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特表2023-507454基板表面の機械加工中に基板を保持するための保持システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-22
(54)【発明の名称】基板表面の機械加工中に基板を保持するための保持システム
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/50 20060101AFI20230215BHJP
【FI】
C23C14/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537653
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(85)【翻訳文提出日】2022-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2020086504
(87)【国際公開番号】W WO2021122805
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】102019135183.9
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051691
【氏名又は名称】エリコン・サーフェス・ソリューションズ・アクチェンゲゼルシャフト,プフェフィコーン
【氏名又は名称原語表記】OERLIKON SURFACE SOLUTIONS AG, PFAEFFIKON
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シーベルト,マックス
(72)【発明者】
【氏名】エッゲマン,イェンス
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,ディーター
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029BD03
4K029BD05
4K029JA01
(57)【要約】
本発明は、被覆領域(20)を有する表面処理システムに使用される、基板(12)を保持するための保持システム(1)に関し、保持システムは、複数の固定要素(2)と、固定要素(2)を受けるように被覆領域(20)内に配置される本体(24)と、被覆領域および機械加工領域(20,22)を調整するための位置決め要素(26)とを含み、複数の基板(12)が固定要素(2)によって固定され、機械加工領域(22)内で処理され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆領域(20)を有する表面処理システムに使用される、基板(12)を保持するための保持システム(1)であって、
- 複数の固定要素(2)と、
- 前記固定要素(2)を受けるように前記被覆領域(20)内に配置される本体(24)と、
- 前記被覆領域および機械加工領域(20,22)を調整するための位置決め要素(26)とを備え、
- 複数の基板(12)が前記固定要素(2)によって固定され、前記機械加工領域(22)内で処理され得る、保持システム。
【請求項2】
前記被覆領域(20)は、前記機械加工領域(22)よりも大きい長手方向の広がり、好ましくは少なくとも2倍の長手方向の広がり、特に少なくとも3倍の長手方向の広がりを有することを特徴とする、請求項1に記載の保持システム(1)。
【請求項3】
前記本体(24)は円筒状であり、円筒の高さ(H)は、好ましくは、前記本体(24)内に配置される前記固定要素(2)と少なくとも同じ長さを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の保持システム(1)。
【請求項4】
前記位置決め要素(26)は、前記機械加工領域(22)から前記被覆領域(20)を分離するための円盤状の第1の部分(26a)と、前記円盤状の第1の部分(26a)を位置決めするためのボルト状の第2の部分(26b)とを含むことを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の保持システム(1)。
【請求項5】
前記位置決め要素(26)は一体型の設計であることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の保持システム(1)。
【請求項6】
前記位置決め要素(26)は、それぞれの基板(12)を貫通させるための複数の凹部(28)を有し、前記凹部(28)は好ましくは前記円盤状の第1の部分(26a)に配置されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の保持システム(1)。
