(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-22
(54)【発明の名称】光制御フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/00 20060101AFI20230215BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
G02B5/00 Z
G02B5/00 B
B32B3/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537310
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(85)【翻訳文提出日】2022-06-17
(86)【国際出願番号】 IB2020062133
(87)【国際公開番号】W WO2021124214
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ロックリッジ,ジェイムズ イー.
(72)【発明者】
【氏名】ゴトリック,ケビン ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ケニー,レイモンド ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン,カレブ ティー.
(72)【発明者】
【氏名】シュミッド,ダニエル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヒルストローム,リレイ ジェイ.
【テーマコード(参考)】
2H042
4F100
【Fターム(参考)】
2H042AA03
2H042AA10
2H042AA11
2H042AA15
2H042AA26
4F100AA37B
4F100AK01B
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4F100EJ61
4F100GB41
4F100JN02B
4F100JN08
(57)【要約】
本開示は、光制御フィルム及びその製造方法を提供する。本方法は、微細構造化フィルムを提供することを含む。微細構造化フィルムは、チャネルと交互になっている複数の光透過領域を含む。微細構造フィルムは、各光透過領域の上面及び一対の側面と、各チャネルの底面とによって画定される。本方法は、各光透過領域の一対の側面及び各チャネルの底面をコーティングでコーティングすることを更に含む。コーティングは、液体中に分散している光吸収粒子を含む。本方法は、コーティングを乾燥させて、光吸収粒子を各光透過領域の一対の側面上に選択的に堆積させることを更に含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光制御フィルムを製造する方法であって、
チャネルと交互になっている複数の光透過領域を備える微細構造化フィルムであって、各光透過領域の上面及び一対の側面と、各チャネルの底面と、によって画定された表面を有する、微細構造化フィルムを提供することと、
各光透過領域の前記一対の側面及び各チャネルの前記底面を、液体中に分散した光吸収粒子を含むコーティングでコーティングすることと、
前記コーティングを乾燥させて、前記光吸収粒子を各光透過領域の前記一対の側面上に選択的に堆積させることと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記コーティングは、水性コーティングであり、前記液体は、水である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各光透過領域の前記上面及び各チャネルの前記底面は、前記光吸収粒子を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記光吸収粒子は、少なくとも20nmの平均粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記光吸収粒子は、1マイクロメートル未満の平均粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
コーティングの前記乾燥は、空気乾燥、赤外線加熱、及びオーブン乾燥のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記コーティングの前記乾燥は、少なくとも50℃の温度で達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記微細構造化フィルムの前記表面上に表面処理を実行することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記表面処理は、酸素プラズマ処理、コロナ処理、及びフルオロカーボンプラズマ処理のうちの少なくとも1つを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記微細構造化フィルムは、表面処理されていない、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記光透過領域の材料と同様の材料で前記チャネルを充填することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記コーティングは、添加剤を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記添加剤は、バインダー、界面活性剤、及び架橋剤のうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記バインダーは、アニオン性バインダー、カチオン性バインダー、及び双性イオンバインダーのうちの少なくとも1つを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記光吸収粒子は、カーボンブラック粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記光吸収粒子は、前記コーティングの総重量に基づいて、少なくとも1重量%の濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記微細構造化フィルムは、ベース層を更に含み、前記光透過領域は、前記ベース層から延びている、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記微細構造化フィルムは、重合性樹脂を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
光制御フィルムを製造する方法であって、
チャネルと交互になっている複数の光透過領域を備える微細構造化フィルムであって、各光透過領域の上面及び一対の側面と、各チャネルの底面と、によって画定された表面を有する、微細構造化フィルムを提供することと、
前記微細構造化フィルムの前記表面上に第1の表面処理を実行することと、
各光透過領域の前記上面及び各チャネルの前記底面上に第2の表面処理を選択的に実行することと、
各光透過領域の前記一対の側面及び各チャネルの前記底面を、液体中に分散した光吸収粒子を含むコーティングでコーティングすることと、
