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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-22
(54)【発明の名称】カンナビノイド経口製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/12 20060101AFI20230215BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20230215BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230215BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20230215BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230215BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20230215BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20230215BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230215BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20230215BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
A61K31/12
A61K31/352
A61K9/08
A61K47/44
A61K47/10
A61P25/08
A61P25/18
A61P25/04
A61P25/22
A61P25/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537763
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-16
(86)【国際出願番号】 GB2020053282
(87)【国際公開番号】W WO2021123804
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】1918846.5
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319016758
【氏名又は名称】ジーダブリュー・リサーチ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アラン・シルコック
(72)【発明者】
【氏名】ジティンダー・ウィルク
(72)【発明者】
【氏名】トゥ・チン・タイ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA14
4C076AA95
4C076BB01
4C076CC01
4C076DD37
4C076DD46A
4C076EE54A
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA10
4C086BA08
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA52
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA06
4C086ZA08
4C086ZA16
4C206AA01
4C206AA10
4C206CB13
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA37
4C206MA72
4C206NA13
4C206NA14
4C206ZA02
4C206ZA06
4C206ZA08
4C206ZA16
(57)【要約】
本発明は、カンナビノイド含有経口溶液に関する。好ましくは、カンナビノイドは、カンナビジオール(CBD)、カンナビジバリン(CBDV)又はカンナビジオール-C4(CBD-C4)である。より好ましくは、CBD、CBDV又はCBD-C4は、25mg/mLから75mg/mLの間の濃度で存在する。より好ましくは、なおも、CBD、CBDV又はCBD-C4は、50mg/mLの濃度で存在する。更なる実施形態では、経口溶液は、1種又は複数の食用油と共に製剤化される。好ましくは、食用油は、ゴマ油である。経口製剤が低濃度のエタノールを含むことが、本発明の好ましい実施形態である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カンナビノイド及び脂質溶媒を含み、前記カンナビノイドが25~75mg/mLの濃度で存在することを特徴とする、カンナビノイド含有経口溶液。
