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特表2023-507480オルガノポリシロキサン系離型剤潤滑組成物を使用した生タイヤの加硫方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-22
(54)【発明の名称】オルガノポリシロキサン系離型剤潤滑組成物を使用した生タイヤの加硫方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20230215BHJP
   B29C 33/64 20060101ALI20230215BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20230215BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20230215BHJP
   C08K 5/16 20060101ALI20230215BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C33/64
B29C35/02
C08L83/04
C08K5/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537844
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-17
(86)【国際出願番号】 FR2020052550
(87)【国際公開番号】W WO2021123678
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】1915183
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507421304
【氏名又は名称】エルケム・シリコーンズ・フランス・エスアエス
【氏名又は名称原語表記】ELKEM SILICONES France SAS
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・フェデ
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・ブルーニグ
【テーマコード(参考)】
4F202
4F203
4J002
【Fターム(参考)】
4F202AH20
4F202CA21
4F202CM46
4F202CT00
4F202CZ04
4F203AA45
4F203AB03
4F203AH20
4F203DA11
4F203DB01
4F203DC01
4F203DL12
4J002CH022
4J002CP031
4J002CP182
4J002EB066
4J002ED036
4J002ED066
4J002EN016
4J002EQ017
4J002EU026
4J002EV186
4J002EV256
4J002EV286
4J002EV296
4J002FD097
4J002FD312
4J002FD316
4J002GN01
(57)【要約】
本発明は、オルガノポリシロキサン系離型剤潤滑組成物を使用した生タイヤの加硫方法に関する。また、本発明は、オルガノポリシロキサン系離型剤潤滑組成物に関するものでもある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張性ゴムブラダーを使用して金属プレス内で生タイヤを加硫するための方法であって、次の工程:
1.前記生タイヤの内側又は前記膨張性ゴムブラダーの外側に、水中油型エマルジョンの形態の着色潤滑離型用組成物(I)を被覆して、前記生タイヤ上又は前記膨張性ゴムブラダー上に肉眼で視認できる着色被膜を形成し、ここで、前記着色潤滑離型用組成物(I)は、
a.少なくとも1種のオルガノポリシロキサン(A)と、
b.少なくとも1種の界面活性剤(B)と、
c.少なくとも1種の非蛍光性顔料(C)と、
d.水(D)と
を含み、前記界面活性剤及び水の量は、水中油型エマルジョンを得るのに十分な量であるものとし;
2.前記膨張性ゴムブラダーを膨張させ、前記金属プレス内で、好ましくは80~220℃の温度で10分~24時間にわたってタイヤを加硫し;
3.タイヤを離型すること
を含み、
前記工程3で得られたタイヤの内部は、もはや肉眼で視認できる着色がないことを特徴とする方法。
【請求項2】
工程1で得られた生タイヤ上又はブラダー上の肉眼で視認できる着色被膜が、工程1と工程3との間で、85%~100%の色の消失率(X)を有し、前記色の消失率(X)が以下の方法:
【数1】
で分光測色法により決定されることを特徴とする、請求項1に記載の生タイヤを加硫するための方法。
【請求項3】
前記非蛍光性顔料(C)が、カラーインデックス分類に従って、モノアゾ、ジスアゾ、アミノケトン、インジゴイド、フタロシアニン、オキサジン及びこれらの混合物よりなる群から選択され、好ましくは水性分散体の形態である、請求項1又は2に記載の生タイヤを加硫するための方法。
【請求項4】
前記着色潤滑離型用組成物(I)が、前記組成物(I)の総重量に対して0.01重量%~3重量%、好ましくは0.1重量%~2.5重量%の非蛍光性顔料(C)を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の生タイヤを加硫するための方法。
【請求項5】
前記オルガノポリシロキサン(A)が、
・1分子当たり、ケイ素原子に結合した、同一でも異なっていてもよく、かつ、C1~C40アルキル、C3~C8シクロアルキル、C6~C10アリール及びC7~C50アルキルアリール基よりなる群から選択される一価有機置換基を含む非反応性オルガノポリシロキサン(E);
・1分子当たり少なくとも2個の≡SiOHシラノール基を含む反応性オルガノポリシロキサン(F)、及び
・それらの混合物
よりなる群から選択される、請求項1~4のいずれかに記載の生タイヤを加硫するための方法。
【請求項6】
前記着色潤滑離型用組成物(I)が、(i)1分子当たり、少なくとも3個の≡SiH単位を含む少なくとも1種の架橋剤(G)、及び/又は(ii)触媒(H)をさらに含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の生タイヤを加硫するための方法。
【請求項7】
前記着色潤滑離型用組成物(I)が脱空気剤(J)、好ましくはガラスビーズをさらに含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の生タイヤを加硫するための方法。
【請求項8】
水中油型エマルジョンの形態である着色潤滑離型用組成物(I)であって、
a.次のものよりなる群から選択される少なくとも1種のオルガノポリシロキサン(A):
・1分子当たり、ケイ素原子に結合した、同一でも異なっていてもよく、かつ、C1~C40アルキル、C3~C8シクロアルキル、C6~C10アリール及びC7~C50アルキルアリール基よりなる群から選択される一価有機置換基を含む非反応性オルガノポリシロキサン(E)、
・1分子当たり少なくとも2個の≡SiOHシラノール基を含む反応性オルガノポリシロキサン(F)、及び
・それらの混合物;
b.少なくとも1種の界面活性剤(B);
c.少なくとも1種の非蛍光性顔料(C);及び
d.水(D)
を含み、
前記界面活性剤及び水の量は、水中油型エマルジョンを得るのに十分な量である、着色潤滑離型用組成物。
【請求項9】
前記着色潤滑離型用組成物を膨張性加硫ブラダー上又は生タイヤ上に堆積させ、170℃で20分間熱処理した後の色の消失率(X)が85%~100%であり、前記色の消失率(X)が分光測色法により以下の方法:
【数2】
で決定されることを特徴とする、請求項8に記載の着色潤滑離型用組成物。
【請求項10】
前記非蛍光性顔料(C)が、カラーインデックス分類に従って、モノアゾ、ジスアゾ、アミノケトン、インジゴイド、フタロシアニン、オキサジン及びこれらの混合物よりなる群から選択され、好ましくは水性分散体の形態である、請求項8又は9に記載の着色潤滑離型用組成物。
【請求項11】
前記着色潤滑離型用組成物(I)が、前記組成物(I)の総重量に対して0.01重量%~3重量%、好ましくは0.1重量%~2.5重量%の非蛍光性顔料(C)を含むことを特徴とする、請求項8~10のいずれかに記載の着色潤滑離型用組成物。
【請求項12】
前記着色潤滑離型用組成物(I)が、(i)1分子当たり、少なくとも3個の≡SiH単位を含む少なくとも1種の架橋剤(G)、及び/又は(ii)触媒(H)をさらに含むことを特徴とする、請求項8~11のいずれかに記載の着色潤滑離型用組成物。
【請求項13】
前記着色潤滑離型用組成物(I)が脱空気剤(J)、好ましくはガラスビーズをさらに含むことを特徴とする、請求項8~12のいずれかに記載の着色潤滑離型用組成物。
【請求項14】
前記潤滑離型用組成物(I)が、下記成分(A)、(B)、(C)、(D)、(G)、(H)、(J)、及び(K)の合計100重量部に対して、
・0.1~60重量部、好ましくは0.1~30重量部の少なくとも1種のポリオルガノシロキサン(A)、
・0.1~10重量の少なくとも1種の界面活性剤(B)、
