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特表2023-507484保護ワニス、特にセキュリティ文書の為の保護ワニス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-22
(54)【発明の名称】保護ワニス、特にセキュリティ文書の為の保護ワニス
(51)【国際特許分類】
   A01N 47/12 20060101AFI20230215BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20230215BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20230215BHJP
   A01N 59/16 20060101ALI20230215BHJP
   A01N 59/20 20060101ALI20230215BHJP
   A01N 41/10 20060101ALI20230215BHJP
   A01N 47/18 20060101ALI20230215BHJP
   C09D 5/14 20060101ALI20230215BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20230215BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20230215BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20230215BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20230215BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20230215BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230215BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20230215BHJP
   B42D 25/29 20140101ALI20230215BHJP
【FI】
A01N47/12 Z
A01P3/00
A01P1/00
A01N59/16 A
A01N59/20
A01N59/16 Z
A01N41/10 A
A01N47/18 101C
C09D5/14
C09D201/00
C09D7/62
C09D4/02
C09D133/00
C09D163/00
C09D7/63
C08J7/04 A CEP
B42D25/29
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537869
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-07-20
(86)【国際出願番号】 EP2020086958
(87)【国際公開番号】W WO2021123118
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】1914829
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522242351
【氏名又は名称】オベルチュール フィドゥキエール サス
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】ロセ,アンリ
(72)【発明者】
【氏名】ル ベール,マージョリー
【テーマコード(参考)】
2C005
4F006
4H011
4J038
【Fターム(参考)】
2C005HA10
2C005HB10
2C005KA07
4F006AA02
4F006AB24
4F006AB65
4F006AB73
4F006BA11
4F006BA17
4F006CA01
4F006CA10
4F006EA03
4H011AA02
4H011AA04
4H011BA06
4H011BB07
4H011BB13
4H011BB18
4H011DA17
4J038CG001
4J038DB041
4J038FA111
4J038HA466
4J038NA05
4J038PA17
4J038PB04
4J038PB06
4J038PC08
4J038PC10
(57)【要約】
本発明は主に、照射によって硬化可能な保護ワニスであって、カチオン手段又はラジカル手段によって硬化可能な少なくとも1つの化合物と、銀、銅、亜鉛及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの金属とを含み、ここで、該金属が、ゼロ酸化状態にあり、且つ担持された粒子形態にあることを特徴とする、上記の保護ワニスに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射によって硬化可能な保護ワニスであって、
カチオン手段又はラジカル手段によって硬化可能な少なくとも1つの化合物と、
少なくともブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル、すなわちIPBC、を含む少なくとも1つの殺菌剤と、
銀、銅、亜鉛及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの金属と
を含み、
前記金属が、ゼロ酸化状態にあり、且つ担持された粒子形態にあることを特徴とする、前記保護ワニス。
【請求項2】
殺生物活性、特に殺菌活性、静菌活性、及び/又は抗ウイルス活性、好ましくは殺菌活性及び抗ウイルス活性、を有する、請求項1に記載のワニス。
【請求項3】
酸化状態ゼロにある該金属が、無機粒子状物質によって担持されている、請求項1又は2に記載のワニス。
【請求項4】
酸化状態ゼロの金属に対する該物質の含有比が、その総含有重量に対して0.5重量%~3重量%、特に1.0重量%~2.5重量%、で変化する、請求項3に記載のワニス。
【請求項5】
ゼロ金属が含まれた又はドープされた該物質の粒径は、好ましくは10μm未満、好ましくは5μm未満、である、請求項3又は4に記載のワニス。
【請求項6】
前記無機物質は、ゼオライト、及びガラス、特にリン酸ガラス、から選択され、好ましくはリン酸ガラス、である、請求項3~5のいずれか1項に記載のワニス。
【請求項7】
酸化状態ゼロの前記金属が、亜鉛、銀、銅及びそれらの混合物から選択され、好ましくは少なくとも銀を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のワニス。
【請求項8】
ワニスの総重量に対して、0.001%~0.2重量%、好ましくは0.003%~0.015%、より好ましくは0.01%未満、又は更には0.008%未満、の、ゼロに等しい酸化状態の金属を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のワニス。