【請求項2】
ヒトにおいて生成されるCmaxが、250ng/mL超であることを特徴とする、請求項1に記載のカンナビノイド含有経口溶液。
【請求項3】
ヒトにおいて生成されるAUC0-tが、1250ng.h/mL超である、請求項1に記載のカンナビノイド含有経口溶液。
【請求項4】
前記カンナビノイドが、カンナビクロメン(CBC)、カンナビクロメン酸(CBCV)、カンナビジオール(CBD)、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビゲロールプロピル変異体(CBGV)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビノール(CBN)、カンナビノールプロピル変異体(CBNV)、カンナビトリオール(CBO)、テトラヒドロカンナビノール(THC)、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、テトラヒドロカンナビバリン酸(THCVA)、カンナビジオール-C1(CBD-C1)、カンナビジオール-C4(CBD-C4)及びカンナビジオール-C6(CBD-C6)から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載のカンナビノイド含有経口溶液。
【請求項5】
前記カンナビノイドが、カンナビジオール(CBD)である、請求項4に記載のカンナビノイド含有経口溶液。
【請求項6】
前記カンナビノイドが、およそ50mg/mLの濃度で存在する、請求項1から5のいずれか一項に記載のカンナビノイド含有経口溶液。
【請求項7】
前記脂質溶媒が、食用油である、請求項1から6のいずれか一項に記載のカンナビノイド含有経口溶液。
【請求項8】
前記食用油が、ココナツ油、トウモロコシ油、綿実油、麻実油、オリーブ油、パーム油、ピーナツ油、ナタネ/キャノーラ油、ベニバナ油、ゴマ油、ダイズ油、短鎖トリグリセリド、中鎖トリグリセリド、長鎖トリグリセリド及びヒマワリ油から選択される、請求項7に記載のカンナビノイド含有経口溶液。
【請求項9】
前記カンナビノイドがカンナビジオール(CBD)であり、前記食用油がゴマ油である、請求項8に記載のカンナビノイド含有経口溶液。
【請求項10】
前記カンナビノイドがカンナビジオール(CBD)であり、前記食用油がダイズ油である、請求項8に記載のカンナビノイド含有経口溶液。
【請求項11】
前記カンナビノイドがカンナビジオール(CBD)であり、前記食用油がオリーブ油である、請求項8に記載のカンナビノイド含有経口溶液。
【請求項12】
前記カンナビノイドがカンナビジオール(CBD)であり、前記食用油が中鎖トリグリセリドである、請求項8に記載のカンナビノイド含有経口溶液。
【請求項13】
前記カンナビノイドがカンナビジバリン(CBDV)であり、前記食用油がゴマ油である、請求項8に記載のカンナビノイド含有経口溶液。
【請求項14】
前記カンナビノイドがカンナビジオール-C4(CBD-C4)であり、前記食用油がゴマ油である、請求項8に記載のカンナビノイド含有経口溶液。
【請求項15】
前記カンナビノイドがカンナビジオール-C4(CBD-C4)であり、前記食用油がダイズ油である、請求項8に記載のカンナビノイド含有経口溶液。
【請求項16】
前記カンナビノイドがカンナビジオール-C4(CBD-C4)であり、前記食用油がオリーブ油である、請求項8に記載のカンナビノイド含有経口溶液。
【請求項17】
前記カンナビノイドがカンナビジオール-C4(CBD-C4)であり、前記食用油が中鎖トリグリセリドである、請求項8に記載のカンナビノイド含有経口溶液。
【請求項18】
エタノールを更に含む、請求項1から17のいずれか一項に記載のカンナビノイド含有経口溶液。
【請求項19】
前記エタノールが、10w/v%未満存在する、請求項18に記載のカンナビノイド含有経口溶液。
【請求項20】
前記エタノールが、1w/v%未満存在する、請求項18に記載のカンナビノイド含有経口溶液。
【請求項21】
てんかん及びそれに伴う症候群、ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、ミオクロニー発作、若年性ミオクロニーてんかん、難治性てんかん、統合失調症、若年性けいれん、ウエスト症候群、点頭けいれん、難治性点頭けいれん、結節性硬化症、脳腫瘍、神経障害性疼痛、カンナビス使用障害、外傷後ストレス障害、不安症、早期精神病、アルツハイマー病及び自閉症からなる群から選択される疾患又は障害の治療における使用のための、請求項1から20のいずれか一項に記載のカンナビノイド含有経口溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カンナビノイド含有経口溶液に関する。好ましくは、カンナビノイドは、カンナビジオール(CBD)、カンナビジバリン(CBDV)又はカンナビジオール-C4(CBD-C4)である。より好ましくは、CBD、CBDV又はCBD-C4は、25mg/mLから75mg/mLの間の濃度で存在する。より好ましくは、なおも、CBD、CBDV又はCBD-C4は、50mg/mLの濃度で存在する。
