IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハンツマン・インターナショナル・エルエルシーの特許一覧

特表2023-507307シリル末端ポリウレタンおよびそれらを製造するための中間体
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-22
(54)【発明の名称】シリル末端ポリウレタンおよびそれらを製造するための中間体
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/28 20060101AFI20230215BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20230215BHJP
   C08L 75/08 20060101ALI20230215BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
C08G65/28
C08G18/67 095
C08L75/08
C08K5/5415
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535228
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(85)【翻訳文提出日】2022-07-06
(86)【国際出願番号】 EP2020086621
(87)【国際公開番号】W WO2021130094
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】19219392.8
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500030150
【氏名又は名称】ハンツマン・インターナショナル・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ヤ-ミ
(72)【発明者】
【氏名】マルティーニ,ジュリオ
(72)【発明者】
【氏名】ファノプーロス,クリストファー
【テーマコード(参考)】
4J002
4J005
4J034
【Fターム(参考)】
4J002CK041
4J002EX036
4J002FD010
4J002GJ01
4J005AA12
4J005BA00
4J005BC00
4J005BD05
4J005BD08
4J034CA04
4J034CB03
4J034CB07
4J034CC03
4J034CC08
4J034CC12
4J034CC26
4J034CC45
4J034CC61
4J034CC62
4J034CC65
4J034CD04
4J034DA01
4J034DB01
4J034DC50
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG14
4J034GA51
4J034GA62
4J034HA01
4J034HA06
4J034HA07
4J034HA08
4J034HB06
4J034HB11
4J034HB17
4J034HC03
4J034HC08
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA01
4J034JA32
4J034JA42
4J034LA12
4J034LA32
4J034QA05
4J034QB14
4J034RA08
(57)【要約】
本発明は、シリル末端ポリウレタンおよびそれらを製造するための中間体に関する。本発明は特に、アリル-モノオール含有開始剤、アリル末端ポリウレタンプレポリマー、およびそれらを製造するためのプロセスに関する。別の態様によれば、本発明は、本発明のシリル末端ポリウレタンをキュアーすることによって得られる生成物、およびそれらの使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリル末端ポリウレタンを製造する上でのアリル-モノオール含有開始剤の使用であって、該開始剤が、以下の一般式I:
【化1】
で示されるものであり、式中、
R1は、水素、C1-24アルキル、ヘテロC1-24アルキル、C3-24シクロアルキル、C6-24アリール、C6-24ヘテロアリール、および、以下の式II:
【化2】
[式中、
*は、L2が式Iの化合物に結合している箇所を表し;
ここで前記のC1-24アルキル、ヘテロC1-24アルキル、C3-24シクロアルキル、C6-24アリール、C6-24ヘテロアリールは、非置換であっても、あるいは1つ以上のZ1で置換されていてもよく;このとき
L2は、C1-6アルキレン、単結合、C3-8シクロアルキレン、O、およびSからなる群から選択され;ここで前記のC1-6アルキレンまたはC3-8シクロアルキレンは、非置換であっても、あるいは1つ以上のZ2で置換されていてもよく;
R3は、C1-6アルキル、ヘテロC1-6アルキル、C3-10シクロアルキル、およびC6-10アリールからなる群から選択され;ここで前記のC1-6アルキル、ヘテロC1-6アルキル、C3-10シクロアルキル、およびC6-10アリールは、非置換であっても、あるいは1つ以上のZ3で置換されていてもよく;
R4は、C1-6アルキル、ヘテロC1-6アルキル、C3-10シクロアルキル、およびC6-10アリールからなる群から選択され;ここで前記のC1-6アルキル、ヘテロC1-6アルキル、C3-10シクロアルキル、およびC6-10アリールは、非置換であっても、あるいは1つ以上のZ4で置換されていてもよく;
あるいはR3とR4が、それらが結合している炭素原子と一緒になって飽和または不飽和の3員環、4員環、5員環、6員環、もしくは7員環を形成する]
の基からなる群から選択され、
R2は、水素、C1-24アルキル、ヘテロC1-24アルキル、C3-24シクロアルキル、C6-24アリール、C6-24ヘテロアリール、および、以下の式III:
【化3】
[式中、
*は、L3が式Iの化合物に結合している箇所を表し;ここで前記のC1-24アルキル、ヘテロC1-24アルキル、C3-24シクロアルキル、C6-24アリール、C6-24ヘテロアリールは、非置換であっても、あるいは1つ以上のZ5で置換されていてもよく;
L3は、C1-6アルキレン、単結合、C3-8シクロアルキレン、O、およびSからなる群から選択され;ここで前記のC1-6アルキレンまたはC3-8シクロアルキレンは、非置換であっても、あるいは1つ以上のZ6で置換されていてもよく;
R5は、C1-6アルキル、ヘテロC1-6アルキル、C3-10シクロアルキル、およびC6-10アリールからなる群から選択され;ここで前記のC1-6アルキル、ヘテロC1-6アルキル、C3-10シクロアルキル、およびC6-10アリールは、非置換であっても、あるいは1つ以上のZ7で置換されていてもよく;
R6は、C1-6アルキル、ヘテロC1-6アルキル、C3-10シクロアルキル、およびC6-10アリールからなる群から選択され;ここで前記のC1-6アルキル、ヘテロC1-6アルキル、C3-10シクロアルキル、およびC6-10アリールは、非置換であっても、あるいは1つ以上のZ8で置換されていてもよく;あるいは、
R5とR6が、それらが結合している炭素原子と一緒になって飽和または不飽和の3員環、4員環、5員環、6員環、もしくは7員環を形成する]
の基からなる群から選択され;
Yは、C1-24アルキレン、好ましくは-CH2、ヘテロC1-24アルキレン、C3-24シクロアルキレン、C6-24アリーレン、および酸素原子もしくはイオウ原子からなる群から選択され、ここで、R1とR2が共に水素原子であるとき、Yは酸素原子もしくはイオウ原子であり;
Xは、C1-24炭化水素鎖、C1-24アルキレン、ヘテロC1-24アルキレン、C3-24シクロアルキレン、C6-24アリーレン、ポリC1-6アルキレンオキシド、ポリC6-10アリーレンオキシド、ヘテロシクリレン、およびヘテロアリーレンからなる群から選択され、ここで前記のC1-24アルキレン、ヘテロC1-24アルキレン、C3-24シクロアルキレン、C6-24アリーレン、ポリC1-6アルキレンオキシド、ポリC6-10アリーレンオキシド、ヘテロシクリレン、およびヘテロアリーレンは、非置換であっても、あるいはnが1であるときに1つ以上のZ9で置換されていてもよく;
nは、1~24の整数であり、好ましくは1~18の整数であり、さらに好ましくは1~12の整数であり、そして最も好ましくは1~6の整数であり;
Wと末端OH基が一緒になって第一アルコールまたは第二アルコールを形成し;
Z1~Z9はそれぞれ、C1-6アルコキシ、ハロC1-6アルコキシ、ハロ、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、C3-12シクロアルキル、C6-12アリール、C6-12アリールC1-6アルキル、C3-12ヘテロシクリル、およびC4-12ヘテロアリールからなる群から独立的に選択される、上記使用。
【請求項2】