【請求項9】
UV可視照射によって硬化可能なワニス、好ましくはカチオン性ワニス、であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載のワニス。
【請求項10】
ポリアルキルアクリレート類のモノマーベースのワニス、不飽和アクリル樹脂ベースのワニス、又は環状脂肪族エポキシド類のモノマーベースのワニスであることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のワニス。
【請求項11】
フリーラジカル光開始剤をさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のワニス。
【請求項12】
ワニスの総重量に対して、0.1重量%~5.0重量%、好ましくは1重量%~4重量%、より好ましくは1.5重量%~3.5重量%、のIPBCを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のワニス。
【請求項13】
ゼロ酸化状態にある金属及び該IPBCが、0.0007~0.01、好ましくは0.0008~0.007、好ましくは0.001~0.005、より好ましくは0.0015~0.004、又は更には0.0017~0.0034、の金属/IPBC重量比において使用される、請求項1~12のいずれか1項に記載のワニス。
【請求項14】
IPBCと異なる少なくとも1つの殺菌剤をさらに含み、該殺菌剤が、イソチアゾリン誘導体又はイソチアゾリン誘導体、ゼオライト、亜鉛及びトリクロサンベースに基づく化合物から選択され、特に、p-((ジヨードメチル)スルホニル)トルエン及びメチル-1H-ベンゾイミダゾール-2-イルカルバメートから選択される少なくとも1つの化合物である、請求項1~13のいずれか1項に記載のワニス。
【請求項15】
オーバープリントワニスであることを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載のワニス。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の硬化可能なワニスから形成された硬化されたワニス堆積物により、物体の1以上の外面のうちの1つの全部又は一部がコーティングされた該物体。
【請求項17】
前記物体が、触れられること又は取り扱われることを意図されており、特に、ハンドル、ボタン、タッチ画面、包装、及び情報担体から選択される、請求項16に記載の物体。
【請求項18】
物体、特に請求項16~17のいずれか1項に従う物体、を作製する方法であって、
前記物体を用意すること、
前記物体の処理されるべき表面を、該表面上に硬化可能なワニス堆積物を形成する為の効果的な条件下で、請求項1~15のいずれか1項に記載のワニスと接触させること、及び
前記堆積物を照射に曝露して、該堆積物を硬化させること
からなる工程を少なくとも含む、前記方法。
【請求項19】
請求項1~15のいずれか1項に記載の硬化可能なワニスから形成された硬化されたワニス堆積物により、セキュリティ文書の1以上の外面のうちの1つの全部又は一部がコーティングされた該セキュリティ文書。
【請求項20】
前記セキュリティ文書がセルロース繊維、特に紙、に基づく、請求項19に記載のセキュリティ文書。
【請求項21】
前記セキュリティ文書がプラスチック材料、特に合成繊維又はプラスチックシート、に基づく、請求項19に記載のセキュリティ文書。
【請求項22】
前記セキュリティ文書が、パスポート、紙幣、身分証明書、運転免許証、アクセスカード、ポイントカード、コピーカード、食堂カード、ゲーム用カード、収集カード、支払手段、特に支払カード、である、請求項19~21のいずれか1項に記載のセキュリティ文書。
【請求項23】
該セキュリティ文書は、該シートの認証を可能にする少なくとも1つのセキュリティ要素を組み込んでいるセキュリティシートの形態であり、好ましくは紙幣である、請求項19~22のいずれか1項に記載のセキュリティ文書。
【請求項24】
セキュリティ文書を作製する方法であって、
前記セキュリティ文書を用意すること、
前記文書の処理されるべき表面を、該表面上に硬化可能なワニス堆積物を形成する為の効果的な条件下で、請求項1~15のいずれか1項に記載のワニスと接触させること、及び
前記堆積物を照射に曝露して、該堆積物を硬化させること
からなる工程を少なくとも含む、前記方法。
【請求項25】
セキュリティ文書、好ましくは紙幣、の上に、保護コーティング又は保護層を作る為の、請求項1~15のいずれか1項に記載のワニスの使用。
【請求項26】
セキュリティ文書、好ましくは紙幣、の汚損に対する耐性を改善する為の、請求項1~15のいずれか1項に記載のワニスの使用。
【請求項27】
セキュリティ文書、好ましくは紙幣、に抗微生物特性を与える為の、請求項1~15のいずれか1項に記載のワニスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティ文書、より特には紙幣(banknotes)、の分野に関する。
【0002】
本発明はまた、ワニスの分野、特に、汚損に対する耐性を増強することによって、紙幣又はセキュリティ文書に対して強化されたレベルの耐久性を賦与することを可能にするオーバープリントワニス(overprint varnishes)の分野、に関する。
【0003】
より特には、本発明は、汚損に対する耐性を増強する基本的な特性に加えて、微視的な汚損に対する耐性、より特にはバクテリア、微視的な真菌(microscopic fungi)、特に酵母、及びウイルス、からの保護、を与えることを可能にするワニス配合に関する。
【背景技術】
【0004】
紙幣は、世界において最も交換されている情報文書(information documents)のうちの1つである。手から手への繰り返される交換、使用及びそれらの流通の環境条件は、それらの物理的な劣化に対して影響を有しており、頻繁に使用された紙幣は、非常に汚れていることが多く、又は微生物学的に汚染されていることすらある。ここで、過度な汚損は、紙幣の認証マークの視認性を損ない、これは、中央銀行に、紙幣を流通から回収させ、より綺麗な紙幣を再発行することを強いる。更新の頻度を減少させる為に予想される解決策のうちの1つは、印刷された紙幣の表面に、印刷工程の殆どが実行された時点で、ワニス、一般にはオーバープリントワニス、を施与することから成り、このことは、汚損に対する強化された耐性を紙幣に賦与することを可能にする。しかしながら、この解決策は、微視的な汚損に効果的に対抗し、微生物からの保護を提供するには不十分である。ここで、多くの研究は、流通している紙幣が、該紙幣の取り扱い及び手から手への交換に起因して、時には病原性である微生物、特にバクテリア、微小真菌、特に酵母、及びウイルス、の担体であることを示してきた。更に、カビの存在は、セルロース基材を劣化させうる。
【0005】
