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特表2023-507308高品質Si含有膜を形成するための超低温ALD
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  • 特表-高品質Si含有膜を形成するための超低温ALD 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-22
(54)【発明の名称】高品質Si含有膜を形成するための超低温ALD
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/318 20060101AFI20230215BHJP
【FI】
H01L21/318 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535428
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-07-08
(86)【国際出願番号】 US2020066050
(87)【国際公開番号】W WO2021127464
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】16/718,369
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】野田 直人
(72)【発明者】
【氏名】オシェプコフ、イヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ジラール、ジャン-マルク
【テーマコード(参考)】
5F058
【Fターム(参考)】
5F058BC08
5F058BF07
5F058BF27
5F058BF30
5F058BF37
5F058BJ05
5F058BJ06
(57)【要約】
250℃未満の温度などの超低温で、トリシリルアミン(TSA)を用いるPEALDによる、SiN膜などのSi含有膜の形成方法が開示されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にケイ素含有膜を堆積する方法であって:
a)基板が中に配置されている反応器内に、トリシリルアミンの蒸気を導入する工程;
b)共反応物ガスを前記反応器内に導入する工程;並びに
c)およそ20℃~およそ250℃の範囲の堆積温度で蒸着方法を用いて、所望の厚さの前記ケイ素含有膜が前記基板に堆積されるまでa)及びb)に係る前記工程を反復する工程
を含む、方法。
【請求項2】
a)に係る前記工程に続いて、第1のパージガスで、前記反応器から前記トリシリルアミンの蒸気をパージする工程;及び
b)に係る前記工程に続いて、第2のパージガスで、前記反応器から前記共反応物ガスをパージする工程
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のパージガス及び前記第2のパージガスは、N、Ar、Kr又はXeから選択される不活性ガスである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記堆積温度はおよそ20℃~およそ150℃の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記堆積温度はおよそ20℃~およそ110℃の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記共反応物は、水素、窒素及び酸素の少なくとも1種を含むプラズマ供給源である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記プラズマ供給源は、Nプラズマ、N/Heプラズマ、N/Arプラズマ、NHプラズマ、NH/Heプラズマ、NH/Arプラズマ、H/有機アミンプラズマ、又は、これらの混合物から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記プラズマ供給源は、O、O、HO、NO、NO、H、Oラジカル、又は、これらの組み合わせから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記共反応物はN、O又はOプラズマである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記基板は、ほぼ1:1~ほぼ40:1のアスペクト比を有するトレンチ又はホールを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ケイ素含有膜は、前記トレンチ又はホールの少なくとも一部を覆う、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
アパーチャの側壁のステップカバレッジがほぼ0.6~ほぼ1.2の範囲内であり、及び、前記アパーチャの底部のステップカバレッジがほぼ0.6~ほぼ1.5の範囲内である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記蒸着プロセスはALDプロセスである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ALDプロセスは、PEALDプロセス又は空間的ALDプロセスである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記基板は、フォトレジスト、a-C、プラスチック、ポリイミド又はカルコゲナイドから選択される有機材料、及び、前記基板中にきわめて細い金属ラインを含む感熱性フィーチャーを含む感熱性基板である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記Si含有膜はSiN又はSiONである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ケイ素含有膜は炭素フリーである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記Si含有膜のGPCは、およそ0.015nm/サイクル~およそ0.15nm/サイクルの範囲内である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ケイ素含有膜のRIはほぼ1.96である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ケイ素含有膜の密度はほぼ2.98g/cmである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年12月18日に出願された米国特許出願第16/718,369号明細書に基づく優先権を主張するものであり、その内容のすべてが参照により本明細書において援用されている。