R1とR2が、共にC1-3アルキル、好ましくは-CH3であり;Yが、C1-24アルキル、好ましくは-CH2、ヘテロC1-24アルキル、C3-24シクロアルキル、C6-24アリール、O、およびSからなる群から選択され;Xが、C1-24炭化水素鎖、C1-24アルキレン、ヘテロC1-24アルキレン、C3-24シクロアルキレン、C6-24アリーレン、ポリC1-6アルキレンオキシド、ポリC6-10アリーレンオキシド、ヘテロシクリレン、およびヘテロアリーレンからなる群から選択され、ここで前記のC1-24アルキレン、ヘテロC1-24アルキレン、C3-24シクロアルキレン、C6-24アリーレン、ポリC1-6アルキレンオキシド、ポリC6-10アリーレンオキシド、ヘテロシクリレン、またはヘテロアリーレンは、非置換であっても、あるいはnが1であるときに1つ以上のZ9で置換されていてもよく;そしてWと末端OH基が一緒になってアルコールを、好ましくは第一アルコールまたは第二アルコールを形成する;請求項1に記載のアリル-モノオール含有開始剤。
【請求項3】
R1とR2が、共にC1-3アルキル、好ましくは-CH3であり;Yが-CH2であり;Xが、C1-24炭化水素鎖、C1-24アルキレン、ヘテロC1-24アルキレン、C3-24シクロアルキレン、C6-24アリーレン、ポリC1-6アルキレンオキシド、ポリC6-10アリーレンオキシド、ヘテロシクリレン、およびヘテロアリーレンからなる群から選択され、ここで前記のC1-24アルキレン、ヘテロC1-24アルキレン、C3-24シクロアルキレン、C6-24アリーレン、ポリC1-6アルキレンオキシド、ポリC6-10アリーレンオキシド、ヘテロシクリレン、またはヘテロアリーレンは、非置換であっても、あるいはnが1であるときに1つ以上のZ9で置換されていてもよく;そしてWと末端OH基が一緒になって第一アルコールまたは第二アルコールを形成し、好ましくはWと前記末端OH基が一緒になって-CH2-OHまたは-CH-OH-CH3である;請求項1または2に記載のアリル-モノオール含有開始剤。
【請求項4】
YがOまたはSであるときに、R1とR2が、共にC1-3アルキル、好ましくは-CH3であり;Xが、C1-24炭化水素鎖、C1-24アルキレン、ヘテロC1-24アルキレン、C3-24シクロアルキレン、C6-24アリーレン、ポリC1-6アルキレンオキシド、ポリC6-10アリーレンオキシド、ヘテロシクリレン、およびヘテロアリーレンからなる群から選択され、ここで前記のC1-24アルキレン、ヘテロC1-24アルキレン、C3-24シクロアルキレン、C6-24アリーレン、ポリC1-6アルキレンオキシド、ポリC6-10アリーレンオキシド、ヘテロシクリレン、またはヘテロアリーレンは、非置換であっても、あるいはnが1であるときに1つ以上のZ9で置換されていてもよく;そしてR3と末端OH基が一緒になって第一アルコールまたは第二アルコールを形成する;請求項1に記載のアリル-モノオール含有開始剤。
【請求項5】
該開始剤が脂肪族である、請求項1~4のいずれか一項に記載のアリル-モノオール含有開始剤。
【請求項6】
(1) 請求項1~5のいずれか一項に記載のアリル-モノオール含有開始剤と、2~6個の炭素原子を有する少なくとも1種のアルキレンオキシドとを反応させる工程;および
(2) 工程(1)において得られる反応生成物と、イソシアネート含有化合物とを直接反応させて、アリル末端ポリウレタンプレポリマーを形成させる工程;
を含むプロセスによって得られるアリル末端ポリウレタンプレポリマー。
【請求項7】
工程(1)が、KOH、CsOH、およびカリウムメトキシド等の塩基性触媒、ならびにコバルト,クロロシアノ-1,2-ジメトキシエタン亜鉛錯体等の二元金属シアニド触媒からなる群から選択される触媒の存在下で行われる、請求項6に記載のアリル末端ポリウレタンプレポリマー。
【請求項8】
前記触媒が、工程(2)の前に完全に又はある程度除去され、反応混合物の総重量を基準として多くても0.500重量%の量にて、好ましくは多くても0.250重量%の量にて、さらに好ましくは多くても0.050重量%の量にて、さらに好ましくは多くても0.001重量%の量にて存在する、請求項7に記載のアリル末端ポリウレタンプレポリマー。
【請求項9】
2~6個の炭素原子を有する前記少なくとも1種のアルキレンオキシドが、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、およびこれらの混合物から選択される、請求項6~8のいずれか一項に記載のアリル末端ポリウレタンプレポリマー。
【請求項10】
500~15000ダルトンの分子量を有する、請求項6~9のいずれか一項に記載のアリル末端ポリウレタンプレポリマー。
【請求項11】
工程(2)が100℃未満の温度で、好ましくは90℃未満の温度で、さらに好ましくは85℃未満の温度で行われる、請求項6~10のいずれか一項に記載のアリル末端ポリウレタンプレポリマー。
【請求項12】
請求項6~11のいずれか一項に記載のアリル末端ポリウレタンプレポリマーを、以下の式IV:
H-Si-(OR3-p(R 式IV
[式中、
R7は、C1-20アルキルとC6-20アリールから選択され;
R8は、C1-20アルキル、C6-20アリール、およびC1-20アルコキシから選択され;
pは、0、1、または2から選ばれる整数であり;
但し、pが0または1であるとき、OR7基は同一であり、pが2であるとき、R8基は異なっていてよい]
の少なくとも1種のヒドロシランと反応させることを含むプロセスによって得られるシリル末端ポリウレタン。
【請求項13】
前記少なくとも1種のヒドロシランが、ジエトキシメチルシラン、トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、ジエトキシエチルシラン、ジメトキシメチルシラン、トリ(プロパン-2-イルオキシ)シラン、トリブトキシシラン、7-(2-エトキシエトキシ)-3,6,8,11-テトラオキサ-7-シラトリデカン、およびこれらの混合物を含む群から選択される、請求項12に記載のシリル末端ポリウレタン。
【請求項14】
請求項11または12に記載のシリル末端ポリウレタンの、70℃未満の温度での、好ましくは60℃未満の温度での、さらに好ましくは40℃未満の温度での、さらに好ましくは10℃~25℃の温度でのキュアーにより得られる生成物。
【請求項15】
請求項14に記載の生成物の、塗料、接着剤、フォーム、シーラント、ガスケット、またはグラウトとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、シリル末端ポリウレタンおよびそれらを製造するための中間体に関する。本発明は特に、アリルモノオール含有開始剤、アルコキシル化モノオール、アリル末端ポリウレタンプレポリマー、およびこれらの製造方法に関する。別の態様によれば、本発明は、本発明のシリル末端ポリウレタンをキュアーすることによって得られる製品に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]湿分硬化性シリル化ポリマーを含有する市販の組成物が公知であり、多くの用途を有する。例えば、シリル末端ポリウレタンは、塗料、接着剤、シーラント、グラウト、ガスケット、および工業用エラストマー物品として有用である。
【0003】
[0003]シリル末端ポリウレタンの従来の製造方法は、イソシアネート含有プレポリマーとアミノシランとを反応させて、一般にはかなり高い粘度を有する生成物を得るというものであるが、かなり高粘度のために、粘度調整剤が存在しないとさらなる処理が困難となる。こうした高粘度は、ウレア基とウレタン基の存在による水素結合に関係していると考えられる。従って最新の解決策は、シリル化ポリウレタン中のウレタン含量やウレア含量を減らすか又はなくすことに注力している。
【0004】
[0004]例えば、ポリウレタンを製造するのに長鎖ポリエーテルポリオールを使用することができ、それによって水素結合を少なくしている。ポリエーテルポリオールの分子量を高めると、一般には、ポリマー中の望ましくない不飽和が極めて高いレベルになる。利用するには、官能価が高くて不飽和が低レベルであるようなポリエーテルポリオールが必要となる。
【0005】
[0005]別の例では、OH官能性プレポリマーとイソシアナートシランとを反応させて、ウレア非含有シリル化ポリウレタンを生成させる。しかしながら、イソシアナートシランは有害物質なので好ましくない。さらに、原材料の入手可能性と価格もしばしば問題となる。
【0006】
[0006]別の例では、ウレタン基またはウレア基とモノイソシアネートとの反応により、部分アロファネート化や完全アロファネート化、および/または部分ビウレット化や完全ビウレット化を起こさせ、このことで水素結合の形成を立体的に妨害している。しかしながら、この方法は、シリル化ポリウレタンの製造後に追加の合成工程が必要となるため、製造コストが増大する。さらにモノイソシアネートは、環境、健康、および安全性の面で問題を有する。
【0007】
[0007]特許文献1(US-A1-5227434)は、ポリイソシアネートを、モノオールの分子を結びつけるためのカップリング剤として使用する方法を提唱しており、この方法は、望ましくないオリゴマー化反応を避けることによってクリーンなカップリング反応をもたらす。この方法では、たとえNCO末端中間体が生成しないとしても、特許文献1のアリル末端プレポリマーが、アリル末端プレポリマーにシラン成分を加えると、望ましくない異性化および/またはβ脱離をこうむる、ということがわかった。さらに、該明細書によれば、特定のタイプの水素含有開始剤(hydric initiator)が使用され、この開始剤は少なくとも2回(プロピレンオキシドで)アルコキシル化されるはずであり、このことは極めて不利である。
【0008】
[0008]従って依然として、上記問題点の1つ以上を解消するシリル末端ポリウレタンとそれらの製造方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】US-A1-5227434
