(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-22
(54)【発明の名称】フラックス無しかまたは削減されたフラックスを伴うろう付け用のアルミニウム合金製ストリップまたはシート
(51)【国際特許分類】
B23K 35/28 20060101AFI20230215BHJP
B23K 35/22 20060101ALI20230215BHJP
C22C 21/00 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
B23K35/28 310B
B23K35/22 310E
C22C21/00 D
C22C21/00 E
C22C21/00 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537284
(86)(22)【出願日】2020-12-14
(85)【翻訳文提出日】2022-07-25
(86)【国際出願番号】 FR2020052414
(87)【国際公開番号】W WO2021123585
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517422951
【氏名又は名称】コンステリウム ヌフ-ブリザック
【氏名又は名称原語表記】CONSTELLIUM NEUF-BRISACH
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】ジャリ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】シェアブ,べシール
(57)【要約】
- アルミニウム合金製コア層と;- コア層の少なくとも1つの面上にクラッドされたアルミニウム合金製ろう付け層と;場合によっては、コア層とろう付け層の間かまたはコア層上の少なくとも1つの面上に他のいかなる層も無い状態でクラッドされたアルミニウム合金製中間層と;を含むブレージングストリップまたはシートにおいて、ろう付け層の合金が、質量%単位で:7~13%のSi、多くとも0.8%のFe、多くとも0.45%のCu、多くとも0.20%のMn、多くとも0.15%のMg、多くとも0.20%のZn、多くとも0.20%のTi、多くとも0.04%のBi、0.01~0.10%のY、0.01~0.10%のSn、残りはアルミニウムおよび不純物、を含むことを特徴とするブレージングストリップまたはシート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 好ましくは3xxxタイプのアルミニウム合金製コア層と、
- コア層の少なくとも1つの面上にクラッドされた、好ましくは4xxxタイプのアルミニウム合金製ろう付け層と、
- 場合によっては、コア層とろう付け層の間の少なくとも1つの面上にクラッドされた、好ましくは3xxxタイプのアルミニウム合金製中間層と、
- 場合によっては、ろう付け層の無いコア層の任意の面上の腐食に対する保護層と、
を含み、好ましくはこれらで構成されている、ブレージングストリップまたはシートにおいて、
ろう付け層の合金が、質量%単位で、
7~13%のSi、多くとも0.8%のFe、多くとも0.45%のCu、多くとも0.20%のMn、多くとも0.15%のMg、多くとも0.20%のZn、多くとも0.20%のTi、多くとも0.04%のBi、0.01~0.10%のY、0.01~0.10%のSn、残りはアルミニウムおよび不純物、を含むことを特徴とするブレージングストリップまたはシート。
【請求項2】
ろう付け層の合金が、多くとも0.03%、好ましくは多くとも0.02%のBiを含むことを特徴とする、請求項1に記載のブレージングストリップまたはシート。
【請求項3】
ろう付け層の合金が、
0.015~0.08%、好ましくは0.02~0.065%のSn
を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のブレージングストリップまたはシート。
【請求項4】
ろう付け層の合金が、
0.015~0.08%、好ましくは0.02~0.065%のY
を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一つに記載のブレージングストリップまたはシート。
【請求項5】
ろう付け層の合金が、質量%単位で、
- 8~12%、好ましくは9~11%のSi、
- 多くとも0.7%、好ましくは多くとも0.6%のFe、
- 多くとも0.35%、好ましくは多くとも0.25%のCu、
- 多くとも0.15%、好ましくは多くとも0.10%のMn、
- 多くとも0.10%、好ましくは多くとも0.05%、さらにより好ましくは多くとも0.025%のMg、
- 多くとも0.15%、好ましくは多くとも0.10%のZn、
- 多くとも0.15%、好ましくは多くとも0.10%のTi、
- 多くとも0.03%、好ましくは多くとも0.02%のBi、
- 0.015~0.08%、好ましくは0.02~0.065%のY、
- 0.015~0.08%、好ましくは0.02~0.065%のSn、
残りはアルミニウムおよび不純物
を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一つに記載のブレージングストリップまたはシート。
【請求項6】
コア層の合金が、質量%単位で、
- 多くとも0.8%、好ましくは多くとも0.6%、より好ましくは多くとも0.5%、さらにより好ましくは多くとも0.25%のSi、
- 多くとも0.5%、好ましくは多くとも0.4%、より好ましくは多くとも0.3%のFe、