【0002】
本発明は、250℃未満の温度などの超低温でトリシリルアミン(TSA)を用いるプラズマ強化原子層堆積(PEALD)で、SiN膜などのSi含有膜を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
窒化ケイ素(SiN)膜、酸化ケイ素(SiO)膜及びケイ素酸窒化物(SiON)膜などのケイ素含有膜が、半導体又は光起電力(PV)テクノロジーにおいて広く用いられている。SiN膜は、半導体製造において、保護層、バリア層、電荷捕獲層又はパターン形成マスキング層として用いられる。特に、多重パターン形成は、集積回路のフィーチャー密度を高める、近年における重要な製造技術の一つである。
【0004】
原子層堆積(ALD)がパターン形成層又は保護層としてSi含有膜の形成に用いられ、これにより、3D構造などの、高アスペクト比(AR)の複雑で微細な構造を有するより新しい半導体デバイスへのコンフォーマルな堆積が達成される。例えば、自己整合型二重パターン化(SADP)プロセスにおいて、誘電体膜は、ダミーパターン又はマンドレル上にコンフォーマルに堆積されているべきである。ここで、マンドレルは度々、フォトレジスト(PR)又はアモルファス-炭素(a-C)のような有機材料製のものであり、したがって、堆積された誘電体膜は、パターン及び/又はマンドレルの耐熱性と適合していなければならない。
【0005】
ほとんどの事例において(例えば米国特許第9184159 B2号明細書)、ALD堆積されたSi含有膜はSiO膜である。エッチング耐性が高く、それ故、次のSADPの最中、及び、自己整合型四重パターン形成(SAQP)シーケンス工程について、良好なハードマスク特性が得られるために、SiNが望ましいであろう。
【0006】
トリシリルアミン(TSA)(N(SiH)が、SiN膜を形成するための前駆体として用いられている。例えば、米国特許出願公開第20150099342号明細書(Tsai et al.)には、熱耐性基板の上にTSAを用いてSiO膜を形成する方法が開示されている。堆積温度は400℃~1000℃の範囲であり、これは、有機膜への堆積には適していない可能性がある。米国特許出願公開第20170338109号明細書(Lei et al.)には、TSAを用いてSi含有膜を形成する方法が開示されている。この特許書面における図1によればコンフォーマルな膜は250℃~400℃の温度範囲で得られていたが、これもまた、有機膜への堆積には適していない可能性がある。米国特許第8357430号明細書(Dussarrat et al.)には、TSAを用い、300℃~900℃の温度範囲内で化学蒸着(CVD)によりSiN膜を形成する方法が開示されているが、これもまた、有機膜への堆積には適していない可能性がある。米国特許出願公開第20090075490号明細書(Dussarrat)には、550℃以下の温度で、原子層堆積(ALD)によりケイ素含有膜を形成する方法が開示されている。米国特許出願公開第20090232985号明細書(Dussarrat et al.)には、減圧下での蒸着プロセスにより、50℃~4000℃の基板温度で酸化ケイ素含有膜を形成する方法が開示されている。Sato et al.(Proceedings of Chemical Vapor Deposition XVI and EUROCVD 14,page 1372,2003)には、Clフリー無機トリシリルアミンを用いた窒化ケイ素LPCVDに対する、低温による解法が開示されている。
【0007】
近年においては、フォトレジスト層などの有機材料を含有する基板上、及び、GeSbTe(GST)などの非熱耐性機能層上へのSiN膜堆積が求められている。
【0008】
しかしながら、米国特許出願公開第20150099342号明細書又は米国特許出願公開第20170338109号明細書における堆積温度は、基板の損傷を回避するには高すぎる。特に、有機材料又はカルコゲナイドを含有する基板の熱安定性が低い場合、このような高温でパターン形成層及び保護膜を基板上に形成することは困難である。
【0009】
堆積温度を下げることは、非熱耐性膜上に膜を形成するためには許容される。しかしながら、前駆体及び反応物の反応性が低下することで、密度が低下したり、又は、不純物が増加してしまう結果にもなり得る。それ故、ほとんどの堆積に係る温度は、上記のとおり、膜品質によって、有機又はカルコゲナイド基板が損傷を受ける温度に制限される。
【0010】
これらの理由から、有機材料及び/又はカルコゲナイドを含む基板に低不純物で高密度のSi含有膜を形成するための低温堆積プロセスに対する要求が存在している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
基板の表面の少なくとも一部にケイ素含有膜を堆積する方法であって、a)基板が中に配置されている反応器内に、トリシリルアミンの蒸気を導入する工程;b)反応器内に共反応物ガスを導入する工程;並びに、c)およそ20℃~およそ250℃の範囲の堆積温度で蒸着方法を用いて、所望の厚さのケイ素含有膜が基板に堆積されるまでa)及びb)に係る工程を反復する工程を含む方法が開示されている。
【0012】
本開示の方法は、以下の態様の1つ以上を含み得る。
・さらに:
a)に係る工程に続いて、第1のパージガスで反応器をパージする工程;及び
b)に係る工程に続いて、第2のパージガスで反応器をパージする工程
を含む;