【請求項7】
回転軸(D)の周りの意図しない回転を防止するための回転防止要素(30)が設けられ、前記回転防止要素(30)は、前記位置決め要素(26)の意図しない回転を防止するために前記本体(24)および前記位置決め要素(26)に固定的に接続され得ることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の保持システム(1)。
【請求項8】
前記回転防止要素(30)は固定ピンの形態で形成され、前記固定ピンは、前記位置決め要素(26)の意図しない回転を防止するために、好ましくは前記本体(24)内の固定要素(2)によってその第1の端部で固定され得て、その他方の端部を介して前記位置決め要素(26)に強固に、特に前記位置決め要素(26)の前記第1の部分(26a)に強固に接続され得ることを特徴とする、請求項6に記載の保持システム(1)。
【請求項9】
基板を案内するための少なくとも1つの案内要素(32)が設けられ、前記案内要素(32)は好ましくは前記本体(24)と前記位置決め要素(26)の前記円盤状の第1の部分(26a)との間に配置されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の保持システム(1)。
【請求項10】
前記案内要素(32)は、それぞれの基板(12)を貫通させるための複数の凹部(28)を有し、前記凹部(28)は好ましくは、前記本体(24)内の前記凹部(28)の配置および/または前記位置決め要素(26)の前記円盤状の第1の部分(26a)内の前記凹部(28)の配置に対応して配置されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の保持システム(1)。
【請求項11】
移動ユニット(36)に接続される少なくとも1つの接続要素(34)が設けられ、前記接続要素(34)は好ましくは円筒状の構成であり、前記接続要素(34)は特に前記本体(24)に直接配置されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の保持システム(1)。
【請求項12】
前記機械加工領域(22)を覆うための少なくとも1つの被覆要素が設けられ、前記被覆要素は好ましくはカバーキャップの形態であることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の保持システム(1)。
【請求項13】
前記固定要素(2)は、前記基板(12)を圧力ばめ固定するための固定領域(8)を有し、前記固定領域(8)は、局所的に限定されたサブ領域の形態で構成されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の保持システム(1)。
【請求項14】
前記固定要素(2)は、前記基板(12)が処理中に前記固定要素(2)による圧力ばめ固定によって1つ以上の軸x、y、zの周りに少なくとも90°、特に少なくとも180°回転可能であるように構成されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の保持システム(1)。
【請求項15】
前記固定要素(2)は、前記長手方向の広がりにおいて変化する直径(D)を有し、前記変化する直径(D)は、好ましくは、いずれの場合も、外側から中心に向かって前記固定要素(2)の前記長手方向の広がり(L)に沿って減少し、前記直径(D)は特に前記固定領域(8)において最小であることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の保持システム(1)。
【請求項16】
前記固定要素(2)は、基板(12)を貫通させるための上側の一部円形部分(4)、および/または、基板(12)を貫通させるための前記上側部分(4)と反対側に配置される下側の一部円形部分(6)、および/または、前記基板(12)を圧力ばめ固定するための前記上側部分と前記下側部分(4,6)との間に配置される固定領域(8)を有し、前記固定領域(8)は、好ましくは腰の形に形成され、特に前記上側部分と前記下側部分(4,6)との間に配置される腰部(10)を有することにより、前記固定領域(8)の前記直径(D)は前記上側部分(4)から前記腰部(10)に向かって減少し、前記固定領域(8)の前記直径(D)は前記下側部分(6)から前記腰部(10)に向かって減少することを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の保持システム(1)。
【請求項17】
前記固定要素の前記腰部(10)は、前記上側部分と前記下側部分(4,6)との間の中央に配置されることを特徴とする、請求項16に記載の保持システム(1)。
