(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-22
(54)【発明の名称】シム処理接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 163/00 20060101AFI20230215BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20230215BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
C09J163/00
C09J11/04
C09J11/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537307
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(85)【翻訳文提出日】2022-06-17
(86)【国際出願番号】 IB2020061832
(87)【国際公開番号】W WO2021124049
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】エルギミアビ,ソハイブ
(72)【発明者】
【氏名】スピーカーマン,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ライアンヅォウ
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040EC061
4J040EE002
4J040GA11
4J040HA306
4J040JA02
4J040JA13
4J040JB05
4J040MA02
4J040MB11
4J040NA15
4J040NA16
(57)【要約】
主剤部分と、硬化剤部分と、を含む、混合時に硬化可能な2剤型シム処理接着剤が提供される。主剤部分は、少なくとも3つのエポキシ官能基を有する多官能エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂と混和してブレンドされた二官能エポキシ樹脂を含む。硬化剤部分は、ポリエーテルアミンを含む。主剤部分又は硬化剤部分のいずれかは、2剤型硬化性シム処理接着剤の総重量に対して、10パーセント~60パーセントの量で存在する無機充填剤、及びリン酸エステルを更に含む。シム処理接着剤は、接合部を1つのステップで組み立てることを可能にし、ユーザに有意な利点を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3つのエポキシ官能基を有する多官能エポキシ樹脂;及び
前記多官能エポキシ樹脂と混和してブレンドされた二官能エポキシ樹脂を含む主剤部分と、
ポリエーテルアミンを含む硬化剤部分と、
を含む2剤型硬化性シム処理接着剤であって、
前記主剤部分又は前記硬化剤部分のいずれかが、前記2剤型硬化性シム処理接着剤の総重量に対して、10パーセント~60パーセントの量で存在する無機充填剤、及びリン酸エステルを更に含む、2剤型硬化性シム処理接着剤。
【請求項2】
前記多官能エポキシ樹脂及び前記二官能エポキシ樹脂が、1:1~6:1の重量比で存在する、請求項1に記載の2剤型硬化性シム処理接着剤。
【請求項3】
前記主剤部分及び/又は前記硬化剤部分が、前記2剤型硬化性シム処理接着剤の総重量に対して、1パーセント~20パーセントの量で存在するコアシェルゴム粒子を更に含む、請求項1又は2に記載の2剤型硬化性シム処理接着剤。
【請求項4】
前記多官能エポキシ樹脂が、三官能エポキシ樹脂を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の2剤型硬化性シム処理接着剤。
【請求項5】
前記三官能エポキシ樹脂が、トリフェニルメタントリグリシジルエーテルを含む、請求項4に記載の2剤型硬化性シム処理接着剤。
【請求項6】
前記多官能エポキシ樹脂が、四官能エポキシ樹脂を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の2剤型硬化性シム処理接着剤。
【請求項7】
前記四官能エポキシ樹脂が、4,4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)を含む、請求項6に記載の2剤型硬化性シム処理接着剤。
【請求項8】
前記三官能エポキシ樹脂及び前記四官能エポキシ樹脂が、1:1~8:1の相対重量比で存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載の2剤型硬化性シム処理接着剤。
【請求項9】
前記ポリエーテルアミンが、トリオキサデカンジアミンを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の2剤型硬化性シム処理接着剤。
【請求項10】
前記ポリエーテルアミンが、前記2剤型硬化性シム処理接着剤の総重量に対して、5パーセント~30パーセントの量で存在する、請求項1~9のいずれか一項に記載の2剤型硬化性シム処理接着剤。
【請求項11】
前記無機充填剤が、ヒュームドシリカを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の2剤型硬化性シム処理接着剤。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の2剤型硬化性シム処理接着剤の反応生成物を含む結合アセンブリであって、前記反応生成物が、2つ以上のそれぞれの基材の結合表面間に配置されている、結合アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、工業用途における一次及び二次構造などの結合構造をシム処理するための硬化性接着剤が提供される。
【背景技術】
【0002】
シムは、互いに接合される部品間の小さな間隙又は空間を充填するために使用される、薄い材料片である。シムは間隙の形状を呈し、典型的にはメカニカルファスナーを使用して互いに固着されたときに圧縮荷重を支持して、過度の歪み及び構造部品の損傷を防止することができる。シムは、自動車及び航空宇宙の製造などの工業用途で使用される。様々な形態のシムが、住宅用及び商業用建築においても使用される。