・第1のパージガス及び第2のパージガスは、N、Ar、Kr又はXeから選択される不活性ガスである;
・蒸着方法はALDである;
・蒸着方法はPEALDである;
・蒸着方法は空間的ALDである;
・蒸着方法は空間的PEALDである;
・堆積温度はおよそ250℃未満である;
・堆積温度はおよそ150℃未満である;
・堆積温度はおよそ110℃未満である;
・堆積温度は、およそ室温~およそ250℃の範囲である;
・堆積温度は、およそ20℃~およそ150℃の範囲である;
・堆積温度は、およそ20℃~およそ110℃の範囲である;
・堆積温度は、およそ20℃~およそ50℃の範囲である;
・基板はおよそ250℃未満の温度を有する;
・基板はおよそ150℃未満の温度を有する;
・基板はおよそ110℃未満の温度を有する;
・基板は、およそ室温~およそ250℃の温度範囲を有する;
・基板は、およそ20℃~およそ150℃の温度範囲を有する;
・基板は、およそ20℃~およそ110℃の温度範囲を有する;
・基板は、およそ20℃~およそ50℃の温度範囲を有する;
・反応器の壁は、およそ300℃以下に加熱される;
・反応器の壁は、およそ20℃~およそ250℃の温度範囲に加熱される;
・反応器の壁は、およそ20℃~およそ150℃の温度範囲に加熱される;
・反応器の壁は、およそ20℃~およそ50℃の温度範囲に加熱される;
・反応器中の圧力は、およそ0.1Torr~およそ100Torrに保持される;
・反応器中の圧力は、およそ1Torr~およそ50Torrに保持される;
・反応器中の圧力は、およそ1Torr~およそ10Torrに保持される;
・共反応物は、水素、窒素及び酸素の少なくとも1種を含むプラズマ供給源である;
・プラズマ供給源は、窒素プラズマ、窒素/ヘリウムプラズマ、窒素/アルゴンプラズマ、アンモニアプラズマ、アンモニア/ヘリウムプラズマ、アンモニア/アルゴンプラズマ、ヘリウムプラズマ、アルゴンプラズマ、水素プラズマ、水素/ヘリウムプラズマ、水素/有機アミンプラズマ、及び、これらの混合物からなる群から選択される;
・基板は、ほぼ1:1~ほぼ40:1のアスペクト比を有するアパーチャを有する;
・アパーチャはトレンチである;
・アパーチャはホール又はビアである;
・ケイ素含有膜はアパーチャの少なくとも一部を覆う;
・アパーチャの側壁のステップカバレッジは、ほぼ0.6~ほぼ1.2の範囲内であり、及び、アパーチャの底部のステップカバレッジは、ほぼ0.6~ほぼ1.5の範囲内である;
・基板は感熱性基板である;
・有機材料を含有する感熱性基板は、フォトレジスト、a-C、プラスチック、ポリイミド又はカルコゲナイドから選択される;
・基板は、感熱性フィーチャーを含有している;
・感熱性フィーチャーは、基板中にきわめて細い金属ラインを含む;
・感熱性フィーチャーは、基板中に半導体フィンを含む;
・反応物又は共反応物は、反応器中に導入される;
・共反応物は、還元ガス又は窒素含有ガスである;
・窒素含有ガスとしては、特に限定されないが、NH、NO、NO、ヒドラジン、メチルアミン、エチルアミン、t-ブチルアミンなどの第一級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、ピロリジンなどの第二級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリシリルアミンなどの第三級アミン、N、N/H、これらの混合物が挙げられる;
・窒素含有ガスはNHである;
・共反応物は、インサイツ又は遠隔でプラズマにより活性化される;
・N又はN/Hについては、プラズマ活性化が必要とされる;
・共反応物は、NH、NO、NO、ヒドラジン、Nプラズマ、N/Hプラズマ、アミン、及び、これらの組み合わせから選択される;
・共反応物はNプラズマである;
・Nプラズマは、基板温度が250℃未満である時、適切な共反応物である;
・共反応物は酸化剤又は酸素含有ガスである;
・酸素含有ガスとしては、特に限定されないが、O、O、HO、NO、NO、H、Oラジカル、及び、これらの組み合わせなどの酸化剤が挙げられる;
・酸素含有ガスはO又はOである;
・Si含有膜は、SiN、SiO又はSiONを含む;
・Si含有膜はSiN又はSiONを含む;
・Si含有膜はSiNを含む;
・Si含有膜のサイクル当りの成長(GPC)は、ほぼ0.015nm/サイクル~ほぼ0.15nm/サイクルの範囲内である;
・ケイ素含有膜のRI(屈折率)はほぼ1.96である;
・ケイ素含有膜は炭素フリーである;
・ケイ素含有膜中のC濃度は0%~およそ3%の範囲内である;並びに
・ケイ素含有膜の密度はほぼ2.98g/cmである。
【0013】
表記法及び命名法
以下の詳細な説明及び特許請求の範囲は、当該技術分野で一般によく知られている複数の略語、記号、及び用語を利用しており、以下を含む:
【0014】
本明細書で使用される不定冠詞「a」又は「an」は、1つ又は複数を意味する。
【0015】
本明細書で使用される、文章中又は特許請求の範囲中の「約」又は「ほぼ」又は「およそ」は、記載された値の±10%を意味する。
【0016】
本明細書で使用される、文章中又は特許請求の範囲中の「室温」は、約20℃~約25℃を意味する。
【0017】
「基板」という用語は、その上でプロセスが行われる材料を指す。基板は、その上でプロセスが行われる材料を有するウェハーを指す場合がある。基板は、半導体、太陽電池、フラットパネル、又はLCD-TFTデバイスの製造において使用される任意の適切なウェハーであってよい。基板は、その前の製造工程からその上に既に堆積された異なる材料の1つ以上の層も有し得る。例えば、ウェハーは、シリコン層(例えば結晶性、アモルファス、多孔質など)、ケイ素含有層(例えばSiO、SiN、SiON、SiCOHなど)、金属含有層(例えば銅、コバルト、ルテニウム、タングステン、白金、パラジウム、ニッケル、ルテニウム、金など)、又はこれらの組み合わせなどの有機層を含み得る。さらに、基板は、平坦であってもパターン化されていてもよい。基板は、有機パターン化フォトレジスト膜であり得る。基板は、MEMS、3D NAND、MIM、DRAM若しくはFeRamデバイス用途において誘電性材料として用いられる酸化物の層(例えば、ZrO系材料、HfO系材料、TiO系材料、希土類酸化物系材料、三元系酸化物系材料等)、又は、電極として用いられる窒化物系膜(例えば、TaN、錫、NbN)を含み得る。当業者は、本明細書で使用される「膜」又は「層」という用語が、表面上に配置されているか広がっている何らかの材料の厚さを指し、その表面はトレンチ又はラインであってよいことを認識するであろう。本明細書及び特許請求の範囲全体を通して、ウェハー及びその上の任意の関連する層は、基板と呼ばれる。
