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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-22
(54)【発明の名称】無針送達の改善
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/30 20060101AFI20230215BHJP
【FI】
A61M5/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537341
(86)(22)【出願日】2020-12-08
(85)【翻訳文提出日】2022-07-27
(86)【国際出願番号】 GB2020053140
(87)【国際公開番号】W WO2021123736
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】1918706.1
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518139339
【氏名又は名称】エネシ・ファーマ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】ライアン,オーウェン
(72)【発明者】
【氏名】ローノワ,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】グラント,デヴィッド
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD13
4C066EE06
4C066EE14
4C066FF02
4C066GG01
4C066GG12
4C066GG15
4C066HH11
(57)【要約】
本発明は、ワクチンを含有する、固体投与薬物などの、治療薬剤および/または予防薬剤の送達のための無針デバイスにおける改善に関連する。本明細書で開示される無針デバイスは、機能性の向上ならびに使用者および/または患者の利益につながるような、新規の構造的配置構成ならびに作動および動作の形態を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングを備える、少なくとも1つの治療薬剤および/または予防薬剤の送達のための無針デバイスであって、前記ハウジングが、
力発生装置および後方ピストンを有する後方端部と、
送達されるための固体の治療薬剤および/または予防薬剤を有するカセットを受けるための前方端部であり、前記ハウジングが、軸を画定する中央アパーチャを有する前方ピストンを備え、前記前方ピストンが、前記前方端部内に摺動可能に設置される、前方端部と、
前記前方端部と前記後方端部との間に位置決めされて前記後方ピストンを前記前方端部に動作可能に連結させるスピンドルであり、スピンドル先端部を有する前記スピンドルが、軸方向において前記中央アパーチャに位置合わせされた位置と軸方向オフセット位置との間で横方向に移動可能となるように構成される、スピンドルと、
再設定ばね座と、
再設定ばね座と前記前方ピストンとの間に位置決めされた再設定ばねと、
前記軸方向オフセット位置で前記スピンドルを排他的に保持することように構造的および機能的に構成されたスピンドル保持要素と
を備える、無針デバイス。
【請求項2】
前記スピンドル保持要素が、前記スピンドル先端部の近位側におよび/または前記スピンドル先端部に隣接するように位置決めされる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記スピンドル保持要素が、引力により、前記軸方向オフセット位置で前記スピンドル先端部を支持する、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記スピンドル保持要素が、磁性であり、好適には磁性リングである、請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記スピンドルが、前記スピンドル保持要素に引き寄せられる材料を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記スピンドル保持要素が、前記スピンドルを前記軸方向オフセット位置へ物理的に付勢するように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記スピンドル保持要素が、前記再設定ばね内に収容されるコイルを備え、前記コイルの頂点が軸方向においてオフセットされる、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記スピンドル保持要素が、前記軸方向オフセット位置で前記スピンドルを固定させるように適合されたばね線を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
スピンドル位置合わせ機構をさらに備える、請求項1から8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記スピンドル位置合わせ機構が、前記スピンドル先端部を前記軸方向に位置合わせされた位置の方に横方向に移動させるために、前記スピンドルの中間セクションを案内するように適合された傾斜部分を有する位置合わせスリーブを備える、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記力発生装置が、作動ばねを備える、請求項1から10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記再設定ばねおよび前記作動ばねが、並列に設けられる、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
回転継手により後方ピストンが前記スピンドルに隣接する、請求項1から12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記回転継手が、前記スピンドルの後方端部に位置する対応する雄型接続装置を受けるための雌型接続装置またはソケットを備える、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記デバイスと共に使用されるためのカセットと組み合わされ、前記カセットが、少なくとも1つの治療薬剤および/または予防薬剤を含有する錠剤、微小錠剤、または細片を収容する、請求項1から14のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項16】
前記デバイスが、接続フィードバック機構をさらに備え、前記接続フィードバック機構が、視覚フィードバックに加えて、前記カセットが固定的に接続されて前記デバイスの作動の準備が整ったことの触覚信号を使用者に提供する、請求項1から15のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記触覚信号が振動である、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