- 多くとも1.2%、好ましくは0.20~1.2%、より好ましくは0.25~1.1%、より好ましくは0.3~1.0%、より好ましくは0.5~1.0%、そしてさらにより好ましくは0.5~0.8%のCu、
- 0.8~2.2%、好ましくは0.9~2.1%、より好ましくは1.0~2.0%、より好ましくは1.2~1.8%、さらにより好ましくは1.2~1.65%のMn、
- 多くとも0.6%、好ましくは多くとも0.35%、より好ましくは多くとも0.25%のMg、
- 多くとも0.30%、好ましくは多くとも0.25%、より好ましくは多くとも0.20%、そしてさらにより好ましくは0.05%未満のZn、
- 多くとも0.30%、好ましくは多くとも0.25%、より好ましくは多くとも0.20%、さらにより好ましくは多くとも0.14%、そしてさらにより好ましくは多くとも0.12%のTi、
- 残りはアルミニウムおよび不純物
を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一つに記載のブレージングストリップまたはシート。
【請求項7】
好ましくは3xxx、1xxxまたは7xxxタイプ、より好ましくはAA3003、AA3207またはAA1050タイプの中間層を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一つに記載のブレージングストリップまたはシート。
【請求項8】
コア層、1つまたは2つの前記ろう付け層、任意の1つまたは2つの前記中間層および任意の前記保護層以外の層を含まないことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一つに記載のブレージングストリップまたはシート。
【請求項9】
熱交換器の製造用のフラックス無しのまたは削減された量のフラックスを伴うろう付けプロセスにおける、請求項1から8のいずれか一つに記載のブレージングストリップまたはシートの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろう付け層そして場合によっては1つまたは2つの中間層で一面または両面がコーティングされていて、ろう付部品、特に自動車または建物用の熱交換器、そしてより詳細には、好ましくは制御雰囲気下でフラックス無しまたは削減された量のフラックスを伴うろう付けによって組立てられた部品の製造を目的とする、アルミニウム合金製ストリップまたはシートに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、熱交換器用の工業的ろう付けは、主として制御雰囲気下でのろう付け(CAB、つまり英語で(「Controlled Atmosphere Brazing」)用大型連続炉内でNocolok(登録商標)プロセスを用いて実施されている。しかしながら自動車メーカは、フラックスの使用を大幅に削減、さらには削除することを望んでいる。その結果として、大幅に削減された量のフラックスしか伴わずに、さらにはフラックスを全く使用せずに満足のいくろう付けを保証することのできるブレージングストリップまたはシートの供給を求める要請が増大している。
【0003】
ろう付けのために大量のフラックスを利用する場合、フラックスの残渣が、熱交換器の内部に存在する。これらの残渣は、冷却液と相互作用する可能性があり、これにより冷却流路の目詰まりを起こし、こうして熱交換効率の損失がひき起こされる可能性がある。その上、環境および健康に対するリスク(時として、フッ素を含むCMR(発ガン性、変異原性または生殖毒性)物質)およびコストが、さらなるデメリットである。その上、熱交換器メーカには現在、フラックス残渣の観点から見た新規の仕様が課せられ、これまで使用してきたフラックスの数量を削減せざるを得なくなっている。参考として、標準的なフラックス使用量は、+/-3g/m2で平均5~10g/m2である。平均フラックス使用量と呼ばれているが、これはフラックスの分布が表面全体にわたって必ずしも均質でないからである。例えば、フラックスの局所的使用(例えばペーストの形態をしたフラックスを用いて)も可能であり、かつ/またはろう付けすべき物体の一面だけまたは両面上にフラックスを使用することも可能である。
【0004】
さらに、フラックスを除去するためのろう付け後の部品の清浄は、コストが高く、長時間かかり、全ての構成に適用可能ではない、という点に留意すべきである。
【0005】
真空ろう付けは、フラックス無しでろう付けするために有効であるものとして知られている技術であるが、コストが高く、大型部品には不向きである。これは、サイクル時間の長いバッチ炉で機能する。その上、このシステムを装備している顧客はわずかである。このような理由から、真空ろう付けに代わる信頼性の高いフラックス無しのCAB解決法が必要とされている。
【0006】
フラックス無しでの良好なろう付けを可能にする、中間層を伴うまたは伴わないコアおよび/またはクラッドの組成については、多くの特許が出願されてきた。
【0007】
欧州特許第1687456号明細書は、大量(0.3~3質量%)のMgを含み、かつAg、Be、Bi、Ce、La、Pb、Pd、Sb、Yまたはミッシュメタルの中から選択された少なくとも1つの元素を0.01~0.5%含む4xxx合金によって少なくとも一面が被覆された合金を開示している。0.01~0.5%のイットリウムをコア合金に添加することも同様に開示されている。ろう付け性の観点からみた最良の結果は、クラッド4047内への0.19%のBiの添加と同時にコア内に0.15%のBiを添加することによって得られる。
【0008】