【0018】
「ウェハー」又は「パターン化されたウェハー」という用語は、基板上に膜のスタックを有すると共に、ケイ素含有膜を堆積する前の工程で形成されたトポグラフィックフィーチャーを有する最上部の膜を少なくとも有するウェハーを指す。
【0019】
「アスペクト比」という用語は、トレンチ(又はアパーチャ)の高さ対トレンチの幅(又は、アパーチャの直径)の比を指す。
【0020】
なお、本明細書では、「膜」及び「層」という用語は、交換可能に使用され得る。膜は、層に対応するか、層に関連する場合があり、また層は膜を指す場合があることが理解される。さらに、当業者は、本明細書で使用される「膜」又は「層」という用語が、表面上に配置されているか広がっている何らかの材料の厚さを指し、ウェハー全体ほどに大きい大きさから、トレンチ又はラインほどに小さい大きさまでの範囲であってよいことを認識するであろう。
【0021】
本明細書において、「前駆体」及び「堆積化合物」、並びに、前駆体が室温及び雰囲気圧で気体状態である場合「堆積ガス」という用語は、同義的に用いられ得ることに注意すべきである。前駆体は、堆積化合物又は堆積ガスに相当するか関連し得、及び、堆積化合物又は堆積ガスは前駆体を指し得ることが理解される。
【0022】
本明細書において、「堆積温度」及び「基板温度」という用語は、同義的に用いられ得ることに注意すべきである。基板温度は堆積温度に相当するか関連し得、及び、堆積温度は基板温度を指し得ることが理解される。
【0023】
本明細書において用いられるところ、「NAND」という略記は、「否定的論理積(Negated AND)」又は「否定的論理積(Not AND)」ゲートを指し;「2D」という略記は平面基板における二次元ゲート構造を指し;「3D」という略記は、ゲート構造が垂直方向にスタックされた三次元又は垂直ゲート構造を指す。
【0024】
元素周期表からの元素の標準的な略語が本明細書で使用される。元素はこれらの略語で呼ばれる場合があることを理解すべきである(例えば、Siはケイ素を指し、Nは窒素を指し、Oは酸素を指し、Cは炭素を指し、Hは水素を指し、Fはフッ素を指す、など)。
【0025】
開示されている特定の分子を識別するために、Chemical Abstract Serviceによって割り当てられた固有のCAS登録番号(すなわち「CAS」)が示される。
【0026】
また、SiN、SiO、及びSiONなどのケイ素含有膜は、それらの適切な化学量論に関係なく、明細書及び特許請求の範囲全体に記載されている。ケイ素含有膜は、B、P、As、Ga、及び/又はGeなどのドーパントも含み得る。膜がいくらかの残存水素を含有することもまた、膜組成に関する説明から省略されている。例えば、SiOC膜は残存Hを含有していてもよい。
【0027】
範囲は、本明細書において、約1つの特定の値から、及び/又は約別の特定の値までとして表現され得る。そのような範囲が表現される場合、別の実施形態は、前記範囲内の全ての組み合わせと共に、ある特定の値及び/又は別の特定の値からのものであることが理解されるべきである。本明細書に記載されている全ての範囲は、「境界値を含む」という言葉が使用されているかどうかにかかわらず境界値を含む(すなわち、x=1~4又はxは1~4の範囲である、は、x=1、x=4、及びx=それらの間の任意の数値、を含む)。
【0028】
本明細書における「一実施形態」又は「ある実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載されている特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれ得ることを意味する。本明細書の様々な場所における「一実施形態では」という語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すわけではなく、また別の又は代替の実施形態は、必ずしも他の実施形態と相互に排他的ではない。同じことが「実施」という用語にも当てはまる。
【0029】
本明細書において用いられるところ、「独立して」という用語は、R基を説明する文脈で使用される場合、対象となるR基が、同じ又は異なる下付き文字又は上付き文字を持っている別のR基から独立して選択されるということだけでなく、その同じR基の任意の更なる化学種からも独立して選択されるということも表すと理解すべきである。例えば、式MR (NR(4-x)(式中、xは2又は3である)において、2つ又は3つのR基は、互いに同じであっても、Rと同じであっても、Rと同じであってもよいが、必ずしも同じである必要はない。さらに、別段の記載がない限り、R基の値は、異なる式で使用されている場合、互いに無関係であることを理解すべきである。
【0030】
本出願において用いられるところ、「例示的な」という語は、例(example)、事例(instance)又は実例(illustration)として意味するために本明細書において用いられる。「例示的な」とされている本明細書に記載のいずれかの態様又は設計は、必ずしも、他の態様又は設計よりも好ましい又は有利であると解釈されなくてもよい。むしろ、例示的な、という語の使用は、具体的な概念の提示を意図するものである。
【0031】