・0.01~3重量部の少なくとも1種の非蛍光性顔料(C)、
・20~90重量部、好ましくは30~80重量部の水(D)、
・0~20重量部の少なくとも1種の架橋剤(G)、
・0~5重量部の少なくとも1種の触媒(H)、
・0~20重量部、好ましくは0.1~15重量部の脱空気剤(J)、
・0~5重量部の少なくとも1種の添加剤(K)
を含むことを特徴とする、請求項8~13のいずれかに記載の着色潤滑離型用組成物。
【請求項15】
金属プレス内において、生タイヤの加硫に有用な膨張性ゴムブラダーを潤滑させるための方法(P1)であって、前記生タイヤの内側表面に接触する前記ブラダーの外側表面に、請求項8~14のいずれかに記載の着色潤滑離型用組成物(I)を被覆し、この方法により、外側表面に潤滑性を有する膨張性ゴムブラダーを直接得ることができることを特徴とする方法。
【請求項16】
金属プレス内において、生タイヤの加硫時に有用な膨張性ゴムブラダーを潤滑させるための方法(P2)であって、プレスの外側での第1工程において、前記生タイヤの内側表面に請求項8~14のいずれかに記載の着色潤滑離型用組成物(I)を被覆し;
前記工程により、内側表面に前記組成物(I)が被覆された生タイヤを製造し;及び金属プレスでの後工程において、内側表面に前記組成物(I)が被覆された生タイヤを膨張製ゴムブラダーと接触させて配置し;前記方法により、外側表面に潤滑性を有する膨張性ゴムブラダーを移すことによって製造することを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項8~14に記載の着色潤滑離型用組成物(I)が被覆されてなる膨張性ブラダー又は生タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オルガノポリシロキサン系離型剤潤滑組成物を使用した生タイヤの加硫方法に関する。また、本発明は、オルガノポリシロキサン系離型剤潤滑組成物に関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造は、主として3つの工程、すなわち半製品の準備、該製品の組み立て及びケーシングの硬化を含む。
【0003】
半製品の製造は、ケーシングの構成要素であるゴム、繊維、金属プライ、ビードワイヤーを製造することからなる。
【0004】
組み立て工程は、様々な半製品を重ね合わせてタイヤを形成することからなる。インナーライナーゴム、カーカスプライ、ビードワイヤー、及び全てのゴムプライという異なる内部層で構成されるカーカスを、タイヤの直径を有するシリンダー(ドラム)上に配置する。成形後、ドラムはカーカスにドーナツ形状の外観を与え、ベルトプライ及びトレッドバンドが敷設される:依然として可塑性である非加硫かつ未加工のケーシングを有する生タイヤが得られる。組み立て工程終了時に、将来的なタイヤは、未加工アウターケーシング又は未加工ケーシングとも呼ばれる。その結合力は、単に製品の生の結合によって確保されるにすぎない。
【0005】
最後に、硬化を行うことで、エラストマー鎖間に硫黄が架橋することによりタイヤが可塑状態から弾性状態に変化する。この硬化工程によって、ケーシングの様々な構成要素間に複合構造が生じる。混合物同士が結合し、プライと糸とが混ざり合う。型内での加硫は、金属製のプレス機において熱と圧力との複合作用で実施される。未加工外部ケーシング又は生タイヤは、外側では型の壁部内を循環する蒸気で、内側では、概して膨張式ブラダーとも呼ばれるゴム膜に収められた加圧下での高温流体で、同時に加熱される。
【0006】
高温ガス、高温水及び/又は蒸気などの高温流体は、加硫のための熱伝達に関与する。
【0007】
概して10気圧超、通常は15~25気圧の圧力は、タイヤを内側から圧縮し、型に押し付けるように機能し、それによって、型に刻まれた形状、彫刻、刻印を呈することができる。
【0008】
硬化時間は、タイヤのサイズ、操作技術、使用する混合物によって異なる。自動車用タイヤについては約15分、土木機械用の大型タイヤについては24時間以上になることもある。加硫温度は、概して80℃~220℃である。
【0009】
この操作により、ゴム混合物は初期の可塑性を失い、安定な弾性特性を持つようになる。
【0010】
その後、ケーシングを型内で部分的に冷却するが、この冷却は、ブラダー内に冷水又は冷却水を導入することによって補助されることもある。その後、型を開放し、内部流体の圧力を解放することによってブラダーを収縮させ、加硫タイヤをプレスから取り出す。このような加硫ブラダーの使用は、当該技術分野ではよく知られている。
【0011】
ケーシングが完全に加硫される前のブラダー膨張段階において、ブラダーの外側接触表面と未加工ケーシングの内側表面との間にかなりの相対的運動が生じることが認められている。同様に、ブラダーが収縮してタイヤが取り外される際に、ブラダーの外側接触表面と成形かつ加硫されたケーシングの内側表面との間にもかなりの相対的運動が生じる。
【0012】
ブラダーとケーシング内側表面との間に適切な潤滑が与えられないと、概してブラダーにしわが寄りやすく、型内のケーシングが変形したり、ブラダー自体の表面が過度に摩耗して粗くなったりする。また、ブラダー表面は、硬化中にケーシングの内側表面に結合しやすい。ケーシングが加硫された後、特にブラダーが収縮するケーシング加硫サイクルの最後の部分では、ブラダーはタイヤと分離できないように結合したままである。
【0013】
これは、2つのゴム表面、すなわち、ブラダーの外側表面から加硫タイヤの内側表面を離型し、型の内側表面から加硫タイヤの外側表面を離型しないことを含む。欧州特許出願公開第022706号には、型と接触するゴムブランクの外側表面に付着させるゴム対象物成形用の薬剤が記載されている。
【0014】
さらに、ブラダーは、他の成形/離型サイクルのためにさらに処理することなく再利用可能でなければならない。このため、ブラダーの外側表面又は未加工若しくは非加硫ケーシングの内側表面には、適切な潤滑剤又は離型剤が被覆されている。
【0015】
加硫ブラダーの潤滑は、1回の離型と呼ばれる成形/離型サイクル毎に行ってもよいし、複数回離型と呼ばれる成形/離型サイクル後に行ってもよい。複数回の離型により、タイヤ製造業者は、欠陥の発生率を低減し、上記離型剤による処理の頻度を減少させることによって生産性を向上させることができる。
【0016】
生タイヤの成形及び加硫に使用される加硫ブラダーの潤滑は、2種類の異なる方法で実施できる。
【0017】
生タイヤの加硫に使用される膨張性ゴム製ブラダーには、最初に潤滑剤組成物が被覆される。ブラダーの潤滑は直接行われる。
【0018】
別の選択肢によれば、膨張性ブラダーと接触することになる生タイヤの内側に離型剤が塗布される。次に、生タイヤをプレス機内に設置する。型を閉じ、ブラダーを膨張させる。離型剤によって、ブラダーがタイヤ内部の最適な中心位置に配置される(これは完全に左右対称のタイヤを製造するために必要なことである)ことが確保される。また、挟み込みやシワなどのブラダー欠陥を防止するのにも役立つ。型を閉じ、ブラダーを完全に膨張させると、温度が220℃まで上昇する。この段階で、離型剤は温度に耐えなければならず、タイヤの内側表面からブラダーの外側表面に移行しなければならない。タイヤは、ブラダーが加圧流体で完全に膨張した状態で、150~220℃の密閉プレス内で加硫される。この工程の間に、タイヤはブラダーに付着してはならない。離型剤のフィルムがタイヤとブラダーとの間に必要なバリアを形成する。ブラダーとタイヤ内側表面との間に連続的な分離層を形成することで、離型剤の接着防止効果が確保される。これがブラダー用離型剤の主な機能である。このバリアに欠陥があると、タイヤがブラダーゴム上で加硫され、破壊的な破断を起こすことなく両者を分離することが不可能になることがある。加硫後、ブラダーを収縮させる。離型剤は、ブラダーをタイヤから分離させることができる接着防止効果を発揮しなければならない。
【0019】
生タイヤの内側に離型剤を塗布する利点は、これをプレス機の外部で行うため、プレス機を不要に汚染することが回避される点にある。
【0020】
タイヤの製造時に成形/離型を容易にするためにエラストマーに架橋することができるシリコーン組成物が知られており、例えば、論文Tire Technology(Tire release agents,Stefan Breunig,Tire technology International 2013,第68-72頁)に記載されている。
【0021】
例えば、欧州特許出願公開第1240283号、欧州特許出願公開第1495076号及び欧州特許出願公開第2038354号は、重縮合によって架橋することができ、それによって水素を放出しないシロキサン系潤滑組成物に関する。欧州特許出願公開第1899447号及び米国特許第4840742号は、脱水素-縮合によって架橋することができるシリコーン組成物に関する。
【0022】