【発明の概要】
【0010】
[0009]本発明によれば、3つの反応工程にてシリル末端ポリウレタンを製造することが提唱されている:
(a) アリル-モノオール含有開始剤をワンステップでアルコキシル化してアリルモノオールを得る工程;
(b) a工程において得られたアリルモノオールをジイソシアネートと直接反応させてアリル末端ポリウレタンを得る工程;および
(c) b工程において得られたアリル末端ポリウレタンをヒドロシリル化する工程。
【0011】
[0010]留意しておかねばならないことは、a工程は、アリル-モノオール含有開始剤のアルコキシル化についてであり、アリル-モノオール含有開始剤は、これ以前にアルコキシル化(例えばプロポキシル化)されていない、という点である。
【0012】
[0011]本発明に従った開始剤は、上記の工程b)を適用する前に、初めにいつでもアルコキシル化できる化合物であると理解すべきである。
【0013】
[0012]さらに、上記工程b)は、100℃未満の温度で、好ましくは90℃未満の温度で、さらに好ましくは85℃未満の温度で行うことができ、このことは、先行技術を考慮すると特に有利である。
【0014】
[0013]本発明によれば、a工程において使用されるアリル-モノオール含有開始剤は、以下の一般式Iを有する。
【0015】
【化1】
〔式中、
R1は、水素、C1-24アルキル、ヘテロC1-24アルキル、C3-24シクロアルキル、C6-24アリール、C6-24ヘテロアリール、および、以下の式II:
【0016】
【化2】
からなる群より選択され、ここで、*は、L2が式Iの化合物に結合している箇所を表し;ここで前記のC1-24アルキル、ヘテロC1-24アルキル、C3-24シクロアルキル、C6-24アリール、C6-24ヘテロアリールは、非置換であっても、あるいは1つ以上のZ1で置換されていてもよく;L2は、C1-6アルキレン、単結合、C3-8シクロアルキレン、および酸素原子もしくはイオウ原子からなる群から選択され;ここで前記のC1-6アルキレンまたはC3-8シクロアルキレンは、非置換であっても、あるいは1つ以上のZ2で置換されていてもよく;R3は、C1-6アルキル、ヘテロC1-6アルキル、C3-10シクロアルキル、およびC6-10アリールからなる群から選択され;ここで前記のC1-6アルキル、ヘテロC1-6アルキル、C3-10シクロアルキル、およびC6-10アリールは、非置換であっても、あるいは1つ以上のZ3で置換されていてもよく;R4は、C1-6アルキル、ヘテロC1-6アルキル、C3-10シクロアルキル、およびC6-10アリールからなる群から選択され;ここで前記のC1-6アルキル、ヘテロC1-6アルキル、C3-10シクロアルキル、およびC6-10アリールは、非置換であっても、あるいは1つ以上のZ4で置換されていてもよく;あるいはR3とR4が、それらが結合している炭素原子と一緒になって飽和または不飽和の3員環、4員環、5員環、6員環、もしくは7員環を形成し;
R2は、水素、C1-24アルキル、ヘテロC1-24アルキル、C3-24シクロアルキル、C6-24アリール、C6-24ヘテロアリール、および式III:
【0017】
【化3】
からなる群より選択され、ここで、*は、L3が式Iの化合物に結合している箇所を表し;ここで前記のC1-24アルキル、ヘテロC1-24アルキル、C3-24シクロアルキル、C6-24アリール、C6-24ヘテロアリールは、非置換であっても、あるいは1つ以上のZ5で置換されていてもよく;L3は、C1-6アルキレン、単結合、C3-8シクロアルキレン、および酸素原子もしくはイオウ原子からなる群から選択され;ここで前記のC1-6アルキレンまたはC3-8シクロアルキレンは、非置換であっても、あるいは1つ以上のZ6で置換されていてもよく;R5は、C1-6アルキル、ヘテロC1-6アルキル、C3-10シクロアルキル、およびC6-10アリールからなる群から選択され;ここで前記のC1-6アルキル、ヘテロC1-6アルキル、C3-10シクロアルキル、およびC6-10アリールは、非置換であっても、あるいは1つ以上のZ7で置換されていてもよく;R6は、C1-6アルキル、ヘテロC1-6アルキル、C3-10シクロアルキル、およびC6-10アリールからなる群から選択され;ここで前記のC1-6アルキル、ヘテロC1-6アルキル、C3-10シクロアルキル、およびC6-10アリールは、非置換であっても、あるいは1つ以上のZ8で置換されていてもよく;あるいはR5とR6が、それらが結合している炭素原子と一緒になって飽和または不飽和の3員環、4員環、5員環、6員環、もしくは7員環を形成し;
Yは、C1-24アルキレン、好ましくは-CH2、ヘテロC1-24アルキレン、C3-24シクロアルキレン、C6-24アリーレン、および酸素原子もしくはイオウ原子からなる群から選択され;ここで、R1とR2が共に水素原子であるとき、Yは酸素原子もしくはイオウ原子であるという条件があり;
Xは、C1-24炭化水素鎖、C1-24アルキレン、ヘテロC1-24アルキレン、C3-24シクロアルキレン、C6-24アリーレン、ポリC1-6アルキレンオキシド、ポリC6-10アリーレンオキシド、ヘテロシクリレン、およびヘテロアリーレンからなる群から選択され、ここで前記のC1-24アルキレン、ヘテロC1-24アルキレン、C3-24シクロアルキレン、C6-24アリーレン、ポリC1-6アルキレンオキシド、ポリC6-10アリーレンオキシド、ヘテロシクリレン、およびヘテロアリーレンは、非置換であっても、あるいはnが1であるときに1つ以上のZ9で置換されていてもよく;
nは、1~24の整数であり、好ましくは1~18の整数であり、さらに好ましくは1~12の整数であり、そして最も好ましくは1~6の整数であり;
Wと末端OH基が一緒になって第一アルコールまたは第二アルコールを形成し;
Z1~Z9はそれぞれ、C1-6アルコキシ、ハロC1-6アルコキシ、ハロ、C1-6アルキル、ハロC1-6アルキル、C3-12シクロアルキル、C6-12アリール、C6-12アリールC1-6アルキル、C3-12ヘテロシクリル、およびC4-12ヘテロアリールからなる群から独立的に選択される〕
[0014]本発明の説明の枠組みにおいて、以下のとおりである。
■ C1-24炭化水素鎖は、1~24個の炭素原子を有する、飽和または不飽和の炭化水素直鎖もしくは炭化水素分岐鎖を意味する。
■ 基または基の一部としてのC1-24アルキルは、式CnH2n+1のヒドロカルビル基を表し、ここでnは1~24の範囲の数である。アルキル基は、1~20個の炭素原子(例えば1~10個の炭素原子、例えば1~6個の炭素原子、例えば1~4個の炭素原子)を含むのが好ましい。アルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、本明細書に記載のように置換されていてもよい。本明細書にて炭素原子の後に下付き数字が使用されるとき、この下付き数字は、当該基が含んでよい炭素原子の数を表す。従って、例えばC1-24アルキルは、1~24個の炭素原子を有するアルキルを意味する。従って、例えばC1-6アルキルは、1~6個の炭素原子を有するアルキルを意味する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチルとその異性体、およびヘキシルとその異性体などがある;
■ 「エン」(ene)という接尾辞がアルキル基とともに用いられるとき(すなわち「アルキレン」)、これは、他の基への結合箇所として1つの単結合ではなく2つの単結合を有する、本明細書に定義のアルキル基を意味するよう意図されている。例えば、基または基の一部としての“C1-20アルキレン”は、二価である(すなわち、2つの他の基への結合のための単結合が2つある)C1-20アルキル基を表す。同様の様態にて、単独での又は別の置換基の一部としての“C1-6アルキレン”は、二価である(すなわち、2つの他の基への結合のための単結合が2つある)C1-6アルキル基を表す。アルキレン基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、本明細書に記載のように置換されていてもよい。アルキレン基の例としては、メチレン(-CH2-)、エチレン(-CH2-CH2-)、メチルメチレン(-CH(CH3)-)、1-メチル-エチレン(-CH(CH3)-CH2-)、n-プロピレン(-CH2-CH2-CH2-)、2-メチルプロピレン(-CH2-CH(CH3)-CH2-)、3-メチルプロピレン(-CH2-CH2-CH(CH3)-)、n-ブチレン(-CH2-CH2-CH2-CH2-)、2-メチルブチレン(-CH2-CH(CH3)-CH2-CH2-)、4-メチルブチレン(-CH2-CH2-CH2-CH(CH3)-)、ペンチレンとその異性体、およびヘキシレンとその異性体等があるが、これらに限定されない;
■ 基又は基の一部としてのC3-24シクロアルキルは、環状アルキル基、すなわち1つ又は2つの環状構造を有する、一価で飽和もしくは不飽和のヒドロカルビル基を表す。シクロアルキルは、単環式基や二環式基を含めた、1~2個の環を有する全ての飽和炭化水素基を含む。シクロアルキル基は、環中に3個以上の炭素原子を含んでよく、本発明にしたがって一般には3~24個の、好ましくは3~10個の、さらに好ましくは3~6個の炭素原子を含む。“C3-10シクロアルキル”基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘクシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、およびシクロデシル等があるが、これらに限定されない。“C3-6シクロアルキル”基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘクシル等があるが、これらに限定されない。