カセット解放および自動排出機構をさらに備え、前記前方端部の外部ケーシングおよび前記後方端部の外部ケーシングが互いに対して軸回転可能であり、前記ケーシングを捻じることにより、前記カセットが前記前方端部の内部での構造的拘束から解放され、その結果、前記前方ピストンに作用する前記再設定ばねの力が、前記カセットを前記デバイスから自動で排出させる、請求項1から17のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項19】
ハウジングを備える、治療薬剤および/または予防薬剤の送達のための無針デバイスであって、前記ハウジングが、
治療薬剤および/または予防薬剤を含有する固体の薬物を前記デバイスから押すための力発生装置を有する後方端部セクションと、
前記薬物を有するカセットを受けるための前方端部セクションであり、前記前方端部が、中に摺動可能に設置される前方ピストンを備える、前方端部セクションと、
カセット解放および自動排出機構であり、前方端部セクションを包囲する第1のケーシングが、前記後方端部セクションを包囲する第2のケーシングに対して軸回転可能であり、互いに対して前記ケーシングを捻じることにより、前記前方端部内で前記カセットを保持するための内部での構造的拘束が解放され、前記前方ピストンに作用する力により前記デバイスから前記カセットを自動で排出させることが可能となる、カセット解放および自動排出機構と
を備える、無針デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワクチンを含有する、固体投与薬物などの、治療薬剤および/または予防薬剤の送達のための無針デバイスにおける改善に関する。詳細には、本明細書で開示される無針デバイスは、機能性の向上ならびに使用者および/または患者の利益につながるような、新規の構造的配置構成ならびに作動、および動作の形態を有する。
【0002】
より詳細には、本開示および本明細書の発明は、固体投与の治療薬剤および/または予防薬剤の送達のための新しい無針デバイスに関し、デバイスは、改善された安全性および信頼性での、ワクチン(または、ワクチンを含有する製剤)などの、少なくとも1つの治療化合物の送達を可能にする、改善された信頼性を有する再設定機構を有する。
【0003】
治療薬剤または予防薬剤の送達を行っているときの安全性および使用者経験をさらに向上させるような、カセット解放機構を有する、ワクチンを含有する、固体の薬物などの、治療薬剤および/または予防薬剤の送達のための無針デバイスがさらに開示される。
【0004】
本発明はさらに、無針送達の使用および無針送達に関連する方法に関連する。
【背景技術】
【0005】
治療薬剤または予防薬剤の投与の一般的なルートは、針および注射器を使用する液体製剤の非経口送達を介するものである。非経口送達は、通常は他のルートによってあまり吸収されないおよび/または迅速な送達を必要とする治療薬剤または予防薬剤のために利用される。非経口送達はまた、経口送達または肺送達などの、他の標準的な送達ルートと比較して、送達のためのより効率的なルートのうちの1つである。
【0006】
針を介する非経口送達の複数の不利益の中でもとりわけ、針に付随する患者にとっての不快感および苦痛、ならびに鋭利物を使用することにより生じる健康リスクということがある。
【0007】
かなりの割合の治療薬剤または予防薬剤が低溶解性であり、したがってしばしば準最適な製剤が製造されることになる。加えて、治療製剤または予防製剤は、通常、固体投与形態と比較して水性形態での安定性が低い。
【0008】
薬物は、皮膚の外側層を粉末が貫通することができるような速度まで粉末を加速させることで投与され得る場合がある。このようなシステムは、通常、人間の組織に貫通するために秒速数百メートルの速度を必要とする。他のシステムは、針を必要とすることなく比較的低い速度で皮膚の中へ押し込まれ得る治療化合物の固体棒または細片を使用する。
【0009】
本出願人は、蛋白質およびワクチンを含有する固体投与治療薬を導入するための手段として使用される独自の無針固体投与送達テクノロジを成功裏に開発した。このテクノロジの開発は、少なくとも、国際出願WO2003/023773、WO2004/014468、WO2006/082439、WO2006/082439、およびWO2017/068351に説明されている。
【0010】
最初の方法は、先駆的な投射物を用いて皮膚を貫通することによって化合物または製剤を送達すること、および、投射物の後で、液体形態、半液体形態、または固体投与形態で、対象の治療法を導入することを含む。しかし、デバイスは、先駆的な投射物を必要とすることなく、固体投与送達を行うことも可能とする。
【0011】
無針送達に適するこれらのデバイスは、例えば米国特許第8,574,188号および他の開示などで、多数の多様な反復および実施形態において本出願人によって詳細に説明されている。
【0012】
この一般的な種類の無針デバイスは、使い捨ての1回使用の構成要素(本明細書では、カセットとも称される)、および、再使用可能であるアクチュエータを有する。本出願人によって案出された、それによってデバイスおよびカセットが動作する一般的機構は本明細書では簡潔に説明されるが、上記の国際特許公開の参考文献で詳細に確認され得る。
【0013】
使い捨てのカセットが中央アパーチャを備え、中央アパーチャ内で排出装置または駆動ピンが薬物パッケージまたは注入液の後方に設置され、薬物パッケージまたは注入液が治療薬剤および/または製剤を含有する。薬物パッケージを収容するこの使い捨ての構成要素が、例えばアクチュエータデバイスのハウジング端部の内部にねじ込まれるかたちで、位置決めされることにより、アクチュエータの中に装填され得る。
【0014】
ハウジングの前方端部がカセットに動作可能に連結されており、その結果、ハウジングにカセットが組み付けられてデバイスが動作させられるときに、デバイスの作動機構が、カセットから薬物パッケージを押すのに十分な力を発生させる。
【0015】
最初に、プッシュボタンを用いることにより、または皮膚に対して使い捨てのカセット(既に、アクチュエータデバイスの中に装填されている)を押すことにより、作動が開始され得る。デバイスの後方端部にあるばねの力のもとで、ストライカー(ハンマーまたはスピンドルなど)がハウジング内のガイドに沿って移動し、ピンに接触する。ピン(本開示では、駆動ピン)は、平坦なヘッドおよび細長い本体を備え、接触時に中央アパーチャに沿って薬物パッケージが押されてカセットの顎部分から外れることになるように、位置決めされる。薬物パッケージにより皮膚を穿刺することを可能にするのに十分なエネルギーが、発生させられる。ピンが継続して薬物パッケージを患者の中の必要な深さまで押し込み、この必要な深さは、部分的に、パッケージの長さにより、および、ピンにより薬物パッケージを押すときの程度により、決定される。
【0016】
したがって、本出願人のこれらのデバイスは、低い速度で投与される場合でも薬物パッケージにより皮膚を貫通することを可能にする。低い速度は、通常、本文脈では、100m/s未満として定義されるが、好適には、この速度は10m/s未満である。薬物が高い速度で発射されるのではなく低い速度で押されることを理由として、1回分の投与量が、常に、皮膚下の正確な深さ(等しい深さ)に送達されることを保証することが可能となる。これは、多様な種類の皮膚および多様な場所の皮膚でこれらのシステムが使用され得、それでも1回分の投与量が等しい深さに送達されるということを意味する。しかし、固体投与薬物の治療の無針送達にはいくつかの課題が残る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
