(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-22
(54)【発明の名称】精製された2,5-フランジカルボン酸の、有機酸及び熱による処理
(51)【国際特許分類】
C07D 307/68 20060101AFI20230215BHJP
【FI】
C07D307/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537720
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-04
(86)【国際出願番号】 EP2020087072
(87)【国際公開番号】W WO2021123203
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515337626
【氏名又は名称】フラニックス・テクノロジーズ・ベーフェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ジョン・コルスタッド
(72)【発明者】
【氏名】アナ・ソフィア・ヴァゲイロ・デ・ソウサ・ディアス
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンネス・マリア・フランシスクス・シーベン
(72)【発明者】
【氏名】アナ・リタ・マルティンス・ゲレイロ・ロチャ・アルメイダ
(72)【発明者】
【氏名】イネス・ダチル・ゴンザレス・ジメネス
(57)【要約】
カルボン酸組成物を製造するための精製されたFDCAの熱処理であって、その方法が、精製されたカルボン酸組成物及び有機酸含有処理溶媒組成物を含む熱処理組成物を準備する又は製造する工程と、熱処理組成物を昇温された温度に供する工程であって、FDCAが部分的に溶解される、工程と、処理された組成物を冷却して、処理された組成物からFDCAの少なくとも一部を分離してカルボン酸組成物を得る工程とを含む、熱処理。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,5-フランジカルボン酸を含むカルボン酸組成物の製造方法であって、以下の工程:
a)2,5-フランジカルボン酸及び2-ホルミル-2-フランカルボン酸を含む粗製カルボン酸組成物を準備する又は製造する工程;
b)粗製カルボン酸組成物を精製して、2,5-フランジカルボン酸を含む精製されたカルボン酸組成物を製造する工程であって、精製が、以下の:
- 2-ホルミル-2-フランカルボン酸の少なくとも一部を水素化する工程;
- 2-ホルミル-2-フランカルボン酸の少なくとも一部を酸化する工程;
- 2,5-フランジカルボン酸の少なくとも一部を再結晶化する工程;及び
- 2,5-フランジカルボン酸のジアルキルエステルを加水分解する工程
からなる群から選択される少なくとも1つの工程を含む、工程;
c)2~6個の炭素原子を有する飽和有機酸溶媒を、処理溶媒組成物の質量に対して少なくとも5質量%含む処理溶媒組成物を準備する又は製造する工程;
d)前記の精製されたカルボン酸組成物及び前記の処理溶媒組成物を含む熱処理組成物を準備する又は製造する工程;、
e)前記の熱処理組成物を5~240分の範囲の時間のあいだ140~200℃の範囲の昇温された温度に供して、処理された組成物を得る工程であって、2,5-フランジカルボン酸の全量に対する溶解された2,5-フランジカルボン酸のパーセンテージが10~80%の範囲である、工程、並びに
f)処理された組成物を20~80℃の範囲の温度に冷却し、かつ、処理された組成物から2,5-フランジカルボン酸の少なくとも一部を分離して、カルボン酸組成物及び2~6個の炭素原子を有する前記の飽和有機酸溶媒を含む処理母液を得る工程、
を含む、方法。
【請求項2】
前記の粗製カルボン酸組成物及び/又は精製されたカルボン酸組成物が、2,5-フランジカルボン酸のモノアルキルエステル、好ましくは2,5-フランジカルボン酸のモノメチルエステルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程e)が、不活性ガス、好ましくは窒素若しくはアルゴンで加圧されている反応器中で実施され、及び/又は
工程e)において熱処理組成物が、少なくとも一部の時間、好ましくは撹拌によってかき混ぜられて、固体2,5-フランジカルボン酸をせん断力に曝す、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記の熱処理組成物が、熱処理溶媒組成物の質量に対して15~45質量%、好ましくは20~40質量%の量の2,5-フランジカルボン酸を含み、及び/又は
前記の処理溶媒組成物が、酢酸及び水を、好ましくは60:40~99.9:0.1の間の比、より好ましくは65:35~95:5の間の比で含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程e)及びf)におけるプロセスパラメーターが、
- 0.2bar及び2barの分散圧力における粒径測定のあいだで35%未満の平均粒子径の低下を示す、並びに/又は
- 50~300μmの範囲、好ましくは60~200μmの範囲の体積平均メジアン径(d50)を有する、
2,5-フランジカルボン酸の粒子を製造するよう選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記の粗製カルボン酸組成物が2-フランカルボン酸を、好ましくは組成物の質量に対して1~2000質量ppmの範囲の量、より好ましくは組成物の質量に対して1~1000質量ppmの範囲の量で含み、カルボン酸組成物が2-フランカルボン酸を700質量ppm以下の量、より好ましくは500質量ppm以下の量で含しか含まない、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記の粗製カルボン酸組成物が、粗製カルボン酸組成物の質量に対して0.2~50質量%の範囲の量、好ましくは0.3~3質量%の範囲の量の2,5-フランジカルボン酸のモノアルキルエステルを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程b)における精製が、2-ホルミル-2-フランカルボン酸の少なくとも一部を水素化する工程を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程e)において、2,5-フランジカルボン酸の全量に対する溶解された2,5-フランジカルボン酸のパーセンテージが、20~60%の範囲、好ましくは30~60%の範囲である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程e)の温度が150~190℃の範囲、好ましくは160~190℃の範囲である、及び/又は
工程e)において熱処理組成物が、15~120分の範囲、好ましくは30~90分の範囲の時間、最も好ましくは0.7
*(220-T/℃)~3.0
*(220-T/℃)分の範囲の時間、昇温した温度に供され、Tが工程e)における温度である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程f)における処理された組成物が、30~80℃の範囲、好ましくは40~80℃の範囲の温度に冷却される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
98質量%より多い2,5-フランジカルボン酸を含むカルボン酸組成物であって、カルボン酸組成物粒子が、0.2bar及び2barの分散圧力のおける粒径測定のあいだで35%未満の平均粒子径の低下を示し、カルボン酸組成物が0.1質量%未満の水しか含まない、カルボン酸組成物。
【請求項13】
カルボン酸組成物粒子が、50~300μmの範囲、好ましくは60~200μmの範囲の体積平均メジアン径(d50)を有する、及び/又は
d10に対するd50の比が、1~3の範囲、好ましくは1.5~2.5の範囲である、
請求項12に記載のカルボン酸組成物。
【請求項14】
カルボン酸組成物が、カルボン酸組成物の質量に対して200~5000質量ppmの範囲の量の2,5-フランジカルボン酸のモノアルキルエステル、好ましくは2,5-フランジカルボン酸のモノメチルエステルを含む、及び/又は
カルボン酸組成物が、カルボン酸組成物に対して10~500質量ppm、好ましくは20~200質量ppmの範囲の量の2-フランカルボン酸を含む、
請求項12又は13に記載のカルボン酸組成物。
【請求項15】
ポリアルキレンフラノエートの製造のための出発原料であって、請求項12から14のいずれか一項に記載のカルボン酸組成物及びアルキレングリコール、好ましくはエチレングリコール、並びに重合触媒を含む、出発原料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸組成物の製造方法、それぞれのカルボン酸組成物及びポリアルキレンフラノエートの製造のための出発原料に関する。
【背景技術】
【0002】
2,5-フランジカルボン酸(FDCA)は、高性能ポリマーの製造において石油系モノマーを置き換えるための非常に有望な構成単位であることが当技術分野で公知である。近年、FDCA、及び現在広く使用されている石油系プラスチックと比較して優れた性能特性を有する、完全に再利用可能なプラスチックである新規の植物系ポリエステルポリエチレンフラノエート(PEF)が多くの注目を集めている。これらの材料は、石油系ポリマー及びプラスチックへの依存の低減に顕著に寄与することができると同時に、地球資源のより持続可能な管理を可能にする。したがって、商業的に実行可能なやり方でFDCA及びPEFを製造するための技術に到達して、これらの有望な材料のマーケティングの成功を可能にするための包括的な研究が当分野で行われた。