米国特許第8413876号明細書は、コア合金内への0.01~5%のイットリウムの添加を開示している。この特許中に記載の発明は、Ag、Be、Ce、La、Pb、Pd、Sbおよびミッシュメタルのうちの少なくとも1つの表面張力修飾元素を含むクラッド層に結び付けられかつ3%未満であるコアのMg組成の如何に関わらず適用される。コア合金への3%未満のSnの添加も、1つの選択肢である。しかしながら、上述の2つの特許中に記載の解決法は、特に全ての条件(厚み、冶金学的質別、異なる層相互の構成、ろう付け炉の性質および品質など)に適合するように改良可能であると思われる。
【0009】
フラックスが無い場合、ろう付け用プレートの表面に存在する酸化物層を、内部から壊されなければならない。酸化物形成の自由エネルギーがAl2O3のもの以下である元素は、酸化物膜の断片化を実現するための優れた候補である。最も一般的であるのは、Mg、Be、Li、Ca、Ce、Zr、Sr、Ba、La、Yである。しかしながら、これらの元素は、酸素との高い反応性も有しており、クラッド合金内に大量に添加される場合、表面に過剰な量の酸化物を形成する可能性がある。欧州特許出願公開第3363583号明細書および欧州特許出願公開第3363582号明細書によると、Li、BeまたはMgは、1未満の体積変動比で表面における酸化物粒子の形成を導くことから、クラッド合金内ではこれらの元素の添加を優先させることが適切である。コア合金内への添加の場合には、Mg、Li、Be、Ca、Ce、La、YおよびZrなどの元素の含有量を0.01~2%とすべきである。クラッド合金内への添加の場合、これらの元素は、0.001~0.03%でなければならない。元素Bi、Li、CaおよびMgも、特に表面の濡れ性を改善するために有利であると思われる。
【0010】
欧州特許第3176273号明細書は、0.35~0.8%のMgを伴うコア合金の組成および0.001~0.05%のBiの添加を伴う4xxxのクラッド合金、ならびにクラッド合金内に含まれる容易に酸化可能な元素の厳格な制限について開示している。イットリウムは、その含有量が0.01%を超えてはならないこれらの容易に酸化可能な元素として挙げられている。制限すべき他の元素は、Mg、Be、Ca、Li、Na、LaおよびCeである。これらの元素は、製造および/またはろう付けプロセス中に酸化し、それがろう付けの性能を劣化させる、と言われている。
【0011】
同様に、他の解決法も存在する(例えば国際公開第2003/043777号、国際公開第2002/038326号、さらには国際公開第2004/054750号中に記載のもの)が、これらは、コアとの関係においてほとんどの場合ろう付け層の外部に設置される、非常に特異的な組成を有する単数または複数の補足的層の追加を前提としていることから、高価でかつ実施が困難である。
【0012】
本出願において提案される解決法は、クラッド合金内へのイットリウムとスズの同時の添加に関するものであり、コア合金中へはこれらの元素の添加が全く無いという点、ならびにコアとの関係においてろう付け層の外部に極めて特異的な補足的層が存在しないという点で、少なくとも先行技術と異なっている。企図されている利用分野に応じて、合金はMgを含む(フラックス無しのろう付けの場合)か、または含まない(削減された量のフラックスを伴うろう付けの場合)ことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許第1687456号明細書
【特許文献2】米国特許第8413876号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第3363583号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第3363582号明細書
【特許文献5】欧州特許第3176273号明細書
【特許文献6】国際公開第2003/043777号
【特許文献7】国際公開第2002/038326号
【特許文献8】国際公開第2004/054750号
【発明の概要】
【0014】
本出願中で開示されている解決法は、特に以下のような複数の利点を有する;
- 本発明に係るストリップまたはシート製造の終了時に、補足的なピックリングステップの必要がない;
- 本発明に係るろう付け層の組成は、特に0.1質量%超0.6質量%未満の量のMgを有するコア層と組合わせて、フラックス無しのろう付けを実現することを可能にする。好ましくは、コア層は、0.35質量%未満、さらには0.25質量%未満のMg最大量を有する。
【0015】
0.35%未満のMgを有するコアを伴うこの変形形態は、ろう付け炉内に潜在的に存在するフラックス残渣に耐性を有する。実際、フラックスを伴うろう付けを実施するために通常使用される炉は、フラックス残渣を有し得る。この変形形態はこのとき、フラックス無しのろう付けを実施するために、通常はフラックスを伴うろう付けのために使用されている炉を使用できるという利点を有する。これには、フラックス無しのろう付けを実施する前に完全に清浄された炉か、またはフラックス無しのろう付け専用の炉を使用する必要性が回避されるという利点がある。
【0016】
本発明は、
- 好ましくは3xxxタイプのアルミニウム合金製コア層と;
- コア層の少なくとも1つの面上にクラッドされた、好ましくは4xxxタイプのアルミニウム合金製ろう付け層と;
- 場合によっては、コア層とろう付け層の間の少なくとも1つの面上にクラッドされた、好ましくは3xxxタイプのアルミニウム合金製中間層と;
- 場合によっては、ろう付け層の無いコア層の任意の面上の腐食に対する保護層と;
を含み、好ましくはこれらで構成されている、ブレージングストリップまたはシートにおいて、
ろう付け層の合金が、質量%単位で:
7~13%のSi、多くとも0.8%のFe、多くとも0.45%のCu、多くとも0.20%のMn、多くとも0.15%のMg、多くとも0.20%のZn、多くとも0.20%のTi、多くとも0.04%のBi、0.01~0.10%のY、0.01~0.10%のSn、残りはアルミニウムおよび不純物、を含むことを特徴とするブレージングストリップまたはシートに関する。
【0017】
本発明は同様に、熱交換器製造用のフラックス無しのまたは削減された量のフラックスを伴うろう付けプロセスにおける、本発明に係るブレージングストリップまたはシートの使用にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例の削減された量のフラックスを伴うろう付け試験のために使用されるサンプルを示す写真である。
【
図2】実施例のフラックス無しのろう付け試験のために使用されるサンプルを示す写真である。
【
図3】実施例の耐腐食性試験のための組立図である。
【
図4】実施例の耐腐食性試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
別段の記載の無いかぎり、合金の化学的組成に関する全ての表示は、合金の総質量に基づく質量%として表現されている。
【0020】
合金の呼称は、当業者にとって公知であるアルミニウム協会の規則に準ずる。
【0021】
冶金学的質別の定義は、欧州規格EN515中に記されている。
【0022】
本出願中に記載の解決法は、フラックスの不在下でまたは削減された量のフラックスを伴って、さらには一定の条件におけるフラックスの存在下で、制御雰囲気ろう付け(CAB)の従来の炉内でろう付けされ得る、例えば熱交換器のろう付けを目的とする、ブレージングストリップまたはシートである。
【0023】
本出願において、「削減されたフラックス」および「削減された量のフラックス」なる用語は、平均5g/m2未満、好ましくは平均2.5g/m2未満、より好ましくは平均1g/m2未満の量のフラックスの使用を意味する。表現されたグラム数は、例えば300℃で1~2分間、または90℃で10~15分間の加熱乾燥後のフラックスの乾燥物に対応する。削減されたフラックスという概念は、同様に、ろう付けすべき物体の一定の部分上および/または一方の面上にのみフラックスが塗布されるプロセスも網羅し得るということに留意されたい。フラックスは、概して、フッ素、カリウムそして場合によっては、概して有機結合剤でありかつ概してフラックスの総質量との関係において概して34%までの結合剤を含む。一例として、NOCOLOK(登録商標)の商標で販売されているフラックスは、xが1~3でありyが4~6であるものとして一般式KxAlFyのフッ化カリウムの塩である。
【0024】
本出願において、「制御雰囲気」なる用語は、例えば窒素またはアルゴンなどの大部分の気体を有しかつ限定量のO2を有し、好ましくは150ppm未満、より好ましくは100ppm未満、さらにより好ましくは50ppm、そしてさらにより好ましくは20ppm未満の酸素を含む雰囲気を意味する。
【0025】
[コア層]
本発明に係るブレージングストリップまたはシートのコア層の合金は、好ましくは、AA3xxxタイプのものである。
【0026】
好ましくは、コア層の合金は、質量%単位で:
Si:多くとも0.8%、好ましくは多くとも0.6%、より好ましくは多くとも0.5%、さらにより好ましくは多くとも0.25%;
Fe:多くとも0.5%、好ましくは多くとも0.4%、より好ましくは多くとも0.3%;
Cu:多くとも1.2%、好ましくは0.20~1.2%、より好ましくは0.25~1.1%、より好ましくは0.3~1.0%、より好ましくは0.5~1.0%、そしてさらにより好ましくは0.5~0.8%;
Mn:0.8~2.2%、好ましくは0.9~2.1%、より好ましくは1.0~2.0%、より好ましくは1.2~1.8%、さらにより好ましくは1.2~1.65%;
Mg:多くとも0.6%、好ましくは多くとも0.35%、より好ましくは多くとも0.25%;
Zn:多くとも0.30%、好ましくは多くとも0.25%、より好ましくは多くとも0.20%、そしてさらにより好ましくは0.05%未満;
Ti:多くとも0.30%、好ましくは多くとも0.25%、より好ましくは多くとも0.20%、さらにより好ましくは多くとも0.14%、そしてさらにより好ましくは多くとも0.12%;
残りはアルミニウムおよび不純物;
を含む。
【0027】
不純物は好ましくは、各々0.05%未満でかつ合計0.15%未満の割合で存在する。
【0028】
好ましくは、Tiの下限は0.05%以上である。
【0029】
好ましくは、コア層合金中のZrの質量比率は、0.04%未満、好ましくは0.02%未満である。
【0030】
一変形形態によると、コア層の合金は、好ましくは0.05~0.35質量%のMgを含む。
【0031】
一変形形態によると、コア層の合金内のMnの質量比率は、厳密に1.2%超である。
【0032】
本発明の第1の変形形態によると、コア層の合金は、質量%単位で:
Si:多くとも0.5%、好ましくは多くとも0.4%、より好ましくは多くとも0.3%、そしてさらにより好ましくは多くとも0.2%;
Fe:多くとも0.5%、好ましくは多くとも0.4%、より好ましくは多くとも0.3%、さらにより好ましくは多くとも0.25%;
Cu:0.40~1.2%、好ましくは0.45~1.1%、より好ましくは0.5~1.0%;
Mn:0.8~1.7%、好ましくは0.9~1.6%、より好ましくは1.0~1.5%;
Mg:多くとも0.04%、好ましくは多くとも0.03%、より好ましくは多くとも0.02%;