【請求項18】
前記固定要素(2)に沿って長手方向に配置される凹部(14)が設けられ、前記凹部(14)は好ましくは長手方向の広がり(L)に沿って前記固定要素(2)を完全に切断することにより、前記凹部(14)は前記上側部分および前記下側部分(4,6)の両方ならびに前記固定領域(8)を完全に切断し、特に、前記凹部(14)の幅は前記腰部(10)に沿って最小であり、前記上側部分および前記下側部分(4,6)の方向において増加することを特徴とする、請求項16または17に記載の保持システム(1)。
【請求項19】
前記固定要素(2)の前記固定領域(8)は複数の薄板(16)を有し、内側凹部(18)が好ましくはいずれの場合も2つの薄板(16)の間に配置されることを特徴とする、請求項16~18のいずれか1項に記載の保持システム(1)。
【請求項20】
薄板(16)の数は前記腰部(10)に沿った前記直径(D)と相関しており、前記腰部(10)に沿った直径(D)の1mm当たり少なくとも2つの薄板(16)、特に少なくとも3つの薄板(16)が好ましくは設けられることを特徴とする、請求項19に記載の保持システム(1)。
【請求項21】
前記腰部(10)に沿った前記直径(D)は、前記上側部分および/または前記下側部分(6,8)に沿った前記直径(D)の少なくとも80%未満であり、好ましくは前記上側部分および/または前記下側部分(6,8)に沿った前記直径(D)の少なくとも75%未満であり、特に前記上側部分および/または前記下側部分(6,8)に沿った前記直径(D)の少なくとも70%未満であることを特徴とする、請求項16~20のいずれか1項に記載の保持システム(1)。
【請求項22】
前記腰部(10)に沿った前記直径(D)は、2cm~0.2mmであり、好ましくは1cm~0.5mmであり、特に0.5cm~1mmであることを特徴とする、請求項16~21のいずれか1項に記載の保持システム(1)。
【請求項23】
前記固定要素(2)は、少なくとも部分的に耐熱・耐食材料で形成され、好ましくは少なくとも部分的にニッケル・クロム合金で形成されることを特徴とする、請求項16~22のいずれか1項に記載の保持システム(1)。
【請求項24】
前記固定要素(2)は、前記基板(12)が2~6.1Nの引き剥がし力で、好ましくは2.5~3.5Nの引き剥がし力で固定され得るように設計されることを特徴とする、請求項16~23のいずれか1項に記載の保持システム(1)。
【請求項25】
前記固定要素(2)はばね要素の形態で形成されることを特徴とする、請求項16~24のいずれか1項に記載の保持システム(1)。
【請求項26】
好ましくは請求項1~25のいずれか1項に記載の保持システム(1)を用いて基板(12)を処理する方法であって、
- 複数の基板(12)を保持システム(1)に挿入するステップ(40)と、
- 位置決め要素(24)によって前記基板(12)を前記保持システム(1)の被覆領域および機械加工領域(20,22)内に位置決めするステップ(42)とを備える、方法。
【請求項27】
前記基板(12)は、処理中に少なくとも90°、好ましくは少なくとも180°回転することを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に表面処理システムにおいて基板(たとえば、被加工物またはツール)の表面を処理するために当該基板を保持するための保持システムと、この保持システムの使用方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
特に、細長い基板(たとえば、シャンクツール型のツール、またはシャンクツールと形が似ている被加工物)を機械加工する場合、搬送・保持プロセスが当該機械加工プロセスの全体の労力のかなりの部分を占める。このような機械加工プロセスでは、機械加工対象の基板は、機械加工の前に、特別に設計/構成された搬送システムによって搬送されて保持システムに送られるのが一般的である。表面処理の前に、処理対象の基板はさらに通常、まず手作業で再バッチ処理されてから、表面処理システム内のキャリアの中に個別に配置される。たとえば、あるプロセスでは、個別の基板を上下逆さまにまたは水平に保持する必要がある。処理後、基板は通常、再び手作業で再バッチ処理されてから出荷される。この全体のプロセスチェーンは、高いハンドリングコストを意味するだけでなく、同時に処理中の基板を損傷するリスクもあり、ひいては製造コストの増加につながる。ハンドリング労力およびそれに伴う損傷のリスクは、精巧な基板を処理する場合に特に高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって本発明の目的は、基板、特に被加工物および/または細長い形状のツールを固定および保持するための公知の装置およびシステムの上述の欠点を少なくとも部分的に取り除くことである。