【0002】
更なる実施形態では、該経口溶液は、1種又は複数の食用油と共に製剤化される。好ましくは、食用油は、ゴマ油である。経口製剤が低濃度のエタノールを含んでいることが、本発明の好ましい実施形態である。
【背景技術】
【0003】
医薬中でのカンナビノイドの使用には、より効果的な薬剤送達の方法を見出すことが要請されてきた。これは、部分的には、乏しい水性可溶度、限定的な生物学的利用能、及びカンナビノイドの不安定性等の要因に起因するが、比較的高用量(最大で2000mgの1日量)における、且つ/又は負担のかかる親グループ、例えば幼い小児における、且つ/又は特定の指示書についてのカンナビノイドの使用が、更なる負担を生むおそれがある。
【0004】
現在、市場には4種の市販のカンナビノイド製剤がある。
【0005】
ドロナビノール(Marinol(登録商標))は、ゴマ油中の、カプセルとして経口送達される合成テトラヒドロカンナビノール(THC)である。
【0006】
ナビロン(Cesamet(登録商標))は、合成カンナビノイド及びTHCの類似体であり、ポビドン及びトウモロコシデンプンと共に、カプセル中で経口送達される。
【0007】
ナビキシモール(Sativex(登録商標))は、規定量のTHC及びカンナビジオール(CBD)を含有するカンナビノイドの天然抽出物であり、口粘膜スプレーの手段によって液体として送達される。
【0008】
Epidiolex(登録商標)又はEpidyolex(登録商標)は、ドラベ症候群及びレノックス・ガストー症候群に伴う発作の治療のために認可されている100mg/mLを含有する経口溶液である。CBDは、ゴマ種子油中で製剤化され、且つ甘味料スクラロース、イチゴ芳香剤及び最大で10v/v%のエタノールを更に含む。
【0009】
処方箋医薬中の最大の許容されるエタノール濃度について明白なFDA指針が存在しない一方で、論文「Ethanol in Liquid Preparations Intended for Children, Paediatrics: Official Journal of The American Academy of Paediatrics, 1984: 73:405」は、アルコール含有薬物の単回投与に続いて、0.25g/L(250mg/L)の血中アルコール濃度(BAC)を超過するべきではないと勧告している。
【0010】
WO2015/184127(Insys)は、カンナビノイドが、ポリエチレングリコールとプロピレングリコールとのミックス中で、任意選択で水と共に製剤化されているアルコール非含有製剤、アルコールを含有する製剤、及び脂質を含有する製剤を含めた数多くの異なる経口製剤を開示している。開示されている製剤のそれぞれでは、カンナビノイドは、(天然に抽出されたものとは対照的に)合成で生成されたカンナビジオールである。CBDは、1%から35%の間で製剤中に存在する。
【0011】
欧州医薬品庁ドラフト指針(EMA/CHMP/507988/2013)によれば、2~6歳の小児について、アルコールを含有する製剤の単回投与に続く血中アルコール濃度(BAC)の理論的制限は0.01g/L(10mg/L)以下であり、エタノール摂取は6mg/kg/日以下であるべきである。
【0012】
より幼い小児を目的とした小児科製品にとって、好ましくはシロップとして分配された、エタノールが低い又は全くない製剤を有することが望ましく、その理由は、より幼い小児はカプセルをのみ込むことが難しいと見出しているためである。彼らはまた、特にカンナビノイドの味がマスキングを要するところで、甘味製品、芳香製品も好む。
【0013】
医薬として許容される甘味料及び芳香剤は、一般に、本来、極性であり、そのため、高度に親油性であるカンナビノイドとは違って、それらは、それらを溶解するのに極性溶媒を要する。
【0014】
カンナビノイドの経口送達は、一般に、乏しい生物学的利用能に帰着し、例えばゴマ油中に100mg/mLの経口溶液として付与されるEpidiolex(登録商標)は、189ng/mLの平均Cmax、及び995ng.h/mLの平均AUC0-tを有する。幼い小児は固体剤形をのみ込むことができないため、彼らは経口製剤を必要としているが、Epidiolex(登録商標)等の製剤の、乏しい生物学的利用能に起因して、大容積の医薬が与えられることが要請されている。これは、ゴマ油等の食用油の大量摂取に伴う胃腸の問題に起因する課題を提示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】WO2015/184127
