悪化し、深刻で生命を脅かす可能性のある合併症に至る可能性がある。記載のような状況下で、CRRTシステムは、特に、患者の血液に関する生命パラメータを理想的なまたは理想に近い値から逸脱させることなく、患者の身体にさらなるストレスを誘導することなく、非常に不良な健康を示す患者を個別に治療するように設計されている。この文書の範囲内では、CRRTシステムは、従って、本質的に、以下の特徴の一つ以上を特徴とする。CRRTは腎代替療法を含み、利尿薬抵抗性または急性腎不全患者における持続的な体液除去を促進することを第一に目的とした補助療法を意味する。したがって、CRRTシステムは、本質的に、患者からの連続的な正味の体液除去を必要とする。言い換えれば、CRRTシステムは、(慢性患者ケアで典型的に見られるような所望の目標体重減少を達成することを可能にするためのパラメータを単に制御することとは対照的に)連続的な正味の体重減少率を生成するように構成された、体重減少制御システムなどの体液バランス制御システムを必要とする。さらに、急性患者は血管外液過負荷を経験するが、これは、潜在的に重篤な結果(例えば、循環血液量減少性ショック、不整脈、低酸素血症、低換気など)を引き起こすことなく、短期間(例えば、慢性治療の数時間以内)に安全に除去することができない。したがって、CRRTシステムは、本質的に、血液循環体外-および処理液(体外回路に注入されるか、またはダイアライザーを通して拡散される)の両方の必要とされる低速度が使用されることを確実にするために、システムパラメータ、特に速度をはるかに正確にコントロールすることを含まなければならない。さらに、CRRT治療は継続的に実施される(例えば、数日間または数週間、中断なし/最小限の中断あり)。したがって、CRRTにおける治療設定は、いくつかの特定の治療時間に関連する設定ではなく、速度設定に基づいている(急性患者は未知の時間の治療を必要とする可能性があるため、未知である)。したがって、CRRTシステムの動作は、達成すべきいくつかの事前に定義された絶対的な体重減少に基づくことはできず、むしろ、患者における精密に制御された体液バランスに基づくものであり、設定された体重減少率に基づいて、全体(および事前に不明である)治療時間中に制御され維持されなければならない多くの動作パラメータに対する継続的な調整を必要とする。加えて、CRRT腎代替療法は、腎機能を比較的長期間にわたって代替し、よって、CRRTシステムは、透析器内での新鮮な透析液交換(血液から望ましくない物質を除去し、拡散により血液に所望の物質を添加するため)及び/又は限外濾過(血液から望ましくない物質を除去し、対流により所望の物質を血液に添加するため)の組み合わせで新鮮な流体の少なくともいずれかをさらに必要とする。
【0138】
少なくとも上記の理由から、CRRTシステムは、システムに
減量率の設定が可能であり、
設定された体重減少率に従って、過剰な水分を継続的に除去し、
CRRTに適合した比較的低速度で連続的に動作し、及び
適切な透析手段を実施することによる、および/または制御された速度で継続的に送達される置換液によるイオン平衡をバランスすること、
を可能にする特定の技術的特徴を示す必要がある。
【0139】
図1の装置1は、体外血液回路17を有し、これは、例えば、患者Pからの血液を、前記患者の静脈または動脈に導入されたカテーテルの手段によって取り込み、採血ライン6を通して、例えば、連続的に前記血液を濾過ユニット2に取り込む。血液は濾過ユニット2のプライマリチャンバーを通過し、返血ライン7を通って、治療された血液が患者に戻される。図1の例では、抗凝固剤ライン51との接続部は、採血ライン6の血液採取ゾーンからすぐ下流に設けられている。特に、装置は、少なくとも抗凝固剤ライン51を供給するためのセカンダリー流体容器またはバッグなどの局所抗凝固剤10の源を備え、示されている例では、抗凝固剤ポンプ54、例えば蠕動ポンプを含む、流体を搬送するための対応する手段を用いることにより、採血ライン6への直接接続の手段によって、血液中に局所抗凝固剤を直接導入することにより、前記ライン内の流体流動を制御することが可能である。採血ライン6から濾過ユニット2に向かって、そして後者から返血ライン7を通って患者Pに向かって、流体(血液)循環200の方向(装置の通常の使用中)を規定した後、さらに詳細には記載しない既知の血圧センサ48が抗凝固剤ライン51のすぐ下流に配置される。血液回路17は、流体を輸送するための手段、すなわち、この特定の場合には、少なくとも回路内の適当な血液速度Qbを制御および管理するための血液ポンプ21を備える。また、血液ポンプ21は、一般的に蠕動ポンプである。血液循環の方向に続いて、循環血液からCOを除去するためのガス交換体46が血液回路に接続されてもよい。ガス交換体46は、体外血液を受け取り、血液からCOを除去し、下流点で血液回路に血液を戻すために、血液回路17と流体連通している。図1は、濾過ユニット2の上流に配置されたガス交換体46を示すが、しかし、ガス交換体は、血液循環方向に沿って濾過ユニットの下流に代替的に配置され得る。本装置の通常使用時の血液循環方向は、血液速度Qb方向も表す矢印で図1に示される。ガス交換体46は、濾過ユニット2と直列に接続され、局所抗凝固剤液が体外血液に送達される注射ポイント50の下流に配置される。ガス交換体46は、血液チャンバーと、ガスに透過性の膜、特にCOによって分離されたガスチャンバーを有し、ガス交換体は、例えば、加圧空気または酸素を受け取るために病院内の医療ガス供給システムのようなガス源に接続することができるガス入口と、体外血液からCOを除去した消耗ガスを排出するためにガスチャンバーと流体連通しているガス出口とを含む。血液入口と血液出口は、体外血液回路17をガス交換器血液チャンバーと流体連通するようにする。
【0140】
