(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-22
(54)【発明の名称】レリーフ効果を有する光学的構造
(51)【国際特許分類】
B42D 25/324 20140101AFI20230215BHJP
B42D 25/364 20140101ALI20230215BHJP
B42D 25/391 20140101ALI20230215BHJP
【FI】
B42D25/324
B42D25/364
B42D25/391
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537875
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-07-13
(86)【国際出願番号】 EP2020087035
(87)【国際公開番号】W WO2021123177
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522242351
【氏名又は名称】オベルチュール フィドゥキエール サス
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】ロセ,アンリ
(72)【発明者】
【氏名】ディエテマン,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ママン,オーレリー
【テーマコード(参考)】
2C005
【Fターム(参考)】
2C005HA02
2C005HB02
2C005HB03
2C005HB10
2C005HB12
2C005HB13
2C005JB11
2C005KA02
(57)【要約】
本発明は、レリーフ効果を有する光学的構造(5)であって、液晶を整列させる為に好適な支持体(7)と、前記支持体と接触しており、前記支持体を部分的に覆う少なくとも1つのパターン(11)の形態における物質の堆積物(9)と、ここで、前記物質がインク又はワニスである、並びに、前記支持体及び上記パターンを少なくとも部分的に覆い且つ前記支持体と接触しているところの液晶の層(13)とを備えている、前記光学的構造(5)に関する。
【選択図】
図15a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レリーフ効果を有する光学的構造(5)であって、
液晶を整列させる為に好適な支持体(7)と、
前記支持体と接触しており、前記支持体を部分的に覆う少なくとも1つのパターン(11)の形態における物質の堆積物(9)と、ここで、前記物質がインク又はワニスである、並びに、
前記支持体及び上記パターンを少なくとも部分的に覆い且つ前記支持体と接触しているところの液晶の層(13)と
を備えている、前記光学的構造(5)。
【請求項2】
前記ワニスが、可視領域において透明且つ無色である、請求項1に記載の構造。
【請求項3】
前記物質がインクである、請求項1に記載の構造。
【請求項4】
前記パターンが、ソリッドカラーの形態で堆積されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の構造。
【請求項5】
物質の乾燥重量が、1.5g/m
2以下、好ましくは1g/m
2以下、更に良好には0.1g/m
2~0.5g/m
2、である、請求項1~4のいずれか1項に記載の構造。
【請求項6】
前記パターンの輪郭によって範囲が定められ、少なくとも部分的に前記パターンの周りに延びている移行ゾーン内よりも、前記支持体を直接覆っているゾーン内において、前記液晶がより低いアライメント品質を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の構造。
【請求項7】
前記支持体が透明又は半透明である、請求項1~6のいずれか1項に記載の構造。
【請求項8】
前記支持体が、軸方向に延伸された、好ましくは二重延伸された、プラスチック材料からなるフィルムを備えており、ここで、前記フィルムが好ましくはPETからなる、請求項1~7のいずれか1項に記載の構造。
【請求項9】
前記支持体が、前記フィルムの少なくとも1つの面を覆い、前記フィルム及び前記液晶層と接触しているところの接着プライマーの層を備えている、請求項8に記載の構造。
【請求項10】
前記液晶層が前記堆積物と接触している、請求項1~9のいずれか1項に記載の構造。
【請求項11】
前記物質が、ネマチック液晶を含むインクであり、前記支持体を少なくとも部分的に覆う前記液晶層が、ゴニオクロマティック効果を有するコレステリック液晶を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の構造。
【請求項12】
第1の観察構成に従って偏光で観察された場合、前記パターンとコレステリック液晶の層とが重畳されているゾーン(19)が、第1の外観を有し、前記コレステリック液晶の層が前記支持体と接触しているゾーン(21)が、前記第1の外観と異なる第2の外観を有するようになっている、請求項11に記載の構造。
【請求項13】
前記パターンと前記コレステリック液晶の層とが重畳されている前記ゾーン(19)と、前記コレステリック液晶の層が前記支持体と接触している前記ゾーン(21)とが、第2の観察構成に従って各々外観を変化させ、互いに異なる外観を有し、前記第1の観察構成と前記第2の観察構成との間の移行が好ましくは、前記支持体に対して垂直な軸を中心とした、好ましくは90°の角度にわたる、前記光学的構造の回転によって行われる、請求項12に記載の構造。
【請求項14】
前記第1の観察構成における、前記パターンと前記コレステリック液晶の層とが重畳されている前記ゾーン(19)の前記外観が、前記第2の観察構成における、前記コレステリック液晶の層が前記支持体と接触している前記ゾーン(21)の前記外観と同一であり、その逆も同様である、請求項13に記載の構造。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の光学的構造を少なくとも1つ備えているセキュリティ要素(49)、とりわけ機密保護ワイヤ、機密保護箔、機密保護フィルム、又は機密保護パッチの中から選択されるセキュリティ要素(49)、であって、前記セキュリティ要素が任意的に、少なくとも1つの追加的な機密保護構造、とりわけ第1、第2、又は第3のレベルの機密保護構造の中から選択される少なくとも1つの追加的な機密保護構造を備えていてもよい、前記セキュリティ要素(49)。
【請求項16】
セキュア文書(45)であって、請求項1~10のいずれか1項に記載の光学的構造及び/又は請求項15に記載のセキュリティ要素を備えている、前記セキュア文書(45)。
【請求項17】
前記光学的構造が、前記文書の表及び裏において視認可能である、請求項16に記載の文書。
【請求項18】
前記文書が繊維質基材(47)を備えており、前記セキュリティ要素が前記繊維質基材の窓の中に配設されている、請求項16又は17に記載の文書。
【請求項19】
請求項1~14のいずれか1項に記載の光学的構造を製造する方法であって、前記物質が、前記支持体を部分的に覆う少なくとも1つのパターンを形成するように前記支持体上に堆積され、少なくとも1つの液晶の層が、前記支持体及び適切に形成された前記パターン上に堆積される、前記方法。
【請求項20】
前記物質の前記堆積が、前記支持体への印刷によって、とりわけ、インクジェット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、活版印刷、若しくはフレキソ印刷によって、行われ、及び/又は前記液晶の層が、インクジェット、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、若しくは活版印刷によって、前記支持体及び前記パターン上に堆積される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項15に記載のセキュリティ要素又は請求項16~18のいずれか1項に記載のセキュア文書を鑑定する為の方法であって、前記光学的構造が、少なくとも1つの観察方向において観察され、この観察から、レリーフ像の印象を与えながら前記パターンが現れるかどうかの判定が行われる、前記方法。
【請求項22】
前記光学的構造が、前記支持体の同じ側から少なくとも2つの異なる観察方向において観察され、観察の角度が変化したときに、前記パターンの外観の変化、とりわけ観察されるレリーフ効果と整合した外観の変化、が検出されることが図られる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