また、「又は」という用語は、排他的な「論理和」ではなく、包括的な「論理和」を意味することが意図されている。すなわち、別段の特定がある場合を除き、又は、文脈から明らかである場合を除き、「Xは、A又はBを採用する」は、包括的自然順列のいずれかを意味することが意図されている。すなわち、XがAを採用し;XがB採用し;又は、XがA及びBの両方を採用する場合、「Xは、A又はBを採用する」は、前述の事例のいずれを充足する。加えて、本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられる冠詞「a」及び「an」は一般に、別段の特定がある場合、又は、文脈から単数形とされることが明らかである場合を除き、「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである。
【0032】
本発明の性質及び目的を更に理解するために、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照する必要がある。添付の図面の中では、同様の要素には同じ又は類似した参照番号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、110℃及び250℃で、TSAを伴う、SiN膜のGPC、WER及びPEALDの密度の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
トリシリルアミン(TSA)を250℃未満などの超低温で用いるプラズマ強化ALD(PEALD)によりSi含有膜を形成する方法が開示されている。より具体的には、250℃未満の温度でTSAを用いるPEALDによりSiN、SiO又はSiON膜を形成する方法が開示されている。
【0035】
近年において、半導体製造プロセスにおいて、ケイ素含有膜を感熱性基板上に蒸着することが求められている。感熱性基板は、フォトレジスト(PR)、アモルファス-炭素(a-C)、プラスチック、ポリイミド又はカルコゲナイド(例えば、GeSbTe(GST))などの有機材料を含有し得る。感熱性基板は、基板において、きわめて細い金属ライン及び/又は半導体フィンなどの感熱性フィーチャーを含み得る。ケイ素含有膜を感熱性基板上に蒸着し、及び、感熱性基板材料を保護するために、エッチング速度が低く、密度が高く、ステップカバレッジ(SC)が優れており、Si-H含有量が低く、炭素及びハロゲン不純物を含まず、成長速度が速く、及び、堆積温度が250℃未満である高品質のケイ素含有膜が求められている。本開示の方法には、前駆体TSAをPEALDプロセスに適用して、Nプラズマにより、250℃未満の温度で、好ましくは150℃未満の温度で、より好ましくは110℃未満の温度で、このような高品質のケイ素含有膜を形成する工程が記載されている。本開示の方法によって形成されたSi含有膜としては、これらに限定されないが、SiN膜、SiO膜又はSiON膜が挙げられる。
【0036】
本開示の前駆体TSA(CAS No.13862-16-3、TSA、(SiHN))は、好ましくはPEALDプロセス又は空間的ALDといったALDプロセスによるSiN、SiO及びSiONなどのSi含有膜の堆積に好適であり、及び、以下の利点を有する。
・Si含有前駆体は室温で液体であり;
・炭素及びハロゲンを含まず;
・分子中に直接Si-N結合を有し;
・きわめて揮発性であり(蒸気圧:室温で315Torr);
・1atmで沸点52℃であり;
・熱的に安定であり、粒子形成及び生成物の分解を伴わない、産業で標準的な方法(バブラー、直接液体注入、蒸気導入)を用いて適切な分布及び蒸発が可能であり;
・基板と好適に反応性であって、広い自己制限的ALDウインドウが許容され、SiN、SiO及びSiON等などの多様なSi含有膜の堆積が可能であり;
・Si含有膜を形成するための共反応物との化学吸着された前駆体の反応性が好適であり;並びに
・化学吸着された種の堅実な熱安定性により、超低温での基板表面上における自己分解及び寄生性CVD成長が防止される。
【0037】
プロセスの信頼性を確保するために、開示される前駆体TSAは、約93重量%又はw/w~約100%w/wの範囲、好ましくは約99%w/wから約99.999%w/wの範囲、より好ましくは約99%w/wから約100%w/wの範囲の純度まで、使用前に連続若しくは分別バッチ蒸留又は昇華によって精製することができる。
【0038】
本開示の前駆体TSAは、以下の不純物のいずれかを含有していてもよい:不要な同属の種;溶剤;塩素化金属化合物;又は、他の反応生成物。一実施形態において、これらの不純物の総量は、0.1%w/w未満である。
【0039】
ヘキサン、ペンタン、ジメチルエーテル、又はアニソールなどの溶媒が、TSAの合成において使用されてもよい。開示されるTSA中の溶媒の濃度は、約0%w/w~約5%w/w、好ましくは約0%w/w~約0.1%w/wの範囲であってよい。
【0040】
1つの代替形態では、開示されるTSAは、5体積%(v/v)未満、好ましくは1%v/v未満、より好ましくは0.1%v/v未満、更に好ましくは0.01%v/v未満のその望ましくない同属種、反応物、又は他の反応生成物のいずれかを含む。この代替形態は、より優れたプロセス信頼性を提供し得る。この代替形態は、TSAの蒸留によって製造することができる。
【0041】
別の代替形態では、特に混合物が改善されたプロセスパラメータを提供する場合、又は目的化合物の分離が難しすぎるか費用が掛かりすぎる場合、開示されるTSAは、5%v/v~50%v/vの1種以上の同種のSi含有前駆体、反応物、又は他の反応生成物を含み得る。例えば、2種のSi含有前駆体の混合物は、蒸着に適した安定な液体混合物を生成し得る。
【0042】
本開示のTSA中における微量金属及びメタロイドの濃度は、各々、およそ0ppb~およそ100ppb、及び、より好ましくはおよそ0ppb~およそ10ppbの範囲であり得る。
【0043】
反応チャンバ中においてALDプロセス(例えば、PEALD)を用いて基板上にSi含有層を形成する方法又はプロセスもまた開示されている。この方法は、半導体製造プロセス又は光起電力デバイスにおいて、ダミーパターン又はマンドレル上に誘電体膜をコンフォーマルに蒸着する自己整合型二重パターン化(SADP)プロセスに有用であり得る。本開示のTSAは、当業者に公知であるALD法を用いるSi含有膜の蒸着に用いられ得る。
【0044】