使用者によって動作させられる送達デバイスでは、再使用可能な構成要素つまりアクチュエータデバイスが作動後に容易にかつ高い信頼性で再設定されることが可能であることが望ましい。したがって、本発明は、一態様で、無針薬物送達デバイスの信頼性を改善するという要望に起因する。
【0018】
さらに、作動後にデバイスから使い捨てのカセットが取り外されるときの手段は、重要であり、投与者の快適さおよびコンプライアンスを向上させるために針刺し傷のリスクをなくし、注入直後の端部との接触を最小にすることが望まれる。したがって、本発明は、治療薬剤および/または予防薬剤の送達のための無針薬剤デバイス、ならびに/あるいは、投与者による使用および/または自己使用を支援するような、当該デバイスを動作させる方法を提供する必要性に起因する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
開示される本明細書の発明は、ハウジングを備える、少なくとも1つの治療薬剤および/または予防薬剤の送達のための無針デバイスを備え、ハウジングが、
力発生装置および後方ピストンを有する後方端部と、
送達されるための固体の治療薬剤および/または予防薬剤を有するカセットを受けるための前方端部であり、ハウジングが、軸を画定する中央アパーチャを有する前方ピストンを備え、前方ピストンが、前方端部内に摺動可能に設置される、前方端部と、
前方端部と後方端部との間に位置決めされて後方ピストンをデバイスの前方端部に動作可能に連結させるスピンドルであり、スピンドル先端部を有するスピンドルが、軸方向において中央アパーチャに位置合わせされた位置と軸方向オフセット位置との間で横方向に移動可能となるように構成された、スピンドルと、
再設定ばね座と、
ばね座と前方ピストンとの間に位置決めされた再設定ばねと、
軸方向オフセット位置でスピンドルを排他的に保持するように構造的および機能的に構成されたスピンドル保持要素と
を備える。
【0020】
用量の正確な送達および薬効または予防効果を保証するためには、デバイスの動作に関連する安全性および信頼性が非常に重要である。本出願人は、デバイスの再設定が失敗し得ること、および、このような例において、患者/使用者によるデバイスのさらなる使用が妨げられる可能性があること、を見出した。
【0021】
本発明はこの問題に対しての新しい解決策を提供する。機構を再構成すること、および、本明細書で開示される特徴の新規の組み合わせを包含することにより、再設定機能の失敗のリスクが回避されること、ならびに、各々の新しい治療薬剤カセットおよび/または予防薬剤カセットを用いての送達デバイスの患者または臨床医による再使用が高い信頼性で可能となることが保証される。
【0022】
本明細書で開示される送達デバイスが、スピンドルを高い信頼性でその中心軸から解放すること、および、重要なこととして、前方ピストンがその最も前方側の位置にあるときに、つまりカセットを取り付けていないときに、スピンドルを、常に、軸方向に位置合わせされていない位置でまたはオフセット位置で成功裏に保持すること、を可能にする。
【0023】
まず、再設定ばね座と前方ピストンとの間に配置された再設定ばねが、カセットが取り付けられていないときにピストンをその最も前方側の位置に置くことを保証し、それにより、スピンドル先端部を径方向外側の位置で静止させて中央軸からオフセットすることを可能にする。
【0024】
次いで、上記のデバイスがスピンドルをオフセット位置に戻すように機能する場合でも、このような配置構成によって上述したような再設定の失敗が呈される。本出願人により研究が行われてデバイス構造のさらなる開発が行われるまでは、再設定の失敗の原因は不明であったかまたは特定されていなかった。特定の理論に束縛させるつもりは無いが、再設定の失敗の推定原因が、複数の機能に対して既存の構造部(デバイス内に既に存在する)を固有に使用することに起因することが解明された。言い換えると、既存の構造部はデバイスの作動におけるそれらの主要な機構的役割に加え追加の機能を提供するが、この構造部は、準最適となり得る。再設定の失敗を回避するためのおよび信頼性を向上させるための異なる解決策が必要であった。
【0025】
有益なことに、本出願人は、機構的に独立する(つまり、デバイスの主要な作動で使用されるための既存のものではない/必須のものではない)新しい別個の要素の導入を含めた、本発明のデバイスの新しい構成が、再設定の失敗を回避するのを可能にすることを見出した。オフセット位置でスピンドルを保持するために単独で機能する機構的に独立するスピンドル保持要素が例外なく成功裏にこれを行うことが分かっており、したがって、従来技術のデバイスに対しての改善を実現する。有益なことに、保持要素の独立した構造的特徴を含めた、特徴の新しい構成および組み合わせが、スピンドル先端部を横方向におけるオフセット位置で保持するのに必要である十分な追加の力を提供し、したがって、スピンドルが意図されずに移動することがない。徹底的な試験を通して、本発明のデバイスの動作が再設定の失敗事象を成功裏に回避することが分かった。
【0026】
スピンドル先端部がオフセット位置または軸方向に位置合わせされていない位置にあるいくつかの実施形態では、先端部が前方ピストンに当接されるかまたは前方ピストンに接触して支持され、具体的には、スピンドル先端部が前方ピストンの背面に当接され、対して、軸方向に位置合わせされた位置では、スピンドルの先端部が前方ピストン内の中央アパーチャ軸に位置合わせされる。例えば、前方ピストンの後方を向く表面がピストンの背面に一時的に当接される(デバイスに新しいカセットが再装填され、プライミングが行われ、作動されるまで)。したがって、この表面が、作動前に、および作動後にも再び、軸方向に位置合わせされていない位置でスピンドルを解除可能に固定することができる。
【0027】
実施形態では、スピンドル保持要素が、アパーチャの中央軸から横方向に離間された引力によりスピンドル先端部を軸方向オフセット位置で保持する。
力発生装置は、圧縮ばねまたは作動ばねを備えることができる。
【0028】
好適な実施形態では、再設定ばねおよび作動ばねが直列に位置決めされない。従来技術の機構は、再設定のために必要となる力を提供してそれによりスピンドルを後方ピストンに永久的に接触させた状態で維持し、スピンドルが前方ピストン中央孔から離れるように前方ピストンをその最も前方側の位置で維持するために、作動ばねと直列に配置された再設定用ばねを使用するものであった。しかし、これは望ましいものではない。その理由は、デバイスの長さが妥協される可能性があるからである。この送達には6m/sの標的速度が必要となり、これにより最低限の加速距離が必要となる。作動ばねによって供給されたエネルギーの一部が再設定ばねによって吸収され、その結果、このエネルギー吸収を補償するために追加の加速距離が必要となり、それによりデバイスの全長が増大する。したがって、好適な実施形態では、再設定ばねおよび作動ばねが並列の配置構成で提供される。このような配置構成は有用である。その理由は、本再設定機構が、スピンドル先端部を前方ピストン中央孔から解放した状態にして前方ピストン中央孔に係合させない位置まで、前方ピストンを前方に移動させることを伴い、それにより、始動位置に到達するまで軸方向オフセット位置にスピンドル先端部を戻すことを可能にし、より長い加速距離を必要としない。これにより、より短くてしたがってよりコンパクトであるデバイスを可能にし、有利である。