表における観察と裏における観察とがあり、それらの前記観察の間の前記レリーフの反転が検出されることが図られる、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記パターンとコレステリック液晶の層とが重畳されているゾーン(19)と、前記コレステリック液晶の層が前記支持体と接触しているゾーン(21)との間の外観の差を検出する為に、前記光学的構造がまた、偏光で観察される、請求項11~14のいずれか1項に従属する場合の請求項21~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記パターンと前記コレステリック液晶の層とが重畳されている前記ゾーン(19)、及び前記コレステリック液晶の層が前記支持体と接触している前記ゾーン(21)の外観の変化を検出する為に、前記光学的構造が、移動される、及び/又は、とりわけ前記支持体に対して垂直な軸を中心として、好ましくは90°の角度にわたり、回転され、外観の前記変化は更に、前記パターンと前記コレステリック液晶の層とが重畳されている前記ゾーン(19)の外観と、前記コレステリック液晶の層が前記支持体と接触している前記ゾーン(21)の外観とがまた、互いに異なるようなものである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記偏光が、LCD画面によって発される、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とりわけセキュア文書(secure documents)及び/又はセキュリティ要素(security elements)の為の、レリーフ効果(relief effect)を有する光学的構造に、及びそれを製造する為の方法に関する。
【0002】
より特には、本発明は、液晶を担持している光学的構造に関する。
【背景技術】
【0003】
液晶は、光学的構造、とりわけセキュリティ要素、において、それらのゴニオクロマティック(goniochromatic)性の為に広く使用されている。
【0004】
一般的に、該液晶は、事前に少なくとも1つの方向、更には2つの直角の方向に延伸された、慣用的にPETからなるポリマーフィルムと直接接触して堆積される。該フィルムの該延伸は該液晶の整列を促し、それにより、観察方向及び/又は照明方向の変化があった時に該光学的構造に色の変化の効果を与える。
【0005】
ゴニオクロマティック効果(goniochromatic effect)の視認性を強化する為に、一般的に黒色である、濃色の背景が、該液晶が適用されるのと反対側の支持体の面に配設される。
【0006】
本出願人の知る限り、そのようにして適用される該液晶は、現在、レリーフ効果を得る為には使用されておらず、ゴニオクロマティック効果のみを得ている。
【0007】
レリーフ効果を有する光学的構造は、例えば米国特許出願公開第2013/0288024(A1)号明細書から知られており、これは、浮彫り加工され、第2の層で覆われることができる第1の層で被覆された基材を備えており、該第1の層及び/又は該第2の層は、光学効果のある色素を含む。該浮彫り加工は、該色素の整列の光学的に検出可能な変化を誘発すると記載されており、それにより、浮彫り加工されたゾーンによって画定されるパターンの3D効果を強化する。
【0008】
欧州特許出願公開第2 886 343(A1)号明細書は、基材と、該基材上に形成されたプライマーと、該プライマー上に配設されたUV架橋可能な層と、を備えている光学的構造を記載している。該UV架橋可能な層は、液晶を含むことができ、浮彫り加工されており、それにより3次元の視覚的効果を得る。該架橋可能な層及び該プライマーによって形成される組立体は、防塵被膜によって包囲される。
【0009】
レリーフ効果は、印刷若しくは金属被覆若しくは脱金属プロセスによって形成される濃色の像の生成か、又はホログラフィック構造のいずれかによって得られる。
【0010】
濃色の像によって与えられるレリーフの印象は、その外観が観察の角度と共にごくわずかにでも変化しない限り、動的なものではない。ホログラフィック構造を用いる方が目を引くものとなるが、製造コストが比較的高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
その結果、生産するのが比較的平易且つ経済的でありながら、動的なレリーフ効果を得ることが可能な新しい光学的構造から利益を得る必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、この必要性に対処することを目的とし、レリーフ効果を有する光学的構造によってこれを達成し、該光学的構造は、
液晶を整列させる為に好適な支持体、
該支持体と接触しており、該支持体を部分的に覆う少なくとも1つのパターンの形態における物質の堆積物、並びに、
該支持体及び上記パターンを少なくとも部分的に覆い、該支持体と接触している、液晶の層と、を備えている。
【0013】
驚くべきことに、該支持体と該液晶の層との間に位置する該堆積物によって、レリーフの視覚的効果が得られることができる。この堆積物は、該パターンの輪郭によって範囲が定められ少なくとも部分的に該パターンの周りに延びている少なくとも1つの移行ゾーンを作り出し、該移行ゾーンは、少なくとも1つの観察方向及び/又は1つの照明方向に対して、該液晶が該堆積物上に重畳されている、とりわけ該堆積物と接触している、第1のゾーンよりも、及び、該液晶が該支持体と接触している、該第1のゾーンと別個の第2のゾーンよりも、暗く又は明るく見える。一方における該第1及び第2のゾーンと、該移行ゾーンとの間のコントラストの変動が、結果として、該光学的構造の観察者に対するレリーフの視覚的効果を生じさせる。
【0014】
該移行ゾーンの一部は、暗く、とりわけ無光沢に見え、該移行ゾーンの別の部分は、明るく見え、とりわけ鏡面状の光沢のある外観を有することができる。
【0015】
特に、該堆積物の第1の端部から反対側の該堆積物の第2の端部に向かって方向付けされている、その入射方向が該支持体に対して平行な成分を含む光放射によって、該光学的構造が照明された場合、該第2の端部と接触している該移行ゾーンの部分は、例えば該支持体に対して垂直な方向から観察された場合に、鏡面状の光沢のある外観を有することができ、その逆も同様である。該第1の端部と接触している該移行ゾーンの部分は、暗く見えることができる。
【0016】
得られる該レリーフ効果は、該観察方向が変化したとき及び/又は該照明方向が変化したときに、該外観、とりわけ該レリーフの印象、が変化する為、動的である。特に、該移行ゾーンの特定の領域は、該観察方向が変化したとき及び/又は該照明方向が変化したときに、無光沢且つ/又は暗い外観から、明るい且つ/又は光沢のある外観に変わることができる。
【0017】
該移行ゾーンは、1mm未満、とりわけ100μm~500μmの、幅を有することができる。それは、該パターンの外形によって画定される内側端部から、該レリーフ効果が観察されない該第2のゾーンまで延びている。該移行ゾーンの該幅は、該内側端部と、該内側端部に最も近い該第2のゾーンの部分との間で、該内側端部に対して垂直な方向に測定される最大値に相当する。
【0018】
該第1のゾーン及び該第2のゾーンは各々、それぞれ第2の観察方向に従う、及び/又は第2の照明方向に従うよりも、第1の観察方向に従う、及び/又は第1の照明方向に従う方が、暗く見えることができる。
【0019】
1つの観察方向に従うと、該第1のゾーン及び該第2のゾーンは暗く見えることができ、該伝送ゾーンは無光沢に見えることができ、別の観察方向に従うと、該第1のゾーン及び該第2のゾーンは明るく見えることができ、該移行ゾーンは鏡面状の光沢のある外観を有することができる。
【0020】
更に、該光学的構造は、ゴニオクロマティック性を有することができる。特に、該第1のゾーン、該第2のゾーンはそれぞれ、第1の観察方向に従う、及び/又は第1の照明方向に従うと、ある色に見えることができ、第2の観察方向に従う、及び/又は第2の照明方向に従うと、別の色に見えることができる。更に、該移行ゾーンは、それぞれ、該第1の観察方向及び/又は該第1の照明方向に従うと、暗く見えることができ、該第2の観察方向及び/又は該第2の照明方向に従うと、鏡面状の光沢のある外観を有することができる。
【0021】
該第1の観察方向に従って及び/又は該第1の照明方向に従って観察される場合、該第1のゾーン及び該第2のゾーンは、異なる色を有することができ、該第2の観察方向及び/又は該第2の照明方向に従って観察される場合、該第1のゾーン及び該第2のゾーンは、異なる色を有することができる。
【0022】
変形例として、該第1の観察方向に従って及び/又は該第1の照明方向に従って観察される場合、該第1のゾーン及び該第2のゾーンは、同じ色を有することができ、該第2の観察方向に従って及び/又は該第2の照明方向に従って観察される場合、該第1のゾーン及び該第2のゾーンは、異なる色を有することができる。
【0023】
変形例として、該第1の観察方向に従って及び/又は該第1の照明方向に従って観察される場合、該第1及び第2のゾーンと、該移行ゾーンとは、同じ色を有することができ、該第2の観察方向に従って及び/又は該第2の照明方向に従って観察される場合、該第1及び第2のゾーンと、該移行ゾーンとは、同じ色を有することができる。
【0024】
更に、該第1の観察方向に従って及び/また該第1の照明方向に従って観察される場合、該移行ゾーンの色は、該第1のゾーンの色及び/又は該第2のゾーンの色とは異なることができ、該第2の観察方向に従って及び/又は該第2の照明方向に従って観察される場合、該移行ゾーンの色は、該第1のゾーンの色及び/又は該第2のゾーンの色とは異なることができる。
【0025】
堆積物
該レリーフ効果は、該堆積物の厚みが小さいにも関わらず、本発明に従って得られる。
【0026】