そして、血液は、血液回路内の正しい流れを制御する別の圧力センサ49を通過する。半透膜の手段によって物質、分子及び流体の適当な交換が起こる濾過ユニット2のプライマリチャンバーを通過した後、処理された血液は、血液中に存在する気泡の検出及び除去を確実にするように設計された、一般的に「バブルトラップ」として知られる空気分離器19を最初に通過して返血ライン7に入る。次いで、空気分離器19から出てくる処理された血液は、患者の血液循環に再導入されなければならない処理された血液内に前記危険の形成がないことを確認するバブルセンサ55を通過する。バブルセンサ55からすぐ下流に、安全弁20(又は静脈クランプ)が設置され、アラームの場合、患者に向かう血流を遮断することができる。特に、バブルセンサ55が血流における異常の存在を検出するならば、安全弁20を通る装置は、患者に何らかの結果を生じることを避けるために、血液の通過を直ちに遮断することができるであろう。安全弁20から下流で、処理された血液は、その後、治療を受けている患者Pに戻される。図1の体外血液治療装置は、透析液回路32を備えており、これはまた、濾過ユニット2に通じる少なくとも透析液供給ライン8と、濾過ユニットからの透析液ライン13を備えている。少なくとも透析液源14を規定するプライマリ流体容器は、透析液回路32の供給ライン8を供給するように設計されている(一般的にプライマリ流体容器は、適切な透析液を含有する1つ以上のバッグから構成していなければならない)。供給ライン8は、バッグから透析液速度Qdを制御するため、および透析液循環の方向200を規定するために、少なくとも透析液ポンプ25(図1の実施形態では、蠕動ポンプ)などの流体を輸送するための手段を含む。循環200の方向にある透析液ポンプ25から下流には、透析液供給ライン8をインテークブランチ57および注入ブランチ58に分岐するブランチ56がある。特に、注入ブランチ58は、血液回路17の返血ライン7に接続されている。言い換えれば、前記注入ブランチ58によって、プライマリ流体容器のコンテンツを用いて、血液ライン17内で直接注入後を得ることが可能である。逆に、インテークブランチ57は、流体を直接濾過ユニット2、特に前記ユニットのセカンダリチャンバーに運ぶ。透析液回路32は、さらに、注入ブランチ58およびインテークブランチ57内の流体流動のパーセンテージを決定するための選択手段59を備えている。一般的に前記選択手段59は、通常ブランチ56の近くに設置され、それらはインテークブランチ57内の流体の通過を許容し、注入ブランチ58内の通過を遮断する第1の動作条件と、それらは注入ブランチ58内の流体の通過を許容し、インテークブランチ57内の通過を遮断する第2の動作条件との間に位置することができる。言い換えると、前記選択手段59は、いずれかのブランチにおける流体の通過を代替的に遮断することによって、透析液回路32上で作動する弁要素から構成されてもよい。代わりに、両方のブランチを同時に通過しなければならない液体の量を先験的に確立することができる適切なセレクターが提供され得る。また、時間の関数として、事前に確立された療法のいずれかのブランチにおける液体のパーセンテージを変化させることも可能であろう。インテークブランチ57を通る透析液は、濾過ユニット2のセカンダリチャンバーに入る。特に、血流が通過するプライマリチャンバーは、半透膜の手段によって透析液が通過するセカンダリチャンバーから分離され、これは、主に対流および拡散処理の手段によって、危険な物質/分子および血液から透析液に向かう液体の適切な通路を確保し、及び、また、透析液から血液に向かう物質/分子の通路を同じ原理を通じて確保する。次いで、透析液は透析液ライン13に入り、適切な透析液圧力センサ60を通過する。流体を輸送するための手段、例えば、流体回路32内の透析液ライン13内の速度Qdialを制御する透析液ポンプ26が提供される。また、前記ポンプは一般的に蠕動ポンプであろう。次いで、排除されるべき流体は、血液検出器61を通過し、収集容器またはバッグ62に運ばれる。図1に記載の装置の液圧回路は、血液回路17の返血ライン7に流体を供給するための少なくとも別の注入ライン63を含む。特に、注入液は、少なくとも補助容器64から採取され、その速度Qrep-全置換液速度を制御する注入ポンプ65(例では、蠕動ポンプ)を、流体を輸送するための手段を通して、血液回路17の返血ライン7に直接送られる。特に、注入液は、少なくとも補助容器64から採取され、その速度Qrep-全置換液速度を制御する注入ポンプ65(例では、蠕動ポンプ)を、流体を輸送するための手段を通して、血液回路17の返血ライン7に直接送られる。特に、注入液は空気分離器19に直接導入される。また推論できるように、透析液回路32の注入ブランチ58と注入ライン63は、血液回路17に流体を入り込むように導く共通の端部長さ66を備えている。前記インテーク端部長さ66は、注入の方向に関して注入ポンプ65から下流に配置され、流体を空気分離器19に直接運ぶ。さらに、図1の図を参照すると、注入ライン63は、血液回路17の採血ライン6に接続された少なくとも注入前ブランチ67を含む。さらに詳細には、注入の方向に関して注入ポンプ65から下流に、注入ライン63を注入前ブランチ67および注入後ブランチ69に上方に分岐する注入ブランチ68がある。注入前ブランチ67は、特に、血液ポンプ21から下流の血液回路17の採血ライン6および下流のガス交換器46に、血液循環の方向に関してバッグ64から取られた流体を運ぶ。逆に、注入後ブランチ69は、共通の端部長さ66に直接接続されている。注入ライン63はさらに、注入後ブランチ69および注入前ブランチ67に送られる液体速度のパーセンテージを決定するための選択手段70を含む。ブランチ68の近くに配置された選択手段70は、それらが、注入前ブランチ67内の液体の通過を可能にし、注入後ブランチ69内の通路をブロックする少なくとも第1の動作条件と、それらが注入後ブランチ69内の液体の通過を可能にし、注入前ブランチ67内の通路をブロックする少なくとも第2の動作条件との間で切り替えられ得る。明らかに、透析液回路32上に存在する選択手段59の場合のように、他の選択手段70もまた、2つの分枝の各々に通過しなければならない流体のパーセンテージを決定することができ、及び、計画された治療に従い、おそらくそれを時間的に変動させることができるであろう。さらに、選択手段59および他の選択手段70は、必ずしもではないが、一般的に同じ性質のものであろう。装置は、プライマリ流体容器14の、および/または補助流体容器64の、および/または局所抗凝固剤容器10の、および/または収集容器62の少なくとも重量を決定するための手段71を備えている。特に、前記手段71は、重量センサ、例えば、それぞれのスケールA、B、C、DおよびE(例えば、少なくとも装置に関連する各流体バッグのための独立したセンサ)を含む。特に、前記スケールのうち少なくとも4つがあり、それぞれの対は互いに独立であり、それぞれはそれぞれのバッグの重量を測定する。次に、血液回路17上、特に圧力値を読み取るための圧力センサ48上、血液ポンプ21上、ガス交換器46上、他の圧力センサ49上、及び気泡55の存在を検出するためのデバイス上、及びそれぞれの安全弁20上に、制御ユニット又はCPU12が作動していることに留意されたい。