特に、本発明の目的は、簡単で安価なやり方で、機械加工作業の前、間、および後の基板の安定した固定と安全で簡単な搬送とを可能にすることで、全体の機械加工プロセスチェーンにおけるハンドリング労力を最小限に抑える、基板を保持するための装置およびシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的は、システムの独立請求項の特徴を有する保持システムと、方法の独立請求項の特徴を有する方法とによって解決される。本発明のさらなる特徴および詳細は、それぞれの従属請求項、明細書および図面からもたらされる。本発明に係る保持システムに関連して記載される特徴および詳細は、当然、いずれの場合も本発明に係る方法に関連しても適用され、その逆もまた同様であり、したがって本発明の個々の局面に関する開示については、常に相互に参照がなされるか、またはなされ得る。
【0005】
本発明によれば、表面処理システムに使用される、基板を保持するための保持システムが提供される。この場合、保持システムは被覆領域を有し、さらに、複数の固定要素と、固定要素を受けるように被覆領域内に配置される本体と、被覆領域および機械加工領域を設定するための位置決め要素とを含み、複数の基板が固定要素によって固定され、機械加工領域内で処理され得る。
【0006】
このため、本発明に係る保持システムは、処理中に処理対象の基板を固定するように、かつ、基板の一部が処理のためにアクセス不可能であり基板の残りの部分が処理のために解放されるように基板の一部を遮蔽するように、設計/構成される。本発明によれば、位置決め要素は、好ましくは機械加工領域を設定または解放するように作用する。特に、位置決め要素は、保持システム内に回転可能に装着され得て、保持システムの長手方向の広がりにおける位置決めを変えることに加えて、好ましくは、保持システムの長手方向の広がりに対して横方向の位置決めを変更することもできる。
【0007】
基板の処理は、被覆領域内に突出しない当該機械加工領域で行われる。本発明に係る保持システムの本体は、好ましくは、固定要素を実現するために互いに隣接して配置される複数の凹部を有し、これらの凹部は、有利なことにボアなどの形態で形成され得て、特に本体内に円形に配置され得る。当該固定要素を介した圧力ばめ固定によって、保持システムは、ここで好ましくは、基板が処理中に少なくとも90°、特に少なくとも180°回転可能であるように設計される。基板は、90°よりも小さい角度または180°よりも大きい角度でも回転可能であることが理解される。基板は、好ましくは処理中に2つ以上の軸の周りに、特に3つの軸x、y、zの周りに回転可能であることも理解される。
【0008】
処理対象の基板を固定するために、固定要素は好ましくは固定領域を有し得る。この固定領域によって、基板は有利なことに処理中に圧力ばめされ得る。固定領域は、固定要素の表面全体または体積全体に対して局所的に限定され得る。有利なことに、固定領域は、基板を貫通させるための第1の凹部と、基板を貫通させるための第2の凹部との間に配置され得る。有利なことに、固定要素は、この場合、長手方向の広がりにおいて変化する直径を有するように形成され得る。固定要素の長手方向の広がりに沿って、直径は、たとえば、いずれの場合も外側から中心に向かって減少し得て、固定領域における直径が最小であることが好ましい。収容および固定対象の基板の直径に関して最大限の柔軟性を確保するために、固定要素は、さらに有利なことに、少なくとも断面において一部円形の断面を有し得る。
【0009】
本発明の範囲内で、本発明に従って設計/構成される固定要素を用いて、基板、特に被加工物を簡単なやり方で固定することができ、この固定によって、処理作業の前、間、および後の基板の特に簡単な搬送、とりわけ簡単なハンドリングが可能になり、処理作業中に基板をハンドリングすることができる、たとえば回転させたり上下逆さまにしたりすることができることが認められている。
【0010】
基板、特にシャンクツールなどの機械加工対象のツールをしっかりと固定し、それと同時に可能な限り正確に機械加工することに関して、被覆領域が、機械加工領域よりも大きい長手方向の広がり、好ましくは少なくとも2倍の長手方向の広がり、特に少なくとも3倍の長手方向の広がりを有することが有利であり得る。
【0011】
可能な限りコンパクトな設計/構成、およびそれと同時に、可能な限り正確に定義可能な保持力に関して、本体は円筒状であり、円筒の高さは、好ましくは、本体内に配置される固定要素と少なくとも同じ長さを有することも考えられる。これにより、固定要素は本体内に完全に配置され得る。
【0012】
