(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-22
(54)【発明の名称】炭化水素流の脱オレフィン化のための変性超安定Y(USY)ゼオライト触媒
(51)【国際特許分類】
C10G 50/00 20060101AFI20230215BHJP
B01J 29/08 20060101ALI20230215BHJP
B01J 29/16 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
C10G50/00
B01J29/08 M
B01J29/16 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022536829
(86)(22)【出願日】2020-12-14
(85)【翻訳文提出日】2022-08-12
(86)【国際出願番号】 US2020064836
(87)【国際公開番号】W WO2021126756
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599130449
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
(71)【出願人】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301041531
【氏名又は名称】一般財団法人JCCP国際石油・ガス協力機関
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】オマー・レファ・コセオグル
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ピーター・ホジキンス
(72)【発明者】
【氏名】渡部 光徳
(72)【発明者】
【氏名】香川 智靖
(72)【発明者】
【氏名】内田 浩司
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA03A
4G169BA04A
4G169BA05A
4G169BA07A
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4G169BC50A
4G169BC50B
4G169BC51A
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4G169BC52B
4G169BC59B
4G169BC68B
4G169CB25
4G169CB62
4G169CB66
4G169CC01
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4G169ZA05B
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4G169ZF09B
4H129AA02
4H129CA04
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4H129DA13
4H129KA04
4H129KC03X
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4H129KD10X
4H129KD15Y
4H129KD24Y
4H129NA14
4H129NA27
4H129NA37
(57)【要約】
本開示は、フレームワーク置換ジルコニウム並びに/又はチタン及び/若しくはハフニウム変性超安定Y(USY)型ゼオライトを含有する触媒を使用する、オレフィンによる芳香族アルキル化反応を通じた炭化水素流の脱オレフィン化の方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族化合物及びオレフィンを含有する炭化水素供給物の脱オレフィン化の方法であって、前記炭化水素供給物を、そのゼオライトフレームワークを構成するアルミニウム原子の一部がジルコニウム原子並びに/又はチタン及び/若しくはハフニウム原子で置換されている、フレームワーク置換超安定Y(USY)型ゼオライトを含有する触媒と接触させる工程であり、前記オレフィンが、前記炭化水素供給物中の前記芳香族化合物をアルキル化し、それにより脱オレフィン化炭化水素製品を製造する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記触媒中の前記フレームワーク置換USY型ゼオライトが、ジルコニウム原子及びチタン原子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒中の前記フレームワーク置換USY型ゼオライトが、それぞれ酸化物基準で計算して、約0.1~約5質量%のジルコニウム並びに/又はチタン及び/若しくはハフニウム原子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒中の前記フレームワーク置換USY型ゼオライトが、アルミナ、シリカ-アルミナ、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される無機酸化物を含む担体を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記炭化水素供給物が、約15℃~約500℃の沸点範囲を有する、芳香族に富む炭化水素油を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
約50℃~約250℃の範囲の反応温度、約1~約30バールの圧力、及び約0.5~約50h
