(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-22
(54)【発明の名称】全視野光干渉断層撮影撮像方法
(51)【国際特許分類】
G01B 9/02091 20220101AFI20230215BHJP
A61B 3/10 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
G01B9/02091
A61B3/10 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537285
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-17
(86)【国際出願番号】 EP2020087156
(87)【国際公開番号】W WO2021123257
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518436250
【氏名又は名称】パリ シアンス エ レットル
(71)【出願人】
【識別番号】510309020
【氏名又は名称】セントレ ナショナル デ ラ リシェルシェ サイエンティフィック(セ・エン・エル・エス)
(71)【出願人】
【識別番号】517124642
【氏名又は名称】エコール シュペリュール ドゥ フィジーク エ ドゥ シミ アンドゥストゥリエール ドゥ ラ ヴィーユ ドゥ パリ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】マズリン,ヴァチェスラフ
(72)【発明者】
【氏名】バラカル ド メス,ペドロ フランシスコ
(72)【発明者】
【氏名】ボッカラ,アルベール クロード
【テーマコード(参考)】
2F064
4C316
【Fターム(参考)】
2F064AA09
2F064CC01
2F064CC04
2F064DD01
2F064DD08
2F064EE01
2F064FF03
2F064FF07
2F064GG13
2F064GG20
2F064GG22
2F064GG52
2F064GG68
2F064HH03
2F064HH08
2F064JJ15
4C316AA03
4C316AA24
4C316AB02
4C316AB11
4C316FA14
4C316FY05
(57)【要約】
【要約】
全視野光干渉断層撮影(FFOCT)撮像方法であって、FFOCTデバイスと、撮像される関心層(115)を含む試料とを備えるシステムを使用し、該FFOCTデバイスは、インコヒーレントな光源(101)と、撮像器(114)と、試料アーム(107)と基準アーム(108)を定義するビームスプリッタ(103)を備え、該方法は、関心層から発生する関心光を含む試料光と基準アーム(108)から移動する基準光を生成するステップと、ビームスプリッタ(103)中で結合された基準光と試料光から画像を取得するステップと含み、試料アーム(107)と基準アーム(108)のうちの少なくとも一つは、光路長の横方向変化分布を修正する光学曲率補償器を含み、基準光及び撮像器(114)に入射した関心光が移動した光路長の横方向変化分布を一致させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料内のある深さにおける関心層の全視野光干渉断層撮影(FFOCT)二次元正面画像を取得するためのFFOCT撮像方法であって、
前記FFOCT撮像方法は、FFOCTデバイスと、撮像される関心層を含む試料とを備えるシステムを使用し、
前記FFOCTデバイスは、空間的にインコヒーレントな光源と、撮像器と、試料アームと基準アームを定義するビームスプリッタであって、前記試料は前記試料アームの端部に配置されている、ビームスプリッタとを含み、
前記方法は、
前記インコヒーレントな光源によって放出される照明光で、照明の瞬間に試料アームと基準アームを同時に照らすことにより、試料光路に沿って前記試料から前記試料アームの前記端部の中へ移動する試料光と、基準光路に沿って前記基準アーム中をビームスプリッタへ移動する基準光とを生成するステップと、
前記ビームスプリッタ中で結合された基準光と試料光から、前記撮像器を使用して関心層の二次元正面FFOCT画像を取得するステップであって、前記試料光は、前記照明の瞬間において放出された前記照明光に由来し、かつ前記試料の前記関心層から発生する関心光を含み、前記関心光は、前記試料アームに入ると第1の光路長を移動しており、前記第1の光路長は、横方向変化分布の湾曲プロファイルを有し、また、前記撮像器に入射する基準光は、第2の光路長を移動している、取得するステップを含み、
前記試料アームと前記基準アームのうちの少なくとも一つは、光路長の横方向変化分布を修正する光学曲率補償器を含み、前記第1の光路長の横方向変化分布の湾曲プロファイルを補償するので、前記撮像器に入射する前記基準光が移動する前記基準光路長の前記横方向変化分布と前記撮像器に入射する前記関心光が移動する前記第2の光路長の横方向変化分布は一致し、その結果、前記関心層から発生する前記関心光は、前記基準光と干渉し、前記撮像器は、前記撮像器の視野にわたって前記関心層を撮像し、前記撮像器によって取得された前記二次元正面FFOCT画像を形成することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第1の光路長の前記横方向変化分布の湾曲プロファイルは、4ミリメートルから50ミリメートルの間に含まれる絶対曲率半径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記撮像器に入射した前記基準光が移動する前記基準光路長の前記横方向変化分布と、前記撮像器に入射した前記関心光が移動する前記第2の光路長の前記横方向変化分布とは、2ミリメートル未満の絶対曲率半径の差を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記基準アームが、前記撮像器に入射する前記基準光が移動する前記基準光路長の前記横方向変化分布を修正する光学曲率補償器を含み、前記光学曲率補償器は、湾曲反射面を有する湾曲反射器であり、前記湾曲反射器は、ビームスプリッタに対向する前記基準アームの端部に配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記反射器は、25%未満の反射率を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記反射器の前記湾曲反射面は、光学レンズである、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記反射器の前記湾曲反射面は、変形可能な鏡である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項8】
前記光学曲率補償器は、屈折率を有し、前記基準光路または前記試料光路の方向に厚さを有する材料の板である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記光学曲率補償器は、一対のプリズムを含み、各プリズムは、光路に対して非直角傾斜角度を形成する傾斜面を有し、前記一対のプリズムの前記非直角傾斜角度は、互いに反対であり、前記プリズムは互いに平行移動可能である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記光学曲率補償器は、構成可能な光学曲率補償器であり、前記FFOCTデバイスは、取得した画像を分析し、光学曲率補償器の構成を変更するためのコマンドを導出するように構成された制御ループを含み、各構成は、光路長の前記横方向変化分布の異なる修正を定義する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記撮像器を使用して前記ビームスプリッタ中で結合された基準光と試料光から前記関心層の第1の二次元正面FFOCT画像を取得するステップと、