制御部12はまた、透析液回路32を制御することができ、特に、バッグ14の重さに関して、スケールA、B、C、D、および(おそらくE)によって検出されたデータを入力し、ポンプ25に、選択手段59に、圧力センサ60に、次に透析液ポンプ26に作用し、最終的に、その機能が収集容器62の重さを決定することであるスケールAによって検出されたデータを受信しなければならない。制御部12はまた、補助容器64の重量をチェックする(スケールCによってチェックされる)注入ライン63に作用し、注入ポンプ65と他の選択手段70の両方を制御することができるであろう。制御部12は、また、スケールBの手段によって抗凝固剤流体容器10の重量を検出し、以下に詳細に説明されるように実施される処置に従って抗凝固剤ポンプ54を適切に制御する抗凝固剤ライン51にも作用しなければならない。明らかなように、体外血液回路17に限定された抗凝固を提供するために、図1の装置1に局所抗凝固システムが実装される。局所抗凝固システムは、それぞれの説明段落に詳細に説明されている。しかしながら、図1の装置は、血液ポンプ21の下流にヘパリンを注入するためのシリンジポンプのような全身性抗凝固システムを、代替的に(または追加的に)設けられ得る。実際、後続の詳細な説明に記載される本発明の実施形態のアルゴリズムは、RCAを伴うCRRT治療構成においても、RCAを伴わない全身性(または全くない)抗凝固療法を伴うCRRT治療構成においても、機能する。
【0141】
局所抗凝固系
局所抗凝固システムは、局所抗凝固剤10の源、例えば、少なくとも抗凝固作用を有する物質を含む容器またはバッグを含む。例えば、クエン酸塩は、純粋なクエン酸ナトリウム(Na3citrate)またはクエン酸ナトリウムとクエン酸の混合物の形で、血液の抗凝固用途のために使用される。あるいは純クエン酸は抗凝固剤として用いられ得る。実際、クエン酸は複合体をつくる際にカルシウムに高い親和性をもち、凝固カスケードのいくつかの段階は血液(イオン化)カルシウムに依存している。クエン酸塩存在下でのイオン化カルシウム濃度の適切な低下は、凝固カスケードを不活性化する。
【0142】
正常な血漿は、約1.1~1.3mmol/lのイオン化カルシウム、0.1~0.2mmol/lの複合カルシウムおよび0.9~1.2mmol/lのタンパク質結合カルシウムを含む。適切な抗凝固効果を得るために、一般的なガイドラインは、クエン酸塩注入後に体外血液回路内のイオン化カルシウム濃度0.20~0.35mmol/lに達するようにクエン酸塩量/投与量を調節することである。抗凝固用途のためにクエン酸塩を加えた血漿は、(平均値として)イオン化カルシウム約0.3mmol/l、複合カルシウム(主にCa3citrate2)1.8mmol/lおよび蛋白結合カルシウム0.2mmol/lを含む。RCA中、抗凝固の強度は注入されたクエン酸の量を介して調節され得る。濾過後ユニットのイオン化カルシウム濃度は、主要なパラメータ(0.20~0.35mmol/l範囲の目標)として一般的に使用され、例えば血液ガス分析器で測定される。局所抗凝固システムは、体外血液回路17内の送達ポイント50に局所抗凝固剤を送達するように配置されている。体外血液回路17の完全な抗凝固を得るために、採血ライン6のアクセス端の近くにクエン酸塩注入を投与することが好ましい。一般に、送達ポイント50は、血液ポンプ21の上流に位置するが、しかし、送達ポイント50が、血液ポンプの下流の採血ライン6に位置することは排除されない。代わりに、または組み合わせて、クエン酸塩の送達ポイント50は、濾過ユニット2の入口であってもよい。この後者の構成では、透析液は、ダイアライザーの下流の血液回路において0.25~0.35mmol/l程度のイオン化カルシウムレベルを達成するのに十分な量のクエン酸塩を含む。クエン酸塩は、慢性治療のための現在の装置のように透析液がオンラインで調製されている場合に、対応する濃縮液バッグ/容器を用いて、供給ライン8に沿って流れる治療液に加えられてもよい。あるいは、特にCRRT装置の場合、透析流体の源14は、適切なクエン酸塩濃度またはコンテンツを含む容器/バッグである。市販のクエン酸塩溶液は一般に、それぞれのプラスチックバッグ(源10)に詰め込まれており、生理的と濃縮溶液との間で分割され得る。生理的クエン酸塩溶液は、ナトリウム濃度約140mmol/lを有する溶液、例えば、Baxter PrismoCitrate 10/2(10mmol/lクエン酸ナトリウムおよび2mmol/l クエン酸を伴う)およびBaxter RegioCit 18/0(18mmol/l クエン酸ナトリウムを伴う)である。濃縮クエン酸塩溶液は、例えば、BiometのACD-A (抗凝固剤クエン酸塩デキストロース溶液):クエン酸ナトリウム(75mmol/l)、クエン酸(38mmol/l)およびグルコースの混合物、ならびにFreseniusのクエン酸塩4%(クエン酸塩136mmol/l)である。
【0143】
クエン酸塩を患者の血管アクセスに近い採血ライン6に注入すると、操作者が設定した血液速度をアクセス部位からとるように、自動的に血液ポンプ速度が調節される(血液ポンプ速度=k*(Qb+Qcit)。ここで、Qbは設定した血液速度-アクセス部位で所望及び、Qcitはクエン酸塩注入速度とする)。
【0144】
クエン酸塩の量は、「クエン酸塩投与量」パラメータ(Dcitrate)を介して処方され、血液処理(mmol/l血液)のリットルあたりのクエン酸塩の量である。特に、クエン酸塩の投与量は、濾過ユニットに到達する希釈血液中のクエン酸塩濃度と一致しない。概念はむしろ、キレート化されるカルシウムの量に比例した量のクエン酸塩を提供することである。クエン酸塩ポンプ54の設定は、以下の通りである。
ここで、
citはクエン酸塩の注入速度、
bは、設定されている血液速度であり、
citrateはクエン酸塩の投与量であり、および
[citrate]PBPは抗凝固剤の源におけるクエン酸塩濃度である。
【0145】
クエン酸塩注入は、ダイアライザーの下流の血液回路でイオン化カルシウムレベルを0.25~0.35mmol/l程度に維持することを目的とした投与量で送達される。典型的には、クエン酸塩投与量は血液の1.5~6.0mmol/Lの範囲に含まれる。大部分の共通範囲は、血液の2~4mmol/Lである。血液の3.0mmol/Lのクエン酸塩投与量はガイドラインに従う。
【0146】