調整可能な機械加工領域を確保するという構造的に簡単な可能性の範囲内で、本発明によれば、有利なことに、位置決め要素は、機械加工領域から被覆領域を分離するための円盤状の第1の部分と、第1の部分を位置決めするための第2のボルト状の部分とを有し得る。この場合、第2の部分は、好ましくは本体に締結され、たとえば球状の設計/構成であり得るため、第1の部分の位置決めを、たとえばねじ付きロッドなどを介して簡単なやり方で行うことができる。本保持システムの安定した堅牢な設計/構成の枠組みの中で、さらに、位置決め要素は一体型の設計/構成であり得て、第1および第2の部分は材料的に均質な部品から一体的に形成され得る。
【0013】
被覆領域から機械加工領域を分離し、それと同時に、機械加工領域への基板のアクセスを確保するという構造的に簡単な可能性に関して、さらに、位置決め要素は、各々が1つの基板を貫通させるための複数の凹部を有し得て、凹部は好ましくは第1の部分に配置され得る。この場合、凹部は、好ましくは穴の形態であり得て、有利なことに、特に本体内の凹部の配置に対応して、位置決め要素の第1の部分内に円形に配置され得る。
【0014】
基板の処理中に機械加工領域の位置決めを変えないようにするために、回転軸の周りの意図しない回転を防止するための回転防止要素が設けられ、回転防止要素は、位置決め要素の意図しない回転を防止するために本体および位置決め要素に強固に接続され得ることが、特に考えられる。
【0015】
構造的に簡単な設計/構成において、ここで、回転防止要素は固定ピンの形態で形成され得て、この固定ピンは、位置決め要素の意図しない回転を防止するために、好ましくは本体内の固定要素によってその第1の端部で固定され得て、別の端部を介して位置決め要素に強固に、特に位置決め要素の第1の部分に強固に固定され得る。ここで、ロック固定ピンと位置決め要素の第1の部分との間の接続は、好ましくはプラグイン接続、ラッチ接続、またはねじ接続などを介して、圧力ばめの態様でも形成され得る。
【0016】
処理中に基板を安全かつ安定して案内するという文脈において、基板を案内するための少なくとも1つの案内要素が設けられ、案内要素は好ましくは本体と位置決め要素の第1の部分との間に配置されることが、さらに考えられる。
【0017】
処理中に基板を安全かつ安定して案内する構造的に簡単な設計/構成の範囲内で、本発明によれば、案内要素は、各々が1つの基板を貫通させるための複数の凹部を有し得て、凹部は好ましくは、本体内の凹部の配置および/または位置決め要素の第1の部分内の凹部の配置に対応して配置され得る。この場合、案内要素は、特に円盤状または円筒状などの形態で設計/構成され得る。
【0018】
処理中に基板を簡単に搬送するまたは簡単に位置決めするという文脈において、さらに有利なことに、保持システムを移動ユニットに接続するための少なくとも1つの接続要素が設けられ得て、接続要素は好ましくは円筒状であり得て、特に本体に直接配置され得る。この場合、接続要素は、好ましくはフランジなどの形態で設計/構成され得て、このフランジは、材料接合、圧力ばめ、または形状ばめの態様で保持システムの本体に接続される。接続要素は、これによって有利なことに、保持システムを移動ユニットで把持することによって並進運動および回転運動を生じさせることができる把持領域に配置され得る。移動ユニットへの簡単な接続を確保するために、さらに有利なことに、接続要素は、移動ユニットに接続されるスリーブ、フック、ねじ山、または保持磁石などの接続手段/要素を含み得る。第1の接続要素に加えて、さらなる接続要素、好ましくはフランジ状の設計/構成が、把持領域に配置されるようにさらに設けられてもよい。
【0019】
処理対象の基板の非破壊的な汚染のない搬送を可能にするために、機械加工領域を覆うための少なくとも1つの被覆手段/要素が設けられ、この被覆手段/要素は好ましくはカバーキャップなどの形態であることが、さらに有利であり得る。
【0020】
本保持システムによって基板を構造的に簡単に設計/構成すると同時に確実に固定するという範囲内で、保持システム内に配置される固定要素は、有利なことに、基板を貫通させるための上側の一部円形部分、および/または、基板を貫通させるための上側部分と反対側に配置される下側の一部円形部分、および/または、基板を圧力ばめ固定するための上側部分と下側部分との間に配置される固定領域を有し得て、固定領域は、好ましくは腰の形に形成され、特に上側部分と下側部分との間に配置される腰部を有することにより、固定領域の直径は上側部分から腰部に向かって減少し、固定領域の直径は下側部分から腰部に向かって減少する。本固定要素は、好ましくは、機械加工対象の基板、特に細長い基板、たとえばシャンクツールまたはフライスツール、ドリルヘッドなどの機械加工対象の精巧なツールを固定するために、特に好ましくは圧力ばめ固定するために設けられ得る。