さらに、タイヤ又はブラダーに対する離型剤の付着は、離型の困難さや加硫タイヤの外観不良につながる非被覆部分がないことを確保するために、規則的であることが重要である。しかし、タイヤ及びブラダーは黒色であるため、離型剤を塗布した箇所を確認することは必ずしも容易ではない。さらに、離型剤が加硫タイヤの外観を悪化させないことが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1240283号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1495076号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第2038354号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1899447号明細書
【特許文献5】米国特許第4840742号明細書
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】Tire Technology,Tire release agents, Stefan Breunig, Tire technology International 2013,第68-72頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
そこで、本発明の目的の一つは、生タイヤ又はブラダーに対する塗布を目視で制御でき、かつ、加硫タイヤの外観を悪化させない離型用組成物を使用して生タイヤを加硫するための方法を提供することである。
【0026】
本発明の他の目的は、生タイヤ又はブラダーに対する塗布が目視で制御できる離型用組成物を提供することである。
【0027】
本発明の他の目的は、生タイヤ又はブラダーに対する塗布を目視で制御することができ、かつ、加硫タイヤの外観を悪化させない離型用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
発明の簡単な説明
これら及び他の目的は、まず、膨張性ゴムブラダーを使用して金属プレス内で生タイヤを加硫するための方法であって、次の工程:
1.前記生タイヤの内側又は前記膨張性ゴムブラダーの外側に、水中油型エマルジョンの形態の着色潤滑離型用組成物(I)を被覆して、前記生タイヤ上又は前記膨張性ゴムブラダー上に肉眼で視認できる着色被膜を形成し、ここで、前記潤滑離型用組成物(I)は、
a.少なくとも1種のオルガノポリシロキサン(A)と、
b.少なくとも1種の界面活性剤(B)と、
c.少なくとも1種の非蛍光性顔料(C)と、
d.水(D)と
を含み、前記界面活性剤及び水の量は、水中油型エマルジョンを得るのに十分な量であるものとし;
2.前記膨張性ゴムブラダーを膨張させ、前記金属プレス内で、好ましくは80~220℃の温度で10分~24時間にわたってタイヤを加硫し;
3.タイヤを離型すること
を含み、
前記工程3で得られたタイヤの内部は、もはや肉眼で視認できる着色がないことを特徴とする方法
によって達成される。
【0029】
非蛍光性顔料(C)を含む潤滑離型用組成物(I)を使用することで、着色組成物を得ることができる。その結果、生タイヤ又はブラダーに塗布することにより、肉眼で視認できる着色被膜を形成することができる。したがって、組成物が塗布された場所を、肉眼で容易に視認することができる。着色被膜が肉眼で見えるので、組成物が塗布された場所を視覚化するために、UVランプなどの装置は必要ない。これにより、塗布が均一であることと、離型剤が塗布されていない部分がないこととが確実なものとなる。
【0030】
さらに、加硫後には、もはや加硫タイヤの内側で着色を確認することができなくなる。この潤滑離型用組成物(I)は、加硫中にその色を失う。したがって、この潤滑離型用組成物(I)を使用すると、加硫タイヤの外観は変化しない。
【0031】
また、本発明は、水中油型エマルジョンの形態である着色潤滑離型用組成物(I)であって、
a.次のものよりなる群から選択される少なくとも1種のオルガノポリシロキサン(A):
・1分子当たり、ケイ素原子に結合した、同一でも異なっていてもよく、かつ、C1~C40アルキル、C3~C8シクロアルキル、C6~C10アリール及びC7~C50アルキルアリール基よりなる群から選択される一価有機置換基を含む非反応性オルガノポリシロキサン(E)、
・1分子当たり少なくとも2個の≡SiOHシラノール基を含む反応性オルガノポリシロキサン(F)、及び
・それらの混合物;
b.少なくとも1種の界面活性剤(B);
c.少なくとも1種の非蛍光性顔料(C);及び
d.水(D)
を含み、
前記界面活性剤及び水の量は、水中油型エマルジョンを得るのに十分な量である、着色潤滑離型用組成物に関するものでもある。
【0032】
また、本発明は、金属プレス内において、生タイヤの加硫に有用な膨張性ゴムブラダーを潤滑させるための方法(P1)であって、前記生タイヤの内側表面に接触する前記ブラダーの外側表面に、着色潤滑離型用組成物(I)を被覆し、この方法により、外側表面に潤滑性を有する膨張性ゴムブラダーを直接得ることができることを特徴とする方法に関するものでもある。
【0033】
また、本発明は、金属プレス内において、生タイヤの加硫時に有用な膨張性ゴムブラダーを潤滑させるための方法(P2)であって、プレスの外側での第1工程において、前記生タイヤの内側表面に着色潤滑離型用組成物(I)を被覆し;
前記工程により、内側表面に前記組成物(I)が被覆された生タイヤを製造し;及び金属プレスでの後工程において、内側表面に前記組成物(I)が被覆された生タイヤを膨張性ゴムブラダーと接触させて配置し;前記方法により、外側表面に潤滑性を有する膨張性ゴムブラダーを移すことによって製造する、前記方法に関するものでもある。
【0034】
また、本発明は、着色潤滑離型用組成物(I)が被覆された膨張性ゴムブラダー又は生タイヤに関するものでもある。
【発明を実施するための形態】
【0035】
詳細な説明
生タイヤの加硫方法
本発明は、まず、膨張性ゴムブラダーを使用して金属プレス内で生タイヤを加硫するための方法であって、次の工程:
1.前記生タイヤの内側又は前記膨張性ゴムブラダーの外側に、水中油型エマルジョンの形態の着色潤滑離型用組成物(I)を被覆して、前記生タイヤ上又は前記膨張性ゴムブラダー上に肉眼で視認できる着色被膜を形成し、ここで、前記潤滑離型用組成物(I)は、
a.少なくとも1種のオルガノポリシロキサン(A)と、
b.少なくとも1種の界面活性剤(B)と、
c.少なくとも1種の非蛍光性顔料(C)と、
d.水(D)と
を含み、前記界面活性剤及び水の量は、水中油型エマルジョンを得るのに十分な量であるものとし;
2.前記膨張性ゴムブラダーを膨張させ、前記金属プレス内で、好ましくは80~220℃の温度で10分~24時間にわたってタイヤを加硫し;
3.タイヤを離型すること
を含み、
前記工程3で得られたタイヤの内部は、もはや肉眼で視認できる着色がないことを特徴とする方法
に関する。
【0036】
工程1において、着色潤滑離型用組成物(I)は、生タイヤの内側又は膨張性ゴムブラダーの外側に塗布されてもよい。
【0037】
一実施形態によれば、組成物(I)が被覆されるのは、膨張性ゴムブラダーの外側である。この場合、ブラダーの潤滑は直接的である。
【0038】
別の実施形態によれば、組成物(I)が被覆されるのは、生タイヤの内側である。有利には、プレス機の外側で、生タイヤの内側に組成物(I)が被覆される。その後、生タイヤはプレス機の内部に配置され、その後、工程2でブラダーを膨張させ、タイヤを加硫させたときに、組成物(I)がタイヤの内側からブラダーの外側面に移行する。このとき、ブラダーは間接的に潤滑される。
【0039】
着色潤滑離型用組成物(I)を塗布することにより、生タイヤ上又はブラダー上に、肉眼で視認できる着色被膜を形成することができる。これにより、組成物が塗布された箇所を容易に見ることができる。用語「肉眼で視認できる着色被膜」とは、視認装置の助けを借りずにその色が視認できる被膜を意味する。
【0040】
工程1における着色潤滑離型用組成物(I)の生タイヤ又はブラダーに対する塗布量は、1~50g/m2、好ましくは3~20g/m2とすることができる。
【0041】
生タイヤ上又はブラダー上において肉眼で視認できる着色被膜の厚みは、1~50μm、好ましくは3~20μmとすることができる。
【0042】
工程1は、当業者に周知の塗布方法を用いて実施できる。特に、組成物(I)は、ブラシ若しくはスポンジによって、又は噴霧によって塗布できる。噴霧による塗布は、被膜が均一かつ均質になるのを確保するように、数回のパスで実施できる。
【0043】
ブラダーを膨張させ、金属プレス内でタイヤを加硫する工程2は、80~220℃の温度で5分~24時間にわたって、例えば170℃で20分にわたって行うことが好ましい。
【0044】
ブラダーの膨張は、高温ガス、熱水及び/又は蒸気などの高温流体を使用して実施できる。
【0045】
ブラダー内の圧力は、有利には10barより大きく、好ましくは15~25barである。
【0046】
工程3で得られたタイヤは、もはや、肉眼で視認できる着色を有しない。このように、工程1で得られた生タイヤ上又はブラダー上の肉眼で視認できる着色被膜は、工程2の間にその色を消失する。
【0047】