前記第1の光路長の横方向変化分布の前記湾曲プロファイルが前記こうが光学補償器によって補償されているかどうかを判定するステップと、
前記第1の光路長の前記横方向変化分布の前記湾曲プロファイルが前記光学補償器によって補償されていなかったと判定された場合、前記第1の光路長の前記横方向変化分布の前記湾曲プロファイルをそうするように修正するステップと、
前記撮像器を使用して前記ビームスプリッタ中で結合された基準光と試料光から前記関心層の第2の二次元正面FFOCT画像を取得するステップとを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
全視野光干渉断層撮影(FFOCT)デバイスであって、前記デバイスは、
照明の瞬間に照明光を発するように構成された空間的にインコヒーレントな光源と、
関心層の二次元正面FFOCT画像を取得するように構成された撮像器と、
試料アームと基準アームを定義するビームスプリッタであって、前記試料は、前記試料内のある深さにおける前記関心層を含み、前記試料アームの端部に配置される、ビームスプリッタとを備え、
前記試料アームと前記基準アームのうちの少なくとも一つは、光路長の横方向変化分布を修正するように構成された光学曲率補償器を含み、前記照明の瞬間において放出された前記照明光に由来し、かつ前記試料の前記関心層から発生する関心光が前記試料アームに入って移動した前記第1の光路長の横方向変化分布の湾曲したプロファイルを補償することを特徴とし、また前記FFOCTデバイスは、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成され、前記試料内のある深さにおける前記関心層の二次元正面FFOCT画像を取得することを特徴とする、FFOCTデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光干渉断層撮影(OCT)撮像技術の領域に関するものであり、より正確には、新しいタイプの全視野OCT撮像技術に関する。このプロジェクトは、HELMHOLTZ助成金協定第610110号に基づき、欧州連合の第七フレームワークプログラムから資金提供を受けている。
【背景技術】
【0002】
全視野OCT(FFOCT)は広帯域光干渉顕微鏡に基づいている。断層画像は、CCDカメラやCMOSカメラなどの撮像器で記録された干渉画像の組み合わせによって得られる。従来のOCTが超音波撮像のようにBモード(軸方向)画像を生成するのに対し、全視野OCTは正面(横)方向の断層画像を取得する。より正確には、干渉計によって干渉画像が作成され、通常はアクチュエータ(通常は基準アームのピエゾ素子駆動鏡)によって経路長変調が行われる。CCDカメラによって取得されたこれらの画像は、位相シフト干渉法によって後処理(またはオンライン)で結合され、使用されるアルゴリズムに応じて、変調周期ごとに数枚(通常は2枚または4枚)の画像が取得される。
【0003】
このように、「正面」断層画像は、広視野照明によって生成される。これは干渉計のLinnik配置によって得ることができ、顕微鏡対物レンズを両腕に使用する。さらに、光源の時間的コヒーレンスは古典的なOCT(すなわち広いスペクトル)のように低いままでなければならないが、空間的にコヒーレントな光源を使用した場合に発生するクロストークを避けるために、空間的コヒーレンスも低くなければならない。全視野OCTは、超高解像度画像(~1μm)を提供するための従来のOCTの代替方法であり、例えば、複雑な超短パルスレーザーベースの光源の代わりに単純なハロゲンランプを使用する。全視野OCTには、いくつかの特定の利点がある。FFOCTは、点ごとのまたは横線ごとのスキャンなしで「正面」画像を取得するので、FFOCTは横スキャンの人工物に影響されない。FFOCTは、高開口数対物レンズを使用することにより、従来のOCT(10μmオーダー)よりも高い横方向解像度(1μmオーダー)を提供する。これは、生体試料の微視的な細胞や組織構造を調べるのに特に有用である。
【0004】
全視野OCT撮像技術は、例えば、Wolfgang DrexlerとJames G.Fujimotoが編集者を務め、2009年にSpringerから出版された書籍「Optical Coherence Tomography-Technology and Applications」から取り上げられたA.DuboisとC.Boccaraによる記事「Full-field optical coherence tomography」で説明されている。これはフランスの特許出願FR2817030にも開示されている。
【0005】
図1は、現在使用されている全視野OCTの例を示している。発光ダイオード(LED)のような空間的・時間的にインコヒーレントな光源1は、第1の光線2を放出し、それがビームスプリッタ3に送られる。ビームスプリッタは、入ってくる第1の光線を第2の光線5と第3の光線6に分割する。第2の光線5は試料アーム7に、第3の光線は基準アーム8に送られる。
【0006】
一般的なFFOCT実験では、設定は通常、干渉計の2つのアームで同じ対物レンズを使用し、光学的に対称である。描かれた例では、両アーム7、8には、同様の光学特性を持つ顕微鏡対物レンズ9、10が含まれている。
【0007】
試料アーム7内の顕微鏡対物レンズ9は、第2の光線5を試料11の一部(ここでは人間の目の角膜)に集光し、試料11内の異なる深さから反射された試料光を採取して、ビームスプリッタ3に透過させる。基準アーム8内の顕微鏡対物レンズ10は、第3の光線6を平坦基準鏡12に集光し、平坦基準鏡12から反射された基準光を採取して、ビームスプリッタ3に透過させる。
【0008】
試料11の異なる層からの試料光と平坦基準鏡12からの基準光はビームスプリッタ3で再結合し、チューブレンズ13によって画像を取得するカメラ14上に集光される。試料光と基準光の組み合わせにより、カメラ画像平面内には、カメラ14によって二次元正面画像内に取得される干渉が発生する。
【0009】
しかし、干渉は試料光と基準光の間の必要な経路相関によって条件づけられる。画像視野に沿ったこの経路相関は、基準光と同様の経路を示す試料光の一部に対してのみ満たされ得る。
【0010】
試料光は、試料11の異なる深さから発生するため、異なる経路長の光成分で構成される。経路長が異なると、試料光が発生する深度に応じて光路長が変化する。基準光は、基準経路長を移動したものであり、コヒーレンスゲートの厚さの範囲内で基準経路長と等しい経路長を移動した試料光とのみ干渉することにより、基準光と干渉する試料光の原点に対応する干渉試料セクションが試料内に定義される。コヒーレンスゲートは、干渉が起こる基準光と試料光の光路長の間の一致経路長を指定する。
【0011】
したがって、基準アーム8によって定義される基準経路長は、干渉試料セクションの深度を定義する。それ故、全視野OCTは光学分割法として定義することができる。なぜならば、全視野OCTは、干渉試料セクションのみから発生する試料光を取り出すことができるからである。干渉試料セクションの厚さは、光源のスペクトル帯域幅によって決まる。光源のスペクトルが広ければ広いほど、干渉試料セクションは細くなる。
【0012】
しかし、カメラ14は、ビームスプリッタ3からのすべての試料光、すなわち干渉試料セクションからの干渉光を採取し、試料11の残り(光学軸Zにおける干渉試料セクションの前または後ろのセクション)からの非干渉光を採取する。このような取得された画像は、干渉試料セクションと、干渉試料セクションの近くにある試料の他のセクションの重ね合わせを含み、ぼやけて見える。したがって、試料の残りの部分から発生する非干渉光を排除する必要がある。
【0013】
これは通常、変調された干渉位相を持つ、同じ試料11の一連のいくつかの画像(通常は2~5個の画像)を取得することによって達成される。基準鏡12は、例えば、基準鏡12の位置の振動を発生させるピエゾ素子を使用して平行移動させ、それによって基準経路長、ひいては干渉位相を変調する。取得された各画像は特定の干渉位相に対応する。取得した一連の画像を後処理すると、非干渉光を除去することができ、得られた全視野OCT画像は、試料11の特定の関心部分から発生した干渉試料光のみを明らかにする。試料11の関心部分の二次元最終正面画像が得られる。