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】「Ethanol in Liquid Preparations Intended for Children, Paediatrics: Official Journal of The American Academy of Paediatrics, 1984: 73:405」
【非特許文献2】欧州医薬品庁ドラフト指針(EMA/CHMP/507988/2013)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、高い生物学的利用能を付与することができる脂質ベースの経口製剤を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
驚くべきことに、出願人は、経口製剤中のカンナビノイドの濃度を低下させることによって、生物学的利用能における増大に帰着することを見出した。これは予想外であり、且つ有益な効果を導く。
【0019】
本発明の第1の態様によれば、カンナビノイド及び脂質溶媒を含み、該カンナビノイドが25~75mg/mLの濃度で存在することを特徴とする、カンナビノイド含有経口溶液が提供される。
【0020】
一実施形態では、ヒトにおいて生成されるCmaxは、250ng/mL超である。
【0021】
更なる実施形態では、ヒトにおいて生成されるAUC0-tは、1250ng.h/mL超である。
【0022】
好ましくは、カンナビノイドは、以下から選択される:カンナビクロメン(CBC)、カンナビクロメン酸(CBCV)、カンナビジオール(CBD)、カンナビジオール酸(CBDA)、カンナビジバリン(CBDV)、カンナビゲロール(CBG)、カンナビゲロールプロピル変異体(CBGV)、カンナビシクロール(CBL)、カンナビノール(CBN)、カンナビノールプロピル変異体(CBNV)、カンナビトリオール(CBO)、テトラヒドロカンナビノール(THC)、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、テトラヒドロカンナビバリン酸(THCVA)、カンナビジオール-C1(CBD-C1)、カンナビジオール-C4(CBD-C4)及びカンナビジオール-C6(CBD-C6)。
【0023】
より好ましくは、カンナビノイドは、カンナビジオール(CBD)である。
【0024】
更なる実施形態では、カンナビノイドは、およそ50mg/mLの濃度で存在する。
【0025】
好ましくは、脂質溶媒は食用油である。より好ましくは、食用油は以下から選択される:ココナツ油、トウモロコシ油、綿実油、麻実油、オリーブ油、パーム油、ピーナツ油、ナタネ/キャノーラ油、ベニバナ油、ゴマ油、ダイズ油、短鎖トリグリセリド、中鎖トリグリセリド、長鎖トリグリセリド及びヒマワリ油。
【0026】
好ましくは、カンナビノイドはカンナビジオール(CBD)であり、食用油はゴマ油である。
【0027】
好ましくは、カンナビノイドはカンナビジオール(CBD)であり、食用油はダイズ油である。
【0028】
好ましくは、カンナビノイドはカンナビジオール(CBD)であり、食用油はオリーブ油である。
【0029】
好ましくは、カンナビノイドはカンナビジオール(CBD)であり、食用油は中鎖トリグリセリドである。
【0030】
好ましくは、カンナビノイドはカンナビジバリン(CBDV)であり、食用油はゴマ油である。
【0031】
好ましくは、カンナビノイドはカンナビジオール-C4(CBD-C4)であり、食用油はゴマ油である。
【0032】
好ましくは、カンナビノイドはカンナビジオール-C4(CBD-C4)であり、食用油はダイズ油である。
【0033】
好ましくは、カンナビノイドはカンナビジオール-C4(CBD-C4)であり、食用油はオリーブ油である。
【0034】
好ましくは、カンナビノイドはカンナビジオール-C4(CBD-C4)であり、食用油は中鎖トリグリセリドである。
【0035】
好ましくは、製剤は、エタノールを更に含む。好ましくは、エタノールは、10w/v%未満において存在する。より好ましくは、エタノールは、1w/v%未満において存在する。
【0036】
好ましくは、カンナビノイド含有経口溶液は、以下からなる群から選択される疾患又は傷害の治療における使用のためである:てんかん及びそれに伴う症候群、ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、ミオクロニー発作、若年性ミオクロニーてんかん、難治性てんかん、統合失調症、若年性けいれん、ウエスト症候群、点頭けいれん、難治性点頭けいれん、結節性硬化症、脳腫瘍、神経障害性疼痛、カンナビス使用障害、外傷後ストレス障害、不安症、早期精神病、アルツハイマー病及び自閉症。