【0003】
様々な種類のシムを使用可能である。固体シムは、接合部と同じ材料で製造されてもよい。好ましいフィットが達成されるまで1つずつ除去できる複数の箔層で、ラミネートされた(laminated)剥離可能なシムを製造することができる。液体シム材料は不規則な又はテーパ状の接合面を充填するのに良好に機能し、典型的には、幅0.7ミリメートル未満の間隙を充填するために使用される。
【0004】
所与のシムの必要性、サイズ、及び形状を決定することは、反復的な労働集約型プロセスであることが多い。一般的に、部品は仮に組み立てられ、次いで視覚的に検査され、外板と基礎構造との間の間隙について測定される。部品はその後解体されてもよく、試験シムが製作されるであろう。次いで、部品をシム所定の位置に仮に固定した状態で再組み立てして、フィットを確認することができる。これは、2回目の仮の組み立て作業であり、適切なフィットが達成されるまでこのような作業を繰り返す必要があり得る。
【0005】
ボンドラインが一次荷重経路に存在しないため、液体シムは構造用接着剤ではない。機械的に締結された接合部では、剪断荷重はシム処理材料ではなくファスナーによって支えられる。これらのアセンブリでは、液体シムによって支えられる唯一の荷重が圧縮荷重である。
【発明の概要】
【0006】
本明細書では、接着剤としても機能することができる液体シム処理組成物が提供される。硬化すると、このシム処理組成物は、優れた熱/湿潤結合性能と共に高い剥離強度を提供し、別個の接着剤を適用する必要性を排除することによって製造方法を簡素化することを可能にする。
【0007】
第1の態様では、2剤型硬化性シム処理接着剤が提供される。接着剤は:少なくとも3つのエポキシ官能基を有する多官能エポキシ樹脂;及び多官能エポキシ樹脂と混和してブレンドされた二官能エポキシ樹脂を含む主剤部分と、ポリエーテルアミンを含む硬化剤部分と、を含み、主剤部分又は硬化剤部分のいずれかが、2剤型硬化性シム処理接着剤の総重量に対して、10パーセント~60パーセントの量で存在する無機充填剤、及びリン酸エステルを更に含む。
【0008】
定義
本明細書で使用するとき、
「アルキル」は、1個~40個の炭素原子、1個~20個の炭素原子、1個~12個の炭素、又はいくつかの実施形態において1個~8個の炭素原子を有する、直鎖及び分枝鎖アルキル基、並びにシクロアルキル基を指し;
「周囲条件」は、23℃の温度及び1気圧(すなわち、101.3kPa)の圧力を意味し;
「周囲温度」は、23℃の温度を指し;
「平均」は、別途指示しない限り、数値平均を指し;
「硬化する」は、任意の形態で放射線に曝露すること、加熱すること、又は硬化若しくは粘度の増加をもたらす化学反応を受けさせることなどによって、化学的に架橋すること(例えば、周囲温度又は加熱条件下)を指し;
「シクロアルキル」は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチル基などであるが、これらに限定されない環状アルキル基を指し;
「有機基」は、任意の炭素含有官能基を指し;
「ポリマー」は、複数の繰り返し単位を有する分子を指し;
「実質的に」は、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、99.99%、若しくは少なくとも約99.999%以上の場合のような、過半数若しくはほとんど、又は100%を意味し;
「置換された」は、本明細書で定義されている分子又は有機基と関連して、そこに含まれる1つ以上の水素原子が1つ以上の非水素原子で置き換えられている状態を指す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で使用する場合、「好ましい」及び「好ましくは」という用語は、一定の状況下で一定の利点をもたらすことができる、本明細書に記載の実施形態を指す。ただし、他の実施形態もまた、同じ又は他の状況下で好ましい場合がある。更にまた、1つ以上の好ましい実施形態の説明は、他の実施形態が有用でないことを示唆するものではなく、他の実施形態を本発明の範囲から除外することを意図するものでもない。
【0010】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用する場合、文脈上別段の明記がない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は複数の指示物を含むものとする。したがって、例えば、「a」又は「the」が付いた構成要素への言及には、構成要素及び当業者に公知のその等価物のうちの1つ以上を含んでもよい。更に、「及び/又は」という用語は、列挙された要素のうちの1つ若しくは全て、又は列挙された要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0011】
本明細書で説明される方法において、ステップは、時間的順序又は操作上の順序が明示的に記載されている場合を除いて、本開示の原理を逸脱することなく、任意の順序で実施することができる。更に、特定の行為が別個に行われることが請求項で明示的に記載されていない限り、それらの行為は同時に行うことができる。例えば、Xするという特許請求されている行為及びYするという特許請求されている行為は、単一の操作で同時に行うことができ、結果として生じるプロセスは特許請求されているプロセスの文言上の範囲内に入る。
【0012】
用語「含む」及びそのバリエーションは、これらの用語が添付の説明に現れた場合、限定的意味を有しないことに注意されたい。また更に、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」は、本明細書では互換的に使用される。左、右、前方、後方、上部、底部、側、上方、下方、水平、及び垂直などの相対語が、本明細書で使用される場合があり、その場合、特定の図において見られる視点からのものである。しかしながら、これらの用語は、記載を簡単にするために使用されるに過ぎず、決して本発明の範囲を制限するものではない。