それ故に、効果的な抗バクテリア保護、抗真菌保護及び抗ウイルス保護と組み合わせた、汚損に対する耐性を紙幣に賦与する為の効果的な手段に対する必要が依然としてある。
【0006】
確かに、紙幣基材に抗微生物特性を与えることを可能にする解決策は、既に存在する(仏国特許発明第2945180号明細書及び仏国特許発明第2967074号明細書)。残念ながら、現在利用可能な該解決策は、水性媒体中に配合された殺生物活性剤の組み合わせに基づいた抗微生物解決策を実質的に必要としており、該活性剤自体が、水生分散液又はエマルジョン中にあることが多い。ここで、特に欧州特許第2761084号明細書において説明されるような、架橋樹脂のマトリクスにおける配合は、水性化合物を許容しない。
【0007】
更に、施与されたワニスを硬化することは、高輝度UV下でのコーティングされた基材の照射を求める、UV下での架橋の為の手順を一般には必要とする。ここで、使用される抗微生物活性剤は、印刷ワニス処理プロセスのこの工程期間中に劣化されてはならない。抗微生物活性剤は、感光性であってはならない。
【0008】
更に、ワニス膜内で使用される抗微生物活性剤の分布は、ワニス印刷された基材の表面インターフェース、すなわち文書の外表面層、が十分な殺生物活性を有するのに十分であるように、非常に均一でなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、これらの要件の全てを満たす新規なワニス(varnish)、特にオーバープリントワニス(overprint varnish)、を提案することをまさに目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、本発明は主に、照射、特にUV、によって硬化可能な保護ワニスであって、カチオン手段又はラジカル手段によって硬化可能な少なくとも1つの化合物と、銀、銅、亜鉛及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの金属とを備えた該保護ワニスにおいて、上記金属がゼロ酸化状態にあり、且つ担持粒子形態にあることを特徴とする、上記保護ワニスに関する。
【0011】
本発明に従うワニスは、少なくとも1つの殺菌剤(fungicide)を追加的に含む。
【0012】
それ故に、本発明は、照射、特にUV、によって硬化可能な保護ワニスであって、
カチオン手段又はラジカル手段によって硬化可能な少なくとも1つの化合物と、
少なくともブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル(iodopropynyl butylcarbamate)、すなわちIPBC、を含む少なくとも1つの殺菌剤(fungicide)と、
銀、銅、亜鉛及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの金属と
を含み、上記金属が、ゼロ酸化状態にあり、且つ担持された粒子形態にあることを特徴とする、上記保護ワニスにまさに特に関する。
【0013】
特に、該ワニスは、殺生物活性(biocidal activity)、特に少なくとも殺菌活性(bactericidal activity)又は静菌活性(bacteriostatic activity)、好ましくは少なくとも殺菌活性、を有する。より一般には、該ワニスは、殺菌活性、静菌活性及び/又は抗ウイルス活性、好ましくは殺菌活性及び抗ウイルス活性、を有する。
【0014】
好ましい変形例に従うと、酸化状態ゼロにある該金属は、無機粒子状物質、好ましくは粒子状リン酸ガラス、によって担持される。
【0015】
別の好ましい変形例に従うと、該金属は、少なくとも銀を含む。
【0016】
以下に与えられている1以上の例から明らかなように、本発明者等は、本発明に従うと、ゼロ度の担持金属が、ワニスを硬化する為に必要とされるUV照射プロセスに干渉しないことを見出した。
【0017】
その上、本発明者等は、これらの材料を組み込んだワニスが、期待される耐久性、又は改善すらされた耐久性、特に防汚性、を依然として持っており、且つ透明なままでありうることに気付いた。
【0018】
最終的に、本発明者等は、あらゆる期待に反して、ゼロ度のこれらの金属が、そのような環境において、及び周囲の湿気に接して、必要とされる殺バクテリア活性を賦与されたイオン性金属種を生成しうることを見出した。
【0019】
更に、該1以上の例において明示されるように、IPBCと、ゼロ酸化状態にあり且つ担持粒子形態にあるところのこの金属とを組み合わせることは有利には、ワニスの抗微生物特性を改善することを可能にする。
【0020】
本発明はまた、本発明に従う硬化可能なワニスから形成された硬化されたワニス堆積物により、物体の1以上の外面のうちの1つの全部又は一部がコーティングされた物体に関する。上記物体は、特に触れられること又は取り扱われることを意図されている。該物体は、例えばハンドル、ボタン、タッチ画面、包装、情報担体、特にセキュリティ文書又は要素、好ましくは紙幣、である。上記物体は、例えば、ガラス板、紙、ボール紙、プラスチック、布地、特に機能性樹脂の層又は1以上の層の組み合わせからなる光学構造、から選択される材料からなる。
【0021】
本発明は、特にセキュリティ要素又は文書であって、例えば紙製又はプラスチック製であり、本発明に従う硬化可能なワニスから形成された硬化されたワニス堆積物により、その1以上の外面のうちの1つの全部又は一部がコーティングされた、セキュリティ要素又は文書に関する。
【0022】
本発明は好ましくは、本発明に従う硬化可能なワニスから形成された硬化されたワニス堆積物により、その1以上の外面のうちの1つ外面の全部又は一部がコーティングされたセキュリティ文書に関する。
【0023】
より特には、セキュリティ文書は、該キュリティ文書の1以上の面のうちの少なくとも1つにおいて、本発明に従う上記硬化可能なワニスから形成された硬化されたワニス膜により表面処理されている。
【0024】
好ましい変形例に従うと、この文書は、1以上のセキュリティ要素を組み込んでおり、有利には紙幣である。
【0025】
本発明はまた、そのような物体を作製する方法であって、
上記物体を用意すること、
上記物体の処理されるべき表面を、該表面上に硬化可能なワニス堆積物を形成する為の効果的な条件下で、本発明に従うワニスと接触させること、及び
上記堆積物を照射に曝露して、該堆積物を硬化させる為のすること
からなる工程を少なくとも含む、上記方法に関する。
【0026】
本発明は、より特には、この種のセキュリティ文書を作製する方法であって、
上記セキュリティ文書を用意すること、
上記文書の処理されるべき表面を、該表面上に硬化可能なワニス堆積物を形成する為の効果的な条件下で、本発明に従うワニスと接触させること、及び
上記堆積物を照射に曝露して、該堆積物を硬化させること
からなる工程を少なくとも含む、上記方法に関する。
【0027】