この色の消失率は、比色を測定する分光光度計によって決定することができる。比色によって、例えばCIELabモデル、すなわちL***CIE1976色空間を用いて色を定義することができる。当業者によく知られているこのモデルは、色を特徴付けるために3つのパラメータを使用する:
・0(黒)~100(白)の値をとる明度L、
・緑-赤軸上の値を表すパラメータa、
・青-黄軸上の値を表すパラメータb。
【0048】
また、次のような方法で2色間のギャップを測定することも可能である。
【数1】
ここで、ΔL=L2-L1、Δa=a2-a1、Δb=b2-b1である。
【0049】
色及び色の変化を特徴付けるために使用されるこれらの様々なパラメータは、色差計を用いて測定できる。
【0050】
着色潤滑離型用組成物(I)は、肉眼で視認できる着色被膜を形成する。この被膜は、成物(I)とタイヤ又はブラダーとの間に十分なコントラストが存在するため、肉眼で視認できる。このコントラストは、初期デルタEによって特徴付けることができる。この初期デルタEは、(i)被覆された生タイヤ又は被覆されたブラダーと、(ii)被覆されていない生タイヤ又は被覆されていないブラダーとの色差である。測定(i)は、組成物(I)を生タイヤ又はブラダー上に塗布し、乾燥させた後に行うことができる。乾燥は、室温で30分~2時間、例えば1時間にわたって実施できる。有利には、この初期デルタEは5以上であり、好ましくは8以上である。したがって、生タイヤ上の肉眼で視認できる着色被膜は、5以上、好ましくは8以上の初期デルタEを有すると定義することができる。有利には、この初期デルタEは、5~100、好ましくは8~50であってもよい。
【0051】
特に、工程1で得られた生タイヤ上又はブラダー上の肉眼で視認できる着色被膜は、工程1と工程3との間で、85%~100%の色の消失率(X)を有していてもよく、色の消失率(X)は、以下の方法で分光測色法により決定される。
【数2】
【0052】
初期デルタEは、生タイヤ上又はブラダー上に堆積された後の、工程1における組成物(I)のデルタEに相当する。この初期デルタEは、(i)被覆された生タイヤ又は被覆されたブラダーと、(ii)被覆されていない生タイヤ又は被覆されていないブラダーとの色差である。最終デルタEは、加硫後の工程3における被膜のデルタEである。この最終デルタEは、(i)工程3後の被覆生タイヤと、(ii)被覆されていない生タイヤとの色差である。したがって、工程3で得られた、もはや肉眼で視認できる着色を有しないタイヤの内部は、3以下、好ましくは2以下の最終デルタEを有すると定義できる。有利には、この最終デルタEは0~3、好ましくは0~2であってもよい。
【0053】
好ましくは、色の消失率(X)は、90%~100%である。
【0054】
この色の消失率(X)は、特に170℃で20分間実施された工程2の後に決定することができる。
【0055】
また、本発明は、膨張性ゴムブラダーを使用して金属プレス内で生タイヤを加硫するための方法であって、次の工程:
1.前記生タイヤの内側又は前記膨張性ゴムブラダーの外側に、水中油型エマルジョンの形態の着色潤滑離型用組成物(I)を被覆して、前記生タイヤ上又は前記膨張性ゴムブラダー上に被膜を形成し、ここで、前記潤滑離型用組成物(I)は、
a.少なくとも1種のオルガノポリシロキサン(A)と、
b.少なくとも1種の界面活性剤(B)と、
c.カラーインデックス分類に従って、モノアゾ、ジスアゾ、アミノケトン、インジゴイド、フタロシアニン、オキサジン、及びそれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは水性分散体の形態である、少なくとも1種の非蛍光性顔料(C)と、
d.水(D)と
を含み、前記界面活性剤及び水の量は、水中油型エマルジョンを得るのに十分な量であるものとし;
2.前記膨張性ゴムブラダーを膨張させ、前記金属プレス内で、好ましくは80~220℃の温度で10分~24時間にわたってタイヤを加硫し;
3.タイヤを離型すること
を含む方法に関する。
【0056】
着色潤滑離型用組成物(I)
着色潤滑離型用組成物(I)は、オルガノポリシロキサンをベースとする水中油型エマルジョンである。
【0057】
オルガノポリシロキサンを説明するために、単位M、D、T及びQを参照する。文字Mは、式(R)3SiO1/2の単官能性単位を表し、ケイ素原子がこの単位を含む重合体中の1個の酸素原子にのみ結合している。文字Dは、ケイ素原子が2個の酸素原子に結合した二官能性単位(R)2SiO2/2を意味する。文字Tは、ケイ素原子が3個の酸素原子に結合した式(R)SiO3/2の三官能性単位を表す。文字Qは、ケイ素原子が4個の酸素原子に結合した式SiO4/2の四官能性単位を表す。記号Rは、以下に定義される記号R2、R3及びR4と同じ定義を有する。単位M、D及びTは官能化されていてもよい。この場合、これらを、特定の基を指定しつつM、D及びT単位という。
【0058】
着色潤滑離型用組成物(I)は、以下よりなる群から選択できる少なくとも1種のオルガノポリシロキサン(A)を含む:
・1分子当たり、ケイ素原子に結合した、同一でも異なっていてもよく、かつ、C1~C40アルキル、C3~C8シクロアルキル、C6~C10アリール及びC7~C50アルキルアリール基よりなる群から選択される一価有機置換基を含む非反応性オルガノポリシロキサン(E);
・1分子当たり少なくとも2個の≡SiOHシラノール基を含む反応性オルガノポリシロキサン(F)、及び
・それらの混合物。
【0059】
着色潤滑離型用組成物(I)は、少なくとも1種の非反応性ポリオルガノシロキサン(E)を0.1~60重量部、好ましくは0.1~30重量部含んでいてもよい。
【0060】
着色潤滑離型用組成物(I)は、少なくとも1種の反応性ポリオルガノシロキサン(F)を0.1~60重量部、好ましくは0.1~30重量部含んでいてもよい。
【0061】
本発明においては、用語「非反応性」とは、乳化条件、潤滑組成物の製造条件及び使用条件下で、組成物の成分のいずれとも化学的に反応しないオルガノポリシロキサンをいう。
【0062】
非反応性オルガノポリシロキサン(E)は、オイルでもガムでもよく、好ましくは25℃における動的粘度が50~600000mPa・s、又は25℃における粘度(コンシステンシー)が1/10ミリメートルで表される200~2000である。
【0063】
シリコーンの動的粘度は、ASTM D 445規格に準拠して25℃で測定される。
【0064】
用語「ガム」は、通常600000mPa.sを超える粘度を持つ有機ケイ素化合物のために使用され、この粘度は260000g/molを超える分子量に相当する。
【0065】
ガムの粘度又は浸透性は、標準化された条件下で円筒形のヘッドを試料に当てることができるPNR12型又は同等のモデルの針入度計により25℃で決定される。
【0066】
ゴムの浸透性は、校正された円筒が1分間で試料を貫通する深さを1/10ミリメートル単位で表したものである。
【0067】
この目的のために、直径40mm、高さ60mmのアルミニウム製カップにゴム試料を導入する。青銅製又は真鍮製円筒形頭部は直径が6.35mm、長さが4.76mmであり、かつ、針入度計にフィットする長さ51mm、直径3mmの金属棒を保持する。この金属棒には100gの荷重がかかっている。組立品の総重量は、円筒部とその支持棒についての4.3gを含めて、151.8gとなる。ゴム試料を入れたカップを25±0.5℃の恒温槽に30分以上にわたって配置する。測定を製造業者の説明書に従って行う。1/10ミリメートル単位で表される深さ(V)の値及び、秒単位で表される、この深さに達するまでの時間(t)が装置に表示される。浸透性は、毎分60V/t(1/10分ミリメートル単位)に相当する。
【0068】
本発明に従って使用することができる非反応性オルガノポリシロキサンゴム(E)は、単独で又は無機溶媒中の混合物として使用される。この溶媒は、環境及びタイヤ製造作業場の作業員の健康に対して有害な有機溶媒の使用を避けるために、揮発性シリコーン、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)オイル、ポリフェニルメチルシロキサン(PPMS)オイル又はこれらの混合物から選択できる。
【0069】
有利には、非反応性オルガノポリシロキサン(E)は、線状単独重合体又は共重合体である線状非反応性オルガノポリシロキサンオイル(E)である。好ましくは、線状非反応性オルガノポリシロキサンオイル(E)は、25℃における動的粘度が0.65~100000mPa・sの範囲にある。挙げることができる例としては、直鎖状オルガノポリシロキサンであって、それぞれの鎖に沿って、
a.式(R52SiO2/2単位と組み合わされていてよい式R56SiO2/2単位、
b.式(R52SiO2/2単位と組み合わされていてよい式(R62SiO2/2単位、
c.式(R52SiO2/2単位と組み合わされていてよい、式R56SiO2/2単位及び式(R62SiO2/2単位
から構成され、かつ
・各鎖末端が式(R73SiO1/2単位でブロックされ、そのうちのR7基は、同一でも異なっていてもよく、R5基及びR6基から選択される
直鎖状オルガノポリシロキサンが挙げられ、