【0029】
例えば、部分的に、横方向の力および/または径方向の引力を使用することにより、変位を達成するための手段が、多数の異なる実施形態によって実装され得る。したがって、スピンドル保持要素がスピンドル先端部に隣接して位置決めされ得る。
【0030】
一実施形態では、引力要素が磁気リングであり、スピンドルまたはスピンドル先端部の少なくとも一部が金属を含む。好適な実施形態では、磁気リングが径方向の単極磁気リングである。磁気リングが、開いていてよい前方ピストンの背面端部の内部に位置決めされ得る。このような実施形態では、磁気リングによって発生する磁場が金属のスピンドル先端部を引き寄せる。例えば、再設定フェーズ中、再設定ばねによって適用される反力により前方ピストンが前方に移動し、それによりスピンドルおよびスピンドル先端部が前方ピストン中央アパーチャから係合解除されて磁気引力により磁気リングの方に引かれることが可能となり、ここでは、スピンドルおよびスピンドル先端部が軸方向オフセット位置で一時的に保持される。
【0031】
他の実施形態では、スピンドル保持要素がスピンドルの位置を付勢するように構成される。スピンドル保持要素が、再設定ばねのコイル内に収容される二次コイルを備えることができる。具体的には、再設定ばねの一方の端部が螺旋パターンのコイル状であってよい。コイルの内側部分が、スピンドルの前方端部の直径よりわずかに大きい内径を有することができる。しかし、螺旋によって形成される最終的なコイルが中央軸からオフセットされ、したがって、再設定中にスピンドル先端部を中央軸から変位させる。
【0032】
いくつかの実施形態では、スピンドル保持要素が、前方ピストンに取り付けられた、固定のための幾何形状を有するばね線を備える。固定のための幾何形状が、少なくとも中央軸からのクリアランスを最小にしてスピンドルの先端部を保持するように機能する二重ピッチのコイルを備える。固定のための幾何形状が、再設定中にスピンドルを一時的に引くことになるように/スピンドルを前方ピストンのアパーチャに対しての位置合わせから外してオフセット位置に置くことになるように、その輪郭を構成される。
【0033】
いくつかの実施形態では、後方ピストンが回転継手によりスピンドルに隣接する。いくつかの実施形態では、後方ピストンが、スピンドルの後方端部に位置する対応する雄型接続装置を受けるための雌型接続装置またはソケットを備えることができる。スピンドルの雄型接続装置が、後方ピストンと共に改善された確実な回転運動を行うためのボールを備えることができる。ボールソケット継手などの、後方ピストンとスピンドルとの間の回転可能な接続装置が、スピンドルの前方端部におけるスピンドル先端部の配置の移動を拡大することを支援することができる。具体的には、この接続装置が、考察される変位機能により付勢される再設定の能力を改善するために、最小の摩擦でスピンドルを横方向に枢動させることを可能にする。例えば、スピンドル先端部の変位がより正確でより安定したものとなり得る。
【0034】
別の実施形態では、ボールソケットがスピンドル上で締結され得る。構造的には、これにより、再設定ばねを並列の配置構成で配置することを可能にすることができる。その理由は、スピンドルを定位置で保持する必要がなくなるからである。
【0035】
いくつかの実施形態では、後方ピストンが、スピンドルの案内中の精度を向上させるように構成される。さらに、これが、デバイスの作動中に移動する構成要素の間の摩擦を最小にすること、および、デバイスの必要となる作動力を低減することを支援することができる。いくつかの実施形態では、後方ピストンが前方ショルダを備えることができるか、または、ハウジングの後方端部内でのおよびその案内ポスト内での係合を改善するための拡大した後方端部を備えることができる。
【0036】
デバイスは、位置合わせ機構をさらに備えることができる。このような事例では、位置合わせが、一定の表面輪郭を有する傾斜部分を有する位置合わせスリーブによって実現される。スピンドルが拡大中間セクションまたは拡大中央セクションを有することができる。デバイスのプライミング中、スピンドル中間セクションが位置合わせスリーブの傾斜部分に接触し、それによりスピンドルが中央軸まで運ばれ、スピンドルが軸方向において位置合わせされ、さらには、作動ばねからの力のもとで案内孔を通してスピンドル先端部を解放することを可能にする。
【0037】
好適な実施形態では、デバイスと共に使用されるカセットが、治療薬剤および/または予防薬剤を含有または収容する固体の製剤などの薬物パッケージを収容する。このカセットが、具体的には、例えば病気の予防または治療のための固体投与ワクチン、あるいは、例えばアレルギー症状の治療または防止のための、固体投与免疫薬剤を有することができる。
【0038】
送達デバイスの前方端部の中にカセットが装着される手法では(本明細書において上記で説明したバイオネット構成を介する)、作動後の切り離しには操作が必要となる可能性がある。カセット自体の手動の操作を用いることなく正確なタイミングで制御下で取り外しを行うためには、使用されるカセットの幾何形状により問題が発生することが使用者により指摘されている。
【0039】
したがって、本出願人は、カセット自体を物理的に取り扱うことなくカセットを取り外すことを可能にする別の技術的な解決策を開発した。
本デバイスが、上述したように、カセット解放および自動排出機構をさらに備えることができ、前方端部および後方端部が互いに対して軸回転可能であり、後方端部に対しての前方端部の外部の軸回転により、カセットが前方端部の内部での構造的拘束から解放され、その結果、前方ピストンに作用する再設定ばねの力が、デバイスからカセットを自動に排出させる。
【0040】
したがって、本発明は、治療薬剤および/または予防薬剤の送達のための無針デバイスにその範囲が及び、無針デバイスが、治療薬剤および/または予防薬剤を含有する固体の薬物を上記デバイスから押すための力発生装置を有する後方端部と、薬物を有するカセットを受けるための前方端部であり、前方端部が、中に摺動可能に設置される前方ピストンを備える、前方端部と、カセット解放および自動排出機構と、を備え、前方端部および後方端部が互いに対して軸回転可能であり、後方端部に対しての前方端部の外部の軸回転により、前方端部内でカセットを保持するための内部での構造的拘束が解放され、前方ピストンに作用する力によりデバイスからカセットを自動で排出させることが可能となる。
【0041】
デバイスのこの新規の配置構成が、デバイスからの使用済みのカセットの迅速でありつつも制御下の廃棄を実行するために、単純かつ認識しやすい使用者動作により、半自動の切り離し(解除およびひいては自動の排出のために手動で捻じる)を支援する。これによりさらに、無針送達での汚染のリスクが低減され、効率的にデバイスを再使用すること(取り出し、および薬物消費物の再装填を行うこと)が可能となる。これは特には、現場ベースの環境で有用となり得る。
【0042】
このような配置構成は、取り扱いによる汚染の技術的問題を解決するのに使用される特徴の組み合わせおよび配置構成を提供することにより、独自の発明概念を構成するが、特に好適な実施形態では、本発明は上述したデバイスと共に使用され得る。この組み合わせが、無針デバイスの分野で別の利点を提供するために本デバイスと組み合わされ得る。
【0043】
本発明の2つの態様のこの独自の組み合わせが、まとめて、薬物およびワクチンの無針送達の分野で別の利点を提供する。