上記物体、特にセキュリティ文書、の処理されるべき該表面を、本発明に従う該ワニスと接触させることが、印刷プロセス、特にフレキソグラフィック、グラビア印刷、若しくはセリグラフィック、によって、吹付けによって、ブラシによる施与によって、又は任意の他のコーティングプロセスによって実行されうる。
【0028】
更に、本発明は、セキュリティ文書、好ましくは紙幣、の上に、保護コーティング又は保護層を作る為の、本発明に従うワニスの使用に関する。
【0029】
本発明は、セキュリティ文書、好ましくは紙幣、の汚損に対する耐性を改善する為の、本発明に従うワニスの使用に更に関する。
【0030】
本発明はまた、セキュリティ文書、好ましくは紙幣、に抗微生物特性を与える為の、本発明に従うワニスの使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
酸化状態ゼロの担持金属
本発明の意味において、酸化状態ゼロの金属は、その原子が非イオン形態にある金属である。本明細書において、表現「ゼロ金属」、「金属」及び「酸化状態ゼロの金属」は、金属のこの非酸化状態を意味する為に使用されることになる。
【0032】
上述したように、この金属は、銀、亜鉛、銅及びそれらの混合物から選択される。
【0033】
好ましい変形例に従うと、ゼロ金属は、少なくとも銀を含み、特に銀から成る。
【0034】
本発明の意味において、表現「担持粒子形態にある」は、金属が無機粒子状物質によって担持されていることを示す。より特には、該金属は、表面において、適用可能な場合には、この材料の深部において、固定化される。この材料は、特に、該ゼロ金属が分散されるマトリクスを表しうる。
【0035】
ゼロ金属が含まれた無機物質は、ゼオライト、及びガラス、特にリン酸ガラス、から選択されうる。
【0036】
好ましくは、該材料は、ガラス、より特にはリン酸ガラス、である。リン酸ガラスは有利には、UV架橋プロセス期間中に大きな安定性を持つ。
【0037】
ゼロ金属が含まれた又はドープされた該無機物質の、十分に小さな粒径、すなわち約10ミクロンの大きさ、及びその本質的に透明な性質は、硬化されたワニス膜がその透明度を保持し、均一な抗バクテリア保護を確実にすることを可能にする。有利には、オーバープリントワニスの場合において、及び以下に与えられている1以上の例において明示されるように、該紙幣の印刷複製及び光沢において変化は見出されない。実際には、紙幣用の自動選別装置(BPS)が過度の光沢によって「妨害される」ことは、既知である。
【0038】
従って、ゼロ金属が含まれた又はドープされた該物質の粒径は、好ましくは10μm未満、好ましくは5μm未満、である。該粒径は、特に、SEMイメージングによって又はDLS(dynamic light scattering(動的光散乱))によって測定されうる。該粒径は、より特には、直径D98、すなわち、重量で粒子の98%が上記直径よりも小さいサイズを有するような直径、によって定義されうる。
【0039】
酸化状態ゼロの金属に対する該物質の含有比は、その総積載重量に対して0.5重量%~3重量%、特に1.0重量%~2.5重量%、で変化する。
【0040】
一つの実施態様に従うと、ワニスは、他の鉱物粒子であって、その機能が、特に、完成されたワニス膜、特にシリカ粒子、の光沢のレベルを調整することでありうる、他の鉱物粒子をまた含みうる。これは、オーバープリントワニスの文脈において、まさに特に関連する。
【0041】
以下に与えられている1以上の例によって明示されるように、本発明に従う、ゼロ金属が含まれた粒子を含む硬化されたワニス、及びIPBCは、期待される殺バクテリア特性及び殺ウイルス特性を発揮する。
【0042】
好ましい変形例に従うと、該ワニスは、ガラス製、好ましくはリン酸ガラス製、の粒状物質に担持されている金属銀を含む。
【0043】
より正確には、該金属銀は、リン酸ガラスのマトリクスにおける銀の粒子の形態である。このマトリクスは、銀イオンAgに対して浸透性があり、それ故に、該銀イオンAgの通過/移動を可能にするという利点を有する。
【0044】
殺バクテリア活性を持つ、これらのAgイオンは、該ワニス内に分散された、酸化状態ゼロの銀を、周囲の湿気と、又は汚染期間中に、例えば、特に吐出物からの飛沫と、接触させることによって生成される。
【0045】
このタイプの材料は、特に、企業Thomson Research Associates Inc.の名称Ultrafresh CA16の下で販売されている。
【0046】
ワニス
語「保護ワニス」は、その表面上にワニスが施与されたセキュリティ文書に対して、抗微生物保護と有利に組み合わされた、汚損に対する耐性を与える為に有用なワニスを意味する。
【0047】
本発明の意味において、語「抗微生物」は、殺生物活性、特に殺バクテリア活性、殺真菌活性、特に殺酵母活性、殺ウイルス活性及び/又は殺藻活性、すなわち、問題の微生物を殺すもの、を説明するが、静バクテリア活性及び/又は静真菌活性、すなわちバクテリア及び微小真菌の増殖をまた抑制するもの、を説明する。
【0048】
表現「照射によって硬化可能なワニス」は、本発明の意味において、赤外線/熱風及びUV乾燥の下で凝固するワニスを網羅する。
【0049】
この目的の為に、本発明に従って検討される該ワニスは、1以上の硬化可能な化合物(hardenable compound)を含む。
【0050】
本発明の意味において、硬化可能な化合物は、刺激、この場合においては赤外線又はUV照射による加熱、及び必要ならば、開始剤と呼ばれる補助化合物の存在、に応答して、重合すること、架橋すること、又は妥当であれば、他の化合物と重縮合を行うことができ、従って、周囲条件(室温、日光による照射等)において固体である膜を不可逆的に形成することができる化合物である。
【0051】
有利には、硬化可能な化合物は、UV可視照射によって硬化可能なワニスである。言い換えれば、硬化可能な化合物は、UV乾燥の下で凝固する。
【0052】
例えば、アクリルワニス、エポキシド基を含むワニス、又はアクリレート基を含むワニスは、特に好適である。硬化可能な化合物は好ましくは、アクリレート基を含むワニスである。
【0053】
硬化可能な化合物は、特に、ポリアルキルアクリレート類のモノマーベースのワニス、不飽和アクリル樹脂ベースのワニス、又は環状脂肪族エポキシド類のモノマーベースのワニスでありうる。最後に言及された類は重合し、開始剤、特に光開始剤、例えば紫外線下で活性化されたオニウム塩、の助けにより、ポリエポキシドマトリクスを与える。
【0054】
これらの化合物は、必要であれば、フリーラジカル光開始剤、例えばオニウム塩、特に、妥当であれば、置換された、スルホニウムカチオン及びアニオン、と共に更に組み合わされうる。
【0055】
従って、該ワニスは、フリーラジカル光開始剤を更に含みうる。
【0056】
従って、本発明に従う該硬化可能なワニスは好ましくは、ポリエポキシド系又はポリアクリレート系、より好ましくはポリエポキシド系、の硬化されたワニスの前駆物質である。
【0057】