【0013】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」又は「実施形態」に対する言及は、その実施形態に関して記載される特定の機能部、構造、材料又は特徴が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な箇所にある「1つ以上の実施形態では」、「特定の実施形態では」、「一実施形態では」又は「実施形態では」などの句の出現は、必ずしも本発明の同一の実施形態に言及しているわけではない。
【0014】
本明細書では、結合アセンブリのためのシムを作製するために使用される硬化性2剤型組成物が提供される。結合アセンブリは、場合によっては、自動車、航空宇宙、海洋、住宅、建築、又は他の商業若しくは工業用途で使用され得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、シムを入れられた部品は航空機部品である。航空機部品としては、航空機の外板及び基礎構造が挙げられる。航空機の基礎構造は特に限定されず、例えば、スプリンガ(springers)、けた、小骨、並びに航空機の翼及び機体の他の骨組要素を挙げることができる。
【0016】
構造シムは航空機のフライアウェイ構成要素(fly-away component)であり、剛直な耐荷材料から製造される。これらのシムは、何もしなければ部品の窪み又は座屈及び付随する応力集中を生じさせるであろう、組み立てられた部品間の間隙を埋めるために使用される。これらの応力集中は、重度であれば、固定具を破損させ、最終的に航空機に著しい損傷をもたらす可能性がある。したがって、硬化前に容易に流動又は広がり得る(すなわち、液体又はペースト)組成物を提供することが望ましく、それが設置される間隙に正確にフィットするカスタマイズされたシムの形成を可能にする。
【0017】
提供される硬化性シム処理接着剤は、好ましくは、主剤部分と、硬化剤部分と、を含む2剤型組成物である。硬化性接着剤は、主剤部分と、硬化剤部分と、を一緒に混合することによって硬化させることができる。ユーザの便宜上、硬化は一般に周囲温度で実施される。
【0018】
主剤部分
硬化性2剤型シム処理接着剤の主剤部分は、エポキシ樹脂のブレンドから構成される。より具体的には、ブレンドは、二官能エポキシ樹脂と、少なくとも2つの、好ましくは3つ以上のエポキシ官能基を有する多官能エポキシ樹脂と、を含む。
【0019】
二官能エポキシ樹脂は、正確には2つのエポキシ官能基を有し、多官能エポキシ樹脂と混和してブレンドすることができる。多官能エポキシ樹脂は、少なくとも2.1、少なくとも2.2、少なくとも2.3、少なくとも2.4、少なくとも2.5、少なくとも2.6、少なくとも2.7、少なくとも2.8、少なくとも2.9、又は少なくとも3つのエポキシ官能基を有し得る。多官能エポキシ樹脂はまた、それぞれ2つを超えるエポキシ官能基を有する2つ以上の樹脂から構成され得る。
【0020】
エポキシ樹脂としては、グリシデート化(glycidated)樹脂、脂環式樹脂、及びエポキシ化油が挙げられる。グリシデート化樹脂は、エピクロロヒドリンなどのグリシジルエーテルと、ビスフェノールAなどのビスフェノール化合物との反応生成物であり得る。エポキシ樹脂の様々な例としては、C4~C28アルキルグリシジルエーテル;C2~C28アルキル-及びアルケニル-グリシジルエステル;C1~C28アルキル-、モノ-、及びポリ-フェノールグリシジルエーテル;ピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン(又はビスフェノールF)、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン(又はビスフェノールA)、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメチルタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルプロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、及びトリス(4-ヒドロキシフィニル)メタン(tris(4-hydroxyphynyl)methane)のポリグリシジルエーテル;上述のジフェノールの塩素化及び臭素化生成物のポリグリシジルエーテル;ノボラックのポリグリシジルエーテル;芳香族ヒドロカルボン酸の塩をジハロアルカン又はジハロゲンジアルキルエーテルでエステル化することによって得られるジフェノールのエーテルをエステル化することによって得られるジフェノールのポリグリシジルエーテル;フェノール及び少なくとも2つのハロゲン原子を含有する長鎖ハロゲンパラフィンを縮合することによって得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテル;N,N’-ジグリシジル-アニリン;N,N’-ジメチル-N,N’-ジグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン;N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4、4’-ジアミノジフェニルメタン;N,N’-ジグリシジル-4-アミノフェニルグリシジルエーテル;N,N,N’,N’-テトラグリシジル-1,3-プロピレンビス-4-アミノベンゾエート;フェノールノボラックエポキシ樹脂;クレゾールノボラックエポキシ樹脂;並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0021】
好適なエポキシ樹脂の代表的な非限定的な例としては、ビス-4,4’-(1-メチルエチリデン)フェノールジグリシジルエーテル及び(クロロメチル)エポキシドビスフェノールAジグリシジルエーテルが挙げられる。本発明の実施において使用することができる市販のエポキシ樹脂としては、Huntsman Corporation,The Woodlands,TXによって商品名ARALDITEで販売されているもの、及びHexion Inc.,Columbus,OHによって商品名EPONで販売されているものが挙げられる。好適なエポキシ樹脂としては、トリス(ヒドロキシフェニル)メタンなどの三価フェノールのグリシジルエーテルも挙げられる。このような樹脂は、Huntsman Corporation,The Woodlands,TXによって商品名TACTIXで市販されている。