【0014】
FFOCTの現在の二次元撮像スキームは平面基準鏡を使用しており、その結果、基準ビームは平面経路プロファイルを持つことになる。結果として、試料光の干渉部分は、試料から来る試料ビーム内の干渉面に対応し、試料の平坦スライスから発生する。この操作方法は、例えば皮膚や切除された組織のように、平坦な表面あるいは平坦化され得る表面など、関心のある平坦な試料層を撮像するのに便利である。
【0015】
しかし、関心のある試料層が平坦でなく平坦化できない場合、大きな問題が発生する。これは特に生体内の眼撮像に対して当てはまり、ここで、干渉計の対称性が2つのアームの間で破れたときに、試料を平坦化することはできず、関心のある層のほとんどが平坦でないか、平坦でないように見える。例えば、ヒトの角膜は大きな曲率(曲率半径約7mm)を示す準球形の構造でできており、FFOCTの正面セクションには各角膜層の視野のごく一部しか表示されない。
図2aは、角膜の断面図を模式的に示しており、前角膜(上)と後角膜(下)の間の角膜層の重ね合わせを示している。クロスハッチ層は、撮像される関心層20である。太線は、FFOCTで撮像された干渉平面21を表している。関心層20の湾曲した性質により、干渉平面21は関心層20に部分的にしか含まれず、関心層20以外の角膜層22、23もまた干渉平面21と交差する。
図2bは、取得された最終画像を概略的に示しており、それは干渉平面21と角膜層との間の交差部に相当する。関心層20は、縮小された表面領域上の最終的な画像の中心に円盤の形で現れる。最終的な画像の周辺部は他の角膜層22、23を示している。したがって、関心層20の有用な視野は、関心層20の湾曲した性質により制限される。この構成の例として、
図2cは生体内角膜層の最終的なFFOCT画像を示す。角膜層は湾曲しており、従って中央部ではある角膜層は円盤として良いコントラストで現れる一方、周辺部では他の角膜層が現れる。
【0016】
図3aおよび
図3bは、同様の問題を持つ別の構成を示している。
図3aは、
図2aと同様の方法で、角膜と干渉平面31の断面図を概略的に示している。今度は、干渉平面31の周辺部は関心層30と交差するが、干渉平面31の中心はその下の角膜層32と交差する。干渉する平面31の最外周は、別の上部角膜層33と交差する。
図3bは、
図2bと同様の方法で取得された最終的な画像を概略的に示している。今度は、関心層30は最終的な画像の中央には現れず、代わりにリングとして現れる一方、その下の角膜層32は中央に現れ、上部角膜層33は画像の外縁に現れる。この構成の例として、
図3cは、前角膜中の撮像された基底下神経叢の例を示しており、ここで、神経層は、最終的な画像内で明るいリング状の層として現れる。
図3dは、後角膜中の撮像された内皮層の例を示し、最終的な画像ではリングとしても現れる。
【0017】
また、FFOCTデバイスの対称性が破られた場合にも、試料が非平坦に見えることがある。例えば、網膜撮像では、試料アーム7から顕微鏡対物レンズを取り外すと、FFOCTデバイスの2つのアーム7、8の間に強い非対称性が生じる。仮に網膜が平坦であると仮定したとしても(視野が狭い場合はそうなる可能性がある)、その非対称性によって試料の光線の経路プロファイルは平坦ではなくなる。
【0018】
そのため、以前のFFOCT技術では、試料の関心層の有用な視野が減少した正面画像になる。
【発明の概要】
【0019】
本発明は、試料内のある深さにおける関心層の全視野光干渉断層撮影二次元正面画像を取得するためのFFOCT撮像方法であって、前記FFOCT撮像方法は、FFOCTデバイスと、撮像される関心層を含む試料とを備えるシステムを使用し、前記FFOCTデバイスは、空間的にインコヒーレントな光源と、撮像器と、試料アームと基準アームを定義するビームスプリッタであって、前記試料は前記試料アームの端部に配置されている、ビームスプリッタとを含み、前記方法は、前記インコヒーレントな光源によって放出される照明光で、照明の瞬間に試料アームと基準アームを同時に照らすことにより、試料光路に沿って前記試料から前記試料アームの前記端部の中へ移動する試料光と、基準光路に沿って前記基準アーム中をビームスプリッタへ移動する基準光とを生成するステップと、前記ビームスプリッタ中で結合された基準光と試料光から、前記撮像器を使用して関心層の二次元正面FFOCT画像を取得するステップであって、前記試料光は、前記照明の瞬間において放出された前記照明光に由来し、かつ前記試料の前記関心層から発生する関心光を含み、前記関心光は、前記試料アームに入ると第1の光路長を移動しており、前記第1の光路長は、横方向変化分布の湾曲プロファイルを有し、また、前記撮像器に入射する基準光は、第2の光路長を移動している、取得するステップを含み、前記試料アームと前記基準アームのうちの少なくとも一つは、光路長の横方向変化分布を修正する光学曲率補償器を含み、前記第1の光路長の横方向変化分布の湾曲プロファイルを補償するので、前記撮像器に入射する前記基準光が移動する前記基準光路長の前記横方向変化分布と前記撮像器に入射する前記関心光が移動する前記第2の光路長の横方向変化分布は一致し、その結果、前記関心層から発生する前記関心光は、前記基準光と干渉し、前記撮像器は、前記撮像器の視野にわたって前記関心層を撮像し、前記撮像器によって取得された前記二次元正面FFOCT画像を形成する、方法を提案する。
【0020】
本発明の本方法の他の好適な、しかし限定的ではない、態様は、以下のとおりであり、単独でも技術的に可能な組み合わせでもよい。
【0021】
前記第1の光路長の前記横方向変化分布の湾曲プロファイルは、4ミリメートルから50ミリメートルの間に含まれる絶対曲率半径(absolute radius of curvature)を有する。
【0022】
前記撮像器(114)に入射した前記基準光が移動する前記基準光路長の前記横方向変化分布(114)と、前記撮像器に入射した前記関心光が移動する前記第2の光路長の前記横方向変化分布(114)とは、2ミリメートル未満の絶対曲率半径の差を有する。
【0023】
前記基準アーム(108)が、前記撮像器(114)に入射する前記基準光が移動する前記基準光路長の前記横方向変化分布を修正する光学曲率補償器を含み、前記光学曲率補償器は、湾曲反射面を有する湾曲反射器(112)であり、前記湾曲反射器(112)は、ビームスプリッタ(103)に対向する前記基準アームの端部に配置されている。
【0024】
前記反射器は、25%未満の反射率を有する。
【0025】
前記反射器の前記湾曲反射面は、光学レンズである。
【0026】
前記反射器の前記湾曲反射面は、変形可能な鏡である。
【0027】
前記光学曲率補償器は、屈折率を有し、前記基準光路または前記試料光路の方向に厚さを有する材料の板である。
【0028】
前記光学曲率補償器は、一対のプリズムを含み、各プリズムは、光路に対して非直角傾斜角度を形成する傾斜面を有し、前記一対のプリズムの前記非直角傾斜角度は、互いに反対であり、前記プリズムは互いに平行移動可能である。
【0029】
前記光学曲率補償器は、構成可能な光学曲率補償器であり、前記FFOCTデバイスは、取得した画像を分析し、光学曲率補償器の構成を変更するためのコマンドを導出するように構成された制御ループを含み、各構成は、光路長の前記横方向変化分布の異なる修正を定義する
【0030】
本方法は、前記撮像器(114)を使用して前記ビームスプリッタ(103)中で結合された基準光と試料光から前記関心層(115)の第1の二次元正面FFOCT画像を取得するステップと、前記第1の光路長の横方向変化分布の前記湾曲プロファイルが前記光補償器によって補償されているかどうかを判定するステップと、前記第1の光路長の前記横方向変化分布の前記湾曲プロファイルが前記光補償器によって補償されていなかったと判定された場合、前記第1の光路長の前記横方向変化分布の前記湾曲プロファイルをそうするように修正するステップと、前記撮像器(114)を使用して前記ビームスプリッタ(103)中で結合された基準光と試料光から前記関心層(115)の第2の二次元正面FFOCT画像を取得するステップとを含んでもよい。