前記コーティングを乾燥させて、前記光吸収粒子を各光透過領域の前記一対の側面上に選択的に堆積させることと、
を含む、方法。
【請求項20】
前記第1の表面処理は、酸素プラズマ処理又はコロナ処理を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第2の表面処理は、フルオロカーボンプラズマ処理を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記光吸収粒子は、少なくとも20nmの平均粒径を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記コーティングを前記乾燥させることは、空気乾燥、赤外線加熱、及びオーブン乾燥のうちの少なくとも1つを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記コーティングは、水性コーティングであり、前記液体は、水である、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光制御フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「プライバシーフィルム」としても知られる光制御フィルム(light control film;LCF)は、光の透過率を調節する光学フィルムである。様々なLCFが知られており、典型的には、複数の平行なルーバーを有する光透過性フィルムを含む。ルーバーは、光吸収材料で形成されている。
【0003】
LCFは、ディスプレイ表面、画像表面、又は視認される任意の他の表面に近接して置くことができる。観察者がフィルム表面に垂直な方向でLCFを通して画像を見る垂直入射(すなわち、0度の視野角)では、画像は視認可能である。視野角が増大するにつれて、LCFを透過する光の量は、視野カットオフ角に達するまで減少し、視野カットオフ角では実質的に全ての光が光吸収材料によって遮断され、画像は視認できなくなる。これにより、視野角の典型的な範囲の外側にいる他の人が観察することを遮ることによって、観察者にプライバシーを提供することができる。
【0004】
LCFは、光吸収材料による光の吸収に起因して、低い軸上透過率を有し得る。LCFの軸上透過率の改善を目指して、いくつかの努力がなされてきた。例えば、LCFのアスペクト比を増大させて、光吸収材料の厚さを減少させることができる。しかしながら、従来の微細複製法では、高アスペクト比のLCFを提供することは実現可能ではない。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、光制御フィルム及びその製造方法に関する。本発明はまた、光学用途と共に使用するための光制御フィルムに関する。
【0006】
本開示の一実施形態では、光制御フィルムを製造する方法が提供される。本方法は、微細構造化フィルムを提供することを含む。微細構造化フィルムは、チャネルと交互になっている複数の光透過領域を含む。微細構造フィルムは、各光透過領域の上面及び一対の側面と、各チャネルの底面とによって画定されている。本方法は、各光透過領域の一対の側面及び各チャネルの底面をコーティングでコーティングすることを更に含む。コーティングは、液体中に分散した光吸収粒子を含む。本方法は、コーティングを乾燥させて、光吸収粒子を各光透過領域の一対の側面上に選択的に堆積させることを更に含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、コーティングは、水性コーティングであり、液体は、水である。
【0008】
いくつかの実施形態では、各光透過領域の上面及び各チャネルの底面は、光吸収粒子を含まない。
【0009】
いくつかの実施形態では、光吸収粒子は、少なくとも20nmの平均粒径を有する。
【0010】
いくつかの実施形態では、光吸収粒子は、少なくとも1マイクロメートルの平均粒径を有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、コーティングの乾燥は、空気乾燥、赤外線加熱、及びオーブン乾燥のうちの少なくとも1つによって達成される。
【0012】
いくつかの実施形態では、コーティングの乾燥は、少なくとも50℃の温度で達成される。
【0013】
いくつかの実施形態では、本方法は、微細構造化フィルムの表面上に表面処理を実行することを更に含む。更に、いくつかの実施形態では、表面処理は、酸素プラズマ処理、コロナ処理、及びフルオロカーボンプラズマ処理のうちの少なくとも1つを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、微細構造化フィルムは、表面処理されていない。
【0015】
いくつかの実施形態では、本方法は、光透過領域の材料と同様の材料で微細構造化フィルムのチャネルを充填することを更に含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、コーティングは、添加剤を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、添加剤は、バインダー、界面活性剤、及び架橋剤のうちの少なくとも1つを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、バインダーは、アニオン性バインダー、カチオン性バインダー、及び双性イオンバインダーのうちの少なくとも1つを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、光吸収粒子は、カーボンブラック粒子を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、光吸収粒子は、コーティングの総重量に基づいて、少なくとも1重量%の濃度で存在する。
【0021】
いくつかの実施形態では、微細構造化フィルムは、ベース層を更に含む。光透過領域は、ベース層から延びている。
【0022】
いくつかの実施形態では、微細構造化フィルムは、重合性樹脂を含む。
【0023】
別の実施形態では、光制御フィルムを製造する方法が提供される。本方法は、微細構造化フィルムを提供することを含む。微細構造化フィルムは、チャネルと交互になっている複数の光透過領域を含む。微細構造フィルムは、各光透過領域の上面及び一対の側面と、各チャネルの底面とによって画定されている。本方法は、第1の表面処理を実行し、その後、各光透過領域の上面及び各チャネルの底面上に第2の表面処理を選択的に実行すること、を更に含む。本方法は、各光透過領域の一対の側面及び各チャネルの底面をコーティングでコーティングすることを更に含む。コーティングは、液体中に分散した光吸収粒子を含む。本方法は、コーティングを乾燥させて、光吸収粒子を各光透過領域の一対の側面上に選択的に堆積させることを更に含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1の表面処理は、酸素プラズマ処理又はコロナ処理を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、第2の表面処理は、フルオロカーボンプラズマ処理を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、コーティングは、水性コーティングであり、液体は、水である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