-1の液時空間速度(LHSV)で操作される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記脱オレフィン化製品が、約500ppm未満、好ましくは約10ppm未満、最も好ましくは約0.5ppm未満の硫黄を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記脱オレフィン化炭化水素製品が、約100ppm未満、好ましくは約10ppm未満、最も好ましくは約0.5ppm未満の窒素を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記炭化水素供給物が、約1wt%超のオレフィンを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記脱オレフィン化炭化水素製品が、約10wt%未満のオレフィン、好ましくは約1wt%未満のオレフィン、より好ましくは約0.5wt%未満のオレフィンを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記炭化水素供給物が、少なくとも約95wt%、好ましくは少なくとも約99wt%、より好ましくは少なくとも約99.99wt%、脱オレフィン化される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記脱オレフィン化炭化水素製品が、約60,000未満、好ましくは約10,000未満、最も好ましくは約1,000未満の臭素指数を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記炭化水素供給物中の前記芳香族化合物が、ベンゼン及びアルキル化ベンゼンを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記炭化水素供給物中の前記芳香族化合物が、C6~C10芳香族化合物を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
アルキル化反応が、平均約4~約8個の炭素原子を、前記炭化水素供給物に付加する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記脱オレフィン化炭化水素製品が、前記炭化水素供給物よりも少ないオレフィン炭化水素及び多いアルキル化芳香族化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記炭化水素供給物が、流動式接触分解(FCC)ナフサ、コーキングナフサ、又は水素が使用されない分解ユニットに由来する他のナフサである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記触媒が、周期表のIUPAC7~11族の金属からなる群から選択される活性金属を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
芳香族化合物及びオレフィンを含有する炭化水素供給物中の芳香族化合物をアルキル化する方法であって、前記炭化水素供給物を、そのゼオライトフレームワークを構成するアルミニウム原子の一部がジルコニウム原子並びに/又はチタン及び/若しくはハフニウム原子で置換されている、フレームワーク置換超安定Y(USY)型ゼオライトを含有する触媒と接触させる工程であり、前記オレフィンが、前記炭化水素供給物中の前記芳香族化合物をアルキル化し、それによりアルキル化芳香族化合物を製造する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年12月16日に出願された米国特許仮出願第16/715555号、タイトル「MODIFIED ULTRA-STABLE Y (USY) ZEOLITE CATALYST FOR DEOLEFINIZATION OF HYDROCARBON STREAMS」の利益及び優先権を主張するものであり、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、フレームワーク置換ジルコニウム並びに/又はチタン及び/若しくはハフニウム変性超安定Y(USY)型ゼオライトを含有する触媒を使用する、オレフィンによる芳香族アルキル化反応を通じた炭化水素流の脱オレフィン化の方法に関する。
【背景技術】
【0003】
燃料に使用される精油所製品が受ける注目度合いは増している。製品仕様書は、その関心が移動汚染源及び固定汚染源からの排出量の減少である政府機関によって、及びこれらの燃料を利用するエンジン及び輸送機を製造する工業によって、精査されている。地方及び国の規制が所定の場所に存在し、且つガソリン仕様書に関して進化を続け、自動車製造業者は、ガソリン及びディーゼルがその寿命にわたって生じる排出量が著しく低減する輸送機を自動車製造業者が製造できるようにする一連の制限を提案してきた。硫黄、芳香族化合物及びベンゼンの最大レベルがそれぞれ10ppmw、25V%、及び1V%以下であることが、規制機関によるゴールとして目標とされてきた。
【0004】
歴史的に、オクタンを増やすために、通常は鉛がガソリンに添加された。環境の懸念に起因して鉛の使用が漸次廃止されたとき、直接の代替物は存在せず、その代わりに精油所は、ガソリンブレンディングにおいて、使用される一定の炭化水素分子を、より高いオクタン価を達成するために変換してきた。リサイクルされた及び補充された水素の存在下、1種又は複数の触媒の存在下で様々な反応を包含する接触改質が、炭化水素混合物を精製してより高いオクタンのガソリンの収率を増大させるために広く用いられている方法である。
【0005】
典型的な精油所では、ナフサが、ガソリンのオクタン価を上げるために、水素化脱硫後に改質される。改質油は、高レベルのベンゼンを含有し、これは、通常約1~3V%の範囲にあるベンゼンであり、一定の地理的領域では1V%未満のベンゼン含有率が目標とされている、必要な燃料仕様書に合致させるために低下させなければならない。改質油からベンゼンを除去する既存の方法には、分離方法及び水素化方法が挙げられる。分離方法では、ベンゼンは、典型的には、溶媒を用いて抽出され、次いで膜分離ユニット又は他の好適なユニット操作において溶媒から分離される。水素化方法では、ナフサ流が、最初に水素処理ユニット中で水素処理されて、水素処理されたナフサ流を生成する。水素処理ユニットは、必要な製品仕様書に合致する少なくとも十分な硫黄及び窒素を除去するのに効果的な条件下で作動する。例としては、従来のナフサ精製系における水素処理は、0.5ppmw未満のレベルまで硫黄及び窒素を除去することが効果的である比較的穏やかな条件下で、一般に起こる。水素処理されたナフサ流は、改質ユニット中で改質されて、ガソリン改質油製品流を生成する。改質油は、仕様書に合致させるために、ガソリンプールに送られて、他のガソリン成分とブレンドされる。典型的なガソリンブレンディングプールは、C4、及び約205℃未満の沸点を有する、より重質の炭化水素を含む。
【0006】
接触改質プロセスにおいて、パラフィン及びナフテンが再構築されて、比較的高オクタン価の異性化されたパラフィン及び芳香族化合物を生成する。接触改質は、低オクタンn-パラフィンをi-パラフィン及びナフテンに変換する。ナフテンは、高オクタン芳香族化合物に変換される。芳香族化合物は、本質的に変わらずに残され、又は一部が、水素の存在下で起こる逆反応に起因して、水素化されてナフテンを形成しうる。
【0007】