■ 「エン」(ene)という接尾辞がシクロアルキル基と併せて使用されるとき(すなわち“シクロアルキレン”)、これは、他の基への結合箇所として2つの単結合を有する、本明細書に定義のシクロアルキル基を意味するよう意図されている。“C3-8シクロアルキレン”の例としては、1,2-シクロプロピレン、1,1-シクロプロピレン、1,1-シクロブチレン、1,2-シクロブチレン、1,3-シクロペンチレン、1,1-シクロペンチレン、および1,4-シクロヘキシレン等があるが、これらに限定されない。
■ C6-10アリールは、6~10個の炭素原子(1つ以上の芳香環を形成する少なくとも6個の炭素原子)を有する炭化水素直鎖または炭化水素分岐鎖を意味する。
■ C6-24アリールは、6~24個の炭素原子(1つ以上の芳香環を形成する少なくとも6個の炭素原子)を有する炭化水素直鎖または炭化水素分岐鎖を意味する。
■ アルキレン基やシクロアルキレン基が存在する場合、それが一部を形成する分子構造への連結性は、共通の炭素原子を介してであっても、あるいは異なる炭素原子を介してであってもよい。これを説明するために、本発明のアスタリスク記号を利用すると、C3アルキレン基は、例えば、*-CH2CH2CH2-**-CH(-CH2CH3)-*、または*-CH2CH(-CH3)-*となる。同様に、C3シクロアルキレン基は以下のようになる。
【0018】
【化4】
■ 基または基の一部としての“ヘテロアルキル”は、当該鎖が2つの隣接酸素原子または2つの隣接イオウ原子を含まないという条件下で、1つ以上の炭素原子が、酸素原子、窒素原子、またはイオウ原子で置き換えられている場合の非環式アルキルを表す。このことは、当該非環式アルキルの1つ以上の-CH3を-NR2で置き換えることができるということ、および/または、当該非環式アルキルの1つ以上の-CH2-を-NR-、-O-、または-S-で置き換えることができるということを意味する(ここでRはアルキルである)。当該鎖中のS原子は、必要に応じて1つ又は2つの酸素原子で酸化して、それぞれスルホキシドおよびスルホンにすることができる。ヘテロアルキル基の例としては、アルキルエーテル、ケトン、アルキルスルフィド、およびアルキルスルホン等があるが、これらに限定されない。
■ “エン(ene)”という接尾辞がヘテロアルキル基と併せて使用されるとき(すなわち“ヘテロアルキレン”)、これは、他の基への結合箇所として1つの単結合ではなく2つの単結合を有する、本明細書に定義のヘテロアルキル基を意味するよう意図されている。
■ 基または基の一部としての“ハロC1-6アルキル”は、1つ、2つ、または3つの水素原子がそれぞれ本明細書に定義のハロゲンで置き換えられている場合の、上記にて定義の意味を有するC1-6アルキル基を表す。このようなハロC1-6アルキル基の例としては、クロロメチル、1-ブロモエチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、および1,1,1-トリフルオロエチル等があるが、これらに限定されない。留意しておかねばならないことは、これらのハロゲン化合物はそれほど好ましいわけではない、という点である。
■ 基または基の一部としての“C1-6アルコキシ”または“C1-6アルキルオキシ”は、式-ORb(式中、Rbは上記にて定義のC1-6アルキルである)を有する基を表す。好適なC1-6アルコキシの例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、およびヘキシルオキシ等があるが、これらに限定されない。
■ 基または基の一部としての“ハロC1-6アルコキシ”は、式-O-Rc(式中、Rcは本明細書にて定義のハロC1-6アルキルである)を有する基を表す。好適なハロC1-6アルコキシの例としては、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2,2,2-トリフルオロエトキシ、1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ、2-フルオロエトキシ、2-クロロエトキシ、2,2-ジフルオロエトキシ、2,2,2-トリクロロエトキシ、トリクロロメトキシ、2-ブロモエトキシ、ペンタフルオロエチル、3,3,3-トリクロロプロポキシ、および4,4,4-トリクロロブトキシ等があるが、これらに限定されない。留意しておかねばならないことは、これらのハロゲン化合物はそれほど好ましいわけではない、という点である。
■ 基または基の一部としての“アリール”は、単一の芳香環(すなわちフェニル)または縮合した(例えばナフチル)もしくは共有結合で連結した複数の芳香環(一般には6~24個の炭素原子を、好ましくは6~10個の炭素原子を含み、少なくとも1つの環が芳香族である)を有する、ポリ不飽和の芳香族ヒドロカルビル基を表す。芳香環は、必要に応じて、該芳香環に縮合した1~2個のさらなる環を含んでよい。アリールはさらに、本明細書に列挙されている炭素環式系の部分水素化誘導体を含むよう意図されている。アリール例としては、フェニル、ビフェニリル、ビフェニレニル(biphenylenyl)、5-テトラリニル、6-テトラリニル、1-アズレニル、2-アズレニル、3-アズレニル、4-アズレニル、5-アズレニル、6-アズレニル、7-アズレニル、8-アズレニル、ナフタレン-1-イル、ナフタレン-2-イル、4-インデニル、5-インデニル、6-インデニル、7-インデニル、1-アセナフチレニル、2-アセナフチレニル、3-アセナフチレニル、4-アセナフチレニル、5-アセナフチレニル、3-アセナフテニル、4-アセナフテニル、5-アセナフテニル、1-フェナントリル、2-フェナントリル、3-フェナントリル、4-フェナントリル、10-フェナントリル、1-ペンタレニル、2-ペンタレニル、4-インダニル、5-インダニル、5-テトラヒドロナフチル、6-テトラヒドロナフチル、7-テトラヒドロナフチル、8-テトラヒドロナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル1,4-ジヒドロナフチル、1,4-ジヒドロナフチル、1-ピレニル、2-ピレニル、3-ピレニル、4-ピレニル、および5-ピレニル等があるが、これらに限定されない。“C6-10アリール”は、6~10個の炭素原子を有するアリールであり、少なくとも1つの環が芳香族である。C6-10アリールの例としては、フェニル、ナフチル、インダニル、および1,2,3,4-テトラヒドロナフチル等がある。
■ “エン(ene)”という接尾辞がアリール基と併せて使用されるとき(すなわち“アリーレン”)、これは、他の基への結合箇所として1つの単結合ではなく2つの単結合を有する、本明細書に定義のアリール基を意味するよう意図されている。例えば、基または基の一部としての“C6-20アリーレン”は、二価である(すなわち、他の2つの基に結合するための単結合が2つある)C6-20アリール基を表す。好適なC6-20アリーレン基としては、1,4-フェニレン、1,2-フェニレン、1,3-フェニレン、ビフェニリレン、ナフチレン、インデニレン、1-テトラニリレン、2-テトラニリレン、5-テトラニリレン、および6-テトラニリレン、糖がある。
■ 基または基の一部としての“C6-12アリールC1-6アルキル”は、少なくとも1つの水素原子が少なくとも1つの本明細書に定義のC6-12アリールで置き換えられている場合の、本明細書に定義のC1-6アルキルを意味する。C6-12アリールC1-6アルキル基の例としては、ベンジル、フェネチル、ジベンジルメチル、メチルフェニルメチル、および3-(2-ナフチル)-ブチル等があるが、これらに限定されない。
■ 基または基の一部としての“ヘテロシクリル”または“ヘテロシクロアルキル”または“ヘテロシクロ”は、少なくとも1つの炭素原子含有環(該環が縮合して、アリール環、シクロアルキル環、またはヘテロシクリル環になってもよい)中に少なくとも1つのヘテロ原子を有する、非芳香族で完全飽和もしくは部分不飽和の環状基(例えば、3~7員の単環式基、7~11員の二環式基、あるいは合計で3~10個の環原子を含む環状基)を表す。ヘテロ原子を含有するヘテロシクリル基の各環は、N、O、および/またはSから選択される1個、2個、3個、または4個のヘテロ原子を有してよく、このときNヘテロ原子とSヘテロ原子は、必要に応じて酸化してもよく、Nヘテロ原子は、必要に応じて四級化してもよく、ヘテロシクリルの少なくとも1つの炭素原子は、酸化して少なくとも1つのC=Oを形成させてもよい。ヘテロ環式基は、結合価が許容する場合に、環もしくは環系のいかなるヘテロ原子または炭素原子にても結合することができる。複数環ヘテロ環の環は、縮合していても、架橋していても、および/または1つ以上のスピロ原子を介して結合していてもよい。
■ 本明細書で使用している“スピロ原子”は、スピロ化合物において2つの環状構造を連結している原子を表す。スピロ原子の例としては、第四級炭素原子があるが、これらに限定されない。本明細書で使用している“スピロ化合物”は、2つの環が1つの原子を介して連結されている場合の二環式化合物を表す。