これらのワニスの例示として、本発明者等は、例えば、Sicpaからの名称「Sicpaprotect」(紙基材については参照番号889368又はポリマー基材については参照番号889354)の下で販売されているポリエポキシドワニス、及びSchmidt Rhynerから名称「Wessco Protector 36.389.19」の下で販売されているポリアクリレートワニスに言及しうる。
【0058】
好ましい変形例に従うと、本発明に従う該ワニスは、カチオンワニスである。
【0059】
別の好ましい変形例に従うと、本発明に従う該ワニスは、特にセキュリティ文書に対して有用なオーバープリントワニスである。
【0060】
本発明に従う該ワニスは、処理されるべき表面上への施与によって膜を簡単に形成する為に、有利には流体である。
【0061】
例えば、本発明に従うワニスは、任意の好適な方法によって、及び例えばフレキソ印刷、グラビア印刷若しくはスクリーン印刷の方法、又は更にはエアナイフコーティング、カーテンコーティング若しくはローラによるコーティングの方法によって、基材の表面上に堆積させられうる。本発明に従う該ワニスの粘度は、1以上の硬化可能な化合物が配合される溶媒の性質及び/又は量を介して調整されうる。
【0062】
従って、1以上の硬化可能な化合物は、周囲温度及び圧力において測定される、30mPa.s~40Pa.s、特に50mPa.s~20Pa.s、の粘度を有しうる。
【0063】
組成物の粘度は、従来の方法によって測定されうる。特に、問題の組成物の粘度の大きさに関して、測定の適当な方法及び測定機器の選択は、明らかに当業者の能力内にある。
【0064】
硬化された形態にあるワニスは、完全に透明でありうる。施与された該ワニスの、この疑似不可視性は、明らかな理由により、特に有利である。特に、本発明に従う該ワニスは、情報担体、例えば紙幣、のオーバープリントワニスを構成するのに特に有利であると判明している。本発明に従うワニスは、これらの紙幣に組み込まれているセキュリティ要素の視認性を損なわない。
【0065】
本発明に従うワニスは、その総重量に対して、0.001%~0.2重量%、好ましくは0.003%~0.015%、より好ましくは0.01%未満、又は更には0.008%未満、の、ゼロに等しい酸化状態の金属を含みうる。
【0066】
本発明に従う該ワニスは、少なくとも幾らかのブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル、すなわちIPBC、を含む。
【0067】
IPBCの例示として、本発明者等は、例えば、名称Fungitrol C450の下で企業Troy Chemical Companyによって販売されている製品に言及しうる。
【0068】
特に、本発明に従うワニスは、その総重量に対して、0.1重量%~5.0重量%、好ましくは1重量%~4重量%、より好ましくは1.5重量%~3.5重量%、のIPBCを含みうる。
【0069】
有利には、ゼロ酸化状態にある金属及び該IPBCは、0.0007~0.01、好ましくは0.0008~0.007、好ましくは0.001~0.005、より好ましくは0.0015~0.004、又は更には0.0017~0.0034、の金属/IPBC重量比において使用される。
【0070】
担持されたゼロ金属及び該IPBCに加えて、該ワニスは有利には、補助抗微生物剤が非水系媒体における配合及び照射、特にUV、と相溶性があれば、補助抗微生物剤を含みうる。
【0071】
有利には、本発明に従うワニスは、IPBCと異なる少なくとも1つの殺菌剤を追加的に含む。
【0072】
1つの変形例に従うと、本発明に従う組成物は、イソチアゾリン誘導体又はイソチアゾリン誘導体、ゼオライト、亜鉛及びトリクロサンベースの化合物から選択される少なくとも1つの静菌剤及び/又は殺菌剤を含む。
【0073】
好ましくは、本発明に従う該ワニスは、静菌剤及び/又は殺菌剤として、p-((ジヨードメチル)スルホニル)トルエン(p-((diiodomethyl)sulfonyl)toluene)及びメチル-1H-ベンゾイミダゾール-2-イルカルバメートから選択される少なくとも1つの化合物を含む。
【0074】
本発明に従うワニスは、その総重量に対して、0.1重量%~2.0重量%、好ましくは0.5重量%~1.5重量%、の1以上の殺菌剤を含みうる。有利には、本発明に従うワニスは、その総重量に対して、0.1重量%~5.0重量%、好ましくは1重量%~4重量%、より好ましくは1.5重量%~3.5重量%、の1以上の殺菌剤を含みうる。
【0075】
セキュリティ文書
上述したように、本発明に従う該ワニスは、比較的頻繁に取り扱われることを意図されたセキュリティ文書の表面上に、保護コーティング、特に抗微生物コーティング、を形成するのにまさに特に好適である。
【0076】
本発明の意味において、「比較的頻繁に取り扱われることを意図されたセキュリティ文書」は、同一の個人又は少なくとも2人の異なる個人によって、少なくとも2回手動で取り扱われる基材である。手動での取り扱いは、少なくとも1回の接触、例えば、片手の少なくとも一部によって掴むこと、から成りうる。更に、本発明に従って検討されるセキュリティ文書は、周囲雰囲気における使用を意図されており、液体培地における使用を意図されていない。
【0077】
本発明に従う、比較的頻繁に取り扱われることを意図されたセキュリティ文書は、特に、当業者によって既知の製紙用繊維、例えばセルロース繊維(特に綿繊維)及び/又はセルロース系以外の天然有機繊維、及び/又は合成繊維、例えばポリエステル繊維又はポリアミド繊維、及び/又は任意的に鉱物繊維、例えばガラス繊維、に基づきうる。
【0078】
一つの実施態様に従うと、該セキュリティ文書は、材料、特にセルロース繊維、特に紙、に基づく。
【0079】
別の実施態様に従うと、該セキュリティ文書は、セルロース系以外の天然有機繊維に基づく。
【0080】
また別の実施態様に従うと、該セキュリティ文書は、プラスチック材料、特に合成繊維又はプラスチックシート、に基づく。
【0081】
該セキュリティ文書はまた、プラスチック膜、特に、ポリエチレン又はポリプロピレンベースの2軸延伸フィルム、でありうる。該セキュリティ文書は、例えば飽和ポリエステル、例えばポリ(エチレンテレフタレート)、でありうる。該セキュリティ文書はまた、ポリカーボネート又はポリ塩化ビニル(PVC)の膜でありうる。
【0082】
該セキュリティ文書はまた、多層、特にラミネート加工された又は貼り合わせ加工された多層、でありうる。
【0083】
好ましい実施態様に従うと、本発明に従うセキュリティ文書は、上記シートの認証を可能にする少なくとも1つのセキュリティ要素を組み込んでいる。
【0084】
特に、上記セキュリティ要素は、視覚的デバイス、特に、OVDと呼ばれる光学可変デバイス、ホログラム、レンチキュラーデバイス、干渉効果を有する要素、特に玉虫色の要素、液晶、磁気配向可能な効果顔料及び多層干渉構造、から選択される。これらの光学可変デバイスは、該文書に組み込まれているセキュリティスレッド上、又は該文書上に取り付けられた若しくは印刷されたストリップ若しくはパッチ上、に存在しうる。