本開示のプロセスは、前駆体TSAを用いたSi含有膜の堆積に係るALDプロセスを含む。好適なALD法としては、熱ALD、空間的ALD及びテンポラルALD法が挙げられる。好ましくは、好適なALD法にはプラズマが用いられ得る。例示的なプラズマALDとしては、PEALD及び空間的PEALDが挙げられる。好適なALDでは、不完全な自己制限成長レジームで操作されて、いくらかの寄生性CVDの発生が許容されてもよいことが理解される。このような寄生性CVDは、堆積される膜が適合性に係る要求を満たす限りにおいては問題ではない。
【0045】
反応チャンバ又は反応器は、特に限定されないが、パラレル-プレートタイプ反応器、ホットウォールタイプ反応器、シングル-ウェハ反応器、マルチ-ウェハ反応器又は他のこのようなタイプの堆積システムなどの堆積法が行われるデバイスのいずれかの筐体又はチャンバであり得る。これらの例示的な反応チャンバのすべては、ALD反応チャンバとされることが可能である。
【0046】
反応器は、Si含有膜が堆積されることとなる1つ以上の基板を含む。基板は一般に、プロセスが実施される材料として定義される。基板は、半導体、光起電力、フラットパネル又はLCD-TFTデバイス製造において用いられる感熱性基板であり得る。感熱性基板の例としては、フォトレジスト、アモルファス炭素(a-C)、プラスチック、ポリイミド、カルコゲナイド(例えば、GST)等などの有機材料を含む基板が挙げられる。感熱性基板の例としては、基板におけるきわめて細い金属ライン、及び/又は、基板における半導体フィンなどの基板における感熱性フィーチャーを含む基板が挙げられる。それ故、ケイ素含有層の感熱性基板への堆積に係る、使用可能な堆積温度、すなわち、超低温は、堆積プロセスの最中に有機材料及び/又は基板における微細なフィーチャーが保護されるものである必要がある。
【0047】
基板は、パターンを有するウェハーであり得る。ウェハーは、1:1~40:1のアスペクト比(AR)を有するトレンチ又はビアなどのアパーチャを含み得る。堆積されるケイ素含有膜は、アパーチャの少なくとも一部を覆う。アパーチャのサイドウォールのステップカバレッジは、0.6~1.2の範囲内であり得る。アパーチャの底部のステップカバレッジは、0.6~1.5の範囲内であり得る。
【0048】
基板はまた、前の製造工程からその上に堆積された異なる材料の1つ以上の層を有していてもよい。例えば、ウェハーは、ケイ素層(結晶性、アモルファス、多孔性等)、酸化ケイ素層、窒化ケイ素層、ケイ素オキシ窒化物層、炭素ドープ酸化ケイ素(SiCOH)層、又は、これらの組み合わせを含み得る。また、ウェハーは、銅、コバルト、ルテニウム、タングステン及び/又は他の金属層(例えば、白金、パラジウム、ニッケル、ルテニウム又は金)を含み得る。ウェハーは、タンタル、窒化タンタル等などのバリア層又は電極を含み得る。これらの層は、平坦であってもパターン化されていてもよい。基板は有機パターン化フォトレジスト膜であり得る。基板は、3D NAND、MIM、DRAM若しくはFeRamテクノロジーにおいて誘電性材料として用いられる酸化物の層(例えば、ZrO系材料、HfO系材料、TiO系材料、希土類酸化物系材料、三元系酸化物系材料等)を含み得、又は、電極として用いられる窒化物系膜(例えば、TaN、錫、NbN)からであり得る。開示のプロセスは、ウェハー上に直接、又は、ウェハーの上面における1つ又は2つ以上の層(パターン化層が基板を形成している時)に直接、Si含有層を蒸着し得る。さらに、本明細書において用いられる「膜」又は「層」という用語は、表面上に重ねられるか、延展されたいくつかの材料の厚さを指すこと、及び、表面はトレンチ又はラインであり得ることを当業者は認識するであろう。本明細書及び特許請求の範囲全体を通して、ウェハー及びその上のいずれかの関連する層は基板と称される。実際に用いられる基板は、用いられる特定の前駆体実施形態に応じていても良い。
【0049】
本開示のTSAを用いる本開示のALDプロセスは、およそ250℃以下、好ましくはおよそ150℃以下、より好ましくはおよそ120℃以下、さらにより好ましくはおよそ50℃以下の温度を有する基板について行われ得る。前駆体TSAを用いる本開示のALDプロセスは、およそ室温~およそ250℃、好ましくはおよそ室温~およそ150℃、より好ましくはおよそ室温~およそ110℃の温度範囲を有する基板について実施され得る。
【0050】
反応器チャンバの温度は、基板ホルダーの温度を制御することによって、又は、反応器の壁の温度を制御することによって制御し得る。基板の加熱に用いられるデバイスは、技術分野において公知である。特に、基板温度が壁の温度よりも高いシャワーヘッド反応器が用いられる場合、壁又は反応器チャンバにおける結露を防止するために、反応器の壁は十分な温度に加熱される。反応器の壁を加熱し得る非限定的、且つ、例示的な温度範囲は、およそ20℃~およそ250℃、好ましくはおよそ20℃~およそ150℃、より好ましくは20℃~およそ110℃の範囲を含む。或いは、反応器の壁を加熱し得る非限定的、且つ、例示的な温度は、およそ300℃以下を含む。プラズマ堆積プロセスが行われる際、基板は、十分な成長速度、並びに、所望の物理的状態及び組成で所望の厚さの膜が得られる十分な温度に加熱される。プラズマ堆積プロセスについて、堆積温度は、およそ20℃~およそ250℃、好ましくはおよそ20℃~およそ150℃、より好ましくは20℃~およそ110℃の範囲であり得る。
【0051】
反応チャンバ中の圧力は、前駆体TSAが基板の表面と反応するのに好適な条件に保持される。例えば、反応器中の圧力は、およそ0.1Torr~およそ100Torr、好ましくはおよそ1Torr~およそ50Torr、より好ましくはおよそ1Torr~およそ10Torrで保持され得る。
【0052】