好ましくは、該堆積物は、とりわけインク又はワニスの、印刷である。
【0027】
好ましくは、該レリーフの視覚的効果が比較的目立つように、該堆積物によって覆われる該支持体の面の面積に基づいて表される物質の乾燥重量は、1.5g/m2以下、好ましくは1g/m2以下、更により良好には0.1g/m2~0.5g/m2、である。
【0028】
該物質は、該物質の乾燥重量に基づいて表される重量パーセントとして、40%未満の液晶を含むことができる。該物質は、液晶を有さないこともありうる。
【0029】
該物質は、その重量に基づいて表される重量パーセントとして、40%未満の液晶を含むことができる。
【0030】
該物質は、インク又はワニスであることができる。
【0031】
該ワニス又は該インクは、可視領域において透明又は無色であることができる。よって、該堆積物は、透過光において裸眼で検出可能な不透明性を生じさせない。
【0032】
該ワニス又は該インクは、溶媒を含むことができる。該溶媒は、非水溶性であることができ、アルコール及び/又はポリオールを含むことができる。変形例として、該溶媒は水溶性である。
【0033】
該ワニス又は該インクは、放射による、とりわけUV放射による、照射下で硬化可能であることができる。
【0034】
該ワニス又は該インクは、インクジェット、フレキソ印刷、スクリーン印刷、又はグラビア印刷により、適用されることができる。
【0035】
該堆積物は、とりわけワニス又はインクの形態である場合、紫外線又は赤外線、特に近赤外線、の照明下で吸収性である又は励起されることができる成分を含むことができる。
【0036】
特に、該ワニス又は該インクは、可視領域において無色且つ透明であることができ、UV又はIR照明、好ましくはUV、下でのみ視認可能であることができる、発光成分、とりわけ蛍光成分、を含むことができ、該支持体は、透明又は半透明であることができる。よって、透過光で観察される場合、該光学的構造は、可視領域の発光体による照明下では観察者にとって例えば透明又は半透明に見え、該パターンは、該支持体から区別不可能であり、該パターンは、ルミネセンスを引き起こす発光体、とりわけUV中で発光する発光体、による照明下で明らかにされる。
【0037】
好ましくは、該物質はインクであり、それにより、インク印刷技術によるその堆積を容易にする。
【0038】
該インクは、ネマチック液晶を含むことができ、該支持体を少なくとも部分的に覆う該液晶の層は、ゴニオクロマティック効果を有するコレステリック液晶を含むことができる。有利には、該パターンは線形に分極され、該液晶の層は円形に分極される。よって、該レリーフ効果に加えて、別の光学効果が得られる。
【0039】
該構造が第1の観察構成に従って偏光で観察される場合、該パターンと該コレステリック液晶の層とが重畳されているゾーンは、第1の外観を有し、該コレステリック液晶の層が該支持体と接触しているゾーンは、該第1の外観と異なる第2の外観を有する。
【0040】
好ましくは、該外観は色である。
【0041】
更に、好ましくは、該パターンと該コレステリック液晶の層とが重畳されている該ゾーンと、該コレステリック液晶の層が該支持体と接触している該ゾーンとは、第2の観察構成に従って各々外観を変化させ、互いに異なる態様を有し、該第1の観察構成と該第2の観察構成との間の移行は好ましくは、該支持体に対して垂直な軸を中心とした、好ましくは90°の角度にわたる、該光学的構造の回転によって行われる。
【0042】
好ましくは、該第1の観察構成における、該パターンと該コレステリック液晶の層とが重畳されている該ゾーンの該外観は、該第2の観察構成における、該コレステリック液晶の層が該支持体と接触している該ゾーンの該外観と同一であり、その逆も同様である。
【0043】
該物質は着色されることができる。それは、該支持体の色と同じ色又は異なる色を有することができる。
【0044】
該インクは、黒色、好ましくは10%未満の色素濃度を有する色素性、であることができる。該インクは好ましくは、非水溶性溶媒を含み、インクジェット印刷によって該支持体に堆積されることが意図される。変形例として、それはフレキソ印刷法によって堆積されることもできる。
【0045】
該インクは着色されることができる。それは明るい色であることができる。それは、10より大きい、好ましくは15より大きい、更に良好には20より大きい、該支持体との飽和度差ΔCを有することができる。そのような飽和度差は、該観察者の注視を該移行ゾーンの方に集中させるものである。該飽和度差は、ISO 5631-1規格に従って定義される比色空間LCH内で測定される。
【0046】
好ましくは、該インクは、該インクの乾燥重量に基づいて表される重量パーセントとして、10%未満の、とりわけ着色された、色素を含む。好ましくは、該インクは色素性でない。非色素性インクは、結果として特に際立ったレリーフ効果を生じる。好ましくは、該インクは、その重量に基づいて表される重量パーセントとして、10%未満の、とりわけ着色された、色素を含む。
【0047】
好ましくは、該インクは、溶媒及び該溶媒中に溶解された着色剤を含む。
【0048】
該インクは、インクジェットプリンタを用いた印刷用のものであることができる。それは、とりわけ、インクジェットプリンタ用の黄色又はシアン色であることができる。
【0049】
該インクは、該インクの体積の60%~90%、更には65%~85%に相当することができる、水溶性基剤を含むことができる。それは更に、極性溶媒、例えばピロリドン-2、を含むことができる。該極性溶媒は、該インクの該体積の7.5%未満に相当することができる。それは、該インクの該体積の10%未満に相当することができる、可塑剤、例えばペンタール-1,5-ジオール、を含むことができる。それは、該インクの該体積の5%未満に相当することができる、無水硝酸マグネシウムも含むことができる。
【0050】
変形例として、該インクは、該インクの該体積の75%超に相当することができる、少なくとも1つのポリオール及び/又は1つのアルコールを含むことができる。
【0051】
該ポリオールは、例えば、2~32個の炭素原子、特に2~16個の炭素原子、とりわけ3~8個の炭素原子、を含む。「ポリオール」とは、少なくとも2つの遊離ヒドロキシ基を含む任意の有機分子と理解されるべきである。特に、該ポリオールは、エチレングリコール、ペンタエリトリトール、トリメチロールプロパン、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ブチレングリコール、イソプレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ジグリセロール、及びそれらの混合物、の中から選択されることができる。好ましくは、該ポリオールはグリセリンである。
【0052】
該アルコールは、低級C1~C6アルカノールの中から、特にエタノール、プロパノール、及びイソプロパノールの中から、選択されることができる。好ましくは、該アルコールはエタノールである。
【0053】
該インクは界面活性剤を含むことができる。該界面活性剤は、単独で又は混合物において使用される、両性、アニオン系、カチオン系、又は非イオン系界面活性剤の中から選択されることができる。それは、場合によって、補助界面活性剤と併せて使用されることができる。該インクがエマルジョンである場合、該界面活性剤は、得られるべき該エマルジョン(油中水又は水中油)に従って適切に選択される。好ましくは、該界面活性剤は非イオン系界面活性剤である。特に引用されることができる非イオン系界面活性剤の例は、テトラメチル-2,4,7,9デシン-5ジオール-4,7、及び好ましくは、Surfynol 440の名称で販売される、3.5分子の酸化エチレンを伴うテトラメチル-2,4,7,9デシン-5ジオール-4,7オキシエチレン、のオキシエチレン誘導体を包含する。
【0054】
それは、該移行ゾーンにおける該液晶の整列に変更を加える為の脂肪分の多い物質を含むことができる。「脂肪」とは、周囲温度(25℃)及び大気圧力(760mmHg)において水に不溶性である、すなわち、5%未満、好ましくは1%未満、又は更に好ましくは0.1%未満、の溶解度を有する、有機化合物を意味するものと理解される。該脂肪は、低級C6~C16アルカン、動物、野菜又は合成由来の非シリコンオイル、鉱物又は合成由来の炭化水素、脂肪族アルコール、脂肪酸、脂肪酸及び/又は脂肪族アルコールのエステル、非シリコンワックス、並びにシリコーンの中から選択されることができる。
【0055】
更に、該インクは、ISO304規格に従って測定された、28mN/m~32mN/mの表面張力を呈することができる。
【0056】
例えば、該物質は、以下から選択される。
圧電技術によるインクジェット印刷向けにLIOJET AP KB027-Kの品番(reference)でToyo Ink America社によって販売される黒色インク、
HP社によって販売されるHP Deskjet6540プリンタで印刷する為にHP343の品番でHP社によって販売される黄色インク、
HP社によって販売されるHP70光沢エンハンサーワニス、
HP社によって販売されるEnvy 5030プリンタで印刷する為にHP304の品番でHP社によって販売される黄色インク、
HP社によって販売されるT610デザインジェットプリンタで印刷する為にHP72の品番でHP社によって販売される黄色インク、