Zn:多くとも0.30%、好ましくは多くとも0.25%、より好ましくは多くとも0.20%、そしてさらにより好ましくは0.05%未満;
Ti:多くとも0.30%、好ましくは多くとも0.25%、より好ましくは多くとも0.20%、さらにより好ましくは多くとも0.14%、そしてさらにより好ましくは多くとも0.12%;
残りはアルミニウムおよび不純物;
を含む。
【0033】
不純物は好ましくは、各々0.05%未満でかつ合計0.15%未満の割合で存在する。
【0034】
好ましくは、Tiの下限は0.05%以上である。
【0035】
好ましくは、第1の変形形態に係るコア層は、フラックス無しのろう付けではなく、削減された量のフラックスを伴うろう付けのために使用される。
【0036】
本発明の第2の実施形態によると、コア層の合金は、質量%単位で:
Si:多くとも0.5%、好ましくは多くとも0.4%、より好ましくは多くとも0.3%、そしてさらにより好ましくは多くとも0.2%;
Fe:多くとも0.5%、好ましくは多くとも0.4%、より好ましくは多くとも0.3%、さらにより好ましくは多くとも0.25%;
Cu:0.50~1.2%、好ましくは0.55~1.1%、より好ましくは0.6~1.0%;
Mn:0.8~1.7%、好ましくは0.9~1.6%、より好ましくは1.0~1.5%;
Mg:0.05~0.35%、好ましくは0.075~0.30%、より好ましくは0.1~0.25%;
Zn:多くとも0.30%、好ましくは多くとも0.25%、より好ましくは多くとも0.20%、そしてさらにより好ましくは0.05%未満;
Ti:多くとも0.30%、好ましくは多くとも0.25%、より好ましくは多くとも0.20%、さらにより好ましくは多くとも0.14%、そしてさらにより好ましくは多くとも0.12%;
残りはアルミニウムおよび不純物;
を含む。
【0037】
不純物は好ましくは、各々0.05%未満でかつ合計0.15%未満の割合で存在する。
【0038】
好ましくは、Tiの下限は0.05%以上である。
【0039】
本発明の第3の実施形態によると、コア層の合金は、質量%単位で:
Si:多くとも0.8%、好ましくは多くとも0.7%、より好ましくは多くとも0.6%;
Fe:多くとも0.5%、好ましくは多くとも0.4%、より好ましくは多くとも0.3%;
Cu:0.20~0.95%、好ましくは0.25~0.8%、より好ましくは0.3~0.7%;
Mn:1.3~2.2%、好ましくは1.4~2.1%、より好ましくは1.5~2.0%;
Mg:0.2~0.8%、好ましくは0.3~0.7%、より好ましくは0.4~0.6%;
Zn:多くとも0.30%、好ましくは多くとも0.25%、より好ましくは多くとも0.20%、そしてさらにより好ましくは0.05%未満;
Ti:多くとも0.30%、好ましくは多くとも0.25%、より好ましくは多くとも0.20%、さらにより好ましくは多くとも0.14%、そしてさらにより好ましくは多くとも0.12%;
残りはアルミニウムおよび不純物;
を含む。
【0040】
不純物は好ましくは、各々0.05%未満でかつ合計0.15%未満の割合で存在する。
【0041】
好ましくは、Tiの下限は0.05%以上である。
【0042】
[中間層]
本発明に係るブレージングストリップまたはシートは、少なくとも1つの中間層を含むことができる。この中間層の合金は、概して、コア合金の耐腐食性を改善することを目的とする、いわゆる犠牲合金である。
【0043】
中間層の合金は、例えば、3xxx、1xxxさらには7xxxタイプのものであり得る。例えば、合金AA3003、AA3207さらにはAA1050を挙げることができる。
【0044】
好ましくは、中間層は、Znを含まないか、あるいは0.05%未満の量で不純物としてZnを含む。
【0045】
しかし一変形形態によると、中間層はZn、好ましくは2質量%未満のZn、より好ましくは1質量%未満のZnを含むことができる。
【0046】
好ましくは、中間層中のMgの量は、0.10質量%未満、好ましくは0.075質量
%未満、より好ましくは0.05質量%未満である。
【0047】
一例として、前述の合金は、質量%で以下の組成を有する;
- AA3003:0.6%未満のSi;0.7%未満のFe;0.05~0.20%のCu;1.0~1.5%のMn;0.10%未満のZn;各々0.05%未満でかつ合計0.15%未満の不純物;残りはAl。
- AA3207:0.30%未満のSi;0.45%未満のFe;0.10%未満のCu;0.40~0.8%のMn;0.10%未満のMg;0.10%未満のZn;各々0.05%未満でかつ合計0.15%未満の不純物;残りはAl。
- AA1050:0.25%未満のSi;0.40%未満のFe;0.05%未満のCu;0.05%未満のMn;0.05%未満のMg;0.05%未満のZn;0.03%未満のTi;0.05%未満のV;各々0.03%未満の不純物;少なくとも99.50%のAl。
【0048】
[ろう付け層]
本発明に係るストリップまたはシートは、少なくとも1つのろう付け層を含む。本発明に係るブレージングストリップまたはシートのろう付け層の合金は、好ましくは4xxxタイプのものである。例えば、そして好ましくは、YおよびSnの任意添加およびBiの量の制限を伴うAA4045またはAA4343タイプの合金を挙げることができる。
【0049】
好ましくは、本発明に係るブレージングストリップまたはシートのろう付け層の合金は、多くとも0.03%、好ましくは多くとも0.02%のBiを含む。
【0050】
好ましくは、本発明に係るブレージングストリップまたはシートのろう付け層の合金は、0.015~0.08%、好ましくは0.02~0.065%のSnを含む。
【0051】