以下の図に関連して以下の「発明を実施するための形態」を検討することで、本明細書に開示される例示的な実施形態を、より完全に理解することができる。図は、必ずしも一定の比率の縮尺ではない。図中で使用されている同様の番号は、同様の構成要素を指す。複数の同様の要素が存在する場合、特定の要素を指す小文字の指定を使用して、単一の参照番号を、複数の同様の要素のそれぞれに割り当てることができる。要素を一括して参照する場合、又は、非特定的な1つ以上の要素を参照する場合、小文字の指定を削除することができる。しかしながら、所与の図において、或る構成要素を指すために或る番号を使用することは、別の図において、その構成要素が同じ番号で標識されるように限定することを意図するものではない点が理解されよう。
【
図1A】具体化された光制御フィルムの断面図である。
【
図1B】
図1Aの光制御フィルムの極性カットオフ視野角を示す。
【
図3A】光制御フィルムを製造する例示的な方法の略断面図である。
【
図3B】光制御フィルムを製造する例示的な方法の略断面図である。
【
図3C】光制御フィルムを製造する例示的な方法の略断面図である。
【
図3D】光制御フィルムを製造する例示的な方法の略断面図である。
【
図3E】光制御フィルムを製造する例示的な方法の略断面図である。
【
図4】本開示の一実施形態による、微細構造化フィルムを製造する方法のフローチャートである。
【
図5】本開示の別の実施形態による、微細構造化フィルムを製造する方法のフローチャートである。
【
図6A】微細構造化フィルムの表面上に表面処理を実行する方法を示す。
【
図6B】微細構造化フィルムの表面上に表面処理を実行する方法を示す。
【
図7】光制御フィルムの様々なコーティング組成物についての視野角に応じた透過率のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下の説明では、説明の一部を構成し、様々な実施形態が実例として示される、添付の図面が参照される。本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他の実施形態が想到され、実施されてもよい点を理解されたい。したがって、以下の発明を実施するための形態は、限定的な意味では解釈されない。
【0029】
本開示の文脈において、「第1」及び「第2」という用語は、識別子として使用される。したがって、そのような用語は、本開示を限定するものとして解釈されるべきではない。特徴又は要素と併せて使用される場合、「第1」及び「第2」という用語は、本開示の実施形態全体を通して交換され得る。
【0030】
本明細書において使用される場合、第1の材料が、第2の材料と「同様である(similar)」と称されるとき、第1の材料及び第2の材料の少なくとも90重量%が同一であり、第1の材料と第2の材料との間に変動がある場合には、その変動は第1の材料及び第2の材料の各々の約10重量%未満である。
【0031】
本開示は、光制御フィルム及びその製造方法を対象とする。微細構造化フィルムは、チャネルと交互になっている複数の光透過領域を含む。微細構造化フィルムは、各光透過領域の上面及び一対の側面と、各チャネルの底面とによって画定されている。本方法は、各光透過領域の一対の側面及び各チャネルの底面をコーティングでコーティングすることを更に含む。コーティングは、液体中に分散した光吸収粒子を含む。いくつかの実施形態では、コーティングは、水性コーティングであり、液体は、水である。本方法は、コーティングを乾燥させて、光吸収粒子を各光透過領域の一対の側面上に選択的に堆積させることを更に含む。光制御フィルムは、ディスプレイ、窓などの様々な適用性を有する。
【0032】
図1Aは、例示的な光制御フィルム(「LCF」)の斜視図である。一実施形態では、LCF100は、高アスペクト比を有する。LCFは、光入力面110と、光入力面110の反対側にある光出力面120とを含む。光出力面120は、典型的には光入力面110に対して平行である。LCF100は、光出力面120と光入力面110との間に配置された、交互の光透過領域130(互換的に「透過領域130」と呼ばれる)と光吸収領域140(互換的に「吸収領域140」と呼ばれる)とを含む。
【0033】
図1Aに示すように、透過領域130は、典型的にはランド領域Lと一体であり、これは、ランド領域と、透過領域130のベース部131との間に界面が存在しないことを意味している。別法としては、LCFは、このようなランド領域Lを欠いていてもよく、あるいはランド領域Lと透過領域130との間に界面が存在していてもよい。典型的には、ランド領域Lは、交互の透過領域130及び吸収領域140と、光入力面110との間に配置されている。
【0034】
別法としては、いくつかの態様では、表面120が光入力面であってもよく、表面110が光出力面であってもよい。このような場合には、ランド領域は、交互の透過領域130及び吸収領域140と、光出力面との間に配置されている。
【0035】
透過領域130は、幅WTによって画定され得る。ランド領域Lを除くと、透過領域130は、典型的には、吸収領域140と名目上同じ高さを有する。この態様では、吸収領域の高さHAは、少なくとも30、40、50、60、70、80、90又は100マイクロメートルである。いくつかの場合には、高さHAは、200、190、180、170、160又は150マイクロメートル以下である。いくつかの場合には、高さHAは、140、130、120、110、又は100マイクロメートル以下である。LCF100は、典型的には、名目上同じ高さ及び幅を有する複数の透過領域130を含む。いくつかの場合には、透過領域130は、高さHT、透過領域130の最も広い部分における最大幅WT、及び少なくとも1.75のアスペクト比HT/WTを有する。いくつかの実施形態では、HT/WTは、少なくとも2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、又は5.0である。他の態様では、透過領域130のアスペクト比は、少なくとも6、7、8、9、10である。他の態様では、透過領域130のアスペクト比は、少なくとも15、20、25、30、35、40、45、又は50である。
【0036】
吸収領域140は、底面155と上面145との間の距離によって画定される高さHAを有し、このような上面145及び底面155は、典型的には光出力面120及び光入力面110に対して平行である。吸収領域140は、最大幅WAを有し、光出力面120に沿ってピッチPAだけ間隔があいている。
【0037】
ベースにおける(すなわち底面155に隣接している)吸収領域の幅WAは、典型的には上面145に隣接している吸収領域140の幅と名目上同じである。しかしながら、ベースにおける吸収領域の幅が、上面に隣接する幅と異なる場合、幅は最大幅によって画定される。複数の吸収領域の最大幅は、透過率(例えば輝度)が測定される面積などの、対象となる面積に対して平均化され得る。LCF100の吸収領域140は、典型的には、名目上同じ高さ及び幅を有する。吸収領域140は、通常、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1マイクロメートル以下の幅を有している。吸収領域140は、通常、900、800、700、600、又は500ナノメートル以下の幅を有し、かつ、少なくとも50、60、70、80、90、又は100マイクロメートルの幅を有している。