【0003】
FDCAは、典型的には、フラン部分を有する分子、例えば5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-HMF)及び対応する5-HMFエステル又は5-HMFエーテル、並びに典型的には植物系の糖から、例えば糖の脱水によって得られる同様の出発原料の酸化によって、粗製カルボン酸組成物として得られる。広範な種類の酸化プロセスが先行技術から公知であり、それは、例えば、酵素又は金属触媒プロセスを含む。
【0004】
当分野で最も確立された技術の1つは、コバルト、マンガン及び臭素を含む触媒システムを使用し、酸化剤として酸素又は空気を用いて、フラン部分を有する化合物をFDCAへと酸化する。幅広い種類の出発原料に適用可能なそれぞれの方法は、例えば、WO2014/014981A1又はWO2011/043660A1に開示されている。
【0005】
ほとんどの場合に、上述の方法において粗製カルボン酸組成物について得ることができる純度は、PEF又は他の高性能ポリマーへのFDCAの重合に必要とされる、求められる純度を達成するのには十分ではない。したがって、精製されたカルボン酸組成物を製造するために、粗製カルボン酸組成物を更に精製するための精製方法が開発されている。これらの方法は、例えば、水素化工程、後酸化工程、蒸留工程、再結晶化工程、又は同様の方法を含み、しばしば、得られたカルボン酸組成物を洗浄及び単離する複数の工程を含む包括的な精製スキームと組み合わされる。例示的な精製方法は、例えばWO2014/014981A1又はWO2016/195499A1に開示されている。
【0006】
、
十分に純粋なFDCA(ポリマーグレードFDCAと表示される場合もある)を得るための既存の方法を改善する包括的な努力にもかかわらず、公知の精製方法によって得られる結果は、多くの場合、完全に満足のいくものではない。粗製FDCAを精製するための先行技術の方法は、2-ホルミル-2-フランカルボン酸(FFCA)、すなわち、ほとんどの場合に、出発原料の不完全な酸化によって得られる主要な不純物については良好な結果をもたらすことが多いが、これらの方法は、多くの場合に、その他の一般的な不純物の顕著な低減を達成せず、いくつかの不純物は、酸化のために使用されるプロセスに基づいて顕著な量で存在しうる。特に、いくつかの先行技術の方法は、2-フランカルボン酸(FCA)、すなわち、例えばFDCAの脱カルボキシル化によって酸化中にしばしば生成される、FDCAに対応する一価の酸の顕著な低減をもたらさない。
【0007】
更に、先行技術の精製方法によって得られる固体FDCA粒子は、あまり望ましくない物理的及び機械的特性をしばしば有することが当分野において認識された。これらの特性には、例えば、固体生成物中の望ましくない微粉、すなわち、多くの場合に、割れたガラスの破片のような形状の非常に小さな粒子のより多い量、及び一般に、得られた粒子のより低い強度が含まれる。その他のあまり望ましくない特性には、例えば、単離及び乾燥手順中に形成されうる凝集体を含み、その結果、異常に大きな粒子をもたらす。これらの特性は、最も一般的な石油系二酸(diacid)に対してよりも、粒子の取扱いを、顕著に、より困難且つ費用のかかるものにする。例えば、固体FDCA生成物を注ぐこと、又はそれを管及びパイプを通して供給することは、より困難である。更に、固体FDCAの貯蔵特性もまた、粒子が多くの場合互いに粘着する傾向にあるため、あまり望ましくない。
【0008】
おそらく、あまり望ましくない機械的及び物理的特性の最も顕著な欠点の1つは、固体FDCAを他の出発原料、及びポリマーを製造するために必要とされる触媒を混合することがあまり容易でない場合があり、このことが、濃度勾配を有するあまり均質でない出発混合物をもたらし、それが、必要とされる反応時間と得られるポリマーの品質の両方に悪影響を及ぼす可能性がある
【0009】
本発明の発明者らは、このあまり望ましくない機械的及び物理的特性は、粒子の形状及び低下した強度、並びに得られる精製されたFDCA組成物中の粒径分布に起因すると考えている。これらは、ほとんどの場合、大量の微粉を伴う板状粒子を呈する。現在まで、精製されたFDCAの機械的及び物理的特性を効率的に改善するための簡便な手法は当技術分野において知られていない。
【0010】
固体FDCAのあまり望ましくない純度及び機械的特性に関する上述した課題は、FDCAの製造に使用される出発原料とは無関係である傾向がある。
【0011】
しかし、近年では、FDCAに到達するための最も有望な手法の1つが、酸化のための出発原料として顕著な量の5-HMFエーテルを利用することが発見された。結果として、そのような方法において得られる粗製カルボン酸組成物は、遊離二酸(diacid)、すなわちFDCAを含むだけでなく、顕著な量のFDCAモノアルキルエステルも含み、現在、これらの方法は、顕著な量のFDCAモノメチルエステル(FDCA-Me)をもたらす最も確立されている方法と思われる。それぞれの方法は、FDCAのモノアルキルエステルを生じない同等の方法に対して複数の利益を有するが、これらの方法で得られる固体FDCAの純度及び機械的特性に関する上述した欠点は、特に望ましくない。包括的な実験において、本発明者らは、FDCAのモノアルキルエステルが、多くの先行技術の精製方法によって不十分に除去される不純物の1つであることを発見した。結果として、上述した技術を使用して製造される精製FDCA組成物は、顕著な量のFCA及びFDCA-Meを含み、ここで後続の重合反応において、FCAは潜在的な末端停止剤であり、FDCA-Meは危険な副反応を引き起きしうるメタノールを生成しうる。更に、本発明者らは、たとえ微量であっても、FDCA-Meの存在が、FDCA-Meを含まない精製されたFDCA組成物に対して見出されるものよりも望ましくない固体FDCAの機械的及び物理的特性をもたらすことを発見した。まとめると、先行技術の方法の上述した欠陥は、未精製及び/又は精製されたカルボン酸組成物中にFDCA-Meを含む方法に対して特に言及される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2014/014981A1号
【特許文献2】国際公開第2011/043660A1号
【特許文献3】国際公開第2016/195499A1号
【特許文献4】国際公開第2017/003293A1号
【特許文献5】国際公開第2016195499号
【特許文献6】国際公開第2016195500号
【特許文献7】国際公開第2016/195500A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した課題に鑑み、先行技術の方法のそれぞれの欠点を克服することが長年にわたって必要とされていた。したがって、本発明の目的は、特にFCA及び/又はFDCA-Me不純物に関して、得られるカルボン酸組成物の純度を更に高くする方法を提供することであった。本発明の別の目的は、改善された機械的及び物理的特性を有するカルボン酸組成物を生成し、したがって固体生成物の効率的な取扱い及び後続の重合反応における固体FDCAの好ましい挙動を可能にする方法を提供することであった。本発明のさらなる目的は、既存の酸化及び精製方法と容易に組み合わせることができ、且つ連続、半連続、又はバッチ式で実施することができる方法を提供することであった。
【0014】
さらなるプロセス工程は資源効率的な方法で実施することができ、それ自体が微量の廃棄物しか生じないことが望ましい。同様に、貯蔵費用を低減させ、製造プラントで取り扱う必要がある異なる物質の量を最小化するために、残りの製造方法の他の工程中、例えば酸化又は精製中に使用される化合物及び出発原料を主に使用する方法を提供することが望ましい。
【0015】
同様に、それぞれの方法が最小量のエネルギーしか必要とせず、主に非腐食性の物質を利用し、且つ特に安全な方法で操作することができ、健康上のリスク及び環境への危険物質の曝露を最小化することが好ましい。FCA及び/又はFDCA-Meに関する特定の効率的な精製に対する要望を別にして、先行技術の精製方法を効率的に補うために、その方法が広範な種類の生じ得る不純物を除去しうることが更に望ましい。
【0016】
更には、高純度を有するだけでなく、後続の重合反応において出発原料として効率的な使用を可能にする、好都合な物理的及び機械的特性も示すカルボン酸組成物を提供することが本発明の目的であった。それに対応して、重合中の反応時間の短縮を可能にし、及び/又は特定の好都合な生成物をもたらすポリアルキレンフラノエートの製造のための出発原料を提供することが、本発明の別の目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の開示
本発明者らは今回、驚くべきことに、酸化工程と精製工程の両方の後に実施される、FDCAを含むカルボン酸組成物の製造における追加の方法工程(プロセスステップ)を備えることによって、上述した目的が達成できることを発見した。
【0018】
本方法は、2,5-フランジカルボン酸を含むカルボン酸組成物を製造するための方法であって、
a)2,5-フランジカルボン酸及び2-ホルミル-2-フランカルボン酸を含む粗製カルボン酸組成物を準備する又は製造する工程と、
b)粗製カルボン酸組成物を精製して、好ましくは少なくとも部分的に固体であり、より好ましくは少なくとも5%固体であり、最も好ましくは少なくとも80%固体である、2,5-フランジカルボン酸を含む精製カルボン酸組成物を製造する工程であって、精製が、