HP社によって販売されるGT5810 Deskjetプリンタで印刷する為にGT52の品番でHP社によって販売される黄色インク、
Lumogen Hide N700の品番でBASF社によって販売されるネマチック液晶インク。
【0057】
該堆積物は、非不透明、特に透明又は半透明、であることができる。
【0058】
該堆積物は、ソリッドカラー(solid color)の形態であることができる。よって、該光学的構造を製造する為の該方法が簡略化される。ソリッドカラーは、例えば印刷により、とりわけインクジェット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、又はグラビア印刷により、該支持体上に平易に作製されることができる。よって、該堆積物は、ハーフトーンのラスタ像の形態以外であることができる。
【0059】
該堆積物は好ましくは、インクジェット印刷によって作製されることができる。この方法は、とりわけ以下を可能にする。
表面積単位当たり少量の物質の堆積物、及び/又は
印刷フォームを全く必要としない、該パターンのカスタマイズ。
【0060】
該パターンは、連続的又は非連続的であることができる。それは、互いから間隔を空けたパターンの部分によって形成されることができる。隣り合うパターンの部分同士は、物質のないゾーンによって、好ましくは100μmより大きい距離だけ、間隔が空けられることができる。よって、少なくとも1つの移行ゾーンが該ゾーンに形成されて、間隔が空けられたパターンの部分同士を分離することができる。
【0061】
該パターン又は該パターンの少なくとも一部は、物質のないゾーンを囲むことができる。好ましくは、上記囲まれるゾーンの最大の寸法は、100μmより大きい。
【0062】
該パターンは、少なくとも1つの英数字記号の形態を取ることができ、又はロゴ、人、動物、風景、植物、記念碑、テクスチャ、若しくは物体を表すことができる。それは、1以上の幾何学的図形、例えば種々の大きさの多角形、楕円形、又は円盤、を表すことができる。それは連続番号を構成することができる。同じパターンが、同じ縮尺又は異なる縮尺で、該文書上の別の場所に位置することができ、例えば、別のセキュリティ要素上に存在する、又は機密保護される文書の基材上に印刷の形態で位置する。
【0063】
該パターンは、0.5~30mmの最大寸法を有することができる。
【0064】
該パターンは、該支持体に沿って規則的な間隔で繰り返されることができる。
【0065】
支持体
該支持体は、該液晶の整列に適している。特に、それは、該液晶の整列に適した表面テクスチャを有することができる。
【0066】
好ましくは、該支持体は、軸方向に、好ましくは二軸方向に、延伸されたフィルムを備える。
【0067】
該フィルムは、ポリエステル、とりわけ、PETとも呼ばれるポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びそれらの混合物、の中から選択されるプラスチック材料で作製される。該フィルムは好ましくは、PETからなる。
【0068】
該延伸は、該液晶の整列を促す。
【0069】
該フィルムは、6μm~500μmの厚みを有することができる。例えば、それは、12μm~50μm、例えばおよそ19μm、の厚みを有する。
【0070】
該支持体は、該フィルムの一方の面を、好ましくは完全に、覆い、該フィルム及び該液晶の層と接触しているところの、プライマー、とりわけ接着プライマー、の層も備えていることができる。該接着プライマーは、該フィルムがその本質的な構造によって該液晶の整列に寄与するのを妨げることなしに、該支持体への該液晶の接着性を向上させる。
【0071】
該接着プライマーの厚みは好ましくは、1000nm未満、好ましくは100nm未満、である。よって、基礎となる該フィルムの構造は有効な状態を保ち、該光学的構造の製造中に該液晶の整列を促す。
【0072】
該接着プライマーは好ましくは、透明である。
【0073】
該接着プライマーは、好ましくはポリエチレン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、及びポリアクリル酸、それらのコポリマーの1つ、の中から選択される、ポリオレフィンを含むことができる。好ましくは、それはポリアクリル酸を含む。
【0074】
該支持体は、例えば、TPL社によって販売されるSarafil(商標)S56C及びSarafil(商標)SF150ポリエステル支持体、Technifilm社によって販売される透明ポリエステル支持体、Toray社によって販売されるLumirror(商標)系列から選択される透明ポリエステル支持体、及びMitsubishi社によって販売される透明ポリエステル支持体の中から選択される。
【0075】
好ましくは、該支持体は、該支持体と接触している該液晶によって形成される層の、ASTM D4039-09規格に従って測定された反射ヘイズが、50より大きい、とりわけ50~100、好ましくは60より大きい、とりわけ60~90となるように、選択されることができる。
【0076】
ASTM D4039-09及びISO13803規格に従って測定された該「反射ヘイズ」は、該液晶の層の反射散乱ヘイズ効果を特徴付ける。反射散乱ヘイズは、鏡面方向への反射に対応する主反射と共に、低強度の光散乱に関係する乳白色の外観を生じさせる。測定は、ASTM D4039-09(2015年に再承認)又はISO13803:2014規格に従って行われることができる。それにより、より拡張された角度範囲にわたる該ゴニオクロマティック効果の視認性が可能となり、その結果、より拡張された角度範囲にわたる該背景のマスキングが可能となる。よって、該光学的構造は、基材に形成された貫通窓の中に配設されることができる。よって、とりわけ該光学的構造が該観察者と濃色の背景との間に配設されることなしに、該液晶の層の該ゴニオクロマティック効果及び/又は該レリーフ効果が観察されることができる。
【0077】
好ましくは、該支持体は、上記で説明されたようにフィルム及び接着プライマーを備え、該接着プライマーは、該支持体と接触している該液晶によって形成される層の、ASTM D4039-09規格に従って測定された反射ヘイズが、該接着プライマーで覆われておらず、該フィルムのみと接触して配設されている液晶の層の反射ヘイズより大きくなるように選択される。
【0078】
更に、該支持体は、透明又は半透明であることができる。該レリーフ効果は、該支持体の表及び裏から観察されることができる。
【0079】
好ましくは、該光学的構造の表側が反射光で観察される時に視覚的に突出しているように見える該構造のゾーンは、該光学的構造の裏側が反射光で観察される時には、凹みとして見える。
【0080】
更に、該光学的構造の耐久性を強化する為に、好ましくはPETからなる、追加的な支持体が、任意の適切な手段により、とりわけ接着剤を用いた積層により、該光学的構造を備える該フィルムに固定されることができる。好ましくは、該追加的な支持体は、該接着プライマーによって被覆されている該フィルムの面に固定される。
【0081】
該フィルムは、とりわけBOPPフィルムとも呼ばれる二軸延伸された、ポリプロピレン製であることができる。そのようなポリプロピレンのフィルムは、例えば、CCL Secure社によりGuardianの名称で、又はDe La Rue社によりSafeguardの商品名で販売されている。該接着プライマーは、例えば、Mica Corporation社によりMica-A-131-Xの品番で販売されている。
【0082】
液晶
該液晶の層は、該堆積物と接触していることができる。
【0083】
該液晶は、少なくとも1つのゴニオクロマティック性を有する。それは、ネマチック、又は好ましくはコレステリックであることができる。該液晶の層は、ネマチック液晶及びコレステリック液晶を含むことができる。
【0084】
該液晶は好ましくは、非栓球(non-thrombocytic)である。
【0085】
該液晶の層は好ましくは、架橋されている。それは、液晶を含む架橋可能インクで印刷し、続いて乾燥させ、次に、該液晶の整列を固定する為に、とりわけUV下で、該インクを架橋させることによって得られることができる。
【0086】
好ましくは、ASTM D4039-09規格に従って測定された、該堆積物に重畳された該液晶の層の少なくとも一部の反射ヘイズと、該支持体と接触している該液晶の層の少なくとも一部の反射ヘイズとは、該移行ゾーンの反射ヘイズより大きい。
【0087】
該液晶の層は、それが配設されている該支持体の面を少なくとも部分的に、更には完全に、覆うことができる。
【0088】
該液晶の層の厚みは、100μm未満、とりわけ2μm~30μm、であることができる。
【0089】
更に、該光学的構造は、該液晶の層と該支持層との間に、とりわけ該液晶の層と上記物質の該堆積物との間に、形成される微小空洞を有することができる。
【0090】
該支持体の面において測定された、各微小空洞の最大寸法は、とりわけ100μm未満である。
【0091】
好ましくは、該光学的構造の厚みは、一定であり、例えば14μm~55μmである。該液晶の層が該支持体と接触している少なくとも1つのゾーンにおける該液晶の層の厚みは好ましくは、該液晶の層が該堆積物上に重畳されているゾーンにおける、該堆積物の厚みと、存在する場合に微小空洞の厚みと、該液晶の層の厚みとの合計に等しい。