【0022】
いくつかの実施形態では、エポキシノボラック樹脂が使用され得る。いくつかの実施形態では、多官能エポキシ樹脂としては、Emerald Performance Materials LLC,Vancouver,WAによって商品名ERISYSで販売されているものなどの、メタキシレンジアミンに基づく四官能エポキシ樹脂が挙げられる。
【0023】
硬化前に所望の粘度特性を提供するように成分が選択されるエポキシ樹脂の混合物を使用することが有利であり得る。いくつかの実施形態では、多官能エポキシ樹脂としては、三官能エポキシ樹脂、例えばトリフェニルメタントリグリシジルエーテル、又は1分子当たり3つ以上のエポキシド基を有する他のグリシジルエーテルが挙げられる。三官能エポキシ樹脂は、場合によっては、周囲温度にて固体のエポキシ樹脂である。任意選択的には、三官能エポキシ樹脂は、4、4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)などの四官能エポキシ樹脂とブレンドされる。二官能エポキシ樹脂は、ビスフェノールA/エピクロロヒドリン由来液体エポキシ樹脂、又は1分子当たり2つのエポキシド基を有する他のグリシジルエーテルであり得る。
【0024】
多官能エポキシ樹脂及び二官能エポキシ樹脂の相対量を調整して、好適な架橋密度を得ることができ、それが、ガラス転移温度、引張強度、及び剪断強度などの重要な接着特性に影響を及ぼす。好適な量の低粘度二官能エポキシ樹脂はまた、未硬化の接着剤の流動を助け、結合強度を改善するために基材の結合面を湿潤させることもできる。提供されたシム処理接着剤では、多官能エポキシ樹脂及び二官能エポキシ樹脂は、互いに対して1:1~6:1、1:1~4:1、1:1~2:1の相対重量比で存在してもよく、又はいくつかの実施形態では、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、若しくは6:1未満であっても、これと等しくても、若しくはこれよりも大きくてもよい。
【0025】
好ましい実施形態では、多官能エポキシ樹脂には、硬化済みシム処理接着剤の剛性及び接着性の競合特性のバランスをとる相対量の三官能エポキシ樹脂及び四官能エポキシ樹脂の両方が含まれる。固体又は半固体トリフェニルメタントリグリシジルエーテルなどの特定のエポキシ樹脂は、接着性の剛性を増加させることが見出され、液体四官能4,4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)などの他のものは、接着強度を高めることが見出されたことが判明した。
【0026】
これらの考慮事項に合わせて、三官能エポキシ樹脂及び四官能エポキシ樹脂は、互いに対して1:1~8:1、1:1~6:1、1:1~4:1の相対重量比で存在してもよく、又はいくつかの実施形態では、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、若しくは8:1未満であっても、これと等しくても、若しくはこれよりも大きくてもよい。
【0027】
主剤部分中のエポキシ樹脂又は樹脂は、任意の好適な分子量を有し得る。重量平均分子量は、100g/mol~50,000g/mol、175g/mol~20,000g/mol、250g/mol~10,000g/molであってもよく、又はいくつかの実施形態では、100g/mol;125;150;175;200;250;300;350;400;450;500;550;600;650;700;750;800;850;900;950;1000;2000;5000;7000;10,000;20,000;30,000;40,000;若しくは50,000g/mol未満であっても、これと等しくても、若しくはこれよりも大きくてもよい。
【0028】
主剤部分及び硬化剤部分の総混合物は、一般に、主剤部分及び硬化剤部分を合わせた重量に基づいて(すなわち、シム処理接着剤組成物の総重量に基づいて)、少なくとも20重量パーセントのエポキシ樹脂を含む。例えば、シム処理接着剤は、少なくとも25重量パーセント、少なくとも30重量パーセント、少なくとも40重量パーセント、又は少なくとも50重量パーセントのエポキシ樹脂を含み得る。シム処理接着剤は、最大90重量パーセントのエポキシ樹脂を含み得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、主剤部分は、硬化済みシム処理接着剤の圧縮強度を高めるために無機充填剤を更に含む。多くの有用な無機充填剤が可能である。例としては、天然に存在する又は合成の材料、例えば二酸化ケイ素;窒化物(例えば、窒化ケイ素);例えばZr、Sr、Ce、Sb、Sn、Ba、Zn、及びAl由来のガラス及び充填剤;長石;ホウケイ酸塩ガラス;ジルコニア;チタニア;並びにミクロン及びサブミクロンヒュームドシリカ粒子(例えば商標名AEROSILで入手可能なものなどの焼成シリカで、Degussa Corp.,Akron,Ohioの「OX50」、「130」、「150」、及び「200」シリカと、Cabot Corp.,Tuscola,ILのCAB-O-OSIL M5シリカを含む)などが挙げられる。好ましい実施形態では、無機充填剤としては、ヒュームドシリカが挙げられる。ヒュームドシリカは、任意選択的に、1~10マイクロメートルの範囲のメジアン粒径を有する。
【0030】
無機充填剤又は充填剤は、任意の好適な量で存在し得る。充填剤は、2剤型硬化性シム処理接着剤の総重量に対して、10パーセント~60パーセント、12パーセント~45パーセント、15パーセント~30パーセントであってもよく、又はいくつかの実施形態では、10パーセント、12、15、17、20、25、30、35、40、45、50、55、若しくは60パーセント未満であっても、これと等しくても、若しくはこれよりも大きくてもよい。
【0031】