■ “エン(ene)”という接尾辞がヘテロシクリル基と併せて使用されるとき(すなわち“ヘテロシクリレン”)、これは、他の基への結合箇所として1つの単結合ではなく2つの単結合を有する、本明細書に定義のヘテロシクリル基を意味するよう意図されている。
■ 基または基の一部としての“ヘテロアリール”は、5~12個の炭素原子を含む芳香環、あるいは一般には5~6個の原子を含む縮合または共有結合的に連結している1~2個の環(少なくとも1つが芳香族である)を含む環系を表し、このときこれら環において、環の1つ以上中の1つ以上の炭素原子が、N原子、O原子、および/またはS原子で置き換えられてもよく、ここでNヘテロ原子とSヘテロ原子が、必要に応じて酸化されてもよく、Nヘテロ原子が、必要に応じて四級化されてもよい(但し、これらのヘテロアリールに限定されない)。このような環は、縮合してアリール環、シクロアルキル環、ヘテロアリール環、またはヘテロシクリル環になってよい。ヘテロアリールの例としては、ピロリル、フラニル、チアフェニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、オキサトリアゾリル、チアトリアゾリル、ピリジニル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、オキサジニル、ジオキシニル、チアジニル、トリアジニル、イミダゾ[2,1-b][1,3]チアゾリル、チエノ[3,2-b]フラニル、チエノ[3,2-b]チオフェニル、チエノ[2,3-d][1,3]チアゾリル、チエノ[2,3-d]イミダゾリル、テトラゾロ[1,5-a]ピリジニル、インドリル、インドリジニル、イソインドリル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、イソベンゾチオフェニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、1,3-ベンゾオキサゾリル、1,2-ベンゾイソオキサゾリル、2,1-ベンゾイソオキサゾリル、1,3-ベンゾチアゾリル、1,2-ベンゾイソチアゾリル、2,1-ベンゾイソチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、1,2,3-ベンゾオキサジアゾリル、2,1,3-ベンゾオキサジアゾリル、1,2,3-ベンゾチアジアゾリル、2,1,3-ベンゾチアジアゾリル、ベンゾ[d]オキサゾール-2(3H)-オン、2,3-ジヒドロベンゾフラニル、チエノピリジニル、プリニル、イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、6-オキソ-ピリダジン-1(6H)イル、2-オキソピリジン-1(2H)-イル、6-オキソ-ピリダジン-1(6H)-イル、2-オキソピリジン-1(2H)-イル、1,3-ベンゾジオキソリル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キナゾリニル、およびキノキサリニル等があるが、これらに限定されない。前記テロアリール基は、ピリジニル、1,3-ベンゾジオキソリル、ベンゾ[d]オキサゾール-2(3H)-オン、2,3-ジヒドロベンゾフラニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピロリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ピリミジニル、トリアゾリル、およびチアゾリルからなる群から選択されるのが好ましい。
■ “エン(ene)”という接尾辞がヘテロアリール基と併せて使用されるとき(すなわち“ヘテロアリーレン”)、これは、他の基への結合箇所として1つの単結合ではなく2つの単結合を有する、本明細書に定義のヘテロアリール基を意味するよう意図されている。
【0019】
[0015]本発明において“置換された(substituted)”という用語が使用されているときは常に、指示された原子が正常な原子価または正常な価数範囲(荷電形を含めて)を超えないという条件で、“置換された”を使用している表現で指示されている原子上の1つ以上の水素が、指示された基からの選択で置き換えられている、ということを示すよう意図されている。置換基には、不飽和もイソシアネートに対して反応性の官能基(アルコールやアミンのような)も導入すべきではない。
【0020】
[0016]下記の一節にて、本発明の種々の態様をより詳細に説明する。このように説明された各態様は、明確に否定されていない限り、他のいかなる態様とも組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であると示されている任意の特徴は、好ましい又は有利であると示されている他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【0021】
[0017]こうしたアリル-モノオール含有開始剤を使用すると、前述の問題点が解消される。驚くべきことに、本明細書に開示のアリル末端基を含むアリル含有プレポリマーをポリウレタンの製造に使用すると、その後の反応の収率を大幅に高めることができて、望ましくない副反応が避けられる、ということを本発明者らは見出した。本発明によれば、前記ポリウレタンを製造するとき、本明細書に開示のアリル末端基を含むアリル含有プレポリマーを使用すると、分子中のウレア基の割合が大幅に低下し、このため分子内の水素結合の量が減少し、その結果、かなり低い粘度のシリル化ポリウレタンが得られる。本発明の低粘度シリル化ポリウレタンは、処理と取り扱いがはるかに容易になるので、極めて有利である。さらに、低粘度シリル化ポリウレタンは、取り扱いがより容易になるので、任意に可塑剤非含有の配合処方が得られるようになる。さらに、本発明のプロセスは、より安価な出発物質(例えばヒドロシラン)を使用し、このため本発明のシリル化ポリウレタンの全体的な製造コストが低下する。
【0022】
[0018]独立クレームと従属クレームは、本発明の特定の特徴と好ましい特徴を明確に記載している。従属クレームからの特徴は、必要に応じて、独立クレームまたは他の従属クレームの特徴と組み合わせることができる。本発明の上記の特性、特徴、および利点、ならびに他の特性、特徴、および利点は、例を挙げて本発明の原理を記載している下記の詳細な説明から明らかとなろう。
【0023】
[0019]このようなアリル-モノオール含有開始剤は、購入することもできるし、あるいは当業者に公知の単純な有機化学反応に従って製造することもできる。例えば、2-メチル-3-ブテン-2-オール、2-(ビニルオキシ)エタン-1-オール、および2-アリルオキシエタノールは、Sigma Aldrich社から購入することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[0020]好ましい実施態様においては、R1とR2が共にC1-3アルキル(好ましくは-CH3)であり;Yが、C1-24アルキル(好ましくは-CH2)、ヘテロC1-24アルキル、C3-24シクロアルキル、C6-24アリール、O、およびSからなる群から選択され;Xが、C1-24炭化水素鎖、C1-24アルキレン、ヘテロC1-24アルキレン、C3-24シクロアルキレン、C6-24アリーレン、ポリC1-6アルキレンオキシド、ポリC6-10アリーレンオキシド、ヘテロシクリレン、およびヘテロアリーレンからなる群から選択され、ここで前記のC1-24アルキレン、ヘテロC1-24アルキレン、C3-24シクロアルキレン、C6-24アリーレン、ポリC1-6アルキレンオキシド、ポリC6-10アリーレンオキシド、ヘテロシクリレン、またはヘテロアリーレンは、非置換であっても、あるいはnが1であるときに1つ以上のZ9で置換されてもよく;そしてWと末端OH基が一緒になって、アルコール(好ましくは、第一または第二アルコール)を形成する。
【0025】
[0021]こうしたアリル-モノオール含有開始剤は、それらが反応性および/またはその後の反応の選択性を増大させるので好ましい。
【0026】
[0022]より好ましい実施態様においては、R1とR2が共にC1-3アルキル(好ましくは-CH3)であり;Yが-CH2であり;Xが、C1-24炭化水素鎖、C1-24アルキレン、ヘテロC1-24アルキレン、C3-24シクロアルキレン、C6-24アリーレン、ポリC1-6アルキレンオキシド、ポリC6-10アリーレンオキシド、ヘテロシクリレン、およびヘテロアリーレンからなる群から選択され、ここで前記のC1-24アルキレン、ヘテロC1-24アルキレン、C3-24シクロアルキレン、C6-24アリーレン、ポリC1-6アルキレンオキシド、ポリC6-10アリーレンオキシド、ヘテロシクリレン、またはヘテロアリーレンは、非置換であっても、あるいはnが1であるときに1つ以上のZ9で置換されてもよく;そしてWと末端OHが一緒になって、第一または第二アルコールを形成する(好ましくはWと当該末端OH基が-CH2-OHまたは-CH-OH-CH3である)。
【0027】