【0092】
該液晶は好ましくは、該移行ゾーン(transition zone)内よりも、該支持体を直接覆っているゾーン内において、より低いアライメント品質(alignment quality)を有する。該液晶は該移行ゾーン内の方が良好に整列している故に、光の反射は、特定の観察方向及び/又は照明方向に対してのみ観察される。それら特定の観察方向及び/又は照明方向に対して、それは、該第1及び第2のゾーン内よりもそこでの方が強力なものとなる。
【0093】
該光学的構造のあるゾーンにおける該液晶のアライメント品質は、偏光又は非偏光で光学顕微鏡法によって所定のエリアの表面の像を取得することにより、測定されることができる。該液晶が実質的に同じ整列を有する、「ドメイン」と呼ばれる個々のゾーンが、該像上で観察される。該ドメインの大きさが小さいほど、すなわち、所与の面積のゾーンにあるドメインの数が多いほど、上記ゾーンにおける該液晶のアライメント品質は低くなる。例えば、あるゾーンを越えて透過する光スペクトルを分光法で取得することにより、該ゾーンにおける該液晶のアライメント品質を評価することが可能である。該ゾーンを越えて透過する該光スペクトルのプロファイルは、上記ゾーンにおける該液晶のアライメント品質に依存する。
【0094】
該移行ゾーンにおける該液晶のアライメント品質は、均一であることができる。
【0095】
該移行ゾーンの幅の測定は、偏光で、又は変形例として非偏光で、光学顕微鏡法によって取得される該光学的構造の像を用いて、該液晶のアライメント品質が均一で且つ隣接するゾーンよりも良好である広がりを判定することにより、行われることができる。
【0096】
該光学的構造は、該堆積物を覆う該液晶の層とは異なる液晶を含有している、少なくとも1つの他の液晶の層を含むことができる。特に、該液晶の層と該他の液晶の層とは、異なるゴニオクロマティック性を有することができる。
【0097】
該液晶の層と該他の液晶の層とは、異なるゴニオクロマティック性を有するゾーン、とりわけ3つのゾーン、を画定する為に、部分的に互いの上に重畳されることができる。
【0098】
1つの実施態様において、該光学的構造は、以下を備えることができる。
半透明の、又は好ましくは透明の、支持体、
第1のパターンの形態で該支持体の第1の面と接触している第1の物質の第1の堆積物、
第2のパターンの形態で該支持体の第2の面と接触している第2の物質の第2の堆積物、ここで、該支持体の該第1の面と該第2の面とは、互いの反対側にある、
それぞれ該支持体の該第1及び第2の面を少なくとも部分的に覆い、それぞれ該第1及び第2のパターンの上に重畳されている、とりわけそれらと接触している、第1及び第2の液晶の層。
【0099】
該光学的構造が透過光で観察された場合、該第1及び第2のパターンは、関連付けによって互いを補完し、それにより第3のパターンを画定することができる。この第3のパターンは、同じ縮尺又は異なる縮尺で、該文書上の別の場所又は別のセキュリティ要素上に位置することができる。
【0100】
更に、該第1及び第2の面のいずれか一方において反射光で観察された場合、該支持体と、該第1及び第2の堆積物と、該第1及び第2の液晶の層とによって各々形成される第1及び第2のセットによって生成される該レリーフの視覚的効果は、互いと組み合わされることができる。
【0101】
該光学的構造は、該液晶の層の下に、とりわけ該液晶の層によって覆われている側と反対の該支持体の側に、設けられることができる、濃色の背景を備えることができる。該濃色の背景は、該レリーフ効果、及び必要な場合には該液晶の該ゴニオクロマティック効果を、強化する。
【0102】
変形例として、該液晶の層は、該支持体と該濃色の背景との間に挟まれることができる。よって、該堆積物及び該液晶の層は、該支持体及び該濃色の背景によって保護されることができる。
【0103】
該濃色の背景は、着色剤、例えばDystar Colours Distribution製のIndanthren PA-FS、又は色素、とりわけ金属酸化物、を印刷することによって得られることができる。該色素は、例えば吸収性又は干渉性であることができる。
【0104】
変形例として、該濃色の背景は、とりわけ真空における若しくは電気化学手段による、金属被覆により、又は金属、金属酸化物、若しくは酸化金属塩を堆積する為の任意の他の技術により、得られることができる。該濃色の背景は、追加的な支持体によって担持されることもでき、該追加的な支持体は好ましくは、該液晶の層によって被覆されている側と反対の側で該支持体に固定される。
【0105】
例えば脱金属によって得られる、厚みを貫通する開口を備えている金属被覆層が、該液晶の層が堆積されている該支持体の面と反対側の該支持体の面に堆積されることができる。変形例として、上記金属被覆層も、該追加的な支持体によって担持されることができ、該追加的な支持体は好ましくは、該液晶の層によって被覆されている側と反対の側で該支持体に固定される。
【0106】
該濃色の背景は、該光学支持体の残留磁気が該濃色の背景に沿って変動するように配設された磁気粒子で覆われることができ、それにより第3のレベルの機密保護、例えば磁気コード、を画定する。
【0107】
好ましくは、該濃色の背景は、少なくとも部分的に該液晶の層の上に重畳される。
【0108】
該濃色の背景は好ましくは、該液晶の層に対して位置合わせされた形で配設され、特に、該濃色の背景は、正確に該液晶の上に重畳されることができる。
【0109】
該濃色の背景は、80%未満の透過率を有することができ、好ましくは不透明である。
【0110】
変形例において、該光学的構造は、とりわけ上記で説明されたような、濃色の背景を有さない。
【0111】
該光学的構造は、例えば機密保護ワイヤ、機密保護箔、機密保護フィルム、又は機密保護パッチの中から選択される、セキュリティ要素上に存在することができる。
【0112】
本発明は、本発明に従う光学的構造を備えているセキュリティ要素にも関する。
【0113】
該セキュリティ要素は、とりわけ第1、第2、又は第3のレベルの機密保護構造の中から選択されるところの少なくとも1つの追加的な機密保護構造を備えることができる。それは以下を伴うことができる。
透過光において現れ、金属被覆及び/又は脱金属によって形成される、パターン、
印刷された形態の又は該セキュリティ要素の少なくとも1つの構成層と混合された、着色剤、発光性色素、干渉性色素、
とりわけ印刷された形態の又は該セキュリティ要素の少なくとも1つの構成層と混合された、化合物、着色剤、及び/又はフォトクロミック若しくはサーモクロミック色素、
とりわけ被覆された形態の又は該セキュリティ要素の少なくとも1つの構成層と混合された、紫外線(UV)吸収体、
干渉性多層構造、
屈折層、複屈折層、又は偏光層、
回折構造、
「モアレ効果」又は視差効果、例えば、例えば2つの機密保護手段の線の集束により、とりわけ折り返しにより、2つの機密保護手段の重畳によって発生するパターンを明らかにすることが可能な効果、を発生させる手段、
着色されたフィルタ、
とりわけルミネセンス(例えば、蛍光、燐光)、光吸収(例えば、紫外線、可視光、又は赤外線)、ラマン活性、磁気、マイクロ波相互作用、X線との相互作用、又は導電性の、特定の測定可能な特性を有する、自動的に読み取り可能な機密保護対策。
セキュリティ要素
【0114】
該セキュリティ要素は、機密保護ワイヤ、機密保護箔、機密保護フィルム、又は機密保護パッチの中から選択されることができる。それは、カード又は保護フィルム若しくは改ざん防止フィルムであることすらできる。
【0115】
該セキュリティ要素は、本発明に従う光学的構造を幾つか備えることができる。
【0116】
該セキュリティ要素は機密保護ワイヤであることができ、該パターンは、好ましくは該ワイヤの長手方向に沿って規則的な間隔で規則的に、繰り返される。
【0117】
該セキュリティ要素が機密保護ワイヤである変形例において、該機密保護ワイヤは、セキュア文書、例えば紙幣、の窓の中に組み込まれることができる。そして、該セキュリティ要素は、該文書の一方の端部から他方の端部に延びることができる。
【0118】
該機密保護ワイヤは、1mm~10mmの幅及び/又は10μm~100μmの厚みを有することができる。
【0119】
該セキュリティ要素が箔である変形例において、該セキュリティ要素は、例えば紙、フィルム、又はカードの表面に、転写によって適用される。
【0120】
「パッチ」は、基礎となる該基材の表面全体を覆うのではないフィルムを意味する。
【0121】
本発明は、本発明に従う光学的構造及び/又は本発明に従うセキュリティ要素を備えている機密保護文書にも関する。
【0122】
好ましくは、該光学的構造は、該文書の表及び裏において視認可能である。特に、該文書の該表が観察される時に突出しているように見える該光学的構造のゾーンは、該文書の該裏が観察される時には凹みとして見えることができる。
【0123】
該セキュア文書は、繊維質基材を備えることができ、該セキュリティ要素は、該繊維質基材の窓の中に配設される。
【0124】
該セキュア文書は、支払手段、例えば紙幣、小切手、又は昼食券、身分証明文書、例えば身分証明書、ビザ、旅券、又は運転免許証、宝くじ券、輸送文書、及び文化イベント又はスポーツイベントの券の中から選択されることができる。