【0038】
吸収領域140は、吸収領域の高さを吸収領域の最大幅で割ったアスペクト比(HA/WA)によって画定され得る。典型的には、吸収領域のアスペクト比は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10である。いくつかの態様では、吸収領域(単数又は複数)の高さ及び幅は、吸収領域(単数又は複数)140が更に高いアスペクト比を有するように選択される。いくつかの場合には、吸収領域のアスペクト比は、少なくとも25、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、又は100である。他の場合には、吸収領域のアスペクト比は、少なくとも200、300、400、又は500である。アスペクト比は、最大10,000以上であり得る。いくつかの場合には、アスペクト比は、9,000、8,000、7,000、6,000、5,000、4,000、3000、2,000、又は1,000以下である。
【0039】
図1Bに示すように、LCF100は、交互の透過領域130及び吸収領域140、並びに透過領域130と吸収領域140との間の界面150を含む。界面150は、光出力面120に垂直である線160に対して壁角度θをなしている。壁角度θが大きいほど、垂直入射、言い換えると0度の視野角における透過率が減少する。垂直入射における光の透過率を可能な限り大きくすることができるように、より小さい壁角度が好ましい。典型的には、壁角度θは、10、35 9、8、7、6、又は5度未満である。より具体的には、壁角度θは、2.5、2.0、1.5、1.0、0.5、又は0.1度以下である。例示した実施形態では、壁角度θはゼロである、又はゼロに近い。壁角度θがゼロである場合、吸収領域140と光出力面120との間の角度は90度である。透過領域130は、壁角度θに応じて、短形又は台形の断面を有することができる。
【0040】
入射光が吸収領域140と透過領域130との間の界面から内部全反射(total internal reflection;TIR)すると、透過率(例えば可視光の輝度)を増大させることができる。光線がTIRを経ることになるか否かは、界面に対する入射角、並びに透過領域130及び吸収領域140の材料の屈折率の差から判定することができる。
【0041】
図1Bに示すように、吸収領域140間の透過領域130は、交互の透過領域130及び吸収領域140の幾何学形状によって画定される界面角度θIを有している。
図1A及び
図1Bに示すように、界面角度θIは、2本の線の交点によって画定され得る。第1の線は、第1の吸収領域140の底面及び側壁表面によって画定される第1の点、及び最も近い第2の吸収領域140の上面及び側壁表面によって画定される第2の点から延びている。第2の線は、第1の吸収領域140の上面及び側壁表面によって画定される第1の点、及び第2の吸収領域140の底面及び側壁表面によって画定される第2の点から延びている。
【0042】
いくつかの場合には、極性カットオフ視野角θPは、極性カットオフ視野半角θ1と極性カットオフ視野半角θ2の合計に等しく、これらの各々は、光入力面110に対する法線から測定される。いくつかの場合には、極性カットオフ視野角θPは、対称であり、極性カットオフ視野半角θ1は、極性視野半角θ2に等しい。別法としては、極性カットオフ視野角θPは、非対称であってもよく、極性カットオフ視野半角θ1は、極性カットオフ視野半角θ2に等しくない。
【0043】
本明細書に記載の光制御フィルム100は、任意の所望の極性視野カットオフ角θPを有し得る。一態様では、極性視野カットオフ角θPは、40°~90°の範囲又は更にはより大きい範囲である。極性視野カットオフ角θPは、様々なパラメータ、すなわちHA、WA、WT、PA、及び光制御フィルム100の材料の屈折率によって判定することができる。
【0044】
図2は、本開示の一実施形態による微細構造化フィルム200を示している。微細構造化フィルム200をコーティングして、LCFを作製する。
図2に示すように、微細構造化フィルム200は、ベース層260上に、複数のチャネル201a~201d(「チャネル201」と総称される)を含む微細構造化表面を含む。微細構造化表面は、ベース層260の上面210上に配置される。更に、チャネル201の底面205とベース層260の上面210との間に、連続するランド層L1が存在し得る。別法としては、チャネル201は、微細構造化フィルム200を完全に通過して延びていてもよい。別の態様(図示せず)では、溝又はチャネル201の底面205は、ベース層260の上面210と一致し得る。微細構造化フィルム200は、連続するランド層L1から延びている複数の光透過領域230を更に含む。いくつかの場合には、ベース層260は、後で説明されるように、透過領域230とは異なる有機ポリマー材料を含む事前形成されたフィルムである。
【0045】
例示した実施形態では、光透過領域230は、突出部である。透過領域230の高さ及び幅は、隣接するチャネル(例えば201aと201b)によって画定される。透過領域230は、上面220と、底面231と、上面220を底面231に結合する一対の側面232及び233とによって画定され得る。微細構造化フィルム200は、各光透過領域230の上面220及び一対の側面232、233と、各チャネル201の底面205とによって画定される表面を有する。
【0046】
いくつかの場合には、側面232、233は、互いに対して平行であり得る。別法としては、側面232、233の各々は、テーパ状のプロファイルを有する。更に、側面232、233の各々のテーパ状のプロファイルは、微細構造化フィルム200の上面220に向かって先細りになっている。別法としては、側面232、233は、垂直のプロファイルを有し得る。更に、複数の光透過領域230の各々の断面は、正方形の形状、短形の形状、湾曲した形状、台形の形状、及び多角形の形状のうちの少なくとも1つを含む。例示した実施形態では、光透過領域230は、短形の形状である。光透過領域230は、互いに等間隔に離れていてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、光透過領域230は、ベース層260上に高精細表面化される。例示的な高精細表面プロセスが、米国特許第8,503,122(B2)号(Liuら)に記載されている。典型的な高精細表面プロセスは、マスターネガの微細構造化成形表面上に、マスターの空洞を充填するのに十分な量の重合性組成物を堆積させることを含む。次いで、重合性組成物のビーズを事前形成されたベースとマスターとの間で移動させることによって、空洞を充填する。次いで、組成物を硬化させる。光透過領域230は、押出成形、鋳造及び硬化、コーティング、又は何らかの他の方法などの様々な方法によって、ベース層260上に形成され得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、突出部(例えば光透過領域230)は、少なくとも10マイクロメートルのピッチP
Tを有している。ピッチP
Tは、
図2に示すように、第1の突出部(例えば透過領域)の始まりと、第2の突出部(例えば透過領域)の始まりとの間の距離である。ピッチP