イオン化カルシウムとクエン酸塩複合体はかなり小さな分子であり、濾過ユニット2を通って容易に移動する。損失率は基本的に速度、小分子に関するフィルター効率および溶質濃度に依存する。総カルシウムの約半分は標準的な抗凝固療法中には物質移動に利用できないが(タンパク質結合であるため)、クエン酸塩抗凝固中には総カルシウムの約90%が利用できるようになる。したがって、カルシウムを含まない透析および/または置換液の使用と組み合わせたクエン酸塩局所抗凝固は、透析液への大きなカルシウム損失を意味する。RCAによる体外血液治療では、透析液へのカルシウム損失のバランスをとるために、カルシウム注入が要求される。RCA中に、患者の全身のイオン化カルシウムを正常範囲(例えば、1.0~1.2mmol/l)に保つようにカルシウム注入は調整される。
【0147】
したがって、装置1の局所抗凝固システムは、イオン平衡液11の源を含み、これは、返血ライン7のいずれか、特に静脈血管アクセスに近接、または患者Pに直接(推奨される中心カテーテルへの注入)、血液中で再注入される。イオン平衡液11、例えば、シリンジ、容器またはバッグは、適切なイオン置換液注入速度Qcaの送達を駆動するためのイオン置換注入ライン74および対応するイオン置換ポンプ75を含む。図1は、患者Pに直接注入するライン74を示している。もちろん、ライン74は、おそらく静脈アクセスに近い、返血ライン7に代替的に直接注入することができる。特に、図1の補助容器64は、返血ライン7のイオンバランスを保つために(代替的に、または組み合わせで)使用され得る。後者の例では、注入前のブランチ67は閉じたままであり、濾過ユニット2より上流のカルシウム注入を避けるために使用されない。図1の例では、ヘパリンを送達するために通常使用されるシリンジポンプ(不図示)は、イオン平衡液を患者に直接か、または代替的に返血ラインに送達するために、代替的に使用され得る。イオン平衡液は、イオン化(濃縮)カルシウムを含み、その注入は患者の全身のイオン化カルシウムを正常レベルに回復させるために行われる。特に、イオン平衡液は、イオン化マグネシウムも含むことができ、透析液中のマグネシウム除去もRCA中に増加するため、患者の全身のイオン化マグネシウムを正常レベルに回復するように、その注入が行われる。イオン交換注入速度Qcaは、明らかにされた患者の血中イオン化カルシウム濃度に基づいて調整するか、特許公報US8668825B2に記載されているような自動制御が実施され得る。
【0148】
実装では、イオン平衡液速度は、透析液中の推定カルシウム損失率に比例して保たれる。例えば、それは式を通して装置制御部によって計算される。
CaCompがカルシウム補償パラメータである場合、Qcaはイオン平衡液速度(ml/h)であり、Jcaは透析液中の推定カルシウム損失量(mmol/h)であり、[Ca]はイオン平衡液のカルシウム濃度(mmol/l)であり、Qrepは置換液速度(ml/h)であり、[Carep]は希釈後の置換液のカルシウム濃度(mmol/l)である。カルシウム補償はユーザ制御可能な設定であり、一般に5%~200%の範囲でオペレータによって設定され得る。
【0149】
特に、上記の式は、カルシウムを含む置換後液を考慮に入れている。置換後液中にカルシウムが存在しない(または置換液が使用されない)場合、式の第2項は無視すべきである(ゼロに等しい)。
【0150】
実際、透析液(および置換液)に関しては、それらは、一般に、イオン化カルシウムが血液に移行するのを防ぐために、カルシウムを含まない。さらに、透析および/または置換液は、クエン酸塩代謝のため緩衝含有量に適合し、濃縮クエン酸塩液(高張液)が使用される場合、ナトリウムに適合する。
【0151】
緩衝剤については、RCAは患者に戻されたクエン酸塩のかなりの割合(クエン酸塩は重炭酸に代謝される)により、酸塩基平衡状態に複雑な影響を有するため、次項では解析を行い、リスクコントロール軽減作用は詳細に説明する。実際、患者に戻された血液にはかなりの濃度のクエン酸塩-カルシウム複合体を含む。これらの複合体は(速やかに)肝臓、骨格筋、腎臓で代謝され、血流中にカルシウムを放出し、したがって、全身性の抗凝固が発生するのを妨げ、クエン酸塩代謝は重炭酸塩を産生する(クエン酸塩1molに対してHCO3-3mol)。
【0152】
これに対し、透析液は、緩衝剤を含まない、例えば重炭酸塩を含まない可能性がある。源/容器/バッグ64からの緩衝剤は、適当な緩衝剤供給ライン63、69、66、および対応する緩衝剤ポンプ65を介して返血ライン7に注入され得る。代わりに、又は組み合わせて、酸-バランス付加制御を可能にするために、装置1は、透析液(低)緩衝濃度を設定する可能性、及び/又は異なる緩衝濃度、例えば、重炭酸塩については、15~25mmol/lの範囲(及び最大40mmol/l及び/又は最小0mmol/l)、を有する源バッグ14、64を使用する可能性を介して、容易かつ制御された方法で、体外血液回路の緩衝剤平衡を変化させるように設計されてもよい。
【0153】
前述したように、患者におけるクエン酸塩蓄積は、低カルシウム血症、代謝性アシドーシス(代謝不良による重炭酸塩産生低下)または代謝性アルカローシス(クエン酸塩の高クエン酸塩負荷に続く重炭酸塩の過剰産生)と相関し得る。クエン酸塩測定は病院では一般的に利用できないため、総カルシウムとイオン化カルシウムの比が指標として用いられ、すなわち、2.5未満の値は正常(正常値2.0未満)とみなされ、2.5を超える値は総カルシウムに関してイオン化カルシウム濃度が低いことを示しており、おそらくクエン酸塩の有意な全身濃度が存在するためである。しかしながら、このモニタリングは、特にRCA+ECCOR、またはある種のSCUF治療のような「大きい」速度を有するRCAなどにおける酸/塩基平衡異常の関連する危険性を含む特に治療において、不十分な手段と考えられる。下記に特定される追加のリスク制御緩和(RCM)は、以下のように実施する必要がある。
【0154】
以下に特定される追加のリスク制御緩和(RCM)は、
すべてのRCA処方に適用可能な、高いクエン酸塩負荷、またはより正確に正味緩衝剤負荷に基づく新たなアラーム、
同一の正味緩衝剤負荷パラメータの2番目の(より高い)レベルに基づく新しい処方境界、
などを実装するよう要求する。
【0155】
次のセクションでは、後者の2つのRCMの実装の詳細についてさらに説明する。
【0156】
リスクコントロール軽減