マトリックス樹脂中の無機充填剤の分散を促進するために、主剤部分は、リン酸エステルを更に含み得る。リン酸エステルは、場合によっては、酸基を含有するリン酸ポリエステルコポリマーであり得る。有用なリン酸エステルは、Altana AG,Wesel,Germanyによって商品名BYKW9010で入手可能である。
【0032】
無機充填剤及びリン酸エステルは、100:3~1000:3、100:3~500:3、100:3~300:3の相対重量比で存在してもよく、又はいくつかの実施形態では、100:3、150:3、200:3、250:3、300:3、350:3、400:3、450:3、500:3、600:3、700:3、800:3、900:3、若しくは1000:3未満であっても、これと等しくても、若しくはこれよりも大きくてもよい。
【0033】
主剤部分は、いくつかの実施形態では、他の強化成分(toughening components)を含み得る。例示的な強化成分は、例えば、コアシェルゴム粒子を含み得る。
【0034】
コアシェル粒子は、2つ以上の異なる同心状部分:コアとコアを取り囲む1つ以上のシェル層を有する充填剤粒子である。いくつかの実施形態では、コアシェル粒子はエラストマーコアを有するコアシェルゴム(CSR)粒子であり、物理的に架橋されたポリマー又はミクロ相分離ポリマーのいずれかから作製され、シェル層は、非エラストマーガラス状ポリマーから作製される。有利には、ゴム状エラストマーコアは、硬化済みシム処理接着剤の靱性を高めることができ、ガラス状ポリマーシェルは、充填剤粒子とマトリックスとの間の相溶性を提供することができる。
【0035】
例示的な複合材用途において、コアシェル粒子は、10nm~800nm、50nm~500nm、若しくは80nm~300nmの範囲を有してもよく、又はいくつかの実施形態では、5nm、10、20、30、40、50、70、100、200、300、400、500、600、700、800、900、若しくは1000nm未満であっても、これと等しくても、若しくはこれよりも大きくてもよい。
【0036】
コアシェル粒子は、組成物中に均一に分散されていてもよいし、少なくとも部分的に凝集していてもよい。凝集したコアシェル粒子は、1つ以上の他のコアシェル粒子と物理的に接触していてもよい。いくつかの実施形態では、コアシェル粒子は、硬化性樹脂のバルクにわたって延びる、凝集した粒子の長い鎖を形成する。このような凝集したコアシェル粒子鎖は、直鎖でも分枝鎖でもよい。コアシェル粒子鎖は、それ自体が硬化性樹脂のバルク全体にわたって均一に分布していてもよい。このような凝集体の構造は、シム処理接着剤が硬化されるときに実質的に保持され得る。
【0037】
コアシェルゴム強靭化剤(core-shell rubber toughener)は、2剤型硬化性シム処理接着剤の主剤部分の総重量の、1パーセント~20パーセント、1パーセント~15パーセント、1パーセント~10パーセントの量で存在してもよく、又はいくつかの実施形態では、1パーセント、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、若しくは20パーセント未満であっても、これと等しくても、若しくはこれよりも大きくてもよい。
【0038】
コアシェル粒子の更なる技術的態様は、同時係属中の国際公開第2019/005800号(Chenら)などの他の場所に記載されている。
【0039】
主剤部分は、任意選択的に、1つ以上の反応性希釈剤を含有する。エポキシ樹脂成分の粘度を低下させる反応性希釈剤は、一般に、飽和又は環状骨格である分枝鎖脂肪族骨格のいずれかを有するエポキシ樹脂である。反応性希釈剤の例としては、レゾルシノールのジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル、及びトリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテルは、Hexion Specialty Chemicals in Columbus,OHから商品名HELOXY MODIFIER 107で、及びEvonik Industries AG,Essen,Germanyから商品名EPODIL 757で市販されている。
【0040】
反応性希釈剤は、未硬化のシム処理接着剤の所望の粘度プロファイルを得るために好適な量で添加され得る。典型的な量は、エポキシ成分の総重量に基づいて、1重量パーセント~12重量パーセントであり得る。反応性希釈剤の更なる詳細は、例えば、国際公開第WO2014/210298号(Elgimiabiら)に見出すことができる。
【0041】
硬化剤部分
硬化剤部分は、主剤部分のエポキシ樹脂と混合されると、2剤型シム処理接着剤が硬化される化学反応を起こす、少なくとも1つの硬化剤を含む。
【0042】
有用な硬化剤は、脂肪族又は芳香族のいずれかであり得る、少なくとも1つの環状部分を含有する環状化合物を含む。環状部分は、一級アミノ基によって置換されていてもよく、すなわち、一級アミノ基は、環に直接結合していてもよい。好ましくは、環状部分は、任意選択的に末端位置で一級アミノ基を担持する1つ以上の残基によって置換されている。その残基は、例えば、好ましくは末端位置に一級アミノ基を有する、直鎖又は分枝鎖アミノアルキル基であってもよい。
【0043】
硬化剤は、末端位置で、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの一級アミノ基(-NH2基)を含有し得る。最も好ましい実施形態は、2つの一級アミノ基を含有し、その両方が分子の末端位置に存在する。少なくとも1つの環状部分は、典型的には、5員環又は6員環であり、これは炭化水素環又はヘテロ炭化水素環であり得る。ヘテロ炭化水素環は、典型的には、窒素原子及び酸素原子から選択される1つ、又は2つ以上のヘテロ原子を含有する。
【0044】