本発明はさらに、治療薬剤または予防薬剤を含有する固体の薬物をそれを必要とする患者に送達するために上述のデバイスを利用することを含む、病気を防止または治療する無針の方法に関連する。
【0044】
次いで、以下の図面を参照して、単に例として本発明の種々の態様を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】デバイスが、カセット組立体を装填する前の、非起動位置にある状態である、本発明による無針デバイスを示す断面図である。
図1a】治療薬剤および/または予防薬剤を有する、無針送達デバイスに装填されるためのカセット組立体を示す図である。
図2】治療薬剤および/または予防薬剤を有するカセットパッケージが前方端部の中に挿入されて、前方端部に回転可能に係合されて、堅固に接続されて、使用の準備が整った状態である、図1のデバイスを示す断面図である。
図3】プライミング(作動前)段階中の図1のデバイスの配置構成を示す図である。
図4】自動作動の直前の図1のデバイスの配置構成を示す図である。
図5】作動直後の図1のデバイスの配置構成を示す図である。
図6】再設定作動中の図1のデバイスを示す図である。
図7】軸方向オフセット位置でデバイスのスピンドル先端部を保持するための手段を提供する代替の構造的配置構成を示す図である。
図8】軸方向オフセット位置でデバイスのスピンドル先端部を保持するための手段を提供する別の代替の構造的配置構成を示す図である。
図9a】無針デバイスが新規のハンズフリーのカセット排出機構を備える、本発明の別の態様を示す斜視図である。(本発明のこの態様は、上述の任意の実施形態に従って、および、図1から8に例示される構造部のうちの任意の構造部に関連して、実施例により本発明のデバイスと組み合わされてもよい。)
図9b】無針デバイスが新規のハンズフリーのカセット排出機構を備える、本発明の別の態様を示す断面図である。(本発明のこの態様は、上述の任意の実施形態に従って、および、図1から8に例示される構造部のうちの任意の構造部に関連して、実施例により本発明のデバイスと組み合わされてもよい。)
図9c】無針デバイスが新規のハンズフリーのカセット排出機構を備える、本発明の別の態様を示す断面図である。(本発明のこの態様は、上述の任意の実施形態に従って、および、図1から8に例示される構造部のうちの任意の構造部に関連して、実施例により本発明のデバイスと組み合わされてもよい。)
図9d】無針デバイスが新規のハンズフリーのカセット排出機構を備える、本発明の別の態様を示す断面図である。(本発明のこの態様は、上述の任意の実施形態に従って、および、図1から8に例示される構造部のうちの任意の構造部に関連して、実施例により本発明のデバイスと組み合わされてもよい。)
図9e】無針デバイスが新規のハンズフリーのカセット排出機構を備える、本発明の別の態様を示す斜視図である。(本発明のこの態様は、上述の任意の実施形態に従って、および、図1から8に例示される構造部のうちの任意の構造部に関連して、実施例により本発明のデバイスと組み合わされてもよい。)
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1では、本発明の無針送達デバイスの実施例が示される。断面図が、カセットが中に装填される前の、作動前の状態の送達デバイス(1)を示す。
デバイス(1)が、固体形態、半固体形態、または液体形態である、医薬品またはワクチンなどの、治療薬剤および/または予防薬剤(117)あるいは治療薬剤/予防薬剤を含有する製剤を送達するように適合される。送達が、デバイス自体により身体に予め穿孔を施すことなく、初期状態においてカセット組立体(100)内に収容されている薬剤または製剤(117)をこのカセットから人体または動物の体に効果的に押し込むことによって達成される。送達されるための薬剤が、カセットを用いて嵌め込まれるように寸法決定された、錠剤または微小錠剤、細片、または他の固体として、調製され得る。本記述を通して、通常は、「固体投与製剤」と称される。
【0047】
デバイスと共に使用されるためのカセット組立体(「カセット」)の実施例が図1aに示される。この時点では、カセット(100)が衛生のためにパッケージ前の状態であってよく、デバイス(1)に装填される準備が整ったときのみ包装を取られる。
【0048】
カセット(100)が、カセット本体(103)と、中央に位置決めされたカセットピン(105)および固体投与製剤(117)をさらに収容するキャリッジ(107)とを備える。これらの構成要素が、初期状態において、カセット本体内で定位置で固定されている。キャリッジがカセット本体内で作動前において解除可能に固定されており、解放前脚部(図示せず)によって定位置で支持されている。カセット本体が、本体のちょうど前方端部のところにまたは近位側の場所のところに円錐形開口部(111)をさらに備える。
【0049】
キャリッジが、キャリッジ(107)の前方端部内に位置する2つの顎部(109)を有する。固体投与製剤(117)がその外部表面に対しての圧縮作用によって保持されている。具体的には、送達デバイスの装填および作動までの、保管中、および、カセットの一般的な移動中または輸送中、顎の横方向の圧縮力が、固体投与物(117)をキャリッジ(107)内のこの位置で保持するための十分な摩擦を発生させる。カセットピン(105)が固体投与製剤(117)の後方に位置決めされており、固体投与製剤(117)の後方を向く端部に当接されている。カセットピンが、初期状態において、1組のピン解除クリップ(115)によりキャリッジ(107)内の定位置で支持される。カセット(100)の組み立て中、ピン解除クリップがピン内の対応する1つまたは複数の溝の上に掛合されている。
【0050】
カセット(100)は、カセットをアクチュエータに接続したりカセットをアクチュエータから解放したりすることを支援するように機能するバイオネットペグ(112)をさらに有する。
【0051】
再び図1を参照すると、無針送達デバイス(1)自体が、前方端部構成要素/セクション(212a)および後方端部構成要素/セクション(212b)を備えるハウジング(212)を備える。これらのセクションが互いに動作可能に内部連結されており、実施形態では、外部ハウジングのこれらの2つの部分を互いに対して回転させることになるように配置構成されている。
【0052】
後方端部構成要素(212b)は、ここでは圧縮ばねまたは作動ばね(214)および後方ピストン(215)として示される、力発生手段を収容する。発生する力は、約10N~40Nであり、より好適には15N~35Nであり、最も好適には18N~31Nである。ばねの後方に圧縮棒(234)が存在し、圧縮棒(234)が接触面を提供し、ばねがこの接触面に対して作用することができる。
【0053】
前方端部構成要素(212a)は、前方ピストン(218)を有する。前方ピストン(218)がデバイス内に摺動可能に設置されており、その結果、カセットが装填されるとき、デバイスの近位端を押すことによりカセットの前方表面が本体表面に係合され、カセットおよびひいては前方ピストンが前方端部構成要素内に上方に摺動し、それにより、デバイスをプライミングして最終的に作動させる。前方ピストンは、中央軸(X)と、中にある中央アパーチャ(250)とをさらに画定する。再設定ばね(244)が前方端部内に位置し、前方ピストン(218)と位置合わせスリーブ再設定ばね座(209)との間に存在する。