リスクコントロール軽減(RCM)手順は、正味緩衝剤負荷モニタリングに特に作動する。正味緩衝剤負荷の制御は、CRRTのすべての処方と、特にRCAに関して、およびCRRT+ECCORの組合せ処方に関して、一般的な方法で実装される。これらの新しいRCMは、既知で従来のCRRT処方では活性化されると予想されないが、これは、それらが不十分な処方(例えば、過剰な血流による)について(関連して)警告するか、又は防止する可能性があるSCUFの場合について、正しくないかもしれない。以下の実施形態は、酸塩基(または緩衝)平衡に関してCRRT処方(例えば、RCAを有する)を特徴付けるパラメータを利用可能にすることを含む。このパラメータを用いて、処方者は、正味患者緩衝剤(重炭酸塩)の増減に関して、治療の強度に関する定量的な情報を得る。前述したように、このパラメータはクエン酸塩抗凝固の複雑な場合には特に興味深いものである一方で、それは任意の体外透析療法(全身または抗凝固なしで実行)にも関連するものである。あらかじめ定義された1つ以上の閾値(製造業者またはカスタマイズにより設定)に基づき、処方がアルカローシス(過剰な緩衝増加)またはアシドーシス(不十分な緩衝剤増加又は正味の損失)のリスクと一致する場合に、治療システムは警告を引き起こすことができる。過剰な処方の実施を妨げる絶対的制限も考慮され得る。
【0157】
緩衝剤負荷の定義
体外治療(Jbuffer_load)中の正味緩衝剤負荷は、
患者に注入されたクエン酸塩および/または患者に注入された乳酸塩(Jmet_lact)の代謝(Jmet_cit)から生成される、より一般的には重炭酸塩前駆体の代謝から生成される重炭酸塩、
患者についての正味の損失または正味の利得に一致し得る、体外血液治療(JHCO3_bal)からの重炭酸塩平衡、
関連する場合、抗凝固剤溶液(JH+)のクエン酸含有量などからの酸注入、
の(1つ以上の)組合せとして定義される。
【0158】
数学的な観点から、正味緩衝剤負荷の一般的な定義は以下のとおりである。
(式1)
【0159】
慣例によれば、体外血液療法が患者に緩衝剤/重炭酸塩の正味の利得を提供する場合には、正味緩衝剤負荷が正となり、及び緩衝剤の損失の場合には負となる。
【0160】
生理学的観点から、体外血液療法は、プロトンの代謝産生(蛋白質代謝)のバランスに関して、患者に正味の緩衝剤利得を提供することが期待される。しかしながら、(重度の)代謝性アルカローシスの状況で患者が治療を開始するシナリオでは、正味緩衝剤損失が望ましいことがある。
【0161】
緩衝剤平衡パラメータは、
患者へのクエン酸塩注入速度(クエン酸塩負荷)、
重炭酸塩と他の緩衝剤(例えば乳酸塩)のバランス、
クエン酸塩代謝(3モルの重炭酸塩で代謝された1モルのクエン酸塩)に関する仮定、
クエン酸塩、重炭酸塩および他の緩衝剤についての患者の全身濃度に関する仮定(固定値または他のサブモデルから計算可能)、
のうちの1以上のモデルから導かれる。
【0162】
計算された緩衝剤平衡は、CRRT実行療法の現在の緩衝剤平衡と一致しない(クエン酸塩および重炭酸塩について現在の患者レベルの特別な知識を必要とするであろう)が、患者の重炭酸塩が例えば25mMで安定化する定常状態で予想される(正規化された)正味緩衝剤負荷に一致する。
【0163】
酸塩基の定常状態はゆっくりと確立され、測定可能な変化は一般的に24時間後に存在し、CRRTの文脈で酸塩基状態が定常状態に達していると考えるには、2日間が妥当な最小値として現れる。
【0164】
ここで紹介する緩衝剤平衡解析の枠組みでは、酸塩基平衡の定常状態がいつ達するかということである。
患者の全身クエン酸塩濃度は、全身区画にわたって安定しており、そのため一定のクエン酸塩負荷と重炭酸塩の生成を導き、
患者の重炭酸塩濃度は、代謝性プロトン生成速度GH+と均衡する正味緩衝剤負荷バランスの結果として、全身区画にわたって安定している。
【0165】
クエン酸塩負荷
クエン酸塩負荷は、患者への正味のクエン酸の注入速度と定義され、それはプレ血液ポンプ(PBP)回路(Jcit_PBP)からのクエン酸塩注入速度と透析液(Jcit_dial)へのクエン酸塩除去速度の間の差分と一致する。血液回路内の図2クエン酸塩注入およびダイアライザー/透析液によるクエン酸塩損失を参照のこと。
【0166】
数学的観点から見ると、患者のクエン酸塩負荷の定義は以下のとおりである。
(式2)
【0167】
クエン酸塩注入の計算は、クエン酸塩投与量(Dcit)の定義に従い、2通りの方法で表すことができる。
【0168】
数学的観点から見ると、クエン酸塩注入速度の定義は以下のとおりである。
(式3)
【0169】
このアプローチではクエン酸とクエン酸塩の形態は同じ方法で検討される。
【0170】
透析液へのクエン酸塩の除去量は、クエン酸塩-カルシウム複合体(Kcit)のフィルタークリアランスの定義とフィルター入口におけるクエン酸塩濃度(血漿水分中)から表される。数学的見地から、透析液へのクエン酸塩除去の定義は以下の通りである。
(式4)
【0171】
クエン酸塩負荷(主な変形例)
体外血液回路におけるクエン酸塩物質移動をモデル化するための仮説は、クエン酸塩が血漿中(赤血球中ではなく)に分布し、CRRTフィルターのクエン酸塩クリアランスはまた、物質移動計算のために血漿水分中のクエン酸塩濃度に基づいて計算され、患者のクエン酸塩代謝と血液アクセス時の非ゼロ定常状態のクエン酸塩濃度を考慮に入れ、患者のクエン酸塩クリアランスは体重に比例する、という仮定を含む。
【0172】
フィルター入口での血漿水分速度の定義は、以下のとおりである。
(式12)
【0173】
透析液および濾過速度がゼロでないCRRTにおけるクエン酸塩クリアランスの計算式(式13)は以下のとおりである。
(式13)
【0174】
上記除去量の計算に用いるクエン酸物質移動パラメータは既知であり、選択したダイアライザーに依存して一定値であることに注意する。
【0175】
例えば、次の表は、使用されたPrismaflexセットの値を示す。
【0176】
RCA治療中、一部のクエン酸塩が患者に蓄積するため、血液アクセスでのクエン酸塩濃度は決してゼロではない。(放置の場合)約10%の偏りを避けるため、この蓄積は考慮に入れられるべきである。患者の肝臓と筋肉におけるクエン酸塩代謝率(Kcit_met)の知識を必要とし、これは広範囲、かつ、著しく偏った最終的な推定で変動し得る。しかし、「正常の」クエン酸塩代謝を有する患者に生じる「最小限の」蓄積を考慮することは適切であろう。
【0177】
これに対し、典型的な代謝クリアランス値を700ml/minと仮定して(文献から)、定常状態で患者のクエン酸塩濃度は計算される。文献には記載されていないが、患者のクエン酸塩クリアランスは体重に比例すると仮定されている。
【0178】
定常状態における患者の全身クエン酸塩濃度の表現は以下のとおりである。
(式14)
【0179】
上記によれば、患者のクエン酸塩代謝クリアランス(ml/min)の推定は以下のとおりである。
(式15)
【0180】
フィルター入口におけるクエン酸塩血漿水分濃度の表現は以下のとおりである。
(式16)
【0181】
上記の式2、式4、式14および式16の組合せは、クエン酸塩濃度パラメータを排除し、速度およびクリアランスの関数として患者のクエン酸塩負荷を表現することができる。