【0125】
該セキュリティ要素は、該セキュア文書の一方の端部から他方の端部に延びることができる。
【0126】
該光学的構造の該パターンは、該セキュア文書上の別の場所に位置することができ、よって該セキュア文書と該セキュリティ要素との間の関連性を確立することができる。好ましくは、該セキュア文書が紙幣である変形例において、該パターンは、例えば通貨、銀行の名前、又は額面価値を表す。
【0127】
製造方法
本発明は、本発明に従う光学的構造を製造する為の方法にも関し、該方法において、該物質は、該支持体を部分的に覆う少なくとも1つのパターンを形成するように該支持体上に堆積され、少なくとも1つの液晶の層が、該支持体及び適切に形成された該パターン上に堆積される。
【0128】
該支持体への該物質の堆積の前に、該方法は、該要素を少なくとも1つの方向に延伸することを含むことができる。
【0129】
該方法は、該物質の堆積の前に、該支持体を形成する為に、上記で説明されたように、プライマー、とりわけ接着プライマー、をフィルムの上に堆積することを含むことができる。
【0130】
該物質の該堆積は、該支持体への印刷によって、とりわけ、インクジェット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、活版印刷、若しくはフレキソ印刷によって、行われることができる。
【0131】
好ましくは、該物質はインクである。該堆積は、インクを含有しているカートリッジ又は連続インク供給手段を備えたインクジェットプリンタを用いて行われることができる。該インクジェットプリンタは、圧電インクジェットプリンタ又はサーマルインクジェットプリンタであることができる。
【0132】
好ましくは、該支持体のインク供給率は、20%より高い。該支持体の該インク供給率は、該支持体のあるゾーンに該プリンタによって堆積されるインクの体積と、該支持体の該ゾーンに印刷されることができるインクの最大体積との比に相当する。
【0133】
印刷後、被覆された該支持体は、5分以下、例えば1分、の時間にわたり、及び/又は50℃~100℃、例えばおよそ60℃、の温度で、乾燥されることができる。
【0134】
該支持体は、該パターンの印刷中に、基材、とりわけ紙、に固定されることができる。例えば、該基材が凹部を備え、該パターンは、該凹部の上に重畳された該支持体の部分に印刷される。
【0135】
該液晶の層は、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、又は活版印刷により、とりわけ溶媒及び該溶媒中に分散した該液晶を含むインクを用いて、該支持体及び該パターンの上に印刷されることができる。それは、インクジェットによって印刷されることができる。該インクは、ソリッドカラー又はパターンの形態で堆積されることができ、それは少なくとも該パターンを覆い、その部分にある該支持体は該パターンによって覆われない。
【0136】
該液晶は、例えば「空中」乾燥による、該溶媒の蒸発の間に整列され、好ましくは水平方向に行われて該液晶の整列を促す。好ましくは、該インクは、UV下で架橋可能であり、該堆積に続く該架橋が、該液晶の整列を恒久的に固定することを可能にする。
【0137】
該蒸発は、炉の中で、1分~5分、例えば3分、の時間にわたり、及び/又は50℃~100℃、例えばおよそ95℃、の温度で、実施されることができる。
【0138】
最後に、本発明は、本発明に従うセキュリティ要素又は本発明に従うセキュア文書を鑑定する為の方法に関し、該方法において、該光学的構造が、少なくとも1つの観察方向に従って観察され、この観察から、レリーフ像の印象を与える該パターンが現れるかどうかの判定が行われる。
【0139】
特に、該光学的構造は、該支持体の同じ側から少なくとも2つの異なる観察方向において観察されることができ、観察の角度が変化したときに、該パターンの又は該パターン周囲の外観の変化、とりわけ観察されるレリーフ効果と整合した外観の変化、が検出されることが図られることができる。
【0140】
該光学的構造は、とりわけ同じ観察方向に従って、該支持体の同じ側で2つの異なる照明方向に従って該光学的構造を照明することにより、観察されることができ、照明角度が変化したときに、該パターンの又は該パターン周囲の外観の変化、とりわけ観察される該レリーフ効果と整合した外観の変化、が検出されることが図られることができる。
【0141】
該パターンの観察は、該レリーフの視覚的効果を増大する為に、濃色の背景の前で行われることができる。
【0142】
更に、表及び裏で観察が行われることができ、それら観察間の該レリーフの反転が検出されることが図られる。該レリーフの反転とは、該光学的構造の一方の面が観察される時に突出しているように見えるゾーンが、反対側の面が観察される時には凹んで見えること、及びその逆を意味するものと理解される。
【0143】
更に、該セキュリティ要素の鑑定は、ゴニオクロマティック効果が観察されるかどうかを判定する為の該光学的構造の観察、及びに少なくともこの観察に基づく真正性に関する情報の生成を含むことができる。
【0144】
該鑑定方法は、該支持体の向きを明らかにする為の偏光フィルタを通じた該セキュリティ要素の観察と、少なくともこの観察に基づいて真正性に関する情報を生成することからなるステップとを含むことができる。該偏光フィルタを通じた観察は、該移行ゾーンと該第1及び第2のゾーンとの間の該液晶のアライメント品質の差を明らかにすることができる。
【0145】
例えば、該支持体が二軸延伸フィルムを備える変形例によれば、該フィルムの該二軸延伸は、該フィルムの複屈折を従来のやり方で分析することによって確認されることができる。直線偏光体、例えば該セキュリティ要素の上に置かれるフィルタ、が使用されることができ、それが90°回転されて、それに応答して暗い外観から明るい外観への変化があるかを判定する。
【0146】
該インクがネマチック液晶を含み、該支持体を少なくとも部分的に覆う該液晶の層が、ゴニオクロマティック効果を有するコレステリック液晶を含む、記載される変形例において、該方法は更に、該パターン及びコレステリック液晶の層が重畳されているゾーンと、該コレステリック液晶の層が該支持体と接触しているゾーンとの間の外観の差を検出する為に、該光学的構造を偏光で観察することを含むことができる。
【0147】
好ましくは、該パターンと該コレステリック液晶の層とが重畳されている該ゾーン、及び該コレステリック液晶の層が該支持体と接触している該ゾーンの外観の変化を検出する為に、該光学的構造が、移動される、及び/又は、とりわけ該支持体に対して垂直な軸を中心として、好ましくは90°の角度にわたり、回転され、外観の該変化は更に、該パターンと該コレステリック液晶の層とが重畳されている該ゾーンの外観と、該コレステリック液晶の層が該支持体と接触している該ゾーンの外観とがまた、互いに異なるようなものである。
【0148】
上記で説明された該鑑定方法の好ましい変形例によれば、該偏光は、例えば電話又はコンピュータのLCD画面によって発される。よって、例えば該セキュリティ要素又は該セキュア文書を該LCD画面と該観察者との間に配置することにより、該セキュリティ要素又は該機密保護される文書の鑑定が平易に実施される。
【0149】
本発明は、以下のその実装の非制限的な例の説明を読み、添付図面を考察すると、よりよく理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【
図1】
図1は、本発明に従う光学的構造の例の上面図を模式的に表す。
【
図3a】
図3aは、異なる照明方向に対して観察される異なるレリーフの視覚的効果を示す。
【
図3b】
図3bは、異なる照明方向に対して観察される異なるレリーフの視覚的効果を示す。
【
図3c】
図3cは、異なる照明方向に対して観察される異なるレリーフの視覚的効果を示す。
【
図3d】
図3dは、異なる照明方向に対して観察される異なるレリーフの視覚的効果を示す。
【
図5】
図5は、別の変形例の実施態様の断面図である。
【
図6】
図6は、別の変形例の実施態様の断面図である。
【
図7】
図7は、本発明に従うセキュア文書の正面図を表す。
【
図8】
図8は、セキュア文書の別の例の断面図である。
【
図9】
図9は、インク堆積物で被覆されたPETの例の写真である。
【
図10】
図10は、
図9の被覆されたフィルムから作製される光学的構造の例の写真である。
【
図12】
図12は、
図11の光学的構造の一部の、偏光における光学顕微鏡法によって得られた写真である。
【
図13】
図13は、光学的構造を行う被覆されたフィルムの別の例の写真である。
【
図14】
図14は、
図13の該被覆されたフィルムから作製された該光学的構造の写真と、
図13の該写真の対応する部分との写真モンタージュである。
【
図16a】
図16aは、ある照明方向に従って照明された例示的光学的構造の写真である。
【
図16c】
図16cは、それぞれ
図16a及び
図16cの左側部分及び右側部分と、液晶の層によって被覆されていない
図16a及び
図16cの中央部分に対応する中央部分とを含む写真モンタージュである。
【
図17a】
図17aは、非偏光で観察された光学的構造の例の写真である。