【0054】
前方端部ハウジング構成要素(212a)および後方端部ハウジング構成要素(212b)がスピンドル(210)を通して動作可能に連結されている。スピンドル(210)がスピンドル先端部(211)を有し、スピンドル先端部(211)が、最終的には、中央軸(X)に対してスピンドルが位置合わせされているときに治療薬剤および/または予防薬剤(117)をカセット(100)から人体または動物の体に押し込むためにカセット(装填時)の駆動ピン(105)に接続されるように適合され、したがって、作動中に中央アパーチャ(250)を通過するように適合される。
【0055】
この実施例では、スピンドルの近位端(近位は、デバイスが押されているところの患者に皮膚部位に最も近いスピンドルの端部として定義される)がスピンドル先端部(211)を備え、スピンドル先端部(211)が、磁気リング(205)まで引かれる(および、磁気リング(205)に接続され得る)材料で作られている。したがって、磁気リングがスピンドル保持要素としてデバイスのこの構造的配置構成で独立して機能し、スピンドル先端部を軸方向オフセット位置で高い信頼性で支持するように構成される。デバイスが作動されるまで、磁気リングがこれを継続して行うことになる。しかし、磁気リング(205)の構造部は、スピンドルおよび/またはスピンドル先端部を横方向に変位させて支持するように機能する代替の構造であってもよい。いずれの特定の形態であっても、独立した機能性が適合することを条件として(つまり、構造が単独で提供され、他の機能を引き受けずにこの機能のみを引き受けるように配置構成される)、この構造部は本発明のこの実施例で提供される他の構造部との組み合わせでも言及され、本発明のこの実施例で提供される他の構造部との組み合わせで明確に開示される。例えば、従来技術に既に存在し、したがって、本機構の開示における主要な機能を有する構造的特徴はこの必須条件を満たさない。その理由は、このような構造的特徴は再設定の失敗の同じ問題を受ける傾向が高く、したがってこの技術的問題を妥当に解決しないからである。
【0056】
示される図では、後方ピストン(215)が回転継手(225/221)によりスピンドル(210)に隣接している。スピンドル(210)の後方端部が、そのソケット(225)を介して後方ピストンに接続されたボール継手(221)として提供される。このボールソケット接続装置が、前方ピストン内のアパーチャとの軸方向における位置合わせと非軸方向における位置合わせとの間でスピンドルが横方向に移動するときにスピンドル先端部(211)の軸方向位置を制御するように機能する。この種類の接続装置は摩擦を最小にしてスピンドルが枢動することを可能にし、それにより、変位機構によって付勢されるためのおよびより正確でより安定したものとなるための再設定の能力を改善する。
【0057】
前方ピストンおよび後方ピストンが後方アパーチャ(243)およびスピンドル(210)を介して連結され、スピンドル(210)の遠位端がアパーチャ(243)を通過しており、そこで、ピストン(215)のばねフォロワーに接触する。
【0058】
この実施例では、スピンドルがさらに、示されるように、中間領域(231)および成形されたショルダ(231a)を有するように適合される。この構造部は、位置合わせスリーブ(260)の輪郭に連結されるようにおよび位置合わせスリーブ(260)の輪郭に従うように設計されている。これにより自動の作動が可能となる。すなわち、スピンドルが中央アパーチャ(250)との位置合わせされていない状態から軸方向に位置合わせされた状態まで引かれることが必要であり、その結果、完全にプライミングされるときに、デバイスが自動で作動するようになる。
【0059】
したがって、位置合わせスリーブの内側表面(260/232)が、概して、スピンドル(スピンドルの中間セクション(231)のショルダ領域(231a))を案内して、スピンドル先端部をオフセット静止位置から中央軸(X)の方に径方向内側に強制的に移動させるように、成形される。最終的には、デバイスが完全にプライミングされるとき、スピンドル先端部が前方ピストン(218)内の中央アパーチャ(250)に完全に位置合わせされるようになり、その結果、スピンドル先端部が、作動ばね(214)により、直線方向で中央アパーチャ(250)を通るように駆動されることになり、そこで駆動ピン(105)に接触する。
カセット接続装置
図2は、カセットがデバイスに位置合わせされてデバイスに装填される方法を示す。カセットおよびデバイスの接続装置が使用者に正のフィードバックを提供することがさらに有用である。したがって、カセットが固定的に接続されたことを示すための十分な視覚的フィードバックまたは他のフィードバックを提供するバイオネットタイプの接続装置が好適である。
【0060】
したがって、本発明は、カセットが固定的に接続されて作動の準備が整ったことの触覚情報(さらには、視覚的フィードバック)を接続フィードバック機構によって提供するような実施形態および実施例をさらに提供する。
【0061】
本事例では、オペレーションを開始する準備が整ったとき、使用者が、開口部(315)および終端部分を備えるバイオネット接続リング(314)介して、カセット(100)のカセット用バイオネットペグ(112)をデバイス(1)の前方端部(212a)内のバイオネット開口部(315)に位置合わせする。使用者がさらに接続インジケータIおよびII(151、251)の支援による補助を受けることができ、接続インジケータIおよびII(151、251)が、それぞれ、カセット本体上におよび前方端部の近位端の上に設けられる。例えばペグ(112)および接続インジケータI/II(151、251)などの、これらの個別の構造部の一部が、図9aおよび9eでより明瞭に視覚化され得る。
【0062】
図2は、カセットを方向Yの方に押すことにより部分的に装填されたカセット示す。カセットは、アプリケータまたは組立補助具を利用することによりカセットに触れることなく前方端部構成要素に位置合わせされ得る。組立補助具(図示せず)は、使用前に無菌カセットをその中で保管しているところであるパッケージングから固有に形成され得るか、または、キットの一部として、パッケージ内部に保管される付加的な別個の構成要素であってよい。組立補助具がカセットを容易に一時的に入れるように成形されるか、または、アクチュエータを用いてカセットを位置合わせして挿入するためのカセットの一部であってよい。
【0063】
パッケージングが開いている場合、パッケージングがさらにカセットを支持するのに使用され得るか、または別個の補助具が既にカセット上に設置されていてもよく、最初にアクチュエータを用いて位置合わせするのにおよび送達デバイスに直接に接触させることなくカセットを送達デバイスの中に挿入するのに使用され得る。
【0064】
この方向においてカセットをデバイスの前方端部の中に挿入することにより、再設定ばね(244)が圧縮されてスピンドル(210)と解放前クリップ(278)の背面(278a)との間の接触を実現し、最終的に、カセット用バイオネットペグ(112)がバイオネット接続リング(314)の終端部分に接触する。
【0065】
カセット(100)がアクチュエータ内に挿入されると、カセット表面(116)と前方ピストンとの間の接触が実現される。