(式17)
【0182】
クエン酸塩負荷(簡易変形例)
前述の主要な変形例によれば、クエン酸塩抗凝固に続く患者の全身クエン酸塩濃度(Cpcit_pat)の増加が考慮され、式14および15を通して推定される。この選択は、上記のクエン酸塩負荷について報告した式17を導く。
【0183】
この製剤のより簡単な代替法は、患者の全身クエン酸塩濃度の変化を無視し、それを定数、例えばゼロとみなすことである。式14と式15は、結果的にはこの代替に従って用いられない。患者のクエン酸塩の全身濃度をゼロと仮定した場合(式16と式17は次の式16'と式17'に変わる)、
(式16')
(式17')
【0184】
体外血液回路内の重炭酸塩バランス
重炭酸塩バランスは、体外血液治療における重炭酸塩の正味の注入または損失速度と定義され、それは、透析液および/または置換液(JHCO3_inf)からの注入速度と透析液への重炭酸塩除去速度(JHCO3_dial)との間の差分と一致し、図2を参照。
【0185】
重炭酸塩バランス速度の定義は以下のとおりである。
(式5)
【0186】
体外血液回路における重炭酸塩物質移動をモデル化するための仮説は、血漿および赤血球に重炭酸塩が分布し、血液アクセスでの重炭酸塩濃度CpHCO3_patが固定されている(例えば25mMに等しい)という仮定を含み、もちろん、血液アクセスでの重炭酸塩濃度についての異なった(固定された)数値が用いられてもよい。
【0187】
その他の仮定は、PBPクエン酸塩溶液は重炭酸塩を含まず(逆の場合、重炭酸塩バランスにおいて重炭酸塩含有量/濃度を考慮し)、CRRT濾過ユニット重炭酸塩クリアランスは尿素クリアランスと同一であり、かつ、透析液中の重炭酸塩除去はクエン酸塩と物質移動計算のための血漿水分中の重炭酸塩濃度の考慮と同様の式に従って計算されること、を含む。
【0188】
重炭酸塩注入速度の計算は、流体組成(すなわち、既知の重炭酸塩濃度)の知識に基づいている。
(式6)
【0189】
流体組成(すなわち、重炭酸塩濃度および/または置換液処方)は、例えば、製品名をその重炭酸塩含有量/濃度と関連づけることによって、医師(透析装置からの要求に応じて)によって入力されるか、または透析装置のリーダを通して読み取られてもよい。
【0190】
透析液への重炭酸塩除去の式はクエン酸塩のそれらと非常に類似しているが、それらは、透析液中に重炭酸塩が存在すること、物質移動パラメータ(K0A)の値が異なっていることと、患者の全身重炭酸塩について固定値が考慮されている事実で異なる。明らかに、透析液中にクエン酸塩が存在する場合、対応するクエン酸塩負荷/バランスは、クエン酸塩について対応する式および重炭酸塩について示される以下のものと同様に、このような透析液クエン酸塩濃度を考慮に入れることができる。
【0191】
透析液への重炭酸塩除去の定義は以下の通りである。
(式7)
【0192】
クエン酸塩とは反対に、重炭酸塩は赤血球と血漿の間で容易に移動し、このように、全体の血液水分速度は透析液への物質移動の計算に考慮される。さらに、重炭酸塩のCRRTフィルター拡散物質移動係数は、それぞれの分子量(61対60g/mol)に基づいて尿素と同一に取られる。篩係数は1を取る。
【0193】
血液アクセス時の重炭酸塩の一定の生理学的値を考慮する。フィルター入口での血液水分速度の定義は以下のとおりである。
(式18)
【0194】
透析液および濾過の速度がゼロではないCRRTにおける重炭酸塩クリアランスの計算式はクエン酸塩のそれらと同様であるが、上述の理由について、物質移動係数SCとK0Aは異なり、血流回路上で考慮される速度は血漿水分速度(Qpw)ではなく全血液速度(Qbw)である。
【0195】
透析液および濾過の速度がゼロではないCRRTにおけるクエン酸塩クリアランスの計算式(式19)は以下のとおりである。
(式19)
【0196】
上記除去速度の計算に用いる重炭酸塩物質移動パラメータは既知であり、選択したダイアライザーに依存して一定値であることに注意する。
【0197】
例えば、次の表は、使用されたPrismaflexセットの値を示す。
【0198】
フィルター入口における血漿水分濃度は、以下の式20のセットから導出される、すなわち、
(式20)
【0199】
上記の式から、フィルター入口における重炭酸塩血漿水分濃度の表現は、以下の通りである。
(式21)
【0200】
体外血液回路(オプション)の乳酸塩バランス
乳酸塩バランスは、体外血液治療における正味の乳酸塩の注入または損失の速度と定義され、それは、透析液および/または置換液(Jlact_inf)からの注入速度と透析液(Jlact_dial)への乳酸塩除去速度との間の差分に一致する。
【0201】
乳酸塩は、より安定な溶液を得る利点がある重炭酸塩の代替緩衝剤として使用され得る。乳酸塩ベースの透析液は、透析においてよく知られており、例えば、それはNxStageからのSystem Oneデバイスの家庭透析バージョンにおいて使用される。さらに、乳酸塩はまた、pHおよび溶液安定性を制御するために、乳酸の形態で、特定の数の重炭酸塩溶液中に存在する。これは、3mMの乳酸を有するBaxter Hemosol/PrismaSol CRRT溶液の場合である。クエン酸塩と同様に、乳酸塩は患者に注入されると速やかに重炭酸塩に1モル当たり1モルの換算率で代謝される。乳酸塩は、患者の定常状態の血漿乳酸塩濃度が約1.5mMであると仮定すると、重炭酸塩と非常に同じ方法でモデル化することができる。
【0202】
乳酸塩クリアランスは、乳酸塩分子量が尿素の約2倍(112対60g/mol)であっても、尿素クリアランスと同一であると仮定され得る。しかしながら、速度が主要な制限因子であるCRRTの文脈では、クリアランス推定誤差は最小である。もちろん、より正確な見積もりを使用することもでき、例えば、K0Aの絶対分子量への出力の依存性を使用する(つまり、尿素、クレアチニン、ビタミンB12、イヌリンの既知のK0AからK0A_乳酸塩を導き出すことができることを意味する)。体外血液回路における乳酸塩物質移動のモデルの仮説は、乳酸塩は血漿および赤血球に分布し、CRRT濾過ユニット乳酸塩クリアランスは尿素クリアランスと同一であるという仮説を含む。さらに、血中アクセス時の患者の定常状態の血漿乳酸塩濃度は、1.5mMで固定されていると仮定する。体外血液回路における乳酸塩物質バランスは、乳酸塩1モル当たり重炭酸塩1モルを導く乳酸塩負荷の代謝を考慮して、重炭酸塩と同様の式で計算される。
【0203】
乳酸塩の物質移動式は次のとおりである。乳酸塩バランス速度の定義は以下の通りである。