Tは、少なくとも15、20、25、30、35、40、45、又は50マイクロメートルであってもよい。ピッチP
Tは、通常、1mm以下である。ピッチP
Tは、典型的には900、800、700、600、又は500マイクロメートル以下である。いくつかの場合には、ピッチP
Tは、典型的には550、500、450、400、350、300、250、又は200マイクロメートル以下である。いくつかの実施形態では、ピッチP
Tは、175、150、100マイクロメートル以下である。いくつかの場合には、突出部は、単一のピッチで均等に間隔があいている。別法としては、突出部は、隣接する突出部の間のピッチが同じにならないように間隔をあけてもよい。
【0049】
いくつかの場合には、光透過領域230は、重合性樹脂で作製される。いくつかの場合では、重合性樹脂は、約300ナノメートル(nm)~約800nmの波長範囲において実質的に高い透過率を有して光学的に透明であってもよい。重合性樹脂は、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートオリゴマー及びそれらの混合物から選択される、第1の重合性成分及び第2の重合性成分の組み合わせを含んでもよい。本明細書で使用するとき、「モノマー」又は「オリゴマー」は、ポリマーに変換できる任意の物質である。用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート化合物及びメタクリレート化合物の両方を指す。いくつかの場合では、重合性組成物は、(メタ)アクリル化ウレタンオリゴマー、(メタ)アクリル化エポキシオリゴマー、(メタ)アクリル化ポリエステルオリゴマー、(メタ)アクリル化フェノール系オリゴマー、(メタ)アクリル化アクリル系オリゴマー、及びこれらの混合物を含んでもよい。重合性樹脂は、UV硬化性樹脂などの放射線硬化性ポリマー樹脂であってもよい。より具体的には、カスタムツールに対するアクリレート樹脂のUV架橋による鋳造及び硬化プロセスを使用した。ツールは、「方形波」設計で作製したが、これは、ピッチがチャネルの幅にほぼ等しいことを意味する。
【0050】
微細構造を有する物品(例えば、
図2に示した微細構造化フィルム200)は、任意の好適な方法によって調製することができる。一態様では、微細構造を有する物品(例えば
図2に示した微細構造化フィルム200)は、(a)重合性組成物を準備するステップと、(b)マスターの空洞をかろうじて充填するのに十分な量の、重合性組成物をマスターネガ微細構造成形表面(例えばツール)に堆積させるステップと、(c)重合性組成物のビーズを、少なくとも一方が可撓性である(例えば事前形成されたフィルム)ベース層とマスターとの間で移動させることによって空洞を充填するステップと、(d)組成物を硬化させるステップと、を含む方法によって調製することができる。堆積温度は、周囲温度から約180°F(82℃)の範囲に及び得る。マスターは、ニッケル、クロムめっき若しくはニッケルめっきが施された銅又は黄銅などの金属製であってもよく、あるいは重合条件下で安定であり、かつ、マスターからの重合材料のきれいな除去を可能にする表面エネルギーを有する熱可塑性材料であってもよい。ベース層が事前形成されたフィルムである場合、フィルムの表面のうちの1つ以上の表面は、光透過領域の有機材料との粘着を促進するために、任意選択で下塗り処理を施すことができる、さもなければ別の方法で処理することができる。
【0051】
重合性組成物は、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリレートオリゴマー及びそれらの混合物から選択される、第1の重合性成分及び第2の重合性成分の組み合わせを含んでもよい。本明細書において使用される場合、「モノマー」又は「オリゴマー」は、ポリマーに変換することができる任意の物質である。「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート化合物及びメタクリレート化合物の両方を意味している。場合によっては、重合性組成物は、(メタ)アクリル化ウレタンオリゴマー、(メタ)アクリル化エポキシオリゴマー、(メタ)アクリル化ポリエステルオリゴマー、(メタ)アクリル化フェノール系オリゴマー、(メタ)アクリル化アクリル系オリゴマー、及びこれらの混合物を含み得る。
【0052】
ベース層材料としては、例えば、スチレン-アクリロニトリル、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリエーテルスルホン、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンナフタレート、ナフタレンジカルボン酸に基づくコポリマー又はブレンド、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリシクロ-オレフィン、ポリイミド、及びガラスのキャストフィルム又は配向フィルムなどのポリオレフィン系材料が挙げられる。任意選択で、ベース層260は、これらの材料の混合物又は組み合わせを含有することができる。いくつかの実施形態では、ベース層は、多層であってもよく、あるいは連続相中に懸濁又は分散した分散成分を含有することができる。
【0053】
ベース層材料の例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリカーボネート(PC)が挙げられる。有用なPETフィルムの例としては、Delaware州Wilmington在所のDuPont Filmsから、商品名「Melinex 618」で入手可能なフォトグレードのポリエチレンテレフタレートが挙げられる。光学グレードのポリカーボネートフィルムの例としては、Washington州Seattle在所のGE Polymershapesから入手可能なLEXAN.RTMポリカーボネートフィルム8010、及びGeorgia州Alpharetta在所のTeijin Kaseiから入手可能なPanlite 1151が挙げられる。
【0054】
図3A~
図3Eは、光制御フィルムを製造する方法を示している。
図3Aは、微細構造化フィルム500を示している。微細構造化フィルム500は、光透過領域501を含む。隣接する光透過領域501の間に、チャネル502が画定されている。各光透過領域501は、上面503及び一対の側面504を有する。各チャネル502は、底面505を有する。各チャネル502の底面505は、微細構造化フィルム500のベース層506と一致している。
【0055】
図3Bは、チャネル502の側面504のコーティングを示している。各チャネル502を、液体中に分散した光吸収粒子507を含むコーティングでコーティングする。いくつかの実施形態では、コーティングは、水性コーティングであり、液体は、水である。具体的には、光吸収粒子507は水中に配置される。
【0056】
いくつかの場合には、水性コーティングは、添加剤を含む。添加剤は、バインダー、界面活性剤、架橋剤、又はそれらの組み合わせであってもよい。いくつかの場合には、バインダーは、アニオン性バインダー、カチオン性バインダー、及び双性イオンバインダーであってもよい。バインダーの好適な例としては、ポリウレタン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリエステル、ポリエステル-メラミン、スルホン化ポリエステル、フルオロポリマー、ポリアクリレート、スチレン-アクリル酸コポリマー、スチレン-アクリル酸-アルキルアクリレートコポリマー、スチレン-マレイン酸コポリマー、スチレン-マレイン酸-アルキルアクリレートコポリマー、スチレン-メタクリル酸コポリマー、スチレン-メタクリル酸-アルキルアクリレートコポリマー、スチレン-マレイン酸ハーフエステルコポリマー、ビニルナフタレン-アクリル酸コポリマー、ビニルナフタレン-マレイン酸コポリマー、及びそれらの塩が挙げられる。