好適な硬化剤の例としては、1つ以上の末端一級アミノ基及び/又は1つ以上の末端一級アミノ基を有するアミノアルキル残基を含有するシクロヘキサン、1つ以上の末端一級アミノ基及び/又は1つ以上の末端一級アミノ基を有するアミノアルキル残基を含有するピペラジン、並びに1つ以上の末端一級アミノ基及び/又は末端一級アミノを有するアミノアルキル残基を含有するモルホリンが挙げられるが、これらに限定されない。特定の例としては、ビス若しくはトリスアミノアルキルピペラジン又はモルホリンが挙げられるが、これらに限定されない。具体例としては、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジアミンとも呼ばれる)及びN,N-ビス(3アミノプロピル)ピペラジンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
硬化剤は、上記のような脂肪族環状(ポリ)アミンであってもよく、又は1つ以上のエポキシ樹脂を有するそのような脂肪族環状ポリアミンの付加物であってもよく、ただし、脂肪族環状ポリアミンは、付加物が少なくとも2つの一級アミン基を、好ましくは付加物の末端位置に含むことを確実にするために、モル過剰で使用されることを条件とする。好ましくは、付加物を形成するために使用されるエポキシ樹脂は、エポキシ成分で使用されるエポキシ樹脂のうちの1つと同じものであるか、又は同様のものである。例えば、第1の硬化剤はジアミンであり、2つのグリシジル基を有するエポキシ樹脂と反応して付加物を形成し、第1の一次硬化剤は、2:1以上のジアミン対エポキシ樹脂のモル比で使用されて、2つのアミノ基を有するアミン含有付加物を形成し得る。多くの場合、モル過剰のアミンが用いられるため、硬化剤は、アミン含有付加物と遊離(未反応)アミン硬化剤の両方を含む。例えば、アミン硬化剤と2つのグリシジル基を有するエポキシ樹脂とのモル比は、2.5:1超、3:1超、3.5:1超、又は4:1超であり得る。
【0046】
有用な脂肪族アミンは、環状である必要はなく、直鎖及び/又は分枝鎖ポリエーテルアミンを含み得る。いくつかの実施形態では、硬化剤組成物は、エポキシ樹脂と共に、過剰の、典型的には、200%~800%、300%~600%、400%~500%、又はいくつかの実施形態では、200%、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、若しくは800%未満の、これと等しい、若しくはこれよりも大きいモル過剰の二官能非分枝鎖ポリエーテルアミンの少なくとも1つの付加物を含む。
【0047】
非分枝鎖ポリエーテルアミンは、130g/mol~500g/mol、180g/mol~400g/mol、200g/mol~300g/molの分子量を有してもよく、又はいくつかの実施形態では、130g/mol、140、150、160、170、180、190、200、220、250、270、300、320、350、370、400、420、450、470、若しくは500g/mol未満であっても、これと等しくても、若しくはこれよりも大きくてもよい。
【0048】
非分枝鎖ポリエーテルアミンは、1~4つのエーテル酸素、より典型的には、2又は3つのエーテル酸素を有し得る。いくつかの実施形態では、非分枝鎖ポリエーテルアミンは、式I:
【化1】
[式中、yは、1、2、3、又は4から選択され、各xは、2、3、又は4から独立して選択される]に従う化合物であり得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、非分枝鎖ポリエーテルアミンは、4,7,10-トリオキサトリデカン1,13-ジアミン(TTD)であり得る。いくつかの実施形態では、非分枝鎖ポリエーテルアミンは、JEFFAMINE EDR176として市販されている4,7-ジオキサデカン1,10-ジアミンであり得る。
【0050】
ポリエーテルアミンの好適な量は、硬化する前のシム処理接着剤の総重量に対して、5パーセント~30パーセント、5パーセント~20パーセント、5パーセント~15パーセントであってもよく、又はいくつかの実施形態では、5パーセント、10、15、20、25、若しくは30パーセント未満であっても、これと等しくても、若しくはこれよりも大きくてもよい。
【0051】
場合によっては、硬化剤部分は、二次硬化剤を更に含む。二次硬化剤は、イミダゾール若しくはその塩、イミダゾリン若しくはその塩、又は三級アミノ基で置換されたフェノールであり得る。例示的な二次硬化剤は、Evonik Industries AG,Essen,Germanyから商品名ANCAMINE K54で市販されているトリス-2,4,6-(ジメチルアミノメチル)フェノールである。
【0052】
2剤型硬化性シム処理接着剤の主剤部分に存在し得る任意の成分は、硬化剤部分中にも存在し得る。例えば、硬化剤部分は、先に提供される量の主剤部分を参照して記載されている、ヒュームドシリカなどの無機充填剤のいずれかを含有し得る。硬化剤部分はまた、先に提供される量の主剤部分を参照して記載されているように、無機充填剤と組み合わせて使用されるリン酸エステルのいずれかを含有し得る。硬化剤部分はまた、先に提供される量の主剤部分を参照して記載されている、コアシェルゴム強靭化剤のいずれかを含有し得る。
【0053】
上記の場合のいずれかにおいて、主剤部分及び硬化剤部分の両方に、同様の又は異なる割合で上述の成分が含有され得る。
【0054】
主剤部分及び硬化剤部分のいずれか又は両方に、当業者に既知の耐衝撃性改良剤、他の機能性充填剤、レオロジー調整剤、及び/又は色素を含む添加剤が更に含まれ得る。
【0055】
シム処理の方法
使用前、主剤部分及び硬化剤部分は、早期硬化を避けるために互いに分離された状態に保たれる。使用時に、これらの部分を混合して、均質な反応性混合物を準備する。混合物中に含まれる各部分の量は、主剤部分からのエポキシド基対硬化剤部分からのアミン水素原子の所望のモル比を提供するように選択され得る。硬化剤のアミン水素当量対エポキシ当量の比は、エポキシ樹脂中のエポキシド基及び存在する場合、任意の他の反応性希釈剤又は添加剤と完全に反応するのに十分なアミン基が存在するように選択することができる。
【0056】