【0031】
本発明は、また、全視野光干渉断層撮影(FFOCT)デバイスであって、前記デバイスは、照明の瞬間に照明光を発するように構成された空間的にインコヒーレントな光源(101)と、関心層(115)の二次元正面FFOCT画像を取得するように構成された撮像器(114)と、試料アーム(107)と基準アーム(108)を定義するビームスプリッタ(103)であって、前記試料(111)は、前記試料(111)内のある深さにおける前記関心層(115)を含み、前記試料アームの端部に配置される、ビームスプリッタ(103)とを備え、前記試料アーム(107)と前記基準アーム(108)のうちの少なくとも一つは、光路長の横方向変化分布を修正するように構成された光学曲率補償器を含み、前記照明の瞬間において放出された前記照明光に由来し、かつ前記試料の前記関心層から発生する関心光が前記試料アーム(107)に入って移動した前記第1の光路長の横方向変化分布の湾曲したプロファイルを補償し、前記FFOCTデバイスは、本発明の方法を実行するように構成され、前記試料(111)内のある深さにおける前記関心層(115)の二次元正面FFOCT画像を取得する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明の他の態様、目的および利点は、非限定的な例として示され、添付の図面を参照して、その好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明を読むことによって、より明確になるであろう。
【0033】
【
図1】既に説明したように、以前に使用されていたFFOCTシステムの例を示している。
【
図2a】干渉する平面を介して関心のある湾曲層が撮像されると、有用な視野がどのように減少するかを示している。
【
図2b】干渉する平面を介して関心のある湾曲層が撮像されると、有用な視野がどのように減少するかを示している。
【
図2c】干渉する平面を介して関心のある湾曲層が撮像されると、有用な視野がどのように減少するかを示している。
【
図3a】干渉する平面を介して関心のある湾曲層が撮像されると、視野がどのようにリング状になるかを示している。
【
図3b】干渉する平面を介して関心のある湾曲層が撮像されると、視野がどのようにリング状になるかを示している。
【
図3c】干渉する平面を介して関心のある湾曲層が撮像されると、視野がどのようにリング状になるかを示している。
【
図4】本発明の可能な実施形態による、FFOCT撮像法を実施するための配置の例を示し、ここで、光学曲率補償器は、基準アーム内の反射器である。
【
図5】本発明の可能な実施形態による、FFOCT撮像法を実施するための配置の例を示し、ここで、光学曲率補償器は、基準アーム内の反射器である。
【
図6】光学板が光路長の横方向変化分布プロファイルをどのように修正するかを示した模式図である。
【
図7】光路長の横方向変化分布プロファイルの湾曲度と光学板の厚さの間の関係の一例を示したグラフである。
【
図8】本発明の可能な実施形態による、FFOCT撮像法を実施するための配置の例を示し、ここで、光学曲率補償器は、基準アーム内または試料アーム内のいずれかに配置された光学板である。
【
図9】本発明の可能な実施形態による、FFOCT撮像法を実施するための配置の例を示し、ここで、光学曲率補償器は、基準アーム内または試料アーム内のいずれかに配置された光学板である。
【
図10a】本発明の可能な実施形態による、コヒーレンスゲートの光湾曲を評価するための断面画像を決定する方法を示す。
【
図10b】本発明の可能な実施形態による、コヒーレンスゲートの光湾曲を評価するための断面画像を決定する方法を示す。
【
図11a】本発明の可能な実施形態による、横方向変化分布間の様々な一致度がキャプチャされたFFOCT画像内の可視干渉縞密度にどのように影響するかを示す例である。
【
図11b】本発明の可能な実施形態による、横方向変化分布間の様々な一致度がキャプチャされたFFOCT画像内の可視干渉縞密度にどのように影響するかを示す例である。
【
図11c】本発明の可能な実施形態による、横方向変化分布間の様々な一致度がキャプチャされたFFOCT画像内の可視干渉縞密度にどのように影響するかを示す例である。
【
図11d】本発明の可能な実施形態による、横方向変化分布間の様々な一致度がキャプチャされたFFOCT画像内の可視干渉縞密度にどのように影響するかを示す例である。
【
図11e】本発明の可能な実施形態による、横方向変化分布間の様々な一致度がキャプチャされたFFOCT画像内の可視干渉縞密度にどのように影響するかを示す例である。
【
図11f】本発明の可能な実施形態による、横方向変化分布間の様々な一致度がキャプチャされたFFOCT画像内の可視干渉縞密度にどのように影響するかを示す例である。
【
図12a】本発明の可能な実施形態による、光路長のある横方向変化分布を生じるある構成における一対のプリズムから構築された構成可能な光学曲率補償器を示す。
【
図12b】本発明の可能な実施形態による、光路長の別の横方向変化分布を生じる別の構成における一対のプリズムから構築された構成可能な光学曲率補償器を示す。
【
図13a】本発明の可能な実施形態による、光学曲率補償がない場合の網膜層の全視野撮像の結果を示す。
【
図13b】本発明の可能な実施形態による、光学曲率補償がある場合の網膜層の全視野撮像の結果を示す。
【
図14a】本発明の可能な実施形態による、光学曲率補償がある場合の基底下神経叢の撮像から得られる実際の最終的なFFOCT画像を示す。
【
図14b】本発明の可能な実施形態による、光学曲率補償がある場合の角膜内皮層の撮像から得られる実際の最終的なFFOCT画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
光路長は、光が通る経路の幾何学的長さと、光が通る媒質の平均屈折率の積である。光線は、光学軸に垂直な横断面における空間的な広がりのため、光学軸に沿ってのみ伝播するわけではなく、光路長は、当該横断面上の考慮された位置の関数として変化する場合がある。これを光路長の横方向変化分布と呼ぶ。光路長の横方向変化分布は、光路長の横断面上での変化によって定義されるプロファイルを持つ。
【0035】
横断面のすべての点で光路長が同じ場合、光路長のプロファイルは平面になる。光路長が当該横断面上の考慮された位置の関数として変化する場合、光路長のプロファイルは平面ではない。例えば、周辺点の光路長が中心における(すなわち光学軸上にある)点よりも長いか短い場合、光路長のプロファイルを湾曲として定義することができる。
図1に示すFFOCTシステムは、基準アームと試料アームの間の光路長の差に依存している。基準アームと試料アームの光路長の横方向プロファイルが同じ場合、光路差の横方向プロファイルは平坦に見える。
【0036】
図4、5、8、9を参照すると、システムはFFOCTデバイスと試料111を含む。前述のデバイスと同様に、FFOCTデバイスは、インコヒーレント光源101、撮像器114、試料アーム107および基準アーム108を規定するビームスプリッタ103を含む。基準アーム108は、ビームスプリッタ103から基準アーム108の端に配置された反射器112まで延び、基準光路を規定する。試料アーム107の試料端部125の前に試料111を配置し、ビームスプリッタ103から試料端部125まで試料アーム107を伸ばして、試料光路を定義する。
【0037】
光源101は空間的にインコヒーレントである、すなわち、光源の各点がこれらの点の間で位相がランダムに分布する波を放射する光源である。光源101は、一般的には20nmから150nmの幅(より好ましくは30nmから70nmの幅)、700nmから900nmの間、より好ましくは750nmから850nm付近の広いスペクトルを持つべきである。例えば、光源101はLEDであってもよいし、(ハロゲンランプとして)フィラメントを備えていてもよい。
【0038】