【0057】
光吸収粒子507と組み合わせて、様々な界面活性剤が使用され得る。好適な非イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤としては、フッ素化アルキルポリオキシエチレンエタノール;フッ素化アルキルアルコキシレート;フッ素化アルキルエステル;アルキルポリエチレンオキシド;アルキルフェニルポリエチレンオキシド;アセチレンポリエチレンオキシド;ポリエチレンオキシドブロックコポリマー;アミン、アミド、エステル(脂肪酸エステルなど)及びポリエチレンオキシドのジエステル;ソルビタン脂肪酸エステル;グリセリン脂肪酸エステル;フッ素化アルキル両性混合物;ポリエーテルシロキサンコポリマー;オルガノ改質ポリシロキサン;ジメチル-ポリシロキサンブレンドである、界面活性剤が挙げられる。好適なイオン性界面活性剤としては、アンモニウムペルフルオロアルキルスルホネート;リチウムペルフルオロアルキルスルホネート;カリウムペルフルオロアルキルスルホネート;脂肪酸塩;アルキル硫酸エステル塩;アルキルアリルスルホン酸塩ジアルキルスルホサクシネート塩、アルキルホスフェートエステル塩、及びポリオキシエチレンアルキルサルフェートエステル塩から選択されるアニオン性界面活性剤が挙げられる。好適なカチオン性界面活性剤としては、フッ素化アルキル四級アンモニウムヨウ化物が挙げられる。
【0058】
いくつかの場合には、光吸収粒子507は、架橋剤と組み合わせて提供され得る。架橋剤の選択は、光吸収粒子の表面官能性に依存することになり、それゆえ、そのような用途について一般に知られている材料から選択され得る。使用され得る材料の例は、アジリジン、カルボジイミド、イソシアネート、メラミン、エピコロヒドリン、ポリカチオン、ポリアニオンである。
【0059】
光吸収粒子507を形成するために有用な光吸収材料は、可視スペクトルの少なくとも一部分における光を吸収又は遮断するように機能する任意の好適な材料であってもよい。好ましくは、光吸収材料を、光透過領域501の側面504上にコーティングするか、さもなければ光透過領域501の側面504上に設けて、LCF内に光吸収領域を形成することができる。例示的な光吸収材料としては、黒色又は他の光吸収着色料(カーボンブラック又は別の顔料若しくは染料、あるいはそれらの組み合わせなど)が挙げられる。他の光収材料は、光が光吸収領域を透過するのを阻止するように機能することができる粒子又は他の散乱要素を含むことができる。
【0060】
光吸収粒子507の材料として、商用的に入手可能な様々な顔料が使用され得る。例えば、好適な顔料は、Cabot、Clariant、DuPont、Dainippon及びDeGussaなどの製造業者から、コロイド状の安定水分散体として商用的に入手することができる。とりわけ適切な顔料としては、Cabot CorporationからCAB-O-JET(登録商標)の名で入手可能な顔料、例えば250C(青緑色)、260M(赤紫色)、270Y(黄色)又は352K(黒色)が挙げられる。いくつかの場合には、光吸収(例えば顔料)粒子507は、イオン性官能基を付与するために表面処理される。光吸収粒子507に好適なイオン性官能基の例としては、スルホネート官能基、カルボキシレート官能基、並びにリン酸又はビスホスホネート官能基が挙げられる。いくつかの実施形態では、イオン性官能基を有する表面処理された光吸収(例えば顔料)粒子は、商用的に入手可能である。例えばCabot Corporationから商用的に入手可能な、商品名250C(青緑色)、260M(赤紫色)、270Y(黄色)及び200(黒色)で販売されているCAB-O-JET(登録商標)顔料は、スルホネート官能基を含んでいる。Cabot Corporationから、商品名352K(黒色)及び300(黒色)で商用的に入手可能なCABO-O-JET(登録商標)顔料は、カルボキシレート官能基を含んでいる。
【0061】
いくつかの場合には、複数の光吸収材料(例えば顔料)を利用して、最終製品における特定の色相、色合い、又は色を達成することができる。複数の光吸収材料(例えば、顔料)が使用される場合、材料は、材料同士の親和性及び性能、並びに光学製品構成要素との親和性及び性能の両方を保証するように選択される。
【0062】
いくつかの実施形態では、光吸収粒子507のメジアン粒径は、一般に1マイクロメートル未満である。いくつかの場合には、メジアン粒径は、900、800、700、600、又は500nm以下である。いくつかの場合には、メジアン粒径は、450、400、350、300、250、200、又は100nm以下である。いくつかの場合には、メジアン粒径は、90、85、80、75、70、65、60、55、又は50nm以下である。いくつかの場合には、メジアン粒径は、30、25、20、又は15nm以下である。メジアン粒径は、典型的には少なくとも1、2、3、4、又は5ナノメートルである。いくつかの実施形態では、光吸収粒子507は、ナノ粒子であり得る。吸収領域のナノ粒子の粒径は、透過型電子顕微鏡法又は走査型電子顕微鏡法を使用して測定することができる。いくつかの実施形態では、光吸収粒子507は、少なくとも20nmの平均粒径を有する。いくつかの実施形態では、光吸収粒子507は、1マイクロメートル未満の平均粒径を有する。
【0063】
いくつかの実施形態では、光吸収粒子507は、水性コーティングの総重量に基づいて、少なくとも1重量%の濃度で存在する。いくつかの他の実施形態では、光吸収粒子507の濃度は、水性コーティングの総重量の少なくとも2、3、4、6、8、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50重量%である。いくつかの他の実施形態では、光吸収粒子507の濃度は、水性コーティングの総重量の50、40、30、20、10、又は5重量%未満である。水性コーティング中の光吸収粒子507の濃度は、熱重量分析などの当該技術分野で知られている任意の方法によって判定することができる。
【0064】
いくつかの態様では、コーティングの方法は、例えば、スピンコーティング、バーコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、スリットダイコーティング、フラッドコーティングなどを含んでもよい。別法としては、微細構造化フィルム500の各チャネル502を、水性コーティング溶液で充填することができる。
【0065】
更に、