接触改質に包含される反応は、通常、分解、脱水環化、脱水素化及び異性化の4つのカテゴリーに分類される。特定の炭化水素/ナフサ供給物分子は、1つ超のカテゴリーの反応を受けてよく、且つ/又は1つ超の生成物を形成してよい。接触改質方法のための触媒は、単官能性改質触媒か又は二官能性改質触媒かのいずれかであり、これは貴金属を含有し、つまり、活性成分としてIUPAC8~10族の金属を含有する。二官能性触媒は、金属部位と酸性部位との両方を有する。精油所は、改質触媒として、白金触媒及び/又はアルミナ担持パラジウムを一般に使用する。
【0008】
改質油は、通常、芳香族化合物回収複合施設に送られ、ここで、それは、価値の高い製品、例えばキシレン及びベンゼンを回収するために、また価値の低い製品、例えばトルエンを、価値の高い製品へと変換するために、いくつかの処理工程を受ける。例えば、改質油中に存在する芳香族化合物は、通常、炭素数によって、異なる画分、例えばベンゼン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンなどに分離される。次いで、C8画分は処理スキームに供されて、より価値の高いパラキシレンを作製する。パラキシレンは、通常、選択的吸着又は結晶化を用いて、パラキシレンを、オルトキシレン、メタキシレン及びエチルベンゼンから分離することによって、C8画分から高純度で回収される。パラキシレン分離で残ったオルトキシレン及びメタキシレンは、異性化されて、キシレンの平衡混合物を生成する。エチルベンゼンは、キシレンへと異性化され、又はベンゼン及びエタンへと脱アルキル化される。次いで、パラキシレンは、吸着又は結晶化を用いてオルトキシレン及びメタキシレンから分離され、パラキシレン欠失流は、異性化ユニットへ、次いでパラキシレン回収ユニットへとリサイクルされて消失し、最終的にオルトキシレン及びメタキシレンの全てがパラキシレンに変換されて回収される。
【0009】
芳香族化合物複合施設において、ナフサ又は熱分解ガソリンを、多種の他の化学製品の製造に使用される基本的な石油化学の中間体であるベンゼン、トルエン及び混合キシレン(「BTX」)へと変換するのに、多様なプロセスユニットが使用される。BTXの製造を最大化するために、芳香族化合物複合施設への供給物は、一般に、C6から最大でC11の化合物に限定される。ほとんどの芳香族化合物複合施設において、混合キシレンは複合施設内で処理されて、特定の異性体、すなわちパラキシレンを生成し、これは下流で処理されて、テレフタル酸を生成することができる。このテレフタル酸は、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルを作製するのに使用される。ベンゼン及びパラキシレンの生成を増大させるために、トルエン並びにC9及びC10芳香族化合物が、トルエン、C9、C10アルキル交換/トルエン不均化(TA/TDP)プロセスユニットを通じて複合施設内で処理されて、ベンゼン及びキシレンを生成する。残っているトルエン、C9及びC10芳香族化合物は、リサイクルされて消失する。C10よりも重質の化合物は、一般にTA/TDPユニット中では処理されないが、その理由は、これらの化合物が、これらのユニットにおいて用いられる高温(400℃超であることが多い)で使用される触媒の急速な失活を引き起こす傾向があるためである。
【0010】
パラキシレンが、複合施設における選択的吸着プロセスユニットによって混合キシレンから回収されるとき、選択的吸着ユニットへのC8供給物は処理されて、供給物中のオレフィン、及びスチレン等のアルケニル芳香族化合物を除去する。オレフィン材料は反応して、ゼオライト吸着剤の孔を閉塞することができる。オレフィンを除去するには2つの既知の方法がある:(1)選択的水素化、及び(2)クレイ処理。既存の方法によれば、オレフィン材料は、C8+流をクレイ又は酸性触媒にわたって通すことによって除去されて、オレフィン及びアルケニル芳香族化合物を、別の(典型的には芳香族の)分子と反応させて、より重質の化合物(C16+)を形成する。これらのより重質の化合物は、典型的には、分画によって混合キシレンから除去される。重質の化合物は、触媒を失活させる傾向に起因してTA/TDPユニット中で処理することができず、一般に、より価値の低い燃料ブレンドストックとして複合施設から取り出される。
【0011】
クレイ処理は、オレフィン含有量を減少させるのに用いられ、そのため、芳香族回収複合施設において、重質の改質油及び芳香族抽出流の臭素指数(BI)を下げるために用いられる。この方法では、混合された、キシレン、ベンゼン/トルエンか、又はそれぞれの組み合わせか、のいずれかの流が、供給物加熱器中で予熱される。次いで、流は、クレイ触媒を含有する液体相反応器に送られる。反応器は、2つの容器から構成され、1つは稼働し、他の1つはスタンバイモードにある。主要な反応は、芳香族分子の、オレフィンとの、酸触媒化アルキル化であり、重質の芳香族化合物の形成をもたらす。次いで、重質の芳香族化合物は分画されて、プロセス塔底物流として得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、クレイ処理は、サイクル長が約6か月で、クレイを取り換えなければならないこと、及びより重質の流が形成されること等の欠点を有する。当技術分野において、脱オレフィン化反応のための代替の触媒を見出す必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示は、ジルコニウム並びに/又はチタン及び/若しくはハフニウム変性超安定Y(USY)型ゼオライトを含有する触媒を使用して、オレフィンによる芳香族アルキル化反応を通じて炭化水素流を脱オレフィン化する(すなわち、そこからオレフィンを除去する)方法を提供する。
【0015】
本開示は、代替の触媒、並びに従来の方法において使用されるクレイを、変性後フレームワーク置換超安定Y(USY)ゼオライトを含有する触媒に置き換えることによる、芳香族に富む改質油の脱オレフィン化の方法を提供し、そこで、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)及び/又はハフニウム(Hf)が、脱アルミ化後にゼオライト触媒中に挿入される。該方法は、フレームワーク置換USYゼオライト触媒を利用して、アルキル化剤としてオレフィンを使用する芳香族アルキル化反応によって、芳香族に富む炭化水素流を脱オレフィン化する。本明細書で明示されている通り、供給原料として使用されるFCCナフササンプルは、本開示による触媒を含有する変性USYゼオライトで処理された。初期のFCCナフサ供給物と、変性USYゼオライト触媒で処理されたサンプルとの間のm/z190イオン(全てのC7芳香族化合物を表す)のGC-MS比較は、芳香族アルキル化生成物を表す新しい高分子量生成物の出現を示している。FT-MS分析は、平均およそ4~8個の炭素原子を付加することによって、類似の二重結合当量を保持しつつ、FCCナフサのアルキル化が生じたことを確認している。