光源101は、照明の瞬間に照明光を発する。照明光は、ビームスプリッタ103に送られる第1の光線102を形成する。ビームスプリッタ103は、照射光の入射する第1の光線102を第2の光線105と第3の光線106に分割する。第2の光線105は試料アーム107に送られ、第3の光線106は基準アーム108に送られる。したがって、試料アーム107と基準アーム108は同じ照明光で同時に照明される。
【0039】
基準アーム108では、光はビームスプリッタ103から反射器112へ、反射器112からビームスプリッタ103へと基準光路に沿って進む。第二の光線105は、ビームスプリッタ103から試料アーム107の試料先端まで試料光路に沿って進む。光は試料アーム107から出て、試料111に入る。試料111に入射した第2の光線105からの試料光は、試料111内の異なる深さから試料アーム107の試料端部まで反射される。試料光には、試料111のさまざまな深さから発生し、したがって試料111のさまざまな層から発生する、照射瞬間に放出された照明光から得られた光が含まれている。
【0040】
撮像法は、特定の関心層115の画像を取得することを目的とする。関心層115は、試料111内の深さと形状によって定義される。通常、関心層115は、FFOCTデバイスの光学軸に対して、平坦ではなく、むしろ曲面を有する。例えば、試料111が目である場合、関心層115は、例えば角膜層や水晶体の場合は試料アーム107から見て凸状の形状であってもよく、例えば網膜層の場合は試料アーム107から見て凹状の形状であってもよい。
【0041】
試料111の関心層115から発生する関心光が試料アーム107に入ると、関心光は第1の光路長を進んだことになる。第1の光路長は、光が試料アーム107に入るまでの経路の幾何学的長さと、光が通過した媒体の平均屈折率との積である。関心層115が平面状ではなく曲面状である場合、幾何学的長さの横断プロファイルが変更される。関心光が移動する幾何学的な長さの変化に加えて、横方向変化分布の変化も、関心光が通った媒体の屈折率から生じる場合がある。関心層115は試料111の特定の深さにあり、これは関心光が試料111の上層を通って前後に進まなければならないことを意味する。試料111が不均一な場合、それらの上層は様々な屈折率を持ち、不均一に分布する可能性がある。例えば、関心層115が網膜層である場合、関心光は硝子体、水晶体、瞳孔、角膜を通過しなければならない。
【0042】
いずれにしても、試料アーム107に入ると、関心光は、湾曲横方向変化分布を持つ第1の光路長を進んでいる。例えば、第1の光路長の湾曲横方向変化分布は、4ミリメートルから50ミリメートルの間の絶対曲率半径を持つ。補償されない場合、この湾曲横方向変化分布は、前に
図2a-cおよび
図3a-dを参照して説明したように、試料の関心層の有用な視野を減少させる結果となる基準光によって光学分割に提出される。
【0043】
この問題を回避するために、FFOCTデバイスには光路長の横方向変化分布を修正する光学曲率補償器が設けられている。光学曲率補償器は、試料アーム107または基準アーム108に配置することができる。光学曲率補償器は、基準光と関心光のプロファイルの相対的な湾曲を補償するように構成された曲率補償器である。光学曲率補償器が基準アーム108に配置されている場合、光学曲率補償器は撮像視野全体にわたる基準光学長を変更する。光学曲率補償器が試料アーム107に配置されている場合、光学曲率補償器は撮像視野全体にわたる試料光学長を変更する。光学曲率補償器は、撮像器114に入射した基準光が進む基準光路長、または撮像器114に入射した関心光が進む第2の光路長が、同じ横方向変化分布を持つように、すなわち、撮像器114に入射した基準光が進む基準光路長の横方向変化分布と、撮像器114に入射した関心光が進む第2の光路長の横方向変化分布とが、時間的コヒーレンス長の範囲内で一致するように構成されている。
【0044】
2つのそれぞれの横方向変化分布のプロファイルは、絶対曲率半径の差が2mm未満、より好ましくは1mm未満であることが望ましい。光が撮像器114に到達すると、関心光と基準光の光波が干渉し、干渉が発生する。干渉は、波の光路長差が、照明光によって定義される時間的コヒーレンス長の範囲内で重ね合わされたときに、撮像器114の視野の各点で発生する。したがって、提案された光学曲率補償は、関心層115から発生する関心光が撮像器114の画像面上で基準光と干渉する結果となり、撮像器114は、撮像器114の視野上の関心層を撮像する。
【0045】
光学曲率補償器は、基準アーム108内に湾曲反射面を配置した反射器であり得る。したがって、光学曲率補償器は、反射器112が湾曲していれば、ビームスプリッタ103に対向する基準アーム108の端部に配置された反射器112であり得る。
図4および5は、光学曲率補償器として湾曲反射器を使用した実施例を示す。
図4では、関心層115は、眼レンズの前面であり、それはFFOCTデバイスから見て凸状である。反射器112も基準光路から見て凸状に湾曲している。反射器112の曲率は前レンズの曲率に相当し、曲率半径はおおよそ9mmから15mmの間、より好ましくは11mmから13mmの間にある。関心層115が前角膜である場合、反射器112の曲率半径は7mmから8mmの間にある。関心層115が後角膜である場合、反射器112の曲率半径は6mmから7mmの間にある。
図5では、関心層115は網膜層であり、FFOCTデバイスから見て凹状である。反射器112も、基準光路から見て凹状に湾曲している。反射器112の曲率は網膜層の曲率に相当し、曲率半径はおおよそ-11mmから-13mmの間にある。さらに、
図5の網膜撮像構成では、前述の実施形態に存在した試料アーム7内の顕微鏡対物レンズ109が除去されている。試料アーム7から顕微鏡対物レンズ109を取り外すと、FFOCTデバイスの2つのアーム7、8の間に強い非対称性が生じる。この非対称性は、関心のある網膜層115の前にある目の媒質によって引き起こされる非対称性と相まって、撮像器114に入射する関心光によって移動される第2の光路長を、湾曲プロファイルを持つ横方向変化分布に導く。したがって、反射器112の曲率は、非対称性を補償するために、関心のある網膜層の曲率よりも高くなるように選択することができる。
【0046】
ここで示されている値は単なる例であり、通常は試料111が目でない場合には、他の値を使用できることに注意すべきである。人間の目の場合であっても、他の値を使用して関心層112の曲率に一致させることができる。例えば、円錐角膜の患者の前角膜層によって構築される関心層115の場合、反射器112の曲率半径は6mm未満になる。
【0047】
湾曲反射器112の湾曲形状は、反射光を基準光路の断面にわたって変化する光路長を移動させ、それによって基準光路長の横方向変化分布を引き起こす。関心層115の曲率に対応するように湾曲反射器112の曲率を選択することにより、撮像器114に入射する基準光が進む基準光路長と、撮像器114に入射する関心光が進む第2の光路長は、同じ横方向変化分布を持つ。その結果、試料光上において基準光によって行われる光学分割は、関心光のみを選択する。
【0048】
湾曲反射器112は鏡であり得、特に、例えば反射面としてアルミニウム被覆を施した、湾曲金属鏡であり得る。ただし、ほとんどの鏡は反射率が高く、一般的に90%よりも高くなる。湾曲反射器112の反射率が試料111の反射率と一致するときに画質が最もよくなるため、このような高い反射率は、FFOCTにとって有害である。試料111と関心層115は一般に低反射率であるため、湾曲反射器112は25%未満、好ましくは10%未満の反射率を持つように選択される。
【0049】