【
図17c】
図17cは、該支持体に対して垂直な軸を中心として90°回転させた後に偏光で観察された、
図17aの該光学的構造の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0151】
該図において、該構造の構成要素は、明瞭性の為に、必ずしも実際の縮尺では表されていない。
【0152】
図1及び
図2は、本発明に従う光学的構造5の例を示し、該光学的構造5は、支持体7と、パターン11を形成する為の該支持体上の物質の堆積物9と、液晶の層13とを備えている。
【0153】
該物質は、例えば、サーマル又は圧電インクジェットプリンタを用いて該支持体に印刷されたインクである。それは、それが堆積された該支持体の面15を部分的に覆っている。
図1及び
図2の例において、該パターンは円形の形態を有しているが、任意の他の形態、例えば一連の英数字記号、とりわけ通貨、風景、人物、又は記念碑、が検討されることができる。
【0154】
該堆積物9は、該支持体7及び該液晶の層と接触している。
【0155】
少なくとも1つの観察方向D1に従って観察された場合、該光学的構造はとりわけ、該パターン11によって範囲が定められ、該パターンの周りに延びる、移行ゾーン17内で、レリーフの視覚的効果を有する。該移行ゾーン17内で、該液晶の層は、該支持体7と接触していることができる。該移行ゾーン17は、該液晶が該堆積物9の該物質の上に重畳されている、とりわけそれと接触している、第1のゾーン19と、該液晶が該支持体7と接触している第2のゾーン21との間に延びている。よって、該移行ゾーン17内の該液晶のアライメント品質は、該第1のゾーン19及び第2のゾーン21内の該液晶のアライメント品質と異なることができる。
【0156】
該光学的構造が、該支持体に平行で、該堆積物9の左端部23から反対側の右端部25に向かって方向付けされている成分を含む光放射E
1gによって照明されたとき、
図3aにおいて破線で範囲が定められる、該右端部と接触している該移行ゾーンの部分27が明るく見えることができ、とりわけ鏡面状の光沢のある外観を有する。
図3aにおいて短い破線によって概略的に範囲が定められる、該左端部と接触している該移行ゾーンの部分29は、暗く見えることができ、とりわけ無光沢に見えることができる。
【0157】
該光学的構造が、光放射E
1gと同じように該堆積物9の該左端部23から該右端部25に向かってに方向付けられており、該支持体に対して該光放射E
1gと異なる入射角を有する、光放射E
2gによって照明されたとき、該移行ゾーンの該部分27は、
図3bに示されるように明るく見え、その外観は、
図3aで観察されるものと異なることが可能であり、該移行ゾーンの該部分29の外観は、照明E
1gを用いて観察されるものに対して変化している。とりわけ該部分29は、該方向E
1gに従って照明されたときよりも明るく見える。特に、それは、鏡面状の光沢のある外観を有することができる。
【0158】
更に、該第1のゾーン19及び第2のゾーン21は、該光放射E1g及びE2gによって照明されたときに、実質的に同一であることができるゴニオクロマティック効果を有することができる。
【0159】
該光学的構造が、該放射E
1g及びE
2gと反対の方向に、すなわち該堆積物の該右端部25から該左端部23に向かって、方向付けされている光放射E
1d及びE
2dによって照明されたとき、
図3c及び
図3dに模式的に示されるように、観察される効果は反転する。該方向E
1dに従って照明されたとき、該移行ゾーンの該部分27は暗く見え、該部分29は明るく見え、該部分27は、該方向E
2dに従って照明されたとき、より明るく見える。
【0160】
該光学的構造は、
図4に示されるように、濃色の背景31を備えることができる。該濃色の背景は、該堆積物及び該液晶の層が接触して配設されている面15とは反対側の該支持体の面35を覆う、不透明層33の形態を取ることができる。該不透明層は、例えば、黒色インクの印刷又は金属被覆である。それは、少なくとも部分的に該堆積物及び該液晶の層と重畳されている。よって、矢印D
2によって示されるように、該液晶が配設されている該支持体の側から観察された場合、該液晶の視認性が向上され、該レリーフ効果が増大される。
【0161】
変形例として、
図5に示されるように、該濃色の背景31は、半透明、又は好ましくは透明である、該支持体の反対側に配設される。それは、該液晶の層13と接触している。該濃色の背景31及び該支持体7が、該液晶の層及び該堆積物を挟んでいる。よって、該レリーフ効果は、該光学的構造が、矢印D
3によって示されるように、該堆積物によって被覆された側と反対側の該支持体の側から観察される場合に増大される。
【0162】
図6に示される例は、該光学的構造が、半不透明(semi-opaque)の濃色の背景に固定されている、例えば糊付けされている、例えばPETからなる、他の透明フィルム37を備えるという点で、
図4に示される例と異なる。該光学的構造は、例えば選択的な脱金属及び該他のフィルム37まで貫通する開口部によって作製される、少なくとも1つの凹部41を備えた、金属被覆層39も備えている。よって、該光学的構造は、該液晶の層及び該堆積物で被覆された該支持体の側から観察された場合に、レリーフの視覚的効果を提供する。それは、該支持体のもう一方の側で観察された場合に、別の視覚的効果を得、該金属被覆層は、少なくとも1つの方向に従って光沢のある外観を有し、該濃色の背景は、1以上の該凹部を通じて認識可能である。
【0163】
図7は、紙幣の形態のセキュア文書45を表し、これは、例えば紙からなる、繊維質基材47と、該基材47の2つの端部53、55の間の1以上の窓の中に延びている機密保護ワイヤの形態のセキュリティ要素49とを備えている。該機密保護ワイヤは、破線によって表される該基材の嵩の中に挿入された部分と、該繊維質基材47の表面に現れている窓57の中に配設された別の部分とを備えている。該機密保護ワイヤは該光学的構造を含有しており、該堆積物9が該窓57の中に配設されている。該パターン11は、該文書上の別の場所に、例えば同一形態58で、位置することができる。
【0164】
図8は、紙幣の形態のセキュア文書45の別の例を表し、これは、例えば紙からなる、繊維質基材47と、機密保護フィルムの形態のセキュリティ要素49とを備えており、該セキュリティ要素49は、該基材47の2つの端部53、55の間に延び、また該基材47の厚みを完全に貫通している開口部60を少なくとも部分的に覆っている。該機密保護フィルムは、該光学的構造を含有しており、該堆積物9が、少なくとも部分的に、例えば完全に、該開口部60上に重畳されている。該パターン11は、該文書上の別の場所に、例えば同一形態58で、位置することができる。
【0165】
該光学的構造は、
図4及び
図5に示されるように背景を備えることができる。変形例として、
図8に表されるように、該光学的構造は、
図1に示された該例に従うものであることができ、該セキュア文書は、該レリーフの視覚的効果を増大する為に、独立した濃色の背景31の方を向いて配設されることができる。
【0166】
実施例
【0167】
実施例1
Polyplex社によって販売されるSarafilS56Cの品番のポリエステルPETのフィルムが選択された。それは、該液晶の整列に好適な表面テクスチャを有する。該SarafilS56Cのフィルムは、コポリエステル系の接着プライマーによって被覆された、二重延伸フィルムである。
【0168】
該フィルムの面にインクジェット印刷で黄色インク又はシアンインクの堆積物を形成することにより、数個の光学的構造が作製された。
【0169】
該黄色インクは、品番C8766[Y]を有し、HP6540の品番のインクジェットプリンタを用いて印刷される。該シアンインクは、品番C8766[C]を有し、HP6540の品番のインクジェットプリンタを用いて印刷される。
【0170】
印刷は、複数の異なるインク供給率(Inking rate)で作製され、堆積物ごとに該インク堆積物の乾燥重量が坪量によって測定される。下記の表1は、ISO5631-1規格に従った、それら測定の結果、並びに該フィルム単独及び各堆積物の色の測定の結果をまとめたものである。それは、該支持体フィルムと該堆積物との間の飽和度差ΔC及び透明度差ΔLにも言及している。値C*及びL*は、該堆積物及び未被覆のフィルムの飽和度及び透明度の測定値に対応する。
【0171】
【0172】
次に、様々な被覆されたサンプルが60℃の温度で5分間乾燥された。
【0173】
更に、該異なる堆積物で被覆されたフィルムのサンプルに、Lumogen Sインク6525Tの品番でBASF社によって販売される、576nmの黄色/緑色のゴニオクロマティック効果を有する液晶を含むインクが印刷される。
【0174】
該液晶インクの堆積は、コーティングバーに2~3ミクロンの厚みになるように行われる。次に、該液晶が、吹き付けられる熱風の下で該インクの乾燥中に整列され、次に、UV架橋によって硬化された。
【0175】
最も強調されたレリーフの視覚的効果は、少なくとも60%のインク供給率を有する堆積物について観察された。
【0176】
図9~
図16は、60%のインク供給率による黄色インクの堆積物を備える異なる光学的構造に対して得られたレリーフ効果を示す写真である。
【0177】