次いで、その時混合されたシム処理接着剤を、2つ以上のそれぞれの基材の結合面の間に配置し、次いで硬化させ、それによって結合アセンブリを提供することができる。結合の好ましい方法では、2つの基材は、それらの間に配置された反応性混合物で互いに嵌合され、2つの基材は、硬化の過程で、基材及び反応性混合物を通って延びるメカニカルファスナーを使用して互いに更に固定される。提供される組成物は、特に、アセンブリの構成要素間に残っている間隙を埋めると同時に、引張荷重、剪断荷重、及び剥離荷重を支持することができる接着剤として作用するためのシム材料として特に好適であり得る。
【0057】
多くの実施形態では、シム処理接着剤組成物は、周囲温度で低い粘度を有し、注射器による注入又は他の方法で適用されることを可能にする。典型的には、組成物は、適用時に低い程度のサグ又はクリープを示す。
【0058】
多くの実施形態では、本明細書で提供されるシム処理接着剤組成物は、周囲温度にて24~48時間で完全に硬化し、適用の4時間後にサンディング又は孔をあけることができる。多くの実施形態では、シム処理接着剤組成物は、約3時間のポットライフ(位置決め及び調整のための時間)を有し、穏やかな熱を適用することで加速速度で硬化させることができ、典型的には70℃で30分未満で硬化させることができる。
【0059】
硬化済み組成物は、シム処理用途、特に自動車及び航空機産業におけるシム処理用途に望ましい良好な機械的特性を示す。例えば、硬化済みシム処理組成物は、重なり剪断強度によって測定した場合、少なくとも2500psi(17.2MPa)の凝集力を有し得る。例えば、重なり剪断強度は、少なくとも3000psi(20.7MPa)又は少なくとも3200psi(22.1MPa)であり得る。
【0060】
基材材料としては、金属(例えば、鋼、鉄、銅、アルミニウム、又はそれらの合金)及び複合材を挙げることができる。複合材は、典型的には、樹脂中に埋め込まれた1つ以上のタイプの繊維を含有する。典型的な繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、及びそれらの組み合わせが挙げられる。樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、若しくはそれらの組み合わせ、又は他の樹脂であり得る。好ましくは、組成物は、複合材の間、最も好ましくは炭素繊維及びガラス繊維強化エポキシ複合材を含む繊維強化樹脂の間に残っている間隙を埋めるために適用される。
【0061】
多くの実施形態では、シム処理接着剤組成物は、周囲温度及び高温で、高い圧縮強度特性を示すと共に、周囲温度などの非高温で高い剥離抵抗を示す。例えば、硬化時のシム処理接着剤は、90℃で、500MPa~2500MPa、700MPa~2000MPa、又は700MPa~1500MPaの圧縮弾性率を有し得る。硬化時の同じシム処理接着剤は、周囲温度で、50N/25mm~250N/25mm、100N/25mm~250N/25mm、又は120N/25mm~250N/25mmの平均フローティングローラー剥離強度を有し得る。
【0062】
提供されたシム処理接着剤は、航空機及び自動車アセンブリへの適用に限定されない。シム処理されるべき間隙は、住宅又は商業用建物の組み立てられた部分、又はそれらの構成要素の間にも存在し得る。例えば、提供されたシム処理接着剤を使用して、風力エネルギープラント又はステーションの構成要素、例えば、風力タービンのロータブレード又はタワーにおける間隙をシム処理することができる。
【0063】
更なる例示的な実施形態が以下に提供されるが、これらは網羅されていることを意図していない。
【0064】
1. 少なくとも3つのエポキシ官能基を有する多官能エポキシ樹脂;及び多官能エポキシ樹脂と混和してブレンドされた二官能エポキシ樹脂を含む主剤部分と、ポリエーテルアミンを含む硬化剤部分と、を含む2剤型硬化性シム処理接着剤であって、主剤部分又は硬化剤部分のいずれかが、2剤型硬化性シム処理接着剤の総重量に対して、10パーセント~60パーセントの量で存在する無機充填剤、及びリン酸エステルを更に含む、2剤型硬化性シム処理接着剤。
【0065】
2. 多官能エポキシ樹脂及び前記二官能エポキシ樹脂が、1:1~6:1の重量比で存在する、実施形態1の2剤型硬化性シム処理接着剤。
【0066】
3. 主剤部分及び/又は硬化剤部分が、2剤型硬化性シム処理接着剤の総重量に対して、1パーセント~20パーセントの量で存在するコアシェルゴム粒子を更に含む、実施形態1又は2の2剤型硬化性シム処理接着剤。
【0067】
4. 多官能エポキシ樹脂が、三官能エポキシ樹脂を含む、実施形態1~3のいずれか1つの2剤型硬化性シム処理接着剤。
【0068】
5. 三官能エポキシ樹脂が、トリフェニルメタントリグリシジルエーテルを含む、実施形態4の2剤型硬化性シム処理接着剤。
【0069】
6. 多官能エポキシ樹脂が、四官能エポキシ樹脂を含む、実施形態1~5のいずれか1つの2剤型硬化性シム処理接着剤。
【0070】
7. 四官能エポキシ樹脂が、4,4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)を含む、実施形態6の2剤型硬化性シム処理接着剤。
【0071】
8. 三官能エポキシ樹脂及び前記四官能エポキシ樹脂が、1:1~8:1の相対重量比で存在する、実施形態1~7のいずれか1つの2剤型硬化性シム処理接着剤。
【0072】
9. ポリエーテルアミンが、トリオキサデカンジアミンを含む、実施形態1~8のいずれか1つの2剤型硬化性シム処理接着剤。
【0073】
10. ポリエーテルアミンが、2剤型硬化性シム処理接着剤の総重量に対して、5パーセント~30パーセントの量で存在する、実施形態1~9のいずれか1つの2剤型硬化性シム処理接着剤。
【0074】
11. 無機充填剤が、ヒュームドシリカを含む、実施形態1~10のいずれか1つの2剤型硬化性シム処理接着剤。
【0075】
12. 実施形態1~11のいずれか1つの2剤型硬化性シム処理接着剤の反応生成物を含む結合アセンブリであって、反応生成物が、2つ以上のそれぞれの基材の結合表面間に配置されている、結合アセンブリ。
【実施例】
【0076】
本開示の目的及び利点は以下の非限定的な実施例によって更に例証されるが、これらの実施例に引用される具体的な材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本開示を過度に制限するものと解釈されるべきではない。別段の記載がない限り、実施例及び本明細書のその他の箇所における全ての部、百分率、及び比は、重量によるものである。