(式22)
【0204】
乳酸塩の注入速度の計算は、流体組成(すなわち、既知の乳酸塩濃度)の知識に基づくものである。
(式23)
【0205】
流体組成(すなわち、乳酸塩濃度および/または置換液処方)は、医師によって入力されるか、または例えば、透析装置のリーダを通して読み取られる。透析液への乳酸塩除去の定義は以下の通りである。
(式24)
【0206】
乳酸塩は、赤血球と血漿の間で容易に移動し、このように、全血液は、透析液への物質移動の計算に考慮される。さらに、重炭酸塩のCRRTフィルター拡散物質移動係数は尿素と同一である。篩係数を1とする。
【0207】
乳酸塩クリアランス(Klact)は重炭酸塩クリアランス(KHCO3)に等しいと考えられ、従って、制御部は、先に示した同じ式と同様の方法でそれを計算する。フィルター入口における乳酸塩血漿水分濃度の表現は、以下の通りである。
(式25)
【0208】
正味患者緩衝剤負荷
患者へのクエン酸塩注入速度(すなわち、クエン酸塩負荷)と重炭酸塩生成との間の関係を得ることが、正味患者緩衝剤負荷を得るために必要である。この目標を達成するために、クエン酸塩の代謝に関する仮説は、以下の仮定を含み、すなわち、クエン酸塩負荷の代謝はクエン酸塩1モル当たり重炭酸塩3モルを導き、正味緩衝剤負荷(NBL)はクエン酸などの酸注入速度によって低下する可能性がある。クエン酸塩代謝(定常状態で)からの重炭酸塩生成量の表現は以下のとおりである。
(式8)
【0209】
酸注入速度を参照した表現は以下のとおりである。
(式9)
【0210】
式1、式8および式9の組合せは、クエン酸塩負荷および重炭酸塩バランスの関数として、正味緩衝剤負荷のための表現を導く。
(式10)
【0211】
citrate_loadの表現は式17に与えられ、一方JHCO3_balの完全な表現は式5、式6、式7、式19、式21から導かれることに留意されたい。治療の観点から、正味緩衝剤負荷は、代謝からのプロトン(H)生成量GH+を中和するために正であるべきである。文献は、約1mmol/日/kg、0.04mmol/h/kgの典型的なGH+の値を報告している。しかし、代謝からのプロトンの産生はタンパク質の異化に強く依存している。
【0212】
乳酸塩を考慮に入れる場合(任意)、クエン酸塩負荷、乳酸塩バランスおよび重炭酸塩バランスの関数としての正味緩衝剤負荷に対する表現は、以下の通りである。
(式26)
【0213】
処方の境界
体外血液治療用装置の制御部は、CRRT血液治療を受けなければならない患者の血液中の定常状態の酸塩基(または緩衝剤)平衡を示すパラメータを算出し、モニタリングする。このパラメータを演算、モニタリング(および表示)することにより、処方者は、正味患者緩衝剤(重炭酸塩)の増減に関して、治療の強度に関する定量的な情報を得る。このパラメータは、クエン酸塩抗凝固とECCORを組み合わせたクエン酸塩抗凝固の複雑な症例では関心が高く、それは、あらゆる体外透析療法(全身または無抗凝固で実行)にも関連性がある。より詳細には、制御部12は、特に装置セット時(すなわち、CRRT治療が開始される前)に、正味緩衝剤負荷を決定する。さらに詳細には、制御部は、患者のアルカローシスおよび/またはアシドーシスを誘発する可能性が高い処方を防止するために、正規化された正味緩衝剤負荷(nNBL)を制御する。
【0214】
正規化された正味緩衝剤負荷(nNBL)の定義は、以下のとおりである。
(式11)
【0215】
nNBLは、定常状態における酸塩基平衡レベルの指標パラメータとして選択され、単位時間あたりおよび患者kgあたりの緩衝剤注入速度(mmol/h/kg)で表される。
【0216】
定常状態でのRCAによるCRRTに関する公表された臨床データのレビューは、定常状態の患者重炭酸塩および塩基過剰の両方とこのnNBLパラメータの良好な相関を示している。したがって、上記で定義したように(正規化した)正味緩衝剤負荷を用いる代わりに、緩衝剤平衡パラメータは、一旦正規化した正味緩衝剤負荷(nNBL)の「デフォルト」値を仮定すると、定常状態の重炭酸塩濃度として表現され得る。
【0217】
前述の実施形態において、nNBLは、患者が想定される重炭酸塩レベル(例えば、25mM ⇒ nNBL25)に達したときの緩衝剤平衡の値と一致する。nNBL25がプロトン生成量(G)と一致すると、定常状態に達し、患者は仮定HCOレベル(25mM)で安定する。あるいは、nNBL25がプロトン生成量より大きい場合、nNBLCeqが(電流)プロトン生成量と一致するようなCeqまで患者の重炭酸塩が増加するであろう。nNBL25がGH+より低い場合、患者の重炭酸塩は、仮定したレベルより低い値で安定化する。
【0218】
定常状態のHCO指標を有する変形例
(望ましい/目標とする)nNBLレベルが選択されているならば、患者の重炭酸塩濃度(CpHCO3_pat)を定常状態の酸塩基平衡の指標パラメータとすることができる。このシナリオでは、既定のnNBLレベル、例えばnNBL0=0.1mmol/h/kgの関数として、患者の定常状態の重炭酸塩濃度を表すように、以前の式は再配置されてもよい。クエン酸塩の式、すなわち式2-4、12-17、16'および17'は変わらないままである。異なることに、重炭酸塩の式は何らかの再配置を必要とする。より詳細には、定常状態の患者の重炭酸塩の表現(式20の再配置)は以下のとおりである。
(式27)
【0219】
フィルター入口における血漿水分重炭酸塩濃度の表現(式7の再配置)は、以下の通りである。
(式28)
【0220】
排出液への重炭酸塩損失の表現(式1および5から)は、以下の通りである。
(式29)
【0221】
選択/設定されたnNBL0とJbuffer_loadとの間の関係は以下のとおりである。
(式30)
【0222】
式30から、式9から、式8及び式17または17'から、及び式6からのJbuffer_loadは、式29に入力される。次に、この複合表現のすべての用語がわかるように、後者は式28と組み合わされる。制御部12が制御されるべきパラメータである定常状態の患者重炭酸塩の値対適切な閾値を決定することを可能にする既知の/測定された変数の表現を導き出すために、最後にCpwHCO3_inletは式27に導入される。
【0223】
明らかなように、この溶液は、正規化された緩衝剤負荷パラメータに関して、代替パラメータ、すなわち定常状態の患者重炭酸塩濃度(これは、CRRT血液治療を受けなければならない患者の血液中の定常状態の酸塩基平衡を示すパラメータである)を提供し、CRRT治療の間、制御部12が適切な酸塩基平衡が維持されていることを検証することを可能にする。