- 2-ホルミル-2-フランカルボン酸の少なくとも一部を水素化する工程、
- 2-ホルミル-2-フランカルボン酸の少なくとも一部を酸化する工程、
- 2,5-フランジカルボン酸の少なくとも一部を再結晶化する工程、及び
- 2,5-フランジカルボン酸のジアルキルエステルを加水分解する工程
からなる群から選択される少なくとも1つの工程を含む工程と、
c)2~6個の炭素原子を有する飽和有機酸溶媒を、処理溶媒組成物の質量に対して5質量%より多く、好ましくは30%より多く、より好ましくは45%より多く含む、処理溶媒組成物を準備する又は製造する工程と、
d)精製されたカルボン酸組成物及び処理溶媒組成物を含む熱処理組成物を準備する又は製造する工程と、
e)熱処理組成物を5~240分の範囲の時間にわたって140~200℃の範囲の昇温した温度に供して、処理された組成物を得る工程であって、2,5-フランジカルボン酸の全量に対する溶解された2,5-フランジカルボン酸のパーセンテージが10~80%の範囲である、工程と、
f)処理された組成物を20~80℃の範囲の温度に冷却し、処理された組成物から2,5-フランジカルボン酸の少なくとも一部を分離して、カルボン酸組成物及び2~6個の炭素原子を有する飽和有機酸溶媒を含む処理母液を得る工程と
を含む、方法である。
この方法によって得ることができる、又は得られるカルボン酸組成物は、工程a)の粗製カルボン酸組成物及び工程b)の精製されたカルボン酸組成物と比較して、改変されたカルボン酸組成物である。改変されたカルボン酸組成物は、以下でカルボン酸組成物と称される。
【0019】
開発された追加の方法工程(プロセスステップ)は、先行技術の方法の欠陥を克服するのを助ける特定の熱処理である。このために、精製されたカルボン酸組成物を処理溶媒組成物と混合し、指定の時間にわたって昇温した温度での熱処理に供する。プロセスパラメーター及び出発原料の量を調整することによって、熱処理中に特定のパーセンテージのFDCAが処理溶媒組成物中に溶解される一方で、残留FDCAが固体沈殿物として残るように熱処理が実施される。理論によって束縛されることを望むことなく、熱処理後に得られる、特定の好ましい粒子形状、増大した粒子強度、及び/又は固体FDCAの有益な粒径分布をもたらすのは、時間を長くした熱処理と組み合わされた、溶解されたFDCA及び沈殿したFDCAの間の化学平衡及び交換であると思われる。
【0020】
驚くべきことに、熱処理中に溶解された特定のパーセンテージのFDCAを用いる方法において得られた材料の純度は、FDCAが十分に溶解される方法で処理された材料の純度よりも優れていることが発見された。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明による熱処理を伴わない方法で得られたFDCAの例示的な粒子であり、目盛は100μmに対応する。
【
図2】本発明による熱処理を伴わない方法で得られたFDCAの例示的な粒子であり、目盛は100μmに対応する。
【
図3】水中での熱処理を伴う方法で得られたFDCAの例示的な粒子であり、目盛は100μmに対応する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、本発明の主題がより詳細に考察され、本発明の好ましい実施形態が開示される。これにより、2つ以上の好ましい実施形態を組み合わせて、とりわけ好ましい実施形態を得ることが特に好ましい。これに対応して、本発明の好ましい実施形態の2つ以上の特徴を規定する本発明による方法がとりわけ好ましい。
【0023】
カルボン酸組成物は、精製されたカルボン酸組成物と比較した場合、低減された量の少なくとも1種のフラン系不純物、すなわち2,5-フランジカルボン酸ではないフラン部分を有する任意の物質を含み、並びに/又は改善された機械的及び/若しくは物理的特性を示すカルボン酸組成物である。
【0024】
本発明による方法の工程a)は、FDCA及びFFCA、すなわち出発原料の酸化中に、不完全な酸化によって製造される最も重要な不純物を含む粗製カルボン酸組成物の準備又は製造である。本発明によれば、粗製カルボン酸組成物は、例えば、別の方法若しくは別個の設備から取得されて、準備されてもよく、又は先行技術による、公知のFDCA及びFFCAを含む粗製カルボン酸組成物を得るための複数の方法の1つを使用して製造されてもよい。本発明の方法は、粗製カルボン酸組成物を得るために使用される酸化方法に関して制限されない。しかし、粗製カルボン酸組成物は、酸化ガスとしての酸素、2~6個の炭素原子を有する飽和有機酸溶媒及び水を含む溶媒組成物の存在下で、コバルト、マンガン及び臭素を含む触媒システムを用いて、フラン部分を有する化合物、好ましくは5-ヒドロキシメチルフルフラール及び/又は5-ヒドロキシメチルフルフラールのアルキルエーテルの酸化によって、好ましくは製造される。
【0025】
本発明の方法の工程b)は、工程a)で準備又は製造された粗製カルボン酸組成物の精製に対応し、少なくとも部分的に固体である、2,5-フランジカルボン酸を含む精製されたカルボン酸組成物をもたらす。本発明の方法は、上で定義された群から選択される少なくとも1つの精製工程を含み、これらの工程は、先行技術で公知の、粗製カルボン酸組成物のための最も良好に確立された精製方法の最も重要な工程に対応する。FFCAを別にして、他の着色体及び不純物、例えば、いわゆる重質フラニクス(heavy furanics)、すなわち1つより多くのフラン部分を含む分子も、多くの場合、精製工程中に除去される。
【0026】
2-ホルミル-2-フランカルボン酸の少なくとも一部の水素化は、周知の原理に基づく水素化による精製に対応し、粗製カルボン酸組成物中のいくつかの不純物が選択的に水素化されることができ、その後FDCAから分離される。
【0027】
本発明の枠組み内では、水素化による精製が特に好ましく、水素化は、好ましくは水素化溶媒、及びFFCAを水素化生成物に水素化するための水素化触媒の存在下で粗製カルボン酸組成物と水素を接触させ、FDCAを水素化生成物から分離することによって実施され、ここで、水素化溶媒は好ましくは水であり、水素化触媒は、好ましくはパラジウム炭素である。一般原理として、水素化触媒は、幅広い種類の利用可能な触媒から選択されうる。典型的には、水素化触媒は、担体上の、周期表の8~10族の金属から選択される1種若しくは複数の金属又は金属化合物を含む。そのような好適な金属には、Pt、Pd、Ru、Rh、Ir、Os、Ni、Co及びこれらの混合物が含まれる。当技術分野で公知のように、そのような水素化プロセスは、通常、十分に溶解された条件下で行われる。
【0028】
2-ホルミル-2-フランカルボン酸の少なくとも一部を酸化する工程は、後酸化による精製に対応し、不完全な酸化の生成物、すなわちFFCAが後続の酸化反応においてFDCAに酸化され得るという概念に基づく。
【0029】
FDCAの少なくとも一部の再結晶化による精製は、所望の生成物を溶解し、その後沈殿させるために、カルボン酸生成物を第2の溶媒中に溶解する及び/又は温度を変化させることによって元の溶媒中のFDCAの溶解度を変える周知の技術に対応する。
【0030】
最後に、2,5-フランジカルボン酸のジアルキルエステルを加水分解する工程は、粗製カルボン酸組成物中のFDCA及び/又はFDCAのモノアルキルエステルをアルコールでエステル化し、2,5-フランジカルボン酸のジアルキルエステル(例えば、FDCA-DMe)を生じさせる精製方法に対応し、精製は、得られる組成物の蒸留、再結晶化、又は溶融結晶化によって、及び続いて、精製されたFDCAのジアルキルエステルを加水分解し、精製されたFDCAを得ることによって達成される。言い換えると、2,5-フランジカルボン酸のジアルキルエステルを加水分解する工程は、粗製カルボン酸組成物からFDCAのジアルキルエステルを形成し、FDCAのジアルキルエステルを精製し、その後FDCAのジアルキルエステルを加水分解してFDCAを得ることに対応する。
【0031】
工程c)では、処理溶媒組成物の質量に対して、少なくとも5質量%の2~6個の炭素原子を有する飽和有機酸溶媒を含む処理溶媒組成物を準備する又は製造する。処理溶媒組成物は、熱処理工程中の溶媒として、且つ残存する固体のための分散物中の担体液体として作用する溶媒組成物である。好ましい有機酸は酢酸である。好ましい処理溶媒組成物は、有機酸と水の両方を含む。
【0032】
しかし、水中におけるFDCAの不都合な脱カルボキシル化挙動を示した、水中で実施された結晶化試験の結果に基づいて、それに対する偏見が存在したが、処理溶媒組成物が最大で50質量%の量の水を含む場合にも良好な結果を得ることができることが、驚くべきことに本発明者らによって発見された。水の使用が比較的安価であり、非常に持続可能な方法を可能にするので、処理溶媒組成物中での最大50質量%、好ましくは最大40質量%、より好ましくは最大35質量%の水の使用が一部の用途にとって好ましい。
【0033】
処理溶媒組成物は、例えば、別の反応器中で溶媒を混合し、それを本発明の方法に供給することによってもたらされてもよい。しかし、処理溶媒組成物はまた、本発明の方法の枠組み内で製造されてもよい。ここで、処理溶媒組成物を製造するために精製工程b)で用いられる溶媒組成物を使用することが特に好ましい。精製工程b)で使用される溶媒からの処理溶媒組成物の製造は上で定義された処理溶媒組成物に至るためのすべての好適な工程を含んでもよく、それには、濾過、2~6個の炭素原子を有する有機酸溶媒の添加、水の添加、有機酸化合物の除去、又は水の除去が含まれる。
【0034】