本開示の前駆体TSAに追加して、反応物又は共反応物もまた、反応器に導入され得る。共反応物は、窒素含有ガス又は還元ガスであり得る。窒素含有ガスとしては、特に限定されないが、NH、NO、NO、ヒドラジン、メチルアミン、エチルアミン、t-ブチルアミンなどの第一級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルメチルアミン、ピロリジンなどの第二級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリシリルアミンなどの第三級アミン、N、N/H、これらの混合物、好ましくはNHが挙げられる。共反応物は、インサイツ又は遠隔でプラズマにより活性化され得る。N又はN/Hについては、プラズマ活性化が必要とされる。共反応物は、NH、NO、NO、ヒドラジン、Nプラズマ、N/Hプラズマ、アミン、及び、これらの組み合わせから選択され得る。本出願人らは、Nプラズマが、基板温度が250℃未満である時には適切な共反応物であり得ることを発見した。或いは、共反応物は、酸素含有ガス又は酸化剤であり得る。酸素含有ガスとしては、特に限定されないが、O、O、HO、NO、NO、H、Oラジカル、及び、これらの組み合わせなどの酸化剤、好ましくはO又はOが挙げられる。
【0053】
さらに、共反応物は、水素、窒素及び酸素の少なくとも1種を含むプラズマ供給源である。プラズマ供給源は、窒素プラズマ、窒素/ヘリウムプラズマ、窒素/アルゴンプラズマ、アンモニアプラズマ、アンモニア/ヘリウムプラズマ、アンモニア/アルゴンプラズマ、ヘリウムプラズマ、アルゴンプラズマ、水素プラズマ、水素/ヘリウムプラズマ、水素/有機アミンプラズマ、及び、これらの混合物であり得る。
【0054】
本開示のTSA前駆体を用いる本開示のALDプロセスにおける基板の曝露時間は、1ミリ秒~5分間、好ましくは1秒間~20秒間の範囲であり得る。本開示のALDプロセスにおける共反応物の曝露時間は、1ミリ秒間~3分間、好ましくは100ミリ秒間~60秒間の範囲であり得る。
【0055】
本開示のALDプロセス又はシーケンスは、典型的には、N、Ar、Kr若しくはXeなどの不活性ガスで反応器をパージすることによる、又は、高減圧及び/若しくはキャリアガスカーテンセクター中に基板を通すことによるパージ工程を設定することで、過剰量の前駆体TSAを堆積面から除去する工程を含む。本開示のALDプロセス又はシーケンスはまた、典型的には、N、Ar、Kr若しくはXeなどの不活性ガスで反応器をパージすることによる、又は、高減圧及び/若しくはキャリアガスカーテンセクター中に基板を通すことによるパージ工程を設定することで、過剰量の共反応物を堆積面から除去する工程をも含む。
【0056】
本開示の前駆体TSA及び共反応物は、反応器に逐次的に導入され得る(ALD)。反応器は、前駆体の導入及び共反応物の導入のそれぞれに続いて、N、Ar、Kr又はXeなどの不活性ガスでパージされ得る。
【0057】
或いは、基板は、前駆体TSAに曝露される一領域から、共反応物に曝露される他の領域に移動され得、これは、空間的ALD又は空間的PEALDプロセスである。
【0058】
具体的なプロセスパラメータに応じて、堆積は、様々な長さの時間にわたって行われ得る。一般的に、堆積は、必要な厚さの膜を製造するために、望まれる限り又は必要な限り継続することができる。典型的な膜厚は、具体的な堆積プロセスに応じて、原子単分子層から数百ミクロンまで、好ましくはおよそ1nm~およそ100nm、より好ましくはおよそ1nm~およそ50nmで変動し得る。堆積プロセスは、望まれる膜の厚さを得るために必要な回数だけ実行することもできる。
【0059】
1つの非限定的な例示的なALDタイプのプロセスでは、開示される前駆体TSAの気相が反応器に導入され、ここでTSAが基板上に物理的に又は化学的に吸着される。次いで、反応器をパージ及び/又は排気することにより、過剰な組成物を反応器から除去することができる。望まれる還元ガス(例えばN)が反応器に導入され、ここでそれは自己制御的に物理的又は化学的に吸着された前駆体と反応する。反応器をパージ及び/又は排気することによって、全ての過剰な還元ガスが反応器から除去される。望まれる膜がSiN膜である場合、この2段階のプロセスは、望まれる膜厚を与えることができ、或いはこれは望まれる厚さを有する膜が得られるまで繰り返すことができる。還元ガスをO又はOの酸化剤に置き換えることで、SiO膜の所望の膜厚が、この二工程プロセスでも得られることとなる。
【0060】
共反応物としてのNプラズマと共に本開示の前駆体TSAを用いる本開示のPEALDプロセスでは、以下の実施例より、およそ0.50の未満のWER(熱成長SiOに対して正規化)、およそ0.015nm/サイクル~およそ0.15nm/サイクルの範囲のGPC、およそ1.9~およそ2.18の範囲のRI、炭素フリー、又は、0%~およそ3%の範囲の形成された膜中のC濃度、およそ2.98g/cmの密度といった特性を有する高品質のSiN膜を蒸着することが可能である。
【実施例
【0061】
以下の非限定的な実施例は、本発明の実施形態を更に説明するために提供される。しかしながら、これらの実施例は、全てを網羅することを意図するものではなく、本明細書に記載の発明の範囲を限定することを意図するものでもない。
【0062】
実施例1.250℃でNプラズマと共にTSAを用いたSiN膜のPEALD
250℃でTSAを用いたSiN膜のPEALDの結果は以下のとおりである。
・サイクル当りの成長(GPC):0.95nm/サイクル;
・屈折率(RI):1.97;
・密度:2.97g/cm
・0.1%フッ化水素(HF)中でのウェットエッチング速度(WER):0.21(熱酸化物SiOで正規化);
・Si-HはFT-IRに見られなかった;及び
・C又はハロゲンはXPSに見られなかった。
【0063】
実施例2.110℃でNプラズマと共にTSAを用いたSiN膜のPEALD
110℃でTSAを用いたSiN膜のPEALDの結果は以下のとおりである。
・サイクル当りの成長(GPC):0.107nm/サイクル;
・屈折率(RI):1.95;
・密度:2.98g/cm
・0.1%HF中でのウェットエッチング速度(WER):0.3(熱酸化物SiOで正規化);
・Si-HはFT-IRに見られなかった;及び
・C又はハロゲンはXPSに見られなかった。
【0064】