【0085】
別の視覚的なセキュリティ要素として、本発明者等はまた、紙幣製造プロセス期間中に生産される透かしに言及しうる。
【0086】
特に、上記セキュリティ要素は、UV下又はIR下で検出可能な、いわゆる発光要素から選択されうるものであり、これらの発光要素は、粒子、Fibrettes、タグ、該セキュリティ文書に取り付けられた又は印刷されたストリップ又はパッチのセキュリティスレッドの形態でありうる。
【0087】
特に、上記セキュリティ要素は、自動的に、特に光学的に又は磁気的に、検出可能な要素から選択されうるものであり、これらの検出可能な要素は、繊維基材に又は視覚的なセキュリティ要素若しくは発光セキュリティ要素に組み込まれている、マーカ又はタガントと一般に呼ばれている。
【0088】
本発明に従うセキュリティ文書はまた、セキュリティシートに対して識別及びトレーサビリティーの機能を供給する、RFIDと呼ばれる、無線周波数識別デバイスを含みうる。
【0089】
従って、本発明に従う該セキュリティ文書は、パスポート、紙幣、身分証明書、運転免許証、アクセスカード、ポイントカード(loyalty card)、コピーカード(photocopying card)、食堂カード(canteen card)、ゲーム用カード(playing card)、収集カード(collection card)、支払手段、特に支払カード、でありうる。
【0090】
有利には、本発明に従って検討される該セキュリティ文書は、セキュリティシート、特に印刷されたセキュリティシート、であり、該セキュリティシートは、該シートの認証を可能にする少なくとも1つのセキュリティ要素を組み込んでおり、該セキュリティ文書は好ましくは紙幣である。
【0091】
本発明に従う該セキュリティ文書は、その1以上の外面のうちの1つの全部又は一部が、本発明に従う硬化可能なワニスから形成された硬化されたワニス堆積物により、コーティングされている。
【0092】
特に、該セキュリティ文書は、その総重量に対して、該ワニスに存在する酸化状態ゼロの金属に由来する金属を0.25ppm~3.1ppm含みうる。該セキュリティ文書はまた、その総重量に対して、100ppm~1200ppmのIPBCを含みうる。
【0093】
より特には、本発明に従う該セキュリティ文書は、該セキュリティ文書の1以上の面のうちの少なくとも1つにおいて、本発明に従う硬化可能なワニスから形成された硬化されたワニス膜により表面処理されている。
【0094】
この目的の為に、該セキュリティ文書面は、好ましくは膜の形態における、硬化可能なワニスの堆積物を形成する為に効果的な条件下で、本発明に従う硬化可能なワニスと接触させられ、このようにして形成された該堆積物は、上記ワニスを硬化させる為に照射に曝露される。
【0095】
該ワニスと該文書の処理されるべき表面との接触は、処理される該文書の該表面の少なくとも一部上にワニスが堆積させられていることを示す。ワニスのこの堆積物の形成は、通常の条件に従って実行される。堆積の可能な手法の例示として、本発明者等は、特に印刷プロセス、特にフレキソ印刷、グラビア印刷、若しくはセリグラフ、吹付けによるもの、ブラシによる施与によるもの、又は任意の他のコーティングプロセスによるもの、に言及しうる。
【0096】
該ワニスは、該硬化可能なワニスを乾燥させることによって硬化される。
【0097】
この乾燥は、好適なランプを使用した、赤外線又はUV照射への曝露によって実行されうる。
【0098】
該堆積物は、約0.5~約5g/m、特に1.5~2.5g/m、又は更には約1.5~約2g/m、の硬化可能なワニスの施与によって形成されうる。
【0099】
以下に与えられている1以上の例から明らかなように、ワニス膜は有利には、該ワニス膜の外観又はその耐久性強化特性を変化させずに、対応するセキュリティ文書に、抗バクテリア特性、抗真菌特性及び抗ウイルス特性を賦与することを可能にする。
【0100】
抗微生物活性は、材料及び方法と以下に題されたセクションにおいて詳述されている、抗真菌特性、抗酵母特性、抗バクテリア特性及び抗ウイルス特性の試験によって特に評価されうる。
【0101】
従って、本発明に従う硬化可能なワニスに由来する硬化されたワニスによりコーティングされた紙幣は、未処理の紙幣の汚損に対する耐性と比較して、汚損に対する強化された耐性を持つ。
【0102】
本発明に従うワニスの使用は、セキュリティ文書、特に紙幣、の汚損に対する耐性をまさに特に含むバリア特性を改善することを可能にし、すなわち、この使用は、汚れの形成及び/又は堆積を特に防止し又は減少させうる。
【0103】
汚損に対する耐性をまさに特に含む、該バリア特性は、材料及び方法セクションにおいて詳述されているCobb試験、フリッチェ(Fritsch)試験及びキット(Kit)試験によって評価されることができる。
【0104】
以下に与えられている1以上の実施例及び図は、例示の目的の為に提示されており、本発明の範囲を限定しない。
【0105】
材料及び方法
情報担体は、綿繊維ベースの紙幣用の紙基材(=「ベラム」)である。
【0106】
ワニス処理動作
ワニス処理動作は、一つの面上で艶出しされた(すなわち、銅版印刷プロセスによって生産されたインクレスドライスタンプにより提供された)ベラム紙基材(綿100%)に対して、インラインUV乾燥ユニットを備えた、グループ1のフレキソ印刷機により、レクト/バーソ(R°/V°)で実行される。特に明記しない限り、6cm/mのアニロックス値、及びソリッドトーンを有するフレキソ印刷プレートが、フレキソ印刷の為に使用される。
【0107】
該アニロックス値は、「アニロックスシリンダー」と呼ばれるフレキソ印刷シリンダーが該フレキソ印刷プレートへ転送することができるインク又はワニスの表面体積に対応する。
【0108】
抗真菌特性の試験
抗真菌特性は、黒かび病菌(Aspergillus niger van Thiegem)(DSM 1957)を用いた繊維標準AATCC-30試験3に従って、並びに10個の菌株の混合物及び7日間及び/又は14日間の接触時間を用いた標準AFNOR NFX41517に従って、静真菌制御によって特徴付けられる。
【0109】
抗酵母特性の試験
抗酵母特性は、カンジダアルビカンスATCC10231を用いる標準NF ISO 13629-2:2014に従った制御によって特徴付けられる。
【0110】
抗バクテリア特性の試験
抗バクテリア特性は、グラム陰性菌を代表する大腸菌(ATCC 8739)菌株と、グラム陽性菌を代表する黄色ブドウ球菌(ATCC 6538)菌株とを用いる、標準NF EN ISO 20743:2013-繊維、繊維製品の抗バクテリア活性の決定、転移方法に従った抗バクテリア制御によって特徴付けられる。
【0111】
抗ウイルス特性の試験
特に明記しない限り、抗ウイルス特性は、コロナウイルスOC43(ATCC VR-1558)菌株を用いる、5時間の接触時間を有する標準ASTM 1053-97に従った抗ウイルス制御によって特徴付けられる。