好ましい実施形態では、工程b)で得られる精製されたカルボン酸組成物と、工程b)において精製に使用される溶媒の少なくとも一部は、いずれも熱処理反応器に送られ、そこで2~6個の炭素原子を有する飽和有機酸溶媒及び/若しくは水を追加の溶媒として添加するか、又は熱処理組成物を製造するために除去することが好ましい。溶媒の前記の部分は、例えば、濾過又は遠心分離工程後に固体に付着して残る溶媒からなってもよい。
【0035】
工程d)は、精製されたカルボン酸組成物及び処理溶媒組成物を含む熱処理組成物を準備する又は製造することを含む。熱処理組成物は、実際は液相及び固相を含む。精製されたカルボン酸組成物は、工程b)から得られる。処理溶媒組成物は、工程c)からのものである。熱処理組成物は、精製されたカルボン酸組成物と処理溶媒組成物を、当業者にとって好適であることが公知の任意の方法で組み合わせることによって得られてもよい。
【0036】
本発明との関連では、工程e)は、しばしば熱処理又は熱処理工程とよばれる。
【0037】
本方法によると、熱処理組成物は、5~240分の範囲の時間にわたって140~200℃の範囲の昇温された温度に供される。FDCAの全量に対する溶解されたFDCAのパーセンテージが10~80%の範囲であることが、本発明にとって必須である。この溶解の程度は、全熱処理のあいだに少なくとも5分間維持されることが好ましく、溶解されたFDCAのそれぞれの量は、5~240分の熱処理全体のあいだ所定の範囲内にあることが好ましい。溶解された2,5-フランジカルボン酸のパーセンテージは、実際の値が少なくとも5分間にわたって規定した範囲内にあることを条件として、熱処理の継続期間にわたって平均した場合に、所定の範囲内にあることが好ましい。
【0038】
当業者は、熱処理の条件を必要とされる溶解の程度に合わせて調整することができ、そのとき以下の表を使用することができ、表は、使用される溶媒組成物に応じた、所定の温度におけるFDCAの溶解度の値を列挙している。これらのデータは実験値から作成され、適正な溶解度モデルに適合されている。中間値は、補間によって得ることができる。
【0039】
【0040】
熱処理工程e)において熱処理組成物を昇温した温度に供した後、その処理された組成物を20~80℃の範囲の温度に冷却し、それによって溶媒中のFDCAの溶解度を低減し、カルボン酸組成物の沈殿をもたらす。固体FDCAの少なくとも一部を処理された組成物から分離してカルボン酸組成物を得て、ここで2~6個の炭素原子を有する飽和有機酸溶媒を含む母液が残る。
【0041】
カルボン酸組成物は、精製されたカルボン酸組成物と比較して増加した純度を示すだけでなく、精製されたカルボン酸組成物とは異なり、不都合な板状形状を示さず、より球状であることが見出される固体粒子もまた特色とする。同様に、その粒径分布はより好都合であり、固体生成物のより簡便な取扱いを可能にする。得られるカルボン酸組成物は、アルキレングリコール、好ましくはエチレングリコールとの非常に良好な混合挙動を示すことが発見され、したがってポリアルキレンフラノエートの製造のための非常に有望な出発原料を構成する。
【0042】
上述した熱処理工程は、有益には、FDCAを含むカルボン酸組成物を製造するための既存の方法に組み込まれてもよく、なぜなら、本発明の方法は、粗製FDCAを得るために使用される技術に関して制限がなく、先行技術において公知の最も重要な精製方法と組み合わせることができる。
【0043】
処理溶媒組成物が2~6個の炭素原子を有する飽和有機酸溶媒を含むことが有益であり、なぜなら、これらの溶媒は、酸化反応のために先行技術のほとんどの方法において使用される最も一般的な溶媒であるからである。これが、効率的なプラント管理を可能にし、追加の化学物質を貯蔵する必要性を低減し、したがって貯蔵費用を低減する。
【0044】
驚くべきことに、本発明の方法を用いると、高価な触媒又は高腐食性及び/若しくは有害な物質を必要とすることなく上述した有益な効果を得ることができ、処理溶媒組成物の微量成分としての水の驚くほど高い適性が特に有益である。更に、本発明による方法の他の工程で使用するため、有機酸を含む処理母液を、好ましくは酸化工程及び/又は精製工程及び/又は熱処理工程に再使用することができる。これが、廃棄物の生成が少ない特有の持続可能な方法に到達することを可能にする。
【0045】
工程b)において、工程b)で定義される群から選択される少なくとも2つの工程を含む方法が好ましい。更に、工程b)において、精製が、2-ホルミル-2-フランカルボン酸の少なくとも一部を水素化する工程、及び水素化反応混合物から固体2,5-フランジカルボン酸の少なくとも一部を結晶化させる工程を含む、本発明による方法が好ましい。
【0046】
本発明の枠組み内で、表現「の少なくとも一部」は、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、更により好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも60%を意味し、濃度に関して、別段の指示がない場合、これらの値は質量パーセントで示される。
【0047】
粗製カルボン酸組成物及び/又は精製されたカルボン酸組成物が、2,5-フランジカルボン酸のモノアルキルエステル、好ましくは2,5-フランジカルボン酸のモノメチルエステル(FDCA-Me)を含む、本発明による方法が好ましい。
【0048】
先に論じたとおり、上記の好ましい方法は特に有益であり、それは、本発明の根底にある課題が、粗製カルボン酸組成物及び/又は精製されたカルボン酸組成物中にFDCAのモノアルキルエステルを含む方法について特に顕著であることが発見されたという事実によるものである。FDCAのモノアルキルエステルを含むそれぞれの粗製カルボン酸組成物は、例えば、5-HMFのアルキルエーテルを含む出発原料の供給物を酸化することによって製造することができる。先行技術の精製方法のほとんどが、粗製カルボン酸組成物からFDCAのモノアルキルエステルを完全に除去するのにあまり好適でないという事実によって、粗製カルボン酸組成物及び精製されたカルボン酸組成物の両方が2,5-フランジカルボン酸のモノアルキルエステルを含むことがしばしば観察されている。
【0049】
当分野で最も成熟した技術の1つにおいて、FDCAのモノメチルエステル及びFDCAのモノエチルエステルは、最も関係のあるFDCAのモノアルキルエステルであり、ここで、FDCAのモノメチルエステルが特に普及しており、それによって粗製カルボン酸組成物及び精製されたカルボン酸組成物中にFDCAのモノメチルエステル(FDCA-Me)が存在することが、その高い工業的重要性のために特に好ましい。上で詳述したとおり、精製されたFDCAがまたFDCAのモノアルキルエステル、特にFDCAのモノメチルエステルを含む場合、固体の精製されたFDCAの機械的及び物理的特性があまり望ましくないことがしばしば見出される。理論によって束縛されることを望むことなく、これは、いわゆるFDCA及びFDCA-Meの固溶体の形成によるものと思われる。驚くべきことに、FDCA-Meの除去に関して並びに固体生成物の物理的及び機械的特性の増強に関しての両方に特に有効であることを証明している本発明の方法によって、FDCA及びFDCA-Meの固溶体が非常に効率的に補償及び/又は予防され得ることが発見された。工程e)が、不活性ガス、好ましくは窒素又はアルゴンで加圧されている反応器中で実施され、及び/又は工程e)において熱処理組成物が、少なくとも一部の時間、好ましくは撹拌によってかき混ぜられて、固体2,5-フランジカルボン酸をせん断力に曝す本発明による方法が好ましい。
【0050】
不活性ガスで加圧された反応器中で工程e)を実施することが特に有益であり、なぜなら、このことが反応器中の酸素又は他の反応性気体化合物の存在が低減し、そうでなければそれらは先の方法工程(プロセスステップ)から存在し得るからである。これらの実施形態では、操作中の反応器中の雰囲気は、主に不活性ガス及び気化した有機酸溶媒及び/又は水から構成される。結果として、FDCAと反応性気体化合物の望ましくない副反応が阻害される。したがって、不活性ガスの使用は特に安全な方法を可能にし、なぜなら潜在的に危険な副反応及び/又は発熱反応及び/又は火災の可能性が低下するからである。
【0051】
本発明による方法の結果は、多くの場合、熱処理組成物の熱処理のみで満足のいくものであることが見出されているが、本発明者らは、固体FDCA粒子をせん断力に曝すために工程e)において熱処理組成物を更にかき混ぜた場合、得られるカルボン酸組成物の粒子の機械的及び物理的特性への有益な影響が更に増大し得ることを発見した。理論によって束縛されることを望むことなく、熱処理中の熱処理組成物の撹拌は、液相の均質性を高め、不純物の濃度勾配を低減し、それによって、得られる粒子の精製及び機械的特性の改善の両方を容易にすると考えられる。撹拌は、当業者に公知のすべての好適な手段、例えば、熱処理組成物の撹拌又は外部ポンプループの利用によってもたらすことができる。
【0052】
熱処理組成物が、熱処理溶媒組成物の質量に対して15~45質量%、好ましくは20~40質量%の量の2,5-フランジカルボン酸を含む方法が好ましい。そのような好ましい方法が有利であり、なぜなら、溶解された及び固体のFDCAそれぞれの量は、高温を必要とすることなく且つ使用される溶媒の組成に関して高い柔軟性を伴って使用しても、工程e)における溶解されたFDCAと固体のFDCAの間の所望の比を容易に得ることができるからである。
【0053】
処理溶媒組成物が、酢酸を、処理溶媒組成物の量に対して好ましくは55~99質量%、好ましくは60~98質量%の範囲の量で含み、及び/又は処理溶媒組成物が、質量で60:40~99.9:0.1の間の比、好ましくは65:35~95:5の間の比で酢酸及び水を含む方法が好ましい。
【0054】