図9は、SarafilS56Cのフィルム上に薔薇型のパターンを形成している黄色インクの堆積物で被覆された該SarafilS56Cのフィルムの一部ゾーンの写真であり、
図10は、該液晶の層によって被覆された同じゾーンの写真である。該ゾーンは、10mmの高さ及び13mmの幅を有する。見て取れるように、パターンの輪郭59はレリーフとして見える。移行ゾーンは、該パターンの各部分の周りに画定される。移行ゾーン17の部分17
1は暗く無光沢に見えるのに対し、その他17
2は明るく光沢があるように見え、奥行きの印刷を視覚的に示唆する。
【0178】
図12は、非偏光で光学顕微鏡法によって得られた該光学的構造の一部の写真であり、ここでは、およそ300μmの幅を有する移行ゾーン17が、該インクが該支持体と接触している第1のゾーン19と、該液晶が該支持体と接触している第2のゾーン21との間に延びている。非偏光における光学顕微鏡法による分析は、該液晶の整列についての情報を与える。よって、ドメインの密度は、撮影された1以上の液晶の整列についての情報を与える。
図12で見て取れるように、ドメイン18a~cが観察され、それらの中では該液晶の整列がほとんど異ならない。該ドメインの大きさは、該移行ゾーンと該第1及び第2のゾーンとで異なる。言い換えれば、表面積の単位あたりのドメインの数は、該移行ゾーンと該第1及び第2のゾーンとで異なる。とりわけ、該ドメインは、該ゾーン17内で寸法がより大きいように見え、これは、結晶のアライメント品質が、該第1及び第2のゾーンよりも該ゾーン17内で良いことを示す。
【0179】
図13に写真として示される堆積物は、非連続的であり、動物の形態のパターンを画定している。
図14に観察されるように、レリーフの視覚的効果が観察され、
図14は、該光学的構造の写真を、該堆積物のみで被覆された該支持体の写真と重ねることにより、とりわけ該パターンの輪郭に対する該移行ゾーンの位置を正確に見ることができるようにしている。
【0180】
図15aは、該支持体の表側から見られた光学的構造の別の例の写真であり、
図15bは、該支持体の反対の裏側から見られた該光学的構造の写真である。該裏側においてレリーフとして見える該移行ゾーンは、該表側では凹んで見え、その逆も同様である。
【0181】
動的な効果が現れ、
図16a~
図16cに提示されている写真によって示される。
【0182】
第1の方向に従って照明された光学的構造の例が、
図16aに写真として示される。該支持体の面における該照明方向の成分は、
図16の紙面の下部から上部へと方向付けされている。下向きに方向付けされている印刷されたパターンの端部の周りに延びる該移行ゾーンの部分17
1は暗く見え、上向きに方向付けされている同じパターンの端部の周りの部分17
2は明るく見える。更に、該第1のゾーン19及び第2のゾーン21は、異なる、とりわけわずかに異なる、色を有する。
【0183】
該第1の方向と異なる第2の方向に従って照明されたとき、該光学的構造の視覚的外観は変化する。
図16aにおいてそれぞれ暗く及び明るく見える該移行ゾーンの部分は、
図16bにおいてそれぞれ明るく及びより明るく見える。更に、色の変化の効果が、該第1及び第2のゾーンで観察される。それらは、観察の角度及び/又は照明の角度に従って徐々に黄緑色を変化させる2つの色相を有する。
【0184】
実施例2
Polyplex社によって販売されるSarafil S56Cの品番のポリエステルPETのフィルムが選択された。それは、該液晶の整列に好適な表面テクスチャを有する。該Sarafil S56Cのフィルムは、コポリエステル系の接着プライマーによって被覆された、二重延伸フィルムである。
【0185】
該フィルムの面にインクジェット印刷で黒色インクの堆積物を形成することにより、光学的構造が作製された。
【0186】
該黒色インクは、品番Liojet AP-KB027-Kを有し、Kyocera KJ4B-1200の品番の圧電印刷ヘッドを用いて印刷される。
【0187】
適切に被覆された該フィルムが、次に、60℃の温度で5分間乾燥された。
【0188】
更に、該被覆されたフィルムに、LumogenSインク6525Tの品番でBASF社によって販売される、576nmの黄色/緑色のゴニオクロマティック効果を有する液晶を含むインクが印刷された。
【0189】
該液晶インクの堆積は、該コーティングバーに2~3ミクロンの厚みになるように行われた。次に、該液晶が、吹き付けられる熱風の下で該インクの乾燥中に整列され、次に、UV架橋によって硬化された。
【0190】
該液晶の視認性を増す濃色の背景の役目を果たす為に、黒色インクが、該被覆されたフィルムの裏側に堆積された。
【0191】
該液晶が印刷された面の鑑定により、強いレリーフ効果が得られた。
【0192】
実施例3
Polyplex社によって販売されるSarafil S56Cの品番のポリエステルPETのフィルムが選択された。それは、該液晶の整列に好適な表面テクスチャを有する。該Sarafil S56Cのフィルムは、コポリエステル系の接着プライマーによって被覆された、二重延伸フィルムである。
【0193】
該フィルムの面にフレキソ印刷で黒色インクの堆積物を形成することにより、光学的構造が作製された。
【0194】
該黒色インクは、品番Liojet AP-KB027-Kを有している。その粘度は、Tylose HS100000YP2の品番でShin Etsu社によって販売されるセルロース誘導体を0.35%添加することによって変更された。適用は、Rk Print社のFlexiproof 100フレキソアプリケータを用いて行われた。
【0195】
適切に被覆された該フィルムが、次に、60℃の温度で5分間乾燥された。
【0196】
更に、該被覆されたフィルムに、LumogenSインク6525Tの品番でBASF社によって販売される、576nmの黄色/緑色のゴニオクロマティック効果を有する液晶を有するインクが印刷された。
【0197】
該液晶インクの堆積は、該コーティングバーに2~3ミクロンの厚みになるように行われた。次に、該液晶が、吹き付けられる熱風の下で該インクの乾燥中に整列され、次に、UV架橋によって硬化された。
【0198】
該液晶の視認性を増す濃色の背景の役目を果たす為に、黒色インクが、該被覆されたフィルムの裏側に堆積された。
【0199】
該液晶が印刷された面の鑑定により、強いレリーフ効果が得られた。
【0200】
実施例4
Polyplex社によって販売されるSarafil S56Cの品番のポリエステルPETのフィルムが選択された。それは、該液晶の整列に好適な表面テクスチャを有する。該Sarafil S56Cのフィルムは、コポリエステル系の接着プライマーによって被覆された、二重延伸フィルムである。
【0201】
該フィルムの面にインクジェット印刷でネマチック液晶を含むインクの堆積物を形成することにより、光学的構造が作製された。
【0202】
該インクは、品番Lumogen Hide N700を有し、グラビア印刷によって印刷される。
【0203】
適切に被覆された該フィルムが、次に、該液晶を整列させる為に、105℃の温度で5分間乾燥された。次に、該整列がUV架橋によって硬化された。
【0204】
更に、該被覆されたフィルムに、LumogenSインク6525Tの品番でBASF社によって販売される、576nmの黄色/緑色のゴニオクロマティック効果を有する液晶を有するインクが印刷された。
【0205】
該液晶インクの堆積は、該コーティングバーに2~3ミクロンの厚みになるように行われた。次に、該液晶が、吹き付けられる熱風の下で該インクの乾燥中に整列され、次に、UV架橋によって硬化された。
【0206】
図17aで見て取ることができるように、該液晶が印刷された面の鑑定により、強いレリーフ効果が得られた。
【0207】
更に、偏光における別の光学的効果を検出する為に、該光学的構造が、LCD画面と観察者との間に置かれた。変形例として、非偏光源及び偏光フィルタが使用されることができる。該光学的構造は、該非偏光源と該偏光フィルタとの間に置かれることができ、該観察者は、該偏光フィルタを通じて該光学的構造を見ることができる。
【0208】
図17bで見て取れるように、該光学的構造の第1の観察構成によると、該ネマチック結晶とコレステリック液晶の層とを備えるパターンが重畳されているゾーン19は、青色を有し、該コレステリック液晶が該支持体と接触しているゾーン21は、ピンク色を有する。
【0209】
該光学的構造を該支持体に対して90°回転させると、該ゾーン19及び21の各々の外観の変化が、色の反転の形態で観察される。該ゾーン19はピンク色を有し、該ゾーン21は青色を有する。
【0210】
本発明は、説明された例に限定されない。
【0211】
特に、本発明はまた、被膜又は装飾物を作製する為に好適である。
【0212】
本発明が機密保護文書の作製に適用される場合、本発明に従う該光学的構造は、機密保護ワイヤ以外のセキュリティ要素上に存在することができる。
【0213】
該光学的構造の該パターンが、該文書上のいずれか他の場所に、同一形態で又は異なる縮尺で、又は任意の他の認識可能な形態で、位置することが非常に特に有利であり、ここで、該観察者は、該構造の該パターンと他の場所に現れるパターンとの間に存在する関連性(link)を認識することができる。
【国際調査報告】