ここで、上記の各種シロキシル単位の1価の有機置換基であるR5基及びR6基は次の定義を有する:
a.R5基は、同一であっても異なっていてもよく、次から選択される:
i.直鎖C1~C6又は分岐C3~C6アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル又はn-ヘキシル、及び
ii.C3~C8シクロアルキル基、例えばシクロペンチル又はシクロヘキシル、
b.R6基は、同一であっても異なっていてもよく、次から選択される:
i.C6~C10アリール基、例えばフェニル又はナフチル、
ii.C7~C15アルキルアリール基、例えばトリル、キシリル、及び
iii.C7~C15アリールアルキル基、例えば、ベンジル。
【0070】
反応性オルガノポリシロキサン(F)は、オイルでもガムでもよく、好ましくは25℃における動的粘度が50~600000mPa・s、又は25℃における粘度(コンシステンシー)が200~2000(1/10ミリメートルで表される)である。
【0071】
好ましくは、着色潤滑離型用組成物(I)の反応性オルガノポリシロキサン(F)は、次のシロキシル単位を含む:
OH=[(OH)(R22SiO1/2]及びD=[R34SiO2/2
式中、
2、R3及びR4は、次よりなる群から選択される同一の又は異なる基である:
・直鎖又は分岐C1~C6アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル、又はn-ヘキシル;
・C3~C8シクロアルキル基、例えば、シクロペンチル又はシクロヘキシル;
・C6~C10アリール基、例えば、フェニル又はナフチル;及び
・C7~C15アルキルアリール基、例えば、トリル又はキシリル。
【0072】
さらに好ましくは、離型用組成物(I)の反応性オルガノポリシロキサン(F)は、α,ω-ビス(ヒドロキシ)ポリジメチルシロキサン、すなわち反応性オルガノポリシロキサン(F)のシロキシル単位のR2、R3及びR4基がメチル基である。
【0073】
本発明に係る反応性オルガノポリシロキサンゴム(F)は、単独で又は無機溶媒中の混合物として使用される。この溶媒は、環境及びタイヤ製造作業場の作業員の健康に対して有害な有機溶媒の使用を避けるために、揮発性シリコーン、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)オイル、ポリフェニルメチルシロキサン(PPMS)オイル又はこれらの混合物から選択できる。
【0074】
成分(F)としては、25℃における動粘度が50~600000mPa・sのα,ω-ビス(ヒドロキシ)ポリジメチルシロキサンオイル、25℃における粘度が200~2000(1/10ミリメートルで表される)のα,ω-ビス(ヒドロキシ)ポリジメチルシロキサンガムが優先的に使用される。
【0075】
また、着色潤滑離型用組成物は界面活性剤(B)も含む。界面活性剤(B)の性質は、当業者であれば容易に決定されるが、その目的は、安定なエマルジョンを調製することである。陰イオン性、陽イオン性、非イオン性及び両性イオン性界面活性剤を単独で又は混合物として使用できる。
【0076】
なお、本発明に係る組成物(I)は、ポリビニルアルコールなどの保護コロイドを含んでいてもよい。
【0077】
陰イオン性界面活性剤としては、次の界面活性剤を挙げることができる:
・式Ra-CH(SO3M)COORbのアルキルエステルスルホン酸塩、ここで、RaはC8~C20、好ましくはC10~C16アルキル基を示し、RbはC1~C6、好ましくはC1~C3アルキル基を示し、Mはアルカリ金属陽イオン(ナトリウム、カリウム、リチウム)、置換又は非置換アンモニウム(メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、ジメチルピペリジニウム)、又はアルカノールアミン誘導体(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン)を表し、
・式ROSO3Mのアルキル硫酸塩、ここで、RcはC10~C24、好ましくはC12~C20のアルキル又はヒドロキシアルキル基、Mは水素原子又は上記と同じ定義の陽イオン、またそのオキシエチレン化(OE)及び/又はオキシプロピレン化(OP)誘導体、好ましくは1~20個のOE単位含むものを表し、
・式RdCONHReOSO3Mのアルキルアミド硫酸塩、ここで、RdはC2~C22、好ましくはC6~C20アルキル基を表し、ReはC2~C3のアルキル基を表し、Mは水素原子又は上記と同じ定義の陽イオン、またそのオキシエチレン化(OE)及び/又はオキシプロピレン化(OP)誘導体、好ましくは1~20個のOE単位を含有するものを表し、
・飽和又は不飽和のC8~C24、好ましくはC14~C20脂肪酸塩、C9~C20アルキルベンゼンスルホン酸塩、及びそのオキシエチレン化(OE)及び/又はオキシプロピレン化(OP)誘導体、好ましくは1~20個のOE単位を含むもの、
・C9~C20アルキルベンゼンスルホン酸塩、第一級又は第二級C8~C22アルキルスルホン酸塩、アルキルグリセロールスルホネート、GB-A-1082179号に記載のスルホン化ポリカルボン酸、パラフィンスルホネート、N-アシル-N-アルキルタウレート、モノアルキルホスフェート及びジアルキルホスフェート、アルキルイセチオネート、アルキルスクシナメート、アルキルスルホスクシネート、スルホスクシネートのモノエステル又はジエステル、N-アシルサルコシネート、アルキルグリコシドスルフェート、ポリエトキシカルボキシレート、ここで、陽イオンはアルカリ金属(ナトリウム、カリウム又はリチウム)、置換又は非置換アンモニウム残基(メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、ジメチルピペリジニウム)又はアルカノールアミン誘導体(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン)である。
【0078】
非イオン性界面活性剤としては、ポリ(アルキレンオキシド)アルキル又はアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンヘキサステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、及びポリ(エチレンオキシド)セチルステアリルエーテルが挙げられる。ポリ(アルキレンオキシド)アリールエーテルとしては、ポリオキシエチレンアルキルフェノールが挙げられる。ポリ(アルキレンオキシド)アルキルエーテルとしては、1分子当たり3~15個のエチレンオキシド単位を有する、ポリエチレングリコールイソデシルエーテル、ポリエチレングリコールイソトリデシルエーテル、及びポリエチレングリコールトリメチルノニルエーテルが挙げられる。
【0079】
非イオン性界面活性剤としては、シリコーン系非イオン性界面活性剤、特にポリエーテルシリコーンが挙げられる。これらの界面活性剤は、オルガノポリシロキサン-ポリエーテル共重合体という名称でも知られている。好ましくは、エチレンオキシド鎖配列を有するシロキシル単位、及び任意にプロピレンオキシド鎖配列を有するシロキシル単位を含むオルガノポリシロキサン-ポリオキシアルキレン共重合体である。
【0080】
界面活性剤の他の例としては、例えば、次のイオン性、非イオン性又は両性のフッ素系界面活性剤及びその混合物が挙げられる:
・ペルフルオロアルキル、
・ペルフルオロベタイン、
・エトキシル化ポリフルオロアルコール、
・アンモニウムポリフルオロアルキル、
・親水性部分が5~6個の炭素原子を含む1個以上の糖単位を含み、疎水性部分が式Rf(CH2n-単位(ここでn=2~20であり、Rfは式Cm2m+1のペルフルオロアルキル単位を表し、ここで、m=1~10である)の界面活性剤;及び
・脂肪ペルフルオロアルキル側基を有する高分子電解質。
【0081】
用語「フッ素化界面活性剤」とは、それ自体完全に知られているように、少なくとも3個の炭素原子を含む脂肪族ペルフルオロカーボン部分と、イオン性、非イオン性又は両性の親水性部分とから構成される化合物を意味する。少なくとも3個の炭素原子のペルフルオロカーボン部分は、この分子のフルオロカーボン部分の全て又は一部のみを表すことができる。この種の化合物に関しては、多数の文献に引用されている。当業者であれば、特に以下の文献を参照することができる。
・仏国特許第2149519号、WO94/21233号、米国特許第3194767号、書籍「Fluorinated Surfactants」,Erik Kissa,Marcel Dekker Inc出版(1994)第4章,特に表4.1及び4.4。
【0082】
特に、DuPont社からZonyl(登録商標)の名称で販売されている製品、例えばFSO、FSN-100、FS-300、FSD、またDuPont社からForafac(登録商標)という名称で販売されているフッ素化界面活性剤や、3M社からFluorad(登録商標)という名称で販売されている製品が挙げられる。
【0083】