【0016】
そのため、いくつかの実施形態では、本開示は、炭化水素供給物を、フレームワーク置換超安定Y(USY)型ゼオライトを含有する触媒と接触させることによる、芳香族化合物及びオレフィンを含有する炭化水素供給物の脱オレフィン化の方法を提供する。
【0017】
他の実施形態では、本開示は、炭化水素供給物を、フレームワーク置換超安定Y(USY)型ゼオライトを含有する触媒と接触させることによる、芳香族化合物及びオレフィンを含有する炭化水素供給物中の芳香族化合物をアルキル化する方法を提供する。
【0018】
本開示の方法では、オレフィンは、炭化水素供給物中に存在する芳香族化合物のアルキル化剤として機能し、それによりアルキル化芳香族化合物及び脱オレフィン化炭化水素製品を製造する。
【0019】
いくつかの実施形態では、フレームワーク置換超安定Y(USY)型ゼオライトを含有する触媒は、そのゼオライトフレームワークを構成するアルミニウム原子の一部がジルコニウム原子並びに/又はチタン及び/若しくはハフニウム原子で置換されているものである。
【0020】
いくつかの実施形態では、フレームワーク変性USYゼオライトは、無機酸化物、例えば本明細書に記載されるアルミナ、シリカ-アルミナなどを含有する担体上に担持されうる。
【0021】
更なる実施形態及び本開示の適用可能性の完全な範囲は、本発明で以下に付与される「発明を実施するための形態」から明らかになる。しかしながら、「発明を実施するための形態」及び特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示す一方で、例示によってのみ付与され、その理由が、本発明の趣旨及び範囲内の多種の変更及び改変がこの「発明を実施するための形態」から当業者には明らかになるためであることが理解されるべきである。
【0022】
本発明の及びその多くの特徴及び利点のより完全な理解が、以下の「発明を実施するための形態」及び添付の図面を参照することによって達成されることになる。図面が、本開示の1つのみの実施形態を例示していること、したがってその範囲を限定すると考えられるべきでないことに留意することが重要である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】FCCナフサ供給物(Naphtha 364)のm/z190イオンのGC-MS(
図1Bとの比較)を示す図である。
【
図1B】反応生成物RPHSA-5のm/z190イオンのGC-MS(
図1Aとの比較)を示す図である。
【
図2A】FCCナフサ供給物(Naphtha 365)のm/z190イオンのGC-MS(
図2Bとの比較)を示す図である。
【
図2B】反応生成物RPHSA-6のm/z190イオンのGC-MS(
図2Aとの比較)を示す図である。
【
図3】RPHSA-6及び初期のFCCナフサ供給物についての炭素数当量を示す図である。実験は二連で行った。供給物(i)(
___○(白丸)
___)、供給物(ii)(---■(四角)---)、RPHSA-6(i)(---▲(三角)---)、RPHSA-6(ii)(
___●(黒丸)
___)。
【
図4】生成物及び初期のFCCナフサ供給物の二重結合当量を示す図である。供給物(i)(
___○(白丸)
___)、供給物(ii)(---■(四角)---)、RPHSA-6(i)(---▲(三角)---)、RPHSA-6(ii)(
___●(黒丸)
___)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示は、芳香族化合物及びオレフィンを含有する炭化水素供給物の脱オレフィン化の方法であって、炭化水素供給物を、そのゼオライトフレームワークを構成するアルミニウム原子の一部がジルコニウム原子並びに/又はチタン及び/若しくはハフニウム原子で置換されている、フレームワーク置換超安定Y(USY)型ゼオライトを含有する触媒と接触させる工程であり、該オレフィンが、炭化水素供給物中の芳香族化合物をアルキル化し、それにより脱オレフィン化炭化水素製品を製造する工程を含む方法に関する。
【0025】
本開示は、芳香族化合物及びオレフィンを含有する炭化水素供給物中の芳香族化合物をアルキル化する方法であって、炭化水素供給物を、そのゼオライトフレームワークを構成するアルミニウム原子の一部がジルコニウム原子及び/又はチタン原子及び/又はハフニウム原子で置換されている、フレームワーク置換超安定Y(USY)型ゼオライトを含有する触媒と接触させる工程であり、該オレフィンが、炭化水素供給物中の芳香族化合物をアルキル化し、それによりアルキル化芳香族化合物を製造する工程を含む方法に更に関する。
【0026】
フレームワーク置換超安定Y(USY)ゼオライトを有する触媒
本発明の方法において使用される触媒は、ゼオライトフレームワークを構成するアルミニウム原子の一部がジルコニウム原子及び/又はチタン原子及び/又はハフニウム原子で置換されている、フレームワーク置換ゼオライトを含有する。
【0027】
いくつかの実施形態では、本開示の方法において使用されるフレームワーク置換ゼオライト触媒を有する触媒は、ケイ素原子及びアルミニウム原子がゼオライトフレームワークを形成し、且つアルミニウム原子の一部がジルコニウム原子及び/又はチタン原子及び/又はハフニウム原子で置換されている、超安定Y型ゼオライトである。例えば、ゼオライトフレームワークを形成するアルミニウム原子の一部がジルコニウム原子のみで置換されている触媒中のフレームワーク置換ゼオライトは、「ジルコニウム置換ゼオライト」又は「Zr-USY」と称され;フレームワーク置換ゼオライトのゼオライトフレームワークを形成するアルミニウム原子の一部がチタン原子のみで置換されている触媒中のフレームワーク置換ゼオライトは、「チタン置換ゼオライト」又は「Ti-USY」と称され;ゼオライトフレームワークを形成するアルミニウム原子の一部がジルコニウム原子及びチタン原子のみで置換されている触媒中のフレームワーク置換ゼオライトは、「ジルコニウム.チタン置換ゼオライト」又は「Zr.Ti-USY」と称され;ゼオライトフレームワークを形成するアルミニウム原子の一部がジルコニウム原子、チタン及びハフニウム原子で置換されている触媒中のフレームワーク置換ゼオライトは、「ジルコニウム.チタン.ハフニウム置換ゼオライト」又は「Zr.Ti.Hf-USY」と称される。