この時点では、依然として組立補助具によって支持されているカセット(100)が容易に時計回りで回転させられ得、それによりカム機構を介して前方ピストンをデバイスの内部へさらに押し込み、カム機構が、例えば、カセット触覚傾斜部分(図示せず)および前方ピストン内にある内側傾斜部分によって形成される。この場合、カセットが軸回転方向においてロックされることにより、前方ピストンが後方に移動する。
【0066】
カセット(100)が回転停止部分に到達するまで回転するとき、前方ピストン内側傾斜輪郭内の凹部によりカセット触覚傾斜部分が前方ピストン内側傾斜部分から離れる。この凹部により内部での衝突が起こる。その理由は、前方ピストンが前方に移動するときに触覚フィードバックのための小さい振動を明確に発生させるからである。この時点で、カセットがアクチュエータ内で固定的に接続される。
【0067】
この時点で、カセットペグ(112)がトラック内で保持され、したがってカセット(100)が前方に移動することができず、スピンドル(210)が前方ピストン解放前クリップ(278a)の背面に接触している。さらに、前方ピストン(218)が、スピンドル先端部(211)と前方ピストンの背面との間の物理的な面接続により、プライミング中に軸方向に位置合わせされていない位置でスピンドル(210)を解除可能に固定することを支援する。
【0068】
カセットのピン解除クリップ(115)は、カセット本体(103)の内径サイズによって妨害されることにより、拡大することができない。ピン解除クリップは、キャリッジ(107)の内部でのカセットピン(105)の軸方向位置を制御するために「V」形である。したがって、ピンがより高い安定性を有するようになり、この移動制御のための構造部により、キャリッジ(107)に対しての意図されない前方への動きが、上述したように使用者によるデバイスの意図される作動の前に、固体投与物に伝達されないようにすることが保証される。
【0069】
この時点で、図3に示されるように、デバイスの使用の準備が整う。
作動
実際には、使用者はデバイスのハウジングの周りでデバイスを握持し、患者の皮膚に対して強く押圧する。これにより、まず、皮膚に張力が与えられ、スピンドル(210)による相対的な接触を介して、カセットに適用される任意の圧力により再設定ばね(244)および作動ばね(214)の両方が圧縮される。図4はデバイスの例示を示しており、ここでは、皮膚に対しての圧縮が開始されている。
【0070】
こうすることにより、スピンドルが後方アパーチャ(243)を通って摺動し、スピンドルの後方端部(221)がばねフォロワー(215)を押圧し、それにより作動ばね(214)を圧縮させ、それにより、デバイスにポテンシャルエネルギーが加えられる。スピンドル中間セクション(231)が位置合わせスリーブの傾斜部分に接触し、それにより、スピンドル先端部(211)を中央軸(X)の方に運び、それにより、前方ピストンの中央アパーチャ(250)を通してスピンドルを解放することを可能にする。同時に、前方ピストン(218)内の解放前クリップ(278)が位置合わせスリーブの前方縁部に接触するときに歪み、それにより、カートリッジ(107)をカセット本体(103)から解放する。
【0071】
図4に示される時点では、成形されたショルダ領域(231a)が成形された最も前方側の表面(232)の中まで引かれており、再設定ばね(244)の作用が反作用を受け、その結果、作用ばね(244)に完全にエネルギーが加えられ、スピンドル先端部が軸方向において中央アパーチャ(250)に位置合わせされるときに、デバイスが自動で作動することになる。
【0072】
こうすることにより、図5に示されるように、作動ばね(244)がアパーチャ(250)を通すようにスピンドル先端部(211)およびスピンドル(210)を押し込み、それにより、スピンドル先端部(211)およびスピンドル(210)により駆動ピン(105)を押し、それにより、治療薬剤および/または予防薬剤(117)をヒトまたは動物の中へ計量分配する。有意なこととして、成形されたショルダ領域(231a)を凹形表面(232)の全般的な領域で移動させることになるポイントに一致するように設定された必要な作動力に達するまで、スピンドルの長手方向軸がアパーチャ(250)に位置合わせされ得えず、それにより、誤作動に対しての安全機構が提供される。
【0073】
スピンドルが、キャリッジ(107)、駆動ピン(105)、および薬物または固体投与物(117)を前方に駆動する。キャリッジ保持顎部(109)がカセット本体内の円錐形開口部(111)に当たって停止し、駆動ピン(105)からの力のもとで固体投与物または薬物(117)が継続して前方に移動し、キャリッジおよびカセットから解放されてヒトまたは動物の身体に入り、ここでは、別個の針により皮膚を貫通することが必要とされない。スピンドルは駆動ピンに衝突する前に短い距離しか移動しない。したがって、皮膚を穿刺するには、固体投与物が所与の距離で皮膚に当たることが必要となるため、利用可能な位置エネルギーが重要となる。キャリッジが円錐開口部に当たるまで、駆動ピン、キャリッジ、および固体投与物が一体に移動し、ここでは、固体投与物と皮膚との間の概略の所与の距離が12mmである。
再設定
本デバイスは再使用可能であることから、結果として本デバイスが新しいカセットおよび送達されるための新しい薬物と共に使用されることを可能にするように、カセットがアクチュエータから切り離されて取り外され得、安全な手法で廃棄され得ること望ましい。カセットを切り離すことに伴う別の具体的な方法および構造部を以下で完全に説明する。
【0074】
図6は再設定直後のデバイスを示しており、ここでは、スピンドル(210)が静止位置にあり、ばねが再設定されている。
この再設定アクションは、前方ピストンの中央アパーチャ(250)に対してスピンドル先端部を係合させたりまたは前方ピストンの中央アパーチャ(250)の近くでスピンドル先端部を静止させたりしないような位置まで、前方ピストン(218)を前方に移動させることを必要とする。後でさらに説明するように、再設定ばね(244)がさらに、前方ピストン(218)を押すことを支援し、さらに間接的には、後で詳細に説明されるように、カセットが解放されるときに使用済みのカセットをデバイスから排出させることを可能にする。
【0075】
この実施例では、再設定ばね(244)が、アパーチャ(250)との位置合わせ状態からスピンドル(210)を引かない。その理由は、スピンドルを中心から外すように引く横方向の力を一切提供しないからである。述べたように、スピンドル先端部は高い信頼性で中央軸から外れた状態を維持しなければならない。
【0076】
この実施例ではスピンドル保持要素のみによって再設定が可能となり、スピンドル保持要素が、具体的には、作動後の、スピンドルを横方向/径方向におけるオフセット位置に置くことを独立して支援する。これは、図6に示されるように、スピンドル先端部(211)を磁気リングの方への後方に引き寄せる磁気リング(205)などである。したがって、この構造部は能動的な変位手段として機能し、プライミングおよび作動の機構によりこの位置決めの付勢力が打ち負かされるようになるまで、スピンドル先端部を軸方向オフセット位置で保持するように構成される。
【0077】
本明細書で使用される構造的実施例は限定的なものではなく、スピンドルを横方向に変位させることにより軸方向の再設定を実現するのに十分である任意の実施形態が本発明の範囲内に存在することになる。
【0078】