湾曲反射器112は必ずしも鏡ではなく、例えば光学レンズであり得る。このような光学レンズは、ガラス(例えばRoHS準拠のホウケイ酸クラウンガラス)、溶融シリカ、またはその他の適切な材料からできていてもよい。光学ガラスレンズの反射率は当然低く、通常5%未満であり、これは多くの有機試料111の反射率に相当する。光学レンズは安価で、どんな曲率でも見つけることができる。例えば、曲率半径6.2mmの光学レンズを使用して、6.4mmの人間の後角膜の自然な曲率に合わせることができる。光学レンズの欠点は、光学レンズの表面においてだけでなく、光学レンズの裏面からの反射(二次反射)も起こる可能性があることである。これは、光学レンズの背面に吸収フィルター(例えばガラス吸収フィルター)を配置し、光学レンズの背面と吸収フィルターの間に液浸液を配置し、吸収フィルターと液浸液とを光学レンズの屈折率(例えば、1.518)に近い屈折率を持つように選択することによって回避できる。これにより、光学レンズを透過した光は二次反射することなく吸収フィルターに吸収される。また、光学レンズの素材として照明光の波長内で光を吸収する素材(例えば、特定の波長範囲で選択的に吸収する光学フィルターガラス)を選ぶことによって、裏面からの不要な反射を避けることもできる。
【0050】
光学曲率補償器は、補償屈折率と、基準光路または試料光路に沿った補償長を有する材料の板でもよい。従って、このような光学曲率補償器は、基準アーム108または試料アーム107に配置することができる。この板、あるいは光学窓は、透明光学材料の光学的に平坦なピースである。
図6は、光線の光路長プロファイルに対する光学窓の作用を示す概略図である。この単純化された例では、近位アーム点Aと遠位アーム点Bの間の光の伝播を扱い、ここでは光学レンズによって定義されている。近位アーム点Aと遠位アーム点Bは、光学軸に沿って距離e
airの間隔を置いている。近位アーム点Aと遠位アーム点Bの間の媒体は、光学窓120を除いて空気(屈折率1)と仮定する。光学窓120は屈折率n´の材料でできている。光学窓120は、光学軸に対して垂直な二つの平面121、122の間に厚さe´を有する。
【0051】
光学軸上の視野の中心点Cは、直線状の上部境界U
cと直線状の下部境界D
cの間に定義された直線経路においてアーム点AとBの間を伝播する。中心光路長OPL
cは、OPL
c=e
air-e´+e´n´と定義される。視野の非中心点Pは、光学軸からオフセットされ、当該非中心点Pからの光は、アーム点Bと光学窓120との間を角度θで伝搬し、次に光学窓内を角度θ´で伝搬し、そして再び光学窓120とアーム点Aとの間を角度θで伝搬する。スネル-デカルトの法則に従い、θ´とθとの関係は、
【数1】
である。非中心点Pからの光は、角度のついた上部境界U
pと角度のついた下部境界D
pの間に定義された角度のついたビームで伝播する。このような角度のついた光路長OPL
pは、
【数2】
である。光学窓120が光路長の角度依存補正を導入していることは明らかである。これは、結果として得られる光路長の横方向変化分布プロファイルも角度に依存すること、すなわち湾曲していることを意味する。光学窓120の材料の厚さe´と屈折率n´を適切に選択することで、光路長の横方向変化分布プロファイルの曲率を調整することができる。これはもちろん単純化された例であり、よく知られた追加効果は当業者によって考慮されなければならない。例えば、材料の屈折率は通常波長に応じて変化するため、光学窓の屈折率n´はn´(y)と記すべきである。Sellmeier方程式を使用して、特定の透明媒体についての屈折率と波長の関係を確立できる。
【0052】
図7は、光路長の横方向変化分布プロファイルの曲率(任意単位)の様々な度合いのが厚さの異なる光学窓でどのように得られるかの例を示すグラフである。ここでの曲率の度合いは、光路長の横方向変化分布プロファイルをモデル化する放物線関数f(x)=ax
2+bx+cの第1の係数に対応する。これは、健康な人間の目の湾曲した角膜層から来る光の湾曲した横方向変化分布プロファイルを補償するように求められる。光学窓はホウケイ酸クラウンガラス、より正確にはN-BK7ガラスでできている。光学窓がない場合(厚さが0の場合)、曲率の度合いは約-73である。(二次の)平面横方向変化分布プロファイルを得て、健康な人間の目の網膜層の平均曲率を補償するためには、厚さ22.3mmの光学窓が必要である。光は基準アーム108または試料アーム107に沿って二度進むことに留意されたい。その結果、進行光は光学板120を二度横切り、光路長の横方向変化分布プロファイルの曲率は光学板120によって二倍の影響を受ける。
【0053】
図8は、FFOCT撮像法を実施するための配置例を示しており、光学曲率補償器は、基準アーム108に配置された光学プレート120である。光学板120は、ビームスプリッタ103と反射器112の間の基準光路上に配置されている。光学板120は、試料顕微鏡対物レンズ110の両側に配置することができるが、ビームスプリッタ103と試料顕微鏡対物レンズ110の間に配置することが望ましい。前述のように、光学板120は、基準光が進む横方向変化分布プロファイルを湾曲させており、撮像器114に入射した基準光が進む基準光路長と、撮像器114に入射した関心光が進む第二光路長が、同じ横方向変化分布プロファイルを持つようになっている。
【0054】
基準アーム108の端部の反射器112は湾曲している必要がなく、平坦であり得る。しかしながら、実施形態を組み合わせることが可能であり、湾曲反射器112に光学板120を装備することも可能である。この場合、湾曲反射器112によって導入された基準光路長の横方向変化分布のプロファイルの曲率は、光学板120によって導入された基準光路長の横方向変化分布のプロファイルの曲率に加算される。したがって、湾曲反射器112の特徴と光学板120の特徴は、撮像器114に入射する基準光が進む基準光路長と、撮像器114に入射する関心光が進む第2の光路長が、同じ横方向変化分布プロファイルを有するように選択される。
【0055】
図9は、FFOCT撮像法を実施するための配置例を示しており、ここで、光学曲率補償器は、試料アーム107に配置された光学板120である。図に示すように、試料アームには顕微鏡対物レンズ109がないことが望ましい。光学板120は、ビームスプリッタ103と試料アーム107の試料端部125との間の試料光路上に配置される。前述のように、光学板120は、試料光が進む横方向変化分布プロファイルを湾曲させ、撮像器114に入射した基準光が進む試料光路長と、撮像器114に入射した関心光が進む第2の光路長とが、同じ光路長の横方向変化分布プロファイルを有する。
【0056】
光路長の変更に関連する光学曲率補償器112,120の特徴は、関心層115の光湾曲、すなわち、関心層115から発生する関心光が進む光路長の横方向変化分布のプロファイルの湾曲を補償するように選択される。例えば、7.8mm前後の曲率半径を持つ前角膜の層のように、関心層115の幾何学または光学的特徴が分かっている場合、関心層115の光学曲率を知ることができる。しかしながら、関心層115の光学曲率がわからないか、少なくとも十分に正確でないことが起こるかもしれない。関心層115の光学曲率を評価する必要があるだろう。
【0057】
ここでは、関心層115の光学曲率を推定する簡単な方法を説明し、適切な光学曲率補償器を選択できるようにする。基準アーム108の反射器112を光学軸(z軸)に沿って一定速度で移動させながら、試料111のいくつかのFFOCT正面画像(x、y)を取得する。このようにして試料111の様々な深さが撮像され、例えば(x、yに延びる)3つの取得画像35、36、37が編成されている
図10aに示されているように、(x、y、z方向の)3次元データボリュームが得られる。試料111の断面画像(x、z)は、取得された画像シーケンスの各画像で同じ画素線35a、36a、37aを選択し、その選択を連結することによって生成することができる。このような断面画像は
図10bに描かれている。
【0058】
干渉アーム108の平行移動中、コヒーレンスゲートはその湾曲形状を保ち、z方向に平行移動した。結果として得られる断面画像は、基準光と干渉する試料光の原点に対応する(コヒーレンスゲートによって定義される)さまざまな撮像された干渉試料セクションを示す。したがって、撮像された領域の下限38と上限39は、コヒーレンスゲートのプロファイルに対応している。限界38、39の中心点と限界38、39の端点との間の深さ(z)の差Δを測定することができる。差Δ及び中心点と端点との間の距離(y)から、コヒーレンスゲートの光学曲率を導くことができる。他の基準も使用できる。