【0037】
本発明の実施形態は、本明細書でこれ以降、添付の図面を参照して更に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】4種の異なる製剤での試験後の、CBDのPKプロファイルを示す。
図2】4種の異なる製剤での試験後の、7-OH CBDのPKプロファイルを示す。
図3】4種の異なる製剤での試験後の、7-COOH CBDのPKプロファイルを示す。
図4】異なる油中で製剤化されたCBDの多様な投与濃度の効果を示す。
図5】CBDVの多様な投与濃度の効果を示す。
図6】異なる油中で製剤化されたCBD-C4の多様な投与濃度の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
カンナビノイドの経口送達は、一般に、乏しい生物学的利用能に帰着し、例えばゴマ油中の100mg/mLの経口溶液として提供されるEpidiolex(登録商標)は、189ng/mLのCmax、及び995ng.h/mLのAUC0-tを有する。幼い小児は、彼らが固体剤形をのみ込むことができないため経口製剤を必要とするが、Epidiolex(登録商標)等の製剤の、乏しい生物学的利用能に起因して、大容積の医薬が与えられることが要請されている。これは、ゴマ油等の食用油の大量摂取に伴う胃腸の問題に起因する課題を提示している。
【0040】
本発明の目的は、高い生物学的利用能を付与することができる脂質ベースの経口製剤を開発することである。
【0041】
驚くべきことに、出願人は、経口製剤中のカンナビノイドの濃度を低下させることによって、生物学的利用能における増大に帰着することを見出した。これは予想外であり、且つ有益な効果を導く。
【0042】
以下の実施例は、生物学的利用能の増大を付与する、特許請求している製剤の開発を説明する。
【0043】
【表1】
【実施例1】
【0044】
製剤の薬物動態試験
カンナビジオール(CBD)を含む多種の経口製剤の薬物動態特性を試験した。
【0045】
これらの製剤の組成を、以下のTable 1(表2)内に記載する。
【0046】
【表2】
【0047】
製剤は、甘味料及び芳香剤を更に含んでいた。
【0048】
これらの製剤を、健康なボランティアにおいて、以下のプロトコルの通りに試験した。
【0049】
プロトコルの詳細
対象を、4つの処置系列のうちの1つに無作為化し、そこで彼らに、処置期間1~4で、CBD製剤のそれぞれの経口単回用量を投与した:
【0050】
試験処置1:750mgのCBDの経口単回用量(100mg/mLのCBD)、絶食条件下、7.5mLの総容積。
【0051】
試験処置2:750mgのCBD低減エタノール製剤の経口単回用量(50mg/mLのCBD)、絶食条件下、15mLの総容積。
【0052】
試験処置3:750mgのCBD低減エタノール製剤の経口単回用量(100mg/mLのCBD)、絶食条件下、7.5mLの総容積。
【0053】
試験処置4:750mgのCBD低減エタノール製剤の経口単回用量(150mg/mLのCBD)、絶食条件下、5mLの総容積。
【0054】
薬物動態特性を、投与後0、0.5、1、1.5、2、2.5、3、4、5、6、8、10、12及び24時間に、血液サンプリングを介して試験した。
【0055】
結果
図1図3は、試験した4種の異なる製剤についての、CBD、並びにその2種の主な代謝物7-OH CBD及び7-COOH CBDのPKプロファイルを詳説している。
【0056】
図1に見られるように、製剤2は、他の製剤と比較したとき、CBDの血漿濃度における劇的な増大をもたらした。この増大は、これが、50mg/mLにおける、より低濃度のCBDであったため、予想外であった。
【0057】
予想したように、製剤2はまた、他の製剤と比較したとき、2種の代謝物7-OH CBD及び7-COOH CBDの濃度の増大ももたらした。
【0058】
以下のTable 2(表3)~Table 4(表5)は、これらのデータを要約しており、表中、OSは製剤1であり、50mg/mLは製剤2であり、100mg/mLは製剤3であり、150mg/mLは製剤4である。
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
【0062】
以下のTable 5(表6)に見られるように、試験製剤の参照製剤(製剤1)に対する比は、製剤2について、はるかにより高かった(50mg/mL)。製剤3と製剤4とは両方とも、およそ1の比を付与し、これらの比は、これらが、参照製剤と効果的に生物学的に同等であったことを意味している。
【0063】
【表6】
【0064】
Table 6(表7)は、4種の異なる製剤についての、CBD代謝物の親化合物CBDに対する比を詳説している。
【0065】
【表7】
【0066】