前方ピストンの後部開端部の内部にある径方向の単極磁気リングが、ボールソケット継手(225/221)のところにヒンジ式に取り付けられた金属スピンドル(10)を引き寄せる磁場を適用する。再設定フェーズ中、再設定ばね(244)によって適用される反力により前方ピストン(212a)が前方に移動し、それにより、スピンドルがピストン中央アパーチャ(250)から係合解除されて磁気リング(205)の方に引かれることが可能となる。
【0079】
図7および8に示される以下の別の実施例が、アパーチャ(250)の中心軸から離した状態でスピンドル先端部を維持するための、上記の図に示される磁気リングに対しての代替の解決策として使用され得る。いずれの事例でも、通常のばねの他に追加の構成要素または構造的要素(再設定の一部として使用される)がデバイス内に存在する。したがって、このような構造部は構造的におよび機能的に要求条件を満たしており、ここでは、この構造部が、軸方向オフセット位置でスピンドルを排他的に保持するように構成される。
【0080】
再設定ばね(244)の一方の端部が、図7に示されるように螺旋パターンのコイル状である二次ばねの追加の構造部を備える。コイルの内側部分が、スピンドル(211)の前方端部の直径よりわずかに大きい内径を有する。螺旋によって形成される最終的なコイルが中心から外れており、それにより、スピンドルの先端部をアパーチャ(250)の軸から離して支持する横方向の力を適用する。その理由は、スピンドルがボールソケット接続装置(225/221)にヒンジ式に取り付けられているからである。ボールソケット継手は、スピンドルを任意の平面で回転させることを可能にする。別法として図8では、前方ピストン(20)に取り付けられることを可能にする固定のための幾何形状を有するようにばね線が形成される。このばねは、スピンドル(211)の先端部を軸から外すようにする横方向の力を適用することによりスピンドル(211)の先端部をアパーチャ(250)の中心から外して支持する二重ピッチのコイルを有するように形成される(スピンドル(211)がボールソケット接続装置(225/221)に対してヒンジ式に取り付けられているため)。
デバイスからのカセットの解放および排出
一連の図9a、9b、9c、9d、および9eは、固体投与物の注入後に、捻じり解放式の機構の配置構成により、如何にして使い捨てのカセットが「ハンズフリー」で取り外され得るかを示す。この配置構成はハウジングセクション内で構造的に画定され、カセットおよびデバイスの両方の既存の構造の一部を利用し、それにより、無針デバイスのためのさらなる機能性を作り出す。この配置構成は限定的なものでなく、本明細書において上で説明した無針デバイスの種類であってもよい。
【0081】
図9aから9eに示される実施例を含めた、特に好適な実施形態では、ハンズフリーでのカセットの排出のための無針デバイスの構造部が、治療薬剤または予防薬剤の送達のための無針デバイスの上述の実施例と共に利用される。
【0082】
本明細書のデバイスと共に使用されるカセットは1回使用の使い捨てのアイテムであることを意図され、デバイスの作動が完了して薬物がデバイスから送達されたときにカセットが空になり、したがってカセットがデバイスから取り外されて処分されなければならない。
【0083】
図9aに示されるように、改善したかたちでカセット(100)をデバイスから解放して排出させることを可能にするために、使用者が、デバイスの主軸(X)を中心として後方端部ケーシング(212b)に対して前方端部ケーシング(212a)を約90度回転させるかまたは捻じることができる。図9bが、本アクションの開始状態としての、「捻じり解放」運動の開始状態を示しており、ここでは、デバイスが断面図で提示される。
【0084】
こうすることで、前方端部ケーシングの遠位端のところの設けられた解放インジケータI(351)が、回転方向において、後方端部ケーシングの近位端上にある解放インジケータII(352)の方に移動させられ、その結果、2つの解放インジケータIおよびIIが位置合わせされ、停止部分に到達する。この実施例では、ここでは複数の山形紋として示される視覚ガイド(340)が、2つの解放インジケータを正確に位置合わせするのに前方端部がとるべき移動方向を明確に示すことにより、使用者を支援することができる。
【0085】
前方端部ハウジングケーシングを完全に捻じった後の位置が図9eにさらに示されており、ここでは、解放インジケータI、II(351、352)が位置合わせされている。
移動が開始されるとき、前方端部が、軸回転するように、1組の相互作用するリブを介して捻じり解放リング(357)に内部で接続されている。捻じり解放リング(357)が、上述したバイオネット接続リング(314)内で専用のトラック内で軸回転することができる解放フィンガー部分(353)を備える。さらに、このトラックがカセット(100)のカセット用バイオネットペグ(112)の軸方向位置に位置合わせされている。カセットが接続されるとき、解放フィンガー部分の構造部(353)が横方向においてカセット用バイオネットペグ(112)に接触する。これらの構造部の間の構造的連結は、説明したように前方端部ケーシング(212a)が回転させられるときに捻じり解放リング(357)が回転して解放フィンガー部分(353)がカセット用バイオネットペグ(112)との接触を介して回転方向においてカセットに係合され、最終的にペグがバイオネット接続リング(314)内のバイオネット開口部(315)に到達する、ことを意味する。言い換えると、外側ケーシングの捻じり機構が、既にデバイスの前方端部内でカセットを堅固に拘束または支持している内部構造からカセットを解放することを可能にする。捻じり解放リング(357)および解放フィンガー部分(353)の構造部は図9dの断面図でより容易に見られ得、ここでは、カセットが存在しない。
【0086】
上述したように、カセット(100)が前方端部ピストン(218)に接触している。この時点では、再設定ばね(244)が前方端部ピストン(218)に対して反力を作用させていることから、バイオネットペグ(112)がバイオネット接続リング(314)内の開口部(315)に到達するときにばねの力のもとで前方ピストンが前方に移動する。デバイス内でカセットを保持することができるいかなる潜在的な摩擦力もこの力によって打ち負かされる。図9dおよび9eに示されるように、エネルギーが迅速に解放されることにより、確実にカセット(100)が前方端部(212a)から完全に排出されて方向Yにおいてデバイスから出される。
【0087】
この排出の力は、さらなる補助なしでカセットを適切なユニット/コンテナ/容器などの中へ直接に処分することを可能にするのに十分な大きさである。カセットを取り外すのに、および/または取り外し後にカセットを処分場所まで輸送するのに、カセットの手動の操作は必要ない。
【0088】
排出後、使用者が、後方端部ケーシング(212b)を基準として前方端部ケーシング(212a)にねじり力を作用させることを停止することができ、それにより、内部ねじりばね(図示せず)を介して前方端部をその元の位置に自動で戻すことを可能にする。この時点で、デバイスが再設定され、新しいカセットを挿入してデバイスに接続する準備が整い、無針動作形態により新しい治療薬剤または予防薬剤を送達するためにデバイスを再使用する準備が整う。
図1
図1a
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図9c
図9d
図9e
【国際調査報告】