【0112】
他のウイルス菌株、特にインフルエンザA H1N1(ATCC VR1469)又はコロナウイルスHcoV-229、が使用されうる。
【0113】
バリア特性を評価する為の試験
バリア特性は、以下に説明されている3つの試験によって特徴付けられる。
【0114】
Cobb:標準ISO 535:2014に従って実行されるCobb試験は、サンプルの耐水性を特徴付けることを可能にする。
【0115】
Fritsch:汚損に対する耐性は、いわゆる「乾燥土壌」試験(Fritsch試験)に従って試験された。それは、小さなガラスビーズが、砂、ピート、活性炭、小麦粉、及びモノオレイン酸グリセリン(皮脂に存在する脂肪)に基づいた汚損組成物を、紙の試験片上に広げ、ちりばめる振動装置(Fritsch企業からの「Analysette 3 Pro」)である。該試験は15分を要する。開始時に決定される、特に印刷がされていない、ゾーンの輝度は、該汚損組成物への曝露の前及び後で、数回測定される。取得された差異、すなわちΔL*は、紙幣への汚れの付着を特徴付けることを可能にする。すなわち、その値が低いほど、乾燥汚損に対する耐性は良好である。
【0116】
試験キット:標準TAPPI T559 CM-12に従って準備された試験キットは、サンプルの耐油性を評価することを可能にする。
【0117】
光沢を含む印刷複製の試験
光沢は、標準ISO 2813に従って、60°の角度で測定される。
【0118】
演色試験
色(L*、a*及びb*)は、D65光源及び10°の角度を用いて、標準NF EN ISO/CIE 11664-4に従って測定される。
【0119】
実施例1
カチオンUVワニス(約60秒 DIN4の粘度)の組成物は、企業Sicpaによって参照番号889 368の下で販売されている基準カチオンUVワニス(以下「ワニスV1」)が99.7%と、企業Thomson Research Associates Inc.からのUltrafresh CA16が0.3%とから準備される。
【0120】
この組成物は、一つの面(=TD 1面)がラミネート加工された、ベラムタイプの基材上で試験される。
【0121】
艶出しされた面=レクト(R°)及び艶出しされていない面=バーソ(V°)。
【0122】
比較の目的の為に、ワニスV1(100%)も試験される。
【0123】
2つのワニスは、6cm/mのアニロックスにより施与される。
【0124】
形成された1以上のコーティングは、水、汚れ及び油に対するそれらの耐性に関して、材料及び方法セクションにおいて説明されているプロトコルに従って試験される。
【0125】
結果が、下記の表1に示されている。
【0126】
【表1】
【0127】
これらの結果は、殺生物剤を追加することが、有利には、水、汚れ及び油に対する耐性の特性に対して有意な影響を有しないことを示す。
【0128】
実施例2
Fungitrolを付加的に組み込んだ、本発明に従う組成物の準備
以下の配合のワニス
98.7%のワニスV1
1%のFungitrol C450(ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル、すなわちIPBC)
0.3%のUltrafresh CA16
が、以下に詳述されているプロトコルに従って準備される。
【0129】
1kgの最終製品に対して:ビーカ内で、ドラフト中で、10gのFungitrol C450を987gのワニスV1に組み込む。使用されるビーカの大きさに好適な分散ディスクを備える、実験室分散機(例えば、Dispermillによって製作された分散機、モデルVango 100)を用いて、1000rpmの速度で15分間、全体を混ぜる。次に、この混合物に、3gのUltrafresh CA 16を組み込み、Fungitrolと同じ条件(1000rpm - 15分間)で分散機により全体を再度かき混ぜる。このようにして取得されたワニスを、使用前に気泡が消えるまで、放置する。
【0130】
実施例3
実施例2による組成物の施与、及び形成されたワニスの汚損に対する耐性を含む、殺生物特性及びバリア特性の特徴付け
検討されるワニス(実施例2からの、本発明に従うワニス、及びFungitrol又はUltrafresh無しの対照ワニス)は、6cm/mのアニロックスにより、実施例1と同じ基材上に施与される。
【0131】
下記の表2及び表3は、該材料及び方法セクションにおいて詳述されている該プロトコルに従って試験された抗真菌特性を報告する。サンプルの各面(レクト及びバーソ)に対して4つの測定、すなわち、一つのサンプルにつき8つの測定、が実行される。
【0132】
1以上のボックスは、以下のように読み取られる。
0:発生無し
1:真菌発生の痕跡
2:わずかな発生(試験片の表面の10~30%)
3:中程度の発生(試験片の表面の30~60%)
4:強度の発生(試験片の表面の>60%)
【0133】
【表2】
【0134】
従って、対照ワニスが抗真菌保護を提供しないこと、及び、反対に、本発明に従うワニスが実際に抗真菌性であることが分かる。それ故に、殺菌剤は、提案された配合において、その活性を維持する。
【0135】
【表3】
【0136】
この試験は、該対照ワニスが抗真菌特性を提供しないことを確かめるものである。本発明に従う該ワニスは、真菌発生の痕跡のみを有する良好な結果を7日後に与える。14日後にも、結果は、該対照ワニスと比べて改善されている。
【0137】
以下の表4は、該材料及び方法セクションにおいて詳述されている該プロトコルに従って試験された抗バクテリア特性を提示する。
【0138】
【表4】
【0139】
本発明に従う該ワニスを有する基材のみが著しい殺バクテリア活性を発揮することが分かる。実際に、ワニス未処理の基材は、保護を与えず、又は殆ど与えず、対照ワニス基材は、中程度の静バクテリア保護を発揮する。それ故に、処理は、効果的な抗バクテリア保護を与えることを可能にする。
【0140】
以下の表5は、該対照ワニスと比較した、本発明に従う該ワニスの汚損に対する耐性を含むバリア特性に関して報告する。
【0141】
該バリア特性は、該材料及び方法セクションにおいて詳述されている該プロトコルに従って試験される。
【0142】
【表5】
【0143】
該ワニスの該特性(水、汚れ及び油に対する耐性)は、Fungitrol及びUltrafreshを追加することによって劣化されない。実際に、本発明に従うワニスについての結果は、該対照ワニスについての結果と同等であり、又は該対照ワニスについての結果よりもわずかに良好でさえある。
【0144】
以下の測定がまた、本発明に従う該ワニスが、該ワニスの光沢を含む、紙幣の印刷複製(及び結果的に、ワニス処理された紙幣)を変化させないことを確認する為に実行された。
【0145】
光沢の測定の結果が、下記の表6に示されている。
【0146】
【表6】
【0147】
該対照ワニスと本発明に従う該ワニスとの間の差異は、僅かであり、且つ該標準偏差の観点から有意でない。それ故に、処理は、該光沢に影響を及ぼさないという利点も有する。