これらのデータは、製剤2(50mg/mLのCBD)について、CBDの生物学的利用能において2倍の増大があることを示している。更に、この製剤について、代謝物:親の比に差があった。CBD代謝物の親化合物CBDに対する比は、製剤2において、他の製剤と比較して低下した。
【0067】
結論:
この実施例において提示されたデータは、経口製剤中により低濃度のCBDを供給すると、より良好な生物学的利用能をもたらすことができたことを明示している。更に、これらのデータは、より低濃度のCBDの製剤が、代謝物の親に対する、より有益な比をもたらすことを示した。
【0068】
これらのデータは重要であり、その理由は、CBDの7-COOH CBD代謝物が不活性であり、且つそのようなものとしてこの代謝物の形成量を低減させることが、親化合物の作用の増大が存在することになることを示唆していると考えられるためである。
【0069】
より低濃度のCBDの製剤の更なる利点は、CBDに伴う望ましくない肝臓毒性についてである。臨床試験では、Epidiolex(登録商標)(植物由来の高度に精製されたCBD)が、特に他の抗てんかん薬剤、例えばクロバザム及びバルプロエートと組み合わせて使用されたとき、肝臓トランスアミナーゼ(アラニンアミノトランスフェラーゼ-ALT及び/又はアスパルテートアミノトランスフェラーゼ-AST)の上昇を引き起こしうることが見出された。
【0070】
対照試験では、正常の上限の3倍を超えるALT上昇の発生率は、Epidiolex(登録商標)で治療した患者において13%であり、それと比較してプラセボにおける患者では1%であり、且つEpidiolex(登録商標)で治療した患者の1%未満が、正常の上限の20倍超のALT又はASTレベルを有していた。
【実施例2】
【0071】
ラットにおけるCBD製剤の薬物動態試験
カンナビジオール(CBD)を含む多種の経口製剤の薬物動態特性を、ラットにおいて試験した。
【0072】
これらの製剤の組成を、以下のTable 7(表8)内に記載する。
【0073】
【表8】
【0074】
プロトコルの詳細
動物を、最小期間の5日間、順応させた。ラットを、サーモスタット制御で19~25℃の温度内、40%から70%の間の相対湿度に維持した部屋内に保持し、それぞれの日に蛍光に暴露した(規準12時間)。
【0075】
必要な最終濃度を達成するために、付属書4に詳述している通り、適当な量の必要な試験物質を、好適な製剤容器に移し、適当な容積の必要な油ビヒクルを添加した。
【0076】
各動物は、50mg/kgの規準の投与レベルにおいて、且つ0.25mL/kgから1mL/kgの間の規準の投与容積において、経管栄養によって投与される経口単回用量を受けた。各動物に投与する投与製剤の量は、投与前の投与機器と、投与後の投与機器との間の質量差から、(試験物質の質量及び総製剤質量に基づく)投与製剤の濃度と一緒に、決定した。
【0077】
各製剤について、3頭の動物を試験した。
【0078】
投与に続いて、動物を保持ケージに戻した。血液サンプル(およそ150μL)を、頸静脈から静脈穿刺によって以下の時点のそれぞれにおいて採取した:
【0079】
投与後0.5、1、2、4、8、16及び24時間。
【0080】
サンプルを、K2EDTA抗凝固剤を含有する管中に採取し、30分内、遠心分離し(2300g、10分、4℃)、血漿をもたらした。血液細胞を廃棄した。サンプルを、サンプル採取1時間内に処理し、<-50℃にて凍結させた。
【0081】
最終の血液サンプリングの機会に続いて、動物を、ナトリウムペントバルビトンの過剰投与を介して安楽死させた(頸椎脱臼又は放血によって死亡を確認した)。
【0082】
結果
図4は、試験した異なる製剤について、2種の薬物動態パラメータAUClast及びCmaxによって評価した暴露量を示す。Table 8(表9)~Table 10(表11)は、平均薬物動態パラメータを要約している。
【0083】
製剤1及び製剤2(ゴマ油)
図4及びTable 8(表9)に見られるように、製剤1は、ゴマ油中の他の製剤(製剤2)と比較したとき、より高いAUClast値及びCmax値をもたらした。これは実施例1の結果と一致しており、ここでも、これが、50mg/mLにおいて、より低濃度のCBDであったため、予想外であった。
【0084】
予想したように、製剤1はまた、製剤2と比較したとき、2種の代謝物7-OH CBD及び7-COOH CBDの濃度の増大をもたらした。これは、Table 9(表10)及びTable 10(表11)が証明している。
【0085】
製剤3、製剤4及び製剤5(オリーブ油)
製剤1及び製剤2と同様に、製剤3は、より高いCBDの製剤の製剤4と比較したとき、より高いAUClast値及びCmax値をもたらした(図4を参照されたい)。最も高いCBD濃度の200mg/mL(製剤5)において、Cmaxは、驚くべきことに、なおも100mg/mLよりも低かった。これは、ここでも、低いCBD濃度の製剤の、生物学的利用能の増大を示すデータを付与している。