主な目的が、可能な最高の純度の程度、及び最も有益な機械的特性を得ることである場合は、規定した比の酢酸及び水を有するそれぞれの処理溶媒組成物が特に好ましく、それは例えば、少量の水は、FDCAのより少ない脱カルボキシル化をもたらすからである。さらには、より多量の酢酸は、最良の不純物除去をもたらすが、指定した量の水の添加は、より多量のFDCAの溶解を可能にし、それによって本方法をより低温において実施することを可能にする。前に論じたように、驚くべきことに良好な結果をももたらす最大で50質量%の水の使用は、方法の持続可能性に焦点を当てる特定の実施形態にとって(例えば、グリーンケミストリーの概念枠組みにおいて)特に好ましいことでありうる。
【0055】
最大で50質量%の水を含む処理溶媒組成物中での熱処理は、有機酸中での熱処理と同様の粒子形状を生じることが発見された。同様に、そのような水が豊富な溶媒組成物中での熱処理は、プロセスパラメーターが調整されている場合(例えば、より長い滞留時間)、FDCA-Me及びFCAの含有量に関して同様の生成物品質をもたらす。理論によって束縛されることを望むことなく、この少なくとも一部は、加水分解によるFDCA-MeのFDCAへの変換に起因し得ると考えられる。
【0056】
工程b)で製造される精製されたカルボン酸組成物が、精製されたカルボン酸組成物の質量に対して25質量%未満、好ましくは15質量%未満、最も好ましくは10質量%未満の溶媒を含む、本発明による方法が好ましい。
【0057】
上記それぞれの方法が好ましく、なぜなら、精製されたカルボン酸組成物を処理溶媒組成物と混合して熱処理組成物を得る前に、精製されたカルボン酸組成物から、精製工程b)中で使用された顕著な量の溶媒を除去することが好ましいからである(例えば、精製工程からの水が、低含水量において実施されるべき熱処理のための溶媒ループに入らないようにするために)。熱処理工程にとって不都合であり得る様々な溶媒、例えば芳香族化合物を使用する精製方法を利用する方法、又は精製されたカルボン酸の中間単離によって熱処理前に除去されうる多量の可溶性の副生成物及び/若しくは不純物を生じる方法にとって、上記それぞれの方法が特に有益である。
【0058】
工程e)及びf)におけるプロセスパラメーターが、下記の2,5-フランジカルボン酸の粒子を製造するよう選択される、本発明による方法が好ましい:
- 0.2bar及び2barの分散圧力における粒径測定のあいだに35%未満、好ましくは25%未満の平均粒子径の低下しか示さない、2,5-フランジカルボン酸の粒子、並びに/又は
- 50~300μmの範囲、好ましくは60~200μmの範囲の体積平均メジアン径(d50)を有する2,5-フランジカルボン酸の粒子。
【0059】
本方法の有益な側面は、追加の精製と、得られる生成物の機械的及び物理的特性の増強の両方をもたらすことができることである。この相乗的な関係は、驚くべきことに、それぞれの他のパラメーターを測定及び分析することによって、純度の側面又は機械的特性の側面のいずれかを確実に推定又は予測することを可能にする。本発明による方法で得られる生成物の機械的特性及び/又は粒径分布は、ほとんどの場合容易に決定することができるので、上記の好ましい方法が特に有利であり、なぜなら、当業者は、上記のパラメーターを監視でき、且つ生成物の広範囲にわたる化学分析をする必要なしに、いつ所望の純度の程度に到達するかを極めて確実に予測できるからである。それぞれの利点は、FDCAのモノアルキルエステルを含む方法に対して特に明確であることが見出された。理論によって束縛されることを望むことなく、これは、FDCAのモノアルキルエステルが、いくつかの場合において、得られた生成物の機械的特性及び粒径分布に及ぼす望ましくない効果によって引き起こされると考えられる。言い換えると、多くの場合、FDCA-Meに関して所望の純度の程度もまた得られた場合に、上記の好ましい方法において定義した所望の粒子形状に到達することが見出された。
【0060】
平均粒径と体積平均メジアン径(d50)の両方は、当業者に周知であり、且つ確実に決定できるパラメーターである。実際に、それぞれのパラメーターの決定のために当技術分野で使用される典型的な測定は、少なくとも同様の値をもたらすことが予想される。したがって、圧倒的多数の場合、平均粒径及び体積平均メジアン径(d50)の決定に使用される装置は重要ではない。しかし、疑義が生じた場合、平均粒径及び体積平均メジアン径(d50)は、粒径測定のための最も一般的な装置の1つ、すなわちMalvern Panalytical社製のレーザー回折粒径分析器モデルMastersizer3000を使用して、レーザーオブスキュレーション1.5%及び屈折率1.538の値、及び分散圧力0.2barの設定で、PSD乾燥法を使用して測定される。
【0061】
0.2bar及び2barの分散圧力における粒径測定間の平均粒径の低下は、同じ物質について、しかし異なる一部について測定される(すなわち、同じ粒子に対して後続の測定ではない)。このため、粒子の分散を作り出すための2つの異なるレベルの空気圧を使用して試料を試験する。0.2barの分散圧力を使用した結果は「最も穏やか」と考えられ、一方で2barの分散圧力を使用した結果は、より激しい分散である。これは、例えば、空気式搬送操作中に経験されるストレスを表す場合がある条件下での粒子強度及び安定性の試験として使用されてもよい。
【0062】
粗製カルボン酸組成物は2-フランカルボン酸を、好ましくは組成物の質量に対して1~2000質量ppmの範囲の量、より好ましくは組成物の質量に対して1~1000質量ppmの範囲の量で含み、かつ、カルボン酸組成物は2-フランカルボン酸を、700質量ppm以下の量、より好ましくは500質量ppm以下の量しか含まない、本発明による方法が好ましい。
【0063】
上で論じたとおり、FCAは、FDCAを含む粗製カルボン酸組成物中の不純物の1つであり、これらは多くの場合、先行技術の精製方法によっては不十分にしか除去されない。特に、FCAは芳香族カルボン酸であり、酸化条件下でかなり安定であり、酸化によって除去するのが困難である。更に、芳香族カルボン酸として、FCAは、FFCAを水素化するがFDCAを水素化しない条件下での水素化にも抵抗し、そのことが水素化によって除去することを困難にしている。また、FDCAをエステル化してジエステルを形成し、続いての蒸留、再結晶化、又は溶融結晶化によってFCAを除去することができるが、その精製されたジアルキルエステルを加水分解して二酸(diacid)を製造する際に新たなFCAが形成され、それにより、この方法もFCAの除去のために適切ではない。驚くべきことに、本発明の方法、すなわち熱処理を含む方法は、カルボン酸組成物中のFCAの量を顕著に低減できることが発見された。FDCAを含むカルボン酸組成物からのFCAの除去に対する驚くほど高い適合性によって、上記の好ましい方法が特に有利である。機械的及び物理的特性に関して前に論じた通り、FCAを含むカルボン酸組成物に対して、熱処理を使用すると、驚くべきことに生成物の機械的及び物理的特性が十分である可能性があるかどうかについても、カルボン酸組成物中のFCAの濃度から極めて確実に推定又は予測できることが発見された。本発明者らは、熱処理後にカルボン酸組成物の質量に対して700質量ppm以下、好ましくは500質量ppm以下の量のFCAしか含まないカルボン酸組成物が、許容可能な又は良好な物理的及び機械的特性を示したことを今や発見した。このことは有益であり、なぜなら、設備中の装置の利用可能性に応じて、得られた生成物の機械的特性を直接分析する代わりに、化学組成を分析することが好ましい場合があるからである。
【0064】
粗製カルボン酸組成物が、粗製カルボン酸組成物の質量に対して90~99.5質量%の範囲の量、好ましくは94~99質量%の範囲の量の2,5-フランジカルボン酸を含み、及び/又は粗製カルボン酸組成物が、粗製カルボン酸組成物中のすべてのフラニクスの全質量に対して90~99.5質量%の範囲の量、好ましくは94~99質量%の範囲の量の2,5-フランジカルボン酸を含み、及び/又は粗製カルボン酸組成物が、粗製カルボン酸組成物の質量に対して100~3800質量ppmの範囲の量、好ましくは150~3000質量ppmの範囲の量、より好ましくは1500質量ppm以下の量の2-ホルミル-2-フランカルボン酸を含み、及び/又は粗製カルボン酸組成物が、粗製カルボン酸組成物の質量に対して0.2~5.0質量%の範囲の量、好ましくは0.3~3質量%の範囲の量の2,5-フランジカルボン酸のモノアルキルエステルを含む方法が好ましい。そのような方法が好ましく、なぜなら、本発明の方法において実施される熱処理が、上記のそれぞれの粗製カルボン酸組成物を用いて出発した方法において使用される場合に特に有効であることが発見されたからである。
【0065】
フラニクスという用語は、当技術分野で公知であり、少なくとも1つのフラン部分、すなわち置換又は非置換フラン環を含むすべての化合物を記述する。実際に、最も重要なフラニクスは、典型的にはフラン、5-HMF並びにそのエーテル及びエステル、FCA及びそのエステル、FDCA及びそのエステル、FFCA及びそのエステル、2,5-ジホルミルフラン、5-メチルフラン-2-カルボン酸、並びにこれらの化合物のダイマーである。工程b)の精製が、2-ホルミル-2-フランカルボン酸の少なくとも一部を水素化する工程を含み、及び/又は工程b)の精製が、精製されたカルボン酸組成物を単離する工程も含み、単離が、濾過及び/又は洗浄及び/又は乾燥を含む本発明による方法が好ましい。この方法が好ましく、なぜなら、熱処理は、精製方法として水素化と組み合わされた場合にとりわけ良好な結果を示すことが発見されたためである。水素化による精製は、特に費用対効果が高く、連続式又は半連続式方法で取り扱われる大きな体積の生成物に対して好適であるだけでなく、粗製カルボン酸組成物からのFFCAの除去にも非常に有効である。