[0023]別の有利な実施態様においては、R1とR2は、YがOまたはSであるときに、共にC1-3アルキル(好ましくは-CH3)であり;Xが、C1-24炭化水素鎖、C1-24アルキレン、ヘテロC1-24アルキレン、C3-24シクロアルキレン、C6-24アリーレン、ポリC1-6アルキレンオキシド、ポリC6-10アリーレンオキシド、ヘテロシクリレン、およびヘテロアリーレンからなる群から選択され、ここで前記のC1-24アルキレン、ヘテロC1-24アルキレン、C3-24シクロアルキレン、C6-24アリーレン、ポリC1-6アルキレンオキシド、ポリC6-10アリーレンオキシド、ヘテロシクリレン、またはヘテロアリーレンは、非置換であっても、あるいはnが1であるときに1つ以上のZ9で置換されてもよく;そしてR3と末端OHが一緒になって、第一または第二アルコールを形成する。
【0028】
[0025] こうしたアリル-モノオール含有開始剤は、それらがヒドロシリル化という引き続いた反応においてアリル基の反応性を最も高めるので最も好ましい。
【0029】
[0026]モノオール含有開始剤は脂肪族であるのが有利である。芳香族基がアリル基を不活性化することがあるということが実際に観察されており、またこうした芳香族基が最終製品の剛性を高め、従ってエラストマー製品に対しては望ましくないと考えられている。
【0030】
[0027]本発明の別の態様によれば、上記のアリル-モノオール含有開始剤をアルコキシル化して一般式V
【0031】
【化5】
(式中、R9とR10は互いに独立していて、H、直鎖C1-4アルキル、または分岐鎖C1-4アルキルである)のアリルモノオールを得る。従って式Iの上記アリル-モノオール含有開始剤は、2~6個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキレンオキシドと反応する。好適なアルキレンオキシドは、プロピレンオキシド、エチレンオキシド、およびこれらの混合物である。
【0032】
[0028]一般式Vのアリルモノオールは、一般には500~25000ダルトンの、好ましくは800~15000ダルトンの、さらに好ましくは800~6000ダルトンの、そして最も好ましくは1000~4000ダルトンの分子量を有する。
【0033】
[0029]有利な実施態様においては、アルコキシル化反応は、KOH、CsOH、およびカリウムメトキシド等の塩基性触媒、ならびにコバルト,クロロシアノ-1,2-ジメトキシエタン亜鉛錯体等の二元金属シアニド触媒からなる群から選択される触媒の存在下で行われる。
【0034】
[0030]触媒は、引き続く反応の前に取り除くのが好ましい。該触媒は、反応混合物の総重量を基準として、溶液中に多くても0.500重量%の量にて残存するのが有利であり、多くても0.250重量%の量にて残存するのが好ましく、多くても0.050重量%の量にて残存するのがさらに好ましく、多くても0.001重量%の量にて残存するのがさらに好ましい。
【0035】
[0031]イソシアネート化合物との後続する反応において触媒が存在すると、実際に望ましくない副反応を引き起こすことがある。
【0036】
[0032]幾つかの好ましい実施態様においては、一般式Vのアリルモノオールは、アリル部分のγ位に共有結合の水素をもたなくてよい。好適なアリル末端ポリエーテルは、ポリアルキレングリコールの末端ヒドロキシル基の1つがアリル基で交換されている場合の、ポリアルキレングリコール誘導体である。ポリアルキレングリコールは、アルキレンオキシドのホモポリマーであっても、あるいは2種以上のアルキレンオキシドの混合物の共重合から得られるコポリマーであってもよい。
【0037】
[0033]幾つかの実施態様では、本発明の反応生成物(一般式Vのアリルモノオール)は、エキステンダーグリコールと共にイソシアネート反応性化合物と反応させることができる。エキステンダーグリコールは、鎖の一部として(プレポリマーの末端位置ではなく)加えることができる。好適なエキステンダーグリコール(すなわち連粗延長剤)の例としては、約2~約10個の炭素原子を有する低級脂肪族グリコールもしくは短鎖グリコールがあり、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキノン、ジ(ヒドロキシエチル)エーテル、およびネオペンチルグリコール等があるが、これらに限定されない。
【0038】
[0034]幾つかの実施態様では、本発明の反応生成物(一般式Vのアリルモノオール)は、アルコール末端とアリル末端のそれぞれに対して少なくとも約1の平均反応性官能価を有する。本明細書で使用している“平均反応性官能価”は、1分子当たりの反応性基の平均数(官能価)を表しており、反応生成物(アリル末端プレポリマー)中に存在する統計的に関連した分子数に対して平均化される。
【0039】
[0035]さらなる工程において、上記のアルコキシル化反応から得られる生成物をイソシアネート含有化合物とさらに反応させて、アリル末端ポリウレタンプレポリマーを形成させる。この工程は、100℃未満の、好ましくは90℃未満の、さらに好ましくは85℃未満の温度で行われる。
【0040】
[0036]本発明に従った好適なイソシアネート含有化合物は、芳香族イソシアネート、脂環式イソシアネート、複素環式イソシアネート、アリール脂肪族イソシアネート、または脂肪族イソシアネートであってよい。好適なイソシアネートには、さらにポリイソシアネートも含まれる。本発明のアリル末端プレポリマーを製造する際に使用するための好適なポリイソシアネートは、タイプRa-(NCO)r(式中、rは少なくとも2であり;Raは芳香族基または脂肪族基である)のポリイソシアネートを含み、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、類似のポリイソシアネート、およびこれらの混合物などがある。
【0041】
[0037]本発明において使用することができる好適なポリイソシアネートの例は、任意の有機ポリイソシアネート化合物または有機ポリイソシアネート化合物の混合物であってよく(これらに限定されない)、ここで該化合物は少なくとも2つのイソシアネート基を含むのが好ましい。
【0042】
[0038] 有機ポリイソシアネートの例としては、ジイソシアネート(特に芳香族ジイソシアネート)およびより高い官能価のイソシアネート等があるが、これらに限定されない。本発明において使用することができる有機ポリイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;2,4’-異性体、2,2’-異性体、4,4’-異性体、およびこれらの混合物の形(ピュアMDIとも呼ばれる)のジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とそれらのオリゴマーとの混合物(当業界では“クルードMDI”またはポリメリックMDIとして知られている)、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、トリレン-2,4-ジイソシアネートとトリレン-2,6-ジイソシアネート〔トルエンジイソシアネートとしても知られており、TDIと呼ばれる(2,4-TDIや2,6-TDI)〕(任意の適切な異性体混合物にて使用される)、クロロフェニレン-2,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、ジフェニレン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジイソシアネート-3,3’-ジメチル-ジフェニル、3-メチル-ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、およびジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;シクロヘキサン-2,4-ジイソシアネートとシクロヘキサン-2,3-ジイソシアネート、1-メチルシクロヘキシル-2,4-ジイソシアネートと1-メチルシクロヘキシル-2,6-ジイソシアネートとこれらの混合物、およびビス-(イソシアナートシクロヘキシル)メタン〔例えば、4,4’-ジイソシアナートジシクロヘキシルメタン(H12MDI)〕等の脂環式ジイソシアネート;2,4,6-トリイソシアナートトルエンや2,4,4-トリイソシアナートジフェニルエーテル等のトリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート(IPDI);ブチレンジイソシアネート;トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート;イソシアナートメチル-1,8-オクタンジイソシアネート;テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI);1,4-シクロヘキサンジイソシアネート(CDI);トリジンジイソシアネート(TODI);これらポリイソシアネートの任意の適切な混合物;これらポリイソシアネートの1種以上と、2,4’-異性体、2,2’-異性体、4,4’-異性体、またはこれらの混合物の形のMDI(ピュアMDIとも呼ばれる)との任意の適切な混合物;ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とそれらのオリゴマーとの混合物(当業界では“クルードMDI”またはポリメリックMDIとして知られている);およびポリイソシアネート(例えば、上記のポリイソシアネート、好ましくはMDI系ポリイソシアネート)の反応生成物;等があるが、これらに限定されない。ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)タイプまたはトルエンジイソシアネート(TDI)タイプのイソシアネートを使用するのが好ましい。
【0043】