【0086】
製剤6、製剤7及び製剤8(ダイズ油)
製剤6は、図4に示すように、試験した全ての製剤のうちで最も高いCmax値を有した。より高いCBD濃度での製剤7及び製剤8と比較して、製剤6は、CBDの、より高い生物学的利用能を有していた。
【0087】
Table 9(表10)及びTable 10(表11)は、製剤6がまた、製剤7及び製剤8と比較したとき、2種の代謝物7-OH CBD及び7-COOH CBDの濃度の増大ももたらしたことを示している。
【0088】
製剤9、製剤10及び製剤11(MCT油)
製剤9は、製剤10と製剤11との両方と比較して、50mg/mLにおいて最も低濃度のCBDを有するにもかかわらず、より高いAUClast値及びCmax値を有していた(図4及びTable 8(表9)を参照されたい)。
【0089】
予想したように、製剤9はまた、製剤10及び製剤11と比較したとき、2種の代謝物7-OH CBD及び7-COOH CBDの濃度の増大ももたらし、これは、Table 9(表10)及びTable 10(表11)が証明している。
【0090】
製剤12、製剤13及び製剤14(麻実油)
製剤13は、製剤12及び製剤14よりも高いAUClast値及びCmax値をもたらした。
【0091】
【表9】
【0092】
【表10A】
【表10B】
【0093】
【表11A】
【表11B】
【0094】
以下のTable 11.1(表12)~Table 11.5(表16)は、異なる製剤についての、CBD代謝物の親化合物CBDに対する比を詳説している。
【0095】
【表12】
【0096】
これらのデータは、これらの2種の製剤について、代謝物:親の比に差があることを示している。代謝物の親に対する比は、製剤1において、製剤2と比較して低下した。
【0097】
【表13】
【0098】
これらのデータは、これらの3種の製剤について、代謝物:親の比に差があることを示している。7-OH CBD:CBDの比は、製剤3において、製剤5と比較して低下した。
【0099】
【表14】
【0100】
代謝物の親に対する比は、製剤6において、製剤7及び製剤8と比較してかなり低下した。
【0101】
【表15】
【0102】
7-OH CBD:CBDの比は、製剤9において、製剤10及び製剤11と比較して低下した。
【0103】
【表16】
【0104】
7-OH CBD:CBDと、7-COOH CBD:CBDとの両方の比が、製剤12において、製剤14と比較して低下した。
【0105】
結論:
CBD並びに代謝物Cmax値及びAUC値によって評価した暴露量は、一般に、異なるビヒクルについて、50mg/mLの投与濃度で、100mg/mL及び200mg/mLと比較して、より多いことを観察した。
【0106】
この実施例において提示したデータは、より低濃度のCBDを供給すると、ゴマ、オリーブ、ダイズ、MCT及びアサの各油を含めた、試験した異なる油の製剤において、より良好な生物学的利用能をもたらすことができたことを更に明示している。これは、実施例1のゴマ油中の低いCBD濃度の製剤の結果と一致し、この結論を再確認している。
【0107】
更に、これらのデータは、より低濃度のCBDの製剤が、代謝物の親に対する、より有益な比をもたらすことを示した。
【0108】
先に挙げたように、これらのデータは重要であり、その理由は、CBDの7-COOH CBD代謝物が不活性であり、且つそのようなものとしてこの代謝物の形成量を低減させることが、親化合物の作用の増大が存在することになることを示唆していると考えられるためである。
【実施例3】
【0109】
ラットにおけるCBDV製剤の薬物動態試験
カンナビジバリン(CBDV)を含む多種の経口製剤の薬物動態特性を、ラットにおいて試験した。
【0110】
これらの製剤の組成を、以下のTable 12(表17)内で説明する。
【0111】
【表17】
【0112】
プロトコルの詳細
これらの製剤を、ラットにおいて、実施例2に記載したプロトコルの通りに試験した。
【0113】
結果
図5は、試験した異なる製剤についての、2種の薬物動態パラメータAUClast及びCmax,を示す。Table 13(表18)~Table 15(表20)は、平均薬物動態パラメータを要約している。
【0114】
図5に見られるように、3種の製剤のうちで、製剤1が最も高いAUClast値をもたらし、その一方で製剤2が最も高いCmax値をもたらした。そのため、75mg/mL(製剤3)における最も高濃度のCBDVは、予想したような最も高い値をもたらさなかった。この知見は、より低いカンナビノイド濃度の製剤が、より良好な生物学的利用能の結果をもたらしたという実施例1及び2の結果と一致する。