図1を参照すると、110℃でTSAを伴ってPEALDにより形成されたSiN膜の膜品質は、TSAを伴ってPEALDにより250℃で堆積されたSiN膜と略同じであった。我々の知る限り、これまで、他のアミノシラン前駆体ではこのような高品質のSiN膜は達成されていなかった。例えば、図1に示す、アミノシラン、N,N-ジイソプロピル-N,N-ジシリルシランジアミン(DDSDA)では、110℃堆積温度で、GPC:0.7、密度:2.75g/cm、WER:1.5である。さらに、Knoops et al.(Harm.C.M.Knoops et al.,App.Mater.Interfaces,2015,7,page 19857-19862)には、ビス(tert-ブチルアミノ)シラン(BTBAS)及び100℃でのNプラズマを伴うSiN膜のPEALDは、110℃でTSAと共にPEALDにより形成したSiN膜よりも膜品質が劣るものであることが開示されている。BTBAS及び100℃でのNプラズマを伴うSiN膜のPEALDの結果は、以下のとおりである:RI:1.63;GPC:0.093nm/サイクル;密度:100℃ではデータ無し、200℃では2.2g/cm。表1は、TSA、DDSDA及びBTBASを用いるPEALDにより形成されたSiN膜の比較である。BTBASに係るデータは、Knooks et al.から再現される。DDSDAの構造は以下のとおりである。
【化1】
【0065】
【表1】
【0066】
本明細書に記載の主題は、ユーザ-インタラクティブなコンポーネントを有するコンピューティングアプリケーションに係る1つ以上のコンピューティングアプリケーションフィーチャ/オペレーションを処理するための例示的な実施の文脈において記載され得るが、主題はこれらの特定の実施形態に限定されない。むしろ、本明細書に記載の技術は、いずれかの好適な種類のユーザ-インタラクティブなコンポーネントの実行管理方法、システム、プラットフォーム及び/又は装置に適用され得る。
【0067】
本発明の性質を説明するために本明細書に記載及び図示されてきた、詳細な事項、材料、工程、及び部品の配置における多くの追加の変更が、添付の特許請求の範囲に記載されている本発明の原理及び範囲内で当業者によって行われ得ることが理解されるであろう。したがって、本発明は、上記実施例及び/又は添付の図面中の具体的な実施形態に限定されることを意図するものではない。
【0068】
本発明の複数の実施形態が示され、説明されてきたが、本発明の趣旨又は教示から逸脱することなしに、その修正が当業者によってなされ得る。本明細書に記載の実施形態は例示にすぎず、限定するものではない。組成物及び方法の多くの変形及び修正が可能であり、それらは本発明の範囲内である。したがって、保護の範囲は、本明細書に記載の実施形態に限定されず、以下の特許請求の範囲によってのみ限定され、その範囲は、特許請求の範囲の主題の全ての均等物を含むものとする。

図1
【手続補正書】
【提出日】2022-07-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にケイ素含有膜を堆積する方法であって:
a)基板が中に配置されている反応器内に、トリシリルアミンの蒸気を導入する工程;
b)共反応物ガスを前記反応器内に導入する工程;並びに
c)およそ20℃~およそ250℃の範囲の堆積温度で蒸着方法を用いて、所望の厚さの前記ケイ素含有膜が前記基板に堆積されるまでa)及びb)に係る前記工程を反復する工程
を含む、方法。
【請求項2】
a)に係る前記工程に続いて、第1のパージガスで、前記反応器から前記トリシリルアミンの蒸気をパージする工程;及び
b)に係る前記工程に続いて、第2のパージガスで、前記反応器から前記共反応物ガスをパージする工程
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のパージガス及び前記第2のパージガスは、N、Ar、Kr又はXeから選択される不活性ガスである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記堆積温度はおよそ20℃~およそ150℃の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記堆積温度はおよそ20℃~およそ110℃の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記共反応物は、N、O又はOプラズマである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記基板は、ほぼ1:1~ほぼ40:1のアスペクト比を有するトレンチ又はホールを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ケイ素含有膜は、前記トレンチ又はホールの少なくとも一部を覆う、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
アパーチャの側壁のステップカバレッジがほぼ0.6~ほぼ1.2の範囲内であり、及び、前記アパーチャの底部のステップカバレッジがほぼ0.6~ほぼ1.5の範囲内である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記蒸着プロセスはALDプロセスである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記基板は、フォトレジスト、a-C、プラスチック、ポリイミド又はカルコゲナイドから選択される有機材料、及び、前記基板中にきわめて細い金属ラインを含む感熱性フィーチャーを含む感熱性基板である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記Si含有膜はSiN又はSiONである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ケイ素含有膜は炭素フリーである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記Si含有膜のGPCは、およそ0.015nm/サイクル~およそ0.15nm/サイクルの範囲内である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ケイ素含有膜の密度はほぼ2.98g/cmである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。

【国際調査報告】