【0066】
精製方法としての水素化は特に好ましく、なぜなら、この方法が通常2~6個の炭素原子を有する飽和有機酸、及び水又は実質的に純粋な水を含む水素化溶媒を使用するからである。したがって、水素化溶媒組成物は、多くの場合、熱処理中に利用される処理溶媒組成物のための前駆体として使用することができる。ほとんどの場合、処理溶媒組成物の所望の組成を調整するために有機酸を添加する必要があるが、いくつかの場合は、改変することなく、処理溶媒組成物として、水素化溶媒の少なくとも一部を直接使用することができる。しかし、これらの場合は、熱処理中の、溶解されたFDCAの所望のパーセンテージを確立するために、水素化溶媒の少なくとも一部を除去することがしばしば好ましい。例えば、十分に溶解された条件を利用する水素化のプロセスは、その後、蒸発晶析装置を使用して結晶化され、水素化溶媒の一部を除去し、プロセス中のFDCAの濃度を増大させることができる。部分的な溶媒除去のための他の選択肢には、デカンテーション、ハイドロクロン(hydroclone)又は浄化器等の方法が含まれる。
【0067】
本発明の方法は、カルボン酸組成物の純度及び機械的特性に関して良好な結果をもたらす傾向にある一方で、精製されたカルボン酸組成物が、他の成分、例えば精製のために使用された溶媒から単離される単離工程を含むことが特に有益であり得ることが発見された。そのような単離工程は、典型的には、濾過及び/又は洗浄及び/又は乾燥の工程を含む。それぞれの方法は、通常、費用及び/又は時間効率に関して最適化されていないが、その一方で、固体生成物の中間単離は、熱処理中の精製を容易にし、液体成分中の変化を考慮する必要なしに、熱処理組成物の組成の緊密な制御を可能にする。これに対応して且つ上述のように、それぞれの方法は、カルボン酸組成物の最高純度のなかに入ることが予測される。
【0068】
精製されたカルボン酸組成物が、精製されたカルボン酸組成物の質量に対して95~99.9質量%の範囲の量、好ましくは98~99.9質量%の範囲の量の2,5-フランジカルボン酸を含み、及び/又は精製されたカルボン酸組成物が、精製されたカルボン酸組成物の質量に対して1~200質量ppmの範囲の量、好ましくは1~100質量ppmの範囲の量の2-ホルミル-2-フランカルボン酸を含み、及び/又は精製されたカルボン酸組成物が、精製されたカルボン酸組成物の質量に対して100~13000質量ppmの範囲の量、好ましくは200~11000質量ppmの範囲の量の2,5-フランジカルボン酸のモノアルキルエステルを含み、及び/又は精製されたカルボン酸組成物が、精製されたカルボン酸組成物の質量に対して1~2500質量ppmの範囲の量、好ましくは1~1700質量ppmの範囲の量の2-フランカルボン酸を含む本発明による方法が好ましい。この方法が好ましく、なぜなら、本発明の方法の熱処理が、所定の規格の精製されたカルボン酸組成物を用いて特に良好に働くことが発見されたからである。
【0069】
本発明の方法は、研究された広範な種類の精製されたカルボン酸組成物に対して、生成物の純度の程度の増大並びに向上された機械的及び物理的特性をもたらすことができるとともに、不純物の全体的な量、特にFDCA及びFCAのアルキルエステルの量が特定の閾値を超えたときに、効率が低下したことがときどき観察された。同様の効果が他の精製方法で観察されており、それは、不純物を溶解するために使用しうる溶媒の量が、熱処理の本質的な特徴、すなわち特定の量のFDCAが熱処理のあいだに固相中に残っていることが必要であるということによって制限されるという事実によるものである。
【0070】
同様に、上記の方法が好ましく、なぜなら、本発明の熱処理が、ポリマーグレードのFDCAにおいて望ましくない末端停止剤でもあるFFCAを除去するためにあまり適していないことが発見されたためである。したがって、精製工程b)が、熱処理前にFFCAのほとんどを除去するようなやり方で実施される方法が好ましい。FFCAを除去することについての熱処理の比較的低い能力について理解することで、当業者は、所望のFFCA量を有する精製されたカルボン酸組成物を生成するように、問題なく先行技術の方法を適合させることができる。
【0071】
工程e)における温度が150~190℃の範囲、好ましくは160~190℃の範囲である、及び/又は工程e)において熱処理組成物が15~120分の範囲、好ましくは30~90分の範囲の時間、最も好ましくは0.7*(220-T/℃)~3.0*(220-T/℃)分の範囲の時間、昇温された温度に供される(ここでTは工程e)における温度である)、及び/又は工程e)において、2,5-フランジカルボン酸の全量に対する溶解された2,5-フランジカルボン酸のパーセンテージが20~60%の範囲、好ましくは30~60%の範囲である方法が好ましい。この方法は好ましく、なぜなら、純度と機械的特性の両方に関してカルボン酸組成物について良好な結果を得るために適していることが発見された熱処理のプロセスパラメーターを規定しているからである。ここで、熱処理中の温度範囲及び溶解されたFDCAのパーセンテージは、処理溶媒組成物の組成及び量によって主に決定される要因によって関連付けられる。都合が良いことに、スクリーニング実験に基づいて、上で開示したとおり、熱処理温度に応じて好適な滞留時間を定めることができる。
【0072】
工程f)における処理された組成物が、30~80℃の範囲、好ましくは40~80℃の範囲の温度に冷却される、及び/又は工程f)が、処理母液を処理して、残りの処理された組成物から水の少なくとも一部を除去する工程を含む、及び/又は工程f)が、工程c)における処理溶媒組成物をもたらすために、処理母液の少なくとも一部を再利用する工程を含む、本発明による方法が好ましい。
【0073】
温度の低下が、処理溶媒組成物中でのFDCAの溶解度が低下し、溶解されたFDCAの沈殿をもたらし、工程f)における冷却は、得られる生成物の機械的特性に対する大きな影響を有することが予測されることが理解されうる。これに対応して、カルボン酸組成物の機械的特性を改変することを意図する当業者は、工程e)における熱処理と工程f)における冷却の間の温度勾配を変化させることを考えるべきである。工程f)中の温度勾配が再現可能に制御され、且つ急峻すぎない場合に有益であり得ることが発見された。この知見と一致して、処理された組成物を、20~25℃の典型的な室温よりなお十分に高い温度に冷却することが好ましい。最大で600K/時間の冷却速度が極めて許容可能であるが、30~120K/時間のレベルが好ましい。理論によって束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、処理温度における大きな固体画分の存在が、そうでなければこれらの比較的高い冷却速度において経験されうる微粉の形成、又は自発的な核形成のリスクを低減させると考えている。高い冷却速度が有利であり、なぜなら、それがその系に対する熱応力を、所望の処理効果をもたらすために必要な熱応力まで低くするからである。過剰な熱応力は望ましくない反応を生じさせる可能性があり、それには、例えば、色の形成が含まれる。高い冷却速度は、有利には、溶媒の少なくとも一部を蒸発させること、例えば、溶媒を沸騰させることによってもたらされる。
【0074】
熱処理工程の持続可能性を増大させるため、及び本発明による方法によって生成される廃棄物の量を低減させるために、処理母液の少なくとも一部を再利用して熱処理工程に戻すことが好ましい。これは、処理母液の少なくとも一部が、精製されたカルボン酸組成物の熱処理における処理溶媒組成物として使用できることを意味する。この再利用工程では、発生した変化に対して溶媒組成物を調整することが重要であり得る。例えば、精製されたカルボン酸組成物が、例えば濾過及び水洗されているが乾燥されていないことによって、水で湿っている場合、その水は、熱処理後に水を母液に組み込まれ、少なくとも一部は再利用前に母液から除去されるべきである。このようにして、全体に熱処理組成物を、所望の濃度レベルに維持することができる。
【0075】
更に、本発明は、カルボン酸組成物の質量に対して98質量%より多い2,5-フランジカルボン酸を含むカルボン酸組成物であって、カルボン酸組成物粒子が、0.2bar及び2barの分散圧力における粒径測定のあいだで平均粒径に35%未満の低下を示し、カルボン酸組成物が、好ましくは1質量%未満、好ましくは0.5質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満の水しか含まず、かつ、カルボン酸組成物が、好ましくは本発明の方法を使用して製造される、カルボン酸組成物に関する。
【0076】
良好な物理的及び機械的特性を有し、したがって、例えば生成物の貯蔵又は輸送中に効率的に処理することができるカルボン酸組成物を提供するという目的に直面して、本発明者らは、驚くべきことに上記のカルボン酸組成物を提供することによって技術的課題を解決することができることを発見した。それぞれのパラメーターは、効率的な取扱い及び長期間の貯蔵に好適であり、したがって有益である粒子を特徴付ける。本発明のカルボン酸組成物は、都合が良いことに、本発明の方法を使用し、特に、精製されたカルボン酸組成物の熱処理の工程によって製造することができる。したがって、本発明の方法又は本発明の方法の好ましい実施形態を使用して製造されたカルボン酸組成物が好ましい。
【0077】