好ましくは、本発明に係るブレージングストリップまたはシートのろう付け層の合金は、0.015~0.08%、好ましくは0.02~0.065%のYを含む。
【0052】
好ましくは、ろう付け層の合金は、質量%単位で:
Si:7~13%、好ましくは8~12%、より好ましくは9~11%;
Fe:多くとも0.8%、好ましくは多くとも0.7%、より好ましくは多くとも0.6%;
Cu:多くとも0.45%、好ましくは多くとも0.35%、より好ましくは多くとも0.25%;
Mn:多くとも0.20%、好ましくは多くとも0.15%、より好ましくは多くとも0.10%;
Mg:多くとも0.15%、好ましくは多くとも0.10%、より好ましくは多くとも0.05%、さらにより好ましくは多くとも0.025%;
Zn:多くとも0.20%、好ましくは多くとも0.15%、より好ましくは多くとも0.10%;
Ti:多くとも0.20%、好ましくは多くとも0.15%、より好ましくは多くとも0.10%;
Bi:多くとも0.04%、好ましくは多くとも0.03%、より好ましくは多くとも0.02%;
Y:0.01~0.10%、好ましくは0.015~0.08%、より好ましくは0.02~0.065%;
Sn:0.01~0.10%、好ましくは0.015~0.08%、より好ましくは0.02~0.065%;
残りはアルミニウムおよび不純物;
を含む。
【0053】
不純物は好ましくは、各々0.05%未満でかつ合計0.15%未満の割合で存在する。
【0054】
[ストリップまたはシート]
本発明に係るストリップまたはシートは、複数の層を伴う、そして詳細には2、3、4または5層を伴う構成を有することができる。
【0055】
2層を伴う構成は、一方の面上にのみろう付け層がクラッドされたコアを含む。
【0056】
3層を伴う構成は、以下のものを含む:
- 両方の面上にろう付け層がクラッドされたコア層;
- または一方の面上にのみ中間層およびろう付け層がクラッドされたコア層;
- または第1の面上にろう付け層がクラッドされ、もう一方の面上には、耐腐食性を改善するための、例えば1xxxまたは7xxxタイプの合金製の保護層がクラッドされているコア層。
【0057】
4層を伴う構成には、以下のものを含む:
- 第1の面上に中間層およびろう付け層がクラッドされ、もう一方の面上にろう付け層がクラッドされたコア層;
- または、第1の面上に中間層およびろう付け層がクラッドされ、もう一方の面上には、耐腐食性を改善するための、例えば1xxxまたは7xxxタイプの合金製の保護層がクラッドされたコア層。
【0058】
5層を伴う構成は、両方の面上に中間層およびろう付け層がクラッドされたコア層を含む。
【0059】
好ましくは、本発明に係るストリップまたはシートは、上述の層、すなわち、コア層、1つまたは2つのろう付け層、場合によっては1つまたは2つの中間層そして場合によっては保護層、以外の層を含まない。
【0060】
好ましくは、ろう付け層は本発明に係るストリップまたはシートの最も外側の層であ
って、すなわち他のいかなる層もこの層を被覆せず、好ましくは、これは別の層によって被覆されていない1つの面を有する。
【0061】
第1の変形形態によると、本発明に係るストリップまたはシートは、中間層を含まない。この変形形態は、詳細には、電気自動車用のラジエータ、水凝縮器またはバッテリ冷却器の分野における応用に適合している。
【0062】
第2の変形形態によると、本発明に係るストリップまたはシートは、少なくとも1つの中間層を含む。この変形形態は詳細には、チャージエアクーラ(CAC)または蒸発器の分野における応用に適合している。CACは、概して、特に酸腐食に耐えなければならないディーゼルエンジンの排ガス再循環(EGR)ループ内に位置している。これらの交換器は英語で「Water Charge Air Cooler」または「water CAC」とも呼ばれている。
【0063】
好ましくは、耐腐食性を改善するための保護層は、Znを含まないか、あるいは0.05%未満の質量比率で不純物としてZnを含む。
【0064】
好ましくは、耐腐食性を改善するための保護層は、AA7xxxタイプの合金、例えばAA7072タイプの合金などの、好ましくは0.1%未満のMn質量比率を有する合金である。
【0065】
一変形形態によると、本発明に係るストリップまたはシートは、耐腐食性を改善するための保護層を含まない。
【0066】
上述のような層は、場合によって均質化され得る。
【0067】
これらの層は、概して、当業者にとって公知の実践方法にしたがって、共圧延によって、熱間圧延および/または冷間圧延により組立てられる。熱間圧延の前に、ストリップまたはシートは、当業者にとって公知の実践方法にしたがって再加熱される。このストリップまたはシートは場合によって、冷間圧延の前または最中に、中間焼鈍に付されるが、好ましくは中間焼鈍は無い。
【0068】
本発明に係るシートまたはストリップの最終焼鈍により、H24またはOの冶金学的質別を得ることが可能になり得る。
【0069】
本発明に係るストリップまたはシートは場合によって、当業者にとって公知の実践方法にしたがって、酸性またはアルカリ性溶液を用いてピックリングされてよい。しかしながら、本発明は、フラックス無しのろう付けまたは削減されたフラックス量を伴うろう付けの品質を低下させることなく、ピックリングを省略することを可能にする。好ましくは、本発明に係るストリップまたはシートは、ピックリングされない。
【0070】
[ろう付け]
ろう付けは、フラックス無し、または削減された量のフラックスを伴って、例えば窒素またはアルゴンなどの制御雰囲気下で、ろう付け合金の融解を可能にしコア合金の溶体化処理もまた保証する580~620℃の温度で、行なうことができる。