[0039]幾つかの実施態様では、少なくとも1種のイソシアネートは、ジイソシアネートまたはより高官能価のポリイソシアネート、ならびに過剰のジイソシアネートまたは高官能価ポリイソシアネートと、ヒドロキシル末端ポリエステルまたはヒドロキシル末端ポリエーテルとの反応によって得られるイソシアネート末端プレポリマー、そして過剰のジイソシアネートまたは高官能価ポリイソシアネートとモノマーポリオールまたはモノマーポリオール(例えばエチレングリコール、トリメチロールプロパン、またはブタンジオール等)の混合物との反応によって得られる生成物のカルボジイミド改質変性体および/またはウレトンイミン改質変性体を含んでよい。
【0044】
[0040]幾つかの実施態様では、前記少なくとも1種のイソシアネートは、ポリメリックメチレンジフェニルジイソシアネートを含む。
【0045】
[0041]ポリメリックメチレンジフェニルジイソシアネートは、ピュアMDI(2,4’-、2,2’-、および4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート)と式(A)
【0046】
【化6】
(式中、qは、1~10、またはそれ以上であってよい整数であり、分岐体を除外しないのが好ましい)の高級同族体との任意の混合物を含んでよい。
【0047】
[0042]少なくとも1種のイソシアネートはジフェニルメタンジイソシアネートであるのが好ましい。
【0048】
[0043]本発明のアリル末端プレポリマーを製造する際に使用するための少なくとも1種のイソシアネート含有化合物は、0.5重量%~50重量%の範囲のNCO価を有してよい。0.5重量%~45重量%の範囲のNCO価を有するのが好ましく、1.0重量%~40重量%の範囲のNCO価を有するのがさらに好ましく、1.5重量%~35重量%の範囲のNCO価を有するのがさらに好ましい。
【0049】
[0044]イソシアネート含有化合物のNCO価(NCO%やNCO含量とも呼ばれる)は、ASTM D5155標準法に従って、ジブチルアミンを使用する滴定によって測定することができる。NCO価は重量%で表示される。
【0050】
[0045]幾つかの実施態様では、前記少なくとも1種のイソシアネート含有化合物のNCOの、前記反応生成物(アリル末端プレポリマー)のOHに対する比は、0.90~1.20の範囲であり、好ましくは0.95~1.10の範囲である。
【0051】
[0046]OH価(OH value)〔OH価(OH number)またはOH含量とも呼ばれる〕は、ASTM D1957標準法に従って測定することができる。
【0052】
[0047]別の態様によれば、本発明は、上記のプロセスによって得られるアリル末端ポリウレタンプレポリマーおよび変性体に関する。
【0053】
[0048]アリル末端ポリウレタンプレポリマーは、500~15000ダルトンの分子量を有するのが有利である。
【0054】
[0049]さらなる工程において、上記プロセスから得られたアリル末端ポリウレタンプレポリマーおよび変性体を、以下の式IV:
H-Si-(OR3-p(R 式IV
の少なくとも1種のヒドロシランとさらに反応させてシリル末端ポリウレタンを得るが、ここで、R7は、C1-20アルキルまたはC6-20アリールから選択され;R8は、C1-20アルキル、C6-20アリール、またはC1-20アルコキシから選択され;pは、0、1、または2から選択される整数である。pが0または1であるときは、同一でなければならないOR7基が2つまたは3つある。pが2であるときは、同一である必要のないR8基が2つある。
【0055】
[0050]こうした反応が、一般には、望ましくない異性化および/またはβ-脱離を伴うという先行技術とは異なって、本発明のアリル末端ポリウレタンプレポリマーは、副反応を引き起こすことなくヒドロシリル化することができ、従って最終製品におけるキュアー効率が高まる。
【0056】
[0051]本発明に好適なヒドロシランの例としては、ジエトキシメチルシラン、トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、ジエトキシエチルシラン、ジメトキシメチルシラン、トリ(プロパン-2-イルオキシ)シラン、トリブトキシシラン、7-(2-エトキシエトキシ)-3,6,8,11-テトラオキサ-7-シラトリデカン、およびこれらの混合物等があるが、これらに限定されない。好ましいヒドロシランは、トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、7-(2-エトキシエトキシ)-3,6,8,11-テトラオキサ-7-シラトリデカン、ジエトキシエチルシラン、ジメトキシメチルシラン、およびこれらの混合物である。
【0057】
[0052]このヒドロシリル化工程は、触媒なしでも、あるいは少なくとも1種の触媒の存在下でも行うことができる。
【0058】
[0053]好適な触媒の例としては、スパイヤー触媒(Speier's catalyst)、アダム触媒(Adam's catalyst)、オスコ触媒(Ossko's catalyst)およびカルステッド触媒(Karsted's catalyst)等の白金系触媒;[Rh(cod)2]BF4、[RhCl(nbd)]2およびウィルキンソン触媒(Wilkinson's catalyst、RhCl(PPh3)3)などのロジウム系触媒;ならびに、[Ru(ベンゼン)Cl2]、[Ru(p-シメン)Cl2]、グラブス第1世代触媒(Grubbs' 1st generation catalyst)および[Cp*Ru(MeCN)3]PF6などのルテニウム系触媒;などがあるが、これらに限定されない。アダム触媒は酸化白金(PtO2)に相当し、オスコ触媒は白金カルボニルシクロビニルメチルシロキサン錯体に相当する。
【0059】
【化7】
[0054]触媒は、反応混合物の総重量を基準として多くても0.0001重量%(例えば多くても0.0009重量%、例えば多くても0.0008重量%、例えば多くても0.0007重量%、例えば多くても0.0006重量%、例えば多くても0.0005重量%)の量にて存在するのが好ましい。
【0060】
[0055]別の態様によれば、本発明は、このようなプロセスによって得られるシリル末端ポリウレタンに関する。
【0061】
[0056]シリル末端ポリウレタンは、ポリウレタンの総重量を基準として少なくとも0.1重量%のアルコキシアルキルシランを、例えば少なくとも1.0重量%のアルコキシアルキルシランを、例えば少なくとも5.0重量%のアルコキシアルキルシランを、例えば少なくとも10.0重量%のアルコキシアルキルシランを、例えば少なくとも15.0重量%のアルコキシアルキルシランを、例えば少なくとも20.0重量%のアルコキシアルキルシランを、例えば少なくとも25.0重量%のアルコキシアルキルシランをを含むのが好ましい。
【0062】
[0057]このシリル末端ポリウレタンは、従来のシリル化ポリウレタンと比較して、室温ではるかに低い粘度を有するので、特定の用途(例えば、塗料、接着剤、またはフォームの製造用)に対してとても使用しやすい。幾つかの好ましい実施態様では、(非可塑化)プレポリマーの室温での粘度は、コーン・プレート形状のブルックフィールド粘度計を用いた、1回転/秒の剪断速度と100ミクロンのトランケーションギャップを適用した測定にて少なくとも1.0 Pa.s~高くても50Pa.sの範囲、例えば少なくとも1.5 Pa.s~高くても50 Pa.sの範囲、例えば少なくとも1 Pa.s~高くても25 Pa.sの範囲、例えば少なくとも1 Pa.s~高くても20 Pa.sの範囲、例えば少なくとも1.5 Pa.s~高くても25 Pa.sの範囲、例えば少なくとも1.5 Pa.s~高くても20 Pa.sの範囲である。
【0063】
[0058]別の態様では、本発明は、接着剤、塗料、エラストマー、フォーム、シーラント、ガスケット、およびグラウト等を製造する上でこのようなシリル末端ポリウレタンを使用することに関する。幾つかの実施態様では、製品は接着剤であってよい。幾つかの実施態様では、製品はエラストマーであってよい。幾つかの実施態様では、製品は一成分系フォーム等のフォームであってよい。さらに他の実施態様では、製品は塗料であってよい。さらに他の実施態様では、製品はシーラントであってよい。
【0064】
[0059]この目的を達成するために、上記のシリル末端ポリウレタンを、70℃未満の温度で、好ましくは60℃未満の温度で、さらに好ましくは40℃未満の温度で、さらに好ましくは0~25℃の温度でキュアーする(例えば、周囲雰囲気の湿気を使用して、あるいは水を添加するか又は硬化剤を使用して)。本発明はさらに、こうしたキュアーにより得られる製品に関する。
【0065】
[0060]シリル末端ポリウレタンは1種以上の添加剤を含んでよい。幾つかの実施態様では、添加剤は、シリル末端ポリウレタンの総重量を基準として少なくとも0.01重量%の量にて、例えば少なくとも0.03重量%の量にて、例えば少なくとも0.1重量%の量にて、好ましくは例えば少なくとも0.3重量%の量にて、例えば少なくとも0.5重量%の量にて、そして例えば少なくとも1.0重量%の量にて存在する。添加剤は、シリル末端ポリウレタンの総重量を基準として、合計で最大300重量%であってよい。
【0066】
[0061]好適な添加剤の例としては、界面活性剤、難燃剤、連鎖延長剤、架橋剤、酸化防止剤、フィラー、およびこれらの混合物等があるが、これらに限定されない。
【0067】