【0224】
アルカローシスを避けるためのモニタリング
正規化された正味緩衝剤負荷は、2つの異なった閾値nNBL1およびnNBL2、すなわち、代謝アルカローシスの危険性に関するリマインドを促す警告を起動する第1レベル(第1の閾値)と、処方が不可能になる第2レベル(第2の閾値)に関して(任意で)モニターされる。事実事項として、新しいRCMは、現在の毎日のCRRT-RCA処方の文脈下で不必要なアラートを発生させてはならないが、一方で、安全でないドリフトを防止しなければならない。
【0225】
処方に従う場合、正規化された正味緩衝剤負荷は、第1と第2のnNBL閾値(nNBL1<nNBL<nNBL2)の間に含まれ、高緩衝剤負荷のアラームまたは警告がユーザに提供される。このシナリオでは、処方が受け入れられてもよいが、制御部は2つの行動を開始し、すなわち、高いクエン酸塩/緩衝剤負荷および患者アルカローシスのリスクについて知らせるための警告/アラームメッセージが提供され(例えば、表示される)、及びユーザがアルカローシスの可能性のある問題について定期的に知らされるように、アルカローシスの現在の処方リスクについての文章の定期的な抗凝固チェックポイントリマインダが提供される。処方に従う場合、正規化された正味緩衝剤負荷が第2のnNBL閾値(nNBL>nNBL2)よりも高くなり、装置の制御部は、すでに存在する他の処方境界に上記の基準を追加することによって、「リアルタイム」で設定をブロックする。場合によっては、過剰な緩衝剤/クエン酸塩負荷のために処方が拒否されることを示すアラーム(メッセージなど)でこの状況を管理することが容認される。最後の(確認済みの)設定が拒否される一方で、アラームを閉じる際に有効な処方を復元する必要がある場合がある。2つの可能性のある選択肢(制御部が実装するように構成されている)は、以下の通りである。
オプション1:以前の(有効である)処方を復元する、または
オプション2:「有効」処方を再定義するためにクエン酸塩投与量(および/または血液速度)を自動的に下方移動させる。
【0226】
閾値
正味緩衝剤負荷は、緩衝剤の増加と一致したクエン酸負荷とCRRT処理に関連する緩衝剤損失(主に重炭酸塩、二次的に乳酸塩)とのバランスを定量化する。
【0227】
正味緩衝剤負荷データは、固定患者の重炭酸塩レベル25mMに対して計算されるが、実際の緩衝剤損失は、患者の重炭酸塩レベルに直接依存する。定性的側面は以下のとおりである。
患者の重炭酸塩が25mMより低い場合、重炭酸塩の損失が少なく、実際の緩衝剤負荷が高い、
患者の重炭酸塩が25mMより増加する場合、重炭酸塩の損失が多く、実際の緩衝剤負荷が低い。
【0228】
定常状態では、正味緩衝剤負荷は、代謝からの正味のH生成を平衡化するための患者の必要性に合致すると仮定される。参考文献によると、典型的なH生成量は約1mmol/日/kg、又は0.04mmol/h/kgであり、蛋白質の異化作用に強く依存している。これは、CRRT中、正味緩衝剤負荷がH生成量と等しい点で患者の重炭酸塩/酸塩基平衡が安定することが期待されることを意味する。このように、理想的なRCAプロトコルは、定常状態で25mMの血漿重炭酸塩に到達するために、+0.04mmol/h/kgの正規化された正味緩衝剤負荷を提供するものとして定義され得る。しかしながら、1mmol H/日/kgを超えて生成する高代謝性患者のシナリオでは、上記プロトコルは患者を25mM以下に安定化する。この同じ患者を25mMの重炭酸塩で安定化させるには、+0.04mmol/h/kgを超える正味緩衝剤負荷に関連するプロトコルを必要とする。
【0229】
CRRT療法の制限強度のため、酸塩基平衡の経時的な指数関数的安定化プロファイルが期待されているが、治療開始時の一般的なアシドーシス状態をより迅速に是正するために、それはむしろ「アルカローシス」の定常状態と一致させたCRRTプロトコルで作動すると考えられる(数件の論文は、2日以上の治療後にアルカローシスが発現したと報告している)。
【0230】
文献分析に基づいて、24~26mmol/l、特に25mmol/lに等しい定常状態の患者の重炭酸塩濃度の目標セットを仮定すると、最初の正規化正味緩衝剤負荷閾値は0.25~0.35mmol/h/kgの間にあるべきである。特に、第1閾値は約0.3mmol/h/kgとすべきである。
【0231】
0.3mmol/h/kg未満の正規化された正味緩衝剤負荷値は、すべての推奨プロトコルおよびレビューされたRCA研究のほとんどを含む。この閾値は、nNBLと患者の重炭酸塩または塩基過剰との間で観察された相関に従って、「正常の」範囲の上限における患者の酸塩基定常状態値と一致する。
【0232】
2番目のアラーム閾値(nNBL2)は、この値を超える任意の処方をブロックすることを意図している。このように、nNBL1閾値よりも適切な値の選択がより重要である。文献のアルカローシス症例報告およびフィールドデータに基づくと、第2の正規化された正味緩衝剤負荷閾値は0.35~0.5mmol/h/kgであるべきである。特に、第2の閾値は約0.4~0.45mmol/h/kgであるべきである。好ましくは、選択された値は約0.4mmol/h/kgである。
【0233】
正規化されたNBL0.40mmol/h/kgでは、重炭酸塩および塩基過剰に対する予想される定常状態は、それぞれ約33mMおよび+6.5mMであり、これは既に過剰と考えられている。しかし、例えば強力なアシドーシス状態を速やかに是正するために、限られた期間に適用するならば、より高いnNBL処方は重大なリスクにはならないと考えることができる。このため、nNBL2閾値を低くしすぎる設定とするのは賢明ではないかもしれない。
【0234】
CRRTの制限された「強度」、および酸塩基障害の発生(または補正)に典型的には24~48時間以上かかるという事実によって、nNBLの高処方(すなわち、nNBL2よりも高い)を短時間(例えば、数時間)にわたって許容できる可能性がある。高nNBL(すなわち、第2の閾値を超える)処方を許容する期間は、正規化された緩衝剤負荷と第2の閾値との間の差分に相関している可能性があり、距離が長いほど許容時間が短くなる。
【0235】
アシドーシスを避けるためのモニタリング
また、代謝性アシドーシスに至る可能性のある処方を避けるために、正規化したNBLはモニタリングされ得る。
【0236】
この状況では、再度、1つまたは2つの閾値は、警告および/または処方を遮断するように、設定され得る。例えば、閾値は、0~-0.2mmol/h/kgの間に設定してもよい。具体的には、閾値は約-0.1mmol/h/kgであり得る。
図1
図2
【国際調査報告】