【0071】
有意な量(例えば0.2質量%超)のMgを有するコア合金については、例えばパルスエアによる急速冷却を推奨することができ、概して、その後、組立て済み部品の80~250℃の温度での時効が続く。
【0072】
本発明に係るストリップまたはシートは、フラックス無しのろう付け専用、またはそうでない広範な炉内で、ろう付け可能であるという点に留意されたい。好ましくは、使用される炉は、フラックス無しのろう付け専用である。
【0073】
同様に、本発明は、制御雰囲気下(例えば20ppm未満の酸素を含む)のろう付け炉内か、あるいはいわゆる劣化雰囲気を有する(例えば最大50、100さらには150ppmの酸素を含む)炉内で使用可能である、という点にも留意されたい。好ましくは、ろう付け炉は、20ppm未満の酸素を含む制御雰囲気下で作動する。好ましくは、ろう付け炉は、-20℃未満、より好ましくは-30℃未満、さらにより好ましくは-35℃未満、そしてさらにより好ましくは-40℃未満の露点で作動する。
【実施例】
【0074】
[1.削減された量のフラックス(5g/m2)を伴うろう付け]
以下の構成を有する4つの工業用コイルを製作した:ろう付け層4xxx(全厚みの7.5%)/中間層AA3003(全厚みの10%)/コア層3xxx-1/ろう付け層4xxx(全厚みの7.5%)。AA3003製および4xxx製の層を、均質化しなかった。コア層を、580~620℃の温度で、1~24時間均質化した。シートを、合計2.3mmの厚みまで熱間圧延し、その後、合計480μmの厚みまで、中間焼鈍無しで冷間圧延した。冶金学的質別Oまで、400℃未満の温度で、最終焼鈍を行なった。使用した異なる層の組成を、質量%で下表1に示す。
【0075】
【0076】
ろう付け前に4045-1をベースとするろう付け層を含む構成の1つについて、硫黄-フッ素溶液(H2SO48g/l;HF0.4g/l、50℃)を用いたピックリングステップを行なった。ピックリングは、10m/分の速度で前進するライン上で実施した。サンプルの表面を清浄し、次に上述の硫黄-フッ素溶液を噴霧することによってピックリングした。最後に、サンプルを脱イオン水で洗い流した。
【0077】
その後、削減された量のフラックスを伴うろう付け条件下でのろう付けの品質という観点から、異なる構成を試験した。約1.3~1.8g/m2のNocolok(登録商標)フラックスを用いて、サンプルの一方の面上にのみフラックスを使用した。したがって完全な1つのサンプルのための平均フラックス量は、約0.65~0.8g/m2のフラックスであった。
【0078】
プレス部品のろう付けをシミュレーションすることを可能にする以下のプロトコルにしたがって、ろう付け試験を実施した。このために、
図1に例示した通りの2本の長手方向ラインを追加するために、潤滑剤の無い状態で50mm×60mmの薄板をプレス加工した。プレス加工の後、薄板をアセトン溶液で脱脂し、その後空気乾燥した。同じ組成を有する2枚のプレス加工した薄板を次に、
図1に例示したように、アセンブリの一端部に位置づけしたチョックを伴って、ステンレス鋼製の留めピンを用いて互いに固定した。チョックは鋼製であり、長さ60mm、幅5mm、厚み0.25mmであった。
図1において、参照番号1は、プレス加工された薄板に対応し、参照番号3はプレス加工した2本のライン、参照番号4は留めピン、参照番号5はステンレス鋼製チョックに対応する。このように組立てられた薄板を、削減された量のフラックスおよび5ppm未満に維持された量の酸素を用いてろう付けした。ろう付けサイクルは、以下の通りであった:
- 約24~28℃/分の勾配での約575~580℃までの第1の温度上昇;
- 約2.5℃/分の勾配での約600℃までの第2の温度上昇;
- 600℃+/-2℃で3分間の維持;
- 約24~28℃/分の勾配での約400℃までの冷却。
【0079】
その後、各ろう付け継手の長さを測定した。各構成について、3つのサンプルを製作した。各サンプルについて、プレス加工された2本の長手方向ラインのところで2つの測定を行なった。
【0080】
ろう付け試験の結果は、下表2に提示されている。
【0081】
【0082】
上記表2によると、本発明に係るろう付け層(組成-1)は、削減された量のフラックスを用いて良質のろう付けを保証することができる。試験された他の組成の場合はそうではなかったが、ただし基準-2については他の基準よりはわずかに優れているが、それでもなお本発明に係る組成ほどは優れておらず、ろう付けの前にピックリングステップを必要としたことに留意されたい。
【0083】
したがって、本発明に係るブレージングストリップまたはシートは、削減された量のフラックスを伴うろう付けを実施する前のピックリングステップの省略を可能にする。
【0084】
[2.フラックス無しのろう付け]
ろう付け層の性質、コアの性質および冶金学的質別を変動させることにより、異なる構成を実験室規模で試験した。各構成は、各々全厚みの7.5%を占めるろう付け層で両方の面がクラッドされたコア層を含んでいた。全厚みは400μmであった。
【0085】
サンプルを、以下の方法で作製した:
- 圧延前の均質化(50℃/時の勾配での温度上昇;8時間600℃での維持;480℃までの15℃/時の勾配での冷却;その後、炉からの取出しと周囲空気での冷却);
- 厚み55mmから3.6mmへの熱間圧延;
- 厚み3.6mmから0.4mmへの冷間圧延;
- 質別Oのサンプルについて:質別Oの再結晶化(360℃までの50℃/時の勾配での温度上昇;360℃で2時間の維持;空気冷却);
- 質別H24のサンプルについて:質別H24の再結晶化(320℃までの50℃/時の勾配での温度上昇;320℃で1時間の維持;空気冷却)。