【0028】
超安定Y型ゼオライトのフレームワークを形成するアルミニウム原子と置換されているジルコニウム原子並びに/又はチタン及び/若しくはハフニウム原子は、超安定Y型ゼオライトのフレームワークの構成要素として働く。置換は、例えば紫外線、可視光線及び近赤外線の分光光度法(UV-Vis-NIR)、フーリエ変換赤外線スペクトル法(FT-IR)又は核磁気共鳴分光法(NMR)によって確認することができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、置換された原子に加えて、ジルコニウム原子並びに/又はチタン及び/若しくはハフニウム原子は、USY型触媒のフレームワークの外に更に付着され(担持され)得、又はUSY型触媒のフレームワークと結合され得、これは、あたかも本明細書に完全に記載されているかのようにその全容を参照により本明細書に組み込む米国特許第10293332号に記載されている通りである。
【0030】
いくつかの実施形態では、触媒のフレームワーク置換ゼオライトは、フレームワーク置換ゼオライトに基づく酸化物(すなわち「ZrO2」、「TiO2」及び「HfO2」)に関して、約0.1質量%~約5質量%、好ましくは約0.2質量%~約4質量%、より好ましくは約0.3質量%~約3質量%のジルコニウム原子並びに/又はチタン及び/若しくはハフニウム原子を含有する。本明細書で熟慮しているように、ジルコニウム原子並びに/又はチタン及び/若しくはハフニウム原子の(酸化物に基づく)含有量範囲は、ゼオライトフレームワークを形成するアルミニウム原子と置換されているジルコニウム原子並びに/又はチタン及び/若しくはハフニウム原子、並びに上記アルミニウム原子と置換されていないジルコニウム原子並びに/又はチタン及び/若しくはハフニウム原子の含有量の全てを含む。
【0031】
触媒中のフレームワーク置換ゼオライトが、上に記載したジルコニウム原子並びにチタン原子及び/又はハフニウム原子を含有するとき、ジルコニウム原子の、チタン原子及び/又はハフニウム原子に対する(酸化物に関する)質量比は、特に制限されず、且つ本発明の方法を実施するのに効果的であるジルコニウム又はチタン若しくはハフニウムの任意の比が用いられてよいことが、当業者によって認められる。
【0032】
触媒中のフレームワーク置換ゼオライトのジルコニウム原子並びに/又はチタン及び/若しくはハフニウム原子の含有量は、例えば、X線蛍光分析装置、高周波プラズマ発光分光計、原子吸光分光計などを用いて測定することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、ジルコニウム並びに/又はチタン及び/若しくはハフニウム変性USY触媒の粒子は、50nm以下の直径を有する。
【0034】
フレームワーク置換ゼオライトを製造する方法
本発明における触媒中のフレームワーク置換ゼオライトは、米国特許第10293332号によって記載されている方法に従って製造することができる。例えば、触媒中のフレームワーク置換ゼオライトは、以下によって製造することができる:USY型ゼオライトを500℃~700℃にて焼成する工程であって、該USY-型ゼオライトが、2.430~2.450nmの結晶格子定数、600~900m2/gの比表面積、及び20~100の、SiO2のAl2O3に対するモル比を有する、工程と、焼成されたUSY型ゼオライトを含有する懸濁液を形成する工程であって、該懸濁液が、5~15の液体/固体の質量比を有する、工程と、上記懸濁液のpHが1.0~2.0であるように無機酸又は有機酸を添加する工程と、続いてジルコニウム化合物及び/又はハフニウム化合物を含有する溶液を添加してそれらを混合する工程と、混合溶液が約7のpHを有するように、例えば水性アンモニアを用いて溶液を中和する工程。
【0035】
超安定Y型ゼオライトは、触媒中のフレームワーク置換ゼオライトを調製するための原材料の1種として使用される。超安定Y型ゼオライトは、2.430nm以上で2.450nm以下の範囲内に落とし込まれる結晶格子定数(UD)、600~900m2/gの比表面積、及びSiO2の、Al2O3に対するものに関して20~100の範囲内に落とし込まれるモル比(シリカ-アルミナ比)を有するゼオライトを意味する。超安定Y型ゼオライトは、当技術分野で既知の任意の方法によって調製することができる。
【0036】
フレームワーク変性超安定Y型ゼオライトを製造する方法では、超安定Y型ゼオライトを得るために、骨格外アルミニウム(ゼオライトフレームワークを形成しないアルミニウム原子)が、超安定Y型ゼオライト原材料から除去されうる。骨格外アルミニウムは、例えば、超安定Y型ゼオライトを40~95℃の温水中に分散させて懸濁液を調製し、硫酸を上記懸濁液に添加してそれを10分~3時間撹拌し、その間、温度を40~95℃に維持して、それにより骨格外アルミニウムを溶解する方法によって除去することができる。骨格外アルミニウムを溶解させた後、該懸濁液はろ過され、フィルター上の残留物は40~95℃の純水で洗浄され、100~180o℃にて3~30時間乾燥され、それにより、そこから骨格外アルミニウムが除去される超安定Y型ゼオライトを得ることができる。
【0037】
更に、フレームワーク変性超安定Y型ゼオライトを製造する方法では、超安定Y型ゼオライト原材料は、500℃~700℃、好ましくは550℃~650℃にて、か焼されうる。か焼時間は、目標のフレームワーク置換ゼオライトが得られる限り特に限定されず、それは、例えば30分~10時間の範囲内でか焼される。超安定Y型ゼオライトのか焼雰囲気に関して、それは、好ましくは空気中で実施される。か焼された超安定Y型ゼオライトを、約20℃~約30℃の温度を有する水の中に懸濁させて、懸濁液を形成する。超安定Y型ゼオライトの懸濁液の濃度に関して、液体/固体の質量比は、好ましくは5~15の範囲内であり、より好ましくは8~12の質量比が推奨される。
【0038】
次に、上に記載した懸濁液のpHが1.0~2.0に調整されるように無機酸又は有機酸がそこに添加され、続いてジルコニウム化合物及び/又はハフニウム化合物を含有する溶液が添加され混合される。次いで、混合溶液は中和され(pH7.0~7.5)、80~180℃にて所望のように乾燥され、これにより、上に記載したフレームワーク置換ゼオライトを得ることができる。
【0039】