図3Cに示すように、水性コーティングは、各光透過領域501の側面504の選択的コーティングをもたらす乾燥ステップを更に含む。光透過領域501の上面503及びチャネル502の底面505は、光吸収粒子を含まない。典型的には、乾燥のステップは、当該技術分野で知られている任意の従来の乾燥技術によって達成することができる。より具体的には、乾燥は、空気乾燥、赤外線乾燥、及びオーブン乾燥のうちの少なくとも1つによって達成することができる。いくつかの場合には、乾燥のステップは、室温で達成され得る。いくつかの場合には、乾燥は、少なくとも40、50、60、70、80、90又は100℃以上の温度で達成される。別法としては、乾燥は、赤外線ヒーターを使用することによって達成することができる。いくつかの場合には、水性コーティングを乾燥させるステップ中に、空気流が液体を妨害しないように、微細構造化フィルム500のチャネル502に対して実質的に平行に空気流509を供給してもよい。乾燥に起因して、光吸収粒子507のコーティングが側面504上に形成され得る。コーティングは、側面504に沿って下向きに進行し得る。
【0066】
図3Dを参照すると、選択的にコーティングされている微細構造化フィルム500が示されている。より具体的には、各光透過領域501の側面504上にコーティング508が形成されている。コーティング508は、
図3Cに示すように、側面504上への光吸収粒子507の堆積をもたらす水性コーティングの乾燥によって形成され得る。光透過領域501の側面504上のコーティング508の厚さは、少なくとも0.1μmである。更に、各光透過領域501の上面503及び各チャネル502の底面505は、光吸収粒子507のコーティングを含まない。
【0067】
図3Eに示すように、微細構造化フィルム500は、複数の光透過領域501及びコーティング508によって形成された光吸収領域を含む。(
図3Dに示した)各チャネル502は、光透過領域501の材料と同様の材料で充填されている。具体的には、各チャネル502を、光透過領域501の材料と同様の材料で埋め戻して光透過領域510を形成する。いくつかの場合には、材料は、硬化性の重合性樹脂などの有機ポリマー材料を含む。各光透過領域510は、コーティング508によって形成された2つの光吸収領域の間に配置される。したがって、微細構造化フィルム500は、代替の光透過領域501、510及びコーティング508によって形成された光吸収領域を含んでもよい。したがって、微細構造化フィルム500は、
図3Eに示すような光制御フィルムである。
【0068】
図4を参照すると、光制御フィルムを製造するための方法300である。方法300を、
図3A~
図3Eを参照して説明する。
【0069】
ステップ302において、方法は、微細構造化フィルム500を提供することを含む。微細構造化フィルム500は、複数のチャネル502と交互になっている複数の光透過領域501を含む。光透過領域501の各々は、上面503と、上面503から延びている一対の側面504とを含む。各チャネル502は、底面505を含む。微細構造化フィルム500の表面は、上面503と、側面504と、底面505とによって画定される。
【0070】
いくつかの場合には、方法は、微細構造化フィルム500の表面上に表面処理を実行することを更に含む。より好ましくは、表面処理は、酸素プラズマ処理、コロナ処理、及びフルオロカーボンプラズマ処理のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの場合には、微細構造化フィルム500は、表面プラズマ処理されていない。
【0071】
ステップ304において、方法300は、各光透過領域501の側面504及び各チャネル502の底面505をコーティングでコーティングすることを更に含む。いくつかの実施形態では、コーティングは、水性コーティングである。水性コーティングは、水中に分散した光吸収粒子507を含む。
【0072】
いくつかの場合には、コーティングは、添加剤を更に含む。いくつかの場合には、添加剤は、バインダー、界面活性剤、及び架橋剤のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの場合には、光吸収粒子は、コーティングの総重量に基づいて、少なくとも1重量%の濃度で存在する。
【0073】
ステップ306において、方法300は、コーティングを乾燥させて、光吸収粒子507を各光透過領域501の一対の側面504上に選択的に堆積させることを更に含む。
【0074】
いくつかの場合には、コーティングの乾燥は、空気乾燥、赤外線加熱、及びオーブン乾燥のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの場合には、乾燥は、少なくとも50℃の温度で達成される。
【0075】
図5を参照すると、光制御フィルムを製造するための方法700である。方法700を、
図3A~
図3Eを参照して説明する。
【0076】
ステップ702において、方法700は、微細構造化フィルム500を提供することを含む。微細構造化フィルム500は、複数のチャネル502と交互になっている複数の光透過領域501を含む。光透過領域501の各々は、上面503と、上面503から延びている一対の側面504とを含む。各チャネル502は、底面505を含む。微細構造化フィルム500の表面は、上面503と、側面504と、底面505とによって画定される。
【0077】
ステップ704において、方法700は、微細構造化フィルム500の表面上に第1の表面処理を実行することを含む。いくつかの実施形態では、第1の表面処理は、プラズマ処理法を含む。いくつかの実施形態では、第1の表面処理は、酸素プラズマ処理又はコロナ処理のうちの少なくとも1つを含む。
【0078】
ステップ706において、方法700は、各光透過領域501の上面503及び各チャネル501の底面505上に第2の表面処理を選択的に実行することを含む。いくつかの実施形態では、第2の表面プラズマ処理は、フルオロカーボンプラズマ処理を含む。
【0079】
ステップ708において、方法700は、表面処理された微細構造化フィルム500を、光吸収粒子507を含む水性コーティングでコーティングすることを更に含む。
【0080】
いくつかの場合には、光吸収粒子507は、水性コーティングの総重量に基づいて、少なくとも1重量%の濃度で存在する。
【0081】
いくつかの態様では、水性コーティングは、添加剤を含んでもよい。いくつかの場合には、添加剤は、バインダー、界面活性剤、及び架橋剤のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの場合には、バインダーは、アニオン性バインダー、カチオン性バインダー、及び双性イオンバインダーのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0082】
ステップ710において、方法700は、水性コーティングを乾燥させて、光吸収粒子507を各光透過領域501の一対の側面504上に選択的に堆積させることを含む。
【0083】
いくつかの場合には、水性コーティングは、少なくとも50℃の温度で達成される。いくつかの場合には、水性コーティングを乾燥させることは、空気乾燥、赤外線加熱、及びオーブン乾燥のうちの少なくとも1つを含む。
【0084】
図6A及び
図6Bを参照すると、構造化フィルム800の表面上に表面処理を実行する方法が示されている。