一部円形という用語は、特に、本発明の文脈においてより広範に理解されることが意図されているため、この用語は、理想的な円の一部だけでなく、理想的でない円、たとえば圧縮された円または引き伸ばされた円の一部も含むと理解される。本発明の文脈において、圧力ばめ固定という用語は、さらに好ましくは、クランプを意味すると理解される。圧力ばめ固定という用語はさらに、本発明の文脈においてより広範に理解され得るため、この用語はさらに、少なくとも部分的に形状ばめタイプの接続を含むと理解され得る。本発明に係る固定要素のこのような実施形態によって、特に、収容対象の基板の直径に関して高い柔軟性が可能になる。これに関して、固定要素を、特に交換可能であるように、したがって処理対象の基板の直径または形状に関して目標を定めたやり方で適合可能であるように設計することもできる。
【0021】
可能な限りコンパクトな設計/構成、および固定力の最大限の活用の範囲内で、有利なことに、固定要素の腰部は上側部分と下側部分との間の中央に配置され得る。本発明の文脈において、中央の配置とは、特に、腰部が上側部分および下側部分から同じ距離にあることを意味すると理解される。腰部、すなわちくびれた部分は、この場合、好ましくは、その長手方向の広がりに沿って同じ直径を有する。ここで、腰部、すなわちくびれた領域は、好ましくは、基板を固定するための固定領域の中心を表し得る。くびれた領域は、固定要素の小さいもしくは狭い部分を、またはより大きい部分も被覆することが考えられる。
【0022】
異なる直径の異なる基板の柔軟な圧力ばめ固定を可能にするために、本発明に従うと、特に、固定要素に沿って長手方向に配置される凹部が設けられ得て、凹部は好ましくは長手方向の広がりに沿って固定要素を完全に分断し得ることにより、凹部は上側部分および下側部分の両方ならびに固定領域を完全に分断し得て、特に、凹部の幅は腰部に沿って最小であり、上側部分および下側部分の方向において増加し得る。好ましくは、凹部はこの場合非常に大きいため、凹部によって分離された2つの端部は互いに接触すると必ず固定要素に力を及ぼす。凹部は、長手方向の広がりに沿って固定要素の一部のみを切断することも考えられる。
【0023】
基板を圧力ばめ固定するための正確に調整可能かつ適合可能な力に関して、さらに、固定要素の固定領域は複数の薄板を有し得て、内側凹部が好ましくはいずれの場合も2つの薄板の間に配置され得る。薄板の長さおよび幅は、好ましくは、2つの薄板の間に配置される凹部の長さおよび幅と同等のやり方で形成され得る。有利なことに、薄板の幅を凹部の幅よりもやや大きくすることができ、特に凹部の幅の少なくとも15%大きくすることができる。
【0024】
ここで、薄板の数は腰部に沿った直径と相関しており、腰部に沿った直径の1ミリメートル当たり少なくとも2つの薄板、特に少なくとも3つの薄板が好ましくは設けられることも考えられる。
【0025】
基板をコンパクトに配置すると同時に効果的に圧力ばめ固定するという文脈において、さらに、腰部に沿った直径は、上側部分および/または下側部分に沿った直径の少なくとも80%未満であり得て、好ましくは上側部分および/または下側部分に沿った直径の少なくとも75%未満であり得て、特に上側部分および/または下側部分に沿った直径の少なくとも70%未満であり得る。
【0026】
ここで、腰部に沿った直径は、2cm~0.2mmであり得て、好ましくは1cm~0.5mmであり得て、特に0.5cm~1mmであり得る。特定の基板に正確に適合させるという文脈において、腰部に沿った直径はまた、たとえば、2.34mm、2.5mm、3mm、4mm、5mmまたは6mmであり得る。
【0027】
異なる機械加工条件下でも一貫した固定特性を確保することに関して、有利なことに、固定要素は、少なくとも部分的に耐熱・耐食材料で、好ましくは少なくとも部分的にニッケル・クロム合金で、たとえばナイモニック(登録商標)(たとえばナイモニック90(登録商標))またはインコネル(登録商標)(たとえばインコネルX750(登録商標))で形成され得る。本発明の文脈において、耐熱材料は、特に、融点が1200℃を超える材料を意味すると理解される。さらに、この材料は、好ましくは10-6バール未満の圧力で少なくとも650℃まで安定可能であるように、好ましくは極めて低い圧力でも使用でき、なおかつ温度が安定している。耐食材料とは、特に、標準条件下での腐食速度が0.001mm/年未満の材料を意味する。特に温度および腐食に対して耐性がある材料に関して、当該材料は、ニッケルおよびクロムに加えて、好ましくは微量成分として、アルミニウムおよび/またはチタンおよび/または鉄および/またはモリブデンおよび/またはニオブおよび/またはコバルトおよび/またはマンガンおよび/または銅および/またはアルミニウムおよび/またはシリコンおよび/または炭素および/または硫黄および/またはリンおよび/またはホウ素をさらに含み得る。ここで、固定要素は、全体が耐熱・耐食材料からなってもよいし、耐熱・耐食コーティングが施されているだけであってもよい。