【0148】
以下の測定も、本発明に従う該ワニスが演色を変化させないことを確認する為に実行された。測定結果は、下記の表7に示されている。
【0149】
【表7】
【0150】
ワニスV1を有する紙幣に関連する色の変化は、本発明に従う該ワニスにおいては非常に僅かであり、且つ該標準偏差の観点から有意でない。それ故に、処理はまた、該色に影響を及ぼさないという利点を有する。
【0151】
実施例4
本発明に従う組成物の準備
以下のような配合F1のワニス
97.7%のワニスV1
2%のFungitrol C450
0.3%のUltrafresh CA16
が、実施例2において詳述されている該プロトコルに従って準備され、この場合において、20gのFungitrol C450が、977gのワニスV1に組み込まれる。
【0152】
実施例5:実施例4による組成物の施与、及び形成されたワニスの汚損に対する耐性を含む、殺生物特性及びバリア特性の特徴付け
検討されるワニス(実施例4からの、本発明に従うワニスF1、及び対照ワニス)は、6cm/mのアニロックスにより、実施例1と同じ基材上に施与される。
【0153】
下記の表8及び表9は、該材料及び方法セクションにおいて詳述されている該プロトコルに従って、実施例3におけるように試験された抗真菌特性を報告する。
【0154】
【表8】
【0155】
実施例3と同様に、該対照ワニスは、本発明に従う該ワニスとは逆に、抗真菌保護を提供しない。IPBCの量を増加させることは、該抑制ゾーンの大きさを増加させることが分かる。
【0156】
【表9】
【0157】
実施例3と比較して、このワニスF1についての結果は、そのIPBC含有量がより低いワニスと比べて明らかに改善されており、7日後の測定点のいずれにおいても、及び14日後の8つの測定点のうちの6つにおいて、真菌の増殖が無い。
【0158】
下記の表10は、抗酵母特性に関して報告する:
【0159】
【表10】
【0160】
本発明に従う該ワニスは、24時間後に100%の死亡率を有する殺酵母特性を該サンプルに与える。
【0161】
下記の表11は、該材料及び方法セクションにおいて詳述されている該プロトコルに従って試験された抗バクテリア特性に関して報告する。
【0162】
【表11】
【0163】
本発明に従うワニスを有する該基材が著しい殺バクテリア活性を発揮することが分かる。それ故に、該処理は、効果的な抗バクテリア保護を与えることを可能にする。
【0164】
下記の表12は、該表内で基準として示されているワニス未処理サンプルと比べた、本発明に従う該ワニスの抗ウイルス特性及び該対照ワニスの抗ウイルス特性に関して報告する。
【0165】
T0~T5時間の減少割合は、5時間の接触時間後のウイルス量の減少割合に対応する。
【0166】
「抗ウイルス活性対基準」行は、基準と比べて検討された、サンプルのT0~T5時間のウイルス量の減少を、対数で表現したものに対応する。
【0167】
抗ウイルス特性は、該材料及び方法セクションにおいて詳述されている該プロトコルに従って試験される。
【0168】
【表12】
【0169】
本発明に従う該ワニスは、100%にほぼ等しい減少割合を有する殺ウイルス性として検討されることができる活性を有する。該対照ワニスと比べた利得(gain)は、220倍多いウイルス量の減少により、有意である。
【0170】
下記の表13は、該対照ワニスと比較した、本発明に従う該ワニスの汚損(soiling)に対する耐性を含むバリア特性に関して報告する。
【0171】
該バリア特性は、該材料及び方法セクションにおいて詳述されている該プロトコルに従って試験される。
【0172】
【表13】
【0173】
該ワニスの該特性(水、汚れ及び油に対する耐性)は、Fungitrol及びUltrafreshを追加することによって劣化されない。実際に、本発明に従う該ワニスについての結果は、該対照ワニスについての結果と非常に近い。観察された僅かな差異は、該標準偏差の観点から有意でない。
【0174】
実施例6
以下の表14において詳述されているワニスの様々な配合は、実施例2において説明されている該プロトコルに従って準備される。含有量は、該ワニスにおける重量パーセントで表現されている。
【0175】
検討される該ワニスは、該材料及び方法セクションにおいて詳述される該ワニス処理プロトコルに従って、実施例1と同じ基材上に施与される。
【0176】
該抗ウイルス活性は、該材料及び方法セクションにおいて詳述されている該プロトコルに従って試験され、下記の表14において報告されている。実施例5において詳述されている、ワニスF1についての結果がまた、比較の為に含まれている。
【0177】
【表14】
【0178】
従って、担持形態における酸化状態ゼロの銀とIPBCとの両方を含む、ワニスF1及びワニスF4は、対照ワニスの抗ウイルス活性よりも大きな抗ウイルス活性を発揮することが分かる。これらのワニスF1及びワニスF4はまた、該担持形態における銀を欠くワニスF5の抗ウイルス活性よりも大きな抗ウイルス活性を発揮する。
【0179】
実施例7
下記の表15において詳述されている様々なワニス配合は、実施例2において説明されている該プロトコルに従って準備される。含有量は、該ワニスにおける重量パーセントで表現されている。
【0180】
該情報担体はまた、先行する1以上の実施例に対して使用された紙基材に関連する、綿繊維ベースの紙幣用の紙基材である。
【0181】
検討される該ワニスは、この基材上に、該材料及び方法セクションにおいて詳述されている該ワニス処理プロトコルに従って、7cm/mのアニロックスにより施与される。
【0182】
次に、該抗ウイルス活性が、該材料及び方法セクションにおいて詳述されている該プロトコルに従って試験される。
【0183】
【表15】
【0184】
ワニスF1とワニスF2との比較は、該ワニス内に担持されており、それ故に該基材上にまた担持されている銀の含有量が増加した場合、該ウイルス減少及び該抗ウイルス活性が減少することを示す。
【0185】
実施例8:プラスチック基材上への実施例4による該組成物の施与、及び形成された該ワニスの殺生物特性の特徴付け
ワニスF1’は、実施例2において説明されている該プロトコルに従って、実施例4において説明されているワニスF1と同様に準備され、ワニスV1は、企業Sicpaによって参照番号889 354の下で商品化されているワニス(以下「ワニスV1’」)と置換される。該含有量は、該ワニスにおける重量パーセントで表現されている。
【0186】
該情報担体は、企業CCL Secureによって販売されている、紙幣用の「Guardian」プラスチック基材である。
【0187】
下記の表16に示されている該抗ウイルス活性は、標準ISO 21702:2019(プラスチック表面及び他の非多孔性表面における抗ウイルス活性の測定)に従った該抗ウイルス制御によって特徴付けられている。
【0188】
【表16】
【0189】
該結果を考慮すると、ワニスF1の抗ウイルス保護がプラスチック基材上で確認される。
【国際調査報告】