図6Aを参照すると、この方法は、複数の光透過領域802を含む微細構造化フィルム800を製造することを含む。隣接する光透過領域802の間に、チャネル803が画定される。各光透過領域802は、上面806及び一対の側面801を有する。各チャネル803は、底面807を有する。微細構造化フィルム800に表面処理が施される。微細構造化フィルム800の表面は、各光透過領域802の上面806及び一対の側面801と、各チャネル803の底面807とによって画定される。微細構造化フィルム800の表面は、第1の表面処理によって処理される。いくつかの実施形態では、光学フィルム800は、酸素プラズマによって処理される。酸素プラズマ処理に起因して、微細構造化フィルム800の表面の親水性が高くなり、この表面は、高エネルギー表面804によって示される。いくつかの他の実施形態では、第1の表面処理は、コロナ処理であり得る。
【0085】
図6Bを参照すると、微細構造化フィルム800は、第2の表面処理によって選択的に処理される。いくつかの実施形態では、微細構造化フィルム800は、フルオロカーボン(FC)プラズマ処理によって選択的に処理される。FCプラズマ処理は、各光透過領域802の上面806上及び各チャネル803の底面807上に選択的に適用される。FCプラズマ処理に起因して、上面806及びチャネルの底面807の疎水性がより高くなり、この表面は、低エネルギー表面805によって示される。選択的な処理に起因して、側面801は、高エネルギー表面804を有し続ける。
【0086】
更に、いくつかの実施形態では、この方法は、光透過領域802を水性コーティングでコーティングすることを含む。この方法は、水性コーティングの乾燥させることを更に含む。いくつかの場合には、水性コーティングを乾燥させることは、空気乾燥、赤外線加熱、及びオーブン乾燥のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの場合には、水性コーティングは、少なくとも50℃の温度で達成される。
【0087】
本開示は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙される特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に、本開示を過度に制限するものと解釈されるべきではない。
【0088】
実施例
特に言及されていない限り、実施例及び本明細書の残りの部分における、全ての部、百分率及び比率などは重量によるものである。以下は、実施例全体にわたって使用されている材料のリスト、並びにそれらの簡単な説明及び由来である。
【0089】
鋳造及び硬化高精細表面プロセスで使用される樹脂Aの成分を以下の表1に列挙する。樹脂Aは、微細構造化フィルム100、200、500の製造に使用され得る。
【0090】
【0091】
実施例1
「方形波」微細構造化フィルムの調製
この実施例は、微細構造化フィルム100、200、500の製造に使用することができる。
【0092】
ダイヤモンド(先端幅29.0μm、夾角3°、深さ87μm)を使用して、複数の平行な線状溝を有するツールを切断した。溝は、62.6マイクロメートルのピッチで間隔があけられた。
【0093】
以下の表2の材料を混合することによって樹脂Aを調製した。
【0094】
【0095】
上で説明した樹脂A及びツールを使用して「鋳造及び硬化」高精細表面プロセスが実施された。0.007インチ(0.178mm)のポリカーボネート(PC)フィルム上に、表1に記載した樹脂A混合物を成型し、紫外線(UV)光硬化することによって、微細構造化フィルムを作製した。
【0096】
ライン条件は、樹脂温度150°F、ダイ温度150°F、コータIR120°F縁部/130°F中心部、ツール温度100°F、及びライン速度70fpmであった。ピーク波長が385nmのFusion Dランプを硬化に使用し、100%の電力で運転した。これらの構造化フィルムの場合、精巧に精密なチャネルが外面に切削されている円筒形状の金属ロールが成形型としての役割を担う。最初に、樹脂混合物をPC基材フィルム上にコーティングし、次いで、成形型を完全に充填するために金属ロールに対してしっかりと圧し付けた。重合後、構造化フィルムを成形型から取り外した。
【0097】
得られた微細構造化フィルムは、チャネル(例えば、
図2に示したチャネル201)によって隔てられた複数の突出部(例えば光透過領域230)を含んでいた。微細構造フィルムの突出部は、ツールの溝のネガ型複製である。突出部は1.5度の壁角度を有し、したがって突出部はわずかに先細りになっている(光入力面でより広く、光出力面でより狭い)。微細構造化フィルムのチャネルは、溝の間のツールの非切断部分のネガ型複製である。
【0098】
実施例2
表面処理された光制御フィルム及び表面処理されていない光制御フィルムを製造する方法
微細構造化フィルム100、200、500と同様の微細構造化フィルムが提供される。
【0099】
【0100】
微細構造化フィルムは、樹脂Bで作製された3:1構造(幅30μm、深さ90μm)を有する。樹脂Bの組成は上記の表3に提供される。上記の表3に指定された比でモノマーをブレンドすることによって樹脂Bを調製した。希釈剤は、1つ以上の(メタ)アクリレート希釈剤を含んでいた。
【0101】
コーティング溶液は、約1%のCabojet-200カーボンブラック、0.06%のTomadol 25-9界面活性剤、及び0.04%のNeocryl A639aアクリル分散水溶液であった。この溶液をエアブラシによって、フィルム上に光沢が観察される(チャネルが満たされたことを示す)まで微細構造化フィルムに塗布した。次いで、試料を80℃のバッチオーブンで乾燥させた。0度及び約35度において軸上及び軸外%透過率(%T)のデータをHazegard Plus透明度メータによって取得した。表4は、プラズマ処理された微細構造化フィルム及びプラズマ処理されていない微細構造化フィルムの透過率パーセントを提供する。
【0102】
【0103】
実施例3:
水性コーティングを有する光制御フィルムの透過率。
微細構造化フィルム(例えば、微細構造化フィルム100、200、500、及び800)を水性コーティング溶液でコーティングする。水性コーティング溶液の様々な組成を表5に示す。
【0104】
【0105】
図7を参照して、表5の様々なコーティング組成物についての視野角に応じた透過率(%)のプロットを提供する。
図7に示すように、垂直入射では、試料1が最も高い透過率を有し、試料3及び試料2がそれに続く。
【0106】
別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される特徴サイズ、量及び物理的特性を表す全ての数は、用語「約」によって修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、特に反対の指示がない限り、上記明細書及び添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは、本明細書で開示される教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変動し得る近似値である。
【0107】
本発明をある特定の実施形態と関連付けて記述したが、様々な代替及び/又は等価な実施により、図示及び記載した具体的な実施形態を、本開示の範囲を逸脱することなく置き換え可能であることが、当業者により理解されるであろう。本出願は、本明細書で論じられた特定の実施形態のいずれの適応例又は変形例も包含することが意図されている。したがって、本開示は、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されることが意図されている。
【国際調査報告】