これらの界面活性剤のうち、特に陰イオン性、陽イオン性、非イオン性及び両性のペルフルオロアルキル化合物が挙げられ、これらのうち、特に、デュポン社がそれぞれZonyl(登録商標)FSA、Zonyl(登録商標)FSO、Zonyl(登録商標)FSC及びZonyl(登録商標)FSKという名称で販売するZonyl(登録商標)の部類の界面活性剤が挙げられる。
【0084】
この点については、さらに次のものを指摘できる:
・Zonyl(登録商標)FSO100:CAS65545-80-4、(非イオン性)99%~100%、残部が1,4-ジオキサン、
・Zonyl(登録商標)FSN:CAS65545-80-4、99%~100%、残部が酢酸ナトリウム及び1,4-ジオキサン、
・Zonyl(登録商標)FS-300:CAS65545-80-4、40%、残部が1,4-ジオキサン(<0.1%)及び水、
・Zonyl(登録商標)FSD:CAS70983-60-7、30%、(カチオン)、残部がヘキシレングリコール(10%)、塩化ナトリウム(3%)、及び水(57%)。
【0085】
また、次のものも挙げられる:
・デュポン社がForafac(登録商標)1157の名称で販売する製品などのペルフルオロアルキルベタイン(両性)、デュポン社がForafac1110Dの名称で販売する製品などのエトキシル化ポリフルオロアルコール(非イオン性)、デュポン社がForafac1179の名称で販売する製品などのポリフルオロアルキルアンモニウム塩(陽イオン)、
・親水性部分が5~6個の炭素原子を含む1個以上の糖単位(フルクトース、グルコース、マンノース、ガラクトース、タロース、グロース、アロース、アルトース、イドース、アラビノース、キシロース、リキソース及び/又はリボースなどの糖から誘導される単位)を含み、疎水性部分が式RF(CH2nの単位を含む界面活性剤(ここで、nは2~20、好ましくは2~10の範囲とすることができ、RFは式Cm2m+1のペルフルオロアルキル単位を表し、ここで、mは1~10、好ましくは4~8の範囲とすることができる)であり、上に定義した特徴を有するものから選択される。ペルフルオロアルキル脂肪酸のモノエステル及びスクロースなどの糖のモノエステルが挙げられ、ここで、モノエステル官能基は、場合によっては式RF(CH2nC(O)で表され、ここで、nは2~10の範囲とすることができ、RFは式Cm2m+1のペルフルオロアルキル単位を表し、mは4~8の範囲とすることができ、これは、米国油化学者協会誌(JAOCS)、第69巻,No.1,1992年1月に記載され、かつ、上で定義された特徴を有するものから選択され;及び
・RF(CH2n基を有するポリアクリレートなどのペルフルオロアルキル脂肪側基を有する高分子電解質、ここで、nは2~20、好ましくは2~10であってよく、RFは式Cm2m+1のペルフルオロアルキル単位を表し、ここで、mは1~10、好ましくは4~8であり、上で定義した特性を有するものから選択される;J.Chim.Phys.(1996)93,第887-898頁に記載され、かつ、上で定義された特性を有するものから選択される、-CH2715基を有するポリアクリレートが挙げられる。
【0086】
界面活性剤(B)の量は、存在する成分のそれぞれの種類と、使用する界面活性剤の性質そのものとに依存する。原則として、エマルジョンは、エマルジョンの総重量に対して0.5重量%~10重量%の界面活性剤を含む。
【0087】
また、着色潤滑離型用組成物(I)は、非蛍光性顔料(C)も含む。
【0088】
用語「顔料」とは、任意の着色物質を意味する。本発明において、用語「顔料」とは広義に与えられ、染料も含まれるものとする。一般に、顔料は、それらが着色する媒体に不溶である。
【0089】
「非蛍光性」とは、光エネルギーを吸収することができず、かつ、光の形態で再放出することができない化合物をいう。
【0090】
好ましくは、非蛍光性顔料(C)は、(カラーインデックス分類に従って):モノアゾ、ジスアゾ、アミノケトン、インジゴイド、フタロシアニン、オキサジン、無機物、及びこれらの混合物よりなる群から選択され、好ましくは水性分散体の形態である。
【0091】
カラーインデックス(Cl)分類は、当業者に周知である。これは、Society of Dyers and Colourists及びAmerican Association of Textile Chemists and Coloristsによって発行された参照データベースである。このデータベースは、製造された着色剤及び関連製品を参照するものである。製品は、名称(カラーインデックス一般名、CIGN)及び一般番号(カラーインデックス構成番号、CICN)に従ってリスト化されている。
【0092】
非蛍光性顔料(C)に関連する一般番号は、モノアゾ(CICN 11000-19999)、ジスアゾ(CICN 20000-29999)、アミノケトン(CICN 56000-56999)、インディゴ(CICN 73000-73999)、フタロシアニン(CICN 74000-74999)、オキサジン(CICN 51000-51999)、無機物(CICN 77000-7999)である。
【0093】
好ましくは、非蛍光性顔料(C)は有機物であり、(カラーインデックス分類に従って):モノアゾ、ジスアゾ、アミノケトン、インジゴイド、フタロシアニン、オキサジン、及びこれらの混合物よりなる群から選択される。
【0094】
好ましくは、非蛍光性顔料(C)は、(カラーインデックス分類に従って):モノアゾ、ジスアゾ及びフタロシアニン、ならびにそれらの混合物よりなる群から選択される。より好ましくは、非蛍光性顔料(C)は、(カラーインデックス分類に従って):モノアゾ及びジスアゾよりなる群から選択される。
【0095】
有利には、非蛍光性顔料(C)は、赤色、黄色、オレンジ色、緑色、青色及び紫色顔料ならびにそれらの混合物から選択される。好ましくは、非蛍光性顔料(C)は、赤色、黄色及びオレンジ色の顔料から選択される。
【0096】
特定の実施形態によれば、非蛍光性顔料(C)は、顔料であるYellow3(PY3、CICN11710)又は顔料であるRed2(PR2、CICN12310)とすることができる。
【0097】
非蛍光性顔料(C)は、水性分散液の形態であることが好ましい。水性分散液の形態の非蛍光性顔料(C)のうち、Sioen社からAquacolorsの名称で販売されるものを挙げることができる。
【0098】
着色潤滑離型用組成物(I)は、組成物(I)の総重量に対して0.01重量%~3重量%、好ましくは0.1重量%~2.5重量%の非蛍光性顔料(C)を含むことができる。当業者であれば、顔料の量をその性質及び所望の被膜の厚みに応じて調節する方法が分かるであろう。特に、当業者であれば、タイヤ上の初期コントラストが十分であるように、かつ、被膜が肉眼で視認できるように、顔料の量を調節する方法が分かるであろう。
【0099】
着色潤滑離型用組成物(I)は、(i)1分子当たり、少なくとも3個の≡SiH単位を含む少なくとも1種の架橋剤(G)、及び/又は(ii)触媒(H)をさらに含んでいてもよい。
【0100】
好ましくは、離型用組成物(I)の架橋剤(G)は、次式(II)の単位を少なくとも1個有し、かつ、次式(III)の単位又は以下に表される式(II)の単位からなる環で終端しているものから選択されるオルガノポリシロキサンである。
【化1】
式中:
・記号R1は同一であり又は異なり、
a.非置換又は少なくとも1個のフッ素で置換された、1~8個の炭素原子を含む直鎖又は分岐アルキル基、
b.5~8個の環状炭素原子を含むシクロアルキル基、
c.6~12個の炭素原子を有するアリール基、又は
d.7~14個の炭素原子を含むアルキル部分と、6~12個の炭素原子を含むアリール部分とを有するアラルキル基であって、該アリール部分が非置換であり又はハロゲン、1~3個の炭素原子を含むアルキル及び/又はアルコキシで置換されているもの
を表し、
・記号Z’は同一であり又は異なり、
a.水素基、又は
b.R1について上で与えられたものと同じ定義に相当する基
を表し、1分子当たり、記号Z’の少なくとも3個が水素基Hを表す。
【0101】
架橋剤(G)の例として、以下の式(IV)の化合物を挙げることができる。
【化2】
式中:
・xは1~10,000の範囲の整数又は分数を表し、
・yは0~10,000の範囲の整数又は分数を表し、
・R’1及びR”1は、互いに独立に、
a.非置換又は少なくとも1個のハロゲン、好ましくはフッ素で置換された、1~8個の炭素原子を含む直鎖又は分岐アルキル基であって、該アルキル基が好ましくはメチル、エチル、プロピル、オクチル及び3,3,3-トリフルオロプロピルであるもの、
b.5~8個の環状炭素原子を含むシクロアルキル基、
c.6~12個の炭素原子を含むアリール基、又は
d.5~14個の炭素原子を含むアルキル部分と、6~12個の炭素原子を含むアリール部分とを有するアラルキル基であって、非置換であるもの又はアリール部分で置換されているもの
を表し、
・R”1は水素に相当していてもよいが、ただし、
オルガノポリシロキサンは、少なくとも3個の≡SiH単位を含むものとする。
【0102】
本発明では、架橋剤(G)として、以下の化合物が最も好適に使用される。
【化3】
【化4】
式中:
a、b、d及びeは、以下の範囲の数を表す:
・式S1の重合体において、