硫酸、硝酸、塩酸などを、上記の使用される無機酸として付与することができ、それらの中で、硫酸、塩酸などが特に好ましい。更に、カルボン酸を、上に記載した有機酸として好適に使用することができる。無機酸又は有機酸の使用量は、懸濁液のpHが1.0~2.0の範囲に調整されうる限り制限されず、それは、超安定Y型ゼオライト中のAl2O3の量に基づいて、例えば0.5倍~4.0倍のモル量であり、好ましくは0.7倍~3.5倍のモル量であるが、それは上記範囲に制限されない。
【0040】
上に記載したジルコニウム化合物の例には、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウムなどが挙げられる。これらの化合物の中で、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウムなどが特に好ましい。添加されるジルコニウム化合物の量は、上に記載した超安定Y型ゼオライトに関する酸化ジルコニウム基準で、好ましくは約0.1質量%~約5質量%、より好ましくは約0.2質量%~約4質量%である。通常、ジルコニウム化合物を水に溶解させることによって調製されるジルコニウム化合物の水溶液が、ジルコニウム化合物として好適に使用される。
【0041】
上に記載したハフニウム化合物の例には、塩化ハフニウム、硝酸ハフニウム、フッ化ハフニウム、臭化ハフニウム、シュウ酸ハフニウムなどが挙げられる。これらの化合物の中で、塩化ハフニウム、硝酸ハフニウムなどが特に好ましい。添加されるハフニウム化合物の量は、超安定Y型ゼオライトに対する酸化ハフニウム基準で、好ましくは約0.1質量%~約5質量%、より好ましくは約0.2質量%~約4質量%である。通常、ハフニウム化合物を水に溶解させることによって調製されるハフニウム化合物の水溶液が、ハフニウム化合物として好適に使用される。
【0042】
いくつかの実施形態では、チタン化合物を、上に記載した混合溶液に添加することができる。チタン化合物の例には、硫酸チタン、酢酸チタン、塩化チタン、硝酸チタン、乳酸チタンが挙げられる。これらの化合物の中で、硫酸チタン、酢酸チタンなどが特に好ましい。添加されるチタン化合物の量は、超安定Y型ゼオライトに対する酸化物基準で、好ましくは約0.1質量%~約5質量%、より好ましくは約0.2質量%~約4質量%である。通常、チタン化合物を水に溶解することによって調製されるチタン化合物の水溶液が、チタン化合物として好適に使用される。
【0043】
上記懸濁液のpHは、事前に1.0~2.0に調整されなければならず、これは、上に記載した超安定Y型ゼオライトの懸濁液を有するジルコニウム化合物、ハフニウム化合物又はチタン化合物の水溶液の混合において沈殿が発生することを防止する目的のためである。
【0044】
ジルコニウム化合物、ハフニウム化合物又はチタン化合物の水溶液を、超安定Y型ゼオライトの懸濁液と混合する場合、好ましくは上記水溶液は、該懸濁液に徐々に添加される。上に記載した水溶液の、懸濁液への添加が終了した後、該溶液は、例えば室温(約25℃~約35℃)にて3~5時間、好ましくは撹拌しながら混合される。更に、上に記載した混合を終了した後、上に記載した混合溶液は、水性アンモニアなど等のアルカリを添加することによって中和されるので、そのpHが7.0~7.5に調整され、それにより触媒中のフレームワーク置換ゼオライトを得ることができる。
【0045】
ジルコニウム化合物(又はその水溶液)のみが、上に記載した懸濁液に添加される化合物(又はその水溶液)として使用されるとき、そこでジルコニウム原子が、超安定Y型ゼオライトのフレームワークを形成するアルミニウム原子の一部と置換される触媒(Zr-USY)中のフレームワーク置換ゼオライトが形成され;ハフニウム化合物(又はその水溶液)のみが使用されるとき、そこでハフニウム原子が、超安定Y型ゼオライトのフレームワークを形成するアルミニウム原子の一部と置換される、触媒(Hf-USY)中のフレームワーク置換ゼオライトが形成され;チタン化合物(又はその水溶液)のみが使用されるとき、そこでチタン原子が、超安定Y型ゼオライトのフレームワークを形成するアルミニウム原子の一部と置換される、触媒(Ti-USY)中のフレームワーク置換ゼオライトが形成され;ジルコニウム化合物及びチタン化合物(又はそれらの水溶液)が使用されるとき、そこでジルコニウム原子及びチタン原子が、超安定Y型ゼオライトのフレームワークを形成するアルミニウム原子の一部と置換される、触媒(Zr.Ti-USY)中のフレームワーク置換ゼオライトが形成され;ジルコニウム化合物及びハフニウム化合物(又はそれらの水溶液)が使用されるとき、そこでジルコニウム原子及びハフニウム原子が、超安定Y型ゼオライトのフレームワークを形成するアルミニウム原子の一部と置換される、触媒(Zr.Hf-USY)中のフレームワーク置換ゼオライトが形成され;且つジルコニウム化合物、チタン化合物及びハフニウム化合物(又はそれらの水溶液)が使用されるとき、そこでジルコニウム原子、チタン原子及びハフニウム原子が、超安定Y型ゼオライトのフレームワークを形成するアルミニウム原子の一部と置換される、触媒(Zr.Ti.Hf-USY)中のフレームワーク置換ゼオライトが形成されることが、当業者には明らかである。
【0046】
触媒中で得られたフレームワーク置換ゼオライトは、所望であれば、好ましくはろ過され、水で洗浄され、約80℃~約180℃にて乾燥される。
【0047】
フレームワーク変性USYゼオライトは、上に記載した触媒中のフレームワーク置換ゼオライトに加えて、上記の触媒中のフレームワーク置換ゼオライトを除き、無機酸化物を含有する担体上に担持されうる。無機酸化物は、典型的には、粉砕剤又は結合剤として働く物質を含有する。通常、超安定Y型ゼオライトを含めた担体中に含有されている既知の物質、及び粉砕剤などとして使用される既知の物質を使用することができる。無機酸化物の例には、アルミナ、シリカ、チタニア、シリカ-アルミナ、アルミナ-チタニア、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-ボリア、リン-アルミナ、シリカ-アルミナ-ボリア、リン-アルミナ-ボリア、リン-アルミナ-シリカ、シリカ-アルミナ-チタニア、及びシリカ-アルミナ-ジルコニアが挙げられるがこれらに限定されない。本開示では、特に、アルミナ、シリカ-アルミナから主になる無機酸化物が好ましい。
【0048】
触媒中のフレームワーク置換ゼオライトの含有率、及び担体の無機酸化物含有率は、目的に応じておよそのところ決定することができる。担体は、約2質量%~約80質量%、好ましくは約10質量%~約80質量%、より好ましくは約20質量%~約70質量%の、触媒中のフレームワーク置換ゼオライトを含み、且つ約98質量%~約20質量%、好ましくは約90質量%~約20質量%、より好ましくは約80質量%~約30質量%の、無機酸化物含有率を含む。