【0059】
同じアプローチを使用して、関心層115の光学曲率が光学曲率補償器によって適切に補償されているかどうかを評価することができる。適切に補償されると、
図10bのように、コヒーレンスゲートは断面画像上でかなり平坦に見える。コヒーレンスゲートは、例えば、限界38、39の中心点と、当該限界38、39の端点との間の深さ(z)の差Δが、光源1の帯域幅に依存するコヒーレンスゲート厚の半分未満である場合、平坦であると考えられる。例えば、コヒーレンスゲート厚が8μmで差Δが4μm未満であれば、コヒーレンスゲートの曲率は補償されていると考えることができる。
【0060】
また、取得した画像の干渉縞を利用して、FFOCTデバイスが行う光学曲率補償を検証することも可能である。試料アーム107の前方に試料としてテスト反射器を配置する。テスト反射器は光学軸に対して中心に置かれる、すなわちテスト反射器の湾曲は中心に置かれる。テスト反射器は、補償されたい曲率に対応する既知の曲率を有する。例えば、半径7.8mmの湾曲層の光学曲率補償を検証するために、テスト反射器は曲率半径が7.8mmに近く、好ましくは7.8mmであるように選択される。テスト反射器は、平面または湾曲反射器であり得、鏡、またはもしかすると湾曲反射器に関連する分散媒体であって、当該分散媒体を伝播する光の光路長の横方向変化分布に既知の曲率を導入する分散媒体であり得る。
【0061】
その後、試料111と同様に、テスト反射器を照らし、画像を取得する。次に、取得した画像の処理から、可視干渉縞密度に基づいて、FFOCTデバイスの光学曲率補償器によって行われる曲率補償を決定することができる。縞密度は、(縞に垂直に)1mmあたりの交替する縞の最大数として定義され、テスト反射器の曲率半径と光路長の横方向変化分布の曲率半径との一致に直接関係している。
【0062】
例えば、
図11aは、7.8mmの曲率半径を補償するように構成された光学曲率補償器で撮像された7.8mmの曲率半径を持つ第1のテスト反射器60に対応する画像を示しており、その結果、
図11bに示されているように、第1のテスト反射器60と同じ曲率を持つ(基準光と干渉する試料光の原点に対応する)干渉セクションを定義するコヒーレンスゲートが生じる。
図11aの画像では、縞は間隔が空いており、低い密度である。
図11cは、7.8mmの曲率半径を補償するように構成された光学曲率補償器で撮像された6.2mmの曲率半径を持つ第2のテスト反射器62に対応する画像を示しており、その結果、
図11dに示されているように、第2のテスト反射器62に近づくが完全には同じではない曲率を持つ(基準光と干渉する試料光の原点に対応する)干渉セクション63を定義するコヒーレンスゲートが生じる。
図11cの画像では、縞は
図11aより接近しており、より高い密度である。
図11eは、平坦(無限の曲率半径)であり、7.8mmの曲率半径を補償するように構成された光学曲率補償器で撮像された第3のテスト反射器65に対応する画像を示しており、その結果、
図11fに示されているように、湾曲した干渉セクション64を定義する湾曲コヒーレンスゲートが生じる。
図11eの画像では、縞は、非常に接近しており、
図11aや
図11cよりもはるかに多く、非常に高い縞密度である。
【0063】
これは、縞密度が、テスト反射器の表面とFFOCTデバイスのコヒーレンスゲートによって定義される干渉セクションとの間の光路差と関連しているためである。光路差が照明光の波長(例では850nm)に達するたびに干渉縞が現れる。それが、縞密度を使用して、基準光が移動する基準光路長の横方向変化分布と関心光が移動する第2の光路長の横方向変化分布が一致するかどうかを評価することができる理由である。
図11b、11d、11fから分かるように、コヒーレンスゲートの湾曲した性質のため、(光路差がより大きい)視野(FOV)の端部の方が(光路差がより小さい)FOVの中心部よりも光路差が大きい。これで干渉縞の同心円的な側面が説明できる。そのため、通常はFOVの端部に対応する画像の端部で最大密度が検出される。
【0064】
縞密度に関する簡単な基準を設定して、2つのそれぞれの横方向変化分布のプロファイルが2mm未満の絶対曲率半径の差を持つかどうかを評価することができる。850nmの照明光および1.3mmのFOVの場合、最大縞密度が60縞/mm未満、好ましくは50縞/mm未満のときにテスト反射器の光学曲率が補償されたものとみなす。なお、密度は撮像された物体の視野に応じて、すなわち倍率を考慮して表現される。図の例では、
図11aの画像の最大縞密度は15縞/mm未満であり、これは横方向変化分布の間、すなわちテスト反射器のプロファイルとコヒーレンスゲートの間の良好な一致を示し、
図11cの画像の最大縞密度は50縞/mm未満であり、これは横方向変化分布の間の許容できる一致を示しているが、
図11eの画像の最大縞密度は100縞/mmより大きく、これは横方向変化分布の間に一致がないことを示している。
【0065】
その結果、既知の曲率を持つテスト反射器を含む簡単な測定により、光学曲率補償が既知の曲率と一致するかどうかを判断することができる。
【0066】
光学曲率補償器は不変であることができ、これは光学曲率補償器によって引き起こされる光路長の横方向変化分布プロファイルの変更が常に同じであることを意味する。例えば、湾曲反射器112による変形は湾曲反射器112の曲率に依存し、光学板120による変形は当該光学板120の厚さと屈折率に依存する。結果として、このような不変光学曲率補償器は、限られた範囲内の横方向変化分布プロファイルの曲率のみを補償することができる。これは、関心層115の曲率が不正確にしか知られていない可能性があるため、問題になり得る。例えば、臨床応用では、患者はかなり多様な眼の長さを示す可能性があり、それは適切な光学窓または曲面鏡の選択に影響を与えるだろう。前述のように、反射器112の曲率半径は、円錐角膜の患者の前角膜層では6mm未満であるのに対し、健康な前角膜層では約7.8mmである。
【0067】
1つの解決策は、変化可能な光学曲率補償器を使用して、考えられるさまざまな関心層の曲率に適合させることである。しかし、これは試行錯誤に基づく長いプロセスとなり、多数の異なる光学曲率補償器を必要とする可能性がある。ただし、光学曲率補償器の変更をより容易にすることは可能であり、例えば光学式ホイールはステッパモーターでモーター駆動することができる。
【0068】
別の解決策は、構成可能な光学曲率補償器を提供することである。構成可能な光学曲率補償器は、反射面を変形できる変形可能な鏡とすることができる。変形可能な鏡は、湾曲面だけでなく、さまざまな種類の面に合わせて成形され得る。例えば、変形可能な鏡は、磁気アクチュエータによって動く連続的な反射面に基づくことができる。
【0069】
図12aおよび12bに示すように、構成可能な光学曲率補償器は一対のプリズムにすることもできる。一対のプリズムは、光を移動するための光学板として表示されるアセンブリを構成する。実際、一対のプリズムは基本的に2つの部分に分割された光学板である。2つのプリズムは同じ材料でできていることが望ましく、同じ形状であることが望ましい。第1のプリズム131と第2のプリズム132がある。各プリズム131、132は、光学軸に垂直な平坦面131a、132aを有する。二つの平坦面131a、132aは光学曲率補償器の外面を構成する。各プリズム131、132は、光学軸に対して直角でない傾斜角を形成する傾斜面131b、132bを有する。二つの傾斜面131b、132bは互いに反対であるため、向かい合っている。二つの傾斜面131b、132bは相補的な傾斜を持つ。光学曲率補償器を通過する光は、例えば、第1のプリズム131の平坦面131a、第1のプリズム131の傾斜面131b、第2のプリズム132の平坦面132a、第2のプリズム132の傾斜面132bを通過する。
図12aの構成では、そのような光は第1のプリズム131の材料の第1の厚さe1と第2のプリズム132の材料の第2の厚さe2を通過したであろう。したがって、一対のプリズムは、e1+e2の厚さを持つ光学板に相当する。