【表1】
【0077】
試験方法:
グレード2024-T3のむき出しアルミニウムパネルをErickson Metals of Minnesota,Inc.,Coon Rapids,Minnesotaから入手した。構造用接着剤で結合する前に、以下のパネル準備プロセスに供した。
【0078】
パネル準備
むき出しのアルミニウムパネルを、85℃(185°F)で10分間、OAKITE165(BASF Corporation)苛性洗浄液に浸漬した。次いで、パネルを21℃(69.8°F)で10分間水道水に浸漬し、続いて水道水で約3分間連続スプレーすすぎした。次いで、パネルを、66℃(151°F)で10分間、林産研究所(Forest Products Laboratory、FPL)のエッチング溶液に浸漬し、その後、パネルを21℃(69.8°F)で約3分間、水でスプレーすすぎし、更に10分間滴下乾燥させ、次いでオーブン中で54℃にて30分間乾燥させた。エッチングされたパネルは接着剤で結合する準備ができており、8~12時間以内に使用した。
【0079】
フローティングローラー剥離(Floating Roller Peel、FRP)強度試験
EN2243-2:2006の方法に従った。20.3cm×7.6cm×0.16cm(8.0インチ×3.0インチ×0.063インチ)及び25.4cm×7.6cm×0.064cm(10インチ×3インチ×0.025インチ)の2024-T3むき出しアルミニウムのエッチングされたパネルを、上記の「パネル準備」で記載したように、試験用に準備した。実施例又は比較例に対応する接着剤を、20.3cm×7.6cm×0.16cmの2024-T3むき出しアルミニウムのエッチングされたパネル上に適用した。次いで、プライマー処理された25.4cm×7.6cm×0.064のアルミニウムパネルを、接着剤がすでに適用された20.3cm×7.6cm×0.16cmのパネル上に適用した。次いで、アセンブリを、およそ2~5psi(13.8~34.5KPa)の圧力で金属ブロック間でプレスした。パネルアセンブリを周囲温度で72時間硬化させ、次いで、以下の変更を加えて、ASTMD-3167-76に従ってフローティングローラー剥離強度を評価した。各実施例又は比較例について3つの試料を試験し、平均値(N/25mm)を報告した。幅1.27cm(0.5インチ)の試験片を、接着したアルミニウムパネルの縦方向に沿ってカットした。試験は、周囲温度で30.5cm/分(6インチ/分)の速度で行った。各試験では、より薄い基材をより厚い基材から剥離し、結果を25mm(約1インチ)の幅に正規化した。
【0080】
圧縮弾性率試験
シリコーン型に混合生成物を注入することによって、長さ2.54cm(1インチ)及び直径1.27cm(0.5インチ)の円筒形試料(cylindrical sample)を調製した。試料を残して、室温で1週間硬化させた。圧縮弾性率試験は、各組成物について0.127cm/分(0.05インチ/分)の試験速度でISO604:2002の方法に従って実施した。5つの試験片を各組成物に対して試験し、平均値を記録した。高温(すなわち、90℃)で試験するために、試験前に試験片をその温度で少なくとも15分間事前調整した。
【0081】
実施例1~4(EX1~EX4)及び比較例1~2(CE1~CE2):
A剤の調製
エポキシ系硬化性組成物のA剤は、各場合において、主アミン成分(EC130又は2422又はBAPP)を、実験室撹拌機を備えたガラス容器中でエポキシ樹脂E828と合わせることによって調製した。混合物を周囲温度で約15分間混合し、次いで油浴を使用して80℃(176°F)まで加熱した。混合物を80℃(176°F)で60分間撹拌し続けた。次いで、混合物を周囲温度まで冷却し、DAC 150 SPEEDMIXER(Hauschild&Co.KG of Hamm Westphalia,Germanyから入手)に移した。ATBN及びK54を混合物に添加し、2000rpmで1分間混合した。次いで、SF20、A140、R202、及びBlueを添加し、3500rpmで2分間混合した。次いで、混合しながら、組成物を真空下で2分間脱気した。表2において、全ての濃度は重量パーセントで示す。
【表2】
【0082】
B剤の調製
エポキシ系硬化性組成物のB剤は、各場合において、表3に列挙された化合物を、周囲温度にてDAC150Speedmixerで合わせることによって調製した。第1のステップでは、エポキシ樹脂成分及び湿潤剤を3000rpmで2分間混合した。次いで、固体成分を添加し、3500rpmで2分間混合した。次いで、混合物を、真空下2000rpmで混合することによって2分間脱気した。表3において、全ての濃度は重量パーセントで示す。
【表3】
【0083】
A剤及びB剤の混合
A剤及びB剤の組成物を、周囲温度にて、Sulzer Mixpac of Winterthur,Switzerlandから入手した静的Quadro MFQ 10-24T Mixerで、200mLのカートリッジを用いて、体積比2:1(B剤:A剤)で一緒に混合した。
【0084】
試験
圧縮弾性率及びFRP試験を行った。この試験の条件及び結果を表4に示す。
【0085】
比較例3(CE3)
Henkel Corporation of Dusseldorf,Germanyから入手したLOCTITE EA 9394 AERO接着剤の試料は、圧縮弾性率及びFRP試験を受けた。結果を表4に表す。
【表4】
【0086】
上記の特許出願において引用された全ての参考文献、特許文献及び特許出願は、一貫した形でその全文が参照により本明細書に組み込まれる。組み込まれている参照文献の部分と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、前述の説明における情報が優先される。前述の記載は、当業者が、特許請求の範囲に記載の開示を実践することを可能にするためのものであり、本開示の範囲を限定するものと解釈すべきではなく、本開示の範囲は特許請求の範囲及びその全ての等価物によって定義される。
【国際調査報告】