【0049】
金属成分:
本開示の方法において使用される触媒は、周期表のIUPAC7~11族の金属からなる群から選択される活性金属成分を更に含んでよい。活性金属の例には、長周期型周期表の8族にある、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、白金若しくは金、及び/又は6族にある金属成分の、クロム、モリブデン若しくはタングステンが挙げられる。金属成分の好ましい例には、6族にあるモリブデン又はタングステンの組み合わせ、及び8族にあるコバルト又はニッケルの組み合わせ、及び白金族(白金、ロジウム、パラジウムなど)の金属成分が挙げられる。
【0050】
金属成分は、酸化物に関して、触媒中に、約0.01~約40質量%の量で含有されてよい。モリブデン、タングステン、コバルト又はニッケルの場合、それらの量は、触媒の質量に基づく酸化物に関して、特に好ましくは約3~約30質量%である。白金族(白金、ロジウム、パラジウムなど)の場合、それらの量は、金属に関して、特に好ましくは約0.01~約2質量%である。
【0051】
芳香族アルキル化/脱オレフィン化のための機器/方法パラメータ
本開示における芳香族アルキル化及び脱オレフィン化の方法のための機器は、前述の反応が実施される限り特に限定されない。様々な型の機器を使用することができる。いくつかの実施形態によれば、本開示の方法は、固定床反応器、沸騰床若しくはスラリー床若しくは移動床の各反応器、又はCSTR反応器若しくはバッチ式反応器などにおいて行うことができる。
【0052】
炭化水素供給物
本発明の方法において使用される炭化水素供給物は、芳香族炭化水素に富む任意の炭化水素供給物であってよい。いくつかの実施形態では、芳香族炭化水素供給物は、接触改質プロセスによって形成される改質油である。好適な改質油には、軽質カット改質油、重質改質油又はハートカット改質油が挙げられるがこれらに限定されない。炭化水素供給物は、芳香族炭化水素に好ましくは富化された、例えばC6~C8芳香族化合物である。好ましい一実施形態では、芳香族に富む炭化水素供給物は、流動式接触分解(FCC)ナフサである。他の実施形態では、芳香族に富む炭化水素供給物は、コーキングナフサ、又は水素が使用されない分解ユニットに由来する他のナフサのうちのいずれか1種又は複数である。
【0053】
改質油供給物は、通常、きわめて少量の硫黄を含有し、その理由は、得られたガソリン製品が現在の硫黄仕様書の遵守にとって許容されるレベルの硫黄を含有するように、それらが、改質前に、脱硫化に典型的に供されるためである。他の源からの芳香族流、例えばFCCナフサは、改質油よりも高いレベルの不純物を一般に含有し、したがって、典型的には、汚染物質、特に窒素(N)種及び硫黄(S)種を除去するための供給物事前処理を要する。これらの種の除去は、分画、吸着及び/又は水素処理/剥ぎ取り等の従来の処理によって果たすことができる。いくつかの実施形態では、脱オレフィン化炭化水素製品は、約500ppm未満、好ましくは約10ppm未満、最も好ましくは約0.5ppm未満の硫黄を好ましくは含有する。他の実施形態では、脱オレフィン化炭化水素製品は、約100ppm未満、好ましくは約10ppm未満、最も好ましくは約0.5ppm未満の窒素を含有する。
【0054】
いくつかの実施形態では、炭化水素供給物は、約15℃~約500℃の沸点範囲を有する、芳香族に富む炭化水素油を含む。他の実施形態では、炭化水素供給物は、約15℃~約250℃の沸点範囲を有する、芳香族に富む炭化水素油を含む。他の実施形態では、炭化水素供給物は、約250℃~約500℃の沸点範囲を有する、芳香族に富む炭化水素油を含む。他の実施形態では、炭化水素供給物は、約250℃~約400℃の沸点範囲を有する、芳香族に富む炭化水素油を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、芳香族に富む炭化水素流は、少なくとも60,000未満、好ましくは10,000未満、最も好ましくは1,000未満の臭素指数を有する。本明細書で使用するとき、用語「臭素指数」(BI)は、炭化水素サンプルのオレフィン度を示し、電位差滴定によって決定される。反応に応じて、1モルのオレフィン分子は1モルの臭素を消費するので、試験は、炭化水素サンプル100g当たりの臭素のmgとして報告され、これは臭素価である。臭素指数は、臭素価の1000倍である。この反応は、
R-C=C-R+Br2→R-CBr-CBr-R
(式中、各「R」は、オレフィン鎖の部分である)
である。
【0056】
本明細書で詳述するように、本開示の方法において、芳香族に富む炭化水素中に存在するオレフィンは、アルキル化剤として機能して、芳香族画分をアルキル化し、初期の芳香族供給物と比べて高い分子量の芳香族画分を有する生成物をもたらす。いくつかの実施形態では、アルキル化反応は、平均およそ2~10個の炭素原子を付加する。他の実施形態では、アルキル化反応は、平均およそ4~10個の炭素原子を付加する。他の実施形態では、アルキル化反応は、平均およそ4~8個の炭素原子を付加する。いくつかの実施形態では、炭化水素供給物中の芳香族化合物は、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、その一方で、アルキル化芳香族化合物は、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、又はC9+芳香族化合物を含有する高級芳香族画分からなる群から選択される。
【0057】
本明細書で使用されるとき、用語「BTX」は、ベンゼン(C6)、トルエン(C7)及び混合キシレン(C8)を含む組成物を意味する。本明細書で示される用語「キシレン」は、オルトキシレン(o-キシレン)、メタキシレン(m-キシレン)、パラキシレン(p-キシレン)、又はこれらの任意の組み合わせのうちのいずれか1種を意味する。全体を通して使用されるとき、「混合キシレン」は、o-キシレン、m-キシレン及びp-キシレンのうちのいずれか1種又は複数を指す。
【0058】
全体を通して使用されるとき、「C」及び数への参照は、炭化水素中の炭素原子の数を指す。例えば、C6は、6個の炭素原子を有する炭化水素を指し、C7は、7個の炭素原子を有する炭化水素を指す、などである。
【0059】
アルキル化反応の結果として、炭化水素製品中のオレフィンの量は、初期の供給物中のオレフィンの量に対して低減されている。そのため、いくつかの実施形態では、脱オレフィン化炭化水素製品は、炭化水素供給物よりも少ないオレフィン炭化水素及び多いアルキル化芳香族化合物を含む。