カルボン酸組成物が50~300μmの範囲、好ましくは60~200μmの範囲の体積平均メジアン径(d50)を有する、及び/又はカルボン酸組成物が20μm以上のd10を有し、ここでd10は10%の体積の粒子がそれより小さい直径を有する直径と定義され、及び/又はカルボン酸組成物が400μm以下のd90を有し、ここでd90は90%の体積の粒子がそれより小さい直径を有する直径と定義され、及び/又はd10に対するd50比が、1~3の範囲、好ましくは1.5~2.5の範囲である、本発明によるカルボン酸組成物が好ましい。
【0078】
最も有益な機械的特性を示したこれらのカルボン酸組成物を分析したところ、それぞれのカルボン酸組成物は、本発明によるカルボン酸組成物が配管を通して容易に注入及び圧送することができると同時に、長期間の貯蔵後でさえそれらの特性を維持するという事実に少なくとも寄与すると考えられる特定の粒径分布を示すことが発見された。更に、これらのカルボン酸組成物は、良好な安定性並びに良好な圧送及び混合特性をもつスラリーを作るために好都合な特性を有することが発見された。
【0079】
カルボン酸組成物が、カルボン酸組成物の質量に対して200~5000質量ppmの範囲の量の2,5-フランジカルボン酸のモノアルキルエステル、好ましくは2,5-フランジカルボン酸のモノメチルエステルを含み、及び/又はカルボン酸組成物が、カルボン酸組成物に対して10~500質量ppm、好ましくは20~200質量ppmの範囲の量の2-フランカルボン酸を含み、及び/又はカルボン酸組成物が、カルボン酸組成物に対して1~100質量ppm、好ましくは2~50質量ppm、最も好ましくは30質量ppm未満の範囲の量の2-ホルミル-2-フランカルボン酸しか含まない、本発明によるカルボン酸組成物が好ましい。
【0080】
上記各カルボン酸組成物が好ましく、なぜなら、機械的パラメーターが特に好都合であるだけでなく、組成物はまた、カルボン酸組成物の重合挙動に対して最も有害な影響を及ぼすことが知られている不純物を少量しか含まないからである。
【0081】
本発明はまた、ポリ(アルキレン-2,5-フランジカルボキシレート)ともよばれるポリアルキレンフラノエートの製造のための出発原料に関し、それは本発明によるカルボン酸組成物及びアルキレングリコール、好ましくはエチレングリコール、並びに重合触媒を含み、ここで、ポリアルキレンフラノエートは、好ましくはポリ(エチレン-2,5-フランジカルボキシレート)である。
【0082】
ポリアルキレンフラノエートの製造のためのそれぞれの出発原料は、本発明のカルボン酸組成物とアルキレングリコール、及び当技術分野で公知の一般的な重合触媒の混合物である。それぞれの組成物は、ポリアルキレンフラノエートを生成する重合反応において使用するのに特に適している。上で論じたように、これは、本発明のカルボン酸組成物、すなわち本発明の方法によって得られるカルボン酸組成物の有益な機械的及び物理的特性に起因する。FDCA粒子の形状及び特定の粒径分布は、たとえ低モル比であってもアルキレングリコールとの非常に効率的な混合を可能にする。明らかに対照的に、先行技術の精製方法によって得られる固体FDCAは、低いモル比においてエチレングリコールと所望の混合物を形成しないことが発見されている。このことは、所定の組成の高性能ポリマーを生成するべき重合方法に重大な問題を生じさせ、したがって、出発原料の増強された混合を可能にするために単純にモル比を大きくし、あるいは望ましくない過剰のグリコールを除去するために必要とされるさらなるエネルギーを供給するということを容易に採用することはできない。結果として、本発明のカルボン酸組成物、及びポリアルキレンフラノエートの重合における出発原料としてのその使用は、特にそれらの製造履歴によってFDCAのモノアルキルエステルを含む精製されたカルボン酸組成物と比較して、非常に有益であり且つ長年切望されている要求を満たしている。
【0083】
以下、試験を用いて本発明をより詳細に説明する。
【実施例】
【0084】
実施例A-熱処理による精製
A1-精製されたFDCAの調製
2,5-フランジカルボン酸及び2-ホルミル-2-フランカルボン酸を含む粗製カルボン酸組成物(cFDCA)を、国際公開第2017/003293A1号の教示に従い、前に記載されたようにして調製した。次に、このcFDCAを、国際公開第2016195499号及び国際公開第2016195500号の教示による、水素化による精製に供して、hFDCA(水素化FDCAを表す)と表記される精製されたFDCAを製造した。その結果を理解するために、そのhFDCAの実際の組成を分析することが簡便である。
【0085】
hFDCAを分析して、hFDCAが、98質量%を超える2,5-フランジカルボン酸(FDCA)を含み、主な不純物には、10300質量ppmで存在する2,5-フランジカルボン酸のモノメチルエステル(FDCA-Me)、及び1680質量ppmで存在する2-フランカルボン酸(FCA)を含むことがわかった。これらのレベルの不純物は、一般的にポリマー製造において使用するのに適していないと考えられる。特に、FDCAのモノエステルは、ポリマー製造中にメタノールを生成し、オーバーヘッド装置における潜在的な爆発の危険性につながる。モノカルボン酸、FCAは、重合部位を1つのみ有し、分子量の成長を制限する末端停止剤である。更に、FCAは、色の形成にも関与する。
【0086】
A2-熱処理のための試験設備
研究室用オートクレーブ中で熱処理試験を実施した。オートクレーブの壁を介して加熱及び冷却を行い、撹拌機を使用した。
【0087】
A3-比較例1及び2-FDCAの完全な溶解
比較例1及び2は、水中に10質量%のhFDCAを使用し、FDCAを十分に溶解させるために、熱処理中に160℃に加熱した(少量のhFDCAが、完全な溶解を可能にするために必要とされる)。この完全な溶解は、本発明によるものではない。次に、熱処理組成物を所定の温度に30分間保持した。比較例1では、その後、試料を急速な冷却によって40℃に冷却した。比較例2では、減圧を使用して水を蒸発させることによって試料を15分間でまず109℃に冷却し、その後急速な冷却によって40℃に冷やした。
【0088】
各場合において、次に試料を真空下で40℃において濾過し、水で洗浄し(乾燥固体に対して、質量で1:1)、その後乾燥させた。
【0089】
以下の表に示されるように、この処理は、乾燥したFDCAのモノエステル含有量の妥当な減少をもたらしたが、FCA含有量は、最初の供給原料と比べて実際には増加した(水中で処理したときのFDCA/FDCA-Meのさらなる脱カルボキシル化を示している)。
【0090】
顕微鏡写真が、熱処理後の得られた粒子が、幾分平坦な板を有し、鋭い縁を有する「割れたガラス」の外観、及び顕著なレベルの微粉を有することを明らかにした。この粒子の形状は好ましくないと考えられる。比較例1及び比較例2で得られた粒子の例示的な写真を、それぞれ
図1及び
図2に示す。これらの写真は、倍率20xでEuromex iScope IS.1053-PLPOLRi顕微鏡を使用して得られた。
【0091】
【0092】
A4-比較例3及び4-低温
比較例3及び4を、比較例1及び2について上述したのと同様に調製し、そのプロセスパラメーターを下の表にまとめてある。両方の場合で、加熱速度は、プロセス温度(すなわち、本発明で定義されるものより低い)に達するまで1.5K/分であり、そのプロセス温度を1時間保持し、その後1K/分で40℃に冷却した。
【0093】
より良い理解のために、プロセス温度における所定の溶媒中での見積もられたFDCAの溶解度も示している。
【0094】
下の表に示されているように、より低温での不完全な溶解を伴う熱処理は、乾燥されたFDCAのモノエステル含有量とFCA含有量の両方の妥当な低下をもたらした。しかし、比較例4を比較例1及び比較例2と比較した場合、FCAに対する除去効率は増大するが、FDCA-Meについての除去効率は低下している。
【0095】
顕微鏡写真は、熱処理後に得られた粒子が、鋭い縁及び板状の外観を有することを明らかにした。この粒子形状は好ましくないと考えられる。
【0096】
【0097】
A5-実施例1、2、及び3
実施例1、2、及び3を、比較例1及び2について上述したのと同様のやり方で調製し、そのプロセスパラメーターを下の表にまとめてある。すべての場合において、加熱速度はプロセス温度に達するまで1.5K/分であり、プロセス温度を1時間保持し、その後40℃に冷却した。実施例1及び3では、冷却は1K/分の速度で行った。実施例2については、減圧を使用して水を蒸発させることによって、試料を7分間で107℃まで最初に冷却し、その後1K/分の速度で40℃まで冷却した。
【0098】
より良い理解のために、プロセス温度における所定の溶媒中での見積もられたFDCAの溶解度も示している。試験3は、本発明によるものであるとは考えられず、比較目的のみのために含められている。
【0099】
下の表に示されているように、本発明による熱処理は、乾燥されたFDCAのFDCA-Me含有量及びFCA含有量の両方において顕著な減少をもたらし、それは比較例1~4におけるものよりも著しくより顕著であり、それは、温度及びFDCAの溶解度の両方が正しくあるべきであることを示している。
【0100】
更に、顕微鏡写真は、熱処理後に得られた粒子が、幾分平滑且つ丸みを帯びた形状と、低レベルの微粉によって特徴付けられることを明らかにした。この粒子の形状は、非常に好ましいと考えられる。例3で得られた粒子の例示的な写真を
図3に示す。この写真は、倍率20xでEuromex iScope IS.1053-PLPOLRi顕微鏡を使用して得られた。
【0101】
【0102】
実施例B-粒子
B1-熱処理において使用するための様々なFDCA供給物の調製