【0028】
安全で安定した、しかし同時に非破壊的な圧力ばめ固定に関して、本発明によれば、特に、固定要素は、基板が2~6.1Nの引き剥がし力で、好ましくは2.5~3.5Nの引き剥がし力で固定され得るように設計/構成され得る。
【0029】
基板を構造的に簡単に、かつ表面に優しく固定することに関して、本発明によればさらに、固定要素はばね要素の形態で形成され得る。本発明の文脈において、ばね要素は、特に、少なくとも部分的に弾性効果を有する要素を意味すると理解される。弾性効果は、好ましくは腰部領域で発揮され得る。
【0030】
本発明の目的はさらに、好ましくは上述の保持システムを用いて基板を処理する方法を提供することである。ここで、本発明に係る方法は、複数の基板を保持システムに挿入するステップ/段階と、位置決め要素によって基板を保持システムの被覆領域および機械加工領域内に位置決めするステップ/段階とを含む。したがって、本発明に係る方法は、本発明に係る保持システムに関してすでに詳細に説明したのと同じ利点を有する。対象基板の処理は、好ましくは、表面処理の形態、たとえばコーティングなどの形態を取り得る。
【0031】
効果的な処理に関して、特に、基板は処理中に少なくとも90°、好ましくは少なくとも180°回転可能である。固定要素を介して固定を確保することにより、これによって、たとえば処理中の基板の「オーバーヘッドストレージ」が可能になる。
【0032】
本発明のさらなる利点、特徴および詳細は、本発明の実施形態が図面を参照して詳細に記載されている以下の説明から明らかになるであろう。これに関連して、特許請求の範囲および説明で言及されている特徴の各々は、個別にまたは任意の組み合わせで本発明に必須であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1(a)】表面処理システムの保持システムに使用される、基板を固定するための本発明に係る固定要素を概略的に示す正面図である。
図1(b)】表面処理システムの保持システムに使用される、基板を固定するための本発明に係る固定要素を概略的に示す背面図である。
図2】表面処理システムに使用される保持システムに使用される、基板を固定するための本発明に係る固定要素を概略的に示す平面図である。
図3】基板を保持するための本発明に係る保持システムを概略的に示す断面図である。
図4】基板を保持するための本発明に係る保持システムを概略的に示す空間的表現である。
図5】本発明に係る基板を処理する方法の個々のステップの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1a、図1bは、保持システム1に使用される、基板12を固定するための本発明に係る固定要素2を概略的に示す正面図(a)および背面図(b)である。
【0035】
固定要素2は、基板12を貫通させるための上側の半円形部分4と、基板12を貫通させるための上側の半円形部分4と反対側に配置される下側の一部円形部分6と、基板12を圧力ばめ固定するための上側部分4と下側部分6との間に配置される固定領域8とを含む。この場合、固定領域8は腰の形に形成され、上側部分4と下側部分6との間に配置される腰部10を有することにより、固定領域8の直径Dは上側部分4から腰部10に向かって減少し、固定領域8の下側直径Dは下側部分6から腰部10に向かって減少する。
【0036】
この場合に見られるように、固定要素2の腰部10は、上側部分4と下側部分6との間の中央に配置される。
【0037】
さらに、固定要素2は長手方向側に配置される凹部14を有し、凹部14は長手方向の広がりLに沿って固定要素2を完全に切断することにより、凹部14は上側部分4および下側部分6の両方ならびに固定領域8を完全に切断していることが分かる。ここで、凹部14の幅は腰部10に沿って最小であり、上側部分4および下側部分6に向かって増加する。
【0038】
さらに、固定領域8は複数の薄板16を有し、内側凹部18が2つの薄板16の間ごとに配置されていることが分かる。この構造は、特に、基板12を圧力ばめ固定するための正確に調整可能かつ適合可能な力を提供するように作用する。薄板16の数は、ここでは特に、腰部10に沿った直径Dと相関し得る。
【0039】
図2は、保持システム1に使用される、基板12を固定するための本発明に係る固定要素2を概略的に示す平面図である。
【0040】
基板12を貫通させるための上側の一部円形部分4のこの上面図によれば、凹部14と、薄板16の間に配置された内側凹部18を有する個別の薄板16とを再びはっきりと見ることができる。さらに、腰部10に沿った内径Dは、上側の半円形部分4の開口部に沿った直径Dよりもかなり小さいことが分かる。