【0115】
予想したように、製剤1及び製剤2はまた、製剤3と比較したとき、2種の代謝物7-OH CBD及び7-COOH CBDVの濃度の増大をもたらした。これは、Table 14(表19)及びTable 15(表20)が証明している。
【0116】
【表18】
【0117】
【表19】
【0118】
【表20】
【0119】
結論:
CBDV並びに代謝物Cmax値及びAUC値によって評価した暴露量は、ゴマ油中の製剤について、投与濃度が75mg/mLから25mg/mLへと減少するにつれて、増大した。
【0120】
この実施例で提示しているデータは、より低濃度のCBDVを供給すると、異なる製剤において、より良好な生物学的利用能をもたらすことができたことを明示している。これは、より低いカンナビノイド濃度を有する製剤が、予想外の有益な効果を導くことができるという更なる証拠を提供し、実施例1及び2の結果と一致している。
【実施例4】
【0121】
ラットにおけるCBD-C4製剤の薬物動態試験
カンナビジオール-C4(CBD-C4)を含む多種の経口製剤の薬物動態特性を試験した。
【0122】
これらの製剤の組成を、以下のTable 16(表21)内に記載する。
【0123】
【表21】
【0124】
プロトコルの詳細
これらの製剤を、ラットにおいて、実施例2に記載したプロトコルの通りに試験した。
【0125】
結果
図6は、試験した異なる製剤についての、2種の薬物動態パラメータAUClast及びCmaxを示している。Table 17(表22)~Table 19(表24)は、平均薬物動態パラメータを要約している。
【0126】
製剤1、製剤2及び製剤3(ゴマ油)
図6に見られるように、製剤1は、ゴマ油中の他の2種の製剤(製剤2及び製剤3)と比較したとき、より高いAUClast値及びCmax値をもたらした。これは、より低いカンナビノイド濃度の製剤が、より良好な生物学的利用能を与えたという実施例1、2及び3の結果と一致する。
【0127】
製剤4、製剤5及び製剤6(オリーブ油)
製剤1と同様に、より低濃度の製剤3は、より高いCBD-C4の製剤の製剤4及び製剤5と比較したとき、良好な生物学的利用能の結果をもたらした(図6を参照されたい)。
【0128】
製剤7、製剤8及び製剤9(ダイズ油)
ダイズ油中の製剤は、200mg/mLのCBD-C4製剤の製剤9が、3種の製剤のうちで最も低いAUClast値及びCmax値をもたらしたという同様のパターンを提示した。より高いCBD濃度における製剤7及び製剤8と比較して、製剤6は、CBDの、より高い生物学的利用能を有していた。
【0129】
Table 18(表23)及びTable 19(表24)は、製剤7がまた、製剤8及び製剤9と比較したとき、2種の代謝物7-OH CBD及び7-COOH CBDの濃度の増大もまたもたらしたことを示している。
【0130】
製剤10、製剤11及び製剤12(MCT油)
中程度の用量の製剤11は、製剤10及び製剤12と比較して、より低いAUClast値及びCmax値をもたらした(図6を参照されたい)。
【0131】
製剤13、製剤14及び製剤15(麻実油)
製剤15は、製剤13及び製剤14と比較して、より高いAUClast値及びCmax値をもたらした。
【0132】
【表22A】
【表22B】
【0133】
【表23A】
【表23B】
【0134】
【表24A】
【表24B】
【0135】
以下のTable 20.1(表25)及びTable 20.2(表26)は、異なる製剤についての、CBD-C4代謝物の親化合物CBD-C4に対する比を詳説している。
【0136】
【表25】
【0137】
これらのデータは、これらの3種の製剤について、代謝物:親の比に差があることを示している。代謝物の親に対する比は、製剤1において、製剤2及び製剤3と比較して低下した。
【0138】
【表26】
【0139】
代謝物の親に対する比は、製剤4において、製剤5及び製剤6と比較して低下した。
【0140】
結論:
CBD-C4並びに代謝物Cmax値及びAUC値によって評価した暴露量は、異なるビヒクルについて、投与濃度が200mg/mLから50mg/mLへと減少するにつれて、増大した。
【0141】
この実施例において提示したデータは、より低濃度のCBD-C4が、試験した異なる油の製剤中で、より良好な生物学的利用能をもたらすことができたことを明示している。
【0142】
更に、これらのデータは、より低濃度のCBD-C4の製剤が、代謝物の親に対する、より有益な比をもたらすことを示した。
【0143】
このように、データは、経口製剤中により低濃度のカンナビノイドを供給すると、生物学的利用能の増大の、驚くべき予想外の効果を導くという先の実施例の結果を、追加で立証している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】