【0070】
しかし、プリム131、132は互いに対して平行移動可能である。より正確には、少なくとも一つのプリズム131、132、できれば両方が光学軸に対して垂直に移動可能である。平行移動はモーターで行うことができる。このような横方向平行移動の結果として、進行光が横切る材料の厚さが変更される。
図12bは、両方のプリム131、132を光学軸に対して横方向に反対方向に平行移動した結果を示している。二つのプリズムの傾斜面131b、132bにより、平行移動は通過厚の変更、より正確には
図12bに示されている例については通過厚の減少となる。第1のプリズム131の見かけの厚さe´
1と第2のプリズム132の見かけの厚さe´
2は、
図12aの第1の構成の見かけの厚さe1とe2に対して減少している。第2の構成では、一対のプリズムは、以前よりも薄いe´
1+e´
2の厚さの光学板に相当する。そのため、構成設定な厚さを有する光学板と同等の構成可能な光学曲率補償器を持つことができる。これらの例では、光学軸を参照している。このような光学軸は、光学曲率補償器が配置されたアームの光学軸である。アーム内の光路は光学軸に平行であるため、光学軸に関して与えられた任意の表示は、当該アーム内の光路に関して与えられた表示と理解することができる。
【0071】
光路長の所望の横方向変化分布プロファイルに光学曲率補償器を適応させるために、FFOCTは、適切な光路長修正プロファイルを見つけるための制御ループを含むことができる。制御ループは、有用な視野を最大化することを目的としている。制御ループは、撮像器114によって取得された二次元画像の解析に基づいており、そこから光学曲率補償器を指令するアクチュエータのコマンドが導出される。したがって、制御ループは、プロセッサなど、それを行うのに適した構成成分を含む。例えば、解析では、信号が存在する場所と信号が存在しない場所を特定することを目的としている。例えば、取得した画像を、取得した画像の表面に分布する複数のゾーン(例えば5ゾーンから20ゾーン)に分割することができる。ゾーンは、単純に正方形または長方形にすることができる。各ゾーンにおいて、当該ゾーンの全画素の画素値(例えば、グレースケール値)を合計する。得られた総和を事前に設定されたしきい値と比較することで、各ゾーンを、コヒーレンスゲートが一致するため信号が存在する「良好な」領域と、コヒーレンスゲートが一致しないため信号が存在しない「不良な」領域に分類することができる。次に、構成可能な光学曲率補償器は、不良な領域を良好な領域に変えるように変更される。制御ループを使用して、一連の不変光学曲率補償器の中から選択することもできる。
【0072】
したがって、この方法は、関心層115の第1の二次元正面FFOCT画像を取得し、次に、第1の光路長の横方向変化分布の湾曲プロファイルの改善された補償を用いて、関心層115の第2の二次元正面FFOCT画像を取得することを含むことができる。第1の二次元正面FFOCT画像から、第1の光路長の横方向変化分布の湾曲プロファイルが光学補償器によって補償されているかどうかを判定する。上で説明したように、このような判定は、例えば、可視干渉縞の密度に依存したり、撮像フィールドの形状(リング形状)及び/又は信号レベルに依存したりすることができる。例えば縞密度が高すぎるなどの理由で、第1の光路長の横方向変化分布の湾曲プロファイルが光学補償器で補償されていないと判定された場合は、第1の光路長の横方向変化分布の湾曲プロファイルをより良く補償するように光学補償器を変更する。次に、関心層115の第2の二次元正面FFOCT画像が、撮像器114を使用して、ビームスプリッタ103で結合された基準光と試料光から取得される。光学補償器の変更は、補償の改善を目的としているため、当該補償を評価するために使用される基準は、第1の画像に対する改善も示さなければならない。たとえば、縞密度は減少する。それでも満足のいく結果が得られない場合は、第1の光路長の横方向変化分布の湾曲プロファイルの補償が期待を満たすまで、第1の光路長の横方向変化分布の湾曲プロファイルをより良く補償するように、変更された光学補償器を再度変更することができ、他の画像を取得することができる。
【0073】
図2cの例では、不良な領域は取得された画像の周辺ゾーンに対応しており、それは、
図2aに概略化されているように、コヒーレンスゲートが中央でのみ一致することを意味している。
図3cの例では、不良な領域は、
図3aに概略化されているように、取得された画像の中心ゾーンに対応しており、それは、コヒーレンスゲートは周辺部でのみ一致することを意味する。撮像器114に入射した基準光が進む基準光路長と、撮像器114に入射した関心光が進む第2の光路長が、同じ横方向変化分布プロファイルを有するように、光学曲率補償器が配置されたアームの光路長の横方向変化分布プロファイルを湾曲させるためのコマンドが生成される。例えば、光学曲率補償器が基準アーム108内の変形可能な湾曲鏡112である場合、このコマンドは、変形可能な湾曲鏡112の曲率を制御するアクチュエータに適用され、曲率を増加させる。光学曲率補償器が一対のプリズムである場合、コマンドはプリズムの横方向平行移動を制御するアクチュエータに適用される。一対のプリズムが基準アーム108内に配置されている場合、基準光路長の横方向変化分布プロファイルをさらに湾曲させるために、プリズムは平行移動されて、材料の見かけの厚さを増加させる。一対のプリズムが試料アーム108内に配置されている場合、試料光路長の横方向変化分布プロファイルの曲率を減少させるために、プリズムは平行移動されて、材料の見かけの厚さを減少させる。
【0074】
図13aは、上で開示されたような光学曲率補償なしで、人工眼の網膜層の撮像から得られる実際のFFOCT画像を示す。結果は、撮像された網膜層のリング形状50であり、中心部分51は肉盛層に対応する。基準光及び撮像器114に入射する関心光が進む光路長の横方向変化分布は一致しない。これは、
図3a-3dに示されている状況に対応する。
図13bは、今回は、基準光および撮像器に入射する関心光が移動する光路長の横方向変化分布が一致するように、光学曲率補償器が光路長の横方向変化分布を変更する、上記で開示された方法を実行することにより、
図13aのような人工眼の網膜層を撮像した結果得られた実際のFFOCT画像を示している。この画像上では、撮像器114が撮像器114の全体の視野52にわたって関心層を撮像したことが分かる。これは、関心層から発生した関心光が、撮像器114の全体の視野52にわたって基準光と干渉したことを意味する。したがって、この方法では、全体的かつ連続的な視野にわたって関心層を撮像することができる。
【0075】
図14aは、今回は、光学曲率補正を用いて、上記に開示された方法を実行することによって、
図3cのような基底下神経叢の撮像から得られた実際の最終的なFFOCT画像を示している。撮像された前角膜の基底下神経叢が最終的な画像ではリング状に見えた
図3cと比較すると、前角膜の基底下神経叢はもはやリング状ではなく、視野全体を占めている。
図14bは、今回は、光学曲率補正を用いて、上記に開示された方法を実行することによって、
図3dのような角膜内皮層の撮像から得られた実際のFFOCT画像を示している。撮像された後角膜の角膜内皮層が最終的な画像ではリング状に見えた
図3dと比較すると、後角膜の角膜内皮層はもはやリング状ではなく、視野全体を占めている。したがって、開示された方法は、撮像器114の視野全体にわたる各層の撮像を可能にすることが分かる。
【0076】
本発明は、特定の好ましい実施形態に関して説明されてきたが、それに限定されるものではなく、説明された手段とそれらの組み合わせのすべての技術的同等物を含むことは明らかである。特に、添付の特許請求の範囲に定義されている発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更や修正を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【国際調査報告】