[0062]界面活性剤の例は、ノニルフェノール類、脂肪酸エチレンオキシド縮合物、およびアルキレンオキシドブロックコポリマーである。界面活性剤は、(一般には全イソシアネート反応性成分を基準として)0.1~5重量%の量にて使用される。市販の界面活性剤の例は、Tegostab(登録商標)B8017およびOrtegol(登録商標)501である。
【0068】
[0063]難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤、および発泡性グラファイト等がある。難燃剤の特定の例としては、例えば、2-クロロ-1-メチルエチルホスフェート、テトラブロモビスフェノールA、トリス-クロロエチルホスフェート、アンモニウムホスフェート、およびポリホスフェート等がある。
【0069】
[0064]酸化防止剤の例としては、立体障害フェノール類、ジフェニルアミン、およびベンゾフラノン誘導体等があるが、これらに限定されない。市販の酸化防止剤の例としては、Vanderbilt Chemicals社から市販のVanox(登録商標)945およびBASF社から市販のIrganox(登録商標)1135等がある。
【0070】
[0065]フィラーの例としては、BaSO4、CaCO3、カーボンブラック、ガラス繊維やロックウール繊維等の無機繊維、ミクロスフィア、ヒュームドシリカ、二酸化チタン、木材チップ、木材ダスト、および木材フレーク等の無機フィラー;紙および厚紙(細かく刻んだもの又は層状のもの);砂、バーミキュライト、クレー、セメント、および他のケイ酸塩;粉砕ゴム、粉砕熱可塑性樹脂、粉砕熱硬化性材料;金属粒子および金属プレート;粒子形態もしくは層状のコルク;亜麻繊維、麻繊維、およびサイザル繊維等の天然繊維;ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維、ポリアラミド繊維、ポリエステル繊維、および炭素繊維等の合成繊維;ガラスビーズ、粉砕ガラス、および中空ガラスビーズ;発泡ビーズまたは発泡性ビーズ;破砕廃棄物、チョップト廃棄物、圧潰廃棄物、または粉砕廃棄物等の未処理もしくは処理済み廃棄物、特にフライアッシュ;織布および不織布;ならびにこれら材料の2つ以上の組み合わせ;等があるが、これらに限定されない。特定の実施態様では、このようなフィラーを、官能化された炭化水素で被覆することができる。
【0071】
[0066]他の好適な添加剤としては、可塑剤、煙抑制剤、触媒、着色剤、顔料(カーボンブラックや酸化鉄等の無機顔料と有機顔料)、抗菌剤、離型剤、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、紫外線吸収剤、水スカベンジャー、乳化剤、チキソトロープ剤(例えば、ポリアミドワックスやエアロゾル等)、接着促進剤、レオロジー改良剤、反応性希釈剤、消泡剤、発泡剤、コポリマー、場合によっては各タイプの添加剤の多様な変形、およびこれらの組み合わせ等がある。
【0072】
[0067]添加剤は可塑剤であってよい。シリル末端ポリウレタン中の可塑剤の量は制限するのが好ましい。本発明の目的に対して好適な可塑剤は、当業界において公知の従来の可塑剤(例えば、二塩基性酸もしくは多塩基性酸と一価アルコールとのエステル)を含む。好適な添加剤の他の例は、ジオクチルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジメチルフタレート、およびジブチルフタレート等のフタレート(8個超の炭素原子を有するフタレートが好ましい);トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート(TEP)、およびクレジルジフェニルホスフェート等のホスフェート;塩素化ビフェニル;芳香族オイル;ジイソノニルアジペートやジ-(2-エチルヘキシル)アジペート等のアジペート;ならびにこれらの組み合わせ;を含む群から選択することができる。好適な可塑剤の他の例は、分岐の脂肪族アルコール、脂環式アルコール、および芳香族アルコール、ならびに非分岐の脂肪族アルコール、脂環式アルコール、および芳香族アルコールのリン酸エステルを含む。適切な場合には、ハロゲン化アルコールのホスフェートも使用することができる。いわゆるポリメリック可塑剤も使用することができる。このような可塑剤の例は、アジピン酸、セバシン酸、またはフタル酸のポリエステルを含む群から選択することができる。フェノールアルキルスルホネート(例えばフェニルパラフィンスルホネート)も使用することができる。可塑剤はさらに、プロピレンカーボネートやエチレンカーボネート等のアルキレンカーボネートから選択することができる。
【0073】
以下に実験例を挙げて本発明を説明するが、本発明がこれによって限定されることはない。
【実施例
【0074】
実験例1(R 1 とR 2 がHであり、Yが酸素原子であり、XとWがCH 2 であり、R 9 がCH 3 であり、そしてnが1である場合の式Vのアリルモノオールの製造)
[0068]0.49gのDMC触媒(二元金属シアニド-コバルト,クロロシアノ1,2-ジメトキシエタン亜鉛錯体、Hongkong Huarun International社から市販、RN:116912-63-1)を、圧力容器中にて312gの2-アリルオキシエタノール(R1とR2がHであり、Yが酸素原子であり、XとWがCH2であり、そしてnが1である場合の式Iのアリル-モノオール含有開始剤)に加え、温度を110℃に上げた。反応容器に少量のプロピレンオキシドを加えた。その結果、プロピレンオキシドの装入により、容器中の圧力が増大した。圧力の降下(アルコキシル化反応が起こっている)が観察された後、約2000g/モルの分子量にするために、必要とされる理論量のプロピレンオキシド(合計で4460g)を加えた。混合物を窒素で覆い、反応混合物を1バールのプロピレンオキシドで加圧した。プロピレンオキシドの添加が完了した後、圧力の降下は観察されなかった。最後に、500ppmの酸化防止剤(Irganox 1075)を生成物に添加し、物質を5リットルの金属缶中に排出した。
【0075】
[0069]得られた生成物は、酸価が37.4mgKOH/g、不飽和価が0.667ミリ当量/g、そして分子量が1500ダルトンである。
【0076】
実験例2(アリル末端ポリウレタンプレポリマーの製造)
[0070]実験例1で得られた生成物を反応容器中に入れ、窒素でフラッシングし、80℃に加熱した。必要とされる化学量論量の1,1’-メチレンビス(4-イソシアナートベンゼン)〔HUNTSMAN社からSUPRASEC(登録商標)1306として市販の4,4’-MDI〕を、液体として保持するために加熱した漏斗を介して加えた。添加速度は1.5ml/分であった。反応混合物を350rpmで機械的に撹拌し、窒素雰囲気下で反応させた。イソシアネート価を時間の経過とともにモニターし、イソシアネート価が一定になったときに(15分毎に3回の滴定を行った)、容器を室温に冷却した。次いで生成物をブリキ缶中に排出し、特性決定を行った。
【0077】
実験例3.1~3.4(シリル末端ポリウレタンの製造)
[0071]実験例2で得られた生成物50gを、1.05当量のジエトキシメチルシラン(R7がエトキシであり、R8がメトキシであり、そしてpが2である場合の式IVのヒドロシラン)とともに反応容器中に入れた(いかなる溶媒も使用せず)。温度を90℃に設定した。DMC触媒(二元金属シアニド―コバルト,クロロシアノ1,2-ジメトキシエタン亜鉛錯体、Hongkong Huarun International社から市販、RN:116912-63-1)とヒドロシリル化触媒(Karsted触媒を、ジビニル含有ジシロキサンから誘導される有機白金化合物である)を、種々の量にて反応容器に加えた。
【0078】
[0072]コーン・プレート形状(CONE SST 20mm×0.5)のブルックフィールド粘度計(350Paにて325-1スピンドル)を用い、1回転/秒の剪断速度と100ミクロンのトランケーションギャップを適用して粘度を測定した。粘度は周囲温度にて測定した。これらの実験例の結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
[0073]表1に示すように、本発明のシリル末端ポリウレタンは、いずれも約5Pa.sの粘度を有する。従来のシリル化ポリウレタンは、一般に50Pa.S以上の粘度を有する。
【0080】
実験例4(シリル末端ポリウレタンの使用)
[0074]ブナ材、PVC、およびアルミニウム支持体(Rochell、4×25×100mm)からラップジョイントを作製し、0.45gのグルーを使用した実験例3.4のシリル末端ポリウレタンを装入した(オーバーラップ面積6.25cm2、厚さ0.1mm)。ラップジョイントを作製する前に、PVCとアルミニウムをアセトンで洗浄してから乾燥または蒸発させ、ブナ材を予備加熱し、Weissキャビネット中にて、温度23℃、相対湿度50%で2日間キュアーしておいた。ラップジョイントを2つの金属プレートの間に配置し、一定重量の負荷(2.6kg)でプレスした。インストロン型万能試験機により、50mm/分の変形速度を使用してラップの剪断強度を測定した。この試験に対しては、ラップジョイント支持体の厚さと同一のスペーサーを使用して、接線分力がかかる前に、歪が確実に平行にかかるようにした。
【0081】
[0075]全てのコーティングに対して引張剪断強度と破断点伸びを測定した。得られた結果を表IIに示す。
【0082】
【表2】
【国際調査報告】