0≦a≦10000、好ましくは0≦a≦8000、好ましくは0≦a≦5000、及び3≦b≦10,000、好ましくは10≦b≦100、好ましくは20≦b≦60、
・式S2の重合体において
1≦d≦10000、好ましくは20≦d≦60、
0≦e≦10000、好ましくは0≦e≦1000である。
【0103】
着色潤滑離型用組成物(I)のオルガノポリシロキサンは、(i)組成物が1分子当たり少なくとも2個の≡SiOHシラノール基を含む反応性オルガノポリシロキサン(F)を含む場合には、重縮合によって重合可能及び/又は架橋可能であってもよく、又は(ii)組成物が1分子当たり少なくとも2個の≡SiOHシラノール基を含む反応性オルガノポリシロキサン(F)と、1分子当たり少なくとも3個の≡SiH単位を有する架橋剤(G)とを含む場合には、脱水素-縮合により重合可能及び/又は架橋可能であってもよい(≡SiH+≡SiOH→≡Si-O-Si≡+H2(g))。
【0104】
この目的のために、少なくとも1種の触媒(H)を使用してもよい。この触媒は、重縮合触媒又は脱水素-縮合触媒(H)であってもよい。触媒の存在は、本願明細書に記載される温度のため、任意であるに過ぎない。
【0105】
本発明において使用できる重縮合又は脱水素-縮合触媒の例は、有機金属塩、及びオルトチタン酸テトラブチルなどのチタネートである。
【0106】
有機金属塩としては、ナフテン酸ジルコニウム、オクチル酸ジルコニウムを挙げることができる。
【0107】
また、触媒スズ化合物、一般に有機スズ塩の使用も可能である。使用可能な有機スズ塩は、特にNoll’s Chemistry and Technology of Silicones, Academic Press (1968),第397頁に記載されている。ジスタノキサン、ポリオルガノスタノキサン、又は米国特許第3862919号に記載されているような、スズ塩、特にジカルボン酸スズとエチルポリシリケートとの反応生成物も、触媒スズ化合物として定義することもできる。
【0108】
また、ベルギー国特許第842305号に記載のアルキルシリケート又はアルキルトリアルコキシシランとジブチルスズジアセテートとの反応生成物も好適に使用することができる。
【0109】
別の可能性によれば、SnCl2又はオクタン酸第一スズなどの第II族スズ塩を使用してもよい。触媒は、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクテート、オクチル酸コバルト及びジオクチルスズジ(イソメルカプトアセテート)などの有機酸のスズ塩であってもよい。スズビスキレートなどのスズ塩の例は、欧州特許出願公開第147323号及び同235049号に記載されており、ジオルガノスズジカルボキシレート、特に、触媒は、英国特許第289900号(ジブチルスズジアセテート又はジオクチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート又はジオクチルスズジラウレート)に記載されている。
【0110】
また、スズを含まない触媒は、WO2010/146253号、WO2010/146254号、WO2010/149869号、WO2010/149870号及びWO2013/004926号に記載されている。
【0111】
触媒(H)は、存在する場合には、一般に、エマルジョンの総重量に対して、0.05~5重量部の割合でエマルジョンに導入される。
【0112】
着色潤滑離型用組成物(I)は、さらに脱空気剤(J)を含有していてもよい。脱空気剤としては、マイカ、タルク、カーボンブラック、ガラスビーズなどを挙げることができる。
【0113】
好ましい実施形態によれば、脱空気剤(J)は、ガラスビーズである。
【0114】
ガラスビーズの化学組成は、ソーダ石灰系又はホウケイ酸系であってもよい。工業的に製造されるガラスの大部分は、ソーダ石灰ガラスである。このタイプは主として71%~75%の砂(SiO2)、12%~16%のソーダ(Na2O)、8%~15%の石灰石(CaO)から構成される。ホウケイ酸塩ガラスは、酸化ホウ素(B23)及び酸化アルミニウム(Al23)の存在によってソーダ石灰ガラスとは区別される。
【0115】
ガラスは非結晶体、すなわち非結晶性材料である。その結果、有意な構造的欠陥を呈する。その微細な構造は、ガラス中に長距離秩序が存在しないようなものである。
【0116】
これらは中実ガラスビーズである。すなわち中空ではない。これらは、シランカップリング剤で表面被覆されている場合がある。
【0117】
好ましくは、ガラスビーズは、次の特徴を有する:
・ISO13320規格に準拠して測定された0.1~150μmの平均粒子径、
・ASTM D 3101-78に準拠して測定された1000~2000kg/m3の嵩密度、及び
・ASTM D-1483に準拠して測定された、球体100g当たり10g~30gの吸油量。
【0118】
さらに好ましくは、ガラス球(D)は、次の特徴を有する:
・ISO13320規格に準拠して測定された0.5~100μmの平均粒子径、
・ASTM D 3101-78に準拠して測定された1200~1800kg/m3の嵩密度、及び
・ASTM D-1483に準拠して測定された、球体100g当たり15g~25gの吸油量。
【0119】
さらに好ましくは、ガラスビーズ(D)は、ISO13320規格に準拠して測定された平均直径が12~70μmである。
【0120】
ガラスビーズがあることで、加硫時に良好な空気抜きを確保することができる。
【0121】
離型用組成物(I)中の脱空気剤(J)、特にガラスビーズの量は、組成物の総重量に対して0.1重量%~20重量%の範囲、好ましくは0.1重量%~15重量%である。
【0122】
さらに、従来の非限定的な態様において、着色潤滑離型用組成物(I)には、被膜形成用重合体、消泡剤、殺生物剤、レオロジー改質剤、合体剤、分散剤、酸性化剤、中和剤、塩基及び/又は増粘剤などの添加剤(K)も、単独で又は混合物として使用できる。
【0123】
このような添加剤の濃度は、当業者に知られている。
【0124】
水(D)は、着色潤滑離型用組成物(I)中に、組成物の総重量に対して、好ましくは20%~90%、より好ましくは30%~80%の割合で存在する。
【0125】
着色潤滑離型用組成物(I)は、該組成物を膨張性加硫ブラダー上又は生タイヤ上に堆積させ、170℃で20分間熱処理した後の色の消失率(X)が85%~100%であってもよく、該色の消失率は分光測色法により以下の方法で決定することができる。
【数3】
【0126】
好ましくは、色の消失率(X)は、90%以上100%以下である。
【0127】
初期デルタEは、(i)被覆されたブラダー又はタイヤ(E)と、(ii)被覆されていないブラダー又はタイヤとの色差である。最終デルタEは、(i)熱処理後の被覆ブラダー又はタイヤ(E)と、(ii)被覆されていないブラダー又はタイヤとの色差である。
【0128】
別の実施形態によれば、着色潤滑離型用組成物(I)は、下記成分(A)、(B)、(C)、(D)、(G)、(H)、(J)、及び(K)の合計100重量部に対して、
・0.1~60重量部、好ましくは0.1~30重量部の少なくとも1種のポリオルガノシロキサン(A)、
・0.1~10重量の少なくとも1種の界面活性剤(B)、
・0.01~3重量部の少なくとも1種の非蛍光性顔料(C)、
・20~90重量部、好ましくは30~80重量部の水(D)、
・0~20重量部の少なくとも1種の架橋剤(G)、
・0~5重量部の少なくとも1種の触媒(H)、
・0~20重量部、好ましくは0.1~15重量部の脱空気剤(J)、
・0~5重量部の少なくとも1種の添加剤(K)
を含む。
【0129】
本発明に係る組成物は経時的に安定であり、本発明に係る組成物から製造されたシリコーン被膜は、良好な潤滑特性(Kd<0.7)、及び組成物がガラスビーズを含む場合には良好な空気抜け性を有する。複数回の離型の場合、本発明に係る組成物は、連続した離型に対して良好な耐性を示す。
【0130】
潤滑方法
本発明の別の主題は、金属プレス内において、生タイヤの加硫に有用な膨張性ゴムブラダーを潤滑させるための方法(P1)であって、前記生タイヤの内側表面に接触する前記ブラダーの外側表面に、水中油型エマルジョンの形態の着色潤滑離型用組成物(I)を被覆することを特徴とする方法に関するものである。
【0131】
本発明の別の主題は、金属プレス内において、生タイヤの加硫に有用な膨張性ゴムブラダーを潤滑させるための方法(P2)であって、プレスの外側での第1工程において、前記生タイヤの内側表面に水中油型エマルジョンの形態の離型用組成物(I)を被覆することを特徴とする方法に関する。
【0132】
離型用組成物(I)は、成形/離型サイクル毎に使用してもよいし(単回離型)、複数回の成形/離型サイクルの後に使用してもよい(複数回離型)。複数回離型の場合には、生タイヤ成形及び硬化タイヤ離型のサイクル数は3回以上である。
【0133】
処理剤を塗布するための方法は、当業者に周知である。特に、ブラシやスポンジで塗布してもよいし、スプレーで塗布してもよい。
【0134】
スプレーによる塗布は、被膜が均一かつ均質になるのを確保するために、数回に分けて実施できる。
【0135】