主に5-メトキシメチルフルフラール(5-HMFエーテル)及び5-ヒドロキシメチルフルフラール(5-HMF)を含む混合フラニクスを、国際公開第2017/003293A1号の教示に従って、メタノール中のフルクトースの酸触媒脱水、それに続くその酸の部分的中和、並びに5-メトキシメチルフルフラール及び5-ヒドロキシメチルフルフラールの回収によって調製した。
【0103】
回収後、その混合フラニクスを、国際公開第2011/043660A1号の教示に従って、酢酸(HAc)、並びにコバルト、マンガン及びイオン性臭素源を含む触媒とともに酸化反応器に供給した。酸化の生成物は、主に2,5-フランジカルボン酸及び2,5-フランジカルボン酸のモノメチルエステルであり、より少量の2-カルボキシ-5(ホルミル)フラン、及び微量の他の副生成物を伴っていた。これは、以下でcFDCAと表記する粗製カルボン酸組成物に対応する。粗製cFDCAの使用が、本発明の熱処理の影響の特に良好な分析を可能にし、なぜなら、cFDCAは最大量の不純物を有し、それが観察される効果を特に顕著にするからであることに留意されたい。したがって、cFDCAは本発明の方法で定義される精製工程にかけられていないが、cFDCAを用いて以下で得られた結果は、本発明の方法の効果を評価するのに非常に重要である。
【0104】
粗製カルボン酸組成物を、様々な方法によって更に精製した。
【0105】
1つの精製方法では、その二酸(diacid)をメタノールでエステル化して2,5-フランジカルボン酸のジメチルエステルを形成させ、これを精製し、次に塩基の存在下で加水分解し、再び酸性化して、精製されたカルボン酸組成物を形成した。それに対応する試料は、eFDCAと表記される。
【0106】
別の精製方法では、国際公開第2016/195499A1号及び国際公開第2016/195500A1号の教示に従って、粗製カルボン酸組成物を水及び水素と混合し、加熱して固体を溶解し、次に触媒の存在下においてフローシステム中で水素化して、精製されたカルボン酸組成物を形成することによって、粗製カルボン酸組成物を精製した。これに対応する試料はhFDCAと表記される。
【0107】
最後に、水素化されたFDCA(hFDCA)から、別のFDCAの供給原料を得て、これを十分に溶解し、次に水から再結晶化した。それに対応する試料はrFDCAと表記される。
【0108】
これらの供給原料を分析し、下の表に示されるFDCA-Me及びFCAのレベルを含むことがわかった(範囲は、同じ種類の試料に対する複数の測定の結果を示している)。
【0109】
【0110】
B2-粒径分析
試料の粒径分布(PSD)を決定するために、上述した様々な方法によって調製したFDCAの試料を粒径分析にかけた。粒径分析は、Malvern Panalytical社製のレーザー回折粒径分析器モデルMastersizer3000を使用した。この機器を使用して粒径の完全な分布を生成させ、これを次いで試料の体積の10%、50%、及び90%に対する体積平均粒径(直径)カットオフを表す、十分に確立されているd10、d50、及びd90パラメーターとともにまとめの表中に取り込む。更に、d50/d10比として報告される粒径分布の幅を表すための統計を示す。この比の大きな値は、中央値よりはるかに小さい粒子、又は微粉の顕著な集団を有する分布を示し、これは好ましくないもの考えられる。
【0111】
B3-応力試験
標準的な粒径分析に加えて、粒子分散を作り出すための複数のレベルの空気圧を使用して試料を試験した。0.2barの分散圧力を使用した結果は「最も穏やか」と考えられ、一方で2barの分散圧力を使用した結果は、より激しい分散である。これは、例えば、空気式搬送操作中にかかるストレスを表しうる条件下での粒子の強度及び安定性の試験として使用することができる。この試験は、0.2barと比較して2.0barで試験したときのd50の低下として、下の表で定量的に示される。
【0112】
B4-熱処理のための実験設備
316Lステンレス鋼から作られた5リットルのオートクレーブを、熱処理及び対応する結晶化に使用した。このシステムは、選択した温度及び溶媒に対応する圧力規格のものである。容器は316Lステンレス鋼から作製された。温度、圧力及び軸速度を記録する。インペラーは、この目的のために好適なEkato製「Viscoprop」である。
【0113】
B5-比較例5~12-粒径分布
比較例5~12については、それぞれの材料を熱処理中に十分に溶解させ、次に、下の表中の詳細に従って冷却及び結晶化させた。各場合において、その材料を熱処理温度において30分間保持した後、40℃まで冷却した。比較例7は、冷却速度が180℃から140℃への冷却については20K/時間、次に140℃から100℃まで40K/時間、次に100℃から40℃まで60K/時間である、より洗練された冷却スキームを使用した。
【0114】
得られた粒子を分析して、粒径分布を決定した。d50/d10の比を分布の幅の尺度として使用し、大きな数字は、中央値よりはるかに小さい直径を有する粒子の顕著な画分を示す。
【0115】
【0116】
B6-実施例4~9-粒径分布
例4~9の熱処理を、比較例5~12について上述したものと同様のやり方で実施し、そのプロセスパラメーターを下の表に要約まとめてある。実施例8及び9では、熱処理時間は240分に延長した。
【0117】
【0118】
データから、本発明による熱処理は、d50/d10比の低下によって示される、微粉の顕著な減少を伴う好ましい粒径分布を与えることが明らかである。
【0119】
B7-比較試験13及び14-粒子強度
比較試験13及び14は、下の表の条件に従い、水素化によって精製されたFDCA(hFDCA)の試料を熱処理に供し、かつその試料を十分な溶解及び制御された結晶化に供することを含んでいた。各場合において、試料は水中に20wt%FDCAであり、hFDCAを十分に溶かすために180℃に加熱し、次に40℃に冷却した。
【0120】
粒子強度を試験するために、0.2barの分散圧力、及びまた2.0barの分散圧力における粒径分布を生じさせるためにこれらの試料を試験した。結果を下の表に示す。
【0121】
【0122】
B8-実施例10~12-粒子強度:
実施例10~12を、下の表の条件に従い、水素化によって精製されたFDCA(hFDCA)の試料をとり、それを部分的な溶解及び制御された結晶化に供することによって熱処理を受けさせた。各場合において、試料は、指定した時間のあいだ所望の温度に維持し、次に40℃に冷却した。
【0123】
粒子強度を試験するために、これらの試料を試験して、0.2barの分散圧力、及びまた2.0barの分散圧力における粒径分布を生じさせた。結果を下の表に示す。
【0124】
【0125】
本発明による実施例のそれぞれにおいて、得られた試料は、2.0barでの試験を0.2barの分散圧力と比較したときのd50のパーセンテージの低減の低下によって示されるように、熱処理後に安定な粒子を含む。これらの固体は、改善された固体取扱い特性を有することがわかっている。
【0126】
実施例C-熱処理温度及び溶解の程度
水中での粗製FDCAの水素化、それに続く結晶化、冷却、濾過、及び水での洗浄によって、精製されたFDCAを調製した。溶媒組成物は、質量で65:35の比の酢酸及び水から作った。各試験に対して、30グラムのFDCAを70グラムの溶媒と混合した。その混合物をオートクレーブ中で所望の温度に加熱し、撹拌しながら60分定温で保持した。次いでその混合物を40℃まで急速に冷却し、その後濾過した。濾過ケーキを溶媒で洗浄し、次に乾燥して、表に挙げた不純物について分析した。結果を下の表に示す。熱処理温度において溶解される全FDCAの見積もった%も示している。40℃での試験は比較であり、本発明によるものではない。
【0127】
【0128】
結果は、温度及び溶解の程度が、熱処理のために正確であるべきであることを示しており、それはFDCA-Me及びFCAそれぞれの相対的な除去として測定される。
【0129】
実施例D-溶媒組成物
水中での水素化、続く結晶化、冷却、濾過、及び水での洗浄によってFDCAを調製した。溶媒組成物は、表に示す異なる質量比の酢酸及び水から作った。各試験について、27~30質量%のFDCAを含む組成物を所望の溶媒中に作成した。その混合物をオートクレーブ中で180℃に加熱し、撹拌しながら60分定温で保持した。その混合物を次に40℃まで急速に冷却し、その後濾過した。濾過ケーキを溶媒で洗浄し、次に乾燥させ、報告した不純物について分析した。結果を下の表に示す。熱処理温度(180℃)において溶解された全FDCAの見積もった%も報告している。
【0130】
【0131】
本発明の方法を使用して、広範な種類の溶媒組成物に対して、FDCA-Me及びFCAの優れた除去率を得ることができることが分かる。
【0132】
実施例E-完全な溶解後の水からの結晶化
さらなる比較試験を、完全な溶解において実施した。FDCAに対してFCA及びFDCA-Meが様々に異なっている試料を作り出すために、異なる精製されたFDCA組成物の混合によって作られたFDCAの混合物を準備した。140℃において完全な溶解を達成するために、FDCAの合計濃度4質量%で試料を調製した。水中での処理の後、試料を冷却してFDCAを結晶化し、ケーキを純度について分析した。下の表11は、水から再結晶したときの結果を示す。
【0133】
【0134】
データは、FDCA-Meがその系中に存在する場合は、FCAの除去効率が低下するらしいことを示している。FDCA-Meは、ケーキ中への実質的な再組み込みを伴って、これらの条件下、すなわち完全に溶解した条件下での水からの再結晶化によっては除去されないようである。比較試験20は、実際の操作に似ており、多くの場合に不十分である除去効率を示している。
【国際調査報告】