【0041】
図3は、基板12を保持するための本発明に係る保持システム1を概略的に示す断面図である。
【0042】
ここで、本発明に係る保持システム1は被覆領域20を有し、上述の複数の固定要素2と、固定要素2を受けるように被覆領域20内に配置される本体24と、被覆領域20および機械加工領域22を調整するための位置決め要素26とを含む。ここで、複数の基板12が固定要素2によって固定され、機械加工領域22内で処理され得る。
【0043】
この場合に見られるように、被覆領域20は、機械加工領域22よりも大きい長手方向の広がりを有する。被覆領域20は、機械加工領域22よりも小さい長手方向の広がりも有し得ることが理解される。さらに、本体24は円筒形状を有し、この円筒形状はこの場合、本体24の内部に配置される固定要素2とほぼ同じ長さを有する。
【0044】
位置決め要素26はさらに、機械加工領域22から被覆領域20を分離するための円盤状の第1の部分26aと、円盤状の第1の部分26aを位置決めするためのボルト状の第2の部分26bとを含む。さらに、位置決め要素26は、それぞれの基板12を貫通させるための複数の凹部28を含み、凹部28はこの場合は円盤状の第1の部分26aに配置されている。
【0045】
さらに、この場合に見られるように、保持システム1は、回転軸Dの周りの意図しない回転を防止するための回転防止要素30を含み、回転防止要素30はこの場合、基板12の処理中の位置決め要素26の意図しない回転を防止するために本体24および位置決め要素26に固定的に接続される。
【0046】
さらに、保持システム1は、基板12を案内するための案内要素32を含み、案内要素32はこの場合、本体24と位置決め要素26の円盤状の第1の部分26aとの間に配置され、いずれの場合も同様に基板12を貫通させるための複数の凹部28を有する。ここで凹部28は、本体24内の凹部28の配置と、位置決め要素26の円盤状の第1の部分26a内の凹部28の配置とに対応して配置される。
【0047】
図4は、基板12を保持するための本発明に係る保持システム1を概略的に示す空間的表現である。この空間的表現では、保持システム1を移動ユニット36に接続するための接続要素34の配置も見ることができる。この場合、接続要素34も円筒形状であり、保持システム1の本体24に直接配置される。接続要素34を介して、保持システム1を有利なことに移動ユニット36によって把持して、保持システム1内に配置された基板12の容易な搬送または処理を可能にするために並進運動および回転運動を生じさせることができる。
【0048】
図5は、本発明に係る基板12を処理する方法の個々のステップ/段階の概略図を示す。
【0049】
ここで、基板12を処理する方法は、複数の基板12を保持システム1に挿入するステップ40と、位置決め要素24によって基板を保持システム1の被覆領域20および機械加工領域22内に位置決めするステップ42とに加えて、付加的な任意の、機械加工領域22内で基板12を処理するステップ/段階44と、基板12を後処理するステップ/段階46とを含む。可能な処理方法として、たとえば、研磨、化学、熱、電解、または同様の表面処理方法などの表面処理方法が好ましくは提供され得る。
【0050】
本発明に係る方法によれば、特に、基板12は処理中に少なくとも90°、好ましくは少なくとも180°回転可能である。
【0051】
本発明に係る保持システム1、および本発明に係る保持システム1の使用方法によって、基板12、特に機械加工対象のツールなどの被加工物の固定を簡単なやり方で実現することが特に可能であり、この固定によって、機械加工作業の前、間、および後の基板12の特に簡単な搬送、とりわけ簡単なハンドリングが可能になり、本固定によって機械加工作業中に基板12をハンドリングすることができる、たとえば回転させたり上下逆さまにしたりすることができる。
【符号の説明】
【0052】
参照符号のリスト
1 保持システム
2 固定要素
4 上側の半円形部分
6 下側の半円形部分
8 固定領域
10 腰部
12 基板
14 凹部
16 薄板
18 内側凹部
20 被覆領域
22 機械加工領域
24 本体
26 位置決め要素
26a 円盤状の第1の部分
26b ボルト状の第2の部分
28 基板を貫通させるための凹部
30 回転防止要素
32 案内要素
34 接続要素
36 移動ユニット
40 複数の基板を挿入する
42 基板を位置決めする
44 基板を処理する
46 基板を後処理する
D 直径
L 長手方向の広がり
H 高さ
回転軸
図1(a)】
図1(b)】
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】