特に、本発明は、
・生タイヤを形成し加硫するための、外側に本発明に係る組成物(I)が被覆された膨張性ゴムブラダー、
・上で定義された膨張性ブラダーを、特に80~220℃、好ましくは150~200℃で加熱することによって得ることができる膨張性ゴムブラダー、
・内側表面に本発明に係る潤滑剤組成物(I)が被覆された生タイヤ、及び
・上で定義された生タイヤを、特に80~220℃、好ましくは150~200℃で加熱することによって得ることができる加硫タイヤ。
【0136】
本発明の他の利点及び特徴は、例示のために与えられる以下の実施例を読むことで明らかになるであろう。以下の実施例は決して限定的なものではない。
【実施例
【0137】
使用した出発材料
Bluesil(登録商標)Emulsion 211:エルケム・シリコーンズ社製:界面活性剤(B)を含むポリジメチルシロキサンオイルエマルジョン(A)で、25℃におけるオイルの粘度は約350mPa.sである。
Bluesil(登録商標)Emulsion 284:エルケム・シリコーンズ社製:界面活性剤(B)を含むα,ω-ビス(ヒドロキシ)ポリジメチルシロキサンオイルエマルジョン(A)で、25℃におけるオイルの粘度は約135000mPa.sである。
Bluesil(登録商標)Emulsion 247G:エルケム・シリコーンズ社製:25℃において1/10ミリメートルで表した粘度が約700のα,ω-ビス(ヒドロキシ)ポリジメチルシロキサンガム(A)と、25℃で約50mPa・sの粘度のポリジメチルシロキサンオイル(A)との混合物で、界面活性剤(B)を含む。
Lyndcoat(登録商標)BR 2430:エルケム・シリコーンズ社製:潤滑エマルジョン。
Sovitec社が販売するGlassyCoat(登録商標)C3 SP20-60 TO:非被覆ガラスビーズD50 15~30μm:脱空気剤(J)。
Solvay Novecare社が販売するRhodopol(登録商標)23、キサンタンガム、増粘剤(K)。
Dr Kolb社が販売するImbentin(登録商標)T/030:イソトリデセス3、湿潤剤(K)。
エルケム・シリコーンズ社が販売するSilcolapse(登録商標)5020:消泡性エマルジョン(K)。
ソルビン酸(K)。
Arch Chemicals社が販売するProxel(登録商標)GXL:1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、殺生物剤(K)。
Sioen社が販売するAquacolors Yellow 60118:水性顔料製剤(カラーインデックスPY3、11710)51%顔料(C)。
Sioen社が販売するAquacolors Red 62153:水性顔料製剤(カラーインデックスPR2、12310)44% 顔料(C)。
Chem-Trend社が販売するCT ML 8181:離型剤。
【0138】
潤滑離型用組成物
試験した様々な潤滑離型用組成物を表1及び表2にまとめる。量は重量部で表される。
【0139】
【表1】
【0140】
表1のエマルジョンは、以下のように製造した。
【0141】
A部の製造:
1リットルのビーカーに水(「水1」)の第1部分を注ぎ、続いて直径35mmの脱凝集タービンを備えたCharvet社製の分散機を使用して20000rpmで撹拌しながらRhodopol 23をスプレーとして添加する。20分にわたって撹拌すると、水溶液の粘度が上昇し、その後安定した。
【0142】
B部の製造:
1リットルのビーカーに、第2の水部分(「水2」)、Silcolapse消泡剤、ソルビン酸、及び必要に応じてガラスビーズ(GlassyCoat(商標))を導入する。直径35mmの脱凝集タービンを備えたCharvet社製の分散機を使用して10000rpmで撹拌する。その後、先のA部を添加し、20000rpmで20分間分散させる。
【0143】
C部の製造:
適度に撹拌(直径85mmの掻き取りアンカーを用いて140rpm)しながら、新たな1リットルビーカに、シリコーンエマルジョンを導入し(Emulsion 211、又はEmulsion 284、次にEmulsion 247G)、これと殺生物剤(Proxel)、次に追加の界面活性剤(Dr.Kolb社製のImbentin T/030)、最後に顔料とを混合する。同じ撹拌条件下で約1時間にわたって均質化する。
【0144】
潤滑離型用組成物の完成:
混合物Cに分散液B(A部を含む)を注ぎ、その後10分間適度に撹拌することにより行う。
【0145】
【表2】
ND:決定されず
【0146】
表2の組成物を、組成物CT ML 8181又はLyndcoat BR2430と顔料とを、撹拌しながら混合することによって製造した。
【0147】
その後、製造された組成物の特性を試験した。
【0148】
離型試験:
潤滑用組成物の耐久性は、膨張性ブラダー表面の劣化なしに製造されたタイヤの本数に相当する。
【0149】
これを行うために、評価対象となる潤滑離型用組成物が予め塗布された膨張性ブラダーのフィルムを、産業用工具でのタイヤの製造工程を模擬する一連の圧力及び温度サイクルに従って、未加硫タイヤケーシングのフィルムと接触させて加圧する。
【0150】
具体的には、ブラダーと同じ組成で、サイズが2mm×80mm×80mmのゴムシートを、200℃で30分にわたる加熱プレスで作製する。このシートは、ブラダーの表面を模擬する表面構造になっている。
【0151】
スプレーブースにおいて、圧縮空気ガンで離型用組成物を噴霧することによってシートを被覆する。約20μmの層を塗布する。1時間風乾した後、全体を170℃で10分以上焼成する。
【0152】
被覆されたシートをプレスの型内に配置する。型を170℃に加熱する。シートを5分間にわたって予熱し、その後、離型用組成物が被覆されたシート上に厚さ約9cmの粗製ILR(Inner Liner Rubber=生タイヤの内側表面を構成するゴム)を配置する。型を閉じ、次にプレスを行い、170℃で7分間にわたってILRゴムを硬化させる。型を開き、薄く成形されたILRシートを取り出す。
【0153】
離型が成功したとみなされるためには、無理に引っ張ったり、引っ掛けたりせずに分離しなければならない。そうでない場合には、離型は失敗したものとみなされる。
【0154】
離型回数は、引っ掛かりなく離型されたILRシートの枚数に相当する。結果を表3及び4に示す。
【0155】
滑り試験
この試験の目的は、膨張性ブラダーとタイヤケーシングの内側表面との界面に配置された離型用組成物の滑りやすさを評価することである。
【0156】
この試験は、タイヤケーシングフィルム(50×75mm)を貼り付けた所定の重量の金属パッドを、膨張式ブラダーの組成であるゴム表面にわたって滑らせることによって実施される。
【0157】
ゴム表面には、予め着色潤滑離型用組成物を被覆しておく。組成物塗布後、ゴム表面を常温で1時間にわたって乾燥させ、その後、通風オーブン内で170℃、10分間加熱する。
【0158】
動的摩擦係数を、動力計(50mm/分の速度で)を使用して測定する。同じ膨張性ブラダーサンプルについて、タイヤケーシングサンプルを毎回変えながら5回連続して実施する。
【0159】
摩擦係数(Kd)は、次に相当する:
【数4】
【0160】
表3及び表4に記載したKd値は、5回のパスで得られた値の平均に相当する。
【0161】
摩擦係数の値が小さいほど、潤滑組成物の滑り特性が良好である。
【0162】
この滑り試験は、産業用工具で達成すべき性能を完全に表すものであり、第一の選択基準となる。結果を表3及び表4に示す。
【0163】
比色試験
着色潤滑離型用組成物が被覆されたゴム試料の色を、GretagMacbeth(商標)ブランドの分光測色計、すなわちColorEye(登録商標)XTHで特徴付ける。L、La、Lb及びデルタEの値を測定する。
【0164】
これは、白色基準に対して得られる、基準(La及びLb値についてゼロ点)となる非被覆(黒色)ゴム支持体と比較した比色反射測定である。
【0165】
まず、白色基準による予備校正を行う。次に、基準サンプル(シリコーンが被覆されていない黒色ゴム支持体)及びサンプル(着色潤滑離型用組成物が被覆されたゴム)を170℃で20分にわたる熱処理前後で測定する。測定を5回繰り返し、その平均値を算出する。色の消失量(X)を分光測色法により以下の方法で決定する。
【0166】
【数5】
【0167】
得られた結果を表3及び表4に示す。
【0168】
【表3】
【0169】
【表4】
ND:決定されず
【0170】
これらの結果から、本発明に係る組成物は、熱処理前のデルタEが5以上であるため、黒色タイヤ上において肉眼で視認できることが示される。さらに、熱処理後に、色の消失率(X)が少なくとも90%であることが観察される。このように、本発明に係る組成物は、加硫タイヤの外観を劣化させず、加硫タイヤは熱処理後に黒色のままである。
【0171】
さらに、本発明に係る組成物を複数回の離型に使用することも可能である(実施例7及び8)。
【0172】
顔料が存在しても動摩擦係数Kdは変化しない(実施例1及び3、比較例1及び2)。また、ガラスビーズの存在により、より良好な動摩擦係数が得られる(実施例1及び5)。
【国際調査報告】