【0086】
使用した異なる層の組成を、質量%で下表3に示す。
【0087】
【0088】
その後、プレス部品のろう付けのシミュレーションを可能にする以下のプロトコルにしたがって、フラックス無しでのそのろう付け品質の観点から各構成を試験した。このために、
図2に例示した通りの2本の長手方向ラインを追加するために、潤滑剤の無い状態で50mm×60mmの薄板をプレス加工した。プレス加工の後、薄板をアセトン溶液で脱脂し、その後空気乾燥した。プレス加工した各々の薄板を次に、プレスを用いて予め平坦化したプレス加工済薄板と同じ組成を有する平坦な薄板に固定した。2枚の薄板を、
図2に例示したようなステンレス鋼製の留めピンを用いて共に固定した。
図2において、参照番号1は、プレス加工された薄板に対応し、参照番号2は平坦な薄板に対応し、参照番号3はプレス加工した2本のライン、参照番号4は留めピンに対応する。このように組立てられた薄板を、フラックスの添加無しで、かつ5ppm未満に維持された量の酸素を用いてろう付けした。ろう付けサイクルは、以下の通りであった:
- 約24~28℃/分の勾配での約575~580℃までの第1の温度上昇;
- 約2.5℃/分の勾配での約600℃までの第2の温度上昇;
- 600℃+/-2℃で3分間の維持;
- 約24~28℃/分の勾配での約400℃までの冷却。
【0089】
その後、各ろう付け継手の長さを測定した。各構成について、3つのサンプルを製作した。各サンプルについて、プレス加工された2本の長手方向ラインのところで2つの測定を行なった。
【0090】
試験した構成ならびにろう付け試験の結果は、下表4に提示されている。
【0091】
【0092】
上表4に提示された結果によって、本発明に係るシートまたはストリップが、基準組成の場合よりもはるかに優れた良質のフラックス無しのろう付けを、複数のコア合金の性質および複数の冶金学的質別(実施例中ではOまたはH24)で実現できるようにするということを示すことができる。
【0093】
基準-5のサンプルは、ピックリングし、その後同じろう付け試験に付した。この構成(図示せず)も同様に、良質のろう付けを得ることを可能にした。同様に、基準サンプルは、ろう付けに関して満足のいく結果を得るためにピックリングステップを必要とするように思われる。したがって、本発明に係るブレージングストリップまたはシートは、フラックス無しのろう付けを実施する前のピックリングステップの省略を可能にする。
【0094】
[3.腐食性]
基準-7、基準-7’、組成-2および組成-3という4つの構成を、それらの腐食性という観点から比較した。基準-7、組成-2および組成-3の構成は、前出の表4中に記載のものに対応している。基準-7’の構成は、基準-7の構成に対応しているが、冶金学的質別Oではなく質別H24であった。
【0095】
腐食性は、以下のプロトコルを用いて決定した:
- 各構成について、アセトンを染み込ませた白色の吸収紙で予め脱脂した126mm(L方向)×90mm(TL方向)という寸法のサンプルを調製する;
- 試験対象でない面ならびに4つの縁部を、約0.5cmの幅にわたり、透明なビニル粘着テープ(例えば3Mビニル764タイプのもの)で保護する;
- 試験対象面を、アセトンを染み込ませた吸収紙で清浄する;
- このように準備したサンプルを、水平方向に対して約60°傾斜させたラック上に置く;
- 各サンプルについて、特に、49℃の温度で30分間の噴霧段階および1時間30分の湿潤段階を交互に含む、ASTM G85 A3規格にしたがったSWAAT試験(Sea Water Acidified Acetic Test)を実施する。
【0096】
各サンプルについて、全試験期間中つまり35日全体にわたり、毎日孔の数を読取った。孔は、
図3に例示されている通り、試験対象ではない面上に貼付した接着テープに膨れを形成したため、各サンプルの背面で目に見えた。
図3において、参照番号6はサンプルに対応し;参照番号7は接着テープに対応し;参照番号8は孔に対応し;参照番号9は、孔によって形成された膨れに対応する。
【0097】
孔の数の調査結果は、試験日数に応じた1dm
2あたりの孔の数のグラフの形で、
図4において提示されている。参照番号10は、基準-7’のサンプルに対応し;参照番号11は、基準7のサンプルに対応し;参照番号12は、組成-3のサンプルに対応し;参照番号13は、組成-2のサンプルに対応する。
【0098】
図4によると、孔の数が、本発明に係るサンプル、組成-3および組成-2の場合に比べて、基準サンプル、基準-7’および基準-7の場合の方がはるかに多いことが見てとれる(本発明に係るサンプルについては1dm
2あたり10個未満の孔に対し、基準サンプルについては1dm
2あたり40個超の孔)。
【0099】
基準サンプルについては、孔によってひき起こされる膨れの結集が互いに近接し過ぎているために計数が不可能になったことから、35日間の試験が終了する前に孔の計数を停止せざるを得なかった、という点に留意されたい。
【0100】
一方で、ピックリング有りとピックリング無しの解決法を比較するためにも試験を実施した。得られた結果は、同等であった。したがって、本発明には、ピックリングという補足的ステップを省略できるという利点がある。
【符号の説明】
【0101】
1 プレス加工された薄板
2 平坦な薄板
3 プレス加工した2本のライン
4 留めピン
5 ステンレス鋼製チョック
6 サンプル
7 接着テープ
8 孔
9 孔によって形成された膨れ
10 基準-7’のサンプル
11 基準7のサンプル
12 組成-3のサンプル
13 組成-2のサンプル
【国際調査報告】