【0060】
いくつかの非限定的な実施形態では、炭化水素供給物は、約1wt%超のオレフィンを含有する。他の実施形態では、炭化水素供給物は、約10wt%超のオレフィンを含有する。他の実施形態では、炭化水素供給物は、約25wt%超のオレフィンを含有する。他の実施形態では、脱オレフィン化炭化水素製品は、約10wt%未満のオレフィン、好ましくは約1wt%未満のオレフィン、より好ましくは約0.5wt%未満のオレフィンを含有する。なおも他の実施形態では、炭化水素供給物流は、少なくとも約95wt%、好ましくは少なくとも約99wt%、より好ましくは少なくとも約99.99wt%、脱オレフィン化される。
【0061】
本明細書で使用されるとき、用語「オレフィン」は、1つ又は複数の炭素-炭素二重結合を有する化合物を示す。オレフィンの非限定的な例には、エチレン、プロピレン、ブテン又は長鎖オレフィン等の軽質オレフィン、例えばペンテン、ヘキセンペンテン、オクテンなどが挙げられる。
【0062】
該方法は、芳香族アルキル化/脱オレフィン化反応を果たすのに好適な条件において行われる。当業者であれば、所望の結果を達成するための温度及び圧力等の方法パラメータを決定することができる。いくつかの実施形態では、該方法は、約50℃~約250℃の範囲の反応温度、約1~約30バールの圧力、及び約0.5~約5h-1の液時空間速度(LHSV)で操作される。
【実施例】
【0063】
以下の実施例は、本開示の実施形態をより良好に例示するために提供される。しかしながら、これらの実施例が、本来、単に例示的であること、及び本開示の方法の実施形態が必ずしもこれらに限定されないことが理解されることになる。
【0064】
(実施例1)
材料及び方法
その性質及び組成をTable 1(表1)に示すFCCナフササンプルを、芳香族アルキル化を明示するための供給原料として使用した。実験を、コンデンサを備えた丸底フラスコ中で行った。固体触媒を液体に添加し、還流させた。
【0065】
【0066】
以下の実施例は、Table 1(表1)のFCCナフサ流の芳香族アルキル化及び脱オレフィン化の方法を説明している。以下の実施例では、操作条件は同一であり、唯一、可変なのは、触媒の性質である。反応条件、触媒及び結果の詳細を、以下の実施例の中で示す。
【0067】
(実施例2)
活性相金属なしの、触媒を含有する変性USYゼオライトを使用したFCCナフサ流の芳香族アルキル化及び脱オレフィン化
活性相金属一切なしの、粉末形態にある、触媒を含有する変性USYゼオライトを使用した。触媒は、アルミナ担体上に約35W%のゼオライトを含有する。Table 2(表2)に見られるように、ディーゼル収率は、触媒の、油に対する最大の比において、4W%のみ増加した。
【0068】
【0069】
(実施例3)
活性相金属(押出物の形態)ありの、触媒を含有する変性USYゼオライトを使用したFCCナフサ流の芳香族アルキル化及び脱オレフィン化
活性相金属あり(Ni=4W%、Mo=16W%)の、押出物の形態にある変性USYゼオライト触媒を、この実施例において使用した。触媒は、アルミナ担体上に約30W%のゼオライトを含有する。Table 3(表3)に見られるように、生成物(RPHSA-5)のディーゼル収率は、触媒の、油に対する最大の比において、7W%のみ増加した。
【0070】
【0071】
(実施例4)
活性相金属(粉末形態)ありの、触媒を含有する変性USYゼオライトを使用したFCCナフサ流の芳香族アルキル化及び脱オレフィン化
活性相金属あり(Ni=4W%、Mo=16W%)の、粉末形態にある変性USYゼオライト触媒を、この実施例において使用した。触媒は、アルミナ担体上に約30W%のゼオライトを含有する。Table 4(表4)に見られるように、生成物(RPHSA-6)のディーゼル収率は、触媒の、油に対する最大の比において、14W%のみ増加した。
【0072】
【0073】
結果
供給原料(実施例1)及び実施例4の反応の生成物を、GC-MSによって分析して、芳香族の形成を証明した。
図1に見られるように、新しく形成された化合物をGC-MSにおいて観察した。
【0074】
図1は、初期のFCCナフサ供給物と、生成物RPHSA-5との間の、m/z190イオンのガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)比較を示す。
図2は、初期のFCCナフサ供給物と、生成物RPHSA-6との間の、m/z190イオンのガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)比較を示す。m/z190イオンは、参照のポイントとして選択した。m/z190イオンは、本質的に全てのC6トルエン化合物(すなわちC7ベンゼン化合物)を提示するのに使用することができる。示しているように、各実験について、供給物とアルキル化サンプルとの間に(集束の面積-「新しい化合物の出現」によって示すような)明らかな差が存在する。RPHSA-6生成物中のハイライトしたピークは、増大した滞留時間における新しい生成物種の出現を示し、より重質な生成物の形成に相当する。GC-MS分析は、芳香族化合物が創製され、触媒装填量の関数として増大していることを明らかにしている。
【0075】
図3は、RPHSA-6(5)及び初期の供給物についての炭素数当量(Table 1(表1))を示す(二重に実施した)。FT-MS分析は、FCCナフサアルキル化が起こり、平均およそ4~8個の炭素原子を付加したことを明らかにしている。
【0076】
図4は、生成物と初期のFCCナフサ供給物との二重結合当量を示す(二重に実施した)。混合物の平均炭素数は増加しているが、二重結合当量は同様のままであることは特筆すべきである。
【0077】
特定の実施形態の前述の記載は、他者が、(本明細書に引用した参照物の含有量を含めた)当業者内の知識を適用することによって、このような特定の実施形態の様々な適用について、不必要な実験なしに、本開示の一般的概念から逸脱することなく、すぐに改変することができる且つ/又は適合させることができるという本発明の一般的性質を、きわめて完全に明らかにすることになる。したがって、そのような適合及び改変は、本明細書で提示している教示及び指針に基づいて、開示している実施形態の意味及び当量の範囲内にあると意図される。本明細書における言葉の使用法又は用語法が、説明の目的のためであり、限定する目的ではないため、本明細書の用語法又は言葉の使用法は、当業者によって、本明細書に提示されている教示及び指針に照らして、当業者の知識と組み合わせて解釈されることになることが理解される。
【国際調査報告】